Insert and a cutting tool

申请号 JP2008541183 申请日 2008-03-14 公开(公告)号 JP4478198B2 公开(公告)日 2010-06-09
申请人 日本特殊陶業株式会社; 发明人 祐規 波多野; 亮二 豊田; 友輔 鈴木;
摘要
权利要求
  • β−Si 34を主成分とし、Mgと希土類元素Re(Y、La、Ce、Er、Dy、Yb)を含有し、MgはMgO換算で1.0〜7.0mol%、Reは酸化物換算で0.4〜1.0mol%をそれぞれ含み、その合計が1.7〜7.5mol%未満である窒化珪素焼結体からなるインサートにおいて、
    焼結体表面から内部に向かって酸素量が増加する傾斜組成であって、表面から0.5mm未満の内部までの間に酸素を0.8〜1.5質量%、表面から0.5mm以上内部においては、酸素を1.1〜2.3質量%含み、その酸素量の差が0.1〜1.0質量%であることを特徴とするインサート。
  • 希土類元素ReがYbであり、MgはMgO換算で、1.0〜5.5mol%、YbはYb 23換算で、0.4〜1.0mol%をそれぞれ含み、その合計が1.7〜6.0mol%未満である請求項1に記載のインサート。
  • 室温における熱伝導率が、表面から1.0mmの深さより外側では、45W/m・K以上であり、表面から1.0mm以上内部では、40W/m・K以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインサート。
  • 室温における抗折強度(三点曲げ強度:JIS R1601)が900MPa以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインサート。
  • Yb元素、Mg元素、Si元素、O元素及びN元素から成る結晶を粒界相に含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインサート。
  • 前記窒化珪素焼結体のインサートのX線回析チャートにおいて、前記結晶におけるYbMgSi 25 Nに基づくピークのうち最大強度を示すピークの強度(IYb)が、窒化珪 素に基づくピークのうち最大強度を示すピーク強度(Is)に対して、0%超10%以下であることを特徴とする請求項5に記載のインサート。
  • 前記請求項1〜6のいずれか1項に記載のインサートをホルダに装着したことを特徴とする切削工具。
  • 说明书全文

    本発明は、耐摩耗性が要求されるインサート及び切削工具、特に鋳鉄などを切削加工するのに好適なインサート及び切削工具に関する。

    窒化珪素質焼結体(窒化珪素焼結体)は、耐熱性及び耐摩耗性等に優れることから、従来より、各種の切削工具用材料などとして使用されている。

    しかし、窒化珪素は難焼結性のため、通常は焼結助剤を使用し焼成されており、この助剤量が多い場合は、焼結体の性能が低下するため、焼成が可能な範囲で助剤量は少ない方が好ましい。

    このため、下記の特許文献1〜5の様に、助剤の種類や使用量の低減など、種々の観点から性能向上が図られている。

    特許文献1には、Mg,Zr,Ceの酸化物などの助剤を極めて低減し、特に耐摩耗性に優れた切削工具用窒化珪素焼結体が開示されている。

    特許文献2には、焼結体最表面の助剤を揮散させ、内部の助剤量より少なくすることで耐摩耗性を改善する技術が開示されている。

    特許文献3には、熱処理によって、窒化珪素質焼結体の表面にα−サイアロンを形成することにより、表面硬度を高め、耐摩耗性能の改善を図る技術が開示されている。

    特許文献4には、SiOガス雰囲気中にて焼成することにより、焼結体の焼き肌面の荒れを少なくし、且つ、焼結体の最表面から10μmの深さまでに、16GPa以上のビッカース硬度を有する硬質相を形成する技術が開示されている。

    特許文献5には、粒界形成成分である希土類、Mg、Alおよび総量を規定し、熱衝撃抵抗性を改善した技術が開示されている。

    特許第3550420号公報

    特開2002−12474号公報

    特開平9−183667号公報

    特開平8−323509号公報

    特開平11−268957公報

    しかしながら、特許文献1に記載の技術では、耐摩耗性には優れるものの、助剤量が少ないため、耐欠損性において十分でなく、信頼性に欠ける材料になり易いという問題があった。

    特許文献2に記載の技術では、焼結助剤の組成が傾斜した材料であるが、焼結助剤とともに粒界相を形成する主な成分の窒化珪素原料中に含まれるSiO 2に関しては、全く考慮されていないため、十分な耐摩耗性が得られないという問題があった。

    特許文献3に記載の技術では、焼結体の表面に形成されるα−サイアロンは、窒化珪素に比べて強度が低いために、耐摩耗性は改善するものの、切削インサートの刃先強度が低下するという問題があった。

    特許文献4に記載の技術では、耐摩耗性の改善が行われていないので、切削インサートの高速切削における耐摩耗性が不十分であるという問題があった。

    特許文献5に記載の技術では、傾斜組成になっていないため、耐摩耗性に劣る上に、Al 23含有量が多いために、熱伝導が低下し、結果として耐欠損性が低下するという問題があった。

    本発明はこうした問題点に鑑みてなされたものであり、耐摩耗性及び耐欠損性に優れたインサート及び切削工具を提供することを目的としている。

    切削中のインサートの刃先温度は,相手材や切削条件によって異なるが,一般的に800℃以上の高温になると言われている。 このため,耐摩耗性を向上させるには耐熱性及び化学安定性が優れていることが重要である。

    また、窒化珪素焼結体中の粒界相は、助剤成分とSi,N,Oから成る非晶質ガラス相あるいは結晶相として存在するが、窒化珪素に比べると耐熱性や耐食性が劣り、この粒界相の量及び組成が、焼結体の耐熱性や化学安定性に影響を及ぼす。

    上記観点から、まず第一に、耐熱性・耐食性・化学安定性に劣る粒界相の量を減少させる必要があった。

    本発明者らは、少量でも緻密化可能であり、更には窒化珪素焼成中は助剤として働き、焼結中に表面に移動、揮散し易い焼結助剤を選定することで、窒化珪素の焼成段階で表面部付近へ助剤成分をわずかに移動、揮発させ、内部から表面へ向かって酸素量を減少させることによって、耐摩耗性、特に高速加工における耐アブレシブ摩耗性を向上させることが可能であることを見い出し、また、揮発後の組成を最適化することにより、耐摩耗性と耐欠損性を両立した窒化珪素焼結体からなるインサートが得られることを見出して、本発明を完成した。

    (1)第1実施態様の発明は、β−Si 34を主成分とし、Mgと希土類元素Re(Y、La、Ce、Er、Dy、Yb)を含有し、MgはMgO換算で1.0〜7.0mol%、Reは酸化物換算で0.4〜1.0mol%をそれぞれ含み、その合計が1.7〜7.5mol%未満である窒化珪素焼結体からなるインサートにおいて、
    焼結体表面から内部に向かって酸素量が増加する傾斜組成であって、表面から0.5mm未満の内部までの間に酸素を0.8〜1.5質量%、表面から0.5mm以上内部においては、酸素を1.1〜2.3質量%含み、その酸素量の差が0.1〜1.0質量%であることを特徴としている。

    ・まず、Mg及び希土類元素Re(Y、La、Ce、Er、Dy、Yb)に関しては、MgO換算で1.0mol%未満、Reの酸化物換算で0.4mol%未満、合計が1.7mol%未満では十分な焼結性が得られず、それぞれ上限を超えると必要以上に焼結体中に助剤成分が残留し好ましくない。

    このうち、Mgは、SiO 2とともに粒界相の融点および粘性を下げ、焼結に有効に働くだけでなく、MgとSiO 2は、セットになって表面部へ移動、蒸発し易いため、目的のインサートを得るのに不可欠な元素である。

    一方、希土類元素Re(Y、La、Ce、Er、Dy、Yb)は、窒化珪素の粒子を針状化するために有効に働くだけでなく、イオン半径が小さいためMgとともに焼結に有効に働き、かつ表面部に移動、蒸発し易く、目的のインサートを得るのに好適である。

    よって、本発明では、上述の様に、Mgと希土類元素Re(Y、La、Ce、Er、Dy、Yb)の組成を規定した。

    ・また、焼結体表面から0.5mmまで(未満)の酸素量が0.8質量%未満では、緻密化していないいわゆる白色の部分が残留し、1.5質量%を超えると、十分な耐摩耗性が得られない。

    焼結体表面から0.5mm以上内部の酸素量が1.0質量%未満では、窒化珪素特有の針状組織が成長しないため、十分な耐欠損性が得られず、2.3質量%超えて酸素を含むと、耐熱性が低下し、特に高速加工において耐摩耗性の低下を招く。

    また、表面から0.5mmまでの酸素量と0.5mm以上内部の酸素量の差が、0.1質量%未満では傾斜が緩過ぎるため、耐摩耗性と耐欠損性の両立が困難であり、1.0%を超えると表面との急激な酸素量の差により残留応が発生し、表面が剥離欠損しやすくなり好ましくない。

    よって、本発明では、上述の様に、酸素量を規定した。

    従って、本発明のインサートでは、上述した構成によって、優れた耐摩耗性及び耐欠損性を発揮することができるので、例えば鋳鉄等を高速で切削することが可能である。

    (2)第2実施態様の発明では、希土類元素ReがYbであり、MgはMgO換算で、1.0〜5.5mol%、YbはYb 23換算で、0.4〜1.0mol%それぞれ含み、その合計が1.7〜6.0mol%であることを特徴とする。

    希土類元素ReがYb、つまりMgとYbの組み合わせは、少量で焼結に有効に働きかつ表面で揮散しやすいため、耐摩耗性と耐欠損性を両立する上で、最適な組み合わせである。 よって、本発明では、上述の様に、MgとYbの組成を規定した。

    (3)第3実施態様の発明では、室温における熱伝導率が、表面から1.0mmの深さより外側(表面側)では、45W/m・K以上であり、表面から1.0mm以上内部では、40W/m・K以上であることを特徴とする。 ここで、室温とは、25℃のことである(以下同様)。

    熱伝導率に関しては、高い値であるほうが、放熱が容易でインサートの加熱を緩和することができ、熱衝撃の緩和に効果的である。

    本発明では、室温における熱伝導率が、表面から1.0mmの深さより外側(表面側)では、45W/m・K以上であり、表面から1.0mm以上内部で、40W/m・K以上であるので、熱クラックの発生・成長による窒化珪素焼結体(従ってインサート)の欠損を顕著に抑制することができる。

    (4)第4実施態様の発明では、室温における抗折強度が900MPa以上であることを特徴とする。

    本発明のインサートは、室温における抗折強度(三点曲げ強度:JIS R1601)が900MPa以上であり、好ましくは1000MPa以上である。

    本発明のインサートを用いて切削加工を行う場合、インサートを構成する焼結体の強度が大きいほど、単純な強度だけでなく、熱衝撃抵抗性にも優れ、安定した加工が可能となる。 よって、前記三点曲げ強度を有するインサートはとりわけ好適である。 つまり、室温強度が900MPa以上である本発明のインサートを用いることにより、安定した加工が可能になる。

    また、本発明のインサートは、助剤成分であるZrO 2とAl 23が、総量で0.6質量%以下の含有量であれば、熱伝導率45W/m・K以上を保ち、性能が低下せず、焼結性を改善することが可能である。 助剤成分であるZrO 2とAl 23の含有量が総量で0.6質量%を超えると、助剤成分の表面への移動が鈍くなり十分に傾斜せず、耐摩耗性が低下する上、熱伝導率の低下を引き起こし、結果として耐欠損性も低下してしまうため好ましくない。

    (5)第5実施態様の発明では、Yb元素、Mg元素、Si元素、O元素及びN元素から成る結晶を粒界相に含有することを特徴とする。

    窒化珪素焼結体からなるインサートの粒界相に、Yb元素、Mg元素、Si元素、O元素及びN元素から成る結晶を析出させることによって、少ない添加助剤量においてもさらなる粒界相中に存在するガラス相の低減が可能となり、特に優れた耐磨耗性と耐欠損性とを備えたインサートとすることが可能となる。 このYb元素、Mg元素、Si元素、O元素及びN元素から成る結晶は、特に限定されないが、粒界相に存在すると、窒化珪素焼結体の耐摩耗性と耐欠損性とを特に向上させることができる点で、YbMgSi 25 Nであるのが好ましい。

    この発明に係る窒化珪素焼結体から成るインサートは、窒化珪素(以下において、「Si 34 」と称することがある。)及びサイアロンの1種以上の結晶粒子を主成分とする主結晶相と、Yb元素、Mg元素、Si元素、O元素及びN元素から成る結晶(この結晶を与える化合物を、以下において、「YbMgSi化合物」と称することがある。)を含有する粒界相とから実質的に成る。

    前記主結晶相は、窒化珪素及び/又はサイアロンの1種以上の結晶粒子を含有する。 主結晶相に含有される窒化珪素は、β−Si 34を主成分とし、β−Si 34のみでも、α−Si 34とβ−Si 34との混合物であってもよい。 窒化珪素がα−Si 34とβ−Si 34との混合物であるときは、そのα−Si 34の割合すなわちα率は0〜30%であるのが好ましい。 α率が30%を超えると、焼結体の針状粒子減少による靭性低下等の機械的特性低下と言った不都合を生じることがある。 α率は、X線回折法により求められるα−Si 34のピーク強度(Iα)及びβ−Si 34のピーク強度(Iβ)から、式:[Iα/(Iα+Iβ)]×100によって、算出することができる。

    また、窒化珪素に含まれる不純物としての酸素含有量は、通常、0.8〜2質量%である。 前記酸素含有量が少ないと焼結性低下、多いと耐熱性低下や熱伝導率低下といった不都合を生じることがある。 この窒化珪素の好適な平均粒径は0.5〜1.6μmである。 平均粒径が前記0.5μmよりも小さいと成形性を損なうと言った問題点を生じることがある。

    主結晶相に含有されるサイアロンは、Si−Al−O−N系の化合物の総称である。 α−サイアロンは、α−Si 34の結晶における珪素及び窒素の位置にアルミニウム及び酸素が一部置換固溶すると同時に、電荷補償に金属イオンが侵入固溶した化合物であり、β−サイアロンは、β−Si 34の結晶における珪素及び窒素の位置にアルミニウム及び酸素が一部置換固溶された化合物である。

    主結晶相に含有されるサイアロンは、特に制限がなく、α−サイアロン、β−サイアロン、α−サイアロンとβ−サイアロンとの混合物のいずれであってもよい。 サイアロンがα−サイアロンとβ−サイアロンとの混合物であるときは、そのα−サイアロンの割合すなわちα率は30%以下であるのが好ましい。 α率が30%を超えると、焼結体の針状粒子減少により靭性低下等の機械的特性が低下し、その結果、窒化珪素質焼結体の耐欠損性が劣ることがある。 α率は、X線回折法により求められるα−サイアロンのピーク強度及びβ−サイアロンのピーク強度から、前記Si 34のα率と同様にして、算出することができる。

    前記主結晶相は、窒化珪素及びサイアロンの1種以上の結晶粒子を含有していればよく、窒化珪素の結晶粒子を主として含有していてもよく、サイアロンの結晶粒子を主として含有していてもよく、また、窒化珪素の結晶粒子とサイアロンの結晶粒子とを主として含有していてもよい。

    この発明に係る窒化珪素焼結体からなるインサートは、前記窒化珪素及び/又はサイアロンの1種以上の結晶粒子、後述する粒界相に含有されるYbMgSi化合物、及び、後述する粒界相に含有されてもよい結晶相及び/又はガラス質を形成する化合物の合計が100質量%となるように、主結晶相、すなわち、窒化珪素及び/又はサイアロンの1種以上の結晶粒子を、85〜98質量%の範囲内で、好ましくは90〜97質量%の範囲内で含有する。 この主結晶相の含有割合が98質量%を超えると、低下した焼結性によって耐磨耗性が低下することがあり、一方、85質量%未満であると、窒化珪素又はサイアロン自体が有する優れた機械的性質及び耐熱性等を十分に確保することができないことがある。

    (6)第6実施態様の発明では、前記窒化珪素焼結体のインサートのX線回析チャートにおいて、前記結晶におけるYbMgSi 25 Nに基づくピークのうち最大強度を示すピークの強度(IYb)が、窒化珪素に基づくピークのうち最大強度を示すピーク強度(Is)に対して、0%超10%以下であることを特徴とする。

    YbMgSi 25 Nに基づくピークのうち最大強度を示すピークの強度(IYb)は、窒化珪素に基づくピークのうち最大強度を示すピークの強度(Is)に対して、1〜9%となるように含有されているのがさらに好ましく、1.5〜3.0%となるように含有されているのが特に好ましい。 YbMgSi化合物の窒化珪素に対する含有量が前記範囲内にあると、窒化珪素焼結体からなるインサートが特に優れた耐摩耗性と耐欠損性とを発揮するうえ、800℃以上の高温における高速切削加工においても特に優れた耐摩耗性を発揮する。 なお、前記ピークの強度(IYb)及び(Is)は、窒化珪素焼結体のX線回析チャートにおけるベースラインからの高さとして、把握される。

    YbMgSi化合物は、通常、粒界相に含有されているが、その一部が主結晶相に含有されていてもよい。

    前記粒界相は、YbMgSi化合物の他に、焼結助剤等を構成する元素を主成分とする結晶相及び/又はガラス相を有していてもよい。 このような結晶相及び/又はガラス相は、焼結助剤、窒化珪素及び窒化珪素に不純物として含まれるシリカ成分等が焼結時に液相化して、焼結に寄与したあと、冷却時に固化してガラス相又は結晶相として生成する。 このような結晶相としては、例えば、YAG相、YAM相、Yb 2 Si 27等が挙げられ、このような結晶相は、通常、低靭性であるため適切な存在量(質量%)に制御される。

    また、ガラス相は、通常、低融点かつ低靭性、低硬度であるため焼結体を焼結するときの焼結性等を考慮して、適切な存在量(質量%)に制御される。 これらの結晶相及びガラス相の存在量は、窒化珪素焼結体及びYbMgSi化合物等によって、適宜に調整されるが、極力少ない方がよく、実質的に存在しないのがよい。

    (7)第7実施態様の発明は、上記第1〜第6実施態様のいずれか1つの実施態様に記載のインサートをホルダに装着した切削工具である。

    このインサートをホルダに装着した切削工具を用いることにより、好適に切削加工を行うことができる。
    ここで、上述した窒化珪素焼結体(従ってインサート)を製造する場合には、Mg源としてMgCO 3原料粉末を用いることが好適である。

    つまり、窒化珪素焼結体の原料としては、MgO粉末を使用するのが一般的だが、本発明のように助剤成分を表面で揮発させた窒化珪素焼結体は、うまく雰囲気制御しないと表面が揮発し過ぎて緻密化しない、いわゆる白色部が生成してしまう。

    そこで、出発原料としてMgCO 3を用いると、焼成中に比較的低温で分解して発生するCO 2 (MgCO 3 →MgO+CO 2 ↑)が窒素雰囲気中に存在することで、表面から必要以上の助剤成分の揮発を抑制するため、白色化しない安定した表面の窒化珪素焼結体が作製できる。

    図1Aは実施形態のインサートの斜視図、図1Bはインサートのノーズ部分を拡大して示す斜視図である。

    切削方法を示す説明図である。

    実験例の試料の焼成条件と配合組成を記載した表1を示す説明図である。

    実験結果を記載した表2を示す説明図である。

    実施例における試料2のX線回析チャートである。

    図6Aは被削材の横断面図、図6Bは被削材の縦断面図、図6Cは切削方向を示す説明図である。

    実験結果を示すグラフである。

    符号の説明

    1…インサート3…切れ刃5…チャンファ7…ノーズ9…ホルダ11…切削工具

    以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
    [実施形態]
    a)まず、本実施形態のインサートの構成について説明する。

    図1A−1Bに示す様に、本実施形態のインサート1は、窒化珪素焼結体からなる略正方形の板状(即ちISO規格でSNGN120408形状)の切削チップである。

    このインサート1は、その両面(すくい面)において、周縁に切れ刃3を有しており、この切れ刃3には、チャンファ5が形成されている。 また、インサート1のノーズ7は滑らかにカーブしている。

    本実施形態のインサート1は、Mgと希土類元素Re(Y、La、Ce、Er、Dy、Yb)を含有し、MgはMgO換算で1.0〜7.0mol%、Reは酸化物換算で0.4〜1.0mol%それぞれ含み、その合計が1.7〜7.5mol%である。

    また、このインサート1は、その焼結体表面から内部に向かって酸素量が増加する傾斜組成を有し、表面から0.5mm未満の内部までの間に酸素を0.8〜1.5質量%、表面から0.5mm以上内部においては、酸素を1.1〜2.3質量%含み、その酸素量の差が0.1〜1.0質量%である。

    更に、インサート1は、室温における熱伝導率が45W/m・K以上であり、且つ表面から1.0mm以上内部では40W/m・K以上であり、同室温における抗折強度(三点曲げ強度:JIS R1601)が900MPa以上である。

    また、インサート1は、Yb元素、Mg元素、Si元素、O元素及びN元素から成る結晶を粒界相に含有する窒化珪素焼結体からなる。

    更に、このインサート1は、X線回析チャートにおいて、結晶におけるYbMgSi 25 Nに基づくピークのうち最大強度を示すピークの強度(IYb)が、窒化珪素に基づくピークのうち最大強度を示すピーク強度(Is)に対して、0%超10%以下である。

    従って、本実施例のインサート1は、この様な構成により、後述する実験例で示す様に、高い耐摩耗性及び耐欠損性を共に備えている。

    上述したインサート1は、図2に例示する様に、例えば鋼製の柱状のホルダ9の先端に接合されて切削工具11として使用される。

    例えば、インサート1を用いて切削加工を行う場合には、前逃げ面と横逃げ面との間のノーズ7を、回転するワークWに押し当てて、切削加工を行う。

    b)次に、本実施形態のインサートの製造方法について説明する。

    まず、主成分である平均粒径1.0μm以下のα−Si 34粉末と、焼結助剤として、平均粒径1.0μm以下の、Yb 23粉末、Y 23粉末、La 23粉末、CeO 2粉末、Er 23粉末、Dy 23粉末、MgO粉末、MgCO 3粉末、Al 23粉末、ZrO 2粉末を、下記図3(表1)に示す配合割合で秤量した。

    この秤量した原料を、Al 23の混入を最小限とするために、窒化珪素製内壁ポット、窒化珪素製ボールを用いて、エタノールまたは溶媒にて96時間混合してスラリーとした。

    このスラリーを325メッシュのふるいに通し、エタノール又は水に溶解したワックス系の有機バインダを5.0質量%添加しスプレードライした。

    そして、得られた造粒粉末を、ISO規格でSNGN120408の形状にプレス成形した後に、加熱装置内において1気圧の窒素雰囲気中で600℃にて60分、脱脂を行った。

    次に脱脂を行った成形体の一次焼結を行った。 具体的には、SiCサヤ又は窒化珪素製サヤ内にセットし、第1段階では、1800〜1900℃で図3(表1)に記載された雰囲気圧力(試料1〜20の雰囲気圧力)で60〜180分保持した後、第2段階では、第1段階よりも低い温度(1800℃以下)で大気圧以下の雰囲気圧力にて120〜360分保持して焼結を行った。

    こうして得た窒化珪素焼結体をISO規格でSNGN120408形状に研磨加工して、本実施形態のインサート1、即ち、後述する実験に用いる本発明の範囲内の実施例のインサート(試料1〜20)を得た。

    この様に、本実施形態では、上述した配合組成の原材料(特にMgCO 3 )を用い、2気圧以下の低圧にて一次焼成を行うので、上述した構成を有し、優れた特性を発揮するインサート1を得ることができる。

    なお、本発明の範囲外の比較例のインサート(試料A〜O)についても、同様の方法にて作製した(但し、図3(表1)に示す条件を採用した)。
    [実験例]
    次に、各試料を用いて行った実験例について説明する。

    a)まず、各試料のインサートの特性等の測定方法について説明する。

    ・各試料(焼結体)中の各元素(非金属元素は除く、以下同じ)の量を、周知の蛍光X線や化学分析などで分析し、各元素を酸化物や窒化物などの化合物とみなして、例えばSiはSi 34 、MgはMgO、YbはYb 23などとして、質量比を算出した。

    尚、後述する図4(表2)中の焼結体中の助剤成分はモル%であるが、この数字に各成分の分子量を掛け算し、焼結体全体が100%となるように調整することで、質量%に換算することができる。

    ・酸素量は、各試料を表面から0.5mmを境に切断後、0.5mmより表面側と内部側とに分けて粉砕した試料を、インパルス加熱・融解し、非分散赤外線吸収法により、酸素量をそれぞれ測定した。

    ・熱伝導率については、各試料を、直径10mm、厚み1〜2mmの円板状に研磨加工し、JIS R1611法(通称レーザーフラッシュ法)により、室温で測定した値を示した。 具体的には、表面から1mmまでの熱伝導率は、厚み1mmの試料で測定し、表面から1mm以上内部の熱伝導率については、厚み2mmの試料で測定した。

    ・強度については、各試料について、縦3mm×横4mm×長さ36mm以上のサンプルを作製して、研磨加工し、JIS R1601法により、室温にて3点曲げ試験を5回以上実施し、その平均値を求めた。 なお、試験時のスパンは30mmが好ましいが、それ以下(下限10mm)でもよい。

    ・α−Si 34がβ−Si 34になっているかどうか、及びYb元素、Mg元素、Si元素、O元素及びN元素から成る結晶が粒界相にあるかどうかを調べるために、各試料を、理学電気工業株式会社製のX線回析装置を用いて、管球Cu、縦型ゴニオメータ、管電圧50kVの条件下、2θが20〜70°の範囲をX線回析した。 得られたX線回析チャートにおけるピークをPDFカードデータを参照して帰属した。 各試料のX線回析チャートにはβ−Si 34のピークが認められ、原料として用いたα−Si 34がβ−Si 34になっていることが確認できた。

    試料1、2、4、13〜18のX線回析チャートには、β−Si 34に特有のピークに加えて、YbMgSi 25 Nに特有のピークが認められた(YbMgSi 25 Nの同定はPDFカード48−1634を用いて行った。)。 試料NのX線回析チャートには、β−Si 34に特有のピークに加えて、Yb 2 Si 27に特有のピークが認められた。 一方、試料3、5〜12、19、20及び試料A〜M、OのX線回析チャートには、β−Si 34に特有のピークの他に、YbMgSi化合物の結晶に特有のピークが認められなかった。

    X線回析チャートにおけるピーク強度比は、各X線回析チャートにおいて、YbMgSi 25 Nに特有のピークのうち最大強度を示すピークの強度(I Yb )と、β−Si 3 4 基づくピークのうち最大強度を示すピークの強度(I S )とを、各X線回析チャートのベースラインからのそれぞれ高さを基準として求め、式(I Yb /I S )×100(%)に従って、算出した。 例えば、図4(表2)中の試料2におけるX線回析チャートを図5に示す。

    このX線回析チャートにおいて、YbMgSi 25 Nに特有のピーク(図5において「▲」が付されているピーク)のうち最大強度を示すピークは2θ(deg)が30°近傍に認められ、このピークの強度(I Yb )と、β−Si 34に基づくピーク(図5において「●」が付されているピーク)のうち最大強度を示すピークは2θ(deg)が36°近傍に認められ、このピークの強度(I S )とから、算出した。 このようにして算出した各インサートのピーク強度比を前記図4(表2)に示す。

    ・各試料を、アルキメデス法により密度測定し、理論密度で除して理論密度比を算出した。 すべての本発明の範囲(実施例)のサンプルは理論密度比が十分高く(具体的には、99.0以上)、焼結体中にマイクロポアが残存せず緻密化していた。

    前記理論密度比以外の測定結果を、前記図4(表2)に記す。

    b)次に、各試料のインサートの性能試験について説明する。

    (1)耐アブレシブ摩耗性 SNGN120408の形状、チャンファー0.2mmのインサートを使用し、図6に示す様に、被削材として両端面に鋳砂の残ったFC200を選び、インサートを矢印A方向に移動させて切削加工を行った。

    具体的には、切削速度;500mm/min、切り込み;1.5mm、送り速度;0.2mm/回転、及び乾式の条件下で、切削加工を行い、フランク最大摩耗量を測定し、アブレシブ摩耗量(単位:mm)とした。

    尚、図6において、L1は260mm、L2は300mm、L3は100mm、壁厚は20mmである。

    その結果を、前記図4(表2)に記す。

    (2)耐欠損性 SNGN432の形状、チャンファー0.1mmのインサートを使用して、切削加工を行った。

    具体的には、被削材としてFC200を選び、切削速度;150m/min、切り込み;2.0mm、送り速度は0.60mm/revからスタートし、各加工パス毎に0.05mm/回転ずつ増やす評価方法で、乾式の条件下にて、切削加工を行い、欠損に至る送り速度により評価した。

    その結果を、図7及び前記図4(表2)に記す。

    図7及び図4の表2から明かな様に、本発明の範囲の実施例の試料は、比較例の試料に比べて、アブレシブ摩耗量が少なく且つ欠損時の送り速度が高いので、耐摩耗性及び耐欠損性に共に優れていることが分かる。

    尚、本発明は前記実施形態や実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。

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