乳酸菌又はその処理物を含む脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤

申请号 JP2015017278 申请日 2015-01-30 公开(公告)号 JP2015108010A 公开(公告)日 2015-06-11
申请人 カルピス株式会社; 发明人 仲村 太志; 芦田 延久; 石田 優; 藤原 茂;
摘要 【課題】脂質代謝及び糖代謝の両方を改善する 微 生物 のの提供。 【解決手段】ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)α及びペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)γに対するデュアルアゴニスト活性をもつ、ラクトバチルス属及びビフィドバクテリウム属から選択される菌体、その菌体処理物又はそれらの混合物を有効成分として含む、脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤、並びに、該改善剤を含む飲食品及び医薬組成物。 【選択図】図2
权利要求

菌体又は菌体の処理物のペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)α活性化能及びペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)γ活性化能を測定することを特徴とする菌体又は菌体処理物の選択方法。菌体又は菌体の処理物のペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)α活性化能及びペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)γ活性化能を測定し、PPARα活性化能及びPPARγ活性化能を有する菌体又は菌体処理物を選択することを特徴とする菌体又は菌体処理物の選択方法。菌体が乳酸産生菌であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の選択方法。菌体が、ラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する菌体及びビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する菌体からなる群より選択される少なくとも1種の菌体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の選択方法。菌体又は菌体の処理物が、脂質代謝及び/又は糖代謝改善用組成物の製造に使用するための菌体又は菌体の処理物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の選択方法。菌体又は菌体の処理物が、脂質代謝予防及び/又は糖代謝予防用組成物の製造に使用するための菌体又は菌体の処理物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の選択方法。菌体又は菌体の処理物が、皮下脂肪低減及び/又は内臓脂肪低減用組成物の製造に使用するための菌体又は菌体の処理物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の選択方法。菌体又は菌体の処理物が、皮下脂肪蓄積予防及び/又は内臓脂肪蓄積予防用組成物の製造に使用するための菌体又は菌体の処理物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の選択方法。

说明书全文

本発明は、メタボリックシンドロームに深く関与するペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR(Peroxisome Proliferator Activated Receptor))α及びγを活性化する能が高いことを特徴とするラクトバチルス属及びビフィドバクテリウム属の菌体又はその処理物を含む脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤に関する。本発明はまた、そのような脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤を含む、機能性食品、或いは、脂質代謝関連及び糖代謝関連の疾患又は障害を治療又は予防するための医薬組成物に関する。

近年、メタボリックシンドロームの該当者及び予備軍が増加している。メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満に高脂血症、高血糖、高血圧等を合わせ持つ病態で、動脈硬化性疾患の発症リスクが高い。メタボリックシンドロームを改善する上で、脂質・糖代謝に関与するPPARが注目されている。PPARは核内転写制御因子で、主に肝臓や小腸で高発現するPPARαは脂肪酸β酸化の促進により脂肪燃焼作用を促し、HDLコレステロールの産生促進作用も示す。主に脂肪組織で高発現するPPARγは、脂肪組織における脂肪細胞分化を調節し、脂肪細胞からの炎症因子TNF-α分泌を抑制し、アディポネクチンの分泌を促進することでインスリン抵抗性を改善する。

PPARを活性化する医薬品として、PPARαのリガンド剤のフィブレート製剤、PPARγのリガンド剤のチアゾリジン誘導体が知られているが、長期間服用すると副作用が懸念される。

一方、乳酸菌又はビフィズス菌の菌体やその培養物(培養液、培養上清及びそれらの濃縮物など)が脂質代謝の改善、例えば血中コレステロールの低減、体脂肪又は内臓脂肪の低下などに有効であることが報告されている(例えば、特許文献1〜4)。しかし、これらはPPARを活性化するものではなく、効果も満足できるものではなかった。また、乳酸菌の有機溶媒抽出物がPPARを活性化するという報告があるが(特許文献5)、これはPPARαの活性を示すのみで、その効果も十分なものではなかった。さらに、ラクトバチルス・ブレビスSBC8803株をアルコール性肝疾患モデルマウスに投与し肝臓のPPARα活性を調べたが変化はなかったと報告されており(非特許文献1)、高脂肪食を与えた脂肪肝モデルに複数の乳酸菌の混合物を投与したところ、高脂肪食によって発現が低下したPPARα活性が回復したとの報告があるが(非特許文献2)、PPARγに関する記載はない。メタボリックシンドロームの治療・予防効率を高めるには、PPARα及びPPARγの両方を活性化する素材(デュアルアゴニスト)が期待される。

特開2008-24680号公報

特許第4336992号

特開2003-306436号公報

特許第3777296号

特開2007-284360号公報

Int. J. Food Microbiol. 128(2):371-377, 2008

J. Nutr. 139(5):905-911, 2009

本発明の目的は、PPARα及びPPARγの両方のアゴニスト活性化作用が高く、脂質代謝及び/又は糖代謝の両方を改善するための有効で安全な手段を提供することである。

本発明の別の目的は、脂質代謝異常及び/又は糖代謝異常に関連する疾患又は障害を治療又は予防するための手段を提供することである。

本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、偶然にもPPARα及びPPARγの両方を強く活性化する複数の乳酸菌株又はビフィズス菌株を見出した。特に、活性の高い菌株としてラクトバチルス・アミロボラスCP1563株を見出した。

従って、本発明は以下の特徴を包含する。

(1)ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)α及びペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)γに対するデュアルアゴニスト活性をもつ、菌体又はその菌体の処理物。

(2)PPARα活性が、PPARαレポーターアッセイでのネガティブコントロール0(ゼロ)及びポジティブコントロール100に対して70以上であり、並びに、PPARγリガンド活性が、PPARγレポーターアッセイでのネガティブコントロール0(ゼロ)及びポジティブコントロール100に対して0(ゼロ)を超える陽性を示す、上記(1)に記載の菌体又はその菌体の処理物。

(3)菌体が、ラクトバチルス・アミロボラス(Lactobacillus amylovorus)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、又はビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)種に属する、上記(1)又は(2)に記載の菌体又はその菌体の処理物。

(4)菌体が、CP1563株(受託番号FERM BP-11255)もしくはCP1562株(受託番号FERM BP-11379)、又はそれらの菌株の変異株又は育種株、或いはCP2305株(受託番号FERM BP-11331)の変異株又は育種株である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の菌体又はその菌体の処理物。

(5)菌体処理物が、菌体破壊物、菌体抽出物又はそれらの乾燥物である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の菌体処理物。

(6)ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)α及びペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)γに対するデュアルアゴニスト活性をもつ菌体、その菌体処理物又はそれらの混合物を有効成分として含むことを特徴とする、脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤であり、好ましくは、菌体は、ラクトバチルス属及びビフィドバクテリウム属から選択される、脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤。

(7)ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)α及びペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)γに対するデュアルアゴニスト活性をもつ、ラクトバチルス属及びビフィドバクテリウム属から選択される菌体、その菌体処理物又はそれらの混合物を有効成分として含むことを特徴とする、脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤。

(8)PPARα活性が、PPARαレポーターアッセイでのネガティブコントロール0(ゼロ)及びポジティブコントロール100に対して70以上であり、並びに、PPARγリガンド活性が、PPARγレポーターアッセイでのネガティブコントロール0(ゼロ)及びポジティブコントロール100に対して0(ゼロ)を超える陽性を示す、上記(6)又は(7)に記載の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤。

(9)菌体が、ラクトバチルス・アミロボラス(Lactobacillus amylovorus)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、又はビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)種に属する、上記(6)〜(8)のいずれかに記載の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤。

(10)菌体が、Lactobacillus amylovorus CP1563株(受託番号FERM BP-11255)、Lactobacillus amylovorus CP1562株(受託番号FERM BP-11379)、又はLactobacillus gasseri CP2305株(受託番号FERM BP-11331)、或いはそれらの菌株の変異株もしくは育種株である、上記(6)〜(9)のいずれかに記載の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤。

(11)菌体処理物が、菌体破壊物、菌体抽出物又はそれらの乾燥物である、上記(6)〜(10)のいずれかに記載の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤。

(12)飲食品もしくは医薬用の担体又は賦形剤をさらに含む、上記(6)〜(11)のいずれかに記載の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤。

(13)上記(6)〜(12)のいずれかに記載の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤を食品添加物として含んでなる飲食品。

(14)脂質代謝及び/又は糖代謝改善用の機能性食品又は健康食品である、上記(13)に記載の飲食品。

(15)上記(6)〜(12)のいずれかに記載の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤を有効成分として含んでなる、脂質代謝異常及び/又は糖代謝異常を予防、改善又は治療するための医薬組成物。

(16)上記(6)〜(12)のいずれかに記載の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤を飲食品に添加することを含む、脂質代謝及び/又は糖代謝改善作用を有する飲食品の製造方法。

(17)上記(6)〜(12)いずれかに記載の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤の製造における、Lactobacillus amylovorus CP1563株(受託番号FERM BP-11255)、Lactobacillus amylovorus CP1562株(受託番号FERM BP-11379)、Lactobacillus gasseri CP2305株(受託番号FERM BP-11331)、或いはそれらの菌株の変異株もしくは育種株、その菌体処理物又はそれらの混合物の使用。

(18)脂質代謝及び糖代謝改善効果を付与する、Lactobacillus amylovorus CP1563株(受託番号FERM BP-11255)株もしくはLactobacillus amylovorus CP1562株(受託番号FERM BP-11379)、又はそれらの菌株の変異株又は育種株、或いはLactobacillus gasseri CP2305株(受託番号FERM BP-11331)の変異株又は育種株。

(19)Lactobacillus amylovorus CP1563株(受託番号FERM BP-11255)もしくはLactobacillus amylovorus CP1562株(受託番号FERM BP-11379)、又はそれらの菌株の変異株又は育種株、或いはLactobacillus gasseri CP2305株(受託番号FERM BP-11331)の変異株又は育種株。

(20)菌体が、ラクトバチルス(Lactobacillus)属又はビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する、上記(1)又は(2)に記載の菌体又はその菌体の処理物。

(21)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の菌体又はその菌体の処理物の、脂質代謝及び/又は糖代謝改善用組成物の製造への使用。

(22)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の菌体又はその菌体の処理物の、脂質代謝及び/又は糖代謝予防用組成物の製造への使用。

(23)脂質代謝改善及び/又は糖代謝改善用組成物の製造に使用するための、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の菌体又は菌体処理物。

(24)脂質代謝予防及び/又は糖代謝予防用組成物の製造に使用するための、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の菌体又は菌体処理物。

(25)皮下脂肪低減及び/又は内臓脂肪低減用組成物の製造に使用するための、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の菌体又は菌体処理物。

(26)皮下脂肪蓄積予防及び/又は内臓脂肪蓄積予防用組成物の製造に使用するための、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の菌体又は菌体処理物。

本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2011-268313号、2012-067187号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。

本発明により、PPARα及びPPARγの両方に対するデュアルアゴニスト活性を有する、Lactobacillus amylovorus CP1563株、Lactobacillus amylovorus CP1562株、Lactobacillus gasseri CP2305株等を包含するラクトバチルス・アミロボラス(Lactobacillus amylovorus)やラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)等の菌体又はその菌体処理物を摂取することにより、PPARαを強く活性化することで脂肪燃焼及びHDLコレステロール産生を促進して脂質代謝を改善し、さらに、PPARγを活性化することでインスリン抵抗性を改善して糖代謝を改善する結果、メタボリックシンドロームを予防・改善することができる。

食餌誘導性肥満モデルにおける乳酸菌の用量依存的効果(HDL-コレステロール)を示すグラフである。*および**は統計的有意を示す。

食餌誘導性肥満モデルにおける乳酸菌の用量依存的効果(動脈硬化指数)を示すグラフである。**は統計的有意を示す。

食餌誘導性肥満モデルにおける乳酸菌の抗メタボリックシンドローム効果を示すグラフである。AはHDL-コレステロール、BはLDL-コレステロール、Cは中性脂肪、Dは動脈硬化指数、Eは高分子アディポネクチン、Fは内臓脂肪重量をそれぞれ示す。*、**、***および+は統計的有意を示す。

健康なヒトボランテアにLactobacillus amylovorus CP1563株破砕菌体を投与したときの脂質代謝改善効果を示すグラフである。比較コントロールは、CP1563株破砕菌体を含有しない。Aは、体重、Bは、体脂肪率、Cは、BMI、Dは、体温、Eは、皮下脂肪、及びFは、内臓脂肪のそれぞれに及ぼす影響又は効果を示す。

以下、本発明を詳細に説明する。

1. 脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤 本発明は、第1の態様により、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)α及びペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)γに対するデュアルアゴニスト活性をもつ菌体、好ましくは乳酸産生菌、より好ましくはラクトバチルス属及びビフィドバクテリウム属から選択される菌体、その菌体処理物又はそれらの混合物を有効成分として含むことを特徴とする、脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤を提供する。

本発明はまた、以下で説明するような、上記の菌体又はその菌体処理物も提供する。

本明細書中における「PPARαアゴニスト活性」は、脂肪燃焼及びHDLコレステロール産生を促進して脂質代謝を改善する。この活性を高めることにより、高脂血症、脂質異常症、肥満症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、動脈硬化症、炎症性症状などの疾患の予防、改善又は治療が可能になる。

本明細書中における「PPARγアゴニスト活性」は、脂肪細胞からの炎症因子TNF-α分泌を抑制し、アディポネクチンの分泌を促進することでインスリン抵抗性を改善して糖代謝を改善する。この活性を高めることにより、高血糖症、インスリン非依存性糖尿病、動脈硬化症、心肥大、虚血性心疾患などの疾患の予防、改善又は治療が可能になる。

本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤はまた、PPARαアゴニスト活性及びPPARγアゴニスト活性の両方を有することで肥満や糖尿病を含む所謂メタボリックシンドロームの予防、改善又は治療のために有効となる。

本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤におけるPPARαアゴニスト活性は、PPARαレポーターアッセイ(後述の実施例参照)でのネガティブコントロール0(ゼロ)及びポジティブコントロール100に対して、通常70以上、好ましくは80以上、さらに好ましくは90以上、最も好ましくは100以上、例えば110以上、120以上、130以上又は140以上の陽性活性である。

本明細書における、PPARαレポーターアッセイでのネガティブコントロール0(ゼロ)及びポジティブコントロール100は、後述の定義1において定義される。

本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤におけるPPARγアゴニスト活性は、PPARγレポーターアッセイ(後述の実施例参照)でのネガティブコントロール0及びポジティブコントロール100に対して0(ゼロ)を超える活性、例えば2以上、4以上、5以上、好ましくは10以上、20以上、さらに好ましくは30以上、35以上、最も好ましくは40以上の陽性活性である。

本発明における、PPARγレポーターアッセイでのネガティブコントロール0(ゼロ)及びポジティブコントロール100は、後述の定義2において定義される。

本発明によれば、PPARα及びPPARγに対するデュアルアゴニスト活性をもつ菌体は、ラクトバチルス属及びビフィドバクテリウム属から選択される菌体、その菌体処理物又はそれらの混合物である。

そのような菌体は、以下のものに制限されないが、例えばラクトバチルス・アミロボラス(Lactobacillus amylovorus)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・シュードカテニュレイタム(Bifidobacterium pseudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム(Bifidobacterium pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・マグナム(Bifidobacterium magnum)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・ジェンセニ(Lactobacillus jensenii)、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・デルブルッキー(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)、ラクトバチルス・ガリナラム(Lactobacillus gallinarum)、それらの菌種の変異株もしくは育種株である。

好ましい菌株は、ラクトバチルス・アミロボラス株(例えばCP1563株;受託番号FERM BP-11255、CP1562株;受託番号FERM BP-11379)、ラクトバチルス・ガセリ株(例えばCP2305株;受託番号FERM BP-11331)、ビフィドバクテリウム・インファンティス株、ビフィドバクテリウム・ブレーベ株、或いはそれらの菌株の変異株もしくは育種株であり、最も好ましい菌株は、CP1563株(受託番号FERM BP-11255)又はその変異株もしくは育種株である。なお、ラクトバチルス・アミロボラスCP1563株及びラクトバチルス・アミロボラスCP1562株はヒトの腸管由来の乳酸菌である。これらの菌株又はその処理物は、後述の実施例で脂質代謝及び/又は糖代謝改善作用を有することが確認されており、独立行政法人産業技術総合研究所の特許生物寄託センター(〒305-8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1つくばセンター中央第6)から入手することができる。

本発明で使用可能な乳酸産生菌、好ましくはラクトバチルス属及びビフィドバクテリウム属から選択される菌種は、ラクトバチルス(乳酸菌)やビフィドバクテリウムの菌種の培養に通常用いられる培地を使用して、通常使用される条件下で培養することにより増殖し回収することができる。

培養培地は、通常、炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、上記の菌種の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、例えばラクトース、グルコース、スクロース、フラクトース、ガラクトース、廃糖蜜などを使用することができ、窒素源としては、例えばカゼイン加分解物、ホエータンパク質加水分解物、大豆タンパク質加水分解物、酵母エキス、肉エキス等の有機窒素含有物を使用することができる。また無機塩類としては、例えばリン酸塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、亜鉛などを用いることができる。乳酸菌の培養に適した培地としては、例えばMRS液体培地、GAM培地、BL培地、Briggs Liver Broth、獣乳、脱脂乳、乳性ホエーなどが挙げられる。好ましくは、滅菌されたMRS培地を使用することができる。また食品用途で用いる場合には食品素材ならびに食品添加物のみで構成した培地を調整使用可能である。天然培地としては、トマトジュース、ニンジンジュース、その他野菜ジュース、あるいはリンゴ、パイナップル、ブドウ果汁なども使用することができる。

培養は、20℃〜50℃、好ましくは25℃〜42℃、より好ましくは約37℃において、嫌気条件下で行う。温度条件は、恒温槽、マントルヒーター、ジャケットなどにより調整することができる。また、嫌気条件下とは、菌が増殖可能な程度の低酸素環境下のことであり、例えば嫌気チャンバー、嫌気ボックス又は脱酸素剤を入れた密閉容器もしくは袋などを使用することにより、あるいは単に培養容器を密閉することにより、嫌気条件とすることができる。培養の形式は、静置培養、振とう培養、タンク培養などである。また、培養時間は、特に制限されないが、例えば3時間〜96時間とすることができる。培養開始時の培地のpHは、例えば4.0〜8.0に維持することが好ましい。

例えば乳酸菌としてラクトバチルス・アミロボラスCP1563株及びラクトバチルス・アミロボラスCP1562株を用いる場合には、食品グレードの乳酸菌用培地に乳酸菌を植菌し、約37℃で一晩(約18時間)かけて培養を行うことができる。

培養後、得られる乳酸菌培養物をそのまま使用してもよいし、さらに必要に応じて遠心分離などによる粗精製及び/又は濾過等による固液分離や滅菌操作を行ってもよい。好ましくは、遠心分離を行って、乳酸菌の菌体のみを回収する。なお、本発明において使用する乳酸菌は、湿潤菌体であっても又は乾燥菌体であってもよい。

上記のラクトバチルス属及びビフィドバクテリウム属から選択される菌種又は菌株の変異株を作製する場合、これらの菌をMRS培地にて対数増殖期まで静置培養した後、滅菌生理食塩水又は滅菌水で洗浄後、同滅菌生理食塩水又は滅菌水中で、例えばN-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)、などの変異原50〜500μg/ml、30〜37℃、30〜60分処理して変異株を得ることができる。変異誘発には、NTGの他に、紫外線、或いは、エチルメタンスルホン酸(EMS)、フルオロウラシル(5-FU)などの公知の変異原を用いることもでき、一般に知られる手段を適用することができる。得られた菌株の分類上の菌学的特性は、例えば16S rRNA遺伝子塩基配列の相同性を調べる、基準株とのDNA-DNAハイブリダイゼーションによりDNA-DNA相同性を調べる、糖の資化性を調べるなどにより確認することができる。

本明細書中における菌体処理物は、菌体破壊物、菌体抽出物、それらの乾燥物、凍結物、水分散物、乳化物などを例示することができるが、それらに限定されない。

菌体破壊物は、菌体を破砕(この場合、菌体破砕物が得られる。)、磨砕、酵素処理、薬品処理、溶解などによって破壊処理して得られたものであり、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)α及びペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)γに対するデュアルアゴニスト活性をもつ限り菌体破壊物の形態は任意である。例えば、水性媒体中で菌体を破砕した液をそのまま凍結乾燥などによって乾燥して得られたもののように、破壊された菌体全体(すなわち、細胞を構成する本質的にすべての成分)をそのまま回収して得られたものが好ましく使用できる。

菌体の破壊は、当技術分野で公知の方法及び機器を使用して、例えば物理的破砕、酵素溶解処理、等によって行うことができる。物理的破砕は、湿式(菌体懸濁液の状態で処理)又は乾式(菌体粉末の状態で処理)のいずれで行ってもよく、ホモゲナイザー、ボールミル、ビーズミル、ダイノミル、遊星ミル等を使用した撹拌により、ジェットミル、フレンチプレス、細胞破砕機等を使用した圧力により、或いは、フィルター濾過により、行うことができる。酵素溶解処理は、例えばリゾチームなどの酵素を用いて、菌体の細胞壁を破壊することができる。

具体的には、菌体破砕物を調製するための方法は、乳酸菌の懸濁液を、公知のダイノミル細胞破砕機(DYNO-MILL破砕装置など)において、ガラスビーズを使用して、周速10.0〜20.0m/s(例えば約14.0m/s)、処理流速0.1〜10L/10min(例えば約1L/10min)にて、破砕槽温度10〜30℃(例えば約15℃)で1〜7回(例えば3〜5回)処理することによって、菌体を破砕する。また例えば、乳酸菌の懸濁液を、公知の湿式ジェットミル細胞破砕機(JN20 ナノジェットパルなど)において、吐出圧力50〜1000Mpa(例えば270MPa)、処理流速50〜1000(例えば300ml/min)にて、1〜30回(例えば10回)処理することによって、菌体を破砕する。また、公知の乾式遊星ミル細胞破砕機(GOT5 ギャラクシー5など)において、乳酸菌の菌体粉末を各種ボール(例えばジルコニア製10mmボール、ジルコニア製5mmボール、アルミナ製1mmボール)共存下で、回転数50〜10,000rpm(例えば240rpm、190rpm、110rpm)で30分〜20時間(例えば5〜10時間)処理することによって、菌体を破砕することも可能である。乳酸菌の菌体粉末を公知の乾式ジェットミル細胞破砕機(ジェットOマイザーなど)において、供給速度0.01〜10000g/min(例えば0.5g/min)、吐出圧力1〜1000kg/cm2(例えば6kg/cm2)の圧力にて、1〜10回(例えば1回)処理することによって、菌体を破砕してもよい。

本発明においては、菌体の破砕物は、菌体に穴が開く程度でも効果を発揮するが、菌体の平均長径が破壊処理前の90%以下となるように調製することが望ましい。例えば溶解処理により菌体を破壊する場合には、菌体の平均長径は0%近くとなることもある。従って、菌体破砕物における菌体の平均長径が破砕前の90%以下、好ましくは80%以下、70%以下、60%以下又は50%以下、さらに好ましくは40%以下、30%以下又は20%以下となるように菌体を破壊することができる。

菌体及び/又は菌体破砕物は、乾燥して粉状物又は粒状物とすることができる。具体的な乾燥方法としては、特に制限されないが、例えば、噴霧乾燥、ドラム乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などが挙げられ、これらを単独で又は組み合わせて採用できる。その際、必要に応じて通常用いられる担体又は賦形剤を添加してもよい。

さらにまた、菌体抽出物は、菌体又は菌体破砕物から、水、有機溶媒又は混合溶媒を適宜組み合わせて抽出操作を行い、PPARα及びPPARγに対するアゴニスト活性を有する有効成分を含む画分を回収することによって得ることができる。有機溶媒は、極性溶媒、非極性溶媒、それらの混合溶媒であり、極性溶媒の例には、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、アセトン、アセトニトリル、ジオキサン、DMSO、DMFなどが含まれ、非極性溶媒の例には、ジエチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化アルキル類、等が含まれる。特に、本発明の有効成分は、後述の実施例に記載されるように、ジエチルエーテル等の非極性有機溶媒によって抽出され易い性質を有していると考えられるが、エタノール、アセトニトリル、DMSO等の極性有機溶媒によっても一部は抽出される。抽出物がPPARα及びPPARγに対するアゴニスト活性をもつことは、後述の実施例に記載されるようなPPARαレポーターアッセイ及びPPARγレポーターアッセイ等の公知のアッセイ法によって確認することができる。上に例示したラクトバチルス属やビフィドバクテリウム属に属する菌種や菌株から得られた抽出物はいずれもPPARα及びPPARγを活性化する能力を有している。それらのなかで、特にラクトバチルス・アミロボラスCP1563株、ラクトバチルス・アミロボラスCP1562株、ラクトバチルス・ガセリCP2305株等の抽出物がPPARα及びPPARγに対するより優れたリガンド活性を有している。本発明の菌体抽出物は、エバポレーター等の蒸発器を使用して濃縮し、好ましくは溶媒を除去して得られた、濃縮物又は残留物も包含するものとする。

さらにまた、上記の菌体破砕物から、公知の分離・精製法を用いて、脂質代謝及び糖代謝改善作用を有する成分又は画分を精製してもよい。そのような分離・精製法としては、塩沈殿及び有機溶媒沈殿などの溶解性を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過などの分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーのような電荷の差を利用する方法、アフィニティクロマトグラフィーのような特異的結合を利用する方法、疎水クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーなどの疎水性を利用する方法などが挙げられ、これらの方法の1種を、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。

上記のようにして得られた菌体破砕物、菌体抽出物又は有効成分含有画分は、そのままで、或いは、飲食品もしくは医薬用の担体又は賦形剤と組み合わせて、脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤とすることができる。必要であれば、崩壊剤、結合剤、湿潤剤、安定剤、緩衝剤、滑沢剤、保存剤、界面活性剤、甘味料、矯味剤、芳香剤、酸味料、着色剤などの添加剤を含有させることができる。また、剤型は、制限されないが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤、乳化剤などとしうる。

本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤に含まれる上記の菌体又はその処理物は、処理前の菌体の菌数として、非限定的ではあるが、例えば約105個/g〜約1014個/g、好ましくは約108個/g〜約1012個/gに相当する菌数から作製されたものである。

本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤は、有効成分として上述した菌体又は菌体処理物を含むものであるが、菌体又は菌体処理物は、1種又は複数の菌種から得られたものであってよい。

したがって、本発明はまた、本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤の製造における、CP1563株(受託番号FERM BP-11255)、CP1562株(受託番号FERM BP-11379)、CP2305株(受託番号FERM BP-11331)、或いはそれらの菌株の変異株もしくは育種株、その菌体処理物又はそれらの混合物の使用を提供する。

本発明はさらに、脂質代謝及び糖代謝改善効果を付与する、CP1563株(受託番号FERM BP-11255)又はCP1562株(受託番号FERM BP-11379)、或いはそれらの菌株の変異株又は育種株を提供する。

本明細書中、本発明に関わる「FERM BP-11255」は、ブダペスト条約下で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305-8566))に2010年5月25日付けで国際寄託されたLactobacillus amylovorus CP1563株の受託番号であり、「FERM BP-11379」は、ブダペスト条約下で同生物寄託センターに2011年4月22日付けで国際寄託されたLactobacillus amylovorus CP1562株の受託番号であり、ならびに、「FERM BP-11331」は、ブダペスト条約下で同生物寄託センターに2007年9月11日付けで国際寄託されたLactobacillus gasseri CP2305株の受託番号である。

2. 飲食品及び医薬組成物 本発明はさらに、本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤を食品添加物として含んでなる飲食品を提供する。その実施形態によれば、飲食品は、脂質代謝及び糖代謝改善用の機能性食品又は健康食品である。

本発明はさらに、本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤を飲食品に添加することを含む、脂質代謝及び糖代謝改善効果を有する飲食品の製造方法を提供する。

本発明はさらに、本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤を有効成分として含んでなる、脂質代謝異常及び糖代謝異常を予防、改善又は治療するための医薬組成物を提供する。

以下に、本発明の医薬組成物及び飲食品について説明する。

上記で得られた脂質代謝改善剤を継続的に摂取すると、脂質代謝及び糖代謝の改善効果が得られることが期待されるため、脂質代謝関連及び糖代謝関連疾患又は障害の治療又は予防のために使用できる。そのため、脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤は、飲食品、医薬品、等に添加して使用することもできる。

本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤を医薬組成物又は飲食品(機能性食品等)に使用する場合、医薬組成物又は飲食品の形態は特に制限されないが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤、吸入剤などの経口剤、坐剤などの経腸製剤、点滴剤、注射剤などの剤型としてもよい。これらのうちでは、経口剤とするのが好ましい。なお、液剤、懸濁剤などの液体製剤は、服用直前に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁する形であってもよく、また錠剤、顆粒剤の場合には周知の方法でその表面をコーティングしてもよい。さらに、本発明の脂質代謝改善剤は、当技術分野で公知の技術を使用して、徐放性製剤、遅延放出製剤又は即時放出製剤などの放出が制御された製剤としてもよい。

このような剤型は、上述した成分に、通常用いられる賦形剤、崩壊剤、結合剤、湿潤剤、安定剤、緩衝剤、滑沢剤、保存剤、界面活性剤、甘味料、矯味剤、芳香剤、酸味料、着色剤などの添加剤を剤型に応じて配合し、常法に従って製造することができる。例えば、脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤を医薬組成物とする場合には、薬学的に許容される担体又は添加剤を配合することができる。そのような薬学的に許容される担体及び添加物の例として、水、薬学的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、水溶性デキストリン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などの他、リポゾームなどの人工細胞構造物などが挙げられる。

医薬組成物又は飲食品中の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤の含有量は、脂質代謝及び糖代謝の改善効果を付与するかぎり特に制限されないが、また、その剤型により異なるが、上記の菌体又は菌体処理物の量として、通常は、0.0001〜99質量%、好ましくは0.001〜80質量%、より好ましくは0.001〜75質量%の範囲であり、有効成分の望ましい摂取量を摂取できるように、1日当たりの投与量が管理できる形にするのが望ましい。また、本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤に含まれる菌体又は菌体処理物は、非限定的に、例えば、処理前の菌体の菌数として、約105個/g〜約1012個/g、好ましくは約108個/g〜約1012個/gに相当する菌数から作製される量である。

本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤には、他の脂質代謝改善剤及び/又は糖代謝改善剤を添加又は配合することができる。他の脂質代謝改善剤としては、限定されるものではないが、脂質降下薬(スタチン系薬剤、フィブラート系薬剤、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸など)、ビタミン剤(ニコチン酸、ビタミンEなど)が挙げられる。また、他の糖代謝改善剤としては、限定されるものではないが、ピオグリタゾン等が挙げられる。

さらに、本発明の医薬組成物又は飲食品には、その製造に用いられる種々の添加剤やその他種々の物質を共存させてもよい。このような物質や添加剤としては、各種油脂(例えば、大豆油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油などの植物油、脂、イワシ油などの動物油脂)、生薬(例えばロイヤルゼリー、人参など)、アミノ酸(例えばグルタミン、システイン、ロイシン、アルギニンなど)、多価アルコール(例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、糖アルコール、例としてソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトールなど)、天然高分子(例えばアラビアガム、寒天、水溶性コーンファイバー、ゼラチン、キサンタンガム、カゼイン、グルテン又はグルテン加水分解物、レシチン、澱粉、デキストリンなど)、ビタミン(例えばビタミンC、ビタミンB群など)、ミネラル(例えばカルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄など)、食物繊維(例えばマンナン、ペクチン、ヘミセルロースなど)、界面活性剤(例えばグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)、精製水、賦形剤(例えばブドウ糖、コーンスターチ、乳糖、デキストリンなど)、安定剤、pH調製剤、酸化防止剤、甘味料、呈味成分、酸味料、着色料及び香料などが挙げられる。

また、本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤には、上記有効成分以外の機能性成分もしくは添加剤として、例えば、タウリン、グルタチオン、カルニチン、クレアチン、コエンザイムQ、グルクロン酸、グルクロノラクトン、トウガラシエキス、ショウガエキス、カカオエキス、ガラナエキス、ガルシニアエキス、テアニン、γ-アミノ酪酸、カプサイシン、カプシエイト、各種有機酸、フラボノイド類、ポリフェノール類、カテキン類、キサンチン誘導体、フラクトオリゴ糖などの難消化性オリゴ糖、ポリビニルピロリドンなどを配合することができる。

本発明の脂質代謝改善剤及び該改善剤を含有する医薬組成物又は飲食品を投与又は摂取する対象(被験体)は、脊椎動物、具体的には、哺乳動物、例えばヒト、霊長類(サル、チンパンジーなど)、家畜動物(ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジなど)、ペット用動物(イヌ、ネコなど)、実験動物(マウス、ラットなど)、さらには爬虫類及び鳥類であり、ヒトが好ましい。

本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤の投与又は摂取量は、対象の年齢及び体重、投与・摂取経路、投与・摂取回数、脂質代謝異常の重篤度などにより異なり、目的とする作用を達成できるように当業者の裁量によって広範囲に変更することができる。例えば、経口的に投与又は摂取する場合には、脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤に含まれる菌体又はその菌体処理物は、処理前の菌体の量として、体重1kgあたり、通常約106個〜約1012個、好ましくは約107個〜約1011個投与することが望ましい。

本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤、医薬組成物及び飲食品は、安全性の高いものであるため、摂取量をさらに増やすこともできる。1日当たりの摂取量は、1回で摂取してもよいが、数回に分けて摂取してもよい。また、その投与又は摂取の頻度も、特に限定されず、投与・摂取経路、対象の年齢及び体重、脂質代謝異常又は糖代謝異常の重篤度、脂質代謝異常又は糖代謝異常に起因する疾患又は障害の発症の有無、目的とする効果(治療、予防など)などの種々の条件に応じて適宜選択することが可能である。

本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤、医薬組成物及び飲食品の投与・摂取経路は特に限定されず、経口投与もしくは摂取、又は非経口投与(例えば直腸内、皮下、筋肉内、静脈内投与)などが挙げられ、特に経口的に投与又は摂取することが好ましい。

本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤、医薬組成物及び飲食品は、脂質代謝改善として、対象の血中脂質の低減作用、皮下脂肪及び/又は内臓脂肪の代謝促進作用、体重増加抑制作用を有する。具体的には、本発明の脂質代謝改善剤、医薬組成物及び飲食品は、対象における総コレステロール、LDL-コレステロール、中性脂肪、動脈硬化指数及び/又は内臓脂肪を低減させ、並びに/あるいはHDL-コレステロール及び/又はアディポネクチンを上昇させることにより、脂質代謝を正常化する作用を有する。

本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤、医薬組成物及び飲食品は、糖代謝改善として、インスリン抵抗性を改善することにより、高血糖症、インスリン非依存性糖尿病などの疾患の予防、改善又は治療を可能にする作用を有する。

従って、本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤、医薬組成物及び飲食品は、脂質代謝及び糖代謝に関連する疾患又は障害に対して、優れた予防、改善及び治療効果を示す。また、安全性が高く長期間の継続的摂取が容易である。

本発明において「脂質代謝関連疾患又は障害」とは、脂質代謝の異常に起因する疾患、障害、症状又は症候群を指す。脂質代謝関連疾患又は障害には、例えば限定されるものではないが、動脈硬化、高脂血症、脂肪肝、肥満症、メタボリックシンドローム、循環器系疾患(心筋梗塞、脳梗塞など)などが含まれる。

本発明において「糖代謝関連疾患又は障害」とは、インスリン非依存性糖尿病、高血糖症の他に、糖尿病による合併症である、例えば異脂肪血症、高血圧症、内皮性障害及び炎症性アテローム性動脈硬化症などが含まれる。

本発明の飲食品は、上述した脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤を含有する。本発明において、飲食品には飲料も包含される。本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤を含有する飲食品には、脂質代謝改善作用及び糖代謝改善作用により健康増進を図る健康飲食品、機能性飲食品、特定保健用飲食品などの他、上記脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤を配合できる、全ての飲食品が含まれる。

本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤を含有する飲食品として、機能性飲食品はとりわけ好ましい。本発明の「機能性飲食品」は、生体に対して一定の機能性を有する飲食品を意味し、例えば、特定保健用飲食品(条件付きトクホ[特定保健用食品]を含む)及び栄養機能飲食品を含む保健機能飲食品、特別用途飲食品、栄養補助飲食品、健康補助飲食品、サプリメント(例えば、錠剤、被覆錠、糖衣錠、カプセル及び液剤などの各種剤形のもの)及び美容飲食品(例えばダイエット飲食品)などのいわゆる健康飲食品全般を包含する。本発明の機能性飲食品はまた、コーデックス(FAO/WHO合同食品規格委員会)の食品規格に基づく健康強調表示(Health claim)が適用される健康飲食品を包含する。

飲食品の具体例としては、経管経腸栄養剤などの流動食、錠菓、錠剤、チュアブル錠、錠剤、粉剤、散剤、カプセル剤、顆粒剤及びドリンク剤などの製剤形態の健康飲食品及び栄養補助飲食品;緑茶、ウーロン茶及び紅茶などの茶飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、乳飲料、炭酸飲料、野菜飲料、果汁飲料、醗酵野菜飲料、醗酵果汁飲料、発酵乳飲料(ヨーグルトなど)、乳酸菌飲料、乳飲料(コーヒー牛乳、フルーツ牛乳など)、粉末飲料、ココア飲料、牛乳並びに精製水などの飲料;バター、ジャム、ふりかけ及びマーガリンなどのスプレッド類;マヨネーズ、ショートニング、カスタードクリーム、ドレッシング類、パン類、米飯類、麺類、パスタ、味噌汁、豆腐、ヨーグルト、スープ又はソース類、菓子(例えば、ビスケットやクッキー類、チョコレート、キャンディ、ケーキ、アイスクリーム、チューインガム、タブレット)などが挙げられる。

本発明の飲食品は、上記脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤のほかに、その飲食品の製造に用いられる他の食品素材、各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、食物繊維、種々の添加剤(例えば呈味成分、甘味料、有機酸などの酸味料、安定剤、フレーバー)などを配合して、常法に従って製造することができる。

本発明の飲食品において、脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤の配合量は、飲食品の形態や求められる食味又は食感を考慮して、当業者が適宜定めることができる。通常は、添加される脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤中の菌体又はその菌体処理物の総量が、処理前の菌体の量として、通常は0.0001〜99質量%、好ましくは0.001〜80質量%、より好ましくは0.001〜75質量%となるような脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤の配合量が適当である。本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤は安全性の高いものであるため、飲食品におけるその配合量をさらに増やすこともできる。脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤の望ましい摂取量を飲食できるよう、1日当たりの摂取量が管理できる形にするのが好ましい。このように本発明の飲食品を、本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤の望ましい摂取量を管理できる形態で飲食することにより、該飲食品を用いた脂質代謝関連及び/又は糖代謝関連疾患又は障害に対する予防方法及び改善方法が提供される。

本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤は、当業者が利用可能である任意の適切な方法によって、飲食品に含有させればよい。例えば、本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤を、液体状、ゲル状、固体状、粉末状又は顆粒状に調製した後、それを飲食品に配合することができる。あるいは本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤を、飲食品の原料中に直接混合又は溶解してもよい。本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤は、飲食品に塗布、被覆、浸透又は吹き付けてもよい。本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤は、飲食品中に均一に分散させてもよいし、偏在させてもよい。本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤を入れたカプセルなどを調剤してもよい。本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤を、可食フィルムや食用コーティング剤などで包み込んでもよい。また本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤に適切な賦形剤等を加えた後、錠剤などの形状に成形してもよい。本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤を含有させた飲食品はさらに加工してもよく、そのような加工品も本発明の範囲に包含される。

本発明の飲食品の製造においては、飲食品に慣用的に使用されるような各種添加物を使用してもよい。添加物としては、限定するものではないが、発色剤(亜硝酸ナトリウム等)、着色料(クチナシ色素、赤102等)、香料(オレンジ香料等)、甘味料(ステビア、アステルパーム等)、保存料(酢酸ナトリウム、ソルビン酸等)、乳化剤(コンドロイチン硫酸ナトリウム、プロピレングリコール脂肪酸エステル等)、酸化防止剤(EDTA二ナトリウム、ビタミンC等)、pH調整剤(クエン酸等)、化学調味料(イノシン酸ナトリウム等)、増粘剤(キサンタンガム等)、膨張剤(炭酸カルシウム等)、消泡剤(リン酸カルシウム)等、結着剤(ポリリン酸ナトリウム等)、栄養強化剤(カルシウム強化剤、ビタミンA等)、賦形剤(水溶性デキストリン等)等が挙げられる。さらに、オタネニンジンエキス、エゾウコギエキス、ユーカリエキス、杜仲茶エキス等の機能性素材をさらに添加してもよい。

本発明の飲食品は、上述したとおり、脂質代謝及び糖代謝改善作用を有するため、脂質代謝関連及び糖代謝関連疾患又は障害に対して優れた予防及び改善作用を奏する上に、安全性が高く副作用の心配がない。また、本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤は風味がよく、様々な飲食品に添加してもその飲食品の風味を阻害しないため、得られる飲食品は長期間の継続的摂取が容易であり、脂質代謝関連疾患又は障害の優れた予防及び改善作用が期待される。

さらに本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤は、ヒト用の飲食品のみならず、家畜、競走馬、ペットなどの飼料にも配合することができる。飼料は、対象がヒト以外であることを除き飲食品とほぼ等しいことから、上記の飲食品に関する記載は、飼料についても同様に当てはめることができる。

以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

[実施例1] <菌体粉末の作製> 各乳酸菌の菌株の凍結ストックを平板培地に起こした後、液体培地を用いて、前々培養、前培養、本培養を実施した(5ml→40ml→2L)。表1に使用菌種、菌株、培地、培養温度を示す。なお、植菌量は各液体培地重量の1%とし、18時間培養した(使用培地及び培養温度は表2参照)。培養後、10℃にて12000 g 、 7分間遠心分離し、培養上清を除去した。イオン交換水を加え、同様に遠心分離後、凍結乾燥した菌体をミル(TESCOM)で分散し、菌体粉末を得た。

(ジエチルエーテル抽出物の作製) 2gの菌体粉末を500mlの0.5mol/l水酸化カリウム・エタノール溶液(関東化学)に懸濁後、2分間超音波破砕処理(出力40%、最大750W中プローブ使用、VC-750(東京理化器械))した。処理後の液を500mlの赤キャップ付広口メディウム瓶(耐熱性、三商)に移し、密栓した。100℃の沸騰水中に1時間静置加温後、流水にて冷却した。冷却した菌液に濃塩酸(和光純薬工業)を加え、pHを2以下に調製した。

液体部分を40℃湯浴中でロータリーエバポレーター(NVC-2100、東京理化器械)にて約50ml程度まで濃縮した。50mlのガラス製遠沈管(AGCテクノグラス)に2等分後、等量のジエチルエーテル(和光純薬工業)を加え、振とう機(200回/分、R-30、タイテック)で1時間攪拌し、上層を分取した。この作業を合計4回実施後、分取画分をロータリーエバポレーターで乾固させた。窒素ガスを吹き付け、完全乾固させた後、500μLの特級DMSO(和光純薬工業)に溶解し、褐色バイヤル(耐冷性、三商)にて-80℃保存した。ジエチルエーテル中の脂肪酸濃度はNEFA C−テストワコー(和光純薬工業)を用いて測定した。

[実施例2]

アフリカミドリザル腎臓由来培養細胞CV-1を5x10

4個/mlの濃度に調製し、10%(v/v)FBSを含むDMEM培地(SIGMA)に懸濁後、平底24wellプレート(Corning)を用いて500μL/ウェル濃度にて、5%(v/v)CO

2雰囲気下、37℃、24時間培養した。24時間後、顕微鏡下に80〜90%コンフルエントであることを確認後、以下の手順でトランスフェクションを実施した。

血清使用量低減培地Opti-MEM(Invitrogen)25μlに、PPARαリガンド結合ドメイン(ヒト由来)とGAL-4DNA結合ドメイン(酵母由来)からなるキメラタンパク質をコードするDNA断片を含むプラスミドpM-PPARαを0.16μgと、前述のキメラタンパク質により発現制御を受けるようデザインされたluc(ウミホタル由来)レポーター遺伝子プラスミドであるp4×UASg-tk-lucを0.16μgと、細胞内において一定の発現を示すウイルス性発現プロモーターを持ったluc(ウミシイタケ由来)発現プラスミドであるpRL-CMVを0.016μgを添加して混合し、PLUS Reagent(Invitrogen)を4μl添加して室温15分間静置した。さらに、Lipofectamine Reagent(Invitrogen)を1μlとOpti-MEMを25μl添加して混合し、室温で15分間静置した後、Opti-MEMを200μl添加した。得られた液250μlを、Opti-MEMで洗浄した培養CV-1細胞に添加し、37℃で3時間培養した。培養後に培地を除去し、10%(v/v)FBSを含むDMEM培地を1ml添加した。

(定義1:「PPARα活性のネガティブコントロール0、ポジティブコントロール100」) 評価サンプルの調製は以下のとおり行った。各種乳酸菌のジエチルエーテル抽出物をDMSOの終濃度が0.1%となるようOpti-MEMで希釈した。PPARαリガンドのポジティブコントロールとしてGW7647(SIGMA)を、ネガティブコントロールとしてDMSOを使用した。アッセイ時の濃度は、乳酸菌抽出物サンプルは2.5μM(脂肪酸換算値)、GW7647は10nMとした。

トランスフェクションから24時間後にCV-1細胞の培地を吸引し、各種評価サンプルを500μlずつ添加し、6時間後に500μlのPBSで2回洗浄した。PBSを吸引除去後、Reporter Lysis 5 x Buffer(Promega)を水で5倍希釈したものを100μLずつ添加し、-80℃フリーザー内でプレートごと凍結保存した。

96well白色マイクロプレート(PerkinElmer)に凍結保存したサンプル30μLを加え、Dual-GloTM Luciferase Assay System(Promega)を使用し、発光強度(590nm及び645nm)を測定することで、PPARαリガンド能を測定した。活性は、ネガティブコントロールを0、ポジティブコントロールを100として相対値で示した。

(結果) 結果を表2に示す。

PPARα活性値は、70以上、好ましくは、80以上、90以上、95以上、100以上、120以上、140以上が好ましい。

表2の結果から、菌株により活性化能は大きく異なることが示された。なかでもラクトバチルス・アミロボラスCP1563株が最も強いPPARα活性化能を示し、ポジティブコントロールよりも強い活性化能を有することが認められた。なお、上記の先行技術で示した特許文献5(特開2007-284360)中では、ラクトバチルス・アミロボラスATCC33620株(JCM1126)が陽性対照よりも高い活性を示すとの報告があるが、本結果ではポジティブコントロールよりも活性は低く、ラクトバチルス・アミロボラスCP1563株の60%程度の活性化能しか示さなかった。さらに、特許文献5(特開2007-284360)中で一番活性の高いNCI9040株でも、ラクトバチルス・アミロボラスCP1563株の67%程度の活性化能しか示さない。

[実施例3]

アフリカミドリザル腎臓由来培養細胞CV-1を5x10

4個/mlの濃度に調製し、10%(v/v)FBSを含むDMEM培地(SIGMA)に懸濁後、平底24wellプレート(Corning)を用いて500μL/ウェル濃度にて、5%(v/v)CO

2雰囲気下、37℃、24時間培養した。24時間後、顕微鏡下に80〜90%コンフルエントであることを確認後、以下の手順でトランスフェクションを実施した。

血清使用量低減培地Opti-MEM(Invitrogen) 25μlに、PPARγリガンド結合ドメイン(ヒト由来)とGAL-4DNA結合ドメイン(酵母由来)からなるキメラタンパク質をコードするDNA断片を含むプラスミドpM-PPARαを0.16μgと、前述のキメラタンパク質により発現制御を受けるようデザインされたluc(ウミホタル由来)レポーター遺伝子プラスミドであるp4×UASg-tk-lucを0.16μgと、細胞内において一定の発現を示すウイルス性発現プロモーターを持ったluc(ウミシイタケ由来)発現プラスミドであるpRL-CMVを0.016μgを添加して混合し、PLUS Reagent(Invitrogen)を4μl添加して室温15分間静置した。さらに、Lipofectamine Reagent(Invitrogen)を1μlとOpti-MEMを25μl添加して混合し、室温で15分間静置した後、Opti-MEMを200μl添加した。得られた液250μlを、Opti-MEMで洗浄した培養CV-1細胞に添加し、37℃で3時間培養した。培養後に培地を除去し、10%(v/v)FBSを含むDMEM培地を1ml添加した。

評価サンプルの調製は以下のとおり行った。表1記載の乳酸菌の菌株のうち、PPARα活性化能の比較的高い8菌株、ラクトバチルス・アミロボラスCP1563株、ビフィドバクテリウム・インファンティスNo.23株、ビフィドバクテリウム・ブレーベNo.22株、ラクトバチルス・ガセリCP2305株、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティスNo.20株、ビフィドバクテリウム・カテニュラータムNo.24株、ラクトコッカス・ラクティスNo.14株、ビフィドバクテリウム・ロンガムNo.21株のジエチルエーテル抽出物をDMSOの終濃度が0.1%となるようOpti-MEMで希釈した。

(定義2:「PPARγリガンド活性のネガティブコントロール0、ポジティブコントロール100」) PPARγリガンドのポジティブコントロールとしてTroglitazone(和光純薬工業)を、ネガティブコントロールとしてDMSOを使用した。アッセイ時の濃度は、乳酸菌抽出物サンプルは2.5μM(脂肪酸換算値)、Troglitazoneは1μMとした。

トランスフェクションから24時間後にCV-1細胞の培地を吸引し、各種評価サンプルを500μlずつ添加し、6時間後に500μlのPBSで2回洗浄した。PBSを吸引除去後、Reporter Lysis 5 x Buffer(Promega)を水で5倍希釈したものを100μLずつ添加し、-80℃フリーザー内でプレートごと凍結保存した。

96well白色マイクロプレート(PerkinElmer)に凍結保存したサンプル30μLを加え、Dual-GloTM Luciferase Assay System(Promega)を使用し、発光強度(590nm及び645nm)を測定することで、PPARγリガンド能を測定した。活性は、ネガティブコントロールを0、ポジティブコントロールを100として相対値で示した。

(結果) 結果を表3に示す。

表3の結果から、ラクトバチルス・アミロボラスCP1563株、ビフィドバクテリウム・インファンティスNo.23株、ビフィドバクテリウム・ブレーベNo.22株、ラクトバチルス・ガセリCP2305株、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティスNo.20株にPPARγ活性化能が認められた。中でも、ラクトバチルス・アミロボラスCP1563株は最も強いPPARγ活性化能を示した。

また、Lactoccus lactis No.14株のように、比較的高いPPARα活性を持つものでも、PPARγ活性がない菌体がある。したがって、本願発明によるラクトバチルス・アミロボラスCP1563株等のようにPPARα及びPPARγを活性化するという知見は優れた知見である。

[実施例4]

乳酸菌Lactobacillus amylovorus CP1563株(FERM BP-11255)を以下のとおり調製した。

ラクトバチルス・アミロボラスCP1563株はヒトの糞便より採取し、単離した。16S rDNA塩基配列解析及び表現形質の観察により、菌種を同定した。

なお、ここで得られた菌株は、ブタペスト条約の規定下で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305-8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1つくばセンター中央第6)に2010年5月25日付けで国際寄託され、受託番号FERM BP-11255が付与されている。

乳酸菌を自家処方による食品グレードの乳酸菌培地を用いて、37℃、18時間培養し、遠心分離により集菌した。脱イオン水を用いて洗浄・集菌後、適量の水に再懸濁し、90℃達温殺菌した。殺菌後の懸濁液を、以下の条件でダイノミル破砕した。

使用機器:DYNO-MILL破砕装置(Multi-lab 0.6L、シンマルエンタープライゼス社) 周速:14.0m/s 処理流速:1L/10min 処理回数:5回 破砕槽温度:15℃ 使用ガラスビーズ:直径0.5mm 0.4L 上記破砕(破壊)処理により、乳酸菌懸濁液中の菌体の平均長径が処理前の68%に縮小した(2.77μ→1.89μm)。破砕後、懸濁液を凍結乾燥し、破砕乳酸菌凍結乾燥粉末を得た。

本実施例では、食餌誘導性肥満モデルマウスに対する乳酸菌の効果及び用量依存性を検証した。

まず、表4に示した配合の通り原料を混合し、乳酸菌配合高脂肪食を製造した。

C57BL/6 雄マウス(5週齢)を、上記のとおり調製した高脂肪食(コントロール食)で1週間予備飼育して肥満モデルマウスとした。次いで、Lactobacillus amylovorus CP1563株破砕菌体配合高脂肪食(重量で0%、0.25%、0.5%、1.0%配合)で6週間飼育した。飼育はペアフィーディング法に従って実施し、各群の摂食量が同等になるように調整した。実験終了時に採血を行い、HDLコレステロール値を測定して乳酸菌の効果を検証した。なお、動脈硬化指数は、以下の式により求めた: 動脈硬化指数=(総コレステロール−HDLコレステロール)÷HDLコレステロール 結果を図1(HDL-コレステロール)及び図2(動脈硬化指数)に示す。CP1563株破砕菌体の投与により、HDL-コレステロール及動脈硬化指数を改善し、その効果は用量依存的であることを確認した。

さらにまた、食餌誘導性肥満モデルマウスに対する乳酸菌の抗メタボリックシンドローム効果を検証した。

具体的には、上記の肥満モデルマウスをLactobacillus amylovorus CP1563株破砕菌体配合高脂肪食(重量で0%、1%配合)で3ヶ月間飼育した。その後、肥満モデルマウスにおけるHDL-コレステロール、LDL-コレステロール、中性脂肪、動脈硬化指数、高分子アディポネクチン及び内臓脂肪重量を測定した。

その結果を図3のA〜Fに示す。図3のB、C、D及びFに示すように、CP1563株破砕菌体の投与により、LDL-コレステロール、中性脂肪、動脈硬化指数及び内臓脂肪重量が有意に低減した。また、CP1563株破砕菌体の投与により、HDL-コレステロール及び高分子アディポネクチンが有意に上昇した。従って、乳酸菌の破砕物の投与により、肥満モデルマウスの脂質代謝が有意に改善された。

[実施例5]

Lactobacillus amylovorus CP1563株破砕菌体のHDLコレステロール等の脂質関連マーカー及び体内脂肪への影響を確認するため、12週間摂取試験を実施した。試験は二重盲検並行群間比較試験とし、ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則を遵守して実施した。

CP1563株を自家処方による食品グレードの乳酸菌培地を用いて、37℃、18時間培養し、フィルター濃縮により集菌した。濃縮液を90℃達温殺菌し、凍結乾燥により乳酸菌凍結乾燥粉末を得た。以下の条件で菌体を遊星ボールミルで破砕した。

使用機器:遊星ボールミル(SKF-04、株式会社セイシン企業) 周速:14.0m/s 原料投入量:200g仕込み/ポット 使用メディア:φ2(3kg/ポット) 回転数:110rpm(ポット、テーブルとも) 粉砕時間:10時間 上記破砕(破壊)処理により、菌体の平均長径が処理前の47%に縮小した(2.77μ→1.30μm)CP1563株破砕菌体を得た。

HDLコレステロールが40mg/dL以下且つBMI 28以上の成人男女志願者40名を2群にランダムに割付け、CP1563株破砕菌体を100mg含むカプセル、あるいは、含まないカプセルを1日2カプセル、朝食前又は朝食時に水と一緒に12週間摂取させた。カプセルの配合を表5に示す。

診察・理学的検査は摂取0、8、12週間後に、CTスキャンによる脂肪量測定を摂取0、12週間後に実施した。

結果を図4のAからFに示す。図4のA、B、C及びDに示すように、CP1563株破砕菌体の投与により、体重及びBMIは摂取開始前と比較して有意に低下し、体脂肪率及びBMIはコントロール群と比較して有意な低下を示した(図4B,4C)。また、体温はコントロール群と比較して有意な低下抑制を示した(図4D)。さらに、図4Eに示すように、CP1563株破砕菌体投与により、皮下脂肪面積が摂取開始前と比較して有意に低下した。また、摂取開始時に内蔵脂肪面積が100cm2以上の内臓脂肪型肥満の被験者31名について内臓脂肪量の変化値をみると、図4Fに示すようにCP1563株破砕菌体投与群で内臓脂肪減少量が多かった。従って、CP1563株破砕菌体の投与により、体重、BMI、体脂肪率等の理学的検査値が改善され、皮下脂肪量及び内臓脂肪量が統計的有意に低下することが示された。

したがって、本明細書に記載した菌体は、脂質代謝改善用及び/又は糖代謝改善用組成物を製造するための菌体として使用できることが示された。また、本明細書に記載した菌体は、脂質代謝改善予防用及び/又は糖代謝改善剤予防用組成物を製造するための菌体として使用できることが示された。

さらに、本明細書に記載した菌体は、皮下脂肪低減用組成物及び/又は内臓脂肪低減用組成物を製造するための菌体として使用できること、皮下脂肪蓄積予防用組成物及び/又は内臓脂肪蓄積予防用組成物を製造するための菌体として使用できることが示された。

なお、参考までに上記理学的検査における測定方法の詳細は、以下のとおりである。

摂取0、8、12週間後の来院時は、前日夜21時以降水以外の飲食物を摂らずに午前中に来院させ測定した。

(体重・体脂肪率測定) 株式会社タニタ社の体内脂肪計TBF-310を用いて測定した。

(CTスキャンによる脂肪量測定) CTスキャンは株式会社日立メディコのCTスキャナシステム(CT−W450)を用いた。

機器設定: 管電圧; 120kVp mAs値; 90mAs ウインドウレベル; 0 ウインドウ幅; 1000 撮影方法:以下の(a)から(i)の順に行った。

(a)あらかじめ検査着に着替えさせた被験者を天板に両腕を上げた状態で仰向けに寝かせた。 (b)天板を撮影位置付近まで移動させた。 (c)臍部を露出させ、スリットランプ(ライトローカライザー)で撮影位置あわせをした。 (d)CT撮影時の呼吸の練習を2〜3回させた。 (e)天板の上昇、下降させてランプを確認しながら最終的な撮影位置合わせをした。 (f)1枚を臍の中心部位においてマニュアル設定で撮影した。 (g)次いで同位置から3枚連続のオート設定として臍中心部とその上下部3mmを撮影した。 (h)撮影した3枚の画像を確認して、臍の中心部に近いものを1枚保存。前回測定画像がある場合は、前回画像と測定位置の近いものを採用した。 (i)内臓脂肪計測PCソフト(Fat ScanTM Ver.3.0,N2システム(株))を用いて内臓脂肪面積及び皮下脂肪面積を算出した。

検査時の注意事項: (1)検査日前日はオリゴ糖や食物繊維の多い食事や炭酸飲料の摂取は極力控えるよう指導した。 (2)検査日は被験者にガードル・ボディスーツなどの補正下着は着てこないよう指導した。 (3)検査着に着替える時、男女問わず検査着の下は下着のみとし、パンツは臍から離れるように下げておいてもらう。下着で腹部を絞めつけていた跡がある場合は腰周辺をもみほぐした。 (4)撮影時、天板に被験者が仰向けになったら、真っ直ぐになるよう姿勢を直した。 (5)位置あわせをする前に、被験者の腰を数回浮かして、天板に皮膚の張りが無いようにした。 (6)呼気時に臍部を撮影できるよう、撮影場所を示すライトを当てながら呼吸の練習をさせて位置あわせをした。 (7)前回測定時の撮影画像がある場合は、前回画像を参照しながらモニターで確認し、撮影位置を確かめた。

本発明の脂質代謝及び/又は糖代謝改善剤は、ヒト試験で脂質代謝及び/又は糖代謝を改善することが可能であるため、そのような代謝異常に関連する疾患又は障害の予防、改善又は治療のために有用である。具体的には、本発明により、高いPPARα活性化能のみならず、高いPPARγ活性化能をもつ乳酸菌ラクトバチルス・アミロボラスCP1563株が提供される。本発明の乳酸菌は、PPARα活性化により脂肪燃焼を促進し、PPARγ活性化による脂肪細胞が分泌する善玉因子であるアディポネクチンの発現を増加させることで、様々な疾患又は障害の予防又は治療に使用することができる。従って、本発明は、医薬品、飲食品、畜産などの分野に有用である。

本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。

また、本明細書で使用する微生物の受託番号は、以下のとおりである。

「FERM BP-11255」は、ブダペスト条約下で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305-8566))に2010年5月25日付けで国際寄託されたLactobacillus amylovorus CP1563株の受託番号である。

「FERM BP-11379」は、ブダペスト条約下で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305-8566))に2011年4月22日付けで国際寄託されたLactobacillus amylovorus CP1562株の受託番号である。

「FERM BP-11331」は、ブダペスト条約下で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305-8566))に2007年9月11日付けで国際寄託されたLactobacillus gasseri CP2305株の受託番号である。

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