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Composition and solution for forming transparent conductive film and method for forming transparent conductive film

申请号 JP2003146147 申请日 2003-05-23 公开(公告)号 JP2004084064A 公开(公告)日 2004-03-18
申请人 Nichia Chem Ind Ltd; 日亜化学工業株式会社; 发明人 MIYOSHI TAKASHI;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To provide a method with which a transparent conductive film having high transmissivity with a simple applying method is formed, and a composition and solution obtaining the transparent conductive film having high transmissivity in the composition and the solution for forming the transparent conductive film supplied in this method. SOLUTION: (1) This composition for forming the transparent conductive film contains water-soluble indium compound, water-soluble organic tin compound containing halogen and water-soluble organic high molecular compound. (2) The method for forming the transparent conductive film contains a process in which the solution dissolving the (1) composition into solvent of water or composed of the water and organic solvent is applied on a substrate, and a process in which the applied film is baked. The method can further contain a process in which reduction heat treatment is performed to the film obtained with the baking. COPYRIGHT: (C)2004,JPO
权利要求
  • 水溶性インジウム化合物と、ハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物と、水溶性有機高分子化合物とを含む透明導電膜形成用組成物。
  • 前記ハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物は、示差熱分析曲線における第1吸熱ピーク温度が75℃以上である請求項1に記載の透明導電膜形成用組成物。
  • 示差熱分析曲線において、前記水溶性インジウム化合物の第1吸熱ピーク温度と前記ハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物の第1吸熱ピーク温度との差が100℃以下である請求項1又は2に記載の透明導電膜形成用組成物。
  • 請求項1、2又は3に記載の透明導電膜形成用組成物が水からなる溶媒又は水と有機溶媒とからなる溶媒中に溶解している透明導電膜形成用溶液。
  • 全溶媒中の水の比率は10重量%〜100重量%であり、全溶液中の水溶性有機高分子化合物の比率は0.03重量%〜10重量%である請求項4に記載の透明導電膜形成用溶液。
  • 表面張力は20mN/m〜70mN/mであり、かつ、粘度は20mPa・s以下である請求項4又は5に記載の透明導電膜形成用溶液。
  • 1)請求項4、5又は6に記載の溶液を基板上に塗布する工程と、2)塗布膜を焼成する工程とを含む透明導電膜の形成方法。
  • 2)の塗布膜の焼成工程を、空気より酸素分圧の高い雰囲気中で行う請求項7に記載の透明導電膜の形成方法。
  • さらに、3) 2)の焼成工程で得られた膜を還元熱処理する工程を含む請求項7又は8に記載の透明導電膜の形成方法。
  • 说明书全文

    【0001】
    【発明の属する技術分野】
    本発明は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンス(EL)等の表示素子の透明電極、太陽電池の透明電極、自動車、航空機の運転席の窓ガラスや建築物の窓ガラスの防曇・防霜(氷結防止)のための発熱抵抗体、帯電防止膜、電磁波遮蔽膜、赤外線反射膜、選択光線透過膜等として用いられる透明導電膜を形成するための組成物及び溶液並びにこの溶液を用いた透明導電膜の形成方法に関する。
    【0002】
    【従来の技術】
    液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンス(EL)等の表示素子の透明電極、太陽電池の透明電極、自動車、航空機の運転席の窓ガラスや建築物の窓ガラスの防曇・防霜(氷結防止)のための発熱抵抗体、帯電防止膜、電磁波遮蔽膜、赤外線反射膜、選択光線透過膜として、可視光に対して高透過性を有するとともに、導電性を有する材料が使用されている。
    【0003】
    このような透明導電性材料として、酸化スズ・酸化アンチモン系材料(ATO)や酸化インジウム・酸化スズ系材料(ITO)などが知られている。 これらの金属酸化物からなる透明導電膜は、通常ガラス又はセラミックス基板上に形成される。 中でもITO(Indium Tin Oxide)膜は、導電性及び透過率が高い膜として最も広く使用されている。
    【0004】
    透明導電膜の形成方法としては、CVD法(プラズマCVD法、光CVD法)、PVD法(真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法)及び塗布法等が知られている。
    【0005】
    しかし、前述した透明導電膜の製造方法のうち、CVD法及びPVD法は真空設備などの大掛かりな装置を必要とする。 また、真空中又は不活性雰囲気で作業する必要があり、作業雰囲気を制御する分手間がかかる。 このようにCVD法及びPVD法は、作業効率が悪い、コスト高になる、大量生産に適しない等の改善すべき点がある。
    【0006】
    一方、塗布法は、大規模な装置を必要とせず、簡単かつ大量に成膜を行えるが、使用する膜材料によっては以下の様な難点がある。
    【0007】
    例えばオクチル酸インジウム等のイオン結合性の強い有機酸インジウムを用いる場合には、有機酸インジウムは加分解し易く、また比較的容易に化学変化するために、塗布液の調製又は塗布中にゲル化が生じる。 塗布液がゲル化すると得られる膜の均一性が低下して、導電性及び透過率が低下する。
    【0008】
    また金属アルコキシドを主成分とする塗布液を塗布した後、ゾル−ゲル法によりITO膜を形成する方法では、通常インジウム及びスズの各メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド等の金属アルコキシドに、必要に応じて安定化のための添加剤等を加えた金属アルコキシド溶液を塗布液として使用する。 しかし、金属アルコキシドは加水分解し易いために、金属アルコキシドの合成及びその後の取り扱いを不活性雰囲気下で行わなければならず、このため作業性が悪い。 また、基板上に金属アルコキシド溶液を塗布した後長時間放置する場合や、作業雰囲気の湿度が高い場合には、金属アルコキシドが加水分解し易いために膜の均一化が阻害され、その結果低抵抗の導電膜が得られ難い。
    【0009】
    また、非特許文献1には、硝酸インジウム三水和物、無水塩化第二スズ、ポリビニルアルコール及び水を用いてゾル・ゲル法でITO膜を形成した例が記載されている。 この方法によれば、インジウム及びスズを含むコロイド粒子を析出した後、遠心分離によりこの粒子を分離し、さらにこの粒子を塩化インジウム水溶液あるいは塩酸水溶液中に超音波分散させることによりゾルを形成する。 次いで、成膜助剤としてポリビニルアルコールを添加して基板上に塗布し、塗布膜を乾燥させることによりゲル膜とし、さらに550℃で焼成してITO膜を得る。
    【0010】
    しかし、この方法は、コロイド粒子の析出、遠心分離、超音波分散、乾燥及び焼成という複雑な工程を必要とする。
    【0011】
    また、特許文献1は、塩化インジウムと塩化第一スズ又は塩化第二スズとを水、アルコール又は水−アルコール混合液に溶解させた溶液に界面活性剤を添加することにより塗布基板とのなじみが改善されたITO透明導電膜形成用塗布液を提供し、これを用いてディップコーティング法により1回のコーティングで膜厚が15nm以下である薄膜を形成することにより、膜内への未反応残存物の残存を抑制し、膜質の向上を図る手法を開示している。
    【0012】
    しかしながら、水を使用した塗布液は非常に表面張が高いため、前記界面活性剤による塗布液と基板との濡れ性向上の効果は期待できない。 特に1回のコーティングにより上記の如く非常に薄い膜を形成したのでは得られる膜に部分的にピンホールが形成されるなど破損部分が多く生じやすいと考えられる。 また、このような破損部分を補正するために膜を積層し多層膜を形成することにより導電率は向上するが、作業効率が悪く量産性が低い。 また、前記塗布液を利用し1回のコーティングにて得られた膜は、薄膜であるにも拘わらず非常に透過率が低い。 このような薄膜が積層されてなる多層膜は、各層の界面にて光が閉じ込められるためさらに透過率が低下する傾向にある。 従って、特許文献1に記載された塗布液および形成方法により良好な導電率と高光透過率とを共に備えるITO膜を得ることは困難である。
    【0013】
    また、アルキルインジウムやアルキルスズを用いる方法も知られている(特許文献2)。 しかし、アルキル金属化合物は一般に非常に不安定であり、例えばトリエチルインジウムのように空気中で室温下に発火する化合物もある。
    【0014】
    また、インジウムやスズの有機錯体を使用する方法も提案されているが、これらの有機錯体を塗布溶液とするためには、有機溶媒を高比率で使用する必要がある。 従って、この塗布溶液は、労働衛生、防火および地球環境の観点から好ましくない。
    【0015】
    さらに、透明導電膜を表示デバイスの透明電極として使用する場合は、透明電極のパターニングが必要である。 このパターニングは、一般に感光性レジストを用いたフォトリゾグラフィー(回路パターニング)、エッチング、レジスト剥離等の複雑な工程からなる方法により行われている。 一方、基板上に直接回路パターンを形成する簡便な方法としてインクジェット塗布法がある。 しかし、この方法では、有機溶媒との接触で侵されてしまうインクカートリッジその他の部材を備える市販のインクジェット塗布装置を使用することができない。
    【0016】
    【特許文献1】
    特開2002−175733号公報【0017】
    【特許文献2】
    特開平6−175144号公報【0018】
    【非特許文献1】
    Journal of the Ceramic Society of Japan 102[2]200−205(1994)
    【0019】
    【発明が解決しようとする課題】
    本発明は、簡単な塗布法により高透過率を有する透明導電膜を形成できる方法、並びに、この方法に供する透明導電膜形成用組成物及び透明導電膜形成用溶液であって高透過率を有する透明導電膜が得られる組成物及び溶液を提供することを第1の課題とする。
    【0020】
    また本発明は、簡単な塗布法により低抵抗かつ高透過率を有する透明導電膜を形成できる方法、並びに、この方法に供する透明導電膜形成用組成物及び透明導電膜形成用溶液であって低抵抗かつ高透過率を有する透明導電膜が得られる組成物及び溶液を提供することを第2の課題とする。
    【0021】
    【課題を解決するための手段】
    上記課題を解決するために本発明者は鋭意研究を重ね、以下の知見を得た。
    ▲1▼ 水溶性インジウム化合物、水溶性有機スズ化合物及び水溶性有機高分子化合物を水からなる溶媒又は水と有機溶媒とからなる溶媒に均一に溶解させた溶液を基板上に塗布し、塗布液を焼成することにより、簡単に、均一なITO膜が得られる。 このITO膜は均一であるために、高透過率を有する。 ここで均一な膜とは、膜全体における膜の厚み及び膜全体における各含有元素の分布が一様である状態を示す。
    ▲2▼ 一般に、水を含む溶媒に膜構成物質を溶解させた溶液からなる塗布液を使用する場合には、塗布液の表面張力が大きいために基板上に塗布液を均一に塗布することが困難であるが、透明導電膜形成用組成物が水溶性有機高分子化合物を含むことにより、基板への成膜性が改善されて基板上に均一な塗布膜を形成することができる。
    ▲3▼ また、組成物中のハロゲン及び炭素の含有量を調整することより、膜の均一性を損なうことなくITO膜の導電率を使用用途に対応させて所望する任意の値に調整することができる。
    ▲4▼ 特に、本願発明の組成物において、原料材料である水溶性インジウム化合物とハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物との間の、示差熱分析により得られる第1吸熱ピーク温度の差が100℃以下であると、インジウム化合物の分解開始温度とスズ化合物の分解開始温度とが近似し、ひいては、インジウムイオンの酸化反応開始温度とスズイオンの酸化反応開始温度と炭素および/またはハロゲンの膜への含有開始温度とが近似しているために、得られる膜においてこれらの元素がほぼ均一に配合されると考えられる。 その結果、一層均一で高透過率のITO膜が得られる。
    ▲5▼ 前述した塗布膜の焼成を空気より酸素分圧の高い雰囲気中で行うことにより、得られる膜の導電性が向上し、低抵抗かつ高透過率のITO膜が得られる。
    ▲6▼ 塗布膜の焼成工程の後に還元熱処理工程を行うことにより、得られる膜の導電性が一層向上し、一層低抵抗かつ高透過率のITO膜が得られる。
    【0022】
    本発明は前記知見に基づき完成されたものであり、以下の透明導電膜形成用組成物、透明導電膜形成用溶液、透明導電膜の形成方法及び透明導電膜を提供する。
    【0023】
    項1. 水溶性インジウム化合物と、ハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物と、水溶性有機高分子化合物とを含む透明導電膜形成用組成物。
    【0024】
    項1の組成物を、水又は水と有機溶媒とからなる溶媒に溶解させることにより得られる溶液は、基板上への塗布及び焼成という簡単な工程からなる塗布法により、高透過率のITO膜が得られる。
    【0025】
    この組成物は、組成物を構成する各物質が水溶性物質であるため、水又は水と有機溶媒とからなる溶媒に均一に溶解させることができ、得られる均一溶液を塗布液として用いることが、高透過率のITO膜が得られる一因となっている。
    この組成物は、水溶性有機高分子化合物を含むために、水を含む溶媒を用いて塗布液を調製しても、基板上に均一に塗布膜を形成できる。 このことも高透過率のITO膜が得られる一因となっている。
    【0026】
    また、本願発明の組成物により得られるITO膜は、ハロゲン及び炭素が均一に配合する傾向にある。 本来、ハロゲンや炭素が残存するITO膜は単に不良なものと考えられている。 しかしながら、本願発明の組成物を用いることにより、得られるITO膜においてこれらの元素を膜全体に均一に配合させることができるため、これらの含有量を調整して形成することより、膜の均一性を損なうことなくITO膜の導電率を所望とする任意の値に調整することができる。 これらの合計量の比率を高くするほど、高導電率の膜が得られる。
    さらに、この組成物は、水溶性物質からなるため、塗布液調製のための溶媒として水を用いることができ、労働衛生、防火及び環境保護の点で好ましい。 また、有機溶媒により浸食又は変質するような部品を有する装置を用いて成膜を行うこともできる。
    【0027】
    項2. ハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物は、示差熱分析曲線における第1吸熱ピーク温度が75℃以上である項1に記載の透明導電膜形成用組成物。
    【0028】
    項2の組成物において項2のハロゲンを含む水溶性有機スズの示差熱分析曲線における第一吸熱ピーク温度は、組成物にて得られる膜の均一性を考慮すると75℃〜600℃であることが好ましい。 前記第一吸熱ピーク温度が600℃より高いと、膜中へ炭素および/またはハロゲンを調整することが困難となる。 また、75℃よりも低いと、膜中のIn、O、およびSnとの均一性が損なわれてしまう。
    【0029】
    項3. 示差熱分析曲線において、前記水溶性インジウム化合物の第1吸熱ピーク温度とハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物の第1吸熱ピーク温度との差が100℃以下である項1又は項2に記載の透明導電膜形成用組成物。
    【0030】
    項2及び項3の組成物は、インジウム化合物の分解開始温度とスズ化合物との分解開始温度が近似し、インジウムイオンの酸化開始温度とスズイオンの酸化開始温度と炭素および/またはハロゲンの含有開始温度とが近似している。 これにより焼成時に酸化反応および膜内部への炭素および/またはハロゲンの含有が均一に起こり、導電率のバラツキがない又は極めて少ない一層均一なITO膜が得られる。
    【0031】
    項4. 項1、項2または項3に記載の透明導電膜形成用組成物が水からなる溶媒又は水と有機溶媒とからなる溶媒中に溶解している透明導電膜形成用溶液。
    【0032】
    項4の溶液によると、項1、項2又は項3の組成物と同様の効果が得られる。
    【0033】
    項5. 全溶媒中の水の比率は10重量%〜100重量%であり、全溶液中の水溶性有機高分子化合物の比率は0.03重量%〜10重量%である項4に記載の透明導電膜形成用溶液。
    【0034】
    項5の溶液によると、溶媒として必ずしも有機溶媒を使用しなくても良く、水又は水を主成分とする溶媒に各膜構成元素を溶解させて塗布液を調製することが出来る。 このことは、労働衛生、防火及び地球環境の点で好ましい。 また水溶性有機高分子化合物を含むために、水を含む溶媒を用いて塗布液を調製しても、基板上に均一に塗布膜を形成できる。 このことは高透過率のITO膜が得られる一因となっている。 さらに有機溶媒を添加することによって塗布液の表面張力を低下させることができ、塗布膜の形成をより容易にする。 そのため、添加する水溶性有機高分子化合物の添加量を低減することが可能となる。 この相乗効果によって、焼成後に得られる膜がより緻密となり、一層均一なITO膜が得られる。
    【0035】
    項6. 表面張力が20〜70mN/mであり、かつ、粘度が20mPa・s以下である項4または項5に記載の透明導電膜形成用溶液。
    【0036】
    項6の溶液は、インクジェット方式で容易に塗布することができ量産性高く複雑なパターンのITO膜を形成することができる。 また、有機溶媒成分の含有量を制御しているため、有機溶媒成分にて腐食する可能性のあるインクジェット装置等にも適用可能である。
    【0037】
    項7. 1) 項4、5又は6に記載の溶液を基板上に塗布する工程と、2)塗布膜を焼成する工程とを含む透明導電膜の形成方法。
    【0038】
    項7の方法によると、塗布及び焼成という簡単な工程により、高透過率を有するITO膜が得られる。
    【0039】
    項8. 2)の塗布膜の焼成工程を、空気より酸素分圧の高い雰囲気中で行う項7に記載の透明導電膜の形成方法。
    【0040】
    項8の方法によると、低抵抗かつ高透過率のITO膜が得られる。
    【0041】
    項9. さらに、3) 2)の焼成工程で得られた膜を還元熱処理する工程を含む項7又は項8に記載の透明導電膜の形成方法。
    【0042】
    項9の方法によると、還元熱処理工程を経ることにより、膜中に自由電子が発生して導電性が向上し、一層導電性の高い即ち一層低抵抗な膜が得られる。
    【0043】
    項10. インジウム、スズ、酸素、炭素及びハロゲンを含み、これらの元素が均一に分布している透明導電膜。
    【0044】
    項11. 均一が、膜の表面及び断面を電子線マイクロアナライザにより観察した場合に各元素の濃度分布が一様の状態である項10に記載の透明導電膜。
    【0045】
    項10及び項11の透明導電膜は、各構成元素が均一に存在しているため高透過率の膜となる。
    【0046】
    項12. 膜の厚みバラツキは、膜厚測定値から0.2%以内であり、前記膜厚測定値が0.01μm〜0.4μmでありかつ波長420nm〜820nmの光の平均透過率が90%〜98%である項10又は項11に記載の透明導電膜。
    【0047】
    項13. 前記膜厚の測定値が0.01μm〜0.15μmのとき波長420nm〜820nmの光の平均透過率は92%〜98%であり、前記膜厚の測定値が0.15μm〜0.25μmのとき前記光の平均過率は90%〜97%であり、前記膜厚の測定値が0.25μm〜0.4μmのときに前記光の平均透過率は90%〜96%である項10又は項11に記載の透明導電膜。
    【0048】
    項14. 表面抵抗値が10 〜10 Ω/□である項10〜項13のいずれかに記載の透明導電膜。
    【0049】
    項15. インジウム、スズ、酸素、炭素及びハロゲンを含み、膜厚の測定値が0.01μm〜0.4μmの場合に波長420nm〜820nmの光の平均透過率が90%〜98%である透明導電膜。
    【0050】
    項16. 表面抵抗値が10 〜10 Ω/□である項15に記載の透明導電膜。
    【0051】
    項17. インジウム、スズ、酸素、炭素及びハロゲンを含み、前記膜厚の測定値が0.01μm〜0.15μmのとき波長420nm〜820nmの光の平均透過率は92%〜98%であり、前記膜厚の測定値が0.15μm〜0.25μmのとき前記光の平均過率は90%〜97%であり、前記膜厚の測定値が0.25μm〜0.4μmのときに前記光の平均透過率は90%〜96%である透明導電膜。
    【0052】
    項18. 表面抵抗値が10 〜10 Ω/□である項17に記載の透明導電膜。
    【0053】
    【発明の実施の形態】
    以下、本発明を詳細に説明する。
    (I)透明導電膜形成用組成物
    本発明の透明導電膜形成用組成物は、水溶性インジウム化合物、ハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物及び水溶性有機高分子化合物を含む組成物である。
    水溶性インジウム化合物
    水溶性インジウム化合物としては、水に溶解性を有するインジウム化合物であればよく、公知の水溶性インジウム化合物を制限なく使用できる。 このような水溶性インジウム化合物として、例えば塩化インジウム、臭化インジウム、ヨウ化インジウム、硝酸インジウム、過塩素酸インジウム及び硫酸インジウム等が挙げられる。 水溶性インジウム化合物は、結晶水を有するものであっても構わない。 水溶性インジウム化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
    【0054】
    中でも、塩化インジウム、硝酸インジウム、過塩素酸インジウム又は硫酸インジウム等が好ましく、塩化インジウム又は硝酸インジウムがより好ましい。
    ハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物
    ハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物としては、それには限定されないが、例えば、下記の一般式(1)で表される化合物を用いることができる。
    【0055】
    SnX 4−n (1)
    (式中、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示し、Xはハロゲンを示し、nは1〜3の整数を示す)
    一般式(1)で表される化合物において、炭素数1〜3のアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基が挙げられる。 特に、Rはメチル基又はエチル基であることが好ましい。 また、ハロゲンとしてはフッ素、塩素、臭素又はヨウ素が挙げられる。 特に、塩素が好ましい。 nは好ましくは2である。
    【0056】
    ハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物は単独で又は2種以上混合して使用できる。
    水溶性インジウム化合物とハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物との好ましい組み合わせ
    水溶性インジウム化合物とハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物とは、水溶性インジウム化合物の示差熱分析曲線における第1吸熱ピーク温度とハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物の示差熱分析曲線における第1吸熱ピーク温度との差が100℃以下、特に80℃以下、さらに特に60℃以下であるような組み合わせで用いることが好ましい。 両者の吸熱ピーク温度差は小さいほど好ましい。
    【0057】
    水溶性インジウム化合物及び/又はハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物を複数種用いる場合は、それぞれの原料における吸熱量が最も大きいピーク温度を第1吸熱ピークとする。 また、吸熱量が同量である吸熱ピークが複数存在する場合、低温側の温度を第1吸熱ピークとする。 このように定めた各原料化合物の第1吸熱ピーク温度差が前記範囲内であることが好ましい。
    【0058】
    本明細書において、示差熱分析曲線とは、空気雰囲気中にて被験物質を一定昇温速度にて加熱した際に得られる示差熱分析値をプロットした曲線である。 また示差熱分析曲線における第1吸熱ピーク温度とは、該曲線において被験物質の吸熱分解時に検出される複数の吸熱温度ピークのうち、吸熱量が最大となる温度をいい、実施例の項目に記載の示差熱分析方法(JIS No: K0129−94)により得られる値である。
    【0059】
    第1吸熱ピーク温度差が余りに大きい場合は、インジウムイオンとスズイオンとの酸化反応効率の差が大きくなり、In−O−Snの生成反応が均一に進行し難く、膜中に高抵抗領域が形成されて不均一なITO膜となる場合がある。 これは、インジウム化合物とスズ化合物との熱分解温度差が余りに大きいと、焼成時に、膜中に酸化スズがある程度形成された後にインジウムイオンが供給されて酸化スズの周囲にITO層が形成され易く、抵抗率および透過率が膜全体において不均一となり易いためである。
    【0060】
    例えば、インジウム化合物として塩化インジウム三水和物(第1吸熱ピーク温度:約185℃)を用い、スズ化合物として塩化第一スズ二水和物(第1吸熱ピーク温度:約48℃)又は塩化第二スズ五水和物(第1吸熱ピーク温度:約60℃)を用いる場合は、抵抗率が不均一な膜になり易い。
    【0061】
    これに対して本願発明では、水溶性スズ原料化合物としてハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物を使用しており、この水溶性スズ原料化合物として第1吸熱ピーク温度が比較的高いハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物を選択し、高温にて熱分解を開始する水溶性インジウム化合物との間の熱分解温度及び熱分解効率を近接させることにより、インジウムイオンの酸化反応とスズイオンの酸化反応と炭素および/またはハロゲンの取り込み反応との開始温度及びその効率が近接する。 その結果、この組成物を基板上に塗布し焼成すると、In−O−Sn結合が膜全体にわたり均一に生成し、かつ炭素および/またはハロゲンを均一に含有し、その結果、抵抗値のバラツキが小さく膜全体が一層低抵抗でかつ一層優れた透過率を有するITO膜が得られる。 例えば、ペン入力されるタッチパネルに用いられる導電膜は位置精度が高いこと即ち位置間での抵抗値の均一性が高いことが求められる。 上記吸熱ピーク温度差を有する組成物を用いて形成された導電膜は、例えばペン入力用タッチパネルの導電膜にも好適に使用することができる。
    【0062】
    このような吸熱ピーク温度差を得るためには、ハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物として、第1吸熱ピーク温度が75〜600℃程度、特に90〜550℃程度、さらに特に100〜500℃程度のものを用いることが好ましい。 吸熱ピーク温度が100〜500℃程度のハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物としては、二塩化ジメチルスズ等が挙げられる。
    【0063】
    特に、吸熱ピーク温度差が80℃以下となる二塩化ジメチルスズ(約108℃)と塩化インジウム三水和物(約185℃)との組み合わせが好ましく、さらには60℃未満となるとなる二塩化ジメチルスズ(約108℃)と硝酸インジウム三水和物(約162℃)との組み合わせが好ましい。
    【0064】
    なお、吸熱ピーク温度差が100℃を超える組み合わせとしては、塩化第一スズ二水和物(吸熱ピーク温度:約48℃)と塩化インジウム三水和物(吸熱ピーク温度:約185℃)との組み合わせ(温度差:約137℃)、塩化第一スズ二水和物(吸熱ピーク温度:約48℃)と硝酸インジウム三水和物(吸熱ピーク温度:約162℃)との組み合わせ(温度差:約114℃)、塩化第二スズ五水和物(吸熱ピーク温度:約60℃)と塩化インジウム三水和物(吸熱ピーク温度:約185℃)との組み合わせ(温度差:約125℃)、塩化第二スズ五水和物(吸熱ピーク温度:約60℃)と硝酸インジウム三水和物(吸熱ピーク温度:約162℃)との組み合わせ(温度差:約102℃)などが挙げられる。 これらの組み合わせにおけるスズ原料化合物は、ハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物とは異なり、インジウム化合物と比較して非常に低温で効率高く分解が生じるため、膜内における各元素の配合が不均一になり、膜を薄く形成する場合にもその透過率が低いと考えられる。
    水溶性有機高分子化合物
    本発明の組成物は有機高分子化合物を含むことにより、水を用いて塗布液を調製する場合でも基板上に均一に塗布膜を形成することができる。 その結果、高透過率のITO膜が得られる。
    【0065】
    水溶性有機高分子化合物としては、それ自体公知のものを特に制限なく使用できる。 水溶性有機高分子化合物は、常温で液体状のもの及び常温で固体状のもののいずれであってもよい。 また、常温で水に溶解するもの及び加熱により水に溶解するもののいずれであってもよい。
    【0066】
    特に、水溶性インジウム化合物およびハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物との接触により不溶物を析出させないものが特に好ましい。 このような水溶性有機高分子化合物として、例えば、ポリアクリルアミドのようなポリアクリル酸類;ポリメタクリルアミドのようなポリメタクリル酸類;ポリメトキシエチレン、ポリエトキシエチレン、ポリプロポキシエチレン、ポリ2−メトキシエトキシエチレンのようなポリビニルエーテル類;ポリビニルアルコールのようなポリビニルアルコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールメチルエーテル、ポリエチレングリコールエチルエーテルのようなポリオキシド類;メチルセルロースのようなセルロース類;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアセトアミド等が挙げられる。 水溶性有機高分子化合物は単独で又は2種以上混合して使用できる。
    【0067】
    これらの中では、ポリビニルアルコール類、ポリオキシド類又はポリビニルピロリドンが好ましい。 特に、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール又はポリビニルピロリドンが好ましい。
    【0068】
    これらの水溶性有機高分子化合物の重量平均分子量は、それには限定されないが、通常1,000〜5,000,000程度、特に10,000〜4,000,000程度、さらに特に20,000〜1,000,000程度であることが好ましい。 分子量が余りに小さいと基板への成膜性が著しく低下するため均一な塗布膜が得られず、分子量が余りに大きいと水溶性有機高分子化合物の溶解性が低下するため、均一な溶液を得ることが困難となる。 上記の範囲であれば、このような問題は生じず、水を含む溶媒を用いて溶液を調製する場合にも、溶液とそれが塗布される基板との間の成膜性を十分に向上させることができ、基板上に極めて均一な塗布膜を形成することができる。
    【0069】
    添加剤
    本発明の組成物には、透明導電膜用組成物に通常含まれる添加剤が含まれていてよい。 添加剤は水溶性のもの及び水に対する溶解性が比較的低いもののいずれであってもよい。 水に溶解し難い添加剤を使用する場合には、溶媒中に適当な有機溶媒を添加することにより当該添加剤を溶解させればよい。
    【0070】
    例えば、この組成物の熱分解性を向上させ、それにより後述する本発明の方法により形成される透明導電膜に高透過率を与えるために、熱分解触媒が含まれていてよい。
    【0071】
    熱分解触媒としては、それ自体公知の化合物を使用できる。 このような触媒として例えば過酸化物又はニトロ化物等が挙げられる。 特に、熱分解により膜中に当該触媒に由来する炭素が残留するのを回避するために炭素数が比較的少ない触媒を使用するのが好ましい。 このような熱分解触媒として、過酸化水素、トリニトロトルエン又はピクリン酸が挙げられる。
    【0072】
    その他、本発明の組成物には、透明導電膜形成用組成物に通常添加される界面活性剤(例えばアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム)等の添加剤が含まれていてよい。 本発明の組成物が界面活性剤を含むことにより基板への濡れ性が改善されて基板上に一層均一に塗布膜を形成することができ、その結果得られるITO膜の導電性が向上するとともに透過率が一層向上する。
    【0073】
    含有比率
    本発明の組成物において、水溶性インジウム化合物及びハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物からなる金属化合物の含有量は、組成物の全体量に対して20〜99重量%程度、特に50〜98重量%程度、さらに特に70〜97重量%程度とすることが好ましい。 これらの金属化合物の含有量が余りに少ないと、非常に薄い、ピンホールなどの欠陥を有するITO膜しか得られず、膜の均一性が劣る。 逆に、これらの金属化合物の含有量が余りに多いと、塗布膜を均一に形成することが困難になり、また塗布膜の焼成後に膜に亀裂が発生し易い。 上記の範囲であればこのような問題は生じない。
    【0074】
    水溶性インジウム化合物とハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物との割合は、モル比で、198:1〜2:49程度、特に98:1〜8:1程度とするのが好ましい。 水溶性インジウム化合物とハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物との割合をこの範囲内で調整し、最終的に得られるITO膜において酸化インジウム(In ):酸化スズ(SnO )のモル比が、99:1〜2:98程度、好ましくは98:2〜8:2程度、より好ましくは9:1程度となる場合に、高透過率かつ導電性の優れた透明導電膜が得られる。 スズに対してインジウムの含有量が余りに多い場合又は余りに少ない場合はITO膜の抵抗値が増加する。 上記の範囲であれば十分に低抵抗なITO膜が得られる。
    【0075】
    水溶性有機高分子化合物の含有量は、組成物の全体量に対して1〜80重量%程度、特に1〜65重量%程度、さらに特に1〜30重量%程度とすることが好ましい。 水溶性有機高分子化合物の含有量が余りに多いと、塗布膜の焼成時に亀裂が発生し易く均一な膜が得られず、また焼成後の膜内にこの高分子化合物由来の炭素が残存し易いために得られるITO膜の導電性が低下する。 水溶性有機高分子化合物の含有量が余りに少ないと基板上に塗布膜を均一に形成することができない。 上記の範囲であればこのような問題は生じず、均一で導電率の高い膜が得られる。
    【0076】
    熱分解触媒等の添加剤は、得られる膜の透過率を低下させず、導電性を阻害しない範囲で添加することができる。
    【0077】
    本発明の組成物においては、炭素とハロゲンとの合計含有比率を調整することにより、膜の均一性を損なうことなく得られる透明導電膜の導電率を簡単に調整することができる。 組成物中の炭素とハロゲンとの合計含有比率が高いほど、導電率の高い膜が得られる。 従来、成膜温度やインジウム原料とスズ原料との比率を調整することにより膜の導電率を微調整しているが、本発明の組成物を用いることより、透明導電膜の導電率を広範囲(例えば10 〜10 Ω/□程度の範囲)に調整することができる。 これにより、透明電極、電磁遮蔽膜、静電気障害防止膜、帯電防止膜等の広い用途に適用できる透明導電膜が得られる。
    (II)透明導電膜形成用溶液
    本発明の透明導電膜形成用溶液は、水溶性インジウム化合物と、ハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物と、水溶性有機高分子化合物とが、水からなる溶媒又は水と有機溶媒とからなる溶媒中に溶解している溶液である。 すなわち、本発明の透明導電膜形成用溶液は、本発明の組成物が、水からなる溶媒又は水と有機溶媒とからなる溶媒中に溶解している溶液である。
    【0078】
    本発明の溶液において、水溶性インジウム化合物、ハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物、水溶性有機高分子化合物及びその他の添加剤は、全て溶媒に溶解しており、均一な溶液となっている。
    【0079】
    本発明の溶液は、各物質が溶媒に均一に溶解しているため、後述する本発明の方法(塗布工程及び焼成工程からなる)に供することにより均一な塗布膜を形成でき、その結果、高透過率のITO膜が得られる。 すなわち、本発明の溶液は、後述する本発明の透明導電膜形成方法に供する塗布液として好適に使用できる。 溶媒
    溶媒としては、水又は水と有機溶媒との混合溶媒を用いる。 本発明では、膜構成物質及び添加剤として水溶性の物質を用いるため、溶媒として必ずしも有機溶媒を使用しなくてもよく、水又は水を主成分とする溶媒に各膜構成物質を溶解させて塗布液を調製することができる。 このことは、労働衛生、防火及び地球環境の点で好ましい。 また、フィルム状のITO膜を一旦形成した後にフォトリソグラフィー等により回路パターンを形成する方法に較べて、インクジェット法により直接ITO膜からなる回路パターンを形成する方が簡便であるところ、市販のインクジェット装置は有機溶媒により浸食・変質する材料からなる部品が使用されている。 本発明では、有機溶媒の使用量を抑えることができるため、市販のインクジェット装置を用いて簡便に回路パターンを形成できる。
    【0080】
    本発明の組成物に含まれる各物質の種類、基板の材料及び塗布方法等の組み合わせによっても異なるが、溶媒として水のみを用いて塗布液を調製すると、塗布液の表面張力が大きく基板上に塗布膜を均一に形成できない場合もある。 このような場合に、溶媒に有機溶媒を添加すればよい。
    【0081】
    組成物に含まれる各物質の種類、基板の材料、塗布方法及び組成物と溶媒との比率等によっても異なるが、全溶媒に対する水の割合を10〜100重量%程度、特に30〜100重量%程度、さらに特に50〜100重量%程度とするのが好ましい。 有機溶媒の量が余りに多いと成膜に供する装置、器具等の材質が有機溶媒に耐えるものに制限されるが、上記範囲であれば装置、器具の材質の制限が少ない。 また、有機溶媒が含まれる場合は、有機溶媒と水溶性有機高分子化合物との相乗効果により、さらに塗布基板との濡れ性が良好な塗布溶液が得られる。 但し、全溶媒に占める水の割合はこの範囲には限定されず、有機溶媒の水に対する溶解度も考慮して適宜定めればよい。
    【0082】
    有機溶媒としては、水と相溶する溶媒を使用できる。 すなわち、本発明の透明導電膜形成用溶液は、水と有機溶媒とからなる溶媒を用いる場合でも、本発明の組成物に含まれる各物質が、水と有機溶媒とからなる均一溶媒に溶解して溶液全体として均一になっている。
    【0083】
    具体的には、有機溶媒としては、20℃における水に対する溶解度が1重量%以上の有機溶媒であれば、水との混合量を上記範囲内にて調整することにより均一溶媒を得ることができる。
    【0084】
    このような溶解性を有する有機溶媒の種類は特に限定されず、例えばアルコール、カルボン酸、エステル、ケトン、エーテル、アミド化合物、窒素化合物等のそれ自体公知の有機溶媒から選択して使用できる。
    【0085】
    このようなアルコール系溶媒としては、メタノール、エタノ−ル、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール(以上、20℃における水に対する溶解度が無限大である溶媒即ち水と無限に相溶する溶媒)、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、(以上、20℃における水に対する溶解度が約10重量%の溶媒)のようなアルカノール類;シクロヘキサノール(20℃における水に対する溶解度が約4重量%の溶媒)のようなシクロアルカノール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(以上、20℃における水に対する溶解度が無限大である溶媒)のようなアルキレングリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(20℃における水に対する溶解度が無限大である溶媒)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(20℃における水に対する溶解度が約23重量%である溶媒)のようなアルキレングリコールアセテート類などが挙げられる。
    【0086】
    このようなカルボン酸系溶媒としては、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、α−メチル酪酸、i−吉草酸などが挙げられる。
    【0087】
    このようなエステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n−ブチルなどが挙げられる。
    【0088】
    このようなケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
    【0089】
    このようなエーテル系溶媒としては、ジエチルエーテルのような鎖式エーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサンのような環式エーテルが挙げられる。
    【0090】
    このようなアミド化合物系溶媒としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミドなどが挙げられる。
    【0091】
    このような窒素化合物系溶媒としてはN−メチルピロリドンなどが挙げられる。
    【0092】
    溶媒は1種を単独で又は2種以上を混合して使用できる。
    【0093】
    有機溶媒としては特にアルコール系溶媒が好ましい。 中でも、20℃における水に対する溶解度が約10重量%以上の溶媒が好ましく、より好ましくは約20重量%以上、さらには前記溶解度が無限大であることが最も好ましい。 このようなアルコール系有機溶媒としては、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
    【0094】
    また、本願発明の組成物の必須構成物質である水溶性有機高分子化合物は、有機溶媒の種類にもよるが、有機溶媒への溶解性は低い。 また有機溶媒は、水にて一度溶解した水溶性物質を再度析出する作用を有しているため、溶液の均一性を損なう恐れがある。
    【0095】
    したがって、本願発明の組成物を溶解させる溶媒は、塗布溶液の均一性を保つため、前記有機溶媒の溶解度に関係なく、全溶媒中における水の含有量は10〜100重量%程度であり、かつ、溶液中の水溶性有機高分子化合物の含有量は0.03〜10重量%程度であることが好ましい。 また、全溶媒中における水の含有量は30〜100重量%程度であり、かつ、溶液中の水溶性有機高分子化合物の含有量は0.07〜10重量%程度であることがより好ましい。 全溶媒中における水の含有量は50〜100重量%程度であり、溶液中の水溶性有機高分子化合物の含有量は0.1〜10重量%程度であることがさらにより好ましい。
    【0096】
    溶媒(水又は水と有機溶媒とからなる溶媒)の含有量は、塗布方法によっても異なるが、溶液の全体量に対して例えば5〜99重量%程度、好ましくは40〜98重量%程度とすることができる。 塗布方法によっても異なるが、この範囲内で塗布液が塗布し易い粘度になるように溶媒量を適宜選択すればよい。
    好ましい溶液特性
    本発明の透明導電膜形成用溶液は、表面張力が20mN/m〜70mN/m程度であることが好ましく、さらに粘度が20mPa・s以下であることが好ましい。 また、これらの特性を共に有することが好ましく、表面張力が20mN/m〜50mN/m程度であり、かつ、粘度が17mPa・s以下であることがより好ましく、表面張力が20mN/m〜40mN/m程度であり、かつ、粘度が15mPa・s以下であることがさらにより好ましい。
    【0097】
    本発明において、溶液の粘度及び表面張力は実施例の項目に記載の方法により測定した値である。
    【0098】
    溶媒の構成種類及びその配分量、水溶性有機高分子化合物の種類及びその量、並びに、水溶性インジウム化合物及びハロゲンを含む水溶性有機化合物の量を調整することにより、上記粘度及び表面張力を有する溶液を調製することができる。
    【0099】
    このように調整された溶液はインクジェット方式により容易に塗布することができるため、マスクを使用することなく複雑な形状(パターン)のITO膜を量産性良く形成することができる。
    【0100】
    ガラス基板のような透光性基板上に本発明の透明導電膜形成用溶液をインクジェットにより塗布し焼成することにより透明導電膜を形成し、その上に発光層を含む素子構造を積層して得られる発光素子は、他の手法により形成したITO膜を使用した発光素子より均一な光が得られる。 これは、インクジェット方式によりパターン化されたITO膜はマスクを使用していないためパターンの周縁部が全体的に滑らかな曲面となっており、すなわちパターンである凸部の周縁部が滑らかな曲面で形成されているところ、この曲面が発光層に向かって配置されていることによると考えられる。
    【0101】
    上記の表面張力及び粘度を有する溶液をインクジェット方式で塗布して得られるITO膜は、発光層が複数の層から構成されて2以上の色調の光を発光するフルカラータイプの発光素子に使用する場合に、特に効果を発揮し、発光面全体において色むらの少ない混色光が得られる。
    【0102】
    またこのような発光素子は、太陽光のような外光が素子内部に入光し難いため、素子内部に蛍光体層を設けた場合に非点灯時にもかかわらず外光により点灯しているかのように誤認されることが抑制される。 従って、上記粘度及び表面張力を有する溶液を用いてインクジェット方式でパターン化した透明導電膜は、屋外ディスプレイ用発光素子のITO膜として好適に用いることができる。
    (III)透明導電膜の形成方法
    本発明の透明導電膜の形成方法は、1)前述した本発明の透明導電膜形成用溶液(塗布液)を基板に塗布する工程と、2)塗布膜を焼成する工程とを含む方法である。
    基板
    基板としては、透明導電膜が形成される基板材料として公知の材料の中で、後述するように700℃程度の焼成によっても変質しない材料からなるものを使用できる。 このような基板材料としては、ソーダライムガラス、石英ガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス;ポリエチレンテレフタラート、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、セルローストリアセテート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートのようなポリマー等を用途に応じて選択して用いることができる。
    【0103】
    基板の形状は、特に限定されず、用途に応じて、フィルム(薄膜)状、厚膜状、塊状等の何れであってもよい。 本発明方法は塗布法であるため、成型品等の曲面にも容易に透明導電膜を形成できる。
    塗布工程
    本発明の組成物の基板表面への塗布方法は、特に限定されず、例えばスクリーン印刷法、ロールコ−ト法、ディップコ−ト法、スピンコート法等の公知の塗布方法を採用できる。 また、インクジェット法のように塗布と同時にパターン形成を行える方法も印刷法に含まれ、採用できる。 特に、ディップコート法、スピンコート法又はインクジェット法が好ましい。 塗布時の膜厚は、用途に応じて適宜設定すればよい。
    焼成工程
    焼成温度は、本発明の組成物を構成する各物質が分解する温度以上で、かつ、基板の変形温度以下であればよく、例えば300〜700℃程度、好ましくは350〜650℃程度、特に好ましくは400〜550℃程度で行うことができる。
    【0104】
    焼成時間は、例えば1分間〜10時間程度、好ましくは5分間〜3時間程度とすることができる。 焼成時間が余りに短い場合は高純度の透明導電膜を得ることができず、余りに長い場合には透明導電膜製造時間が全体として長くなり好ましくない。 上記の範囲であれば、実用的な時間内で高純度の透明導電膜が得られる。
    【0105】
    焼成時の雰囲気は、特に限定されず、例えば空気中で行うことができる。 中でも、空気に比べて酸素分圧を高くした雰囲気中で焼成を行うことが好ましく、この場合には、低抵抗かつ一層高透過率のITO膜が得られる。 酸素分圧は5×10 Pa以上であることがより好ましい。 酸素分圧の上限は特に限定されず、酸素のみからなる雰囲気中で焼成を行うこともできる。
    還元熱処理工程
    本発明方法は、さらに3) 2)で得られた膜を還元熱処理する工程を含んでいてよい。 これにより、膜中に酸素欠損と自由電子が発生して導電性が向上し、導電性の高い膜が得られる。
    【0106】
    還元熱処理温度は、十分な還元が行えるとともに基板が変形しない温度範囲とすればよく、通常150〜700℃程度、特に170〜650℃程度、さらに特に200〜600℃程度とすることが好ましい。 還元熱処理時間は、還元雰囲気により異なるが、例えば3分間〜10時間程度、好ましくは5分間〜6時間程度とすることができる。 還元熱処理時間が余りに短い場合には膜の還元が不十分になり導電性が向上しない。 また還元熱処理時間が余りに長い場合には膜の還元が進行し過ぎて膜の結晶性が低下し、導電性の優れたITO膜が得られない。 上記の範囲であれば、十分に高導電率の導電膜が得られる。
    【0107】
    還元熱処理雰囲気としては、例えば窒素雰囲気、水素雰囲気、窒素及び水素雰囲気、水素プラズマ雰囲気、真空等が挙げられる。 大がかりな製造設備を必要とせず、また低コストである点で、窒素雰囲気、水素雰囲気、窒素及び水素雰囲気が好ましい。
    (IV)透明導電膜
    上述した本発明方法により形成された透明導電膜は、インジウム、スズ、酸素、炭素及びハロゲンの各元素が膜内に均一に分布している。 本発明において、これらの元素が「均一」に分布又は存在しているとは、電子線マイクロアナライザー(EPMA)により表面及び断面を観察した場合に、各元素の濃度分布が一様である状態をいう。
    【0108】
    また、本発明方法により形成された透明導電膜は、インジウム、スズ、酸素、炭素及びハロゲンを含み、膜の厚みバラツキは、膜厚測定値から0.2%以内である。 また、前記膜厚測定値が0.01μm〜0.4μmの場合における波長420nm〜820nmの光の平均透過率は、通常90%〜98%程度であればよく、好ましくは92〜98%程度、さらに好ましくは94〜98%程度である。 具体的には、前記膜厚測定値が膜厚0.01μm〜0.15μmの場合における前記光の平均透過率は92%〜98%程度であればよく、好ましくは93%〜98%程度、さらに好ましくは94%〜98%程度である。 また前記膜厚測定値が0.15μm〜0.25μmのときにおける前記光の平均透過率は90%〜97%程度でればよく、好ましくは91%〜97%程度、さらに好ましくは92%〜97%程度である。 また前記膜厚測定値が0.25μm〜0.4μmのときには、前記光の平均透過率は90%〜96%程度でればよく、好ましくは91%〜96%程度、さらに好ましくは92%〜96%程度である。
    【0109】
    本発明において、透明導電膜の前記光の平均透過率とは、分光光度計を用い波長420nm〜820nmの範囲の光の透過率を波長スキャン速度120nm/minで測定して得られた値の平均値である。
    【0110】
    また、本発明の透明導電膜は、表面抵抗値が通常10 〜10 Ω/□程度、特に10 〜10 Ω/□程度、さらに特に10 〜10 Ω/□程度であることが好ましい。
    【0111】
    【実施例】
    以下に、本発明を実施例を示してより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
    【0112】
    以下の例において、インジウム化合物及びスズ化合物の第1吸熱ピーク温度、溶液の粘度及び表面張力、水溶性有機高分子化合物の重量平均分子量は以下の方法で測定する。
    <第1吸熱ピーク温度>
    示差熱分析方法(JIS No.K0129−94)に準拠して、空気雰囲気中で被験試料を一定昇温速度になるように加熱する。 この際、熱の出入りを伴った化学反応が起これば試料と基準物質との間に温度差が生じる。 この被験試料と基準物質との温度差(示差熱分析値)をプロットした示差熱分析曲線を求める。 <粘度>
    B型粘度計を使用して、被験溶液中で円筒または円板を回転させたとき、円筒または円板に働く被験溶液の粘性抵抗トルクを測定する。
    <表面張力>
    滴容法(JIS No.K3362)に準拠して、円形の管の口から一定量の被験溶液を静かに滴下し、その落下滴数、比重及び水の表面張力から被験溶液の表面張力を求める。
    <水溶性有機高分子化合物の重量平均分子量>
    GPC(gel permeatiom chromatography)測定により求める。
    【0113】
    実施例1
    回転子を入れた100mL容の三フラスコに、硝酸インジウム三水和物12.0g、二塩化ジメチルスズ0.76g、ポリビニルアルコール(重量平均分子量約22,000)0.43gを精秤して入れる。 さらに29.74gの水を加えて室温で混合することにより、各物質を溶解させて透明導電膜形成用組成物を得る。
    【0114】
    この組成物を耐熱ガラス基板上に大気雰囲気下、3000回転で15秒間、スピンコーターを用いて塗布した後、電気炉にて大気雰囲気中650℃で30分間焼成する。
    【0115】
    第1吸熱ピーク温度は、硝酸インジウム三水和物が162.4℃、二塩化ジメチルスズが107.6℃であり、両者の差は54.8℃である。
    【0116】
    実施例2
    実施例1において、水溶性インジウム化合物として、硝酸インジウム三水和物12.0gに代えて塩化インジウム三水和物9.6gを用い、焼成工程の後にさらに窒素雰囲気中で650℃で5時間還元熱処理した。 その他は実施例1と同様の操作を行う。
    【0117】
    第1吸熱ピーク温度は、塩化インジウム三水和物が185.2℃、二塩化ジメチルスズが107.6℃であり、両者の差は77.6℃である。
    【0118】
    実施例3
    回転子を入れた100mL容の三角フラスコに、硝酸インジウム三水和物12.0g、二塩化ジメチルスズ0.76g、ポリビニルアルコール(重量平均分子量約88,000)0.64gを精秤して入れる。 さらに28.10gの水を加えて室温で混合することにより各物質を溶解させる。 さらに、この水溶液に30%過酸化水素水溶液1.43gを加えて室温で混合することにより、透明導電膜形成用組成物を得る。
    【0119】
    この組成物を耐熱ガラス基板上に大気雰囲気下、3000回転で15秒間、スピンコーターを用いて塗布した後、電気炉にて酸素雰囲気中500℃で30分間焼成し、さらに92%窒素/8%水素の混合ガス雰囲気中で500℃で1時間還元熱処理する。
    【0120】
    上述したように、硝酸インジウム三水和物と二塩化ジメチルスズとの第1吸熱ピーク温度差は54.8℃である。
    【0121】
    実施例4
    実施例3において、溶媒として、水に代えて水14.05gとメタノール14.05gとの混合溶媒を用いた他は実施例3を同様の操作を行う。
    【0122】
    上述したように、硝酸インジウム三水和物と二塩化ジメチルスズとの第1吸熱ピーク温度差は54.8℃である。 また、得られた溶液の粘度は14mPa/sであり、表面張力は33mN/mである。
    【0123】
    実施例5
    実施例3において、水溶性有機高分子化合物として、ポリビニルアルコールに代えてポリエチレングリコール(重量平均分子量約500,000)0.64gを用い、熱分解触媒として過酸化水素に代えてピクリン酸0.3gを用いた他は、実施例3と同様の操作を行う。
    【0124】
    上述したように、硝酸インジウム三水和物と二塩化ジメチルスズとの第1吸熱ピーク温度差は54.8℃である。
    【0125】
    比較例1
    回転子を入れた100mL容の三角フラスコに、硝酸インジウム三水和物12.0g、二塩化ジメチルスズ0.76gを精秤して入れる。 さらに29.74gの水を加えて室温で混合することにより、各物質を溶解させて透明導電膜形成用組成物を得る。
    【0126】
    この組成物を耐熱ガラス基板上に大気雰囲気下、3000回転で15秒間、スピンコーターを用いて塗布した後、電気炉にて大気雰囲気中650℃で30分間焼成する。
    【0127】
    実施例1〜5及び比較例1により得られた各透明導電膜の膜厚、表面抵抗及び550nmの可視光の透過率を測定する。 膜厚は反射率分光法に基づき測定する。 表面抵抗値はJISK7194(四端子四探針法)に準拠して測定する。 透過率は分光光度計を用いて測定する。 結果を以下の表1に示す。
    【0128】
    【表1】

    【0129】


    表1から明らかなように、実施例1では、表面抵抗1900(Ω/□)という実用上十分な導電性及び実用上十分な高透過率を有するITO膜が得られる。 この程度の表面抵抗を有するITO膜は電磁波遮蔽膜又は帯電防止膜などとして好適に使用できる。


    【0130】


    また、さらに還元熱処理工程を行った実施例2〜5では、120〜370(Ω/□)の表面抵抗を有する低抵抗かつ高透過率のITO膜が得られる。 この程度の表面抵抗を有するITO膜は面発熱体又は透明電極などとして好適に使用できる。 また、焼成工程を酸素雰囲気中で行った実施例3〜5では、大気雰囲気中で焼成工程を行った実施例2より一層低抵抗のITO膜が得られる。


    【0131】


    これに対して、水溶性有機高分子化合物であるポリビニルアルコールを含まない組成物を用いた比較例1では、均一な塗布膜を形成することができない。 これに伴い、焼成後の膜も白濁しており透過性が良好な膜が得られないとともに、表面抵抗も比較的高い。


    【0132】


    また、実施例1〜5及び比較例1により得られた各透明導電膜において420〜820nmの可視光の平均透過率を測定すると、上記550nmの可視光により得られる透過率の値からの低下率は0.5%以下であり、550nmの可視光の透過率とほぼ同一の値が得られる。 このことから、本願発明の透明導電膜は、あらゆる波長の可視光においても優れた透過率を有していることが分かる。


    【0133】


    【発明の効果】


    本発明によると、簡単な塗布法により高透過率を有する透明導電膜を形成できる方法、並びに、この方法に供する透明導電膜形成用組成物及び透明導電膜形成用溶液であって高透過率を有する透明導電膜が得られる組成物及び溶液が提供される。


    【0134】


    さらにいえば、本発明の組成物は水溶性物質からなるため、水を用いて塗布液を調製することができ、労働衛生、防火および地球環境の観点から好ましい。 また、本発明の組成物は水を使用して塗布液を調製できるため、市販のインクジェット塗布装置を使用してもそのインクカートリッジが有機溶媒により浸食又は変質することが回避される。 透明導電膜からなる回路パターンを形成するに当たっては、透明導電膜を形成した後にフォトリゾグラフィー等の工程を経て回路パターンを形成するよりも、インクジェット方式により直接回路パターンを形成することが簡単であるため、本発明の組成物によれば市販のインクジェット塗布装置を使用して簡便に回路パターンを形成できる。


    【0135】


    また、一般に、水又は水を主成分とする溶媒を用いて塗布液を調製する場合には、塗布液の表面張力が大きくなって基板上に均一に塗布膜を形成できない場合がある。 本発明の組成物は、水溶性有機高分子化合物を含むため、水又は水を主成分とする溶媒を用いて塗布液を調製する場合にも、基板上に均一な塗布膜を形成することができ、その結果得られる膜の均一性が向上して、可視光に対して高透過率のITO膜が得られる。


    【0136】


    また、本発明の組成物は、水溶性化合物からなり、これらを水を含む溶媒中に均一に溶解させた塗布液を調製するため、このことからも高透過率のITO膜が得られる。


    【0137】


    また、本発明の組成物は、炭素元素及びハロゲン元素の比率を調整することにより、膜の均一性を損なうことなく得られる膜の導電性を任意に変えることができる。


    【0138】


    さらに、水溶性インジウム化合物とハロゲンを含む水溶性スズ化合物との間の示差熱分析により測定される第1吸熱ピーク温度の差が100℃未満である場合は、両化合物の熱分解開始温度が近いために、インジウムイオンの酸化とスズイオンの酸化とが均一に起こり、その結果、膜全体にわたりIn−O−Sn結合が均一に生成する。 これにより、導電率のバラツキが小さい低抵抗かつ高透過率の透明導電膜が得られる。


    【0139】


    また、本発明の溶液が表面張力が20〜70mN/m程度であり、かつ、粘度が20mPa・s未満である場合は、インクジェットによるITO膜形成に好適な透明導電膜形成用溶液となる。 インクジェット方式で形成されたITO膜パターンを用いた発行素子は均一な発光が得られるとともに、太陽光などの外光が入光しにくいために外光によるオンオフの誤認が抑えられる。


    【0140】


    また、本発明の方法によると、CVD法やPVD法のような大規模な装置を必要とせず、また大気雰囲気中で透明導電膜を基板上に形成することができ、簡単かつ低コストに透明導電膜を形成できる。 また、塗布法によるため、成膜チャンバの大きさに制限されず、大面積の基板上にも容易に透明導電膜を形成できる。 さらに、曲面上にも均一に透明導電膜を形成できる。


    【0141】


    また、本発明の方法は、塗布法の中でも、従来のゾル・ゲル法と異なり、水溶性インジウム化合物、ハロゲンを含む水溶性有機スズ化合物及び水溶性有機高分子化合物を溶媒に溶解させるだけで簡単に塗布液を調製できる。


    【0142】


    本発明の方法において、焼成を空気より酸素分圧の高い雰囲気中で行うことにより、得られる導電膜の導電性が向上して低抵抗のITO膜が得られるとともに、透過率が一層向上する。


    【0143】


    本発明の方法において、さらに焼成後の膜を還元熱処理する場合には、膜中に酸素欠損及び自由電子が発生して、得られる導電膜の導電性が向上する。


    【0144】


    近年の液晶ディスプレイの大型化及び高精密化、太陽電池の大面積化に伴い、透明導電膜の低抵抗化、簡便な大面積膜作製方法が求められている。 従って、低抵抗で高透過率の透明導電膜を簡単に形成できる本発明の意義は非常に大きい。

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