溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板および製造方法

申请号 JP2012041552 申请日 2012-02-28 公开(公告)号 JP5936390B2 公开(公告)日 2016-06-22
申请人 日新製鋼株式会社; 发明人 平田 健太郎; 片桐 幸男; 藤原 進; 細見 和昭; 浦中 将明;
摘要
权利要求

素材鋼板の表面に溶融Zn−Al−Mg系めっき層を有するめっき鋼板において、素材鋼板が、質量%で、C:0.010〜0.100%、Si:1.00%以下、Mn:1.00〜2.50%、P:0.050%以下、S:0.020%以下、N:0.005%以下、Ti:0.02〜0.20%、B:0.0005〜0.0100%、Al:0.100%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、フェライト相およびそのフェライト相中に分散している平均粒子径20nm以下のTi含有析出物からなる金属組織を有し、下記(1)式で表される溶融金属脆化割れ感度指数H1値が2.84以下となる鋼成分含有量と板厚t(mm)の関係を有する自動車足回り部材用溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板。 H1値=C/0.2+Si/5.0+Mn/1.3+0.4t …(1) ただし、(1)式の元素記号の箇所には素材鋼板中における当該元素の含有量(質量%)が代入される。素材鋼板の表面に溶融Zn−Al−Mg系めっき層を有するめっき鋼板において、素材鋼板が、質量%で、C:0.010〜0.100%、Si:1.00%以下、Mn:1.00〜2.50%、P:0.050%以下、S:0.020%以下、N:0.005%以下、Ti:0.02〜0.20%、B:0.0005〜0.0100%、Al:0.100%以下を含有し、さらにCr:0.40%以上1.00%以下、Mo:0.60%以上1.00%以下の1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、フェライト相およびそのフェライト相中に分散している平均粒子径20nm以下のTi含有析出物からなる金属組織を有し、下記(2)式で表される溶融金属脆化割れ感度指数H2値が3.24以下となる鋼成分含有量と板厚t(mm)の関係を有する自動車足回り部材用溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板。 H2値=C/0.2+Si/5.0+Mn/1.3+Cr/1.0+Mo/1.2+0.4t …(2) ただし、(2)式の元素記号の箇所には素材鋼板中における当該元素の含有量(質量%)が代入される。素材鋼板が、さらに、質量%で、Nb:0.10%以下、V:0.10%以下の1種以上を含有する請求項1または2に記載の自動車足回り部材用溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板。素材鋼板の表面に溶融Zn−Al−Mg系めっき層を有するめっき鋼板において、素材鋼板が、質量%で、C:0.010〜0.100%、Si:0.01〜1.00%、Mn:0.50〜2.50%、P:0.005〜0.050%、S:0.001〜0.020%、N:0.001〜0.005%、Ti:0.02〜0.20%、B:0.0005〜0.0100%、Al:0.005〜0.100%、Cr:0〜1.00%、Mo:0〜1.00%、Nb:0〜0.10%、V:0〜0.10%、残部Feおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、フェライト相からなるマトリクス中に平均粒子径20nm以下のTi含有析出物が分散した金属組織を有し、下記(3)式で表される溶融金属脆化割れ感度指数H3値が2.47以下となる鋼成分含有量と板厚t(mm)の関係を有する溶接構造部材用溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板。 H3値=C/0.2+Si/5.0+Mn/1.3+Cr/1.0+Mo/1.2+0.4t−0.7(Cr+Mo)1/2 …(3) ただし、(3)式の元素記号の箇所には素材鋼板中における当該元素の含有量(質量%)が代入される。前記溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板のめっき組成は、質量%で、Al:3.0〜22.0%、Mg:0.05〜10.0%、Ti:0〜0.10%、B:0〜0.05%、Si:0〜2.0%、Fe:0〜2.0%、残部Znおよび不可避的不純物からなる請求項1〜4のいずれかに記載の溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板。質量%で、C:0.010〜0.100%、Si:1.00%以下、Mn:1.00〜2.50%、P:0.050%以下、S:0.020%以下、N:0.005%以下、Ti:0.02〜0.20%、B:0.0005〜0.0100%、Al:0.100%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼材に、熱間圧延、酸洗、連続溶融めっきラインでの焼鈍および溶融Zn−Al−Mg系めっきを順次行う工程により、素材鋼板の表面に溶融Zn−Al−Mg系めっき層を有するめっき鋼板を製造するに際し、 熱間圧延にて下記(1)式で表される溶融金属脆化割れ感度指数H1値が2.84以下となる板厚t(mm)に圧延し、巻取温度を550〜680℃とし、連続溶融めっきラインでの焼鈍温度を500〜700℃とする、請求項1に記載の自動車足回り部材用溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の製造方法。 H1値=C/0.2+Si/5.0+Mn/1.3+0.4t …(1) ただし、(1)式の元素記号の箇所には素材鋼板中における当該元素の含有量(質量%)が代入される。質量%で、C:0.010〜0.100%、Si:1.00%以下、Mn:1.00〜2.50%、P:0.050%以下、S:0.020%以下、N:0.005%以下、Ti:0.02〜0.20%、B:0.0005〜0.0100%、Al:0.100%以下を含有し、さらにCr:0.40%以上1.00%以下、Mo:0.60%以上1.00%以下の1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼材に、熱間圧延、酸洗、連続溶融めっきラインでの焼鈍および溶融Zn−Al−Mg系めっきを順次行う工程により、素材鋼板の表面に溶融Zn−Al−Mg系めっき層を有するめっき鋼板を製造するに際し、 熱間圧延にて下記(2)式で表される溶融金属脆化割れ感度指数H2値が3.24以下となる板厚t(mm)に圧延し、巻取温度を550〜680℃とし、連続溶融めっきラインでの焼鈍温度を500〜700℃とする、請求項2に記載の自動車足回り部材用溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の製造方法。 H2値=C/0.2+Si/5.0+Mn/1.3+Cr/1.0+Mo/1.2+0.4t …(2) ただし、(2)式の元素記号の箇所には素材鋼板中における当該元素の含有量(質量%)が代入される。前記素材鋼板の化学組成範囲が、さらに、質量%で、Nb:0.10%以下、V:0.10%以下の1種以上を含有する組成範囲である請求項6または7に記載の自動車足回り部材用溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の製造方法。質量%で、C:0.010〜0.100%、Si:0.01〜1.00%、Mn:0.50〜2.50%、P:0.005〜0.050%、S:0.001〜0.020%、N:0.001〜0.005%、Ti:0.02〜0.20%、B:0.0005〜0.0100%、Al:0.005〜0.100%、Cr:0〜1.00%、Mo:0〜1.00%、Nb:0〜0.10%、V:0〜0.10%、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼材に、熱間圧延、酸洗、連続溶融めっきラインでの焼鈍および溶融Zn−Al−Mg系めっきを順次行う工程により、素材鋼板の表面に溶融Zn−Al−Mg系めっき層を有するめっき鋼板を製造するに際し、 熱間圧延にて下記(3)式で表される溶融金属脆化割れ感度指数H3値が2.47以下となる板厚t(mm)に圧延し、巻取温度を550〜680℃とし、連続溶融めっきラインでの焼鈍温度を500〜700℃とする、請求項4に記載の溶接構造部材用溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の製造方法。 H3値=C/0.2+Si/5.0+Mn/1.3+Cr/1.0+Mo/1.2+0.4t−0.7(Cr+Mo)1/2 …(3) ただし、(3)式の元素記号の箇所には素材鋼板中における当該元素の含有量(質量%)が代入される。前記溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板のめっき組成は、質量%で、Al:3.0〜22.0%、Mg:0.05〜10.0%、Ti:0〜0.10%、B:0〜0.05%、Si:0〜2.0%、Fe:0〜2.0%、残部Znおよび不可避的不純物からなる請求項6〜9のいずれかに記載の溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の製造方法。

说明书全文

本発明は、サスペンションアームやサスペンションメンバー等の自動車足回り部材をはじめとする各種アーク溶接構造部材に適した、耐溶融金属脆化割れ性に優れる溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板、およびその製造方法に関する。

自動車のサスペンションアームやサスペンションメンバーなどの足回り部材は、従来、熱延鋼板をプレス成形等により所定の形状に成形し、それらをアーク溶接法で接合した後、カチオン電着塗装を施して使用に供される。しかし、溶接ビード部およびビード止端部近傍部では、アーク溶接時の溶接入熱により鋼板表面にFeスケールが生成する。走行する自動車の振動により、そのスケールが疲労によってカチオン電着塗膜とともに剥離してしまうことがあり、その場合には、その部位から腐食が進行して板厚減少が起こることがある。このため、足回り部材では腐食による板厚減少量を見込んで強度設計する必要があり、従来、衝突安全性の観点から、引張強さ340〜440MPa級の板厚3〜4mmの熱延鋼板を使用することが多かった。

近年、更なる衝突安全性の向上と軽量化が望まれるようになり、足回り部材の鋼板には590MPa以上の高強度鋼板を使用するニーズが高まっている。また、長寿命化のための防錆性能向上も求められている。さらに、足回り部材には前述の高強度、耐食性の他に、バーリング性(穴広げ性)も要求されている。バーリング性は打抜き加工等により形成された穴がその後の成形過程において亀裂なく成形可能であることを示す特性である。

特許文献1には、バーリング性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板が開示されている。しかしながら、亜鉛系めっき鋼板にアーク溶接を施すと、特に高温に曝される溶接ビード止端部の近くではめっき層が蒸発して消失し、その部分にFeスケールが生成してしまう。このためFeスケールごと塗膜が剥離しやすいという従前の熱延鋼板の欠点は、亜鉛系めっき鋼板を用いても改善されない。

特許文献2には、一般的な溶融亜鉛めっき鋼板よりも耐食性の高い溶融Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板が開示されている。この例では、金属組織が、主相のフェライトと、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトの1種以上からなる2相組織であり、それら2相間の硬度差が著しく異なるので良好なバーリング性は得ることは難しい。

特許文献3には、亜鉛系合金めっき鋼材において溶接時の液体金属脆化割れを安定して抑制することを目的として、合金成分の組成に基づいて決定される液体金属脆化の感度指数E値が提案されている。しかし発明者らの検討によれば、この文献の手法に従っても、溶融Zn−Al−Mg系合金めっき鋼板を用いた溶接時の溶融金属脆化割れを安定して回避することは必ずしも容易でないことがわかった。

特開平5−263145号公報

特開2009−228080号公報

特開2006−249521号公報

上述のように、アーク溶接で組み立てられる自動車足回り部材等の溶接構造部材に高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用いると溶接部の耐食性が不十分であるため薄肉化の設計が困難である。また、素材鋼板の金属組織が2相組織である場合にはバーリング性が良好でない。さらに、溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の耐溶融金属脆化割れ性に関しては更なる改善が望まれる。

本発明はこれらの問題に鑑み、アーク溶接構造部材に好適な鋼材として、バーリング性、耐溶融金属脆化割れ性および溶接部の耐食性の全てを顕著に向上させた溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板を提供することを目的とする。

発明者らは詳細な研究の結果、以下の知見を得た。 (i)アーク溶接で組み立てられる溶接構造部材に溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板を用いることで溶接部の耐食性を向上させることができる。 (ii)溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板で問題となりやすいアーク溶接時の溶融金属脆化割れを抑止するためには、めっき原板である素材鋼板の成分設計に加えて当該素材鋼板の板厚の影響を考慮すること、および溶接施工時の冷却過程でマルテンサイト変態等による体積膨張をうまく利用して冷却時の熱収縮に起因する引張応を緩和することが極めて有効であり、化学組成と板厚の関数である「溶融金属脆化割れ感度指数」によって耐溶融金属脆化割れに優れた素材鋼板の要件を規定することができる。 (iii)バーリング性は、素材鋼板の金属組織を、フェライト相からなるマトリクス中に平均粒子径20nm以下のTi含有析出物が分散した組織とすることによって改善される。 本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。なお、上記特許文献3には液体金属脆化の感度指数E値が提案されているが、この文献には液体金属脆化が素材の板厚の影響を受けることは開示されておらず、また溶接凝固時の金属組織を制御することにより液体金属脆化割れを抑制する知見も示されていない。

本発明では、素材鋼板の表面に溶融Zn−Al−Mg系めっき層を有するめっき鋼板において、質量%で、C:0.010〜0.100%、Si:0.01〜1.00%、Mn:0.50〜2.50%、P:0.005〜0.050%、S:0.001〜0.020%、N:0.001〜0.005%、Ti:0.02〜0.20%、B:0.0005〜0.0100%、Al:0.005〜0.100%、Cr:0〜1.00%、Mo:0〜1.00%、Nb:0〜0.10%、V:0〜0.10%、残部Feおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、かつフェライト相からなるマトリクス中に平均粒子径20nm以下のTi含有析出物が分散した金属組織を有する素材鋼板を適用する。

選択元素であるCr、Moを含有しない素材鋼板としては、下記(1)式で表される溶融金属脆化割れ感度指数H1値が2.84以下となる鋼成分含有量と板厚t(mm)の関係を有するものが対象となる。 H1値=C/0.2+Si/5.0+Mn/1.3+0.4t …(1) 選択元素であるCr:0.40〜1.00%、Mo:0.60〜1.00%の1種以上を含有する素材鋼板としては、下記(2)式で表される溶融金属脆化割れ感度指数H2値が3.24以下となる鋼成分含有量と板厚t(mm)の関係を有するものが対象となる。 H2値=C/0.2+Si/5.0+Mn/1.3+Cr/1.0+Mo/1.2+0.4t …(2)

また、上記(1)式や(2)式に代えて下記(3)式を適用してもよい。その場合、(3)式で表される溶融金属脆化割れ感度指数H3値が2.47以下となる鋼成分含有量と板厚t(mm)の関係を有する素材鋼板が対象となる。(3)式のH3値はCr、Mo含有の有無にかかわらず適用することかできる溶融金属脆化割れ感度指数である。 H3値=C/0.2+Si/5.0+Mn/1.3+Cr/1.0+Mo/1.2+0.4t−0.7(Cr+Mo)1/2 …(3) なお、(1)〜(3)式の元素記号の箇所には素材鋼板中における当該元素の含有量(質量%)が代入される。また、(2)式あるいは(3)式の適用に際しCr、Moのうち無添加の元素がある場合は、その元素記号の箇所に0(ゼロ)が代入される。

前記溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板のめっき組成は、例えば質量%で、Al:3.0〜22.0%、Mg:0.05〜10.0%、Ti:0〜0.10%、B:0〜0.05%、Si:0〜2.0%、Fe:0〜2.0%、残部Znおよび不可避的不純物からなる。

上記の溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の製造方法として、上記化学組成鋼材にの熱間圧延、酸洗、連続溶融めっきラインでの焼鈍および溶融Zn−Al−Mg系めっきを順次行う工程により、素材鋼板の表面に溶融Zn−Al−Mg系めっき層を有するめっき鋼板を製造するに際し、 熱間圧延にて前記(1)式で表される溶融金属脆化割れ感度指数H1値が2.84以下、前記(2)式で表される溶融金属脆化割れ感度指数H2値が3.24以下、または前記(3)式で表される溶融金属脆化割れ感度指数H3値が2.90以下となる板厚t(mm)に圧延し、巻取温度を550〜680℃とし、連続溶融めっきラインでの焼鈍温度を500〜700℃とする、溶接構造部材用溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の製造方法が提供される。ここで、上記(1)〜(3)式のいずれを適用するかについては上述したとおりである。板厚tは例えば1.5〜6.0mm、好ましくは2.0〜4.0mmである。

本発明によれば、バーリング加工性が良好で、アーク溶接時に溶融金属脆化割れが起こらず、アーク溶接部の耐食性に優れる溶接構造用溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板が提供できる。

ボス溶接試験材の形状を説明する斜視図。

ボス溶接試験材を作製する手順を説明する断面図。

重ねすみ肉溶接継手の模式図。

複合サイクル腐食試験の条件。

溶融金属脆化割れ感度指数H1と最大母材割れ深さの関係を示すグラフ。

溶融金属脆化割れ感度指数H2と最大母材割れ深さの関係を示すグラフ。

溶融金属脆化割れ感度指数H3と最大母材割れ深さの関係を示すグラフ。

以下、鋼組成およびめっき組成における「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。 〔素材鋼板の成分〕

Cは、Tiを含む炭化物を形成し、マトリクスであるフェライト相中に微細析出することで、鋼の強度を確保する役割を担う元素である。C含有量が0.01%未満では自動車足回り部材等の溶接構造部材に適した高強度(例えば590MPa以上)を得ることが難しい場合があり、0.10%を超えると析出物の粗大化やベイナイト等の第2相組織が形成されやすくバーリング性の低下要因となる。

Siも、鋼の強度を確保する役割を担う元素である。しかも、高強度化に有効な他の元素に比べ添加量を増やしても加工性を劣化させにくいため、高強度化にとって有効な元素である。これらの作用を十分得るためには0.01%以上のSi添加が必要である。ただし1.00%を超えると溶融めっきラインでの加熱時に鋼板表面に酸化物が形成しやすくなり、めっき性を阻害する。

Mnは、固溶強化に有効な元素である。Mn含有量が0.50%未満では590MPa以上の強度を安定して得るのが難しく、2.50%を超えると偏析が生じやすくなりバーリング性が低下することがある。

Pも、固溶強化に有効な元素であり、0.005%以上の含有が効果的である。ただし0.050%を超えると偏析が生じやすくなりバーリング性が低下することがある。

Sは、TiやMnと硫化物を形成しやく、これらの硫化物は鋼板のバーリング性を低下させる。種々検討の結果、Sは0.020%以下とする必要がある。ただし、過剰な脱硫は製造不可を増大させるため、通常は0.001%以上のS含有量とすればよい。

Nは、鋼中に固溶Nとして残存するとBNを生成し、耐溶融金属脆化割れ性に有効なB量の減少につながる。検討の結果、N含有量は0.005%以下に制限されるが、通常は0.001%程度のNが存在していても問題ない。

Tiは、Nとの親和性が高く、鋼中のNをTiNとして固定するため、Tiを添加することは耐溶融金属脆化割れ性を高めるB量を確保する上で極めて有効である。また、TiはCと結合して微細な炭化物を形成させるのに必要であり、本発明における重要な元素の一つである。これらの作用を十分得るためには0.02%以上のTi含有が必要である。ただし、0.20%を超えると加工性の低下を招く場合がある。

Bは、結晶粒界に偏析して原子間結合力を高め、溶融金属脆化割れの抑制に有効な元素である。その作用は0.0005%以上のB含有によって発揮される。一方、B含有量が0.0100%を超えるとホウ化物を生成し加工性の劣化を招きやすくなる。

Alは、製鋼時に脱酸材として添加される。その作用を得るためには0.005%以上のAl含有が望まれる。ただしAl含有量が0.100%を超えると延性の低下を招く恐れがある。

Crは、Bと同様に、アーク溶接の冷却過程で熱影響部のオーステナイト粒界に偏析して溶融金属脆化割れを抑制する作用を呈する。このため必要に応じて含有させることができる。Crを含有させる場合は0.10%以上の含有量を確保することがより効果的である。ただし、過剰のCr含有は加工性を低下させる要因となるのでCr含有量は1.00%以下に制限される。

Moは、Cr、Bと同様に、アーク溶接の冷却過程で熱影響部のオーステナイト粒界に偏析して溶融金属脆化割れを抑制する作用を呈する。このため必要に応じて含有させることができる。Moを含有させる場合は0.05%以上の含有量を確保することがより効果的である。ただし、Moは高価な元素であるためMoを添加する場合は1.00%以下の範囲で行う。

Nbは、加熱および熱延中のオーステナイト結晶粒の粗大化を防止し、冷却後のフェライト結晶粒の微細化に有効である。また、Cを含む複合炭化物を形成し強度上昇にも寄与する。このためNbは必要に応じて含有することができる。Nbを含有させる場合は0.01%以上の含有量を確保することがより効果的である。ただし、過剰のNb含有は不経済であるためNbを添加する場合は0.10%以下の範囲で行う。

Vは、Nbと同様に加熱および熱延中のオーステナイト結晶粒の粗大化を防止し、フェライト結晶粒の微細化に有効となる。また、Tiと同様にCを含む複合炭化物を形成し強度上昇にも寄与する。このため必要に応じて含有することができる。Vを含有させる場合は0.05%以上の含有量を確保することがより効果的である。ただし、過剰のV含有は不経済であるためVを添加する場合は0.10%以下の範囲で行う。

〔H1値〕 H1値は、選択元素であるCr、Moを含有しない場合に適用される溶融金属脆化割れ感度指数である。この値が大きい材料は溶融金属脆化割れにより発生する最大割れ深さが大きくなる。H1値は素材鋼板(めっき原板)の鋼成分含有量と板厚t(mm)の関数であり、(1)式によって定義される。 H1値=C/0.2+Si/5.0+Mn/1.3+0.4t …(1) ここで(1)式の元素記号の箇所には素材鋼板中における当該元素の含有量(質量%)が代入され、tの箇所にはめっき原板である素材鋼板の平均板厚が0.1mmの単位で代入される(後述(2)式および(3)式において同様)。

溶融金属脆化割れは、溶接の冷却過程で溶接金属および母材熱影響部に熱収縮に起因する引張応力が生じているときに、その母材表面に溶融状態で存在するめっき金属が母材の結晶粒界に侵入して割れを引き起こす現象である。特に溶接止端部に極めて近い母材表面から割れが発生しやすい。Zn−Al−Mg系めっき金属は約400℃程度になるまでは溶融状態を保っている。そのため溶接後の冷却過程で材料温度が約400℃以上であるときの引張応力をできるだけ緩和することが溶融金属脆化割れを抑制するうえで有効となる。

本発明では、その引張応力の緩和手法として、母材(素材鋼板)のマルテンサイト変態等による体積膨張を利用する。本発明で対象とする鋼種は上述のようにマトリクスがフェライト単相に調整されたものであるが、アーク溶接時には急冷されるので熱影響部でマルテンサイト変態が起きる。(1)式のC、Si、Mnは鋼成分の中でもマルテンサイト変態開始温度(Ms点)を低温側に移行させる作用が大きい元素である。それらの元素の含有量を規制してマルテンサイト変態が溶融金属脆化割れの生じやすい400℃以上の領域で起きるようにする。マルテンサイト変態に伴う体積膨張を利用して溶融金属脆化割れの原因となる引張応力を緩和するのである。

(1)式右辺の板厚tの項は、板厚が大きくなるほど冷却速度が低下することや引張応力が増大するので「鋼成分によるMs点低下への寄与」に対する要求が一層厳しくなることを考慮したものである。従来、亜鉛系合金めっき鋼板の耐溶融金属脆化割れ性を改善する手法として鋼成分の含有量を調整する試みは多くなされてきた。しかし、それらの手法に従った場合でも溶融金属脆化割れを十分に回避しきれず問題となる場合があった。発明者らは詳細な検討の結果、素材鋼板の板厚によって引張応力の発生状況が変わることを考慮することによって種々の板厚に対応できる溶融金属脆化割れ感度指数H1値および後述のH2値、H3値を設定するに至った。

各鋼成分の含有量が前述の範囲にありCr、Moを含有しない素材鋼板をめっき原板とする溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の場合、H1値が2.84以下となるように素材鋼板の鋼成分含有量と板厚の関係を調整することによって、アーク溶接における溶融金属脆化割れを顕著に抑制することができる。その耐溶融金属脆化割れ性は後述の溶融金属脆化割れ試験による厳しい評価方法で最大割れ深さが0.1mm以下となるものであり、実用上優れた特性を有する。

〔H2値〕 H2値は、選択元素であるCr、Moの1種以上を含有する場合に適用される溶融金属脆化割れ感度指数であり、(2)式により定義される。この値が大きい材料は溶融金属脆化割れにより発生する最大割れ深さが大きくなる。 H2値=C/0.2+Si/5.0+Mn/1.3+Cr/1.0+Mo/1.2+0.4t …(2)

H2値は上述のH1値と同様、素材鋼板(めっき原板)の鋼成分含有量と板厚t(mm)の関数である。Ms点を低温側に移行させる作用があるCr、Moの項を有する点でH1値と相違するが、H2値の技術的意味はH1値と共通である。各鋼成分の含有量が前述の範囲にありCr:0.40〜1.00%、Mo:0.60〜1.00%の1種以上を含有する素材鋼板をめっき原板とする溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の場合、H2値が3.24以下となるように素材鋼板の化学組成と板厚の関係を調整することによって、アーク溶接における溶融金属脆化割れを顕著に抑制することができる。その耐溶融金属脆化割れ性は後述の溶融金属脆化割れ試験による厳しい評価方法で最大母材割れ深さが0.1mm以下となるものであり、実用上優れた特性を有する。

〔H3値〕 H3値は、選択元素であるCr、Moの含有の有無にかかわらず適用可能な溶融金属脆化割れ感度指数であり、(3)式により定義される。この値が大きい材料は溶融金属脆化割れにより発生する最大割れ深さが大きくなる。 H3値=C/0.2+Si/5.0+Mn/1.3+Cr/1.0+Mo/1.2+0.4t−0.7(Cr+Mo)1/2 …(3)

H3値の技術的意味はH1値、H2値と共通するが、H3値を使用すれば選択元素であるCr、Moの含有の有無にかかわらず一定の上限値2.47によって耐溶融金属脆化割れ性を評価することができる

〔金属組織〕 <マトリクス> バーリング性を向上させるため、素材鋼板の金属組織はマトリクス(鋼素地)が延性の良好なフェライト単相であることが有効である。

<フェライト相中に分散している平均粒子径20nm以下のTi含有析出物> 本発明に従う鋼板の金属組織はマトリクスがフェライト単相であるが、Tiを含む析出物が熱間圧延時に析出し、その析出強化作用によって強度が上昇しており、およそ600MPa程度以上の引張強度を示す。また、バーリング性の向上には、このTi含有析出物がフェライトのマトリクス中に微細に分散していることが有効である。種々検討の結果、バーリング性と引張強さ約600MPaレベル以上の高強度を両立させるためには、フェライト相中に分散しているTi含有析出物の平均粒子径が20nm以下であることが極めて有効である。このような金属組織は熱間圧延の巻取温度および溶融めっきラインでの焼鈍温度を適正化することによって得られる。

〔製造方法〕 上記の耐溶融金属脆化割れ性とバーリング性に優れた溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板は、例えば成分調整された鋼材(連続鋳造スラブなど)に、熱間圧延、酸洗、連続溶融めっきラインでの焼鈍および溶融Zn−Al−Mg系めっきを順次行う工程により製造することができる。以下、その場合の製造条件を例示する。

<熱間圧延での板厚調整> 溶融金属脆化割れ感度指数H1値、H2値またはH3値を上述の範囲にコントロールするためには、鋼を溶製する時点での成分調整と、圧延する時点での板厚調整が必要である。上記の製造工程では冷間圧延を経ないので、素材鋼板(めっき原板)の板厚調整は基本的に熱間圧延において行う。具体的にはH1値≦2.84、H2値≦3.24またはH3値≦2.90を満たすように熱間圧延で板厚t(mm)をコントロールする。

<熱間圧延での巻取温度:550〜680℃> 素材鋼板の金属組織をフェライト単相とするため、および平均粒子径20nm以下のTi含有析出物の析出量を十分に確保するため、巻取温度は550〜680℃とする。巻取温度が550℃未満では、Ti含有析出物の析出量が不十分となり強度が低下する。また、ベイナイト等の第2相組織が生成しやすくなりバーリング性を低下させる要因となる。一方、巻取温度が680℃を超えると析出物の粗大化が起こり、強度低下およびバーリング性低下を招く。

<連続溶融めっきラインでの焼鈍温度:550〜700℃> 焼鈍温度が550℃未満では鋼板表面が十分に還元せずめっき性が低下する。一方、焼鈍温度が700℃を超えると析出物の粗大化が起こり、強度低下およびバーリング性低下を招く。

<溶融Zn−Al−Mg系めっき> 本発明では、公知の溶融Zn−Al−Mg系めっきの手法を適用することができる。 めっき層中のAlは、めっき鋼板の耐食性を向上させる作用を有する。また、めっき浴中にAlを含有させることでMg酸化物系ドロス発生を抑制する作用もある。これらの作用を十分に得るには溶融めっきのAl含有量を3.0%以上とする必要があり、4.0%以上とすることがより好ましい。一方、Al含有量が22.0%を超えると、めっき層と素材鋼板との界面でFe−Al合金層の成長が著しくなり、めっき密着性が悪くなる。優れためっき密着性を確保するには15.0%以下のAl含有量とすることが好ましく、10.0%以下とすることがより好ましい。

めっき層中のMgは、めっき層表面に均一な腐食生成物を生成させて当該めっき鋼板の耐食性を著しく高める作用を呈する。その作用を十分に発揮させるには溶融めっきのMg含有量を0.05%以上とする必要があり、2.0%以上を確保することが望ましい。一方、Mg含有量が10.0%を超えるとMg酸化物系ドロスが発生し易くなる弊害が大きくなる。より高品質のめっき層を得るには5.0%以下のMg含有量とすることが好ましく、4.0%以下とすることがより好ましい。

溶融めっき浴中にTi、Bを含有させると、溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板において斑点状の外観不良を与えるZn11Mg2相の生成・成長が抑制される。Ti、Bはそれぞれ単独で含有させてもZn11Mg2相の抑制効果は生じるが、製造条件の自由度を大幅に緩和させる上で、TiおよびBを複合で含有させることが望ましい。これらの効果を十分に得るには、溶融めっきのTi含有量は0.0005%以上、B含有量は0.0001%以上とすることが効果的である。ただし、Ti含有量が多くなりすぎると、めっき層中にTi−Al系の析出物が生成し、めっき層に「ブツ」と呼ばれる凹凸が生じて外観を損なうようになる。このため、めっき浴にTiを添加する場合は0.10%以下の含有量範囲とする必要があり、0.01%以下とすることがより好ましい。また、B含有量が多くなりすぎると、めっき層中にAl−B系あるいはTi−B系の析出物が生成・粗大化し、やはり「ブツ」と呼ばれる凹凸が生じて外観を損なうようになる。このため、めっき浴にBを添加する場合は0.05%以下の含有量範囲とする必要があり、0.005%以下とすることがより好ましい。

溶融めっき浴中にSiを含有させると前記Fe−Al合金層の成長が抑制され、溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板の加工性が向上する。また、めっき層中のSiはめっき層の黒変化を防止し、表面の光沢性を維持する上でも有効である。このようなSiの作用を十分に引き出すためには溶融めっきのSi含有量を0.005%以上とすることが効果的である。ただし、過剰にSiを添加すると溶融めっき浴中のドロス量が多くなるので、めっき浴にSiを含有させる場合は2.0%以下の含有量範囲とする。

溶融めっき浴中には素材鋼板やポット構成部材などからある程度のFeが混入してくる。Zn−Al−Mg系めっきにおいて、めっき浴中のFeは2.0%程度まで含有が許容される。めっき浴中には、その他の元素として例えば、Ca、Sr、Na、希土類元素、Ni、Co、Sn、Cu、Cr、Mnの1種以上が混入しても構わないが、それらの合計含有量は1質量%以下であることが望ましい。なお、溶融めっき浴組成はほぼそのまま溶融めっき鋼板のめっき層組成に反映される。

《実施例1》 表1に組成を示す各鋼を溶製し、そのスラブを1250℃に加熱した後、仕上圧延温度880℃、巻取温度530〜700℃で熱間圧延し、熱延鋼帯を得た。熱延鋼帯の板厚と、前述のH1値またはH2値は表1中に、巻取温度は表4中にそれぞれ示してある。

熱延鋼帯を酸洗した後、連続溶融めっきラインにて、素−窒素混合ガス中550〜730℃で焼鈍行い、約420℃まで平均冷却速度5℃/secで冷却して素材鋼板(めっき原板)とし、その後、鋼板表面が大気に触れない状態のまま下記のめっき浴組成を有する溶融Zn−Al−Mg系めっき浴中に浸漬した後引き上げ、ガスワイピング法にてめっき付着量を片面あたり約90g/m2に調整した溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板を得た。めっき浴温は約410℃であった。各鋼の焼鈍温度も、表4に併せて示してある。 〔めっき浴組成(質量%)〕 Al:6.0%、Mg:3.0%、Ti:0.002%、B:0.0005%、Si:0.01%、Fe:0.1%、Zn:残部

〔析出物の平均粒子径〕 採取した溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板サンプルから作製した薄膜を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し、Ti含有析出物が30個以上の析出物が含まれる一定の領域内の当該析出物の粒子径(長径)を測定し、その平均値をTi含有析出物の平均粒子径とした。

〔引張特性〕 試験片の長手方向が素材鋼板の圧延方向に対し直になるように採取したJIS5号試験片を用い、JISZ2241に準拠して引張強さTS、全伸びT.ELを求めた。

〔穴広げ性〕 溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板から90×90mmのサンプルを採取し、これを穴広げ性試験のための素板(ブランク材)とした。この素板の中央にポンチとダイスを用いて打抜き穴を開けた。ポンチの直径D0は10.0mm、ダイスはクリアランスが板厚の12%となるものを選んだ。打ち抜きままの穴に、バリの反対側から頂角60°のポンチを押し込み、初期穴を拡大した。その際、ポンチの移動速度は10mm/minとした。鋼板の穴が拡大して板厚方向に割れが貫通した時点でポンチを止め、穴の内径Dbを測定した。そして、(Db−D0)/D0×100(%)で定義される穴広げ率λを求めた。λが60%以上であれば溶接構造部材の多くの用途において問題のないバーリング性を有すると評価できるが、ここではより厳しい基準としてλが70%以上であるものを合格と判定した。

〔溶融金属脆化割れ性の評価〕 溶融金属脆化特性は、次の手順により溶接試験を行って評価した。 溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板から100mm×75mmのサンプルを切り出し、これを溶融金属脆化に起因する最大割れ深さを評価するための試験片とした。溶接試験は、図1に示す外観のボス溶接材を作成する「ボス溶接」を行い、その溶接部断面を観察して割れの発生状況を調べた。すなわち、試験片3の板面中央部に直径20mm×長さ25mmの棒鋼(JISに規定されるSS400材)からなるボス(突起)1を垂直に立て、このボス1を試験片3にアーク溶接にて接合した。溶接ワイヤーはYGW12を用い、溶接開始点から溶接ビード6がボスの周囲を1周し、溶接始点を過ぎた後もさらに少し溶接を進めて溶接開始点を過ぎて溶接ビードの重なり部分8ができたところで溶接を終了とした。溶接条件は、190A,23V,溶接速度0.3m/min、シールドガス:Ar−20vol.%CO2、シールドガス流量:20L/minとした。

なお、溶接に際しては、図2に示すように、あらかじめ試験片3を拘束板4と接合しておいたものを用いた。接合体は、まず120mm×95mm×板厚4mmの拘束板4(JISに規定されるSS400材)を用意し、この板面中央部に試験片3を置き、その後、試験片3の全周を拘束板4に溶接したものである。上記のボス溶接材の作製は、この接合体(試験片3と拘束板4)を水平な実験台5の上にクランプ2にて固定し、この状態でボス溶接を行ったものである。

ボス溶接後、ボス1の中心軸を通り、かつ前記のビードの重なり合う部分8を通る切断面9で、ボス1/試験片3/拘束板4の接合体を切断し、その切断面9について顕微鏡観察を行い、試験片3に観察された割れの最大深さを測定し、これを最大母材割れ深さとした。この割れは溶融金属脆化割れに該当するものである。最大母材割れ深さが0.1mm以下を合格、0.1mmを超えるものを不合格として評価した。

〔溶接部の耐食性評価〕 溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板から100mm×100mmのサンプルを採取し、同種のサンプル2枚を下記に示す溶接条件で、図3に模式的に示すように重ねすみ肉アーク溶接にて接合した。その後、表2に示す条件で表面調整とリン酸塩処理を施し、表3に示す条件でカチオン電着塗装を施した。カチオン電着塗装したサンプルに、振動による疲労をシミュレートするために溶接方向と垂直方向に応力50N/mm2、試験回数1×105回の試験条件で疲労試験を施した後、図4に示す条件の複合腐食試験(CCT)に供し、CCT250サイクル後の赤錆発生有無を調査した。溶接部に赤錆の発生が認められないものを○(良好)、それ以外を×(不良)と判定した。

溶接条件は以下のとおりである。 ・溶接電流:150A ・アーク電圧:20V ・溶接速度:0.4m/min ・溶接ワイヤー:YGW14 ・シールドガス:Ar−20vol.%CO2、流量20L/min 以上の試験結果を表4に示す。

本発明例のものは、いずれも穴広げ率λが70%以上、最大母材割れ深さが0.1mm以下であり、優れたバーリング性と耐溶融金属脆化割れ性を兼ね備えている。また、引張強さTSが590MPa以上の高強度と溶接部での良好な耐食性を有し、自動車足回り部材用の材料に適している。

これに対し、No.22はTi量が多いため析出物粒子径が大きく、穴広げ性が低い。No.23はC量が低いため十分な引張強さが得られていない。No.24はP量が多いため穴広げ性が低い。No.25はB量が低いため最大母材割れ深さが大きい。No.26、27、29、31、32はH1値またはH2値が高いため最大母材割れ深さが大きい。No.28はC含有量とH1値が高いため、またNo.30はMn含有量とH1値が高いため、これらはいずれも穴拡げ性に劣り最大母材割れ深さも大きい。No.33は熱間圧延での巻取り温度が低いためベイナイト相が生成し、穴広げ性が低い。No.34は熱間圧延での巻取り温度が高いため、またNo.35は連続溶融めっきラインでの焼鈍温度が高いため、これらはいずれもTi含有析出物の粒子径が大きく、穴広げ性が低い。

図5に、溶融金属脆化割れ感度指数H1と最大母材割れ深さの関係を示す。 図6に、溶融金属脆化割れ感度指数H2と最大母材割れ深さの関係を示す。

《実施例2》 表5に組成を示す各鋼を溶製し、実施例1と同様の製造条件にて溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板を得た。熱延鋼帯の板厚と、前述のH3は表5中に、巻取温度は表6中にそれぞれ示してある。

各溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板について、実施例1と同様の手法で各種試験を行い、特性を評価した。その結果を表6に示す。

本発明例のものは、いずれも穴広げ率λが70%以上、最大母材割れ深さが0.1mm以下であり、優れたバーリング性と耐溶融金属脆化割れ性を兼ね備えている。また、引張強さTSが590MPa以上の高強度と溶接部での良好な耐食性を有し、自動車足回り部材をはじめとする各種溶接構造部材用の材料に適している。

これに対し、No.72はTi量が多いため析出物粒子径が大きく、穴広げ性が低い。No.73はC量が低いため十分な引張強さが得られていない。No.74はP量が多いため穴広げ性が低い。No.75はB量が低いため最大母材割れ深さが大きい。No.76、77、79、81、82はH3値が高いため最大母材割れ深さが大きい。No.78はC含有量とH3値が高いため、またNo.80はMn含有量とH3値が高いため、これらはいずれも穴拡げ性に劣り最大母材割れ深さも大きい。No.83は熱間圧延での巻取り温度が低いためベイナイト相が生成し、穴広げ性が低い。No.84は熱間圧延での巻取り温度が高いため、またNo.85は連続溶融めっきラインでの焼鈍温度が高いため、これらはいずれもTi含有析出物の粒子径が大きく、穴広げ性が低い。

図7に、溶融金属脆化割れ感度指数H3と最大母材割れ深さの関係を示す。選択元素であるCr、Moの含有の有無にかかわらず、H3≦2.90を満たすことにより溶融金属脆化割れ感受性を精度良く評価できることがわかる。

1 ボス 2 クランプ 3 試験片 4 拘束板 5 実験台 6 溶接ビード 7 試験片全周溶接部の溶接ビード 8 溶接ビードの重なり部分 9 切断面 18 溶融Zn−Al−Mg系めっき鋼板サンプル 19 溶接金属

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