【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、車両扉用ストライカー装置およびその製造方法に関する。 【0002】 【従来技術】ループと、ベースプレートを有するストライカー装置は公知であり、その製造方法も種々提案されている(特公昭49−13558号公報、特公昭50− 24745号公報、特開昭55−61337号公報、特開昭55−61338号公報)。 これらの製造方法はいずれもコ字形状のループをベースプレートの孔に挿入し、ループを通電・加熱するとともに加圧して、ループのベースプレートをはさんだ両側にツバ部を形成し固定する方法(以下、熱カシメという)により製造されていた。 ストライカー装置は車両の衝突時等にストライカー装置が破損し、扉が開き乗員が車外に放り出されないために高い強度が要求されており、そのためにベースプレートに肉厚の一般鋼材を用い、ループに高強度鋼材を使用していた。 高強度鋼材は加工により発生した内部応力の除去、及び、強度を高めるために熱処理が施されている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】前記公知の製造方法ではループをベースプレートに組付け、固定後に熱処理が施されていた。 熱処理のコストはかなり高く付くため、 熱処理する品物の重量をなるべく小さくする事が望まれるが、前記公知の製造方法では熱カシメにより加熱され、高強度鋼材製のループの組織が荒れ、強度および靭性が著しく低下するため、熱カシメ後に荒れた組織を整える事を兼ねて熱処理が施されており、該熱処理は熱カシメ後に行われなければならず、熱処理を必要としない一般鋼材性のベースプレート(ベースプレートの重量はループの重量に比し著しく大きい)も熱処理し、著しいコストアップを招いていた。 【0004】また、熱カシメ後に熱処理を施すため、一般鋼材製のベースプレートと高強度鋼材製のループとで熱膨張係数に差異があり、カシメ部にガタが発生する恐れがあった。 さらに通電・加熱・加圧により熱カシメを行うため、カシメ用の治工具の磨耗が著しく、頻繁に補修・交換する必要があった。 また、ボンネット用ストライカー装置のようにストライカー装置としては表面処理を施さず、扉に溶接・固定後、扉とともに一体で塗装されるものがあり、この場合は塗装の防錆効果を高めるために、ベースプレートに亜鉛メッキ鋼板を使用したいが、熱カシメ工程及び熱処理工程で亜鉛が溶解、蒸発してしまうので、亜鉛メッキ鋼板を使用できなかった。 【0005】 【発明の目的】本発明は、この点を改良して、熱処理のコストを低減させるとともに、カシメ部にガタを発生させることのない、ストライカー装置およびその製造方法を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】よって、本発明は、略コ字形状のループ1とベースプレート5を有するストライカー装置において、前記ループ1は高強度鋼材に熱処理を施したものからなり、前記ベースプレート5は一般鋼材からなる車両扉用ストライカー装置である。 また、本発明は前記装置において、前記ベースプレート5は亜鉛メッキ鋼板からなる車両扉用ストライカー装置である。 また、本発明は、ループ1と、ベースプレート5を有するストライカー装置において、(イ)前記ループ1は高強度鋼材からなる棒材2をコ字形状に折曲げ、両端近傍にツバ部3,3を形成し、熱処理を施し、(ロ)前記ベースプレート5は一般鋼材からなり、前記ループ1の両端部4,4を挿入・固定する孔8,8を設け、(ハ)前記ループ1を前記ベースプレート5の前記孔8,8に挿入し、冷間にてカシメ加工する事からなる車両扉用ストライカー装置の製造方法である。 また、本発明は前記製造方法において、前記ループ1に熱処理後、表面処理を施し、前記ベースプレート5に表面処理を施すことからなる車両扉用ストライカー装置の製造方法である。 【0007】 【実施例】本発明の一実施例を図面により説明すると、 ループ1は図1の(a)、(b)、(c)の各工程を順に経て加工される。 すなわち、クロムモリブデン鋼などの高強度鋼材からなる棒材2を切断し(図1の(a))、プレス加工等によりコ字形状に折曲げ(図1 の(b))、両端部側にツバ部3,3を鍛造加工等により形成し(図1の(c))、その後に熱処理を施こす。 熱処理は強度を高めるとともに、靭性および展性を付与できる条件が選択される。 熱処理により、前記ループ1 の表面にスケール等が付着するときは、熱処理後にバレル研磨加工等により前記ループ1の表面を研磨するのが良い。 また、防錆および美感向上のために熱処理後または研磨後にメッキ,塗装,樹脂コーティング等の表面処理を施してもよい。 前記ループ1の加工工程として、 前記棒材2を切断し(図1の(a))、両端部側にツバ部3,3をヘッダー加工等により形成し(図1の(d))、プレス加工等でコ時形状に折り曲げ(図1の(c))、その後に熱処理を施してもよい。 【0008】ループ1の両端部4,4はベースプレート5の孔8,8に挿入されカシメられるカシメ部であり、 その長さLは図3に示す前記ベースプレート5の厚みT とカシメ後にツバ部12,12を形成するのに必要な長さを加算した寸法にする。 前記棒材2の断面形状は円形または楕円形等の異形形状のものを必要に応じて選択する。 【0009】ベースプレート5は熱間圧延鋼板などの一般鋼材からなり、図2のように略菱形の形状をなし、中央部に段部6を形成し、該段部6の両端部側7,7に孔8,8を設け、平面部9に車両の車体に取付けるための面取部11,11を付加した孔10,10をプレス加工等で形成する。 なお、前記ベースプレート5の材料に亜鉛メッキ鋼板を使用してもよい。 また、前記ループ1に施したのと同じ表面処理を施してもよい。 つぎに、前記ループ1の両端部4,4を前記ベースプレート5の前記孔8,8に組付け、前記ループ1の前記両端部4,4を冷間でプレス加工等でカシメ加工し、前記ベースプレート5に固定する。 前記ループ1および前記ベースプート5に各々表面処理を施した後にカシメ加工したが、前記ループ1と前記ベースプレート5をカシメ固定した後に表面処理を施してもよい。 【0010】 【発明の効果】以上説明したように、本発明は、略コ字形状のループ1とベースプレート5を有するストライカー装置において、前記ループ1は高強度鋼材に熱処理を施したものからなり、前記ベースプレート5は一般鋼材からなる車両扉用ストライカー装置であるから、ループ1だけに熱処理が施されており、公知のループとベースプレートをカシメ固定後熱処理するものに比し熱処理のコストを著しく低減できる。 また、本発明は、略コ字形状のループ1とベースプレート5を有するストライカー装置において、前記ループ1は高強度鋼材に熱処理を施したものからなり、前記ベースプレート5は亜鉛メッキ鋼板からなる車両扉用ストライカー装置であるから、熱処理コストが安く防錆効果に優れている。 【0011】また、本発明は、ループ1にツバ部3,3 を形成し、折り曲げ加工し、熱処理を施した後に、該ループをベースプレート5に組み付け固定し、またはその後に表面処理を施す車両扉用ストライカー装置の製造方法であるから、熱処理を施すのは重量の小さいループ1 だけであり、熱処理のコストを著しく低減できる。 さらに、ループ1をベースプレート5に組み付け固定した後では熱処理を行わないため、ループ1とベースプレート5の固定部にガタが発生することがない。 さらに、ループ1をベースプレート5に固定するためのカシメ治工具は通電・加熱しないため磨耗の発生がほとんどなく、補修、交換の手間が省ける。 さらに、ベースプレート5を加熱する工程がないため、ベースプレートを亜鉛メッキ鋼板にすることができ、防錆効果を高められる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 ループの加工工程図。 【図2】 ベースプレートの正面図。 【図3】 ベースプレートのA−A断面図。 【図4】 全体の組立横断平面図。 【図5】 全体の斜視図。 【符号の説明】 1…ループ、2…棒材、3…ツバ部、4…両端部、5… ベースプレート、6…段部、7…両端部側、8…孔、9 …平面部、10…孔、11…面取部、12…ツバ部。 フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−289122(JP,A) 特開 平6−226376(JP,A) 特開 昭54−127865(JP,A) 特開 昭55−61338(JP,A) 特開 平6−306483(JP,A) 特開 昭61−174324(JP,A) 特開 昭50−91517(JP,A) 特開 昭63−99599(JP,A) 特開 昭61−154728(JP,A) 特開 昭55−126158(JP,A) 特開 昭55−61337(JP,A) 特開 昭64−62424(JP,A) 特開 昭63−128123(JP,A) 特開 昭61−270355(JP,A) 特開 昭61−223168(JP,A) 特開 昭61−223164(JP,A) 実開 昭63−184628(JP,U) 実開 昭59−172620(JP,U) 実開 昭58−2282(JP,U) 特公 昭50−24745(JP,B2) 特公 昭49−13558(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl. 6 ,DB名) B60J 5/00 B21D 39/00 B21D 9/00 E05B 15/02 E05B 65/20 |