Oxygen supply source containing composite nano metal paste and bonding method

申请号 JP2013530265 申请日 2013-02-20 公开(公告)号 JP5410643B1 公开(公告)日 2014-02-05
申请人 株式会社応用ナノ粒子研究所; 株式会社日本スペリア社; 发明人 晃雄 小松;
摘要 本発明は、焼成による接合や不活性ガス中の焼成などにおいて、複合ナノ金属粒子の有機被覆層をより高効率に熱分解して除去し、複合ナノ金属ペーストの接合強度や電気伝導度を向上させることを目的とする。
本発明は、サブミクロン以下の銀核の周囲に有機被覆層を形成した複合ナノ金属粒子と、前記有機被覆層が熱分解する熱分解 温度 域で前記熱分解に寄与する酸素を供給する酸素供給源とを少なくとも含み、前記酸素供給源が酸素含有 金属化 合物からなり、前記酸素供給源に含まれる酸素成分の質量が前記複合ナノ金属粒子100mass%に対して0.01mass%〜2mass%の範囲にある酸素供給源含有複合ナノ金属ペースト及びこれを用いた接合方法である。
权利要求
  • サブミクロン以下の銀核の周囲に有機被覆層を形成した複合ナノ金属粒子と、銅粒子からなる金属フィラーと、前記有機被覆層が熱分解する熱分解温度域で前記熱分解に寄与する酸素を供給する酸素供給源とを少なくとも含み、前記酸素供給源が前記銅粒子の表面に形成された表面酸化層からなることを特徴とする酸素供給源含有複合ナノ金属ペースト。
  • 前記酸素供給源に含まれる酸素成分の質量が前記複合ナノ金属粒子100mass%に対して0.02mass%〜2mass%の範囲にある請求項1に記載の酸素供給源含有複合ナノ金属ペースト。
  • 前記酸素供給源は、160℃〜300℃の範囲内で酸素を供給する請求項1又は2に記載の酸素供給源含有複合ナノ金属ペースト。
  • 前記有機被覆層は、アルコール、アルコール誘導体及びカルボン酸から選択される1種又は2種以上からなる請求項1、2又は3に記載の酸素供給源含有複合ナノ金属ペースト。
  • 請求項1〜4のいずれかに記載の酸素供給源含有複合ナノ金属ペーストを用いた接合方法において、前記有機被覆層の熱分解温度域以上の焼成温度を設定し、前記焼成温度まで加熱する接合工程を有し、前記接合工程中に前記熱分解温度域内の温度に至るタイミングで設定圧力を印加して加圧することを特徴とする接合方法。



  • 说明书全文

    本発明は、ナノ金属粒子を含むナノ金属ペーストに関し、更に詳細には、金属核の周囲に有機物からなる有機被覆層を形成した複合ナノ金属粒子を含む複合ナノ金属ペーストに関する。

    接合用又は金属パターン形成用の金属ペーストとして、100nm以下の金属核の周囲に種々の有機物からなる有機被覆層を形成した複合ナノ金属粒子を含有する複合ナノ金属ペーストの開発が行われている。 例えば、前記複合ナノ金属粒子として、特開平10−183207号(特許文献1)の実施例1には、金属銀のコアの周りにステアリン酸基の有機被覆層を有する超微粒子が記載されている。 本発明者は、国際公開第WO2009/090846号公報(特許文献2)において、銀核の周囲にアルコール分子やアルコール誘導体等の有機被覆層が形成された複合ナノ銀粒子を開示している。 更に、特許文献1や特許文献2では、上述の複合ナノ金属粒子を金属ペーストに用いることが記載されている。 100nm以下のナノ金属粒子は表面の比率が大きく、不安定であるため、安定に存在するためには、上述のように、有機被覆層の保護層が必要とされている。

    100nm以下のナノ金属粒子は、粒子サイズが小さくなると融点が降下し、前記複合ナノ金属粒子を含む金属ペーストは、比較的低温で焼結させることができることから、より高い接合強度で電気伝導度の良い複合ナノ金属ペーストの開発が期待されている。
    しかしながら、金属粒子の有機被覆層や溶剤などを含む金属ペーストを加熱焼結させたとき、焼成後の接合強度や電気伝導度は、ペーストに含有される金属成分と有機成分の比率に依存し、焼結温度でより効率的に被覆有機成分を熱分解して放出させることが求められる。

    特許第3630920号公報(特許文献3)には、有機溶剤中に金属微粒子を分散させた金属ペーストを減圧下のオゾン雰囲気で仮焼成して、前記有機溶媒を分解除去した後、本焼成する金属ペーストの焼成方法が記載されている。 即ち、金属ペーストに含まれる有機物を熱分解するためには、外部から所定量に調整された酸素成分を供給することが記載されている。 同様に、特許第3630552号公報(特許文献4)には、有機溶剤中に金属微粒子を分散させた金属ペーストを減圧下で、且つ酸素ラジカルが存在する状態下で仮焼成し、還元性雰囲気中で本焼成する金属ペーストの焼成方法が記載されている。

    特開平11−169474号公報(特許文献5)の請求項1には、「金微粉末と、ペースト調整用樹脂及びビヒクル、ならびに酸素を放出する性質を有する酸化物を含むことを特徴とする窒素雰囲気下で焼成可能な厚膜金ペースト」が記載され、同文献の請求項9や段落[0018]には、厚膜金ペーストが窒素雰囲気下500〜1000℃で焼成されることが記載されている。 更に、特許文献5の段落[0017]には、「窒素雰囲気下での高温に曝されると分解し、酸素を放出する様な酸化物を少量添加することで、放出された酸素が樹脂成分の酸化を助け円滑な燃焼が起こることを発見した」ことが記載されている。 特許文献5の段落[0014]には、前記厚膜金ペーストがエチルセルロース等のペースト調整用樹脂を含み、「600℃以上の高温に曝されることで、少量なら消失することが確認された」ことが記載されている。 即ち、特許文献5に記載される厚膜金ペーストでは、窒素雰囲気下600℃以上で焼成することにより、酸化物から放出された酸素を用い、ペースト調整用樹脂成分の酸化を助けて燃焼を促すことが記載されている。

    有機被覆層が形成された複合ナノ金属粒子における有機被覆層脱離・分解過程については、本願発明者が共著者の1人として含まれるM. Maruyama,et al,“Silver nanosintering: a lead-free alternative to soldering”Appl. Phys. A 93 (2008) 467-470(非特許文献1)に記載されている。 非特許文献1において、不活性ガス中の焼成では、複合ナノ金属粒子における有機被覆層の消失が、熱分解における酸化過程ではなく、熱エネルギーによる結合状態からの離脱過程であることが記載されている。 複合ナノ金属粒子における有機被覆層の離脱過程は、不活性ガス中において、大気中焼成に比較し、高温領域まで緩慢に持続し、有機物が完全に離脱する温度閾値が通常70℃以上高温側に移動する。

    特開平10−183207号公報

    国際公開第WO2009/090846号公報

    特許第3630920号公報

    特許第3690552号公報

    特開平11−3617号公報

    M. Maruyama,et al," Silver nanosintering: a lead-free alternative to soldering "Appl. Phys. A 93 (2008) 467-470

    特許文献1及び特許文献2に記載される複合金属ナノ粒子は、金属核の周囲に有機物からなる有機被覆層が形成されているため、複合ナノ金属粒子を含む従来の複合ナノ金属ペーストは、ペースト構成上の有機成分に加えて被覆による有機成分を含むことが不可避である。 また、有機被覆層をより効率的に熱分解し、放出することが要求される。 特に、接合用金属ペーストにおいて、被接合材間に塗布されて焼成されるケースでは、有機被覆層の効率的な除去がさらに重要となる。
    したがって、溶剤等の有機物成分をさらに含有し、有機被覆層が所定以上の分解温度で熱分解すると共に、金属核同士が凝集又は焼結することから、複合ナノ金属ペースト中の有機物成分を高効率に除去することが困難であり、接合面積が増大するほど接合強度や電気伝導度の低下の要因となっていた。

    特許文献3及び特許文献4に記載されるように、複合ナノ金属ペーストを用いた接合では、オゾンや酸素ラジカルの雰囲気下においても雰囲気との接触面積が小さいため、効率的に有機物成分を除去することが困難であった。 更に、複合ナノ金属ペーストをオゾンや酸素ラジカルの雰囲気下におくことは、複合ナノ金属ペーストの焼結過程におけるランニングコストを増大させる。 特に、複合ナノ金属粒子の有機被覆層は、金属核の周囲に形成されているため、外部からオゾンや酸素ラジカルを供給しても、有機被覆層の熱分解に寄与することは極めて困難である。 特に、特許文献3及び特許文献4に記載されるような方法を、半導体素子などにおける電極形成の有効な接合方法にはできなかった。

    特許文献5には、窒素雰囲気下500〜1000℃で焼成される厚膜金ペーストがエチルセルロース等のペースト調整用樹脂と共に、このペースト調整用樹脂の燃焼に用いられる酸素を放出する酸化物を含むことが記載されている。 しかしながら、特許文献5に記載される実施例では、窒素雰囲気下における焼成が600℃以上であり、酸化物が放出する酸素は、ペースト調整用樹脂の燃焼に寄与していた。 即ち、有機被覆層を有する複合ナノ金属粒子を含有する複合ナノ金属ペーストを用いた接合において、十分に酸素が供給されない状態下で、且つ、比較的低温で焼成される場合に、有機被覆層の熱分解を促進する手段を開示するものではなかった。 複合ナノ金属粒子は、500℃未満の比較的低温化で焼成可能であることを特徴としており、低温焼成で効率的に有機被覆層を熱分解する方法が求められていた。

    更に、非特許文献1において、不活性ガス中の焼成では、複合ナノ金属粒子における有機被覆層の消失が、熱分解における酸化過程ではなく、熱エネルギーによる結合状態からの離脱過程であることが記載されている。 酸化が好ましくない銅電極フレームを含む半導体接合工程などでは、通常、不活性ガス中で接合が行われる。 不活性ガス中で接合用ペーストに有機被覆層を有する複合ナノ金属ペーストを用いると、大気中熱処理工程より高い温度での処理が必要なだけでなく、有機被覆層の熱離脱過程で発生する活性反応基を有する離脱物が、電極材の表面で再反応・結合を引き起こし、電極表面を汚染するという問題も生じていた。 特に、加圧接合を行う際は、短時間に多量の活性反応基を有する離脱物が発生するので一層問題となっていた。

    従って、本発明は、接合目的で使用する時や不活性ガス中などでの焼成において、複合ナノ金属粒子の有機被覆層をより高効率に熱分解して除去することができ、複合ナノ金属ペーストの接合強度や電気伝導度を向上させることを目的とする。

    本発明は上記課題を解決するために完成されたものであり、本発明の第1の形態は、サブミクロン以下の銀核の周囲に有機被覆層を形成した複合ナノ金属粒子と、前記有機被覆層が熱分解する熱分解温度域で前記熱分解に寄与する酸素を供給する酸素供給源とを少なくとも含み、前記酸素供給源が酸素含有金属化合物からなり、前記酸素供給源に含まれる酸素成分の質量が前記複合ナノ金属粒子100mass%に対して0.01mass%〜2mass%の範囲にある酸素供給源含有複合ナノ金属ペーストであり、本発明の第2の形態は、前記酸素供給源が前記銅粒子の表面に形成された表面酸化層からなり、前記酸素供給源に含まれる酸素成分の質量が前記複合ナノ金属粒子100mass%に対して0.02mass%〜2mass%の範囲にある酸素供給源含有複合ナノ金属ペーストである。 更に、本発明に係る酸素供給源含有複合ナノ金属ペーストを用いた接合方法として、有機被覆層の熱分解温度域以上の焼成温度を設定し、焼成温度まで加熱する接合工程に於いて、熱分解温度域内の温度に至るタイミングで、設定圧を印加する接合方法があり、この方法は、設定圧力をより最適なタイミングで印加する加圧最適タイミングによって強固で確実な接合状態を得る接合方法である。

    本発明の第1の形態によれば、サブミクロン以下の銀核の周囲に有機被覆層を形成した複合ナノ金属粒子と、前記有機被覆層が熱分解する熱分解温度域で前記熱分解に寄与する酸素を供給する酸素供給源とを少なくとも含むから、熱分解温度域において前記有機被覆層を高効率に熱分解して除去することができる。 即ち、前記有機被覆層を形成する有機物を熱分解するとき、積極的に酸素を供給することにより、前記有機物を酸化燃焼させて放出除去することができる。 前記酸素供給源が酸素含有金属化合物からなり、前記熱分解を好適に行い、且つ過剰な酸素が放出されないため、前記酸素供給源に含まれる酸素成分の質量が前記複合ナノ金属粒子100mass%に対して0.01mass%〜2mass%の範囲に設定される。 従って、接合用複合ナノ金属ペーストにおける金属成分の好適な比率を保持することができる。 換言すれば、複合ナノ金属ペーストを焼成して形成される接合材や不活性ガス雰囲気下で焼成される電極パターン等に含まれる金属成分の最適比率を保持し、また、導電性樹脂等からなる他の成分を追加することなく、焼成することができる。 前記酸素含有金属化合物は、酸素を供給し、前記有機被覆層の熱分解に寄与した後、金属となり、複合ナノ金属ペースト中の金属成分として寄与することができ、高強度で高い電気伝導性を有することができる。 特に、設定温度以上の焼成条件下では、有機物や酸化物が残存することはない。 被接合材間の接合に複合ナノ金属ペーストが用いられる場合、その雰囲気の酸素が焼成に利用されることは殆どなく、前記酸素供給源が複合ナノ金属ペースト中に含有されることにより、前記有機被覆層をより効率的に熱分解することができる。

    また、本発明の第1の形態によれば、不活性ガス中で焼成される場合においても、前記酸素供給源が複合ナノ金属ペースト中に含有されるから、前記酸素含有金属化合物から酸素が供給されることにより前記有機被覆層がより効率的に熱分解され、更に、金属成分が好適な比率で残存し、焼成後の接合材に高い電気伝導性を付与することができ、酸素供給源である酸素供給金属化合物が接合部の骨材となり接合部を形成するので、前記複合ナノ金属粒子等のナノ粒子のみからなる従来のナノ金属ペーストと比較して接合強度が向上する。
    従って、本発明の第1の形態によれば、前記酸素供給源が前記酸素含有金属化合物からなることにより、前記複合ナノ金属ペーストは、その焼結時に前記複合ナノ金属粒子と前記酸素含有金属化合物の金属成分が加算される結果となり、接合部の金属成分の高い含有量によって、強固な接合強度や良好な電気伝導性を実現させることができる。 更に、金属成分として、複合ナノ金属粒子と酸素含有金属化合物に加えて、銀粒子及び/又は銅粒子等からなる金属フィラーを含有させても良く、サブミクロンから数十μm程度の金属フィラー粒子を含有することができ、より具体的には、0.1μm〜100μmが好ましく、0.1μm〜10μmがより好ましい。

    本発明の第2の形態によれば、サブミクロン以下の銀核の周囲に有機被覆層を形成した複合ナノ金属粒子と、銅粒子からなる金属フィラーと、前記有機被覆層が熱分解する熱分解温度域で前記熱分解に寄与する酸素を供給する酸素供給源とを少なくとも含み、前記酸素供給源が前記銅粒子の表面に形成された表面酸化層であるから、前記表面酸化層から酸素を放出した銅粒子は、表面酸化量が極めて少ない又は殆ど無い、好適な銅フィラーとして機能することができ、且つ、放出された酸素によって前記有機被覆層を高効率に熱分解することができる。 更に、前記熱分解を好適に行い、且つ過剰な酸素が放出されないため、前記酸素供給源に含まれる酸素成分の質量が前記複合ナノ金属粒子100mass%に対して0.02mass%〜2mass%に設定される。 即ち、前記表面酸化層から酸素が好ましい範囲で放出され、複合ナノ金属ペーストにおける金属成分の好適な比率を保持することができる。 即ち、前記表面酸化層から酸素が放出された銅粒子は、銅フィラー成分として焼成後の接合材を形成することができる。

    本発明の第3の形態によれば、前記酸素供給源は、160℃〜300℃の範囲内で酸素を供給するから、前記酸素供給源が前記熱分解に寄与する酸素を高効率に供給することができる。 更に、前記酸素供給源含有複合ナノ金属ペーストが粘性付与剤を含むとき、前記酸素供給源は、例えば、1〜5℃/minの範囲で温度を上昇させる大気中の熱重量測定(TG)条件に於いて、前記粘性付与剤の含有質量比が殆ど消失する粘性付与剤消失温度以上で酸素を供給することが好ましい。 即ち、本発明に係る接合用複合ナノ金属ペーストに含まれる前記粘性付与剤の含有質量比が大気中の熱重量測定(TG)で殆ど消失する温度を「粘性付与剤消失温度」と定義しており、粘性付与剤消失温度以上では、前記酸素供給源から放出される酸素をより高効率に前記有機被覆層の熱分解に寄与させることができる。 前記粘性付与剤消失温度は、前記有機被覆層の熱分解温度よりも低いことが必要であり、前記有機被覆層が160℃以上で熱分解する場合は、160℃以下が好ましく、150℃以下であることがより好ましい。
    粘性付与剤としては、イソボルニルシクロヘキサノール等を用いることができ、さらに粘度調整溶剤を添加する場合には、アルコール等を用いることができる。 粘性付与剤及と共に粘度調整溶剤を添加することにより、粘度は、1Pa・s〜500Pa・sの範囲に調整し、使用することが可能である。 例えば、接合用のペーストでは、50Pa・s〜200Pa・s程度が好ましい。

    本発明の第4の形態によれば、前記有機被覆層が、アルコール、アルコール誘導体及びカルボン酸から選択される1種又は2種以上からなるから、比較的簡単に複合ナノ金属粒子を製造することができ、酸素供給源含有複合ナノ金属ペーストの製造効率を向上させることができる。 例えば、特許文献2には、アルコールと金属化合物を反応させて得られた複合ナノ金属粒子が記載されており、特に還元剤等を必要としていない。 また、カルボン酸は、アルコール誘導体から生成され、有機被覆層を形成することができる。 また、前記有機被覆層の炭素数は、原材料として用いられるアルコール等の有機物分子を形成する炭素数に依存し、炭素数1〜12から選択することかできる。 よって、前記複合ナノ金属粒子の金属核の周囲に形成される有機物の炭素数を調整することができる。 前記有機被覆層は、有機物の炭素数が大きくなると、熱分解温度が上昇する傾向にあり、前記酸素供給源の酸素供給温度域に応じて熱分解温度を調整すれば、焼成過程において、より高効率に前記有機被覆層を熱分解することができる。 更に、1つの金属核に炭素数が異なる2種以上の有機物が有機被覆層として形成されている場合、完全に熱分解するまでの温度領域が拡がり、酸素供給温度域に応じて比較的緩慢に金属核や酸素含有金属化合物の金属成分を焼結させることが可能である。

    本発明の第5の形態によれば、前記酸素含有金属化合物が炭酸銀、過酸化銀及び亜酸化銅から選択される1種又は2種以上であるから、有機被覆層の熱分解温度まで昇温させたとき、より確実に酸素を供給することができ、且つ銀や銅からなる金属成分の比率を極めて高く保持することができ、複合ナノ金属ペーストと共に焼結させることができる。 銀や銅は、高い熱伝導性、電気伝導性を有し、複合ナノ金属ペーストの焼結体に所望の電気的、熱的特性を付与することができる。 前記酸素含有金属化合物が炭酸銀の場合、炭酸成分の酸素を有機被覆層の熱分解に利用し、且つ銀からなる金属成分を残存させることができ、炭素は、炭酸ガスとして放出することができる。 銀は、高い熱伝導性、電気伝導性を有し、複合ナノ金属ペーストの焼結体に所望の電気的、熱的特性を付与することができる。 銀同士は勿論のこと、銀と銅も良い相性を有し、好適な接合性を付与することができる。
    炭酸銀は、数十nm程度の平均粒径を有する炭酸銀粒子として複合ナノ金属ペースト中に分散されることが好ましく、より具体的には、平均粒径が50nm以下の炭酸銀粒子が酸素供給源として分散されていることが好ましい。

    本発明の第6の形態によれば、前記酸素供給源は、前記酸素含有金属化合物の周囲が前記複合ナノ金属粒子によって被覆され、前記熱分解温度域で酸素を供給する複合体を含むから、前記有機被覆層を高効率に熱分解することができる。 前記複合体は、前記複合ナノ金属粒子を形成する有機被覆層の熱分解や前記複合ナノ金属粒子の離脱が開始され、前記複合ナノ金属粒子によって被覆されていた前記酸素含有金属化合物が前記有機被覆層の熱分解温度域で酸素を供給し、前記有機被覆層の熱分解がより高効率に行われる。 同時に、前記酸素含有金属化合物に含まれる金属成分が残存するから、金属成分が好適な比率を有し、本発明の酸素供給源含有複合ナノ金属ペーストの焼結体は、高強度と高い電気伝導性が付与される。

    本発明の第7の形態によれば、第1〜第6のいずれかの形態の酸素供給源含有接合用複合ナノ金属ペーストを用いた接合方法において、前記有機被覆層の前記熱分解温度域以上の焼成温度まで加熱して焼成する接合工程中に、熱分解温度域内の温度となるタイミングで設定圧力を印加することによって、より強固で確実な接合状態を得る接合方法である。 従って、前記複合ナノ金属粒子は、当該複合ナノ金属粒子の有機被覆層が熱分解して焼結するタイミングで加圧されるから、被接合体を好適な強度で接合することができる。

    図1は、本発明に係る複合ナノ銀ペーストの熱分析を大気中と高純度窒素ガス中で行った熱解析スペクトルを示すグラフ図である。

    図2は、本発明に係る炭酸銀の周囲を複合ナノ銀粒子が取り巻いた複合体構造の走査型電子顕微鏡(TEM)像の写真図である。

    図3は、本発明に係る酸素供給源として過酸化銀(Ag

    )を含む実施例(3A)と酸化銀(Ag

    O)を含む比較例(3B)のTG・DTAスペクトルを示すグラフ図である。

    図3は、本発明に係る酸化銅添加ペーストの熱分析を示す図である。

    図4は、本発明に係る酸素供給源となる金属粒子表面酸化状態が亜酸化銅となっていることを示すX線回折スペクトルのグラフ図である。

    図6は、表2に示した本発明に係る接合用複合ナノ銀ペーストの接合強度を酸素供給源の酸素量(mass%)に対してプロットしたグラフ図である。

    図7は、本発明の比較例であり、表3の試料番号#10のように、表面酸化銅粉を過剰に添加したときのTG・DTAを示すグラフ図である。

    複合ナノ金属ペーストの大気中焼成過程での熱解析(TG/DTA)データにおいて、粘度調整溶剤と粘性付与剤の蒸発、複合ナノ金属粒子の有機被覆層の熱分解過程による熱重量測定(TG)スペクトルの減少ステップ構造が順次現れる。 このTGスペクトルに対応する示差熱分析(DTA)スペクトルにおいて、蒸発による吸熱過程では負の値となるが、有機被覆層の熱分解過程では、酸化による発熱過程により正の値を示し、酸化量の大きさに比例してDTAスペクトルに大きなピークを出現させる。
    一方、非特許文献1に記載されるように、不活性ガス中焼成では、有機被覆層は酸化過程ではなく、熱エネルギーによる結合状態からの離脱過程であり、その過程は大気中焼成に比較して、高温領域までだらだらと続き、有機物が完全に離脱してしまう温度閾値は通常70℃以上高温側に移動する。
    したがって、酸化が好ましくない銅電極フレームを含む半導体接合工程などでは、不活性ガス中接合が通常行われる。 しかしながら、接合ペーストに有機被覆ナノ金属ペーストを用いると、大気中熱処理工程より高い温度での処理が必要なだけでなく、有機被覆物の熱離脱過程で発生する活性反応基を有する離脱物は、電極材の表面で再反応・結合し、電極表面を汚すという問題も生じる。 加圧接合を行う際は、短時間に多量の活性反応基を有する離脱物が発生するので一層問題となっていたことから、本発明が開発されるに到った。 以下に、図面を用いて本発明の実施形態について詳述する。

    本発明に係る複合ナノ金属粒子の有機被覆層を形成する有機物としては、カルボン酸基、アルコキシド、その他のアルコール誘導体、アミド基などを用いることが可能である。 特に、カルボン酸、アルコキシド、その他のアルコール誘導体などは、比較的簡単に製造することが可能であり、且つ、アルコール溶媒と金属化合物を反応させる場合、アルコール自体が還元機能を有するので還元剤は不要であり、製造工程を簡単化できる。 更に、カルボン酸、アルコキシド、その他のアルコール誘導体から前記有機被覆層が形成される場合、有機成分を熱分解したとき、炭酸ガス等に分解し、より完全に金属成分のみを残存させて焼結することが可能である。

    図1は、本発明に係る複合ナノ銀ペーストの熱分析を大気中(1A)と高純度窒素ガス中(1B)で行った熱解析スペクトルを示すグラフ図である。 図1の(1A)には、炭酸銀のヘキサノール中の反応で得られた複合ナノ銀粒子を用いたペーストに、炭酸銀の周囲を複合ナノ銀粒子が取り巻いた複合体構造の粒子を10%含有させ、分散混練した酸素供給源を含む複合ナノ銀ペーストの熱解析スペクトル(TG−DTA)を示した。 測定された複合ナノ銀ペーストは、複合ナノ銀粒子と酸素供給源と共に、粘性付与剤と粘度調整剤を含んでいる。 ここで、計測条件は、乾燥大気の供給が100mL/分であり、昇温速度が5℃/分である。 炭酸銀の周囲を複合ナノ銀粒子が取り巻いた前記複合体構造の透過型電子顕微鏡(TEM)像を図2に示しており、その詳細は後述する。 この複合体が酸素供給源として含有されている。 TGスペクトル(一点破線)及びDTAスペクトル(実線)とも前述と同じ特性を示し、DTAスペクトルにおいて、T1で示した有機被覆層の分解温度域では、酸化による発熱過程により正の値の大きなピークを呈しており、有機被覆層が酸化分解されていることが認められる。 また、DTAスペクトルにおけるT2で示した温度域のTGスペクトルでは、焼結が完了し、殆どが金属成分となって所定の質量比率(mass%)の一定値となり、焼結温度は図中に示したように約247℃であることが分かる。 更に、(1A)と(1A)のTGスペクトルにTrで示した温度は、粘度調整剤が蒸発した後、粘性付与剤が殆ど消失する温度を示しており、温度Trは、TGスペクトルが変曲する位置にある。 温度Tr以上では有機被覆層の熱分解が主としてTGスペクトルの減少を引き起こしている。
    また、(1A)のTGスペクトルにおいて、質量が約12%減少しており、図1の(1A)に示した複合ナノ銀ペーストは、金属成分以外の成分を約12%含有していたことを示している。

    図1の(1B)は、(1A)における複合ナノ銀ペーストの熱分析を高純度窒素ガス中で行った熱解析スペクトルを示すグラフ図である。 (1B)は、(1A)示した熱解析で用いた同じペーストの熱解析スペクトル(TG−DTA)であり、高純度窒素ガスを100mL/分で供給し、昇温速度5℃/分の条件で計測している。 しかしながら、酸素供給源を含まない従来の複合ナノ金属ペーストとは異なり、DTAスペクトルでは、有機被覆層の分解温度で同程度の発熱を示すピークを呈しており、有機被覆層を形成する有機物が酸化分解されている事実が認められる。 即ち、高純度窒素ガス中にあっても、炭酸銀を含む前記複合体が酸素供給源となり、有機被覆層が酸化分解されている。 TGスペクトルにおいて、焼結終了を示すステップの閾温度は、大気中焼成過程での温度に近く、249℃と数度高い温度示すが、酸素供給源添化効果の有効性が確認される。 前述のように、従来の複合ナノ金属ペーストでは、窒素雰囲気中の焼成において、酸素が供給されないため、有機物が完全に離脱してしまう温度閾値が大気中焼成に比較して大きく高温側に移動する場合が通常であった。 しかし、本発明に係る酸素供給源含有複合ナノ金属ペーストは、窒素雰囲気中でも有機被覆層を大気中と同様に熱分解することができ、不活性ガス中や加圧焼成する場合に、酸化過程を経ているので発生する分解ガスは反応活性度が少なく、電極金属を汚す作用も低減させることができる。
    さらに、酸素供給源添化効果のもう一つの好ましい効果は、加圧接合における焼成温度低下と接合強度の増大効果をもたらし、通常は300℃焼成であるのが、上記ペーストでは250℃焼成が可能となり、40MPa加圧条件下での接合強度は、接合面積10mmφの銅金属試験片に対して350℃焼成と同程度の40MPaとの好ましい結果が得られている。

    図2は、本発明に係る炭酸銀の周囲を複合ナノ銀粒子が取り巻いた複合体構造の透過型電子顕微鏡(TEM)像の写真図である。 図1の説明で述べたように、炭酸銀結晶又はその集合体の周囲を複合ナノ銀粒子が被覆した複合体は、酸素供給源として用いられる。 TEM像において、金属核の周囲に有機被覆層が形成された複合ナノ銀粒子が炭酸銀の凝集体を取り巻き、炭酸銀結晶又はその集合体を複合ナノ銀粒子が被覆していることが観察されている。 この複合ナノ銀粒子被覆炭酸銀を単に複合体と称しており、前述のように、この複合体は炭酸銀であり、従って酸化銀と同等の酸素供給源としての機能を有している。

    表1には、酸素供給源となり得る酸素含有金属化合物の酸素発生温度領域を示した。 酸素含有金属化合物である金属酸化物、酸素含有金属塩、複合ナノ銀粒子被覆酸素含有金属化合物(単に、「複合体」とも称する)、および表面酸化金属粒子の酸素放出をする温度域が、ナノ粒子被覆層の熱分解過程では重要となる。 表1には、各酸素供給源が酸素を供給可能な酸素供給温度域を、「ガス中焼成」と「アルコール共存下ペーストの不活性ガス中焼成」の条件下で示している。 「ガス中焼成」とは、各酸素供給源を大気中又は不活性ガス中で焼成したものであり、「アルコール共存下ペーストの不活性ガス中焼成」とは、粘度調整剤等に用いられるアルコールの存在下における酸素供給温度域を示している。

    表1に示すように、金属酸化物は大気中ではやや高温側で酸素放出が見られるが、ペースト中に含まれる粘度調整溶剤などアルコール存在下では、低温側に変わり、共存する物質の還元効果等により酸素を放出する酸素供給温度域が変化することが分かる。 よって、複合ナノ金属ペースト中で有機被覆層の熱分解温度域で好適に酸素を放出するかどうかは、ペースト中における酸素供給温度を調べることが好ましい。
    また、酸素含有金属化合物の例として取り上げる炭酸銀では、酸素放出は炭酸ガス放出に続いて起こり、それは酸化銀Ag Oとなるので実質的には金属酸化物と同じ機能を呈すると思料される。 しかしながら、後述するように、酸化銀Ag Oを酸素供給源として含有した場合、TG・DTAスペクトルにおいて熱分解温度域以上で酸化による発熱と考えられる結果が得られている。 即ち、熱分解温度域で酸素を放出し得る全ての酸素含有金属化合物が常に酸素供給源となるものではなく、ペースト組成や焼成条件等に応じて、特定の酸素含有金属化合物を選択することが好ましい。
    複合ナノ銀粒子被覆酸素含有金属化合物(複合体)の例として、図2に示したように、炭酸銀結晶の周囲を複合銀ナノ粒子が取り囲んだ構造体がナノ粒子反応の中間生成物として得られるが、この粒子の熱分解する温度領域は、丁度ペーストに用いる複合ナノ金属粒子と同じになるので、複合ナノ金属粒子が熱分解をする過程で被覆が分解する温度域で同時に、また直ちに酸素を放出し、酸素供給源となり得る可能性があることが分かる。
    表面酸化金属粒子の例として、亜酸化銅Cu Oが形成された銅粒子を例にとると、250℃より高い温度域ではむしろ酸素吸着源となり、酸化域となるが、200℃までの温度領域では亜酸化銅の結合酸素は徐々に熱離脱し、広い温度域で酸素供給源となり得る可能性があることが分かる。

    図3は、本発明に係る酸素供給源として過酸化銀(Ag )を含む実施例(3A)と酸化銀(Ag O)を含む比較例(3B)のTG・DTAスペクトルを示すグラフ図である。 (3A)に示す実施例では、複合ナノ銀粒子と共に、酸素供給源として過酸化銀(Ag )が粘度付与剤及び粘度調整溶剤と含有されている。 (3A)のDTAスペクトル(細線)では、粘度付与剤及び粘度調整溶剤が消失する150℃付近まで緩やかにDTAの値が増大しており、発熱反応が比較的顕著でないことを示している。 一方、(3B)の比較例で酸化銀(Ag O)を含む場合には、Tsで示したピークが有り、粘度付与剤と粘度調整溶剤が殆ど消失する前に、酸化銀(Ag O)が酸素を放出し、酸化による発熱ピークが見られている。 よって、図3に示した実施例の結果では、過酸化銀(Ag )が酸素供給源として好ましく、酸化銀(Ag O)が酸素供給源として適当でないことを示している。

    図4は、本発明に係る酸素供給源として亜酸化銅粒子を含有する酸素供給源含有複合ナノ金属ペーストの熱解析スペクトルを示すグラフ図である。 酸素供給源添加前の複合ナノ銀ペースト100mass%に対して、図4の(4A)及び(4B)には、亜酸化銅粒子を10mass%添化して調整した複合ナノ銀ペーストの不活性ガス(窒素ガス)中における熱分解例を提示する。 (4A)のDTAスペクトルは、前記有機被覆層の酸化過程を示す大きなピーク(T1)となるが、ピークは緩慢であり酸素供給が広い温度域で起こっていることが認められる。 (4A)のTGスペクトル、DTAスペクトル及び(4B)のΔTGから見積もられるピーク温度T1は、約256℃で比較的低温であり、酸素供給源の効果によるものと思料される。 即ち、(4B)には、示すTGスペクトル(破線)と共に、ΔTGを示しており、焼結が完了したT2の温度は、ΔTGが略ゼロとなる温度と一致している。

    図5は、本発明に係る酸素供給源となる金属粒子表面酸化状態が亜酸化銅となっていることを示すX線回折スペクトルのグラフ図である。 図5のX線回折において、銅粒子の表面に亜酸化銅Cu Oが形成され、表面酸化金属粒子を構成している。 このように金属粒子の表面に金属酸化物が形成される表面酸化金属粒子を酸素供給源として用いることが可能である。 表1に示す酸素含有銅フィラーは、表面酸化金属粒子からなり、本発明に係る酸素供給源含有複合ナノ金属ペーストの酸素供給源として機能する。 表1に示すように、不活性ガス中の焼成では、50℃〜200℃、アルコール共存下の焼成では、120℃〜280℃で酸素を供給できることが分かっている。

    表2は、本発明に係る表面酸化層を有する銅フィラー含有量が異なる複合ナノ金属ペーストを用いて、5mmφ×10mmφの試料片を大気中3分間加熱しながら加圧接合し、同様に、せん断強度により接合強度を測定したものである。 加圧焼成における荷重は40MPaであり、焼成温度は300℃である。 銅フィラーの平均粒径は1.5μmであり、銅フィラー含有複合ナノ金属ペーストにおける銅フィラーの含有量を0mass%から75mass%まで増大させている。 即ち、試料番号#31、32は比較例であり、試料番号#33〜35が本発明の実施例である。 各試料では、複合ナノ銀粒子と銅フィラーを合わせた質量比がペースト100mass%に対して、90mass%含有されている。
    表面酸化層を有する銅フィラ―の分析データでは、表面に形成された金属酸化物の含有酸素量が約0.3mass%であることが分かっている。 表面酸化層は、酸素の表面吸着常態を示すものではなく、表面に亜酸化銅等の酸化層が形成されたものを示す。 加圧接合では、酸素供給はたたれるので、複合ナノ金属ペースト(単に「ペースト」とも称する)の加圧接合強度を指標として酸素供給源になるかどうかを評価することができる。 表2において、酸化量(mass%)は、銅フィラーの含有酸素量が約0.3mass%であるから、銅フィラーの含有量に0.003を乗じた値である。 よって、ペーストにおける銅フィラーの含有量の増加に伴って供給できる酸素量が増加する。
    酸素量の低いペーストでは接合強度が非添加のペーストより弱く、酸素供給量が0.135mass%以上で強度の増大を示すことから、金属フィラーの保有酸素も酸素供給源として機能することが分かった。 銅粉(銅フィラーとも称している)の酸素含有量が好適な場合、接合強度は70MPa以上となり、最適な場合は、80MPa以上となっている。 尚、酸素含有量が0.225mass%以上となると、ペーストにおける銅フィラーの含有量が多すぎ、バインダー材となる複合ナノ銀粒子の含有量が減るため、接合強度が減少している。 試料番号#33〜35では、複合ナノ銀粒子が、それぞれ、全ペースト質量に45mass%、30mass%、15mass%含まれている。 よって、複合ナノ銀粒子を100mass%としたとき、酸素量の質量比(mass%)は、試料番号#33〜35において、0.3mass%、0.6mass%、1.5mass%となる。 即ち、表2の結果では、少なくとも約0.3〜2mass%程度の範囲で接合強度の増加が見られる。

    表2は、酸素供給源として炭酸銀:Ag を添加した接合用複合ナノ銀ペーストを用いて接合された被接合材の接合強度を測定した値を示している。 試料番号#1は比較例であり、酸素供給源を添加していない。 試料番号#2〜7は、本発明の実施例であり、酸素供給源として炭酸銀を添加した接合用複合ナノ銀ペーストによる接合強度の測定結果である。 複合ナノ銀ペーストは、全質量を100mass%としたとき、ヘキサノール由来の有機被覆層が銀核の周りに形成された複合ナノ銀粒子を30mass%、銀フィラーを60mass、粘性付与剤としてイソボルニルシクロヘキサノール(テルソルブMTPH:日本テルペン化学(株)製)を5mass%、粘度調整溶剤としてオクタノールを5mass%含有している。 更に、酸素供給源である炭酸銀を接合用複合ナノ銀ペースト100mass%に対し、試料番号#2〜6は、それぞれ、炭酸銀を0.03mass%、0.66mass%、1.1mass%、1.9mass%、3.4mass%含んでいる。 更に、表2には、酸素供給源に含まれる酸素量の質量比率(mass%)(以下、単に「酸素量(mass%)」と称する)を、添加前の接合用複合ナノ銀ペースト100mass%に対して示している。 酸素量(mass%)は、酸素供給源である炭酸銀から放出可能な酸素の最大質量比を示しており、実際に放出される酸素量(mass%)を示すものではない。 しかしながら、放出される酸素量(mass%)は、炭酸銀の含有質量比率に依存するものと思料され、試料番号#2〜6の従に放出される酸素の量が増大することが考えられる。 また、有効温度域は酸素供給源がペースト中で酸素を供給可能な温度範囲である。
    表2に示すように、試料番号#2〜4では、比較例の試料番号#1に対し、炭酸銀含有量の増加に伴って、接合強度が増加している。 接合強度の測定は、前述と試験と同様に、接合面積が5mmφに相当する試験片に塗布し、被接合体としている。 この被接合体を40MPaで加圧し、3分間250℃、300℃又は350℃で加熱している。 いずれの接合温度に対しても、炭酸銀の添加に伴う接合強度増加が見られる。 更に、試料番号#7は、試料番号#5の試料を同一の試料片を用いて、無加圧で3分間250℃と300℃で加熱接合したものである。 無加圧においても、比較例の試料番号#1に対して接合強度が増大しており、酸素供給源の効果があることが分かる。

    図6は、表2に示した本発明に係る接合用複合ナノ銀ペーストの接合強度を酸素供給源の酸素量(mass%)に対してプロットしたグラフ図である。 いずれの焼成温度においても、酸素量(mass%)が増加すると、接合強度が増加する傾向にある。 しかしながら、試料番号#6において酸素量(mass%)が約0.54mass%になると、最も酸素量(mass%)が少ない試料番号#2の接合強度に近づいていく。 これは、供給される酸素が過剰になっているものと思料される。 図6のグラフに示したように、接合強度が減少し始めると、その傾きは90〜120MPa/mass%であり、最も緩やかに減少する焼成温度250℃の場合では、あと約0.3mass%の増加で炭酸銀を添加しないものと同程度の接合強度になる。 複合ナノ銀粒子100mass%に対し、試料番号#2〜6の試料の酸素量(mass%)は約0.016mass%〜1.8mass%程度となる。 炭酸銀は、少量の添加で急激な接合強度増加を示しており、酸素供給源の酸素量(mass%)は、複合ナノ銀粒子100mass%に対して0.01mass%〜2mass%程度が好ましいものと思料される。
    尚、炭酸銀や過酸化銀等の酸素含有化合物を酸素供給源として含む場合、銀粒子からなる銀フィラーを含有させても良く、焼結体が銀成分からなり、好適な接合強度や電気伝導性を付与することができる。

    表4は、表面を積極的に酸化することにより、亜酸化銅からなる表面酸化層が形成された表面酸化銅粉の添加量(mass%)を、酸素供給源添加前の接合用複合ナノ銀ペースト100mass%に対して添加した試料の接合強度を示している。 表面酸化銅粉を含まない複合ナノ銀ペーストの全質量を100mass%としたとき、ヘキサノール由来の有機被覆層が銀核の周りに形成された複合ナノ銀粒子を30mass%、銅フィラーを60mass、粘性付与剤としてイソボルニルシクロヘキサノール(テルソルブMTPH:日本テルペン化学(株)製)を5mass%、粘度調整溶剤としてオクタノールを5mass%含有している。 接合強度の測定方法は表2と同じである。 表3に示した比較例である試料番号#1に対して、試料番号#8〜10では好適な接合強度を有している。 しかしながら、試料番号#11で、表面酸化銅粉の添加量が20mass%になると、接合強度が表3の試料番号#1に対して低下している。
    尚、ペースト中における表面酸化銅粉の分散性を向上させることにより、表面酸化銅粉の添加量が20mass%であっても、接合強度を増加させる可能性がある。

    図7は、本発明の比較例であり、表3の試料番号#10のように、表面酸化銅粉を過剰に添加したときのTG・DTAを示すグラフ図である。 細線がDTA(μV)の値を示し、太線がTG(%)の値を示している。 即ち、酸化供給源が過剰に添加されると、TG(%)が増加するという異常な結果を示し、DTA(μV)も正の値を示し、発熱していることを示している。 これは、過剰な酸素により焼成後に高温側で銅が酸化されていることを示しているものと思料される。
    よって、表4から複合ナノ銀粒子100mass%に対し、酸素供給源の酸素量(mass%)は、約0.02mass%〜0.1mass%程度であることを示している。

    表5は、本発明の実施例である試料番号#13と比較例である#11、12の接合強度の測定結果を示しており、酸素供給源として過酸化銀を含んでいる。 酸素供給源を含まない複合ナノ銀ペーストの全質量を100mass%としたとき、ヘキサノール由来の有機被覆層が銀核の周りに形成された複合ナノ銀粒子を30mass%、銀フィラーを60mass、粘性付与剤としてイソボルニルシクロヘキサノール(テルソルブMTPH:日本テルペン化学(株)製)を5mass%、粘度調整溶剤としてオクタノールを5mass%含有している。 試料番号#12の酸化銀、試料番号#13の過酸化銀とも大気中熱分解温度は400℃以上であるが、アルコール中では110℃〜140℃で還元される。 アルコール溶剤を含むペースト中では、試料番号#12(比較例)の酸化銀は110℃、試料番号#13(実施例)の過酸化銀は122〜170℃で酸素放出があり、図示していないDTAスペクトルは酸素放出による負方向の変化を示すが、酸化銀ではその温度域はナノ粒子の被覆離脱温度域より低く、被覆の酸化分解反応に寄与しない。 しかしながら、試料番号#13の過酸化銀では酸素放出は2度あり、接合強度を調べる限り低温での強度が上がることから、酸素供給源として有効である。 表5に示すように、試料番号#13(実施例)の過酸化銀は、酸素供給源として機能しており、試料番号#11の比較例に比べて、明確な接合強度の増加が見られる。 即ち、金属酸化物の酸素放出時の温度域が、被覆の外れる温度域にある必要がある。

    表6は、本発明に係る酸素供給源含有複合ナノ銀ペーストを用いた加圧接合において、加圧タイミング温度を変化させて接合強度を測定した結果を示している。 用いられた酸素供給源含有複合ナノ銀ペーストは、試料番号#5であり、複合ナノ銀粒子と数十ナノ粒子径の炭酸銀微粒子を酸素供給源として含有し、同様に粘性付与剤と粘度調整溶剤が添加されている。 接合用試料片は、試料片径5mmφ2mmtと10mmφ5mmtの無酸素銅試験片である。 複合ナノ銀ペーストにおける有機被覆層の熱分解温度域を160〜280℃とし、この熱分解温度域内で加圧を開始している。 熱分解温度域では、粘性付与剤と粘度調整溶剤が殆ど消失し、酸素供給源から供給される酸素によって有機被覆層が熱分解され、銀ナノ粒子の融解・焼結が進行する。 各加圧タイミング温度は180℃、225℃、250℃である。 また、焼成温度は300℃であり、30秒間一定昇温速度で300℃まで加熱している。 よって、300℃に到達するまでに、加圧のタイミングを種々変化させていることになる。 試料番号#21〜23の加圧圧力が5MPaであり、試料番号#24〜26の加圧圧力が10MPaであり、試料番号#27〜29の加圧圧力が20MPaである。 各圧力で、加圧温度を180℃、225℃、250℃と変えて接合強度を測定している。 加圧圧力が5MPaの場合、加圧のタイミングが180℃の低温側での接合強度が強く、加圧圧力が10MPaの場合、加圧のタイミングが225℃の中温での接合強度が強く、加圧圧力が20MPaの場合も、加圧のタイミングが225℃の中温での接合強度が強い。
    前述の加圧接合の場合、40MPaと比較的大きな値で加圧を行っていたが、熱分解温度域内で加圧することにより、20MPa以下の比較的小さな値の加圧で、加圧のタイミングを選択することにより比較的良い接合強度が得られている。 特に、熱分解温度域で酸素供給源から熱分解に寄与する酸素が放出されることから、高効率に有機被覆層の熱分解と加圧による焼結を行うことができる。

    尚、本発明に係る酸素供給源含有複合ナノ銀ペーストを用いた加圧接合において、加圧温度は、熱分解温度域より低温側でも接合が可能であるが、熱分解温度域で加圧されていることがより好ましい。 加熱温度が熱分解温度域の近傍であれば、高温側でも接合が可能である。 また、表6では、加圧の値(加圧圧力)を5MPa、10MPa、20MPaと略一定に保持しているが、ペースト粘度が小さい際には、ペーストが加圧により押し出されることを避け、熱分解温度域で好適な加圧となるよう、加圧の値を最初は小さく徐々に増加させていっても良い。
    また、表6に示した実施例では、熱分解温度域の3点(加圧温度:180℃、225℃、250℃)のみで加圧を行っている。 しかしながら、熱分解温度域内において、設定圧力での加圧を開始する又は設定圧力に到達すれば、接合強度を増加させることが可能である。 また、熱分解温度域の高温側で設定圧力を印加しても接合強度を増加させることが可能である。

    本発明によれば、複合ナノ金属ペーストが酸素供給源を含有するから、接合や不活性ガス中などの焼成において、複合ナノ金属粒子の有機被覆層をより高効率に熱分解して除去することができ、複合ナノ金属ペーストを焼成した焼成体の接合強度や電気伝導性を向上させることができる。 酸素供給源含有複合ナノ金属ペーストは、短時間に比較的低温で焼成することができ、高強度と高い電気伝導性と共に、良好な熱伝導度を付与することができ、パワー半導体等の接合材料として用いることができる。

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