接点部材の製造方法および接点部材並びに真空バルブ

申请号 JP2017532186 申请日 2017-01-20 公开(公告)号 JP6304454B2 公开(公告)日 2018-04-04
申请人 三菱電機株式会社; 发明人 千葉原 宏幸;
摘要
权利要求

高融点金属を主成分とする多孔質体からなり、中央部に開口部を設けた多孔質板を鋳型内に配置する工程と、 前記多孔質板の上側に低融点金属を主成分とする溶浸材を配置する工程と、 前記溶浸材を加熱して溶融させる工程と、 溶融した前記溶浸材の一部が前記開口部を通過する工程と、 溶融した前記溶浸材の上面側に前記多孔質板を浮上させる工程と、 前記溶浸材を冷却して固化させる工程と、 を備える接点部材の製造方法。前記多孔質板の前記開口部で固化した前記溶浸材の一部を、前記多孔質板の接点となる側から除去する工程をさらに備える、 請求項1に記載の接点部材の製造方法。前記多孔質板を構成する高融点金属の主成分はCrであり、 前記溶浸材を構成する低融点金属はCuである、 請求項1または2に記載の接点部材の製造方法。真空バルブに用いる接点部材であって、 低融点金属を主成分とする溶浸材が溶浸された、高融点金属を主成分とする板状の多孔質体からなる接点層と、 前記溶浸材からなる接点層支持部と接点部保持導体とを備え、 前記多孔質体は前記接点層の中央に開口部が設けられており、 前記溶浸材は前記開口部から前記接点部保持導体まで連続して一体成形されており、 前記多孔質体の平均密度は前記溶浸材の密度より小さい接点部材。前記多孔質体を構成する高融点金属の主成分はCrであり、 前記溶浸材を構成する低融点金属はCuである、 請求項4に記載の接点部材。真空バルブに用いる接点部材であって、 低融点金属を主成分とする溶浸材が溶浸された、高融点金属を主成分とする板状の多孔質体からなる接点層と、 前記溶浸材からなる接点層支持部と接点部保持導体とを備え、 前記多孔質体は前記接点層の中央に開口部が設けられており、 前記溶浸材は前記開口部から前記接点部保持導体まで連続して一体成形されており、 前記多孔質体の平均密度は前記溶浸材の密度より大きい接点部材。前記多孔質体を構成する高融点金属の主成分はWCであり、 前記溶浸材を構成する低融点金属はCuである、 請求項6に記載の接点部材。請求項4〜7のいずれか一項に記載の接点部材を、ネジ締結で通電導体に接続した真空バルブ。

说明书全文

本発明は、送電系統などで用いられる電流遮断用の真空遮断器に適用される真空バルブと、真空バルブに用いられる接点部材および接点部材の製造方法に関する。

真空バルブは、高真空に保たれた絶縁容器の内部に、固定電極と可動電極とが同軸の位置に対向配置された構造を有している。通電時には、固定電極と可動電極とが接触しており、過負荷電流または短絡電流が発生した際に、これらの電極が瞬時に開極されることで電流を遮断することができる。

このような真空バルブの固定電極と可動電極との接触部に使用される接点材料には、主に遮断性能と開極時の耐電圧性能が要求される。接点材料に要求されるこれらの性能は、互いに相反する性質であるため、接点材料を単一の元素からなる材料を用いて製造することは困難である。そのため、従来の接点材料は、二種以上の元素を組み合わせた材料を用いて製造されている。

例えば、耐電圧材料には、高導電材料の銅(Cu)とタングステン(W)やクロム(Cr)を用いた、Cu−W接点やCu−Cr接点などの接点材料が一般に用いられている。あるいは、低サージ性が要求される真空バルブの接点材料には、電流遮断時間を延ばすため、一般に、電子放出成分であるタングステンカーバイド(WC)を、高導電材料の銅(Cu)、銀(Ag)に分散させたCu−WC系、Ag−WC系の接点材料が用いられている。

これらの接点材料の製造方法としては、次に述べる溶浸法が用いられる。まず、耐電圧材料の原料粉末を成形および焼結して多孔質体を得た後に、多孔質体の片面にCu、Ag等からなる溶浸材を設置して、溶浸材の融点以上に加熱する。多孔質体内部の気孔には、溶融した溶浸材が浸透(溶浸)する。この結果、得られる接点素板を、必要とされる形状に機械加工することで、接点を得ることができる。接点加工した後、通電時の導体となる銅棒にロウ付けされるが、接点表面にロウ材との濡れ性に劣る耐電圧材料成分の割合が大きい場合、ロウ付けが不完全になり、接点が脱落したり、銅棒と接点との接触面積が小さくなったりすることがある。

この問題に対して、タングステン粉末を加圧成形して多孔質体を作製する方法がある(特許文献1参照)。このとき、溶浸材と接触させる側の成形体に凹部が形成されるように、金型の下パンチを工夫したものを使用する。そして、溶浸材の上に多孔質体を載せ、加熱して溶浸させると、凹部には溶浸材の金属がそのまま残る。焼結体を仕上げ加工した後に、残った溶浸材層を介して、ロウ材により台金に接合する。この方法を使用すれば、接合しにくい材料が接点の中にあっても、溶浸材と台金との接合になるので、ロウ付け不良の問題は生じない。

特開昭60−128203号公報

従来の接点部材では、真空バルブを組み立てる際のロウ付け工程は必須であり、ロウ材が接点部側に拡散して接点の性能を劣化させたり、ロウ材の種類によっては抵抗値が高くなるといった問題がある。また、接点部の厚みは、仕上げの機械加工時に強度をもたせる必要があるため、実際に消耗する厚さと比較して過大な厚みのあるものを作製しなければならず、電極全体としての低抵抗化が図りにくいという課題があった。本発明は、上記の様な課題を解決するためになされたものであり、接点部のロウ付けを不要にして、接点部と接点部保持導体とを一体成型する真空バルブ用の接点部材を得ることを目的とする。

この発明の接点部材の製造方法は、高融点金属を主成分とする多孔質体からなり、中央部に開口を備えた多孔質板を鋳型内に配置する工程と、多孔質板の上側に低融点金属を主成分とする溶浸材を配置する工程と、溶浸材を加熱して溶融させる工程と、開口を溶融した前記溶浸材の一部が通過する工程と、溶融した溶浸材の上面側に前記多孔質板を浮上させる工程と、溶浸材を冷却して固化させる工程とを備えるものである。

また、この発明の接点部材は、低融点金属を主成分とする溶浸材が溶浸された、高融点金属を主成分とする板状の多孔質体からなる接点層と、溶浸材からなる接点層支持部と接点部保持導体とを備え、多孔質体は接点層の中央となる位置に開口部を有し、溶浸材は開口部の中から前記接点部保持導体にまで連続して一体成形されおり、多孔質体の平均密度は溶浸材の密度より小さいものである。ここで接点部とは接点層と接点層支持部とを称するとする。 また、この発明の別の接点部材は、低融点金属を主成分とする溶浸材が溶浸された、高融点金属を主成分とする板状の多孔質体からなる接点層と、溶浸材からなる接点層支持部と接点部保持導体とを備え、多孔質体は接点層の中央となる位置に開口部を有し、溶浸材は開口部の中から前記接点部保持導体にまで連続して一体成形されおり、多孔質体の平均密度は溶浸材の密度より大きいものである。

この発明によれば、接点部と接点部保持導体とを一体成型することにより、低抵抗で信頼性の高い接点部材を得ることができる。

実施の形態1を示す真空バルブ用の接点部材の断面図である。

実施の形態1を示す真空バルブ用の接点部材の上面図である。

実施の形態1における真空バルブ用の接点部材の溶浸に関わる工程を示すフローチャートである。

実施の形態1における、鋳型に多孔質板を配置する工程を示す断面図である。

実施の形態1における、鋳型に多孔質板を配置する工程を示す上面図である。

実施の形態1における、鋳型32に溶浸材からなるペレット34を配置する工程を示す断面図である。

実施の形態1における、鋳型32に溶浸材からなるペレット34を配置する工程を示す上面図である。

実施の形態1における、溶解したペレットが鋳型底に滴り落ちる状況を示す断面図である。

実施の形態1における、溶解したペレットが鋳型底に滴り落ちる状況での上面図である。

実施の形態1における、溶解したペレットが鋳型内の多孔質板下の領域を充填した状態を示す断面図である。

実施の形態1における、溶解したペレットが鋳型内の多孔質板下の領域を充填した状態での上面図である。

実施の形態1における、接点部材の冷却が完了した状態を示す断面図である。

実施の形態2における、鋳型に多孔質板ならびに小ペレットと底部ペレットを配置した状態を示す断面図である。

実施の形態3に係る真空バルブの構造を示す断面模式図である。

比較例3の溶浸後の状態を示す模式図である。

比較例3の機械加工を行った後の多孔質体の形状を示す断面模式図である。

比較例3の加工された多孔質体を用いて作製した導体を示す断面模式図である。

以下、本発明における真空バルブ用の接点部材とその製造方法、ならびに真空バルブの実施の形態について図面を用いて説明する。なお、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する 実施の形態1. 図1は、本発明の実施の形態1に係る真空バルブ用の接点部材16の断面図である。接点層18は溶浸済みの多孔質体である溶浸層35の表面を研磨もしくは機械加工で削った表面であり、通常は平面を成している。接点層支持部22は溶浸層35と接触していて、溶浸層35を支持している箇所である。溶浸層35の中央部には凹部36があり、後述するように溶浸層35を構成する多孔質体の開口部に接点層支持部22が露出しており、接点層18の面から窪んだ形状を有している。この接点層支持部22と、溶浸層35(接点層18)を合わせた部分が接点部である。図2は、図1の接点部材16の上面図であり、接点層18を形成する溶浸層35と、その中央に位置する凹部36は円形である。なお、接点層18と凹部36は楕円形など、円形以外の形状でもよい。

接点部保持導体38は、接点層支持部22と連続して形成されており、通電時に接点層18を通して流れた電流を、接点層支持部22経由で流す機能を持つ。接点部保持導体38には、接点層18と反対側の端部にネジ穴37が設けられており、真空バルブの外部と接続される通電導体と容易に接続できるようになっている。

接点部材16の材質について述べると、溶浸層35は銅(Cu)あるいは銀(Ag)を主体とする母相と、母相の融点よりも高い融点を有する高融点成分を主体とする成分から成り、その溶浸層35から連続して、母相と同じ材質からなる保持導体が一体成型された構造を有するものである。この溶浸層35の元になった多孔質板は、高融点成分を主体とする粒子を加圧成形して作製した板状の多孔質部材であり、通常、母相の材料に比べて高融点の金属を用いる。

このような構成を実現する為に、接点部材16の製造工程においては、鋳型の上部に多孔質板31を置き、その上に母材となる溶浸材(ペレット34)を置いて、溶浸材の融点以上に加熱することによって溶浸材を多孔質板に溶浸させると同時に、開口部から鋳型底部に流れた溶浸材により接点部保持導体38を一体成形する。溶浸工程を経た後、主に表面の機械加工によって図1に示した形状に整える。すなわち、溶浸材は多孔質板に比べて低融点の金属を用いる。

以下、図3〜図12を用いて、本発明の接点部材16の製造工程について詳しく説明する。図3は、真空バルブ用の接点部材16の製造工程において、溶浸に関わる工程を示すフローチャートである。図4〜図11は、図3のフローチャートのステップを説明する断面図と上面図である。

図4は、鋳型32に多孔質板31を配置する工程(ステップS1)における断面図であり、図5はその上面図である。ステップS1にて、段付きの鋳型32の棚部分に、高融点金属の粒子を主成分とする、加圧成形された多孔質体からなる多孔質板31を置く。多孔質板31の下となっている鋳型32の底部の径が多孔質板31の径より小さくなっている。この構成により、接点層18の面積を広げて閉極時の接触抵抗を下げると同時に、通電する接点部保持導体38は必要最低限の太さで成形することにより、溶浸材の使用量を削減することができる。鋳型32は、例えば黒鉛などの耐熱性のあるものを用いると良い。溶浸後に電極を取り出しやすくするために、鋳型32の内壁にBN(窒化素)を主成分とする剥離材を塗布しておくとよい。

高融点金属粒子を主成分とする粉体の加圧成形は、例えば、通常のプレス成形の金型に充填し、所定の圧で加圧成形すればよい。加圧成形時の圧力としては、特に限定されないが、好ましくは50MPa以上200MPa以下である。多孔質板31の中央部には、開口部33が設けられている。多孔質板31の厚さは、溶浸接点を製造する際に加圧成形される通常の5〜15mmの厚さよりも十分に薄い膜厚でよい。中央の開口部33、は溶浸材を融点以上に加熱して溶解した際に、鋳型下部に流動できる大きさであればよく、2mm〜10mm程度の大きさに穴を開口する。多孔質体の成形時に中央に穴が開く様な金型を使用しても良い。また、多孔質板31の面は溶浸材(ペレット等)を置く側のみ平坦な外形を持っていればよく、鋳型32の棚部に接している側は必ずしも平坦である必要は無い。

成形後の多孔質板31は、その後の工程で溶浸に使用する温度以上でかつ、高融点金属の融点以下の温度で仮焼結を行う。例えば、高融点金属がCrで溶浸材となる金属がCuならば、仮焼結温度は1083℃以上1860℃以下の範囲で行う。仮焼結時の雰囲気は、真空または素雰囲気等の非酸化性雰囲気が適切である。焼結の所要時間は、焼結体が過焼結により大きく縮まない程度の時間であればよい。

図6は、鋳型32に溶浸材からなるペレット34を配置するステップS2における断面図であり、図7はその上面図である。ステップS2にて、多孔質板31の上面に、溶浸させる金属材料からなるペレット34を置く。ペレット34としては、例えばCuやAgの丸棒や柱状の塊を用いる。ペレット34の体積は、多孔質板31の体積よりも十分大きいことが必要であり、例えば2倍〜100倍の範囲で行う。鋳型32に納めた多孔質板31と溶浸材のペレット34を、溶浸材の融点以上で、仮焼結の温度以下の範囲で加熱して溶解させる(ステップS3)。溶解に伴い、液状化したペレット34が溶浸材となって多孔質板31に溶浸される(ステップS4)。

なお、溶浸は、多孔質体内の連続した空隙に、溶浸材である液化した金属が毛細管現象で浸透していく作用を利用するものである。溶融金属は、融点からの温度に較べて高くなるほど、徐々に表面張力が下がって流動性が増す傾向がある。毛細管現象を利用するには表面張力が大きい方がよい為、溶浸時の温度は融点に近い温度に設定することが望ましい。具体的には、融点に対して10℃〜100℃程度高い温度範囲が好ましい。

ペレット34は溶解して液状になると、一部が多孔質板31の中央に設けられた開口部33を通過して鋳型底に滴るとともに、多孔質板31の内部に溶浸材として溶浸していく。これにより、多孔質体31は溶浸層35となる。図8は、溶解したペレット34mが鋳型底に滴り落ちる状況を示す断面図である。図9は図8に対応する上面図である。

ここで、しばらくの間、放置することで、溶浸後の多孔質板31(溶浸層35)の平均密度が、溶浸材の金属の平均密度よりも低い場合には、多孔質板31は、溶けた溶浸材の上面側に浮かび上がる(ステップS5)。例えば、多孔質板31の多孔質体に用いる高融点金属をCr(平均密度7.19g/cm3)、Ti(4.5g/cm3)、Ni(8.9g/cm3)、V(6.1g/cm3)、Fe(7.87g/cm3)、Co(8.9g/cm3)、Mn(7.44g/cm3)のいずれかもしくは2種以上の組合せから成るものとし、溶浸材金属をCu(8.96g/cm3)、Ag(10.5g/cm3)とすると、この関係が成り立つ。また、Mo(10.2g/cm3)やW(19.3g/cm3)やTa(16.65g/cm3)といった比較的平均密度の大きい金属、あるいはWC(15.6g/cm3)といった高融点の金属炭化物も多孔質体の主成分でない量であれば添加する事は可能である。図10は、溶解したペレット34mが鋳型底に溜まって溶浸層35下の領域を充填した状態を示す断面図である。図11は図10に対応する上面図である。この状態において、多孔質板31は鋳型32の棚部分からやや浮上している。

次に、溶浸済みの多孔質板31(溶浸層35)が、溶けた溶浸材表面に浮かび上がったところで降温し冷却する(ステップS6)。冷却後、溶浸材が固化すると、溶浸層35とその下部の鋳型32中で固化した溶浸材部分とが一体化した接点部材となる。図12は、冷却が完了した状態を示す断面図であり、多孔質板31が溶浸材の上面まで浮上して、接点層35となっている様子を示している。この接点部材を鋳型32から取り出して(ステップS7)、溶浸の工程を終了する。

さらに、多孔質板31中央部の開口部33内に残った溶浸材が、真空バルブに組込んだ際に、対向する相手方の接点と接触して溶着するのを防ぐため、深さが0.5mm以上となるように溶浸材を削って凹部36を形成してもよい。凹部36の深さは適宜設定すればよく、切削以外の方法で一部の溶浸材を除去してもよい。そして、接点表面および側面の仕上げ加工や、図1に示すように底部にネジ穴37を形成する加工などを行って、一体成形物としての接点部材16が完成する。

本発明の接点部材16は、真空バルブを組み立てる際のロウ付け工程は不要であるから、ロウ材が接点側に拡散して接点の性能を劣化させることはない。また、溶浸層35の厚みは、実際に消耗する厚さより上回る寸法であればよく、必要最小限の厚みに設計することができることから電極全体としての低抵抗化が可能となる。さらに、接点層支持部22によって支持されているため、仕上げ加工時の機械的なストレスに耐えうる強度を備えることができる。

実施の形態2. 図13は、鋳型32の棚部に多孔質板31ならびに溶浸材となる小ペレット44と底部ペレット45を配置した状態を示す断面図である。この実施の形態2では、ペレット34に替えて小ペレット44と底部ペレット45の二つのペレットを用いる点が異なっている。加熱溶融の工程で、これらのペレットは溶融し、小ペレット44が液化して多孔質板31の中央に設けられた開口部33から滴り落ちるとともに、多孔質板31の内部に溶浸材として溶浸していく点は同じである。そして、溶融した小ペレット44は溶融した底部ペレット45と接触して一体化する。その後の状態については、実施の形態1と同様であるので説明を省略する。

このように、二つのペレットを用いることにより開口部33から滴り落ちる溶浸材の容積を低減することができるため、溶浸に要する時間を短縮して生産性を高めることが可能となる。完成した接点部材16は、実施の形態1と同様であるので、得られる効果も共通している。

実施の形態3. 図14は、本発明の実施の形態3に係る真空バルブ10の構造を示す断面模式図である。この真空バルブ10は、接点と電極を一体化した固定子側接点部材16aと、可動子側接点部材16bとが対となって用いられており、これらの接点部材として実施の形態1あるいは実施の形態2で説明した接点部材を用いる。真空バルブ10の外囲器は、円筒状に形成された絶縁容器12と、封止金具13a、13bによって絶縁容器12の両端に固定された金属蓋14a、14bとからなっており、その内部は1×10−3Pa以上の高真空状態で密封されている。

金属蓋14a、14bには、その中央部を貫通するように、円柱形状の固定子側導体17a、可動子側導体17bがそれぞれ設けられている。固定子側導体17a、可動子側導体17bの外囲器内の先端部には、それぞれ固定子側接点部材16a、可動子側接点部材16bがネジ締結によって固定されている。この固定子側導体17aと、固定子側接点部材16aとを合わせた全体を、固定子側電極と呼ぶ。同様に、可動子側導体17bと可動子側接点部材16bとを合わせた全体を可動子側電極と呼ぶ。接点部材の固定方法としては、ロウ付けを使用しない嵌め合い構造を用いてもよい。固定子側接点部材16aと可動子側接点部材16b、それぞれの接点である固定子側接点層18a、可動子側接点層18bが互いに平行に向かい合って設置される。可動子側導体17bには、真空バルブ10の内部を真空機密に保持しながら、可動子側導体17bを軸方向に移動可能とするベローズ19が取り付けられている。図14では、固定子側接点部材16aと可動子側接点部材16bの間隔が開いており、開極した状態を示している。可動子側導体17bが固定子側に移動することで、固定子側接点層18aと可動子側接点層18bが接触して閉極状態となり、固定子側導体17aと可動子側導体17bとが導通状態となる。

ベローズ19の上部には、ベローズに開極時の接点間に発生したアークによる金属蒸気が付着することを防ぐために、金属製のベローズ用アークシールド20が設けられている。また、開極した状態の固定子側接点部材16aと可動子側接点部材16bの間隙を覆い隠すように、金属製の絶縁容器用アークシールド21が設けられている。絶縁容器用アークシールド21は、絶縁容器12の内壁面がアーク蒸気で覆われることを防止するために設置されるものであり、図14の例では金属蓋14aに固定されている。ベローズ用アークシールド20に囲まれた領域は、遮断室11を形成する。

通電状態から開極すると、固定子側接点層18aと可動子側接点層18bの間隙にアークが発生する。このアークは、主に両接点部材の外周側、すなわち、絶縁容器用アークシールド21に近い側で発生し、両接点部材の中心部ではほとんど発生しない。またこの中心部は接点層表面よりも凹んでいる為、電界集中が起きにくい。そのため、多孔質板31の中央に設けられた開口部33に向かってアークが集中的に移動することはなく、遮断性能に影響が出ることはない。また、接点層18a、18bの厚みは、実際に消耗する厚さを上回る程度の寸法であり、ロウ材も使用しないため、低抵抗で通電時の電力損失が小さい真空バルブ10を実現することが可能となる。 実施例

以下に本発明の接点部材について、実施例を述べる。 (実施例1) 多孔質体の主成分をCrとし、Cuの溶浸を容易にするために、Crの10vol%の量のCu粉を混合した。使用したCr粉の平均粒径は30um、混合したCu粉の平均粒径は30umのものを用いた。空孔率は多孔質体の全体積の40%とした。この多孔質体で作製した円盤状の多孔質板の直径は30mm、厚みは3mmである。多孔質板中央の開口部の直径(中央孔径)は5mmとした。

溶浸材のペレットは、直径25mmの無酸素銅から成形された、高さ(厚み)40mmの丸棒を用いた。鋳型は、底部の直径が20mm、棚部から底部までの深さが35mm、棚部の内径は32mmのものを用いた。棚部から鋳型上部縁までの高さは20mmである。鋳型内部に剥離材のBN粉をスプレー塗布した。

多孔質体の仮焼結条件は、温度は1200℃、温度保持の時間を2時間とした。多孔質板の上に溶浸材のペレットを置いた状態で加熱を行い、溶浸を実施した。溶浸時の温度はCuの融点1083℃を僅かに超える1100℃とした。溶浸時間は3時間であり、水素雰囲気下で実施した。 (実施例2) 実施例1に対して、多孔質板の開口部の直径を8mmとした以外は、すべて同じ条件を用いた。 (実施例3) 実施例1に対して、多孔質板の厚みを2mm、中央の開口部の直径を3mmとした以外は、すべて同じ条件を用いた。 (実施例4) 実施例1に対して、多孔質板の厚みを4mm、中央の開口部の直径を5mmとした以外は、すべて同じ条件を用いた。 (比較例1) 実施例1とは異なり、多孔質板を同じ厚みであって中央の開口部の無い円盤とした。それ以外は、すべて実施例1と同じ条件を用いた。 (比較例2) 実施例1とは異なり、溶浸材のペレットを多孔質板の下に配置して溶浸を行った。それ以外は、すべて実施例1と同じ条件を用いた。 (比較例3) 従来から用いられている手法にて多孔質体の溶浸を行った。多孔質体の厚みは10mmで、溶浸材の厚みは8mmである。多孔質板として、開口部の無い円盤を作製した。鋳型はこの円盤の形状に対応したものを用いた。それ以外は、すべて実施例1と同じ条件を用いて溶浸を実施した。後述するように、接点部材を形成するために、ロウ付けを行った。

溶浸工程を経た後の結果は、次のとおりである。実施例1〜4は、溶浸した多孔質体が鋳型内で浮上した。比較例1では、溶浸材のCuが底部に十分にたまらないうちに鋳型からあふれてしまった。また、比較例2では、多孔質体が鋳型上部縁に引っ掛かった。そのため、比較例1、2では接点部材を再現性良く作製することはできなかった。比較例3では、多孔質体への溶浸は適切に行われた。表1は、これらの実験の条件の一覧である。

溶浸後、実施例1から実施例4までの接点は、図1に示す形状とするため、機械加工を行った。多孔質体側表面については、約0.5mm研磨した。また側面も研削して、表面側の直径を28mmとし、接点支持部の側面に、接点層表面を基準にして約80°のテーパーをつけた。接点部保持導となる箇所は、溶浸後の直径20mmのままで表面を平滑にする研磨のみ行い、接点層と反対側に締結用のネジ穴を設ける加工を行った。その後、金属蓋を介して真空バルブの外部に引き出される導体(ロッド)とネジで締結された後、真空バルブに組上げられた。

一方、比較例3では、多孔質体の上下両面を研磨して0.5mmずつ薄くなるように加工し、側面の加工は、上記実施例と同様に、接点層の表面側になる方が直径28mmになるように研削して、側面のテーパー加工を接点層表面を基準にして約80°になるまで実施した。図15は、比較例3の溶浸後の状態を示す模式図であり、溶浸された円盤状の多孔質体55aの上側に、溶浸されずに残った溶浸材54を確認することができる。図16は、比較例3の機械加工を行った後の多孔質体55bの形状を示す断面模式図であり、点線は図15の溶浸後の多孔質体55aの外形を示す。図16に示すように、多孔質体55bの接点と反対側の底部側は、直径20.5mmで深さ3mmの浅い穴を形成する加工を行った。図17は、図16の加工された多孔質体を用いて作製した電極部材を示す断面模式図であり、多孔質体55bとCuからなる丸棒状の電極部57の間にロウ材56を挟み込んで、ロウ付けを行った。そして、実施例1〜4、比較例3の接点部材をそれぞれ2個ずつ用いて、図14に示した態様の真空バルブを組上げた。

作製した実施例1〜4および比較例3の真空バルブについて評価を行うため、電極間に通電して遮断試験を行った。この遮断試験では、AC60Hz、電圧12kVの電源を用い、電流がゼロになったタイミングで遮断できること、再点弧しないことを遮断成功として、同一の遮断電流で10回の遮断試験を行った。電流は12kAから始め、4kAずつ遮断電流値を上げて、28kAまで行い、10回中で何回遮断に失敗したか調査した。表2は、遮断試験の結果を示す一覧表である。失敗(NG)回数は、電流の遮断に失敗した回数を意味しており、10から失敗回数を引いた数が成功(OK)した回数である。

比較例3が20kAで遮断失敗があったのに対して、実施例1〜4では10回全て成功であり、次の24kAで遮断失敗が出始めた。28kAでは、比較例3は10回中10回失敗だったが、実施例ではまだ遮断成功が出ており、特に接点部分が薄い実施例3では1回しか失敗が出ておらず、遮断性能が全体的に向上していることが確認された。これは、表1で確認できるように、電極全体の中でCrを含む抵抗の高い接点部分が薄くなった為、接触抵抗が低下していることの効果と考えることができる。接触抵抗が小さくなることにより、通電時の接点層表面の温度上昇が抑制され、遮断時のアークによる接点表面の温度が上がりにくくなり、接点表面からの接点材の蒸発によるアークの持続が起きにくくなって、遮断性能が向上したと考えられる。

上記の実施例は、いずれも実施の形態1に関するものであるが、実施の形態2によってほぼ同様の形状の接点部材を作製すれば、上記の傾向と同様の結果を得ることができる。 (実施例5) 多孔質体の主成分をWCとし、Cuの溶浸を容易にするために、体積比でWCの30%の量のCu粉を混合した。使用したWC粉の平均粒径は9um、混合したCu粉の平均粒径は30umである。空孔率は多孔質体の全体積の35%とした。この多孔質体で作製した円盤状の多孔質板の直径は30mm、厚みは4mmである。多孔質板中央の開口部の直径(中央孔径)は5mmとした。多孔質体の仮焼結条件は、温度は1150℃、温度保持の時間を5時間とした。鋳型内部に剥離材のBN粉をスプレー塗布した。鋳型は、底部 の直径が20mm、棚部から底部までの深さが35mm、棚部の内径は32mmのものを用いた。棚部から鋳型上部縁までの高さは20mmである。溶浸材の無酸素銅のペレットは、直径18mm×高さ35mmのものを鋳型底に置き、その上に多孔質板を置き、さらにその上に直径25mm×高さ8mmのものを置いた。溶浸時の温度はCuの融点1083℃を僅かに超える1100℃とした。溶浸時間は3時間であり、水素雰囲気下で実施した。溶浸後、接点材を取り出し、図1に示す形状とするため、機械加工を行った。多孔質体側表面については、約0.5mm研磨した。また側面も研削して、表面側の直径を28mmとし、接点支持部の側面に、接点層表面を基準にして約80°のテーパーをつけた。接点部保持導となる箇所は、溶浸後の直径20mmのままで表面を平滑にする研磨のみ行い、接点層と反対側に締結用のネジ穴を設ける加工を行った。その後、金属蓋を介して真空バルブの外部に引き出される導体(ロッド)とネジで締結された後、真空バルブに組上げられた。 (比較例4) 従来から用いられている手法にて多孔質体の溶浸を行った。多孔質体の直径は30mm厚みは8mmで、溶浸材の厚みは5mmである。多孔質板として、開口部の無い円盤を作製した。鋳型はこの円盤の形状に対応したものを用いた。それ以外は、すべて実施例5と同じ条件を用いて溶浸を実施した。溶浸が終了した多孔質体に、機械加工を行い、厚さ3.5mm、表面の直径が28mmとし、側面も研削して、表面側の直径を28mmとし、接点支持部の側面に、接点層表面を基準にして約80°のテーパーをつけた。その後、金属蓋を介して真空バルブの外部に引き出される導体(ロッド)とロウ付けされた後、真空バルブに組上げられた。 作製した実施例5および比較例4の真空バルブについて評価を行うため、電極間に通電して遮断試験を行った。この遮断試験では、AC60Hz、電圧7.2kVの電源を用い、電流がゼロになったタイミングで遮断できること、再点弧しないことを遮断成功として、同一の遮断電流で10回の遮断試験を行った。電流は6kAから始め、2kAずつ遮断電流値を上げて0、14kAまで行い、10回中で何回遮断に失敗したか調査した。表3は、遮断試験の結果を示す一覧表である。 比較例4が10kAで遮断失敗があったのに対して、実施例5では10回全て成功であり、次の12kAで遮断失敗が出始めた。14kAでは、比較例4は10回中10回失敗だったが、実施例ではまだ遮断成功が出ており、遮断性能が全体的に向上していることが確認された。これは、実施例5はロウ付け工程が無い為、接触抵抗が低下していることの効果と考えることができる。接触抵抗が小さくなることにより、通電時の接点層表面の温度上昇が抑制され、遮断時のアークによる接点表面の温度が上がりにくくなり、接点表面からの接点材の蒸発によるアークの持続が起きにくくなって、遮断性能が向上したと考えられる。

10 真空バルブ、11 遮断室、12 絶縁容器、13a、13b 封止金具、14a、14b 金属蓋、16 接点部材、16a 固定子側接点部材、16b 可動子側接点部材、17a 固定子側導体、17b 可動子側導体、18 接点層、18a 固定子側接点層、18b 可動子側接点層、19 ベローズ、20 ベローズ用アークシールド、21 絶縁容器用アークシールド、22 接点層支持部、31 多孔質板、32 鋳型、33 開口部、34 ペレット、35 溶浸層、36 凹部、37 ネジ穴、38 接点部保持導体、54 溶浸材の残り、55a 溶浸後の多孔質体、55b 機械加工後の多孔質体、56 ロウ材、57 導体

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