コンロッドの破断開始部形成方法及び形成装置

申请号 JP2013102065 申请日 2013-05-14 公开(公告)号 JP6145301B2 公开(公告)日 2017-06-07
申请人 株式会社安永; 发明人 貝増 祐士; 松井 淳悟;
摘要
权利要求

金属でできたコンロッドの大端部の内周面の対向する位置に当該コンロッドの破断開始部を形成するコンロッドの破断開始部形成方法において、 先端のRの大きい第1のインサートチップを用いて前記破断開始部に対応する位置に溝部を形成する第1のステップと、 前記第1のインサートチップよりも先端のRが小さい第2のインサートチップを用いて前記溝部の底部のRをより小さく加工してV字溝を形成する第2のステップを有することを特徴とするコンロッドの破断開始部形成方法。金属でできたコンロッドの大端部の内周面の対向する位置に当該コンロッドの破断開始部を形成するコンロッドの破断開始部形成装置において、 先端のRの大きい第1のインサートチップを用いて前記破断開始部に対応する位置に溝部を形成した後に、前記第1のインサートチップよりも先端のRが小さい第2のインサートチップを用いて前記溝部の底部のRをより小さく加工してV字溝となったコンロッドの破断開始部を形成することを特徴とするコンロッドの破断開始部形成装置。破断開始部が形成されていないコンロッドを用意する第1の工程と、前記コンロッドの大端部の内周面の対向する位置に前記請求項1に記載のコンロッドの破断開始部形成方法を適用して破断開始部を形成する第2の工程と、マンドレルを用いて前記コンロッドの大端部の破断開始部が形成された内周面を拡開することでコンロッドを破断する第3の工程とを有することを特徴とするコンロッドの製造方法。

说明书全文

本発明は、例えば自動車のコネクティングロッド(以下、単に「コンロッド」とする)の破断開始部を形成するコンロッドの破断開始部形成方法及び形成装置に関する。

例えば自動車のコンロッドなどの大端部の内周面において、厚さ方向互いに対向する位置に、溝状や僅かな間隔を隔てて直線状に連なった凹み部からなる破断開始部を形成する技術は従来から知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。

このような破断開始部を形成するにあたって、特許文献1及び特許文献2においてはレーザー装置が用いられている。レーザー装置によって正確な破断開始部を形成するためには、数千万円もするそれなりに高価な装置を導入して設置しなければならない。そのため、このレーザー装置の代わりに専用のブローチ盤を用いてV字溝をなす破断開始部を形成する場合もある(例えば、特許文献3参照)。

米国特許第5,208,979号公報

米国特許第5,882,438号公報

特開平9−201641号公報

上述のような特許文献1及び特許文献2に記載のコンロッド破断用溝部を形成する方法では、レーザー光を細かなパルスでコンロッド大端部内周面に照射することによっていわゆる破断用溝部を形成しているので、レーザー光の或る(特定の)照射位置において生じた熱の影響が当該溝部の隣接する位置に過度に伝わり、この余分な熱によって溝部の隣接する部分にも必要以上の溶融を生じさせてしまうおそれがある。

また、このような現象によって、本来的には一定幅の溝部がきれいに形成されるべきであるにもかかわらず、溝部の幅が不均一なまま当該溝部が形成されてしまうおそれもある。

そのため、このような所望の形状をなさない溝をコンロッド破断開始部として形成したとき、コンロッド両端部に引張り応を作用させるときれいなコンロッド破断面が得られない場合がある。

また、特許文献1や特許文献2に記載されたレーザー装置には、一般にYAGレーザー装置が使用される。YAGレーザー装置を用いてコンロッドの破断開始部を形成する場合、上述したように装置自体が高価であるばかりか、一般にレーザー光を励起するフラッシュランプを定期交換しなければならず、これにかかるランニングコストが高くつく。また、YAGレーザー装置が一旦故障すると、通常の保守点検員では対応できないため、レーザー故障時に伴って長時間に及ぶラインストップを引き起こす懸念がある。このような長時間に及ぶラインストップは、その後の工程におけるラインストップも誘発し、製造ライン全体のラインストップを招き、生産計画に大幅な狂いを生じさせてしまう。

一方、ブローチ加工によってV字溝形状のコンロッドの破断開始部を形成する場合、以下の問題点が生じる。具体的には、コンロッドの破断開始部が溝形状をなす場合は、一般的に溝幅の広いキー溝と異なり、溝開口部の幅が狭くかつ深さが深くなっており、溝の断面形状がV字型の極めて細い特別な溝形状となっている。

そのため、コンロッドの破断開始部をブローチ刃によって形成しようとすると、ブローチ刃が長期間の使用により摩耗するに従ってV字溝の溝底部のRが大きくなるので、マンドレルでコンロッド大端部を拡開した場合に均一な破断面が得られなくなるおそれがある。また、摩耗したブローチ刃を用いてV字溝を溝加工した場合、コンロッド破断時の引張り力が大きくなり、コンロッド破断装置の動力もそれに応じて必要とし、省エネルギーの要請に反する。しかしながら、ブローチ刃自体は高価なため、このような不具合を避けるためにブローチ刃の交換を頻繁に行うと生産コストが高くなると共に、生産効率が低下する。

また、ブローチ刃を構成する多段刃を用いたV字溝加工のメリットを生かすためには、各刃の高さの厳密な管理が必要となり、メンテナンス性が悪くなる。特に慣れない作業者がメンテナンスを行うと、メンテナンスのための作業時間を必要以上にとってしまい、コンロッドの生産効率が著しく低下する。また、ブローチ刃を備えたブローチ盤そのものも高価であり、コストパフォーマンスが悪くなってしまう。

また、コンロッドの破断開始部のV字溝を形成するにあたって、ブローチ刃を構成する2〜3枚の刃が同時にコンロッドの溝形成部に接するため、各刃の間に切粉が溜まりやすくなる。図7は、ブローチ刃を用いてコンロッドの破断開始部を形成する場合の不具合点を説明する図である。図7から分かるようにブローチ刃50を用いてコンロッドの破断開始部のV字溝を形成する場合、ブローチ刃50を構成する各刃51,52,53,・・・の間に溜まった全ての切粉61,62,63,・・・の排出性を考慮する必要があり、加工速度を上げることが困難となって生産効率の低下を招く。なお、排出性を向上させる手段としては、ブローチ刃50を構成する各刃51,52,53,・・・のピッチを広げる方法が考えられるが、この方法ではブローチ刃50全体が長くなってしまい、加工速度を上げることはできても、その分加工ストロークも必要となってしまうため、生産効率の低下という課題解決にはつながらない。

本発明の目的は、以上のようなレーザー装置を用いた場合やブローチ刃を用いた場合にそれぞれ生じる問題点を一挙に全て解決し、破断後に安定した破断面を得ることのできるコンロッドの破断開始部を低コストで効率良く形成する方法及び装置を提供することにある。

上述の課題を解決するために、本発明の請求項1に係るコンロッドの破断開始部形成方法は、 金属でできたコンロッドの大端部の内周面の対向する位置に当該コンロッドの破断開始部を形成するコンロッドの破断開始部形成方法であって、 先端のRの大きい第1のインサートチップを用いて前記破断開始部に対応する位置に溝部を形成する第1のステップと、 前記第1のインサートチップよりも先端のRが小さい第2のインサートチップを用いて前記溝部の底部のRをより小さく加工してV字溝となった前記破断開始部を形成する第2のステップを有することを特徴としている。

また、本発明の請求項2に係るコンロッドの破断開始部形成装置は、 金属でできたコンロッドの大端部の内周面の対向する位置に当該コンロッドの破断開始部を形成するコンロッドの破断開始部形成装置であって、 先端のRの大きい第1のインサートチップを用いて前記破断開始部に対応する位置に溝部を形成した後に、前記第1のインサートチップよりも先端のRが小さい第2のインサートチップを用いて前記溝部の底部のRをより小さく加工してV字溝となった前記破断開始部を形成することを特徴としている。

本発明の請求項1に係るコンロッドの破断開始部形成方法及び請求項2に係るコンロッドの破断開始部形成装置によると、レーザー装置を用いてコンロッドの破断開始部を形成する場合に生じる課題を解決できる。具体的には、レーザー励起用のフラッシュランプの定期交換による高価なランニングコストを必要としなくなる。また、レーザー装置の故障時に保守点検員が対応できないことに起因する長期間に及ぶラインストップを招かないで済む。これによって、破断製品を予め決められた生産計画通りに生産することができる。

また、鍛造材からなるコンロッドに単なる溝部からなるコンロッドの破断開始部を形成した場合の課題を解決できる。具体的には、単なる溝部のみからなる破断開始部が形成された鍛造でできたコンロッドを破断したときに生じるようなディンプルの発生を防止できる。これによって、破断後のコンロッドの破断面同士を再び合わせたときに、局部的に応力が高くなる領域が発生せず、安定した品質の最終製品を得ることができる。

また、コンロッドの破断開始部の溝部をブローチ加工によって形成する場合の課題を解決できる。具体的には、摩耗したブローチ刃を用いて溝部を形成した後に破断した際にコンロッド破断装置の動力もそれに応じて必要として省エネルギーの要請に反するような不具合が生じるのを回避できる。

また、コンロッドの破断開始部のV字溝は、上述した通り一般のキー溝と異なり溝開口部が狭くかつ深さが深くなっている。すなわち、ブローチ刃を用いてV字溝を形成する場合、V字溝の深さを深くかつ鋭状のV字となるようにV字角度を小さくかつV字溝の底部のRを極力小さくしなければならないという特有の加工条件が要求される。このような厳しい加工条件に起因して、コンロッドの破断開始部のV字溝を形成するにあたって、ブローチ刃を構成する2〜3枚の刃が同時にコンロッドの溝形成部に接する際に、各刃の間に切粉が溜まりやすくなるので、各刃の間に溜まった全ての切粉の排出性を考慮する必要があり、加工速度を上げることが困難となり、生産効率の低下を招くが、本発明の場合、このような不都合が生じることはない。

また、本発明の請求項3に係るコンロッドの製造方法によると、破断開始部が形成されていないコンロッドを用意する第1の工程と、前記コンロッドの大端部の内周面の対向する位置に前記請求項1に記載のコンロッドの破断開始部形成方法を適用して破断開始部を形成する第2の工程と、マンドレルを用いてコンロッドの大端部の破断開始部が形成された内周面を拡開することでコンロッドを破断する第3の工程とを有することを特徴としている。

本発明によると、レーザー装置を用いた場合やブローチ刃を用いた場合にそれぞれ生じる問題点を一挙に全て解決し、破断後に安定した破断面を得ることのできるコンロッドの破断開始部を低コストで形成する方法及び装置を提供できる。

本発明の一実施形態に係るコンロッドの破断開始部形成方法を説明するコンロッドの大端部の斜視図であり、第1ステップの溝部加工を終えた状態を示す図(図1(a))及び第2ステップのV字溝加工を終えた状態を示す図(図1(b))である。

図1(a)及び図1(b)に示したコンロッドの溝部及びV字溝をそれぞれ部分的に拡大して示す断面図である。

本発明の一実施形態に係るコンロッドの破断開始部形成装置(図3(a)、図3(b))を示すと共に、コンロッドの破断開始部形成方法を実施するにあたっての第1ステップの溝部加工方法に関する説明図(図3(a))及び第2ステップのV字溝加工方法に関する説明図(図3(b))である。

図3(a)に示した第1ステップの溝部加工に使用するインサートチップ及びこのチップホルダを部分的に拡大して示す斜視図(図4(a))及び第2ステップのV字溝加工方法に使用するインサートチップ及びこのチップホルダを部分的に拡大して示す斜視図(図4(b))である。

図4に示したコンロッドの破断開始部形成装置のインサートチップ及びチップホルダの変形例を拡大して示す図である。

本発明の一実施形態に係るコンロッドの破断開始部形成方法を適用したコンロッドを破断するためのコンロッド破断装置を示す側面図である。

ブローチ刃を用いてコンロッドの破断開始部を形成する場合の不具合点を説明する図である。

以下、本発明の一実施形態に係るコンロッドの破断開始部形成方法について図面に基づいて説明する。本発明の一実施形態に係るコンロッドの破断開始部形成方法は、鍛造材からなる自動車のコンロッドの大端部の内周面に厚さ方向互いに対向する位置に破断開始部を形成する方法である。

図1は、本発明の一実施形態に係るコンロッドの破断開始部形成方法を説明するコンロッドの大端部の斜視図であり、第1ステップの溝部加工を終えた状態を示す図(図1(a))及び第2ステップのV字溝加工を終えた状態を示す図(図1(b))である。また、図2は、図1(a)及び図1(b)に示したコンロッドの溝部及びV字溝をそれぞれ部分的に拡大して示す断面図である。

本実施形態に係るコンロッド1の破断開始部形成方法は、鍛造の金属でできたコンロッドの大端部の内周面の対向する位置にコンロッドの破断開始部を形成する方法であり、先端のRの大きい第1のインサートチップを用いて破断開始部に対応する位置に溝部を形成する第1のステップと、第1のインサートチップよりも先端のRが小さい第2のインサートチップを用いて溝部の底部のRをより小さく加工してV字溝となった破断開始部を形成する第2のステップを有する。

より具体的な手順としては、最初にインサートチップの加工具を備えたコンロッドの破断開始部形成用加工装置であって、特許文献3のブローチ盤に対応する加工装置を被加工対象物であるコンロッドの大端部にセットする。なお、本実施形態では、最初にこの加工装置にR=0.1mmのインサートチップ(切削用刃具としての第1のインサートチップ)を取付ける。その後、本実施形態では、第1のステップとしてコンロッド大端部の内周面の互いに対向する位置であってコンロッド破断開始部に対応する位置に、溝底部がR=0.1mmとなった溝部11を上述したR=0.1mmのインサートチップを用いて形成する。

次いで、第2のステップとして第1のインサートチップよりも先端のRが小さい溝仕上げ用刃具としての第2のインサートチップ、すなわち本実施形態においては上述の加工装置にR=0.03mmのインサートチップを取付け、このインサートチップを用いて第1のステップで形成されたR=0.1mmの溝部の底の部分を更に削って溝底部がR=0.03mmのV字溝12からなる破断開始部を形成する。

続いて、上述したコンロッドの破断開始部形成方法を実施するための破断開始部形成装置について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係るコンロッドの破断開始部形成装置(図3(a)、図3(b))を示すと共に、コンロッドの破断開始部形成方法を実施するにあたっての第1ステップの溝部加工方法に関する説明図(図3(a))及び第2ステップのV字溝加工方法に関する説明図(図3(b))である。また、図4は、図3(a)に示した第1ステップの溝部加工に使用するインサートチップ及びこのチップホルダを部分的に拡大して示す斜視図(図4(a))及び第2ステップのV字溝加工方法に使用するインサートチップ及びこのチップホルダを部分的に拡大して示す斜視図(図4(b))である。

コンロッドの破断開始部形成装置200は、例えばXYZ直交座標型ロボットによって3次元的に移動可能なインサートチップホルダ支持ユニット230と、インサートチップホルダ支持ユニット230の下面から下方に向かって所定間隔隔てて平行に突出した状態で取付けられたインサートチップホルダ210,220を有している。そして、図中左側の一方のインサートチップホルダ210の下端部先端近傍周面の直径方向対向する位置には、コンロッドの大端部内周面に溝部11(図1参照)を形成する切削用刃具としての第1のインサートチップ211a,211bがホルダ直径方向対向する位置にそれぞれ備わると共に、図中右側のインサートチップホルダ220の下端部先端近傍周面の直径方向対向する位置には、コンロッド内周面に下端部破断開始部としてのV字溝12(図1参照)を形成する溝仕上げ用刃具としての第2のインサートチップ221a,221bがそれぞれ備わっている(図4参照)。

また、コンロッド1は、ワーク支持部240によって支持されたワーク受け台250の上面に、ここでは詳細には図示しないコンロッド固定機構(固定治具)によってしっかりと固定されるようになっている。

本発明においては、上述の溝加工に使用する第1のインサートチップ(切削用チップ)211a,211bの加工部先端の半径R1(図4(a)参照)と破断開始部としてのV字溝を形成する第2のインサートチップ(溝仕上げ用チップ)221a,221bのV字溝加工部先端の半径R2(図4(b)参照)との関係は、R1>R2となっている。なお、ここで言う半径R1、R2とは各ホルダ中心軸線と平行な各チップの仮想中心軸線周りの半径であり、いわゆるチップ先端の丸み具合に対応している。また、本実施形態の場合、R1=0.1mm、R2=0.03mmとなっているが、R1とR2の大小関係が満たされていれば、その寸法に限定されないことは言うまでもない。

続いて、上述したコンロッドの破断開始部形成装置200を用いた破断開始部形成方法の具体的手順について、この装置との関係に基づいて説明する。なお、この具体的手順は、あくまで一例を示したものに過ぎず、本発明の作用を発揮し得る限り、他の様々な手順が考えられ得ることは言うまでもない。

最初に図3(a)に示すインサートチップホルダ支持ユニットに連結された例えばXYZ直交座標型ロボット(ここでは図示せず)の制御装置にコンロッドの破断開始部形成のための手順をティーチングする。そして、コンロッドの破断開始部の形成作業を始める。

この際、インサートチップホルダ支持ユニット230を図3(a)に示すような位置までロボットでXY平面上を移動させる。そして、図3(a)のコンロッド上方の左側の矢印で示すように溝部形成用のインサートチップホルダ210及びこの下端近傍に備わった左側の第1のインサートチップ211aをコンロッド1の破断開始部に対応する位置までロボットを介してXY方向に移動させると共に、コンロッドの破断開始部に対応させながらZ軸方向に移動させて第1のインサートチップ211aで図3(a)のコンロッド1の大腿部の左側の内周面を加工して溝部11(図1参照)を形成する。そして、ロボットを駆動して再びインサートチップホルダ支持ユニット230を先程の位置まで戻し、溝部形成用のインサートチップホルダ210の右側に備わった第1のインサートチップ211bを図3(a)のコンロッド上方の右側の矢印で示すように移動させ、図3(a)の右側の第1のインサートチップ211bで先程の溝部11と対向する位置であって破断開始部に対応する位置に先程と同様に加工して溝部11を形成する。

続いて、コンロッドの破断開始部としてのV字溝12(図1参照)の形成作業を始める。この際、インサートチップホルダ支持ユニット230を図3(b)に示すような位置までロボットでXY平面上を移動させ、破断開始部形成用のインサートチップホルダ220の左側に備わった第2のインサートチップ221aを図3(b)のコンロッド上方の左側の矢印に示すようにコンロッド内周面の左側であって先程形成した溝部に対応する位置までロボットを介してXY方向に移動させると共に、コンロッド1のこの溝部に対応するようにZ軸方向に移動させて第2のインサートチップ221aで図3(b)のコンロッドの大腿部の左側の内周面に破断開始部としてのV字溝を加工して形成する。そして、再びインサートチップホルダ支持ユニット230を先程の位置まで戻し、破断開始部としてのV字溝形成用のインサートチップホルダ220の右側に備わった第2のインサートチップ221bを図3(b)のコンロッド上方の右側の矢印で示すように移動させ、先程と同様に第2のインサートチップ221bで先程形成した破断開始部としてのV字溝とコンロッド1の大腿部内周面の対向する位置であってV字溝形成前の溝部に対応する位置に破断開始部としてのV字溝を加工して形成する。

以上のような本実施形態に係るコンロッドの破断開始部形成装置200を用いることで、従来のように多数の刃を有するブローチ刃を使用せずに加工することができるので、コンロッド破断開始部形成装置特有の形状である溝開口部の幅が狭く深さが深くなったV字溝の加工速度を高めることができると共に、ブローチ刃の各刃の間に溜まった切粉を削除するような余分な作業を行うことなくコンロッドの破断開始部を効率良く形成することができる。

続いて、図4に示した本実施形態に係るコンロッドの破断開始部形成装置200の変形例について説明する。この変形例は、上述の実施形態と比べてインサートチップホルダ及びこれに備わるインサートチップの位置が異なり、他の構成については同様であるので、この相違点のみについて説明する。

図5は、図4に示したコンロッドの破断開始部形成装置のインサートチップ及びチップホルダの部分の変形例を拡大して示す図である。この変形例では、上述した実施形態に係る2つのインサートチップホルダ210,220にそれぞれ溝部形成用のインサートチップ211a,211bとV字溝形成用インサートチップ221a,221bを2つずつ設けることに変えて、図5に示すような構成を有する1つのインサートチップホルダ260をここでは図示しないインサートチップ支持ユニットに設けるようにしている。この場合、図5からも分かるように、インサートチップホルダ260の下端部近傍左端には溝部対向用の先端部の半径がR1となった溝部形成用のインサートチップ261が備わると共に、これと直径方向反対側に対応する位置に先端部の半径がR2となったV字溝形成用のインサートチップ262が備わっている。

そして、図中一点鎖線の矢印で示すようにインサートチップホルダ260を回転する機構をさらに設けることで、最初に左側の溝部形成用の第1のインサートチップ261を用いてコンロッド内周面の左側に溝部を形成すると共に、インサートチップホルダ260をコンロッド1から引き上げてインサートチップホルダ260をホルダ軸線周りに180°回転させてコンロッド内周面の右側に溝部を形成する。そして、この状態でインサートチップホルダ260の左側に回転移動したV字溝形成用の第2のインサートチップ262を用いてコンロッド1の内周面に形成した左側の溝部をコンロッド1の破断開始部としてのV字溝に仕上げ加工し、再びインサートチップホルダ260をコンロッド1から引き上げてホルダ軸線周りに180°回転させてコンロッド内周面の右側の溝部をV字溝形成用の第2のインサートチップ262で加工してコンロッドの破断開始部としてのV字溝に仕上げ加工する。

以上説明した方法でV字溝12からなるコンロッド1の破断開始部を形成することで、従来のようにYAGレーザー装置を用いてコンロッドの破断開始部を形成する場合の欠点、即ちレーザー励起用のフラッシュランプの定期交換による高価なランニングコストを招かなくて済む。また、YAGレーザー装置の故障時に保守点検員が対応できないことに起因する長期間に及ぶラインストップを招かないで済む。これによって、破断製品を予め決められた生産計画通りに生産することができる。

また、本実施形態に係るコンロッドの破断開始部形成方法によると、V字溝のみからなるコンロッドの破断開始部をブローチ加工によって形成する場合の課題を解決できる。具体的には、摩耗したブローチ刃を用いて溝部を形成した後に破断した際にコンロッド破断装置の動力もそれに応じて必要として省エネルギーの要請に反するような不具合が生じるのを回避できる。

また、コンロッドの破断開始部のV字溝12は、上述した通り一般のキー溝と異なって溝開口部が狭くかつ深さが深くなっている。すなわち、ブローチ刃を用いてV字溝を形成する場合、V字溝の深さを深くかつ鋭角上のV字となるようにV字角度を小さくかつV字溝の底部のRを極力小さくしなければならないという特有の加工条件が要求される。このような厳しい加工条件に起因して、コンロッドの破断開始部のV字溝を形成するにあたって、ブローチ刃を構成する2〜3枚の刃が同時にコンロッドの溝形成部に接する際に、各刃の間に切粉が溜まりやすくなるので各刃の間に溜まった全ての切粉の排出性を考慮する必要があり、加工速度を上げることが困難となり、生産効率の低下を招くが、本実施形態の場合、このような不都合が生じることはない。

続いて、コンロッドの両端に引張り応力を作用させてコンロッド破断開始部から均一な破断面となるコンロッド破断面を得るためのコンロッド破断装置を図面に基づいて以下に説明する。図6は、本発明の一実施形態に係るコンロッドの破断開始部形成方法を適用したコンロッドを破断するためのコンロッド破断装置を示す側面図である。

コンロッド破断装置2は、図6に示すように、コンロッド1を載置する基盤100に互いに離反する方向に移動可能に配設され、コンロッド1の大端部10及びロッド部を平に支持する第1の支持部材101及び第2の支持部材102と、これらの支持部材101,102に垂設され、各外周面がそれぞれコンロッド大端部の開口部内面に当接して嵌合する2つのマンドレル半部103a,103bからなる半割型のマンドレル103を備えている。

そして、各マンドレル半部103a,103bの対向する端面と当接する面が夫々テーパ面をなし、各マンドレル半部103a,103bを均等に離反拡張させる楔105と、楔105に荷重を加えるアクチュエータ106と、アクチュエータ106に与圧荷重を加えて楔105を介してコンロッド開口部内面に各マンドレル半部103a,103bを当接させた後、破断荷重を加えて開口部を瞬時に破断する図示しない制御手段を備えている。

かかる構造を有するコンロッド破断装置2を用いたコンロッド破断方法は次のように行われる。まず、スプリングでマンドレル103を互いに向かい合う方向に付勢し、マンドレルを縮めてコンロッドの大端部の開口に進入させる。そして、楔先端のテーパ部がマンドレル103a,103bに当接するまで楔105を押し込んだ状態で一旦止め、上述した制御手段を介してアクチュエータ106が楔105に動加重を加え、これによってコンロッドの上述した破断開始部に拡張力を加えて瞬時に破断する。なお、上述のマンドレル103を互いに向かい合う方向に付勢してマンドレルを縮めるに際して、スプリングの代わりに油圧シリンダやエアシリンダ等のアクチュエータを用いても構わない。

以上説明したように、コンロッドの破断開始部を形成するにあたって、レーザーによる加工方法によると、レーザーの装置が高価であるばかりか、装置の故障時の対応が困難であった。

一方、ブローチ加工方法によると、ブローチ刃を構成する多段刃のメリットを生かすためには各刃の厳密な高さ管理が必要であり、メンテナンス性が悪くなっていた。また、ブローチ盤そのものも高価でコストパフォーマンスが悪くなっていた。また、ブローチ刃を用いた加工中2〜3枚の刃がコンロッドに同時に接するため、各刃の間に切粉が溜まりやすくなり、切粉の排出性を考慮する必要が生じると共に、加工速度を上げることが困難となっていた。

そこで、本発明の場合、ノーズRの異なる、即ち「切削用刃具のR>溝底仕上げ用刃具のR」の関係を有する2種類のインサートチップで加工することで、上述のレーザー装置を用いた場合やブローチ刃を用いた場合の課題を一気に解決することができた。

これに加えて本発明によると以下の作用を発揮できることが分かった。具体的には、コンロッドの破断開始部形成という加工分野においては、ほとんどが10m/min以下の加工速度であり、30〜40m/minが限界となっている。また、その他の加工分野における高速ブローチ加工においても、80m/minが限界となっている。しかしながら、本発明によると、ボーリング加工分野における80m/minを超える加工速度でコンロッドの破断開始部を形成するという超高速加工を実現することができるようになった。

また、加工目的ごとに異なる刃具を用いるため、刃具ごとのメンテナンスを容易に行うことができ、メンテナンス作業に慣れない作業者であっても無駄なメンテナンス時間をとることなく、コンロッドの生産効率を高めることができるようになった。

なお、本発明は、上述したように鍛造でできたコンロッドに限らず焼結でできたコンロッドにも適用可能である。また、上述した溝寸法の具体的数値は、あくまで一例を挙げたものであり、「第1のインサートチップの先端Rの大きさ>第2のインサートチップの先端Rの大きさ」の条件を満たせば本発明がこの数値に限定されるものでないことは言うまでもない。

1 コンロッド 2 コンロッド破断装置 10 大端部 11 溝部 12 V字溝 50(51,52,53,・・・) ブローチ刃 61,62,63,・・・ 切粉 100 基盤 101 第1の支持部材 102 第2の支持部材 103 マンドレル 103a,103b マンドレル半部 105 楔 106 アクチュエータ 200 破断開始部形成装置 210,220 インサートチップホルダ 211a,211b 第1のインサートチップ(切削用チップ) 221a,221b 第2のインサートチップ(溝仕上げ用チップ) 230 インサートチップホルダ支持ユニット 240 ワーク支持部 250 ワーク受け台 260 インサートチップホルダ 261 第1のインサートチップ(溝部形成用インサートチップ) 262 第2のインサートチップ(V字溝形成用インサートチップ)

QQ群二维码
意见反馈