Method of manufacturing the steel deck and the steel deck

申请号 JP2007156454 申请日 2007-06-13 公开(公告)号 JP5435187B2 公开(公告)日 2014-03-05
申请人 株式会社Ihi; 发明人 幸太郎 猪瀬; 孝昭 松岡; 順子 神林; 史朗 齊藤;
摘要
权利要求
  • 橋梁の舗装部分を載せる鋼板と、
    この鋼板の舗装部分載置面とは反対側の下向き面に溶接により接合した単数又は複数の補剛材を備え、
    前記補剛材の鋼板と当接する縁部にレ型開先を形成すると共に、このレ型開先にアーク溶接を施して溶接金属を装填してなる鋼床版において、
    前記溶接金属を360℃以下50℃以上でマルテンサイト変態を生起する低変態温度溶接材料とし、この溶接金属の希釈率を一定にするべく溶け込み率を管理して得たデータに基づいて、前記補剛材におけるレ型開先の拡開角度を設定すると共に、該レ型開先の奥に溶接しない部分を残すべくアーク溶接の溶接条件を設定することを特徴とする鋼床版。
  • 前記溶接金属の希釈率を一定にするべく溶け込み率を管理して得たデータに基づいて、補剛材におけるレ型開先の拡開角度を約45度に設定した請求項 に記載の鋼床版。
  • 前記補剛材は、鋼板の下向き面とともに閉断面構造を形成する部材であって、
    前記鋼板と当接して前記閉断面構造を形成する補剛材の両縁部に、互いに相反する方向に拡開するレ型開先が形成してある請求項 又は に記載の鋼床版。
  • 前記補剛材は、断面U字状の形鋼である請求項 に記載の鋼床版。
  • 前記低変態温度溶接材料は、少なくとも炭素を0.20質量%以下、クロムを3.0〜13.0質量%及びニッケルを3.0〜12.0質量%包含し、マルテンサイト変態開始温度から室温までの温度範囲での線膨張量を1mmあたり−3×10 -3 mm以上とするべく調整した鉄合金である請求項 のいずれか一つの項に記載の鋼床版。
  • 請求項 又は に記載の鋼床版を製造する鋼床版の製造方法であって、
    溶接金属として360℃以下50℃以上でマルテンサイト変態を生起する低変態温度溶接材料を選択する第一工程と、
    鋼板と当接する補剛材の縁部にレ型開先を形成する第二工程と、
    このレ型開先に、該レ型開先の奥に溶接しない部分を残すべく設定したアーク溶接の溶接条件に従って溶接を施して前記溶接金属を装填する第三工程と、
    を有することを特徴とする鋼床版の製造方法。
  • 請求項 又は に記載の鋼床版を製造する鋼床版の製造方法であって、
    溶接金属として360℃以下50℃以上でマルテンサイト変態を生起する低変態温度溶接材料を選択する第一工程と、
    鋼板と当接して閉断面構造を形成する補剛材の両縁部に、互いに相反する方向に拡開するレ型開先をそれぞれ形成する第二工程と、
    これらのレ型開先に、該レ型開先の奥に溶接しない部分を残すべく設定したアーク溶接の溶接条件に従って溶接を施して前記溶接金属をそれぞれ装填する第三工程と、
    を有することを特徴とする鋼床版の製造方法。
  • 第一工程において、少なくとも炭素を0.20質量%以下、クロムを3.0〜13.0質量%及びニッケルを3.0〜12.0質量%包含し、マルテンサイト変態開始温度から室温までの温度範囲での線膨張量を1mmあたり−3×10 -3 mm以上とするべく調整した鉄合金からなる低変態温度溶接材料を選択する請求項 又は に記載の鋼床版の製造方法。
  • 第三工程において、レ型開先に溶接を1パスで施工して溶接金属を装填する請求項 のいずれか一つの項に記載の鋼床版の製造方法。
  • 说明书全文

    本発明は、一方の被溶接材の面上に他方の被溶接材を溶接により接合する溶接継手に係わり、とくに、橋梁における舗装部分を支持する鋼板(デッキプレート)へ補剛材(リブ)を溶接により接合するのに好適な溶接継手の構造を採用した鋼床版及びその製造方法に関するものである。

    上記した鋼床版は、主として鋼板で構成されるが、鋼板だけでは剛性を十分に確保できないことから、通常は鋼板の舗装部分載置面とは反対側の下向き面に複数の補剛材を所定の間隔で配置するようにしている。
    このような鋼床版としては、例えば、鋼板に対して補剛材としての板鋼をアーク溶接(SAW、SMAW、GMAW等)によって複数取り付けてなるものがあるほか、鋼板とともに閉断面構造を形成し得る断面V字状又は断面U字状の鋼材を補剛材として、この補剛材を鋼板に対してアーク溶接により複数取り付けてなるものがある。

    この際、上記した鋼床版における鋼板と補剛材との接合部位には、補剛材の鋼板と当接する縁部に形成したレ型開先にアーク溶接による溶接金属を装填してなる溶接継手が採用され、補剛材が断面V字状又は断面U字状の鋼材である場合には、この補剛材における鋼板と当接する一対の縁部に上記溶接継手がそれぞれ採用され、補剛材の両縁部には互いに相反する方向に拡開するレ型開先がそれぞれ形成されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。

    特開2001−248114号公報

    ところが、上記した鋼床版に採用される溶接継手では、アーク溶接後に溶接金属の温度が低下すると、溶接金属が熱収縮して金属部材内に引っ張り方向の残留応が生じることから、この溶接残留応力によって鋼板と補剛材との組み付け精度が低下したり、両部材の引張強度や圧縮強度や疲労強度が低下したりしてしまう。
    加えて、補剛材が断面V字状又は断面U字状を成す鋼材である場合には、補剛材の外側からの溶接作業に限定されることから、メルトスルー(溶け過ぎ)による溶接品質の悪化を回避しようとすると、溶接継手におけるレ型開先の先端部、すなわち、閉断面構造を成す部位の内側のルート部に溶接されない部分(溶け残り部分)が生じてしまう。

    そして、このように、溶接継手に溶接残留応力が発生するのに加えて、溶け残り部分が生じると、上記した橋梁における舗装部分を支持する鋼床版の場合には、繰返して曲げ荷重を受ける関係上、溶け残り部分を起点とする鋼板貫通型き裂や溶接ビード貫通型き裂が発生してしまい、その結果、疲労強度が急激に低下して疲労破壊をもたらすことがないとは言えないという問題を有している。

    また、従来において、上記したような溶け残り部分を起点とする鋼板貫通型や溶接ビード貫通型のき裂が発生したり、その兆しが表れたりした場合には、橋梁の舗装部分を剥がして鋼床版の修理や交換を行わなくてはならず、その分だけ維持管理コストが高くついてしまうという問題があり、これらの問題を解決することが従来の課題となっていた。
    本発明は、上記した課題を解決するためになされたもので、例えば、橋梁における舗装部分を支持する鋼床版に用いた場合には、疲労強度の向上を図って疲労破壊の発生を阻止することができると共に、橋梁の維持管理コストの低減をも実現することが可能な鋼床版及び鋼床版の製造方法を提供することを目的としている。

    本発明の請求項に係る発明は、橋梁の舗装部分を載せる鋼板と、この鋼板の舗装部分載置面とは反対側の下向き面に溶接により接合した単数又は複数の補剛材を備え、前記補剛材の鋼板と当接する縁部にレ型開先を形成すると共に、このレ型開先にアーク溶接を施して溶接金属を装填してなる鋼床版において、前記溶接金属を360℃以下50℃以上でマルテンサイト変態を生起する低変態温度溶接材料とし、この溶接金属の希釈率を一定にするべく溶け込み率を管理して得たデータに基づいて、前記補剛材におけるレ型開先の拡開度を設定すると共に、該レ型開先の奥に溶接しない部分を残すべくアーク溶接の溶接条件を設定する構成としたことを特徴としている。

    また、請求項に係る発明は、前記溶接金属の希釈率を一定にするべく溶け込み率を管理して得たデータに基づいて、補剛材におけるレ型開先の拡開角度を約45度に設定した構成としている。
    さらに、請求項に係る発明において、前記補剛材は、鋼板の下向き面とともに閉断面構造を形成する部材であって、前記鋼板と当接して前記閉断面構造を形成する補剛材の両縁部に、互いに相反する方向に拡開するレ型開先が形成してある構成とし、請求項として、前記補剛材は、断面U字状の形鋼である構成としている。

    さらにまた、請求項に係る発明において、前記低変態温度溶接材料は、少なくとも炭素を0.20質量%以下、クロムを3.0〜13.0質量%及びニッケルを3.0〜12.0質量%包含し、マルテンサイト変態開始温度から室温までの温度範囲での線膨張量を1mmあたり−3×10 -3 mm以上とするべく調整した鉄合金である構成としている。

    そして、請求項に係る発明は、請求項又はに記載の鋼床版を製造する鋼床版の製造方法であって、溶接金属として360℃以下50℃以上でマルテンサイト変態を生起する低変態温度溶接材料を選択する第一工程と、鋼板と当接する補剛材の縁部にレ型開先を形成する第二工程と、このレ型開先に、該レ型開先の奥に溶接しない部分を残すべく設定したアーク溶接の溶接条件に従って溶接を施して前記溶接金属を装填する第三工程とを有する構成としている。

    また、請求項に係る発明は、請求項又はに記載の鋼床版を製造する鋼床版の製造方法であって、溶接金属として360℃以下50℃以上でマルテンサイト変態を生起する低変態温度溶接材料を選択する第一工程と、鋼板と当接して閉断面構造を形成する補剛材の両縁部に、互いに相反する方向に拡開するレ型開先をそれぞれ形成する第二工程と、これらのレ型開先に、該レ型開先の奥に溶接しない部分を残すべく設定したアーク溶接の溶接条件に従って溶接を施して前記溶接金属をそれぞれ装填する第三工程とを有する構成としている。

    さらに、請求項に係る発明は、第一工程において、少なくとも炭素を0.20質量%以下、クロムを3.0〜13.0質量%及びニッケルを3.0〜12.0質量%包含し、マルテンサイト変態開始温度から室温までの温度範囲での線膨張量を1mmあたり−3×10 -3 mm以上とするべく調整した鉄合金からなる低変態温度溶接材料を選択する構成としている。

    さらにまた、請求項に係る発明は、第三工程において、レ型開先に溶接を1パスで施工して溶接金属を装填する構成としている。

    発明の請求項及びの鋼床版では、上記した構成としているので、溶接金属が所定の低温域において熱収縮を相殺するように変態膨張して、鋼板内及び補剛材内には溶接残留応力が殆ど発生しないこととなり、その結果、溶け残り部分があったとしてもき裂の発生頻度が著しく減って、鋼床版の組み付け精度や引張強度や圧縮強度の低下を回避し得ることとなり、したがって、疲労強度の向上を実現可能である。

    加えて、例え鋼板貫通型や溶接ビード貫通型のき裂が発生する兆しが表れたとしても、橋梁の現場において補修をすることで、疲労強度を回復させたり高めたりすることができ、橋梁の舗装部分を剥がして鋼床版の修理や交換を行わなくて済む分だけ、維持管理コストの大幅な低減を実現可能であり、この際、溶接金属の希釈率を一定に管理し得るので、再現性良好に疲労強度を回復ないし向上させることができる。

    また、本発明の請求項の鋼床版では、上記した構成としているので、断面V字状又は断面U字状を成す補剛材の外側からの溶接作業に限定されて、レ型開先の先端部位に溶け残り部分が生じ易い状況にも拘わらず、溶接金属が所定の低温域において熱収縮を相殺するように変態膨張して、鋼板内及び補剛材内の双方には溶接残留応力が殆ど発生しないこととなり、その結果、十分な剛性が確保されつつき裂の発生頻度も著しく減るので、疲労強度の向上を実現することができる。

    さらに、請求項の鋼床版によれば、補剛材を入手容易な断面U字状の形鋼としているので、入手の手間を省いたうえで、十分な剛性を確保しつつ疲労強度を向上させることができる。
    さらにまた、請求項の鋼床版によれば、溶接金属として適正な組成の鉄合金を用いることより、溶接金属が良好に所定の低温域において熱収縮を相殺するように変態膨張することとなって、鋼板内及び補剛材内の双方に溶接残留応力が殆ど発生することがなく、上記溶け残り部分からのき裂の発生頻度が格段に減少する。 したがって、鋼床版の組み付け精度や引張強度や圧縮強度の低下を回避することができ、疲労強度のより一層の向上を実現することが可能である。

    そして、請求項の鋼床版の製造方法では、第一工程において溶接金属として所定の低温域でマルテンサイト変態を生起する低変態温度溶接材料を選択するのに続いて、第二工程において補剛材の縁部にレ型開先を形成し、第三工程においてこのレ型開先に溶接を施工して上記低変態温度溶接材料からなる溶接金属を装填するようにしているので、溶接金属が所定の低温域において熱収縮を相殺するように変態膨張して鋼板内及び補剛材内の双方に溶接残留応力が殆ど発生することがなく、その結果、レ型開先の先端部位に生じ易い溶け残り部分からのき裂の発生頻度が大幅に減少することとなる。 したがって、高疲労強度の鋼床版を得ることができる。

    また、請求項の鋼床版の製造方法では、第一工程において溶接金属として所定の低温域でマルテンサイト変態を生起する低変態温度溶接材料を選択するのに続いて、第二工程において鋼板と当接して閉断面構造を形成する補剛材の両縁部に、互いに相反する方向に拡開するレ型開先をそれぞれ形成し、第三工程においてこれらのレ型開先に溶接を施して前記溶接金属をそれぞれ装填するようにしているので、断面V字状又は断面U字状を成す補剛材の外側からの溶接作業に限定されて、レ型開先の先端部位に溶け残り部分が生じ易い状況にも拘わらず、溶接金属が所定の低温域において熱収縮を相殺するように変態膨張して、鋼板内及び補剛材内の双方には溶接残留応力が殆ど発生しないこととなり、その結果、十分な剛性が確保されつつき裂の発生頻度も著しく減るので、高疲労強度の鋼床版を得ることが可能になる。

    さらに、請求項の鋼床版の製造方法によれば、溶接金属として適正な組成の鉄合金を用いることより、溶接金属が良好に所定の低温域において熱収縮を相殺するように変態膨張することとなって、鋼板内及び補剛材内の双方に溶接残留応力が殆ど発生することがなく、上記溶け残り部分からのき裂の発生頻度が格段に減少する。 したがって、極めて高い疲労強度の鋼床版を得ることが可能である。

    さらにまた、請求項の鋼床版の製造方法によれば、多パス(多数盛り)施工ではなく1パス(一度盛り)施工によって溶接作業を済ませるようにしているうえ、メルトスルーを気にする必要がないので、溶接作業工数の低減及び溶接作業性の向上を実現することが可能である。

    以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
    ここでは、本発明の一実施形態として、本発明を橋梁における鋼床版箱桁の鋼床版に適用した場合を例に挙げて説明する。
    図1に示すように、鋼床版箱桁1は、複数の主桁2と、主桁2,2間に位置させた中床版としての鋼床版3と、主桁1の外側に位置させた側床版としての鋼床版3とから主として成っており、鋼床版3及び主桁2は図示しない縦継手を介して接合してあると共に桁長手方向に連続する鋼床版3同士は図示しない横継手を介して接合してある。

    この鋼床版箱桁1の鋼床版3は、図2にも示すように、橋梁の舗装部分Rを載せる鋼板10と、この鋼板10の舗装部分載置面11とは反対側の下向き面12に配置した複数の補剛材20を備えている。 この補剛材20は、鋼板10とともに閉断面構造を形成し得る断面U字状の鋼材としてあり、図3に示すように、鋼板10とこれに当接させた補剛材20の一対の縁部21,21との間にアーク溶接により全長にわたって溶接金属盛30を形成することで鋼板10に取り付けてある。

    この鋼板10と補剛材20との接合部位には、補剛材20の縁部21に形成したレ型開先22にアーク溶接による溶接金属を装填してなる溶接継手がそれぞれ採用してあり、補剛材20の両縁部21,21における各レ型開先22,22は、互いに相反する方向に向けて拡開している。
    この場合、図4に拡大して示すように、溶接金属を所定の低温域でマルテンサイト変態を生起する低変態温度溶接材料としていると共に、補剛材20におけるレ型開先22の拡開角度θを45度としており、このレ型開先22の拡開角度θは、溶接金属の希釈率を一定にするべく溶け込み率を管理して得たデータに基づいて設定している。

    この実施形態において、鋼板10には、所定板厚t1(例えば、12mm)の高疲労特性鋼板を採用した。 この高疲労特性鋼板は、図6の疲労き裂伝播特性を表すグラフに示すように、疲労き裂伝播速度(実斜線で示す)が少なくとも所定応力拡大係数範囲(例えば、18〜28MPa√m)において所定の低速域(例えば、10 −8 〜10 −7 m/cycle)であって、一般の鋼材の疲労き裂伝播速度(破斜線で示す)よりも遅くするべく金属組織を調整した部材である。

    加えて、この高疲労特性鋼板は、図7の疲労強度を表すS−N線図に示すように、一般の鋼材の疲労特性(破線で示す)よりも高い疲労特性(実線で示す)を有するように調整した部材である(例えば、JFEスチール社製:KA36、KD36)。
    一方、断面U字状を成す補剛材20には、所定板厚t2(例えば、6〜8mm)の平板を鋼板10の幅寸法に合わせて切断曲げ加工して成る形鋼を採用した。 なお、この補剛材20にも上記高疲労特性鋼板を採用することが可能である。

    また、アーク溶接を行うための溶接金属として採用する低変態温度溶接材料は、図8の温度と伸びの関係を表すグラフに実線で示すように、同グラフに破線で示す一般の溶接金属よりも低い所定の低温域(例えば、360℃以下50℃以上)のマルテンサイト変態開始点Msでマルテンサイト変態を開始して、変態膨張するように成分組成や熱処理条件等を調整した鉄合金である。

    詳述すれば、低変態温度溶接材料は、少なくともC(炭素):0.20質量%以下、Cr(クロム):3.0〜13.0質量%、Ni(ニッケル):3.0〜12.0質量%を包含し、マルテンサイト変態開始温度から30℃(室温)までの温度範囲における線膨張量が1mmあたり−3×10 −3 mm以上となるように調整した鉄合金であり、溶接割れを防止する観点からC(炭素)については0.12質量%以下であることが好ましく、Si(シリコン)やMn(マンガン)やMo(モリブデン)やNb(ニオブ)等を微量ずつ含むようにすることがより好ましい。

    次に、上記鋼床版3の製造方法について詳しく説明する。
    先ず、鋼板10として、所定板厚t1を有する上記高疲労特性鋼板を選択すると共に、補剛材20として、所定板厚t2を有する断面U字状を成す一般の形鋼を選択するのに続いて、アーク溶接を行うための溶接金属として、上記低変態温度溶接材料を選択する。 このとき、補剛材20として、上記高疲労特性鋼板を採用してもよい(第一工程)。

    次に、補剛材20のうちの鋼板10と当接して閉断面構造を形成する一対の縁部21,21に、閉断面構造の外側に向けて拡開する、すなわち、互いに相反する方向に向けて拡開するレ型開先22,22をそれぞれ形成する(第二工程)。
    詳しくは、図4に示すように、溶接金属の希釈率を一定にするべく溶け込み率を管理して得たデータに基づいて、補剛材20におけるレ型開先22の拡開角度θを45度に形成する。 これらのレ型開先22,22の存在によって、鋼板10と当接して閉断面構造を形成する補剛材20の外側からのアーク溶接が容易なものとなる。

    次いで、第一工程で選択した低変態温度溶接材料からなる溶接金属を用いて、補剛材20の縁部21,21と鋼板10とをアーク溶接により接合する。 詳しくは、図5に示すように、補剛材20を実線で示す状態から仮想線で示す状態にして補剛材20の縁部21,21を鋼板10の下向き面12に当接させ、この状態でレ型開先22,22内に溶接棒32を挿入して、アーク放電により溶融した溶接金属を近傍の鋼板10や縁部21,21を溶かしながら1パス(一度盛り)施工し、これによりレ型開先22,22内に溶接金属を装填して、溶接金属盛30を形成する(第三工程)。

    この際、アーク放電が強すぎると、レ型開先22,22の奥まで溶けて(メルトスルーが発生して)溶接品質が悪化することから、アーク溶接の溶接条件は当該メルトスルーが生じない程度に、すなわち、レ型開先22,22の奥に溶接しない部分(溶け残り部分)を残すべく設定する、例えば、電流280A、電圧32V、溶接速度35cm/minに設定する。

    以下、このようにして製造した本発明に係る鋼床版の作用及び効果について説明する。
    上記のようにしてアーク溶接によりレ型開先22,22内に溶接金属を装填することで形成された溶接金属盛30は、図8に示すように、冷却するに連れて熱収縮することになる。 そして、溶接金属盛30が収縮すると、溶接金属盛30は冷却に伴ってγ相からα相に相変化するため、鋼板10や補剛材20の縁部21,21を引っ張ることになり、鋼板10内や補剛材20内に引っ張りの残留応力が溶接残留応力として発生することになる。

    このように鋼板10内や補剛材20内に溶接残留応力が発生すると、例えば、鋼床版3上を車両等が通行して鋼床版3が繰返して曲げ荷重を受けた場合に、主として溶け残り部分から鋼板10にき裂が入り易くなる。
    しかしながら、本実施形態に係る鋼床版3では、溶接金属に低変態温度溶接材料を用いることで溶接金属の成分組成と線膨張量とを上記のように調整しているので、図8においてこの溶接金属(実線)と一般の溶接金属(破線)とを比較して示すように、一旦収縮した溶接金属盛30は、さらに温度が低下して所定の低温域に入ると、マルテンサイト変態を起こして熱収縮を相殺するように大きく変態膨張することになる。 このように溶接金属盛30が所定の低温域で大きく膨張すると、一旦収縮した溶接金属盛30は、例えば400℃近辺における伸びと同等の値まで戻り、鋼板10内や補剛材20内の溶接残留応力が良好に解消される。

    したがって、多パス(多数盛り)施工せずに1パス(一度盛り)施工で溶接金属盛30を形成したとしても、30℃(室温)において溶接金属の伸びが一般の溶接金属に比べて十分に大きくなって、鋼板10内や補剛材20内に溶接残留応力が殆ど発生することがなくなる。 これにより、溶接作業工数の大幅な低減及び溶接作業性の向上を図りながら、鋼板10における上記溶け残り部分からのき裂の発生頻度を大幅に減らし得ることとなる。

    このように、本実施形態に係る鋼床版3では、鋼板10内や補剛材20内の残留応力を低減して組み付け精度や引張強度や圧縮強度の低下を回避することができると共に、き裂の発生を抑えて疲労強度を向上させることができる。
    また、溶接金属に低変態温度溶接材料を用いると、メルトスルーが発生してしまうような場合であったとしても、溶け残り部分が生じることがないためにき裂の発生が抑えられ、その結果、疲労強度の向上を図りつつ、鋼板10内や補剛材20内の残留応力を低減でき、溶接品質の悪化を最小限に抑えることが可能である。 このため、1パス施工であってもメルトスルーを気にすることなく溶接作業を実施可能である。

    特に、上記実施形態では、補剛材20として入手容易な断面U字状の形鋼を用いているので、入手の手間を省いたうえで、十分な剛性を確保しつつ疲労強度を向上させることができる。
    また、上記実施形態では、鋼板10として高疲労特性鋼板を用いているので、例え鋼板10に上記溶け残り部分からき裂が入ったとしても、疲労き裂伝播速度が遅いため、き裂の伝播を十分抑制でき、疲労強度をより一層向上させて疲労破壊の発生を確実に防止することができる。

    加えて、上記実施形態による溶接継手を用いれば、鋼板貫通型や溶接ビード貫通型のき裂が発生したり、その兆しが表れたりした鋼床版3に対して、橋梁の現場において補修をすることで、疲労強度を回復させたり高めたりすることができ、橋梁の舗装部分を剥がして鋼床版3の修理や交換を行わなくて済む分だけ、維持管理コストの大幅な低減を実現可能であり、この際、溶接金属の希釈率を一定に管理し得るので、再現性良好に疲労強度を回復ないし向上させることができる。

    そこで、鋼板10及び補剛材20をアーク溶接により接合するための溶接金属として一般的な溶接材料(タイプ1)を用いた比較例1の溶接継手と、これと同じく溶接金属として一般的な溶接材料(タイプ2)を用いた比較例2の溶接継手と、溶接金属として上記組成の低変態温度溶接材料を採用した本実施形態の鋼床版3の溶接継手に対して、応力を繰返して負荷する疲労試験を実施した。 各溶接継手の疲労強度の結果を図9にS−N線図としてJSSC疲労設計曲線Dとともに示す。

    ここで、S−N線図の横軸である応力繰り返し数は、疲労試験の繰り返し載荷の回数であり、縦軸の応力範囲Δσは、疲労試験で供試体に作用する応力の最大値と最小値との差を表している。
    図9のS−N線図に示すように、比較例1,2の溶接継手では、き裂の発生(○,◇)及び見かけの破断(●,◆)が、いずれもJSSC疲労設計曲線D等級をほぼ下回っているのに対して、本実施形態の鋼床版3の溶接継手では、き裂の発生(△)及び見かけの破断(▲)が、JSSC疲労設計曲線D等級を上回っていることが判る。 これにより、本実施形態の鋼床版3の溶接継手が、比較例1,2の溶接継手と比べて高い疲労強度を有していることが実証できた。

    上記した実施形態では、鋼床版3の補剛材20として断面U字状の形鋼を用いて鋼板10とともに閉断面構造を形成するようにしたが、補剛材20として断面V字状の形鋼を用いてもよいほか、鋼床版3の補剛材20としてI型鋼等を用いてもよい。
    また、上記実施形態では、鋼板10として高疲労特性鋼板を用いるようにしたが、鋼板10として一般の鋼材を用いるようにしても十分な効果を得ることができる。

    本発明の一実施形態による鋼床版を示す橋梁の鋼床版箱桁に組み込んだ状態の斜視図である。

    図1の鋼床版の一部を拡大して示す部分拡大正面図である。

    図1の鋼床版の一部を拡大して示す部分拡大斜視図である。

    図1の鋼床版に採用した本発明の一実施形態による溶接継手のレ型開先の拡大図である。

    図1の鋼床版を製造する際の鋼板と補剛材との接合要領を説明する斜視図である。

    図1の鋼床版における鋼板として採用した高疲労特性鋼板の疲労き裂伝播特性を示す図である。

    図1の鋼床版における鋼板として採用した高疲労特性鋼板の疲労強度を示すS−N線図である。

    図1の鋼床版において溶接金属として採用した低変態温度溶接材料の温度と伸びの関係を一般の溶接金属と比較して示す図である。

    図1の鋼床版に採用した溶接継手の疲労強度を比較例の溶接継手の疲労強度と比較して示すS−N線図である。

    符号の説明

    3 鋼床版 10 鋼板(一方の被溶接材)
    11 舗装部分載置面 12 下向き面 20 補剛材(他方の被溶接材)
    21 縁部 22 レ型開先 30 溶接金属盛(溶接金属)
    32 溶接棒 R 橋梁の舗装部分 θ 拡開角度

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