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発酵乳の製造方法、発酵乳の製造における発酵時間の短縮方法、及び発酵乳における酸味の上昇の抑制方法

申请号 JP2017237763 申请日 2017-12-12 公开(公告)号 JP2018033469A 公开(公告)日 2018-03-08
申请人 株式会社明治; 发明人 古市 圭介; 高橋 沙織; 斎藤 瑞恵;
摘要 【課題】発酵乳の製造時における発酵時間の短縮(発酵の促進)、及び発酵乳の冷蔵輸送中や冷蔵保存中における酸味の上昇の抑制を簡便な方法で同時に達成する。 【解決手段】本発明は、乳酸菌スターターを原料乳に配合する直前や直後、あるいは乳酸菌スターターを原料乳に配合するのと同時に、所定量のプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合する発酵乳の製造方法、発酵乳の製造時における発酵時間の短縮方法、酸味の上昇の抑制方法である。 【選択図】なし
权利要求

乳酸菌スターターを原料乳に配合する直前や直後、あるいは乳酸菌スターターを原料乳に配合するのと同時に、所定量のプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合することを特徴とする、発酵乳の製造方法。プロピオン酸菌の培養液を0.0001〜0.25質量%の範囲として、プロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合することを特徴とする、請求項1に記載の発酵乳の製造方法。プロピオン酸菌の培養液を10倍以上に濃縮して、プロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合することを特徴とする、請求項1または2に記載の発酵乳の製造方法。プロピオン酸菌の生菌体を6×106 cfu/mL以上で、原料乳または発酵乳基材に配合することを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の発酵乳の製造方法。

说明书全文

本発明は、発酵乳の製造方法、発酵乳の製造における発酵時間の短縮方法、及び発酵乳における酸味の上昇の抑制方法に関する。

発酵乳を製造する際に、発酵時間は大きな制約条件の一つとなる。例えば、発酵時間を短縮できれば、製造設備を増強などせず、製造能を向上できるため、製造費を効果的に低減できる。このとき、発酵乳を製造する際に、乳酸菌の増殖促進物質(乳タンパク質の酵素分解物など)を原料乳に配合すると、発酵時間を短縮できるが、その配合した物質の風味などが影響し、発酵乳として違和感のある風味になる可能性がある。また、発酵乳を製造する際に、単に発酵時間を短縮すると、発酵乳を冷蔵輸送や冷蔵保存などする際にも、そのままの状態で発酵が促進されてしまい、酸味が過剰に上昇し、発酵乳として違和感のある風味になる可能性がある。

ここで、発酵乳(ヨーグルトなど)の発酵促進作用に関する技術には、以下の特許文献1〜8を例示できる。特許文献1には、グァバ葉エキスを有効成分(活性物質)とする「乳酸菌含有発酵食品およびその製造方法」、特許文献2には、さつま芋焼酎粕を有効成分とする「ビフィズス菌および乳酸菌の増殖促進剤」、特許文献3には、死菌体を含む酸性バターミルクを有効成分とする「乳酸菌の増殖促進剤および生残性向上剤」、特許文献4には、シス - バクセン酸を有効成分とする「乳酸菌増殖剤および乳酸菌発酵食品」、特許文献5には、ココアマスを有効成分とする「乳酸菌の発酵促進剤」、特許文献6には、木を乾留して得られた粗木酢液を有効成分とする「乳酸菌増殖促進剤」、特許文献7には、リン酸カルシウムを有効成分とする「嫌気性菌増殖促進物質」、特許文献8には、生姜エキス、茶類エキス、ネギエキスを有効成分とする「乳酸菌の培養方法及び飲食品」が記載されている。

このとき、特許文献1〜8のうち、特許文献3のみが発酵乳の風味に言及している。ただし、特許文献3では、発酵乳の風味に言及しているものの、「製品の風味やコストに悪影響を与えずに乳酸菌の増殖を促進し、かつ保存中の乳酸菌の生残性を向上させることができる。」とだけ記載されており、発酵乳の風味の改良作用、発酵乳の酸味の上昇の抑制作用に言及していない。

また、プロピオン酸菌を用いた発酵乳の製造に関する技術には、特許文献9の「ビフィズス菌の生残性改善方法」や特許文献10の「乳酸菌の生残性向上剤及び生残性向上方法並びに食品組成物」を例示できる。

このとき、特許文献9では、実施例に「Propionibacterium freudenreichii IFO 12424を接種して、37℃、5日間で培養し、90℃、10分間で加熱処理したものを30gで接種し、43℃、3.5時間で発酵させた。」と記載されている。ここでは、プロピオン酸菌を加熱処理して死滅させてから用いており、プロピオン酸菌の生菌体を濃縮していないことから、プロピオン酸菌の生菌体による発酵時間の短縮作用、発酵乳の風味の改良作用、発酵乳の酸味の上昇の抑制作用は十分に発揮されていない。

そして、特許文献10では、実施例に「プロピオン酸菌の発酵物を1,4-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸 DHNA 濃度 100μg/mlとなるまで濃縮したものを0.5重量%で同時に添加・混合して、乳酸濃度が0.75%となるまで43℃にて発酵を行いヨーグルトを調製した。」と記載され、さらに、実際に使用したプロピオン酸菌の発酵物に関して「この結果、DHNA濃度が52μg/mLとなる培養物(プロピオン酸菌発酵物)を得た。」と記載されている。つまり、プロピオン酸菌発酵物の濃縮倍率は2倍程度であることから、プロピオン酸菌の生菌体による、発酵乳の製造における発酵時間の短縮作用、発酵乳における風味の改良作用、発酵乳における酸味の上昇の抑制作用は十分に発揮されていない。

特開2010−119305号公報

特開2009−125055号公報

特開2008−5811号公報

特開2006−262778号公報

特開2006−223244号公報

特開2005−318856号公報

特開2005−130804号公報

特開2001−190272号公報

特開平7−227207号公報

国際公開公報WO2009/069498

従来技術に示されているように、(1)発酵乳の製造における発酵時間の短縮(発酵の促進)、及び(2)発酵乳の冷蔵輸送中や冷蔵保存中における酸味の上昇の抑制について、簡便な方法で同時に達成することは容易ではない。

一方、これら(1)、(2)について、簡便な方法で同時に達成できれば、発酵乳を大規模に製造する商業的な展開において大きな利益を提供できることとなる。

本発明は、上記の(1)、(2)について、簡便な方法で同時に達成することを目的にしている。

本発明は、以下により、上記の目的の達成を図るものである。

[1] 乳酸菌スターターを原料乳に配合(添加)する直前や直後、あるいは乳酸菌スターターを原料乳に配合(添加)するのと同時に、所定量のプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合(添加)することを特徴とする、発酵乳の製造方法。

[2] プロピオン酸菌の培養液を0.0001〜0.4質量%の範囲として、プロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合することを特徴とする、前記[1]に記載の発酵乳の製造方法。

[3] プロピオン酸菌の培養液を10倍以上に濃縮して、プロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合することを特徴とする、前記[1]または[2]に記載の発酵乳の製造方法。

[4] プロピオン酸菌の生菌体を6×106 cfu/mL以上で、原料乳または発酵乳基材に配合することを特徴とする、前記[1]〜[3]の何れかに記載の発酵乳の製造方法。

[5] 乳酸菌スターターを原料乳に配合する直前や直後、あるいは乳酸菌スターターを原料乳に配合するのと同時に、所定量のプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合することを特徴とする、発酵乳の製造における発酵時間の短縮方法。

[6] プロピオン酸菌の培養液を0.0001〜0.4質量%の範囲として、プロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合することを特徴とする、前記[5]に記載の発酵時間の短縮方法。

[7] プロピオン酸菌の培養液を10倍以上に濃縮して、プロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合することを特徴とする、前記[5]または[6]に記載の発酵時間の短縮方法。

[8] プロピオン酸菌の生菌体を6×106 cfu/mL以上で、原料乳または発酵乳基材に配合することを特徴とする、前記[5]〜[7]の何れかに記載の発酵時間の短縮方法。

[9] 乳酸菌スターターを原料乳に配合する直前や直後、あるいは乳酸菌スターターを原料乳に配合するのと同時に、所定量のプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合することを特徴とする、発酵乳(の冷蔵輸送中や冷蔵保存中)における酸味の上昇の抑制方法。

[10] プロピオン酸菌の培養液を0.0001〜0.4質量%の範囲として、プロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合することを特徴とする、前記[9]に記載の発酵乳(の冷蔵輸送中や冷蔵保存中)における酸味の上昇の抑制方法。

[11] プロピオン酸菌の培養液を10倍以上に濃縮して、プロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合することを特徴とする、前記[9]または[10]に記載の発酵乳(の冷蔵輸送中や冷蔵保存中)における酸味の上昇の抑制方法。

[12] プロピオン酸菌の生菌体を6×10 6 cfu/mL以上で、原料乳または発酵乳基材に配合することを特徴とする、前記[9]〜[11]の何れかに記載の発酵乳(の冷蔵輸送中や冷蔵保存中)における酸味の上昇の抑制方法。

なお、前記の[3]、[7]、[11]において、プロピオン酸菌の培養液を10倍以上に濃縮するとは、例えば、プロピオン酸菌の培養液の生菌体を10倍以上に濃縮するということである。

本発明によれば、(1)発酵乳の製造(時)における発酵時間の短縮(発酵の促進)、及び(2)発酵乳(の冷蔵輸送中や冷蔵保存中)における酸味の上昇の抑制について、簡便な方法で同時に達成することができる。

発酵乳基材へ配合(添加)するプロピオン酸菌の種類(菌株)と、発酵乳の製造における発酵の促進作用の関係を示すグラフ。

発酵乳基材へのプロピオン酸菌(生菌体)の初期の配合(添加)濃度と、発酵乳の製造における発酵の促進作用の関係を示すグラフ。

発酵乳基材への凍結濃縮菌液(培養液)の配合(添加)濃度と、発酵乳の製造における発酵の促進作用の関係を示すグラフ。

発酵乳基材への凍結菌液(培養液そのまま)の配合(添加)濃度や凍結濃縮菌液の配合濃度と、発酵乳の冷蔵保存中における乳酸濃度の関係を示すグラフ。

発酵乳基材へ配合(添加)するプロピオン酸菌の種類(菌株)、乳酸菌スターターの種類(菌株)と、発酵乳の製造における発酵の促進作用の関係を示すグラフ。

発酵乳基材へ配合(添加)するプロピオン酸菌の種類(菌株)、乳酸菌スターターの種類(菌株)と、発酵乳におけるpHの低下の抑制作用の関係(発酵直後から7日間の冷蔵保存品のpHの低下の程度)を示すグラフ。

発酵乳基材へ配合(添加)するプロピオン酸菌の種類(菌株)、乳酸菌スターターの種類(菌株)と、発酵乳におけるpHの低下の抑制作用の関係(発酵直後から14日間の冷蔵保存品のpHの低下の程度)を示すグラフ。

本発明の一実施形態は、乳酸菌スターターを原料乳に配合する直前や直後、あるいは乳酸菌スターターを原料乳に配合するのと同時に、所定量のプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合する発酵乳の製造方法、発酵乳の製造における発酵時間の短縮方法、及び発酵乳における酸味の上昇の抑制方法である。

ここで、発酵乳における酸味の上昇の抑制方法は、例えば、発酵乳の冷蔵輸送中や冷蔵保存中における酸味の上昇を抑制する方法である。

本発明においては、所定量のプロピオン酸菌の生菌体と原料乳または発酵乳基材とをとりあわせる処理、原料乳または発酵乳基材に所定量のプロピオン酸菌の生菌体をつけ加える処理、所定量のプロピオン酸菌の生菌体と原料乳または発酵乳基材とを混ぜ合わせる処理などを総称して所定量のプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合すると表現している。本明細書において用いられる「配合」、「配合(添加)」、「添加」、「添加(配合)」、「添加(混合)」、「混合」という表現の処理は、いずれも前記で定義した「配合」という概念に含まれる処理である。

本発明者らは、発酵乳の製造条件などについて、鋭意検討したところ、乳酸菌スターターを原料乳に配合する直前や直後、あるいは乳酸菌スターターを原料乳に配合するのと同時に、所定量のプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合することにより、(1)発酵乳の製造(時)における発酵時間の短縮(発酵の促進)、及び(2)発酵乳(の冷蔵輸送中や冷蔵保存中)における酸味の上昇の抑制について、同時に達成することが可能であることを見出して、本発明を完成させた。

本発明によれば、発酵時間を短縮できるので、製造工程を効果的に合理化することが可能である。そして、本発明によれば、製造設備を増強などせずに、製造能力の向上が可能であり、製造費の効果的な低減が可能であり、発酵乳を大規模に製造する商業的な展開において大きな利益の提供が可能である。

本発明者らは、種々のプロピオン酸菌の生菌体を所定の量で、例えば、所定の濃度で、原料乳または発酵乳基材に配合して発酵させたところ、発酵時間が短縮され、明確な発酵促進作用を確認できた。すなわち、原料乳(ヨーグルトミックス)を殺菌してから 、一般的な乳酸菌スターターを配合(添加)して、発酵乳基材(ヨーグルトベース)を調製したところに、種々のプロピオン酸菌の生菌体を所定の濃度で配合(添加)して発酵させることにより、発酵時間が短縮され、明確な発酵促進作用を確認できた。

なお、本発明において、原料乳とは、発酵乳を製造するために調製した、脂質、タンパク質、糖質、ミネラル、ビタミンなどの栄養成分を含む、液状やゲル状などの流体を意味している。このとき、前記の流体を殺菌する前のものであっても、前記の流体を殺菌した後のものであっても良いが、発酵乳を商業規模で衛生的に製造するなどの観点から、好ましくは、前記の流体を殺菌した後のものである。

また、本発明において、発酵乳基材とは、前記の原料乳に、乳酸菌スターターを配合(添加)した流体を意味している。

上述した本発明の実施形態において、所定量のプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合する一実施形態は、プロピオン酸菌の培養液を0.5質量部(質量%)未満とし、プロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合するものである。このようにする発酵乳の製造方法、発酵乳の製造における発酵時間の短縮方法(発酵の促進方法)、及び発酵乳における酸味の上昇の抑制方法の実施形態である。

上述した本発明の実施形態において、所定量のプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合する他の実施形態は、プロピオン酸菌の培養液(の生菌体)を10倍以上に濃縮して、プロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合するものである。このようにする発酵乳の製造方法、発酵乳の製造における発酵時間の短縮方法(発酵の促進方法)、及び発酵乳における酸味の上昇の抑制方法の実施形態である。

上述した本発明の実施形態において、所定量のプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合する更に他の実施形態は、プロピオン酸菌の生菌体を6×106 cfu/mL以上で、プロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合するものである。このようにする発酵乳の製造方法、発酵乳の製造における発酵時間の短縮方法(発酵の促進方法)、及び発酵乳における酸味の上昇の抑制方法の実施形態である。

プロピオン酸菌の培養液を0.5質量部(質量%)未満としプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合する、プロピオン酸菌の培養液(の生菌体)を10倍以上に濃縮してプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合する、プロピオン酸菌の生菌体を6×106 cfu/mL以上でプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合するという上述した実施形態は、それぞれ単独で実施する形態にすることができる。あるいは、これらの中の任意の複数が組み合わされた実施形態にすることもできる。

いずれの実施形態でも、発酵乳を製造し、発酵乳の製造における発酵時間の短縮(発酵の促進)を実現し、発酵乳における酸味の上昇(例えば、発酵乳の冷蔵輸送中や冷蔵保存中における酸味の上昇)を抑制することができる。

こうして、(1)発酵乳の製造(時)における発酵時間の短縮(発酵の促進)、及び(2)発酵乳(の冷蔵輸送中や冷蔵保存中)における酸味の上昇の抑制について、簡便な方法で同時に達成できるものである。

また、上述した実施形態で製造される発酵乳は風味の改良されたものとなるので、これらの実施形態は、発酵乳における風味の改良方法の実施形態でもある。すなわち、上述した各実施形態により、(1)発酵乳の製造(時)における発酵時間の短縮(発酵の促進)、(2)発酵乳(の冷蔵輸送中や冷蔵保存中)における酸味の上昇の抑制、及び(3)発酵乳における風味の改良について、簡便な方法で同時に達成することができる。

本発明者らは、上述した本発明の各実施形態において、発酵乳の風味を確認したところ、発酵乳における風味が改良され、風味が良好な発酵乳を得ることが可能であった。すなわち、プロピオン酸菌の培養液を発酵乳基材に添加しない、あるいは、プロピオン酸菌の培養液(の生菌体)を10倍に満たない範囲に濃縮して発酵乳基材に添加した場合、発酵乳における風味が良好であるとは認められなかった。この理由として、プロピオン酸菌の培養液に由来する風味が発酵乳における風味に影響を与えるものと考えられた。例えば、プロピオン酸菌の培養液(の生菌体)を5倍に濃縮して、発酵乳基材に添加した場合、発酵乳における風味が良好とは認められなかった。

本発明者らが検討したところ、プロピオン酸菌の培養液(の生菌体)を10倍以上に濃縮して、原料乳又は発酵乳基材に配合した場合、発酵促進作用(発酵時間の短縮作用)を発揮させることができた。

また、プロピオン酸菌の生菌体を6×106 cfu/mL以上で原料乳又は発酵乳基材に配合した場合も、発酵促進作用(発酵時間の短縮作用)を発揮させることができた。

そして、プロピオン酸菌の培養液(の生菌体)を10倍以上に濃縮し、なおかつ、プロピオン酸菌の生菌体を6×106 cfu/mL以上で原料乳又は発酵乳基材に配合した場合も、発酵促進作用(発酵時間の短縮作用)を発揮させることができた。

本発明者らは、上述した本発明の各実施形態において、発酵乳の冷蔵保存中における酸味の上昇を確認したところ、プロピオン酸菌の培養液を0.5質量部(質量%)未満としプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合する、プロピオン酸菌の培養液(の生菌体)を10倍以上に濃縮してプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合する、プロピオン酸菌の生菌体を6×106 cfu/mL以上でプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合するといういずれの実施形態でも、プロピオン酸菌の生菌体を発酵乳基材に添加しない、従来の発酵乳基材を用いた場合に比べて、発酵乳における酸味の上昇が抑制され、風味が経時的に変化しにくい発酵乳を得ることが可能であった。

すなわち、プロピオン酸菌の培養液(の生菌体)を発酵乳基材に添加しない、プロピオン酸菌の培養液(の生菌体)を10倍未満に濃縮して発酵乳基材に添加する、あるいは、プロピオン酸菌の生菌体を6×106 cfu/mLに満たない範囲で発酵乳基材に添加する場合、発酵乳における酸味の上昇が十分に抑制されているとは認められなかった。例えば、プロピオン酸菌の培養液(の生菌体)を発酵乳基材に添加しない場合、発酵乳の冷蔵輸送中や冷蔵保存中における酸味の上昇が十分に抑制されなかった。

一方、所定量のプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合した場合、例えば、プロピオン酸菌の培養液を0.5質量部(質量%)未満として、あるいは、プロピオン酸菌の培養液(の生菌体)を10倍以上に濃縮して、あるいは、プロピオン酸菌の生菌体を6×106 cfu/mL以上で、プロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合する、あるいは、これらの配合形態の中の任意の複数を組み合わせた形態にした場合の発酵乳製造では、発酵乳製造における発酵時間の短縮(発酵の促進)、発酵乳における酸味上昇(発酵乳の冷蔵輸送中や冷蔵保存中における酸味上昇)の抑制を実現できた。また、風味の改良された発酵乳を製造することができた。

本発明において、所定量のプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合する実施形態として、プロピオン酸菌の培養液を0.5質量部(質量%)未満としてプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合する場合、プロピオン酸菌の培養液(の生菌体)を原料乳または発酵基材に配合(添加)する濃度は、発酵乳の発酵の促進、発酵乳の風味の改良、発酵乳の酸味の上昇の抑制の観点から、0.4質量部(質量%)以下が好ましく、0.3質量部(質量%)以下がより好ましく、0.25質量部(質量%)以下がより好ましく、0.2質量部(質量%)以下がより好ましく、0.15質量部(質量%)以下がより好ましく、0.1質量部(質量%)以下がより好ましく、0.05質量部(質量%)以下がより好ましく、0.03質量部(質量%)以下がさらに好ましい。このとき、プロピオン酸菌の培養液を原料乳または発酵基材に配合する濃度は、0.4質量部(質量%)以下であれば、特に制限されないが、プロピオン酸菌の培養液を濃縮する手間や時間を抑制などする観点から、0.0001質量部(質量%)以上が好ましく、0.0005質量部(質量%)以上がより好ましく、0.0008質量部(質量%)以上がより好ましく、0.001質量部(質量%)以上がさらに好ましい。

本発明において、所定量のプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合する実施形態として、プロピオン酸菌の培養液を10倍以上に濃縮して原料乳又は発酵乳基材に配合する、すなわち、プロピオン酸菌の培養液の生菌体を10倍以上に濃縮して原料乳又は発酵乳基材に配合する場合、プロピオン酸菌の培養液(の生菌体)を濃縮する倍率は、発酵乳の発酵の促進、発酵乳の風味の改良、発酵乳の酸味の上昇の抑制の観点から、10倍以上が好ましく、12倍以上がより好ましく、15倍以上がより好ましく、17倍以上がより好ましく、20倍以上がさらに好ましい。このとき、プロピオン酸菌の培養液 を濃縮する倍率は、10倍以上であれば、特に制限されないが、プロピオン酸菌の培養液を濃縮する手間や時間を抑制などする観点から、50倍以下が好ましく、40倍以下がより好ましく、30倍以下がより好ましく、25倍以下がさらに好ましい。

本発明において、所定量のプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合する実施形態として、プロピオン酸菌の生菌体を6×106 cfu/mL以上でプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合する場合、プロピオン酸菌の生菌体を配合する濃度は、発酵乳の発酵の促進、発酵乳の風味の改良、発酵乳の酸味の上昇の抑制の観点から、6 ×10 6 cfu/mL以上が好ましく、1 ×10 7 cfu/mL以上がより好ましく、3 ×10 7 cfu/mL以上がより好ましく、6 ×10 7 cfu/mL以上がより好ましく、1 × 10 8 cfu/mL以上がより好ましく、3 × 10 8 cfu/mL以上がさらに好ましい。このとき、プロピオン酸菌の生菌体を配合する濃度は、6 × 10 6 cfu/mL以上であれば、特に制限されないが、プロピオン酸菌の生菌体を使用する数量や費用を抑制などする観点から、3 ×10 9 cfu/mL以下が好ましく、1 × 10 9 cfu/mL以下がより好ましく、6×108 cfu/mL以下がさらに好ましい。

本発明の実施形態において、発酵時に酸度が0.7%(発酵の終点の目安)に到達する時間として、プロピオン酸菌の培養液(の生菌体)を含まない従来品と比べて、10分間以上が短縮されることが好ましく、20分間以上が短縮されることがより好ましく、30分間以上が短縮されることがより好ましく、40分間以上が短縮されることがより好ましく、50分間以上が短縮されることがより好ましく、60分間以上が短縮されることがさらに好ましい。

本発明者らは、種々のプロピオン酸菌を用いて、本発明の効果や作用を検討したところ、何れのプロピオン酸菌であっても、プロピオン酸菌の生菌体を所定の濃度で、原料乳または発酵乳基材に配合することにより、上述した発酵促進作用、発酵乳における風味の改良作用、発酵乳における酸味の上昇の抑制作用が発揮された。

したがって、プロピオン酸菌の種類を限定することなく、全部のプロピオン酸菌について、所定量のプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合することにより、発酵促進作用、発酵乳における風味の改良作用、発酵乳における酸味の上昇の抑制作用が発揮されるものと考えられた。

本発明者らは、種々の乳酸菌スターターを用いて、本発明の効果や作用を検討したところ、何れの乳酸菌スターターであっても、所定量のプロピオン酸菌の生菌体を、原料乳または発酵乳基材に配合することにより、上述した発酵促進作用、発酵乳における風味の改良作用、発酵乳における酸味の上昇の抑制作用が発揮された。

したがって、乳酸菌スターターの種類を限定することなく、全部の乳酸菌スターターについて、所定量のプロピオン酸菌の生菌体を原料乳または発酵乳基材に配合することにより、発酵促進作用、発酵乳における風味の改良作用、発酵乳における酸味の上昇の抑制作用が発揮されるものと考えられた。

以下、いくつかの実施例を用いて、本発明をより詳しく説明する。なお、本発明は、上述した実施形態及び、以下の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々に変更可能である。

発酵乳基材へ配合(添加)するプロピオン酸菌の種類(菌株)と、発酵乳の製造における発酵の促進作用の関係

プロピオン酸菌の生菌体を含む培養液を、次のようにして調製した。

超純(Milli Q): 2350g(94質量部)に、脱脂粉乳((株)明治製): 150g(6質量部)を配合(混合)し、タンパク質分解酵素(アマノA、天野エンザイム社製):2.5g(0.1質量部)を配合(混合)してから、NaOH水溶液(4N)でpHを7.0程度に調整した。そして、この溶液のpHを7.0程度に調整しながら、加温保持(47℃、2時間)してから、この溶液のpHを調整せずに、加温保持(47℃、1時間)した。そして、この溶液に、乳糖(レプリノ・フーズ社製):50g(2質量部)、酵母エキス(Yeast extract、アサヒビール社製):12.5g(0.5質量部)を配合(混合)してから、オートクレーブで滅菌(121℃、5分間)した後に、氷冷(5℃以下)して、培地を調製した。

前記の培地に、プロピオン酸菌MEP1404201株、MEP1404202株、ET-3、MEP1404203株、MEP1404204株、MEP1404205株、MEP1404206株、MEP1404207株、MEP1404208株を、それぞれ1質量部ずつで添加(混合)してから、静置培養(30℃、3〜4日間)して、各種のプロピオン酸菌の生菌体を含む培養液を調製した。

そして、これら培養液を遠心分離し、各種のプロピオン酸菌の生菌体を20倍に濃縮してから、液体窒素中で凍結(−80℃)して、各種のプロピオン酸菌の生菌体を含む凍結濃縮液(凍結濃縮菌液)を調製した。

なお、プロピオン酸菌MEP1404201株、MEP1404202株、ET-3、MEP1404203株、MEP1404204株、MEP1404205株、MEP1404206株、MEP1404207株、MEP1404208株の特徴を表1に示した。

また、プロピオン酸菌ET-3(Propionibacterium freudenreichii ET-3)は、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託されている。以下に、寄託を特定する内容を記載する。

(1)寄託機関名:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター (2)連絡先:〒305−8566 茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6 (3)受託番号:FERM BP-8115 (4)識別のための表示: ET-3 (5)原寄託日:平成13年8月9日 (6)ブタペスト条約に基づく寄託への移管日:平成14年7月11日

市販の乳((株)明治製):77.6質量部、市販の脱脂粉乳((株)明治製): 2.43質量部、水: 17.9質量部を混合してから、95℃、5分間で加熱(殺菌)し、原料乳を調製した。

そして、この原料乳に、乳酸菌スターター(市販の明治ブルガリアヨーグルトLB81(商品名)から分離した。):2.0質量部、上記のように準備した9種類のプロピオン酸菌のうち、MEP1404202株、ET-3、MEP1404203株、MEP1404204株、MEP1404205株、MEP1404206株、MEP1404208株の7種類の凍結濃縮菌液:0.06質量部を添加(配合)し、各種のプロピオン酸菌を含む発酵乳基材を調製した。

これら発酵乳基材を発酵(43℃)させて、その乳酸酸度の経時変化を図1に示した。なお、比較対照(Control)として、プロピオン酸菌を含まない発酵乳基材を発酵(43℃)させて、その乳酸酸度の経時変化を図1に示した。

図1から、上記のように準備した7種類のプロピオン酸菌を含む発酵乳基材では、何れも発酵が促進されており、酸度が0.7%(発酵の終点の目安)に到達する時間として、比較対照(プロピオン酸菌を含まない発酵乳基材)と比べて、30分間以上が短縮されていた。

つまり、上記のように準備した7種類のプロピオン酸菌を含む発酵乳基材では、発酵の促進作用が確認された。

発酵乳基材へのプロピオン酸菌(生菌体)の初期の配合(添加)濃度と、発酵乳の製造における発酵の促進作用の関係

実施例1と同様にして調製した培地に、プロピオン酸菌ET-3を1質量部で添加(混合)してから、静置培養(30℃、3日間)して、プロピオン酸菌ET-3の生菌体を含む培養液を調製した。

そして、この培養液を遠心分離し、プロピオン酸菌ET-3の生菌体を20倍に濃縮してから、液体窒素中で凍結(−80℃)して、プロピオン酸菌ET-3の生菌体を含む凍結濃縮液(凍結濃縮菌液)を調製した。

市販の牛乳((株)明治製):77.6質量部、市販の脱脂粉乳((株)明治製): 2.43質量部、水:17.9質量部を混合してから、95℃、5分間で加熱(殺菌)し、原料乳を調製した。

そして、この原料乳に、乳酸菌スターター(市販の明治ブルガリアヨーグルトLB81(商品名)から分離した。): 2.0質量部と、プロピオン酸菌ET-3の凍結濃縮菌液とを混合して、プロピオン酸菌を含む発酵乳基材を調製した。プロピオン酸菌ET-3の凍結濃縮菌液は、それぞれ、0.00125質量部、0.005質量部、0.0125質量部、0.05質量部、0.125質量部の割合で混合した、5種類とした。

なお、この凍結濃縮菌液におけるプロピオン酸菌の生菌体の濃度が 2.4 × 10 11 cfu/mLであることから、これら発酵乳基材におけるプロピオン酸菌の生菌体の濃度は、前記の混合割合に応じて、それぞれ、3 ×10 6、6×10 6、3 ×10 7、6 ×107、3 × 10 8 cfu/mLとなる。

これら発酵乳基材を発酵(43℃)させて、その乳酸酸度の経時変化を図2に示した。なお、比較対照(Control)として、プロピオン酸菌を含まない発酵乳基材を発酵(43℃)させて、その乳酸酸度の経時変化を図2に示した。

図2から、プロピオン酸菌を含む発酵乳基材では、凍結濃縮菌液(20倍)の配合濃度: 0.005質量部(質量%)以上(プロピオン酸菌(生菌体)の初期の配合濃度:6×10 6 cfu/mL以上)で、発酵が促進されており、発酵の促進作用が確認された。

発酵乳基材への凍結濃縮菌液(培養液)の配合(添加)濃度と、発酵乳の製造における発酵の促進作用の関係

実施例1と同様にして調製した培地に、プロピオン酸菌ET-3を1質量部で添加(混合)してから、静置培養(30℃、3日間)して、プロピオン酸菌ET-3の生菌体を含む培養液を調製した。

一方、この培養液を遠心分離し、プロピオン酸菌ET-3の生菌体を5倍、10倍、20倍に濃縮してから、液体窒素中で凍結(−80℃)して、プロピオン酸菌ET-3の生菌体を含む凍結濃縮液(凍結濃縮菌液(5倍、10倍、20倍))を調製した。

市販の牛乳((株)明治製):77.6質量部、脱脂粉乳((株)明治製):2.43質量部、水: 17.9質量部を混合してから、95℃、5分間で加熱(殺菌)し、原料乳を調製した。

そして、この原料乳に、乳酸菌スターター(市販の明治ブルガリアヨーグルトLB81(商品名)から分離した。): 2.0質量部と、プロピオン酸菌ET-3の凍結菌液とを混合して、プロピオン酸菌を含む発酵乳基材を調製した。プロピオン酸菌ET-3の凍結菌液は、プロピオン酸菌ET-3の凍結菌液(未濃縮、1倍):2.5質量部、凍結濃縮菌液(5倍):0.5質量部、凍結濃縮菌液(10倍): 0.25質量部、凍結濃縮菌液(20倍):0.125質量部のように調整した、4種類とした。

なお、前記の培養液におけるプロピオン酸菌の生菌体の濃度が1.0×1010 cfu/mLであることから、これら発酵乳基材におけるプロピオン酸菌の生菌体の濃度は、何れも2.5×108 cfu/mLとなる。

これら発酵乳基材を発酵(43℃)させて、その乳酸酸度の経時変化を図3に示した。なお、比較対照(Control)として、プロピオン酸菌を含まない発酵乳基材を発酵(43℃)させて、その乳酸酸度の経時変化を図3に示した。

図3から、プロピオン酸菌を含む発酵乳基材では、凍結濃縮菌液(培養液)の配合(添加)濃度とは無関係に発酵が促進されており、プロピオン酸菌(生菌体)の初期の配合(添加)濃度が同等であれば、発酵促進作用が確認された。

このことから、プロピオン酸菌の培養液や凍結濃縮菌液に含まれる化学物質や栄養成分などが発酵の促進作用に影響しているのではなく、プロピオン酸菌(生菌体)が発酵の促進作用に影響していると考えられた。

ここで、発酵乳基材へプロピオン酸菌の凍結菌液(培養液そのまま)を配合した場合や、プロピオン酸菌の濃縮率が低い凍結濃縮菌液を配合した場合に、プロピオン酸菌の培養液の風味が発酵乳の風味へ影響するなどして、発酵乳の風味が悪化する可能性が考えられた。

そこで、発酵乳基材への凍結菌液(培養液そのまま)の配合(添加)濃度や凍結濃縮菌液の配合濃度と、発酵乳における風味の関係を検討した。

具体的には、各種の発酵乳について、「 酸味の程度(1:強い、2:やや強い、3:普通、4:やや弱い、5:弱い)」、「ヨーグルトらしい風味(1:好ましくない、2:やや好ましくない、3:普通、4:やや好ましい、5:好ましい」、「全体的な美味しさ(1:美味しくない、2:やや美味しくない、3:普通、4:やや美味しい、5:美味しい)」という3項目及び、「総合評価(前記の3項目の平均値)」を指標(評価基準)として、専門パネルの6名で官能評価(試験)を実施し、結果を表2に示した。

表2から、発酵乳基材へ凍結菌液(未濃縮、1倍)を2.5質量部(質量%)で配合して製造した発酵乳と、発酵乳基材へ凍結濃縮菌液(5倍)を0.5質量部(質量%)で配合して製造した発酵乳では、比較対照(プロピオン酸菌を含まない発酵乳)と比べて、「酸味の程度」は弱まり、「ヨーグルトらしい風味」は好ましくなくなり、「全体的な美味しさ」は美味しくなくなり、「総合評価」は低い数値となった。

一方、発酵乳基材へ凍結濃縮菌液(10倍)を0.25質量部(質量%)で配合して製造した発酵乳と、発酵乳基材へ凍結濃縮菌液(20倍)を0.125質量部(質量%)で配合して製造した発酵乳では、比較対照(プロピオン酸菌を含まない発酵乳)と比べて、「酸味の程度」は弱まり、「ヨーグルトらしい風味」は好ましくなり、「全体的な美味しさ」は美味しくなり、「総合評価」は高い数値となった。

このとき、発酵乳基材へ凍結濃縮菌液(10倍)を0.25質量部(質量%)で配合して製造した発酵乳と、発酵乳基材へ凍結濃縮菌液(20倍)を0.125質量部(質量%)で配合して製造した発酵乳では、風味の改良において重要となる「まろやかさ」や「コク味」が向上していた。

つまり、プロピオン酸菌を含む発酵乳では、凍結濃縮菌液の配合濃度:0.25質量部(質量%)以下(プロピオン酸菌(生菌体)の濃縮率:10倍以上)で、風味や食感が改良されており、風味の改良作用と食感の改良作用が確認された。

図3に示したように、プロピオン酸菌を含む発酵乳基材では、凍結濃縮菌液(培養液)の配合(添加)濃度とは無関係に発酵が促進され、プロピオン酸菌(生菌体)の初期の配合(添加)濃度が同等であれば、発酵促進作用が確認された。このとき、発酵乳基材へプロピオン酸菌を配合した場合に、発酵が促進されて、発酵乳の乳酸濃度が過剰に上昇する(酸味が強くなりすぎる)可能性が考えられた。

そこで、発酵乳基材への凍結菌液(培養液そのまま)の配合(添加)濃度や凍結濃縮菌液の配合濃度と、発酵乳の冷蔵保存中における乳酸濃度の関係を検討した。

具体的には、上記のように調製した各種の発酵乳について、発酵直後の新鮮物の乳酸酸度と、発酵直後から14日間の冷蔵(5℃)保存品の乳酸濃度を測定し、図4に示した。

図4から、発酵乳基材へプロピオン酸菌の凍結菌液や凍結濃縮菌液を配合して製造した発酵乳では、比較対照(プロピオン酸菌を含まない発酵乳)と比べて、発酵直後の新鮮物の乳酸濃度は同等であったが、発酵直後から14日間の冷蔵保存品の乳酸濃度は異なることが確認された。

実際には、発酵乳基材へ凍結菌液(1倍)を2.5質量部(質量%)で配合して製造した発酵乳と、発酵乳基材へ凍結濃縮菌液(5倍)を0.5質量部(質量%)で配合して製造した発酵乳では 、比較対照(プロピオン酸菌を含まない発酵乳)と比べて、発酵直後から14日間の冷蔵保存品の乳酸濃度が同等以上に上昇していた。

一方、発酵乳基材へ凍結濃縮菌液(10倍)を0.25質量部(質量%)で配合して製造した発酵乳と、発酵乳基材へ凍結濃縮菌液(20倍)を0.125質量部(質量%)で配合して製造した発酵乳では、比較対照(プロピオン酸菌を含まない発酵乳)と比べて、発酵直後から14日間の冷蔵保存品の乳酸濃度が低下していた。

つまり、プロピオン酸菌を含む発酵乳では、凍結濃縮菌液の配合濃度:0.25質量部(質量%)以下(プロピオン酸菌(生菌体)の濃縮率:10倍以上)で、乳酸濃度が低下しており、乳酸濃度の上昇の抑制作用(酸味の低減作用)が確認された。

このとき、プロピオン酸菌を含む発酵乳基材では、プロピオン酸菌(生菌体)の初期の配合(添加)濃度とは無関係に発酵が促進されており、凍結濃縮菌液(培養液)の配合(添加)濃度が異なれば、乳酸濃度の低下作用(酸味の低減作用)が確認された。

このことから、プロピオン酸菌(生菌体)が乳酸濃度の低下作用や酸味の低減作用に影響しているのではなく、プロピオン酸菌の培養液や凍結濃縮菌液に含まれる化学物質や栄養成分などが乳酸濃度の上昇の抑制作用(酸味の低減作用)に影響していると考えられた。

発酵乳基材へ配合(添加)するプロピオン酸菌の種類(菌株)、乳酸菌スターターの種類(菌株)と、発酵乳の製造における発酵の促進作用の関係

市販の牛乳((株)明治製):77.6質量部、脱脂粉乳((株)明治製):2.43質量部、水:17.9質量部を混合してから、95℃、5分間で加熱(殺菌)し、原料乳を調製した。

この原料乳に、乳酸菌スターター(L. bulgaricus NCIMB 702074株とS. thermophilus NCIMB 8510T株の混合スターター、寄託機関の管理する一般的な菌株から任意に選定して入手した。):2.0質量部、実施例1の表1に示した9種類のプロピオン酸菌のうち、7種のプロピオン酸菌の凍結濃縮菌液:0.06質量部をそれぞれ混合して、プロピオン酸菌を含む発酵乳基材を調製した。

この実施例で用いた7種のプロピオン酸菌の凍結濃縮菌液は、実施例1で説明した培地を調製し、プロピオン酸菌MEP1404202株、ET-3、MEP1404203株、MEP1404204株、MEP1404205株、MEP1404206株、MEP1404208株を、それぞれ1質量部ずつで添加(混合)してから、静置培養(30℃、3〜4日間)して、各種のプロピオン酸菌の生菌体を含む培養液を調製し、これら培養液を遠心分離し、各種のプロピオン酸菌の生菌体を20倍に濃縮してから、液体窒素中で凍結(−80℃)して調製した、各種のプロピオン酸菌の生菌体を含む凍結濃縮液(凍結濃縮菌液)である。

これら発酵乳基材を発酵(43℃)させて、その乳酸酸度の経時変化を図5に示した。なお、比較対照(Control)として、プロピオン酸菌を含まない発酵乳基材を発酵(43℃)させて、その乳酸酸度の経時変化を図5に示した。

図5から、各種のプロピオン酸菌を含む発酵乳基材では、何れも発酵が促進されており、酸度が0.7%(発酵の終点の目安)に到達する時間として、比較対照(プロピオン酸菌を含まない発酵乳基材)と比べて、約60分間が短縮されていた。

このことから、乳酸菌スターターが市販の明治ブルガリアヨーグルトLB81(商品名)から分離した混合スターターに限定されず、一般的な乳酸菌の組合せであるL. bulgaricus NCIMB 702074株とS. thermophilus NCIMB 8510T株の混合スターターでも、各種のプロピオン酸菌を含む発酵乳基材では、発酵の促進作用が確認された。

よって、乳酸菌スターターの種類(菌株)に限定されず、実施例1の表1に示した9種の菌株の中の7種のプロピオン酸菌のように、各種のプロピオン酸菌を含む発酵乳基材において、発酵が促進されると考えられた。

次に、発酵乳基材へ配合(添加)するプロピオン酸菌の種類(菌株)、乳酸菌スターターの種類(菌株)と、発酵乳におけるpHの低下の抑制作用の関係を検討した。

市販の牛乳((株)明治製):77.6質量部、脱脂粉乳((株)明治製):2.43質量部、水:17.9質量部を混合してから、95℃、5分間で加熱(殺菌)し、原料乳を調製した。

この原料乳に、乳酸菌スターター(L. bulgaricus NCIMB 702074株とS. thermophilus NCIMB 8510T株の混合スターター、寄託機関の管理する一般的な菌株から任意に選定して入手した。):2.0質量部、実施例1の表1に示した9種のプロピオン酸菌の凍結濃縮菌液:0.06質量部をそれぞれ混合して、プロピオン酸菌を含む発酵乳基材を調製した。

この実施例で用いた9種のプロピオン酸菌の凍結濃縮菌液は、実施例1で説明した培地を調製し、プロピオン酸菌MEP1404201株、MEP1404202株、ET-3、MEP1404203株、MEP1404204株、MEP1404205株、MEP1404206株、MEP1404207株、MEP1404208株を、それぞれ1質量部ずつで添加(混合)してから、静置培養(30℃、3〜4日間)して、各種のプロピオン酸菌の生菌体を含む培養液を調製し、これら培養液を遠心分離し、各種のプロピオン酸菌の生菌体を20倍に濃縮してから、液体窒素中で凍結(−80℃)して調製した、各種のプロピオン酸菌の生菌体を含む凍結濃縮液(凍結濃縮菌液)である。

これら発酵乳基材を発酵(43℃)させ、各種の発酵乳について、発酵直後の新鮮物のpH、発酵直後から7日間の冷蔵(5℃)保存品のpH、発酵直後から14日間の冷蔵(5℃)保存品のpHを測定し、「(発酵直後の新鮮物のpH)−(発酵直後から7日間の冷蔵保存品のpH)=(発酵直後から7日間の冷蔵保存品のpHの低下の程度)」と「(発酵直後の新鮮物のpH)−(発酵直後から14日間の冷蔵保存品のpH)=(発酵直後から14日間の冷蔵保存品のpHの低下の程度)」を計算して、図6と図7に示した。

なお、比較対照(Control)として、プロピオン酸菌を含まない発酵乳基材を発酵(43℃)させて、同様の計算を行って図6、図7に示した。

図6と図7から、発酵乳基材へ各種のプロピオン酸菌の凍結濃縮菌液を配合して製造した発酵乳では、比較対照(プロピオン酸菌を含まない発酵乳)と比べて、発酵直後から7日間の冷蔵保存品のpHの低下の程度と、発酵直後から14日間の冷蔵保存品のpHの低下の程度の何れも同程度か同程度以上で抑制されており、pHの低下の抑制作用(酸味の低減作用)が確認された。

このように、プロピオン酸菌の種類(菌株)に限定されず、各種のプロピオン酸菌を含む発酵乳基材において、pHの低下の抑制作用(酸味の低減作用)が確認された。

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