発酵乳含有飲料 |
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申请号 | JP2015522727 | 申请日 | 2014-06-04 | 公开(公告)号 | JPWO2014199876A1 | 公开(公告)日 | 2017-02-23 |
申请人 | アサヒ飲料株式会社; | 发明人 | 桃子 宗; 康伸 大塚; | ||||
摘要 | 発酵過程で変性を受けた 乳蛋白 質粒子を含み、長期保存安定化が極度に困難な発酵乳含有飲料において、長期間乳蛋白質の凝集及び沈殿、並びに離 水 が抑制され、さらに風味として糊感がなく、喉越しが良好な発酵乳含有飲料を提供する。この発酵乳含有飲料は、無脂乳固形分を含む発酵乳と、大豆多糖類と、HMペクチンと、を含有し、無脂乳固形分の含有量が、飲料全量に対して0.5〜6.0質量%であり、大豆多糖類及びHMペクチンの合計含有量が、飲料全量に対して0.3〜0.8質量%であり、大豆多糖類とHMペクチンとの含有比率が、質量比で3:1〜1:4である。 | ||||||
权利要求 | 無脂乳固形分を含む発酵乳と、 大豆多糖類と、 HMペクチンと、を含有し、 前記無脂乳固形分の含有量が、飲料全量に対して0.5〜6.0質量%であり、 前記大豆多糖類及び前記HMペクチンの合計含有量が、飲料全量に対して0.3〜0.8質量%であり、 前記大豆多糖類と前記HMペクチンとの含有比率が、質量比で3:1〜1:4である、 発酵乳含有飲料。前記発酵乳含有飲料のブリックス値が20未満である、 請求項1に記載の発酵乳含有飲料。温度50〜90℃及び圧力30〜70MPaの条件で均質化処理が施されている、 請求項1又は2に記載の発酵乳含有飲料。発酵乳に、大豆多糖類及びHMペクチンを、前記大豆多糖類及び前記HMペクチンの合計含有量が飲料全量に対して0.3〜0.8質量%、かつ前記大豆多糖類と前記HMペクチンとの含有比率が質量比で3:1〜1:4となるように添加する工程と、 無脂乳固形分の含有量を、飲料全量に対して0.5〜6.0質量%に調整して発酵乳液を得る工程と、 前記発酵乳液を、温度50〜90℃及び圧力30〜70MPaの条件で均質化処理する工程と、を有する、 発酵乳含有飲料の製造方法。前記均質化処理後に、40℃以下の温度で、往復又は回転運動による機械的振とう処理する工程を有する、 請求項4に記載の発酵乳含有飲料の製造方法。前記均質化処理前に、前記発酵乳含有飲料のブリックス値を20未満に調整する工程を有する、 請求項4又は5に記載の発酵乳含有飲料の製造方法。発酵乳に、大豆多糖類及びHMペクチンを、前記大豆多糖類及び前記HMペクチンの合計含有量が飲料全量に対して0.3〜0.8質量%、かつ前記大豆多糖類と前記HMペクチンとの含有比率が質量比で3:1〜1:4となるように添加し、 温度50〜90℃及び圧力30〜70MPaの条件で均質化処理を実施する、 無脂乳固形分の含有量が飲料全量に対して0.5〜6.0質量%である、発酵乳含有飲料の離水及び沈殿抑制方法。前記均質化処理後に、40℃以下の温度で、往復又は回転運動による機械的振とう処理を実施する、 請求項7に記載の発酵乳含有飲料の離水及び沈殿抑制方法。前記発酵乳含有飲料のブリックス値を20未満に調整する、 請求項7又は8に記載の発酵乳含有飲料の離水及び沈殿抑制方法。 |
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说明书全文 | 本発明は、保存時において長期間乳蛋白質の凝集、沈殿及び離水が抑制され、さらに風味として糊感がなく、喉越しが良好な発酵乳含有飲料に関する。 乳性飲料を製造するに当たり、発酵乳を多く含有する乳性飲料の場合には、飲料中の乳蛋白質の粒子径が大きくなり、保存時に該乳蛋白質を主とする沈殿量が増え、また離水が発生する。これは、発酵乳中の乳蛋白質粒子が、発酵過程で生成した酸による変性を受け、凝集や沈殿を生じやすいためである。保存安定性を向上させるための方策として、安定剤の添加や均質化処理を行うことが一般的に知られているが、十分な効果を得ることができていない。 例えば、非特許文献1には、安定剤の添加量は乳蛋白質粒子径、乳成分含有量と賞味期間を考慮し決定することが記載されている。さらに、粒子径が大きい発酵乳を使用する場合は、ペクチンなどの粘性が高い安定剤を使用すること、酸性化乳の場合は粒子径が比較的小さいので粘性の少ない大豆多糖類でも保存安定性を保つことができること、乳固形分が多い製品には両者を併用する場合もあることが記載されている。また、酸性化乳、発酵乳どちらを使用するにしても製品の保存安定性を保つためには、均質化処理をする必要があることが記載されている。すなわち、乳蛋白質粒子を微細化し安定化させる以外に、安定剤や乳化剤を使用する場合の分散効率を上げるためにホモゲナイザーを用い、10〜20MPaの圧力下で均質化処理することが記載されている。さらに、均質化後の80%粒子径が3μmを越える製品は沈殿が多く商品価値が保てないことが記載されている。 また、特許文献1は、乳に酸味料を添加してpHを3.0〜4.2に調整する乳含有酸性乳飲料においては、大豆食物繊維及びペクチンを使用し、10〜50MPaの圧力下で均質化することで、長期間の保存において凝集・沈殿が実質的に生じることのない、風味に優れ、保存安定性良好な乳含有酸性乳飲料の製造方法を開示している。しかし、特許文献1の酸性乳飲料は発酵乳を含まないものであり、発酵過程で変性を受けた乳蛋白質粒子は含有されておらず、保存安定化させることが極度に困難な飲料ではない。 特許文献2は、安定剤、糖類を溶解し、これに乳成分を混合溶解後、酸性物質を添加してpHを3.5〜4.5に調整し、500〜1500kg/cm2で加圧して均質化処理することにより得られる、保存中に沈殿が少ない酸性乳飲料及びその製造方法を開示している。 特許文献3は、乳性蛋白質含有酸性飲料の製造方法として、発酵乳に糖類等を添加し均質化した後に加熱殺菌して容器充填後、冷却して振とう処理を行う方法を開示している。 また、特許文献4は、低酸度で発酵させたヨーグルト原液に果汁を加え、250〜550気圧、55〜75℃で均質化を行った後、溶存酸素を除去し、密封容器に充填後加熱処理することで、品質が安定して長期間分離せず、褐変及び酸化が極めて少ない風味の高い嗜好性のよい果汁入りヨーグルト飲料が製造できることを開示している。 特許文献5は、発酵乳の原料に添加する乳酸菌として乳酸桿菌及び乳酸球菌を用いる液状発酵乳の製造方法であって、50〜100MPaの均質化圧力で液状発酵乳を得る均質化工程を含む、液状発酵乳の製造方法を開示している。 特許文献6は、殺菌液状発酵乳及び殺菌乳酸菌飲料を製造する際に、ハイメトキシル(HM)ペクチン及び発酵乳を加え、pHを調整して混合液とした後、30℃以上の加熱下で均質化処理を行う製造法を開示している。 特開2001−190254号公報 特開平5−43号公報 特開平6−319449号公報 特開平6−22688号公報 特許第4963747号公報 特開平3−285641号公報
「最新・ソフトドリンクス」、株式会社光琳、平成15年9月30日、p.365−378
上記のように、乳成分に酸味料を加えて酸性化する飲料における製造方法や、ヨーグルト原液あるいは発酵乳に対して加熱条件下及び/又は高圧条件下で均質化処理するヨーグルトドリンク様飲料の製造方法が知られている。しかしながら、発酵乳を含み、長期間乳蛋白質の凝集及び沈殿が抑制され、外観上の商品価値が保たれ、さらに風味として糊感がなく、喉越しが良好な発酵乳含有飲料及びその製造方法は知られていない。 本発明の課題は、発酵過程で変性を受けた乳蛋白質粒子を含み、長期保存安定化が極度に困難な発酵乳含有飲料において、長期間乳蛋白質の凝集及び沈殿、並びに離水が抑制され(以後、単に、長期保存安定性と称することもある)、さらに風味として糊感がなく、喉越しが良好な発酵乳含有飲料を提供することにある。即ち、良好な風味と長期保存安定性を両立した発酵乳含有飲料を提供することを目的とする。 また、本発明の別の観点の課題は、長期保存安定性と良好な風味を両立できる、発酵乳含有飲料の製造方法を提供することにある。更に、発酵乳を多く含有する発酵乳含有飲料の長期保存安定性に有効な、該発酵乳含有飲料の離水及び沈殿抑制方法を提供することにある。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、大豆多糖類及びHMペクチンを、飲料全量に対して特定の含有量で、かつ両者を特定の比率で配合使用することにより、無脂乳固形分の多い発酵乳を多く含有する、長期保存安定性と良好な風味を両立させた発酵乳含有飲料及びその製造方法を開発し、本発明を完成するに至った。更に、長期保存安定性に資する、発酵乳含有飲料の離水及び沈殿抑制方法の発明も完成させた。 即ち、本発明によれば、無脂乳固形分を含む発酵乳と、大豆多糖類と、HMペクチンと、を含有し、前記無脂乳固形分の含有量が、飲料全量に対して0.5〜6.0質量%であり、前記大豆多糖類及び前記HMペクチンの合計含有量が、飲料全量に対して0.3〜0.8質量%であり、前記大豆多糖類と前記HMペクチンとの含有比率が、質量比で3:1〜1:4である、発酵乳含有飲料が提供される。 また、本発明によれば、発酵乳に、大豆多糖類及びHMペクチンを、前記大豆多糖類及び前記HMペクチンの合計含有量が飲料全量に対して0.3〜0.8質量%、かつ前記大豆多糖類と前記HMペクチンとの含有比率が質量比で3:1〜1:4となるように添加して発酵乳液を得る工程と、前記発酵乳液中の無脂乳固形分の含有量を、飲料全量に対して0.5〜6.0質量%に調整する工程と、前記発酵乳液を、温度50〜90℃及び圧力30〜70MPaの条件で均質化処理する工程と、を有する、発酵乳含有飲料の製造方法が提供される。 更に、本発明によれば、無脂乳固形分を0.5〜6.0質量%含有する発酵乳に、大豆多糖類及びHMペクチンを、前記大豆多糖類及び前記HMペクチンの合計含有量が飲料全量に対して0.3〜0.8質量%、かつ前記大豆多糖類と前記HMペクチンとの含有比率が質量比で3:1〜1:4となるように添加し、温度50〜90℃及び圧力30〜70MPaの条件で均質化処理を実施する、発酵乳含有飲料の離水及び沈殿抑制方法が提供される。 本発明の発酵乳含有飲料は、大豆多糖類及びHMペクチンを、飲料全量に対して特定の含有量で、かつ両者を特定の比率で配合使用しているので、保存時において長期間乳蛋白質の凝集及び沈殿、並びに離水が抑制され、さらに風味として糊感がなく、喉越しが良好な発酵乳含有飲料を提供することができる。また、発酵乳を多く含有する飲料でありながら、常温で4ヶ月またはそれ以上の長期間に渡って安定性を維持できるので、常温流通可能な発酵乳含有飲料として提供することができる。 また、本発明の製造方法は、無脂乳固形分の多い発酵乳を多く含有する、長期保存安定性と良好な風味を両立させた発酵乳含有飲料を製造でき、また、本発明の発酵乳含有飲料の離水及び沈殿抑制方法は、当該発酵乳を多く含有する発酵乳含有飲料の安定的な長期保存に有効である。 実施例4,5及び比較例6,7の「とろみ」の評価結果を示すグラフ図である。 実施例4,5及び比較例6,7の「とろみの好ましさ」の評価結果を示すグラフ図である。 実施例4,5及び比較例6,7の「喉越しの良さ」の評価結果を示すグラフ図である。 実施例4,5及び比較例6,7の「全体の風味」の評価結果を示すグラフ図である。
以下、本発明を更に詳細に説明する。 本発明の発酵乳を得るための原料乳としては、動物又は植物由来の乳等、いずれの乳をも用いることができる。例えば、牛乳、山羊乳、羊乳、及び馬乳等の獣乳、並びに豆乳等の植物乳が挙げられる。乳の入手し易さの点で牛乳が好ましい。なお、これらの乳は、単独で、又は2種類以上が配合されて使用されても良い。これらの乳を原料乳として使用する場合、その形態は特に限定されず、全脂乳、脱脂乳あるいは乳清、さらには乳蛋白質濃縮物等を用いることができ、また、粉乳、濃縮乳から還元した乳も使用できる。 本発明で使用する発酵乳は、上記原料乳の微生物による発酵工程を経て製造される発酵酸性乳である。微生物による発酵方法は、通常の発酵乳製造に使用される発酵方法で行えばよく、静置発酵、攪拌発酵、振とう発酵、通気発酵などが挙げられる。発酵は、通常30〜40℃の温度で、pHが酸性になるまで行なえばよい。好ましくはpH3.3〜3.8である。 また、本発明で使用する発酵乳は、予め均質化処理が施されていることが望ましく、さらに、当該発酵乳中の乳蛋白質粒子のメジアン径が1〜10μmであることが好ましく、1〜5μmであることがより好ましい。 この場合の均質化処理は、ホモゲナイザーを用いて実施することが好ましい。他にはダイノーミル等、食品加工に一般に用いられる均質化装置を使用できる。使用するホモゲナイザーの段数(一段式、多段式)については特に限定されない。 均質化温度は、5〜25℃が好ましく、5〜15℃がさらに好ましい。また、均質化圧力については特に限定されないが、15〜50MPaが好ましい。 本発明で使用する大豆多糖類は、大豆製品の製造工程において副成するオカラから抽出精製された多糖類であり、含有されるガラクツロン酸のカルボキシル基に由来して酸性下マイナスに帯電しているものであれば良い。なお、市販のものを用いることができ、例えば、「SM−1200(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)」を使用できる。 大豆多糖類は、乳蛋白質を含めた乳固形分量が比較的少ない、清涼飲料水に分類されるような酸性の乳性飲料に対する安定化剤として使用される。しかし、本発明が対象とする、発酵過程において変性を受けた乳蛋白質量の多い発酵乳を多く含む飲料(発酵乳含有飲料)に対しては、単独使用ではその安定化性能が不十分であり、長期間に渡って離水、及び乳蛋白質粒子の凝集・沈殿を抑制することができない。 本発明で使用するHMペクチンとは、主に柑橘類から抽出される多糖類である。市販のHMペクチンを用いることができ、エステル化度が65〜75%のものが好適である。例えば、「YM−115−LJ(三晶株式会社製)」等を使用できる。 なお、HMペクチンは酸性の乳性飲料の安定化剤として使用される。しかし、本発明が対象とする、発酵過程において変性を受けた乳蛋白質量の多い発酵乳を多く含む飲料に対しては、大豆多糖類同様、単独使用ではその安定化性能が不十分であり、長期間に渡って離水、及び乳蛋白質粒子の凝集・沈殿を抑制することができない。 また、発酵過程において変性を受けた乳蛋白質量の多い発酵乳を多く含む飲料に対して、単に大豆多糖類とHMペクチンを配合使用するだけでは、離水防止、及び乳蛋白質粒子の凝集・沈殿抑制の点で、満足のいく効果を得ることができない。 発酵過程による酸性度の変化等、発酵に伴う変性の影響を受けた乳蛋白質等の無脂乳固形分粒子は、当該無脂乳固形分自体が多く含有されていることとも相まって、発酵乳中での長期間の分散安定化が困難となる。発酵過程において、乳蛋白質粒子等の無脂乳固形分粒子に、何らかの凝集点が形成されることが予想されるが、明確なことは解明されていない。 このように安定性に問題のある発酵乳含有飲料の長期保存安定性を達成するためには、糖を添加して糖度の高い、即ち、ブリックス(Brix)値の高い飲料とすることが従来から実施されている手段であった。これは、糖の分散力によって長期保存安定性を付与するという技術である。従って、糖度を抑え(低ブリックス値の)まろやかかつ爽やかな風味を有する発酵乳含有飲料とするということは、その発想自体ほとんど考えられてこなかった。 以上のように、本発明の発酵乳含有飲料は、発酵に伴う変性の影響を受けた乳蛋白質等の無脂乳固形分を多く含有し、具体的には、無脂乳固形分を0.5〜6.0質量%含有するものである。無脂乳固形分の含有量の下限は、0.9質量%がより好ましく、上限としては5.0質量%がより好ましく、4.0質量%がさらに好ましい。 無脂乳固形分が0.5質量%未満では、発酵乳含有飲料に期待される「風味の厚み」が感じられず満足のいく味とならない。一方、無脂乳固形分が6.0質量%を超えると、乳蛋白質粒子の凝集・沈殿抑制が極度に困難となる。 このように、発酵に伴う変性の影響を受けた無脂乳固形分を多く含む(すなわち、乳蛋白質粒子を多く含む)発酵乳を多く含有する飲料は、長期保存安定性と良好な風味を両立させることが極めて困難であるところ、大豆多糖類及びHMペクチンの特異的な配合使用により、本発明はその両立を達成したものである。 すなわち、本発明においては、大豆多糖類及びHMペクチンの合計含有量が飲料全量に対して0.3〜0.8質量%、かつ大豆多糖類とHMペクチンとの含有比率が質量比で3:1〜1:4となるように添加された発酵乳含有飲料とすることにより、顕著に良好な離水防止、及び乳蛋白質粒子の凝集・沈殿抑制を達成し得たものである。 大豆多糖類とHMペクチンの含有比率が質量比で3:1〜1:4であるという条件において、大豆多糖類とHMペクチンを上記範囲で配合使用することが必要である。両者の合計含有量が0.3質量%未満では、発酵乳含有飲料中で乳蛋白質を長期間安定的に分散させることができず、凝集及び沈殿が発生する恐れがある。一方、両者の合計含有量が0.8質量%を超えると、得られる飲料の風味不良が生じたり、粘度が高くなり糊感が生じて清涼感が失われたりする恐れがある。 なお、より好ましくは、上記要件を満足する条件において、HMペクチンの含有量を飲料全量に対して0.1〜0.4質量%とする。長期保存安定性と良好な清涼感を高度に両立できるからである。特に、0.4質量%以下であれば、糊感の発生を良好に抑制することができる。 本発明の発酵乳含有飲料は、喉越しの良さ及び清涼感の点で、ブリックス値が20未満であることが好ましく、10〜19がより好ましい。ブリックス値が20未満であることは、飲料中における乳蛋白質粒子の安定的な分散に寄与すると考えられる糖の含有量が少ないということであり、上記した通り、本発明が目指した発酵乳含有飲料は、離水防止、及び乳蛋白質粒子の凝集・沈殿抑制が非常に難しい飲料である。 なお、本発明におけるブリックス値は、20℃における糖用屈折計の示度であり、例えばデジタル屈折計Rx-5000(アタゴ社製)を使用して20℃で測定した固形分量とすることができる。 ブリックス値の調整は、例えば、糖類や甘味料を含有させる方法により行うことができる。糖類としては、例えば、砂糖、果糖、ぶどう糖、乳糖、麦芽糖等の単糖や二糖、エリスリトール、マルチトール等の糖アルコールが挙げられる。甘味料としては、例えば、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ステビア等の高甘味度甘味料が挙げられる。このとき、最終製品の発酵乳含有飲料におけるブリックス値が上記のように20未満となるようにすることが望ましい。 本発明の発酵乳含有飲料は酸性であることが好ましく、そのpHとして2.5〜4.5が好ましく、3.0〜4.0がより好ましい。pHがこの範囲であれば喉越しが良く清涼感のある発酵乳含有飲料とすることができる。 本発明の発酵乳含有飲料のpHを調整するために、酸味料や、果汁等を使用することができる。酸味料としては、例えば、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、フィチン酸、グルコン酸、コハク酸、フマール酸等の有機酸やリン酸等の無機酸や、それらの塩が挙げられる。果汁としては、例えば、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、グレープ、モモ、リンゴ等の果汁が挙げられる。また、酸味料や果汁等を使用せず、発酵乳の発酵度を調節してpHを上記好ましい範囲に調整してもよい。 本発明の発酵乳含有飲料は、その他の成分として、所望により、全脂乳、脱脂乳あるいは乳清、さらには乳蛋白質濃縮物等、また、粉乳、濃縮乳から還元した乳を用いてもよく、その他、クリーム、練乳等の乳製品を配合してもよい。 本発明の発酵乳含有飲料中の乳蛋白質粒子の粒子径(直径)は、メジアン径として0.7μm以下である。ここで、メジアン径とは、粒度分布を有する粒子群の粒度を表す指標として一般的に用いられる値であり、分布の中央値に対応する粒子径である。 メジアン径は、粒度分布測定装置、例えば、(株)堀場製作所製の型式LA−920等を用いて測定することができる。 また、本発明の発酵乳含有飲料においては、飲料としての一般的な粘度であれば特に限定されるものではないが、粘度が高くなると糊感が生じ、とろみとして好ましくなく、清涼感が失われるので、室温下で、10mPa・s以下の粘度であることが好ましい。 なお、発酵乳含有飲料の粘度は、例えば、芝浦セムテック株式会社製のビスメトロン粘度計を用いて測定することができる。 次に、本発明の発酵乳含有飲料の製造方法について説明する。 原乳を、乳酸菌等を使用して発酵させた後、ホモゲナイザーで均質化処理して発酵乳を得る。この段階での均質化は、例えば、温度5〜25℃、圧力15MPaの条件で行う。当該条件以外であっても、発酵乳中の乳蛋白質粒子のメジアン径が1〜10μmとなるように均質化できれば、他の均質化条件を採用してもよい。 つづいて、上記発酵乳に大豆多糖類溶液及びHMペクチン溶液、並びに所望により他の添加成分を加え、必要に応じて精製水等の水により濃度を調整する。なお、この中間段階のものを便宜上発酵乳液と称することとする。 その後、更に、ホモゲナイザーによる発酵乳液の均質化処理を実施する。この段階での均質化条件としては次の通りである。まず、温度は下限として50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。一方、上限としては、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。圧力としては、下限として30MPa以上が好ましく、40MPa以上がより好ましく、50MPa以上がさらに好ましい。一方、上限としては、70MPa以下が好ましい。 発酵乳液に上記均質化処理を実施した後、容器充填して40℃以下に冷却した後に振とう処理を施す。振とう処理は、機械的振とうが好ましく、往復又は、回転運動等を伴う方式で連続処理できる装置を使用することにより行うのが好ましい。具体的には、350mL容器を例とした場合、ストローク10〜30cmで1〜2往復/秒、3〜6秒程度の往復運動、又は容器の長手方向で1〜2回転/秒、3〜6秒程度の回転運動の振とう処理が好ましい。容器容量が異なる場合は、上記と同程度の振とう処理となるように調整すればよい。 以上の工程により、本発明の発酵乳含有飲料を製造することができる。なお、飲料であるので、殺菌処理工程を施すことが好ましい。殺菌処理工程は、発酵乳液の均質化処理の前後に行うか、容器充填前後に行う。殺菌処理の方法は、特に制限されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌などの方法を採用することができる。 本発明の発酵乳含有飲料に使用する飲料容器は、特に限定されるものではないが、ガラス、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)、紙、アルミ、スチール製の密封容器が挙げられる。また、容量についても特に限定はされないが、通常50mL〜10L程度である。 以下本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されない。 <発酵乳含有飲料の評価方法> 1.乳蛋白質粒子径 発酵乳含有飲料の製造直後、及び長期保存後について、発酵乳含有飲料中の乳蛋白質粒子の粒径(直径)及び粒度分布を、粒度分布測定装置(型式LA−920、(株)堀場製作所製)を用いて測定した。なお、粒径としてはメジアン径を採用した。 なお、長期保存の条件は、容器充填後37℃で4ヶ月間の静置保存とした。以後の評価においても同様である。 2.離水性 長期保存後の離水性の評価として、下記式により算出した値を離水度と規定し、離水度によって評価した。数値の大きい方が、離水が少なく良好であることを示す。 長期保存後の発酵乳含有飲料(350mL容量のPET充填品)の底面から高さ1/2の位置から、内容液をサンプリングし、得られた内溶液を10倍に希釈した後、吸光度A(650nm)を測定した。また、保存飲料全体を振とうして十分に分散させて均一にした後、その分散後の内容液を10倍に希釈し、吸光度B(650nm)を測定した。そして、次式によって、離水度C(%)を算出した。 C(%)=A/B×100 3.沈殿物の生成 沈殿物生成の状態を、長期保存後の発酵乳含有飲料(350mL容量のPET充填品)について、底部沈殿物の厚さ(沈降厚:mm)を計測することによって評価した。 4.粘度 発酵乳含有飲料の製造直後の25℃下での粘度を、ビスメトロン粘度計(型式 VDA型、芝浦セムテック株式会社製)により測定した。ローターとしてはNo.1ローターを使用した。 5.風味等の評価(官能評価) 5℃に冷却した製造直後の発酵乳含有飲料について以下のように官能評価を行った。判定員として習熟したパネル13名により、「とろみ」、「とろみの好ましさ」、「喉越しの良さ」、及び「全体の風味」の各項目について評価した。 「とろみ」は下記の採点基準に従って、0〜8点まで、その他の項目については下記基準に従って、−4〜+4点までの、9段階で評価し、その平均点数を算出した。 (とろみ) 0点:ない 2点:わずかにある 4点:ややある 6点:ある 8点:かなりある (とろみの好ましさ) −4点:好ましくない −2点:やや好ましくない 0点:どちらでもない +2点:やや好ましい +4点:好ましい (喉越しの良さ、及び全体の風味) −4点:悪い −2点:やや悪い 0点:どちらでもない +2点:やや良い +4点:良い 実施例1 9.0質量%還元脱脂粉乳を、乳酸菌を用いて37℃で22時間発酵させた後、10℃下、ホモゲナイザーで、圧力15MPaで均質化処理を行った。得られた発酵乳中の乳蛋白質粒子のメジアン径は、4.2957μmであった。 次に、得られた発酵乳122.2gに対し、グラニュ糖101.6gを添加して混合溶解した。次いで、2質量%大豆多糖類水溶液50g及び2質量%HMペクチン水溶液200gを添加し、さらに、香料を添加した。最後にイオン交換水を用いて全量を1000gとした(発酵乳液)。大豆多糖類及びHMペクチンの飲料全体に対する含有量は表1に示した通りである。なお、大豆多糖類としては「SM−1200(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)」、HMペクチンとしては「YM−115−LJ(三晶株式会社製)」を使用した。 得られた発酵乳液を70℃に加熱した状態で、ホモゲナイザーを用いて圧力50MPaで均質化処理を行った。その後、加熱殺菌して350mL容量のPETボトルにホットパック充填した。つづいて、流水中で40℃以下になるまで静置冷却した後、長手方向で2回転/秒、3秒程度の回転運動の振とう処理を実施し、本発明の発酵乳含有飲料とした。 得られた実施例1の発酵乳含有飲料について、上記1.乳蛋白質粒子径、2.離水性、及び3.沈殿物の生成について評価した。結果を表1に示す。 実施例2〜5、比較例1〜5 大豆多糖類及びHMペクチンについて、表1に示した含有量とした以外は実施例1と同様にして発酵乳含有飲料を製造し、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
表1から明確なように、実施例1〜5の発酵乳含有飲料は、乳蛋白質粒子径、離水度、及び沈殿厚のすべてにおいて良好な結果であり、長期保存安定性に優れていた。 それに反し、比較例1は乳蛋白質粒子径が大きいため、沈殿厚も大きく沈殿量が多かった。また、比較例2、3、4は離水度が最も小さいため飲料の上部は離水しており、さらに沈殿厚も大きく沈殿量が多く、保存安定性において満足いくものではなかった。さらに、比較例5は離水度が小さいため飲料の上部は離水していた。これは、各比較例が、大豆多糖類とHMペクチンの全飲料に対する含有量、及び配合割合が本発明の範囲を外れているためである。 また、各実施例及び各比較例の結果から、乳蛋白質粒子径のメジアン径が、粒径及びその経時安定性の点で良好であっても、発酵乳含有飲料の長期安定性に大きな差が存在することが判り、大豆多糖類とHMペクチンの全飲料に対する含有量、及び配合割合を、本発明のように特定することが重要である。 実施例4及び5で製造した発酵乳含有飲料について、4.粘度、及び5.風味等の評価について評価した。結果を表2、及び図1〜4に示す。 比較例6、7 大豆多糖類及びHMペクチンについて、表2に示した含有量とした以外は実施例1と同様にして発酵乳含有飲料を製造し、実施例4及び5と同様に、4.粘度、及び5.風味等の評価について評価した。結果を表2、及び図1〜4に示す。
大豆多糖類及びHMペクチンの合計含有量が増加するほど、特にHMペクチンの含有量が増加するほど粘度が上がり、「とろみ」評価においてとろみが強く感じられた(表2、図1)。また、「とろみの好ましさ」については、実施例4及び5はともに好ましかったが、比較例6及び7はどちらでもないから好ましくない、の範囲であった(図2)。さらに、「喉越しの良さ」及び「全体の風味」についても、実施例4及び5はともに良かったが、比較例6及び7はどちらでもないから悪い、の範囲であった(図3、4)。 従って、実施例4及び5は、風味として糊感がなく、喉越しが良好な発酵乳含有飲料である。 実施例6〜12、比較例8、9 均質化処理条件の温度及び圧力を表3に示した条件とした以外は、実施例4と同様にして発酵乳含有飲料を製造し、実施例4と同様に、1.乳蛋白質粒子径、2.離水性、及び3.沈殿物の生成について評価した。結果を表3に示す。 参考例1、2 発酵乳を使用しない酸性化乳飲料を次のようにして製造し、参考例として同様に評価した。 20質量%の還元脱脂粉乳49.5gに対し、50質量%グラニュ糖水溶液196gを添加して混合溶解した。その後、2質量%大豆多糖類水溶液125gを添加した後、10質量%クエン酸水溶液20gを添加した。さらに、2質量%ペクチン水溶液125gを添加した。その後、香料を添加した。最後にイオン交換水を用いて全量を1000gとした。 得られた調合液を表3に示す条件で均質化処理を行った(温度、圧力以外は実施例1と同じ)。その後、加熱殺菌して350mL容量のPETボトルにホットパック充填した。つづいて、流水中で40℃以下になるまで静置冷却して参考例の酸性化乳飲料とした。なお、振とう処理は実施しなかった。 得られた参考例の酸性化乳飲料について、上記1.乳蛋白質粒子径、2.離水性、及び3.沈殿物の生成について実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。 実施例13 9.0質量%還元脱脂粉乳を、乳酸菌を用いて30℃で24時間発酵させた後、10℃下、ホモゲナイザーで、圧力15MPaで均質化処理を行った。得られた発酵乳中の乳蛋白質粒子のメジアン径は、4.7280μmであった。 次に、得られた発酵乳400.0gに対し、グラニュ糖131.3gを添加して混合溶解した。次いで、2質量%大豆多糖類水溶液125g及び2質量%HMペクチン水溶液125gを添加し、さらに、香料を添加した。最後にイオン交換水を用いて全量を1000gとした(発酵乳液)。 得られた発酵乳液について、実施例1と同様に均質化処理及び振とう処理を実施して発酵乳含有飲料を製造し、1.乳蛋白質粒子径、及び3.沈殿物の生成について実施例1と同様に評価した。2.離水性については、吸光度A、B測定の際に、内容液を40倍に希釈して測定した。結果を表3に示す。 比較例10 均質化処理条件の温度及び圧力を表3に示した条件とした以外は、実施例13と同様にして発酵乳含有飲料を製造し、実施例13と同様に、1.乳蛋白質粒子径、2.離水性、及び3.沈殿物の生成について評価した。結果を表3に示す。
表3から明確なように、同一ブリックス値かつ同一無脂乳固形分量においては、温度50〜90℃、かつ圧力30〜70MPaの条件下で均質化処理を行うと、離水度、沈殿厚、粒子径のすべてにおいて良好な結果が得られた。特に、実施例13は保存後の粒子径の増大もみられず、良好な結果であった。 なお、参考例1及び2は、発酵乳を含有しない酸性化乳飲料であるため、均質化処理条件にかかわらず、また振とう処理を実施しなくても、離水度、沈殿厚、粒子径のすべてにおいて良好な結果が得られた(表3)。 |