多孔質体及びその製造方法

申请号 JP2014128037 申请日 2014-06-23 公开(公告)号 JP2014217945A 公开(公告)日 2014-11-20
申请人 北越紀州製紙株式会社; Hokuetsu Kishu Paper Co Ltd; 国立大学法人東京大学; Univ Of Tokyo; 国立大学法人 東京大学; 发明人 NEMOTO JUNJI; ISOGAI AKIRA; SAITO TSUGUYUKI; SOYAMA TOMOHIKO;
摘要 【課題】本発明の目的は、極めて繊維径が細く、かつ、親 水 性の高いセルロース系ナノファイバーを含んでなる 流体 透過性のある多孔質体を提供すること及び多孔質体を低コストで製造することである。【解決手段】本発明に係る多孔質体は、多数の孔が連通した多孔質の支持体の孔内で、ナノファイバーが絡み合って網目状構造体を形成した多孔質体であって、前記ナノファイバーが、セルロース系ナノファイバーであり、かつ、数平均繊維径が1〜100nmであり、前記セルロース系ナノファイバーの原料が、木材由来のクラフトパルプ、サルファイトパルプ、古紙パルプ、機械パルプ及び非木材パルプのうち少なくともいずれか一種を含む。【選択図】図1
权利要求
  • 多数の孔が連通した多孔質の支持体の孔内で、ナノファイバーが絡み合って網目状構造体を形成した多孔質体であって、
    前記ナノファイバーが、セルロース系ナノファイバーであり、かつ、数平均繊維径が1〜100nmであり、
    前記セルロース系ナノファイバーの原料が、木材由来のクラフトパルプ、サルファイトパルプ、古紙パルプ、機械パルプ及び非木材パルプのうち少なくともいずれか一種を含むことを特徴とする多孔質体。
  • 前記支持体は、多孔フィルム又は繊維シートのいずれか一方であることを特徴とする請求項1に記載の多孔質体。
  • 前記支持体の平均細孔径が、0.01〜20μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔質体。
  • 前記網目状構造体が、界面活性剤を含有し、
    該界面活性剤の含有量が、前記ナノファイバーの乾燥質量に対して、固形分濃度で0.10〜100質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の多孔質体。
  • 前記界面活性剤が、カチオン系界面活性剤であることを特徴とする請求項4に記載の多孔質体。
  • 数平均繊維径が1〜100nmのセルロース系ナノファイバーを分散媒に分散したナノファイバーの分散液を調製する分散液調製工程と、
    該分散液を多数の孔が連通した多孔質の支持体に付着する付着工程と、
    該分散液が付着した支持体を乾燥して、前記分散媒を除去する乾燥工程と、
    を有し、
    前記セルロース系ナノファイバーの原料が、木材由来のクラフトパルプ、サルファイトパルプ、古紙パルプ、機械パルプ及び非木材パルプのうち少なくともいずれか一種を含むことを特徴とする多孔質体の製造方法。
  • 前記分散媒が、水であることを特徴とする請求項6に記載の多孔質体の製造方法。
  • 前記分散液が、前記ナノファイバーを前記分散液の全質量に対して、固形分濃度で0.001〜0.500質量%含有することを特徴とする請求項6又は7に記載の多孔質体の製造方法。
  • 前記分散液が、更に界面活性剤を含有し、該界面活性剤を前記分散液の全質量に対して、固形分濃度で0.0001〜1.0000質量%含有することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一つに記載の多孔質体の製造方法。
  • 说明书全文

    本発明は、セルロース系ナノファイバーを含んでなる多孔質体に関する。

    ナノテクノロジーの産業利用が進む中、その一つであるナノファイバーの利用技術について近年の進歩は著しい。 ナノファイバーとは、一般的に、数平均繊維径が1〜100nmの範囲内にあるものとされている。 しかし、現状は、エレクトロスピニングをはじめとするナノファイバーの製造技術において、その数平均繊維径は100nmを超えることが多い。 本発明者らはそうした技術動向の中で、数平均繊維径が1〜100nmのセルロース系ナノファイバーの利用に関して検討してきた。

    本明細書において、セルロース系ナノファイバーとは、数平均繊維径が1〜100nmの(1)微細なセルロースナノファイバー(セルロース繊維)又は(2)化学処理(改質)した微細なセルロースナノファイバーをいう。 (1)のセルロースナノファイバーとしては、例えば、セルロース繊維を高圧下で剪断して解繊した数平均繊維径が100nm以下のマイクロフィブリレーテッドセルロース(以降、MFCと略す。)又は生物が産生する数平均繊維径が100nm以下の微細な網目構造を有するバクテリアセルロース(以降、BCと略す。)である。 (2)の改質したセルロースナノファイバーとしては、例えば、天然セルロースを40%以上の濃硫酸で処理して得られるセルロースナノウィスカー(以降、CNWと略す。)又は木材パルプを構成している数平均繊維径が約3〜5nmであるミクロフィブリルを常温常圧の温和な化学処理及び軽微な機械処理で分散体として単離した超極細、かつ、繊維径の均一な微細セルロース繊維(例えば、特許文献1を参照。)である。

    セルロース系ナノファイバーは、植物由来又は生物由来であるため、石油由来の熱可塑性ポリマーからなるナノファイバーよりも、生産時及び廃棄時における環境への負荷が小さいという特長をもつ。 したがって、セルロース系ナノファイバーを用いて多孔質体を形成し、機能性フィルター、ワイピング材料、電子デバイス材料、再生医療材料など様々な分野・用途へ応用することが期待されている。

    ナノファイバーを用いて多孔質体を形成する方法として、例えば、微細なセルロース繊維(セルロース系ナノファイバー)を水若しくは有機溶媒又はその混合溶媒に分散させた分散液を塗布法又は抄紙法によって製膜して不織布を得る技術が開示されている(例えば、特許文献2を参照。)。 しかし、セルロース系ナノファイバーは、それらのもつ凝集のため、セルロース系ナノファイバーの水分散体を乾燥して得られる乾燥体は気体のバリア性が高いフィルムとなってしまう(例えば、特許文献3又は非特許文献1を参照。)。 特許文献2では、気体又は液体の流体透過性のある多孔質体を得る手段として、塗布法において、分散媒として疎水性の有機溶媒を使用することで分散媒を水とした場合よりも高空孔率を有する不織布を得ることができることが開示されている。 また、抄紙法において、分散媒を水から有機溶媒に置換してから乾燥させることで、分散媒に水を使用してそのまま熱乾燥するよりも高空孔率を有する不織布を得ることができることが開示されている。

    熱可塑性ポリマーからなるナノファイバーの分散液を支持体に付着させて、分散媒を自然乾燥又は熱乾燥させることで、支持体にナノファイバーが網目状に付着したナノファイバー構造体を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献4を参照。)。 また、ナノファイバーの分散液を支持体に付着させて、分散媒を凍結乾燥させることで、ナノファイバーが支持体の孔内に三次元の網目構造をなした微粒子の捕集効率及び通気性がより高い多孔体及びその製造方法が開示されている(例えば、特許文献5を参照。)。

    また、微細繊維状セルロースシートの製造方法において、微細繊維状セルロースが、吸引ろ過時に高密度化して脱水し難くなる現象を解決する方法として、微細繊維状セルロースにセルロース凝結剤を配合することで、微細繊維状セルロースがネットワークを形成し、該ネットワークが吸引ろ過の圧力で潰れることなく、ネットワーク中に含まれる空隙を維持するため、脱水が容易となる技術が開示されている(例えば、特許文献6を参照。)。

    特開2008−1728号公報

    WO2006/004012号公報

    特開2009−57552号公報

    特開2005−330639号公報

    特開2008−101315号公報

    特開2010−168716号公報

    Biomacromolecules,10,162−165(2009)

    前述のとおり、低コストで量産できる流体透過性のあるセルロース系ナノファイバーを用いた多孔質体の開発が、セルロース系ナノファイバーの応用展開の拡大という観点から望まれている。 しかし、流体透過性のあるセルロース系ナノファイバーを用いた多孔質体を低コストで量産できる方法はないのが現状である。

    特許文献1に記載の数平均繊維径が数nmのセルロース系ナノファイバーは、繊維表面セルロース分子のC6位水酸基の一部又は全部を水酸基よりも親水性の高いカルボキシル基に置換されている。 また、一般的に繊維径が細いほど単位質量当たりの表面自由エネルギーが増加するため、乾燥したときの表面を安定化させる繊維間の凝集力は増大する。 したがって、特許文献1に記載のセルロース系ナノファイバーの水分散体をそのまま乾燥させると、セルロース水酸基とカルボキシル基とに由来する親水性及び水のもつ強い表面張力のため凝集し、網目構造を有する多孔質体を得るのは困難である。

    特許文献2をはじめとする分散媒として有機溶媒を使用する方法及び分散媒を有機溶媒に置換させてから乾燥する方法では、産業レベルでの実施を考慮すると、環境面で特別な配慮をしなければならない。 使用した有機溶媒は、その全量を回収しなければならないこと、可燃性液体を扱うことへの設備的対応、作業従事者の健康への配慮など、環境面、設備面から高コストとならざるを得ないという問題がある。

    特許文献4には、支持体に熱可塑性ポリマーからなるナノファイバーが網目状に付着したナノファイバー構造体の製造方法が開示されているが、熱可塑性ポリマーからなるナノファイバーとセルロース系ナノファイバーとは、表面状態が異なるため、セルロース系ナノファイバーを分散媒に分散させる手段は熱可塑性ポリマーからなるナノファイバーを分散媒に分散させる手段とは異なる。 また、特許文献5をはじめとする凍結乾燥では、減圧装置を必要とするため連続生産できないこと、熱乾燥と比較してエネルギー消費が大きいこと、分散媒の昇華に時間がかかることなどから高コストとなる。 特許文献6には、微細繊維状セルロースがネットワークを形成することを利用して、効率的に微細繊維状セルロースシートを製造する方法が開示されているが、乾燥して得られる微細繊維状セルロースシートは、多孔質体ではない。

    本発明の目的は、極めて繊維径が細く、かつ、親水性の高いセルロース系ナノファイバーを含む流体透過性のある多孔質体を提供すること及び多孔質体を低コストで製造することである。

    本発明者らは、前記課題を解決すべく検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。 すなわち、多数の孔が連通した多孔質の支持体の孔内に、数平均繊維径が1〜100nmであるセルロース系ナノファイバーを配することによって、セルロース系ナノファイバーで構成した網目を張りめぐらせた構造をもつ多孔質体を得ることができることを見出した。 また、数平均繊維径が1〜100nmのセルロース系ナノファイバーを分散媒中に分散したナノファイバー分散液を多数の孔が連通した多孔質の支持体に付着した状態で、乾燥することによって分散媒を除去する製造方法を用いて多孔質体を得ることができることを見出した。

    本発明に係る多孔質体は、多数の孔が連通した多孔質の支持体の孔内で、ナノファイバーが絡み合って網目状構造体を形成した多孔質体であって、前記ナノファイバーが、セルロース系ナノファイバーであり、かつ、数平均繊維径が1〜100nmであり、前記セルロース系ナノファイバーの原料が、木材由来のクラフトパルプ、サルファイトパルプ、古紙パルプ、機械パルプ及び非木材パルプのうち少なくともいずれか一種を含むことを特徴とする。

    本発明に係る多孔質体では、前記支持体は、多孔フィルム又は繊維シートのいずれか一方であることが好ましい。 セルロース系ナノファイバーが支持体の孔内に網目状のナノファイバー構造体を容易に形成しやすく、かつ、乾燥後も網目状構造を維持することができる。

    本発明に係る多孔質体では、前記支持体の平均細孔径が、0.01〜20μmであることが好ましい。 セルロース系ナノファイバーが支持体の孔内に網目状のナノファイバー構造体を容易に形成しやすく、かつ、乾燥時にナノファイバーに対して生じる凝集力を分散することができるため、乾燥後も網目状構造を維持することができる。

    本発明に係る多孔質体では、前記網目状構造体が、界面活性剤を含有し、該界面活性剤の含有量が、前記ナノファイバーの乾燥質量に対して、固形分濃度で0.10〜100質量%であることが好ましい。 乾燥時にセルロース系ナノファイバー同士の凝集を弱め、網目状構造を維持することができる。

    本発明に係る多孔質体では、前記界面活性剤が、カチオン系界面活性剤であることが好ましい。 セルロース系ナノファイバーの表面に吸着し易く、乾燥時のセルロース系ナノファイバー同士の凝集を弱める効果がより高まる。

    本発明に係る多孔質体の製造方法は、数平均繊維径が1〜100nmのセルロース系ナノファイバーを分散媒に分散したナノファイバーの分散液を調製する分散液調製工程と、該分散液を多数の孔が連通した多孔質の支持体に付着する付着工程と、該分散液が付着した支持体を乾燥して、前記分散媒を除去する乾燥工程と、を有し、前記セルロース系ナノファイバーの原料が、木材由来のクラフトパルプ、サルファイトパルプ、古紙パルプ、機械パルプ及び非木材パルプのうち少なくともいずれか一種を含むことを特徴とする。

    本発明に係る多孔質体の製造方法では、前記分散媒が、水であることが好ましい。 安全面、環境面及び設備面により優れている。

    本発明に係る多孔質体の製造方法では、前記分散液が、前記ナノファイバーを前記分散液の全質量に対して、固形分濃度で0.001〜0.500質量%含有することが好ましい。 支持体の孔内にナノファイバーの網目状構造体を効率的に形成することができる。

    本発明に係る多孔質体の製造方法では、前記分散液が、更に界面活性剤を含有し、該界面活性剤を前記分散液の全質量に対して、固形分濃度で0.0001〜1.0000質量%含有することが好ましい。 乾燥時にセルロース系ナノファイバー同士の凝集を弱め、網目状構造を維持することができる。

    本発明は、極めて繊維径が細く、かつ、親水性の高いセルロース系ナノファイバーを含む流体透過性のある多孔質体を提供すること及び多孔質体を低コストで製造することができる。 また、本発明に係る多孔質体は、多数の孔が連通した多孔質の支持体の孔内で、ナノファイバーが絡み合って網目状構造体を形成しているために、表面積を拡大することができる。

    実施例1のセルロース系ナノファイバーの網目状構造体を有する多孔質体のSEMによる観察画像を示す図である。

    実施例6のセルロース系ナノファイバーの網目状構造体を有する多孔質体のSEMによる観察画像を示す図である。

    実施例8のセルロース系ナノファイバーの網目状構造体を有する多孔質体のSEMによる観察画像を示す図である。

    次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。 本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。

    本実施形態に係る多孔質体は、多数の孔が連通した多孔質の支持体の孔内で、ナノファイバーが絡み合って網目状構造体を形成した多孔質体であって、前記ナノファイバーが、セルロース系ナノファイバーであり、かつ、数平均繊維径が1〜100nmであり、前記セルロース系ナノファイバーの原料が、木材由来のクラフトパルプ、サルファイトパルプ、古紙パルプ、機械パルプ及び非木材パルプのうち少なくともいずれか一種を含む。

    <セルロース系ナノファイバー>
    本実施形態では、セルロース系ナノファイバーとは、セルロースナノファイバー又は化学処理(改質)したセルロースナノファイバーを包含する。 セルロース系ナノファイバーは、セルロース分子が2本以上の束を形成している。 セルロース分子が2本以上の束を形成しているとは、2本以上のセルロース分子が集合してミクロフィブリルと呼ばれる集合体を形成している状態をいう。 本実施形態では、セルロース分子は、分子中のC6位水酸基の一部又は全部がアルデヒド基、カルボキシル基などに酸化されたもの、C6位以外の水酸基を含む水酸基の一部又は全部が硝酸エステル、酢酸エステルなどのようにエステル化されたもの、メチルエーテル、ヒドロキシプロピルエーテル、カルボキシメチルエーテルなどのようにエーテル化されたものなど他の官能基に置換されている形態を含む。

    セルロース系ナノファイバーの数平均繊維径は、1〜100nmの範囲内である。 ナノファイバーの数平均繊維径は、より好ましくは、1.5〜50nmであり、特に好ましくは、2〜10nmである。 数平均繊維径が1nm未満では、ナノファイバーの単繊維強度が弱く、網目状構造体を形成することができない。 100nmを超えると、孔の中に網目状構造体を形成することが困難となる。 ここで、数平均繊維径は、次に従って算出する。 カーボン膜被覆グリッド上にキャストしたセルロース系ナノファイバーを透過型電子顕微鏡(TEM、Transmission Electron Microscope)を用いて電子顕微鏡画像による観察を行う。 得られた観察画像に対し、1枚の画像あたり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交差する繊維の繊維径を目視で読み取っていく。 このとき、構成する繊維の大きさに応じて5000倍、10000倍、50000倍のいずれかの倍率で行う。 なお、試料又は倍率は、20本以上の繊維が軸と交差する条件とする。 こうして最低3枚の重なっていない表面部分の画像を電子顕微鏡で撮影し、各々二つの軸に交差する繊維の繊維径の値を読み取る。 したがって、最低20本×2×3=120本の繊維情報が得られる。 こうして得られた繊維径のデータから数平均繊維径を算出した。

    ナノファイバーは、分散媒中に分散されている。 分散液中でのナノファイバーの形態は、例えば、ナノファイバーがバラバラに分散した形態、部分的に凝集した形態である。 ナノファイバーの数平均繊維長は、0.05〜20μmであることが好ましい。 より好ましくは、0.10〜10μmである。 数平均繊維長が0.05μm未満であると、ナノファイバーが粒子に近くなり、網目状構造体を形成することが困難となる。 20μmを超えると、ナノファイバー同士の絡み合いが多くなり、凝集体を形成する可能性がある。 なお、数平均繊維長は、セルロース系ナノファイバー分散液を基板上に薄くキャストし、凍結乾燥したものを走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いて電子顕微鏡画像による観察から算出する。 得られた観察画像に対し、1枚の画像あたり10本ずつ独立した繊維を無作為に選び、その繊維長を目視で読み取っていく。 このとき、構成する繊維の長さに応じて5000倍又は10000倍のいずれかの倍率で行う。 なお、試料又は倍率は、繊維の始点と終点とが同じ画像内に収まっているものを対象とする。 こうして最低12枚の重なっていない表面部分の画像をSEMで撮影し、繊維長を読み取る。 したがって、最低10本×12枚=120本の繊維情報が得られる。 こうして得られた繊維径のデータから数平均繊維長を算出できる。 ナノファイバーの断面形状は、例えば、円形状、楕円形状、扁平形状、四形状、三角形状、ひし形形状である。 この中で、四角形状が好ましい。 なお、本実施形態は、ナノファイバーの数平均繊維長及び断面形状に制限されない。

    ナノファイバーの種類は、例えば、前述のMFC、BC、CNW、特許文献1に記載のセルロース系ナノファイバーである。 MFCは、セルロース繊維を機械的な処理によって剪断してナノファイバー化するため、繊維径の分布が広いという特徴がある。 BCは、比較的均一な繊維径を有するという特徴がある。 CNWは、比較的均一な繊維径を有するが、繊維長が0.1〜0.2μmで短いという特徴がある。 特許文献1に記載のセルロース系ナノファイバーは、特許文献1に記載するように、セルロース系原料を、N−オキシル化合物、臭化物、ヨウ化物又はそれらの混合物の存在下で、酸化剤を用いて酸化し、該酸化されたセルロースを更に湿式微粒化処理して解繊し、ナノファイバー化することによって水分散体として製造され、均一な繊維径を有するという特徴がある。 この中で、特許文献1に記載の微細セルロースが、生産に必要なエネルギーが他のセルロース繊維よりも少ない点及び生産性が高い点で特に好ましい。

    特許文献1に記載のセルロース系ナノファイバーは、セルロースシングルミクロフィブリルである。 天然セルロースは、ミクロフィブリルが多束化して高次な個体構造を構築している。 ここで、ミクロフィブリル間は、セルロース分子中の水酸基由来の水素結合によって強固に凝集している。 セルロースシングルミクロフィブリルとは、天然セルロースに化学処理及び軽微な機械処理を行い、単離したミクロフィブリルをいう。 特許文献1に記載のセルロース系ナノファイバーは、セルロース分子の水酸基の一部がカルボキシル基及びアルデヒド基からなる群から選ばれる少なくとも一つの官能基に酸化されており、かつ、セルロースI型結晶構造を有する。 最大繊維径は、1000nm以下である。 このセルロース系ナノファイバーは、水に分散すると透明な液体となる。

    セルロース系ナノファイバーの原料となるセルロース原料は、特に限定されるものではなく、例えば、広葉樹さらしクラフトパルプ(LBKP)、針葉樹さらしクラフトパルプ(NBKP)などの各種木材由来のクラフトパルプ、サルファイトパルプ、脱墨パルプ(DIP)などの古紙パルプ、グランドパルプ(GP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、リファイナー砕木パルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、ケミグランドパルプ(CGP)などの機械パルプ、それらを高圧ホモジナイザー、ミルなどによって粉砕した粉末状セルロース、それらを酸加水分解などの化学処理によって精製した微結晶セルロース粉末を使用できる。 また、ケナフ、麻、イネ、バガス、竹、綿などの植物も使用できる。 本実施形態は、ナノファイバーの原料及び製造方法に制限されない。

    ナノファイバーの製造方法は、例えば、特許文献1に記載した製造方法である。 特許文献1によると、ナノファイバーの製造方法は、天然セルロースを原料とし、水中においてN‐オキシル化合物を酸化触媒とし、共酸化剤を作用させることによって該天然セルロースを酸化して反応物繊維を得る酸化反応工程と、不純物を除去して水を含浸させた反応物繊維を得る精製工程と、水を含浸させた反応物繊維を分散媒に分散させる分散工程と、該分散工程で得られた分散体から分散媒を乾燥する乾燥工程と、を含む。

    酸化反応工程では、水中に天然セルロースを分散させた分散液を調製する。 反応における天然セルロースの分散媒は、水である。 そして、反応水溶液中の天然セルロース濃度は、試薬の十分な拡散が可能な濃度であれば任意であるが、通常、反応水溶液の質量に対して5質量%以下である。

    セルロースの酸化触媒として使用可能なN‐オキシル化合物は、数多く報告されている(「Cellulose」Vol.10、2003年、第335〜341ページにおけるI.Shibata及びA.Isogaiによる「TEMPO誘導体を用いたセルロースの触媒酸化:酸化生成物のHPSEC及びNMR分析」と題する記事)。 この中で、特にTEMPO、4‐アセトアミド‐TEMPO、4‐カルボキシ‐TEMPO、及び4‐フォスフォノオキシ‐TEMPOが、水中常温での反応速度において好ましい。 これらN‐オキシル化合物の添加は、触媒量で十分である。 すなわち、好ましくは0.1〜4mmol/l、更に好ましくは0.2〜2mmol/lの範囲で反応水溶液に添加する。 0.1mmol/l未満であると、触媒効果が劣る場合がある。 4mmol/lを超えると、水に溶けなくなる場合がある。

    共酸化剤は、例えば、次亜ハロゲン酸又はその塩、亜ハロゲン酸又はその塩、過ハロゲン酸又はその塩、過酸化水素、及び過有機酸である。 好ましくはアルカリ金属次亜ハロゲン酸塩である。 アルカリ金属次亜ハロゲン酸塩は、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウムである。 次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合、臭化アルカリ金属、例えば、臭化ナトリウムの存在下で反応を進めることが反応速度において好ましい。 この臭化アルカリ金属の添加量は、N‐オキシル化合物に対して1〜40倍モル量であることが好ましい。 より好ましくは、10〜20倍モル量である。 1倍モル量未満であると、反応速度において劣る場合がある。 40倍量モルを超えると、反応速度において劣る場合がある。 反応水溶液のpHは、8〜11の範囲で維持することが好ましい。 水溶液の温度は、4〜40℃において任意であるが、反応は室温で行うことが可能であり、特に温度の制御を必要としない。 共酸化剤の添加量は、天然セルロース1gに対して0.5〜8mmolの範囲であることが好ましい。 反応は、5〜120分とすることが好ましく、長くとも240分以内に完了する。

    精製工程は、酸化反応工程で得た酸化セルローススラリーから、未反応の次亜塩素酸、各種副生成物などの不純物を除去して精製する工程である。 酸化反応工程を経た段階では、通常、ナノファイバー単位までばらばらに分散しているわけではないため、通常の精製法、すなわち水洗工程とろ過工程とを繰り返すことで高純度(99質量%以上)の精製した酸化セルローススラリーとする。 こうして得られる精製した酸化セルローススラリーは、絞った状態で固形分(セルロース)濃度として10〜50質量%の範囲にあることが好ましい。 より好ましくは、15〜30質量%である。 後に行われる分散工程を考慮すると、50質量%よりも高い固形分濃度とすると、分散に極めて高いエネルギーが必要となることから好ましくない。

    分散工程は、精製工程にて得た酸化セルローススラリーを更に分散媒中に分散してセルロース系ナノファイバー分散液を得る工程である。 分散媒は、後述する多孔質体の製造方法の分散液調製工程で使用可能な分散媒として例示する分散媒を使用することができる。 分散機は、工業生産機としての汎用の分散機を使用できる。 汎用の分散機は、例えば、スクリュー型ミキサー、パドルミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサーである。 さらに、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、超音波分散処理、ビーター、ディスク型レファイナー、コニカル型レファイナー、ダブルディスク型レファイナー、グラインダーなどのより強力で叩解能力のある装置を使用することによって、より効率的かつ高度なダウンサイジングが可能となる。

    乾燥工程は、分散工程で得られたセルロース系ナノファイバー分散液を乾燥して分散媒を除去し、微細セルロース繊維を分離する工程である。 乾燥方法は、例えば、分散体の分散媒が水である場合には凍結乾燥法であり、分散体の分散媒が水と有機溶媒との混合溶液である場合にはドラムドライヤーによる乾燥、スプレイドライヤーによる噴霧乾燥である。

    <多孔質支持体>
    本実施形態では、支持体は多数の孔が連通した多孔質なものである。 ここで、孔とは、規則的に形成された微細孔又は繊維が絡み合って形成した繊維間の空隙のいずれも包含する。 孔が連通とは、空隙が一方の面から他方の面に直線的又は曲線的に連続してつながっている状態をいう。 支持体は、多数の孔が連通した多孔質であれば、特に限定されず、例えば、不織布、紙、織物、編物などの繊維をシート状に加工した繊維シート、多孔フィルム、多孔セラミックス、スポンジなどの多数の空隙が連通したもの、それらの複合体である。 繊維シートは、例えば、無機繊維シート、化学繊維シート、天然繊維シート、金属繊維シートである。 無機繊維シートは、例えば、ガラス繊維シート、炭素繊維シートである。 化学繊維シートは、例えば、レーヨン、キュプラ、テンセルなどのセルロースを原料とした再生繊維シート、アセテートなどの化学処理されたセルロースを原料とした半合成繊維シート、ポリアミド、ビニロン、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル、ポリオレフィン、アラミドなどの熱可塑性樹脂を原料とした合成繊維(有機繊維)シートである。 天然繊維シートは、例えば、綿、麻、リンネルなどの植物繊維シート、羊毛、絹、カシミヤなどの動物繊維シートである。 金属繊維シートは、例えば、ステンレス、鉄、金、銀、アルミニウムである。 多孔フィルムは、例えば、メンブレンフィルターである。

    本実施形態に係る多孔質体では、支持体の平均細孔径が、0.1〜20μmであることが好ましい。 より好ましくは、0.5〜10μmである。 0.1μm未満では、流体透過性に劣る場合がある。 20μmを超えると、セルロース系ナノファイバーが支持体の孔内に網目状構造体を均一に形成しにくくなる場合がある。 ここで、平均細孔径は、ASTM E1294‐89「ハーフドライ法」に従って計測した値である。

    支持体は、JIS P 8117 :2009「紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー法」に従って測定した透気抵抗度(王研)が10000s以下であることが好ましい。 より好ましくは、100s以下である。 10000sを超えると、多孔質体の流体透過性が低くなる場合がある。

    ナノファイバーの分散媒が水である場合、支持体は親水性であることが望ましい。 支持体が疎水性であると、分散液が内部まで浸透しにくくなる。 本実施形態に係る多孔質体では、支持体は、多孔フィルム又は繊維シートのいずれか一方であることが好ましい。 多孔フィルム又は繊維シートは、孔の形状及び大きさの異なるものが容易に選択できるため、分散液が支持体の孔の内部に浸透する量及び速度を制御することができ、孔内により均一な網目状のナノファイバー構造体を形成しやすく、かつ、乾燥後も網目状構造を維持することができる。

    多孔フィルムは、孔として様々な形状の微細孔を有する。 多孔フィルムの材質は、本実施形態では特に限定されず、例えば、セルロース、セルロース混合エステル、セルロースアセテート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネートである。 孔径が均一な点で、ポリカーボネートメンブレンフィルターがより好ましい。 多孔フィルムの平均細孔径は、0.1〜20μmであることが好ましい。 より好ましくは、0.5〜10μmである。 0.1μm未満では、流体透過性に劣る場合がある。 20μmを超えると、セルロース系ナノファイバーが支持体の孔内に網目状構造体を均一に形成しにくくなる場合がある。

    繊維シートは、孔として繊維が絡み合って形成した繊維間の空隙を有する。 繊維シートの材質は、本実施形態では特に限定されないが、流体透過性を低減させずに、より小さな孔径を有する繊維シート材料となる点で、ガラス繊維であることがより好ましい。 繊維シートの平均細孔径は、0.1〜20μmであることが好ましい。 より好ましくは、0.5〜10μmである。 0.1μm未満では、流体透過性に劣る場合がある。 20μmを超えると、セルロース系ナノファイバーが支持体の孔内に網目状構造体を均一に形成しにくくなる場合がある。

    繊維シートの目付けは、10〜1000g/m であることが好ましい。 より好ましくは、40〜200g/m である。 10g/m 未満では、物理的強度が不足する場合がある。 1000g/m を超えると、流体透気性に劣る場合がある。

    <界面活性剤>
    本実施形態に係る多孔質体では、網目状構造体が、界面活性剤を含有し、界面活性剤の含有量が、ナノファイバーの乾燥質量に対して、固形分濃度で0.10〜100質量%であることが好ましい。 より好ましくは、0.5〜50.0質量%である。 特に好ましくは、1〜40質量%である。 0.10質量%未満では、界面活性剤を添加する効果が得られない場合がある。 100質量%を超えると、セルロース系ナノファイバーが繊維状態を維持するのが困難となる場合がある。

    本実施形態では、界面活性剤として、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤を使用することができる。 本実施形態に係る多孔質体では、界面活性剤が、カチオン系界面活性剤であることが好ましい。 セルロース系ナノファイバーの表面は、アニオン性を示すため、カチオン性界面活性剤は、ナノファイバーの表面に吸着し易く、乾燥時のセルロース系ナノファイバー同士の凝集を弱める効果がより高まる。 カチオン性界面活性剤は、例えば、第4級アンモニウム塩、アルキルアミン塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩である。 水溶性が高い点で、第4級アンモニウム塩であることがより好ましい。 界面活性剤には、液体の表面張力を低下させる効果及び界面活性剤の親水性部位がセルロース系ナノファイバーに吸着し、疎水性部位が外側に向くことによる疎水化効果あり、乾燥時にセルロース系ナノファイバー同士の凝集を弱める働きがあると考えられる。

    本実施形態に係る多孔質体は、JIS P 8117 :2009「紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー法」に従って測定した透気抵抗度(王研)が10000s以下であることが好ましい。 より好ましくは、100s以下である。 10000sを超えると、流体透過性に劣る場合がある。

    本実施形態に係る多孔質体では、網目形成率が10%以上であることが好ましい。 より好ましくは、50%以上である。 10%未満では、網目状構造体形成による効果が劣る場合がある。 ここで、網目形成率は、多孔質体表面のSEMを用いて得た電子顕微鏡画像から、任意の10μm×10μmの面積を選び、その中に存在する孔の数に対し、網目状構造体が形成された孔の数の比率を算出した。 この操作を任意の5箇所について実施し、平均値を求めた。

    本実施形態に係る多孔質体は、開孔率が10〜99%であることが好ましい。 より好ましくは、50〜90%である。 10%未満では、流体透過性に劣る場合がある。 99%を超えると、物理的強度が弱くなる場合がある。 ここで、開孔率は、多孔体表面のSEMを用いて得た電子顕微鏡画像から、任意の5μm×5μmの面積を選び、その中に存在する網目状構造体が形成された孔において、閉塞していない部分の合計面積が孔全体に占める比率を算出した。 この操作を任意の10箇所について実施し、平均値を求めた。

    本実施形態に係る多孔質体の製造方法は、数平均繊維径が1〜100nmのセルロース系ナノファイバーを分散媒に分散したナノファイバーの分散液を調製する分散液調製工程と、該分散液を多数の孔が連通した多孔質の支持体に付着する付着工程と、該分散液が付着した支持体を乾燥して、前記分散媒を除去する乾燥工程と、を有し、前記セルロース系ナノファイバーの原料が、木材由来のクラフトパルプ、サルファイトパルプ、古紙パルプ、機械パルプ及び非木材パルプのうち少なくともいずれか一種を含む。

    <分散液調製工程>
    まず、セルロース系ナノファイバーが分散媒に分散したナノファイバーの分散液を調製する。 分散液の調製は、セルロース系ナノファイバー分散液を希釈することで所望の濃度の分散液を得るか、又はセルロース系ナノファイバーを所望の濃度になるように分散媒に添加して分散液を得てもよい。 ここで、セルロース系ナノファイバー分散液は、例えば、前述した特許文献1に記載したセルロース系ナノファイバーの製造方法において、分散工程で得たセルロース系ナノファイバー分散液であり、製造するか、又は市販品を利用するかを問わない。 セルロース系ナノファイバーは、例えば、前述した特許文献1に記載したセルロース系ナノファイバーの製造方法において、乾燥工程で得た分散媒から分離したセルロース系ナノファイバーであり、製造するか、又は市販品を利用するかを問わない。 ナノファイバー分散液を希釈する方法が、ナノファイバーの凝集が少なく、均一な繊維径を有する点でより好ましい。 本実施形態では、セルロース系ナノファイバー分散液を希釈する方法又はセルロース系ナノファイバーを分散媒に分散する方法に制限されないが、例えば、スクリュー型ミキサー、パドル型ミキサー、ディスパー型ミキサー、タービン型ミキサーなどの公知の分散機で分散液とすることができる。 また、高速回転下でのホモミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波分散処理、ビーター、ディスク型レファイナー、コニカル型レファイナー、ダブルディスク型レファイナー、グラインダーなどの強力な叩解能力のある装置を用いることで、より微細化されたナノファイバーの分散液を得ることができる。

    分散液は、ナノファイバーを分散液の全質量に対して、固形分濃度で0.001〜0.500質量%含有することが好ましい。 より好ましくは0.010〜0.100質量%であり、特に好ましくは、0.03〜0.100質量%である。 0.001質量%未満では、支持体の孔内に網目状構造体が形成されない場合がある。 0.500質量%を超えると、乾燥時にナノファイバーが積層されて、通気性のないフィルムとなる場合がある。

    本実施形態では、安全面、環境面及び設備面の観点から、分散媒が水であることが好ましい。 ただし、必要に応じて、親水性の有機溶媒を使用することができる。 親水性の有機溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec‐ブタノール、tert‐ブタノール、2‐メトキシエタノール、2‐エトキシエタノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、1,4‐ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、N,N‐ジメチルホルムアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイドである。

    本実施形態では、分散液が、更に界面活性剤を含有し、界面活性剤を前記分散液の全質量に対して、固形分濃度で0.0001〜1.0000質量%含有することが好ましい。 より好ましくは0.0010〜0.1000質量%であり、特に好ましくは、0.0100〜0.0500質量%である。 これによって、ナノファイバーの凝集抑制効果が得られ、乾燥時にセルロース系ナノファイバー同士の凝集を弱め、支持体の孔内に網目状構造を維持することができる。 0.0001質量%未満では、界面活性剤の効果が得られない場合がある。 1.0000質量%を超えると、ナノファイバーの形状を維持できなくなり、支持体の孔内に網目状構造体を形成できない場合がある。

    <付着工程>
    分散液を支持体に付着させる方法は、本実施形態では限定されず、例えば、含浸法、塗布法、噴霧法である。 分散液の湿潤付着量は、支持体の厚さ、材質及び平均細孔径に応じて適宜調整するものであるが、支持体の単位面積あたり1〜1000g/m とすることが好ましい。 より好ましくは、10〜500g/m である。 1g/m 未満では、分散液が支持体全体に行き渡らない場合がある。 1000g/m を超えると、分散液が過剰となり、流体透気性に劣る多孔質体となる場合がある。

    含浸法は、例えば、支持体を分散液に完全に浸漬する方法、支持体の表面だけを浸す方法がある。 支持体を分散液に完全に浸漬する方法は、支持体の孔内の奥部まで分散液を効率的に、かつ、確実に浸透することができるため、より均一なナノファイバーの網目状構造体を形成できる点で優れている。 また、支持体を分散液に完全に浸漬したまま減圧すると、支持体内のエアーが抜けやすくなるため、分散液を浸透させるにはより効果的である。 なお、過剰に付着した分散液は、ロール脱水機などで絞り出したり、吸水フェルト、吸水紙などで除去したりすることが好ましい。 支持体の表面だけを浸す方法は、支持体の厚み方向で、孔内の網目状構造体の密度差を設ける場合に有効である。

    塗布法は、公知の塗布機で分散液を支持体表面に塗布する方法である。 公知の塗布機は、例えば、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、コンマコーター、ブレードコーター、カーテンコーターである。 塗布法は、支持体への分散液の付着量の制御が容易な点で優れている。

    噴霧法は、霧吹き、スプレーなどの公知の噴霧器を用いて分散液を支持体表面に噴霧する方法である。 噴霧法は、例えば、孔のうち、支持体の表面近傍にだけナノファイバーの網目状構造体を形成する場合、網目状構造体の厚さを薄くしたい場合に有効である。

    <乾燥工程>
    乾燥方法としては、熱、減圧などによる強制乾燥、大気中に放置することによる自然乾燥を選択することが好ましい。 熱乾燥する場合の温度としては、支持体及びナノファイバーが分解、変形などを受けない温度でなければならない。 乾燥温度は、支持体及びナノファイバーの種類によって異なるが、例えば、支持体としてポリカーボネートタイプのメンブレンフィルターを用い、ナノファイバーとして特許文献1に記載のナノファイバーを用いた場合には、20〜120℃とすることが好ましい。 より好ましくは、50〜110℃である。 20℃未満であると、乾燥に時間が掛かるため効率的でない。 120℃を超えると、支持体の軟化点を越えて変形してしまうおそれがある。 また、支持体としてガラス繊維を用い、ナノファイバーとして特許文献1に記載のナノファイバーを用いた場合には、20〜200℃とすることが好ましい。 より好ましくは、50〜120℃である。 20℃未満であると、乾燥に時間が掛かるため効率的でない。 200℃を超えると、セルロース系ナノファイバーが熱分解してしまうおそれがある。 本実施形態では、多孔質の支持体を用いることで、分散液の乾燥時にナノファイバーに対して生じる凝集力を分散し、更には多数の微小薄膜を支持体の各孔内で形成してから乾燥することによって、微小薄膜中に分散していたナノファイバーは水が蒸発しても網目状構造を維持したまま残っているものと考えられる。

    本実施形態に係る多孔質体の製造方法では、分散液を支持体の孔中に均一に存在することが重要である。 本実施形態では、ナノファイバーを分散する分散媒を水とし、支持体を親水性の支持体とすることが好ましい。 さらには、ナノファイバーとして特許文献1のセルロース系ナノファイバーを用いることが特に好ましい。 セルロース系ナノファイバーは、分子中の親水性官能基故の高い親水性を有するため、分散媒を水とすることによって、ナノファイバーがより均一に分散した分散液を得ることができる。 特に、特許文献1のセルロース系ナノファイバーは、分子中の水酸基の一部が負の電荷を有するカルボキシル基に置換されており、ナノファイバー間に静電的反発力が働くため、更に均一に、かつ、安定した分散液を得ることができる。 さらに、支持体を親水性とすることによって、ナノファイバーの水分散液を支持体の孔内に均一に存在することができ、結果としてナノファイバーを孔内に均一に存在することができる。 また、支持体を親水性とすることによって、ナノファイバー分散液の微小薄膜を安定的に形成し、分散媒である水を熱乾燥又は自然乾燥で除去しても、網目状構造体が均一に形成された多孔質体を得ることができる。 分散液に、更にカチオン性の界面活性剤を含有することによって、分散液の表面張力が低下して、支持体への濡れ性をより高めることができる。 さらに、乾燥時にナノファイバー同士の凝集を弱めることができる。 他方、特許文献5をはじめとするナノファイバーとして、熱可塑性ポリマーを用いた多孔質体では、熱可塑性ポリマーは疎水性であるため、微小薄膜中でナノファイバーを均一に分散することが困難である。

    次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。 また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。

    [ナノファイバー分散液1の調製]
    乾燥重量で2.00g相当分のNBKP(主に1000nmを超える繊維径の繊維から成るもの)と、0.025gのTEMPO(2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン‐1‐オキシラジカル)と、0.25gの臭化ナトリウムと、を水150mlに分散した後、13%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、パルプ1.00gに対して、次亜塩素酸ナトリウムの量が5.00mmolとなるように次亜塩素酸ナトリウムを加えて反応を開始した。 反応中は、0.50mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10に保った。 2時間反応した後、反応物をろ過し、十分水洗することで酸化セルローススラリーを得た。 0.15質量%の酸化セルローススラリーをホモジナイザー(型式NS‐56、マイクロテック・ニチオン社製)を用いて、15000rpmで8分間解繊処理し、遠心分離によって粗大繊維の除去を行った後、更に超音波ホモジナイザー(型式US‐300T、日本精機製作所社製)で4分間解繊処理し、透明で粘性のあるセルロース系ナノファイバー分散液1を得た。 このナノファイバー分散液1を、TEMを用いて倍率50000倍で観察した観察画像から解析した結果、数平均繊維直径は4nmであり、数平均繊維長は1.1μmであった。

    [ナノファイバー分散液2の調製]
    原料にLBKP(主に1000nmを超える繊維径の繊維から成るもの)を用いた以外は、ナノファイバー分散液1と同様にして、セルロース系ナノファイバー水分散液2を得た。 このナノファイバー分散液2を、TEMを用いて倍率50000倍で観察した観察画像から解析した結果、数平均繊維直径は4nmであり、数平均繊維長は、1.0μmであった。

    (実施例1)
    [分散液調製工程]
    ナノファイバー分散液1を、ナノファイバーの固形分濃度が、分散液の全質量に対して0.050%となるよう希釈してナノファイバーの分散液を得た。 該分散液にカチオン性界面活性剤として臭化セチルトリメチルアンモニウム(和光純薬工業社製)を分散液の全質量に対して、固形分濃度で0.010%となるように添加した。 分散液の全固形分濃度は、0.060%となった。

    [付着工程]
    多数の孔が連通した多孔質支持体として、平均細孔径が0.8μmのポリカーボネートタイプメンブレンフィルター(ADVANTEC社製)を用い、この支持体の全体を前記分散液に浸漬した。 浸漬後メンブレンフィルター表面に付着した余分な分散液を吸水紙で除いた。 分散液に浸漬前後の支持体質量の差分を付着量として算出したところ、付着量は10g/m であった。

    [乾燥工程]
    分散液が付着した支持体を、乾燥温度105℃及び乾燥時間5分の乾燥条件で乾燥機を用いて乾燥して、多孔質体を得た。 ここで、網目状構造体中の界面活性剤の含有量は、ナノファイバーの乾燥質量に対して20%であった。

    (実施例2)
    ナノファイバー分散液2を用いた以外は、実施例1と同様にして多孔質体を得た。

    (実施例3)
    実施例1の乾燥工程において、乾燥条件を、乾燥温度30℃及び乾燥時間1時間とした以外は、実施例1と同様にして多孔質体を得た。

    (実施例4)
    実施例1の分散液調整工程において、ナノファイバーの固形分濃度を、分散液の全質量に対して0.010%とし、かつ、界面活性剤を、分散液の全質量に対して固形分濃度で0.0020%とした以外は、実施例1と同様にして多孔質体を得た。 ここで、支持体への分散液の付着量は、10g/m であり、網目状構造体中の界面活性剤の含有量は、ナノファイバーの乾燥質量に対して20%であった。

    (実施例5)
    実施例1の分散液調整工程において、ナノファイバー分散液1を濃縮して、ナノファイバーの固形分濃度を、分散液の全質量に対して0.60%とし、かつ、界面活性剤を、分散液の全質量に対して固形分濃度で0.12%とした以外は、実施例1と同様にして多孔質体を得た。 ここで、支持体への分散液の付着量は、10g/m であり、網目状構造体中の界面活性剤の含有量は、ナノファイバーの乾燥質量に対して20%であった。

    (実施例6)
    実施例1の付着工程において、支持体として、目付が64g/m 、平均細孔径が2.7μmのガラス繊維シートを用い、付着量を150g/m とした以外は、実施例1と同様にして支持体に分散液を付着した。 さらに、実施例1の乾燥工程において、乾燥条件を、乾燥温度105℃及び乾燥時間10分とした以外は、実施例1と同様にして多孔質体を得た。 ここで、網目状構造体中の界面活性剤の含有量は、ナノファイバーの乾燥質量に対して20%であった。

    (実施例7)
    実施例1の付着工程において、支持体として、目付が40g/m 、平均細孔径が15μmのガラス繊維シートを用い、付着量150g/m とした以外は、実施例1と同様にして支持体に分散液を付着した。 さらに、実施例1の乾燥工程において、乾燥条件を、乾燥温度105℃及び乾燥時間10分とした以外は、実施例1と同様にして多孔質体を得た。 ここで、網目状構造体中の界面活性剤の含有量は、ナノファイバーの乾燥質量に対して20%であった。

    (実施例8)
    実施例1の分散液調整工程において、界面活性剤を用いなかった以外は、実施例1と同様にして多孔質体を得た。 ここで、支持体への分散液の付着量は、10g/m であった。

    (実施例9)
    実施例1の分散液調整工程において、ナノファイバー分散液1に代えて、ナノファイバーとしてスラリー状のMFC(セリッシュKY‐100G、ダイセル化学工業社製)を用いた。 ここで、MFCは家庭用ミキサーで離解した後、遠心分離によって粗大繊維を除いた。 電子顕微鏡を用いて倍率10000倍で観察した観察画像から解析した結果、ナノファイバーの数平均繊維径は、64nmであり、数平均繊維長は、6.2μmであった。 ナノファイバー分散液の固形分濃度が、分散液の全質量に対して0.150%となるように調製し、ナノファイバーの分散液を得た。 該分散液にカチオン性界面活性剤として臭化セチルトリメチルアンモニウム(和光純薬工業社製)を分散液の全質量に対して、固形分濃度で0.030%となるように添加した分散液として用いた以外は、実施例1と同様にして多孔質体を得た。 分散液の全固形分濃度は、0.180%となった。 また、支持体への分散液の付着量は、10g/m であり、網目状構造体中の界面活性剤の含有量は、ナノファイバーの乾燥質量に対して20%であった。

    (比較例1)
    実施例1の分散液調製工程で得た分散液をガラス製のシャーレに目付が2g/m となるよう注ぎ、乾燥温度105℃及び乾燥時間6時間で乾燥して透明なシートを得た。

    (比較例2)
    実施例1の分散液調整工程において、ナノファイバー分散液1に代えて、ナノファイバーとしてスラリー状のMFC(セリッシュKY‐100G、ダイセル化学工業社製)を用いた。 ここで、MFCは家庭用ミキサーで離解した後、遠心分離によって微細繊維を除いた沈殿物を用いた以外は、実施例9と同様にして多孔質体を得た。 電子顕微鏡を用いて倍率5000倍で観察した観察画像から解析した結果、ナノファイバーの数平均繊維径は、430nmであった。 ナノファイバーの数平均繊維長は、20μmを超えるのが確認できたが、観察画像からは全長は確認できなかった。 また、支持体への分散液の付着量は、10g/m であり、網目状構造体中の界面活性剤の含有量は、ナノファイバーの乾燥質量に対して20%であった。

    得られた実施例の多孔質体及び比較例のシート及び多孔質体について、次に示す方法によって評価を行い、評価結果を表1に示す。

    「透気抵抗度上昇値」
    支持体、得られた実施例の多孔質体及び比較例のシート及び多孔質体について、JIS P 8117 :2009「紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー法」に従い、王研式平滑度透気度試験器(型式KY‐5、旭精工社製)を用いて測定した。 支持体だけの透気抵抗度(A)と支持体にナノファイバーを付着した多孔質体の透気抵抗度(B)とをそれぞれ求め、AとBとの差分を透気抵抗度上昇値として算出した。 ここで、本発明で用いた支持体のブランクでの透気抵抗度はすべて4s以下であった。

    「ナノファイバー網目状態」
    ナノファイバーが形成した網目状構造体を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、次に示す基準で目視評価を行った。 図1に実施例1の多孔質体のSEM画像を、図2に実施例6の多孔質体のSEM画像を、そして図3に実施例8の多孔質体のSEM画像を示す。
    ◎:網目形成率が80%以上であり、かつ、開孔率が50%以上90%以下であり、ナノファイバーの凝集及び/又は積層が少なく、支持体のすべての孔内に均一な網目構造体を形成している(実用レベル)。
    ○:網目形成率が10%以上80%未満であり、かつ、開孔率が50%以上90%以下であり、ナノファイバーの凝集及び/又は積層が少なく、支持体の一部の孔内に網目構造体が未形成である(実用レベル)。
    △:網目形成率が10%以上であり、かつ、開孔率が10%以上50%未満であり、ナノファイバーの凝集及び/又は積層が部分的にある(実用下限レベル)。
    ×:網目形成率が10%未満であるか、又は、網目形成率が10%以上であり、かつ、開孔率が10%未満であり、ナノファイバーは凝集及び/又は積層しており、網目を形成していない(実用に適さないレベル)。

    表1及び図1〜図3からわかるように、実施例1〜9の多孔質体は、支持体の孔内に、セルロース系ナノファイバーが張り巡らせて形成した網目状の構造体をもっており、表面積が大きく、多孔質体の透気抵抗度は、すべて10000s以下であり、流体透過性を有するものであった。 極めて繊維径が細く、かつ、親水性の高いセルロース系ナノファイバーを含む流体透過性のある多孔質体を、比較的簡便な製法で得られることが確認できた。

    実施例1〜実施例3は、支持体の大部分の孔内に均一なナノファイバーの網目状構造体が形成されていた。 実施例4は、実施例1よりも分散液中のナノファイバーの固形分濃度が少なかったため、支持体の一部の孔にナノファイバーの網目状構造体が形成されておらず、透気抵抗度が実施例1よりも小さくなった。 実施例5は、実施例1よりも分散液中のナノファイバーの固形分濃度が多かったため、支持体の孔内で、ナノファイバーの積層が見られ、透気抵抗度が実施例1よりも大きくなった。 実施例8は、支持体の一部の孔にナノファイバーの網目状構造体が形成されていなかった。 これは、分散液に界面活性剤を添加しなかったため、実施例1よりも分散液の支持体の孔中へ浸透しにくかったことが原因と考えられ、界面活性剤の効果を確認することができた。 実施例9は、ナノファイバーとしてより微細なMFCを使用したが、支持体の孔内に均一なナノファイバーの網目状構造体が形成されていた。 また、実施例6及び実施例7は、支持体としてガラス繊維シートを用い、実施例1で使用したメンブレンフィルターよりも平均細孔径が大きいが、支持体の孔内にナノファイバーの網目状構造体が形成された多孔質体を得ることができた。

    比較例1は、支持体を用いなかったため、ナノファイバーが凝集して、透気抵抗度が高く、流体透過性に劣るものとなった。 比較例2は、ナノファイバーの数平均繊維径が100nmを超えたため、支持体の孔内に網目状構造体が形成されなかった。

    本発明に係る多孔質体は、極めて繊維径が細く、かつ、親水性の高いセルロース系ナノファイバーを含み、流体透過性のある多孔質体を低コストで提供できる。 したがって、本発明に係る多孔質体は、機能性フィルター、ワイピング材料、電子デバイス材料、再生医療材料など様々な分野・用途に好適に用いることができる。

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