粉体中の特定成分を濃縮する方法

申请号 JP2016531311 申请日 2015-06-25 公开(公告)号 JPWO2016002621A1 公开(公告)日 2017-05-25
申请人 株式会社日清製粉グループ本社; 发明人 秋彦 江間; 秋彦 江間; 健司 直原; 健司 直原;
摘要 2種以上の成分を含む溶液を粒状化した粉体に機械的な乾式処理を行って、粉体の粒子内部より特定成分を多く含む表面を削り取り、微粉状の削片を生成し、削片を含む微粉と粒子表面が削り取られた粒子を含む粗粉とを分級して、特定成分を多く含む微粉を回収することにより、粉体中の特定成分を濃縮する方法を提供する。
权利要求
  • 機械的な乾式処理を行う乾式処理装置を用いて、2種以上の成分を含む溶液を粒状化した粉体中に存在する1種以上の特定成分を濃縮する方法であって、
    原料として前記粉体を前記乾式処理装置に供給する工程と、
    前記乾式処理装置に供給された前記粉体に前記乾式処理を行って、前記粉体の粒子より前記1種以上の特定成分を多く含む表面を削り取り、微粉状の削片を生成する工程と、
    生成された前記削片を含む微粉と前記粒子表面が削り取られた粒子を含む粗粉とを分級する工程と、
    分級された前記削片を含む前記微粉を回収する工程と、を有することを特徴とする濃縮方法。
  • 前記乾式処理装置は、分級室を備える気流式分級機であり、
    前記気流式分級機で、前記分級室内に供給された前記粉体を旋回気流に載せて前記粉体の粒子表面を削り取ることによって前記削片を生成し、生成された前記削片を含む前記微粉を分級することにより、前記削片の生成工程と、前記削片を含む前記微粉の分級工程とを同時に行う請求項1に記載の濃縮方法。
  • 前記削片の生成工程における前記削片の生成量は、前記気流式分級機に供給される前記粉体の供給速度および風量、並びに前記気流式分級機内のロータの回転数の1つ以上を制御することにより制御される請求項2に記載の濃縮方法。
  • 前記削片を含む前記微粉の分級工程における前記削片を含む前記微粉と前記粗粉とを分級する分級点は、前記気流式分級機に供給される前記粉体の供給速度および風量、並びに前記気流式分級機内のロータの回転数の1つ以上を制御することにより制御される請求項2に記載の濃縮方法。
  • 前記乾式処理装置は、粉砕機と、分級機と、を含み、
    前記削片の生成工程は、前記粉砕機で、前記粉体の表面を削り取って前記削片を生成する工程であり、
    前記削片を含む前記微粉の分級工程は、前記分級機で、生成された前記削片を含む前記微粉と前記粗粉とを分級する工程である請求項1に記載の濃縮方法。
  • 前記粉砕機は、気流式粉砕機、摩砕式粉砕機、衝撃式粉砕機、およびボール式粉砕機の中から1つ以上選択される粉砕機であり、
    前記分級機は、気流式分級機、および振動篩装置の中から1つ以上選択される分級機である請求項5に記載の濃縮方法。
  • 前記粉体は、溶解特性の異なる2種以上の成分を含む溶液をスプレードライ法にて粒状化したものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の濃縮方法。
  • さらに、前記微粉を回収する工程で回収された前記削片を含む前記微粉を、前記原料として、再度、前記乾式処理装置に供給する工程と、
    前記供給された前記削片を含む前記微粉に前記乾式処理を行って、前記微粉の粒子表面を削り取り、より微細な微粉状の削片を生成する工程と、
    生成された前記より微細な微粉状の前記削片を含むより微細な微粉を、残りの表面が削り取られた微粉から分離する工程と、
    分離された前記より微細な微粉を回収する工程と、
    を繰り返して、前記微粉中の1種以上の特定成分を濃縮する請求項1〜7のいずれか1項に記載の濃縮方法。
  • さらに、前記粒子表面が削り取られた粒子を含む前記粗粉を回収する工程を有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の濃縮方法。
  • さらに、前記粗粉を回収する工程で回収された前記粒子表面が削り取られた粒子を含む前記粗粉を、前記原料として、再度、前記乾式処理装置に供給する工程と、
    前記供給された前記粒子表面が削り取られた粒子を含む前記粗粉に前記乾式処理を行って、前記微粉の粒子表面を削り取り、さらに微粉状の削片を生成する工程と、
    生成された前記削片を含む微粉と残りのさらに表面が削り取られた粗粉とを分離する工程と、
    分離された微粉を回収する工程と、
    を繰り返して、前記微粉中の1種以上の特定成分を濃縮する請求項9に記載の濃縮方法。
  • 前記2種以上の成分は、タンパク質、ミネラル及び乳糖の少なくとも1つを含む請求項1〜10のいずれか一項に記載の濃縮方法。
  • 前記粉体は、ホエイパウダーであり、前記1種以上の特定成分は、タンパク質及びミネラルを含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の濃縮方法。
  • 前記粉体は、ホエイパウダーであり、
    前記1種以上の特定成分は、タンパク質、ミネラル及び乳糖であり、
    前記粒子表面が削り取られた粒子を含む前記粗粉は、前記粒子表面が削り取られ、乳糖成分を含む粒子を含む前記粗粉である請求項9〜12のいずれか1項に記載の濃縮方法。
  • 請求項1〜13のいずれか1項に記載の濃縮方法によって1種以上の特定成分が濃縮された微粉からなる中間製品を原料として用い、さらに湿式操作にて1種以上の特定成分を濃縮するプロセスを含むことを特徴とする特定成分の濃縮方法。
  • 前記1種以上の特定成分はタンパク質である請求項14に記載の特定成分の濃縮方法。
  • 前記1種以上の特定成分はミネラルである請求項14に記載の特定成分の濃縮方法。
  • 請求項9〜13のいずれか1項に記載の濃縮方法によって1種以上の特定成分が濃縮された粗粉からなる中間製品を原料として用い、さらに湿式操作にて1種以上の特定成分を濃縮するプロセスを含むことを特徴とする特定成分の濃縮方法。
  • 前記1種以上の特定成分は乳糖である請求項17に記載の特定成分の濃縮方法。
  • 说明书全文

    本発明は、2種以上の成分を含む溶液を粒状化した粉体における、粉体中に存在する特定成分の濃縮方法に関し、詳しくは、機械的な乾式処理装置を用いて乾燥状態のまま、粉体中に存在する少なくとも1つの特定成分を濃縮する方法、及びこうして乾燥状態のまま少なくとも1つの特定成分が濃縮された粉体をさらに湿式操作に特定成分を濃縮する特定成分の濃縮方法に関する。
    特に、本発明は、スプレードライ法により粒状化したホエイパウダー中のタンパク質の濃縮方法に関し、詳しくは、機械的な乾式処理装置を用いて乾燥状態のままホエイパウダー中のタンパク質を濃縮する方法、及びこうして乾燥状態のままタンパク質が濃縮されたホエイの紛体をさらに湿式操作にてタンパク質を濃縮するタンパク質の濃縮方法に関する。

    ホエイは、乳清とも呼ばれ、チーズを製造する過程で副産物として大量に発生する。 チーズを製造する工程では、乳に対し菌や酸などを投入し反応させ、カゼインタンパク質の塊であるカードと呼ばれる固形分と、主にホエイタンパク質からなるタンパク質、ミネラルと乳糖などからなるホエイと呼ばれる液体部分とに分離される。
    これまで、ホエイは、大部分が廃棄されてきたが、高タンパク・低脂肪で栄養価が高い優れた食品として見直されてきている。

    ホエイは、その栄養価の高さから品質が劣化しやすく、分をなくした状態の粉末状のホエイパウダーとして流通している。
    すなわち、ホエイ中のタンパク質とともに存在する乳糖等を、限外ろ過(ウルトラフィルトレーション)等により取り去って乳糖および灰分の濃度を低下させ、タンパク質を濃縮したホエイタンパク質濃縮物、またはこのホエイタンパク質濃縮物から水分をなくしたタンパク質濃縮ホエイパウダーが市販され、育児用食品の製造におけるタンパク源、各種食品の製造における原料等として利用されている。

    特許文献1には、ホエイ中のタンパク質を分画するために、ホエイまたはホエイを限外ろ過して得た濃縮ホエイを、そのpHを調整せずに、そのまま陰イオン交換体を充填したカラムに通液し、陰イオン交換体に吸着させ、塩溶液で吸着したβ−ラクトグロブリンを溶出させる技術が開示されている。
    特許文献2には、ホエイを限外ろ過段階にかけラクトース(乳糖)をバーミエート(抽出された乳糖、ミネラル分)として除去し、限外ろ過ホエイリチンテート(残余分)を熱処理にかけて合計約50%以上90%以下のホエイ中のタンパク質を変性させ、熱処理したホエイを濃縮してホエイタンパク濃縮物を生成させることを含むホエイ中のタンパク濃縮物を製造する技術が開示されている。

    特開平6−62756号

    特表平6−507312号

    特許文献1に開示の技術を用いた場合、ホエイに対して陰イオン交換膜を使用してタンパク質の吸着、溶出を繰り返す必要があり、大変複雑であり工程が煩雑であった。
    特許文献2に開示の技術を用いた場合、タンパク質は濃縮できるものの熱変性がおきるため、死活化していないタンパク質を利用する用途では適用できなかった。
    さらに、これらの技術はいずれも液体状態のホエイに対して濃縮処理を行うものに過ぎず、いずれの技術によっても濃縮処理を行った後、品質の劣化を避けるため乾燥させて、パウダー状にする必要があった。

    本発明の目的は、取扱いが簡単で劣化しにくい粉末状のホエイパウダーを乾燥状態のまま処理して、ホエイパウダー中のタンパク質を濃縮する方法、及びこの方法で乾燥状態のままタンパク質が濃縮されたホエイの微粉をさらに湿式操作にてタンパク質を濃縮するタンパク質の濃縮方法を提供することにある。

    本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、スプレードライ法で作られたホエイパウダーに機械的な乾式処理を行い、ホエイパウダーの粒子表面を削り、微粉状のホエイ削片を生成させて分級して回収することでホエイパウダー中のタンパク質を濃縮することができることを知見し、本発明に至ったものである。

    すなわち、本発明の濃縮方法は、機械的な乾式処理を行う乾式処理装置を用いて、2種以上の成分を含む溶液を粒状化した粉体中に存在する1種以上の特定成分を濃縮する方法であって、原料として粉体を前記乾式処理装置に供給する工程と、乾式処理装置に供給された粉体に乾式処理を行って、粉体の粒子より1種以上の特定成分を多く含む表面を削り取り、微粉状の削片を生成する工程と、生成された削片を含む微粉と粒子表面が削り取られた粒子を含む粗粉とを分級する工程と、分級された削片を含む前記微粉を回収する工程と、を有することを特徴とする。

    ここで、乾式処理装置は、分級室を備える気流式分級機であり、気流式分級機で、分級室内に供給された粉体を旋回気流に載せて粉体の粒子表面を削り取ることによって削片を生成し、生成された削片を含む前記微粉を分級することにより、削片の生成工程と、削片を含む前記微粉の分級工程とを同時に行うことが好ましい。

    また、削片の生成工程における削片の生成量は、気流式分級機に供給される粉体の供給速度および風量、並びに気流式分級機内のロータの回転数の1つ以上を制御することにより制御されることが好ましい。

    また、削片を含む微粉の分級工程における削片を含む微粉と粗粉とを分級する分級点は、気流式分級機に供給される粉体の供給速度および風量、並びに気流式分級機内のロータの回転数の1つ以上を制御することにより制御されることが好ましい。

    また、乾式処理装置は、粉砕機と、分級機と、を含み、削片の生成工程は、粉砕機で、粉体の表面を削り取って削片を生成する工程であり、削片を含む微粉の分級工程は、分級機で、生成された削片を含む微粉と粗粉とを分級する工程であることが好ましい。

    また、粉砕機は、気流式粉砕機、摩砕式粉砕機、衝撃式粉砕機、およびボール式粉砕機の中から1つ以上選択される粉砕機であり、分級機は、気流式分級機、および篩の中から1つ以上選択される分級機であることが好ましい。 なお、乾式処理装置を構成する装置や機器は、粉砕機あるいは分級機に限定されるわけではなく、表面を削り取って削片を生成する機能を持つ装置あるいはそのような操作を行う機器と、その削片を分離回収する機能を持つ装置あるいはそのような操作を行う機器であればよい。 また、これらの機能を併せ持つ装置あるいはそれらの両操作を行う機器であっても良い。

    また、粉体は、溶解特性の異なる2種以上の成分を含む溶液をスプレードライ法にて粒状化したものであることが好ましい。

    またさらに、微粉を回収する工程で回収された削片を含む微粉を、原料として、再度、乾式処理装置に供給する工程と、供給された削片を含む微粉に乾式処理を行って、微粉の粒子表面を削り取り、より微細な微粉状の削片を生成(製造)する工程と、生成されたより微細な微粉状の削片を含むより微細な微粉を、残りの表面が削り取られた微粉から分離する工程と、分離されたより微細な微粉を回収する工程と、を繰り返して、微粉中の1種以上の特定成分を濃縮することが好ましい。

    さらに、粒子表面が削り取られた粒子を含む粗粉を回収する工程を有することが好ましい。

    またさらに、粗粉を回収する工程で回収された粒子表面が削り取られた粒子を含む粗粉を、原料として、再度、乾式処理装置に供給する工程と、供給された粒子表面が削り取られた粒子を含む粗粉に乾式処理を行って、微粉の粒子表面を削り取り、さらに微粉状の削片を生成(製造)する工程と、生成された削片を含む微粉と残りのさらに表面が削り取られた粗粉とを分離する工程と、分離された微粉を回収する工程と、を繰り返して、微粉中のタンパク質を濃縮することが好ましい。

    上記2種以上の成分は、タンパク質、ミネラル及び乳糖の少なくとも1つを含むことが好ましい。
    上記粉体は、ホエイパウダーであり、上記1種以上の特定成分は、タンパク質及びミネラルを含むことが好ましい。
    上記粉体は、ホエイパウダーであり、上記1種以上の特定成分は、タンパク質、ミネラル及び乳糖であり、上記粒子表面が削り取られた粒子を含む粗粉は、粒子表面が削り取られ、乳糖成分を含む粒子を含む粗粉であることが好ましい。

    またさらに、本発明の特定成分の濃縮方法は、上記粒状化した粉体中に存在する1種以上の特定成分を濃縮する方法によって1種以上の特定成分が濃縮された微粉からなる中間製品を原料として用い、さらに、湿式操作にて1種以上の特定成分を濃縮するプロセスを含むものである。
    上記1種以上の特定成分は、タンパク質であることが好ましい。
    上記1種以上の特定成分は、ミネラルであることが好ましい。
    また、さらに、本発明の特定成分の濃縮方法は、上記粒状化した粉体中に存在する1種以上の特定成分を濃縮方法によって1種以上の特定成分が濃縮された粗粉からなる中間製品を原料として用い、さらに、湿式操作にて1種以上の特定成分を濃縮するプロセスを含むものである。
    上記1種以上の特定成分は乳糖であることが好ましい。

    本発明によれば、取扱いが簡単で劣化しにくい粉末状のホエイパウダーに機械的な乾式処理を行い、乾燥状態のままタンパク質を濃縮することができる。
    また、本発明によれば、乾式処理により、乾燥状態のままホエイパウダーよりミネラル成分を濃縮することができる。
    また、本発明によれば、乾式処理により、乾燥状態のままホエイパウダーより乳糖成分を濃縮することができる。
    さらに、本発明によれば、乾式工程でタンパク質を濃縮したホエイパウダーを湿式濃縮操作での原料として用いることで、運搬コストや湿式工程での処理コストを低減することができる。
    また、本発明によれば、乾式工程でミネラルを濃縮したホエイパウダーを湿式濃縮操作での原料として用いることで、運搬コストや湿式工程での処理コストを低減することができる。

    本発明の一実施形態に係るホエイパウダー中のタンパク質の濃縮方法の一例のフローを示すフローチャートである。

    (a)は、本発明法に用いられるホエイパウダー中のタンパク質の乾式濃縮装置の一実施例の模式図であり、(b)は、(a)に示す乾式濃縮装置の乾式処理装置である気流式分級機においてホエイパウダー粒子に作用するを説明する説明図である。

    本発明法に用いられる乾式処理装置の他の一例の模式図である。

    本発明の一実施形態におけるタンパク質の濃縮方法の実施の結果として分離される微粉および粗粉サンプルの割合、並びにそれらのサンプルにおけるタンパク質の含有割合を表した図である。

    (a)は原料として使用したホエイパウダーをSEM(走査型電子顕微鏡)で撮影した図面代用写真であり、(b)は(a)を更に拡大したものである。

    (a)は乾式処理装置で処理を行ったホエイパウダーのうち、微粉側で回収された微粉(F)のSEM(走査型電子顕微鏡)で撮影した図面代用写真であり、(b)は(a)を更に拡大したものである。

    (a)は乾式処理装置で処理を行ったホエイパウダーのうち、粗粉側で回収された粗粉(C)のSEM(走査型電子顕微鏡)で撮影した図面代用写真であり、(b)は(a)を更に拡大したものである。

    (a)は乾式処理装置で処理を行ったホエイパウダーのうち、微粉側で回収された微粉(F)をさらに乾式処理装置で処理して微粉側で回収された微粉(FF)のSEM(走査型電子顕微鏡)で撮影した図面代用写真であり、(b)は(a)を更に拡大したものである。

    (a)は乾式処理装置で処理を行ったホエイパウダーのうち、粗粉側で回収された粗粉(C)をさらに乾式処理装置で処理して粗粉側で回収された粗粉(CC)のSEM(走査型電子顕微鏡)で撮影した図面代用写真であり、(b)は(a)を更に拡大したものである。

    (a)はホエイパウダーの断面のSEM(走査型電子顕微鏡)で撮影した図面代用写真であり、(b)は、そのEDSスペクトルを示す図である。

    (a)はホエイパウダーの断面のSEM(走査型電子顕微鏡)で撮影した図面代用写真であり、図10(a)を更に拡大したものであり、(b)は、そのEDSスペクトルを示す図である。

    図11に示すホエイパウダーの断面のEDSマッピング像であり、(a)は、Naの元素マッピング図を示し、(b)は、Kの元素マッピング図を示し、(c)は、Caの元素マッピング図を示す。

    実施例における各サンプルの粒度分布の測定結果を表す図である。

    以下に、本発明の溶解特性の異なる2種以上の成分を含む溶液を粒状化した粉体中に存在する特定成分を濃縮する方法の好適な一実施形態である、ホエイパウダー中のタンパク質を濃縮する方法の一例について、添付の図面の好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
    なお、本発明における溶解特性の異なる2種以上の成分を含む溶液を粒状化した粉体とは、溶解特性の異なる2種以上の成分を含む溶液を乾燥粉体状にしたものであれば特に限定されない。 このような粉体としては、例えば、スプレードライ法や真空乾燥法により粒状化した粉体があげられるが、その中でも、スプレードライ法により粒状化した粉体を用いるのが好ましい。 スプレードライ法により粒状化した粉体は、粒子内での成分分布の偏りが大きいからである。
    また、本願における溶解特性とは、例えば、溶媒中に溶かすことができる成分の量(溶解度)や、異なる2種以上の成分間における混合または分離のしやすさ(親和性)や、同一成分が集まりやすいか、分散しやすいか等、液相が乾燥して固相になるときに生じる性質をいう。

    本実施形態においては、スプレードライ法により粒状化したホエイパウダーを使用し、ホエイパウダー中のタンパク質を濃縮する方法を説明するが、2種以上の成分を含む溶液を粒状化した粉体であれば、これに限定されず、スプレードライ粉体として、例えば、脱脂粉乳、インスタントコーヒー等にも用いることができる。

    まず、本発明の一実施形態に係るホエイパウダー中のタンパク質を濃縮する方法(以下、単にタンパク質の濃縮方法ともいう)を説明するに先立ち、本発明の一実施形態にかかる方法において原料として用いられるホエイパウダーについて説明する。
    本実施形態に原料として用いられるホエイパウダーは、ホエイを乾燥させて粉末状にしたもので、スプレードライ法で作られたものを用いる。 また、このようなホエイパウダーの粒子の形状や粒径は、限定されるものではなく、特に、スプレードライ法で作られたものであれば、どのようなものでも構わないが、好ましくは表面に凹凸が少なく、なめらかな形状をしている方が良い。 例えば、原料としては、図5(a)および(b)に示すようなホエイパウダーを用いるのが好ましい。

    スプレードライ法で作られたホエイパウダーは、その製造時において、ホエイパウダーに含まれる複数種類の成分の溶解特性の違いから、成分ごとに偏析が生じる。 そのため、乳糖はホエイパウダーの中心部近くに、タンパク質が多い部分はホエイパウダーの表面近くに偏析する傾向にある。 つまり、このホエイパウダーの表面は、中心部近くに偏析する乳糖を取り囲むように存在するタンパク質の濃度が高い傾向がある。
    したがって、ホエイパウダーの表面を削り、削り取られた微粉を回収することで、ホエイパウダー中のタンパク質を濃縮することができる。

    図1は、本実施形態に係るホエイパウダー中のタンパク質の濃縮方法の一例のフローを示すフローチャートである。
    本実施形態のホエイパウダー中のタンパク質の濃縮方法は、図1に示すように、ホエイパウダー等の原料を供給するステップ(工程)S10と、ホエイパウダー等の原料粒子からタンパク質を多く含む粒子表面を削り取り微粉状のホエイ削片を生成するステップS12と、微粉状のホエイ削片からなる微粉とのこりの粒子からなる粗粉とに分級するステップS14と、分級した微粉を回収するステップS16と、回収された微粉をさらに濃縮するか否かを判断するステップS18と、分級した粗粉を回収するステップS20と、回収された粗粉からタンパク質を回収するか否かを判断するステップS22とからなり、これらのステップを実施するものである。

    本実施形態においては、まず、ステップS10の原料を供給する工程において、原料としてホエイパウダーを、乾燥状態のまま、機械的な乾式処理を行う乾式処理装置に供給する。 ここで、供給方法は、特に限定的ではなく、どのようなものでも良いが、スクリューフィーダ、振動フィーダ等を用いた供給のように、原料としてのホエイパウダーが一定速度で供給されることが好ましい。

    次に、ステップS12のタンパク質を多く含む粒子表面を削り取り微粉状のホエイ削片を生成する工程では、乾燥状態のまま、機械的な乾式処理を行う乾式処理装置で処理を行い供給された原料であるホエイパウダー粒子表面を削り、ホエイ削片を生成させる。
    ここで、表面を削り取りホエイ削片を生成させる方法は、ホエイパウダーを粉砕せず、表面を削り取る方法であれば、特に限定されないが、ホエイパウダーに気体を当て、粒子と気体との間に発生する剪断力や粒子同士や粒子と壁面の衝突による摩擦による方法(例えば、気流式分級機、気流式粉砕機など)、ホエイパウダーを容器にいれてかき回し、粒子同士や粒子と壁面、同時に投入した撹拌子との摩擦による方法(例えば、摩砕式粉砕機、衝撃式粉砕機、およびボール式粉砕機など)などがあげられる。

    ステップS14の粗粉と微粉とに分級する工程では、タンパク質を多く含む微粉状のホエイ削片を含む微粉と、粒子表面が削り取られた粒子を含む粗粉とを分級することで、微粉と粗粉に分ける。 この時、気流式分級機のように分級機能を持っているものであれば、ステップS12の微粉状のホエイ削片を生成する工程とステップS14の粗粉と微粉とに分級する工程を同時に行うことができるが、そうでない場合には、独立して粒子の大きさによって分級できる装置(気流式分級機、振動篩装置など)を使用してもよい。

    ステップS16の分級した微粉を回収する工程では、ステップS14の粗粉と微粉とに分級する工程で分離した微粉を回収する。
    なお、本実施形態においては、ステップS16で微粉を回収して、ホエイパウダー中のタンパク質の濃縮方法を終了してもよいが、タンパク質の濃縮度を上げるために、例えば、目標値(目標濃縮度)まで上げるために、ステップS18の濃縮の要否の判断工程を設けて、更にタンパク質の濃縮方法を繰り返してもよい。
    また、本実施形態においては、ステップS14で微粉と分離された粗粉を回収するステップS20とを設け、粗粉を積極的に回収して利用するようにしてもよいし、ステップS22のタンパク質の回収の要否の判断工程を設けて、回収された粗粉を原料として更にタンパク質の濃縮方法を繰り返してもよい。

    すなわち、回収された微粉について、ステップS18のさらに濃縮が必要であるか判断する工程において判断を行い、回収された微粉がさらなる濃縮が不要であると判断された場合には、本実施形態の濃縮方法を終了し、ステップS16で回収された微粉は、そのまま製品とすることができる。 なお、こうして回収された微粉は、タンパク質が濃縮されたホエイパウダーであるので、この濃縮ホエイパウダーを溶解し、従来技術のような湿式法に適用してタンパク質を更に種々の種類に分画するために用いても良い。
    一方、ステップS18の判断工程で、さらに濃縮が必要であると判断された場合には、ステップS10の原料を供給する工程に戻り、回収された微粉(1次微粉)を原料として乾式処理装置に供給し、ステップS12において乾式処理装置に供給された1次微粉に再度機械的な乾式処理を行って、さらに微細な微粉状のホエイ削片(2次ホエイ削片)を生成し、ステップS14において2次ホエイ削片からなる微粉(2次微粉)と、この2次微粉に対する粗粉となる残りの表面が削り取られた1次微粉とを分離し、ステップS16において分離された2次微粉を回収することを、ステップS18において濃縮が不要と判断されるまで繰り返す。

    一方、ステップS20の分級した粗粉を回収する工程では、ステップS14の粗粉と微粉とに分級する工程で分離した粗粉を回収する。 回収された粗粉には、乳糖成分が多く含まれているので、乳糖成分を抽出するために用いることができる。
    なお、本実施形態においては、ステップS20で粗粉を回収して、ホエイパウダー中のタンパク質の濃縮方法を終了してもよいが、回収された粗粉には、乳糖成分が多く含まれているが、まだ、タンパク質も含まれているので、ホエイパウダー中のタンパク質の回収率を上げるために、ステップS22のタンパク質の回収の要否の判断工程を設けて、回収された粗粉を原料として更にタンパク質の濃縮方法を繰り返してもよい。
    すなわち、回収された粗粉について、ステップS22のさらにタンパク質の回収が必要であるか判断する工程において判断を行い、回収された粗粉からタンパク質の回収が不要であると判断された場合には、本実施形態の濃縮方法を終了しても良いし、タンパク質が濃縮されたホエイパウダーに対して、従来技術のような湿式法、例えば、水に溶かし、イオン交換膜や限外ろ過膜を使用した方法を適用してタンパク質を更に種々の種類に分画するために用いても良い。

    一方、ステップS22の判断工程で、さらにタンパク質の回収が必要であると判断された場合には、ホエイパウダー中のタンパク質の回収率を上げるために、ステップS10の原料を供給する工程に戻り、回収された粗粉(1次粗粉)を原料として乾式処理装置に供給し、ステップS12において乾式処理装置に供給された1次粗粉に再度機械的な乾式処理を行って、さらに表面を削り、微粉状のホエイ削片を生成し、ステップS14においてホエイ削片からなる微粉(粗微粉)と、残りのさらに表面が削り取られた粗粉(2次粗粉)とを分離し、ステップS16においてステップS14で分離された粗微粉を回収するとともに、ステップS20においてステップS14で分離された2次粗粉を回収することを、ステップS22においてタン� ��ク質の回収が不要と判断されるまで繰り返す。
    なお、ステップS16において回収された粗微粉は、上述した2次微粉と同様に、タンパク質の濃縮度を上げるために、例えば、目標値(目標濃縮度)まで上げるために、ステップS18において濃縮が不要と判断されるまで本実施形態のタンパク質の濃縮方法を繰り返してもよい。

    例えば、本実施形態の濃縮方法においては、図4に示すように、タンパク質を13.2wt%含有するホエイパウダー原料(RM)(図5(a)および(b)参照)に対して1回目の乾式処理を行って、タンパク質含有量21.6wt%の微粉(1次微粉F)28.7wt%と、タンパク質含有量9.9wt%の粗粉(1次粗粉C)71.3wt%とを分離して得ることができる。
    こうして得られたタンパク質含有量21.6wt%の1次微粉(F)に対して、2回目の乾式処理を行って、タンパク質含有量32.1wt%の微粉(2次微粉FF;図8(a)および(b)参照)34.3wt%と、タンパク質含有量15.3wt%の粗粉(微粗粉FC)65.7wt%とを分離して得ることができる。
    一方、1回目の乾式処理で得られたタンパク質含有量9.9wt%の1次粗粉(C)に対して、2回目の乾式処理を行って、タンパク質含有量11.3wt%の微粉(粗微粉CF)49.3wt%と、タンパク質含有量8.8wt%の粗粉(2次粗粉CC;図9(a)および(b)参照)50.7wt%とを分離して得ることができる。

    なお、本実施形態において、ステップS12のホエイパウダーに乾式処理を行って、タンパク質を多く含む表面を削り取り、微粉状のホエイ削片を生成するとは、原料としてのホエイパウダーの粒子表面を削り取りまたは剥がし取り、微粉状のホエイ削片またはホエイ剥片を含む微粉(例えば、図8(a)および(b)参照)が生成することをいう。 また、その結果、ホエイパウダーの粒子表面が削り取られた粒子(例えば、図9(a)および(b)参照)を含む粗粉も同時に生成される。

    本実施形態において、タンパク質の濃縮とは、タンパク質を多く含む表面を削り取った微粉状のホエイ削片を含む微粉を生成し、粗粉と分離して回収することであるので、タンパク質を多く含む表面を削り取る強さ、すなわち微粉状のホエイ削片を生成する強さと、微粉と粗粉を分級する分級点を変化させることにより、タンパク質の濃縮(濃縮度)を制御することができる。

    ところで、本発明の発明者らがさらに鋭意研究を重ねたところ、本実施形態の機械的な乾式処理にかかる濃縮方法によれば、タンパク質とともに複数種のミネラルも濃縮することができることを知見した。

    図10(a)は、スプレードライ法により製造されたホエイパウダー(RM)の断面のSEM(走査型電子顕微鏡)で撮影した図面代用写真であり、図10(b)は、EDS(日本電子株式会社製 JED−2300F型)により検出した、そのEDSスペクトルを示す図である。 図11(a)は、図10(a)を拡大した図であり、図11(b)は、EDS(日本電子株式会社製 JED−2300F型)により検出した、そのEDSスペクトルを示す図である。 図12は、図11に示すホエイパウダーの断面のEDSマッピング像であり、(a)は、Naの元素マッピング図を示し、(b)は、Kの元素マッピング図を示し、(c)は、Caの元素マッピング図を示す。 図中、黄はNaを示し、赤はKを示し、青はCaを示す。

    図10(b)及び図11(b)に示すEDSスペクトル分析から、ホエイパウダーに、複数種のミネラルが含まれることがわかる。 また、図12から、ミネラルが、ホエイパウダーの内側に少なく、外側に多く存在し、パウダー表面を覆うように偏析していることがわかる。
    したがって、スプレードライ法により粒状化されたホエイパウダーの表面を削り、削り取られた微粉を回収すれば、ホエイパウダー中のミネラルを濃縮することができることがわかる。

    例えば、図4に示す本実施形態の濃縮方法によれば、表1に示すように、複数のミネラルを4.1wt%含有するホエイパウダー原料(RM)に対して、上記の本実施形態に係る乾式処理を同様に行って、ミネラル含有量9.5wt%の微粉(2次微粉FF)を分離して得ることができる。
    また、同様に、ホエイパウダー原料(RM)および2次微粉FFの各ミネラルの含有量も測定したところ、表1に示されるように、K、Ca、ClおよびPの結果に有意差が認められ、これらミネラルが濃縮されていることがわかる。

    なお、本実施形態の機械的な乾式処理にかかる濃縮方法により濃縮されたミネラルは、上述したタンパク質と同様に、従来技術の湿式法を利用して、さらに濃縮することもできる。

    以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明を実施する装置の一実施形態を詳細に説明する。
    図2(a)は、本発明の一実施形態に係るホエイパウダー中のタンパク質(及びミネラル)を濃縮する方法を実施するタンパク質(及びミネラル)の乾式濃縮装置の一実施例の模式図である。
    乾式濃縮装置10は、原料フィーダ20、気流式分級機30、バグフィルタ40、およびファン(吸引ブロア)50から構成される。 また、乾式濃縮装置10は、さらに、バグフィルタ40から微粉を回収する微粉回収器100と、気流式分級機30において分級された粗粉を回収する粗粉回収器200を備える。

    原料フィーダ20は、図1のステップS10の原料供給工程を実施するためのもので、原料であるホエイパウダーを気流式分級機30に供給する。 本発明においては、原料フィーダ20は、所定量のホエイパウダーを気流式分級機30に供給することができれば、特に制限的ではなく、公知の原料フィーダを用いることができるが、例えば、一定量の原料を供給することができる容積型フィーダであるのが好ましい。 すなわち、原料フィーダ20としては、図示例のように、原料フィーダモータ22によって回転駆動されるスクリュー24によってホッパ26内の原料粉末(ホエイパウダー)を一定量ずつ切り出して、排出口28から一定量のホエイパウダーを気流式分級機30に供給するスクリューフィーダを用いることが好ましい。

    気流式分級機30は、本発明のホエイパウダーの乾式処理装置を構成し、図1のステップS12のホエイ削片の生成工程および図1のステップS14の分級工程を実施するためのものである。
    気流式分級機30としては、ホエイ削片の生成と分級とを同時に行うもので、分級対象となる原料粉末に対して作用する気流の剪断力や原料粉末同士の摩擦力が大きく、粒子表面を削り取りが可能なものであればどのようなものでも良く、例えば、公知の気流式分級機を用いることができる。 なお、後述するように、気流式分級機30の代わりに、図1のステップS12の乾式処理工程を実施する粉砕機と、図1のステップS14の分級工程を実施する分級機とを有していても良い。

    図2(a)に示す気流式分級機30には、気流式分級機モータ32により回転するロータ34が内蔵されている。
    気流式分級機30では、図2(b)に示すように、供給されたホエイパウダーの粒子500に、ロータ34の回転およびファン50の吸引によって発生した旋回する気流を当て、粒子500を旋回する気流の流れ510に載せて旋回させるので、粒子500の流れ520は、旋回流となる。 この時、粒子500と旋回気流との間に発生する剪断力や粒子同士や粒子と装置内壁面との接触や衝突による摩擦力によりタンパク質(及びミネラル)を多く含む粒子表面を削り取り、微粉状のホエイ削片を生成し、ホエイ削片を含む微粉と粒子表面が削り取られた粒子を含む粗粉とが混合されたものが生成される。

    すなわち、気流式分級機30内において、旋回気流により原料粉末(ホエイパウダー)が受ける衝撃力や、原料粉末間の接触等や、原料粉末と装置内壁面との接触等によって原料粉末が受ける剪断力で、原料であるホエイパウダー粒子の表面が削られ、ホエイ削片が生成される。
    こうして、まず、図1に示すステップS12のホエイ削片の生成工程が実施される。

    ところで、図2(b)に示すように、ホエイパウダーの粒子500(ホエイ削片を含む微粉や粒子表面が削り取られた粒子を含む粗粉をも含む)は、この回転によりロータ34の回転軸から見て外側向きの力である遠心力550を受ける。 さらに、ファン50によって発生する吸引気流による抗力560は、ロータ34の回転軸へ向かう方向の力になるように設計されている。 この時、粒子500は、質量が大きいほど、遠心力550を大きく受け、断面積が大きいほどファン50によって発生する気流による抗力560の影響を大きく受ける。
    したがって、ホエイパウダーの供給速度(単位時間当たりの供給量)と風量(単位時間当たりの供給気流量)、並びに気流式分級機内のロータ34の回転数のうち1つ以上を制御することでホエイ削片を含む微粉や粒子表面を削り取られた粒子を含む粗粉の受ける力を変化させることができる。

    その結果、微粉状のタンパク質(及びミネラル)を多く含むホエイ削片を含む微粉は、ファン50の発生する気流に乗りバグフィルタ40へ移動する。 一方、粗粉は、ファン50の発生する気流に乗り切れず、気流式分級機30から排出される。
    こうして、気流式分級機30内において、図1に示すステップS14の分級工程が実施される。

    バグフィルタ40は、気体と共に流入した粉体を気体から分離して粉体を回収するためのもので、特に制限的ではなく、公知のバグフィルタを用いることができる。 バグフィルタ40に気流と共に移動した微粉は、バグフィルタ40の中で、図示しないフィルタにより、微粉と気体に分離される。 バグフィルタ40内で気体と分離された微粉は、バグフィルタ40の下方に設けられた微粉回収バルブの開放により微粉回収器100に回収される。 こうして、図1に示すステップS16の微粉回収工程が実施される。
    一方、気流式分級機30から排出された粗粉は、粗粉回収器200に回収される。 こうして、図1に示すステップS20の粗粉回収工程が実施される。
    なお、微粉回収器100および粗粉回収器200も、特に制限的ではなく、公知の粉体回収容器を用いることができる。

    本発明においては、微粉の回収後、図1に示すステップS18の判断工程で微粉中のタンパク質のさらなる濃縮が必要であると判断された場合には、微粉回収器100に回収された微粉を、原料粉末として原料フィーダ20のホッパ26に充填するのが良い。
    一方、粗粉の回収後、図1に示すステップS22の判断工程で粗粉からタンパク質(及びミネラル)の回収が必要であると判断された場合には、微粉回収器100に回収された粗粉を、原料粉末として原料フィーダ20のホッパ26に充填するのが良い。

    上述した例では、本発明の乾式処理装置として、ホエイ削片の生成と分級とを同時に行う気流式分級機30を用いているが、本発明はこれに限定されず、それぞれを異なる装置で行うようにしても良い。
    図3は、本発明における、別の構成によるホエイパウダー中のタンパク質(及びミネラル)の乾式濃縮装置の一実施例の模式図である。
    タンパク質(及びミネラル)の乾式濃縮装置1000は、原料フィーダ20、粉砕機1060、振動篩機1030、バグフィルタ40、およびファン50から構成され、さらに、バグフィルタ40から微粉を回収する微粉回収器100と、振動篩機1030において篩い分けられた粗粉を回収する粗粉回収器200を備える。
    なお、図3に示す乾式濃縮装置1000と、乾式濃縮装置10と、気流式分級機30の代わりに、粉砕機1060および振動篩機1030を有している以外は、同様の構成を有するものであるので、同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その説明を割愛する。

    まず、原料フィーダ20は、原料であるホエイパウダーを粉砕機1060に供給して、図1のステップS10の原料供給工程を実施する。
    粉砕機1060は、図1のステップS12のホエイ削片の生成工程を実施するためのもので、供給された原料を粉砕せず表面を削り取る程度の軽度の機械的処理を行うことにより、タンパク質(及びミネラル)を多く含む粒子表面を削り取り、微粉状のホエイ削片を生成し、ホエイ削片を含む微粉と粒子表面を削り取られた粒子を含む粗粉とが混合されたものとなる。
    この後、混合された粉体は、振動篩機1030に供給される。

    振動篩機1030は、図1のステップS14の分級工程を実施するためのもので、図示しない振動源を内蔵し、供給された混合粉体を載せた篩(図示せず)を振動させることによって、篩の篩目によって微粉状のタンパク質(及びミネラル)を多く含むホエイ削片を含む微粉と粒子表面を削り取られた粒子を含む粗粉とをそれぞれ篩下と篩上とに分級する。 こうして、振動篩機1030によって、図1のステップS14の分級工程が実施される。
    この後、振動篩機1030の篩目を通り抜けた篩下の微粉は、微粉回収器100に回収され、篩を通り抜けできず、篩の上に残った篩上の粗粉は、粗粉回収器200に回収される。

    本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
    先ず、原料サンプル(RM)として調整した、タンパク質の割合(含有量)13.2wt%、平均粒子径(粒度)(D50)77.7μm(図13(a)参照)であるホエイパウダー(図5(a)、(b)参照)0.85kgを用い、図4に示すように、本実施形態のホエイパウダー中のタンパク質(及びミネラル)の濃縮方法を繰り返し実施し、それぞれ微粉と粗粉とに分級した。
    図4は、実施例にかかわる原料サンプルから機械的な乾式処理による微粉と粗粉の生成と分級の繰り返し、およびその時のタンパク質の割合を示す図である。

    先ず、原料サンプル(RM)のタンパク質の含有量は、13.2wt%であった。 タンパク質の含有量は、TruMac N(Lecoジャパン社製)にて、原料サンプル中の窒素元素の質量を測定し、五訂食品成分表2004(女子栄養大学出版部 2004年1月)P. 14 表7 窒素―たんぱく質換算係数 13乳類記載の換算係数6.38を採用して換算をおこなった。 また、本明細書中では、特に断りのない限り、含有割合(含有量)は、水分の影響を排除した乾燥重量基準の質量割合である。
    また、原料サンプル(RM)のミネラルの含有量は、4.1wt%であった。 ミネラルの含有量は、電気炉を用いて、試料を高温で燃焼し、燃焼前後の重量差から算出した。 また、上述のタンパク質の含有量と同様に、含有量は、水分の影響を排除した乾燥重量基準の質量割合である。
    また、原料サンプル(RM)の各ミネラルの含有量は、Kの含有量は1.9wt%、Caの含有量は0.9wt%、Clの含有量は0.5wt%、Pの含有量は0.3wt%であった。 各ミネラル成分の含有量は、走査型蛍光X線分析装置(株式会社リガク製 ZSX PrimusII)により、試料中の元素の質量を測定し、上述のミネラル全含有量から算出した。 上述と同様に、含有量は、水分の影響を排除した乾燥重量基準の質量割合である。
    原料サンプル(RM)の平均粒度(D50)は、77.7μmであり、図13(a)のような粒度分布を示すものであった。

    このような原料サンプル(RM)0.85kgに対し、気流式分級機ターボクラシファイアTC−15(日清エンジニアリング社製)を機械的な乾式処理を行う本発明の乾式処理装置として利用して、機械的な乾式処理を行い、本実施形態のホエイパウダー中のタンパク質(及びミネラル)の濃縮方法を実施した。

    本実施形態のホエイパウダー中のタンパク質(及びミネラル)の濃縮方法の第1回目の実施では、図5(a)、(b)に示す原料サンプル(RM)に対して機械的な乾式処理を行って濃縮処理し、図6(a)、(b)に示す微粉(1次微粉)(F)を0.23kg(28.7wt%)、図7(a)、(b)に示す粗粉(1次粗粉)(C)を0.58kg(71.3wt%)得た。 この時のターボクラシファイアTC−15の運転条件は、原料供給速度が5.8kg/h、回転数が1500rpm、風量が2.5m /minであった。
    その結果、1次微粉(F)のタンパク質の含有量は21.6wt%、1次粗粉(C)のタンパク質の含有量は9.9wt%であった。 また、1次微粉(F)の平均粒度(D50)は、30.6μmであり、図13(b)のような粒度分布を示し、1次粗粉(C)の平均粒度(D50)は、80.3μmであり、図13(c)のような粒度分布を示すものであった。

    次に、第1回目の実施で作成した1次微粉(F)と1次粗粉(C)とのそれぞれに対して、さらにターボクラシファイアTC−15を利用して、機械的な乾式処理を行い、第2回目のタンパク質(及びミネラル)の濃縮方法を実施した。

    1次微粉(F)に対して、再度、機械的な乾式処理を行って第2回目の濃縮方法を実施した。 この時のターボクラシファイアTC−15の運転条件は、原料供給速度が5.8kg/h、回転数が4000rpm、風量が2.5m /minであった。
    その結果、図8(a)、(b)に示す微粉(2次微粉)(FF)0.06kg(34.3wt%)と粗粉(粗微粉)(FC)0.11kg(65.7wt%)を得た。 この時の2次微粉(FF)のタンパク質の含有量は、32.1wt%、粗粉(FC)のタンパク質の含有量は、15.3wt%であった。 また、2次微粉(FF)のミネラルの含有量は、9.5wt%であった。 また、2次微粉(FF)の各ミネラルの含有量は、それぞれ、Kの含有量は4.6wt%、Caの含有量は2.1wt%、Clの含有量は1.3wt%、Pの含有量は0.7wt%であった。
    また、2次微粉(FF)の平均粒度(D50)は、7.8μmであり、図13(d)のような粒度分布を示し、粗微粉(FC)の平均粒度(D50)は、35.6μmであり、図13(f)のような粒度分布を示すものであった。
    1次微粉(F)中のタンパク質の含有量よりも2次微粉(FF)中のタンパク質の含有量が多くなっていることから、繰り返しの処理の実施によりタンパク質がさらに濃縮されることがわかる。
    また、原料サンプル(RM)中のミネラルの含有量よりも2次微粉(FF)中のミネラルの含有量が多くなっていることから、繰り返しの処理の実施によりミネラルが濃縮されることがわかる。

    一方、1次粗粉(C)に対して、再度、機械的な乾式処理を行って第2回目の濃縮方法を実施した。 この時のターボクラシファイアTC−15の運転条件は、原料供給速度が5.4kg/h、回転数が1200rpm、風量が2.5m /minであった。
    その結果、微粉(微粗粉)(CF)0.28kg(49.3wt%)と図9(a)、(b)に示す粗粉(2次粗粉)(CC)0.29kg(50.7wt%)を得た。 この時の微粉(CF)のタンパク質の含有量は11.3wt%、2次粗粉(CC)のタンパク質の含有量は8.8wt%であった。
    また、微粗粉(CF)の平均粒度(D50)は、58.5μmであり、図13(e)のような粒度分布を示し、2次粗粉(CC)の平均粒度(D50)は、91.3μmであり、図13(g)のような粒度分布を示すものであった。
    1次粗粉(F)中のタンパク質の含有量よりも、微粗粉(CF)中のタンパク質の含有量が多いことから、第1回目の処理でとりきれなかったタンパク質を、繰り返しの処理の実施により回収することができることがわかる。

    また、上記に示される原料サンプル(RM)、2次微粉(FF)及び2次粗粉(CC)100g中に含まれる乳糖量をそれぞれ高速液体クロマトグラフィーを用いて測定したところ、乾式処理前の原料サンプル(RM)の乳糖含有量は、71.1gであり、乾式処理後の2次微粉(FF)の乳糖含有量は、35.6gであり、乾式処理後の2次粗粉(CC)は、78.2gであった。 つまり、原料サンプル(RM)中の乳糖量よりも2次微粉(FF)中の乳糖量が減少しているのに対して、2次粗粉(CC)中の乳糖量は増加していた。
    この結果から、本実施形態の機械的な乾式処理にかかる濃縮方法繰り返しの処理の実施により、粗粉側に乳糖が濃縮することがわかる。

    ここで、図5(a)は、原料として使用したホエイパウダー(RM)のSEM写真であり、図5(b)は、図5(a)に示すホエイパウダー(RM)をさらに拡大したものである。 粒子表面は、なめらかで欠損はほとんどないことがわかる。

    図6(a)は、1次微粉(F)のSEM写真であり、図6(b)は、図6(a)に示す1次微粉(F)をさらに拡大したものである。 図5(a)と図6(a)、図5(b)と図6(b)とは、それぞれ、同じ拡大率であるが、図6(a)および(b)には、図5(a)および(b)でみられた種々のサイズの粒子の内の、大きな粒子の粒子表面から削り取られた破片であるホエイパウダー表面微粉と、微細粒子と、微細粒子よりすこし大きく、削り取られて粒子表面が残る微粒子破片とを含む微粉であることがわかる。
    この結果から、本発明の機械的な乾式処理は、ホエイパウダー粒子、特に大きい粒子を粉砕するものではなく、タンパク質の凝集や偏析などが生じてタンパク質(及びミネラル)の含有量が大きい粒子表面を削り取ったホエイ削片、若しくは剥がし取ったホエイ剥片を生成し、これらのホエイ削片やホエイ剥片を、微細粒子及び微粒子破片と共に分級するものであることがわかる。
    なお、図6(a)には、大きな穴状の形状が数箇所見受けられるが、SEM写真を撮影する際に、微粉(FF)粒子を固定するために使用した固定材の表面形状によるものである。

    次に、図7(a)は、1次粗粉(C)のSEM写真であり、図7(b)は、図7(a)に示す1次粗粉(C)をさらに拡大したものである。 図7(a)および(b)から、粒子表面は欠損が見受けられるものの、原料である図5(a)および(b)と大きく粒子構成が変わらないことがわかる。
    この結果からも、本発明の機械的な乾式処理は、ホエイパウダー粒子を粉砕するものではなく、タンパク質(及びミネラル)の含有量が大きい粒子表面を削り取ったホエイ削片、若しくは剥がし取ったホエイ剥片を生成し、これらのホエイ削片やホエイ剥片を、微細粒子及び微粒子破片と共に分級するものであることがわかる。

    また、図8(a)は、2次微粉(FF)のSEM写真であり、図8(b)は、図8(a)に示す2次微粉(FF)をさらに拡大したものである。 原料(RM)を示す図5(a)および1次微粉(F)を示す図6(a)と図8(a)、図5(b)および図6(b)と図8(b)とは、それぞれ、同じ拡大率であるが、図8(a)および(b)には、図5(a)、(b)、図6(a)および(b)でみられた粒子は、ほとんどなく、ほぼ破片であるホエイパウダー表面微粉を含む微粉であることがわかる。
    この結果から、本発明の機械的な乾式処理は、ホエイパウダー粒子を粉砕するものではなく、タンパク質(及びミネラル)の凝集や偏析などが生じてタンパク質(及びミネラル)の含有量が大きい粒子表面を削り取ったホエイ削片、若しくは剥がし取ったホエイ剥片を生成して、分級するものであることがわかる。
    なお、図8(a)にも、図6(a)と同様に、大きな穴状の形状が数箇所見受けられるが、SEM写真を撮影する際に、微粉(FF)粒子を固定するために使用した固定材の表面形状によるものである。

    次に、図9(a)は、2次粗粉(CC)のSEM写真であり、図9(b)は、図9(a)に示す2次粗粉(CC)をさらに拡大したものである。 図9(a)および(b)から、粒子表面は欠損が見受けられるものの、原料である図5(a)、(b)、図7(a)および(b)と大きく粒子構成が変わらないことがわかる。
    この結果からも、本発明の機械的な乾式処理は、ホエイパウダー粒子を粉砕するものではなく、タンパク質(及びミネラル)の含有量が大きい粒子表面を削り取ったホエイ削片、若しくは剥がし取ったホエイ剥片を生成して、分級するものであることがわかる。

    図13(a)〜(g)は、それぞれの原料、微粉および粗粉の各サンプルの粒度分布を示すものである。 本明細書において、粒度分布は、Microtrac MT3300(日機装社製)にて、レーザ回折・散乱法にて測定を行った。
    図13(a)は、原料サンプル(RM)の粒度分布を示し、図13(b)および(c)は、それぞれ第1回目の機械的な乾式処理して分級した1次微粉(F)および1次粗粉(C)の粒度分布を示す。 図13(a)と図13(c)を比べると、最頻粒径は、ほとんど変わっていないことから、ほとんど粉砕されず、表面だけ削り取られていることがわかる。

    次に、図13(d)および(f)は、1次微粉(F)に対して、それぞれ、再度、すなわち第2回目の機械的な乾式処理して分級した2次微粉(FF)および粗微粉(FC)の粒度分布を示す。 図13(b)と図13(f)とを比べると、1次微粉(F)に対する第2回目の機械的な乾式処理においても、第1回目の機械的な乾式処理と同様に、第2回目の機械的な乾式処理前の微粉(F)と第2回目の機械的な乾式処理後の粗粉(FC)の最頻度粒径は、変わっておらず、ほとんど粉砕されずに、表面だけ削り取られていることがわかる。

    次に、図13(e)および(g)は、1次粗粉(C)に対して、それぞれ、再度、すなわち第2回目の機械的な乾式処理して分級した微粗粉(CF)および2次粗粉(CC)の粒度分布を示す。 図13(c)と図13(g)とを比べると、1次粗粉(C)に対する第2回目の機械的な乾式処理においても、第1回目の機械的な乾式処理と同様に、第2回目の機械的な乾式処理前の粗粉(C)と第2回目の機械的な乾式処理後の2次粗粉(CC)の最頻度粒径は、変わっておらず、ほとんど粉砕されずに、表面だけ削り取られていることがわかる。

    以上の結果から、本実施形態のホエイパウダー中のタンパク質の濃縮方法においては、乾式処理装置の機械的な乾式処理として、ホエイパウダーの粒子表面を削りまたは剥がすことによって発生したホエイ削片やホエイ剥片等のホエイパウダーの表面微粉を回収することで、ホエイパウダー中に存在するタンパク質を乾式のまま濃縮することができる。
    また、本実施形態のホエイパウダー中のタンパク質の濃縮方法においては、乾式処理装置の機械的な乾式処理として、ホエイパウダーの粒子表面を削りまたは剥がすことによって発生したホエイ削片やホエイ剥片等のホエイパウダーの表面微粉を回収することで、ホエイパウダー中に存在するミネラルも乾式のまま濃縮することができる。
    また、本実施形態のホエイパウダー中のタンパク質の濃縮方法においては、乾式処理装置の機械的な乾式処理として、ホエイパウダーの粒子表面が削りまたは剥がされたホエイパウダーの粗粉を回収することで、ホエイパウダー中に存在する乳糖も乾式のまま濃縮することができる。

    本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。 以上、本発明の一実施形態であるホエイパウダー中のタンパク質の濃縮方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態や実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。

    10 タンパク質(及びミネラル)の乾式濃縮装置 20 原料フィーダ 22 原料フィーダモータ 24 スクリュー 26 ホッパ 28 排出口 30 気流式分級機 32 気流式分級機モータ 40 バグフィルタ 42 微粉回収バルブ 50 ファン 100 微粉回収器 200 粗粉回収器 500 粒子(原料、微粉、粗粉)
    510 気体の流れ 520 粒子の流れ 550 遠心力 560 気流による抗力 1000 乾式処理装置 1030 振動篩機 1060 粉砕機

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