Transgenic production of oligosaccharides and complex carbohydrates

申请号 JP52344395 申请日 1995-01-24 公开(公告)号 JPH09510094A 公开(公告)日 1997-10-14
申请人 アボツト・ラボラトリーズ; 发明人 カミングス,リチヤード・デール; コプチツク,ジヨン・ジヨセフ; スミス,デービツト・フレツチヤー; ピアース,ジエームズ・マイケル; プリエト,ペドロ・アントニオ; ミユケルジ,プラデイツプ; モアマン,ケリー・ウイルソン;
摘要 (57)【要約】 本発明はトランスジェニック非ヒト哺乳動物の乳に関する。 この乳は、トランスジェニック非ヒト哺乳動物のゲノム中に含まれる異種遺伝子の二次遺伝子産物として産生される異種成分を含むことを特徴とする。 異種遺伝子は、グリコシルトランスフェラーゼ、ホスホリラーゼ、ヒドロキシラーゼ、ペプチダーゼ及びスルホトランスフェラーゼからなる群から選択されるヒト酵素のような異種触媒実体をコードする。 本発明の実施に特に有用なものはヒトグリコシルトランスフェラーゼである。 所望の異種成分には、オリゴ糖、複合糖質が含まれる。 オリゴ糖及び複合糖質は、トランスジェニック哺乳動物の乳から単離し、医薬品、診断用キット、栄養補給品などに用い得る。 トランスジェニック全乳は、格別な利点を提供する栄養補給品の製造にも使用し得る。 トランスジェニック乳は、特殊な経小腸栄養補給品の製造にも用い得る。
权利要求
  • 【特許請求の範囲】 1. トランスジェニック非ヒト哺乳動物の乳であって、該動物のゲノム中に含まれる少なくとも1個の異種遺伝子の二次遺伝子産物として産生された異種成分を含むことを特徴とする前記乳。 2. 異種遺伝子が触媒実体をコードする、請求項1に記載の乳。 3. 触媒実体が酵素及び抗体からなる群から選択される、請求項1に記載の乳。 4. 異種成分がオリゴ糖及び複合糖質からなる群から選択される、請求項1に記載の乳。 5. オリゴ糖が、ラクトース、2−フコシルラクトース、ラクト−N−テトラオース、ラクト−N−ネオテトラオース、ラクト−N−フコペンタオースI、ラクト−N−フコペンタオースII、ラクト−N−フコペンタオースIII、ラクト−N −ジフコペンタオースI、シアリルラクトース、3−シアリルラクトース、シアリル四糖a、シアリル四糖b、シアリル四糖c、ジシアリル四糖及びシアリルラクト−N−フコペンタオースからなる群から選択される、請求項4 に記載の乳。 6. 複合糖質が、グリコシル化同種タンパク質、グリコシル化異種タンパク質及びグリコシル化脂質からなる群から選択される、請求項4に記載の乳。 7. グリコシル化異種タンパク質が、ヒト血清タンパク質及びヒト乳タンパク質からなるタンパク質群から選択される、請求項6に記載の乳。 8. ヒト乳タンパク質が、分泌型免疫グロブリン、リゾチーム、ラクトフェリン、κ−カゼイン、α−ラクトアルブミン、β−ラクトアルブミン、ラクトペルオキシダーゼ及び胆汁酸塩刺激リパーゼからなる群から選択される、請求項7に記載の乳。 9. トランスジェニック非ヒト哺乳動物が、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ及びウシからなる群から選択される、請求項1に記載の乳。 10. 前記非ヒト哺乳動物がウシである、請求項9に記載の乳。 11. 異種遺伝子が、ヒト酵素及びヒト抗体をコードする遺伝子からなる群から選択される、請求項1に記載の乳。 12. ヒト酵素が、グリコシルトランスフェラーゼ、ホスホリラーゼ、ヒドロキシラーゼ、ペプチダーゼ及びスルホトランスフェラーゼからなる群から選択される、請求項11に記載の乳。 13. グリコシルトランスフェラーゼが、フコシルトランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、キシロシルトランスフェラーゼ、アセチラーゼ、グルコロニルトランスフェラーゼ、グルコロニルエピメラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、 スルホトランスフェラーゼ、β−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ及びN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼからなる群から選択される、請求項12に記載の乳。 14. 異種酵素及び異種抗体からなる群から選択される触媒実体の作用により得られる、トランスジェニック非ヒト哺乳動物の乳中に産生された産物であって、 前記哺乳動物がそのゲノム中に前記触媒実体をコードする少なくとも1個の異種遺伝子を含む、前記産物。 15. 前記トランスジェニック非ヒト哺乳動物の乳から単離される、請求項14 に記載の実質的に純粋な産物。 16. オリゴ糖及び複合糖質からなる群から選択される、 請求項14に記載の産物。 17. オリゴ糖が、ラクトース,2−フコシルラクトース、ラクト−N−テトラオース、ラクト−N−ネオテトラオース、ラクト−N−フコペンタオースI、ラクト−N−フコペンタオースII、ラクト−N−フコペンタオースIII、ラクト− N−ジフコペンタオースI、シアリルラクトース、3−シアリルラクトース、シアリル四糖a、シアリル四糖b、シアリル四糖c、ジシアリル四糖及びシアリルラクト−N−フコペンタオースからなる群から選択される、請求項16に記載の産物。 18. 複合糖質が、グリコシル化同種タンパク質、グリコシル化異種タンパク質及びグリコシル化脂質からなる群から選択される、請求項16に記載の産物。 19. グリコシル化異種タンパク質が、ヒト血清及びヒト乳タンパク質からなるタンパク質群から選択される、請求項18に記載の産物。 20. グリコシル化ヒト乳タンパク質が、分泌型免疫グロブリン、リゾチーム、 ラクトフェリン、κ−カゼイン、α−ラクトアルブミン、β−ラクトアルブミン、ラクトペルオキシダーゼ及び胆汁酸塩刺激リパーゼからなる群から選択される、請求項19に記載の産物。 21. 異種酵素が、グリコシルトランスフェラーゼ、ホスホリラーゼ、ヒドロキシラーゼ、ペプチダーゼ及びスルホトランスフェラーゼからなる群から選択されるヒト酵素である、請求項14に記載の産物。 22. 異種ヒトグリコシルトランスフェラーゼが、フコシルトランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、キシロシルトランスフェラーゼ、アセチラーゼ、グルコロニルトランスフェラーゼ、グルコロニルエピメラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、スルホトランスフェラーゼ、β−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ及びN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼからなる群から選択される、請求項21に記載の産物。 23. 請求項1に記載の乳を含む、動物の栄養維持に有用な経小腸栄養補給品。 24. 請求項15に記載の産物を含む、動物の治療に有用な医薬品。 25. 請求項15に記載の産物を含む、動物の診断に有用な医学診断用製品。 26. 請求項14に記載の産物を含む、作物の維持に有用な農業用製品。
  • 说明书全文

    【発明の詳細な説明】 オリゴ糖及び複合糖質のトランスジェニック産生 技術分野本発明は異種グリコシルトランスフェラーゼの二次遺伝子産物のin viv o産生に関する。 これらのグリコシルトランスフェラーゼが非ヒト乳房組織で発現されると、異種オリゴ糖や該オリゴ糖を有する様々な複合糖質がトランスジェニック動物の乳内に産生される。 従来技術化物は重要な生物学的化合物である。 「糖」という用語は様々な炭水化物含有化合物を包含する。 それには多糖、オリゴ糖、糖タンパク質及び、非炭水化物アグリコンを有するグリコシドが含まれる。 オリゴ糖部分を含むタンパク質又は脂質からなる生物学的高分子は総称的に複合糖質として知られている。 炭水化物部分は多数の生物学的機能をもたらす。 細胞中で炭水化物は、粘度調節及びエネルギー貯蔵の構造成分として機能するか又は細胞表面の主要成分である。 種々の複合糖質(特に糖タンパク質及び糖脂質)の複雑なオリゴ糖鎖は様々な生物学的プロセスを媒介又は調節する。 炭水化物の生物活性の一般的な文献としては、(a)Biology of C arbohydrates,Volume 2,Ginsburg等,Wile y,N. Y. (1984);及び(b)P. W. Macher等,Annual Review of Biochemistry,Volume 57,ページ785,(1988)を参照されたい。 中でも、 (a)炭水化物の構造が糖タンパク質の安定性、活性、局在化及び分解にとって重要であり、 (b)あるオリゴ糖構造が抗菌物質の植物分泌を活性化し、 (c)複合糖質が種々の細胞の表面上で頻繁に検出され、また例えばペプチド、 ホルモン、毒素、ウイルス、細菌の細胞表面との結合時及び細胞−細胞の相互作用中に受容体又は調節体として機能するので、とりわけ細胞とその周辺部との相互作用にとって重要であり、 (d)炭水化物の構造が抗原決定基(例えば血液型抗原)であり、 (e)炭水化物が正常組織発達中に細胞分化抗原として機能し、 (f)特異オリゴ糖が癌関連抗原決定基であることが判明(g)オリゴ糖が精子/卵子の相互作用及び受精にとって重要である、 ことは公知である。 単離オリゴ糖が、尾部をもつ病原性(uropathogenic)の大腸菌型細菌と赤血球との凝集を阻害することは公知である。 他のオリゴ糖がプラスミノーゲン活性化因子の量を増すことによって強な抗トロンビン活性を示すことが判明している。 この生物活性は、抗凝血作用を示す表面を得るために上記オリゴ糖を医療機器の表面に共有結合させることによって利用されてきた。 これらの表面は血液の採取、処理、保存及び使用に有用である。 グラム陽性細菌用の抗生物質や消毒剤として有用であることが知見された他のオリゴ糖もあった。 更には、ある種の遊離オリゴ糖が特定の細菌の診断や同定に使用された。 生物活性を示す炭水化物を主体とした高付加価値の化成品については将来の市場が有望であると考えられている。 大学や産業界では現在、生物活性を示すオリゴ糖の更なる用途を開発するため徹底した研究が行われている。 これらの開発努力には、非制限的ではあるが、 (a)新規な診断試薬や血液型判定試薬の開発、 (a)新規な診断試薬や血液型判定試薬の開発、 (b)特異オリゴ糖による細菌やウイルスと細胞表面との付着防止に基づく、抗生物質にとって代わる新しいタイプの治療薬の開発、及び(c)植物生長を刺激し、ある種の植物病原体から防御するためのオリゴ糖の使用が含まれる。 多数のオリゴ糖構造が同定され、特徴付けられた。 オリゴ糖の最小構成ブロック又は単位は単糖である。 哺乳動物複合糖質内に見出される主な単糖はD−グルコース(Glc)、D−ガラクトース(Gal)、D−マンノース(Man)、 L−フコース(Fuc)、N−アセチル−D−ガラクトースアミン(GalNA c)、N−アセチル−D−グルコースアミン(GlcNAc)及びN−アセチル−D−ノイラミン酸(NeuAc)である。 括弧内の略字はInternati onal Union of Physics,Chemistry and Biology Council;Journal Biological C hemistry,Volume 257,ページ3347−3354(198 2)の椎奨に基づく単糖の標準的な略称である。 以下ではこれらの略称を使用する。 アノマー配置(α−又はβ−グリコシド結合)及びO−グリコシド結合の位置は多様であり得るので、 基本的な構成ブロック数が比較的少ないにもかかわらず、考えられる組み合わせの数は非常に多い。 従って、多種多様なオリゴ糖構造が存在し得る。 オリゴ糖の生物活性が糖のコンホーメーション及び組成の両方に特異的であることは公知である。 個々の単糖は一生物活性要素を提供するだけでなく、オリゴ糖のコンホーメーション全体に寄与して、別のレベルの特異性や生物活性を付与する。 ある種のオリゴ糖構造の生物学的特異性を生じさせるのは様々な複合糖質やオリゴ糖である。 しかしながら、この多様性はまた、上記化合物の実用面で特定の問題を引き起こす。 複合糖質は通常強力な免疫原であり、生物特異性(biospecificity)は上述したように、特定の単糖配列だけでなく、グリコシド結合の種類によっても決まる。 従って、ある動物種で見出されるオリゴ糖構造を他の種で使用することができないことがしばしばある。 個体基準でも使用に関しては同様の制限が適用され得る。 例えば、ある種の血液型抗原が特異オリゴ糖から形成されることは公知なので、血液型オリゴ糖をタンパク質に結合し、次いでこの糖タンパク質を治療で使用するときには特に注意を払う必要がある。 考えられる免疫原性の問題を注意深く考慮する必要がある。 このような困難が考えられるにもかかわらず、多量のヒトオリゴ糖及び/又は該オリゴ糖を有する複合糖質を生産する必要があることは十分に認められている。 多数の方法がこの目的を達成するのに適した手段であると考えられてきた。 このような方法には、慣用的な有機化学法による又は酵素のin vitro使用によるオリゴ糖の合成が含まれる。 酵素は位置及び立体選択性が高く、穏和な反応条件下での触媒効率が高いので、現在では、固定化した酵素が大規模なin vitroオリゴ糖生産の好ましい方法である。 文献には、酵素が触媒する幾つかのオリゴ糖合成法が開示されている。 例えば、Y. Ichikawa等「En zyme−catalyzed Oligosaccharide Synth esis」Analytical Biochemistry,Volume 202,ページ215−238(1992);及びK. G. I. Nillson ,「Enzymatic synthe sis of Oligosaccharides」Trends in Bi otechnology,Volume 6,ページ256−264(1988 )の科学論文を参照されたい。 オリゴ糖の生産を容易にするためにヒドロラーゼ及びトランスフェラーゼの両方が使用されてきた。 ヒドロラーゼの亜種に属するグリコシダーゼ酵素が、分解サイクルの逆反応過程によるオリゴ糖の合成に特に有用である。 しかしながら一般に、酵素によるオリゴ糖合成は生合成経路に基づく。 オリゴ糖合成の生合成経路は主に各グリコシルトランスフェラーゼの産生をコードする遺伝子によって調節されるが、実際のオリゴ糖構造は個々のグリコシルトランスフェラーゼの基質や受容体の特異性によって決定される。 オリゴ糖は、単糖を糖ヌクレオチド供与体から受容体分子に移行させることによって合成される。 該受容体分子は、他の遊離のオリゴ糖、単糖、又はタンパク質もしくは脂質に結合したオリゴ糖であり得る。 酵素、特に天然源由来のグリコシルトランスフェラーゼは単離が困難であったため、酵素によるオリゴ糖合成は一般に、小規模のみで実施されていた。 更には、糖ヌクレオチド供与体は天然源からの入手が非常に困難であり、有機化学合成法で製造する場合は非常にコストがかかる。 しかしながら最近になって、多量のオリゴ糖を合成するための再循環及び再利用戦略が開発された。 参考として本明細書の一部を構成するものとする米国特許第5,180,674号は、 反応産物をマトリックス又は樹脂に結合したグリコシルトランスフェラーゼ上に繰り返し送り込むことからなる新規な親和性クロマトグラフィー法を開示している。 更には、最近の遺伝子クローニング技術の進歩により、数種のグリコシルトランスフェラーゼを、オリゴ糖の酵素的合成をより実用的にするのに十分な品質及び量で入手することができる。 文献には異種グリコシルトランスフェラーゼの組換え又はトランスジェニック発現に関して十分に記載されている。 しかしながら、文献の議論を続ける前に、 本明細書及び請求の範囲で使用する種々の用語の意味を明確にする必要がある: (a)宿主、宿主細胞又は宿主動物:これらの用語は生物学的材料の生合成を担う細胞又は哺乳動物を指すために使用される。 (b)同種:この用語は、このようにして特徴付けられる実体が通常宿主に存在するか又は宿主によって産生されることを意味する。 (c)異種:この用語は、このようにして特徴付けられる実体が通常宿主に存在しないか又は宿主によって産生されないことを意味する。 換言すれば、このようにして特徴付けられる実体は宿主に対して外来的である。 (d)触媒活性:この用語は、他の物質の化学変化を容易にするためのある種の生物学的化合物の固有特性を指すために使用される。 (e)触媒実体:この用語は、新しい又は異なる又は改変された化合物の生成に導く触媒活性を固有に有する生物学的化合物を指すために使用される。 その例は酵素及び抗体である。 酵素は特異的な生化学的反応の生化学的触媒である。 基質材料に対する酵素の触媒活性の結果、酵素産物が生成される。 (f)ゲノム:この用語は、宿主中に見出される完全遺伝物質を指すために使用される。 この物質は染色体に配置されている。 (g)遺伝子:この用語は、特異的な生物学的実体の生合成を担うゲノムの機能的部分を指す。 (h)挿入:この用語は、異種DNAの一部又は異種遺伝子が宿主のゲノム内に導入されるプロセスを指すために使用される。 挿入されるDNAは「インサート(又は挿入物)」と称する。 (i)トランスジーン:これは、ある動物種のゲノムから他の動物種のゲノムへの挿入によって移行される異種遺伝物質を指す。 より簡単に言えば、トランスジーンは宿主とは異種の遺伝子である。 トランスジーンは特異的な生物学的物質をコードする。 (j)トランスジェニック哺乳動物又はトランスジェニック宿主:これらの用語は、ゲノム内に挿入されたトランスジーンを有する哺乳動物又は細胞を指すために使用される。 この挿入の結果、トランスジェニック宿主は、通常それが合成しない異種生物学的物質を産生する。 異種実体は、宿主細胞ゲノム内への外来遺伝物質の挿入の結果としてトランスジェニック宿主によって生成されるか又はその宿主に存在する。 (k)一次遺伝子産物:これは、同種又は異種遺伝子の転写及び翻訳の結果として直接産生される生物学的実体を指す。 その例にはタンパク質、抗体、酵素等が含まれる。 (l)二次遺伝子産物:これは、一次遺伝子産物の生物活性の結果として産生される産物を指す。 その例は酵素の触媒活性の結果として産生されるオリゴ糖である。 (m)生物学的産物:この用語は、哺乳動物のゲノム内へのトランスジーンの挿入の結果としてトランスジェニック宿主によって産生又は合成される産物を指すために使用される。 この用語は特に、二次遺伝子産物である生物学的産物を意味する。 その一つの例は後述するように、トランスジェニックウシによって産生されるヒトオリゴ糖である。 ヒトオリゴ糖はヒトグリコシルトランスフェラーゼの触媒活性の結果として産生される。 本明細書に開示するように、ヒトグリコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子をマウスゲノム内に挿入すると、得られたトランスジェニックマウスは異種ヒトグリコシルトランスフェラーゼを一次遺伝子産物として産生する。 ヒトグリコシルトランスフェラーゼは同種基質材料を用いて、オリゴ糖やグリコシル化タンパク質を産生する。 一次遺伝子産物の酵素活性の結果として産生されたオリゴ糖も二次遺伝子産物と称するのが適当である。 複合糖質は本明細書や請求の範囲で「生物学的産物」と称する化合物の他の例である。 (n)産物:この用語は、本発明の二次遺伝子産物を指すために使用され、また「生物学的産物」の代わりとして使用される。 (o)人乳化乳(humanized milk):これは、宿主ゲノムの改変によってヒト乳により近い乳を産出するようになった非ヒト哺乳動物から得られた乳を指す。 人乳化乳の一例は、通常ウシ乳内には検出されず、ヒト乳内に検出される産物を含んでいるウシ乳である。 ヒトオリゴ糖は、ヒトグリコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子のウシゲノム内への挿入の結果としてウシ乳内で産生される。 人乳化乳は更に、ヒトオリゴ糖でグリコシル化されたタンパク質を含んでいる。 上述したように、異種グリコシルトランスフェラーゼの組換え又はトランスジェニック発現を記載する文献はかなりある。 しかしながら、これらの文献には、 本発明で開示する非ヒトトランスジェニック哺乳動物の乳内での二次遺伝子産物の産生が開示されてもいないし、別の方法で示唆されているわけでもない。 文献例を以下に示す: 1)Paulsonの米国特許第5,032,519号は、細胞が天然の膜結合酵素の代わりに可溶性で分泌性のGolgiプロセシング酵素を産生するように細胞を遺伝子操作する方法を教示している。 2)Paulsonの米国特許第5,047,335号は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞がシアリトランスフェラーゼを産生するようにCHO のゲノムを遺伝子工学で改変させることを教示している。 3)国際特許出願第PCT/US91/08216号は、トランスジェニックウシ種の乳内に異種組換えタンパク質を産生し得るトランスジーンを教示している。 この特許出願公開は一次遺伝子産物のみの産生方法を教示している。 この特許出願公開は更に、上記トランスジェニック動物から得られる改変乳の製造及び使用方法を開示している。 4)国際特許出願第PCT/US91/05917号は、より小さな重複DN A断片の相同的組換えによってDNAセグメントを細胞内に作製する方法を教示している。 この特許出願公開は、一次遺伝子産物のみの産生方法を教示している。 5)国際特許出願第PCT/GB87/00458号は、成体雌哺乳動物の乳腺でDNA配列が発現されるように、ペプチドをコードするDNA配列を乳漿タンパク質をコードする哺乳動物の遺伝子内に組み込むことからなるペプチドの産生方法を教示している。 この特許出願公開は、トランスジェニック哺乳動物の乳内で一次遺伝子産物であるペプチドだけを産生する方法を教示し、更には上記トランスジェニック動物から得られる改変乳の製造及び使用方法を開示している。 6)国際特許出願第PCT/GB89/01343号は、ゲノム内に組み込まれた遺伝子構築物を有するトランスジェニック動物でタンパク質物質を産生する方法を教示している。 この構築物は、哺乳動物乳タンパク質遺伝子に由来する5 '−フランキング配列及び乳タンパク質以外の異種タンパク質をコードするDN Aを含んでいる。 この特許出願公開は、トランスジェニック哺乳動物の乳内に一次遺伝子産物である異種タンパク質だけを産生する方法を教示している。 7)ヨーロッパ特許出願第88301112.4号は、特異遺伝子を乳腺にターゲッティングして、上記トランスジェニック動物の乳内に生物学的に重要な分子を効果的に合成し分泌させる方法を教示している。 この特許出願公開は更に、 上記トランスジェニック動物から得られる改変乳の製造及び使用方法、並びにトランスジェニック哺乳動物の乳内に一次遺伝子産物のみを産生する方法を教示している。 8)国際特許出願第PCT/DK93/00024号は、トランスジェニック動物の乳内にヒトκ−カゼインを産生する方法を教示している。 遺伝子構築物は、哺乳動物乳タンパク質遺伝子(例えばカゼイン又は乳漿酸性タンパク質)に由来する5'−フランキング配列及びヒトκ−カゼインをコードするDNAを含んでいる。 このDNA配列は少なくとも1個のイントロンを含んでいる。 この特許出願公開は、トランスジェニック哺乳動物の乳内に一次遺伝子産物である異種ヒトκ−カゼインだけを産生する方法を教示している。 9)国際特許出願第PCT/US87/02069号は、乳内で組み換えタンパク質を発現し得る哺乳動物の作出方法を教示している。 上記刊行物はそれぞれ、トランスジーンの一次遺伝子産物、即ちトランスジーンによってコードされる活性タンパク質又は酵素、の産生手段を何らかの方法で教示している。 上記文献は、非ヒト乳内にグリコシルトランスフェラーゼを産生するためのトランスジェニックな手段を開示している。 しかしながら、上記刊行物のいずれも、活性酵素による産物である所望の二次遺伝子産物の産生手段としてのトランスジェニック動物の使用を教示も示唆もしていないし、特に、 上記刊行物のいずれも、ヒトオリゴ糖又は該オリゴ糖を有する複合糖質を産生するために非ヒト乳内においてトランスジェニックヒトグリコシルトランスフェラーゼを使用することを教示も示唆もしていないし、別の方法で開示しているわけでもない。 活性グリコシルトランスフェラーゼによる産物であるこれらのオリゴ糖を以下では「二次遺伝子産物」と称する。 従って、ヒト乳内で検出される種々のオリゴ糖は、ある種の特異グリコシルトランスフェラーゼの遺伝学的に調節された発現の直接の結果として産生される。 この点に関しては、オリゴ糖は一次遺伝子産物である異種グリコシルトランスフェラーゼ酵素の生化学的活性の結果として合成されるので、これを「二次遺伝子産物」とみなすのが適当であり得る。 ヒト乳は種々のオリゴ糖やタンパク質を含んでいる。 遊離の可溶性オリゴ糖は通常、高度に分化した乳汁分泌乳腺以外の動物の細胞や組織によっては産生されない。 オリゴ糖はヒト乳やウシ乳の炭水化物総含量の主要部分を占める。 哺乳動物乳の主要炭水化物成分は二糖ラクトースである。 ラクトースは通常10mg/ml以上の濃度で検出され、ガラクトースとグルコースとの結合によって合成される。 この反応は、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ酵素によって触媒される。 ウシを含む大半の哺乳動物の乳は数種の付加的なオリゴ糖を極僅かな量しか含んでいない。 対照的に、ヒト乳は、ラクトースよりも大きい数種の付加的な可溶性オリゴ糖を多量に含んでいる。 全てのヒトオリゴ糖は、単糖を順次ラクトースに付加することによって合成される。 ヒト乳内に検出される代表的なオリゴ糖を表1に示す。

    ヒト乳内のオリゴ糖は、ヒト乳房組織中に検出されるある種の特異グリコシルトランスフェラーゼの活性の結果として存在する。 例えば、構造2、5及び8中のα−1,2結合フコース残基は独特のヒトフコシルトランスフェラーゼによって生成され、免疫血液学の分野で公知の表現型を「分泌型(secretor) 」として特徴付ける。 これらの個体は、オリゴ糖が種々のタンパク質に共有結合している唾液や他の粘液分泌物中にヒト血液型物質を合成するので、上記のように特徴付けられる。 構造6、8及び15中のα−1,4結合したフコース残基は、異なるフコシルトランスフェラーゼの酵素作用の結果として生成される。 これらのオリゴ糖は、 「ルイス陽性」血液型を示すとして特徴付けられた個体中に存在する表現型を示す。 このような個体は、ヒト血液型抗原に対応するオリゴ糖構造を合成するためにこのフコシルトランスフェラーゼを使用する。 このオリゴ糖は唾液や他の粘液分泌物中にも検出されており、「ルイス陽性」個体の赤血球細胞の膜上に見出される脂質に共有結合している。 構造5はABO血液型のH抗原に関し、構造6は「ルイスa」血液型抗原である。 構造8は「ルイスb」血液型抗原である。 少なくとも15種のヒト乳タンパク質が同定されている。 これらのタンパク質の中には一般にグリコシル化していると認識されたものがあり、即ちある種の特定のオリゴ糖に共有結合している。 タンパク質に共有結合した特定のオリゴ糖は上記のオリゴ糖と同一又は同様であり、その産生はある種の特異グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子の遺伝学的に調節された通常の発現の結果である。 異種グリコシルトランスフェラーゼが存在すると、タンパク質の翻訳後修飾も影響を受ける。 異種グリコシルトランスフェラーゼによってグリコシル化されたタンパク質も当然「二次遺伝子産物」として知られている。 同種及び異種のタンパク質は共に、同種グリコシルトランスフェラーゼの活性によって生じるのとは異なる方法でグリコシルトランスフェラーゼによって改変される。 これらのオリゴ糖やグリコシル化タンパク質がヒト腸管内での望ましい細菌の増殖を促進することは長く知られている。 更には、ヒト乳内のオリゴ糖は口や喉への有害微生物の付着を阻害すると考えられている。 これらのヒトオリゴ糖及びとりわけグリコシル化タンパク質はウシ乳内には存在しないか又は存在するとしても量が顕著に異なる。 更には上述したように、ウシ乳は主にラクトースだけを含んでいる。 ヒト乳はラクトースだけでなく、他の多数のオリゴ糖を含んでいる。 更には、ヒト乳タンパク質のアミノ酸組成は対応するウシ乳タンパク質のアミノ酸組成とはかなり異なる。 結果として、ウシ乳を含む乳児用調合乳(infants fed infa nt formula)の方が下痢のような腸障害を起こしやすく、又は血漿アミノ酸の比率や量が母乳栄養乳児とは異なり得る。 同じ理由で、免疫学的に危険にさらされた(immunocompromised)年配の危篤状態の患者でも、生化学的にヒト乳の組成によく似た栄養物の摂取が緊急に必要である。 ヒト乳タンパク質及びオリゴ糖の化学的性質は複雑であるため、大規模合成は極めて困難であった。 グリコシル化ヒト乳タンパク質やオリゴ糖を市販の栄養食品に配合する以前に、これらを多量に製造する実用的な方法を考案しなければならない。 この問題に対して考えられる解決方法は、オリゴ糖及び/又はこのヒトオリゴ糖でグリコシル化されたタンパク質の産生を触媒する酵素をコードする遺伝子又はcDNAを発現するトランスジェニック動物、特にトランスジェニックウシを使用することである。 トランスジェニック泌乳家畜動物(例えばウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ及びウシ)を本明細書では、ヒトオリゴ糖及びヒトオリゴ糖でグリコシル化されたタンパク質を含む乳を産出する手段として提示する。 特に、1頭のウシは年間に300kgと多量のタンパク質(主にカゼイン)を含む乳を非常に最小のコストで10,000リットル以上産出し得るので、トランスジェニックウシがオリゴ糖や組換えタンパク質の産生に非常に適している。 従って、発酵設備への投資が不要であるため、トランスジェニックウシは他の組換えタンパク質産生法よりもコストのかからない産生法であるように思える。 更には、乳は日に数回搾取され、実際に合成されて搾乳されるまでの時間は数時間と短いので、ウシ乳腺はコスト的には培養細胞よりも効果的で、連続的に乳を出す。 ウシの遺伝安定性は微生物又は細胞ベースの産生系よりも高い。 更には、ウシは人工授精、胚移植及び胚クローニング技術を用いた生殖が比較的簡単である。 更には、ヒトトランスジェニックタンパク質を含むウシ乳の下流処理には、精製は殆ど又は全く不要であり得る。 このような方法を教示している刊行物を以下で参照する。 しかしながら、これらの刊行物のいずれも、本発明に開示する非ヒトトランスジェニック哺乳動物の乳での二次遺伝子産物の産生を教示も開示もしていないし、他の方法で示唆しているわけでもない。 「Molecular Farming:Transgenic Anima ls as Bioreactors」J. Van Brunt,Biotec hnology,Volume 6,ページ1149−1154,1988は、 種々の異種実体を産生し得るトランスジェニック動物を作出する様々な大型の泌乳家畜動物のゲノムの改変を記載している。 この刊行物は一次遺伝子産物のみの産生方法を示唆している。 国際特許出願第PCT/US91/08216号は、トランスジェニックウシ種の乳内で異種組換えタンパク質を産生し得るトランスジーンを記載している。 この特許出願公開は一次遺伝子産物のみの産生方法を教示している。 この特許出願は更に、上記トランスジェニック動物から得られる改変乳の製造及び使用方法を開示している。 国際特許出願第PCT/GB87/00458号は、成体雌哺乳動物の乳腺でDNA配列が発現されるように、ペプチドをコードするDNA配列を乳漿タンパク質をコードする哺乳動物の造伝子内に組み込むことからなるペプチドの産生方法を記載している。 この特許出願公開は、トランスジェニック哺乳動物の乳内で一次遺伝子産物であるペプチドだけを産生する方法を教示している。 この特許出願は更に、上記トランスジェニック動物から得られる改変乳の製造及び使用方法を開示している。 国際特許出願第PCT/GB89/01343号は、ゲノム内に組み込まれた遺伝子構築物を有するトランスジェニック動物でタンパク質物質を産生する方法を教示している。 この構築物は、哺乳動物乳タンパク質遺伝子に由来する5'− フランキング配列及び乳タンパク質以外の異種タンパク質をコードするDNAを含んでいる。 この特許出願公開は、トランスジェニック哺乳動物の乳内に一次遺伝子産物である異種タンパク質だけを産生する方法を教示している。 ヨーロッパ特許出願第88301112.4号は、特定の遺伝子を乳腺にターゲッティングして、上記トランスジェニック動物の乳内に生物学的に重要な分子を効果的に合成し分泌させる方法を記載している。 この特許出願公開は更に、上記トランスジェニック動物から得られる改変乳の製造及び使用方法を開示し、トランスジェニック哺乳動物の乳内での一次遺伝子産物のみの産生方法を教示している。 国際特許出願第PCT/US87/02069号は、泌乳動物の乳内に組み換えタンパク質を発現し得る哺乳動物の作出方法を教示している。 この特許出願は、本発明で請求するような非ヒトトランスジェニック哺乳動物の乳での二次遺伝子産物の産生を開示しておらず、別の方法で示唆しているわけでもない。 トランスジェニック動物は、多量のヒトタンパク質の産生のために使用することができるが、二次遺伝子産物(例えばヒトオリゴ糖、又はある種の特定のオリゴ糖でグリコシル化されたタンパク質や脂質、又はある種の特定のオリゴ糖でグリコシル化されたヒト乳タンパク質や脂質)の産生には使用されなかった。 上記の刊行物のいずれも、非ヒト哺乳動物乳でのヒトオリゴ糖及び複合糖質の産生方法を開示も示唆もしていない。 上記刊行物は、所望のオリゴ糖でグリコシル化して非ヒト哺乳動物乳中に複合糖質を産生する方法も開示していないし、示唆もしていない。 この結果に到達するには、乳房組織が所望のヒトグリコシルトランスフェラーゼを選択的に発現し、次いである種のタンパク質を所望のオリゴ糖でグリコシル化するように非ヒト泌乳哺乳動物のゲノムを改変させる必要がある。 このアプローチでは、所望のヒトグリコシルトランスフェラーゼをコードするDNAをゲノム内に組み込む必要がある。 文献は、所望のオリゴ糖でグリコシル化して非ヒト哺乳動物乳中にグリコシル化ヒトタンパク質を産生する方法も開示していないし、示唆もしていない。 文献は、所望のオリゴ糖部分でグリコシル化して非ヒト哺乳動物乳中にグリコシル化ヒト乳タンパク質を産生する方法も開示していないし、示唆もしていない。 この結果に到達するには、乳房組織がヒトグリコシルトランスフェラーゼ及び所望のヒトタンパク質の両方を選択的に発現し、次いでこれらを活性ヒトグリコシルトランスフェラーゼにより所望のオリゴ糖で適当にグリコシル化するように、非ヒト泌乳哺乳動物のゲノムを改変させる必要がある。 このアプローチでは、所望のグリコシルトランスフェラーゼをコードするDNAをゲノム内に挿入するだけでなく、所望のヒトタンパク質をコードするDNAをゲノム内に組み込む必要がある。 従って、移植された卵母細胞が所望のグリコシル化及びオリゴ糖産生を達成するのに必要な遺伝子構築物を含むように、受精した卵母細胞にうまく遺伝子が導入されているかどうかを移植前に検出する方法を提供することが本発明の目的である。 哺乳動物種の乳房組織によって細胞外に分泌されるヒトグリコシルトランスフェラーゼを産生し得るトランスジェニック非ヒト泌乳哺乳動物種を提供することが更に本発明の目的である。 更には、上記哺乳動物種によって産出される乳内に乳房組織によって細胞外分泌されるヒトグリコシルトランスフェラーゼを産生し得るトランスジェニック非ヒト泌乳哺乳動物種を提供することも本発明の目的である。 更には、上記哺乳動物種によって産出される乳内に乳房組織によって細胞外分泌されるグリコシル化ヒトタンパク質及びオリゴ糖を産生し得るトランスジェニック非ヒト泌乳哺乳動物種を提供することが本発明の目的である。 本発明は更に、上記トランスジェニック動物の乳内にグリコシル化ヒト乳タンパク質及び脂質を産生し得るトランスジェニック非ヒト泌乳哺乳動物種に関する。 上記トランスジェニック動物の乳内にヒトオリゴ糖を産生し得るトランスジェニック非ヒト泌乳哺乳動物種を提供することが更に本発明の目的である。 本発明は更に、上記トランスジェニック乳由来のグリコシル化ヒトタンパク質、脂質及びオリゴ糖を含む食品組成物に関する。 本発明は更に、トランスジェニック動物の乳から得られたグリコシル化タンパク質、脂質及びオリゴ糖を含む医薬、医学診断及び農業用組成物に関する。 本発明は、その乳腺においてグリコシル化ヒト乳タンパク質などのグリコシル化タンパク質及び脂質を産生し得るトランスジェニックウシ種の提供も目的とする。 本発明は更に、その乳中にヒトオリゴ糖を産生し得るトランスジェニックウシ種の提供も目的とする。 本発明は、上記のようなトランスジェニックウシの乳に由来するグリコシル化タンパク質、脂質及びオリゴ糖を含有する食品組成物にも係わる。 本発明は、トランスジェニックウシの乳から得られたグリコシル化タンパク質、脂質及びオリゴ糖を含有する医薬組成物、医学診断用組成物及び農業用組成物にも係わる。

    発明の開示本発明では、トランスジェニック非ヒト哺乳動物の乳中に二次遺伝子産物を生成させるべく、異種触媒実体をコードするトランスジーンを用いる。 本発明では特に、トランスジェニック非ヒト哺乳動物の乳中に異種オリゴ糖及びグリコシル化複合糖質を生成させるべく、異種グリコシルトランスフェラーゼをコードするトランスジーンを用いる。 本発明はトランスジェニック非ヒト哺乳動物から得られる乳を開示し、この乳は、前記トランスジェニック非ヒト哺乳動物のゲノムが有する少なくとも1種の異種遺伝子の二次遺伝子産物として生成する異種成分を含有することを特徴とする。 本発明は、トランスジェニック非ヒト哺乳動物の乳中に産生される産物も開示し、この産物は異種酵素及び異種抗体の中から選択された触媒実体の作用によって生成し、前記トランスジェニック非ヒト哺乳動物はそのゲノム中に、前記触媒実体をコードする少なくとも1種の異種遺伝子を有する。 上記産物は、例えばオリゴ糖及び複合糖質である。 ヒトオリゴ糖、及び/または或る種のオリゴ糖でグリコシル化されたヒトタンパク質を含有するトランスジェニック乳を製造することが望ましく、なぜならそれによって、ヒトの消費に備えて付加的に精製する必要がほとんど、または全く無い乳マトリックスが得られるからであり、前記トランスジェニック乳は生化学的に人乳に類似する。 本発明は、ヒトでないトランスジェニック哺乳動物によって生産される人乳化乳を開示し、前記トランスジェニック非ヒト哺乳動物のゲノムはヒト触媒実体をコードする少なくとも1種の異種遺伝子を有する。 上記触媒実体は、上記トランスジェニック非ヒト哺乳動物の乳中に存在するオリゴ糖及び複合糖質を生成させる。 本発明は人乳化乳を得る方法も開示し、この方法は(a)非ヒト哺乳動物のゲノムに、前記非ヒト哺乳動物の乳中に二次遺伝子産物を生成させるヒト触媒実体の産生をコードする異種遺伝子を挿入するステップ、 及び(b)前記非ヒト哺乳動物を搾乳するステップを含む。 本発明は、人乳化乳から生物学的産物を得る方法も開示し、この方法は(a)非ヒト哺乳動物のゲノムに、前記非ヒト哺乳動物の乳中に二次遺伝子産物を生成させる異種触媒実体の産生をコードする異種遺伝子を挿入するステップ、 (b)前記非ヒト哺乳動物を搾乳するステップ、及び(c)前記非ヒト哺乳動物の乳から生物学的産物を単離するステップを含む。 本発明はトランスジェニック非ヒト哺乳動物も開示し、この哺乳動物は、そのゲノムが酵素及び抗体の中から選択された異種触媒実体の産生をコードする少なくとも1種の異種遺伝子を有することを特徴とし、前記触媒実体はこの哺乳動物の乳中に第二の異種産物を生成させる。 本発明はトランスジェニックウシも開示し、このウシは、そのゲノムがフコシルトランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、キシロシルトランスフェラーゼ、アセチラーゼ、グルコロニルトランスフェラーゼ、グルコロニルエピメラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、スルホトランスフェラーゼ、β−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ及びN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼの中から選択された異種グリコシルトランスフェラーゼの産生をコードする少なくとも1種の異種遺伝子を有することを特徴とし、このウシの乳は前記グリコシルトランスフェラーゼが生成させた異種オリゴ糖及び複合糖質を含有する。 本発明に有用な非ヒト哺乳動物の代表例は、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、 ヤギ、ヒツジ、ウマ及びウシである。 本発明に有用な異種遺伝子の代表例は、ヒト酵素及びヒト抗体をコードする遺伝子である(本明細書及び請求の範囲中ではヒト酵素及びヒト抗体を触媒実体とも呼称する)。 本発明に有用なヒト酵素は、 例えばグリコシルトランスフェラーゼ、ホスホリラーゼ、ヒドロキシラーゼ、ペプチダーゼ及びスルホトランスフェラーゼの中から選択された酵素である。 本発明の実施に特に有用であるのはグリコシルトランスフェラーゼである。 本発明の実施に特に有用なグリコシルトランスフェラーゼの具体例には、フコシルトランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、キシロシルトランスフェラーゼ、アセチラーゼ、グルコロニルトランスフェラーゼ、グルコロニルエピメラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、スルホトランスフェラーゼ、β−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ及びN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼの中から選択された酵素が有る。 本発明の望ましい異種二次遺伝子産物は、例えばオリゴ糖及び複合糖質である(本明細書及び請求の範囲中では異種二次遺伝子産物を「生物学的産物」、または更に簡略化して「産物」とも呼称)。 二次遺伝子産物として産生される異種オリゴ糖の代表例は、ラクトース、2−フコシルラクトース、ラクト−N−テトラオース、ラクト−N−ネオテトラオース、ラクト−N−フコペンタオースI、ラクト−N−フコペンタオースII、ラクト−N−フコペンタオースIII、ラクト− N−ジフコペンタオースI、シアリルラクトース、3−シアリルラクトース、シアリル四糖a、シアリル四糖b、シアリル四糖c、ジシアリル四糖及びシアリルラクト−N−フコペンタオースである。 ここに開示した二次遺伝子産物として産生される異種複合糖質の具体例は、グリコシル化同種タンパク質、グリコシル化異種タンパク質及びグリコシル化脂質である。 本発明の実施に従い望ましいグリコシル化異種タンパク質の代表例は、ヒト血清タンパク質及びヒト乳タンパク質から成るタンパク質群の中から選択されたタンパク質である。 ヒト乳タンパク質の例には、分泌型免疫グロブリン、リゾチーム、ラクトフェリン、κ−カゼイン、α−ラクトアルブミン、β−ラクトアルブミン、ラクトペルオキシダーゼ及び胆汁酸塩刺激リパーゼの中から選択されたタンパク質が有る。 本発明は、動物の栄養維持に有用である、人乳化乳を含有する経小腸(ent eral)栄養補給品も開示する。 また、動物の治療に有用である、本発明の産物を含有する医薬品も開示する。 本発明は更に、動物の診断に有用である、本発明の産物を含有する医用診断薬も開示する。 本発明は、作物の栽培に有用である、本発明の産物を含有する農業用製品も開示する。 本発明は、その乳中に異種二次遺伝子産物を産生し得るトランスジェニック非ヒト哺乳動物種を作出する方法も開示し、この方法は(a)前記トランスジェニック種の乳房分泌細胞(mammary secre tory cells)において機能する少なくとも1個の発現調節DNA配列と、前記トランスジェニック種の乳房分泌細胞において機能する分泌DNA配列と、組み換え異種触媒実体をコードする組み換えDNA配列とから成るトランスジーンを作製し、その際分泌DNA配列を組み換えDNA配列に作動可能に連結させて分泌−組み換えDNA配列を形成し、この分泌−組み換えDNA配列に前記少なくとも1個の発現調節配列を作動可能に連結させ、このトランスジーンは、該トランスジーンを有する前記トランスジェニック種の乳房分泌細胞において前記分泌−組み換えDNA配列の発現を指令し、それによって、前記乳房分泌細胞において発現される時前記トランスジェニック種の乳中での二次遺伝子産物の生成を触媒する組み換え異種触媒実体を生成させることを可能にし、 (b)前記トランスジーンを胚標的細胞に導入し、それによって得られたトランスジェニック胚標的細胞、または該細胞から形成された胚を受容体である雌親に移植し、 (c)その乳中に前記二次遺伝子産物を産生し得る少なくとも1匹の雌の子孫を同定する、 ステップを含む。 本発明は、その乳中に異種二次遺伝子産物を産生し得るブタ、ヤギ、ヒツジ、 ウマ及びウシなどの大型非ヒト哺乳動物のトランスジェニック作出に有用な方法も開示する。 開示した方法は、 (a)上記トランスジェニック非ヒト哺乳動物の細胞に導入されると上記表現型を付与し得るトランスジーンを調製し、 (b)このトランスジーンをメチル化し、 (c)メチル化したトランスジーンを上記非ヒト哺乳動物の受精卵母細胞に導入して、この細胞のゲノムDNA中への該トランスジーンの組み込みを可能にし、 (d)このようにして得られた個々の卵母細胞を培養して前移植胚とし、それによって各受精卵母細胞のゲノムを複製し、 (e)前記の前移植胚それぞれから少なくとも1個の細胞を採取し、これを溶解させて細胞内のDNAを放出させ、 (f)放出されたDNAを、前記メチル化トランスジーンは切断し得るが、ゲノムDNAへの組み込み及び該DNAの複製の後に生じる非メチル化形態のトランスジーンは切断し得ない制限エンドヌクレアーゼと接触させ、 (g)いずれの前移植胚由来細胞が前記制限エンドヌクレアーゼによる切断に耐性のトランスジーンを含むかを、いずれの前移植胚がトランスジーンを取り込んだかの指標として検出するステップを含む。 本発明は、ステップ(d)〜(f)に従い溶解させて分析する第一の不完全胚(hemi−embryos)を除去する操作も含む、上述の方法に従属する方法も開示し、この方法は、 (g)少なくとも1個の上記第二の不完全胚をクローニングして、 (h)多数のトランスジェニック胚を形成する、 ステップをも含む。 本発明は、2個以上の上記トランスジェニック胚を受容体である雌親に移植して、同じ遺伝子型を有する少なくとも2匹のトランスジェニック非ヒト哺乳動物の集団を得ること、及びゲノムに組み込まれたトランスジーンを有する残りの前移植胚を受容体である雌親に移植して、上記所望の表現型、即ちオリゴ糖及び複合糖質の中から選択された異種二次遺伝子産物をその乳中に産生する能力を有する少なくとも1匹の子孫を同定することも開示する。 本発明に有用なトランスジーンを構成するDNA配列は少なくとも三つの機能部分、即ち(a)以後「組み換え部分」または「組み換え配列」と呼称する、ヒトグリコシルトランスフェラーゼをコードする部分、 (b)シグナル部分、及び(c)発現調節部分を含む。 トランスジーンの組み換え部分は、所望のグリコシルトランスフェラーゼ酵素をコードするDNA配列を含む。 シグナル部分は天然に存在するものか、または遺伝子操作されたものでDNA配列に組み込まれ得る。 このシグナル部分は、グリコシルトランスフェラーゼが細胞のゴルジ装置に運搬されることを保証する分泌配列をコードする。 本発明では、シグナルDNA配列は乳房分泌細胞において機能する。 これらの配列は、作動可能に連結されて発現−シグナル−組み換えD NA配列を形成する。 発現配列は、トランスジーンが或る一定の種類の組織においてのみ発現されることを保証する。 本発明では、発現は乳房分泌組織において生起するように調節される。 トランスジェニック種の乳房分泌細胞において機能する少なくとも1個の発現調節配列がシグナル−組み換えDNA配列に作動可能に連結される。 このように構築されたトランスジーンは、該トランスジーンを保有する乳房分泌細胞においてシグナル−組み換えDNA配列を発現させ得る。 この発現によって、トランスジェニック種の乳房分泌細胞から乳中に分泌されるグリコシルトランスフェラーゼの産生が実現する。 上述の機能部分に加えて、トランスジーンは付加的な要素も含み得る。 例えば、組み換え部分は2個以上のタンパク質をコードし得る。 即ち組み換え部分は、 グリコシルトランスフェラーゼをコードする以外に1種以上の他のヒトタンパク質もコードし得る。 他のグリコシルトランスフェラーゼ及び他の異種タンパク質をコードする複数のトランスジーンを同時にトランスフェクトすることも可能である。 追加のトランスジーンも全て、グリコシルトランスフェラーゼトランスジーンの分泌及び発現調節配列に作動可能に連結される。 複数のトランスジーンの発現によって、グリコシルトランスフェラーゼの産生のみでなく、いずれもトランスジェニック種の乳房分泌細胞から乳中に分泌される他のタンパク質の産生も起こる。 適当な基質の存在下に、グリコシルトランスフェラーゼは個々の単糖単位を所望のオリゴ糖に変換する。 所望のオリゴ糖はトランスジェニック種の乳中に存在する。 同じグリコシルトランスフェラーゼ酵素はまた単糖をタンパク質に、利用可能なグリコシル化部位を介して共有結合させる。 所望のオリゴ糖でグリコシル化されたこのようなタンパク質も、トランスジェニック種の乳中に存在する。 本発明の利点は、以下の詳細な説明を添付図面と共に参照すればより良く理解されよう。

    図面の簡単な説明図1はヒトα−1,2−フコシルトランスフェラーゼのヌクレオチド及びアミノ酸配列である。 図2はフコシルトランスフェラーゼcDNAの増幅及び発現を達成するプロトコルの説明図である。 図3は乳漿酸性タンパク質(WAP)の調節配列(プロモーター)を用いるp WAP−polyAプラスミド構築の説明図である。図4はマウス胚へのマイクロインジェクションに用いるpWAP−フコシルトランスフェラーゼプラスミドの説明図である。図5はトランスジェニックマウスの乳中にヒトα−1,2−フコシルトランスフェラーゼが存在することを示すウエスタンブロットの写真である。図6A〜図6Fは正常マウスもしくは非トランスジェニックマウスから得られた乳試料(図6A及び図6B)及びヒトα−1,2−フコシルトランスフェラーゼを発現するトランスジェニックマウスから得られた乳試料(図6C、図6D、図6E及び図6F)の高速液体クロマトグラフィープロフィールである。図7は高速液体クロマトグラフィー分離後に貯溜したオリゴ糖物質の発蛍光団援用(fluorophore assisted)炭水化物電気泳動のゲルの写真である。図8はフコース−α−1,2結合に特異的なフコシダーゼでオリゴ糖試料を消化した後の発蛍光団援用炭水化物電気泳動ゲルの写真である。図9は、乳から単離したオリゴ糖試料をフコシダーゼとβ−ガラクトシダーゼとの混合物で徹底的に消化した後の単糖組成を示す発蛍光団援用炭水化物電気泳動ゲルの写真である。放出された単糖単位を発蛍光色団(fluorochro me)8−アミノナフタレン−2,3,6−トリスルホン酸(ANTS)で標識して検出を容易にした。図10は正常(非トランスジェニック)マウス、及びヒトα−1,2−フコシルトランスフェラーゼを発現するトランスジェニックマウスから単離した乳タンパク質のウェスタンブロットの写真である。フィルターに移し取ったタンパク質のグリコシル化を、α−1,2−フコース結合に特異的なレクチンを用いて蛍光抗体法(immunofluorescence )により検出した。この図は、トランスジェニック酵素のH抗原産物でグリコシル化された乳タンパク質の存在を証明している。図1〜図10は37 C. F. R. 1.81に従って提供する。

    発明の詳細な説明本発明は、特定のグリコシルトランスフェラーゼ酵素活性によって生じる二次遺伝子産物産生を制御する触媒活性異種グリコシルトランスフェラーゼの、非ヒト哺乳動物の乳房組織におけるin vivo発現に係わる。上記のようなグリコシルトランスフェラーゼ酵素は遊離オリゴ糖の合成、またはオリゴ糖のタンパク質もしくは脂質への共有結合を制御する。上記発現は細胞において、遺伝子操作を用いて当該細胞に特定の異種グリコシルトランスフェラーゼ(一次遺伝子産物)を産生させ、その後当該グリコシルトランスフェラーゼに関連する特定の触媒活性を用いて二次遺伝子産物である特定産物を産生させることにより実現する。グリコシルトランスフェラーゼの場合、二次遺伝子産物には合成されたオリゴ糖のみでなく、グリコシル化されたタンパク質及び脂質も含まれる。オリゴ糖及びグリコシル化タンパク質/脂質はトランスジェニック哺乳動物種の乳中に分泌され、該乳中に遊離形態で見出される。本明細書及び請求の範囲中に用いた「グリコシル化」という語は、1個以上の単糖単位とタンパク質または脂質との共有結合を実現する、発現されたグリコシルトランスフェラーゼにより容易となった酵素的方法によるタンパク質または脂質の翻訳後修飾を意味すると理解される。このようなグリコシル化は、細胞にグリコシルトランスフェラーゼと当該タンパク質または脂質との両方の産生を指示することによって行なわれる。当該タンパク質または脂質は同種実体であっても異種実体であってもよい。本明細書及び請求の範囲中に用いた「同種」という語は、組成物または分子の形態が宿主細胞または宿主動物によって通常産生されるものの形態と同じであることを意味すると理解される。本明細書及び請求の範囲中に用いた「異種」という語は、組成物または分子の形態が宿主細胞または宿主動物によって通常産生されるものの形態と異なることを意味すると理解される。遺伝子操作技術を用いて、宿主動物のゲノムに外来遺伝物質、即ち別の種から得た遺伝物質を組み込む。本明細書及び請求の範囲中に用いた「トランスジェニック細胞」または「トランスジェニック動物」という語は、上記のように形質転換されたゲノムを有する宿主細胞系または動物を意味すると理解される。本明細書及び請求の範囲中に用いた「 トランスジェニック産物」という語は、上記のようなトランスジェニック実体に由来する産物を意味すると理解され、例えばトランスジェニックウシに由来する乳をトランスジェニック乳と呼称する。本発明は、乳腺を構成する細胞が所望のグリコシルトランスフェラーゼを発現するトランスジーンを有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物の作出に一部基づく。 (トランスジェニック乳房細胞ゲノムを、ヒトタンパク質をコードする遺伝子でトランスフェクトすることも可能である)。得られるグリコシルトランスフェラーゼは、トランスジェニック宿主乳房細胞において発現されると、上記のようなトランスジェニック動物によって産生される乳中への可溶性遊離オリゴ糖の生産に有用である。発現されるグリコシルトランスフェラーゼは、トランスジェニック乳房細胞が同種乳タンパク質または異種ヒトタンパク質も発現させる場合、当該タンパク質のグリコシル化にも有用である。同じことが脂質の修飾にも該当し得る。本発明は、フコシルトランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、 グルコシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、キシロシルトランスフェラーゼ、スルホトランスフェラーゼ、 グルコロニルトランスフェラーゼ、β−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ及びN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼなどの様々なグリコシルトランスフェラーゼによるオリゴ糖合成に広く適用できる。アセチラーゼ、 グルコロニルエピメラーゼ、グリコシダーゼ、アセチルトランスフェラーゼ、マンノシダーゼ及びホスホトランスフェラーゼなど、他のゴルジ装置酵素類の産物も、ここに開示した方法で合成可能である。

    発明の好適実施態様フコシルトランスフェラーゼ、特にヒトα−1,2−フコシルトランスフェラーゼ(以後Fuc−Tとも呼称)の産生をコードするDNAの、非ヒト乳腺を構成する細胞のゲノムへの組み込みを次に説明する。 Fuc−T産物の一例に2′ −フコシル−ラクトースが有る。この物質は人乳中のオリゴ糖の一つで、化学式「フコース−α−1,2− Gal−β−1,4−Glc」を有する。他のFuc−T産物に、Fuc−Tによってフコシル化され得るβ−結合末端ガラクトース残基を有する糖タンパク質が含まれる。得られる炭水化物構造体「フコース−α−1,2−ガラクトース− β−R」(前記Rはβ−1,3−GlcNAc、β−1,4−GlcNAc等の中から選択される)は、血液型血清学の分野で「H抗原」として知られている。他のグリコシルトランスフェラーゼ及びゴルジプロセシング酵素も本発明により用い得ることは、当業者には十分に認識される。後述する非限定的な実施例ではトランスジェニックマウスを用いた。マウスゲノムは、Fuc−TをコードするDNAを有しないか、または発現しない。即ち、トランスジェニックマウスがF uc−T、2′−フコシル−ラクトースまたはH抗原を産生すれば、Fuc−T をコードする遺伝子のマウスゲノムへの組み込みに成功したことになる。グリコシルトランスフェラーゼをコードするDNAをトランスジェニック宿主細胞のゲノムに挿入し得ることは当業者に良く知られている。グリコシルトランスフェラーゼのトランスジェニック発現に用い得る細胞系には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、マウスL細胞、マウスA9細胞、ベビーハムスター腎細胞、C−127細胞、PC8細胞、昆虫細胞、酵母及び他の真核細胞系などが有る。本発明の好ましい一具体例において、宿主細胞は、トランスジェニック非ヒト哺乳動物の乳腺の組織を構成する乳腺細胞である。本発明の好ましい具体例では、トランスジェニックマウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマまたはウシを用いる。特に好ましい具体例ではトランスジェニックヒツジ、ヤギまたはウシを用いる。本発明の特に好ましい一具体例では、トランスジェニック乳のウシ乳房組織を用いる。改変した遺伝物質を宿主細胞に導入するのに用いられる操作が正確にどのようなものであるかは重要でない。外来ヌクレオチド配列を宿主細胞に導入する任意の周知操作を用い得る。そのような操作には、プラスミドベクターの使用、ウイルスベクターの使用、並びにクローン化したゲノムDNA、cDNA、合成DN Aまたは他の外来遺伝物質を宿主細胞に導入する他の任意の周知方法が含まれる。用いる特定の遺伝子工学的操作は、少なくとも1個のトランスジーンを宿主細胞に好ましく導入し得、それによって宿主細胞が所望のグリコシルトランスフェラーゼを発現させ得るようになるものでありさえすればよい。本発明の実施において好ましい一技術では、胚標的細胞をトランスフェクトし、このようにして形成したトランスジェニック胚標的細胞を受容代理母体に移植し、その乳中に(1種以上の)遊離ヒトオリゴ糖、またはグリコシル化ヒト組み換えタンパク質を産生し得る少なくとも1匹の雌の子孫を同定する。本発明のきわめて好ましい一具体例は、ウシ種の胚標的細胞をトランスフェクトし、このようにして形成したトランスジェニック胚標的細胞を受容ウシ母体に移植し、その乳中に(1種以上の)遊離ヒトオリゴ糖、またはグリコシル化同種もしくは異種組み換えタンパク質を産生し得る少なくとも1匹の雌のウシ子孫を同定するステップを含む。以下の実施例は、非ヒト哺乳動物宿主細胞のゲノムに特定のグリコシルトランスフェラーゼをコードする異種DNAを挿入することによる前記ゲノムの改変を証明する。この改変によってトランスジェニック宿主は、所望の二次遺伝子産物、特に特定のオリゴ糖の産生を容易にする特定の触媒活性グリコシルトランスフェラーゼを発現させる。乳タンパク質のグリコシル化も証明される。宿主のゲノムに、 オリゴ糖をコードするDNAに加えてヒト乳タンパク質をコードする異種DNA も挿入すると、当該宿主はヒト乳タンパク質も発現させる。同じ宿主がグリコシルトランスフェラーゼも発現させるので、ヒト乳タンパク質は幾種かの特定オリゴ糖でグリコシル化される。宿主において発現させるヒト乳タンパク質には、分泌型免疫グロブリン、リゾチーム、ラクトフェリン、κ−カゼイン、ラクトペルオキシダーゼ、α−ラクトアルブミン、β−ラクトアルブミン及び胆汁酸塩刺激リパーゼが含まれる。オリゴ糖合成及びタンパク質/脂質グリコシル化への上記アプローチは現在使用可能な他の方法に優る利点を幾つか有する。このアプローチは、 (a)グルコースなどの天然炭素源からの糖ヌクレオチドの合成にトランスジェニック乳房細胞を用いることと、 (b)トランスジェニック哺乳動物細胞において異種組み換えグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子を発現させることと、 (c)トランスジェニック動物の天然の乳分泌乳腺に所望構造の異種オリゴ糖を産生させ、この産生は発現された異種グリコシルトランスフェラーゼ酵素の酵素活性によって実現することと、 (d)異種グリコシルトランスフェラーゼ酵素を用いて同種または異種のタンパク質または脂質をグリコシル化することとの新規な組み合わせに基づく。次に述べる実験で、以下の点を説明する。 (a) ヒトα−1,2−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子をヒト表皮癌(e pidermal carcinoma)細胞系から単離してクローン化した。上記酵素はオリゴ糖2′−フコシル−ラクトースの合成、及び血液型特異的H抗原でのタンパク質のグリコシル化を実現する。 (b) 上記遺伝子の機能特性を、培養非ヒト細胞系において触媒活性α−1, 2−フコシルトランスフェラーゼを発現する能力によって証明した。 1,2−フコシルトランスフェラーゼの存在は、この酵素に特異的である酵素活性アッセイによって確認した。触媒活性α−1,2−フコシルトランスフェラーゼの存在はまた、該酵素を発現させた細胞の表面にH抗原が存在することを示す蛍光抗体法を用いることによっても確認した。 (c) α−1,2−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子産物を発現させ得る非ヒトトランスジェニック動物の作出における上記遺伝子の有用性を、触媒活性α −1,2−フコシルトランスフェラーゼを発現し得るヒトα−1,2−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子を有するトランスジェニックマウスを首尾よく発生させることによって証明した。 (d) 非ヒトトランスジェニック動物の乳房組織における触媒活性ヒトα−1 ,2−フコシルトランスフェラーゼの発現。この酵素の存在は直接酵素活性アッセイ、及び該酵素に対して結合特異性を示す抗体を用いる蛍光抗体法によって確認した。 (e) 発現されたヒトα−1,2−フコシルトランスフェラーゼの触媒活性がもたらす、非ヒト乳中への二次遺伝子産物の産生。前記産物には、乳中へ放出されるヒトオリゴ糖2′−フコシル−ラクトース、及び上記酵素のH抗原産物でグリコシル化された乳タンパク質が含まれる。二次遺伝子産物の存在は、化合物の生化学分析、及びH抗原に対して結合特異性を示すレクチンを用いる蛍光抗体法によって確認した。以下の実施例は本発明の範囲の例示として示してあり、請求の範囲に記した本発明を限定するものと看做すべきでない。実施例1及び2では組織培養系を用いる。これらのin vitro実験は、 酵素活性を持つ異種グリコシルトランスフェラーゼの発現が可能であることを証明するために行なった。実施例1及び2は本発明の実施(enablement )にとって重要でなく、単に本発明の理解及び認識を確実にするべく提示してある。実施例3〜6では、トランスジェニック非ヒト哺乳動物の乳中への異種二次遺伝子産物のin vivo産生が可能であることを証明する。実施例3〜6は、本発明の教示、範囲、及び請求の範囲の内容の実施のために提示してある。上記に照らして、本発明者は37 C. F. R. §1.802の下での生物物質寄託は不要であると考える。

    実施例1

    ヒト表皮癌細胞系からのヒトα−1,2−フコシルトランスフェラ

    ーゼ遺伝子の単離ヒトα−1,2−フコシルトランスフェラーゼをコードするcDNAを表皮癌細胞系(A431)cDNAライブラリーから単離したが、なぜなら以前この供給源からα−1,2−フコシルトランスフェラーゼがクローン化されたからである(V.P.Rajan等,J.Biological Chemistry,vol.264,pp.11158−11167,198 9)。前記文献は本明細書に参考として含まれる。タンパク質コーディング配列のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)媒介増幅後、cDNAを細菌ベクター中にクローン化して増幅遺伝子のcDNA配列を決定した。前記DNA配列はα−1, 2−フコシルトランスフェラーゼの、別々に単離した6個のクローンそれぞれから決定した。このヌクレオチド配列及び対応するアミノ酸配列を図1に示す。上記cDNA配列を決定するべく、各々31ヌクレオチド(31マー)を有する2 個のα−1,2−フコシルトランスフェラーゼプライマーを、公表されているα −1,2−フコシルトランスフェラーゼcDNA配列に基づき設計した。プライマーBigNH2は、Fuc−Tの転写が始まる27位(読み取り枠開始位置) に開始メチオニン残基を有した。第二のプライマーBigCOOHは10位に終結コドンを有した。これらのプライマーを図2に示す。 PCR反応混合物は、約1μMの各プライマーと、PCR緩衝液を伴った1μgの鋳型と、Taqポリメラーゼとを含有した。 P CR反応はサーマルサイクラー(thermal cycler;Perkin and Elmer,Model 840)において生起させ、その際94℃ で1分間、60℃で3分間及び72℃で3分間の温度サイクルを30回実施し、 その後72℃での加熱を5分間延長した。 PCR反応生成物を0.8% w/v 低融点アガロース上での電気泳動に掛けた。 1.1kb断片を検出した。この断片を切り出し、PCRIIクローニングベクター中にサブクローン化した。以後選択体(selectant)と呼称する1個の形質転換体を選択し、制限分析とヌクレオチド配列分析との両方で特性解明した。 DNA配列決定は、Appli ed Biosystems Model 373A自動DNA配列決定装置を用いて行なった。挿入部分の制限パターンは、α−1,2−フコシルトランスフェラーゼのコーディング領域との類似性を示した。この候補クローンのヌクレオチド配列は公表配列と、640位以外同じであった。 in vitro部位特異的変異処理を用いて640位の欠陥単独塩基を修正し、それによって野生型配列を得、 この配列を後述するトランスフェクション実験に用いた。

    実施例2

    ヒトグリコシルトランスフェラーゼの宿主細胞発現この実施例では、特定のヒトグリコシルトランスフェラーゼであるα−1,2 −フコシルトランスフェラーゼ即ちFuc−Tを発現し得る遺伝子での培養マウスL細胞及びチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞のトランスフェクションについて述べる。トランスフェクション用に上記細胞系を選択したのは、その天然ゲノムがFuc−TをコードするDNAを持たないからである。トランスフェクション後に上記細胞系がFuc−Tまたはその酵素産物(2′−フコシル− ラクトース、または糖タンパク質に結合したH抗原)を産生することが判明すれば、トランスフェクションの成功が証明されたことになる。この証明は、H抗原に選択的に結合する特異的抗体及び/または特異的レクチンを用いる蛍光抗体法によって行なう。トランスフェクションに用いるFuc−T遺伝子は実施例1に述べたようにして得た。トランスフェクションの方法及び用いた物質は下記の通りである。フェニル−β−D−ガラクトシドはSigma Chemical Co. から入手した。比活性278mCi/mmolのヌクレオチド糖であるGDP−L −(U−

    14 C)フコースはAmersham Co. から購入した。 A431ヒト表皮癌cDNAライブラリーは、The University of Mi ami,Oxford,OhioのDr. Nevis Frigienから贈与を受けた。 PCRIIベクターはInvitrogen Co. から購入した。発現ベクターpQE11はQiagen Inc. から購入した。プラスミドpS V2−neoはPharmacia Fine Chemicals Co. から入手した。プラスミドpMet−FucT−bGHはOhio Univer sity,Athens,OhioのDr. Xhou Chen及びDr. Br uce Kelderから入手した。この構築物はFuc−TをコードするcD NAを含む。プライマーはFischer Scientific Co.のO peron Technologyによって合成された。 H抗原に対するマウスモノクローナル抗体はDako Co. から購入した。フルオレセインイソチオシアネート標識ヤギ抗マウス抗体はSigma Chemical Companyから購入した。 α−1,2−フコシルトランスフェラーゼの発現を検出する手段として、この酵素に対するウサギポリクローナル抗体を生成させた。抗体誘導において抗原として作用する酵素を十分に生成させるべく、選択体の挿入部分を、枠内に6XHisラベルを持つ誘導発現ベクター(pQE11)中にサブクローン化した。 6XHis標識タンパク質は、ニッケルアフィニティークロマトグラフィーカラムで容易に精製された。考え得る細胞毒性を回避するために、α−1,2−フコシルトランスフェラーゼの疎水性領域を欠失させた。これを達成するために、新たなプライマー2個を構築した。第1のBamHI−NH2は60位で鋳型にハイブリダイズし、第2 のプライマーSal I COOは終結コドンにまたがる。 BamHI部位及びSal Iを上流及び下流プライマー上に遺伝子操作により作製した。 PCR産物をフレーム内で6XHis標識との融合を可能にするpQE11発現ベクターのBamHI/Sal I部位にサブクローン化した。 Ni−アガロースアフィニティーカラムを用い、 3mgの融合タンパク質(α−1,2−フコシルトランスフェラーゼ−6XHi s)を精製した。該物質をFuc−T特異的ウサギポリクローナル抗体の産生に用いた。

    細胞系及び培養 : Washington,D. C.のAmerican Tissue Cul ture Collection(ATCC)からマウスのL細胞及びCHO細胞を得た。 10%ウシ胎児血清(GIBCO)、80μg/mlのペニシリン( Sigma)、80μg/mlのストレプトマイシン(Sigma)及びL−グルタミン(Sigma)を補充した最少必須培地α(α−MEM、GIBCO, Grand Island,New York)(以下α−MEM/10%FC Sと称する)中で細胞を増殖させ、トランスフェクトしたL細胞は、400μg /mlのG418を含むα−MEM(Gibco)上で増殖させた。トランスフェクトしたCHO細胞は、1000μg/mlのG418(GIBCO)を含むα−MEM上で増殖させた。

    過渡的トランスフェクション : 8ウエルチャンバースライド(Lab−Tek)上で集密度75%になるようにL細胞を増殖させた。各チャンバーのpMet−Fuc−bGH DNA(2μg)、リポフェクション(2μl )及び200μlのOpti−MEM Medium(GIBCO)にトランスフェクションカクテルを加えた。 37℃で6時間インキュベートした後、200 μlのα−MEM/10%FCSを加え、37℃でさらに48時間インキュベートした後、以下に記載のように間接免疫蛍光法でスライドを処理した。クローン化cDNA断片の、機能性α−1,2−フコシルトランスフェラーゼをコードする能力を、培養したマウスL細胞の細胞表面上の該酵素の触媒産物、 即ちH抗原の存在を示すことによりテストした(通常L細胞はその膜上にH抗原を有していない)。実施例1に記載の選択体の野生型挿入物をEcoR1部位のプラスミドpMet−bGHにサブクローン化した。該構築物におけるα−1, 2−フコシルトランスフェラーゼ活性の発現はメタロチオネインプロモーターにより調節される。このプロモーターは亜鉛誘発性である。マウスのL細胞を過渡的にpMet−Fuc−bGH構築物でトランスフェクトし、以下に記載の一次抗H抗原マウスモノクローナル抗体を用いる免疫蛍光法を用いて細胞表面上のH 抗原構造体の存在を確認した。蛍光標識二次抗体はヤギ抗マウス抗体であった。フコース−α−1,2−ガラクトース構造体に特異的に結合する蛍光標識レクチンであるUlex europ aeus凝集素1を用いて、H抗原の存在をさらに確認した。

    間接免疫蛍光法トランスフェクションが成功したことは、細胞表面上のH抗原の存在によって示された。 8ウエル組織培養チャンバースライドを用いて間接免疫蛍光アッセイを実施した。細胞を各チャンバーに適切な密度で装入し、37℃で一晩インキュベートし、次いで、H抗原についてアッセイした。チャンバースライドをリン酸緩衝塩水(PBS)で洗浄し、100μlのハンクス平衡塩溶液(HBSS)中の2%ホルマリン溶液で固定し、1%FCS中のサポニン(2mg/ml;Si gma)で透過性とし、抗H抗体の1:1000希釈物と共に湿潤チャンバー中室温で60分間インキュベートした。その後、スライドをPBSで3回洗浄し、 FITC標識ヤギ抗マウス抗体の1:1000希釈物と共に湿潤チャンバー中室温でさらに60分間インキュベートした。加湿により試料の乾燥を防止した。免疫蛍光法によれば、L細胞のトランスフェクション効率、即ちH抗原を発現する形質転換L細胞%は約30%であった。上記の結果は、Fuc−TをコードするDNAにより非ヒト哺乳動物細胞系が首尾良くトランスフェクトされたことを明らかに示している。トランスフェクトされた培養細胞系は、一次遺伝子産物Fuc−Tだけでなく、修飾糖タンパク質をも産生した。 Fuc−T活性の結果として、修飾タンパク質はH抗原を有する。これらの結果は、Fuc−Tをコードするクローン化cDNA断片が酵素的に活性なFuc−Tを発現し得ることを証明している。従って、このcDNAを以下に記載のトランスジェニック動物の作出に用いた。

    実施例3

    特定のヒトグリコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を有す

    るトランスジェニック非ヒト哺乳動物この実験は、トランスジェニック非ヒト哺乳動物が、触媒的に活性な異種グリコシルトランスフェラーゼを産生し得ることを証明する。より具体的に言えば、 ヒトα−1,2−フコシルトランスフェラーゼのトランスジェニック動物の作出を証明する。トランスジェニックマウスは、マウス胚のゲノムにヒトFuc−TcDNAを微量注入して作出した。単個細胞期にマウス受精卵を分離し、実施例1に示されているヒトα−1,2−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子を含むトランスジェニック構築物を雄性前核に注入した。次いで、これらの胚を、前もって滅菌雄と交配させておいた仮性妊娠マウスに移植した。 PCR増幅を用い、挿入したヒト遺伝子に特異的なプローブを用いて尾の断片から得た染色体DNAを分析して、生まれてから約25日後にトランスジェニック創始マウスを同定した。当業界の標準的技術を用いて所望の形質転換を達成した。このような詳細は、本明細書に参照として組み込むものとし且つ本明細書においてもさきに取り上げた以下の参考文献に極めて詳細に記載されている: (a)国際特許出願PCT/US90/06874号; (b)国際特許出願PCT/DK93/00024号; (c)国際特許出願PCT/GB87/00458号;及び(d)国際特許出願PCT/GB89/01343号。本発明の1つの態様は、非ヒト哺乳動物の乳における触媒的に活性なヒトグリコシルトランスフェラーゼの発現及び所望の二次遺伝子産物を形成するための該グリコシルトランスフェラーゼの使用に関する。トランスジェニックマウスの乳汁分泌の間にヒト遺伝子を乳腺特異的に発現させるために、マウス由来の乳漿酸性タンパク質(WAP)の調節配列(プロモーター)を用いて、ヒトα−1,2−フコシルトランスフェラーゼを発現させるためのトランスジェニック構築物を産生した。マウスWAPプロモーターは、National Institutes of Health、Bet hesda、MarylandのL. Henninghauser博士から寄贈されたものであった。該材料を用いて図3に示されているpWAP−ポリAプラスミドを構築した。該プラスミドは融合遺伝子の3′末端にウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル配列(ポリA)を含み、それによってメッセンジャーRN Aの効果的な発現、プロセシング及び安定性が得られる。該プラスミドにヒトα −1,2−フコシルトランスフェラーゼ(Fuc−T)遺伝子を挿入して、図4 に示されているpWAP−ポリA−Fuc−Tプラスミドを形成した。このプラスミドを上記のマウス胚の微量注入に用いた。 2〜4μg/ml濃度のDNA微量注入を用い、16回の注入により合計85匹の仔を得た。 2回の注入だけでは妊娠させることができなかった。一回の注入による同腹仔のサイズは同腹仔当たり平均3〜10匹の仔が標準であった。 85匹の仔マウス全てについて尾の生検を実施した。尾の生検アッセイにより、以下F

    0と称する創始集団(founder population)中9匹が、ヒトα−1,2−フコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を有していることが判明した。これは、約11%のトランスジェニックマウス作出効率に相当し、5〜25%の予想作出効率範囲に該当する。 F

    0後代は、8匹の雄と1 匹の雌から構成されていた。次いで、創始マウス中6匹を正常なマウスと交配して、合計98匹の後代を得た。尾の生検及びPCR分析により測定すると、38 匹の子孫(以後F

    1と称す)が、ヒトα−1,2−フコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を有していた。これは、約36%のF

    1効率に相当する。 F

    1

    世代は、19匹の雄と19匹の雌からなる。表2は、得られた結果の要約である。 15匹のF

    1 (第2世代)雌を成熟させ、正常なマウスと交配した。 妊娠したF

    1雌を出産させた。 出産から10日後にこれらのF

    1母親中4匹から乳を採取した。 乳の採取は、当業界において標準的な2つの方法中の1つを用いて行った: (a)捕獲フラスコ及び吸引カップに接続された真空ラインを用いる乳房吸引; 又は(b)動物を麻酔して殺し、次いで乳頭に穴をあけて乳腺から流体内容物を放出させる。 乳試料は、下記の分析手順にかけるまでドライアイス上で凍結保存した。 先ず捕集した乳試料の乳タンパク質及び脂質からオリゴ多糖類を分離した。 これは、 A. Kobata(Methods in Enzymology,第2 4章、第28巻,262−271ページ,1972)及びA. Kobataら( Methods in Enzymology,第21章,211−226ページ,1978)に記載の方法を用いて行った。 乳試料を以下のように処理した。 対照(非トランスジェニック)動物及びトランスジェニック動物から得た典型的には90〜100μlの試料を、円錐形ポリプロピレン遠心管中、10,000 相対遠心力(RCF)で20分間遠心分離にかけた。 遠心分離により、乳は、殆ど脂質からなるクリームの上層と下層との2層に分離した。 可溶性物質を含む下層を取り出して別の遠心管に移した。 2倍容量の氷冷エタノールを加え、攪拌して混合し、10,000RCFで遠心分離した。 エタノール可溶性上清を回収し、Speed−Vac濃縮機を用いてアルコールを蒸発させて濃縮した。 エタノール不溶性タンパク質ペレットをその後の分析まで−70℃で凍結保存した。 濃縮後、オリゴ糖含有抽出物を初期の乳試料と等量になるように水に再懸濁した。 これらの再懸濁試料はその後で使用するまで冷却オートサンプラー中4℃で保存した。 適切な場合には、該試料を実施例4〜7に記載の成分分析にかけた。 本発明の1つの態様は、非ヒト泌乳哺乳動物の乳腺における異種グリコシルトランスフェラーゼのトランスジェニック発現である。 異種グリコシルトランスフェラーゼの発現は、2つの方法: (a)酵素(一次遺伝子産物)自体の存在を測定することにより、直接的に;及び(b)トランスジェニック動物の乳中の酵素産物(二次遺伝子産物:オリゴ糖又はグリコシル化タンパク質)の存在を測定することにより、間接的に示され得る。 先に記載のように、マウスのゲノムは、H抗原の合成に係わる特定のα−1, 2−フコシルトランスフェラーゼをコードしていない。 従って、トランスジェニックマウスの乳中にFuc−T又はFuc−T産物が存在すれば、ユニークな合成手段、従って、二次遺伝子産物を得る手段を提供する遺伝子導入が成功したことになる。 本発明の1つの重要な態様は、非ヒト動物の乳における異種二次遺伝子産物の産生である。 先に述べたように、二次遺伝子産物は、酵素の直接産物、 即ちオリゴ糖だけでなく、該オリゴ糖との共有結合によりグリコシル化されるグリコシル化同種若しくは異種タンパク質又は脂質をも含み得る。 採取した実施例3の乳を、ヒトα−1,2−フコシルトランスフェラーゼ、及び二次遺伝子産物、特に2′−フコシルラクトース、及びH抗原でグリコシル化されたタンパク質の存在について分析した。 実施例4、5、6及び7は、非ヒト動物の乳におけるヒトFuc−T及びFuc−T産物の産生を証明する。

    実施例4

    トランスジェニック非ヒト哺乳動物の乳における特異的グリコシルト

    ランスフェラーゼの産生を証明する分析この実施例は、トランスジェニックマウスの乳におけるヒトα−1,2−フコシルトランスフェラーゼ産生の実現可能性を示している。 上記のように、マウスWAPプロモーターを用いて、ヒトα−1,2−グリコシルトランスフェラーゼの部位特異的乳腺発現を確認した。 上記実施例3のマウスから得たエタノール不溶性乳タンパク質沈降物を、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)含有ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE )緩衝液に再懸濁した。 タンパク質ペレットの再懸濁に用いたSDS−PAGE 緩衝液の量は、初期乳試料と全く同量であった。 再構成された試料をα−1,2−フコシルトランスフェラーゼの存在についてアッセイした。 この存在は、下記のようなイムノブロット法、より具体的にはウエスターン法を用いて測定した。 SDS−PAGEに再懸濁したタンパク質ペレットの5μl試料を12.5% ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動させた。 電気泳動は150ボルトで実施した。 電気泳動後、分離した蛋白質をニトロセルロース膜に移した。 96mMグリシン、20%メタノール及び0.01%SDSを含む12.5mM Tris− HCl緩衝液(pH7.5)を用い、100ボルトで1時間移動させた。 移動後、ニトロセルロース膜上に残った非結合反応性基を、0.5M NaCl及び2 %ゼラチンを含む50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)(以下TB Sと称す)中でインキュベートしてブロックした。 その後で、0.05%Twe en−20を含むTBSで膜を3回洗浄した。 α−1,2−フコシルトランスフェラーゼ特異的ウサギポリクローナル抗体の1:500希釈物を含む1%ゼラチン/TBS中で膜を18時間インキュベートした。 該ポリクローナル抗体は実施例2に記載のようにして得た。 TB S−Tweenでリンスした後、膜を、予め西洋ワサビペルオキシダーゼに結合させておいたヤギ抗ウサギIgGを含む1%ゼラチン−TBS溶液と共にインキュベートした。 次いでTBS−Tweenで膜を洗浄した。 0.018%の過酸化水素と、30mgの4−クロロナフトールを含む10mlのメタノールとを含む50ml容量のTBS中でニトロセルロース膜をインキュベートして、該膜上のタンパク質の存在及び位置を視覚化した。 図5は、一匹の対照(非トランスジェニック)動物及び2匹のトランスジェニック動物から得た乳試料についてのこの実験の結果を示している。 図5中でトランスジェニック動物は28−89及び20−119として示されている。 図5では、非トランスジェニック動物は対照と表記されている。 図5は、2匹のトランスジェニック動物から得た乳試料には極めて濃いバンドが明瞭に存在するが、対照の非トランスジェニック動物から得た乳には存在しないことを示している。 濃いバンドはα−1,2−フコシルトランスフェラーゼの予測分子量に対応する約46キロダルトンの相対分子量の位置に明瞭に存在する。 濃いバンドは、約30 〜25キロダルトンの範囲の低い相対分子量に対応する位置にも存在する。 これらのバンドは非トランスジェニック動物由来の乳試料には存在しない。 これらの低分子量バンドは恐らくFuc−Tの断片に対応するものと推測されるが、この推測は本出願人を拘束するものではない。 これらの結果は、トランスジェニック動物由来の乳試料がFuc−Tを含んでいるのに対し、 非トランスジェニック動物由来の乳試料がFuc−Tを含んでいないことを証明している。

    実施例5

    トランスジェニック非ヒト哺乳動物の乳における特異的異種二次遺伝

    子産物の産生を証明する分析この実施例は、非ヒトトランスジェニック哺乳動物の乳における異種二次遺伝子産物産生の実現可能性を証明する。 より具体的に言えば、この実施例は、非ヒト動物の乳におけるFuc−Tの二次遺伝子産物産生能を示す。 最も具体的には、トランスジェニック乳における二次遺伝子産物、即ち2′−フコシルラクトースの存在が示された。 対照の非トランスジェニックマウスの乳は、2′−フコシルラクトースを含んでいない。 かつてReddy及びBush(Analytical Biochemistry,第198巻、278−284ページ,1991)及びTownsend及びHardy(Glycobiology,第1巻,13 9−147ページ,1991)によって記載されたDionex装置上の高速液体及びイオン交換クロマトグラフィーの組合わせを用い、実施例3に記載のようにして得た蒸発器にかけたオリゴ糖抽出物を分析・分離した。 これらの技術は当業界において周知且つ標準的なものである。 オリゴ糖抽出物の分離及び分析についての実験設定の詳細、溶離プロフィール及び条件は以下の通りであった:Di onex装置に、溶離緩衝液からCO

    2を除去するガス抜き装置、カラム溶離剤からイオンを除去するイオンサプレッサー及びイオンサプレッサーによるイオンの除去を確認するオンライン導電計を取り付けた。 クロマトグラフィーのパラメーターは以下の通りであった: 稼働時間: 45分 ピーク幅: 50秒 ピークしきい値: 0.500 ピーク面積リジェクト: 500 注入量 20L 流速 1.0ml/分。 表3に示されている溶離勾配プログラムは、以下の3種の溶離剤を含んでいた: 溶離剤1: 100mM 水酸化ナトリウム中600mM酢酸ナトリウム 溶離剤2: ミリ−Q NanoPure水 溶離剤3: 200mM 水酸化ナトリウム。 α−1,2−フコシルトランスフェラーゼを発現する4匹のトランスジェニック動物及び2匹の対照マウスから得た乳試料のクロマトグラフィープロフィールを図6A〜図6Fに示す。 2′−フコシルラクトース(トランスジーンがコードする酵素により合成されたオリゴ糖産物である)はラクトースより後に溶離されることが判明した。 該プロフィールを検討してみると、トランスジェニック動物のみが2′−フコシルラクトース標準と同時溶離される炭水化物を含む乳を産生することが判明した。 クロマトグラフィーのピーク面積に基づき、標準法を用いてトランスジェニック動物由来の乳試料中に存在する2′−フコシルラクトースの濃度を計算することができた。 データを表4に要約する。 このデータは、本発明により、二次遺伝子産物、即ち2′−フコシルラクトースが、トランスジェニック非ヒト哺乳動物の乳中で産生され得ることを証明している。 オリゴ糖のさらなる特性決定をするために、異なる炭水化物分析法を用いた。 発蛍光団援用炭水化物電気泳動(FACE)は、最初にP. JacksonによってJ. C hromatography、第270巻、705−713ページ、1990に記載された方法である。 FACE法を用いて、2′−フコシルラクトースと同時溶離される炭水化物が電気泳動系において2′−フコシルラクトース標準品と同じ移動度を有することが明確に示された。 これは、トランスジェニック乳試料中に含まれていたオリゴ糖が2′−フコシルラクトースであることをさらに裏付けるものである。 推定2′−フコシルラクトースを用いてFACE実験を実施するために、Di onex−HPLCクロマトグラフィーの間に分離された画分をプールした。 図6A〜図6Fにおいて矢印(横軸上に示されている)間の画分を各試料からプールした。 各プールの部分(1/8)を対照マウス及び2匹のトランスジェニックマウスから得、Glyko Inc. (Novato,California) から得た8−アミノナフタレン−2,3,6−三スルホン酸(ANTS)を用いて45℃で3時間標識した。 乾燥試料を5 μlの標識試薬及び5μlの還元試薬溶液(シアノホウ水素化ナトリウム)に再懸濁し、45℃で3時間インキュベートした。 得られた標識試料を乾燥し、6μ lの脱イオン水に再懸濁した。 該溶液からの2μlアリコートを別のマイクロ遠心管に移した。 グリセロールを含むローディング緩衝液2μlを加え、次いで、 混合物を激しく攪拌した。 次いで、混合物全体(4μl)を「O−結合オリゴ糖ケル」(O−linked−oligosaccaride)(Glyko)中に電気泳動させた。 20ミリアンペア定常電流下に15℃で電気泳動を実施した。 このようにして得られた移動ゲルパターンのプロフィールをMillipor eイメージ装置を用いて画像化した。 図7は、このようにして得られたゲルの画像を示している。 対照マウス由来の試料(レーン2)は、ラクトース標準マーカーの位置で移動する単一のバンドを示している。 トランスジェニックマウスから得た試料(レーン3及び4)は、高分子量の追加バンドを含んでいた。 図面中に矢印で示されているこのバンドは、 2′−フコシルラクトース標準(レーン6)の位置に移動する。 フコースのα−1,2−結合部で特異的に切断する酵素フコシダーゼの存在下に、図6A〜図6Fに示されているプールの1/8に相当するアリコートをインキュベートして、オリゴ糖のさらなる特性決定を行った。 用いた酵素は、Corynebacterium種由来であり、Panvera Corp. ,Madison,Wisconsinから購入した。 乾燥オリゴ糖を、20ミリ単位の酵素を含む20μlのリン酸緩衝液(pH6.0)の存在下37℃で一晩インキュベートした。 次いで消化物をANTS標識し、上記のように電気泳動にかけた。 図8のゲルはこの実験の結果を示している。 Dionex−HPLCクロマトグラフィーにおいて2′−フコシルラクトースと同時溶離され、ANTS標識して電気泳動させた後の該分子と共に同時移動する物質は、特異的加水分解酵素α −1,2−フコシダーゼの作用をも受けやすいことが容易に明らかである。 3′ −フコシルラクトース(2′−フコシルラクトースに最も類似した異性体である)は該酵素の作用を受けない。 この実験により、トランスジェニック乳試料中のオリゴ糖が2′−フコシルラクトースと同一であることがさらに確認される。 対照的に、非トランスジェニック対照動物から得た乳試料(レーン6及び14) は、加水分解後に、ガラクトース標準の位置に移動する単一のバンド(レーン7 及び15)のみを生成する。

    実施例6

    トランスジェニック非ヒト哺乳動物の乳中に産生されたオリゴ糖を同

    定するための分析この実験では、オリゴ糖を含む単糖単位を評価した。 このために、対照マウス及びトランスジェニックマウスから得てプールした乳試料をグリコシダーゼ混合物で徹底的に処理した。 図6A〜図6Fに示されているプールからのアリコート(水20μl中の総量の1/8)を円錐管中で蒸発乾燥させた。 乾燥内容物を、 20ミリ単位のα−1,2−フコシダーゼ(Panvera,Madison, Wisconsin)を含む溶液20μl及び30単位のE. coli β−ガラクトシダーゼ(Boehringer Mannheim,Indianap olis,Indiana)を含む懸濁液20μlに再懸濁した。 得られた懸濁液をトルエン雰囲気下に37℃で18時間インキュベートした。 このようにして、フコシダーゼとβ−ガラクトシダーゼの連続的作用を受けやすいオリゴ糖のみをそれらの対応単糖単位に加水分解した。 インキュベーション後、混合物をSpeed Vac C oncentrator中で乾燥した。 この加水分解で得たオリゴ糖を上記実施例5に記載のように標識した。 標識単糖を「単糖ゲル」(Monosaccha ride Gel)(Glyko)中で電気泳動にかけた。 30ミリアンペア、 定常電圧下に1時間10分電気泳動を実施した。 図9はこの実験の結果を示している。 トランスジェニック動物から得た乳試料(レーン2及び4)は、フコース、ガラクトース及びグルコースに対応する3つのバンドを含んでいる。 2′−フコシルラクトース標準から放出された単糖(レーン1)は、2匹のトランスジェニック動物から得たオリゴ糖のプールから放出された単糖(レーン2及び4)と同一であった。 3′−フコシルラクトースはグリコシダーゼの酵素作用を受けない(レーン3)。 この結果は、トランスジェニック乳中のオリゴ糖が2′−フコシルラクトースであることを明らかに証明している。 総合的に見れば、上記結果は、記載且つ請求されている本発明がトランスジェニック動物の乳中に二次遺伝子産物を産生し得ることを証明している。 より具体的に言えば、該実験データは、一部がグリコシルトランスフェラーゼをコードするDNAからなるトランスジーンを含むトランスジェニック動物の乳中にオリゴ糖を産生することの実現可能性を証明している。 本発明をさらに裏付けるために、トランスジェニック動物の乳における糖タンパク質のような他の複合糖質の存在を実証することを決定した。 これらの糖タンパク質は、タンパク質と、グリコシルトランスフェラーゼの産物であるオリゴ糖との共有結合付加物である。 オリゴ糖はグリコシルトランスフェラーゼの媒介によりタンパク質に共有結合する。

    実施例7

    トランスジェニック非ヒト哺乳動物の乳における複合糖質の産生を証

    明する分析この実施例は、非ヒトトランスジェニック動物の乳における糖タンパク質産生の実現可能性を示す。 オリゴ糖部分は一次遺伝子産物であるグリコシルトランスフェラーゼの活性の結果として産生されたものと同じオリゴ糖である。 得られたグリコシル化タンパク質は二次遺伝子産物の一例である。 実施例4に記載のようにトランスジェニック動物及び対照動物の乳タンパク質からウエスターンブロットを作成した。 しかし、移された膜をポリクローナルウサギ抗体と共にインキュベートする代わりに、該膜をレクチン、Ulex europaeu s凝集素I(UEA I)、と共にインキュベートした。 このレクチンはフコースのα−1,2結合部に特異的に結合する。 このために、実施例3に記載のタンパク質ペレットを13,000×gで10 分間遠心し、上清(過剰なエタノール及び水)を除去し、得られたペレットを初期乳量と等容量のSDS−PAGE試料緩衝液に再懸濁した。 これらの抽出物から5μlを取り、実施例3に詳細に記載されているように12.5%ポリアクリルアミドSDS−PAGE上で電気泳動させた。 電気泳動後、タンパク質を、1 2.5mM Tris−HCl、96mM グリシン、20% メタノール、0 . 01% SDS,pH7.5中100ボルトで1時間ニトロセルロース膜に移動させた。 ニトロセルロース膜を、TBS(50mM Tris−HCl pH 7.5,0.5MNaCl)中の2%ゼラチンで1時間ブロックし、0.05% Tween−20を含むTBSで3×5分洗浄した。 次いで、膜を、ペルオキシダーゼ標識UEA−1(Sigma,St.Louis Mo.)の1:500 希釈物を含む1%ゼラチン/TBS中で18時間インキュベートした。 次いで、得られた膜を洗浄し、タンパク質を、0.018%過酸化水素を含むTBS 50mlと、30mgの4−クロロナフトール(Bio Rad,Richmond,California)を含むメタノール10ml との混合物中でインキュベートして視覚化した。 図10は、この技術を用いて視覚化したタンパク質の写真を示している。 トランスジェニック動物のみがUEA−1レクチンにより特異的に認識されたフコシル化タンパク質を含む乳を産生したことは明らかである。 これらのタンパク質は35〜40キロダルトンの相対分子量で移動したが、該タンパク質はカゼインであると考えられる。 これらの結果は、2′−フコシルラクトースオリゴ糖(H抗原)を有する糖タンパク質が、トランスジーンがコードするα−1,2−フコシルトランスフェラーゼを有するトランスジェニック動物の乳中に産生されたことを示している。 非トランスジェニック対照動物の乳は、2′−フコシルラクトースを有する糖タンパク質を含んでいなかった。 実施例3〜7は、乳中で二次遺伝子産物を合成し得る非ヒトトランスジェニック哺乳動物を作出することが可能であることを証明した。 より具体的に言えば、 乳房組織中でヒトグリコシルトランスフェラーゼを発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物を作出し、これによって該動物の乳中にヒトオリゴ糖及びグリコシル化複合糖質を存在させることが可能である。

    産業上の有用性本明細書に記載且つ請求されている発明は、大量の所望オリゴ糖及び複合糖質を得る手段を提供するという点で積年のニーズを解決するものである。 所望のオリゴ糖及び複合糖質は、トランスジェニック哺乳動物の乳から分離して、医薬品、診断用キット、栄養製品などに用い得る。 トランスジェニック全乳は格別な利点を提供する栄養製品の製造にも用い得る。 トランスジェニック乳は特殊な経小腸栄養製品の製造にも用い得る。 記載・請求されている本発明により、医薬、研究、診断、栄養及び農業用品の製造に用いられるこれらの極めて重要な物質の手間のかかる有機化学及び固定化酵素化学合成が回避される。 本発明の好ましい実施態様を記載したが、当業者には、開示されている実施態様に種々の改変が可能であり、そのような改変も本発明の範囲内に包含されるものであることは明らかであろう。

    ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl. 6識別記号 庁内整理番号 FI // A61K 31/715 8827−4B C12N 9/14 38/46 9637−4B C12P 19/18 C12N 9/10 9282−4B C12N 5/00 B 9/14 9051−4C A61K 37/54 C12P 19/18 9051−4C 37/20 (C12N 9/10 C12R 1:91) (C12N 9/14 C12R 1:91) (72)発明者 カミングス,リチヤード・デール アメリカ合衆国、オクラホマ・73003、エ ドモンド、ノース・サンタ・フエ・5215 (72)発明者 コプチツク,ジヨン・ジヨセフ アメリカ合衆国、オハイオ・45701、アシ ンズ、オーチヤード・レーン・4 (72)発明者 ミユケルジ,プラデイツプ アメリカ合衆国、オハイオ・43230、ガハ ンナ、アルカロ・ドライブ・1069 (72)発明者 モアマン,ケリー・ウイルソン アメリカ合衆国、ジヨージア・30605、ア シンズ、ウインフイールド・プレイス・ 115 (72)発明者 ピアース,ジエームズ・マイケル アメリカ合衆国、ジヨージア・30605、ア シンズ、スナツプフインガー・ドライブ・ 325

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