【技術分野】 【0001】 発明の分野 本発明は、ナノ粒子の粉体、またはそれの安定化されていない分散液から、安定化されたナノ粒子分散液を得る方法、およびそのような安定化されたナノ粒子分散液を含むコーティング組成物に関する。 【0002】 発明の背景 粉末状で得られたナノ粒子の液体への分散は、固相中で凝集が起き、その形成後は、凝集を破壊するのが困難であるという、解決するのが難しい技術的な問題がある。 さらに、ナノ粒子を分散したとき、分散を長期間(少なくとも1週間、好ましくは少なくとも1ヶ月)にわたって維持できるかという別の問題がある。 この分散液の、コーティング組成物または有機化合物の混合物中への導入も、さらなる課題となるであろう。 媒体の変更は、分散液の不安定化およびナノ粒子の凝集という結果をもたらす可能性がある。 この問題を扱っている最近の文献例は、例えば米国特許第5,993,967号明細書、米国特許第6,033,781号明細書、国際公開第97/38041号パンフレット(ブロッツマン(Brotzman))、米国特許第6,183,658号明細書(シュミット(Schmidt))。 【0003】 Brotzman特許では、ナノ粒子をはじめに高剪断力ミキサーを使用して溶媒中に分散し、次にスター・グラフトシリコンポリマーを加える。 このポリマーは、ナノ粒子の表面をコートして、凝集が全く起きないようにする。 この方法では、ナノ粉体の重量に対し7.3重量%のポリマーを添加する。 この反応は、上記溶液の総重量に比べて固形分が17.9重量%であることにより適当に分散された媒体中で行われる。 この低濃度は、コーティング工程中に凝集が起きないようにするのに役立つ。 【0004】 Schmidt特許は、ナノ粒子をアミノプロピルトリメトキシシランなどのシリコンカップリング剤でコートする。 この方法では、カップリング剤を大過剰:80重量%/Fe 2 O 3のオーダーで加えることにより、コーティング工程中の酸化鉄の凝集を防いでいる。 このため、過剰分を除去するために精製工程が必要である。 【0005】 いずれの場合でも、従来技術で周知のとおり、ナノ粒子を別種の媒体中に分散させるために、使用される分子の官能性を変えることができる。 【0006】 しかし、上記2種方法はかなり煩雑である。 Brotzman法では、ポリマーの調製が必要とされ、また分散液は希釈されるが、これにより後で蒸発工程の付加が必要となることがある。 第2の方法(Schmidt)では、大過剰のカップリング剤が必要とされ、このため非容易で非常に長い精製工程を必要とする。 【0007】 最近の国際公開第02/45129号パンフレットは、ナノ結晶性粒子の被包のために、シロキサン系ポリマーを使用することについて記載している。 シロキサン系ポリマーは、その一部がホスフィン基またはリン酸基を付加的に含有する前駆体から得られ、その後、ナノ結晶性粒子の分散液に加えられる。 このように処理された分散液は、その後架橋可能な樹脂内に取り込まれる。 付加的なホスフィン基またはリン酸基による安定化効果についての記述は全くない。 【0008】 米国特許第4,994,429号は、リン含有酸基と、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基およびホスフィン酸基から選択される付加的な酸基と、を有する有機酸材料を使用した、金属の酸化物/水酸化物粒子の処理を開示する。 処理後、付加的な酸基は未反応のまま残るため、粒子表面の反応部位に化学的に結合した有機酸分子、すなわち未反応酸基とともに金属の酸化/水酸化物粒子の反応部位に化学結合したリン含有酸基を含有する各有機分子からなる実質的に単分子層を有する金属の酸化/水酸化物粒子を含む活性物質が供されることになる。 粒子の大きさは通常1μm以上である。 この文献は、金属ナノ粒子の分散液、特に、少なくとも1週間は安定な水性分散液を得るために、安定化されていない金属ナノ粒子の分散液を、リン含有官能基を少なくとも1つ含む安定化化合物を用いて処理することを提案していない。 【0009】 論文「磁性非酸化物のナノ粒子を含有するハイブリッド複合材料」(Mat. Res. Soc. Symp. Proc. Vol. 628 (c) 2000−マテリアルズ リサーチ ソサイエティ(Materials Research Society)発行)は、マグヘマイト(γ−Fe 2 O 3 )粒子の安定な水性ゾルをフェニルホスホン酸の溶液を使用して処理し、処理された固体粒子を回収し、該粒子を有機溶媒内に分散することにより安定したオルガノゾルを形成することを開示している。 さらに、水性ゾルのマグヘマイト粒子とフェニルホスホン酸との錯体形成は、脱プロトン化に伴う粒子の凝集を生じることが記載されている。 マグヘマイトゾルは、水性のFe IIおよびFe IIIイオンをアルカリ化することによって予め得られたマグネタイトゾルから調製されることは明らかである。 Fe 2 O 3の粉体からナノ粒子の溶液は得られない。 【0010】 したがって本発明の第1の目的は、ナノ粒子の粉体、または安定化されていないその液状分散物から、安定化した金属ナノ粒子の分散液、特に水性分散液の調製方法であって、単純で、かつ、特にポリマーの調製および使用だけでなく、大過剰のカップリング剤の使用および煩雑な精製工程を必要とせずに、環境温度(25℃)で少なくとも1週間安定な分散が得られる、分散液の調製方法を提供することである。 【0011】 本発明の別の目的は、金属ナノ粒子がリン酸、ホスホン酸、それらの塩、ホスフィン、酸化ホスフィン、およびホスホニウムより成る群から選択される官能基を少なくとも1つ有する安定化化合物を少なくとも1つ有効量で使用して金属ナノ粒子を処理し、それによって分散液が少なくとも1週間安定であるような、安定化された金属ナノ粒子の分散液、特に水性分散液である。 【0012】 本発明の更なる目的は、特に透明なコーティングを作成するための、上記に規定されるような安定化された金属ナノ粒子の分散液を含む有機コーティング組成物である。 【発明の開示】 【0013】 発明の要約 本発明のこれらおよびその他の目的は、金属ナノ粒子の安定化された分散液、好ましくは水性分散液を調製する方法を提供することによって達成され、本方法は、リン酸、ホスホン酸、それらの塩、ホスフィン、酸化ホスフィン、およびホスホニウムより成る群から選択される官能基を少なくとも1つ有する安定化化合物を少なくとも1つ有効量で使用してナノ粒子を処理することを含み、それによって分散液が少なくとも1週間安定である。 【0014】 安定化化合物を使用した処理は、液状媒体、好ましくは水性媒体中で、安定化されていないナノ粒子の分散物に有効量の安定化化合物を添加および混合すること、または、有効量の安定化化合物を含有する液状媒体、好ましくは水性媒体中に、ナノ粒子を好ましくは粉末状で分散させることによって達成される。 【0015】 また本発明は、リン酸、ホスホン酸、それらの塩、ホスフィン、酸化ホスフィン、およびホスホニウムより成る群から選択される官能基を少なくとも1つ有する少なくとも1つの安定化化合物でナノ粒子がコートされ、それによって分散液が少なくとも1週間安定である、金属ナノ粒子の安定化された分散液、好ましくは水性分散液に関する。 【0016】 本発明は更に、上記に規定されるような安定化された分散液を含むコーティング組成物、特に光学分野において使用するための耐摩耗性コーティングに関する。 【0017】 更に、本発明は、少なくとも片面に、上記に規定されるようなコーティング組成物を硬化した皮膜を有する、光学レンズなどの基材に関する。 【0018】 本発明の詳細な説明および好ましい実施形態 本発明の金属ナノ粒子は、1マイクロメートル未満、好ましくは5〜500nm、より好ましくは5〜100nm、さらに好ましくは5〜50nmの直径を有する金属粒子である。 好ましい金属粒子は、金属酸化物粒子である。 金属酸化物としては、SnO 2 、Fe 2 O 3 、CeO 2 、ZrO 2 、Al 2 O 3 、Sb 2 O 3およびそれらの混合物が挙げられる。 好ましい金属酸化物は、Fe 2 O 3 、ZrO 2 、およびSnO 2とSb 2 O 3との混合物である。 好ましくは、金属酸化物は高温で酸化することによって調製される。 【0019】 金属ナノ粒子は、好ましくは粉末状である。 一般的に、本発明の安定化された分散液内に存在する金属ナノ粒子の量は、5〜50重量%、好ましくは1〜40重量%の範囲である。 【0020】 金属ナノ粒子が分散される液状媒体は、一般的に金属粒子の分散液の調製に使用される公知のどのような液体または液体の混合物であってもよい。 水、有機溶媒、またはそれらの混合物であればよい。 好ましい有機溶媒は、メタノール、エタノールなどのアルカノールである。 好ましい液状媒体は、水または水とアルカノールとの混合物などの水性媒体である。 【0021】 本発明の安定化化合物は、リン酸、ホスホン酸、それらの塩、ホスフィン、酸化ホスフィン、およびホスホニウムより成る群から選択される官能基を少なくとも1つ有する化合物および化合物の混合物である。 好ましくは、本発明の安定化化合物は、スルホン酸基、カルボン酸基などの付加的な酸基をなにも有していない。 こうした化合物としては、リン酸、ホスホン酸、リン酸およびホスホン酸の塩、リン酸およびホスホン酸の化合物およびそれらの塩、ホスフィンおよびホスフィンの化合物、酸化ホスフィンおよび酸化ホスフィンの化合物、およびホスホニウムの化合物が挙げられる。 【0022】 本発明において使用可能な安定化化合物の例として、以下が挙げられる: 1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン2−(ジフェニルホスフィノ)安息香酸2−(ジフェニルホスフィノ)エチルトリエトキシシラン4−(ジフェニルホスフィノ)安息香酸ジエチルホスファトエチルトリエトキシシランリン酸ジフェニルジフェニルホスフィンオキシドジフェニルホスホン酸メタリン酸ポリリン酸ナトリウムトリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスフィンリン酸トリス(トリメチルシリル) ビニルホスホン酸ビニルトリフェニルホスホニウムブロマイド2−ホスホノアクリル酸トリメチルジエトキシホスフィニルイソシアナートトリフェニルホスフィン【0023】 安定化剤として、重合体の安定化化合物は使用しないことが好ましく、特に、ポリシロキサン化合物は使用しないことが好ましい。 好ましい安定化化合物は、リン酸(H 3 PO 4 )、2−(ジフェニルホスフィノ)安息香酸、ジエチルホスファトエチルトリエトキシシラン、およびそれらの混合物である。 【0024】 安定化化合物の有効量とは、分散液を充分安定化させるために必要な量を意味する。 一般的に、分散液中に存在する安定化化合物の量は、分散液中の金属ナノ粒子の乾燥重量に基づき、2〜30重量%、好ましくは3〜20重量%、より好ましくは5〜15重量%である。 【0025】 既に述べたとおり、本発明の安定化された分散液は2つの異なる方法で調製することができる。 第1の方法においては、ナノ粒子粉末を液状媒体に分散させることによって得られた金属ナノ粒子の安定化されていない分散液を用意し、有効量の安定化化合物を分散液に添加し、混合することによって本発明に係る安定化された金属ナノ粒子の分散液が得られる。 安定化されていない原料分散液は、市販の分散液であってよく、または古典的な方法で調製されてもよい。 【0026】 水性の液状媒体と、安定化化合物である安定化基含有アルコキシシランとを使用する場合には、後者の化合物を単量体の形態で添加することが重要である。 重合がそこでいくらか進行するとしても、ナノ粒子の表面で起こる一次反応は、アルコキシシランの実質的な重縮合の開始を伴わない。 【0027】 第2の方法においては、はじめに、水または有機溶媒などの液状媒体に、適切な量の安定化化合物を少なくとも1つ添加し、混合することによって液状組成物を調製し、次に、金属ナノ粒子を、好ましくは粉末状で該液状組成物に添加し、混合することによって、本発明に係る安定化された金属ナノ粒子の分散液が得られる。 第1の方法が好ましい。 好ましくは、液状組成物は酸性pHである。 【0028】 本発明の方法においては、ポリマーの調製は必要でなく、媒体を、過剰に希釈する必要はない(30重量%の希釈液が使用されてきた)。 また、過剰なカップリング剤も必要ではない(金属酸化物に対する有機物質の重量%は、わずか5〜15重量%である)。 ナノ粒子の処理に使用される安定化化合物の化学的官能性は、種々の有機媒体中での分散が可能となるように調整可能である。 さらに、本発明に係る処理されたナノ粒子の分散液は、長期間安定している(ベンチトップ上で数ヶ月)。 使い方によっては、場合によって、ナノ粒子を安定化化合物でコートした後に、濾過、遠心分離法などにより、大きめのサイズの粒子(直径30nm超)を除去する必要がある。 【0029】 本発明の分散液は、各種媒体中で、特に眼科用レンズなどの光学的および/または眼科用基材をコートするために一般的に使用される各種有機コーティング組成物の形成に使用可能である。 好ましい有機コーティング組成物は、触媒系の存在下、主成分としてエポキシアルコキシシランおよび/またはアルキルアルコキシシランまたはそれらの加水分解物を含有するものである。 【0030】 このようなコーティング組成物の例は、例えば、アルミニウムアセチルアセトナト、またはアルミニウムアセチルアセトナト/カチオン触媒の組合せ、またはイタコン酸/ジシアンジアミドの混合物などの触媒系の存在下に、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、またはジエチルホスファトエチルトリエトキシシランを含むコーティング配合物である。 本発明に係るコーティング配合物でコートされた透明片のヘイズは、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.2%未満である。 透明片は好ましくは光学レンズである。 【0031】 以下の実施例において、分散液の安定性は、分散液を肉眼で規定時間以上観察することによって評価した(分離か否か)。 各種有機媒体中ナノ粒子の分散液は、上記において説明したとおりに分散液の安定性の観察、およびその分散液からコーティングを実施し、その透明性およびヘイズの度合をチェックすることによって評価した。 【0032】 実施例1〜8: Nanoteck Antimony Tin Oxide (R) の使用 ナノフェーズ(Nanophase)社製のコートされていないNanoteck Antimony Tin Oxide(ATOと称する)の30重量%水分散液3gを含むガラス瓶に、xgのH 3 PO 4 1N水溶液、ygの2−(ジフェニルホスフィノ)安息香酸、およびzgのジエチルホスファトエチルトリエトキシシランを添加する。 該溶液を、超音波浴(9.51Lに対し185W)、高剪断力ミキサー、またはマグネチックスターラーを使用して、15分間混合する。 こうしてATOの分散液が使用可能となる。 これらの分散液は、視覚的にチェックしたところ数ヶ月にわたって安定しており、相分離は観察されず、また、粒径分析器(マテック社(MATEC)製CHDF)を使用したところ、粒径分布の変化は観察されなかった。 【0033】 このような分散液を使用し、3.2gの加水分解されたグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(2.6gのグリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび0.6gのHCl 0.1Nを少なくとも30分間攪拌することにより得られる)、6.2gのH 2 O、触媒(0.13gのイタコン酸および0.04gのジシアンジアミド)、および界面活性剤(0.13gのSilwet L7608 (R) )を加えることによって、コーティングの形成が可能である。 最終的な配合物を15分間混合する。 このような配合物を、透明でヘイズのないプラスチック片(ジエチレングリコールジアリルカーボナート製で、中央の厚みが2.5mmのORMA (R)の平面レンズ)に、600rpmで8秒間スピンコートし、その後1200rpm(1分当たりの回転数)で10秒間スピンオフするときに得られるコーティングは透明であり、そのヘイズの度合をヘイズガード(Hazegard)(BYK Gardner Haze Gard Plus)を使用して測定する。 実験条件と得られたヘイズの度合は表(I)に示される通りである: 【0034】 【表1】
【0035】 相分離がわずか24時間後に観察された比較例#1のコーティング配合物に対し、コーティング配合物#1−8は長期間(すなわち数ヶ月)にわたって安定していた。
(1)コートされたATOを調製するための混合器具(2)コートされたプラスチック片のヘイズ%
【0036】
実施例9および10 安定化されたATOの分散液を、表(II)および表(III)に示す安定化化合物および条件を使用する以外は、実施例1−8において示された通りに調製した。
実施例9および比較例2のコーティング配合物は、3gの加水分解されたジエチルホスファトエチルトリエトキシシラン(2.4gのジエチルホスファトエチルトリエトキシシランを添加し、次いで0.6gのHCl 0.1Nを少なくとも30分間攪拌することにより得られる)、5.9gのH
2 O、0.1gのイタコン酸、0.04gのジシアンジアミドおよび界面活性剤Silwet L―7608 (R)を加えることによって形成される。 最終的な配合物は15分間混合される。 このような配合物を使用して、透明でヘイズのないプラスチック片にスピンコート(600rpmで8秒間、その後1200rpmで10秒間スピンオフ)するときに得られるコーティングは透明であり、そのヘイズの度合をヘイズガード(Hazegard)(BYK Gardner Haze Gard Plus)を使用して測定する。 実施例9および比較例2のコーティングのヘイズの度合を、以下の表(II)に示す:
【0037】
【表2】
【0038】
実施例10および比較例3のコーティング配合物は、6gの加水分解された3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(3.5gの3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、0.8gのHCl 0.1Nおよび1.7gのPNP アクロゾル(Acrosol)から得られる)を加えることによって得られる。 次に、5.9gの水と、適切な触媒系(0.1gのIrgacure
(R) 500および0.1gのアルミニウムアセチルアセトナト)および界面活性剤(Silwet L−7608 (R) )が加えられる。 最終的な配合物は15分間混合される。 前述の場合と同様、透明でヘイズのないORMA (R)のプラスチック片がスピンコートされた。 実験条件およびヘイズの度合を、以下の表(III)に示す:
【0039】
【表3】
【0040】
実施例11および比較例4: Nanotek Antimony Tin Oxide (R) の使用:大きめのナノ粒子を除去するための遠心分離法の有効性 実施例11および比較例4の実験は、安定化化合物で処理した後、各ケースにおいてATOの分散液が5重量%に希釈され、15mlのチューブにおいて6000rpmで20分間にわたり遠心力を作用させた他は、それぞれ、処理されたATOを使用する実施例#5、および処理されていないATOを使用する比較例1と同様の方法で行われた。 次に、分散液を再び30重量%まで濃縮した。 このような処理を行い、前述の実施例1−8における記載と同様、コーティング配合物について得られたヘイズの度合を、以下の表IVに示す。
【0041】
【表4】
【0042】
遠心分離処理は、分散液の安定性に対してなんら不利な影響を与えなかった。 何らかの影響が観察されたとすれば、安定期間が長くなったことである。
【0043】
実施例12−比較例5:ジョンソン マッテーイ セラミックス社( Johnson Matthey ceramics Inc. )製長さ50nm、幅10nmの“透明な黄色酸化物”(Fe 2 O 3 )を使用 高剪断力ミキサーを使用して、15gの酸化鉄粉末を、85gのメタノールに分散させた。 その後この溶液を、3000rpmで10分間、遠心分離した。 上澄み液(surnageant)を回収し、9重量%まで濃縮した。 ガラス瓶中、5.9gの該分散液、次にxgのH
3 PO 4 1Nおよびygのジエチルホスファトエチルトリエトキシシランを添加した。 混合物を超音波浴内に15分間置いた。 この分散液は長期間(1ヶ月)安定していたが、処理されていない類似の分散液は安定ではなかった。 次に、ここでは水のかわりにメタノールを加えたこと以外は、前記実施例1−8において記述のとおりこの分散液をコーティング配合物に使用した。 得られた結果は以下の通りであった:
【0044】
【表5】
【0045】
配合物#12は長期間にわたり安定しており、1週間後に相分離は観察されなかった。 比較例5の配合物については、24時間後に相分離が起きた。
【0046】
実施例13−比較例6:江蘇新興ケミカルズグループ社( Jiangsu Xinxing Chemicals Group Corp. )製ジルコニア(ZrO 2 )のナノ粒子を使用 高剪断力ミキサーを使用して、20gの酸化ジルコニウムの粉末を、200gのエタノールに分散させた。 ガラス瓶中に、5.9gの該分散液を入れ、次にxgのH
3 PO 4 1Nおよびygのジエチルホスファトエチルトリエトキシシランを加えた。 混合物を超音波浴内に15分間置いた。 この分散液は長期間(1ヶ月)安定していたが、処理されていない類似の分散液は安定ではなかった。 次に、ここでは溶媒を追加しなかったこと以外は、前記実施例1−8において記述のとおりこの分散液をコーティング配合物に使用した。 得られた結果は以下の通りであった: 【0047】
【表6】
【0048】
この後者の場合において、得られたヘイズ%は、ジルコニアが処理されていてもされていなくとも同等であるが、処理されたジルコニアの分散液(#13)は長期間安定していた。 1週間後に相分離は観察されなかった。 比較例#6の配合物については、24時間後に相分離が起きた。
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