【発明の詳細な説明】 【0001】 (発明の分野) 本発明はナノ粒子、好ましくは金属ナノ粒子を対象とし、更に、ナノ粒子の製造方法及びさまざまな用途での使用方法を対象とする。 本発明の好ましいある実施形態では、ナノ粒子を使用して情報をコード化することができ、これによってナノ粒子が分子(又は細胞)タグ、ラベル及び基板の働きをする。 【0002】 (発明の背景) 本発明は、セグメント化(segmented)された粒子の組成物、区別可能な粒子の集合(セグメント化の有無は問わない)、及びそれらの使用法に関する。 【0003】 疑いなく、伝統的に生物分析化学(bioanalytical chemi stry)として定義されてきたものの理論的枠組みに変化が生じた。 これらの新しい技術の主要な焦点は、「体積あたりの増大した情報量(increase d per volume information content)」と呼ぶことができるものを生み出すことである。 この用語は、検定(assay)の実施に必要な試料量の低減から、固定化した分子アレイを含む測定などの高度並行測定(「多重化」)、2Dゲル電気泳動、CE−エレクトロスプレー(ele ctrospray)MS/MSなどの第2(又は第3)の情報チャネルの組込みに至る、いくつかの方法を包含する。 【0004】 残念なことには、革命的と思われるこれらの技術の多くが、比較的に平凡な材料、方法及び分析に依存することによって制限されていることである。 例えば、 Affymetrix社、Incyte社及び同様の企業による、遺伝子発現分析及びゲノタイピング(genotyping)用のDNAマイクロアレイ(「 遺伝子チップ」)の開発は、最高20,000個の異なるDNAの断片又は完全な長さのDNA片を、空間的に画定された1cm 2アレイ中に固定する手段を生み出した。 しかし同時に、これらのチップの使用は全ての場合に、溶液中のDN Aを平面上に固定されたDNAにハイブリッド形成することを必要とし、これは、(特にcDNAの)ハイブリッド形成効率の低下、及び非常に大きな非特異的結合の程度によって特徴付けられる。 これらの問題を完全に解決することができるかどうかは定かではない。 更に、外部技術を取得するコストとDNAアレイを内部的に開発するのに必要なリードタイムの両面で、一般的な失望感がある。 【0005】 劣ったツールによって革新が遅れる第2の例は、コンビナトリアル化学(co mbinatorial chemistry)による医薬品の発見である。 現在、分子固定部位として、直径5から10μmのラテックスビーズの溶液相が広く使用されている。 広く採用されている「スプリットアンドプール(split and pool)」戦略を利用して、100,000種以上の化合物のライブラリを簡単かつ迅速に生み出すことができる。 その結果、薬物発見の障害は合成から、スクリーニング及びこれと同等に重要な化合物の同定(すなわちどの化合物がどのビーズにあるか?)へとシフトした。 後者の現行の方法は、「ビードエンコーディング(bead encoding)」を含み、これによってビードに適用されたそれぞれの合成段階が、有機「コード」分子の並列付加によって記録され、そのコードを読み取ることによって、ビード上に導かれた識別すべき薬物を識別することができる。 残念ながら、この「コード読取り」プロトコルは最適にはほど遠い。 いずれの戦略でも、コード分子は、ビードから切り離し、H PLC、質量分析法又は他の方法によって別々に分析しなければならない。 言い換えると、薬物が存在する複数のビードに直接かつ迅速に問い合わせることによって、潜在的に興味深い薬物候補を同定できることが望ましい多数のスクリーニングプロトコルがあったとしても、そのような方法は現在のところない。 【0006】 コンビナトリアル化学と遺伝子分析の両方に潜在的な関連を有する2つの代替技術は、空間的に画定された位置に代わって、スペクトルによって識別可能なビードを使用する「自己コード化ビーズ」(self−encoded bead s)を含む。 Waltとその同僚たちによって開拓された方法では、ビーズを一意的に識別するためのある比の蛍光染料を用いてビーズを化学的に修飾し、次いで、固有のケミストリ(例えば異なる抗体又は酵素)で更に修飾する。 次いでこのビードを、エッチングされたファイバーアレイ上にランダムに分散させ、1つのビードがそれぞれのファイバに関連づけられるようにする。 ビードの同一性は、その蛍光読み取りによって確かめられ、分析物(analyte)は、同じファイバの異なるスペクトル領域の蛍光リードアウトによって検出される。 このトピックに関する影響力の強い論文(Michael et al.,Anal. Chem. 70 1242−1248(1998))には、異なる6種の染料( 対にして合計15の組合せ)及び異なる10の染料比を用いると、それぞれが異なるビード「フレーバー」を表す150の「ユニークな光学サイン」を生み出すことができることが指摘されている。 Luminex社の研究者によって非常によく似た戦略が記述されている。 彼らは、化学修飾の準備ができた(市販の10 0種の)フレーバーの付けられたビードを、フローサイトメトリーに似た分析と組み合わせた(例えばMcDade et al.,Med.Rev.Diag . Indust. 19 75−82(1997)を参照されたい)。 ここでもやはり、粒子フレーバーは蛍光によって決定され、生化学種をビード上に配置すると、分析物の存在のため生み出されたスペクトル的にはっきりした蛍光を読み取ることができる。 現在の構成では、粒子フレーバーを求めるのに1色のレーザの使用が必要であり、生物学的測定蛍光体群を励起させるのに別のレーザが必要であることに留意されたい。 【0007】 自己コード化されたラテックスビーズとのより重要な関わりは、分子蛍光に関連した広い帯域幅によって課せられる限界である。 コード化と生物学的測定の両方に分子蛍光の周波数空間を使用する場合には、例えば最高20,000の異なるフレーバーをどのように生み出すかを想像することが難しい。 この問題は、より狭い蛍光帯域幅を示すガラスコーティングされた量子ドットの組合せの使用によって、いくぶん軽減されるかもしれない(例えばBruchez et al . ,Science,281,2013−2016(1998)を参照されたい)。 しかし、これらの「デザイナー」ナノ粒子は調製が非常に難しく、現在のところ、(公表された)量子ドットの数よりも多くのタイプの蛍光体(複数)(f luorophores)が存在する。 しかし、内因的に区別可能な非常に多数の粒子をなんらかの手段によって生み出すことができる場合には、コンビナトリアル化学、ゲノミックス(genomics)及びプロテオミックス(prot eomics)を含む(多重免疫検定を介した)複数の高情報量研究分野に対して単一の技術プラットホームを考えることができる限りにおいて、粒子ベースの生物分析は例外的に魅力的であろう。 【0008】 以前の研究は元来、金属被覆された膜の細孔に金属を付着させて、ホスト膜に埋め込まれた金属ナノ粒子のアレイを作る方法を教示した。 それらの焦点は、これらの材料の光学的及び/又は電気化学的特性に置かれた。 同様の技法を使用して、組成が長さに沿って変化するセグメント化された円筒形磁気ナノ粒子がホスト膜中に作られた。 しかし、長さに沿って組成が変化する独立式のロッド形ナノ粒子はまだ調製されていない。 実際、長さが少なくとも1ミクロンである単一組成の「独立」ロッド形金属ナノ粒子はこれまで報告されていない。 同様に、このようなホスト物質内に埋め込まれず、又は他の方法でもホスト物質に含まれない独立ロッド形金属ナノ粒子もこれまで報告されていない。 【0009】 (発明の概要) ロッドの長さに沿って組成が変化するロッド形ナノ粒子を調製した。 これらの粒子は、ナノ粒子又はナノバーコードと呼ばれるが、実際には、全て又はいくつかの寸法がミクロン範囲でもよい。 【0010】 本発明は、複数のセグメントを含み、長さが10nmから50μm、幅が5n mから50μmである独立粒子を含む。 本発明の粒子のセグメントは任意の材料から成ることができる。 可能な材料には、金属、任意の金属カルコゲニド(me tal chalcogenide)、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物、金属合金、金属窒化物、金属リン化物、金属アンチモン化物、半導体、半金属、任意の有機化合物又は材料、任意の無機化合物又は材料、 微粒子材料層、及び複合材料が含まれる。 本発明の粒子のセグメントは、ポリマー材料、結晶質材料、非晶質材料、無定形材料又はガラスから成ることができる。 本発明の好ましいある実施形態では、粒子が「機能化(functional ized)」されている(例えば、粒子の表面がIgG抗体で覆われている)。 このような機能化は、選択されたセグメント又は全てのセグメント、粒子本体、 あるいは粒子の一方又は両方の先端に取り付けることができる。 機能化は実際に、セグメント又は粒子全体を覆うことができる。 一般に、このような機能化は、 抗体、抗体断片、オリゴヌクレオチド(oligonuctiotide)などの有機化合物、無機化合物、及びそれらの組合せを含むことができる。 このような機能化は更に、検出可能タグであることができ、又は検出可能なタグを結合する種を含むことができる。 【0011】 更に本発明には、複数のタイプの粒子を含む粒子の組合せ又は集合であって、 それぞれの粒子の長さが10nmから50μmであり、それぞれの粒子が複数のセグメントから成り、粒子のタイプが区別可能である粒子の組合せ又は集合が含まれる。 好ましい実施形態では、粒子のタイプが、粒子の長さ、幅又は形状、及び/又は前記セグメントの数、組成、長さ又はパターンの違いに基づいて区別可能である。 他の実施形態では、粒子が、それらの機能化の性質又は物理特性(例えば質量スペクトル分析(mass spectrometry)又は光散乱によって測定される特性)に基づいて区別可能である。 【0012】 本発明は更に、粒子及び機能単位(例えば表面のIgG抗体)から成り、前記粒子が複数のセグメントを含み、前記粒子の長さが10nmから50μmである組成物を含む。 ある実施形態では、機能単位の特定の性質が粒子によって、好ましくは粒子の長さ、幅又は形状、及び/又はセグメントの数、組成、長さ又はパターンに基づいてコード化されている。 【0013】 本発明は、複数のタイプの粒子を含み、それぞれの粒子の少なくとも1つの寸法が10μm未満であり、粒子のタイプが区別可能である粒子の集合を含む。 粒子のタイプが、粒子の長さ、幅、形状及び/又は組成に基づいて区別可能であることが好ましい。 本発明には更に、粒子及び機能単位から成り、前記粒子の少なくとも1つの寸法が10μm未満であり、機能単位の性質が粒子によってコード化されている組成物が含まれる。 【0014】 本発明は、材料又は製品(例えば塗料、ゴム、金属、木材、布地、火薬、紙、 プラスチック、ガラス、ポリスチレンビーズなど)についての情報をコード化する方法であって、前記材料又は製品に、それらに関する情報をコード化した独立粒子を混合し、又は取り付けることを含み、前記粒子が複数のセグメントを含み、粒子の長さが10nmから50μm、幅が5nmから50μmであり、前記コード化された情報が、粒子の長さ、幅又は形状、及び/又はセグメントの数、組成、長さ又はパターンに基づく方法を含む。 【0015】 本発明には更に、分析物の濃度又は活性の検定又は測定を実施する方法が含まれる。 このような方法は、前記分析物を含む可能性がある溶液を、複数のセグメントを含む粒子に結合した、前記分析物と相互作用する分子、化学種又は材料を含む組成物と接触させることを含み、前記粒子の長さが10nmから50μm、 幅が5nmから50μmであり、更に、相互作用が起こったかどうかを検出することを含む。 このような方法には更に、気相又は固相中の分析物の検定又は測定を実施する方法が含まれる。 【0016】 更に、分析物の濃度又は活性の複数の検定又は測定を複数の分析物に同時に実施する方法であって、前記分析物を含む可能性がある溶液を複数の組成物と接触させることを含み、それぞれの組成物が、複数のセグメントを含む粒子に結合した、前記分析物の1つと相互作用する分子、化学種又は材料を含み、粒子の長さが10nmから50μm、幅が5nmから50μmであり、前記組成物の性質が、それが結合した粒子によってコード化されており、更に、どの相互作用が起こったかを検出することを含む方法も教示される。 【0017】 (発明の詳細な記述) 本発明はナノ粒子を対象とする。 このようなナノ粒子及びその使用については、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる2000年6月20日出願の「ナノバーコードとしてのコロイド状ロッド粒子(Colloidal Rod Particles as Nanobar Codes)」という名称の米国実用出願継続番号第09/598395号に詳細に記載されている。 本出願と同時に、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる「ナノバーコードとしてのコロイド状ロッド粒子の製造方法(Methods of Manufac ture of Colloidal Rod Particles as N onobar Codes)」及び「ナノバーコードとしてのコロイド状ロッド粒子の画像形成方法(Methods of Imaging Colloid al Rod Particles as Nanobar Codes)」という名称の2つの米国実用出願が出願されている。 本出願は、第09/5983 95号出願の一部継続出願として提出される。 【0018】 バーコーディングは巨視的世界で非常に広く使用されており、そのためその概念が、さまざまな比喩的表現の中で分子的世界にも翻訳された。 したがって、オープン読取り枠(open reading frame)の分析に基づく「バーコード」、同位体の質量変動に基づくバーコード、化学的又は物理的リポータービーズストリングに基づくバーコード、制限酵素によって切断したmRNAの電気泳動パターンに基づくバーコード、走査プローブ顕微鏡法を使用して生物学的分子を再現可能に画像化するためのバーコード化された表面、及び多発色体蛍光in situハイブリッド形成によって生み出される染色体バーコード(別名染色体ペインティング)がある。 これらの方法は全て、生物学的情報をコード化する方法を含むが、ナノメートルスケールに変換された、本発明の真のバーコードの利点を提供するものはない。 【0019】 本発明の粒子は、ナノ粒子、ナノバーコード、ロッド及びロッド形粒子とも呼ばれる。 これらの記述のいずれもが本発明の範囲を限定すると考えられるのであれば、その考えは無視すべきである。 例えば、本発明のある実施形態では粒子組成が情報内容を含むが、このことが、本発明の全ての実施形態に当てはまるわけではない。 同様に、本発明の範囲にはナノメートルサイズの粒子が含まれるが、 本発明の粒子が全てこのようなサイズ範囲に含まれるわけではない。 【0020】 本発明の好ましい実施形態では、ナノバーコード粒子が、アルミナ又はポリカーボネートテンプレート中への電気化学的付着、及びそれに続くテンプレートの溶解によって作られ、一般に、金属イオンの電気化学的還元を交互にすることによって調製されるが、テンプレート材料を含み、又は含まない他の手段によっても簡単に調製することができる。 ナノバーコードの幅は一般に30nmから30 0ナノメートルである。 ただし数ミクロンとすることもできる。 同様に、材料の長さ(すなわち長寸法)は一般に1から15ミクロン程度であるが、50ミクロンという長いもの、及び10ナノメートルという短いものも簡単に調製することができる。 いくつかの実施形態では、ナノバーコードが、その長さに沿って交互に並ぶ2種以上の異なる材料を含む。 ただし原理的には、何十種類もの異なる材料を使用することができる。 同様にセグメントは、ポリマー、酸化物、硫化物、 半導体、絶縁体、プラスチック、及び有機又は無機化学種の薄膜(すなわち単分子層)を含む非金属材料から成ることができる。 ただしこれらに限定されるわけではない。 【0021】 本発明の粒子を電気化学的付着によって製作するときには、それぞれの電気めっき段階中に流す電流の量を制御することによってセグメントの長さを調整することができる。 粒子(又は粒子セグメント)の密度及び気孔率も同様に、電気化学的に制御することができる。 【0022】 得られるロッドは、それぞれのセグメントの長さ(及び独自性)を前もってプログラムすることができる、ナノメートルスケールの「バーコード」になぞらえることができる。 セグメントの長さ又は他の属性を制御することができる他の製造方法を使用しても、同じ結果を達成することができる。 ロッドの直径及びセグメントの長さは一般にナノメートル寸法であるが、その全長さは、好ましい実施形態において、金属成分の反射率差を利用して光学顕微鏡中で直接に視覚化することができる長さである。 【0023】 バーコードという用語は的を射ている。 なぜなら、例えば(それぞれ異なる反射率を有する)4種の異なる材料から成るセグメントを有する粒子を有する9セグメントロッドが調製されているからである。 したがってこの例では、4 9 (> 260,000)タイプの固有のバーコードナノ粒子が潜在的に調製可能である。 粒子の直径又は幅、セグメントの長さ及び粒子全体の長さを変えることができること、及びすでに使用可能な材料に追加することができる莫大な数の追加材料があることを考えると、実際の数はこれよりも多い。 ポイントは、文字通り何十億もの固有の(識別可能な)組成物があることである。 【0024】 バーコードナノ粒子の第2の重要な特徴は、複数の自己集合単分子層(SAM s)、複数のポリマー、複数の酸化物、その他の複数の金属、核酸、タンパク質、脂質及びこれらの組合せでの機能化(functionalization) を含む、あらゆる範囲の化学的表面機能化をナノ粒子表面に適用することができることである。 ただしこれらに限定されるわけではない。 したがって、それらを使用して、蛍光に基づくセンサをサポートすることができ(金属表面は、表面に閉じ込められた分子の蛍光を消さない)、反射率変化に基づく非常に新しい能動センサ素子を形成することもできる。 任意のセンサ構成をナノバーコード表面に書き替えることができるため、検出は、電気化学的方法、質量分析法、重量分析法、光学的方法、機械的方法及び他の多くの方法によっても達成することができる。 第一近似ではロッドは1D構造体であるので、同じ線寸法を有する球、特に平面に比べて、固定された生体分子への溶媒の接近が相当に強化されることに留意することが重要である。 このことは例えば、半球形微小電極、半無限円筒形微小電極及び巨視的平面電極に対する質量輸送方程式の検討によって簡単に確かめることができる。 したがって、より幅が狭いバーについては特に、その分子認識反応が、対応する溶液のそれと同じように振る舞う。 同じ理由で、非特異的結合は大幅に低減するはずである。 例えば幅200nm、長さ3μmのロッドの表面積は<0.1μm 2である。 要するに、円筒形ナノ粒子は、生物検定構成に有用な表面特性を提供する。 【0025】 複数のセグメントを有する粒子の合成及びキャラクタリゼーションが、マーチンその他(Martin et al.),Adv. Materials 11 :1021−25(1999)に記載されている。 この論文はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。 1999年10月1日出願の「自己バーコード貸したコロイド状金属ナノ粒子(Self Bar−coded Colloi dal Metal Nanoparticles)」という名称の米国特許仮出願第60/157326号、2000年3月14日出願の「ナノスケールバーコード(Nanoscale Barcodes)」という名称の米国特許仮出願第60/189151号、2000年3月17日出願の「バーコードとしてのコロイド状ロッド粒子(Colloidal Rod Particles a s Barcodes)」という名称の米国特許仮出願第60/190247号、及び2000年4月5日出願の「ナノバーコード:型表現化に対する技術基盤(Nanobarcodes:Technology Platform fo r Phenotyping)」という名称の米国特許仮出願第60/1946 16号も、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。 【0026】 本発明の粒子の範囲を説明するには図1を参照しなければならない。 この図には、本発明のナノバーコードの非制限的な可能な4つの形状が図式的に示されている。 これらの図では、それぞれの粒子が3つのセグメントA、B及びCから成り、長さと定義される寸法がx、幅と定義される寸法がyでそれぞれ示されている。 それぞれの実施形態では、長さが、セグメントの変わり目を定義する線に概ね垂直に走る軸線と定義され、幅は、セグメントの変わり目を定義する線に平行に走る粒子の寸法である。 図1Cから分かるように、粒子の幅は、粒子の長さにそって変化することができ、同様に、粒子の長さは粒子の幅に沿って変化することができる。 図1Dから分かるように、本発明の粒子は湾曲していてもよい。 本発明の粒子の他の可能な形状には、分岐した粒子、「T」字形粒子、又はドーナッツ形粒子が含まれる。 このような実施形態では、粒子の最大寸法を長さと呼び、それよりも短い、長さにほぼ垂直な寸法を幅と呼ぶと都合がよい。 本発明の粒子は1つにはそれらのサイズ、及び少なくとも2つのセグメントが存在することによって画定される。 粒子の長さは10nmから50μmとすることができる。 好ましい実施形態では粒子が500nmから30μmである。 最も好ましい実施形態では、本発明の粒子の長さが1から15μmである。 【0027】 本発明の粒子はしばしば「ロッド」形と称される。 しかし、長軸に沿って見た粒子の断面形状は任意である。 このような断面は円形、楕円形、正方形、菱形又は管形であることができる。 更に、この断面は、粒子の異なる部分によって変化することができる。 したがって粒子は、その一端で三角形の断面を有し、他端で円形の断面を有することができる。 あるいは粒子は、全体に円形の断面を有するが、その長さに沿って半径が変化する(例えば「円錐」形セグメント)。 本発明の好ましい実施形態では、断面が円形であり、粒子が「ロッド」形である。 本発明の粒子は多くの形状をとることができるが、本発明の連続したセグメントは球形ではない。 【0028】 本発明の粒子の幅又は直径は5nmから50μmの範囲にある。 好ましい実施形態では幅が10nmから1μmであり、最も好ましい実施形態では、幅又は横断寸法が30nmから500nmである。 【0029】 先に論じたとおり、本発明の粒子は、少なくとも2つのセグメントが存在することを特徴とする。 セグメントとは、粒子の隣接領域からなんらかの手段によって区別できる粒子の領域を表す。 図1Aを参照する。 この粒子のセグメントは粒子の長さを二分して、粒子全体と(概ね)同じ横断面及び幅を有し、粒子の全長の一部分を表す領域を形成している。 本発明の好ましい実施形態では、セグメントが、隣接セグメントとは異なる材料から成る。 しかし、すべてのセグメントが、その粒子の他の全てのセグメントから区別可能である必要はない。 例えば、粒子が、2つのタイプのセグメント、例えば金及び白金セグメントから成り、それでいて、金及び白金セグメントを単純に交互に配置することによって、10又は20の異なるセグメントを持つことができる。 本発明の粒子は少なくとも2つのセグメントを含み、50ものセグメントを含むこともできる。 本発明の粒子は2 から30個のセグメントを有することが好ましく、3から20個のセグメントを有することが最も好ましい。 粒子は、異なる2から10タイプのセグメントを有することができ、異なる2から5タイプのセグメントを有することが好ましい。 【0030】 本発明の粒子のセグメントは、その粒子の隣接セグメントから区別できることによって画定される。 セグメントを区別できる能力には、電磁気的、磁気的、光学的、分光測定的、分光分析的、及び機械的手段を含む物理的又は化学的問合せ手段によって区別することが含まれる。 ただし問合せ手段はこれらに限定されるわけではない。 本発明の好ましいある実施形態では、セグメント間の区別の問合せ方法が光学的方法(反射率)である。 【0031】 なんらかの手段によって区別できる限り、隣接するセグメントどうしが同じ材料であってもよい。 例えば、同じ元素材料の異なる相、又は有機ポリマー材料の鏡像異性体が隣接セグメントを形成することができる。 更に、例えば表面の機能化又は直径の変化によってセグメントを他のセグメントから区別できる場合には、単一の材料から成るロッドを、本発明の範囲に含まれるロッドとみなすことができる。 更に、有機ポリマー材料を含む粒子は、セグメントの相対的な光学特性を変化させる染料を含むことによって画定されるセグメントを有することができる。 【0032】 本発明の粒子の組成は、粒子を構成するセグメントの組成を記述することによって最もよく画定される。 1つの粒子は、組成が極めて異なる複数のセグメントを含むことができる。 例えば、単一の粒子が、金属である1つのセグメントと有機ポリマー材料である1つのセグメントから成ることができる。 【0033】 本発明のセグメントは、任意の材料から成ることができる。 本発明の好ましい実施形態では、セグメントが、金属(例えば銀、金、銅、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト、ロジウム、イリジウム)、任意の金属カルコゲニド、金属酸化物(例えば酸化第二銅、二酸化チタン)、金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物、金属合金、金属窒化物、金属リン化物、金属アンチモン化物、半導体、半金属を含む。 セグメントは更に、分子膜などの有機単分子又は二分子層から成ることができる。 例えば、有機分子の単分子層、又は制御された自己集合分子層を、さまざまな金属表面と関連づけることができる。 【0034】 セグメントは、任意の有機化合物又は材料、無機化合物又は材料、又は当業者に周知の多くのモノ及びコポリマーを含む有機ポリマー材料から成ることができる。 ペプチド、オリゴヌクレオチド、カルボヒドリドなどの生物学的ポリマーもセグメントの主要な構成要素である。 セグメントは、微粒子材料、例えば、金属、金属酸化物又は有機微粒子材料、あるいは複合材料、例えば金属/ポリアクリルアミド、ポリマー材料における染料、多孔性金属から成ることができる。 本発明の粒子のセグメントは、ポリマー材料、結晶質材料、非晶質材料、無定形材料又はガラスから成ることができる。 セグメントは、粒子表面の刻み目、くぼみ又は穴によって画定することができる。 これらは、他の材料で埋められていても、 又は埋められていなくともよい。 例えば銀/金合金を付着させ、次いで銀を溶解させることによって、織り地構造の表面を調製することができる。 【0035】 セグメントは、粒子中の小胞、気泡、細孔、くぼみ又はトンネルによって画定することもできる。 これらは、粒子の外表面と接触し、又は接触せず、他の材料で埋められ、又は埋められていない。 テクスチャのある表面又は多孔質粒子には表面積が大きくなるという利点があり、実際、クロマトグラフィー研究の単片固定相(モノリス)として使用することができる。 セグメントは、粒子の形状、角度又は輪郭の識別可能な変化、あるいは粒子の他の物理的属性(例えば密度)の識別可能な変化によって画定することもできる。 粒子を例えばポリマー又はガラスでコーティングする本発明の実施形態では、セグメントが他の材料間の空隙から成る。 【0036】 それぞれのセグメントの長さは10nmから50μmとすることができる。 好ましい実施形態ではそれぞれのセグメントの長さが50nmから20μmである。 図1に示したように、セグメント間の接合部はきれいな横断境界面として表されている。 しかし、ある実施形態では、セグメント間の境界面が粒子の長さ方向に対して垂直である必要はなく、又はなめらかな遷移線である必要もない。 更に、ある実施形態では、1つのセグメントの組成物を隣接セグメントの組成物中に混合することができる。 例えば、金セグメントと白金セグメントの間に、金と白金から成る5から50nmの領域があってもよい。 このタイプの遷移は、セグメントが区別可能である限り許容される。 所与の粒子について、セグメントの長さを、その粒子の残りのセグメントの長さに対して任意とすることができる。 【0037】 先に述べたとおり、本発明の粒子は任意の横断面形状を有することができる。 好ましい実施形態では、粒子が縦軸に沿って概ねまっすぐである。 しかしある実施形態では粒子が湾曲し、又はらせん形である。 本発明の粒子の末端は平面、凸形又は凹形とすることができる。 更に末端は、スパイク又は鉛筆のような先端を有することができる。 鋭い先端を持つ本発明の実施形態は、ラマン分光分析応用又はエネルギー場効果が重要である他の応用で粒子を使用するときに好ましい。 所与の粒子の両端は互いに同じであっても、又は異なっていてもよい。 同様に、 粒子の輪郭を、検定の感度又は特異性に寄与するよう有利に選択することができる(例えば波打った輪郭は、谷部に位置する蛍光体群の「消光」を強化すると予想される)。 【0038】 本発明の多く実施形態では、粒子の組合せ又は集合(assembly or collection)が調製される。 ある実施形態では組合せの構成体が同一であり、一方、他の実施形態では組合せが、複数の異なるタイプの粒子から成る。 同一粒子の組合せを含む本発明の好ましい実施形態では、1μmから15μ mの粒子について、実質的に全ての粒子の長さが最高10%変動することができる。 長さ10nmのセグメントは±5nm変動し、1μm範囲のセグメントは1 0%まで変動することができる。 このような粒子の幅は、10から100%の間で、好ましくは50%まで、最も好ましくは10%まで変動することができる。 これらの仕様に合った幅及び長さパラメータを有する粒子の集合は直接に合成することができる。 このような集合はあるいは、より不均一な粒子の混合物から、 周知の方法(例えば傾斜遠心分離)によって分離することもできる。 これらの同じ方法を使用して更に、直接に合成した粒子中に存在する可能性がある壊れた粒子又は結びついた粒子を取り除くことができる。 【0039】 本発明は、互いに区別可能な複数の粒子から成るナノバーコードの集合を含む。 本明細書で使用する組合せ又は集合という用語は、このような集合を構成するナノ粒子が特定の方法で整理され、又は組織化されていることを意味しない。 このような集合は、複数の異なるタイプ又は「フレーバー(flavor)」の粒子から成ると考える。 このようないくつかの集合では、集合のそれぞれのナノバーコードを、ある方法で機能化することができる。 多くの応用では、機能化がフレーバーごとに異なり、特定のフレーバーのナノ粒子に特異的である。 本発明の集合は、識別可能な2から10 10個の異なるナノ粒子を含むことができる。 好ましい集合は10を超える、100を超える、1,000を超える、場合によっては10,000を超える異なるナノ粒子のフレーバーを含む。 本発明の集合を構成する粒子は、ほとんどの実施形態でセグメント化されている。 しかし本発明のある実施形態では、粒子集合の粒子が、複数のセグメントを含むとは限らない。 【0040】 ナノバーコードがある情報内容を含み、又はナノバーコードの集合が複数のタイプの粒子を含む本発明の実施形態では、それぞれの粒子タイプの機能化の性質とは別に、粒子のタイプが区別可能である。 本発明では、粒子のタイプを区別する能力、又は粒子の中にコード化された情報を解釈する能力を、ナノ粒子に「問い合わせる」、ナノ粒子を「読み取る」、「区別する」、又は「識別する」と言う。 粒子のこのような差異は、光学手段、電子手段、物理手段、化学手段及び磁気手段を含む任意の手段によって読み取ることができる。 粒子は、異なる手段によって問い合わせ、又は読み取る異なるセクションを含むこともできる。 例えば、粒子の半分が、そのパターン及び形状を光学手段によって読み取ることができるセグメントから成り、残りの半分が、そのパターン及び形状を磁気手段によって読み取ることができるセグメントから成ることができる。 他の例では、2つ以上の異なる形態の問合せを粒子に適用することができる。 例えば、粒子の形状又は長さを光学手段によって読み取り、セグメントパターンを磁気手段によって読み取ることができる。 このような複数の形態の問合せは、粒子全体、粒子の所与のセグメント、又はこれらの組合せに適用することができる。 【0041】 本発明の多くの実施形態では、粒子の1つ又は複数のセグメント、粒子の末端、又は粒子全体を機能化することができる。 機能化ないし機能単位の取付けは、 ある化学種又は材料が粒子の表面に、共有結合的又は非共有結合的に取り付けられることを意味する。 機能化の例には、抗体又は抗体断片、オリゴヌクレオチド、あるいは検出可能タグへの、しばしばリンカー(linker)を介した取付けが含まれる。 いくつかの実施形態では、本発明の粒子が複合的に機能化される。 本明細書では機能単位という用語が、ナノバーコード粒子の任意の部分の表面を修飾し、表面への結びつき、表面に付加し、表面を覆い、又は表面に共有又は非共有結合する任意の種を画定する。 【0042】 本発明の粒子の機能化は多くの形態をとることができる。 本明細書の定義によれば機能化は、有機、無機、有機金属又は合成単分子層、多分子層、膜、ポリマー、ガラス、セラミック、金属、半金属、半導体、金属酸化物、金属カルコギニド、又はこれらの組合せで、共有又は非共有結合的に修飾され、誘導体化され、 又は他の方法でコーティングされた粒子の表面の任意の修飾を含む。 このような機能化は、最も一般的には粒子の外表面で起こるが、多孔質又は中空粒子の場合のように粒子の内表面で起こる可能性もある。 このような機能化は個々のセグメント上で実施することができる。 したがって例えば、金/銀粒子で、金の表面は機能化し、銀の表面は機能化しないこともできる。 あるいは、金セグメントを( 例えば1タイプの抗体を用いた)1つの方法で機能化し、銀を(例えば別のタイプの抗体を用いた)別の方法で機能化することもできる。 更に別の可能性として、両方のセグメントを(例えば1つのタイプの抗体を用いた)同じ方法で、ただし異なる程度に機能化することもできる。 【0043】 他の実施形態では、粒子全体を同じ物質でコーティングすること、粒子のあるセグメントだけをコーティングすること、又はさまざまなセグメントが異なるコーティングを有するようにすることができる。 このようなコーティングは任意の材料から成ることができる。 本発明の粒子がコーティングされ、コーティング材からの吸収/脱離の差によって分離が起こる本発明の実施形態では、機能化コーティング又は膜が、いずれも複数の酸、アミン、チオール、エーテル、エステル、チオエステル、チオエーテル、カルバミン酸、アミド、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、イミン、アルケン、アルカン、アルキン、芳香族基、アルコール、複素環、シアン酸、イソシアン酸、ニトリル、イソニトリル、イソチオシアン酸及び有機シアン化物アニド、又はこれらの組合せを含む任意の有機機能基を含むことができる。 ただしこれらに限定されるわけではない。 コーティング又は機能化は、2、3、4、5、6、7、8及び9配位錯体を含む任意の無機配位錯体を含むことができる。 ただしこれらに限定されるわけではない。 コーティング又は機能化は、1つ又は複数の金属−炭素、金属−ケイ素又は金属−窒素結合を含んだ化学種を含む任意の有機金属錯体を含むことができる。 ただしこれらに限定されるわけではない。 更に、本発明の粒子のコーティング又は機能化は、有機機能基又は分子、無機又は有機金属化学種、あるいはこれに基づく複合体のうちの任意の組合せを含むことができる。 【0044】 本発明の粒子の機能化は、粒子全体、選択したセグメント、又はある実施形態では粒子の先端又は末端上で実施することができる。 このような実施形態では、 両方の先端又は一方の先端を機能化することができ、機能化の性質を先端間で異ならせることができる。 【0045】 本発明のある実施形態では、機能単位又は粒子の機能化が、検出可能なタグを含む。 検出可能タグは、検出、識別、計数、追跡、位置検出、三角測量及び/又は定量に使用することができる任意の化学種である。 このような測定は、1つ又は複数の光子の吸収、放出、生成及び/又は散乱;1つ又は複数の粒子の吸収、 放出、生成及び/又は散乱;質量;電荷;ファラデー又は非ファラデー電気化学特性;電子親和性;陽子親和性;中性子親和性;あるいは溶解度、分極率、融点、沸点、三重点、双極子モーメント、磁気モーメント、サイズ、形状、酸性度、 塩基性度、等電点、拡散係数又は沈降係数を含む他の物理又は化学特性に基づいて達成することができる。 ただし、これらに限定されるわけではない。 このような分子タグは、このような特性の1つ、又は任意の組合せを介して検出又は識別することができる。 【0046】 本発明のある他の実施形態では、本発明の粒子が単分子層を含む。 このような単分子層は、粒子の先端又は末端、又はセグメント間で見ることができる。 セグメント間の単分子層の使用の例は、「電子デバイス」と題した後のセクションで説明する。 【0047】 本発明は、独立ナノバーコード及びその使用を対象とする。 「独立(free standing)」とは、なんらかの形態の付着(deposition)又は成長によってテンプレート内に生み出されたナノバーコードがテンプレートから解放されていることを意味する。 このようなナノバーコードは一般に、液体中で自由に分配可能であり、固定相と恒久的には関連付けられていない。 なんらかの形態の付着又は成長によってテンプレート内に生み出されたのではないナノバーコード(例えば自己集合ナノバーコード)は、テンプレートから解放されたものでなくとも、独立しているとみなすことができる。 用語「独立」は、このようなナノ粒子が溶液中になければならないことを意味せず(ただし溶液中にあってもよい)、あるいはマクロ構造に結合すること、マクロ構造に組み込まれること、又はマクロ構造の一部となることができないことを意味しない。 実際、本発明のある実施形態では、ナノ粒子を溶液、例えば塗料中に分散させ、又はポリマー組成物中に組み込むことができる。 【0048】 本発明の粒子は、さまざまな応用で使用することができる。 用途は主に2つに分類することができる。 粒子のセグメントが情報内容を有する実施形態と、セグメントが情報内容を持たない実施形態である。 セグメントが情報内容を有する実施形態は、巨視的バーコード化と類似である。 従来のバーコード化は、複数の黒線から成る帯を提供し、線と線の距離及び線の太さを使用して、かなりの量の情報を「コード化」する。 本発明の粒子はサイズが小さいため、ある実施形態では本発明の粒子を、分子又は細胞タグとして使用することができる。 分子イベントを追跡するために、「読み取る」ことができる唯一の識別タグを、分子実体を含む任意の材料に取り付けることができる。 【0049】 本発明の非情報モードは、粒子のセグメントの特性差を利用して、ナノスケールのテンプレートを提供する実施形態を含む。 反応性の差を利用する例は、粒子が異なる金属セグメントから成るときに見ることができる。 金は、チオールを含む化合物と結合し、白金はイソシアン化物、銅はジチオカルバミン酸塩、ニッケルはグリオキシム(glyoximes)を含む化合物とそれぞれ結合する。 本発明の粒子の正確に制御された寸法、ならびにセグメントの反応性の差よって、 正確なナノメートル分離が必要な本発明の応用が可能となる。 例えば、本発明のナノ粒子及び後に図1でその概要を説明する電気めっきプロセスを使用して、比較的に正確な長さのセグメントを生み出すことができる。 分子の相互作用は、セグメントの表面に取り付けられた種を分離し、異なって機能化されたセグメント間でセグメントの長さを変え、これによって種間の距離を正確に調整することによって研究することができる。 他の実施形態では、セグメントの並置によって達成される特性のため、本発明の粒子が有用である。 このような特性には、物理、 化学、光、電気及び磁気特性が含まれる。 例えば、本発明の粒子を使用した触媒反応によって、2つの金属間の界面でしか起こらない化学反応を最適化することができる。 【0050】 本発明の粒子は、さまざまなプロセスによって調製することができる。 特定の粒子を製造する好ましいプロセスはしばしば、その粒子を構成するセグメントの性質によって決まる。 本発明のほとんどの実施形態では、さまざまなセグメントを構成する材料をその中に導入するテンプレート又は型を利用する。 細孔が画定された材料は、本発明の多くの好ましい粒子に対して好ましいテンプレートである。 一貫した大きさの細孔を含むAl 2 O 3膜は好ましいテンプレートの1つであり、多孔質ポリカーボネート膜、ゼオライト及びブロックコポリマーも使用することができる。 粒子のセグメントを形成する方法には、電着、化学付着、蒸着、 化学自己集合、固相製造技法、光化学及びフォトリソグラフィー技法が含まれる。 化学自己集合は、予め形成されたセグメントから粒子を形成する方法であって、それぞれのセグメントを誘導体化し、異なるセグメント上の化学種間の化学反応によってセグメント間に接合を生み出す方法である。 化学的に自己集合したナノ粒子は、化学結合形成プロセスを逆転させることによって、セグメント間で制御可能に分離されるという固有の能力を有する。 ナノバーコード(及びテンプレート)合成に適用することができる他の方法には、溶液中で実施する方法(例えばマイクロフルード合成(microfluidic synthesis)) 、及び/又は光化学的技法、MEMS、電子ビーム、マイクロコンタクトプリンティング及びレーザアブレーション法が含まれる。 【0051】 本発明の粒子のある実施形態の重要な特性は、複数のナノロッドがセグメント化されているときに、成分金属の反射率の差を光学顕微鏡法によって視覚化できることである。 したがって例えば、直径200nm、全長4から5ミクロンのセグメント化されたAu/Pt/Auロッドでは、セグメントが、従来の光学顕微鏡中に容易に視覚化され、Auセグメントは金色の光沢を有し、Ptセグメントはより白っぽい明るい光沢を有する。 材料の他の重要な特性は、膜中での2種以上の金属イオンの電気化学的還元を交互にすることによってセグメントを調製するときに、セグメントの長さを、a)溶液の組成及びb)電気化学的還元のそれぞれの段階で流す電荷のクーロン数によって、完全に制御(及び画定)できることである。 セグメントの数は自由に変えることができる。 同様に、適当な細孔サイズ及び形状を有する膜を選択(また作成)することによって、粒子の直径及び断面を制御することができる。 図5に、異なる6つのタイプ又はフレーバーのナノ粒子から成る、本発明のナノ粒子の集合の画像を示す。 この画像は、ナノバーコード集合中の異なるタイプのナノバーコードを区別することができることを示している。 【0052】 ある実施形態の他の重要な特性は、他の金属ナノ粒子と同様に、表面を、異なるさまざまな方法を使用して簡単に誘導体化(derivatize)又は機能化することができることである。 これによれば、生体分子をナノ粒子の表面に、 共有結合又は非共有結合手段を介して、完全な生物学的活動が保存される方法で取り付けることができる。 先に述べたとおり、機能化は生体分子に限定されない。 実際、ナノ粒子の表面を、任意の有機化合物、無機化合物、分子、材料又はこれらの組合せで機能化することができる。 【0053】 その反射率を介してナノバーコードを識別できること、及び生体分子で表面を修飾することができることによって、ナノバーコードを光学タグとして使用することができる。 【0054】 蛍光タグ又は量子ドットを使用している事実上任意の応用で、又は当業者に周知の事実上任意の検定又は分析手順とともに、本発明のナノバーコード粒子をタグとして使用することができる。 例えば、本発明のナノバーコード粒子が固定相、又は潜在的な「タグ」の働きをする、標準サンドイッチ型免疫検定を実施することができる。 粒子の表面を、分析物に対する抗体を含むように機能化する。 分析物が前記抗体に結合すると、蛍光標識された第2の抗体が分析物の存在を知らせる。 ナノバーコードの使用によって、多数の検定を同時に実施できるようになり、検定の多重化が可能になる。 陽性の信号を識別し、ナノバーコードを読み取って、どの分析物を検出したかを決定することができる。 同じ原理を、当業者に広く知られている競合検定と一緒に使用することができる。 【0055】 短い間隔をあけて配置されたインク又は他の材料の線のコントラストの差に基づく巨視的バーコードと同様に、多くの実施形態では本発明のナノバーコードが、さまざまなセグメントの異なる反射率パターンに基づいて区別又は識別される。 ナノバーコードが、他のタイプの光学タグ又はこれまでに実際に分子系に適用された任意のタイプのタグ(同位体タグ、放射性タグ、組合せビーズ用分子タグ、蛍光に基づくタグ、ラマン効果に基づくタグ、電気化学タグ及び当業者に周知のその他のタグを含む)と異なるのは、実質的に無限のその多様性である。 7種以上の異なる金属、20以上の異なるセグメント、及び4つ以上の異なるセグメント長、3つ以上の異なるロッド幅を使用することができれば、実質的に無数の異なるナノバーコードを調製することができる。 2タイプの金属、10個のセグメント、1つのセグメント長及び1つのロッド幅だけでも、1,000を超える異なるタイプのナノバーコードを調製することができる。 【0056】 一度に1バッチを調製したときでさえ本発明の粒子は非常に有用であるが、異なる数百、数千、数万フレーバーの粒子を同時に調製する方法が可能である。 本発明の粒子は、既存の機器、例えば原子間力顕微鏡、光学式読取り装置などを使用して読み取ることができる。 しかし、ナノバーコードを識別するように特に設計された機器及びソフトウェアも本発明の範囲に含まれる。 【0057】 ナノバーコードの他の顕著な特性はその安定性である。 例えば、ナノバーコードが、知られている最も耐久性があり不活性な金属のうちの2つであるPt及び/又はAuから成るときには、それらを熱し、燃やし、凍らせるなどしても、関連する物理特性は変化しない。 好ましいいくつかの実施形態では、ナノバーコードが高圧を受け、又は真空中に導入される(例えば質量分析法で使用されるとき)。 したがってナノバーコードは、環境条件によって読み取りがかなり混乱されるほとんどのタグ(例えば蛍光体群)に優る。 例えば、多くの蛍光体の放射波長の最大値は溶媒の極性によって変化する。 このことを使用して環境条件を測定することもできるが、このような感度が測定をいたずらに複雑にする場合のほうが多い。 より重要には、高い光子束は蛍光体を光漂白する。 過剰な熱及び化学的に反応性の種(一重項又は三重項酸素、オゾンなど)も同様である。 金属ナノバーコードは多数の環境摂動に不活性であり、最も重要なことは、反射率差は光子束の影響を受けないことである。 したがって隣接したストライプの反射率差は、励起状態の光電子放出に基づくリードアウトに優る優れたリードアウトである。 【0058】 ナノバーコードのユニークな特性は、それらの表面を差別的に修飾する能力である。 したがって、Au/Ptナノバーコードを考えると、それぞれの金属を選択的に修飾し、これによって2つの異なるケミストリをごく近くに配置することができる。 ナノバーコードの場合、単一の粒子のPt及びAuストライプ上に異なる分子を置くことができることはすでに立証されている。 ナノ粒子の選択部分を合理的に修飾する能力には前例がない。 【0059】 Ptストライプを「ケミストリA」で選択的に修飾し、Auストライプを「ケミストリB」で選択的に修飾することができる。 これができることによって、同じ粒子上に複数のセンサを直交方向に組み立て、空間蛍光パターン又は他の識別可能な信号によって同じ粒子から独立に読み取る可能性が生まれる。 例えば、異なる抗体で前もって誘導体化されたAuセグメント及びPtセグメントを有する単一のナノ粒子上で、(蛍光タグが付けられた2次抗体を使用する)2つの別個のサンドイッチ免疫検定を実施することができる。 Auストライプからの蛍光強度は一方の抗原濃度に比例し、Ptストライプからの蛍光強度は他方の濃度に対応する。 更に、異なるセグメントパターンを有する異なる粒子は、完全に異なる2つのセンサを収容することができることに留意されたい。 それぞれの場合で、 特定のケミストリを識別するのはバーの配列と間隔である。 更に、4タイプ以上のセグメントを含み、4種以上の直交ケミストリを有するコロイドロッドを生み出すことも可能である。 したがってこの本発明によれば、(バーコーディングによって可能になる内因性の多重化に加え)単一の粒子上で多重検定を実際に実施することができる。 1つの重要な例として、4種の直交ケミストリ(例えばそれぞれが固有のケミストリを担持する4つのセグメントタイプ)を有するナノバーコードの使用によって、特定の残基でのそれぞれの可能な塩基置換を有する核酸を1つの粒子に配置することができる。 このような粒子の使用は、高速多重単一ヌクレオチド多形(SNP)分析に役立つ。 【0060】 本発明のナノバーコードの他の特徴は、従来のフローサイトメトリーによってナノバーコードを識別できることである。 したがって、光散乱によって、レーザの前を通過するナノバーコードの全体寸法を識別することができる。 より一般的には、金属ナノ粒子からの散乱が、粒子のサイズ、形状及び組成に依存することが知られている。 このような散乱を複数の方向から測定して、統合された散乱プロフィールを得ることができる。 【0061】 金属の反射率が波長に依存することは、ナノバーコードの興味深く強力な他の検出フォーマットを提示する。 例えば、Au及びPtの波長に対する%反射率のグラフを見ると、交差する点がある(図2)。 言い換えると、2つの金属の反射率が同じとなる波長が存在する。 これを反射率等吸収(reflectivit y isosbestic)と呼ぶ。 反射率等吸収では、その長さに沿って組成が変化していてもナノバーコードの反射率は一定である。 重要なのは、粒子(例えば金属又は有機粒子)をナノバーコード表面に結合させることによって、あるいは他の手段によって、この反射率等吸収を乱すことができることである。 したがって、ナノバーコード表面への粒子の結合(又は脱結合)につながる分子認識又は他のイベントを使用して、そのイベントを反射率によって検出することができる。 例えば、それぞれが異なる捕獲抗体に関連付けられた異なる100フレーバーのナノバーコードが、コロイドAgナノ粒子でそれぞれタグ付けされた対応する100の2次抗体を含む溶液中にあるとする。 反射率等吸収で観察すると、 粒子は全て均一に見える。 1種又は数種の抗原を含む溶液を導入すると、あるナノバーコードに抗体−抗原−抗体複合体が形成される。 これらのナノバーコードでは金属の反射率が、これらのナノバーコードに限って(差別的に)混乱し、もはや反射率等吸収ではなくなる。 このことは、それらのナノバーコードを、それらのセグメント化のパターンによって識別することができることを意味する。 したがって、反射率及等吸収びその混乱によって、複雑な多重検定における敏速なスクリーニングが可能になる。 ナノバーコードフレーバーの固体群の小さなサブセットだけに「信号」(例えば識別可能パターン)が生じると予想される。 【0062】 反射率等吸収を使用した単純な識別の他に、前述の例の反射率差の強度を定量に使用することができることに留意することは重要である。 図2に、バルク(bulk)Pt及びAuの波長に対する反射率のグラフを示す。 有限サイズ効果のため、このグラフはナノ粒子ではいくぶん異なってこようが、重要な2つの点は、(a)大部分の波長で反射率が異なること(これによってコントラストメカニズムが働く)、及び(b)約600nmで反射率が同じになっていること(反射率等吸収(reflectivity isosbest ic))である。 図6に、この原理を例示する、金/銀ナノ粒子の400nm及び600nm画像を示す。 電磁スペクトルの可視領域での金属薄膜のバルク反射率が形態に依存することはよく知られている。 これは、ナノメートルスケールの粗度特性が表面プラズモンの散乱部位として振る舞う貴金属表面で特にそうである。 これによって、抗原感度は大幅に強化される。 この概念をバーコードに移せば、分子認識によって誘起されたコロイドバーコードのAuセグメントへのコロイドAuの結合によって、バルク反射率が変化し、反射率等吸収点で反射率コントラストが生じるという着想になる。 したがって、コロイド状金属ナノ粒子をコントラスト剤と考えることできる。 本来、表面プラズモン共鳴に類似の解決法であるこの反射率コントラストメカニズムは、極めて鋭敏な感度を有する可能性がある。 市販の機器を使用して、10平方ミクロンあたり1つある直径40nmのコロイドAu粒子を容易に検出できることが示されている。 バーコードの表面積は1μm 2よりもはるかに小さいので、単一の粒子の単一のセグメントへの結合が検出可能であることが予想される。 更に、関心の生体分子のコロイド状カバレージを粒子あたり1に限定する方法も可能である。 【0063】 この実施形態の検出メカニズムの非常に重要な他の態様は、コロイド状Auを結合したバーコードがコントラストを示すことである。 このことはスクリーニングにとって大きな利点である。 したがって、溶液中に、異なる捕獲分子でそれぞれ誘導体化された異なる100タイプのバーコード、及びコロイドAuで標識された適当な認識要素を有することができる。 反射率等吸収で問い合わせれば、ロッドは全て無特徴であろう。 1つの未知の分析物を含む溶液を導入すると、1つのタイプのバーコードだけが明るくなり、コードによってその分析物が識別され、積分された反射率変化によって分析物濃度が画定される。 蛍光消光の選択的中断によってより長いオリゴヌクレオチドを検出するのに分子生物学で使用される分子ビーコン方法(例えばPiatek et al.,Nature Bio chem. 16,359−363(1998)を参照されたい)のように、この方法は、化学イベントが起こった粒子を選び出す。 この方法には、方法が完全に一般的であり、(特に)オリゴ−オリゴ系、抗体−抗原系及びリガンド−レセプター系に適用することができるという追加の利点がある。 この効果については先にコロイド状Auに関して論じたが、この効果はAgなどの他の金属粒子でも観察される。 実際、反射率等吸収の混乱は、酸化物などのいくつかの非金属材料を用いて達成することができる。 より一般には、等吸収を含むセグメントの表面に結合し、差別的に相互作用する任意の材料は、等吸収点を摂動させることができる。 例えば、AgとAuの等吸収点で、約400nmに最大吸収を有する強吸収性発色団(例えばシトクロムc)は、AuよりもAgと強く相互作用すると予想される。 このような相互作用は、反射率等吸収点を摂動させるのに十分である可能性がある。 【0064】 反射率を混乱させる代替方法は結合の差による。 したがって、前述の例では、 コロイド金属粒子をナノバーコード全体に結合させたが、ここではその必要はない。 異なるケミストリが異なるセグメント上に配置され、粒子の結合がただ1つのセグメントで起こる場合、反射率等吸収は混乱する。 【0065】 したがって、分析物定量を実行する少なくとも2つの異なる方法が想像される。 特定のナノバーコードから発せられた蛍光(分子又は粒子蛍光タグから生じることができる)の強度に基づいて定量を実施する方法、又は反射率差の強度から定量を実施する方法である。 どちらの場合にも、反射率が、ナノバーコードを識別する目的に使用される。 しかし、分析物定量とナノバーコードフレーバー識別の両方に、他のさまざまな方式を使用することもできることに留意されたい。 分析物定量ではこれらが、蛍光タグ、電気化学タグ、放射性タグ、質量タグ(質量分析法で使用されるものなど)、他の分子タグ(コンビナトリアル化学で使用されるものなど)、又は他の微粒子タグを含む。 ただしこれらに限定されるわけではない。 実際、ナノバーコードは、全ての周知の分析物検出メカニズムと両立するように思われる。 同様に、ナノバーコード識別では、光学的検出メカニズム(吸収、蛍光、ラマン、ハイパーラマン、レイリー散乱、ハイパーレイリー散乱、C ARS、和周波数発生、縮退四波混合、前方光散乱、後方散乱又は角度光散乱) 、走査プローブ技法(近接場走査光学顕微鏡法、AFM、STM、化学力又は横力顕微鏡法、及びその他のバリエーション)、電子ビーム技法(TEM、SEM 、FE−SEM)、電気、機械及び磁気検出メカニズム(SQUIDを含む)を含むさまざまな検出メカニズムを使用することができる。 ただしこれらに限定されるわけではない。 以上の議論は反射率アイソベスティックに関する(すなわち光学特性に基づく)ものであったが、ナノバーコード検定は、他の物理又は化学特性に基づく他のタイプの点(例えば「導電率アイソベスティック」)を利用して、同じ種類の利点を達成することができる。 実際、より一般には、対象材料内で特性が同じになるように条件を操作する手段が存在するならば、材料ごとに変化する特性を同様に利用することができる。 例えば、Au薄膜では、単分子層( 又は単分子層未満の)の結合が導電率を摂動させることがいくつかのグループによって示されている。 同様に、異なるセグメントが1つの磁場で同じ磁化率を有し、他の磁場で異なる磁化率を有するならば、この概念を、ナノバーコードへの磁性粒子の結合に適用することもできる。 【0066】 多くの実施形態が抗体ベースの検出方式に集中しているが、これらの原理は、 いずれも複数の、オリゴヌクレオチド、cDNA、mRNA、タンパク質、リガント、小分子、脂質、糖、無機アニオン及びカチオン、細胞又は細胞成分、器官、器官系又は生体全体の検出にも同じように十分に適用されることを認識されたい。 言い換えると、ナノバーコード化を使用して原則的に、分子のように小さく、生物のように大きい化学系又は生物系で見られる、任意の種及び/又は全ての種を検出することができる。 更に、ナノバーコードは細胞に侵入できるほどに小さく、原則として、細胞の構成要素(例えばミトコンドリア、核など)に侵入できるほど小さく作ることもできるので、生物系でのそれらの使用に限界はない。 【0067】 更に、本発明の多くの実施形態が定量を対象としているが、巨視的バーコード化と同様に、ナノバーコード化を使用して、非定量的に物質を追跡し、位置を突き止め、たどることができることが明らかである。 実際、これらの粒子を使用して、個々の分子のように小さいものから、人間、自動車、タンク、橋、建物などのように大きなものまで、物体を標識し、検出し、定量し、あとを追い、追跡し、位置を突き止め、目録を作り、認識し、比較し、識別し、見つけ、理解し、分類し、観察し、カテゴリー化し、標識し、又は発見することができる。 【0068】 更に、本発明の多くの実施形態が生物系での有用性を対象としているが、ナノバーコーディングは、化学物質、分子、材料、粒子、塗料、とめ具、タイヤ、紙、文書、丸剤などを含む非生物系に対しても、前述の方法で等しい有用性を有することが明らかである。 ただしこれらに限定されるわけではない。 タグ又はラベルとして使用するとき、本発明の粒子は、どんな形であれ、それが標識している材料に関連付けることができる。 関連付けられた材料に関する情報を提供するように特定のタグを選択し、識別することができる。 例えば、塗料中のタグは、製造日、塗料混合物中に使用されている化学物質、製造者名、塗料の光力学的特性又は他の任意の情報をコード化することができる。 ナノバーコードが情報をコード化すると言うとき、それは、粒子から情報を直接に読み取ることができることを意味しない。 ほとんどの実施形態では、それが特定のタイプのナノバーコードを指示し、次いで、そのタイプのナノバーコードに関するレコードを参照する。 【0069】 本発明の一実施形態では、ナノ粒子がセグメントから成るのではなく、ナノ粒子が、粒子のサイズ、形状又は組成に基づいて区別可能である。 この実施形態では、粒子の組合せ又は集合におけるそれぞれの粒子が、10μm未満の少なくとも1つの寸法を有する。 好ましい実施形態では、粒子の1つの寸法が500nm 未満であり、より好ましくは200nm未満である。 【0070】 任意の材料から構成することができるこのような粒子の集合は、少なくとも2 、好ましくは少なくとも3、最も好ましくは少なくとも5タイプの粒子から成り、それぞれのタイプの粒子は他のタイプの粒子から互いに区別可能である。 好ましい実施形態では、これらのタイプの粒子が単一の材料から成り、そのため、異なるタイプの粒子が、集合中の他のタイプの粒子と同じ材料から成るため、タイプ間の差異が、粒子タイプのサイズ又は形状に基づく。 例えば、本発明の粒子の集合が、異なる5タイプのロッド形の金のナノ粒子から成るとする。 それぞれのタイプのロッド形粒子は10μm未満の幅又は直径を有するが、異なるタイプの粒子はその長さに基づいて区別可能である。 他の例では、7タイプの球形銀粒子が集合を構成する。 異なるタイプの粒子はその相対サイズに基づいて区別可能である。 他の例では、全て同じポリマー材料から成る8タイプのロッド形粒子が集合を構成する。 それぞれのタイプのロッド形粒子は同じ長さを有するが、それらは、その直径及び/又は断面形状に基づいて区別可能である。 【0071】 本発明のこの実施形態のナノ粒子は、先に説明したように機能化することができ、セグメント化されたナノバーコード粒子と同じ種類の応用で使用することができる。 この実施形態に基づく粒子の集合では、粒子タイプが全て同じ材料から成る。 ただし必ずそうでなければならないというわけではない。 【0072】 本発明のこの実施形態の範囲に含まれるナノ粒子の集合の他の例は、それぞれの粒子タイプが、同じサイズ及び形状を有し(少なくとも1つの寸法が10μm 未満)、粒子タイプがその組成に基づいて区別可能な粒子の集合である。 例えば、本発明の粒子の集合は、同じサイズ及び形状の異なる5タイプのロッド形ナノ粒子から成る。 この例では、異なるタイプの粒子が、それらが作られた材料に基づいて区別可能である。 したがって1つのタイプのナノロッドが金、別のタイプのナノロッドが白金、別のタイプのナノロッドがニッケル、別のタイプのナノロッドが銀、及び残りのタイプのナノロッドが銅から作られる。 あるいは、それぞれの粒子タイプが異なる量の染料材料、又は異なる割合の磁化可能金属を含むこともできる。 それぞれのケースで、所与の粒子タイプを、集合中の他の粒子タイプから区別することができる。 【0073】 もちろん、本発明のこの実施形態は、サイズ、形状及び組成の組合せがさまざまである集合を含む。 この実施形態の粒子の集合の重要な態様は、全ての粒子タイプが10μm未満の寸法を少なくとも1つ有し、粒子タイプが、集合中の他の粒子タイプからなんらかの手段によって区別可能であることである。 この実施形態では、異なるタイプの粒子を機能化することができ、粒子のタイプの区別可能な特性が機能化の性質をコード化する。 機能単位の性質をコード化するということは、ナノ粒子の特定の識別可能な特徴を既知の機能単位に選択的に結びつけることができ、そのため、特定の粒子タイプを識別すれば関連付けられた機能単位の性質が分かる鍵又は記録を保持することができることを意味する。 【0074】 (セグメント化された金属粒子の調製) 本発明の実施形態に基づく金属ナノバーコードを調製するのに使用する好ましい合成プロトコルは、テンプレート指向の電気化学合成に関するアルーマウラウィ(Al−Mawlawi)その他の研究(Al−Mawlawi,D.;Li u,C. Z. ;Moskovits,M. ,J. Mater. Res. 1994 ,9,1014;Martin,C. R. ,Chem. Mater. 1996, 8,1739)に基づく。 この方法では、多孔膜の内側に電気化学的に金属を付着させる。 本発明の合成方法は、以下の点を含むいくつかの点で以前の方法とは異なる。 第1に、電気めっきが超音波浴中で実施される。 第2に、温度が、再循環温度浴を使用して制御される。 これらの最初の2つの変更は、膜の細孔を通したイオン及びガスの質量輸送を容易にすることによってロッド試料の再現性及び単分散性(monodispersity)を増大させる。 第3に、膜の細孔内での金属イオン(例えばPt 2+ 、Au + )の逐次電気化学的還元によって、複数のストライプを有するロッドが調製される。 それぞれの電気めっき段階で流す電流の量を制御することによって、セグメントの長さを調整することができるため、ロッドは、それぞれのセグメントの長さ(及び識別)を前もってプログラムすることできる、ナノメートルスケールの「バーコード」に似ている。 ロッドの幅及びセグメントの長さは一般にナノメートル寸法であり、全長は一般に、金属成分の反射率差を利用して光学顕微鏡中に直接に視覚化することができる長さである。 【0075】 ナノロッド合成には調整可能な多くのパラメータがあり、そのため、従来の光学顕微鏡法を使用して独特に識別可能な数百万の異なるパターンを生み出すことが理論的に可能である。 変更することができる最も重要な特性は、縞模様のロッド(ストライプロッド)の組成である。 ナノ粒子の最も単純な形態はセグメントを1つだけ有する粒子である。 このために、いくつかの異なるタイプの中実バーコードを調製した。 調製中にただ1つのめっき溶液だけを単純に使用することによって、中実ナノ粒子が生み出される。 【0076】 2セグメントナノバーコードを生み出すためには、2種類の金属(例えばAu 、Ag、Pd、Cuなど)を順番に又は同時に電気めっきして、合金を形成する。 ナノバーコードは、3種類の異なる金属を使用して生成することもできる。 A u/Pt/Auロッドの合成は、1CのAu、8CのPt及び1CのAuを用いて達成することができる。 セグメントの公称寸法は、Au1μm、Pt3μm、 Au1μmである。 適当な金属を順番にめっきし、任意選択で洗浄することによって、5セグメントナノバーコードAg/Au/Ag/Au/Agを生成した。 いくつかの実施形態では、全ての金属を溶液に含め、それでいて電荷電位電流を変化させることによって付着を制御することが可能である。 図3に示す9セグメントナノバーコードAu/Ag/Au/Ag/Au/Ag/Au/Ag/Auも調製した。 セグメントの数は所望の仕様に合わせて変更することができる。 【0077】 次の制御可能因子は個々のロッドの直径(本明細書では幅と呼ぶこともある) である。 記載のナノバーコードの多くは細孔径250nmの膜を使用して合成したものである。 細孔径を変更することによって異なる直径のロッドを作ることができる。 直径10nm、40nm及び/又は200から300nmの細孔を有する膜の内部にAuロッドを合成した。 【0078】 ロッドは一般に、丸まった、又は平坦な末端を有する。 電流を逆転させ(+0 . 55mA/cm 2での還元から−0.55mA/cm 2での酸化へ)、ロッドの先端からいくらかの金を除去することによって作ったAuロッドのTEM画像は、ロッドの先端から延びるスパイクを写し出した。 更に、分岐した末端を生成することもできる。 これは一般に、膜にめっきする金属の量を制御することによって制御することができる。 膜細孔の縁は分岐する傾向を有し、これがこのタイプの構造に導く。 【0079】 ロッドの末端を変更する追加の方法は、付着速度を制御する方法である。 金のロッド(合計2C、3μm)を電流密度0.55mA/cm 2でめっきした。 次いで、電流密度を0.055mA/cm 2に下げ、0.1CのAuをめっきした。 付着した最後の金のセグメントは膜壁に沿った中空管となる。 【0080】 数千フレーバーのナノロッドを実用的な量で生み出し、ほとんど又は全部に分子を取り付けるためには、新規な組合せ合成技法が必要である。 いくつかの合成実施形態が本発明の範囲に含まれる。 それぞれの方法は、特定の応用、ならびにその応用に必要なナノロッドのタイプ数及びナノロッドの総数に応じた利点及び欠点を有する。 【0081】 そのうちの3つの実施形態は、細孔が画定された膜を使用する既存の手順に基づく。 (i)第1の技法は、膜に付着させた裏面の銀を、リソグラフィーによって分離された島状にパターニングすることによって、数百からおそらく数千タイプのナノロッドを生成する。 それぞれの島部は個別にアドレス可能な電気接点を形成する。 それぞれの島部は例えば、全て同じタイプの10 6から10 8個の個々のロッドを含むのに十分な表面積を有する。 (なお、膜の厚さ、したがって細孔の長さはナノロッドの長さよりもはるかに大きいので、それぞれの細孔に複数のナノロッドを合成することができることに留意されたい。後に溶解する銀のプラグによって、それぞれのナノロッドは、同じ細孔中の他のロッドから分離することができる。これによって全収率を10倍に増大させることができる。)次いでこの膜を、慎重に位置を決めて「ベッド・オブ・ネイルズ(bed−of−na ils)」装置上に置き、個々のばねで負荷されたピンを膜上のそれぞれの電極と接触させる。 ベッド・オブ・ネイルズ装置に取り付けられたコンピュータ制御の回路は、それぞれの電極を個別にオン/オフすることができる。 電気めっきプロセスの間、それぞれの島部は、金属のタイプと厚さの固有の組合せでめっきされる。 このようにして、それぞれの島部は、長さ、ストライプ数及び材料の組合せが異なるロッドを生み出し、究極のな設計柔軟性を可能にする。 (ii)第1 の方法は、合成できるロッドのタイプ数が、ベッド・オブ・ネイルズ装置の信頼性及びパッキング密度によって限定される。 この限界を回避するため、ベッド・ オブ・ネイルズ装置の代わりに液体金属接点を使用することができる。 液体浴がすべての電極と同時に接触することを防ぐため、膜の裏面を、非導電性コーティングでパターニングする。 合成中に電極を個別にアドレスするため、電気めっき段階の間にパターンを除去し、取り替える。 この方法では、分離された島部の密度をはるかに高くすることができ、したがって、より多くのロッドタイプを合成することができる。 島部と島部の間隔を100ミクロンとすると、最高10 5タイプのロッドを合成することができる。 この間隔は、リソグラフィーパターニングを使用してたやすく達成される。 それぞれの膜の細孔の総数は一定なので、タイプ数に反比例してそれぞれのタイプのロッド数は減少する。 (iii)最初の2つの方法は、ナノロッド合成に適した細孔サイズ及び密度を有する市販の酸化アルミニウム膜フィルターを使用した。 しかし、膜の厚さは一般に、必要な厚さよりも大きく、電気めっき中の細孔内への不均一な質量移送のために、このことが、ロッド及びストライプ長の変動の原因となる可能性がある。 更に、これらの膜の使用可能な最大細孔(したがってナノロッドの幅)は250nmであり、応用によっては、1ミクロン以上のロッド幅が望ましいこともあろう(これは、1 μm未満の幅を有する実施形態に対して使用することもできる)。 これらの問題に対処するため、細孔寸法及び長さの究極の制御を与え、結果として生じるナノロッドの設計柔軟性及び品質を向上させる細孔マトリックスを、フォトリソグラフィー技法を使用して構築することができる。 この実施形態によれば、ポジ型フォトレジストでコーティングしたウェハを、リソグラフィーによって生成する回折格子に対して使用される技法に類似した技法を使用して、光の干渉縞に露出する。 2回の直角露光及びこれに続く現像によって、フォトレジスト中に垂直穴のアレイを得る。 この穴へ金属を電気めっきし、フォトレジストを除去することによって、テンプレート指向合成用の新しいタイプのテンプレートを得る。 ナノロッドの形状及び直径は、光源及び結果として生じる定在波パターンを調整することによって制御することができる。 この技法の利点は、テンプレートの厚さ、すなわち細孔の長さを、ロッドの長さに合わせて調整することができることであり、これによって、膜全体の電気めっきの均一性が向上する。 この技法を用いると、1枚の基板上に、10 10から10 12タイプのナノロッドを構築することができる。 先に説明した2つの方法を利用して、1枚のウェーハからたくさんのタイプのナノバーコードを合成することができる。 (iv)別の方法は、リソグラフィーによって画定されたカスタマイズされた前記の細孔を使用し、新規な光指向の電気めっきを使用することによって究極の設計柔軟性を達成する。 テンプレート細孔は、感光性半導体ウェーハの上面に構築されることを除き、第3の方法と全く同じように構築される。 ウェーハの細孔側を電気めっき試薬に浸し、他方の側を光パターンで照明する。 露光を使用して、ウェーハ中に光電流を発生させ、ウェーハ内のそれぞれの導電性ゾーンに対するめっき電流のオン/オフを切り換える。 コンピュータ制御された空間光変調器が、異なる時刻に異なるゾーンを選択的に照明し、そのため、それぞれのゾーンは、コンピュータ制御された異なるめっきレシピを受ける。 これによって、ウェーハを露光する光学系の解像力に応じ、別個の10 4から10 6フレーバーのナノロッドを1枚のウェーハ上に合成することができる。 ウェーハ1枚あたりの総細孔数を10 12のとすると、それぞれのフレーバーについて10 6から10 8個のナノロッドを合成することができる。 【0082】 本発明の粒子は、実施例1で説明する基本電気めっきプロセスを自動化することによって、大規模に調製することもできる。 例えば、一連の膜及び別個の電極群を含む装置を使用して、コンピュータ制御された効率的な方法で、さまざまな多数のフレーバーのナノ粒子を作ることができる。 【0083】 使用する合成法とは独立に、固有のタイプのそれぞれのナノロッドを分離し、 表面処理又は変性のため、全てのナノロッドを溶液中に解放する重要な最終段階が必要である。 上記のそれぞれの合成方法は、ナノロッドの分離及び解放に同じプロセスを利用することができる。 主要な2つの技法がある。 (i)膜又は平面基板上での合成に続いて、半導体産業からのダイ分割技法を利用することができる。 基板に柔軟な接着材料を対合させる。 ダイシングソーによって基板を切断し、接着材料は無傷のまま残す。 次いで接着材料を均等に引っ張って、それぞれの島部を物理的に分離する。 次いでそれぞれの島部をロボットによって自動的にピックアップし、別個のマイクロウェルに入れる。 自動化されたフルイディクスステーション(fluidics station)を使用して、必要なエッチング液を導入し、それぞれのロッドを溶液中に解放する。 (ii)代替実施形態は、膜の個々の島部と同じパターンのウェル、及びエッチング液を流すチャネルマッチングアレイを含む、マッチングマイクロウェル基板である。 マイクロウェル基板とチャネルアレイの間に膜又はウェーハをはさみ込むことができる。 次いで、エッチング液をチャネルに導入する。 このエッチング液はAg裏当てを溶解し、対応するウェルにナノロッドを運ぶ。 レーザ除去、制御された酸又は塩基除去などを含め、膜から粒子を除去する他の手段も可能である。 【0084】 膜上の不均一なめっき又は平面基板上の不均一な付着は、ストライプの長さを変動させ、したがって最小ストライプ長に下限を課す。 これがあるレベルまで達すると、ストライプ数が制限され、したがって所与のナノロッド長に対して可能な最大タイプ数が制限される。 【0085】 非常に多数の非常に小さいナノロッドを作ることができるので、膜をベースとしたテンプレート指向合成技法が好ましい。 電気めっき条件を適切に制御して、 多くのタイプのナノロッドバーコードを生産することができる。 数十から数百タイプのナノロッドが必要な多重免疫検定などの応用では、周知の技法で十分であり、簡単に増加(scale up)して必要な数を提供することができる。 数千タイプのナノロッドが必要なプロテオミックサイン(proteomic s ignatures)などの応用では、より高スループットの合成技法、及び数千のさまざまなそれぞれのバーコードを独特に識別する能力が要求される。 【0086】 電気通信、ディスクドライブ及びバーコード産業からのアルゴリズム及び技法を利用して、所与のナノロッド長で最も多くの「情報」を生み出すのに最適なナノロッド設計を決定することができる。 雑音が多い通信チャネル中で情報をコード化し、最小の誤りで情報を検出することの基本的な難しさはよく知られている。 これらの問題に対してこれまでに適用された解決法は、ナノロッドバーコードの設計、合成及び検出に対しても当てはまるであろう。 ナノバーコードの検出及び識別 幅約100nm以上、長さ約2ミクロンから15ミクロンの金属バーコードの場合、金属セグメントの反射率の差を、従来の光顕微鏡法を使用して視覚化することができる。 重要なのは、波長λの光の照明下で物体のサイズを確立することに、λ/2基準が関わってくることである。 サイズを正確に決定できない場合でも、直径がλ/2よりもはるかに小さいフィーチャを視覚化できることが確かに可能であり、このことは実際に多数のグループによって示されている。 言い換えると、セグメントの正確なサイズが必要な情報でない限り、全てのセグメントの幅が例えば50nmであるAu/AuナノバーコードとAu/Agナノバーコードを、容易に区別することができる。 【0087】 したがって、目視検査によってロッドの数を区別(及び定量化)できる場合には、このような作業を自動化することができる。 λ/2基準が満たされるならば、個々のバーコードの長さの異なるセグメントを区別することも可能である。 4 つのAgセグメントを異なる長さに成長させた9のストライプを付けたバーコード(Au/Ag/Au/Ag/Au/Ag/Au/Ag/Au)の画像を得た。 図3を参照されたい。 この画像は、光学顕微鏡を反射光モードで使用し、解像力を向上させ、画像のコントラストを高めるために400±40nmの帯域フィルターを使用して得たものである。 以上に説明した視覚的/光学的方法の他に、さまざまな多数の方法によって検出及び識別を実施することができる。 【0088】 この画像はいくつかの点で興味深い。 第1に、4つの明瞭な明るい領域(Ag セグメントに対応)を明らかに見ることができる。 この画像では、(顕微鏡法による)見かけの長さが推定される長さに対応しない。 例えば、最も小さな明るいセグメントが、最も長いセグメントの長さの1/10であるようには見えない。 これは、電流と長さの非線形的関係のためである可能性もあるが、それよりはおそらく、光学系の物理的な限界を反映したものである。 この画像は、反射光明視野顕微鏡法を用いて得たものである。 このモードでは、回折を制限した光学系が、約2NAの理論上の解像力を与える(これらの画像を得るために使用した系では解像力が約400nm/2(1.4)=143nmである)。 ただしNA=開口数である。 したがって、143nm離れた2つのフィーチャを区別することが可能である(レイリー基準)。 これよりも接近した複数の点は1つのフィーチャとして現れる。 しかし、Agストライプを分離している複数のAuセクションはこの距離より長いため、143nmよりも短いAgストライプも顕微鏡下で依然として見ることができることに留意されたい。 したがって、2.5ミクロンのバーコードでは、その全てが光学的に区別可能なそれぞれ200nmの12本のストライプを容易に想像することができる。 あるいは、150nmの5つのセグメント及び50nmの5つのセグメントを有する10ストライプの2ミクロンのバーコードロッドを生成し、「読み取る」ことができるはずである。 【0089】 反射率によるバーコード検出と蛍光による分析物定量の同時実行が可能である。 一例を図4に示す。 パネルCは、それぞれのタイプのナノロッドを識別する目的に使用する、400nmで得た反射率画像を示す。 このケースでは、画像が、 ストライプを付したナノロッドの混合物を示す。 FITC発光の波長で画像化したパネルAは、第1のタイプのナノバーコードの明るい像、及びかろうじて検出可能な第2のタイプのナノバーコードのゴーストを含む。 これらのゴーストはディジタル式に容易に取り除かれる。 テキサスレッド(Texas Red)の波長で画像化したパネルBでは、第2のタイプのナノバーコードが明るく見え、一方、第1のタイプのナノバーコードは極めてかすんで見える。 【0090】 蛍光を読み取り、同時にナノバーコードを識別する能力は、多重検定のための強力なツールセットを含む。 いくつかの実施形態では、識別と検出を同じ信号を使用して達成することができる。 例えば、蛍光パターンは識別に使用され、一方で蛍光の強度は分析物の濃度を指示することができる。 しかし、蛍光以外の手段によって実施される生体分析も多数ある。 これらの中で質量分析法は特に優れており、ポリペプチド及びタンパク質の詳細な識別及び分析のための選択のツールに急速になりつつある。 生体分子試料の導入に質量分析法で広く使用されている2つの方法がある。 エレクトロスプレー法及びマトリックス支援レーザ脱離/イオン化法(matrix−assisted laser desorptio n/ionization:MALDI)である。 MALDIでは、関心の分析物が、固体紫外線吸収有機マトリックス中に埋め込まれ、パルスレーザ照射によってマトリックスを蒸発させると、分析物も一緒に運ばれる(例えばKaras et al. ,Anal. Chem. 60,2299−2301(1988) を参照されたい)。 このプロセスの間に、マトリックスによって吸収されたエネルギーはイオン化された分析物に伝達される。 この気相分析物イオンが次いで、 飛行時間型(TOF)質量分析器に送られる。 MALDI−TOFは現在、タンパク質、ポリペプチド及び他の巨大分子の分析に利用され、成功を収めている。 エネルギーを分析物へ伝える有機マトリックスの導入が、脱離質量分析の分野を大きく前進させたとはいえ、MALDI−TOFには依然としていくつかの限界がある。 例えば、マトリックスからの背景イオンの存在のため、小分子の検出は実際的でない。 更に、MALDI実験は、マトリックスの選択に本質的に敏感である。 分析物の性質に合わせて、マトリックスのタイプならびに量をしばしば調整しなければならない(複雑な混合物の分析にとっては厳しい限界である)。 【0091】 最近、スナー(Sunner)その他は、表面支援レーザ脱離/イオン化(S urface−Assited Laser Desorption/Ioni zation)に対してSALDIという用語を導入した(Sunner et al. ,Anal. Chem. 67,4335(1995))。 この技法は、 マトリックスを使用せず、小有機分子を分析でき、MALDIと同様の性能を生む。 レーザベースのイオン化に対して、貴金属ナノ粒子は2つの理由から非常に優れた選択である。 (i)コロイド状貴金属ナノ粒子は、可視及び近IR領域で非常に大きな減衰係数を示す。 これは有機マトリックスと対照的である。 (ii )Auナノ粒子を照射すると、粒子表面の電界強度が劇的に増大することが知られている。 これは、表面増強ラマン散乱の基礎である。 これによってイオン化効率が増大する。 更に、ナノバーコード技術と組み合わせると、SALDI−MS は強力な分子フィンガープリンティングツールになる。 【0092】 ナノロッドを画像化するのに従来の光顕微鏡法を使用した。 これは、バーコードサインの自動「解読(decode)」を可能にするはずである。 更に、蛍光顕微鏡法を使用して、ロッドへの生体分子の結合のレベルを定量化した。 検出及びリードアウトも、それぞれのナノバーコードのコードを検出し読み取ることができ、ナノロッドに結合した分子からの蛍光を定量化することができるカスタム機器設計及び高性能の画像解析ソフトウェアを用いて達成することができる。 更に、この検出システムは、非共有結合した分子のそれぞれの個別ナノロッドの表面からのレーザ誘起脱離を可能にする非常に集束した適当な波長のレーザ励起を可能にする。 【0093】 ガラス表面にランダムに分散させたナノロッドを画像化するための、これらの要件を満たすシステムは製作することができる。 4k×4k画素のCCDカメラに対合させた63×(NA=0.8)顕微鏡対物レンズを使用すると、カメラの視野は約9×10 4 μm 2 (1辺300ミクロン)となる。 それぞれの視野は、約600のナノロッドをとらえることができる(1%適用範囲(coverage ))。 物理的なオーバラップの確率は合理的に低い。 タイプごとに約10個のロッドから蛍光又はMS信号を検出し平均することが望ましいと控えめに仮定すると、1000フレーバーの測定には、合計10,000個のナノロッドを識別し測定する必要がある。 1視野あたり600粒子とすると、総面積約20mm 2をカバーする約170の画像フレームが必要となる。 高速度カメラでは、それぞれのフレームの読取りに約2秒かかり、総画像化時間は10分未満である。 なお、 必要な表面積は、96ウェルマイクロプレートの1つのウェルとほぼ同じであり、合計スループットは10分で1000検定、1検定あたり約1.7秒である。 【0094】 ストライプパターンをリアルタイムで検出し、デコードし、視野の中のそれぞれのナノロッドからの蛍光を定量化することができる画像解析ソフトウェアを使用することができる。 測定時間を節約するため、このシステムは、2台のCCD カメラを使用することができる。 1台は、反射光を取り込んでストライプパターンをデコードするため、もう1台は、これと同時に、それぞれのナノロッドからの蛍光信号を定量化するためである。 【0095】 この画像化システムは、ストライプパターンを検出することができるだけでなく、同時に、それぞれのナノロッドからの蛍光発光を測定することができる。 更に、このシステムを使用して、ナノロッドの最大寸法に一致したスポットサイズを有する非常に集束したレーザスポットを、それぞれの個々のナノロッドに導くこともできる。 ビームステアリング光学系を使用して、それぞれのナノロッドから、タンパク質及び/又は分子を順番に照明して脱離させることができる。 次いでこれを、飛行時間型(time―of―flight)質量分析計中に加速させる。 検出された蛍光信号に基づく質量分析に対して、個々のナノロッドを選択することができ、したがって、十分に結合しているそれらのロッドだけを分析することによって測定時間を短縮することができる。 【0096】 先に論じたとおり、好ましい実施形態は、粒子識別用のメカニズムとして反射率を、センサ読み取りとして蛍光を含むが、潜在的に大きな成果で、反射率変化自体を検出に使用することもできる。 Pt及びAuの反射率によって示される2 つの関連するな点は、(a)大部分の波長で反射率が異なること(これによってコントラストメカニズムが働く)、及び(b)約600nmで、2つの反射率が同じになる(反射率等吸収)ことである。 450nmで、Ptのストライプ(複数)はのAuストライプ(複数)よりも明るく(より反射して)見え、600n mでは逆になる。 中間のある波長に、コントラストが観察されない反射率等吸収点がある。 【0097】 EMスペクトルの可視領域での金属薄膜のバルク反射率が形態に依存することはよく知られている。 これは、ナノメートルスケールの粗度特性が表面プラズモン(plasmons)に対する散乱部位として振る舞う貴金属表面で特にそうである。 簡単には、小さな球形コロイド状Auのナノ粒子でタグ付けされた2次抗体の、捕獲抗体で誘導体化されたAu薄膜への抗原定方向(antigen− directed)の結合によって、Au膜の反射率が非常に増幅される。 これによって、抗原感度は大幅に強化される。 この概念をバーコードに移せば、分子認識によって誘起されたコロイド状Auのコロイド状バーコードのAuセグメントへの結合によって、バルク反射率が変化し、反射率等吸収点で反射率コントラストが生じるという着想になる。 したがって、このコロイド金属ナノ粒子をコントラスト剤と考えることができる。 本来、表面プラズモン共鳴に類似の解決法であるこの反射率コントラストメカニズムは、極めて鋭敏な感度を有する可能性がある。 市販の機器を使用して、10平方ミクロンあたり1つある直径40nmのコロイドAu粒子を容易に検出できることが示されている。 バーコードの表面積は1μm 2よりもはるかに小さいので、単一の粒子の単一のセグメントへの結合が検出可能である。 更に、関心の生体分子のコロイド適用範囲(coverag e)カバレージを粒子あたり1に限定する方法も可能である。 【0098】 本発明のナノバーコードは、生物科学においてほとんど無限の応用を有する。 これらには、ゲノミックス、プロテオミックス、機能プロテオミックス、メタボリックプロファイリング、小分子分析、組合せビード識別及びフェノタイピング(phenotyping)での使用が含まれる。 伝統的なバーコード化型の応用及びナノダイオードなど、生体分析以外の用途もある。 これらの応用のいくつかについては後に詳細に説明する。 【0099】 (ゲノミックス応用) 本発明のナノバーコード技術は、(i)例えば100サンプルの遺伝子発現を同時に監視し、(ii)自己参照(self−referencing)粒子上でゲノム分析を実施し、(iii)溶液中の10,000粒子上で単一ヌクレオチド多形(SNP)分析を同時に実施する、少なくとも1つの実施形態で有用である。 【0100】 ゲノミックスの研究者は、遺伝子発現を包括的に監視し、かつ/又は生体内の遺伝的多形(複数)を検出することを目指している。 人間では、このようなツールを、診断医学と予後医学の両方で使用することができ、このことが、遺伝子チップ生産に巨大な投資がなされていることを部分的に説明している。 しかし、遺伝子チップが商業的に最初に登場してから何年も経つが、この技術にまつわるいくつかの基本的な問題が依然として解決されずに残っている。 これらの中で最も際だっているのは、植物のさまざまな部分の遺伝子発現を監視する目的でも、又はより重要なことには、多数の患者をスクリーニングする目的でも、多数のサンプルを同時に比較することができないことである。 ナノバーコード化が提供する非常に高いレベルの多重化は、これらの問題を軽減し、高スループットかつ低コストのゲノミックス応用を実現する。 【0101】 今日実施されているcDNAアレイベースの遺伝子発現分析では、2種類のc DNAの混合物(それぞれ異なる色の蛍光染料でタグ付けされている)を、いくつかの異なるcDNAスポットを含む表面に適用する。 ハイブリッド形成後にこの2色の強度比を分析することによって、上方に調整された(upregula ted)された遺伝子、下方に調整された(downregulated)遺伝子及び影響を受けなかった遺伝子を決定することができる。 理論的にはこれは、 例えばDNA配列決定(sequencing)で使用される4種のそれぞれの染料を使用した最高4種のcDNAサンプルの混合物を用いて実施することができる。 このような実験によって、遺伝子発現を、例えば生体のさまざまな部分( すなわち作物の根、茎、葉及び花)で、又は治療的介入後のさまざまな時点で監視することができる。 実際問題として、これはまだ商業的規模で立証されてはいない。 明らかに、2色だけを使用することには問題がある。 より多くの色を使用する見通しは現在たっていない。 更に、現行の技術を使用して大規模な多重化( すなわち数十から数百のDNAサンプルの混合物)を実施することは単純に不可能である。 対照的に、バーコード化を使用したこのような実験は非常に簡単であり、大きな母体群のスクリーニングを迅速に実施することができる。 このことは、病気の早期診断にとって非常に重要である。 【0102】 多数の二本鎖(ds)cDNAスポット(例えばゲノム中のすべての遺伝子のスポット)を含む表面を調製することができる。 しかし、説明の目的上、50から100スポットの二本鎖(ds)cDNAを含み、特定の病気に関連することが知られている遺伝子などの関心の遺伝子のサブセットに焦点を当てた表面を、 簡単に調製することができる。 これらに非常に類似した遺伝子クラスターが現在、膜及び/又はガラス支持体に載せられて市販されている。 (膜の白い背景は、 ナノバーコード識別の優れたコントラストを提供することに留意されたい)。 それぞれのスポットのサイズは約400ミクロン×400ミクロンである。 100 サンプルのそれぞれの分離されたmRNAをcDNAに逆転写するときには、固有のオリゴヌクレオチドタグ(15塩基)がそれぞれのポリTプライマーに付加される。 したがって、それぞれのサンプルの全てのcDNAは同じ(固有の)タグを有する。 本発明の一例では、50サンプルが血液銀行から、50サンプルが初期段階又は慢性段階の病気を示す患者からである。 標識された100サンプルのcDNAは標準のプロトコルを使用して混合され、(表面上のds cDNA を変性させた後に)表面にハイブリッド形成される。 mRNA発現のレベルがそれぞれのサンプルで同一である場合、それぞれのサンプルから等しい数のcDN Aが表面に結合する。 10 12 cDNA/cm 2の適用範囲及び単に1%のハイブリッド形成効率を使用すると(過小評価)、それは、それぞれのスポット上のそれぞれの固有cDNAの1.6×10 5に対応する(合計1.6×10 7のcDN A分子)。 比較的に大きな、又は小さなレベルの発現を有するサンプルはそれぞれ、結合した分子の数の増加又は減少を示すと判定される。 【0103】 相対的な結合量の定量は、cDNAサンプルにタグ付けするのに使用されるオリゴに相補的な固有のオリゴでそれぞれタグが付けられた100フレーバーのナノバーコードの混合物を有するこの表面を現像することによって達成する。 バーの長さに沿った5から10ナノメートルスケールの粗度のため、オリゴがナノバーコード表面から離れている場合に、ハイブリッド形成がより効率的に進むことが示された。 したがって、ランダム化されたDNAの30塩基及びオリゴの15 塩基を含む45マー(45−mer)を使用して相補的なタグを粒子に付加する。 周知の方法の1つを使用して45マーを表面に付加する。 1つは、チオールで標識したDNAの使用を含み、他は、アミン末端を有するDNAへの標準EDC 結合を使用する。 チオールで標識した材料では、メカプトヘキサノールで予め誘導体化された(derivatized)粒子への45マーの追加は、DNAが表面に垂直に結合する傾向を増大させることに留意されたい(これによってハイブリッド形成効率が増大する)。 【0104】 この測定のダイナミックレンジは、スポットのサイズに対するナノバーコードのサイズによって低減することに留意されたい。 0.1×1ミクロンのバーコードは1000個のcDNA分子をカバーする。 発現に差がなく、スポットが20 0×200ミクロンである場合、これは、それぞれのスポット上に1.6×10 4のバーコードしかないこと、すなわちそれぞれのフレーバーに160のバーコードしかないことを意味する。 この比較的に低いダイナミックレンジ(すなわち20)が不十分である場合、サンプル数を50まで減じ、スポットサイズを3倍にして、30のダイナミックレンジを与えることことができる。 これによって、 必要な材料は3倍とはならない。 関連の研究によれば、単一の結合は、一緒に取り付けられた種を保持するのに十分である。 【0105】 このタイプの非常に高レベルの多重化(すなわち複数スポット上の複数タグ) は、現行の他のどの技術を使用しても実施することができない。 球形粒子を用いれば、さまざまなフレーバーを得ることができるが、球形粒子は、ナノバーコードに比べて非常に大きいので、タイプごとに少数のバーコードしか表面に結合することができない。 このような粒子上に異なる100のcDNAを置くことができる(すなわち1:1)。 アレイの代わりにビーズを効果的に使用することができるが、3〜4タイプの蛍光タグに拘束される。 あるいは、バーコードよりもはるかに小さく、それぞれのスポットにより多くの粒子を結合させることができる量子ドットを考えることができるが、近い将来に、100の異なるフレーバーを調製できる見通しはない。 蛍光半値幅25nmで、500nmから3ミクロンの均一な間隔の最大発光を有する1組の粒子が必要となろう。 ナノバーコードは、 小さなサイズと高い読み取り可能性(tenability)との間のユニークなバランスを提供し、この応用を可能にする 同じAu/Ptナノバーコード上に2つの異なる化学的性質(chemist ries)を配置する能力は、本発明のこの実施形態でも使用することができる。 これは、2つの機会、自己参照ナノバーコードと二重検定ナノバーコードとに導く。 これらの機会はともに、どのストライプのセットが単一のナノバーコード内にあるかを制御できるため、蛍光が観察される粒子上の位置を制御することができることから生じる。 例えば、捕獲抗体がAuのストライプだけに置かれ、蛍光タグが付けられた2次抗体を使用してサンドイッチ免疫検定を実施する場合、 Ptのストライプから蛍光は発せられないはずであり、Ptのストライプは内部標準の働きをする。 したがって、Ptからの蛍光は非特異的結合に起因したものであるに違いなく、このような蛍光はディジタル式に取り去ることができる。 この原理は、異なる金属上のマッチ及びミスマッチ捕獲オリゴヌクレオチドを使用して証明することができる。 これは、自己参照ナノ粒子になる。 先に述べたとおり、4種の直交化学的性質ケミストリを有する4タイプのセグメントを有するナノバーコードは、特定の残基でのそれぞれの可能な塩基置換を有する核酸を1つの粒子に配置することができる。 このような粒子の使用は、高速多重単一ヌクレオチド多形(SNP)分析に役立つ。 【0106】 差ストライプ修飾を利用する他の重要な応用は、生体分析における偽陽性の排除に対するものである。 例えば、C型肝炎に対して陽性と標識された血液サンプルのうち25%だけが実際に汚染されている。 したがって、FDAは現在、血液の核酸テストの方がより正確な方法であるとしている。 理想的には、明確な識別のためには、抗体ベースの検査と核酸ベースの検査の両方からの陽性信号が必要であろう。 偽陽性の結果が生命を危うくするときには特にそうである。 そのため、政府機関は、生物戦争(biological warfare)の因子を識別する相補的な技法を積極的に追求している。 一方のストライプセットを抗体で、もう一方をオリゴで誘導体化した粒子を使用して炭疽病の抗原と核酸の同時検出も達成することができる(オリゴと抗体はともに、米メリーランド州Rock ville社から販売されている)。 DNA検定は「サンドイッチ」モードで実施される。 ナノバーコード表面全体が光を発する(すなわち両方の分析物が存在する)ときにだけ、陽性の識別がなされる。 原則としてこれは、複数の疑わしい生物戦因子を用いて実施することができる。 異なるフレーバーのナノバーコード上に適当な試薬が同時に固定される。 【0107】 本発明のナノ粒子を利用する他の実施形態は、極めて多数のバーコードを用いて使用可能となる。 例えば、1,000から10,000フレーバーのバーコードを用いて、単一ヌクレオチド多形(SNP)マッピングを含む、完全な遺伝子型分析を溶液中で実施するのに十分なナノバーコード多様性が、遺伝子チップ又は固定DNAの複雑さ(及び経費)を包含することなく使用可能である。 この実施形態では、それぞれのフレーバーのナノバーコードが、遺伝子アレイ上の空間位置に対応する正確な置換えである。 更に、フォトリソグラフィー駆動の反応の代わりにオリゴヌクレオチドが化学的に(すなわち先に述べたようにチオールの共有結合性吸着によって)取り付けられることを除き、この実験は全く同じに実施される。 【0108】 これらの実験に対するアレイとナノバーコード(0.2×3ミクロン)中の表面積を比較することは有益である。 直径50ミクロンの円形スポットは面積20 00平方ミクロンに相当する。 直径3インチの膜上で合成を実施して、1536 ナノバーコード/膜のナノコードを調製し、一つの細孔につき一つのナノバーコード、細孔密度が総膜面積の30%とすると、それぞれの合成で2800万を超えるナノバーコードが生み出される。 0.2ミクロン×5ミクロンのバーコードはそれぞれ3平方ミクロンの表面積を有する。 固定されたナノバーコード上の蛍光体検出の効率が、平面アレイ上の同様のサイズのスポットと同じだと仮定する。 固定されたナノバーコード上の蛍光体の1/3だけを検出することができ(残りの2/3は底面又は側面にあるとする)、粒子面積当たりの有効検出面積が1 平方ミクロンであると控えめに仮定すると、(それぞれのフレーバーの粒子に対する)使用可能な総表面積は、遺伝子チップが2,000平方ミクロンであるのに対して2800万平方ミクロンになる。 他の条件が全て同じなら、それぞれのナノバーコードの合成で、それぞれのフレーバーごとに、14,000の遺伝子アレイ実験に対して十分なフレーバーを生み出す。 (なお、ゲノタイピング実験で一般に使用可能な10,000の異なるフレーバーを得るためには、1回15 36個のナノバーコードの合成を7回すればよいことに留意されたい。 ) 発明者らは、ナノバーコード表面で、選択的なオリゴヌクレオチドハイブリッド形成を実施することができることを証明した。 したがって、配列Aのオリゴヌクレオチドがこの表面に付加しているとき、配列A'が結合し(A'とAは完全に相補的である)、加熱しても、このデュプレックス(duplex)の融解温度に達するまで非共有結合を維持する。 対照実験で、(Aとは相補関係にない) オリゴヌクレオチドBをナノバーコード上のAと反応させると、洗浄し、かつ/ 又は融点未満の温度に加熱した後には何も残らない。 蛍光標識したDNAを使用して、A'の結合(及びBの非結合)を実験的に検証することができる。 蛍光標識したA'との反応、及びそれに続く洗浄及び加熱によって、ナノバーコードに結合したA'だけを示す(すなわち溶液中にA'がない)蛍光像が得られる。 蛍光標識したBを用いた全く同じ条件の反応では、識別可能な蛍光のない像が得られる。 この結果は、ナノバーコードのMALDI−TOFによって結合したA' が直接に識別された質量スペクトルデータからも確認される。 【0109】 この結果は、SNP分析ならびに「遺伝子チップ」実験を溶液中で実行することを可能にする。 「遺伝子チップ」実験は一般に以下のように実施される。 DN Aサンプルを消化し、蛍光プローブと反応させ、表面の既知の位置に添付された既知のオリゴヌクレオチドのアレイと反応させる。 (過酷な洗浄/加熱後の)表面からの蛍光像のマッピングは、特定のオリゴヌクレオチドの不在/存在を明らかにする。 ナノバーコード上でこの実験を、表面結合オリゴの識別が、チップ上の位置ではなくナノバーコードIDによって決定することを除き、全く同じやり方で実施することができる。 重要なのは、この方法では、(ナノバーコードが自由に分散することができる場合に)ハイブリッド形成を溶液中で起こすことができ、はるかに迅速に平衡が形成されることである。 更に、特定のオリゴ(又は複数のオリゴ)の検定への追加又は除去が容易に達成される。 実質上全く同じやり方で実施することができる、核酸を含む何十もの同様の実験フォーマットがあることは当業者には明白である。 どの場合も、表面に結合した分子の識別が、ナノバーコードIDによって決定される。 同様に、核酸以外の分子(例えば転写因子)の結合を検出することができる実験を実施することもできる。 更に、この結合分子は、完全な長さのDNA、完全な長さのRNA又は核酸の重複とすることができる。 【0110】 単一ヌクレオチド多形(SNP)を検出するいくつかの異なる生化学的方法がある。 それぞれを、ナノバーコード上で多重化して実施することができる。 この場合、ヒトゲノムは100,000程度のSNPを含むと推定されているので、 並はずれて多くの区別可能な粒子を作るナノバーコードの固有の能力は不可欠である。 【0111】 (小分子の分析) 本発明のナノ粒子の他の実施形態は、ナノバーコード上の組合せ自己集合単分子層の化学である。 したがって、SAMでコーティングされたナノバーコードに吸着した分子のSALDI−TOFスペクトルを得ることができ、組合せ分離/ SALDI分析を複雑な生物学的流体上で実行することができる。 【0112】 生命科学者は、患者サンプルからのタンパク質及びペプチドの完全なプロフィールを確立することにますます関心を寄せており、このことがプロテオミックス(proteomics)という分野の創成にはずみをつけた。 このような努力には、病気にかかった一団のサンプル間のタンパク質発現の変化が、その病気のバイオマーカー(biomaker)(又は少なくともバイオマーカーの構成要素)を含むという考え方が暗黙的にある。 小分子の完全なプロフィールは少なくとも興味深い。 結局、現在までのところ知られている最も重要なバイオマーカーのうちの2つがコレステロールと血糖である。 これらはともに、1000をかなり下回る分子量を示す。 残念ながら、内因性の理論上の限界を有するシーケンシャル分離(すなわちLC−CE又はCE−CE)での努力を凌ぐ、2D小分子分離の合理的方法は見あたらない。 【0113】 本発明のこの実施形態では、ナノ粒子の表面で化合物の分離を実施することができる。 この方法の原理は、固相マイクロ抽出(SPME)技法で使用される技術に似ている。 化合物の選択吸収/脱離は、無溶媒系で実施することができる。 従来のSPMEは、種の選択吸収/脱離を達成する多種多様な異なる材料を含むようには拡張されていない。 【0114】 機能化された表面に混合物からの種を選択的に結合させる戦略は、表面上でのそれらの増加につながり、より高い感度を有する検出への可能な経路を生み出す。 MALDIの一つのバリエーションである表面富化レーザ脱離イオン化(su rface enriched laser desorption ioni zation:SELDI)はこの原理に基づく(例えば、ウィンバーガーの電気柄移動(Weinberger,Electrophoresis),6,1 164−1177(2000)を参照されたい)。 タンパク質及び/又は小分子がその上に適用された5、6の異なる表面を得、次いでこれらを次第に厳しく洗浄することができる。 それぞれの表面/洗浄の過酷さの組合せによって異なる吸着プロフィールが生じるため、この技法は、複雑な混合物を分析する手段を提供する。 本発明のこの実施形態は、数千の異なる表面の化学的性質をナノバーコード上に生み出すことによって、この方法を指数関数的に拡張する。 それぞれの化学的性質は、そのナノバーコードIDによって識別される。 続くSALDIによる分析によって、複雑な混合物の分析は大幅に改良される。 【0115】 生物学的サンプルから明瞭にコード化された粒子上にいくつかの分析物を同時に捕獲するように組合せ的に設計された表面は、分離科学又は臨床化学分野に優位性を持たない。 一実施形態では、これらの表面を生み出すため、末端に反応性機能基を有し、試薬のライブラリで誘導体化された自己集合された単分子層(複数)(SAMs)が使用され、その単分子層は、表面の化学的性質が並はずれて多様なナノバーコードを与える。 更に、ナノ粒子を磁性粒子とすることができ、 これは、ナノ粒子が導入された溶液、サンプル又は生体からそれらを抽出する簡単な方法を提供する。 【0116】 当業者なら分かるとおり、表面ケミストリ又はコーティングをナノバーコードに適用するのに使用できる方法に関しては非常に多くの文献がある。 これらの方法の1つはSAMによる方法である。 SAMは、当業者に周知のさまざまな方法によって形成することができる。 一例では、ωカルボキシ置換アルカンチオール(alkanethiols)から金の表面に形成されたSAMをモデル表面として使用して、タンパク質と表面の相互作用が研究された。 この化学的性質は、 例えば一般にメルカプトカルボン酸又はアミンである水溶性メルカプト基誘導体でのキャッピング(capping)を含む。 このカルボキシル又はアミンは後に、生物検定で使用することができるこれらの粒子の生体分子接合体(複数)( conjugates)を与えるタンパク質、ペプチド又は核酸を共有結合的に標識するのに使用される。 これとは別に、混合したSAMを使用して、フィブリノーゲン、リゾチーム、ピルビン酸キナーゼ、RNアーゼ(RNAse)及びカルボニックアンヒドラーゼの吸着が研究された。 【0117】 本発明の例示的な実施形態によれば、ロッドをωカルボキシアルカンチオールと反応させることによって、カルボキシル機能を末端に有するSAMを持つナノロッドが合成される。 次いでカルボキシル基を無水物に対して活性化して、多様な機能基を有するさまざまなアミンと更に反応させる。 反応性アミン機能基を提供し、タンパク質との非特異的な相互作用を防ぐ他のクラスの誘導体は、カルボキシメチルデキストランから容易に調製されるデキストランラクトン(dext ran lactones)である。 ナノロッドの最初の誘導体化は、3−メルカトプロピル(トリメトキシ(trimethoxy))シランを用いて実行することができ、次いでこのシランアルコキシが、カルボキシメチルデキストランから誘導されたラクトンの遊離ヒドロキシルと交換される。 多様な機能グループを有するアミンによる、ラクトンのその後の開裂によって、デキストランでコーティングされたナノ粒子のλヒドロキシアミドのライブラリが得られる。 これらの方法は、容易に調製される一般的な反応中間体を提供する。 デキストランでコーティングされた、又は親水性のSAMは同時に、広範囲にわたる分子量及び等電点を有するタンパク質とナノロッドの間の非特異的相互作用に抵抗する表面を提供する。 誘導体化のための構造的に異なるアミン反応混液を適切に選択し設計することによって、巨大な表面ライブラリを生み出す機会が生まれる。 これらの組合せ的に誘導体化されたナノ粒子は、生物学的サンプル中に存在する多種多様な分子に結合する多様な結合力を有し、SELDIに対して説明したよりもはるかに大きな有効性を有する表面を提示する。 【0118】 これらのナノロッドを用いた親和力捕獲技法は、チップベースの系とは異なり、分析物を捕獲するオフラインインキュベーションステップを使用することができる。 このような方法は、運動論的視点から本質的に優れているというだけではなく(分析物の高速捕獲)、結合決定因子の密度を変化させて、生物学的流体中で遭遇する広範囲にわたる分析物濃度を収容することができるので、結合を駆動する質量作用の法則からも有利である。 細胞表面の炭水化物とタンパク質の相互作用を含む問題に取り組むため、炭水化物で誘導体化されたさまざまな密度を有するSAMが使用された。 本発明の表面を、遊離の糖を認識するように調整することができ、同時に、例えば糖タンパク質中の炭水化物の複数の結合決定因子を利用するように設計することができる。 この方法は、低分子量有機化合物から幅広のスペクトルのタンパク質に至るさまざまな分子を結合することができ、アドレス可能で、かつ分析しやすい表面を提供する。 生物学的ソースはしばしば、無機塩、緩衝液、カオトロープ、防腐剤及びその他の添加剤の複雑な混合物を、しばしば関心の分子よりも高い濃度で含む。 そのいくつかはMALDI MSに有害である。 本発明のこの実施形態は、生物学的サンプル中に存在する分子数と同じ規模の数の表面を生み出すことができる。 同時に、質量分析法によって分析する関心の分子の結合を可能にする。 したがってこの実施形態は、分析前のサンプル調製の非常に有用かつ効率的なモードを提供する。 【0119】 本発明の発明者らは、微量多重分析において、低分子量有機物、ペプチド及びより大きなタンパク質に同時に問い合わせる現行の技術を知らない。 さまざまな分子に対するさまざまな親和力を有する表面修飾ナノロッドのこの巨大なライブラリは、生物学的サンプルに加えられ、培養され、洗浄され、SALDI MS によって分析される。 それぞれのナノロッドは、特定の分子又は特定の分子セットを表し、これによって全体が、分析されたサンプルのフィンガープリントを与える。 【0120】 (機能プロテオミックス) 本発明の追加の実施形態によれば、ナノバーコード技術を使用して、(i)既知のタンパク質に対する非常に敏感な多重免疫検定又は他の形態の検定を開発し、(ii)翻訳後修飾を識別する方法を開発し、(iii)タンパク質−タンパク質相互作用を研究することができる。 【0121】 プロテオーム(proteome)分析(別名プロテオミックス)の主要な目的は、遺伝子生成物(タンパク質)の迅速な特徴付けである。 プロテオミックスの現状技術は、細胞全体、組織又は生物全体のレベルで発現した複雑なタンパク質混合物の分離を可能にする2次元(2D)ゲル電気泳動に依存している。 2D ゲル電気泳動及びゲル染色の後、現れたタンパク質スポットを切り取り、ゲルから抽出し、酵素消化にかける。 次いで、得られたペプチド断片を、質量分析法( MALDI−TOF MS又はESI−MS)によって特性決定する。 元々のタンパク質構造は、そのペプチド質量(複数)を、市販データベース(例えばSW ISS―PROT)に出ている既知のタンパク質の理論上のペプチド質量と突き合わせることによって、再構築することができる。 2Dゲルプロセスの再現性のなさ、タンパク質定量の困難、及びサンプル抽出に関連した複雑さは、この技術にまつわる問題である。 2Dゲルは、非常に低い分子量及び非常に高い分子量のタンパク質に対する分離バイアスにも苦しむ。 したがって2Dゲルは、小有機分子、代謝産物、DNA、RNA、及び重要なことには15kDa未満のタンパク質のプロフィールを高い信頼性で描くことはできない。 【0122】 プロテオミックス(proteomics)の他の方法は、分析を既知のタンパク質(すなわちそれに対する抗体がすでに市販されているタンパク質)に制限することを含む。 この技術に基づいてプロテオミックスを実行する最良の技法は、固体担体として微細球を使用する。 現在、さまざまな100のビードのセットが使用可能である。 それぞれのビードのセットは、原則として、別個の免疫検定をサポートすることができる。 データ収集は、従来の流れ血球計算器に類似の機器によって実行される。 この技術を使用した15種のサイトカインの同時定量が示されている。 この方法の主要な限界は、微細球のタグ付けと検出の両方に使用される分子蛍光の周波数空間が、(反射率差空間における)ナノバーコードとほぼ同じ数のフレーバーを収容できるほどには広くないことである。 このことは、 この方法を進歩させる機会を与えるだけでなく、多重化の最もよい面とMALD Iの最もよい面とを結合してプロテオミックスの革新を達成する機会も与える。 【0123】 プロテオミックス分野では、発現されたタンパク質の大規模並列分析が求められている。 後述するように、ナノバーコード技術、SALDI及び蛍光ベースの免疫検定を組み合わせて1つのプラットホームとすることによって、既知のタンパク質に対する非常に敏感でかつ定量的な多重免疫検定を生み出すことができる。 選択性、感度、多重化、定量及び質量分析を同じ測定に統合することができ、 とりわけ、最小で100倍の感度増大を提供することができる。 【0124】 最初に、特定の免疫検定を、特定の捕獲抗体の取付けを介してそれぞれのフレーバーのナノバーコードに関連させる。 分析物を、抗体でコーティングしたナノロッドに結合させ、分析物上の異なるエピトープを認識する、蛍光染料でタグ付けした第2の抗体を用いて分析物を検出する。 【0125】 このプロセスは、同じサンプル中で、使用可能な捕獲抗体及び検出抗体の数と同じ数のタンパク質に対して実行することができる。 数百対の抗体が現在市販されており、将来この数は更に増加しよう。 更に、(アプタマー(aptamer )技術、ファージディスプレイなどの)他のタンパク質検定方法も現在開発及び改良中である。 したがってこの方法では、適当な選択的結合ケミストリが存在する(又は将来に存在する)全ての既知のタンパク質の存在を生物学的サンプルに同時に問い合わせることができる。 このシステムの利点は、2種以上の蛍光体を用いてよりいっそう大規模な多重化が可能であることである。 【0126】 同じプラットホームを使用して、翻訳後に修飾されたタンパク質(新しい病気のマーカーの有望な候補である)を検出することができる。 タンパク質は、翻訳中及び翻訳後に修飾を受けることがある。 これらの修飾は、「親タンパク質」の電荷、疎水性、コンフォメーションに影響し、さまざまなレベルで起こる。 アセチル化、リン酸エステル化、メチル化、ヒドロキシル化、N−及びO−グリコシル化のような修飾は、細胞レベルならびに細胞外流体中で起こる。 現在、100 を超える翻訳後修飾が知られている。 【0127】 翻訳後修飾を検出するには、1つのタンパク質に対して産生されたポリクローナル性抗体を、特定のバーコードフレーバーに接合させる。 ポリクローナル性抗体は、産生の原因となったタンパク質を捕獲するだけでなく、(同種のエピトープを共有するが、異なる部位で修飾された)タンパク質アイソフォーム(iso form)をも捕獲する。 検出抗体がアイソフォームを認識した場合、そのアイソフォームは「親タンパク質」と一緒に(すなわち蛍光免疫検定によって)定量される。 翻訳後修飾が、検出抗体によって認識されるエピトープに影響を及ぼした場合、そのアイソフォームは蛍光によって定量されない。 捕獲抗体と検出抗体がともにポリクローナル性抗体である場合、それは、修飾され多数のタンパク質を定量する好機である。 蛍光測定の後、ナノロッドを質量分析にかける。 SAL DI−MSを使用して、タンパク質を特性決定し、さまざまな翻訳後修飾を識別する。 SALDI−MSレーザのエネルギーは全ての非共有結合を開裂させ、これによって、2つの抗体によってはさみ込まれたタンパク質を含め、ナノロッドと複合体を形成した任意の分子を検出することができる。 【0128】 特定のナノバーコードを用いた検定のタグ付けは、この方法の成功にとって重要である。 バー上のコードは、特定の分子量を有する所定のタンパク質に関連付けられる。 このナノロッドを分析するときには、フルスキャン分析の代わりに、 シングルイオンモニタリング(SIM)と呼ばれる技法を使用して、質量分析計を、特定の質量に集中するように調整することができる。 SIMモードは、より速いデータ収集を可能にし、分析感度を増大させる(SIMモードでイオンを検出すると、この同じイオンをフルスキャンモードで検出するのに比べて最高で1 000倍強化される)。 予想される分析物の質量(及び配列)が分かっていれば、質量分析器を、親タンパク質に関係した全ての可能なアイソフォームを検出することができる質量範囲に集中させることができる。 監視範囲は例えば、親タンパク質の分子量+/−500Daに設定することができる。 アイソフォームの分子量の決定はそのまま、親タンパク質が受けた修飾を明らかにする。 したがって、ナノロッドとポリクローナル抗体の組合せは、親タンパク質ならびに対応するアイソフォームを1フレーバーのナノロッド上に局在化するという利点を有する。 ナノロッドは、「親タンパク質」と対応するアイソフォームの間の連結を可能にする。 このことは、電荷が変化した場合(例えばリン酸化の後に)に翻訳後に修飾されたタンパク質が、ゲルのさまざまな位置に「現れる」2Dゲル電気泳動では当てはまらない。 要するに2Dゲルでは、同じファミリーのタンパク質間の関連が失われているため、修飾されたタンパク質を識別するのに多大な追加の作業(すなわち配列決定)が必要となる。 【0129】 遷移後修飾を検出する他の方法も可能である。 例えば、さまざまなタイプの全ての遷移後修飾を認識するケミストリを開発することができる。 例えばナノバーコードを、ミリスチル化された(myristlyated)全てのタンパク質を認識するように、あるいはグリコシル化された全ての化学種に結合するように機能化することができる。 したがってこのようなナノ粒子の集合を、翻訳後修飾全体の探査子とすることができる。 それぞれのナノバーコード上に吸着された種の分析は、質量分析法を含む適当な任意の手段によって実施することができる。 重要なのは、個々の種の正確な化学的性質が確かめられないときでも、翻訳後修飾の総量を知ることに価値があるということである。 翻訳後修飾の量は、ストレス、したがって健康全般の尺度である。 【0130】 本発明によれば、分子認識が可能な潜在的な実体を捜す生物学的サンプルのスクリーニングのため、特定のタンパク質をナノロッドに結合させることによって、タンパク質−タンパク質相互作用が調べられる。 蛍光ベースの定量及び質量分析計ベースの識別に結合されたナノロッド技術は、特定のタンパク質−タンパク質相互作用の調査を可能にする。 さまざまな検定フォーマットを使用して、遊離分析物Aの存在、又は分析物Aの遊離レセプターRの存在を生物学的サンプルに問い合わせる。 これらの2つのフォーマットについては以前に説明した。 分析物Aに対する抗体で標識された別のナノロッドセットを使用して、そのレセプターRに結合した分析物Aを、レセプターに対する検出抗体を使用することによって定量することができる。 遊離の自己抗体及び分析物Aを結合した自己抗体を、例えば蛍光性抗Fc抗体を使用して定量することができる、同様の検定を設計することができる。 【0131】 先に述べたとおり、ナノロッドは、存在するさまざまなアイソフォームを識別できるSALDI−TOF MSによって分析する。 検出抗体が使用できない場合でも、SALDI−TOFは依然として、さまざまな成分を識別し特性決定することができる。 蛍光による定量は欠けるが、捕獲された分析物の質量分析法による識別は可能である。 あるいは、タンパク質で標識されたナノロッドを使用して、ナノロッドに接合したタンパク質に対して親和性を有するタンパク質又は他の任意の実体が存在する生物学的サンプルをスクリーニングすることができる。 結合したタンパク質の存在は質量分析によって検出される。 【0132】 アフィニティークロマトグラフィーで使用されている考えられる実質的に全てのリガンド、薄層クロマトグラフィー、クロマトグラフィー電気泳動(及びその派生物)、HPLC又はガスクロマトグラフィーで使用されている全ての固定相を使用してナノロッドを標識することができ、これら全てを結合して、最小体積の生物学的サンプルを含む単一の管とすることができる。 ナノロッドのサイズのため、サンプルサイズは、現在開発されているタンパク質アレイに比べて大幅に低減する。 下表に、生物学的サンプルから特定の分子(カウンターリガンド)を捕獲(抽出)するためにナノロッドを誘導体化するのに使用することができるリガントの例を示す。 【0133】 【表1】 【0134】 最後に、この方法が、数千のさまざまなナノバーコードのフレーバーを数マイクロリットル以下の生物学的サンプルに加えることによって、サンプルサイズを大幅な低減させることに留意されたい。 これは、抗体又はタンパク質を平面上に空間的に配置するバイオチップ又はアレイの使用に優る利点である。 後者の場合には、チップ全体と接触させるためにはるかに大きなサンプル体積が必要である。 更に、ナノ粒子が磁性金属を有する場合には、磁気の相互作用によって粒子を溶液から引き上げることができる。 【0135】 質量13kDaまでのタンパク質では、SALDIの質量分解能がMALDI と同等である。 17から30kDaでは、SALDIの質量分解能が1/2から1/3に低下する(drops by a factor of 2 to 3
)。 ナノバーコードは、吸着したタンパク質への適正なエネルギー伝達を可能にするのに必要なスペクトル特性を有する。 ナノバーコードセグメントの属性(例えば長さ、幅、組成など)を変化させることによって、ナノバーコードのスペクトル特性を、最適なタンパク質脱離及びイオン化エネルギーが送達されるよう調整することができる。 【0136】 (フェノタイピング) 本発明のナノ粒子は、非常に小体積の生物学的サンプルの多重検定のためのプラットホーム(platform)として使用することができる。 このプラットホームは、超小体積の生物学的サンプルからの数百又は数千を超える検定を同時に測定することを可能にする。 【0137】 今日、人間又は大動物の代謝及び生理を特徴づけるために、多数の独立したさまざまな測定技法が使用されている。 小動物のフェノタイピング(phenot
yping)は、大体積の組織の利用に限界があるため、事実上不可能である。
本発明は、これらの測定の多くを1つのプラットホーム上に結合するだけでなく、更に、全てのこれらの測定を同じ微小なサンプル体積に限定するユニークな能力を有する。 このことが、このプラットフォームを、不十分な生物学的サンプル(すなわち小動物からの血漿)中の複数の分析物の測定に対して極めて魅力的なものにしている。 【0138】 本発明のこの実施形態は特に以下のことに集中する。 1)ナノバーの光学的問合せを可能にするプラットホームの開発 2)多重免疫検定の読み取り及びマウスのフェノタイピングの実現可能性 金属成分をその長さに沿って交互にすることができ(例えばPt/Au/Pt
/Au/Pt)、金属セグメントの長さを調整することができる、本発明の円筒形コロイド金属ナノ粒子を使用する。 これらのナノバーコードは、開発対象の免疫検定の固相個性タグ(identity tag)の働きをする。 一般的なサンドイッチ免疫検定では、捕獲抗体を特定のナノバーコードに接合させ、対応する検出抗体を蛍光体で標識する。 【0139】 個々のバーの金属セグメントの内因的な反射率差を従来の光学顕微鏡法によって画像化することができる読取装置を使用することができる。 この反射率測定は、ナノバーコードの識別を可能にし、検出抗体の結合を介して対応するナノバーに関連づけられた蛍光強度が、分析物の濃度を決定する。 反射率画像を自動的に分析し、ナノバーコードを識別し、同時に蛍光画像を自動的に分析し、ナノバーコード蛍光を定量化することができるソフトウェアを使用することができる。 サンドイッチ免疫検定の開発は、反射率データと蛍光検出データの並行収集を示す。 【0140】 最後に、ごく小量の血漿(50マイクロリットル以下)では、生物の生理的特徴付けに重要な大きなタンパク質群の検定の多重化を示すことができる。 1つのサンプルから多数の検定を実施できることは、多くの動物研究、特にしばしば使用されるマウスの研究にとって重要である。 50マイクロリットルの血漿なら危害を与えることなくマウスから得ることができ、マウスの寿命を通して採血し、
測定を繰り返すことができる。 このプロトコルは、例えば、同じ組織サンプル中のサイトカイン、自己抗体、一般的なタンパク質及びホルモンプロフィールの完全に自動化され、統合された同時測定を可能にする。 【0141】 フェノタイピングは、人間の病気の動物モデルに対して特定の関連性を帯びる。 モデルがゼブラフィッシュ(zebrafish)魚であるか、ウサギであるか、又はマウスであるかにかかわらず、個々の遺伝子又は遺伝子セットをノックイン又はノックアウトする能力は、病気の進行を研究するために設計されたストレーンを生成する強力な方法である。 同様に、動物モデルは、治療反応を監視するのに便利な媒体を提示する。 同時に、動物モデルのフェノタイピングは、異常な生体分析上の難題を提示する。 「あらゆるもの」を測定しようとすることに加えて、これらの研究に使用可能な組織の量は小さい。 例えば、マウスの尾出血から得られると期待できる血液は約200マイクロリットルでしかない。 更に、P
CR増幅は、極めて小量のDNAを分析的に有用な量に変換するが、2Dゲル電気泳動及び表面親和力ベースの方法を含む、プロテオミックスの現行の技法は、
かなり大量のサンプルを必要とし、更に高い解像力の分離を与えない。 小分子検定では、代謝に関係するさまざまな種のプロフィールを描く小体積の方法が示されておらず、反対に、薬学界の薬物速度論研究の焦点は、ほとんど独占的に1個又は数個の種に置かれている。 【0142】 この問題の解決法は、複数の高感度測定を同時に実施することであり、2つの方法が広く使用されている。 アレイング(arraying)は、研究中のさまざまなケミストリを、別々に調査することができるさまざまな位置に空間的に分離することを含む。 遺伝子チップは、オリゴヌクレオチドに対してこれを実行し(例えばMichael et al.,Anal.Chem.70,1242
−1248(1998)参照)、同じ戦略が、タンパク質に対して非常に未発達なレベルで実施されている。 多重化は、複数の独立した測定を、同時に、かつ/
又は同じ空間領域で、かつ/又は同じ材料を使用して実施することを指す。 これは、異なる蛍光体で標識された2つのDNAサンプルからのcDNA発現の相対レベルを測定する遺伝子発現分析の現行の方法の場合のように、チップ上で実施することができる。 この戦略が、2つのタンパク質サンプルを異なる複数の蛍光体で誘導体化し、混合してから、2Dゲル電気泳動によって分離することによって、プロテオミックスに適合された。 これらのケースでは、多重化のレベルが2
でしかなく、効率の増大は最小である。 本発明のナノバーコード粒子を使用すると、当業者に周知の任意の捕獲化学を使用することができる。 これは、無類のスケールで実行することができる多重化を提供する。 プロテオミックスの他に、同じ戦略を、ゲノミックス(例えばSNPマッピング)、及び臨床化学(例えばグルコース、高密度リポタンパク質、乳酸塩、乳酸デヒドロゲナーゼ、トリグリセリド、尿素、SGOT、SGPT、ビリルビン及びアルカリホスファター)、細胞研究(例えば体細胞数及び表面マーカー)、無機イオン定量などの他のフェノタイピング検定に適用することができる。 当業者なら分かるとおり、所与のサイズのナノバーコードが、ある応用に対してよりも別の応用に対して適当であることがある。 したがって例えば、追加の表面積が有用な場合、分析物のサイズ、所望の検出信号の強度などのため、より大きなナノバーコードのほうが好ましいことがある。 ナノバーコードのサイズ及び形状は更に、選択されたリードアウトのタイプにも影響を与える。 【0143】 (生体分析以外のバーコード化応用) バーコード化が導入されて25年、世界の主要産業がこの技術の恩恵を認識するようになり、その使用は拡大した。 例えば、食料雑貨販売業では、販売時のスキャニングだけにとどまらず、現在では、製造、流通及び販売プロセスから商品が顧客に届くまでのその供給チェーン全体でバーコード化を使用している。 産業は特定の利益を探すものだが、バーコード化の恩恵は、正確さ、生産性及び品質の向上、ならびに経費節減にまで及んでいる。 バーコーディング機器の販売は米国だけで年間40億ドルの市場であり、バーコード化された材料の価値はこれよりもはるかに大きい。 しかし、使用の増大及び技術の向上にもかかわらず、物理的又は環境的制約のために多くの産業が、バーコード技術を利用することができないでいる。 このような制約の例には、バーコード化したい品目のサイズが小さいこと(例えばとめ具)、バーコードを適用しなければならない材料の制約(例えば湾曲した金属表面)、バーコードが、品目又はその機能又は使用を妨害すること(例えば芸術作品)、又は製品の製造又は流通、あるいは実際の使用で品目が経験するプロセス(例えば極端な暑さ、又は極端な寒さ)(例えば塗料)などがある。 ナノバーコードは、これらのうちのいくつかでのバーコード技術の利用を可能にする。 更に、これらの材料の耐久性(及び化学的な不活性さ)は、他のタイプの紙又はプラスチックタグと明確な対照をなすことを強調しておく。 【0144】 ナノバーコードのタグ又はラベルとしての使用は、複数の粒子をラベルとして使用することによって更に拡張される。 複数のタグを使用して材料にラベルをつけることによって、調製しなければならないナノバーコード粒子のタイプ数を減らすことができ、一方で、依然として、同じ多数のナノ粒子の明瞭に識別可能な組合せを提供する。 【0145】 健康管理産業における単位投与薬 健康管理は、全ての国で同様の問題、必要性がある世界的産業である。 この産業は世界的に、経費を引き下げる極端な圧力の下にある。 1995年には、健康管理に対する支出は米国一国で1兆5千億ドルにのぼった。 1996年に発表されたEfficient Healthcare Consumer Resp
onse(EHCR)は、バーコーディング及びオートメーションによって、非資本の内科の/外科サプライ、非資本診断及び非小売処方薬の3つの製品カテゴリで年間110億ドルを節約できると結論した。 この産業は、製品の箱のラベリングでは優れた進歩を果たしたが、単位投与薬などの小さな品目では今でも努力が続けられている。 米国医学会が最近、米国内の病院で起こる医療過誤のために年間44,000人から98,000人の人が死ぬかもしれないと明らかにしたことを考えると、これらの品目のバーコーディングは特に重要である。 【0146】 とめ具産業 米国は毎年、70〜80億ドルのとめ具(ナット、ボルト、ねじ、リベット、
ワッシャなど)を輸入している。 これらの製品はパッケージし直され、さまざまな流通方法を介して、航空宇宙、自動車、原子力、商業及び電気産業などの主要産業に販売され、推定300約400億ドルの市場を生み出している。 ここ数年で、製品パッケージがバーコード化された。 しかし個々のとめ具はまだである。 【0147】 数年前、品質の劣ったにせのとめ具が市場に出回ったとき、この産業は深刻なリスク及び責任の問題を経験した。 この問題と戦うため、製品パッケージのバーコード化が導入され、とめ具品質法(Fastener Quality Ac
t)がつくられた。 この法律は1999年12月にまとまった。 熱処理による硬化の実験室試験標準の準拠を含む、「臨界応用」で使用されるとめ具の要件がある。 しかしまだなお、とめ具のパッケージにはラベルをつけることができるが、
個々のとめ具にマークを付けることはできないという問題が存在する。 とめ具のナノバーコードはこの産業に、とめ具品質法に従い、人間の安全及び信頼性の問題を大幅に改善する手段を提供する。 【0148】 タイヤ この産業は長い間、個々のタイヤを追跡するための解決策を捜してきた。 このことは、商用(トラック)タイヤビジネスで特にそうである。 トラックのタイヤはしばしば、2回又は3回、再生され、そのトラックの別の車軸に取り付けられる。 経済上及び安全上の誘因がそこにはあるが、使用及び保守を監視することができるよう特定のタイヤを識別する簡単な、又は経済的な方法は今のところない。 商用タイヤは、60から80億ドル/年のビジネスである。 (新品タイヤの値段は約300ドル、再生には1本につき約90ドルかかる。)年間に、新車用に約700万本、交換用に1400から1450万本のタイヤが売られ、更に15
00万本が再生される。 ナノバーコードを用いると、それぞれのタイヤの記録を維持することができ、安全が保証される方法でタイヤが保守され、使用されることが保証される。 商用タイヤ産業におけるナノバーコード応用が成功すれば、おそらく自動車用タイヤビジネスにも浸透する。 【0149】 武器の追跡 拳銃の規制をめぐって大きな論争になっている。 論争の1つは、拳銃を追跡可能にする実際的な方法に関係する。 ナノバーコードは、特定の銃、挿弾子、撃針、更には薬莢の識別を可能にする。 これは、追跡可能性を大幅に向上させ、州及び連邦規則の遵守をより実行可能にし、外国人識別調査及び法強制を助ける。 同様に爆発物は、バーコードを組み込むことによって追跡することができる。 現在、米エネルギー省は、爆発物分類追跡システムを持っている(http://f
axback. wmnsnw. com/ects/summsrch. asp)
が、既知の数千の爆発物を直接に追跡する機構は持っていない。 ナノバーコードが、米国科学アカデミー(National Academy of Scie
nce)の爆発物のマーキング、不活化及びライセンシングに関する委員会(C
ommittee on Marking,Rendering Inert,
and Licensing of Explosive Materials
)が挙げている、全ての基準を満たすように見えることが重要である。 これらの基準には、製造及び使用時の安全、爆発物製品の性能上の効果、法の執行に対する効用、法廷及び訴追の効用、爆風生存性、環境受容性、コスト、普遍的適用可能性などが含まれる。 【0150】 貨幣及び法律文書 貨幣及びパスポートやビザなどの書類を偽造できないようにするために多くの処置がとられているが、(肉眼では)見えないナノバーコードを紙に使用して、
書類の真正性を保証することができる。 更に、従来のバーコードを、ナノバーコードの位置指示機構として使用することができる。 言い換えると、巨視的バーコードに問い合せることによって明らかになる書類の特定の位置に、ナノバーコードをしみ込ませることができる。 これによって、書類の真正性を迅速に確認することができる。 同じ戦略を、個人の財産、資産、相続動産に適用することができる。 【0151】 塗料 1997年には米国で160億ドル/年のビジネスであった塗料のバーコード化は3つの好機を提供する。 (1)屋外用建築塗料:耐久性がなく、そのサイズが調合物に不利な影響を与えるため、従来の形態のバーコード化を使用することはできない。 ナノバーコードを屋外用塗料に導入することによって、塗料の年数を追跡することができ、さびに敏感な公共構造物(橋など)では予防的保守が可能になる(同じことが、コンクリート及び舗装のナノバーコードについても言える。)。 (2)屋内用建築塗料:多くの家屋所有者がしばしば直面する1つの問題は、以前に塗布した調合(すなわち混合)塗料の追跡可能性の欠如である。 このような混合物を正確に作り直すことは一般に不可能である。 オリジナルの調合から長い年月が過ぎた後に正確な調合物を調製することができるバーコード化製品を提供する塗料販売業者は、競争上たいへん有利になる。 (3)貴重な芸術品のナノバーコーディングは偽造を見分けやすくする。 実際、個々のアーティストが、長期の真正性を保証するため、自分の全ての作品に「個人化された」自分のバーコードを組み込むことを選択する可能性がある。 【0152】 石油 工業国では精製油がますます重要な物資になっている。 それまでの原油供給源が枯渇すれば、それらに代わる追加の供給源を見つけなければならない。 この探査によって、原油を輸送する実行可能な方法が、パイプライン(例えばトランスアラスカ(Trans−Alaska)パイプライン)による陸路しかないかなりの遠隔地で石油が発見されたとする。 このようなパイプラインを建設する費用は莫大であり、相変わらず、いくつかの石油会社が同じパイプラインを共用しなければならない。 その結果、輸送中の原油がどの会社のものであるのかを決めるのが難しいことがある。 固有のナノバーコードを石油会社が使用することによって、それぞれの石油会社の原油を識別することができる。 パイプライン上の任意の地点で、原油サンプルを採取、分析して、石油の供給元を決定することができる。 ナノバーコードは、ろ過、磁気手段又は他の方法によって取り出す。 残留するナノバーコードが原油の最終使用を妨害する可能性がある場合には、精練プロセス時に除去することができる。 【0153】 生物の生死の識別 ナノバーコードの安定性及び不活性性は、それらを使用して、生物に控え目なやり方でタグを付けることを可能にする。 例えば、野外に放たれた小動物に、将来捕獲された場合に明確な識別を提供するナノバーコードのタグを付けることができる。 このような応用は、追跡対象の生物数が大きいときに特に有用である。
例えば、個々の植物又は種子のナノバーコード化を利用して、作物の種分化を追跡することができる。 理論的には、ナノバーコードを使用して、動物又は人間の遺体を明白に識別することができる。 【0154】 (電子デバイス) バーコード化された多金属ロッドを製作する直接の拡張は、ナノスケール及びマイクロスケールの電子回路及びメモリの構成部品として機能する能動及び受動電子デバイスを形成することである。 これらの構造には、配線、抵抗、コンデンサ、ダイオード、トランジスタなどの標準電子デバイスが含まれる。 更に、負性微分抵抗(negative differential resistanc
e:NDR)デバイス、共鳴トンネルダイオード、強誘電スイッチ、シフトレジスタ、遅延線などの、より複雑な電子機能を有するデバイスとすることもできる。 【0155】 抵抗は、2つの導電性金属ストライプ(例えば金、銅又は銀)間に抵抗性成分(例えばポリマー)を成長させることによって製造することができる。 このタイプのポリマー分子には、ポリ(ピロール)、ポリ(アニリン)、ポリ(
チオフェン(thiophene))などの導電性ポリマー、及びポリ(塩酸アリルアミン)、ポリ(塩化ジメチルジアリルアンモニウム)などの誘電性ポリマーが含まれる。 一般に、一端がチオール、イソニトリル、カルボキシラート又は他の配位子基で機能化された単量体有機分子である自己集合単分子層などの、より抵抗性の高い材料のより薄いストライプも抵抗部品として機能することができる。 【0156】 本発明は、ダイオード及び負性微分抵抗構造で使用することができるナノ粒子の合成も可能にする。 A. 金属−半導体−金属デバイス これらのデバイスは、両端に金属、中央に半導体粒子を含む多成分ロッドから成る。 金属末端は、従来の電気めっき又は無電解めっきによって製作することができ、半導体は、シリコン、ゲルマニウム、スズ、セレンなどの純元素、又は金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属リン化物、金属ヒ化物などの化合物半導体とすることができる。 2つの金属末端間に酸化物半導体(二酸化チタン又は酸化亜鉛)及びカルコゲニド半導体(セレン化カドミウム)を含む直径70から200nmのロッドを製作した。 半導体「ストライプ」の直径は一般にロッドの残りの部分と同じであり、その幅は、数ナノメートルから1、2ミクロンである。 現在までにダイオードロッドに使用された金属には、金、銀、プラチナ、ニッケルなどがあるが、原則として、本発明に記載された任意の金属とすることができる。 半導体は、コロイド粒子の吸着又は電気化学成長によって膜細孔テンプレート中に導入することができる。 上部金属コンタクトは、電気化学的付着及び無電解付着によって製造される。 このようなダイオードは、非対称の電流電圧曲線を生み出す。 対称構造(例えば金−セレン化カドミウム−金)も非対称構造(金−銀−酸化亜鉛−金)もともに、整流電流電圧特性を有することが分かった。 【0157】 B. 金属−分子−金属デバイス 半導体粒子をストライプロッド構造に組み込む代わりに分子層を使用することができる。 分子層は、電気化学的に、又は自己集合によって付着させることができる。 この分子は、先に述べたように導電性又は誘電性ポリマーである。 他の例には自己集合単分子層が含まれる。 分子と金属の間の界面を整流界面とすることができ、又は負性微分抵抗など他の電子特性を持たせることもできる。 例えば、
分子が16−メルカプトヘキサデカン酸である金−分子−ニッケルデバイスが電流整流特性を示すことを発明者らは示した。 負性微分抵抗分子Iもこのような構造に組み込まれた。 この分子層は一般に非常に薄く(0.5から3nm)、下部金属上への吸着によって導入することができ、その後に上部金属を、電気化学付着又は無電解付着によって付着させる。 あるいは、適当に薄い犠牲金属層(銅、
銀など)を含むストライプロッドを表面又は回路中に固定し、次いで、それを化学的又は電気化学的にエッチングして、末端金属間にギャップを残すこともできる。 次いで、このギャップを、溶液からのポリマー又はモノマー分子を電気化学的に付着又は吸着させることによって、又は揮発性分子を熱蒸着させることによって埋めることができる。 【0158】 【化1】 【0159】 先に説明したいずれかのダイオードデバイスにゲートリード(gate le
ad)を取り付けることによって、トランジスタとして機能するデバイスを製作することができる。 このようなリードは、クロスバー構造で取り付けることができる。 この構造は、電界駆動集合又は自己集合によって製造することができる。 【0160】 導電性金属及び他の材料(ポリマー、半導体、無機又は有機誘導体)から成る複数のストライプを含む高縦横比ロッドは、一連の高低電圧パルスを一端に印加した場合、遅延線又はシフトレジスタとして機能することができる。 電圧パルスを印加するのに使用する回路のクロック周波数に比べてロッドの一端から他端への電圧の伝播速度が遅い場合、他端で信号が、ゼロと1のストリングとして読み出される。 【0161】 (実施例) 以下の実施例は、本発明のさまざまな実施形態に関する情報に当業者がアクセスできるようにするためのものであり、本発明の範囲を限定しようとするものではない。 【0162】 実施例1 本発明の一実施形態は、多重検定目的の複数のナノバーコードのフレーバーのテンプレート指向合成を対象とする。 この応用では、光学顕微鏡法によって容易に区別される異なるさまざまなフレーバーを構築することが好ましい。 例えば、
金及び銀セグメントを使用し、下表に従って、ナノバーコードの10の異なるフレーバーを合成した。 なお、表の説明欄は、セグメント材料によるそれぞれのナノバーコードの組成及び長さ(括弧内;ミクロン)を指示することに留意されたい。 例えば、フレーバー1は長さ4ミクロンの金であり、フレーバー2は、2ミクロンの金/1ミクロンの銀/2ミクロンの金である。 【0163】 【表2】 【0164】 以下に、フレーバー4の合成を詳細に説明する。 (他のフレーバーは全て、このプロトコルに、明白な小変更を加えて合成した。) 直径200nmの細孔を有する直径25mmのWhatman Anopor
eディスクを、テンプレート指向ナノバーコード合成に使用した。 電気化学金属付着は、市販の金めっき溶液(Technic Orotemp 24)及び銀めっき溶液(Technic ACR 1025 SilverStreak
Bath)を使用して実施した。 以下に記載する全ての電気めっき段階は、25
℃に制御された音波処理浴中に浸した電気化学セル中で実施した。 【0165】 ナノバーコードフレーバー4の合成は以下のように実施した。 膜の前処理として、その分岐側に厚さ約500nmの銀を蒸着させた。 この同じ側の細孔を完全に埋めるため、蒸着させた銀の上に、1.7mAのめっき電流を約15分間使用して、約1Cの銀を電気めっきした。 次いで、蒸着させた銀の反対側から膜の細孔の中に追加の銀1Cを、1.7mAのめっき電流を約15分間使用して電気めっきした。 この銀層を使用して、厚さ数ミクロンの膜の「分岐細孔」領域を完全に埋める。 水を用いた連続希釈によって銀めっき溶液を除去し、金めっき溶液に置き換えた。 次いで、長さ2ミクロンの金セグメントを、1.7mAのめっき電流を約30分間使用して付着させた。 水を用いた連続希釈によって金めっき溶液を除去し、銀めっき溶液に置き換えた。 最後に、長さ2ミクロンの銀セグメントを、1.7mAのめっき電流を約30分間使用して付着させた。 膜を装置から取り外し、膜の分岐細孔側だけが酸に露出するよう注意して、蒸着させた銀層(及び分岐細孔中に電着させた銀)を6M硝酸に溶解することによって除去した。 この段階の後、0.5M NaOH中で膜を溶解することによってナノバーコードをアルミナ膜から解放した。 次いで、得られたナノバーコード懸濁液を繰り返し遠心分離し、水洗した。 【0166】 実施例2 本発明のナノバーコードに幅広い材料を使用できることを証明することは重要な目標である。 現在までのところ、膜テンプレート(アルミナ又はトラックエッチポリカーボネート)中への電気化学的付着によって形成されたロッド構造は、
Ag、Au、Pt、Pd、Cu、Ni、CdSe及びCoを含む。 その便利さから、直径200nmのアルミナ膜を主として使用した。 現在は、これらの材料の多くが、より小径のポリカーボネート膜でも使用されている。 【0167】 CdSeは現在、CdSO
4とSeO 2の溶液から電位掃引法を介してめっきされている。 金属:CdSe界面の機械的安定性の問題に遭遇した。 すなわち、膜から取り外すプロセス中の超音波処理の際にロッドが破壊される。 これは、それぞれの表面間に1,6−ヘキサンジチオール層を挟むことで解決された。 Cu及びNiは、市販のめっき溶液を使用してめっきされる。 Ag及びAu溶液と同様の条件で実施することによって、これらの金属はほぼ同じ約3μm/時の速度でめっきされることが分かった。 Coは、CoSO 4 /クエン酸溶液からめっきされる。 これらのロッドはかなり単分散的に成長するように思われるが、約1.5 μm/時と、比較的にゆっくりと成長する。 【0168】 実施例3 Cuナノバーコード及びNiナノバーコードの直交機能化は、Cuにはベンゾトリアゾール及びブチルカルバメート(butylcarbamate)、Ni
にはジメチルグリオキシム(dimethylglyoxime)及びヒドロキノンを使用することによって達成される。 このロッドは、中間にCu又はNiを有するAu末端から成る。 1,6−ヘキサンジチオール及び2−メルカプトエチルアミンを使用して、ロッドの末端を機能化する。 ベンゾトリアゾールは、銅の腐食抑制に一般的に使用される化合物であり、このことは、ベンゾトリアゾールがロッドの銅セクションに効果的に結合することを意味する。 ブチルカルバメートは、同じ末端にカルボニル及びアミン基を有する分子である。 これらの基はともにCuとよくキレートを形成する。 グリオキシム及びヒドロキノンも、Niとキレートを形成することが知られている。 そのためこれらは、単分子層形成の適当な機能基である。 これらは、最もよい直交機能化が生み出されるよう、さまざまに組み合わされる。 差結合平衡定数及び露出順を利用して、多種多様な直交機能化セグメントを生み出すことができる。 次いで、ローダミン又はフルオレシンを用いてロッドを機能化して、露出したアミン及びチオール機能基の存在をそれぞれ決定する。 染料及び表面機能化に応じて、ロッドのさまざまな部分を「ライトアップ」させることができる。 【0169】 実施例4 バーコードロッド上で使用するための、光学顕微鏡蛍光検出を使用した溶液ベースのサンドイッチ免疫検定を開発した。 検定は、さまざまなセグメントパターンのAu、Au/Ag及びAu/Niロッド上で実行した。 ナノバーコードは、
さまざまな波長での金属の反射率差に基づいて読み取られる。 図4にこの実験の結果を示す。 【0170】 最初に、2タイプのロッド、Au/Ag及びAuロッド上でサンドイッチ免疫検定を、以下のシステムを使用して実行した;テキサスレッドで標識した抗ウサギIgGFc/ウサギIgG/抗ウサギIgGH&L。 FITC用のフィルターを用いてロッド混合物の蛍光画像を撮影した。 600mm帯域フィルターを用いるとロッドは同じ金属成分であるように見えるが、400nm帯域フィルターに変えるとバーコードIDが明らかになる。 【0171】 次いで、異なる2タイプのバーコードロッド上で2種類の異なるサンドイッチ免疫検定を実行した。 この実験では、先に述べた同じテキサスレッド(TR)検定を、以下のシステム;抗ヒトIgGFc/HlgG/抗ヒトIgGgとともに使用した。 FITC蛍光体はTRよりもはるかに速く光漂白されるため、最初にFITC画像を撮影した。 少なくとも2つの蛍光体を区別できることがはっきりしたため、次に、溶液ベースの同時検定を試みた。 ロッドは、別個の管の中で捕獲抗体で誘導体化した。 その後、血清サンプル中の条件を模するために、それらを一緒に混合して検定を完了させた。 非特異的結合の量及び交差反応性を決定するため2つの蛍光体が必要であった。 最初、2つの系間にはかなりの交差反応性、及びロッド表面への若干の非特異性が見られた。 この問題を回避するため、非特異性をかなり低下させる、アミノ基を末端に有するPEGを使用し、交差反応性を助けるためBSAを使用した。 この溶液ベースの2システム同時サンドイッチ免疫検定は成功裏に完了した。 4μmAu/Ag/AuロッドはaヒトIgG
で誘導体化され(FITC)、8μmAu/Ni/Auは、aウサギIgGで誘導体化された(TR)。 Au/Ni/AuロッドのAuセクションが選択的に誘導体化されたことが、Niセクション上の蛍光の欠如によって明示された。 更に、Agは、FITCからの蛍光を強化するように見えた。 【0172】 FITCでのAgの強化係数を調べるため、同じタイプのロッド上の2種類の異なる蛍光体を使用してサンドイッチ検定を実行した。 ヒトIgG FITC系及び以下の新しい系;抗シトクロム(cylochrome)c/ビオチニル化(biotinylated)Cc/ストレプトアビジン−フィコエリトリン(
streptavidin−phycoerythrin)(PE)を使用した。 ヒトIgG系に関しては、反射率画像から明らかなように、Agセクションに対応するロッドのセクション上により明るい蛍光が観察された。 しかし、PE系に対してAgからの強化は見られなかった。 したがって、この強化は、蛍光体吸収度とナノバーコード吸光(吸収度と散乱)の両方に関して波長特異的な現象であると言えそうである。 【0173】 実施例5 流れ血球計算器実験を使用して、免疫検定又はナノバーコードからの蛍光を定量した。 ヒトIgG系とビオチニル化Cc系の両方を調べた。 TRを、流れ血球計算器中で488nmで励起させることができなかったため、ウサギIgG系は、ビオチニル化Cc系に切り換えた。 Au/Agナノバーコード上のヒトIgG
系及びビオチニル化Cc系の滴定曲線を作成した。 グラフからは、ヒトIgGの滴定曲線は変曲点を含み、ビオチニル化Cc系は含まないように見える。 代わりに、それは最大に達し、水平になるように見える。 ヒトIgG系の曲線の形状は、FITCのAg強化から生じることができる。 流れ血球計算実験を実施して、
抗体結合能力(ABC)の量及び系を最適化するのに必要な捕獲抗体の濃度を決定することができる。 【0174】 実施例6 生物検定の検出に対するコロイドAu又はAgの使用を研究した。 これは、異なる波長での金属の反射率の差に関係する。 理論上、AuとAgの反射率アイソベスティック、すなわち約600nmでは、バーコードID又はその部分は見ることができない。 しかし、バーコード全体又は一部分にコロイド粒子を選択的に配置すると反射率が変化し、したがって反射率コントラストが生じる。 コロイドAu粒子は、単分散、誘導体化、生体適合させやすいので、この態様に対して最適である。 予備的な実験によれば、Agコロイド層の吸着は、Au/Agロッドの反射率を変化させる。 これは、1,6−ヘキサンジチオールの単分子層をロッド上に吸着させ、次いでAgコロイドに暴露することによって達成された。 TE
Mデータによって、コロイドAgのナノバーコードへの結合が確認された。 コロイドAgを添加してもしなくても、400nmでは、特徴的な反射率ストライプパターンを見ることができる。 しかし600nmでは、Agナノ粒子がない場合、ストライプパターンは見えないが、Agナノ粒子が存在すると見えるようになる。 【0175】 TEMデータが、ナノバーコード表面でのAg材料の均一な分布を指示しているので、これらのデータは、Agナノ粒子とナノバーコードのAg及びAuセグメントとの間に差電磁相互作用があることを指示している。 反射率の変化は、等吸収(すなわち反射率差なしから反射率差ありへ、又はその逆)を伴う必要がないことに留意されたい。 必要なのは、化学的又は生化学的イベントが反射率の変化に結びつけられることだけである。 更に、この反射率の変化が、さまざまなセグメントに対して異なる必要はない。 したがって、最も一般的な実施態様は、分子結合/脱結合に起因するナノバーコード全体に対する1つ又は複数のセグメントの反射率の変化を含む。 より特殊な実施形態は、反射率等吸収の排除(又は生成)へとつながる反射率の変化を含む。 【0176】 実施例7 バーコードロッドは、DNAのハイブリッド形成又は脱ハイブリッド形成を検出する溶液ベースの検定方法に有用である。 最初、方法の開発のためオリゴを使用するが、この技術はcDNAに容易に拡張することができる。 現在までに、検出に蛍光(FITC)を使用した、短いオリゴ(12量体)のロッドへの取付けが達成されている。 アミノ修飾オリゴを使用した2つの取付け方法を実行した。
1つの方法では、二機能性架橋剤1,4−フェニレンジイソチオシアナート(P
DITC)を使用して、アミノ修飾オリゴをアミノ末端PEG層に結合させた。
第2の方法では、アミノ修飾オリゴを「アミノ酸」PEGの吸着層(HCL N
H
2 −PEG−COOH)に取り付ける従来のカルボジイミド結合を使用した。 従来のカルボジイミド結合は、二機能架橋法よりも大きな量の取付けを与える。
更に、カルボジイミド結合は実行がより簡単であり、全てが、水溶液中で実行され、より再現性が高い。 当業者に周知の任意の追加の取付け形態も利用することができる。 【0177】 実施例8 この実施例は、貴金属ナノロッドのDNAベースの集合に関する。 これは、D
NAを使用して粒子を集合させ、リソグラフィーレベル以下の機能電子デバイスとすることを究極の目標とする。 チオールで機能化されたDNAがこのロッドのコロイドゾルに取り付けられる方法、及びこの知識をロッドの集合に適用する方法を理解することは重要である。 【0178】 この努力の多くは、DNAを使用してナノメートルスケールAu粒子を集合させることに集中する。 DNAを使用してこれらの粒子を集合させることができるようになるためには、DNAで粒子を誘導体化する基本的なプロセスを理解することが重要である。 これらの粒子へのDNAの吸着熱力学、及びこれらの粒子の表面に集合したときのDNAのハイブリッド形成効率を研究した。 Auナノロッドのコロイドゾル(200nm×3μm)上への、チオール化したDNA及びチオール化していないDNA(長さ36塩基)の吸着のラングミュアの吸着等温式を作成した。 これらのプロットを使用して、チオール化したDNAとチオール化していないDNAの両方の粒子上への吸着に対してΔG値を計算することができ、それぞれ−1.83×105J/mol及び2.51×104J/molである。 【0179】 本発明のこの実施形態の究極の目標は、DNAを使用して、パターニングされた表面にナノロッドを集合させ、メモリデバイスを形成することである。 パターニングされた表面での集合を開始できるようになるためには、より単純な系、例えばAu膜上の集合を理解することが重要である。 ロッドの集合へのそれらの影響を研究するため、塩類濃度、温度、遮断薬及び3オリゴ系を含む、さまざまなパラメータを調査した。 最良の結果は、チオール化したDNAでロッドを誘導体化し、続いて6−メルカプトヘキサノールに浸漬することによって得られた。 次いで、チオール化したDNA中、次いでオクタンチオール中でAu膜を誘導体化する。 次いで緩衝液にロッドを懸濁させる。 この緩衝液は、10mMリン酸(p
H=7)、0.5%Blotto遮断薬、1mMドデシル硫酸ナトリウム及び5
0μMジャンクオリゴヌクレオチド(junk oligonucleotid
e)である。 次いでAu膜をこの溶液に浸し、一晩振とうする。 この系を使用すると、集合するロッドの数は大幅に増大し、非特異的に集合した数は減少した。 【0180】 代替の誘導体化は、機能化したPEGを使用して、ナノロッドの表面又はAu
表面、あるいはその両方にDNAを取り付けることを含む。 この技法は、ロッド又はAu表面を以下の溶液に浸けることを含む;16−メルカプトヘキサデカン酸、EDC/NHS、アミノ化PEG、1,4−フェニレンジイソチオシアナート、アミノ化DNA。 この誘導体化戦略は、Au膜上でのAuロッドの集合を改善することはほとんどなかったが、Si上のパターニングされたAu表面でのそれらの集合を劇的に改善し、特に、無水コハク酸で機能化したシランを使用してSi表面を誘導体化したときに顕著だった。 次いで、無水コハク酸を水で処理し、DNAで被覆された陽極ナノロッドをはじく負に帯電したカルボキシラート基をSi表面に残す。 【0181】 実施例9 大部分のロッド実験は、市販アルミナ膜中で成長させた直径200nmのロッドを使用して実行した。 より小径のポリカーボネート膜を使用する努力もした。
これに対する理論的根拠は、より小さな粒子とともに使用すると、ある光学特性又は磁気特性、物理又は化学的特性、あるいは集合化学が良好になることである。 Au及びNiストライプを含むロッドをNiキレート剤(ジメチルグリオキシム(dimethylgyoxime)又は8−ヒドロキシキノリン(hydr
oxyquinoline))で誘導体化した。 次いでこのロッドを、関心のチオール溶液に浸す。 チオールは望み通りにAu上に集合し、一方、Niストライプはチオールから効果的に「ブロック」される。 このロッドをジメチルグリオキシム、次いでチオール化されたDNAで誘導体化した。 次いでロッドを、一本鎖DNAにも結合するDNA挿入染料であるYOYOで処理した。 これらのデータは、直交誘導体化を、Au/Ni(及び先に論じたPt/Au)を含むように拡張できることを示している。 Au/Ni/Ptを含むナノバーコードでは、3つの異なるケミストリを同じナノ粒子上に配置することができるはずである。 (例えばジチオカルバミド酸塩を使用して)銅に対する選択的化学的性質を開発することができると思われる。 したがって例えば、4つの別個のオリゴヌクレオチド(oligonucleotides)を、それぞれが1つの塩基残基のところで異なる単一のナノ粒子に取り付けることができるはずである。 このような系はSNP分析を大幅に単純化するであろう。 末端又は先端誘導体化と組み合わせた4つのタイプのセグメント材料化学的性質を用いると、単一のナノバーコードを、特定の位置の少なくとも6つの異なるケミストリで誘導体化することができる。 【0182】 実施例10 粒子を整列させる電界の使用に成功した。 この実験では、整列したロッドの表面の化学的性質に対する電界の効果を研究する。 ロッドは、メルカプトエチルアミンで誘導体化し、次いで、電界によって整列させた。 次いでロッドを、ローダミンBイソチオシアナート(isothiocyanate)溶液中に戻し、浸した。 次いで表面を、蛍光顕微鏡下で画像化した。 チオールを酸化させてロッド表面から除去しないものが見つかるまで、いくつかの整列電位及び周波数を調査した。 【0183】 実施例11 金属ナノロッドの秩序ある2次元構造を操作することを試みた。 区別されたロッドを集合させる実行可能な手段を捜した。 4つ以上のロッド(所与の集合で使用されるロッドの幅は長さよりも短い)の2次元集合を生成し、画定された(又はアクセス可能な)位置に置く。 この集合タイプは、クロスバー構造の下部1/
3(bottom third)の働きをし、上位層の集合を助ける。 第2の層は、電子的に画定可能な記憶素子であり、第3の層は、第1の層に対して90°
回転された別の2次元ロッド集合である。 多金属ストライピング及び相補的表面の化学的性質を利用することによって、第1の層は、他の2層構築を助けることができる。 【0184】 界面に形成されたロッド束 さまざまな長さのAuロッド(直径250nm)を多価電解質(複数)又はチオールで化学的に修飾することを含むロッドラフト形成技法を試みた。 修飾されたロッドは一般に水中にあり、次いで、ヘキサンなどの異種の溶媒と混合した。
すると、2つの溶媒の界面領域にさまざまな編成のロッドラフトが集まる。 次いで、これらのラフトを界面から取り出し、後段の分析及び操作のために固体基質上に置くことができる。 【0185】 より小グループのロッドを形成しようとして、水相及び界面を生み出すさまざまな溶媒中のロッドの濃度を低くした。 最も有望と思われた表面修飾は、メルカプトエタンスルホン酸(MESA)及び多価電解質ポリアリルアミン塩酸塩(P
AH)で修飾したAuロッドである。 より小さなロッドパケットが形成されるが、多くのシングルロッド及び組織化されていないグループが存在する。 水/ヘキサン界面に小さないくつかのPAHロッド束が形成される。 シングルロッドは比較的に少ない。 この特定のサンプルをガラス表面に移した。 別の多価電解質層(
スルホン酸ポリスチレン(PSS)及びPAH)を使用して、ロッドパケットを強化した。 次いでロッドを表面から取り出し、溶液へ移した。 次いで、これらのロッドパケットを電界整列実験で使用した。 【0186】 リソグラフィーによって画定した表面でのロッド集合の形成 ロッドを集合させるための、アレイピット(arrays pit)から成る基板を使用した。 ピットはAuの底部を有し、ピットの大きさは、深さ400n
m(より大きいロッド)又は深さ100nm(直径70nmのロッド)×2μm
×8μm又は5μm(それぞれ)である。 周囲の材料は、Siを含む重合したベンジルシクロブテン(benzylcyclobutene)である。 次いで、
このポリマーを酸素プラズマ中でエッチングし、SiO
2状の表面を残す。 【0187】 ロッドをピット中に置く最初の試みでは、Auロッド(約8μm)が裸のまま残され、Auピット底面が、1,4−ブタンジチオール(butane dit hiol)で誘導体化された。 裸のロッドをエタノールに懸濁させ、この溶液に基板を入れた。 反応させた後、まだなお湿っている基板を光学顕微鏡で観察した。 溶媒前端が後退するにつれ、ロッドはリソグラフィー構造の表面を横切って移動した。 ロッドはピット中へ移動し、溶媒前端がその上を通過するときでもそこにとどまることが観察された。 ピット中にロッド構造を形成する別の方法では、
疎水性でかつ比較的に「非粘着性」にするために、BCB表面を、過フッ素化した(perflurinated)シランで処理し、Auピット底面をMESA
で処理した。 Auロッド(約8μm)をMESA、続いてポリ塩化ジメチルジアリルアンモニウム(polydimethyldiallyl ammoniu
m chloride)(PDAC)でコーティングして、Auロッドに永久正電荷を与え、Auロッドが負に帯電したピット底面に引きつけられるようにした。 ロッドは、ピットに入ることが観察された。 しかし、過フッ化にもかかわらずより多くのロッドが表面に物理吸着する(physisorb)ように思われる。 ロッドとピットの間に引力相互作用を生み出す別の試みでは、ピット底面とA
uロッドの両方をポリエチレングリコール(PEG)で処理し、反応させた。 有用なロッド−ピット相互作用は見られなかった。 【0188】 BCBの過フッ化(perflurination)を排除し、MESAピットとMESA/PDACロッドを再び相互作用させることによって、ピット中のロッドの増加が示された。 過フッ化は、水性の親水性ロッドを遠ざける疎水性表面を提供したが、それは、最終的に水よりもポリマーでコーティングされたロッドのようだった。 この因子の結果、ロッドが、過フッ素化表面に相対的に引きつけられたと思われる。 BCBを未処理のまま残すことによって、PDACポリマーでコーティングされたロッドは相対的に、MESA処理されたピットに引きつけられる。 【0189】 他の実施形態では、表面を、アミノプロピルトリメトキシシラン(amino
propyltrimethoxsilane)(APTMS)、次いでPDA
Cで処理し、メルカプトエチルアミン(MEA)で一晩処理した。 MESA/P
DACロッドを再び使用した。 ロッドと表面は一晩反応させた。 比較的に高い割合のロッドがピット中で見られ、リソグラフィーによって画定した他のAu構造は高密度のロッドを有する。 【0190】 MESA/PAHで誘導体化したAuの先端を有するNiロッド(約3μm)
を、MESAで誘導体化された表面に置いた。 このNiロッドは磁性ロッドであり、磁界を用いて整列させ、移動させることができる。 表面は、数時間又は一晩、ロッドと反応させ、まだ湿っている基板を磁界中に置いた。 複数のロッド及び複数のロッド束は磁界と整列する。 より長い磁性ロッドが使用可能だったが、それらは、表面にある間、磁界と整列しなかった。 【0191】 実施例12 本発明の一実施形態は、特定のダイオード中でのナノスケール電子デバイスのテンプレート指向合成を対象とする。 1つの方法は、ロッド形金属電極の膜複製電気化学めっきを、電極間に挟まれたナノ粒子半導体/ポリマー膜の層ごとの無電解自己集合と組み合わせる。 以下に、アルミナ膜の200nm細孔の内側の金属ナノロッド上での多分子層TiO
2 /ポリアニリン膜の湿式層ごと自己集合を説明する。 【0192】 1. 材料 細孔径200nmのWhatman Anoporedisks(Al 2 O 3膜)を、テンプレート指向ダイオード合成に使用した。 市販の金(Technic Orotemp 24)、白金(Technic TP)及び銀めっき溶液を使用して電気化学金属付着を実施した。 チタンテトライソプロポキシド(tit
anium tetraisopropoxide)[Ti(ipro)
4 ]、 メルカプトエチルアミン塩酸塩(MEA),エチルトリエトキシシラン(eth
yltriethoxy silane)、クロロトリメチルシラン(chlo
rotrimethyl silane)はオールドリッチ社から購入した。 これらの試薬は全て追加の精製なしで使用した。 他の化学薬品は全て試薬等級であり、販売店から入手した。 【0193】 TiO
2コロイドは以下のように調製した。 Ti(ipro) 4を冷却/撹拌しながら2−メトキシエタノールに溶解した。 この溶液をわずかに黄色くなるまで撹拌し、その後、HClを含む別の2−メトキシエタノールを加えた。 調製した溶液中の成分モル比は、Ti(ipro) 4 :HCl:2−メトキシエタノール=1:0.2:20である。 この溶液を、TiO 2濃度がちょうど1%になるまで水で希釈し、3週間置いた。 得られた乳白色のゾルを60℃のロータリーエバポレーションにかけ、チタニアを75%(w/w)含むキセロゲルの光輝く粉体を得た。 このキセロゲルを、数週のあいだ安定なTiO 2濃度2.3%wt(0 . 29M)、pH=3を有する原料(stock)水性TiO
2ゾル調製の前駆物質として使用した。 チタニアキセロゲルのXRD調査によって、コロイドアナターゼ結晶の平均サイズが6nmと推定でき、原料TiO 2ゾルのTEM画像は直径4から13nmの粒子を示した。 【0194】 エメラルジン塩(emmeraldine)基(EB)の形態のポリアニリン(PAN)も調製した。 暗青色のPANのジメチルホルムアミド溶液(0.00 6%wt)を膜合成の原料溶液として使用した。 【0195】 2. ロッド形ダイオードの合成 ロッド形ダイオードの合成は以下のように実施した。 多孔膜の内部に金属電極を電気化学的に成長させた。 簡単には、膜の前処理を、その分岐側に約150n
mの銀を蒸着させることによって実施した。 この同じ側の細孔を完全に埋めるため、蒸着させた銀の上に1Cの銀を電気めっきした。 このAg「プラグ」は、その上に下部電極を電気化学的に成長させる基礎として使用した。 所望の長さの下部金電極を超音波を当てながら電気めっきした。 膜を水に浸し、Arストリーム中で乾かすことによってめっき溶液を除去した。 下部電極表面にMEAを満たし、次いで、多分子層TiO
2 /PAN膜を付着させた。 これは、MEA(5%) エタノール溶液からの24時間吸着によって達成した。 膜をTiO
2水溶液及びPANのDMF溶液に1時間連続して繰り返し浸すことによって、多層膜を成長させた。 それぞれの吸着段階の後には、幾つかの部分の適当な溶媒(0.01M HCl又はDMF水溶液)に1時間膜を浸すことによって過剰の試薬(複数)
を除去し、Arストリーム中で乾燥させた。 最後に、所望の長さの上部電極(A
g又はPt)をTiO
2 /PANの多層上に超音波処理なしで電気めっきした。 次いで、蒸着した銀、Ag「プラグ」及びアルミナ膜を、それぞれ6M硝酸及び0.5M NaOHに溶解させることによって除去した。 (硝酸中でAg電極が溶解しないように、Ag電極の上には常に2から4CのAuを電気めっきした。
また、予備実験によれば、平らなAu(MEA)基板上に自己集合した多層Ti
O
2 /PAN膜は0.5M NaOH中で破壊されなかった。 )得られたロッド形ダイオードを繰り返し遠心分離し、水洗した。 【0196】 大部分の実験では、プロピオン酸(0.0013M水溶液からの収着20)又はアルキルシラン誘導体で処理することによって、Al 2 O 3膜の細孔壁の化学的不動態化を適用した。 後者のケースでは、膜を、無水エタノールと無水トルエン又はジクロロエタンに連続して1時間浸し、その後、エチルトリエトキシシランの無水トルエン溶液(2.5%vol)、又はクロロトリメチルシランの無水ジクロロエタン溶液(2.5%vol)に15時間、浸した。 次いで膜を、適当な無水溶媒、溶媒と無水エタノールの混合物(1:1)、無水エタノールに連続的に1時間浸し、最後にArストリーム中で乾燥した。 このように処理した膜を水で濡らした結果から、それらの外表面が疎水性であることが分かった。 エチルトリエトキシシラン又はプロピオン酸で処理した膜の透過IRスペクトルは、29 40、2865、2800cm
-1の弱いバンドの出現を示した。 これらは、アルキル及びアルコキシ基のC−H伸縮振動に割り当てることができる。 【0197】 3. キャラクタリゼーション JEOL 1200 EXIIを用い、加速電圧120kV、フィラメント電流80mAで透過型電子顕微鏡(TEM)画像を得た。 光学顕微鏡(OM)画像を記録した。 透過IRスペクトルは、Specord M−80 CareZe iss Jena分光計を使用して記録した。 ロッド形ダイオードのI−V特性は、周囲温度の空気中で測定した。 【0198】 多孔アルミナ膜の内側に電気化学的に成長させたいくつかの一般的な「ストライプ」2金属Au/Pt/AuナノロッドのTEM画像によれば、2つのロッド末端のトポグラフィーが異なっていた。 一端は、膨らみ、又は丸まっているように見えたが、他端は中央に明らかなくぼみがあった。 ロッド末端の外観のこのような差は、壁に近い空間での金属(例えばAg)成長を促進し、細孔中央空間でのくぼみ形成を引き起こすある量の金属イオンの細孔壁上への吸着によって説明することができる。 第2の金属「ストライプ」(例えばAu)の電気めっき中に、成長中の金属が下部ロッドの表面に従い、くぼみを満たし、したがって丸まった末端を形成する。 さらなるロッドの成長の結果、細孔壁上への金属吸着のため、末端はカップ状になる。 それぞれの連続した金属セグメントは、その下のセグメントの末端で同じ方法で成長する。 【0199】 ロッドの上端の比較的に粗い表面が非常に薄いTiO
2 /PAN膜で完全に覆われ、したがって下部金属電極と上部金属電極の直接の接触が防止されるとは思えない。 平坦なAu基板の予備実験から、よりなめらかな表面に成長させた多層TiO 2 /PAN膜の整流挙動の再現性が良好であることが分かった。 プロピオン酸又はエチルトリエトキシシラン、クロロトリメチルシランなどのアルキルシラン誘導体を用いた、Al 2 O 3末端を有する細孔壁の表面のパッシベーション( 疎水化(hydrophobization))は、細孔壁上の金属吸着を減らすことによって、上部ロッド末端の表面を平滑化する。 細孔壁の疎水化は更に、
壁面にTiO
2粒子が吸着することを防ぎ、細孔の深さ(約65mm)に位置する金属電極表面に吸着するようにすると予想される。 TiO 2粒子が、高密度に充てんされた層を平面Al/Al 2 O 3基板上に容易に形成することが示された。 ロッドの上部の一般により高解像力の画像から、ロッドの最上部にカップ状の末端が位置することが確認され、ある程度の壁パッシベーションによってロッド末端の表面が平滑化することが示された。 【0200】 エチルトリエトキシシランで誘導体化した膜を使用して調製したAu/(Ti
O
2 /PAN) 10 /Ag/Auロッドの光学顕微鏡写真は、2つの金末端の間に銀セグメントがはっきりと見える均一な長さのナノロッドを示した。 最初の数秒に記録されたロッドのTEM画像では、ロッド内の金属/膜/金属ヘテロ接合の目に見える兆候は見られなかった。 しかし、ある時間(一般に数十秒)このロッドに電子ビームを集めると、おそらくビームに起因する金属の融解のため、ロッドに切れ目が現れ、Au/膜/Agヘテロ接合の付近で金属セグメントが分離された。 この切れ目のより高い解像力のTEM画像では、両方の金属末端に付着した直径5から10nmの粒子が観察された。 電気めっきした2種類の金属の間に明らかにTiO 2ナノ粒子が存在する。 OM及びTEMデータは、Auロッド上での多分子層TiO 2 /PAN膜の自己集合を膜細孔の内部で実現することができること、及びこの自己集合膜は、膜上のAgロッドの電気めっきを妨げないことを示唆している。 部分的に溶かされた金属ロッド末端を分離する間の機械的な膜破壊の確率が高いため、TEM画像はおそらく、ロッドの内側の多分子層Ti O
2 /PAN膜の真の写真を与えないことに留意されたい。 より長い時間、ロッドを電子ビームに暴露すると、ヘテロ接合は完全に破壊され、ナノ粒子がその末端に付着した2つの別個のナノロッドが生じる。 【0201】 AuロッドとAgロッドに挟まれた多層TiO 2 /PAN膜を調査するため、 Au/(TiO
2 /PAN) 6 /Agナノロッドを調製し、その上部Ag電極を硝酸内で溶解した。 その上に(TiO 2 /PAN) 6膜が付着した残りの2C Au ロッドをTEMによって分析した。 予備的な研究によれば、平らなAu(MEA
)基板上に自己集合した多層TiO
2 /PAN膜の偏光解析による厚さ(ell ipometric thickness)は、6M HNO
3に30分浸しても低下しなかった。 このことは酸性媒質中での膜の安定性を示唆する。 更に、先に説明したAu/(TiO 2 /PAN) 10 /Ag/Auロッドと同様に、最初の数秒に撮影したAu/(TiO 2 /PAN) 6ロッドのTEM画像では粒子は見られなかった。 しかし、電子ビームに更に曝す間に、金が溶け、ロッドの上部にナノ粒子膜が現れた。 膜の上部輪郭線は、融解前のAuロッドのそれに非常に近いことが分かった。 このことは、金属ロッドのカップ形の上部で一貫している。 多層フィルムは、カップ底面とカップ壁の両方の表面で成長し、薄壁が溶けた後もカップ形状をほぼ維持する。 この説明は、観察された膜高約100nmで一貫しており、(TiO 2 /PAN) 6の膜厚よりもむしろ金カップの深さを推定することができる。 平らなAu(MEA)基板上に自己集合した(TiO 2 /PAN) 6膜の偏光解析による厚さは、約10nmと推定される。 【0202】 Pt/(TiO 2 /PAN) 3 TiO 2 /Auロッド形デバイスのI−V特性は電流整流挙動を示す。 順方向及び逆方向バイアスのターンオン電位はそれぞれ、 約−0.2及び約0.9Vである。 【図面の簡単な説明】 【図1】 図1A〜図1Dは、本発明の例示的な4つのナノ粒子を概略的に示す図である。 【図2】 バルクPt及びAuの波長に対する反射率を示すグラフである。 【図3】 反射光モードの光学顕微鏡で撮影した、本発明の9ストライプバーコード(A
u/Ag/Au/Ag/Au/Ag/Au/Ag/Au)の像である。 【図4】 反射率によるバーコード検出と蛍光による分析物定量の同時実行を示す図である。 実施例4で説明するように、それぞれの像はストライプナノロッドの混合物である。 図4Aは、帯域フィルターを用いてFITC発光の波長で画像化したものである。 図4Bは、テキサスレッドの波長で画像化したものである。 図4Cは、波長400nmで撮影した反射像である。 【図5】 6タイプのナノバーコードの集合を示す画像である。 この図は、6フレーバーのナノバーコードA約Fを図式的に示し、画像には、画像中のナノバーコードが、どのフレーバー又はタイプのナノバーコードに対応するかを示すラベルが付けられている。 【図6】 図6Aは、Ag/Auナノロッドの集合の400nm画像である。 図6Bは、
同じ集合の600nm画像である。
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