乳酵素処理物、その製造方法、組成物および製品

申请号 JP2017521953 申请日 2016-05-31 公开(公告)号 JPWO2016194914A1 公开(公告)日 2018-04-26
申请人 再生ファーマ株式会社; 发明人 乾 利夫;
摘要 乳酵素処理物、その製造方法、医薬組成物を含むその組成物、および医薬品を含むその製品を提供する。乳をβ−ガラクトシダーゼと 接触 させる工程を含んでなる、乳酵素処理物の製造方法により得られる乳酵素処理物。
权利要求

乳をβ−ガラクトシダーゼと接触させる工程を含んでなる、乳酵素処理物の製造方法。乳をシアリダーゼと接触させる工程をさらに含んでなる、請求項1記載の製造方法。酵素処理の前に、乳を濃縮または脱チーズ成分処理しておく工程をさらに含んでなる、請求項1または2記載の製造方法。請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法により得られる乳酵素処理物。1回の投与用として、0.02μg〜40mgの範囲の量のタンパク質を含む請求項4記載の乳酵素処理物。請求項4または5記載の乳酵素処理物を含んでなる医薬組成物。請求項6記載の医薬組成物を含んでなる医薬品。請求項4または5記載の乳酵素処理物を含んでなる飲食品用組成物。請求項8記載の飲食品用組成物を含んでなる飲食品。

说明书全文

本発明は、乳酵素処理物、その製造方法、医薬組成物を含むその組成物、および医薬品を含むその製品に関する。

マクロファージは体内の老廃物の処理や、生物、ウイルスなどの病原体や腫瘍細胞に対する防御機能を担っている。また、T細胞への抗原の提示とインターロイキン1の産生を介し、細胞性免疫のエフェクターとしての機能も有している。したがって、癌や感染症などの治療や予防にはマクロファージを活性化させることが重要であり、マクロファージの活性化により、癌や感染症の治療や予防を行うことが可能である。マクロファージを活性化する因子としては、例えばインターフェロンが挙げられ、その臨床応用も試みられている。また、ある種の多糖類が免疫賦活活性を有することが知られており、これらの一部は抗ウイルス剤や抗ガン剤としての開発が期待されるものである(特許文献1または2)。

疲労は、一般に疲労感、倦怠感を主症状とするが、その他睡眠障害や意欲低下など多彩な症状を伴う疾患である。疲労感や倦怠感は体の異常を知らせる重要なアラーム信号の一つであり、健常時でも激しい運動、長時間の労働を行った場合や過度のストレス状況におかれた場合などに、自覚するようになる。このような生理学的な疲労は通常、体を休めることにより元の正常な状態に回復し、長く続くことはない。1985年総理府の「健康に関する国民意識調査」では、約6割強の人が疲労を訴えているが、疲労を訴えている人の7割は「一晩の睡眠により疲労は回復する」と答えている。しかしながら、現代人は、長時間の労働や過度のストレス状況に置かれることが多く、また十分な休息を取るのが難しいため、疲労感や倦怠感の回復が困難になることもしばしばある。1999年厚生省疲労調査研究班が実施した疫学調査によると、疲労を自覚している人の割合は約6割と変わっていないが、このうちの6割もの人が6ヵ月以上にわたって疲れを感じていることが報告されている。すなわち、慢性的な疲労に悩む人が増加し、疲労の質が変化してきているのである(非特許文献1)。また、最近、慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome;CFS)なる疾患が難病の一つとして話題になっている。これは、日常生活に支障を来すほどの長期的な全身疲労感、倦怠感、微熱、リンパ節腫脹、筋肉痛、関節痛、精神神経症状などの基本的な症状を示す。他方、過労死が大きな社会問題となっている。過労死は、長時間の過密の働きすぎによる突然死であると定義されている。過労死の問題は、医学的、経済的、社会的に非常に重要であると認識されているものである。そこで、激しい運動、長時間の労働を行った場合や過度のストレス状況におかれた場合の疲労を軽減しうる物質、疲労から正常な状態に回復を早めることができる物質等のいわゆる「抗疲労物質」が提案されている。たとえば、ある種のアミノ酸組成物(特許文献3)や、L−カルニチンおよびヒスチジン関連ジペプチド(特許文献4)、サンザシ抽出物(特許文献5)などに体増強作用があることが報告されている。また、運動等による体力の消耗や疲労時等における栄養補給を目的として、アスコルビン酸を含む栄養補給組成物が有用であることが示されている(特許文献6)。

近年、花粉症、アレルギー性鼻炎、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎やアレルギー喘息のようなI型アレルギーに起因する疾患の患者数は、世界的に増加する傾向にある。アレルギー性疾患の治療は、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、ステロイド等を用いた薬物療法が一般的であるが、最近では、予防医学の観点から、代替医療としてアレルギーに効果のある機能性食品やサプリメントの研究開発もさかんに行われている。例えば、腸管免疫に作用する乳酸菌が、アレルギー疾患の予防および治療に効果があるとして注目されている(例えば、特許文献7〜9参照)。腸管免疫とは、経口的に取り込まれた病原微生物等を排除する免疫機構であり、過剰反応する腸管免疫を抑制できれば、アレルギー性疾患の予防および治療に貢献できると考えられている。

脱毛症は、種々の原因により毛髪が少なくなる状態(症状)をいうが、代表的なものに、男性型脱毛症(禿頭症)、脂漏性脱毛症、粃糠性脱毛症、老人性脱毛症、円形脱毛症、分娩後脱毛症、機械性(圧迫性)脱毛症、抜毛症等がある。このような脱毛症の治療には、例えば、5α−リダクターゼ活性を阻害してジヒドロテストステロン(DHT)の産生を抑制する物質の利用(特許文献10)などが提案されているが、その効果にはなお改善の余地がある。

ヒトの肌色は、メラニン色素を作るメラノサイト(melanocyte)の活動性、血管分布、皮膚の厚さ、またはカロチノイド、ビリルビンなどの色素含有の有無などの様々な要因によって決定される。中でも、チロシナーゼなどの酵素によってメラノサイトで生成されるメラニン(黒色の色素)の形成度合いは、肌色を決める最も重要な要因の一つである。皮膚に存在するメラニンは紫外線などから身体を保護する重要な機能を有するが、過剰に存在する場合、しみ、そばかす、ほくろなどの皮膚色素沈着を生じさせるのみならず、皮膚老化を促進し、皮膚癌を誘発する因子としても作用することが知られている。メラニンの過剰産生による皮膚色素沈着を治療または軽減するために、コウジ酸、アスコルビン酸、アルブチン、ハイドロキノン、グルタチオン、またはこれらの誘導体などの、皮膚美白効果を示す様々な物質が用いられてきたが(例えば、特許文献11)、効果面、安全性面、剤形化の容易性もしくは安定性などの面で、種々課題があった。皮膚は光に直接露出することから紫外線に最も脆弱な部分である。紫外線に露出した皮膚はその度合いによっては火傷、色素沈着、DNA損傷、結合組織の変化、癌化といった生物学的反応を示すようになる。また、紫外線への繰り返し暴露は、皮膚の老化を早め、さらにこのような皮膚の老化は、しわの生成、色素沈着、結合組織の変異および表皮細胞の厚さの変化などを生じさせる。皮膚の結合組織は、主にコラーゲンとエラスチンとからなる。コラーゲンとエラスチンは皮膚に弾力を与えるものであるので、これらが弱くなると皮膚が損傷され易くなり老化する。前記コラーゲンの分解に関与する酵素がMMP(Matrix−Metalloproteinase)である。皮膚老化が進むにつれ、MMPの発現が増加し、増加したMMPが皮膚のコラーゲンを分解するようになる。このようなメカニズムが繰り返されると、皮膚のしわが生成し、早期の老化が進む。皮膚組織が分を保つためには、皮膚内の天然保湿因子(Natural−Moisturing−Factor)が増加することが必要である。天然保湿因子の主な成分はアミノ酸であるので、その供給を確保することで、皮膚の保湿を保つことができる。

ヒト血清の酵素処理物(β−ガラクトシダーゼ、または、β−ガラクトシダーゼとシアリダーゼ)がマクロファージ活性化作用を有することは、特許文献12に記載がある。

特開平05−097695号公報

特公平06−099314号公報

特開平09−124473号公報

特開2001−046021号公報

特開平08−047381号公報

特開平06−327435号公報

特開平10−309178号公報

特開2000−095697号公報

特開2005−139160号公報

特開平07−033673号公報

特表平11−510820号公報

国際公開第2013/038997号

井上正康、倉恒弘彦、渡辺泰良編、「疲労の科学」、株式会社講談社、222〜228頁

本発明は、癌および感染症などの疾患、疲労を伴う疾患、アレルギー疾患(より詳しくは、少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患)および脱毛症の治療、予防または改善、並びに、皮膚改善に有用な乳酵素処理物、その製造方法、医薬組成物を含むその組成物、および医薬品を含むその製品を提供しようとするものである。

本発明者は、鋭意検討した結果、哺乳類の乳を特定の酵素、すなわち、β−ガラクトシダーゼ、または、β−ガラクトシダーゼおよびシアリダーゼと接触させる工程を含んでなる製造方法により得られる乳酵素処理物が、癌および感染症などの疾患、疲労を伴う疾患、アレルギー疾患(より詳しくは、少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患)および脱毛症の治療、予防または改善、並びに、皮膚改善に優れた効果を奏することを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。

すなわち、本発明は、 [1]乳をβ−ガラクトシダーゼと接触させる工程を含んでなる、乳酵素処理物の製造方法、 [2]乳をシアリダーゼと接触させる工程をさらに含んでなる、上記[1]記載の製造方法、 [3]酵素処理の前に、乳を濃縮または脱チーズ成分処理しておく工程をさらに含んでなる、上記[1]または[2]記載の製造方法、 [4]上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の製造方法により得られる乳酵素処理物、 [5]1回の投与用として、0.02μg〜40mg、好ましくは0.02μg〜20mg、より好ましくは0.2μg〜20mg、より好ましくは2μg〜20mg、より好ましくは20μg〜20mg、より好ましくは200μg〜10mg、より好ましくは200μg〜2mgの範囲のタンパク質を含む上記[4]記載の乳酵素処理物、 [6]上記[4]または[5]記載の乳酵素処理物を含んでなる医薬組成物、 [7]上記[6]記載の医薬組成物を含んでなる医薬品、 [8]上記[4]または[5]記載の乳酵素処理物を含んでなる飲食品用組成物、 [9]上記[8]記載の飲食品用組成物を含んでなる飲食品、 に関する。

本発明に係る乳酵素処理物は、癌および感染症などの疾患、疲労を伴う疾患、アレルギー疾患(より詳しくは、少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患)および脱毛症の治療、予防または改善、並びに、皮膚改善に有用である。したがって、該乳酵素処理物を用いれば、これら疾患の治療、予防または改善に有用あるいは皮膚改善に有用な医薬品、医薬部外品ないし飲食品を提供することができる。

さらに、本発明に係る乳酵素処理物は、哺乳類の乳をβ−ガラクトシダーゼ、または、β−ガラクトシダーゼおよびシアリダーゼで処理することによって調製できるため、簡便かつ低コストであるという利点を有する。

ギムザ染色したマクロファージの様子を示す図面代用写真である。

乳酵素処理物(4)の電気泳動の結果を示す図面代用写真である。

乳酵素処理物(4)の電気泳動の結果を示す図面代用写真である。

<乳> 本発明で使用する乳とは、哺乳類が幼児に栄養を与えて育てるために母体が作り出す分泌液をいう。ここで、哺乳類とは、特に限定されないが、好ましい例としては、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ヒト、水、ヤク、ラクダ、ロバ、トナカイ、シカなどが挙げられる。また、乳には、分娩後所定日数の間にのみ分泌されるいわゆる初乳も含む。但し、ウシ初乳(母牛が分娩後10日目までに分泌する乳汁)は含まない。ここで、乳は、酵素処理に付す前に、予め前処理しておいてもよい。そのような前処理としては、水分量を減少させる濃縮の他、乳からチーズをつくる際にチーズとして固まる成分(カゼイン、脂肪等)を除去する処理(脱チーズ成分処理)が含まれる。以下、濃縮により得られる乳を「濃縮乳」、脱チーズ成分処理により得られる乳を「脱チーズ成分乳」(乳清)ともいう。

<酵素> 本発明で使用するβ−ガラクトシダーゼは、特に限定なく、周知のいずれの種類のものも使用することができる。そのようなものとしては、例えば、大腸菌(Escherichia coli)由来のもの、ウシ肝臓(bovine liver)由来のものなどがあげられる。市販されたものとしては、例えば、和光純薬工業(株)のカタログNo.072−04141、SIGMA−ALDRICH社のG1875などが挙げられる。本発明において、β−ガラクトシダーゼは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

本発明で使用するシアリダーゼは、特に限定なく、周知のいずれの種類のものも使用することができる。そのようなものとしては、例えば、ウェルシュ菌(Clostridium perfringenes)由来のもの、レンサ球菌(Streptococcus 6646K)由来のもの、コレラ菌(Vibrio cholerae)由来のもの、アースロバクター・ウレアファシエンス(Arthrobacter ureafaciens)由来のものなどがあげられる。市販されたものとしては、例えば、SIGMA−ALDRICH社の製品番号(SIGMA Prod.Nos.)N2876、N2133、N2904、N3001、N5631、生化学バイオビジネス社のコード番号(Code Number)120052、BioLabs社のカタログ番号(Catalog#)P0720L、P0720Sなどがあげられる。本発明において、シアリダーゼは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

<酵素処理> 本発明において、乳と、β−ガラクトシダーゼ若しくはシアリダーゼとの接触(酵素処理)は、それぞれ、十分な量の酵素を用いて十分な時間接触させることにより、それ以上実質的に酵素反応が進行しない程度まで行うのが好ましい。このような目的には、酵素の種類にもよるが、例えば、β−ガラクトシダーゼとして和光純薬工業(株)のカタログNo.072−04141を用いる場合、乳100μlに対して、酵素を65mU使用すれば十分である。また、例えば、シアリダーゼとしてSIGMA−ALDRICH社の製品番号(N2876)を用いる場合、乳100μlに対して、酵素を65mU使用すれば十分である。この場合の酵素処理の時間としては、3時間行えば十分である。

酵素処理は、任意の容器中で、これら酵素を、乳に添加して実施することができるが、所望により、乳中の総タンパク質濃度を調整するために、この分野で通常用いられる緩衝液を加えてもよい。そのような緩衝液としては、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(SPB)、リンゲル液などが挙げられる。酵素処理の温度は、酵素が活性を示す温度であれば特に限定はないが、通常酵素が高い活性を示す37℃付近の温度である。

酵素処理は、加熱(熱処理)により、酵素を失活させることにより終了する。かかる熱処理は、酵素を失活させることができる限り特に限定されないが、例えば、60℃付近の温度で、約10分間加熱することにより、実施することができる。熱処理後の検体は、所望により、濃縮してもよい。当該濃縮は、市販の機器、例えば遠心濃縮器(例えば、MILLIPORE社製の10000MWCO YM−10)を用いて行うことができる。

また、酵素処理は、固相に固定した酵素(固定化酵素)を用いて行うこともできる。酵素を固相に固定させる方法は、当業者に知られており、例えば、β−ガラクトシダーゼおよび/またはシアリダーゼを、シアンブロマイドの如きカップリング剤により、アガロースビーズに固定することができる。そのような固定化酵素としては、例えば、イモビライズド β−ガラクトシダーゼ G3M(Mo Bi Tec社、#A3102)、ノイラミニダーゼアガロース Clostridium perfringens(ウェルシュ菌)由来(SIGMA−ALDRICH社製、製品番号(Product Number):N5254)などが市販されている。固定化酵素を用いる利点は、酵素処理後、酵素を熱処理により失活させることなく回収することが可能なこと、および、そのような回収により夾雑物(熱処理により失活した酵素などのタンパク質等)の存在を減じることができることである。

<乳酵素処理物> こうして得られる本発明の乳酵素処理物は、さらに、凍結乾燥して、固体ないし粉体状としてもよい。このような乳酵素処理物は、新規組成物である。

該乳酵素処理物は、医薬分野、医薬部外品分野、または食品分野で許容される補助剤(担体)等を、所望により配合することにより、これを含んでなる医薬組成物または医薬品、医薬部外品用組成物または医薬部外品、および、飲食品用組成物または飲食品とすることができる。

<医薬品> 本発明の乳酵素処理物は、そのまま、もしくは、適宜、薬学的に許容しうる補助剤(担体)を配合することにより、医薬組成物として調製することができる。このような薬学的に許容し得る補助剤としては、この分野で通常用いられるものをいずれも好適に使用することができ、具体例としては、例えば、希釈剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、賦形剤、結合剤、防腐剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤等が挙げられる。これら補助剤は、医薬組成物の剤型に応じて、適宜配合される。

上記医薬組成物は、適当な剤型に製剤化して、医薬品とすることができる。医薬品の剤型としては特に制限されず、経口製剤であっても非経口製剤であってもよい。非経口製剤としては、注射剤、輸液剤、点鼻剤、点剤、坐剤、経腸栄養剤などが挙げられる。例えば、注射剤としては、静脈内注射、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射、腹腔内注射などの投与形態のものが挙げられ、このうち、筋肉内注射が好ましい。一方、経口製剤としては、散剤、顆粒剤、錠剤(舌下錠などを含む)、カプセル剤、丸剤、腸溶剤、内用液剤(懸濁剤、乳剤、シロップ剤などを含む)、吸入剤などが挙げられる。

本発明に係る乳酵素処理物の投与量は、投与対象の年齢、性別、体重および症状、投与方法などにより異なるが、典型的な例としては、例えば、本乳酵素処理物に含まれるタンパク質の総量として、成人に対し、1回の投与あたり、約0.02μg以上、好ましくは約0.2μg以上、より好ましくは約2μg以上、より好ましくは約20μg以上、より好ましくは約50μg以上であり、かつ、約40mg以下、好ましくは約20mg以下、より好ましくは約13mg以下、より好ましくは約10mg以下、より好ましくは2mg以下である。好ましい投与量の範囲としては、例えば、約0.02μg〜約40mg、好ましくは約0.2μg〜約40mg、より好ましくは約2μg〜約40mg、より好ましくは約20μg〜約40mg、より好ましくは約50μg〜約40mg、より好ましくは約50μg〜約20mg、より好ましくは約50μg〜約13mg、より好ましくは約50μg〜約10mg、より好ましくは約50μg〜約2mgの範囲にあるのがよい。なお、本明細書において、タンパク質の量は、波長570nmでの吸光度により決定したタンパク質濃度をもとに、算定するものである。

本発明に係る乳酵素処理物を、上記の如き1回あたりの投与量で投与する場合の、典型的な投与間隔および投与回数は、1〜2回/日である。なお、投与量および投与間隔は、医薬組成物中に含まれるタンパク質の総量を指標として、投与されるタンパク質の総量が同等となるような範囲内で、適宜変更することができる。また、予防目的での投与は、改善ないし治療目的の投与の場合と同じ投与量で行ってもよいし、あるいは、概ね半量程度を目安として行ってもよい。

本発明に係る乳酵素処理物は、同じ疾患を予防、治療、改善するための他の医薬品とともに併用することができる。併用する場合には、当該他の医薬品の効能、効果、投与量を考慮の上、本発明に係る乳酵素処理物の投与量を適宜調節する。

<医薬部外品> 本発明に係る乳酵素処理物は、必要に応じて、上記補助剤を配合することにより、医薬部外品用組成物とすることができ、さらには、該医薬部外品用組成物をさらに加工して、これを含んでなる医薬部外品とすることができる。該医薬部外品用組成物または医薬部外品は、溶液状、懸濁液状、シロップ状、顆粒状、クリーム状、ベースト状、ゼリー状等の種々の形態をとり得るものであり、必要に応じ、所望の形状に成形することもできる。医薬部外品用組成物および医薬部外品の調製はいずれも常法にのっとり実施することができる。

本発明の医薬部外品用組成物または医薬部外品における乳酵素処理物の使用量は、特に限定されるものではないが、上記医薬品の場合の投与量と同じもの、あるいは、上記を参考にして適宜設定したものを採用することができる。

<飲食品> 本発明に係る乳酵素処理物は、必要に応じて、上記補助剤や、甘味料、香辛料、調味料、防腐剤、保存料、殺菌剤、酸化防止剤などの飲食品に通常用いられる各種添加剤を適宜配合することにより飲食品用組成物とすることができ、さらには、該飲食品用組成物をさらに加工して、これを含んでなる飲食品とすることができる。該飲食品用組成物または飲食品は、溶液状、懸濁液状、シロップ状、顆粒状、クリーム状、ベースト状、ゼリー状等の種々の形態をとり得るものであり、必要に応じ、所望の形状に成形することもできる。また、該飲食品は、パン、麺、菓子、飲料、スープ、加工食品など様々な形態をとることができる。飲食品用組成物および飲食品の調製はいずれも常法にのっとり実施することができる。

本発明の飲食品用組成物または飲食品における乳酵素処理物の使用量は、特に限定されるものではないが、上記医薬品の場合の投与量と同じもの、あるいは、上記を参考にして適宜設定したものを採用することができる。

かかる本発明の飲食品は、いわゆる健康食品、健康飲料、機能性食品、栄養機能食品、健康補助食品、栄養補助食品(サプリメント)、特別用途食品、特定保健用食品等の経口投与可能なものであったり、その他人以外の動物(作業用家畜、猟犬、競走馬、愛玩動物、その他の動物)に対する飼料であり得る。

このような本発明の医薬品、医薬部外品、および飲食品は、活性成分である乳酵素処理物を、消化管内、好ましくは口腔内または腸管内から吸収させる剤形(例えば、上述の舌下錠や腸溶剤の形態)であることが好ましい。

<適応症状> (癌、感染症) 本明細書において、癌とは、癌腫(carcinoma)、肉腫(sarcoma)、その他の悪性腫瘍(malignant tumor)のいずれをも含むものであり、例えば、皮膚癌、気管支癌、癌、非小細胞肺癌、乳癌、卵巣癌、舌癌、咽頭癌、食道癌、胃癌、小腸癌、大腸癌、直腸癌、結腸癌、肝癌、膵臓癌、腎臓癌、腎細胞癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮癌、子宮頸癌、ウィルムス腫瘍、悪性黒色腫、髄膜腫、神経芽腫、骨肉腫、カポジ肉腫、リンパ腫、白血病などが挙げられる。なお、本明細書において、用語「癌」は、これら悪性腫瘍の他、その転移をも含むものである。一方、感染症とは、例えば、ウイルス感染症、細菌感染症などが挙げられ、具体的には、HIV感染症、エイズの他、B型肝炎、C型肝炎、ヘルペス、インフルエンザ、肺炎、結核、EBウイルス感染症などが挙げられる。

本発明に係る乳酵素処理物は、優れたマクロファージ活性化作用を有するので、癌や感染症を予防、治療または改善し得るものである。

(疲労) 疲労とは、身体的あるいは精神的負荷を連続して与えたときに一時的な身体的および/または精神的パフォーマンスの低下として現れる状態をいい、ここで、パフォーマンスの低下とは、身体的および/または精神的作業能力の質的あるいは量的な低下を意味する。また、本発明の「疲労」は、慢性的な疲労や、慢性疲労症候群における疲労または過労死をもたらす疲労をも包含するものとする。

本発明における「疲労の改善ないし治療の効果」とは、上記疲労を減弱させる作用や疲労を回復させる作用をいい、具体的には、運動や作用した部位(脳を含む)の働きの持続時間を向上させること、および、同じ運動量や作用量での疲労物質の増加を抑制すること(持久力向上・体力増強)、運動や作用した部位が疲労していないにもかかわらず脳や神経などが疲労感知状態になっていることを改善すること、ならびに運動や作用した部位の疲労状態を通常状態に回復することを促進する効果をいう。また、本発明における「疲労の予防効果」とは、上記の如き疲労の状態に至ることを妨げる効果をいう。

慢性疲労症候群とは、明確な定義が確立されている訳ではないが、持続性で日常生活に支障がある脱力感または疲労感の症候群で、6ヵ月以上続く非特異的身体症状を伴い、他の原因によらないものをいう。(ステッドマン医学大辞典改訂第6版)。

一方、過労死とは、重度の過労状態にあり、身体的活力を保つことができないにも関わらず、疲労を十分に感じることができなくなり、その結果、脳血管疾患や心疾患を発症して永久的労働不能や死亡に至った状態をいう。

本発明に係る乳酵素処理物は、この慢性疲労症候群を処置すること、すなわち慢性疲労症候群各症状を緩和し、正常な状態に移行させることができ、また、過労死をも予防しうるものである。

(アレルギー疾患) アレルギー疾患とは、少なくもI型アレルギーに起因するアレルギー疾患をいい、ここで、I型アレルギーとは、クームス分類によるものをいう。よって、「少なくもI型アレルギーに起因するアレルギー疾患」としては、例えば、花粉症、アレルギー性鼻炎、気管支ぜんそく、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、好酸球性肺炎、食物アレルギー、アナフィラキシーショックなどが挙げられる。このうち、花粉症、アトピー性皮膚炎が好ましい。

本発明に係る酵素処理物は、これらアレルギー疾患を治療、予防または改善し得るものである。

(脱毛症) 脱毛症とは、種々の原因により毛髪が少なくなった状態(症状)をいう。代表的な脱毛症としては、例えば、男性型脱毛症(禿頭症)、脂漏性脱毛症、粃糠性脱毛症、老人性脱毛症、円形脱毛症、分娩後脱毛症、機械性(圧迫性)脱毛症、抜毛症(精神疾患)等が挙げられる。このうち、円形脱毛症が好ましい。

本発明に係る乳酵素処理物は、優れた育毛・発毛促進作用を有するので、脱毛症を予防、治療、または改善し得るものである。

(皮膚改善) 皮膚改善とは、皮膚の美白化、色素沈着(例えば、シミ、そばかす、肌のくすみ、老人性色素斑、ホクロ、母斑、ダークサークル)の抑制若しくは改善、質除去若しくは角質ターンオーバー促進、老化防止、しわ抑制若しくは改善、保湿化、または再生などをいう。このうち、皮膚の美白化、色素沈着の抑制若しくは改善、しわ抑制若しくは改善が好ましい。

本発明に係る乳酵素処理物は、上記皮膚改善に効果を発揮する。

実施例にもとづいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。

1.乳酵素処理物(1)の調製 固体のウシ乳1mgを、1mlの1×PBSで溶解し、この溶液100μlにβ−ガラクトシダーゼ(和光純薬工業(株)製、カタログNo.072−04141、10mU/μl)6.5μl、シアリダーゼ(SIGMA−ALDRICH社製、N2876、10mU/μl)6.5μl、および100mM SPB(15.601gのNaH2PO4・2H2Oおよび35.814gのNa2HPO4・12H2Oを、500mlの蒸留水に溶解して、200mM SPB(pH7.0)を調製し、これを希釈して、100mM SPBとする。)87μlを加え、37℃で3時間インキュベートする。インキュベート後、100mM SPBをさらに200μl加え、60℃で10分間、熱処理する。熱処理後、マイクロコン(10000MWCO YM−10、MILLIPORE社)で濃縮し、タンパク質濃度を、波長570nmでの吸光度測定により決定(BSA(bovine serum albumin、SIGMA、A4503)について作成した検量線を使用)する。これにより、タンパク質濃度(μg/μl)を求める(検体1)。

かかる検体1を、100mM SPBを用いて希釈し、タンパク質濃度がそれぞれ、1ng/10μl(検体1−1)、10ng/10μl(検体1−2)、100ng/10μl(検体1−3)である各検体を調製する。

一方、酵素処理する前の乳について、タンパク質濃度を同様に決定する(比較検体1)。該比較検体1を、100mM SPBを用いて希釈し、タンパク質濃度がそれぞれ、1ng/10μl(比較検体1−1)、10ng/10μl(比較検体1−2)、100ng/10μl(比較検体1−3)である各検体を調製する。

<マクロファージ貪食能活性(1)>(オプソニン化SRBCを用いた、マウス腹腔マクロファージ貪食能活性) マウス(ICR系雌性)を頸椎脱臼し、腹部の外皮を剥ぎ、内臓を傷つけないようにして、腹腔にリン酸緩衝生理食塩水(PBS:0.01Mのリン酸ナトリウム、0.9%のNaClおよび5単位/mlのヘパリンを含有する)を10mlを注入する。腹部を1分程度タッピングした後、腹腔液を回収し、腹膜細胞を収集する。回収した腹腔液を遠心(1500rpm、4℃、15分)した後、上清を破棄しRPMI培地を加え、ピペッティングする。Burker−Turk型血球計算盤で細胞数を計測し、1.0×106cells/mlになるように、さらにRPMI培地を加えて調整する。なお、RPMI培地は以下の操作にて調製する。すなわち、クリーンベンチ内で、粉末培地(GIBCO社製、カタログ番号:856846)を精製水900mlに溶解した後、さらに2gのNaHCO3を溶解する。混合物を、1NHClでpH7.2に調整した後、精製水を用いて全量を1000mlとする。こうして得た溶液をフィルター(MILLIPORE、SLGVJ13SL)にて濾過したものをRPMI培地とし、使用時まで、4℃で保管する。

滅菌したカバーガラス(MATSUNAMI、micro cover glass、No.1)をウェル毎に3枚ずつ入れた24穴プレート(TPP、92024)に、上記で得たマクロファージ溶液を、500μl/well(5.0×105cells/well)分注し、各ウェルにさらにRPMI培地500μl/wellを加え、全体として1ml/wellになるようにする。かかるプレートを、37℃で、1時間インキュベーションした後、各ウェル内の液を破棄し、RPMI培地1mlで、各ウェルを2回洗浄する。洗浄後、さらにRPMI培地1mlを各ウェルに加え、37℃で、15時間インキュベートする。

インキュベート後、各ウェルに、上記で調製した検体1−1〜1−3、および、比較検体1−1〜1−3を、それぞれ10μl加える。37℃で、3時間インキュベートして、マクロファージを刺激する。インキュベート後、各ウェルの溶液部分を破棄し、0.5%オプソニン化SRBC(ヒツジ赤血球、(株)日本生物材料センター)1mlを加え、37℃で、90分間インキュベートし、マクロファージに貪食させる。貪食後、順次1/5×PBS、1×PBS、1×PBSを用いて、カバーガラスを洗浄し、約30分間風乾する。風乾後、各カバーガラスを、メタノール(関東化学(株)、25183−2B)に1分程度浸し、メタノール固定する。該固定後、再び約30分間風乾し、PBSで20倍希釈したギムザ液(SIGMA、A1327)で、1時間染色する。染色後、水道水でカバーガラスの裏側から洗浄し、一晩風乾する。

風乾後、スライドガラス(MATSUNAMI、micro slide glass、S2215)にカバーガラスを裏返して貼り付ける。光学顕微鏡(Nikon ECLIPSE E200)にてカバーガラス1枚につき9点写真を撮り、観察される全マクロファージ数、貪食されたSRBC数、貪食したマクロファージ数をカウントし、9点分の計測値を合計し、計測された全マクロファージのうちSRBCを貪食したマクロファージの割合に、1つのマクロファージの平均貪食数を掛けたものを摂食指数(ingestion index)として算出する。なお、参考までに、図1に、「貪食しているマクロファージ」および「貪食されているSRBC」の様子を表す、ギムザ染色後の写真を示す。ギムザ染色によってマクロファージは紫色の球体として、SRBCは透明の球体として観察されている。マクロファージに接触しているSRBCを貪食されたSRBC、SRBCに接触しているマクロファージを貪食したマクロファージとして、摂食指数を算出する。

各検体について、それぞれのカバーガラスごとに、2ないし3の摂食指数を算出し、その平均値を求める。コントロールとして、検体若しくは比較検体の代わりにRPMI培地を用いて、上記と同様の操作を行う。

(結果) 各検体は、コントロールおよび比較検体に対し、優れた摂食指数を示す。

<腸管マクロファージの貪食能活性> (各サンプルの調製) 乳サンプルは、未処理ウシ乳を100mM PBS(pH=7.0)で100μg/mlに希釈して調製する。

乳酵素処理物サンプルは、ウシ乳酵素処理物を100mM PBS(pH=7.0)で100μg/mlに希釈して調製する。

(培地の調製) RPMI培地17mlに、コラゲナーゼD(collagenase D)(Roche、11088858001)2mlとディーエヌエースI(DNaseI)(Roche、11284932001)1mlを溶かし、37℃に温め、コラゲナーゼ培地(collagenase medium)を調製する。

(貪食能活性の測定) C57BL/6雌マウス(7週齢)に20mg/mlの抱水クロラール(SIGMA、A2374)400μlを腹腔投与し、麻酔をかける。マウスの右腹部を切り裂き、腸を露出させ各サンプル(1mg/kg)を投与した後、腹部を閉じた。投与1時間後、再度腹部を切り裂いて腸を露出させ、非標識OVAプロテイン(SIGMA、A5503−1G)およびAF488標識OVAプロテイン(life technologies、O34781)を投与し、腹部を閉じる。投与1時間後、マウスを頸椎脱臼させ、腸を取り出す。取り出した腸を傷つけないようにして脂肪およびパイエル板を除去し、PBSで洗浄する。腸を2cm程度に切断して、37℃に温めたFACS緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水(PBS:0.01Mのリン酸ナトリウム、0.9%のNaClおよび5単位/mlのヘパリンを含有する)41.98mlに、FBS(非動化済み)(GIBCO社製、10437)5mlと、EDTA(ナカライテスク社製、15111−45、500mM)1mlと、HEPES(MP社製、1688449、1M)1mlと、ピルビン酸ナトリウム(GIMCO社製、11360−070、100mM)500μlと、硫酸ポリネキシンB(GIMCO社製、21850−029、25mg/ml)20μlと、ペニシリン・ストレプトマイシン(GIMCO社製、15140−122、10,000U/ml)500μl)50mlに入れ、37℃のインキュベーター中にて、スターラーで、20分間攪拌する(250rpm程度)。

攪拌後、腸を取り出し、PBS30mlで3回洗浄する。10%FBS・RPMI培地を入れた直径10cmの皿に、腸を移す。コラゲナーゼ培地4mlを入れ、腸を切断する。コラゲナーゼ培地11mlを追加し、静置する。浮いてきた泡や脂肪をアスピレーターで除去する。バイアル中の組織片をフラスコに移し、コラゲナーゼ培地5mlでバイアルを洗浄し、洗浄液をフラスコに移す。フラスコを、37℃のインキュベーターに入れ、内容物を、1時間攪拌する。攪拌後、フラスコに、0.5M EDTA(pH=8.0、PBSで作製)400μl加え、さらに5分間攪拌する。攪拌後、セルストレーナー(FALCON、352360)を乗せたチューブに上清を移す。一方、組織片に、37℃に温めたFACS緩衝液10mlを加え、懸濁する。懸濁液全体をセルストレーナーに通し、上に残ったデブリス(debris)を絞り切る。濾過液を、20℃、1800rpmで、10分間遠心分離にかける。遠心後、上清を取り除き、細胞を分散させる。細胞を40%パーコール(percoll)10mlで懸濁し、懸濁液をチューブに移し、キャピラリーを用いて75%パーコール5mlを下部に入れ、20℃、2000rpmで、チューブを20分間遠心分離にかける。遠心後、チューブの上部から40%パーコールをアスピレーターで7ml程度除去する。除去後、6ml程度を、FACS緩衝液5mlの入ったチューブに加え、更にFACS緩衝液を全量が14mlになるよう加え、20℃、1800rpmで、チューブを10分間遠心分離にかけた。遠心後、上清を除き、FACS緩衝液2mlを入れて懸濁し、1mlを別のチューブに移す。チューブを、20℃、1500rpmで、3分間遠心分離にかける。

遠心後、上清を除去し、FACS緩衝液2mlを加えたのち、さらにパシフィック(PacificTM)抗マウスF4/80抗体(anti−mouse F4/80 Antibody)(Biolegend、123124)、PE/cy7抗マウス/ヒトCD11b抗体(PE/cy7 anri−mouse/human CD11b Antibody)(Biolegend、101216)、CD16/32抗体(CD16/32 Anti−body)(BD、553141)を加え、4℃で反応させる。15分後、上清を除去し、洗浄用バッファー(wash buffer)2mlを加え、20℃、1500rpmで、3分間遠心分離する。遠心後、1μg/mlの7−アミノアクチノマイシンD(SIGMA、A9400)溶液200μlを加え、フローサイトメトリーで、腸管マクロファージの貪食活性を測定する。

(結果) 乳酵素処理物は、酵素未処理の乳に比べ、腸管における卵白アルブミン(OVA)陽性マクロファージの貪食能活性を増加させる。

2.乳酵素処理物(2)の調製 シアリダーゼを使用しなかったこと以外は、乳酵素処理物(1)の調製と同様に処理して、タンパク質濃度がそれぞれ、10ng/10μl(検体2−1)、100ng/10μl(検体2−2)である各検体を調製する。

<マクロファージ貪食能活性(2)>(オプソニン化SRBCを用いた、マウス腹腔マクロファージ貪食能活性) 上記検体を用いて、マクロファージ貪食能活性(1)と同様にして、摂食指数を求める。その結果、各検体は、コントロールに対し、優れた摂食指数を示す。

3.乳酵素処理物(3)の調製 ウシ乳(固体)1gを、100mlの50mM SPB(15.601gのNaH2PO4・2H2Oおよび35.814gのNa2HPO4・12H2Oを、500mlの蒸留水に溶解して、200mM SPB(pH7.0)を調製し、これを希釈して、50mM SPBとした。)で撹拌溶解し、1%溶液を調製する。この溶液を8,000rpm、4℃で1時間遠心する。上清を、G2膜、8μm、5μm、1.2μm、0.2μm(ミリポア社、ニトロセルロースフィルター)で順次、ろ過処理する。ろ液を中空糸膜(旭化成ケミカルズ社、ペンシル型モジュールSEP−0013)で透析処理する。

乳1mgあたり、ホルミル樹脂(TOYOPEARL社、AF−Formy−650M)で固定化したβ−ガラクトシダーゼ(和光純薬工業(株)製、カタログNo.072−04141)を1U添加し、37℃で1時間インキュベートする。インキュベート後、反応液をG2膜でろ過し、反応液中の固定化した酵素を除去する。ろ液は、0.2μmでフィルター処理を行う。フィルター処理後のろ液におけるタンパク質濃度を、波長570nmでの吸光度測定により決定(BSA(bovine serum albumin、SIGMA、A4503)について作成した検量線を使用)する。これにより、乳1gからのタンパク質回収量を求める。

上記フィルター処理後のろ液を、冷却メタノールで急速凍結した後、−80℃で静置して完全に凍結させる。これを真空乾燥して粉末化し、乳酵素処理物(3)とする。その一部を再溶解し、タンパク質濃度を、波長570nmでの吸光度測定により決定(BSA(bovine serum albumin、SIGMA、A4503)について作成した検量線を使用)する。これにより、乳1gからのタンパク質の量を求める。

乳酵素処理物(3)を用いて、その中に含まれるタンパク質の量が1.0mgとなるよう調整した腸溶性カプセルを、常法により調製した。該腸溶性カプセルを朝、晩の1日2回、被験者に投与した。

(慢性疲労症候群) 慢性疲労症候群の患者に、5ヵ月間投与したところ、疲労感および意欲低下が大幅に改善する。

(少なくもI型アレルギーに起因するアレルギー疾患) アトピー性皮膚炎の患者に3カ月間投与したところ、肌状態は落ち着き、腫れ、赤み、かゆみがおさまり、皮膚が柔らくなり、滑らかになる。花粉症の患者に1カ月間投与したところ、目のかゆみが改善し、鼻づまり、くしゃみなどの症状がなくなる。

(脱毛症) 円形脱毛症の患者に1ヵ月間投与したところ、新しい毛髪が生えてくる。

(しみ、そばかす、しわ) しみ、そばかす、しわを有する患者に投与したところ、しみ、そばかすが薄くなり、肌がつるんとし、かつ、肌のきめが細かくなる。

4.乳酵素処理物(4)の調製 脱チーズ成分処理した粗脱チーズ成分乳(一般財団法人蔵王酪農センターから入手した乳清)を8,000rpm、4℃で1時間遠心し、沈殿物に注意して、上清を回収した。回収した上清と等量の蒸留水(Mill−Qグレード。以下、特に断りの無い限り同じグレードのものを使用)を加え、ペンシル型モジュールUF膜(フナコシ、AIP−0013D)で透析処理した。この時、濾液が加えた蒸留水と等量に達するまで透析を行い、脱チーズ成分乳(乳清)を得た。タンパク質濃度を、波長570nmでの吸光度測定により決定(BSA(bovine serum albumin、SIGMA、A4503)について作成した検量線を使用)した。

上記で得た脱チーズ成分乳を、そのタンパク量が6gとなるように分注し、該脱チーズ成分乳に、ホルミル樹脂(TOYOPEARL社、Formy−650M)で固定化したβ−ガラクトシダーゼ(オリエンタル酵母工業(株)製、大腸菌由来)を4g/6,000U添加し、37℃で1時間インキュベートした。インキュベート後、反応液をグラスフィルターでろ過し、ホルミル樹脂を分離した。ホルミル樹脂は蒸留水で洗浄し、繰り返し使用のため保存した。ろ液を、ラボディスク(アドバンテック東洋(株)、50CP020AS)でフィルター滅菌した。滅菌したろ液は、凍結乾燥して粉末化し、保存可能な粉末状の乳酵素処理物(4)とした。

<マクロファージ貪食能活性(3)>(オプソニン化SRBCを用いた、マウス腹腔マクロファージ貪食能活性) 上記で得た粉末状の乳酵素処理物(4)を、100mM PBSで希釈し、所定濃度のタンパク質を含む検体4−1(10ng/10μl)および同4−2(100ng/10μl)を、それぞれ調製した。また、酵素処理する前の脱チーズ成分乳を、必要に応じ、100mM PBSで希釈し、所定濃度のタンパク質を含む比較検体4−1(10ng/10μl)および同4−2(100ng/10μl)を、それぞれ調製した。さらに、ポジティブコントロールとして、LPS(Lipopolysaccharide,from Escherichia coli、SIGMA、L2755)が1μg/10μlの検体を調製した。なお、タンパク質濃度は、いずれも、波長570nmでの吸光度測定により決定(BSA(bovine serum albumin、SIGMA、A4503)について作成した検量線を使用)した。

上記検体を用いて、マクロファージ貪食能活性(1)と同様にして、摂食指数を求めた(n=3)。結果を表1に示す。乳酵素処理物は、同未処理物に比べ、マウス腹腔マクロファージ貪食能活性を、より増加させた。

5.乳酵素処理物(4)と脱チーズ成分乳についてのウエスタンブロッティング(1)(一次抗体としてWAFを使用) (検体の調製) マーカーは、ワイドビューTMプレステインたん白質サイズマーカーIII(WIDE−VIEW TM Prestained Protein Size Marker III)(和光純薬工業(株)より入手、230−02461)を用いた。

脱チーズ成分乳は、100mM PBS(pH=7.0)で1mg/mlに希釈して用いた。

乳酵素処理物(4)は、100mM PBS(pH=7.0)で1mg/mlに希釈して用いた。

上記各検体を蒸留水で1μg/μlに調製し、各検体5μlと、Sample buffer(950μlのLaemmli Sample Buffer(BIO−RAD社製、161−0737)に50μlの2−メルカプトエタノール(SIGMA、A2029)を加える)5μlを混合し、100℃で10分間熱処理し、泳動用サンプルを得た。

泳動ゲル(XV PANTERA GEL,DRC,NXV−381D20)を泳動槽(ERICA−MP,DRC,XVE−0MPC)にセットし、泳動バッファー(高速SDS−PAGE 泳動バッファー(DRC社製、NXV−BUFPTG)を1000mlの蒸留水で溶解して調製)で泳動槽内を満たした。セットしたゲルの各wellに各泳動用サンプルをアプライし、300Vで泳動した。各泳動サンプルのアプライ量は、レーン1が5μl、レーン2が5μl、レーン3が5μlであった。泳動終了後、ゲル上部を切り捨て、転写装置(MINICA−MP,DRC,XVE−0MPB)にセットした。メタノール(関東化学(株)、25183−2B)に1分間浸したPVDF膜(BIO−RAD,162−0177)をゲル上に乗せ、47Vで、30分間転写を行った。

転写後、膜をTBS−T(8.0gのNaCl、0.2gのKCLおよび3.0gのH2NC(CH2OH)3を、1000mlの蒸留水で溶解してpH7.4に調整し、これに1mlのポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(和光純薬工業(株)より入手、167−11515)を加えて調製)で10分間、3回洗浄した。膜をブロッキング液(100mgのBSA(bovine serum albumin、SIGMA,A4503)を10mlのTBS−Tで溶解して調製)に浸し、1時間室温で振盪した。膜をTBS−Tで10分間、3回洗浄し、一次抗体WFA(5μl;WFAレクチン(Wisteria floribunda Lectin、 biotin conjyugate、lyophilized powder、フナコシ(株)より入手、B−1355)2mgを1mlの100mM SPB(pH7.0)で溶解して調製)を10mlのTBS−Tで希釈して調製)に浸し、1時間室温で振盪した。膜をTBS−Tで10分間、3回洗浄し、二次抗体ストレプトアビジン(2μlのストレプトアビジン(GE Healthcareより入手、RPN−1231)を10mlのTBS−Tで希釈して調製)に浸し、1時間室温で振盪した。膜をTBS−Tで10分間、3回洗浄した。

プラスチック容器内で膜とECL液(1mlの検出試薬1(ECL Western Blotting Detection Reagents、GE Healthcareより入手、RPN2106V1)に1mlの検出試薬2(ECL Western Blotting Detection Reagents、GE Healthcareより入手、RPN2106V2)を加えて調製)を1分間反応させ、Lumicube((株)リポニクス、5003)により撮影した。撮影後、膜をTBS−Tで10分間、3回洗浄し、CBB染色液(PAGE Blue 83、コスモ・バイオ(株)、423406)に10分間浸し、タンパク質のバンドを観察した(図2)。乳酵素処理物(4)のWFA陽性バンドの分子量に関し、24.5kDa、26.8kDa、30.6kDa、34.8kDa、41.6kDa、51.7kDa、66.6kDa、80.2kDa、84.9kDaに相当することを図2に追記した。

なお、一次抗体として使用したWAFは、GalNAcを認識する抗体である。

6.乳酵素処理物(4)と脱チーズ成分乳についてのウエスタンブロッティング(2)(一次抗体として、抗ビタミンD結合タンパク質抗体を使用) 一次抗体として、WFAに代えて、抗ビタミンD結合タンパク質抗体(10μlのAnti−Vitamin D Binding protein Antibody(Bioss社製、bs−3915R)を10mlのTBS−Tで希釈して調製)を使用したこと、および、二次抗体として、ストレプトアビジンに代えて、Anti−Rabbit IgG(1μlのAnti−Rabbit IgG(whole molecule)1ML(SIGMA、A6154−1ML)を10mlのTBS−Tで希釈して調製)を使用したこと以外は、上記ウエスタンブロッティング(1)と同様に処理して、図3の結果を得た。乳酵素処理物(4)の陽性バンドの分子量に関し、29.3kDa、31.9kDa、48.8kDa、57.8kDa、79.1kDa、96.2kDaに相当することを図3に追記した。

なお、一次抗体として使用した抗ビタミンD結合タンパク質抗体は、ビタミンD結合タンパク質を認識する抗体である。

本発明によれば、癌および感染症などの疾患、疲労を伴う疾患、アレルギー疾患(より詳しくは、少なくともI型アレルギーに起因するアレルギー疾患)および脱毛症の治療、予防または改善、並びに、皮膚改善に有用な乳酵素処理物、その製造方法、医薬組成物を含むその組成物、および医薬品を含むその製品を提供することができる。

1 貪食しているマクロファージ 2 貪食されているSRBC 3 マクロファージ

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