ラジアスエンドミル及び切削加工方法

申请号 JP2015546708 申请日 2014-11-08 公开(公告)号 JP6347258B2 公开(公告)日 2018-07-04
申请人 三菱日立ツール株式会社; 发明人 馬場 誠;
摘要
权利要求

工具本体の先端部の切れ刃部が、中心軸回りに配列した複数の底刃と、前記底刃の半径方向外周側に連続する円弧状の複数のラジアス刃と、前記ラジアス刃の半径方向外周側に連続するとともに、刃溝に沿って前記工具本体の後端部側へ延設された複数の外周刃とを有するラジアスエンドミルであって、 前記底刃は半径方向に内周側底刃と外周側底刃とに区分され、 前記ラジアス刃は、前記工具本体の切削時における前記ラジアス刃の最下点が、前記外周側底刃と前記ラジアス刃との境界から前記ラジアス刃と前記外周刃との境界までの区間に位置する形状をし、 前記複数の内周側底刃の2番面は前記中心軸寄りの部分において互いにつながり、前記工具本体の先端部を端面側から見たとき、前記複数の内周側底刃のつながった2番面の領域は前記中心軸を含む領域から各内周側底刃の半径方向外周側に向けて帯状に連続し、この帯状の領域の幅は前記中心軸側から半径方向外周側に向けて次第に拡大し、 前記全内周側底刃の前記中心軸寄りの端部が、その内周側底刃の回転方向前方側に位置する前記内周側底刃の2番面とその回転方向後方側に形成されるギャッシュとの境界線と、前記中心軸より半径方向外周側の位置で交わっていることを特徴とするラジアスエンドミル。前記ラジアス刃の2番面と前記外周側底刃の2番面との境界と、前記外周側底刃との交点は、前記ラジアス刃のすくい面と前記底刃のすくい面との境界と、前記外周側底刃、もしくは前記ラジアス刃との交点とは異なる位置にあることを特徴とする請求項1に記載のラジアスエンドミル。前記ラジアス刃の2番面と前記外周側底刃の2番面との境界と、前記外周側底刃との交点は、前記ラジアス刃のすくい面と前記底刃のすくい面との境界と、前記外周側底刃との交点より半径方向外周側に位置していることを特徴とする請求項2に記載のラジアスエンドミル。前記工具本体の先端部を端面側から見たとき、前記複数の底刃は中心軸回りに工具本体の回転方向に均等に配列していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のラジアスエンドミル。前記ラジアス刃の曲率半径は刃径の1%〜30%の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のラジアスエンドミル。前記底刃は2〜8枚であり、少なくとも切れ刃を構成する基体がWC基超硬合金で形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のラジアスエンドミル。前記ラジアス刃の内、前記外周側底刃と前記ラジアス刃との境界から前記ラジアス刃と前記外周刃との境界までの区間が一定の曲率半径を有する請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のラジアスエンドミルを用い、ポケット形状を有する溝部が形成された被削材に対し、次の条件式(1)及び(2)を満たすように軸方向切込みを設定し、前記溝部の等高線加工を行うことを特徴とする切削加工方法。 式(1):ap≦R/20 ap:軸方向切込み R:ラジアス刃の曲率半径 式(2):Lw Lw:(R2−Lz2)1/2 LR:外周側底刃とラジアス刃との境界からラジアス刃の最下点までの長さ Lz:(R−ap)

说明书全文

本発明は金型の2次元加工や3次元加工等に使用されるラジアスエンドミル、及びそれを使用した切削加工方法に関する。

プラスチック成型用金型等の金型は実用上、工具鋼(焼入れ焼戻し鋼、HRC50〜55程度)で形成される。この種の金型の切削加工を高能率で行うために、底刃と外周刃とを円弧状のコーナ刃で接続したラジアスエンドミルが多用されている。ラジアスエンドミルはコーナ刃が円弧状であることから、他のエンドミル(例えばスクエアエンドミル)と対比すると、切削に関与する切れ刃が長くなり、しかも1刃当たりの最大切り取り量が小さくなるため、1刃当たりの切削抵抗が小さくなる利点を持つ。その結果、送り速度を速く設定する等により加工能率を向上せしめ、もって工具寿命を長くすることができる。

しかし、ラジアスエンドミルで切削加工を行うと、切削に寄与する切れ刃が長くなるため、びびり振動が発生し易くなる。この傾向は特に送り速度や切込みを増大すると顕著である。その結果、工具寿命の低下に加え、加工面粗さが低下するといった大きな問題が発生する。そこで、加工面粗さ(加工面品位)の向上を図るために、特許文献1、2で以下の提案がなされている。

特許文献1のラジアスエンドミルでは、図6(a)、図6(b)に示すように工具本体102の底刃に設けた円弧刃103の外周側境界部103aにバックテーパが施された外周刃111を、円弧刃103との境界部から共通の接線L1に沿って円弧状に形成させて滑らかに接続するとともに、各円弧刃103の回転方向前方側にはすくい面104を設けている。すくい面104を含む回転方向前方側は中心軸線O方向に平断面視で略V字状に切除された切屑排出溝105が形成されている。円弧刃103の回転方向後方側には正の逃げを有する第一逃げ面107と、それより逃げ角の大きい第二逃げ面108とが連続して設けられている。また各円弧刃103の他方(中心軸線O側)の境界部103bでは、直線状の第一底刃112と第二底刃113とが順次工具本体102の基部側に傾斜して設けられて中心軸線O上に設けたチゼル部114で互いに交差している。

特許文献1のラジアスエンドミル101によれば、外周刃111の半径を円弧刃103の半径よりも大きく(工具本体の半径の2〜10倍の寸法に設定)している。また円弧刃103は外周刃111と反対側の境界部にすきま角が0.5°〜5°の第一底刃112を接続し、第一底刃112に、より大きな7°〜15°のすきま角を有する第二底刃113を接続することにより、円弧刃103と外周刃111との境界部103aでの切削がスムーズに行われ、びびり振動を抑えて面粗さを良好にしている。更に、第一底刃112のすきま角によって、ワーク底面における切削負荷を低減してびびり振動を抑制し、加工面の仕上がりが良いとされている。

特許文献2のラジアスエンドミルは、刃径が6mm以下で首下長さを刃径の3倍以上に設けたロングネックラジアスエンドミルであり、図7(a)、図7(b)に示すように刃部は、複数の外周刃16、ラジアス刃17、及び底刃18を有する。底刃18はラジアス刃17に接続する外周側底刃19、及び外周側底刃19に接続され、工具中心方向に向かう内周側底刃110を有する。このロングネックラジアスエンドミルによれば、ラジアス刃17は外周側底刃19と滑らかに接続するため、内周側へわずかに伸延させて、伸延の最終点におけるラジアス刃17の接線が外周側底刃19となるように接続される。このようにラジアス刃17と外周側底刃19がつなぎ部において滑らかに接続されるよう、図7(a)に示すように特許文献2では外周側底刃19のすかし角θ1及び内周側底刃110のすかし角θ2を特定の範囲に設定している。

また図7(b)に示すように外周側底刃19の長さLcを特定の範囲で設けることにより、一刃の送り量が大きい場合にも、削り残しを確実に切削して除去することができるようにしている。更に、底刃18の外周側底刃19を内周側底刃10に対して所定の角度θ3で回転方向後方へ傾斜させることにより、ロングネックラジアスエンドミルにおけるびびり振動を抑制し、加工面粗さの低下を防止している。

特開2006−212744号公報

特許第5088678号公報

特許文献1のラジアスエンドミルは切れ刃の数が2枚の例を示しているが、工具本体の先端部を端面側から見たとき、底刃112、113の逃げ面(2番面)の幅が半径方向に一様であるため(図6(b)参照)、底刃112、113が被削材を切削するときに受ける抵抗(曲げモーメント)に対し、相対的に半径方向外周側が弱点になり易い。切削時の曲げモーメントは中心軸Oからの距離に応じて増大するが、底刃逃げ面の幅が一様な場合、曲げモーメントに抵抗する回転方向(周方向)の断面積も半径方向に一様であるため、曲げ応度が半径方向外周寄り程、大きくなり、相対的に破損し易くなる。また底刃逃げ面の幅が一様な場合、切れ刃の数が多くなる程、隣接する底刃間に形成されるギャッシュの回転方向の幅を十分に確保することが難しくなる。

特許文献2のロングネックラジアスエンドミルでは、各内周側底刃の逃げ面が工具中心部でつながっていないため(図7(b)参照)、昨今のプラスチック成型用金型のような高精度(サブミクロン以下)の仕上げ面を要求される加工分野における非常に過酷な要求を十分に満たすことはできず、更なる改良が必要となっている。

本発明は上記背景を踏まえ、底刃の切削時の破損に対する安全性が高く、高能率の切削加工を行うことが可能で、しかも高精度の仕上げ面粗さを得ることができるラジアスエンドミル及び切削加工方法を提供することを目的とする。

上記目的を達成するための本発明のラジアスエンドミルは、工具本体の先端部の切れ刃部が、中心軸回りに配列した複数の底刃と、前記底刃の半径方向外周側に連続する円弧状の複数のラジアス刃と、前記ラジアス刃の半径方向外周側に連続するとともに、刃溝に沿って前記工具本体の後端部側へ延設された複数の外周刃とを有するラジアスエンドミルであって、 前記底刃が半径方向に内周側底刃と外周側底刃とに区分され、 前記ラジアス刃が、前記工具本体の切削時における前記ラジアス刃の最下点が、前記外周側底刃と前記ラジアス刃との境界から前記ラジアス刃と前記外周刃との境界までの区間に位置する形状をし、 前記複数の内周側底刃の2番面は前記中心軸寄りの部分において互いにつながり、前記工具本体の先端部を端面側から見たとき、前記複数の内周側底刃のつながった2番面の領域は前記中心軸を含む領域から各内周側底刃の半径方向外周側に向けて帯状に連続し、この帯状の領域の幅は前記中心軸側から半径方向外周側に向けて次第に拡大し、 前記全内周側底刃の前記中心軸寄りの端部が、その内周側底刃の回転方向前方側に位置する前記内周側底刃の2番面とその回転方向後方側に形成されるギャッシュとの境界線と、前記中心軸より半径方向外周側の位置で交わっていることを特徴とする。

「底刃が半径方向に内周側底刃と外周側底刃とに区分されること」は、底刃の回転方向後方側に形成される逃げ面である底刃の2番面を半径方向に内周側の2番面と外周側の2番面に区分する意味がある。但し、内周側底刃と外周側底刃との境界は必ずしも折れ線のように工具本体(ラジアスエンドミル)の表面側に凸の角度を持った点である必要はなく、内周側2番面と外周側2番面の境界も凸の稜線のように明確な境界線として表れるとも限らない。

底刃が半径方向に内周側底刃と外周側底刃とに区分されることはまた、切れ刃部にラジアス刃と底刃を形成する砥石による研削作業が関係する。複数の内周側底刃の2番面が互いにつながり、連続的な面をなすように切れ刃を研削する際に、請求項1のように回転方向に隣接する底刃間の距離が中心軸寄り程、小さくなるように2番面を形成する場合、中心軸寄りの内周側底刃の研削時に、ラジアス刃と外周側底刃の研削時に使用される砥石をそのまま使用することが難しい。この関係で、中心軸寄りの内周側底刃の研削時には、隣接する底刃との干渉を生じない形状、もしくは大きさの砥石を使用する必要が生じ、その影響で、底刃が半径方向に内周側底刃と外周側底刃とに区分されることになる。

すなわち、底刃が内周側底刃と外周側底刃とに区分されることは、複数の内周側底刃の2番面が中心軸寄りの部分においてつながった面を形成した上で、隣接する底刃間の距離が中心軸寄り程、小さくなる(帯状の領域の幅が中心軸側から半径方向外周側に向けて次第に拡大する)ように2番面を形成する目的を達成することの結果として生じる。従って底刃を半径方向に区分することは複数の2番面を連続的な面に形成し、帯状の領域の幅を半径方向外周側になる程、拡大することの意味がある。

「複数の内周側底刃の2番面が中心軸寄り部分において互いにつながり」とは、複数の内周側底刃の2番面(逃げ面)が分離した面をなさないことを言う。このことは具体的には図1、図3−(a)に示すように全内周側底刃4の中心軸O寄りの端部が、その内周側底刃4の回転方向前方側に位置する内周側底刃4の2番面40とその回転方向後方側に形成されるギャッシュ8(ギャッシュ壁面80)との境界線と、中心軸Oより半径方向外周側の位置で交わることを言う。つながった複数の2番面40の面自体は例えば連続的な面、または多面体のような面をなす。「連続的な面」は例えば曲率が一様であるか、曲率が連続的に変化するような曲面、または曲率が僅かずつ変化するような面であり、面は主に曲面であるが、平面を含むこともある。多面体は曲率が変化するような面を含むが、砥石による2番面40の研削加工上、生じる凹凸面も含む。

複数の内周側底刃4の2番面40が互いにつながることで、各内周側底刃4に生じる切削時の振動が全内周側底刃4に分散し、伝播し易くなり、振動が内周側底刃4毎に生じにくくなる。またつながることで、各切れ刃2の剛性が均一化され、切削時に各切れ刃2に生じる抵抗が等しくなるため、切削中に工具本体にびびり振動が起こりにくくなり、被削材に高品質な加工面を出し易くなる。

「複数の内周側底刃の2番面が中心軸寄り部分においてつながること」は言い換えれば、図1に示すように工具本体30の先端部を端面側から見たとき、複数の内周側底刃4のつながった2番面40の領域が中心軸Oを含む領域から各内周側底刃4の半径方向外周側に向けて帯状に連続していることである。

この帯状の領域の幅が中心軸O側から半径方向外周側に向けて次第に拡大していることで、各内周側底刃4の2番面40を含み、回転方向後方側の刃溝9までの工具本体30の部分が切削時に受ける抵抗による曲げモーメントを半径方向のいずれの部分においても均等に生じさせることが可能になる。

内周側底刃4が被削材Wを切削するとき、内周側底刃4の半径方向の各部には回転中心である中心軸Oからの距離に応じた曲げモーメントが作用し、曲げモーメントに対しては内周側底刃4の2番面40を含み、回転方向後方側の刃溝9までの工具本体30の部分が抵抗する。ここで、2番面40が中心軸O側から半径方向外周側に向けて次第に拡大する形状をしていることで、切削時の曲げモーメントに抵抗する部分の断面積が半径方向中心軸側から外周側へ向けて次第に増加する。この結果、内周側底刃4の半径方向中心軸O寄りの部分に生じる曲げ応力度(曲げモーメント/断面係数)と半径方向外周寄りの部分に生じる曲げ応力度が均等になり易くなる。曲げモーメントに対する抵抗力が半径方向の各部において同等になることで、内周側底刃4の半径方向のいずれかの部分が相対的に弱点になりにくくなり、内周側底刃4の破損に対する安全性が向上する。

またつながった2番面40の領域の内、中心部分から延びる帯状の領域の幅が中心軸O側から半径方向外周側に向けて次第に拡大していることで、切れ刃の枚数が8枚等に多くなっても、隣接する底刃3、3間に形成されるギャッシュ8の回転方向の幅を十分に確保することが可能になる。

図5に示すように工具本体30(ラジアスエンドミル1)が切削状態にあるときのラジアス刃6の最下点Pbは外周側底刃5とラジアス刃6との境界(接続部)P2からラジアス刃6と外周刃7との境界(接続部)P4までの区間に位置している。ラジアス刃6の最下点Pbがこの状態にあることで、工具本体30の中心軸Oが被削材Wの厚さ方向に対して傾斜した状態でラジアス刃6が被削材Wを切削することになっても、切削時に外周側底刃5とラジアス刃6の境界P2を被削材Wに接触させることを回避できるため、被削材Wに良好な加工面を形成することが可能になる。「工具本体30が切削状態にあるときの(工具本体30の切削時における)ラジアス刃6の最下点Pb」は、先端部を下に向け、工具本体30を側面から見たときのラジアス刃6の最下点Pbである。「工具本体30の先端部を下に向ける」とは、工具本体30の中心軸Oを被削材の厚さ方向(高さ方向)に向けることを意味する。

工具本体30の中心軸Oが被削材Wの厚さ方向に対して傾斜した状態でラジアス刃6が被削材Wを切削する最中に、中心軸Oの被削材Wの厚さ方向に対する角度が変化することがある場合には、ラジアス刃6の外周側底刃5との境界P2から外周刃7との境界P4までの区間が一定の曲率半径Rを有することが適切である。

ラジアス刃6の曲率半径Rが一定であれば、図5に示す境界P2から境界P4までの区間の曲率中心ORからラジアス刃6のいずれの点までの距離が一定になるため、工具本体30の中心軸Oの傾斜角度が変化し、ラジアス刃6の切削部分がラジアス刃6の周方向に変化しても、切れ刃2上の不連続な点となり得る境界P2を被削材Wに接触させることなく、常に曲率中心ORから一定距離の部分(区間)で切削する状態が得られる。切削に関与する切れ刃2の区間に不連続な点が存在しないことで、不連続点による切削傷等を被削材Wに与えることが回避されるため、加工能率向上の目的で切削速度を増大させた場合にも、工具本体30のびびり振動が抑制され、被削材Wに高精度の加工面粗さを得ることができる。

一方、図3(a)に示すようにラジアス刃6の2番面60と外周側底刃5の2番面50との境界(境界線)SRと外周側底刃5との交点U(P2)が、ラジアス刃6のすくい面62と底刃3のすくい面31との境界(境界線)Tと外周側底刃5、もしくはラジアス刃6との交点Vとは異なる位置にある場合(請求項2)には、切削時の抵抗によるラジアスエンドミル(工具本体)の破損に対する安全性が高まる利点がある。交点U(P2)は外周側底刃5とラジアス刃6との境界でもある。

例えば図3−(a)において外周側底刃5とラジアス刃6との交点Uが連続した稜線(曲線)上の点ではなく、不連続な、表面側に凸になった点である場合に、図3−(c)に示すように交点Vが交点Uに一致している場合は、切削時の抵抗が交点U(V)に集中し易くなるため、交点U付近が破損し易くなる傾向があり、ラジアスエンドミル1による切削加工が不安定になる可能性がある。

これに対し、図3−(a)、(b)に示すように交点Uと交点Vが半径方向にずれ、異なる位置にある場合には、切削時の抵抗が交点Uと交点Vに分散して作用しようとするため、交点U付近と交点V付近の破損の可能性が低下する結果、ラジアスエンドミル1による切削加工の安定性が向上する。交点Uは外周側底刃5とラジアス刃6との境界であるから、「交点Uと交点Vが半径方向にずれる」とは、両すくい面62、31間の境界Tが切れ刃2に交わる点である交点Vが外周側底刃5上に位置する場合(図3)と、ラジアス刃6上に位置する場合があることを言う。図3−(a)は交点Vが交点U(P2)に近い場合、図3−(b)は交点Uが内周側底刃4と外周側底刃5との境界P1に近い場合の例を示す。

特に図3−(a)、(b)に示すようにラジアス刃6の2番面60と外周側底刃5の2番面50との境界SRと外周側底刃5との交点U(P2)が、ラジアス刃6のすくい面62と底刃3のすくい面31との境界Tと外周側底刃5との交点Vより半径方向外周側に位置している場合(請求項3)には、交点Uと交点Vとが一致している場合との対比ではラジアス刃6のすくい面62の面積を大きく確保することができるため、切屑を一定方向に流れ易くすることが可能になる。結果的に被削材への切屑の干渉の影響が小さくなるため、被削材Wの加工面精度を向上させることが可能になる。ラジアス刃6のすくい面62の面積は図3−(b)のように交点Vを境界P1に近付ける程、拡大するため、切屑の排出性が向上する。

また工具本体30の先端部を端面側から見たとき、複数の底刃3が中心軸O回りに工具本体30の回転方向(周方向)に均等に配列している場合(請求項4)には、工具本体30のびびり振動が抑制され、被削材の加工面品位が良好になる効果が得られる。複数の底刃3が中心軸O回りに均等に配列していない場合には、各底刃3の切削量や切削深さに差が生じ得、各底刃3が受ける抵抗も相違し得るため、びびり振動が起こり易く、被削材の加工面品位が落ちる傾向もあるが、均等に配列している場合には各底刃3の切削量等に差が生じにくいことによる。

本発明のラジアスエンドミル1においては、ラジアス刃6の曲率半径Rが刃径Dの1%〜30%の範囲にあることが好ましい(請求項5)。曲率半径Rが刃径Dの1%未満では刃先強度の不足によりチッピングが発生し易く、刃径Dの30%超では底刃3の形成が困難となることによる。

またラジアスエンドミル1の実用性の面からは、底刃3(切れ刃2)は2〜8枚(好ましくは3〜8枚)であり、少なくとも切れ刃2を構成する基体がWC基超硬合金で形成されていることが好ましい(請求項6)。更に加工精度の面からは、工具本体30が一体のWC基超硬合金製基体からなるソリッドエンドミルであることが好ましい。底刃3が3枚以上が好ましい理由は、つながった複数の内周側底刃4の2番面40が工具本体30の回転方向に均等に分散した形状になり、工具本体30の切削時の安定性が増すことによる。結果的に工具本体30の送り速度を上げることができることに加え、2枚刃より刃数が多くなることで、高能率に加工できることになる。

請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のラジアスエンドミルは、ラジアス刃6の内、外周側底刃5とラジアス刃6との境界P2からラジアス刃6と外周刃7との境界P4までの区間が一定の曲率半径を有する場合に、ポケット形状を有する溝部が形成された被削材に対し、軸方向切込みを設定し、溝部の等高線加工を行う切削加工に適する。その際、次の条件式(1)及び(2)を満たすことが望ましい(請求項7)。 式(1):ap≦R/20 ap:軸方向切込み R:ラジアス刃の曲率半径 式(2):Lw

Lw:(R2−Lz2)1/2 LR:外周側底刃とラジアス刃との境界から ラジアス刃の最下点までの長さ Lz:(R−ap)

上記の2式を満たすことで、図5に示すようにラジアス刃6に一定の曲率を持たせた場合に、ラジアス刃6の内の円弧刃のみを被削材Wに接触させ、切れ刃2上の不連続点となり得る前記した境界P2(交点U)の被削材Wへの接触等による傷を発生させることなく、被削材Wに高品質な加工面を得ることができることが実験的に確認されている。ラジアス刃6の外周側底刃5との境界P2から外周刃7との境界P4までの区間が一定の曲率半径Rを有することは、前記のように工具本体30の中心軸Oが被削材Wの厚さ方向に対して傾斜した状態でラジアス刃6が被削材Wを切削する最中に、中心軸Oの被削材Wの厚さ方向に対する角度が変化する場合にも、境界P2を被削材Wに接触させず、常に曲率半径Rが一定の部分で切削する状態が得られる意味がある。

上記式(1)においては特にap≦R/20で、且つR/50≦ap≦R/20であることが好ましく、R/30≦ap≦R/20であることが更に好ましい。apが式(1)の特定範囲を外れる程、加工面粗さが悪化することによる。上記式(2)のLw

本発明のラジアスエンドミルによれば、すべての内周側底刃の逃げ面が工具中心側で互いにつながり、つながった2番面の領域が中心軸を含む領域から各内周側底刃の半径方向外周側に向けて帯状に連続し、帯状の領域の幅が半径方向外周側に向けて次第に拡大しているため、各内周側底刃の2番面を含む部分が切削時に受ける抵抗による曲げモーメントを半径方向のいずれの部分においても均等に生じさせることができる。この結果、内周側底刃の半径方向のいずれかの部分が相対的に弱点になりにくくなるため、内周側底刃の破損に対する安全性が向上する。

また各内周側底刃の2番面が中心軸寄りの部分において互いにつながることで、各内周側底刃に生じる切削時の振動が全内周側底刃に分散し易く、振動が内周側底刃毎に生じにくくなるため、切削中に工具本体にびびり振動が起こりにくくなり、被削材に高品質な加工面を出し易くなる。結果的にサブミクロン以下の仕上げ面粗さを得ることができるため、プラスチック成型用金型のように極めて高精度の仕上げ面粗さ(例えば鏡面仕上げ)が要求されるワークの切削加工に好適である。

加えて先端部を下に向け、工具本体を側面から見たときのラジアス刃の最下点が、外周側底刃とラジアス刃との境界からラジアス刃と外周刃との境界までの区間に位置していることで、切削時に外周側底刃とラジアス刃の境界を被削材に接触させることがないため、被削材に良好な加工面を形成することが可能になる。

本発明の切削加工方法によれば、ラジアス刃に一定の曲率を持たせた場合に、ラジアス刃の円弧刃のみを被削材に接触させたまま、等高線加工によりポケット部の仕上げ加工を行うことができるため、極めて高精度の仕上げ面粗さが得られる。同時に、ラジアス刃先端部の切削抵抗が低減されるため、高速で切削加工を行っても、工具寿命を長くすることができる。

工具本体の切れ刃部を先端側から見たときのラジアスエンドミルの製作例を示した正面図である。

図1のラジアスエンドミルをA方向に見たときの側面図である。

図1のラジアスエンドミルの切れ刃部の端面を先端側から見たときの斜視図である。

ラジアス刃のすくい面と底刃のすくい面との境界と外周側底刃との交点Vが、内

周側底刃と外周側底刃との境界P1に近い場合の切れ刃とすくい面の様子を示した斜視図である。

ラジアス刃のすくい面と底刃のすくい面との境界と外周側底刃との交点Vが、外周側底刃とラジアス刃との境界P2(交点U)に一致している場合の切れ刃とすくい面の様子を示した斜視図である。

図1のラジアスエンドミルの要部を模式的に示す側面図である。

本発明の切削加工方法を説明するための、図4のB部の拡大図である。

特許文献1のラジアスエンドミルの先端部を示した側面図である。

特許文献1のラジアスエンドミルの底面図である。

特許文献2のラジアスエンドミルの刃部を示した側面図である。

特許文献2のラジアスエンドミルの底面図である。

以下、本発明のラジアスエンドミル1を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明のラジアスエンドミル1の切れ刃部20を工具本体30の先端側から見た様子を、図2は図1のラジアスエンドミル1をA方向に見た様子を示す。図1、2に示すようにラジアスエンドミル1は工具本体30の先端部を端面側から見たとき、工具本体30の中心軸O回りに配列した複数の底刃3と、底刃3の半径方向外周側に連続(接続)した円弧状の複数のラジアス刃6と、ラジアス刃6の半径方向外周側に連続(接続)するとともに、刃溝9に沿って工具本体30の後端部(シャンク部(図示省略))側へ延設された複数の外周刃7とを有し、例えば工具本体30の全体が一体的に形成されたソリッドタイプのラジアスエンドミルを構成している。図1中、Qは工具の回転方向を示す。図面では4枚刃のラジアスエンドミル1の例を示しているが、切れ刃2の数は4枚には限られない。

切れ刃部20は複数枚の切れ刃2から、図面では4枚の切れ刃2a〜2dから構成される。各切れ刃2a〜2dは中心軸Oから半径方向に距離を置いた位置を起点とし、工具本体30の回転方向に互いに距離を置いた4枚の底刃3a〜3dと、各底刃3a〜3dの半径方向外周側に連続(接続)する4枚のラジアス刃6a〜6dと、各ラジアス刃6a〜6dの半径方向外周側に連続(接続)する4枚の外周刃7a〜7d(図2には外周刃7a、7c、7dのみが表れる)から構成される。各外周刃7a〜7dは中心軸Oに対して所定角度傾斜しながら、工具本体30の先端部の外周側から工具本体30の後端部側へ延設され、工具本体30の先端部の外周側コーナ付近では4枚のラジアス刃6a〜6dに連続(接続)する。

各外周刃7a〜7dは右刃・右ねじれ刃であり、ねじれ角は例えば15°〜60°の範囲に設定される。図示する例ではラジアスエンドミル1が4枚刃であるから、4枚刃より多い場合との対比では、各切れ刃2a〜2dとその回転方向後方側に形成される2番面(逃げ面)を含む刃部の断面積が大きいことで、高精度の仕上げ面粗さを得ることができる利点がある。

各底刃3a〜3dは中心軸O近くまで、図2に示すように中心軸Oに向かうに従い、工具本体30の後端側へ傾斜しながら、等しい長さで形成されている。工具本体30を端面側から見たとき、各底刃3a〜3dは半径方向に中心軸O寄りの内周側底刃4a〜4dと外周寄りの外周側底刃5a〜5dとに区分され、内周側底刃4a〜4dと外周側底刃5a〜5dとの境界P1は内周側底刃4a〜4dと外周側底刃5a〜5dの回転方向後方側に形成される逃げ面としての内周側底刃の2番面40と外周側底刃の2番面50を半径方向に区画する境界(境界線)Sbの回転方向前方側の端部になる。境界P1と境界Sbは工具本体30の表面側に凸の点、または凸の稜線として明確に表れる場合と表れない場合がある。

各底刃3a〜3dは中心軸Oまわりの円周方向(回転方向)に等しい中心角90°をなすように等間隔に配置された等分割タイプの底刃を構成している。かかる等分割配置により、後述する図5に示すように各切れ刃2a〜2dが被削材(ワーク)Wに接触する周期が一定になり、送り速度や切り込みを広範囲に増加させても切削抵抗が過大とならないため、びびり振動を抑制することができる。

図1に示すように各内周側底刃4a〜4dの各2番面40(内周側底刃4の逃げ面)は中心軸O寄りの部分において互いにつながり、連続的な、あるいは連続した面をなしており、4枚刃の場合、これら4枚の2番面40は集合して略十字状に形成されている。かかる形状により、従来のラジアスエンドミルに比べて各刃にかかる切削抵抗が均一になるため、高能率加工を行ってもびびり振動が抑制され、高精度の加工面粗さを得ることができる。

各内周側底刃4の2番面40の回転方向後方側には、回転方向に隣接する切れ刃2、2間のギャッシュ8を構成するギャッシュ壁面80が連続(隣接)し、このギャッシュ壁面80とその回転方向前方側の2番面40との間には凸の稜線が表れる。この凸の稜線の中心軸O側の端部は中心軸Oより半径方向外側の位置においてその回転方向後方側の内周側底刃4と交わり、この交わった点が前記した各切れ刃2a〜2dの中心軸O寄りの起点となる。

この結果、複数の内周側底刃4の2番面40が集合した形状は中心軸Oを含む領域から各内周側底刃4の半径方向外周側に向けて帯状に連続した凹多角形状の形状をし、4枚刃の場合に略十字状になる。「中心軸Oを含む領域」はギャッシュ壁面80とその回転方向前方側の2番面40との間の凸の稜線と回転方向後方側の内周側底刃4との交点(中心軸O寄りの起点)を含む領域であり、多角形状、あるいは円形状の領域と言える。

中心軸Oを含む領域から各内周側底刃4の半径方向外周側に向けて連続した帯状の領域の幅は中心軸O側から半径方向外周側に向けて次第に拡大し、内周側底刃4が被削材Wを切削するときに中心軸O回りに受ける曲げモーメントに対する抵抗力(曲げ応力度)が半径方向の全長に亘って均等(一様)になるようになっている。

また図4、図5に示すように工具本体30(ラジアスエンドミル1)が切削状態にあるときのラジアス刃6の最下点Pbが外周側底刃5とラジアス刃6との境界(接続部)P2からラジアス刃6と外周刃7との境界(接続部)P4までの区間に位置するように、最下点Pbと境界P2の位置が調整された形状にラジアス刃6が形成される。工具本体30の切削状態は工具本体30の先端部を下に向け、工具本体30を側面から見たときの様子でもある。

ここで、切削状態にある工具本体30の中心軸Oの傾斜角度が変化し、ラジアス刃6の切削部分がラジアス刃6の周方向に変化しても、常に曲率中心ORから一定距離の部分で切削する状態を得る上では、図5に示す境界P2から境界P4までの区間の曲率半径Rが一定になる形状にラジアス刃6が形成される。この場合、境界P2から境界P4までの区間においては曲率中心ORからラジアス刃6までの距離が一定になるため、境界P2から境界P4までの区間にラジアス刃6の最下点Pbが位置していることと併せ、境界P2を被削材Wに接触させることなく、ラジアス刃6が被削材Wを切削し、被削材Wに良好な加工面を形成することが可能になっている。

切れ刃2(2a〜2d)を構成する内周側底刃4(4a〜4d)及び外周側底刃5(5a〜5d)とラジアス刃6(6a〜6d)の回転方向後方側には逃げ面が形成される。内周側底刃4の回転方向後方側に連続(隣接)する逃げ面は前記した内周側底刃4の2番面40であり、外周側底刃5の回転方向後方側には外周側底刃5の2番面50が連続し、ラジアス刃6の回転方向後方側にはラジアス刃6の2番面60が連続する。内周側底刃4の2番面40と外周側底刃5の2番面50は互いに異なる面をなす場合と、曲率が連続的に変化するような曲面を介して連続した面をなす場合がある。同様に外周側底刃5の2番面50とラジアス刃6の2番面60も互いに異なる面をなす場合と、曲面を介して連続した面をなす場合がある。

図1では便宜的に内周側底刃4の2番面40と外周側底刃5の2番面50を区画する境界線としてSbを、外周側底刃5の2番面50とラジアス刃6の2番面60を区画する境界線としてSRを記入しているが、いずれの境界線Sb、SRも明確に表れる場合と明確に表れない場合がある。

外周側底刃5の2番面50とラジアス刃6の2番面60の回転方向後方側には、それぞれの2番面50、60の逃げ角より大きい逃げ角をなし、互いに異なる面をなす外周側底刃の3番面51とラジアス刃6の3番面61が形成される。外周側底刃の3番面51とラジアス刃6の3番面61は半径方向に隣接する。

半径方向に連続する各底刃3(3a〜3d)及び各ラジアス刃6(6a〜6d)の回転方向前方側と、内周側底刃4の2番面40から、外周側底刃5の3番面51を経たラジアス刃6の3番面61までの区間との間には、切屑を排出し易くするための前記したギャッシュ8が形成されている。ギャッシュ8は図1〜図3に示すように底刃3のすくい面31及びラジアス刃のすくい面62と、前記したギャッシュ壁面80と、すくい面62の回転方向前方側に隣接するギャッシュ底面81から構成される。

各底刃3(3a〜3d)の回転方向前方側にはすくい面31(31a〜31d)が形成され(図2では31aのみが見える)、このすくい面31は図2、図3−(a)に示すように境界(境界線)Tを介してラジアス刃6のすくい面62に連続(隣接、または連接)している。境界Tは主に凸の稜線をなす。

図3−(a)、(b)に示すようにラジアス刃6の2番面60と外周側底刃5の2番面50との境界(境界線)SRと外周側底刃5との交点U(ラジアス刃6と外周側底刃5との境界P2)は、ラジアス刃6のすくい面62と底刃3のすくい面31aとの境界(境界線)Tと外周側底刃5、もしくはラジアス刃6との交点Vとは異なる位置にある。交点Uと交点Vが一致している場合(図3−(c))には、底刃3からラジアス刃6までの区間において被削材Wを切削するときの抵抗(曲げモーメント)が交点U(交点V)に集中的に作用するため、交点U(交点V)が破損する可能性がある。

これに対し、交点Uと交点Vが異なる位置にある場合には、底刃3からラジアス刃6までの区間において被削材Wを切削するときの抵抗が交点Uと交点Vに分散して作用するため、交点Uと交点Vの破損の可能性が低下し、底刃3からラジアス刃6までの区間が安定して被削材Wを切削する状態が得られる。図3−(a)、(b)では交点Vが交点Uより半径方向中心寄りに位置し、交点Vが外周側底刃5上にあるが、切削時の抵抗を交点Uと交点Vに分散させる上では、交点Vが交点Uより半径方向外周寄りに位置し、ラジアス刃6上に位置してもよい。

只、図3−(a)、(b)に示すように交点Vが交点Uより半径方向中心寄りに位置している場合には、両交点V、Uが一致している場合よりラジアス刃6のすくい面62の面積(表面積)を大きく確保できるため、すくい面62に沿った切屑の流れを生じさせ易くなる利点がある。結果として、切屑が一定方向に流れ易くなり、被削材への切屑の干渉が少なくなるため、被削材Wの加工面精度を向上させることができる。図3−(a)では中心軸Oに関して左上(切れ刃2aの上側)部分に交点V、Uを記入しているが、交点Vが交点Uより半径方向中心寄りに位置している点は他の切れ刃2b〜2dにおいても同様である。図3−(b)は特に交点Vを中心軸O寄りに位置させ、ラジアス刃6のすくい面62の面積を(a)の例より拡大させた場合の例を示す。

各切れ刃2(2a〜2d)の内、図4、図5に示すように立面で見たときに直線状に形成された底刃3は前記のように境界(接続部)P1を介して内周側底刃4(O−P1間)と外周側底刃5(P1−P2間)とに区分(区画)されている。図4では内周側底刃4が外周側底刃5よりも長く形成されているが、図3−(a)に示すように外周側底刃5が内周側底刃4よりも長く形成されることもある。ラジアス刃6の区間である、外周側底刃5とラジアス刃6との境界(接続部)P2からラジアス刃6と外周刃7との境界(接続部)P4までの区間は一定の曲率半径R(曲率中心:OR)を有する円弧状に形成されている。

ラジアス刃6の外周側底刃5との境界P2から外周刃7との境界P4までの区間が一定の曲率半径Rを有することで、前記のようにラジアス刃6が被削材Wを切削中に、中心軸Oの被削材Wの厚さ方向に対する角度の変化に拘わらず、ラジアス刃6と外周側底刃5との間で曲率が不連続となる境界P2を被削材Wに接触させず、常にラジアス刃6の一定曲率の部分で被削材Wを切削する状態が得られる。

円弧状のラジアス刃6の曲率半径Rは前記のように刃径Dの1%〜30%であることが好ましく、5%〜20%であることが更に好ましい。曲率半径Rが刃径Dの1%未満では刃先強度の不足によりチッピングが発生し易くなり、刃径Dの30%超では底刃3の形成が困難となるため、本発明の効果を奏することができない。なお、刃径Dは実用上、0.5〜20mmの範囲にあることが適切であり、好ましい範囲は1〜16mmである。

上述の通り、各内周側底刃4の2番面40はラジアスエンドミル1の中心部で互いにつながり、連続した面をなしているため、中心軸O付近の工具剛性が高く、全ての切れ刃2(2a〜2d)にかかる切削抵抗を均一にすることができる。その結果、切削時の工具本体30の振動が抑えられ、被削材Wの面精度を向上させることができる。

その上、各外周側底刃5(5a〜5d)及び各ラジアス刃6(6a〜6d)が逃げ角の異なる複数の逃げ面(2番面と3番面)を有することで、各底刃3(内周側底刃4及び外周側底刃5)と各ラジアス刃6とが滑らかに接続される(隣接する)ため、各内周側底刃4及び外周側底刃5の勾配が比較的緩やかになっている。これにより、例えば金型のポケット加工を行う場合、図5に示すようにラジアス刃6の一部(PaからPcまでの円弧)のみが被削材(ワークW)に接するように軸方向切込みapを設定することにより、加工面を鏡面仕上げといった高精度に仕上げることが可能になる。

図1に示す本発明のラジアスエンドミル1を使用して、金型等に形成されたポケット状の溝部の仕上げ加工を行う場合は、図5に示す等高線加工(浅切込み且つ高速送り)を行うことにより、高精度の仕上面を得ることができる。この等高線加工においては、軸方向切込みapを次の条件式(1)及び(2)を満足するように設定することが必要になる。 式(1):ap≦R/20 但し、ap:軸方向切込み R:ラジアス刃の曲率半径である。 式(2):Lw

但し、Lw:(R2−Lz2)1/2 LR:ラジアス刃と外周側底刃との境界P2から ラジアス刃の最下点Pbまでの長さ Lz:(R−ap)である。

上記のように軸方向切込みapを設定して等高線加工を行うことにより、一定曲率を持つラジアス刃6の区間(P2〜P4)の内、一部の区間(Pa〜Pc)のみが被削材Wに接触し、ラジアス刃6と外周側底刃5との境界P2は被削材Wに接触しないため、被削材Wに高精度の仕上げ面を得ることができる。

本発明のラジアスエンドミル1の切れ刃部20を中心軸Oの方向に見たとき、図1に示すように中心軸Oに直交する端面上、複数の切れ刃2と逃げ面が中心軸Oに関して点対称な状態で、回転方向に等間隔に配列しているため、各切れ刃2を含む部分の切削抵抗に基づく振動に差が生じにくい。この関係で、互いに直交する切れ刃2を含む部分間に、共振によるびびりが発生し易くなる可能性があるが、上記のように切削抵抗が増大しないような切削条件を設定することで、共振によるびびりの発生を回避することができ、より高精度の仕上げ面を得ることが可能になる。

(実験例1) 被削材(試料)として、直方体状の鋼材(工具鋼(焼入れ焼戻し鋼)、HRC52)を準備し、長さ50mm、幅20mm、深さ6mm(隅部はすべてR=3mm)のポケット加工を行った。まず、日立ツール株式会社製のラジアスエンドミル(商品名:ETM4040−10−TH、4枚刃、刃径4mm、ラジアス刃の曲率半径1mm、刃長2mm、首下長12mm、首径3.8mm、全長60mm、シャンク径6mm、切れ刃にTiSiN皮膜が被覆されている。)を使用して、下記の切削条件で粗加工を行った。

<粗加工条件>工具回転数:9000min−1送り速度:1100mm/minap(軸方向切込):0.2mmae(径方向切込み):1.5mmクーラント:水溶性切削液

次いで図1に示す本発明のラジアスエンドミル1(Co含有量が11質量%のWC基超硬合金製基体を使用、4枚刃、刃径4mm、ラジアス刃の曲率半径1mm、刃長4mm、首下長さ6mm、首径3.8mm、全長60mm、シャンク径4mm、切れ刃に平均膜厚2μmのTiSiN皮膜を有する。)を用いて、下記の切削条件で仕上げ加工を行った。

<仕上げ加工条件>工具回転数:22000min−1送り速度:1200mm/minap(軸方向切込み):0.01mmae(径方向切込み):0.05mmクーラント:水溶性切削液

得られた仕上げ加工後の試料のポケット部の表面粗さを測定した結果、送り方向はRa:0.03μm、Rz=0.25μmであり、工具送りに直交する方向はRa:0.02μm、Rz=0.13μmであって、底面と隅部との段差は認められず極めて良好な仕上げ面が得られることが確認された。

(実験例2) 日立ツール株式会社製のラジアスエンドミル(商品名:EPP4040−10−TH、4枚刃、刃径4mm、コーナ半径1mm、刃長4mm、首下長さ6mm、首径3.8mm、全長60mm、シャンク径4mm、実験例1の本発明のラジアスエンドミル1と同じWC基超硬合金製基体及び同じTiSiN皮膜を有する。)を用いて仕上げ加工を行った以外は、実験例1と同様の条件でポケット加工を行った。

得られた仕上げ加工後の試料のポケット部の表面粗さを測定した結果、送り方向はRa:0.05μm、Rz=0.4μmであり、工具送りに直交する方向はRa:0.04μm、Rz=0.32μmであって、底面と隅部との段差は認められず良好な仕上げ面が得られることが確認された。

本発明のラジアスエンドミル(実験例1)によれば、従来品(実験例2)と比較して高精度の仕上面が得られるため、金型(プラスチック用金型)に好適である。

図1では、各底刃3a〜3dが中心軸Oまわりの円周方向(回転方向)に等しい中心角90°間隔で配置された例を示しているが、隣接する底刃3、3間のなす角度の大きさは図1の例には限定されず、複数の底刃3が必ずしも等間隔に配列するとも限らない。例えば各底刃3a〜3dが、中心軸Oまわりの円周方向に中心角が89°〜91°の範囲内で配置された場合も本発明の効果を奏することができる。また前記範囲外の不等分割の底刃の配置であっても切削条件を適宜選択すれば、本発明の効果を奏することは期待し得る。

図面では切れ刃2が4枚の例を示しているが、本発明のラジアスエンドミル1においては、刃数が8枚を超えると切削抵抗が増大し、加工面品位の低下といった不具合が発生する関係で、切れ刃2の刃数は2〜8枚が好ましく、工具本体30の安定面からは3〜8枚がより好ましい。

なお、本発明のラジアスエンドミル1はソリッドタイプでなくてもよい。例えばラジアスエンドミル1の一部である切れ刃部20と、別体のシャンク部とを機械的な締結手段又は拡散接合等により一体化して構成したラジアスエンドミルも本発明の技術的範囲に含まれる。

1……ラジアスエンドミル、 2、2a、2b、2c、2d……切れ刃、 3、3a、3b、3c、3d……底刃、 4、4a、4b、4c、4d……内周側底刃、 5、5a、5b、5c、5d……外周側底刃、 6、6a、6b、6c、6d……ラジアス刃、 7、7a、7b、7c、7d……外周刃、 8……ギャッシュ、 9……刃溝、 10、11……接続部、 20……切れ刃部 30……工具本体 31、31a、31b、31d……底刃のすくい面、 40……内周側底刃の2番面、 50……外周側底刃の2番面、 51……外周側底刃の3番面、 60……ラジアス刃の2番面、 61……ラジアス刃の3番面、 62……ラジアス刃のすくい面、 70……外周刃の2番面、 72……外周刃のすくい面、 80……ギャッシュ壁面、 81……ギャッシュ底面、 D……刃径、 O……中心軸、 OR……ラジアス刃の円弧の中心位置、 P1……内周側底刃と外周側底刃との境界(接続部)、 P2……外周側底刃とラジアス刃との境界(接続部)、 P3……B部を説明するための表示点、 P4……ラジアス刃と外周刃との境界(接続部)、 Pa〜Pc……被削材に接するラジアス刃の円弧 Pb……ラジアス刃の最下点、 Sb……外周側底刃の2番面と内周側底刃の2番面との境界、 SR……ラジアス刃の2番面と外周側底刃の2番面との境界、 T……ラジアス刃のすくい面と底刃のすくい面との境界、 U……境界SRと外周側底刃との交点、 V……境界Tと外周側底刃との交点、 W……被削材(ワーク)。

QQ群二维码
意见反馈