総形回転切削工具

申请号 JP2016548500 申请日 2014-09-18 公开(公告)号 JP6295016B2 公开(公告)日 2018-03-14
申请人 オーエスジー株式会社; 发明人 都築 清志;
摘要
权利要求

軸心方向に工具先端側へ向かうに従って切れ刃の刃先径が増減させられており、複数の凹凸が前記軸心方向に連続して波形状に形成されたラフィングを外周部に備え、前記軸心まわりに回転駆動されつつ被加工物に対して前記軸心と垂直な方向へ相対移動させられることにより、所定形状の加工溝を切削加工する総形回転切削工具であって、 前記切れ刃の刃先径が極小となる首部には、該首部以外の部分に形成されたラフィングとは形状の異なるファインラフィングが形成されたものであり、 前記ファインラフィングは、前記首部以外の部分に形成された前記ラフィングよりも、前記凹凸の周期、深さおよび曲率半径のうちの少なくとも1つが小さいものである ことを特徴とする総形回転切削工具。前記首部以外の部分に形成された前記ラフィングにおける前記凹凸の周期は、0.5mmから5.0mmの範囲内であり、 前記首部に形成された前記ファインラフィングにおける前記凹凸の周期は、前記首部以外の部分に形成された前記ラフィングにおける前記凹凸の周期の0.25倍から0.75倍の範囲内である 請求項1に記載の総形回転切削工具。前記切れ刃の刃先径が極小となる複数の首部のうち、前記切れ刃の刃先径が最小となる首部には、前記ファインラフィングが形成されたものである 請求項1又は2に記載の総形回転切削工具。前記ファインラフィングが形成された部分と、前記切れ刃の刃先径が極小となる首部以外の前記ラフィングが形成された部分との間には、該ラフィング及び前記ファインラフィングの中間的な形状のラフィングが形成されたものであり、 前記中間的な形状のラフィングは、 前記切れ刃の刃先径が極小となる首部以外の部分に形成された前記ラフィングよりも、前記凹凸の周期、深さおよび曲率半径が小さいものであり、 前記ファインラフィングよりも、前記凹凸の周期、深さおよび曲率半径が大きいものである 請求項1から3の何れか1項に記載の総形回転切削工具。

说明书全文

本発明は、総形回転切削工具に関し、特に、折損の発生を抑制するための改良に関する。

蒸気タービン等のタービン翼車を回転軸に取り付けるための取付構造として、図14に示すように回転軸10の外周部に形成された多数のツリー形溝12にタービン翼車の羽根14を1枚ずつ嵌合するように構成したものがある。図15は、前記ツリー形溝12を拡大して示す断面図であり、溝中心Sに対して左右対称で且つ逆クリスマスツリーのように溝深さ方向(図の下方向)において溝幅が滑らかに増減しながら徐々に狭くなっており、両側の側面16a、16bには、それぞれ複数の凹部18及び凸部20が交互に連続して設けられている。

図15に示すようなツリー形溝12を切削加工するための工具が提案されている。例えば、特許文献1に記載された総形回転切削工具がその一例である。この技術によれば、軸心方向に工具先端側へ向かうに従って切れ刃の刃先径が増減させられつつ徐々に小径とされており、前記軸心まわりに回転駆動されつつ被加工物に対して前記軸心と垂直な方向へ相対移動させられることにより、所定形状の加工溝を切削加工する総形回転切削工具により切削加工を行うことで、図15に示すような逆クリスマスツリー形状のツリー形溝12を簡便に切削加工することができる。このような総形回転切削工具は、クリスマスカッタと通称される。

特開2008−279547号公報

しかしながら、前記従来の技術においては、溝の切削加工に際して工具に折損が発生するおそれがあった。特に、前記切れ刃の刃先径が極小となる首部において切り屑が詰まること等により、その首部で工具が折損するリスクが大きかった。このため、折損の発生を抑制する総形回転切削工具の開発が求められていた。

本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、折損の発生を抑制する総形回転切削工具を提供することにある。

斯かる目的を達成するために、本第1発明の要旨とするところは、軸心方向に工具先端側へ向かうに従って切れ刃の刃先径が増減させられており、複数の凹凸が前記軸心方向に連続して波形状に形成されたラフィングを外周部に備え、前記軸心まわりに回転駆動されつつ被加工物に対して前記軸心と垂直な方向へ相対移動させられることにより、所定形状の加工溝を切削加工する総形回転切削工具であって、前記切れ刃の刃先径が極小となる首部には、その首部以外の部分に形成されたラフィングとは状の異なるファインラフィングが形成されたものであり、前記ファインラフィングは、前記首部以外の部分に形成された前記ラフィングよりも、前記凹凸の周期、深さおよび曲率半径のうちの少なくとも1つが小さいものであることを特徴とするものである。

前記第1発明によれば、前記切れ刃の刃先径が極小となる首部には、その首部以外の部分に形成されたラフィングとは状の異なるファインラフィングが形成されたものであり、前記ファインラフィングは、前記首部以外の部分に形成された前記ラフィングよりも、前記凹凸の周期、深さおよび曲率半径のうちの少なくとも1つが小さいものであることから、例えば切り屑を細かなものとする性状のファインラフィングを前記首部に形成することで、その首部における切り屑の詰まりを抑制し、延いては折損の発生を好適に抑制できる。すなわち、折損の発生を抑制する総形回転切削工具を提供することができる。

前記第1発明に従属する本第2発明の要旨とするところは、前記首部以外の部分に形成された前記ラフィングにおける前記凹凸の周期は、0.5mmから5.0mmの範囲内であり、前記首部に形成された前記ファインラフィングにおける前記凹凸の周期は、前記首部以外の部分に形成された前記ラフィングにおける前記凹凸の周期の0.25倍から0.75倍の範囲内である。このようにすれば、他の部分よりも切り屑を細かなものとする実用的な構成のファインラフィングを前記首部に形成することで、その首部における切り屑の詰まりを抑制し、延いては折損の発生を好適に抑制できる。

前記第1発明又は2発明の何れかに従属する本第3発明の要旨とするところは、前記切れ刃の刃先径が極小となる複数の首部のうち、前記切れ刃の刃先径が最小となる首部には、前記ファインラフィングが形成されたものである。このようにすれば、最も折損が発生し易い刃先径が最小となる首部における切り屑の詰まりを抑制し、延いてはその首部における折損の発生を好適に抑制できる。

前記第1発明から第3発明の何れかに従属する本第4発明の要旨とするところは、前記ファインラフィングが形成された部分と、前記切れ刃の刃先径が極小となる首部以外の前記ラフィングが形成された部分との間には、そのラフィング及び前記ファインラフィングの中間的な形状のラフィングが形成されたものであり、前記中間的な形状のラフィングは、前記切れ刃の刃先径が極小となる首部以外の部分に形成された前記ラフィングよりも、前記凹凸の周期、深さおよび曲率半径が小さいものであり、前記ファインラフィングよりも、前記凹凸の周期、深さおよび曲率半径が大きいものである。このようにすれば、例えば前記首部に形成されたファインラフィングと、それ以外の部分に形成されたラフィングとの間に、それらの中間的な性状のラフィングを形成することで、前記首部における切り屑の詰まりを更に好適に抑制できる。

本発明の好適な実施例であるクリスマスカッタを軸心に垂直な方向から見た様子を示す正面図である。

図1のII−II断面図である。

図1のクリスマスカッタにより被加工物に切削加工される加工溝の一例であるツリー形溝を示す断面図である。

図1に示すクリスマスカッタの刃部における、ラフィング及びファインラフィングがそれぞれ形成された部分を説明する図である。

図1に示すクリスマスカッタの刃部に形成されたラフィングの構成を詳しく説明する図である。

図1に示すクリスマスカッタの刃部に形成されたファインラフィングの構成を詳しく説明する図である。

図5に示すラフィングと図6に示すファインラフィングとの間に形成されたラフィングの構成を詳しく説明する図である。

クリスマスカッタによるツリー形溝の切削加工におけるタオレの発生について説明する図である。

クリスマスカッタによるツリー形溝の切削加工におけるタオレの発生について説明する図である。

図1のクリスマスカッタにより切削加工されるツリー形溝の真直度及び対応するクリスマスカッタの部位を説明する斜視図である。

本発明の効果を検証するために本発明者が行った試験において用いられた試験工具における各部の仕様及び本試験の試験結果を併せて示している。

本発明の効果を検証するために本発明者が行った他の試験において用いられた試験工具における各部の仕様及び本試験の試験結果を併せて示している。

本発明のクリスマスカッタを用いてツリー形溝の切削加工を行うことで、従来技術に比べて工数を低減できることを説明する図である。

タービン翼車の羽根を取り付けるための多数のツリー形溝を示す図である。

図14のツリー形溝を拡大して示す断面図である。

以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明に用いる図面に関して、各部の寸法比等は必ずしも正確には描かれていない。

図1は、本発明の総形回転切削工具の一実施例であるクリスマスカッタ30を軸心に垂直な方向から見た様子を示す正面図である。図2は、図1のII−II断面図である。本実施例のクリスマスカッタ30は、図3を用いて後述するツリー形溝62を切削加工するために用いられる総形回転切削工具(総形エンドミル)である。前記クリスマスカッタ30は、シャンク32において図示しない切削機械の駆動軸に取り付けられ、その切削機械により軸心Cまわりに回転駆動されつつ被加工物(図3に示す例では被加工物60)に対してその軸心Cと直な方向へ相対移動させられることにより図3に示すような加工溝であるツリー形溝62を切削加工する。

図1に示すように、前記クリスマスカッタ30は、前記シャンク32及び刃部34を一体に備えており、その刃部34は、図3を用いて後述するツリー形溝62の凹凸形状に対応する逆クリスマスツリー形状を成している。すなわち、軸心C方向に工具先端側(図の上方向)へ向かうに従って径寸法が滑らかに増減しながら徐々に小径となるように構成されている。前記刃部34には、軸心Cまわりに等角度間隔で軸心C方向に延伸する複数の切り屑排出溝36が設けられており、その切り屑排出溝36に沿って複数の外周切れ刃38と、それら外周切れ刃38に連続する底刃40とが設けられている。好適には、軸心Cまわりに等角度間隔で3本の切り屑排出溝36が設けられており、その切り屑排出溝36に沿って3枚の外周切れ刃38が設けられている。前記外周切れ刃38及び底刃40は、前記クリスマスカッタ30がシャンク32側から見て右まわりに回転駆動されることにより切削加工を行う切れ刃に相当するものであり、前記切り屑排出溝36は所定のねじれ角で右まわりに傾斜している。

図1に示すように、前記刃部34には、工具先端側からシャンク32側へ向かって順に第1山部(第1大径部)42、第1谷部(第1小径部)44、第2山部(第2大径部)46、第2谷部(第2小径部)48、第3山部(第3大径部)50、及び第3谷部(第3小径部)52が形成されている。図1では、前記第1山部42の径寸法をd1で、前記第1谷部44の径寸法をd2で、前記第2山部46の径寸法をd3で、前記第2谷部48の径寸法をd4で、前記第3山部50の径寸法をd5で、前記第3谷部52の径寸法をd6でそれぞれ示している。前述のように、前記クリスマスカッタ30の刃部34は、工具先端側へ向かうに従って径寸法が滑らかに増減しながら徐々に小径となるように構成されている。すなわち、前記第1山部42の径寸法は前記第2山部46の径寸法よりも小さく、前記第2山部46の径寸法は前記第3山部50の径寸法よりも小さい。前記第1谷部44の径寸法は前記第2谷部48よりも小さく、前記第2谷部48の径寸法は前記第3谷部52の径寸法よりも小さい。すなわち、図1に示す各径寸法に関して、d1

前記刃部34において、前記径寸法d1、d3、d5は、前記第1山部42、第2山部46、及び第3山部50それぞれにおける径寸法の極大値に相当する。前記径寸法d2、d4、d6は、前記第1谷部44、第2谷部48、及び第3谷部52それぞれにおける径寸法の極小値に相当する。換言すれば、前記径寸法d1〜d6は、工具先端側へ向かうに従って径寸法が滑らかに増減しながら徐々に小径となるように構成された前記刃部34の径方向形状における径(半径)が極大乃至極小となる部分における径寸法に相当する。本実施例のクリスマスカッタ30においては、前記第1谷部44、第2谷部48、及び第3谷部52が、前記外周切れ刃38の刃先径が極小となる首部に相当する。

図3は、前記クリスマスカッタ30により被加工物60に切削加工される加工溝(総形溝)の一例であるツリー形溝62を示す断面図である。図3に示すように、前記クリスマスカッタ30を軸心Cまわりに回転駆動しつつ被加工物60に対してその軸心Cと直角な方向へ相対移動させることによりその被加工物60に切削加工されるツリー形溝62では、溝中心Sに対して左右対称で且つ逆クリスマスツリーのように溝深さ方向(図の下方向)において溝幅が滑らかに増減しながら徐々に狭くなっている。すなわち、前記ツリー形溝62における両側の側面64a、64b(以下、特に区別しない場合には単に側面64という)には、溝の底側から開口側へ向かって順に第1凹部66、第1凸部68、第2凹部70、第2凸部72、第3凹部74、及び第3凸部76が交互に連続して形成されている。図3においては、前記両側の側面64a、64bに形成された前記第1凹部66相互間の幅寸法をd1で、前記第1凸部68相互間の幅寸法をd2で、前記第2凹部70相互間の幅寸法をd3で、前記第2凸部72相互間の幅寸法をd4で、前記第3凹部74相互間の幅寸法をd5で、前記第3凸部76相互間の幅寸法をd6でそれぞれ示している。

図1及び図3に示すように、前記クリスマスカッタ30により前記被加工物60に切削加工される前記ツリー形溝62の断面形状は、前記クリスマスカッタ30における前記刃部34の軸心Cを含む断面形状に対応したものになる。すなわち、前記刃部34における前記第1山部42に対応して前記ツリー形溝62の両側面64における前記第1凹部66が形成される。前記第1谷部44に対応して前記ツリー形溝62の両側面64における前記第1凸部68が形成される。前記第2山部46に対応して前記ツリー形溝62の両側面64における前記第2凹部70が形成される。前記第2谷部48に対応して前記ツリー形溝62の両側面64における前記第2凸部72が形成される。前記第3山部50に対応して前記ツリー形溝62の両側面64における前記第3凹部74が形成される。前記第3谷部52に対応して前記ツリー形溝62の両側面64における前記第3凸部76が形成される。従って、前記第1凹部66相互間の幅寸法は前記第1山部42の径寸法d1と等しくなる。前記第1凸部68相互間の幅寸法は前記第1谷部44の径寸法d2と等しくなる。前記第2凹部70相互間の幅寸法は前記第2山部46の径寸法d3と等しくなる。前記第2凸部72相互間の幅寸法は前記第2谷部48の径寸法d4と等しくなる。前記第3凹部74相互間の幅寸法は前記第3山部50の径寸法d5と等しくなる。前記第3凸部76相互間の幅寸法は前記第3谷部52の径寸法d6と等しくなる。実際の切削加工において、前記刃部34における各径寸法d1〜d6と前記ツリー形溝62における幅寸法d1〜d6とは必ずしも厳密には一致しないが、略等しい値となるものであり、本実施例においては実質的に同じ値として扱う。

図2に示すように、前記刃部34には、前記外周切れ刃38から前記軸心Cまわりの周方向に、前記外周切れ刃38の刃先径から径寸法が漸減させられる(逃げ量が漸増させられる)逃げ部54が設けられている。図1においては、前記外周切れ刃38の逃げ面56の構成を詳しく説明するために、円形で囲繞する部分を拡大して示している。前記逃げ面56は、前記逃げ部54の側周面に相当するものであり、図1の拡大部分は、前記外周切れ刃38と前記逃げ面56との境界の構成を詳しく説明している。図1の拡大部分に示すように、本実施例のクリスマスカッタ30は、複数のなだらかな凹凸が前記軸心C方向に連続して波形状に形成されたラフィング58a、58b(以下、特に区別しない場合には単にラフィング58という)を、前記外周切れ刃38と前記逃げ面56との境界を含む、前記外周切れ刃38の逃げ面56に備えている。すなわち、前記外周切れ刃38は、その逃げ面56に細かな波形状の凹凸が設けられたラフィング切れ刃である。前記ラフィング58は、前記軸心Cを含む平面において波形状に形成されたものであり、後述する図5〜図7に示すように、所定の曲率を有する凹部と凸部とが所定の周期で繰り返される形状である。すなわち、前記クリスマスカッタ30は、加工溝である前記ツリー形溝62の荒加工(荒仕上加工)或いは中加工用(中仕上加工)に用いられるラフィングクリスマスカッタである。前記クリスマスカッタ30において、好適には、2つの前記外周切れ刃38それぞれに対応する逃げ面56に形成された凹凸において位相がずらされている。例えば、一方の外周切れ刃38に対応する逃げ面56に形成された凹部(凸部)の位置に、他方の外周切れ刃38に対応する逃げ面56では凸部(凹部)が形成されている。

図1に示すように、前記クリスマスカッタ30において、前記外周切れ刃38の刃先径が極小となる首部としての前記第1谷部44には、その第1谷部44以外の部分(図1においては第3山部50)に形成されたラフィング58aとは性状の異なるラフィング58bが形成されている。換言すれば、前記第1谷部44以外の部分には、第1の態様のラフィング58aが形成され、前記第1谷部44には、前記ラフィング58aとは性状の異なる第2の態様のラフィング58bが形成されている。本実施例においては、前記ラフィング58bが、前記外周切れ刃38の刃先径が極小となる首部に形成されたファインラフィングに相当する。好適には、前記刃部34において首部に相当する前記第1谷部44、第2谷部48、及び第3谷部52のうち、少なくとも前記刃部34において前記外周切れ刃38の刃先径が最小となる首部に対応する前記第1谷部44には、ファインラフィングとしての前記ラフィング58bが形成されている。例えば、前記第1谷部44には、ファインラフィングとしての前記ラフィング58bが形成され、前記第2谷部48及び第3谷部52を含む、前記第1谷部44以外の部分には、前記ラフィング58aが形成されている。或いは、前記刃部34において首部に相当する前記第1谷部44、第2谷部48、及び第3谷部52にファインラフィングとしての前記ラフィング58bが形成され、それら第1谷部44、第2谷部48、及び第3谷部52以外の部分には、前記ラフィング58aが形成されている。或いは、前記刃部34において首部に相当する前記第1谷部44、第2谷部48、及び第3谷部52のうち、前記第1谷部44及び第2谷部48には、ファインラフィングとしての前記ラフィング58bが形成され、前記第3谷部52を含む、前記第1谷部44及び第2谷部48以外の部分には、前記ラフィング58aが形成されている。以下の実施例においては、前記第1谷部44及び第2谷部48にファインラフィングとしての前記ラフィング58bが形成され、前記第1谷部44及び第2谷部48以外の部分に前記ラフィング58aが形成された構成について説明する。

図4〜図7は、前記クリスマスカッタ30の刃部34に形成された、前記ラフィング58a及びファインラフィングとしての前記ラフィング58bの性状を詳しく説明する図である。図5〜図7においては、前記ラフィング58における前記凹凸それぞれの曲率半径を説明する円を破線で示している。前述のように、前記刃部34において、前記第1谷部44及び第2谷部48にファインラフィングとしての前記ラフィング58bが形成され、前記第1谷部44及び第2谷部48以外の部分に前記ラフィング58aが形成されている。好適には、図4に示すように、前記ラフィング58aが形成された部分と前記ラフィング58bが形成された部分との間(それらの間におけるR部)には、それらラフィング58a及びラフィング58bの中間的な性状のラフィング58cが形成されている。前記ラフィング58cは、後述するように、前記凹凸の周期、深さ、及び曲率半径等に関して、前記ラフィング58a及びラフィング58bの中間的な性状とされている。例えば、図4に示すように、前記第1谷部44及び第2谷部48それぞれにおける、前記外周切れ刃38の刃先径が極小となる部分を含む軸方向の所定範囲に前記ラフィング58bが形成されている。前記ラフィング58bが形成された部分の軸方向両側に連続して、前記ラフィング58cが形成されている。前記ラフィング58cが形成された部分に連続して、前記第1谷部44及び第2谷部48以外の部分に前記ラフィング58aが形成されている。前記ラフィング58cを備えず、前記ラフィン58bが形成された部分の軸方向両側に連続して、前記ラフィング58aが形成されたものであってもよい。図5は前記ラフィング58aの構成を、図6は前記ラフィング58bの構成を、図7は前記ラフィング58cの構成をそれぞれ例示している。以下、これらの図を用いて、前記ラフィング58a、58b、58cの性状の違いについて詳しく説明する。

前記ラフィング58a、58b、58cは、好適には、前記凹凸の周期Prに関してそれぞれ性状が異なる。ここで、前記凹凸の周期Prとは、前記ラフィング58を構成する凹凸の単位パターンの長さに相当するものであり、所謂ラフィングピッチである。具体的には、図5〜図7に示すように、前記ラフィング58を前記軸心Cを含む平面で切断した場合における、1の凸部の山頂からその凸部に隣接する凸部の山頂までの間隔(1の凹部の谷底からその凹部に隣接する凹部の谷底までの間隔)が、前記ラフィング58における凹凸の周期Prに相当する。すなわち、図5に示すPraが前記ラフィング58aにおける凹凸の周期に、図6に示すPrbが前記ラフィング58bにおける凹凸の周期に、図7に示すPrcが前記ラフィング58cにおける凹凸の周期に、それぞれ対応する。これらの図に示すように、好適には、ファインラフィングとしての前記ラフィング58bにおける凹凸の周期Prbは、前記ラフィング58aにおける凹凸の周期Praよりも小さい(Prb

ra)。好適には、前記ラフィング58cにおける凹凸の周期P

rcは、前記ラフィング58aにおける凹凸の周期P

raよりも小さく、前記ラフィング58bにおける凹凸の周期P

rbよりも大きい(P

rb

rc

ra)。

前記ラフィング58aにおける前記凹凸の周期Praは、好適には、0.5mmから5.0mmの範囲内である。前記ラフィング58bにおける前記凹凸の周期Prbは、前記ラフィング58aにおける前記凹凸の周期Praの0.25倍から0.75倍の範囲内である。すなわち、前記ラフィング58aにおける前記凹凸の周期をPraとして、前記ラフィング58bにおける前記凹凸の周期Prbは、次の(1)式で表される。具体的な構成の一例を挙げれば、前記ラフィング58aにおける前記凹凸の周期Praは2.0mm、前記ラフィング58bにおける前記凹凸の周期Prbは1.0mm、前記ラフィング58cにおける前記凹凸の周期Prcは1.5mmである。 Pra×0.25≦Prb≦Pra×0.75 ・・・(1)

前記ラフィング58a、58b、58cは、好適には、前記凹凸の深さLrに関してそれぞれ性状が異なる。ここで、前記凹凸の深さLrとは、前記ラフィング58における凹部の谷底から凸部の山頂までの間隔に相当する。具体的には、図5〜図7に示すように、前記ラフィング58を前記軸心Cを含む平面で切断した場合における、前記ラフィング58を構成する凹部の谷底を連結した直線と、凸部の山頂を連結した直線との距離が、前記ラフィング58における凹凸の深さLrに相当する。すなわち、図5に示すLraが前記ラフィング58aにおける凹凸の深さに、図6に示すLrbが前記ラフィング58bにおける凹凸の深さに、図7に示すLrcが前記ラフィング58cにおける凹凸の深さに、それぞれ対応する。これらの図に示すように、好適には、ファインラフィングとしての前記ラフィング58bにおける凹凸の深さLrbは、前記ラフィング58aにおける凹凸の深さLraよりも小さい(Lrb

ra)。好適には、前記ラフィング58cにおける凹凸の深さL

rcは、前記ラフィング58aにおける凹凸の深さL

raよりも小さく、前記ラフィング58bにおける凹凸の深さL

rbよりも大きい(L

rb

rc

ra)。

前記ラフィング58aにおける前記凹凸の深さLraは、好適には、0.05mmから0.5mmの範囲内である。前記ラフィング58bにおける前記凹凸の深さLrbは、前記ラフィング58aにおける前記凹凸の深さLraの0.25倍から0.75倍の範囲内である。すなわち、前記ラフィング58aにおける前記凹凸の深さをLraとして、前記ラフィング58bにおける前記凹凸の深さLrbは、次の(2)式で表される。具体的な構成の一例を挙げれば、前記ラフィング58aにおける前記凹凸の深さLraは0.2mm、前記ラフィング58bにおける前記凹凸の深さLrbは0.1mm、前記ラフィング58cにおける前記凹凸の深さLrcは0.15mmである。 Lra×0.25≦Lrb≦Lra×0.75 ・・・(2)

前記ラフィング58a、58b、58cは、好適には、前記凹凸の曲率半径Rrに関してそれぞれ性状が異なる。ここで、前記凹凸の曲率半径Rrとは、前記ラフィング58における凹凸それぞれの曲率半径に相当する。具体的には、図5〜図7に示すように、前記ラフィング58を前記軸心Cを含む平面で切断した場合における、前記ラフィング58を構成する凹部の谷底を含む所定範囲の曲率半径、及び凸部の山頂を含む所定範囲の曲率半径が、前記ラフィング58における凹凸の曲率半径Rrに相当する。前記ラフィング58における凹凸の曲率半径Rrに関して、凹部に対応する曲率半径R1と凸部に対応する曲率半径R2とが異なるものであってもよいが、好適には、凹部に対応する曲率半径R1と凸部に対応する曲率半径R2とが略等しい(R1=R2=Rr)ものである。すなわち、図5に示すRraが前記ラフィング58aにおける凹凸の曲率半径に、図6に示すRrbが前記ラフィング58bにおける凹凸の曲率半径に、図7に示すRrcが前記ラフィング58cにおける凹凸の曲率半径に、それぞれ対応する。好適には、ファインラフィングとしての前記ラフィング58bにおける凹凸の曲率半径Rrbは、前記ラフィング58aにおける凹凸の曲率半径Rraよりも小さい(Rrb

ra)。好適には、前記ラフィング58cにおける凹凸の曲率半径R

rcは、前記ラフィング58aにおける凹凸の曲率半径R

raよりも小さく、前記ラフィング58bにおける凹凸の曲率半径R

rbよりも大きい(R

rb

rc

ra)。或いは、前記ラフィング58a、58b、58cそれぞれにおける前記凹凸の曲率半径R

ra、R

rb、R

rcは何れも等しい(R

ra=R

rb=R

rc)。

前記ラフィング58aにおける前記凹凸の曲率半径Rraは、好適には、0.3mmから1.5mmの範囲内である。前記ラフィング58bにおける前記凹凸の曲率半径Rrbは、前記ラフィング58aにおける前記凹凸の曲率半径Rraの0.3倍から1倍の範囲内である。すなわち、前記ラフィング58aにおける前記凹凸の曲率半径をRraとして、前記ラフィング58bにおける前記凹凸の曲率半径Rrbは、次の(3)式で表される。具体的な構成の一例を挙げれば、前記ラフィング58aにおける前記凹凸の曲率半径Rraは1mm、前記ラフィング58bにおける前記凹凸の曲率半径Rrbは0.5mm、前記ラフィング58cにおける前記凹凸の曲率半径Rrcは0.75mmである。 Rra×0.3≦Rrb≦Rra ・・・(3)

図8及び図9は、前記クリスマスカッタ30による前記ツリー形溝62の切削加工におけるタオレの発生について説明する図である。図9においては、前記ツリー形溝62における幅寸法の増減を省略し、両側面を平面として概略的に図示している。図8は、後述する溝タオレの測定方法について説明する図でもある。図8に示すように、前記クリスマスカッタ30による前記ツリー形溝62の切削加工では、そのクリスマスカッタ30の進行方向に向かって右側においてダウンカットが、左側においてアップカットが、前記クリスマスカッタ30の進行に伴い並行して行われる。斯かる態様においては、加工される前記ツリー形溝62にタオレすなわち溝の底部側がアップカット側へ傾斜する現象が発生するおそれがある。例えば、前記クリスマスカッタ30の回転方向とその進行方向に対する切削抵抗により、図9に破線で示すように、前記ツリー形溝62の底部(工具先端側)が前記クリスマスカッタ30の進行方向に向かって左側に傾斜するおそれがある。

図10は、前記クリスマスカッタ30により切削加工される前記ツリー形溝62の真直度及び対応するクリスマスカッタ30の部位を説明する斜視図である。前記ツリー形溝62の真直度とは、例えば、前記クリスマスカッタ30による前記ツリー形溝62の加工時における、前記クリスマスカッタ30の軸心Cの移動軌跡(図10に一点鎖線で示すカッタ中心)を基準として、前記ツリー形溝62の側面64a、64bそれぞれにおける前記移動軌跡に平行な直線からのずれを示す値である。前記ツリー形溝62にタオレが発生すると、そのツリー形溝62の真直度が低下する。例えば、タオレの影響により抜け際(クリスマスカッタ30が被加工物60から抜かれる端部)において前記ツリー形溝62に曲がりが発生し、その曲がりにより前記ツリー形溝62の真直度が低下する。これに加え、加工された前記ツリー形溝62におけるタオレが大きいと、仕上加工に係る仕上代を比較的大きくとる必要がある、前記ツリー形溝62におけるタオレ、曲がりの影響で前記クリスマスカッタ30の折損リスクが大きくなる、前記ツリー形溝62におけるタオレ、曲がりを抑制するために切削条件を定めることで、加工時間に比較的長時間を要する等の不具合が考えられる。

本発明者は、本実施例のクリスマスカッタ30の効果を検証するために、以下に示す切削試験条件で切削試験を行った。すなわち、前記凹凸の周期Prbが1.0mmであるファインラフィングとしての前記ラフィング58bが前記第1谷部44に形成され、前記凹凸の周期Praが2.0mmである前記ラフィング58aが前記第1谷部44以外の部分に形成された本発明の一実施例である試験工具(本発明品)を作成した。前記凹凸の周期Prが2.0mmである均一なラフィング58が、首部としての前記第1谷部44を含め前記刃部34の外周部に形成された従来技術である試験工具(従来品)を作成した。本試験に用いた試験工具は、何れも前述した図3に示す形状のツリー形溝62を形成するための3枚刃のラフィングクリスマスカッタである。前記本発明品及び前記従来品により、以下に示す切削試験条件でツリー形溝の切削加工を行い、その切削加工に係る切屑形態、振動、切削音、仕上面、機械ロードメータ、工具損傷の評価を行った。機械ロードメータは、切削負荷に相当し、値が大きいほど切削負荷が大きいことを示す。更に、以下に示す測定方法により、前記本発明品及び前記従来品により切削加工されたツリー形溝におけるタオレの評価を行った。更に、ツリー形溝の幅方向に関し、中間地点を基準として、工具進行方向に平行な加工溝(理想的な加工溝)からのずれ(mm)を示す数値である真直度の評価を行った。

[切削試験条件] ・試験工具:試験用ラフィングクリスマスカッタ(最大径約50mmφ、最小径約16mmφ(第1谷部)、約36mmφ(第3谷部)) ・被削材質:SNCN439 90HRB(JIS規格) ・切削油剤:不溶性切削油剤(JIS2種5号) ・加工機械:たて型M/Cフライス盤 ・送り速度:約10mm/min ・溝深さ:約70mm ・切削長さ:100mm

[溝タオレの測定方法(図8を参照)] 1.工具中心(軸心)から左右の基準面までの座標L、Rを測定する。 2.基準面から加工された左右の溝(幅)の座標L1、R1を測定する。 3.測定されたR、L、R1、L1から左右の溝幅L1−L、R1−Rを算出する。 4.左溝幅L1−Lと右溝幅R1−Rの差の1/2を溝タオレとして算出する(すなわち、溝タオレ=(左溝幅−右溝幅)/2)。

図11は、前記切削試験の試験結果を示す図である。図11においては、前記切削加工に係る切屑形態、振動、切削音、仕上面、工具損傷それぞれに関して、良好であったものを◎で、やや良好であったものを○で、普通であったものを△で、それぞれ示している。図11の試験結果から、本発明の実施例である試験工具(本発明品)では、従来技術である試験工具(従来品)に比べて、ツリー形溝の切削加工に係る切屑形態、振動、切削音、仕上面、及び機械ロードメータ(切削負荷)の何れについても、従来技術である試験工具より優れていることがわかる。本発明の実施例である試験工具では、従来技術である試験工具に比べて、加工されたツリー形溝におけるタオレ及び曲がりの発生が抑制されていることがわかる。すなわち、ツリー形溝の加工においては、例えば溝タオレが0.30mm以下(谷部における仕上げ代が0.30mm以下)となることが求められるが、本発明の実施例である試験工具により切削加工されたツリー形溝では、前記第1谷部44に対応して加工された前記第1凸部68でタオレが0.15、前記第3谷部52に対応して加工された前記第3凸部76でタオレが0.09と、何れも0.30mm以下の範囲内に収まっている。一方、従来技術である試験工具により切削加工されたツリー形溝では、前記第1谷部44に対応して加工された前記第1凸部68でタオレが0.35となり、0.30mm以下の範囲を逸脱している。更に、本発明の実施例である試験工具による切削加工では、工具損傷は発生していないが、従来技術である試験工具による切削加工では、首部である前記第1谷部44にチッピングが発生している。本試験の結果から、本発明の実施例である試験工具では、従来技術である試験工具に比べて、切削性能に優れ、加工されるツリー形溝におけるタオレ及び曲がりの発生が抑制され、且つ工具損傷が抑制されることが確認された。

本発明者は、本実施例のクリスマスカッタ30の効果を検証するため、更に以下に示す切削試験条件で切削試験を行った。すなわち、図12に示すように、前記凹凸の周期Prbがそれぞれ0.4mm、0.5mm、1.0mm、1.5mm、1.6mmであるファインラフィングとしての前記ラフィング58bが前記第1谷部44に形成され、前記凹凸の周期Praが2.0mmである前記ラフィング58aが前記第1谷部44以外の部分に形成された本発明の一実施例である試験工具(発明品1〜5)を作成した。前記凹凸の周期Prが2.0mmである均一なラフィング58が、首部としての前記第1谷部44を含め前記刃部34の外周部に形成された従来技術である試験工具(従来品)を作成した。本試験に用いた試験工具は、何れも前述した図3に示す形状のツリー形溝62を形成するための3枚刃のラフィングクリスマスカッタである。前記発明品1〜5及び前記従来品により、以下に示す切削試験条件でツリー形溝の切削加工を行い、その切削加工に係る切れ味、振動、切削音、仕上面、機械ロードメータ、工具損傷の評価を行った。更に、前記測定方法により、前記発明品1〜5及び前記従来品により切削加工されたツリー形溝におけるタオレ及び真直度の評価を行った。

[切削試験条件] ・試験工具:試験用ラフィングクリスマスカッタ(最大径約50mmφ、最小径約10mmφ) ・被削材質:SNCN439 90HRB(JIS規格) ・切削油剤:不水溶性切削油剤(JIS2種5号) ・加工機械:たて型M/Cフライス盤 ・切削速度:約23m/min ・送り速度:約7mm/min ・溝深さ:約70mm

図12は、前記切削試験の試験結果を示す図である。図12においては、前記切削加工に係る切れ味、振動、切削音、仕上面、工具損傷それぞれに関して、良好であったものを◎で、やや良好であったものを○で、普通であったものを△で、それぞれ示している。図12の試験結果から、本発明の実施例である発明品1〜4では、従来技術である試験工具(従来品)に比べて、ツリー形溝の切削加工に係る切れ味、振動、切削音、仕上面、及び機械ロードメータ(切削負荷)の何れについても、従来技術である試験工具より優れていることがわかる。本発明の実施例である発明品1〜5では、従来技術である試験工具に比べて、加工されたツリー形溝におけるタオレ及び曲がりの発生が抑制されていることがわかる。更に、本発明の実施例である発明品1〜4による切削加工では、工具損傷は発生していないが、従来技術である試験工具による切削加工では、首部である前記第1谷部44にチッピングが発生している。本発明の実施例である発明品5では、首部である前記第1谷部44に微小チッピングが発生しているが、これは工具の性能に影響を与えない程度の損傷であった。本試験の結果から、本発明の実施例である発明品1〜5では、従来技術である試験工具に比べて、切削性能に優れ、加工されるツリー形溝におけるタオレ及び曲がりの発生が抑制され、且つ工具損傷が抑制されることが確認された。

本実施例によれば、前記外周切れ刃38の刃先径が極小となる首部としての前記第1谷部44等には、その第1谷部44等以外の部分に形成されたラフィング58aとは性状の異なるファインラフィングとしてのラフィング58bが形成されたものであることから、例えば切り屑を細かなものとする性状のラフィング58bを前記第1谷部44等に形成することで、その第1谷部44等における切り屑の詰まりを抑制し、延いては折損の発生を好適に抑制できる。すなわち、折損の発生を抑制する総形回転切削工具としてのクリスマスカッタ30を提供することができる。

本実施例によれば、ファインラフィングとしての前記ラフィング58bが形成された前記第1谷部44等において、前記ラフィング58aが形成される場合よりも断面積が大きくなるため、工具の剛性が向上する。前記ツリー形溝62におけるタオレの発生を効果的に抑制できるため、そのツリー形溝62の抜け際に曲がりが発生することを抑制できる、前記ツリー形溝62の仕上加工に備えて残される仕上代を小さなものとできる、工具の折損リスクを低減できる、切削加工に要する時間を短縮できる等の種々の有利な効果が得られる。更に、従来技術に比べて前記ツリー形溝62の加工状態が安定するため、トラブル発生のリスクが小さくなり、工業用ロボット等による無人加工が可能となるという利点もある。

本実施例によれば、従来の技術に比べて加工溝の切削加工に要する工数を低減させることができる。すなわち、図13に示すように、従来工程では、中仕上用クリスマスカッタによる中仕上工程及び仕上用クリスマスカッタによる仕上工程に先立ち、テーパエンドミルによる第1荒取り工程、Tスロットカッタによる第2荒取り工程が必要であったのに対し、本実施例のクリスマスカッタ30では、それらの工程が不要となる。すなわち、中仕上工程において前記クリスマスカッタ30により切削加工を行い、仕上工程において仕上用クリスマスカッタにより仕上加工を行うことで優れた性状の加工溝が得られるため、従来技術における第1荒取り工程及び第2荒取り工程に相当する加工を行う必要がなく、工数を低減させることができる。

前記第1谷部44等に形成された前記ラフィング58bは、前記第1谷部44等以外の部分に形成された前記ラフィング58aよりも、前記凹凸の周期Prが小さいものであるため、他の部分よりも切り屑を細かなものとする性状のラフィング58bを前記第1谷部44等に形成することで、その第1谷部44等における切り屑の詰まりを抑制し、延いては折損の発生を好適に抑制できる。

前記第1谷部44等以外の部分に形成された前記ラフィング58aにおける前記凹凸の周期Praは、0.5mmから5.0mmの範囲内であり、前記第1谷部44等に形成された前記ラフィング58bにおける前記凹凸の周期Prbは、前記第1谷部44等以外の部分に形成された前記ラフィング58aにおける前記凹凸の周期Praの0.25倍から0.75倍の範囲内であるため、他の部分よりも切り屑を細かなものとする実用的な構成のラフィング58bを前記第1谷部44等に形成することで、その第1谷部44等における切り屑の詰まりを抑制し、延いては折損の発生を好適に抑制できる。

前記第1谷部44等に形成された前記ラフィング58bは、前記第1谷部44等以外の部分に形成された前記ラフィング58aよりも、前記凹凸の深さLrが小さいものであるため、他の部分よりも切り屑を細かなものとする性状のラフィング58bを前記第1谷部44等に形成することで、その第1谷部44等における切り屑の詰まりを抑制し、延いては折損の発生を好適に抑制できる。

前記第1谷部44等に形成された前記ラフィング58bは、前記第1谷部44等以外の部分に形成された前記ラフィング58aよりも、前記凹凸の曲率半径Rrが小さいものであるため、他の部分よりも切り屑を細かなものとする性状のラフィング58bを前記第1谷部44等に形成することで、その第1谷部44等における切り屑の詰まりを抑制し、延いては折損の発生を好適に抑制できる。

前記外周切れ刃38の刃先径が最小となる首部としての前記第1谷部44には、その第1谷部44以外の部分に形成されたラフィング58aとは性状の異なるファインラフィングとしてのラフィング58bが形成されたものであることから、最も折損が発生し易い刃先径が最小となる前記第1谷部44における切り屑の詰まりを抑制し、延いてはその第1谷部44における折損の発生を好適に抑制できる。

前記第1谷部44等と、前記ラフィング58bとは性状の異なる前記ラフィング58aが形成された部分との間には、そのラフィング58a及び前記ラフィング58bの何れとも性状の異なるラフィング58cが形成されたものであるため、例えば前記第1谷部44等に形成されたラフィング58bと、それ以外の部分に形成されたラフィング58aとの間に、それらの中間的な性状のラフィング58cを形成することで、前記第1谷部44等における切り屑の詰まりを更に好適に抑制できる。

以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。

例えば、前述の実施例においては、本発明の総形回転切削工具の一実施例として、軸心Cまわりに3枚の外周切れ刃38を備えたクリスマスカッタ30について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、軸心Cまわりに2枚以下の前記外周切れ刃38を備えたクリスマスカッタ、或いは4枚以上の前記外周切れ刃38を備えたクリスマスカッタにも、本発明は好適に適用される。

前述の実施例においては、本発明の総形回転切削工具の一実施例として、軸心C方向に3つの山部を備えた3山のクリスマスカッタ30を例示したが、軸心C方向に4つの山部を備えた4山のクリスマスカッタ、或いは5つ以上の山部を備えたクリスマスカッタにも、本発明は好適に適用される。軸心C方向に2つの山部を備えた2山のクリスマスカッタ、或いは1つの山部を備えた1山のクリスマスカッタにも、本発明は好適に適用される。

前述の実施例においては、総形回転切削工具の一例として、クリスマスカッタ30に本発明が適用された例について説明したが、本発明は、クリスマスカッタに限られず、切れ刃の刃先径が極小となる首部を有する総形回転切削工具に広く適用され得るものである。

その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。

30:クリスマスカッタ(総形回転切削工具)、38:外周切れ刃、44:第1谷部(首部)、48:第2谷部(首部)、52:第3谷部(首部)、58a:ラフィング、58b:ラフィング(ファインラフィング)、60:被加工物、62:ツリー形溝(加工溝)、C:軸心

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