Recombinant bile salt-activated lipase

申请号 JP50765191 申请日 1991-04-04 公开(公告)号 JP3665329B2 公开(公告)日 2005-06-29
申请人 オクラホマ メディカル リサーチ ファウンデーション; 发明人 ジェイ.エヌ. タン,ジョーダン; ワン,チースン;
摘要
权利要求
  • 胆汁酸塩に結合しかつ胆汁酸塩により活性化されるヒト胆汁酸塩活性化乳汁リパーゼをコードする単離されたポリヌクレオチドであって、前記ヒト胆汁酸塩活性化乳汁リパーゼは、以下のアミノ酸配列からなるか、または以下のアミノ酸配列の1または数個のアミノ酸残基の挿入、欠失および/または置換を有し、かつヒト胆汁酸塩活性化乳汁リパーゼの活性を有するその変異体であることを特徴とするポリヌクレオチド:
    および、PVPPTGDSEAT、PVPPTGDSETA、PVPPTGDSGAP、PVPPTGDAGPP、PVTPTGDSETA、PVPPTGDSEAAおよびPVPPTDDSKEAからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸配列。
  • 開始コドンおよび終止コドンをさらに含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
  • 発現用プロモーターをさらに含む、請求項2に記載のポリヌクレオチド。
  • トランスジェニック動物を作成するために胚に挿入するためのベクターをさらに含む、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
  • 検出用標識に結合している、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
  • 胆汁酸塩に結合しかつ胆汁酸塩により活性化されるヒト胆汁酸塩活性化乳汁リパーゼであって、以下のアミノ酸配列の1または数個のアミノ酸残基の挿入、欠失および/または置換を有し、かつヒト胆汁酸塩活性化乳汁リパーゼの活性を有する変異体であることを特徴とする、ヒト胆汁酸塩活性化乳汁リパーゼ:
    および、PVPPTGDSEAT、PVPPTGDSETA、PVPPTGDSGAP、PVPPTGDAGPP、PVTPTGDSETA、PVPPTGDSEAAおよびPVPPTDDSKEAからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸配列。
  • 酵母または原核生物において発現される、請求項6に記載のヒト胆汁酸塩活性化乳汁リパーゼ。
  • 以下のアミノ酸配列からなるか、または以下のアミノ酸配列の1または数個のアミノ酸残基の挿入、欠失および/または置換を有し、かつヒト胆汁酸塩活性化乳汁リパーゼの活性を有する変異体であるポリペプチドを製造する方法であって:
    および、PVPPTGDSEAT、PVPPTGDSETA、PVPPTGDSGAP、PVPPTGDAGPP、PVTPTGDSETA、PVPPTGDSEAAおよびPVPPTDDSKEAからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸配列;
    請求項1に記載のポリヌクレオチドを細胞に導入し、そして前記細胞から前記ポリペプチドまたは変異体を単離する、
    ことを含む方法。
  • 说明书全文

    発明の背景米国政府は、国立衛生研究所の認可により本発明に対して特定の権利を有する。
    ヒト乳汁は、乳汁タンパク質の0.5〜1%の非常に高レベルで胆汁酸塩活性化リパーゼ(BAL)を含有している。 これは、Wangの"Fat Absorption"Vol.1 Kuksis編、83〜117ページ(CRC Press,Inc.,Boca Ratan,FL 1986)、ならびにOlivacronaおよびBengtssonの"Lipases"、BorgstromおよびBrockman編、205〜261ページ(Elsevier,Amsterdam,The Netherlands 1984)に記載の通りである。 BALの生理学的役割は、脂肪、特にトリグリセリドの消化を助けて、脂肪酸および脂肪酸塩を産生することである。
    ヒトBALは、WangおよびJohnsonのAnal.Biochem. 133,457-461(1983)によって報告されているように、精製均質化されている。 米国特許第4,944,944号に記載のように、このタンパク質は、乳児、特に自分でBALを十分産生しない未熟児の脂肪吸収およびこれに続く成長における、主たる速度制限因子であることが現在判明している。 また、調合乳にこの精製された酵素を添加すると、これらの乳児の消化および成長が非常に向上することも現在判明している。 このことは、トリグリセリドを比較的高い割合で含有する、植物またはヒト以外の乳汁タンパク質源ベースの乳児用調合乳を調製する際に、臨床上重要である。 なぜならば、BALが添加されていない場合には、これらの調合乳を与えられた乳児は脂肪を消化できないからである。
    BALの特異性および速度論的特性は、Wangらの、 J.Biol.Chem. 256,10198-10202(1981); J.Lipid Res. 26,824-830(1985); J.Biol.Chem . 258,9197-9202(1983);およびBiochemistry 27,4834-4840(1988)によって報告されている。 胆汁酸塩のBALへの結合は、生理学的基質の特異的加分解に必要不可欠である。 胆汁酸塩は、BALの触媒作用中の基質結合にも関与する。 これらの特性により、BALはリポタンパク質リパーゼおよび他の膵臓リパーゼとは異なる別個のリパーゼのクラスを起源とすることが示唆される。
    したがって、本発明の目的は、リパーゼの構造および機能の関係をさらに分析し、かつ特徴付けるために使用される、BALをコードする遺伝子配列を提供することである。
    本発明の他の目的は、ヒト以外の乳汁の乳児用調合乳に含有させるべき大量のBALを調製するために使用される、BALをコードする遺伝子配列を提供することである。
    本発明のさらに他の目的は、他のリパーゼとの構造関係を決定し、変異誘発研究のための手段を提供するために、BALをコードする遺伝子配列を提供することである。
    発明の要旨ヒト乳汁BALのcDNAの完全な構造が開示されている。 ヒト乳汁の胆汁酸塩活性化リパーゼ(BAL)の18個のcDNAクローンを、抗体および合成ヌクレオチドをプローブとして用いて、λgt11およびλgt10中の泌乳しているヒト乳房cDNAライブラリーから同定した。 4個のクローンを、配列分析のために選択した。 2個のクローンのcDNA挿入物のヌクレオチド配列は、重なっており、全体で3018個のBALcDNAの塩基対を含有し、開始コドンと終止コドンとの間の722個のアミノ酸残基のオープンリーディングフレームをコードする。 20個の残基の推定シグナル配列が存在し、これに続いて成熟BALの722個の残基のアミノ末端配列が存在する。 cDNA配列は、さらに、678個の塩基の5'-非翻訳配列、97個の塩基の3'-非翻訳領域、および14個の塩基のポリ(A)テイルを含有する。 1個のクローンの配列では、66個のアミノ酸残基に対応する198個の塩基(1966〜2163位)が欠失している。 この短い型のcDNAの原因は、BALmRNAのプロセッシング中の異なるスプライシングによるものと考えられる。
    推定BALタンパク質構造は、カルボキシル末端領域に16個の反復単位を含有しており、各反復単位は11個のアミノ酸で構成されている。 これらの反復単位は、Pro-Val-Pro-Pro-Thr-Gly-Asp-Ser-Gly-Ala-Pro-の基本構造に、少数の置換のみを行った構造を有している。
    このcDNAは、乳児の栄養摂取の向上に使用され得るBALタンパク質の発現、反復単位全体を含むアミノ酸の構造および機能の研究、あるいはこれらのアミノ酸の改変、欠失または付加の効果の研究に有用である。 さらに、このcDNAは、BALもしくは関連リパーゼに関する研究のプローブとして有用である。 この関連リパーゼには、ラット膵臓リゾホスホリパーゼ、コリンエステラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼが含まれる。
    【図面の簡単な説明】
    図1は、泌乳中の乳腺からのヒト乳汁の胆汁酸塩活性化リパーゼクローンのcDNA構造の模式図である。 A. BALcDNA構造が、4個のクローン、即ち、水平線で示されている様に、G11-1、G10-2、G10-3およびG10-4から決定されている。 最上部のバー(プレートA)は、cDNA全体を示し、そしてその様々な領域が記号で示されている:様々な領域とは、5'-非翻訳領域(5'UT)、開始コドン、リーダー配列、反復領域(16の反復)、終止コドンおよび3'-非翻訳領域(3'UT)、ポリ(A)テイル(A's)および"ギャップ"領域である。 "ギャップ"領域は、クローンG10-4A中の欠失部分である。 G10-4Aの、他のクローンに対する関係が、点線で示されている。 ヌクレオチド番号および制限部位は、2番目の線に示されている。 制限部位の記号は次の通りである:TはTaqIを示し、RはRsaIを示し、HはHhaIを示し、PはPstIを示し、そして、SはSmaIを示し、FはHinfIを示し、NはNarIを示し、3はSau3AIを示す。 プレートB. 配列データの模式図。 水平方向の矢印は配列分析データの方向およびこれによってカバーされる領域を示す。
    図2は、ヒト乳汁の胆汁酸塩活性化リパーゼのcDNAおよびアミノ酸配列を示す。 ヌクレオチド配列は、クローンG10-2およびG10-3(図1)由来のものである。 ヌクレオチド番号は、5'末端からのものであり、各行の右空白に示されている。 推定アミノ酸配列は、成熟酵素の既知のアミノ末端位置から番号付けされている。 1個の潜在的なN-結合グリコシル化部位がアスタリスクによって示されている。 活性部位のセリンは菱形によって示されている。 G10-4A中の、欠失した198個のヌクレオチド(1966位から2163位)の領域(図1の”ギャップ”領域)、およびポリアデニル化シグナルには下線が引かれている。 図2は、その2821位から2886位までのヌクレオチド配列(695位から716位までのアミノ酸)に関して、1990年4月4日に最初に開示された図とは異なるものであり、1990年6月12日に最初に開示された配列に対応する。
    図3は、種々のリパーゼのアミノ酸配列間の比較を示す。 プレートA. ヒト乳汁の胆汁酸塩活性化リパーゼ(BAL)、ラット膵臓リゾホスホリパーゼ(RPLL)およびコリンエステラーゼ(CE)のアミノ酸配列を整列させたもの。 BALと同一の残基はRPLLおよびCE配列上に点によって示されており、整列された空白はダッシュによって示されている。 プレートB. ヒト乳汁BALの16個の内部反復配列をこれに対応するRPLL中の4個の内部反復配列と整列させたもの。 C. ヒト胆汁酸塩活性化リパーゼ(BAL、1位から571位までの残基)とラットチログロブリンの一領域(TG、396位から967位までの残基)との一次および二次構造の比較。 これらの二つの配列の整列は、コンピュータプログラムによって、最大の類似関係を作成することに基づいて整列された。 このコンピュータプログラムは、DevereuxらのNucleic Acids Res. 12(1),387-395(1984)により開発されたものである。 二つの配列において対応する残基間の4段階の関連性がこれらの配列の間に示されている:同一の残基は垂直線により示され;非常に類似しているものは2個の点により示され;やや類似しているものは1個の点により示され;関係無いものには記号は示されていない。 ChouおよびFasmanのAdv.in Enzymology 47,45-148(1978)に基づいてコンピュータにより作成された二次構造の予測が、BAL配列の上方およびTG配列の下方に示されている。 二次構造の記号:α-ヘリックスは波線により示され、β構造は実線により示され;折り返し構造は逆向きV字により示され;そして、ランダムコイルは点により示されている。 四形で囲まれた領域は、二つの配列の二次構造が非常に類似している領域を示す。
    D. ヒト胆汁酸塩活性化リパーゼ(HBAL)とヒトアセチルコリンエステラーゼ(HAche)およびTorpedo californicaアセチルコリンエステラーゼ(TorAche)とのアミノ酸配列を整列させた物。 BALと同一の残基は、星印で示されており、整列された空白は点によって示されている。
    発明の詳細な説明本発明によれば、胆汁酸塩活性化リパーゼをコードする少なくとも2個のcDNAの同定および特徴付けを行う。 cDNAを同定することによって、ヒト以外の乳汁の調合乳に添加するための大量のBALを生産する手段、cDNAから発現される遺伝子およびタンパク質を選択的に改変する手段、ならびにこれらのタンパク質の構造および機能を研究し、操作する手段が得られる。 ヒト乳汁BALcDNAの完全な構造、ならびに、このcDNAと、ラット膵臓リゾホスホリパーゼ(RPLL)、アセチルコリンエステラーゼ、コリンエステラーゼおよびチログロブリンとの関係が開示されている。
    1990年7月31日に発行された米国特許第4,944,944号は、その教示内容が本明細書中に援用されており、脂肪を含有する栄養調合乳の調製においてBALがその脂肪の消化および利用を助けるべくどの様に使用されているかについて記載している。
    実験手順
    材料
    ヒト乳汁BALを、WangおよびJohnsonのAnal.Biochem. 133,457-461(1983)に記載のように精製した。 ヒトBALに対するウサギ抗血清を、WangのJ.Biol.Chem. 256,10198-10202(1981)に報告されているように調製した。 λgt11およびλgt10中の、泌乳しているヒト乳房組織からのcDNAライブラリーを、Clontechより購入した。 ヨードゲン(Iodogen)をPierce Chemical Co.より購入した。 放射性同位元素即ち125ヨウ素、 32 P-ATP、 32 P-dATPおよび35 S-dATP、ならびにナイロンフィルター(Hybond-N)を、Amershamより購入した。 組換えDNA操作に使用する酵素を、Bethesda Research Laboratoryより入手した。 DNAシーケンシングキットおよび試薬を、United States Biochemical and Boehringerより入手した。 他の各試薬は市販の最高級のものであり、これらをさらに精製することなく用いた。
    方法.
    ヒト乳汁BALのアミノ末端CNBr-フラグメントの単離およびアミノ末端配列決定.
    BAL(70mg)の臭化シアン分解を、SteersらのJ.Biol.Chem. 240,2478-2484(1965)に記載の条件を用いて行った。 ヘパリン結合CNBr-ペプチドを、アフィニティークロマトグラフィーを用いてヘパリン-セファロースカラム上で精製した。 この精製は、WangおよびJohnsonのAnal.Biochem. 133,457-461(1983)に記載のように行われた。 この手順では、CNBr-フラグメントを、pH8.5の50mMのNH 4 OHHCl緩衝液で予め平衡状態としたヘパリン-セファロースカラム(2x10cm)に負荷した。 保持されていない画分を200mLの同じ緩衝液で溶出した。 そして、ヘパリン結合ペプチドを、280nmでの吸収によりモニターしつつ、0.3MのNaClを含有する同じ緩衝液で溶出した。 ヘパリン結合ペプチドを含有する画分を溜めて、凍結乾燥し、これを1mLの蒸留水で再度溶解し、そしてセファデックスG-50カラム(2x25cm)上で脱塩した。 凍結乾燥したヘパリン結合ペプチドの最終的な収量は約4mgであった。 このヘパリン結合フラグメントを、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、純粋であると判断した。 その際には、WangおよびJohnson(1983)の方法を使用し、12,000の見掛け分子量を得た。 このフラグメントのアミノ末端配列を、Beckman Sequencer Model 890Cでの自動エドマン分解により決定した。 PTH-アミノ酸を、逆相5μmC-18カラムのWaters Associates HPLCを用いて同定した。 この同定は、TakahashiらのJ.Biol.Chem. 258,2819-2830(1983)に記載のように行われた。 ペプチドの、61個の残基のアミノ末端配列を、AKLGAVYTEGGFVEGVNKKLGLLGDSVDIFKGIPFAAPTKALENPQPHPGWQGTLKAKNFKと決定した。 この配列の最初の23個の残基は、WangおよびJohnson(1983)により報告されたBALのアミノ末端配列と同一であるが、ただし、例外としては、11位の残基が、今回の分析で発見された、リシンの代わりにグリシンである。 上記の結果によってもまた、ヘパリン結合配列がBALのアミノ末端領域中に位置することが分かる。
    cDNAライブラリーのスクリーニング.
    泌乳中のヒト乳房組織のλgt11cDNAライブラリーからの約5x10 5個のプラークを、ヒトBALに対するウサギ抗体を用いて22℃でスクリーニングした。 BALに対するウサギ抗血清を、セファロース4B上に固定化されたヒト乳汁BALのアフィニティーカラム上で精製した。 この精製には、WangらのAmer.J.Clin.Nutr. 49,457-463(1983)に記載の方法を用いた。 回収した抗体を、MarkwellらのBiochem. 17,4807-4817(1978)に記載の方法を用いて125ヨウ素およびヨードゲンでヨウ素化し、これらをライブラリーのスクリーニングに使用した。 このスクリーニングには、HuynhらのDNA cloning Glover,DM編,Vol.I,49〜78ページ(IRL Press,Oxford 1985)に記載の手順を用いた。 λgt10ライブラリーのスクリーニングを行うために、約10 5個のプラークをHybond-Nメンブランに移し、そしてHuynhら(1985)のプラークハイブリダイゼーション法を用いて、合成オリゴヌクレオチドでプローブした。 プローブRPはλgt11ライブラリーのクローンG11-1からの反復単位配列を有していた。 他の数種類のプローブを、アミノ末端CNBrフラグメントの61個の残基のアミノ酸配列に基づいて設計し、合成した。 陽性の結果をもたらしたオリゴヌクレオチドは、プローブRP即ち5'-CCCCGGGCCTCAGTGGCACCCGCGT-3'およびプローブNT1即ち5'-CTGCAGCAAATGGGATGCCCTTG/AAAG/AATG/ATCC/GAC-3'(30〜37位のアミノ末端配列残基に基づく)であった。 λgt10ライブラリーの6x10 4個のプラークの第2のスクリーニングを、クローンG10-4AのSau3AIフラグメントを用いて行った。
    サブクローニングおよびDNA配列決定.
    スクリーニングによって得た陽性のクローンからのファージDNAを調製した。 この調製には、ManiatisらのMolecular Cloning,A Laboratory Manual 、63〜66ページ(Cold Spring Harbor Laboratories,Cold Spring Harbor,NY 1982)に記載のプレートライゼート法を用いて、その後に、BensenおよびTaylorのBioTechniques 126-127(1984年5月/6月)に記載の手順を用いた。 陽性のクローンからのcDNA挿入断片およびこれらの制限フラグメントを、pUC18、pUC19、M13mp18およびM13mp19ベクターにサブクローニングした。 その際には、Maniatisら(1982)の150〜178ページに記載の方法を用いた。 一本鎖または二本鎖鋳型を使用するDNA配列分析を行った。 その際には、SangerらのProc.Natl.Acad.Sci.USA 74. 5463-5468(1977)に記載のジデオキシヌクレオチドチェインターミネーター法を用いた。
    合計18個の陽性のクローンを、3回の異なるスクリーニングによって同定した。 5個の陽性のクローンを、λgt11中のヒト乳腺cDNAライブラリーから得た。 その際には、BAL抗体をプローブとして用いた。 λgt10ライブラリーから、プローブRPおよびNT1が、各々3個および2個の陽性のクローンを産生した。 8個の陽性のクローンを、同じλgt10ライブラリーから得た。 その際には、プローブとして、上記で得られた部分BALcDNA(クローンG10-4A)の402個の塩基対のSau3AIフラグメント(1638位から2237位までのヌクレオチドであり、以下に記載するように、'ギャップ'領域を含まない)を使用した。 これらのクローンに対して、サザンブロットと組み合わせた制限マッピングを行ったところ、5個のλgt11クローン全てが関連していることが示唆された。 これらの5個の内の最長のクローンであるG11-1は、約0.8kbpであった。 λgt10ライブラリーの2回のスクリーニングにより、各プローブからの最長クローンは、GT-2(1.9kbp、プローブNT1で陽性であった)、クローンG10-4(4kbp、プローブRPで陽性であった)およびG10-3(1.1kbp、G10-4AのSau3AIフラグメントで陽性であった)であった。 マッピングおよびサザンブロットの結果により判断されるように、4個のクローンは全て互いに重なり合っていた。 これらのクローンおよびその種々のフラグメントをサブクローニングし、ヌクレオチド配列を決定した。 これは、図1にまとめて示す通りである。 クローンG10-2、G10-3、および、G10-4のEcoRIフラグメントの5'側(G10-4A、1.8kbp)を完全に配列分析した(図1)。
    G10-4の3'EcoRIフラグメント(G10-4B、2.2kbp)は、BALのポリ(A)配列の下流側に存在していた。 しかも、このフラグメントは、EcoRIリンカー配列によってG10-4Aに連結している。 G10-4B配列がBALの配列とは全く関係無いために、ライブラリー構築のライゲーション工程中にG10-4AおよびG10-4Bが共にクローンG10-4中に挿入されたことが明らかであった。 したがって、G10-4Bの配列に関してはさらに詳しい研究を行わなかった。 G11-1の部分配列は、G10-3の3'-領域配列と同一であった。 後者を完全に配列分析した為に、クローンG11-1の配列分析を継続しなかった。
    配列データによって、ヒトBALcDNA配列がクローンG10-2およびG10-3を組み合わせた配列中に含有されていることが分かった(図1および図2)。 この配列(図2)は、オープンリーディングフレームを含有する。 このオープンリーディングフレームは、開始コドン(679〜681位のヌクレオチド)と終止コドン(2905〜2907位のヌクレオチド)との間の742個のアミノ酸残基をコードする。 この特定のMetコドンを上流の他の可能な部位に優先して開始部位として選択される理由は、最適な開始部位にフランキングする配列、即ちACCATGG(676〜682位のヌクレオチド)の存在に基づくものである。 しかも、このMet部位と成熟BALのアミノ末端位置(図2の1位の残基)との間には、顕著な疎水棲残基20個が存在する。 この20個の残基の領域の長さは、BALのシグナル配列に適切である。 エドマン分解によって決定したアミノ末端の61個の残基は、推定アミノ酸配列(図2、1〜61位の残基)と完全に一致する。 終止コドンと14個の塩基のポリ(A)テイルとの間の3'非翻訳領域中には、97個の塩基が存在する。
    BALcDNA配列は、カルボキシル末端(2353位および2880位のヌクレオチド)近傍に16個の非常に類似した内部反復配列の領域を含有する。 この領域の、推定タンパク質構造は、各々11個の残基からなる16個の非常に類似した反復単位を構成する(図2および図3)。 この領域の約3分の1のアミノ酸はプロリンである。 このことは、BALのプロリン含有量が高い理由となっている。 推定BAL配列のアミノ酸組成を、表Iにおいて、アミノ酸分析によるアミノ酸組成と比較する。 ヒトBALは、糖タンパク質であることが知られている;潜在的N-グリコシル化部位が187位の残基に見られる。 推定配列から計算した成熟BALの分子量は76,282である。
    クローンG10-4Aのヌクレオチド配列は、図2に示されているように、クローンG10-2およびG10-3を組み合わせた配列の対応する領域と同一であるが、但し、例外として、198個の塩基(1966〜2163位のヌクレオチド)の部分が存在していない(図1および図2)。 このことは、66個のアミノ酸(410位から475位までの残基)が欠失していることを示す。 この短いcDNAの起源として可能性のあるものを幾つか考えた。 この欠失部分以外は、長いcDNAおよび短いcDNAのヌクレオチド配列は同一であるために、これらのヌクレオチド配列は同じ遺伝子の産物であることが示唆される。 「ギャップ」結合近傍のmRNA二次構造を調査したところ、cDNAの構築中に逆転写酵素によって誤った複製が行われたのではないかと推測する理由は何も得られなかった。 さらに、「ギャップ」を短いcDNA中に導入することによって、読み取り相は変化しなかった。 これらの事実は、短いcDNAがクローニングによる産物であるという可能性に反するものであるように思われる。 これらの二つの型のcDNAは、おそらくBALとmRNA前躯体とのスプライシングの差に由来する。 ヒトBALの遺伝子構造は知られていないが、「ギャップ」直前の配列AAG(1963〜1965位のヌクレオチド)および'ギャップ'の末端の結合の両側におけるG(2163位および2164位のヌクレオチド)は、イントロン/エキソン結合の発生に最も好ましいヌクレオチドである。 これは、PadgettらのAnn.Rev.Biochem. 55,119-1150(1986)に記載の通りである。 これらの構造は、異なるスプライシングの説明を支持するものである。

    BALcDNA配列と他のリパーゼとの比較.


    ヒトBAL配列は、Han,JH、Stratowa,C.およびRutter,WJ(Biochemistry 26:1617-1625(1987))によって報告されたラット膵臓リゾホスホリパーゼ(RPLL)の配列に非常に類似している。 これらの二つの酵素のアミノ酸残基間には67%の同一性がある。 主たる相違点は反復領域の長さにある。 これらの二つの酵素の構造的相同性の類似によって、RPLLが、膵臓中に存在する胆汁酸塩活性化リパーゼであることが示唆された。 ヒト膵臓カルボキシルエステルリパーゼ(CEL)の、限定されたアミノ末端配列によって、これもまたBALと相同であることが分かる。 さらに、異なる種からのBALおよびCELとは、抗体交差反応性を有しており、これは密接な構造的関係に一致している。 アミノ末端配列データによれば、ブタ膵臓コレステロールエステラーゼ(CHE)もまたCELと同一であるように思われる。 これらの構造上の比較によって、膵臓CELおよびCHEが、RPLLと同じ酵素であるという可能性が示唆される。 RPLLは、膵臓中に存在する胆汁酸塩活性化リパーゼと同じであると思われる。 構造上の情報によってもまた、BALおよびRPLLが、リパーゼの独特のクラスを代表するものであることが示唆される。 なぜならば、BALおよびRPLLの構造は、肝臓リパーゼ、リポタンパク質リパーゼおよび膵臓リパーゼを含む他のリパーゼの既知の構造とは関連していないからである。


    BALおよびRPLLの最も興味深い構造上の特徴は、これらの酵素のカルボキシル末端近傍における、プロリンが豊富な配列の11個の残基の反復である。 BAL中には16個の反復、RPLL中には4個の反復が存在する(図3B)。 このタイプの反復構造は、これらの二つの酵素に独特であるように思われる。 なぜならば、タンパク質データベース中の、他のリパーゼを含む他のタンパク質には、この反復構造を含有しているものが無いからである。 BAL中の16個の反復の中では、反復番号3から10が、PVPPTGDSGAPの基本構造で、高度に保存されている。 最初の2個の反復および最後の4個の内の3個の反復中では、より多くの置換を含んでいる。 さらに、11個の残基からなる各単位のアミノ末端における配列は、カルボキシル末端における配列に比べてより高度に保存されている(図3B)。 この領域の二次構造予測によって、オープンランダムコイルの強い傾向が明らかになる。 この構造的領域の機能は知られていないが、この独特の構造はBALおよびRPLLの胆汁酸塩活性化の独特の機能と関連し得ると思われる。


    BALのアミノ酸配列はまた、アセチルコリンエステラーゼ、コリンエステラーゼおよびチログロブリンのアミノ酸配列と関連している。 BALに対してコリンエステラーゼを整列させると、27%の同一残基が得られる(図3A)。 BALとアセチルコリンエステラーゼと整列させると、類似の結果が得られる。 (図3D)これらの配列比較における最も強い相同性は、エステラーゼの活性部位近傍の領域中に生じる(図3A)。 アセチルコリンエステラーゼ中の活性部位のセリン近傍の配列であるFGESAGは、BAL(残基194位)およびRPLL中で完全に保存されている。 これらの比較によって、BALおよびRPLLの双方の194位のセリンが活性部位残基であることが示唆される;さらに、これらの二つのリパーゼの加水分解メカニズムもまたエステラーゼの加水分解メカニズムに関連し得る。 さらに留意すべき重要なことは、アセチルコリンエステラーゼの複数のmRNAは異なるスプライシングによって生じたものであり、このことによって、このファミリーの各酵素の活性の調節において関連している可能性が示唆されるということである。


    チログロブリンの一領域(396〜967位の残基)に対してBALを整列させると、数箇所の短い範囲で明らかな相同性が得られる(図3C)。 しかし、二つのタンパク質をこれらの予測された二次構造に関して比較すると、BALの1位から571位までの残基との間で密接な関連が得られる(図3C)。 これらの観察によって、この領域のチログロブリンが三次構造においてBALと関連していること、および、これもまた独立して折り畳まれたドメインであることが示唆される。 上述の5種類のタンパク質は、おそらくは進化中に共通の祖先タンパク質からわかれたものである。


    ヘパリン結合領域の特徴付け.


    アミノ末端CNBrフラグメントは、上記のように、BALのヘパリン結合部位を含有するということが明らかにされた。 このフラグメント(1〜101位の残基)のアミノ酸配列の潜在的なヘパリン結合配列を調べた。 これは、Martinらの

    J.Biol.Chem. 263,10907-10914(1988)により報告された、アポリポタンパク質およびリパーゼの既知のヘパリン結合共通配列に基づいて行われた。 モチーフBBBXXBおよびBBXB(B=塩基性残基;X=非荷電残基)の直接の適合性は見られなかった。 しかし、BXBXXBBBのパターンを有する高度に塩基性の領域は、56位の残基と63位の残基との間に位置する。 これが、BALの潜在的ヘパリン結合部位であると思われる。


    BALcDNAの2種類の構造変異種の特徴付け.


    ヒトBALcDNAの2種類の構造変異種が、異なるスプライシングから得られ、かつmRNAの二つの異なる長さを代表するものである場合には、これらの構造変異種によって、ヒト乳汁中に二つのサイズのBALタンパク質が存在することが予測される。 予測された分子量差に一致する、少量の速く移動するバンドを、個別のヒト乳汁BALのドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動において観察した。 ブタ膵臓CELもまた、約9kDだけサイズが異なる小分子量型を含有する。 これらの二つの型のブタ酵素は、同じアミノ末端配列を有しており、これらの違いは、精製された酵素調製物の炭水化物もしくは脂質含有量によるものではない。 これは、Ruddらの

    Biochim.Biophys.Acta 918,106-114(1987)によって報告された通りである。 したがって、これらの二つの型のブタCELの違いは、BAL中に見られる同じ「ギャップ」によるものであるという可能性がある。


    ヒトBALのための単離されたcDNAの利用cDNAは、標識されることにより、アッセイにおけるプローブとして、または、関連タンパク質もしくは類似の配列を含有するタンパク質をコードするDNAのためのスクリーニングに使用され得る。 DNAを標識する方法は、当業者に公知のものである。 例えば、Maniatisらの

    Molecular Cloning.A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratories,Cold Spring Harbor,NY 1982)に記載のような方法がある。 配列を蛍光標識、放射性標識および酵素標識によって標識するための試薬は全て商品として購入可能である。


    ヒトBAL遺伝子のクローニングおよび構造決定.


    ヒトBALのcDNAは、1つまたは複数のヒトBAL遺伝子のクローニングおよび配列決定にも使用され得る。 このクローニングおよび配列決定には、当業者に既知の方法を用いる。 これを実施する典型的な手段は、ヒトゲノムライブラリー(典型的には、λバクテリオファージ中のもの、Clontech Laboratories,Inc.,Palo Alto,CAより市販)をスクリーニングすることである。 その際には、ヒトBALcDNA配列を含有するオリゴヌクレオチドを使用する。 プローブは、ヒトBALcDNAの制限酵素フラグメントであり得る。 膵臓リパーゼまたはコリンエステラーゼなどの、BALと相同のアミノ酸配列を有する数種類のタンパク質が存在する。 したがって、プローブフラグメントは、相同タンパク質の遺伝子を認識するために使用され得る。 これらのほとんどの相同タンパク質のアミノ酸配列もしくはヌクレオチド配列が、図3に関して前述したように、既知のものであるために、相同タンパク質の遺伝子との違いが最大となるBALcDNA配列の領域をプローブとして選択することが可能である。 これらのプローブは、化学的に合成され、ヒトゲノムλライブラリーに対するプローブとして使用され得る。 陽性のλクローンは、二次または三次平板培養およびスクリーニングによって精製され得る。 制限マッピングおよびDNA配列決定を行うと、(a)ヒトBAL遺伝子数、(b)BAL遺伝子構造(イントロン、エキソンおよび調節エレメント)、および(c)BALcDNA中のイントロン/エキソン結合位置が明らかになる。 これらの作業を実施するために必要な方法の大部分は、Ausubel,FMらの

    Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley and Sons,NY 1987)に記載されている。


    相同タンパク質または領域をコードするDNAの単離.


    多くのタンパク質が遺伝子の複数の複写を有しているために、1つを超えるヒトBAL遺伝子を発見し得る。 これらの遺伝子は、存在している場合には、非常に類似した構造および活性を持つ酵素の合成を導く。 単数または複数のBAL遺伝子はまた、他の幾つかの遺伝子と相同であり得る。 他の幾つかの遺伝子としては、アセチルコリンエステラーゼ、コリンエステラーゼ、膵臓BALおよびチログロブリンの遺伝子などがあり、これらはヒト乳汁BALに類似のアミノ酸配列を有する。 しかし、これらのタンパク質の構造は、BAL遺伝子産物の構造とはかなり異なるはずである。


    まだ記載されていない、BALに類似の酵素が存在し得る。 ヒトBALcDNAのフラグメントをプローブとして用いてゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより、これらの新規な酵素のcDNAまたは遺伝子の位置を確認することが可能となる。 まだ記載されていない他のタンパク質が、ヒト乳汁BALの16個の反復に非常に類似した断片を含有し、これによって、何らかの未知の生物学的機能を発揮するということもまたあり得る。 これらのタンパク質のcDNAおよび遺伝子もまた、反復領域から生成されたcDNAフラグメントをライブラリーのスクリーニングのためのプローブとして使用することによって、同定され得る。 陽性のクローンを単離して配列分析することによって、そのBALとの関係を評価することができる。 任意の興味深いタンパク質のcDNAまたは遺伝子を発現し、これらの潜在的な生物学的機能を評価することができる。 これらは全て、標準的な組換えDNA技術の使用を必要とし、かつ上記の引例に見られるものである。


    組換えヒトBALの発現.


    多くの真核発現システムにおいてエキソンが正確に除去されるために、ヒトBALcDNAおよびヒトBALゲノムDNAは、単数(または複数)種類の組換えヒトBALタンパク質の合成を導くために使用され得る。 単数(または複数)のヒトBAL遺伝子は、その非翻訳領域中に、酵素の発現を調節する配列を含有していると予想される。 これらの調節配列をトランスジェニック動物発現に直接使用することさえ可能である。


    組換えDNAおよび遺伝子工学技術を用いて、組換えBALタンパク質を、多くの異なる方法によりヒトBALcDNAまたは遺伝子から生産することができる。 これらの方法には、E.coli、Bacillus、酵母真菌、昆虫細胞、哺乳類細胞およびトランスジェニック動物などの宿主中におけるBALの発現が含まれる。 原核宿主が哺乳類のイントロンを除去できないために、遺伝子よりも、cDNAを、適切な改変を行ってから原核システムで発現することが好ましい。 しかし、原核生物がBALをグリコシル化することができないために、BALの発現には真核システムを使用することが好ましい。 真核細胞を宿主として使用する場合には、ヒトBAL遺伝子またはcDNAの何れかを、酵素の合成を導くために使用することができる。 さらに、真核細胞は、新たに合成されたBALを粗面小胞体の内部に導入するために「リーダー」配列または「シグナル」配列が存在する場合には、BALを適切にグリコシル化することもできる。 天然BALが糖タンパク質である(Wang,CS,

    J.Biol.Chem .256:10198-10202,1983)ために、タンパク質を適切にグリコシル化し得る宿主システムを使用することが重要となり得る。


    cDNAまたは遺伝子の一部のみを発現することによって活性ヒト乳汁BALの活性を誘導できるという可能性がある。 タンパク質が、酵素活性を含むその生物学的活性に必要不可欠ではない何らかの構造を含有していることは公知のことである。 ヒト乳汁BAL中のアミノ酸には、変更され得るものがあること、および、その変異型のBALが類似の酵素活性を依然として保持するということもまたあり得る。 活性フラグメントは、インタクト(intact)な酵素の活性を測定するために使用されるものと同じアッセイを用いることによって、スクリーニングされ得る。 フラグメントを合成した後に、何れのフラグメントが活性を有しているかを決定することは、慣例的な手順である。 配列内でヌクレオチドを変更し、タンパク質を発現し、そして活性を調べるためにタンパク質をスクリーニングすることも同様に慣例的なものである。 これは、酵素の商業的用途において有利となる特性(酵素活性、基質特異性、物理特性、安定性等)を有するBAL変異体を作製するための有用な手段となる。


    全ての場合において、ヒトBALcDNAまたは遺伝子は、発現調節エレメント(例えば、転写開始シグナル、翻訳開始シグナル、開始コドン、終止コドン、転写締結シグナル、ポリアデニル化シグナル、および他のエレメント)を含有する適切な発現ベクター中に挿入され得る。 適切なベクターは様々な会社から市販されている。 BALcDNAもしくは遺伝子を含有する組換えベクターは、宿主細胞中にトランスフェクトされた後には、染色体外DNAとして残留し得るか、あるいは、宿主ゲノム中に組み込まれ得る。 何れの場合においても、組換えベクターは、宿主細胞中で組換えBALの合成を導き得る。 異種遺伝子の発現の幾つかの例が、

    Methods in Enzymology ,Vol.153,23〜34章(R.WuおよびL.Grossman編、Academic Press,1987)に記載されている。 BAL合成宿主細胞を大量培養し、酵素を精製することは、BALを生産するための経済的な商業上の手段となり得る。 酵素の大量生産の方法は、当業者に公知のものである。 潜在的に有用なBALの発現システムの幾つかの例は以下の通りである:


    (1)E.coliを宿主とする:多くの哺乳類cDNAがE.coli中で発現されており、異なるプロモーター、オペレーターおよび他の調節エレメントを持つ多くの発現ベクターが市販されている。 典型的なベクター構築および発現が、Lin,XLおよびTang,J.の

    J.Biol.Chem. 264:4482-4489(1989)に記載されている。 E.coliのサイトゾル中で哺乳類タンパク質を発現すると、不溶性の「封入体」が生産されることが多く、組換えタンパク質の再度の折り畳みが必要となる。 しかし、「リーダー」配列(例えば、

    omp ,Duffaud,GD、March,PE、およびInouye,M.の、WuおよびGrossman(編)、

    Methods in Enzymology 153:492-506(1987))を使用すると、多くの場合には、適切な折り畳み、および細菌のペリプラズム空間への組換えBALの輸送が導かれる。


    (2)酵母を宿主とする:酵母中での組換えBALの発現の原理は、E.coli中の発現の原理と類似している。 この例が、Bitter,GAらによって

    Methods in Enzymology (WuおよびGrossman編)153:516-544(1987))中に提供されている。 E.coliと同様に、酵母宿主細胞は、サイトゾル中に、もしくは分泌されたタンパク質として、外来遺伝子を発現し得る。 E.coli中の発現とは異なり、酵母中に分泌された発現物は、グリコシル化が可能である。 このことは、BALの発現に有利となり得る。 なぜならば、BALは糖タンパク質であるからである。


    (3)真菌(fungi)を宿主とする:異種遺伝子の発現に使用して成功した真菌発現ベクターの数は少ない。 既存の真菌発現ベクターは、トランスフェクションの後に宿主ゲノム中に組み込まれる(

    A Survey of Molecular Cloning Vectors and their Uses中の、Cullen,D.、Gray,GLおよびBerka,RMによるMolecular Cloning Vectors for Aspergillus and Neurospora (Butterworth Publishers, Stoneham, MA 1986)。リーダーが、発現されるタンパク質コドンの前に存在する場合には、分泌された組換えタンパク質はグリコシル化され得る。成功した発現の幾つかの例には、ウシキモシンに関するもの(Cullen,D.らの

    Bio/Technology 5:369-378(1987))、および異なる真菌からの酸プロテアーゼに関するもの(Gray,GL、Hayenga,K.、Cullen,D.、Wilson,LJおよびNorton,S.の

    Gene 48:41-53(1987))がある。


    (4)昆虫細胞を宿主とする:昆虫細胞中で外来遺伝子を合成するためのバキュロウイルス発現ベクターは、多くの哺乳類およびウイルスのタンパク質の発現に使用され、成功している。 このシステムは、グリコシル化することができ、また組換えタンパク質を高レベルで発現することもできる。 このシステムの使用は、ある程度詳細に概説されている(Luckow,VAおよびSummers,MDのTrends in the Development of Baculovirus Expression Vectors、

    Bio/Technology 、1987年9月11日)。


    (5)哺乳類細胞を宿主とする:哺乳類細胞中での異種遺伝子の発現は、商業用として多数成功している。 組換えヒト組織プラスミノーゲンアクチベーターの商業用生産が一つの例である。 これらの発現ベクターの大部分は、哺乳類プロモーター(例えば、メタロシアニンもしくは成長ホルモン)またはウイルスプロモーター(例えば、SV40初期プロモーターもしくはウイルス遺伝子のロングターミナルリピート(Long Terminal Repeat))、およびポリアデニル化シグナル、ならびに、抗生物質耐性遺伝子を含むE.coliクローニングのための適切な調節エレメントを含有する。 プロモーターの下流側にBALを挿入した後に、ベクターを、最初にE.coli中にクローニングし、単離し、そして哺乳動物細胞中にトランスフェクトすることができる。 ネオマイシンもしくは類似の耐性選択マーカーを、他のベクターもしくは同じベクター中に共トランスフェクトすることができる。 高レベルの発現を得るためには、遺伝子増幅システムが有利である。 例えば、発現ベクター(または共トランスフェクト)は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)の遺伝子を含有し得る。 チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞のdhfr株を使用する場合には、クローニングされた遺伝子を、dhfrの遺伝子と共増幅することができる。 これは、形質転換された細胞を、メトトレキセート濃度を増加させているところに入れることによって、行われる。 BALを分泌する形質転換体クローンは、酵素アッセイもしくはウエスタンブロットによって同定され得る。 この方法の成功例には、グリコシル化された組換えプロレニンの合成(Poormanら、

    Proteins 1:139-145 (1986))およびヒト免疫インターフェロン(Scahill,SJら、

    Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 80:4654-4658(1983))が含まれる。


    (6)トランスジェニック動物におけるBALの発現:ヒトBAL遺伝子を、組織特異的発現のために他の動物のゲノム中に転移させる技術は、既に存在している(Jaenisch,R.、

    Science 240:1468-1474(1988);Westphal,H.、

    FESEB J. 3:117-120(1989))。 トランスジェニック技術を用いて乳汁の組成を変更するための幾つかの作業が既に進行中である(概説書としては、Bremel,RD、Yom,HCおよびBleck,GTの

    J.Dairy Sci. 72:2826-2833(1989)を参照のこと)。 上記の三つの概説書に要約されているように、一般的な方法は、分泌乳腺(乳汁)タンパク質(例えば、カゼインもしくは乳汁リゾチーム)のプロモーター、ヒトBALcDNAもしくは遺伝子、および適切な相補エレメントを含有するベクターを構築することである。 そして、クローニングされたベクターを、新たに受精したウシまたはヒツジの卵中に顕微注入して、その卵を胎児発生および誕生のために「養母」中に移植させる。 トランスジェニックした子孫を、サザンブロットによる遺伝子転移および乳汁中のヒトBALの生産(ウシおよびヒツジは乳汁中にBALを生産しない)に関して分析する。 高収量の株を生産するために、トランスジェニック動物を交配(interbred)することができる。


    組換えヒト乳汁BALの商業上の利用.


    組換えヒト乳汁BALには、様々の用途がある。 この酵素は、米国特許第4,944,944号に記載のように、乳児用食物を補足するために使用され得る。 この酵素は、疾病の治療に使用され得る。 この酵素は、脂質消化に関する工業用プロセスにおいて使用され得る。 この酵素は、脂質消化に関する医学的または臨床的プロセスにおいて使用され得る。 この酵素は、研究用試薬(化学的)もしくは研究用手段(脂質消化研究用)として使用され得る。 これらの用途の多くは、ヒト乳汁から抽出され得るヒトBALの量が非常に限られていたために、以前は不可能であった。

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