インサート交換式切削工具を使用する自動切削方法

申请号 JP2015550256 申请日 2013-11-27 公开(公告)号 JP6203864B2 公开(公告)日 2017-09-27
申请人 株式会社日立製作所; 发明人 西川 顕二; 河野 一平; 内海 幸治;
摘要
权利要求

インサート交換式切削工具を使用する自動切削方法であって、 加工プログラムを読み込むステップと、 読み込んだ前記加工プログラムから加工条件を抽出するステップと、 寿命試験データおよび工具データを格納するデータベースを参照し前記インサートの回転度と工具寿命とを演算するステップと、 演算した前記回転角度だけ前記インサートを回転させたときに未使用の切刃部分が残るか否かを判断するステップと、 前記未使用の切刃部分で加工するステップと、加工後にインサートを自動回転または自動交換するかを判断するステップを有し、 前記インサートとして、丸型のインサートを使用し、 前記インサートの回転角度を、前記インサート半径および軸切込みの関係から定まる前記インサートの円周角としたことを特徴とするインサート交換式切削工具を使用する自動切削方法。前記加工プログラムは複数の加工工程を含んでおり、各加工工程に応じて前記回転角度を変化させることを特徴とする請求項1に記載のインサート交換式切削工具を使用する自動切削方法。

说明书全文

本発明は自動切削システムに係り、特にインサート交換式切削工具を使用する自動切削システムに関する。

切削加工を自動化するためには、工具の摩耗を目視またはセンサ等が検出して、手動または自動で工具の切削位置の調整や工具の交換を実行する必要がある。また、工具を最適な切削条件で使用することにより、被削材の複数の切削工程の自動化が必要である。そのため、工具の摩耗の検出と交換が重要になっている。

特許文献1では、工具の摩耗を実際に検出する代わりに、低速切削領域から高速切削領域まで、工具摩耗量を加工前に精度よく予測することが記載されている。そのため、被削材中の硬質介在物によるアブレッシブ摩耗に影響を示す項と、被削材中の硬質介在物による熱的拡散摩耗に影響を示す項を有する予測式から、工具摩耗量を予測している。これにより低中速切削領域で主に発生するアブレッシブ摩耗と、高速切削領域で主に発生する熱的拡散摩耗の双方の影響を考慮して工具寿命を決定できる。

また特許文献2にはNC自動加工システムに用いる丸型切削インサートを、自動回転させる自動回転装置が記載されている。この公報では、丸型切削インサートの回転位置の調整を容易かつ正確に行うために、工作機械の移動範囲内に、切削工具に形成されたねじ孔を締め付ける/緩める六レンチを備えたねじ部回転手段と、六角穴を緩めた後に丸型切削インサートを所定角度回転させるインサート回転手段とを設けている。

特開2008−221454号公報

特開2012—6119号公報

上記特許文献1に記載の工具摩耗の予測方法においては、予め定めた加工条件から選定した工具の摩耗を予測するだけである。そのため、使用する工具がインサート交換可能な切削工具であって、摩耗量に応じて自動でインサートを交換することにより、切削加工における工数低減については開示されていない。すなわち、マシニングセンタ等の多機能な加工機を用いた切削システムでは、複数の加工工程を一連の作業として自動で実行できるようにし、全体の自動化による工数や作業時間の低減を図るが、この特許文献1ではそのような自動化については考慮されていない。

また、前記特許文献2に記載の自動回転装置では、自動回転装置用制御部からインサートを回転させる当設部の回転量を適宜設定して摩耗したインサートを回転させて、新たな加工位置を設定している。しかしながらこの特許文献2の自動回転装置では、回転量の設定は適宜であり、摩耗の発生した位置の検出については何ら開示が無い。したがって、インサートを回転させる時期および角度が必ずしも最適になるとは限らず、作業者がインサートの監視を怠ると被削材を摩耗した工具で加工して不良を生ずる恐れがある。また、インサートの摩耗が進んでインサートが破損し飛散する恐れも生ずる。さらに複数の切削加工工程を自動で連続して実行することも困難である。

本発明は、上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、インサートの切刃の摩耗状況を加工前に予測し、その予測に基づいてインサートの工程に応じた量だけの回転または交換を自動で実行することにより、複数の工程を含む切削工程を自動化することにある。これにより、切削工程の短縮を可能にすることも目的とする。

上記目的を達成する本発明の特徴は、インサート交換式切削工具を使用する自動切削システムが、加工プログラムが読み込まれる制御手段と、寿命試験データおよび工具データを格納するデータベースと、前記インサートを前記切削工具に保持するねじを緩めるインサートねじ緩め機構および前記インサートを回転させるインサート回転機構ならびに前記インサートねじ緩め機構と前記インサート回転機構を制御する制御装置を有するインサート自動回転装置とを備え、前記制御手段は前記データベースに格納された前記寿命試験データおよび前記工具データとから、前記インサートの回転角度と回転時期または前記インサートの交換時期を決定し、前記制御装置は、決定された前記インサートの回転角度と回転時期、前記インサートの交換時期に基づいて、前記インサート自動回転装置を駆動することにある。

上記目的を達成する本発明の他の特徴は、インサート交換式切削工具を使用する自動切削システムが、加工プログラムを読み込むステップと、読み込んだ前記加工プログラムから加工条件を抽出するステップと、寿命試験データおよび工具データを格納するデータベースを参照し前記インサートの回転角度と工具寿命とを演算するステップと、演算した前記回転角度だけ前記インサートを回転させたときに未使用の切刃部分が残るか否かを判断するステップと、前記未使用の切刃部分で加工するステップと、加工後にインサートを自動回転または自動交換するかを判断するステップを有することにある。

本発明によれば、加工工程に応じた加工条件を事前に取得し、この取得した加工条件を用いて工具寿命を予測し、インサートの切刃部の回転量を加工工程に応じた量だけとしたので、インサートの切刃部の摩耗に応じてインサートを自動で回転または交換可能になり、複数の工程を含む切削工程が自動化できる。また、切削工程の短縮化も実現できる。

本発明に係る自動切削システムを用いた自動切削動作を説明するフローチャートである。

インサート交換式切削工具の一実施例の正面図である。

図2Aに示した切削工具を用いた切削加工状態を示す斜視図である。

図2Aに示した切削工具が有するインサートの拡大正面図である。

インサートの逃げ面摩耗幅と工具寿命の関係を示す図である。

切削速度とインサートの工具寿命の関係を示す図である。

図1におけるインサート自動回転動作を説明するフローチャートである。

従来のインサートの使用状態を説明するインサートの底面図である。

本発明に係るインサートの使用状態を説明するインサートの底面図である。

インサートにおける摩耗状態を説明する側面展開図である。

本発明に係る自動切削システムが備えるインサート自動回転装置の一実施例の斜視図である。

図8Aに示したインサート自動回転装置を有する自動切削システムの一実施例の斜視図である。

本発明に係るインサート自動回転装置を構成するインサート回転機構の一実施例の拡大斜視図である。

図9Aに示したインサート回転機構の縦断面図である。

インサート回転機構を用いたインサートの自動回転を説明する斜視図である。

本発明に係るインサート自動回転装置を構成するインサートねじ緩め機構の一実施例の拡大斜視図である。

図10Aに示したインサートねじ緩め機構の縦断面図の例である。

インサート自動回転装置の動作を説明するフローチャートである。

以下、本発明に係る自動切削システムのいくつかの実施例を、図面を用いて説明する。以下の説明においては、自動切削システムとしてマシニングセンタを例にとり説明するが、自動切削システムはマシニングセンタに限るものではなく、自動フライス盤やNC旋盤等の各種自動加工機にも適用できる。

初めに、図8Bを用いて、自動切削システム100の概要を説明する。図8Bは、本発明に係るインサート自動回転装置50を備える自動切削システム100の一実施例の斜視図である。

図8Bに示すように本実施例の自動切削システム100は、横型のマシニングセンタであり、平方向に延びるベッド83上には、被削物を載置するテーブル20がベッド83の長手方向に移動可能に設置されている。ベッド83を跨ぐように門型のコラム81が配置されている。コラム81の上辺であって、ベッド83の短辺方向に延びる部分には、切削工具が取り付けられる主軸部73が配置されている。主軸部73は、そのベース部がベッド83の短辺方向に移動可能であり、主軸部73の切削工具保持部は、上下方向に移動可能である。

門型に形成されたコラム81の一方の側面には、ATC(自動工具交換装置)70が取り付けられている。自動工具交換装置70は、コラムの側面を形成する平板部と、この平板部に形成され、交換用工具71を保持・移動させるためのチェーン72とを有している。チェーン72は曲折のある閉路を形成し、下辺部分で後述するインサート自動回転装置50に接続している。なお、インサート自動回転装置50の一端部には、このインサート自動回転装置50を制御するための制御装置が取り付けられている。

次に、図1を用いて本発明に係る自動切削システム100の動作を説明する。図1は、自動切削システム100を用いた切削加工のフローチャートである。自動切削システム100が起動されると、ステップS1において、この自動切削システムが備える図示しない制御手段が、CAMや工作機械、外部コンピュータ等から、今回の加工に必要なNCプログラムを読み込む。

次いで、制御手段はステップS2において、読み込んだNCプログラムから加工条件を抽出する。本自動切削システム100では、交換可能な丸型のインサート3を有する切削工具1を使用するので、加工条件には、軸切込みap(mm)、インサート3の回転速度である切削速度Vc(m/min)、回転している工具において1刃当たりの工具加工方向進行速度である一刃送り量(mm/tooth)等が含まれ、被削材4の材質等も加工条件となる。

ここで、図2A、図2Bを用いて、インサート交換式の切削工具1による切削加工の状態を説明する。図2Aは、自動切削システムで使用するインサート交換式の切削工具1の正面図、図2Bはインサート交換式の切削工具1の斜視図である。基本的なインサート交換式の切削工具1は、自動切削システム100の主軸部に装着されるボディ1と、ボディ1の先端部に位置する複数個のインサート3と、インサート3をボディ1に保持するためのインサート留め具2と、このインサート留め具2をボディ1に固定するための止めねじ5を有している。

ボディ1が工具回転軸6回りに回転することにより、ボディ1の先端部に取り付けられた複数のインサート3が周速で被削材4を切り込み深さapだけ、被削材4の厚さ方向に切削加工する。それとともに、被削材4の幅方向には径切込みdrだけ、被削材4を切削加工する。

図1に戻り、加工条件が求められたので、ステップS3においてインサート3を回転させる際の回転角度βと工具寿命Ltを決定する。切削加工を継続した結果、インサート3が摩耗して所定量以上の摩耗が見られたら、丸型のインサート3ではインサート3を宴の中心軸周りに回転させることにより、新規な切削面を提供する。このインサート3の回転について、図3を用いて説明する。図3は、ボディ1の先端部を拡大して示した正面図である。

工具回転軸6の周りにボディ1が回転すると、丸型のインサート3の円周の一部が、被削材4と接触部7を形成する。この接触部7の大きさは、切り込み深さapとインサート3の半径rとで決定され、接触部7の中心角はβとなる。インサート7は角度βの範囲だけ被削材4と接触し、その他の範囲(360°-β)では接触しない。そこで、インサート3の摩耗が進行したら、接触していた部分の角度βだけ、インサート3をその中心周りに回転させる。この角度を回転角度βiと呼ぶ。

すなわち、インサート3の切刃の一部が加工によって摩耗し使用に適さなくなったら、インサート3を未使用部が切削する位置まで回転させる。さらに摩耗が進行して回転させた部分も使用に適さなくなると、次の未使用部分まで回転させる。この回転を順次実行し、インサート3の全周において未使用部分がなくなったら使用を停止する。

ステップS3では、インサート3が摩耗した結果、インサート3を回転させる場合において、回転後に摩耗部分による切削が生じない範囲を演算する。つまり、被削材4に摩耗部分(これまでの加工における接触範囲)が当たらない位置となる、インサート3の回転角度βiを算出する。

自動切削システム100は、データベースS4を備えている。データベースS4には、事前に取得した寿命試験データと使用する切削工具1の型式が保存されており、上記ステップ3の処理においては、データベースS4を参照している。そして、参照したデータベースS4のデータを用いて、ステップS2で読み取った加工条件下での工具寿命Ltを演算する。また、切削工具1の型式から、切削工具1の直径Dtool(mm)、刃数tooth、インサート3の半径rを得る。

一方、切削工具1の回転角度βiを、データベースS4から読み取ったインサート3の半径rおよびステップS2で抽出した軸切込みap5から決定する。例えば図3に示す切削工具1を用いる場合には、インサート3の摩耗は被削材4と接触する部分7で進行する。このときの回転角度βiは、下記(1)式で求まる。 βi=cos−1((r−ap)/r)・・・(1)

汎用のNC加工機のNCプログラムには、切削工具1の1分間当たりの回転数S(1/min)と1分間当たりの切削工具1の送り量(mm/min)が明示されている。しかし、工具寿命Ltは加工条件に応じて変化するので、各加工作業に応じて加工条件から予測する必要がある。工具寿命Ltの評価パラメータは、切削速度Vc(m/min)であり、回転数S(1/min)と工具の型式から、(2)式で求められる。 Vc=π・Dtool・S/1000・・・(2) ここで、Dtoolは、図2Aに示す切削工具3の直径(mm)である。

切削工具1の寿命を予測するためにデータベースS4に格納する寿命試験データとしては、例えば工具寿命Ltとインサート3の逃げ面摩耗幅Ww(図7C参照)の関係、および工具寿命Ltと切削速度Vcの関係がある。また、工具寿命Ltの判定方法の一つとして、インサート3の逃げ面摩耗幅Wwが予め定めた幅を超えたら、寿命と判断する手法がある。

図4及び図5に、データベースS4に格納するデータ例を示す。図4は、材料除去体積Vsと逃げ面摩耗幅Wwの関係を、切削速度Vcをパラメータにして示した試験データの一例を示すグラフである。工具径2r=32mm、軸切込みap=1.0mm、径切込みdr=15.5mm、一刃送り量=0.08mm/tooth、切削速度Vc=1100〜1500m/minとしている。クーラントなしのドライの条件で、でセラミックス材のインサート3によりダウンカットした場合である。被削材4はNi合金である。

例えば、インサート3の逃げ面摩耗WwがWw≧2mmになったら工具寿命Ltであると設定する。逃げ面摩耗幅WwがWw=2mmにおける材料除去体積Vs(cm3)と、単位時間当たりの切削量(=切削速度Vc×径切込みdr×軸切込みap)から、工具寿命Ltが容易に求められる。

図5は、切削速度Vc(m/min)と工具寿命時間Lt(min)との関係を、試験的に求めた結果のグラフである。図5に示すように、切削速度Vcと工具寿命Ltはほぼ反比例の関係にある。したがって、ステップS2で示したNCプログラムから読み取る加工条件中の工具寿命を、図4および図5に示したデータから予測できる。異なる軸切込みapや送り量、被削材4の材質の条件で同様に加工試験をし、その結果をデータベースS4に蓄積すれば、より広範囲に寿命を予測することができる。

NCプログラムから読み取った加工条件のデータがデータベースS4にない場合には、読み取った加工条件のデータに最も近く、切削速度Vc、送り量Fsおよび軸切込みapの少なくともいずれかが上記加工条件よりも厳しいデータを選択する。このような選択方法を採用しても所望の加工条件が得られない場合には、コンピュータまたは工作機械の画面上等にアラートを発生する。そして、より低い切削速度Vc、送り量Fsおよび軸切込みapで加工するように、作業者に知らせるようにするのがよい。

ステップS5では、加工に使用する切削工具1のインサート3について、使用可能部があるか否かを判断する。すなわち、インサート3の未使用部分だけが被削材4を加工する位置に正しく回転設置されているか確認する。確認方法として、自動切削システム100が備える図示しないカメラが、インサート3の画像をキャプチャし、摩耗部分を画像処理して判断する方法等を適用できる。

インサート3に未使用部分があり、以降の加工に使用できる状態であれば、ステップ6に進む。このステップ6では、以降の被削材4の加工工程が複数の工程を含む場合に、インサート3の未使用分を各工程に割り当てる。以降の工程が、1個の工程しかない場合には、その工程で使用する未使用部分を割り当てる。

本実施例では、加工条件や加工工程に応じてインサート3の回転角度βiを異ならせている。そこで、インサート3の交換時に未使用の部分がないようにするため、いくつかの回転角度βiの総和がインサート3の切刃の全周角度である360°に最も近くて360°以下になるように設定する。

ステップS5において、インサート3の摩耗が進行して、その状態で継続して使用するのに適さない位置にインサート3が設定されていると判断されたときは、ステップS10に進む。そして切削工具1を交換する、またはインサート3を所定角度βiだけ回転させる。その後、ステップS6に進む。

インサート3の使用部分の割り当てが済み、インサート3を未使用部分で使用するよう切削工具1を自動切削システム100に設定したら、ステップS7に進み、ステップS1で読み込んだNCプログラムに基づいて切削加工を実施する。切削加工をNCプログラム通りに実行して、インサート3の上記割り当て位置の変更時期に達したら、ステップS8進む。

ステップS8では、工具寿命Ltに達したインサート3を回転する。このときの工具寿命Ltおよび回転角度βiは、ステップS3で導出した値である。ここで、工具寿命Ltに達せずに加工工程が終了した場合には、次の加工工程で工具寿命Ltに達するまで使用するようにしてもよい。その場合、加工条件が異なるときには厳しい方の加工条件で加工したとして工具寿命Ltを求める。そして、求めた工具寿命Ltでインサート3を交換または回転させるようにすることで、常に加工に適したインサート3の摩耗状態で加工可能になる。

1つの加工工程が終了すると、ステップS9では、その加工工程の終了により全ての加工工程が終了したことになるのか否かを、NCプログラム上で確認する。まだ残っている加工工程がある場合には、ステップS7に戻り、残りの加工工程を実行する。

本実施例では、インサート3の逃げ面摩耗幅Wwを用いた寿命試験データから工具寿命Ltを予測しているが、工具寿命Ltの予測方法はこれに限るものではない。例えば被削材の加工面の面粗さ等から工具寿命を予測することも可能である。また、本実施例では、丸型のインサートを有する切削工具について説明したが、工具は必ずしもそれに限定されるものではなく、旋削工具とうであっても同様に適用できる。

次に、上記ステップS3〜S9における、自動切削システム100を用いたインサート3の自動回転方法の詳細例を、図6及び図7A〜7Cを用いて説明する。図6は、インサート3を自動回転させる方法の一例を示すフローチャートである。図7A、図7Bは、インサート3の側面図であり、図7Aは従来のインサート3の切削面割り当てを説明する図、図7Bは本発明に係るインサート3の切削面割り当てを説明する図である。図7Cは、インサート3の周面の展開図であり、図7BのA矢視展開図である。

初めにステップS11において、各条件を読込む。読込む内容は、インサート3の切刃における使用可能な部分および使用する切削工具1の本数、インサート3を自動回転するのに要する時間、摩耗したインサート3を切刃部が未使用のインサート3に交換するのに要するインサート交換時間、切削工具1の交換時間である。

ここで切削工具1の交換時間は、マシニングセンタ100に標準で付属している自動工具交換装置(ATC)70を用いて切削工具1を交換する時間、または上記ATC70に準じた装置で切削工具1を交換するのに要する時間である。なお、切削工具1の交換のみを手動で実行する場合には、作業者が切削工具1を交換するために要する時間を入する。

次にステップS12において、使用可能なインサート3の切刃に、各加工工程で加工する部分を割り当てる。このとき、使用するインサート1の切刃の周方向の摩耗幅から、インサート1を回転させる回転角度βiを決定する。図7A、図7Bを用いて、回転角度の割当方法を説明する。インサート3は周囲部に切刃8を有し、この切刃8の部分を用いて切削加工する。切削加工を継続することにより切刃8が摩耗し、切刃8部に摩耗部分9が形成される。そこで、インサート3を所定角度(回転角度)βiだけ回転させる。

従来の回転角度βiの割当て方法は、図7Aに示すように、一定の回転角度β0ずつインサート3を回転させるようにしている。これは、作業者が目視で回転角度βiを決め、作業者が手動でインサート3を回転させるためである。つまり、加工条件にかかわらず、例えば1個のインサート3の切刃8に対して3回ないし4回だけ使用するようにして、回転角度βiを一定値に予め指定する。その結果、全ての切刃8の部分を使い切らずに回転または交換するので、インサート3の使用個数が増加し、工具費用が増加する。

一方工具寿命Ltを延ばそうとすると、インサート3を交換または回転させるタイミングを、毎回作業者が指定する必要が生ずる。そして、各工程に適応した工具寿命Ltを指定すると、作業者が切削工具1の監視や工程ごとに工具寿命Ltを把握をする必要があり、作業者への負担が増大する。

上記不具合を解消するため、加工条件に関係なく、全ての工程において、等しいタイミングで切削工具1を交換するようにすると、本来の工具寿命まで使い切らずにインサート3を交換することになり、インサート3の切刃8の回転回数や交換回数が増加する。そのため、消費するインサート3が増加する。または、インサート3の使用限界を超えた摩耗量で加工することにより、加工の不具合を発生する場合もある。これらの理由から、従来のインサート3の交換方法を、インサート3の自動交換に適用することは困難である。

一方、図7Bに示すインサート3では、インサート3の摩耗部分9だけ回転角度βiを調整している。インサート3の周方向の摩耗幅は、図3に示した軸切込みapおよびインサート3の半径rから決定される。回転角度βiは式(1)から求められる。ここで、軸切込みapは、図1のステップS1におけるNCプログラムの読み込み時に、読み込まれる。一方、インサート3の半径rは、図1データベースS4に記憶されている。これらの値を用いて、自動でインサート3の回転角度βiが計算される。

回転角度βiの割当は、例えばインサート3の切刃8の部分が、周方向360°全て使用に適した状態では、各工程における回転角度β1、β2、…、βnの和が360度以下であって360°に最も近くなる組み合わせを選び出す。そして、インサート3の交換および切削工具1の交換の時間を含めて、最も効率的に加工できる順番で割当る。これにより、インサート3を無駄なくほぼ全ての切刃8の部分を活用することができる。

インサート3の使用限度を決定する工具寿命Ltは、図1のデータベースS4に格納されているので、全ての工程において適切な工具寿命Ltで加工することができる。これにより、毎回作業者がインサート3の回転や交換をする必要が無く、さらに工具寿命Ltが自動で決定されているので、安定した無人加工が可能になる。

図6のステップS13においては、インサート3の回転角度βiからインサート3の交換回数を読込む。そして、インサート3を回転させるかまたは交換するか、もしくは切削工具1を交換するか、等の交換のタイミングを設定する。ステップS11において、予めインサート3の回転時間とインサート3の交換時間、工具1の交換の時間、工具1の本数を設定されているので、上記交換及び回転に要する時間から、最も加工リードタイムが短くなる加工工程を設定する。

例えば、同じ切削工具1を複数備えるときに、インサート3の回転時間が工具1の交換時間より長い場合には、工具1の交換をインサート3の回転よりも優先的に実行する。すなわち、インサート3が摩耗して工具寿命Ltに達した時にインサート3を回転するのではなく、自動工具交換装置(ATC)70などを用いて切削工具1を交換する。そして摩耗したインサート3を備えた切削工具1を自動工具交換装置(ATC)70の図示しないパレットに退避させ、新しい切削工具1で加工中に摩耗したインサート3を有する切削工具1の摩耗部を回転させる。

これより、丸型のインサート3を有する切削工具1を用いた加工において、加工時間にロスがなく、効率的に加工を実施することができる。なお、本実施例では、切削工具1の本数やインサート3の回転時間、インサート3の交換時間、切削工具1の交換時間を考慮して複数の加工工程を設定したので、加工リードタイムが短くなり、高効率で加工ができる。

次にステップS14においては、ステップS13で設定された加工工程に基づいて、加工を実施する。さらにステップS15において、工具寿命Ltを考慮したタイミングまで加工を実行する。加工を停止する指定されたタイミングに到達したら、ステップS16において、インサート3を自動回転または自動交換する、もしくは切削工具1を自動交換する、か否かを判断する。

インサート3を自動回転または自動交換した場合には、ステップS14に戻り再び加工を実施する。インサート3の摩耗がまだ工具寿命Ltに達しておらず、インサート3の自動回転または自動交換もしくは切削工具1の交換が必要でなければ、ステップS17に進み、設定された加工が終了したか否かを判断する。

ステップS17において、設定された全ての加工工程が終了したと判断したら、加工を終了する。設定された全ての加工工程がまだ終了していないと判断したら、ステップS14に戻り、工具寿命に達するまで加工を実施する。

本実施例では、丸型のインサート3の回転角度βiを用いてインサート3の切刃位置を摩耗していない位置に変更する例を示している。しかしながら、例えば予めインサート3に凹凸があり、その凹凸の間隔単位でしか回転できないインサート3を使用する場合もある。このような場合には、凹凸の間隔の倍数で回転角度βiを指定するようにすればよく、本発明を丸型のインサート以外にも適用することが可能となる。

図8Aないし図11を用いて、本発明に係る他の実施例を説明する。本実施例は、インサート3を自動で回転する自動回転装置50に関するものである。図8Aは、インサート自動回転装置50の斜視図である。インサート自動回転装置50は、X軸方向に駆動軸を持つX軸テーブル13と、X軸に直交する方向であるY軸方向に駆動軸を持つY軸テーブル12と、X軸及びY軸の双方に直交し、垂直方向に延びる複数(本実施例では2本)のZ軸(支柱)14を有する。Xテーブル13の一方端側には、このインサート自動回転装置50を制御する制御装置60が設けられている。

一方のZ軸14には、インサート3を回転させるインサート回転機構15が取り付けられており、他方のZ軸には、切削工具1に止めねじ5でねじ止めされているインサート3の止めねじ5を緩めるためのねじ緩め装置16が取り付けられている。各Z軸14はX軸テーブル13に形成された溝に嵌合するベース部14bと、ベース部14bから垂直に上方に延びる支柱部とを有し、支柱部には上下方向に延びる溝部14cが形成されている。インサート回転機構15及びねじ緩め装置16は、図示しない固定手段でZ軸14の溝部14cを利用して固定されている。

制御装置60は、Yテーブル12およびXテーブル13とZ軸14を駆動制御し、ネジ緩め装置16およびインサート回転機構15を、図8Bに示すように自動工具交換装置70のチェーン72の底辺部に移動させる。そして、切削工具1の交換用または回転用インサート3が運ばれている位置にZ軸14を位置決めする。

切削工具1の位置を、図示しない複数のセンサで認識する。センサは少なくとも切削工具1の位置とインサート3の位置とを認識できれば良く、例えばカメラで撮像した映像を画像処理する方法等を用いる。なお、センサをインサート自動回転装置50上の任意の位置に設置することもできる。工作機械自体でインサート3を自動回転させる場合には、工作機械側に切削工具1およびインサート3の位置決め手段を設けても良い。

図9A〜9Cは、本実施例3におけるインサート自動回転機構15を説明する図である。図9Aはインサート自動回転機構15の斜視図であり、図9Bは図9Aの縦断面図であるまた、図9Cは、インサート3の回転を説明するための斜視図である。

インサート自動回転機構15は、ハウジング17を備えている。ハウジング17の一端側には、Z軸14に当接する矩形状の取付板部17aが形成されており、取付板部17aには円柱形部が連続している。円柱形部には、上下に平行にX軸方向に延びる溝部17b1、17b2が形成されている。溝部17b1、17b2は、ハウジング17の円柱形部の奥側まで延びている。

ハウジング17の円柱形部の奥側には、互いに噛み合うギヤ21とピニオン20が配置されており、ピニオン20にはラック19aが、ギヤ21にはラック19bがそれぞれ噛み合っている。ラック19aにはインサート回転ロッド18aが取り付けられており、ラック19bには、インサート回転ロッド18bが取り付けられている。インサート回転ロッド18a、18bは、ハウジング17に形成された溝部17b1、17b2内にそれぞれ保持され、端部はハウジング17から突出している。さらに、インサート回転ロッド18a、18bの突出側端部には、接触性向上材24が取り付けられている。

ハウジング17の取付板部17aの背面側には、サーボモータ22が取り付けられており、サーボモータ22の回転軸はハウジング17内まで延びている。そして、ピニオン20の回転軸と接続している。サーボモータ22の回転軸には、エンコーダ23が取り付けられている。

この様に構成したインサート自動回転機構15では、サーボモータ22を駆動することにより、2本のインサート回転ロッド18a、18bが図9Cに示すように、X方向に互い違いに並進し、インサート3をθ方向に回転させる。すなわち、サーボモータ22を駆動すると、このサーボモータ22に接続されたピニオン20が回転駆動され、ピニオン20に噛み合うギヤ21がピニオン20と反対方向に回転駆動される。ピニオン20とギヤ21が回転駆動されると、それぞれと噛み合うラック19a、19bが互いにX軸の反対方向に移動し、ラック19a、19bに取り付けられたインサート回転ロッド18a、18bも互いに反対方向に併進移動する。

ここで、サーボモータ22の回転量はエンコーダ23により検出され、個のエンコーダの検出値を用いて、サーボモータ22の回転角度、すなわち2本のインサート回転ロッド18a、18bの併進移動量が制御される。インサート回転ロッド18a、18bの先端に取り付けた接触性向上材24は、インサート3との摩擦を向上させ、接触性を向上させるために設けられており、ゴムなどを使用する。

図10A及び図10Bは、本実施例3におけるインサートのねじ緩め機構16を説明する図である。図10Aはねじ緩め機構16の斜視図であり、図10Bはねじ緩め機構16の縦断面図である。

ねじ緩め機構16は、インサート回転機構15と似た外形形状となっている。すなわち、Z軸に当接する矩形状の取付板部26bと、この取付板部26bに連続する円筒部26aとからなるハウジング26を有し、取付板部26bの背面側には、回転軸にエンコーダ28が取り付けられたサーボモータ28が配置されている。ハウジング26の円筒部26aの内部には、円柱状の回転部材30が配設されており、回転部材30の取付板部26b側には、サーボモータ27の回転軸27aが接続されている。

一方、回転部材30の周囲部には、ほぼ等間隔で複数のレンチ回転用モータ29a〜29dが取り付けられており、このレンチ回転用モータ29a〜29dの出力軸にはレンチアダプター31a〜31dが取り付けられている。レンチアダプター31a〜31dは、棒状のレンチ25a〜25dの一端側が嵌合する形状に形成されている。棒状のレンチ25a〜25dの他端側は、ハウジング26の開放側から(−)Y軸方向に突き出ている。なお、複数準備されたレンチ25a〜25dは、互いにその呼びサイズを異ならせているか、使用頻度の多いものを複数本設けるようにする。

図2Aに示すように、切削工具1に取り付けたインサート3は、止めねじ5により固定されている。そこで、ねじ緩め機構16を用いて、インサート3を固定している止めねじ5を緩める。切削工具の種類に応じて、インサート3を固定する止めねじ5の形状やサイズが異なる。そこで、図10に示すようにレンチ25a〜25dを回転部材30の周囲に複数本配置している。

ねじ緩め機構16では、止めねじ5に適合したレンチ25a〜25dを選択する必要があるので、レンチ25a〜25dの位置決めのために、回転部材30をサーボモータ27で回転させて、使用するレンチ25aを選び出す。また、レンチ25a〜25dの取り換えを容易にするため、レンチアダプター31a〜31dにレンチ25a〜25dを嵌合させている。レンチ25a〜25dによる止めねじ5の緩めまたは締め付け時には、レンチ25a〜25dの根元に設置したモータ29a〜29dを駆動する。

なお、インサート3の止めねじ5を緩めるときに、選択したレンチ25a以外のレンチ25b〜25dが切削工具1に干渉しない場合には、回転部材30を回転させる必要はない。その場合、サーボモータ27およびエンコーダ28、回転部材30を省略することができる。また、レンチ25a〜25dを取り換える必要がなく、常に同一のレンチ25a〜25dを使用するときは、レンチアダプター31a〜31dを省いて、直接サーボモータ軸にレンチ25a〜25dを接続するようにしてもよい。レンチ25a〜25dとしては、六角レンチや四角レンチ、六角ボックスレンチ等を使用するのが良い。

図11に、インサート自動回転装置50を用いたインサート3の回転動作を、フローチャートで示す。ステップS18において、図示しないセンサが切削工具1およびインサート3の位置を確認する。次いでステップS19で、自動工具交換装置70の交換及び回転位置に保持された切削工具1の位置に、インサート自動回転装置50のねじ緩め機構16を移動させ、止めねじ5の位置にインサートねじ緩め機構16を位置決めする。

ステップS20において、使用するレンチ25aを止めねじ21に係合させ、固定する。次いでステップ21において、レンチ回転用モータ29aを回転駆動して、インサート3を固定している止めねじ5をレンチ25aが緩める。

ステップS22に進み、止めねじ5が緩んでいるか否かを図示しない確認手段で確認する。確認方法としては、例えばレンチ回転用モータ29aの出力である負荷トルクが所定値以下となったら止めねじ5が緩んだと判断する。止めねじ5が緩んだことが確認されたら、ステップS23に進み、インサート自動回転装置50のX軸テーブル13、Y軸テーブル12、Z軸14を制御装置60が駆動し、ねじ緩め機構16を次の加工工程の邪魔にならない位置まで退避させる。なお、止めねじ5が緩んでいない場合には、ステップS20に戻り、再度止めねじ5を緩める動作を実行する。

止めねじ5が緩んだので、ステップS24に進む。インサート自動回転装置50の制御装置60が、X軸テーブル13およびY軸テーブル12、Z軸14を駆動制御し、インサート回転機構15を自動工具交換装置70の交換及び回転位置に保持された切削工具1のインサート3の位置に移動させる。

次にステップS25に進み、図1のステップS3で指定した回転角度βiだけインサート3を回転させる。インサート3を回転させたので、ステップS26においてインサート3が所定量だけ回転しているかを、図示しないカメラ等の撮像情報を画像処理して確認する。

インサート3が所定量だけ回転されているのを確認できれば、ステップS27に進み制御装置60がX軸テーブル13およびY軸テーブル12、Z軸14を駆動制御して、インサート回転機構15を加工工程等の邪魔にならない位置まで退避させる。インサート3の退避が完了すれば、インサート3の自動回転動作が終了する。ステップS26において、インサート3が所定量だけ回転していると確認できなければ、ステップS25に戻り、再度インサート3を所定回転量となるまで回転させる。

上記各実施例によれば、切削工具に使用するインサートの一部が摩耗等で加工に適さなくなったとき、摩耗していない未使用部までのインサートの回転角度を加工条件から算出し、算出した角度に基づいてインサートを回転させるので、適切な条件で切削加工が可能になる。また、切刃の未使用部を切削される位置まで自動的に回転させる、インサート自動回転システムを実現できる。そして、加工条件が逐次変化しても、インサート外周の切刃を無駄なく全て使い切ることができる。さらに、インサートを人手を介さずに全て自動回転させることができるので、作業者の経験の差により生ずる回転量の相違がなくなり、切削システムの自動化が可能になる。

なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が可能である。ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。さらに、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。したがって、本発明の真の精神及び範囲内に存在する変形例は、全て請求の範囲に含まれる。

1…切削工具(ボディ)、2…インサート留め具、3…インサート、4…被削材、5…止めねじ、6…工具回転軸、7…接触部、8…インサート切刃、9…摩耗部分、12…Y軸テーブル、13…X軸テーブル、14…Z軸(支柱)、14b…ベース部、14c…溝部、15…インサート回転機構、16…インサートネジ緩め機構、17…ハウジング、17a…取付け板部、17b1、17b2…溝部、18a、18b…インサート回転ロッド、19a、19b…ラック、20…ピニオン、21…ギヤ、22…サーボモータ、23…エンコーダ、24…接触性向上材(当接部)、25a〜25d…レンチ、26…ハウジング、26a…円筒部、26b…取付け板部、27…サーボモータ、27a…サーボモータ軸、28…エンコーダ、29a〜29d…レンチ回転用モータ、30…回転部材、31a〜31d…レンチアダプター、50…インサート自動回転装置、60…制御装置、70…ATC(自動工具交換装置)、71…工具、72…チェーン、73…主軸部、81…コラム、82…テーブル、83…ベッド、100…自動切削システム(マシニングセンタ)、ap…軸切込み(切込み深さ)、dr…径切込み、Dtool…工具直径、LT…工具寿命時間、r…インサート半径、Vc…切削速度、Vs…材料除去体積、W…インサート幅、Ww…逃げ面摩耗幅、β…接触角、β0〜βi…回転角。

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