ブレージングシートのろう付け方法及び熱交換器

申请号 JP2013096115 申请日 2013-05-01 公开(公告)号 JP2014217844A 公开(公告)日 2014-11-20
申请人 株式会社デンソー; Denso Corp; 学校法人千葉工業大学; Chiba Inst Of Technology; キヤノンマシナリー株式会社; Canon Machinery Inc; 株式会社Uacj; Uacj Corp; 株式会社Uacj; 发明人 TAKEWAKA SHIN; YAMADA SHOGO; OZAWA SHUNPEI; NAGASAWA TORU; MATSUSHITA HARUHIKO; ITO YASUNAGA; YAMAYOSHI TOMOKI;
摘要 【課題】フラックスを塗布することなくろう付け性を充分に高めることができる、ブレージングシートのろう付け方法と、該ろう付け方法を用いて製造した熱交換器を提供する。【解決手段】固体電解質体を有する酸素ポンプを用いて、不活性ガスに混在する酸素の分圧を1?10−10Pa以下にする。この不活性ガスをろう付け炉に導入し、ブレージングシートをろう付け加熱する。ブレージングシートの心材は、Alを主成分としており、Mn1.8質量%以下(0質量%を含まず)と、残部不可避的不純物とを含有する。ろう材は、Alを主成分としており、Mg0.1〜1.2質量%と、Si4〜13質量%と、残部不可避的不純物とを含有する。【選択図】図1
权利要求
  • Alを主成分とし、1.8質量%以下(0質量%を含まず)のMnおよび残部不可避的不純物を含有する心材(2)と、
    該心材(2)の表面にクラッドされた、Alを主成分とし、0.1〜1.2質量%のMg、4〜13質量%のSi、および残部不可避的不純物を含有するろう材(3)と、
    を有するブレージングシート(1)を、所定の不活性ガス雰囲気中のろう付け炉(6)で加熱処理して、フラックスを塗付することなくろう付けを行うろう付け加熱処理工程を含む、ブレージングシート(1)のろう付け方法であって、
    酸素イオン伝導性を有する固体電解質体(40)を備えた酸素ポンプ(4)に不活性ガス(5)を導入し、上記固体電解質体(40)に電圧を印加することにより、上記不活性ガス(5)に混在する酸素の分圧を1×10 −10 Pa以下に低減する酸素低減処理工程、を含み、
    上記所定の不活性ガス雰囲気は、上記酸素低減処理工程で処理された上記不活性ガス(5)を導入して形成されることを特徴とする、ブレージングシートのろう付け方法。
  • 請求項1に記載のブレージングシートのろう付け方法において、上記心材(2)は、0.3〜1.3質量%のMgをさらに含有することを特徴とするブレージングシートのろう付け方法。
  • Alを主成分とし、0.3〜1.3質量%のMg、1.8質量%以下(0質量%を含まず)のMnおよび残部不可避的不純物を含有する心材(2)と、
    該心材(2)の表面にクラッドされた、Alを主成分とし、4〜13質量%のSi、および残部不可避的不純物を含有するろう材(3)と、
    を有するブレージングシート(1)を、所定の不活性ガス雰囲気中のろう付け炉(6)で加熱処理して、フラックスを塗付することなくろう付けを行うろう付け加熱処理工程を含む、ブレージングシート(1)のろう付け方法であって、
    酸素イオン伝導性を有する固体電解質体(40)を備えた酸素ポンプ(4)に不活性ガス(5)を導入し、上記固体電解質体(40)に電圧を印加することにより、上記不活性ガス(5)に混在する酸素の分圧を1×10 −10 Pa以下に低減する酸素低減処理工程、を含み、
    上記所定の不活性ガス雰囲気は、上記酸素低減処理工程で処理された上記不活性ガス(5)を導入して形成されることを特徴とする、ブレージングシートのろう付け方法。
  • 請求項3に記載のブレージングシートのろう付け方法において、上記ろう材(3)は、0.1〜1.2質量%のMgをさらに含有することを特徴とするブレージングシートのろう付け方法。
  • 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のブレージングシートのろう付け方法において、上記酸素ポンプ(4)および上記ろう付け炉(6)との間にはガス循環経路(10)が配置されており、上記不活性ガス(5)を上記ガス循環経路(10)内において循環させつつ、上記酸素低減処理工程および上記ろう付け加熱処理工程を同時に行うことを特徴とするブレージングシートのろう付け方法。
  • 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のブレージングシートのろう付け方法において、上記ろう材(3)は、0.01〜0.15質量%のBiをさらに含有することを特徴とするブレージングシートのろう付け方法。
  • 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のブレージングシートのろう付け方法を用いて製造したことを特徴とする熱交換器(7)。
  • 说明书全文

    本発明は、フラックスを塗布しないで行う、ブレージングシートのろう付け方法と、そのろう付け方法によって製造した熱交換器に関する。

    アルミニウムは熱伝導性に優れ、軽いため、自動車の熱交換器等に使用されている。 熱交換器の多くは、アルミニウム製の心材の表面にろう材をクラッドした、いわゆるブレージングシートを、加熱してろう付けすることにより製造したものである。

    ブレージングシートのろう材はアルミニウムを主成分とするため、ろう付け時に、ろう材の表面に酸化皮膜が形成されやすい。 酸化皮膜が形成されると、ろう材の濡れ性が低下し、ろう付けが阻害される。 そのため、ろう付け時にフラックスを塗布し、このフラックスによって、ろう材表面の酸化皮膜を除去する方法が一般に行われている。

    ところが、ろう付け時にフラックスを塗布すると、フラックスの残渣が発生し、これが熱交換器等の目詰まりの原因になることがある。 この問題を解決するため、近年、フラックスを塗布しないでろう付けする方法が開発されている。 例えば、心材又はろう材にMgを添加したブレージングシートを用いて、ろう付けする方法が開発されている(下記特許文献1参照)。

    Mgはろう材の酸化皮膜を破壊する性質があるため、Mgを添加することにより、ろう材の濡れ性を向上でき、ろう付けを容易に行うことが可能になる。 ろう付けは、例えば、酸素分圧を20Pa程度にした不活性ガス中において行われる。

    特開2004−358519号公報

    しかしながら、Mgは、フラックスと比べて酸化皮膜を破壊する能が弱い。 そのため、ろう材の酸化皮膜を破壊しても、不活性ガスに混在する僅かな酸素によって、ろう材の表面が再び酸化することがある。 そのため、再形成した酸化皮膜によってろう材の濡れ性が低下し、ろう材が濡れ広がらなくなる。 その結果、ろう材のフィレットが切れたり、形状が安定しなくなったりして、ろう付け性を十分に高めることができなくなる。

    本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、フラックスを塗布することなくろう付け性を充分に高めることができる、ブレージングシートのろう付け方法と、該ろう付け方法を用いて製造した熱交換器を提供しようとするものである。

    本発明の第1の態様は、Alを主成分とし、1.8質量%以下(0質量%を含まず)のMnおよび残部不可避的不純物を含有する心材と、
    該心材の表面にクラッドされた、Alを主成分とし、0.1〜1.2質量%のMg、4〜13質量%のSi、および残部不可避的不純物を含有するろう材と、
    を有するブレージングシートを、所定の不活性ガス雰囲気中のろう付け炉で加熱処理して、フラックスを塗付することなくろう付けを行うろう付け加熱処理工程を含む、ブレージングシートのろう付け方法であって、
    酸素イオン伝導性を有する固体電解質体を備えた酸素ポンプに不活性ガスを導入し、上記固体電解質体に電圧を印加することにより、上記不活性ガスに混在する酸素の分圧を1×10 −10 Pa以下に低減する酸素低減処理工程、を含み、
    上記所定の不活性ガス雰囲気は、上記酸素低減処理工程で処理された不活性ガスを導入して形成されることを特徴とする、ブレージングシートのろう付け方法にある。

    本発明の第2の態様は、Alを主成分とし、0.3〜1.3質量%のMg、1.8質量%以下(0質量%を含まず)のMnおよび残部不可避的不純物を含有する心材と、
    該心材の表面にクラッドされた、Alを主成分とし、4〜13質量%のSi、および残部不可避的不純物を含有するろう材と、
    を有するブレージングシートを、所定の不活性ガス雰囲気中のろう付け炉で加熱処理して、フラックスを塗付することなくろう付けを行うろう付け加熱処理工程を含む、ブレージングシートのろう付け方法であって、
    酸素イオン伝導性を有する固体電解質体を備えた酸素ポンプに不活性ガスを導入し、上記固体電解質体に電圧を印加することにより、上記不活性ガスに混在する酸素の分圧を1×10 −10 Pa以下に低減する酸素低減処理工程、を含み、
    上記所定の不活性ガス雰囲気は、上記酸素低減処理工程で処理された上記不活性ガスを導入して形成されることを特徴とする、ブレージングシートのろう付け方法にある。

    第1の態様におけるろう付け方法では、固体電解質体を有する酸素ポンプを用いて、不活性ガス中の酸素分圧を1×10 −10 Pa以下に低減し(酸素低減処理工程)、この不活性ガス雰囲気中においてブレージングシートをろう付け加熱する(ろう付け加熱処理工程)。 また、ろう材は、Mgを0.1〜1.2質量%含有している。
    このようにすると、ろう材に含まれるMgによって、ろう材表面の酸化皮膜を破壊することができる。 また、不活性ガス中の酸素分圧が1×10 −10 Pa以下と極めて低いため、Mgによって酸化皮膜を破壊した後、ろう材の表面が再び酸化することを抑制できる。 そのため、ろう材の濡れ性が高い状態を維持することができ、ろう材を濡れ広がらせることができる。 その結果、ろう材のフィレットを形成しやすくなり、フラックスを塗布しなくても、ろう付け性を充分に高めることが可能になる。

    次に、心材とろう材の組成について説明する。 心材はMnを含有しており、その含有量は1.8質量%以下である。 心材にMnを添加することによって、ブレージングシートの強度を向上させることができる。 なお、Mnの含有量が1.8質量%を超えると、材料の製造が困難になる。

    また、ろう材はMgを0.1〜1.2質量%含有している。 Mgは、ろう材表面の酸化皮膜に作用して、酸化皮膜中にスピネル型の化合物Al MgO を形成する。 これにより、酸化皮膜を脆弱化し、ろう材の濡れ性を高める作用をする。 ろう材中のMgが0.1質量%未満になると、ろう材の濡れ性を充分に高めることができなくなる。 また、Mgが1.2質量%を超えると、溶融したろう材の表面張力が過度に低下し、フィレット形成能が低くなることがある。

    また、ろう材には、ろう材成分としてSiを4〜13質量%添加してある。 Siが4質量%未満になると、ろう材の流動性が低下し、フィレットを形成しにくくなる。 Siが13質量%を超えると、材料の製造が困難になる。

    また、第2の態様におけるろう付け方法では、第1の態様と同様に、固体電解質体を有する酸素ポンプを用いて、不活性ガス中の酸素分圧を1×10 −10 Pa以下に低減し(酸素低減処理工程)、この不活性ガス雰囲気中においてブレージングシートをろう付け加熱する(ろう付け加熱処理工程)。 第2の態様では、心材にMgを0.1〜1.2質量%添加してある。
    そのため、ろう付け時に心材中のMgがろう材に移動し、このMgによって、ろう材表面の酸化皮膜を破壊することができる。 また、不活性ガス中の酸素分圧が1×10 −10 Pa以下と極めて低いため、Mgによって酸化皮膜を破壊した後、ろう材の表面が再び酸化することを抑制できる。 そのため、ろう材の濡れ性が高い状態を維持することができ、ろう材を濡れ広がらせることができる。 これにより、ろう材のフィレットを形成しやすくなり、フラックスを塗布しなくても、ろう付け性を充分に高めることが可能になる。

    次に、第2の態様における、心材の組成について説明する。 心材には、Mgを0.3〜1.3質量%添加してある。 心材に含まれるMgが0.3質量%未満になると、ろう材の酸化皮膜を破壊する能力が低下して、フィレットの形成能力が低減しやすくなる。 また、心材のMgが1.3質量%を超えると、ろう付け時に心材が部分的に溶融したり、ろう材が心材を浸食したりすることがある。

    なお、第2の態様においては、心材にMnを1.8質量%以下、添加してあり、ろう材にSiを4〜13質量%添加してある。 これらの臨界的意義については、第1の態様と同様なので、説明を省略する。

    以上のごとく、本発明によれば、フラックスを塗布することなくろう付け性を充分に高めることができる、ブレージングシートのろう付け方法と、該ろう付け方法を用いて製造した熱交換器を提供することができる。

    実施例1における、固体電解質体とろう付け炉の概念図。

    実施例1における、熱交換器の断面図。

    図2の要部拡大図。

    実施例1における、間隙充填試験を説明するための図。

    第1の態様のろう付け方法において、上記心材は、0.3〜1.3質量%のMgをさらに含有することが好ましい。
    この場合には、心材とろう材にそれぞれMgが添加されているため、ろう材表面の酸化皮膜を、より確実に破壊することができる。 そのため、フィレット形成能を高めることができ、ろう付け性をより向上させることができる。

    また、第2の態様において、上記ろう材は、0.1〜1.2質量%のMgをさらに含有することが好ましい。
    この場合には、心材とろう材にそれぞれMgが添加されているため、ろう材表面の酸化皮膜を、より確実に破壊することができる。 そのため、ろう付け性をより向上させることができる。

    また、上記酸素ポンプおよび上記ろう付け炉との間にはガス循環経路が配置されており、上記不活性ガスを上記ガス循環経路内において循環させつつ、上記酸素低減処理工程および上記ろう付け加熱処理工程を同時に行うことが好ましい。
    この場合には、酸素ポンプによって酸素分圧を低減した不活性ガスをろう付け炉に導入し、そのろう付け炉から排出した不活性ガスを再び酸素ポンプに導入することができる。 そのため、不活性ガスの酸素分圧を低減しやすくなる。 したがって、ろう材に酸化皮膜がより形成されにくくなり、ろう付け性をより高めることができる。

    また、上記ろう材は、0.01〜0.15質量%のBiをさらに含有することが好ましい。
    この場合には、Biによってろう材の表面張力を下げることができ、ろう材のフィレット形成能をより向上させることができる。 なお、Biの濃度が0.01質量%未満の場合は、ろう材の表面張力を下げる効果が少なく、フィレット形成能を向上させる効果を充分に発揮できない。 また、Biの濃度が0.15質量%を超えると、ろう材の表面張力が過度に低下し、フィレット形成能が低下しやすくなる。

    また、上記ろう付け方法により、熱交換器を製造することが好ましい。
    熱交換器は、ろう材のフィレットが一箇所でも切れると不良品になる可能性があるため、高いろう付け性が要求される。 上記ろう付け方法はフィレットの形成能に優れているため、熱交換器のように、高いろう付け性を要求される製品に用いると特に有効である。

    (実施例1)
    上記ろう付け方法に係る実施例について、図1〜図4を用いて説明する。 図2、図3に示すごとく、本例では、フラックスを塗布することなく、ブレージングシート1をろう付けする。 ブレージングシート1は、心材2と、該心材2の表面にクラッドされたろう材3とを有する。
    心材2は、Alを主成分としており、1.8質量%以下(0質量%を含まず)のMnおよび、残部不可避的不純物を含有する。
    また、ろう材3は、Alを主成分としており、0.1〜1.2質量%のMgと、4〜13質量%のSiと、残部不可避的不純物とを含有する。

    本例のろう付け方法では、酸素低減処理工程と、ろう付け加熱処理工程とを行う。
    酸素低減処理工程では、図1に示すごとく、酸素イオン伝導性を有する固体電解質体40を備えた酸素ポンプ4に不活性ガス5(N )を導入する。 そして、固体電解質体40に直流電圧を印加することにより、不活性ガス5に混在する酸素の分圧を1×10 −10 Pa以下に低減する。

    また、ろう付け加熱処理工程では、ブレージングシート1を、所定の不活性ガス雰囲気中のろう付け炉6で加熱処理して、フラックスを塗付することなくろう付けを行う。 この、所定の不活性ガス雰囲気は、上記酸素低減処理工程で処理された不活性ガス5をろう付け炉6に導入して形成される。

    本例では、酸素ポンプ4とろう付け炉6とをパイプ50によって接続し、不活性ガス5が循環するガス循環経路10を形成してある。 ろう付けを行う際には、まず、2つのバルブB1,B2を閉じ、真空ポンプ11を使ってガス循環経路10内を真空にする。 その後、第1バルブB1を開けて不活性ガス5を酸素ポンプ4に導入する。 酸素ポンプ4には、不活性ガス5が流れる流路49を形成してある。 流路49の壁部はジルコニア(固体電解質体40)からなる。 この固体電解質体40に直流電圧を加えると、流路49を流れる不活性ガス5中の酸素分子が、固体電解質体40を通って外部に排出される。 これにより、不活性ガス5の酸素分圧を1×10 −10 Pa以下にしている。 不活性ガス5は酸素ポンプ4の排出口48から排出され、ろう付け炉6に導入される。

    この後、第2バルブB2を開け、第1バルブB1を閉じる。 そして、ろう付け炉6を通過した不活性ガス5を酸素ポンプ4に戻す。 このようにして、不活性ガス5をガス循環経路10内において循環させつつ、酸素ポンプ4によって酸素分圧を低減する工程(酸素低減処理工程)を行う。 同時に、ブレージングシート1をろう付け加熱する工程(ろう付け加熱処理工程)を行う。

    一方、本例では図2、図3に示すごとく、3枚のブレージングシート1と、2枚のコルゲートフィン12を使って、熱交換器7(チューブ材70)を製造する。 ブレージングシート1には、屈曲形成された2枚の外側ブレージングシート1aと、該2枚の外側ブレージングシート1aの間に介在する中央ブレージングシート1bとがある。 中央ブレージングシート1bは、その両面に、ろう材3をクラッドしてある。 また、外側ブレージングシート1aは、片面のみにろう材3をクラッドしてある。 外側ブレージングシート1aと中央ブレージングシート1bとの間には、コルゲートフィン12を配置してある。 コルゲートフィン12は、JIS3003ベア材をコルゲート加工したものである。 ブレージングシート1のろう材3は、コルゲートフィン12に接合している。 また、外側ブレージングシート1aと中央ブレージングシート1bは、その両端において接合している。

    熱交換器7は、上記3枚のブレージングシート1と2枚のコルゲートフィン12を重ね合わせ、ろう付け炉6において加熱して形成される。 加熱すると、ろう材3が溶融し、外側ブレージングシート1aとコルゲートフィン12とがろう付けされる。 また、外側ブレージングシート1aと中央ブレージングシート1bも、ろう付けされる。 この際、コルゲートフィン12とブレージングシート1との間等にフィレット(図示しない)が形成される。 また、熱交換器7の内部には、冷媒が流れる流路Fが形成されている。

    本例の熱交換器7は、電力変換装置に使用される。 すなわち、上記チューブ状の熱交換器7を複数個製造しておき、半導体素子を有する半導体モジュール(図示しない)と、熱交換器7とを交互に積層して、電力変換装置を構成する。 熱交換器7によって、上記半導体モジュールを冷却するよう構成されている。

    本発明の効果を確認するための実験を行った。 下記表1に示すごとく、ろう材に含まれるSiとMgを、それぞれ本発明の範囲内(Si4〜13質量%、Mg0.1〜1.2質量%)で条件振りしたブレージングシートを製造した。 ろう材の厚さは0.06mmまたは0.15mmとした。 また、一部のサンプルのろう材にBiを添加した。 心材のMnの含有量は1.2質量%にした。

    表1の組成を有するブレージングシートを用いて試験用のサンプル1〜8を製造し、JIS Z3263に規定する隙間充填試験を行った。 すなわち、図4に示すごとく、表1のブレージングシート1を平材とし、これに垂直材13を組み付けて、試験用のサンプル1〜8を作成した。 ブレージングシート1(水平材)にはフラックスを塗布していない。 ブレージングシート1は幅25mm、長さ60mm、厚さ1.2mmである。 また、垂直材13は3003合金板であり、高さ8mm、長さ55mm、厚さ1.0mmである。 ブレージングシート1と垂直材13との間に直径1.6mmのスペーサーロッド14を挿入してある。 これにより、ブレージングシート1と垂直材13との間に隙間Sを形成してある。 隙間Sは、スペーサーロッド14に近づくほど次第に広くなる形状をしている。

    このように作成したサンプル1〜8を、図1に示すろう付け炉6に入れて、ろう付け加熱処理工程を行った。 また、ろう付け時の酸素分圧を、本発明の範囲内(1×10 −10 〜1×10 −16 Pa)で条件振りした。 ろう付け加熱処理工程は、常圧(大気圧)下で行った。

    ろう付けは、15分間でサンプル1〜8を常温から600℃まで加熱することにより行った。 その後、200℃まで冷却して、サンプル1〜8を取り出した。 加熱開始から冷却終了までの間、不活性ガス5をガス循環経路10内に循環させた。

    ろう付けを行うと、サンプル1〜8のろう材が溶融し、上記隙間S(図4参照)に、ろう材のフィレットが形成される。 ろう付け性が高いサンプルは、隙間Sを充填するフィレットの長さが長い。 すなわち、ろう付け性が高いサンプルほど、スペーサーロッド14により近く、広い隙間Sにまで、フィレットを形成することができる。

    ろう付け炉6から取り出したサンプル1〜8について、隙間S(図4参照)を充填したフィレットの長さを測定した。 フィレットの長さが15mm未満のサンプルは×とし、15mm以上30mm未満のサンプルは○とし、30mm以上のサンプルは◎とした。 結果を表1に示す。

    (実施例2)
    本例は、ろう材と心材の組成を変更した例である。 本例では、心材にMgを添加してある。 本例の心材は、Alを主成分としており、0.3〜1.3質量%のMgと、1.8質量%以下(0質量%を含まず)のMnと、残部不可避的不純物とを含有する。 また、本例のろう材は、Alを主成分としており、4〜13質量%のSiと、残部不可避的不純物とを含有する。 その他は、実施例1と同様である。

    本例の効果を確認するための実験を行った。 下記表2に示すごとく、心材に含まれるMgとMnを、それぞれ本発明の範囲内(Mg0.3〜1.3質量%、Mn1.8質量%以下)で条件振りしたブレージングシートを製造した。 ろう材の厚さは0.06mmとした。 また、一部のサンプルのろう材にBiを添加した。 ろう材中のSiの含有量は、10質量%又は13質量%にした。

    表2の組成を有するブレージングシートを用いて、実施例1と同様の形状を有する試験用のサンプル9〜17(図4参照)を作成した。 そして、このサンプル9〜17を、図1に示すろう付け炉6に入れてろう付けした。 ろう付け時の酸素分圧は、表2に示すように、1×10 −10又は1×10 −15 Paとした。

    ろう付け炉6から取り出したサンプル9〜17について、隙間Sを充填したフィレットの長さを測定した。 そして、実施例1と同一の基準によって、サンプル9〜17のろう付け性の評価をした。 結果を表2に示す。

    (実施例3)
    本例は、ろう材と心材にそれぞれMgを添加した例である。 本例では、下記表3に示す組成のブレージングシートを作成した。 ろう材に含まれるMgと心材に含まれるMgとを、それぞれ本発明の範囲内(ろう材中のMg0.1〜1.2質量%、心材中のMg0.3〜1.3質量%)で条件振りしてある。 このブレージングシートを使って試験用のサンプル18,19(図4参照)を作成した。 そして、このサンプル18,19を、図1に示すろう付け炉6に入れてろう付けした。 ろう付け時の酸素分圧は1×10 −10 Paにした。

    ろう付け炉6から取り出したサンプル18,19について、隙間Sを充填したフィレットの長さを測定した。 そして、実施例1と同一の基準によって、サンプル18,19のろう付け性の評価をした。 結果を表3に示す。

    (比較例1)
    本発明に属さない比較例としてのサンプル20〜29を作成した。 下記表4に示すように、サンプル20は、ろう材のMgの含有量が下限値(0.1質量%)を下回り、サンプル21は、ろう材のMgの含有量が上限値(1.2質量%)を上回る。 また、サンプル22は、心材のMgの含有量が下限値(0.3質量%)を下回り、サンプル23は、心材のMgの含有量が上限値(1.3質量%)を上回る。 サンプル24は、ろう材のSiの含有量が下限値(4質量%)を下回り、サンプル25は、ろう材のSiの含有量が上限値(13質量%)を上回る。

    また、サンプル26は、心材のMnの含有量が上限値(1.8質量%)を超える。 サンプル27〜サンプル29は、ブレージングシートの組成は本発明の範囲内であるものの、ろう付け時の酸素分圧が1×10 −10を超えている。

    これらのサンプル20〜29をろう付けし、隙間Sを充填したフィレットの長さを測定した。 そして、実施例1と同一の基準によって、サンプル20〜29のろう付け性の評価をした。 結果を表4に示す。

    (解析結果)
    表1〜3に示すごとく、本発明の範囲に含まれるサンプル1〜19は、いずれもろう付け性が良好であった。 また、表4に示すごとく、比較例としてのサンプル20〜24,27〜29は、いずれもろう付け性が良好でなかった。 サンプル25,26は、後述する理由により、試験を行うことができなかった。

    サンプル20,21のろう付け性が良好でないのは、ろう材のMgの含有量が本発明の範囲(0.1〜1.2質量%)から外れているためと考えられる。

    また、サンプル22,23のろう付け性が低いのは、心材のMgの含有量が本発明の範囲(0.3〜1.3質量%)から外れているためと考えられる。 サンプル23は、心材のMg含有量が1.6質量%と多いため、心材が部分的に溶融している。

    また、サンプル24のろう付け性が低いのは、ろう材のSiの含有量が本発明の範囲(4〜13質量%)から外れているためと考えられる。 サンプル25は、ろう材のSiの含有量が15質量%と多いため、ろう材が割れしてしまい、試験を行うことができなかった。 サンプル26も、心材のMnの含有量が2.0質量%と多いため、心材が耳割れしてしまい、試験を行うことができなかった。

    サンプル27〜29は、ろう付け時の酸素分圧が本発明の範囲(1×10 −10 Pa以下)から外れているため、良好なろう付け性を得ることができなかった。

    上記実験から、本発明の効果を確認することができた。 本発明に属するサンプル1〜19が良好なろう付け性を示したのは、以下の理由によると考えられる。 すなわち、サンプル1〜19では、固体電解質体を有する酸素ポンプを用いて、不活性ガス中の酸素分圧を1×10 −10 Pa以下に低減し、この不活性ガス雰囲気中においてろう付けを行っている。 また、心材およびろう材の組成を表1〜表3に示す範囲内にしてある。 このようにすると、ろう材又は心材に含まれるMgによって、ろう材表面の酸化皮膜を破壊することができる。 また、不活性ガス中の酸素分圧が1×10 −10 Pa以下と極めて低いため、Mgによって酸化皮膜を破壊した後、ろう材の表面が再び酸化することを抑制できる。 そのため、ろう材の濡れ性が高い状態を維持することができ、ろう材を濡れ広がらせることができる。 その結果、フィレットを形成しやすくなり、フラックスを塗布しなくても、ろう付け性を充分に高めることが可能になる。

    ろう付け性が高まる理由を、さらに詳細に説明する。 ろう付け時には、ろう材や心材に含まれるMgが酸化皮膜に作用して、酸化皮膜中にスピネル型の化合物Al MgO を形成する。 これにより、酸化皮膜が脆弱化し、ろう材の濡れが促進される。 また、心材とろう材とには、熱膨張率の差があるため、加熱によってブレージングシートが撓み、酸化皮膜に亀裂が生じることがある。 この亀裂からろう材が露出し、濡れ性が高まる場合もある。 また、コルゲートフィン12(図2参照)のような、ろう付けの相手材にも、酸化皮膜が存在する。 この相手材の母材と酸化皮膜にも熱膨張率の差があるため、酸化皮膜に亀裂が生じる。 そのため、不活性ガス中の酸素分圧を1×10 −10 Pa以下にすることによってろう材及び相手材の再酸化を抑制しておけば、相手材側の酸化皮膜から露出した母材と、ろう材側の酸化皮膜から露出したろう材とを、互いに接触させることが可能になる。 そのため、ろう材と相手材とが接合しやすくなる。

    以上のごとく、本例によれば、フラックスを塗布することなくろう付け性を充分に高めることができる、ブレージングシートのろう付け方法と、該ろう付け方法を用いて製造した熱交換器を提供することができる。

    1 ブレージングシート 2 心材 3 ろう材 4 酸素ポンプ 40 固体電解質体 5 不活性ガス 6 ろう付け炉

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