焼結金属摩擦材

申请号 JP2017001898 申请日 2017-01-10 公开(公告)号 JP2018111755A 公开(公告)日 2018-07-19
申请人 東海カーボン株式会社; 发明人 安田 真; 紀ノ村 琢也;
摘要 【課題】高出 力 下においても耐摩耗性、耐熱性に優れ、より高い摩擦係数を有しつつ、摩擦係数や耐摩耗性が低下し難く、銅の含有量を5質量%未満に低減してなる焼結金属摩擦材を提供する。 【解決手段】マトリックス金属として、鉄粉20〜40質量%、ニッケル粉20〜40質量%、亜鉛粉0.5〜10質量%、錫粉0.5〜5質量%、銅粉0.5〜4質量%、焼結助剤粉0.5〜5質量%含むとともに、摩擦調整材を含む摩擦材組成物の焼結物からなることを特徴とする焼結金属摩擦材である。 【選択図】なし
权利要求

マトリックス金属として、鉄粉20〜40質量%、ニッケル粉20〜40質量%、亜鉛粉0.5〜10質量%、錫粉0.5〜5質量%、銅粉0.5〜4質量%、焼結助剤粉0.5〜5質量%含むとともに、摩擦調整材を含む摩擦材組成物の焼結物からなることを特徴とする焼結金属摩擦材。前記摩擦材組成物中における、マトリックス金属の合計含有割合が42〜95質量%であり、摩擦調整材の含有割合が5〜58質量%である請求項1に記載の焼結金属摩擦材。前記摩擦材組成物中における、鉄粉およびニッケル粉の合計含有割合が40〜80質量%である請求項1または請求項2に記載の焼結金属摩擦材。前記ニッケル粉が、アトマイズ法により調製されたものおよびカルボニルニッケル法により調製されたものから選ばれる一種以上である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の焼結金属摩擦材。前記焼結助剤粉が、ホウ化鉄粉、リン鉄粉、リン銅粉およびリン青銅粉から選ばれる一種以上である請求項1〜請求項4のいずれかに記載の焼結金属摩擦材。前記摩擦調整材が潤滑材料および硬質材料からなり、 前記潤滑材料が、黒鉛粉、コークス粉、フッ化カルシウム粉、フッ化バリウム粉、窒化ホウ素粉および二硫化モリブデン粉から選ばれる一種以上であり、 前記硬質材料がアルミナ粉、ムライト粉、ジルコンサンド粉および珪石粉から選ばれる一種以上である請求項1〜請求項5のいずれかに記載の焼結金属摩擦材。

说明书全文

本発明は、焼結金属摩擦材に関するものであり、特に、クラッチやブレーキ等に用いられる焼結金属摩擦材に関するものである。

二輪車、自動車、鉄道車両、航空機等や産業機械等においては、クラッチを構成するエンジン側環状クラッチ板と変速機側環状クラッチ板が互いに接触することにより、エンジンと変速機間の動伝達を行っており、また、ブレーキを構成するブレーキフェーシングが、車輪と一体となって同軸に回転する相手板に接触することにより、車輪の制動を行っている。そして、このようなクラッチ板の表面(クラッチフェーシング)上やブレーキフェーシング上に、ライニングとして環状の摩擦材を設けることにより、クラッチフェーシング材、ブレーキライニング材、ブレーキパッド材等を成している。

上記摩擦材には、大別して、フィラー成分を樹脂、ゴムなどのバインダーにより結合した有機系摩擦材と、金属や合金をマトリックスとして焼結した金属系摩擦材が存在し、金属系摩擦材は、有機系摩擦材に比べて耐摩耗性、耐熱性等に優れるため、過酷な条件下で使用する場合に有用されている。

また、近年における車両の高速化や大型化により高出力化が進み、ブレーキを始め各種摩擦材にかかる負荷もより過酷になり、摩擦材には、耐摩耗性、耐熱性に優れ、より高い摩擦係数を有するとともに、繰り返し使用しても摩擦係数や耐摩耗性が低下し難いものが求められるようになっている。

このような摩擦材として、出願人は、先に特許文献1(特許第4430468号公報)において、鉄粉、ニッケル粉、ステンレス鋼粉、亜鉛粉、錫粉および銅粉からなるマトリックス金属と、フィラー成分との焼結体からなる銅系焼結摩擦材を提案している。

特許第4430468号公報

特許文献1の実施例には、マトリックス金属として銅粉を30〜37質量%含む摩擦材が開示されているが、近年においては、環境保護の観点から、ブレーキパッドとして、摩耗粉に含まれる銅成分が少ないものが求められるようになっており、米国カリフォルニア州では、2021年よりブレーキパッドに含有される銅成分の含有量を5質量%未満に制限する規制が導入される予定になっている。

このような背景の下、高出力下においても耐摩耗性、耐熱性に優れ、より高い摩擦係数を有しつつ、摩擦係数や耐摩耗性が低下し難く、銅の含有量が5質量%未満に低減された摩擦材が望まれるようになっている。

一方で、本発明者等が検討したところ、焼結金属摩擦材が、高出力下においても耐摩耗性、耐熱性に優れ、より高い摩擦係数を有するとともに、繰り返し使用した場合でも摩擦係数や耐摩耗性の低下を抑制し得るためには、摩擦材中に一定量の銅を主成分として含有する必要があり、銅の配合を低減した場合には、摩擦係数の低下及び摩擦材の強度低下を招くとともに、摩耗の増大を招くことが判明した。

このような状況下、本発明は、高出力下においても耐摩耗性、耐熱性に優れ、より高い摩擦係数を有するとともに、繰り返し使用した場合でも摩擦係数や耐摩耗性の低下を抑制し得るとともに、銅粉の含有量を5質量%未満に低減した焼結金属摩擦材を提供することを目的とするものである。

上記知見の下、本発明者等がさらに検討したところ、銅粉を主成分とするマトリックス金属に代えて、鉄粉およびニッケル粉を主成分とし銅粉の配合量を抑制した特定の配合割合からなるマトリックス金属と、摩擦調整材とを含む摩擦材組成物の焼結物からなる焼結金属摩擦材により、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。

すなわち、本発明は、 (1)マトリックス金属として、鉄粉20〜40質量%、ニッケル粉20〜40質量%、亜鉛粉0.5〜10質量%、錫粉0.5〜5質量%、銅粉0.5〜4質量%、焼結助剤粉0.5〜5質量%含むとともに、摩擦調整材を含む摩擦材組成物の焼結物からなることを特徴とする焼結金属摩擦材、 (2)前記摩擦材組成物中における、マトリックス金属の合計含有割合が42〜95質量%であり、摩擦調整材の含有割合が5〜58質量%である上記(1)に記載の焼結金属摩擦材、 (3)前記摩擦材組成物中における、鉄粉およびニッケル粉の合計含有割合が40〜80質量%である上記(1)または(2)に記載の焼結金属摩擦材、 (4)前記ニッケル粉が、アトマイズ法により調製されたものおよびカルボニルニッケル法により調製されたものから選ばれる一種以上である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の焼結金属摩擦材、 (5)前記焼結助剤粉が、ホウ化鉄粉、リン鉄粉、リン銅粉およびリン青銅粉から選ばれる一種以上である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の焼結金属摩擦材、 (6)前記摩擦調整材が潤滑材料および硬質材料からなり、 前記潤滑材料が、黒鉛粉、コークス粉、フッ化カルシウム粉、フッ化バリウム粉、窒化ホウ素粉および二硫化モリブデン粉から選ばれる一種以上であり、 前記硬質材料がアルミナ粉、ムライト粉、ジルコンサンド粉および珪石粉から選ばれる一種以上である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の焼結金属摩擦材、

本発明によれば、鉄粉およびニッケル粉を主成分とする特定の配合割合からなるマトリックス金属と、摩擦調整材とを含む摩擦材組成物の焼結物からなることにより、高出力下においても耐摩耗性、耐熱性に優れ、より高い摩擦係数を有しつつ、摩擦係数や耐摩耗性が低下し難く、銅の含有量を5質量%未満に低減してなる焼結金属摩擦材を提供することができる。

フラットなトルクカーブを説明する図である。

フラットでないトルクカーブを説明する図である。

本発明の焼結金属摩擦材は、マトリックス金属として、鉄粉20〜40質量%、ニッケル粉20〜40質量%、亜鉛粉0.5〜10質量%、錫粉0.5〜5質量%、銅粉0.5〜4質量%、焼結助剤粉0.5〜5質量%含むとともに、摩擦調整材を含む摩擦材組成物の焼結物からなることを特徴とするものである。

本発明の焼結金属摩擦材において、マトリックス金属である鉄粉としては、還元鉄粉、鋳鉄粉等から選ばれる一種以上を挙げることができ、還元鉄粉が好ましい。 マトリックス金属を構成する鉄粉が還元鉄粉である場合、還元鉄粉は鋳鉄粉に比較して融点が300℃程度高いことから、高温下での摩擦特性に優れた焼結金属摩擦材を容易に提供することができる。

還元鉄粉としては、例えば、鉄鉱石を素ガスあるいはアンモニアガス雰囲気中で600〜1200℃の温度で熱処理してなるものを挙げることができる。

本発明の焼結金属摩擦材において、鉄粉としては、粒径範囲が10〜500μmであるものが好ましく、20〜300μmであるものがより好ましく、40〜150μmであるものがさらに好ましい。 なお、上記鉄粉の粒径範囲は、篩分け法により測定される値を意味する。

本発明の焼結金属摩擦材において、摩擦材組成物中における鉄粉の含有量は、20〜40質量%であり、23〜37質量%であることが好ましく、25〜35質量%であることがより好ましい。

本発明の焼結金属摩擦材において、鉄粉の含有量が上記範囲内にあることにより、摩擦材の強度を向上させるとともに、他の成分を所望量含有させて好適な耐フェード性を発揮することができる。

本発明の焼結金属摩擦材において、マトリックス金属であるニッケル粉としては、アトマイズ(噴霧)法により調製されたものおよびカルボニルニッケル法により調製されたものから選ばれる一種以上を挙げることができる。

マトリックス金属を構成するニッケル粉がアトマイズ(噴霧)法により調製されたものおよびカルボニルニッケル法により調製されたものから選ばれる一種以上であることにより、摩擦材の強度を容易に向上させ得るとともに、高出力下においても耐熱性に優れ、より高い摩擦係数を有しつつ、好適な耐フェード性を発揮することができる。

本発明の焼結金属摩擦材において、ニッケル粉としては、粒径範囲が 1〜200μmであるものが好ましく、3〜100μmであるものがより好ましく、5〜20μmであるものがさらに好ましい。 なお、上記ニッケル粉の粒径範囲は、篩分け法により測定される値を意味する。

本発明の焼結金属摩擦材において、摩擦材組成物中におけるニッケル粉の含有量は、20〜40質量%であり、23〜37質量%であることが好ましく、25〜35質量%であることがより好ましい。

本発明の焼結金属摩擦材において、ニッケル粉の含有量が上記範囲内にあることによっても、摩擦材の強度を向上させるとともに、他の成分を所望量含有させて好適な耐フェード性を発揮することができる。

本発明の焼結金属摩擦材において、摩擦材組成物中における鉄粉およびニッケル粉の合計含有割合は、40〜80質量%であることが好ましく、46〜74質量%であることがより好ましく、50〜70質量%であることがさらに好ましい。 本発明の焼結金属摩擦材において、鉄粉およびニッケル粉の合計含有割合が上記範囲内にあることにより、摩擦材強度の向上効果と、他の成分を所望量含有することによる耐フェード性をより容易に発揮することができる。

本発明の焼結金属摩擦材において、マトリックス金属である亜鉛粉としては、特に制限されず、例えばアトマイズ(噴霧)法により調製されたものを挙げることができる。

本発明の焼結金属摩擦材において、亜鉛粉としては、粒径範囲が5〜200μmであるものが好ましく、10〜100μmであるものがより好ましく、35〜65μmであるものがさらに好ましい。 なお、上記亜鉛粉の粒径範囲は、篩分け法により測定される値を意味する。

本発明の焼結金属摩擦材において、摩擦材組成物中における亜鉛粉の含有量は、0.5〜10質量%であり、1〜9質量%であることが好ましく、5〜7質量%であることがより好ましい。

本発明の焼結金属摩擦材において、亜鉛粉の含有量が上記範囲内にあることにより、摩擦材の強度を向上させて耐摩耗性を向上させ、摩擦時における相手材への凝着を抑制し易くなるとともに、所望の摩擦係数を呈し易くなる。

本発明の焼結金属摩擦材において、マトリックス金属である錫粉としても、特に制限されない。

本発明の焼結金属摩擦材において、錫粉としては、粒径範囲が5〜200μmであるものが好ましく、10〜100μmであるものがより好ましく、20〜50μmであるものがさらに好ましい。 なお、上記錫粉の粒径範囲は、篩分け法により測定される値を意味する。

本発明の焼結金属摩擦材において、摩擦材組成物中における錫粉の含有量は、0.5〜5質量%であり、1〜4質量%であることが好ましく、1〜3質量%であることがより好ましい。

本発明の焼結金属摩擦材において、錫粉の含有量が上記範囲内にあることにより、摩擦材の強度を向上させて耐摩耗性を向上させ、摩擦時における相手材への凝着を抑制し易くなるとともに、所望の摩擦係数を呈し易くなる。

本発明の焼結金属摩擦材は、マトリックス金属である銅粉としては、特に制限されないが、例えば電解銅粉を挙げることができる。

本発明の焼結金属摩擦材において、銅粉としては、粒径範囲が5〜200μmであるものが好ましく、10〜100μmであるものがより好ましく、15〜40μmであるものがさらに好ましい。 なお、上記銅粉の粒径範囲は、篩分け法により測定される値を意味する。

本発明の焼結金属摩擦材において、摩擦材組成物中における銅粉の含有量は、0.5〜4質量%であり、1〜4質量%であることが好ましく、3〜4質量%であることがより好ましい。

本発明の焼結金属摩擦材において、銅粉の含有量を上記範囲内に制限しつつも、高出力下において耐摩耗性、耐熱性に優れ、より高い摩擦係数を呈するとともに、繰り返し使用した場合でも摩擦係数や耐摩耗性の低下を抑制することができる。 本発明の焼結金属摩擦材において、銅粉の含有量が上記範囲内にあることにより、環境への影響を十分に低減しつつ、銅メッキした鋼板と強固に密着させることができる。

本発明の焼結金属摩擦材において、マトリックス金属である焼結助剤粉としては、特に制限されず、例えば、ホウ化鉄粉、リン鉄粉、リン銅粉、リン青銅粉、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム等から選ばれる一種以上が好ましく、ホウ化鉄粉、リン鉄粉、リン銅粉およびリン青銅粉から選ばれる一種以上がより好ましい。

本発明の焼結金属摩擦材において、ホウ化鉄粉としては、粒径範囲が5〜200μmであるものが好ましく、10〜100μmであるものがより好ましく、20〜50μmであるものがさらに好ましい。 本発明の焼結金属摩擦材において、リン鉄粉としては、粒径範囲が5〜200μmであるものが好ましく、10〜100μmであるものがより好ましく、10〜30μmであるものがさらに好ましい。 本発明の焼結金属摩擦材において、リン銅粉としては、粒径範囲が5〜200μmであるものが好ましく、10〜100μmであるものがより好ましく、10〜30μmであるものがさらに好ましい。 本発明の焼結金属摩擦材において、リン青銅粉としては、粒径範囲が5〜200μmであるものが好ましく、10〜100μmであるものがより好ましく、10〜30μmであるものがさらに好ましい。 なお、上記各焼結助剤粉の粒径範囲は、篩分け法により測定される値を意味する。

本発明の焼結金属摩擦材において、摩擦材組成物中における焼結助剤粉の含有量は、0.5〜5質量%であり、0.5〜4質量%であることが好ましく、0.5〜3質量%であることがより好ましい。

本発明の焼結金属摩擦材において、摩擦材組成物中における焼結助剤粉の含有量が上記範囲内にあることにより、鉄粉やニッケル粉の焼結性を高めて摩擦材の強度を向上させ、摩擦時のトルク波形をフラット化し易くなり(鳴きの発生を抑制し易くなり)、摩擦時における相手材への凝着を抑制し易くなるとともに、所望の摩擦係数を呈し易くなる。

本発明の焼結金属摩擦材において、摩擦材組成物中のマトリックス金属の合計含有割合は、42〜95質量%であることが好ましく、49.5〜90質量%であることがより好ましく、59〜84質量%であることがさらに好ましい。 本発明の焼結金属摩擦材において、摩擦材組成物中のマトリックス金属の合計含有割合が上記範囲内にあることにより、摩擦材の強度を向上させるとともに、好適な耐フェード性を発揮することができる。

本発明の焼結金属摩擦材において、摩擦調整材としては、特に制限されず、例えば、潤滑材料および硬質材料から選ばれる一種以上を挙げることができる。

上記潤滑材料としては、黒鉛粉、コークス粉、フッ化カルシウム粉、フッ化バリウム粉、窒化ホウ素粉および二硫化モリブデン粉から選ばれる一種以上を挙げることができる。

上記硬質材料としては、アルミナ粉、ムライト粉、ジルコンサンド粉および珪石粉から選ばれる一種以上を挙げることができる。

その他、摩擦調整材としては、マンガン粉、酸化鉄粉、Fe-Mo合金粉、Fe-Si合金粉、Fe-W合金粉、雲母粉およびゼオライト粉から選ばれる一種以上を挙げることができる。

本発明の焼結金属摩擦材において、摩擦材組成物中における摩擦調整材の含有量は、5〜58質量%であることが好ましく、10〜50.5質量%であることがより好ましく、16〜41質量%であることがさらに好ましい。

本発明の焼結金属摩擦材において、摩擦材組成物中における摩擦調整材の含有量が上記範囲内にあることにより、高出力下においても耐摩耗性、耐熱性に優れ、より高い摩擦係数を有するとともに、繰り返し使用した場合でも摩擦係数や耐摩耗性の低下を抑制することができる。

本発明の焼結金属摩擦材において、摩擦材組成物は、必要に応じてマトリックス金属および摩擦調整材とともに、さらに補強繊維として、炭素繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、スチール繊維およびその他の無機繊維や金属繊維(銅および銅合金系は除く)から選ばれる一種以上を含んでもよい。

本発明の焼結金属摩擦材は、摩擦材組成物を用い、従来公知の方法で適宜成形した後、焼結処理することにより製造することができる。 例えば、各成分を混合して摩擦材組成物を調製した後、加圧成形して成形体を得、当該成形体を加圧焼結することにより製造することができる。 上記成形時および加圧焼結処理時における処理条件については、従来公知の条件を採用することができる。

本発明の焼結金属摩擦材は、クラッチ材やブレーキ材、具体的には、クラッチフェーシング材、ブレーキライニング材、ブレーキパッド材等として好適に使用することができる。

本発明によれば、鉄粉およびニッケル粉を主成分とする特定の配合割合からなるマトリックス金属と、摩擦調整材とを含む摩擦材組成物の焼結物からなることにより、高出力下においても耐摩耗性、耐熱性に優れ、より高い摩擦係数を有しつつ、摩擦係数や耐摩耗性が低下し難く、銅の含有量を5質量%未満に低減してなる焼結金属摩擦材を提供することができる。

次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。

(実施例1) マトリックス金属として、鉄粉(ヘガネス社製還元鉄粉(水素ガス中で温度900℃で熱処理したもの)、粒径範囲40〜150μm)、ニッケル粉(カルボニルニッケル法により得られたもの、粒径範囲5〜20μm)、亜鉛粉(スタンプ粉、粒径範囲35〜65μm)、錫粉(スタンプ粉、粒径範囲20〜50μm)および銅粉(電解銅粉、粒径範囲15〜40μm)の各粉末に、焼結助剤としてリン鉄粉(粒径範囲10〜30μm)およびホウ化鉄粉(粒径範囲20〜50μm)、潤滑材料として黒鉛粉およびフッ化カルシウム粉、硬質材料としてムライト粉、ジルコンサンド粉および珪石粉を表1に記載する質量比になるように混合して、摩擦材組成物を調製した。 得られた摩擦材組成物を所定形状に加圧成形し、得られた成形体を銅メッキした鋼板に載置し、還元雰囲気中で温度850℃で焼結することにより、目的とする焼結金属摩擦材を得た。

(摩擦試験) 得られた焼結金属摩擦材を用い、ステンレス鋼製のディスクを相手材として乾式でダイナモ試験を行った。 試験条件はJASO T204に準拠した条件とし、十分に摺り合わせた後、イナーシャ12.5kgm2とし、初速度と減速度を変えて摩擦材特性(摩擦係数、摩耗量(mm)およびトルクカーブ)を測定した。 トルクカーブは、図1に示すように、一定液圧で制動したときにトルク曲線が時間軸に対し水平になる(フラットになる)場合を「○」、図2の左図または右図に示すように、一定液圧で制動したときにトルク曲線が時間軸に対し水平にならず右下がりまたは右上がりになる(フラットにならない)場合を「×」として評価した。 結果を表2に示す。

(せん断強度) 得られた焼結金属摩擦材を用い、JIS D4422に従って、せん断強度を測定した。 結果を表2に示す。

(実施例2〜実施例6) 実施例1において、各成分の配合割合(質量比)を表1に示すとおり各々変更した以外は、実施例1と同様の方法で各々焼結金属摩擦材を作製し、得られた各焼結金属摩擦材を用い、実施例1と同様にして摩擦試験およびせん断強度試験を行った。結果を表2に示す。

(比較例1〜比較例4) 実施例1において、各成分の配合割合(質量比)を表3に示すとおり各々変更した以外は、実施例1と同様の方法で各々焼結金属摩擦材を作製し、得られた各焼結金属摩擦材を用い、実施例1と同様にして摩擦試験およびせん断強度試験を行った。結果を表4に示す。

表1および表2より、実施例1〜実施例6で得られた焼結金属摩擦材は、特定組成からなる摩擦材組成物を焼結してなるものであることから、銅粉の含有量を5質量%未満に低減してなるとともに、優れた強度を示し、高出力下においても耐摩耗性、摩擦係数等の摩擦材としての性能も高位にあり、フラットなトルクカーブを示すことから摩擦係数や耐摩耗性を好適に維持することができ、高速車両を高い減速度で制動する場合等に優れた特性を発揮し得るものであることが分かる。

これに対して、比較例1で得られた焼結金属摩擦材は、銅粉の含有割合が44質量%と高いことから、本発明の目的を達し得ないものであることが分かる。

また、比較例2で得られた焼結金属摩擦材は焼結助剤を有さず、比較例3で得られた焼結金属摩擦材は鉄粉の含有量が多いことから、何れもせん断強度が低く、フラットなトルクカーブを示さないことから摩擦係数や耐摩耗性を好適に維持し得ないものであることが分かる。

さらに、比較例4で得られた焼結金属摩擦材は、ニッケル粉の含有量が多いことから、フラットなトルクカーブを示さず摩擦係数や耐摩耗性を好適に維持し得ないものであることが分かる。

本発明によれば、鉄粉およびニッケル粉を主成分とする特定の配合割合からなるマトリックス金属と、摩擦調整材とを含む摩擦材組成物の焼結物からなることにより、高出力下においても耐摩耗性、耐熱性に優れ、より高い摩擦係数を有しつつ、摩擦係数や耐摩耗性が低下し難く、銅の含有量を5質量%未満に低減してなる焼結金属摩擦材を提供することができる。

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