切削工具用硬質被膜及び硬質被膜被覆切削工具

申请号 JP2014508945 申请日 2012-04-02 公开(公告)号 JPWO2013150603A1 公开(公告)日 2015-12-14
申请人 オーエスジー株式会社; 发明人 正俊 櫻井; 正俊 櫻井; 孝臣 戸井原; 孝臣 戸井原;
摘要 優れた耐摩耗性及び耐溶着性を兼ね備えた切削工具用硬質被膜及び硬質被膜被覆切削工具を提供する。IVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、及びSiのうち少なくとも1種類の元素を含む窒化物相、 酸化 物相、炭化物相、炭窒化物相、又は 硼 化物相である硬質相(24)と、Au、Ag、及びCuのうち少なくとも1種類の元素を含む相である結合相(26)とを、備え、硬質相(24)と結合相(26)とが三次元的に配置された複合構造を有するものであることから、硬質相(24)がAu、Ag、又はCuによる結合相(26)により結合される構造をとることで摩擦係数及び切削抵抗を軽減させることができ、潤滑性及び耐溶着性に優れると共に高硬度の硬質被膜(22)が得られる。
权利要求

切削工具の表面に被覆して設けられる切削工具用硬質被膜であって、 IVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、及びSiのうち少なくとも1種類の元素を含む窒化物相、酸化物相、炭化物相、炭窒化物相、又は化物相である硬質相と、 Au、Ag、及びCuのうち少なくとも1種類の元素を含む相である結合相と を、備え、 前記硬質相と前記結合相とが三次元的に配置された複合構造を有する ことを特徴とする切削工具用硬質被膜。前記硬質相を構成する粒子の平均粒径が1nm乃至100nmの範囲内である請求項1に記載の切削工具用硬質被膜。請求項1又は2に記載の切削工具用硬質被膜が表面に被覆して設けられた硬質被膜被覆切削工具。

说明书全文

本発明は、切削工具の表面に被覆して設けられる切削工具用硬質被膜及びその硬質被膜が設けられた硬質被膜被覆切削工具に関し、特に、耐摩耗性及び耐溶着性を共に向上させるための改良に関する。

ドリルやタップ等の切削工具には、耐摩耗性を向上させるために硬質被膜が被覆して設けられる。この切削工具用硬質被膜としては、TiN系、TiCN系、TiAlN系、及びAlCrN系のコーティングが広く用いられており、その性能を更に向上させるために改良が図られている。例えば、特許文献1に記載された耐摩耗性部材がそれである。

特開2005−138209号公報

しかし、前述したような従来の技術により硬質被膜が形成された切削工具では、その切削加工に際して被削材の種類や切削条件によっては耐溶着性が不十分となるおそれがあった。すなわち、被削材等の溶着により工具の寿命が短くなる場合があり、改良の余地があった。このため、優れた耐摩耗性及び耐溶着性を兼ね備えた切削工具用硬質被膜及び硬質被膜被覆切削工具の開発が求められていた。

本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、優れた耐摩耗性及び耐溶着性を兼ね備えた切削工具用硬質被膜及び硬質被膜被覆切削工具を提供することにある。

斯かる目的を達成するために、本第1発明の要旨とするところは、切削工具の表面に被覆して設けられる切削工具用硬質被膜であって、IVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、及びSiのうち少なくとも1種類の元素を含む窒化物相、酸化物相、炭化物相、炭窒化物相、又は化物相である硬質相と、Au、Ag、及びCuのうち少なくとも1種類の元素を含む相である結合相とを、備え、前記硬質相と前記結合相とが三次元的に配置された複合構造を有することを特徴とするものである。

このように、前記第1発明によれば、IVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、及びSiのうち少なくとも1種類の元素を含む窒化物相、酸化物相、炭化物相、炭窒化物相、又は硼化物相である硬質相と、Au、Ag、及びCuのうち少なくとも1種類の元素を含む相である結合相とを、備え、前記硬質相と前記結合相とが三次元的に配置された複合構造を有するものであることから、前記硬質相がAu、Ag、又はCuにより結合される構造をとることで摩擦係数及び切削抵抗を軽減させることができ、潤滑性及び耐溶着性に優れると共に高硬度の被膜が得られる。すなわち、優れた耐摩耗性及び耐溶着性を兼ね備えた切削工具用硬質被膜を提供することができる。

前記第1発明に従属する本第2発明の要旨とするところは、前記硬質相を構成する粒子の平均粒径が1nm乃至100nmの範囲内である。このようにすれば、ナノレベルの前記硬質相がAu、Ag、又はCuにより結合された所謂ナノコンポジット構造をとることで摩擦係数及び切削抵抗を更に軽減させることができ、潤滑性及び耐溶着性に優れると共に高硬度の被膜が得られる。

前記第1発明乃至第2発明に従属する本第3発明の要旨とするところは、前記第1発明乃至第2発明の切削工具用硬質被膜が表面に被覆して設けられた硬質被膜被覆切削工具である。このようにすれば、前記硬質相がAu、Ag、又はCuにより結合される構造をとることで摩擦係数及び切削抵抗を軽減させることができ、潤滑性及び耐溶着性に優れると共に高硬度の被膜が得られる。すなわち、優れた耐摩耗性及び耐溶着性を兼ね備えた硬質被膜被覆切削工具を提供することができる。

本発明の硬質被膜被覆切削工具の一実施例であるドリルを軸心に垂直な方向から見た正面図である。

図1に示すドリルを切れ刃が設けられた先端側から見た拡大底面図である。

図1のドリルのボデーにおける表面付近の拡大断面図であり、本発明の切削工具用硬質被膜の一実施例である硬質被膜の構成を例示するものである。

図3の硬質被膜の構造を模式的に示す図である。

図3の硬質被膜のコーティング方法の一例を説明する図である。

本発明の効果を検証するために本発明者等が行った穴空け試験に用いられた各試料の被膜構造及びそれぞれの試験結果を併せて示す図である。

本発明の切削工具用硬質被膜は、エンドミル、ドリル、正面フライス、総型フライス、リーマ、タップ等の回転切削工具の他、バイト等の非回転式の切削工具等、種々の切削工具の表面コーティングに好適に適用される。工具基材すなわち硬質被膜が設けられる部材の材質としては、超硬合金や高速度工具鋼が好適に用いられるが、他の材料でもよく、例えばサーメット、セラミックス、多結晶ダイヤモンド、単結晶ダイヤモンド、多結晶CBN、単結晶CBN等、種々の材料から構成された切削工具に本発明の切削工具用硬質被膜は広く適用される。

本発明の切削工具用硬質被膜は、切削工具の一部乃至全部の表面に被覆して設けられるものであり、好適には、その切削工具において切削加工に関与する刃部に設けられる。更に好適には、少なくともその刃部における切れ刃乃至すくい面を被覆するように設けられる。

前記硬質相は、IVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、及びSiのうち少なくとも1種類の元素を含む窒化物、酸化物、炭化物、炭窒化物、又は硼化物、或いはこれらの相互固溶体にて構成される。具体的には、TiN、TiAlN、TiAlCrVSiB、ZrVO、HfCrCN、NbN、CrN、MoSiC、AlN、SiN等から成る相である。

本発明の切削工具用硬質被膜は、例えばアークイオンプレーティング法やイオンビーム蒸着法、スパッタリング法、PLD(Pulse Laser Deposition) 法、IBAD(Ion Beam Assisted Deposition;イオンビーム支援蒸着)法等のPVD法によって好適に設けられるが、鍍金法、液体急冷法、ガス凝集法等、他の成膜法を採用することもできる。

以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明に用いる図面に関して、各部の寸法比等は必ずしも正確に描かれていない。

図1は、本発明の硬質被膜被覆切削工具の一実施例であるドリル10を示す図であり、軸心Oに垂直な方向から見た正面図である。図2は、図1に示すドリル10を、切れ刃12が設けられた先端側から(すなわち矢印IIで示す方向に)見た拡大底面図である。これら図1及び図2に示す本実施例のドリル10は、2枚刃のツイストドリルであり、シャンク14及びボデー16を軸心O方向に一体に備えている。斯かるボデー16には、軸心Oの右まわりにねじれた一対の溝18が形成されている。前記ボデー16の先端には、前記一対の溝18に対応して一対の切れ刃12が設けられており、前記ドリル10が前記シャンク14側から見て軸心Oの右まわりに回転駆動されることにより、前記切れ刃12によって被削材に穴が切削加工されると共に、その穴を切削加工する際に生じる切屑が前記溝18を通ってシャンク14側へ排出されるように構成されている。

図3は、前記ドリル10のボデー16における表面付近の拡大断面図であり、本発明の切削工具用硬質被膜の一実施例である硬質被膜22の構成を例示するものである。図4は、TEM(Transmission Electron Microscope;透過型電子顕微鏡)により撮影された前記硬質被膜22の構造を模式的に示す図である。前記ドリル10は、図3に示すように、例えば高速度工具鋼(ハイス)製の工具基材(工具母材)20の表面に前記硬質被膜22がコーティングされて構成されたものである。この硬質被膜22の膜厚は、好適には、2.5〜6.0μm程度である。図4に示すように、前記硬質被膜22は、硬質相24を構成する複数の粒子(粒状要素)が、その間隙に設けられた結合相26により相互に結合された構造を有する。この図4においては、平面的な顕微鏡写真を例示しているが、前記硬質被膜22は、その平面方向(表面に平行を成す方向)及び厚み方向(表面に垂直を成す方向)の何れにおいても図4に示すように前記硬質相24と前記結合相26とが相互に結合された構造をとるものである。すなわち、前記硬質被膜22は、前記硬質相24と前記結合相26とが三次元的(立体的)に配置された複合構造を有する。

前記結合相26は、不可避的不純物を含むAu、Ag、又はCu、或いはこれらの相互固溶体から成る相である。前記硬質相24は、IVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、及びSiのうち少なくとも1種類の元素を含む窒化物、酸化物、炭化物、炭窒化物、又は硼化物、或いはこれらの相互固溶体であり、不可避的不純物を含むものである。すなわち、前記硬質相24は、具体的には、TiN、TiAlN、TiAlCrVSiB、ZrVO、HfCrCN、NbN、CrN、MoSiC、AlN、SiN等から成る相(分散相)である。好適には、前記硬質相24を構成する粒子の平均粒径は、1nm乃至100nmの範囲内である。この硬質相24を構成する粒子の平均粒径は、例えば、図4に示すような顕微鏡写真等において、無作為抽出される前記硬質相24を構成する複数の粒子(粒状要素)に関して、各粒子の径寸法に相当する長径、短径、或いは長径及び短径の平均値に基づいて算出される。例えば、抽出されたそれら複数の粒子における径寸法の平均値が、前記平均粒径として算出される。換言すれば、前記硬質被膜22は、1nm乃至100nmの範囲内の大きさに粒子化された前記硬質相24が、マトリックスとしての前記結合相26内に分散(拡散)して配置されたナノコンポジット(nanocomposite)構造を有するものである。すなわち、複相のナノ結晶から構成されるナノ組織金属から成るものである。

図5は、前記硬質被膜22のコーティング方法の一例を説明する図である。前記ドリル10等に対する前記硬質被膜22のコーティングは、例えば図5に示すようなスパッタリング装置30を用いてコントローラ36の制御により行われる。好適には、先ず、前処理としてのエッチング工程において、前記スパッタリング装置30のチャンバ32内に配置された前記工具基材20に、バイアス電源34により負のバイアス電圧が印加される。これにより、正のアルゴンイオンAr+が前記工具基材20に衝突させられ、その工具基材20の表面が粗面化させられる。

次に、スパッタリング工程において、例えば前記硬質被膜22における硬質相24の形成が行われる。例えば、前記硬質相24を構成するSi等のターゲット38に電源40により負の一定のバイアス電圧(例えば−50〜−60V程度)が印加されるとともに、前記バイアス電源34により工具基材20に負の一定のバイアス電圧(例えば−100V程度)が印加されることにより、アルゴンイオンAr+が前記ターゲット38に衝突させられ、これによりSi等の構成物質が叩き出される。前記チャンバ32内には、アルゴンガスの他に窒素ガス(N2)や炭化素ガス(CH4、C2H2)の反応ガスが所定の流量で導入され、その窒素原子Nや炭素原子Cが前記ターゲット38から叩き出されたSi等と結合してSiN等となり、前記工具基材20の表面に前記硬質被膜22における硬質相24等として付着させられる。斯かる処理と、前記結合相26を構成するAg等をターゲット38とする前記スパッタリング工程の処理とを交互に行うことで、前記工具基材20の表面に図4に示すような組織を有する前記硬質被膜22が形成される。或いは、前記硬質相24及び前記結合層26それぞれに対応してターゲットを構成し、それら複数のターゲットを用いて同期的にスパッタリングを行うことで、前記工具基材20の表面に前記硬質被膜22を形成するものであってもよい。

その他、前記工具基材20の表面に対する前記硬質被膜22の形成方法としては、例えば、よく知られた鍍金法(鍍金技術)、前記硬質被膜22を構成する金属を溶融させた溶融合金を、結晶の核生成が起こる速度よりも急速に冷却させることでアモルファス合金を得る液体急冷法、Heガス中において前記硬質被膜22を構成する金属を蒸発させて凝集させたナノ粒子を、液体窒素等により冷却した基板上に堆積させ、その基板上から掻き取ったナノ微粉末を固化形成するガス凝集法等が好適に用いられる。

続いて、本発明の効果を検証するために本発明者等が行った穴空け試験について説明する。図6は、この試験に用いられた本発明品及び試験品の被膜構造と、それぞれの試験結果(加工穴数及び判定)とを、併せて示す図である。本発明者等は、工具径8.3mmφの超硬ドリルに図6に示す各被膜構造及び膜厚の硬質被膜をコーティングして試料である本発明品1〜10及び試験品1〜9を作成し、各試験品について以下の切削条件で切削試験を行った。この図6に示す試料のうち、本発明品1〜10が本実施例の硬質被膜22が適用された本発明品に相当し、試験品1〜9が本発明の要件を満たさない(請求項1乃至2の要件から外れている)硬質被膜が適用された非発明品に相当する。図6における硬質相粒径は、各試料における被膜の顕微鏡写真等において、無作為抽出される複数の硬質相構成粒子における径寸法の平均値である。図6に示す加工穴数は、逃げ面摩耗幅0.2mmであるときの穴数であり、合格判定基準は、逃げ面摩耗幅0.2mmであるときの加工穴数が20穴以上である。

[加工条件]・工具形状:φ8.3超硬ドリル・被削材:インコネル(登録商標)718・切削機械:立型M/C・切削速度:10m/min・送り速度:0.1mm/rev・加工深さ:33mm(止まり)・ステップ量:ノンステップ・切削油:油性

図6に示すように、前記本発明品1〜10は、何れもIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、及びSiのうち少なくとも1種類の元素を含む窒化物相、酸化物相、炭化物相、炭窒化物相、又は硼化物相である硬質相24と、Au、Ag、及びCuのうち少なくとも1種類の元素を含む相である結合相26とを、備え、前記硬質相24と前記結合相26とが三次元的に配置された複合構造を有する。更に、前記硬質相24を構成する粒子の平均粒径が1nm乃至100nmの範囲内である。すなわち、前記本発明品1〜10は、何れも本発明の請求項1及び2の要件を満たす硬質被膜22が適用されたものである。図6に示す試験結果から明らかなように、斯かる本実施例の硬質被膜22が適用された本発明品1〜10においては、何れの試料においても逃げ面摩耗幅0.2mmであるときの加工穴数が20穴以上となり、合格基準を満たしている。

特に、SiNから成る硬質相24と、Agから成る結合相26とを備え、硬質相24の平均粒径が22.7nm、膜厚が4.1μmである本発明品2で加工穴数41、MoSiCから成る硬質相24と、Ag及びAuから成る結合相26とを備え、硬質相24の平均粒径が94.6nm、膜厚が5.1μmである本発明品9で加工穴数38、CrNから成る硬質相24と、Auから成る結合相26とを備え、硬質相24の平均粒径が1.0nm、膜厚が2.6μmである本発明品1で加工穴数36、TiNから成る硬質相24と、Au及びCuから成る結合相26とを備え、硬質相24の平均粒径が100.0nm、膜厚が5.8μmである本発明品4で加工穴数33、TiAlCrVSiBから成る硬質相24と、Ag、Cu、及びAuから成る結合相26とを備え、硬質相24の平均粒径が66.9nm、膜厚が3.5μmである本発明品7で加工穴数31と、何れも逃げ面摩耗幅0.2mmであるときの加工穴数が30穴以上となり、とりわけ良好な切削性能を示していることがわかる。

前記試験品1〜7は、何れもIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、及びSiのうち少なくとも1種類の元素を含む窒化物相、酸化物相、炭化物相、炭窒化物相、又は硼化物相である硬質相24と、Au、Ag、及びCuのうち少なくとも1種類の元素を含む相である結合相26とを、備えているものの、前記硬質相24を構成する粒子の平均粒径が1nm乃至100nmの範囲を逸脱するものであり、何れも本発明の請求項2の要件を満たさない。すなわち、前記試験品1、4、6、7では、前記硬質相24を構成する粒子の平均粒径が1nm未満と小さく、前記試験品2、3、5では、前記硬質相24を構成する粒子の平均粒径が100nmよりも大きい。このように、前記硬質相24を構成する粒子の平均粒径が1nm乃至100nmの範囲を逸脱する硬質被膜においては、前記硬質相24が前記結合相26内に分散(拡散)して配置された好適なナノコンポジット構造をとることができず、換言すれば、前記硬質相24と前記結合相26とが三次元的に配置された複合構造を有しない。すなわち、前記試験品1〜7は、何れも本発明の請求項1の要件を満たさない。前記試験品8、9は、何れもAu、Ag、及びCuのうち少なくとも1種類の元素を含む相である前記結合相26を有しておらず、本発明の請求項1の要件を満たさない。図6に示す試験結果から明らかなように、これら試験品1〜9においては、何れも逃げ面摩耗幅0.2mmであるときの加工穴数が20未満となり、前記本発明品1〜10と比べて切削性能に劣るものであることがわかる。これは、本発明の請求項1乃至2の要件を満たさない硬質被膜では、耐溶着性が十分ではなく、溶着や剥離等により早期寿命に至るためであると考えられる。

このように、本実施例によれば、IVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、及びSiのうち少なくとも1種類の元素を含む窒化物相、酸化物相、炭化物相、炭窒化物相、又は硼化物相である硬質相24と、Au、Ag、及びCuのうち少なくとも1種類の元素を含む相である結合相26とを、備え、前記硬質相24と前記結合相26とが三次元的に配置された複合構造を有するものであることから、前記硬質相24がAu、Ag、又はCuにより結合される構造をとることで摩擦係数及び切削抵抗を軽減させることができ、潤滑性及び耐溶着性に優れると共に高硬度の被膜が得られる。すなわち、優れた耐摩耗性及び耐溶着性を兼ね備えた切削工具用硬質被膜22を提供することができる。

前記硬質相24を構成する粒子の平均粒径が1nm乃至100nmの範囲内であるため、ナノレベルの前記硬質相24がAu、Ag、又はCuにより結合された所謂ナノコンポジット構造をとることで摩擦係数及び切削抵抗を更に軽減させることができ、潤滑性及び耐溶着性に優れると共に高硬度の硬質被膜22が得られる。

本実施例によれば、前記硬質被膜22が表面に被覆して設けられた硬質被膜被覆切削工具としてのドリル10であることから、前記硬質相24がAu、Ag、又はCuにより結合される構造をとることで摩擦係数及び切削抵抗を軽減させることができ、潤滑性及び耐溶着性に優れると共に高硬度の被膜が得られる。すなわち、優れた耐摩耗性及び耐溶着性を兼ね備えたドリル10を提供することができる。

以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。

10:ドリル(硬質被膜被覆切削工具)、12:切れ刃、14:シャンク、16:ボデー、18:溝、20:工具基材、22:硬質被膜(切削工具用硬質被膜)、24:硬質相、26:結合相、30:スパッタリング装置、32:チャンバ、34:バイアス電源、36:コントローラ、38:ターゲット、40:電源

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