変性ホエイ蛋白質の製造方法

申请号 JP2014519337 申请日 2013-09-27 公开(公告)号 JPWO2014051064A1 公开(公告)日 2016-08-25
申请人 森永乳業株式会社; 发明人 寛 荒瀬; 寛 荒瀬; 鈴木 学; 学 鈴木;
摘要 本開示は、製品の性質に好ましくない影響を与えないような優れた変性ホエイ蛋白質の製造方法を提供すること。ホエイ蛋白質溶液を、以下の(1)及び(2)の工程を連続的に2回以上繰り返して処理することを特徴とする変性ホエイ蛋白質の製造方法。(1)50MPa以上、85〜100℃で加圧加熱処理する工程、(2)前記(1)の加圧加熱処理後に、0.05〜0.5MPaに減圧処理し、前記(1)の工程の加熱 温度 の±10℃の範囲で温度を保持する工程。
权利要求

ホエイ蛋白質溶液を、以下の(1)及び(2)の工程を連続的に2回以上繰り返して処理することを特徴とする変性ホエイ蛋白質の製造方法。 (1)50MPa以上、85〜100℃で加圧加熱処理する工程、 (2)前記(1)の加圧加熱処理後に、0.05〜0.5MPaに減圧処理し、前記(1)の工程の加熱温度の±10℃の範囲で温度を保持する工程。前記ホエイ蛋白質溶液のpHが、5.5〜7.5である請求項1記載の変性ホエイ蛋白質の製造方法。前記(1)の工程の加圧加熱処理時間が、3秒以下である請求項1又は2記載の変性ホエイ蛋白質の製造方法。前記(1)の工程の加圧が、75MPa以上である請求項1〜3の何れか1項記載の変性ホエイ蛋白質の製造方法。前記(1)の工程の加熱温度が、90〜95℃である請求項1〜4の何れか1項記載の変性ホエイ蛋白質の製造方法。前記(2)の工程の保持温度が、前記(1)の工程の加熱温度の±5℃の範囲で温度を保持する請求項1〜5の何れか1項記載の変性ホエイ蛋白質の製造方法。前記(2)の工程の保持温度が、85〜100℃である請求項6記載の変性ホエイ蛋白質の製造方法。前記(2)の工程の減圧後の処理時間が、1.34分以下である請求項1〜7の何れか1項記載の変性ホエイ蛋白質の製造方法。前記(1)及び(2)の工程は、連続的に2〜5回繰り返すものである請求項1〜8の何れか1項記載の変性ホエイ蛋白質の製造方法。

ホエイ蛋白質溶液を、 (1)75〜100MPa、85〜100℃で加圧加熱処理する工程、および (2)前記(1)の加圧加熱処理後に、0.05〜0.5MPaに減圧処理し、前記(1)の工程の加熱温度の±10℃の範囲で温度を保持する工程、 を行い、かつ 前記(1)および(2)の工程の循環回数1の処理時間を0.14〜0.67分とし、前記(1)および(2)の工程を連続的に3〜4.5回繰り返して均質化処理することを特徴とする、平均粒子径が0.38〜0.7μmである変性ホエイ蛋白質の製造方法。前記ホエイ蛋白質溶液のpHが、5.5〜7.5である請求項1記載の変性ホエイ蛋白質の製造方法。前記(1)の工程の加圧加熱処理時間が、3秒以下である請求項1又は2記載の変性ホエイ蛋白質の製造方法。前記(1)の工程の加熱温度が、90〜95℃である請求項1〜3の何れか1項記載の変性ホエイ蛋白質の製造方法。前記(2)の工程の保持温度が、前記(1)の工程の加熱温度の±5℃の範囲で温度を保持する請求項1〜4の何れか1項記載の変性ホエイ蛋白質の製造方法。前記(2)の工程の保持温度が、85〜100℃である請求項5記載の変性ホエイ蛋白質の製造方法。

说明书全文

本開示は、変性ホエイ蛋白質の製造方法に関する。

ホエイ蛋白質は乳中に存在する蛋白質であり、主にチーズやカゼインを製造する際の副生成物としてよく知られており、ホエイ蛋白質は熱安定性が低く、70〜90℃の加熱で速やかに変性することも知られている(非特許文献1)。 近年、ホエイ蛋白質は良質な蛋白質成分であり、ミネラル分も豊富なことから、様々な食品に使用されている。また、食品以外にもシャンプー、リンス及びクリーム等の化粧品等にも使用されている。

このようにホエイ蛋白質は幅広い用途に利用されている一方で、ホエイ蛋白質を使用する際に熱殺菌を行う場合があり、この熱殺菌のための温度域はホエイ蛋白質の変性温度領域を超えることが通常である。このホエイ蛋白質の変性温度域以上での加熱によって製品中のホエイ蛋白質が変性するため、製品において粘度上昇、ゲル化、凝集等が生じる。このような状態は、製品の性質に好ましくない影響を及ぼすため、製品中のホエイ蛋白質配合量を制限したり、他の蛋白質原料に代替したりする必要があった。

熱殺菌によって生じる製品に対する好ましくない影響を減少させるため、従来から、ホエイ蛋白質は物理的処理又は化学処理等によって予め変性させてから使用する方法が提案されている。 特許文献1には、20質量%以下の可溶性乳清蛋白質物質及び80%以上の蛋白質不溶解度を有する変性乳清蛋白質粒子を含む物質の組成物に関する発明が開示されている。

特許4637449号公報

山内邦男、横山健吉編集,「ミルク総合事典」初版,第3刷,朝倉書店,1998年,第61頁。

しかしながら、特許文献1の実施例4〜12からすると、特許文献1記載の変性ホエイ蛋白質に更に分散剤、乳化剤、ゲル化剤等を含めて製品を加熱処理することによって、変性ホエイ蛋白質が製品に対して好ましくない影響を与えないようにしている。これは、分散剤、乳化剤、ゲル化剤等の作用によって、変性ホエイ蛋白質による好ましくない影響を製品の性質に与えていないと考える。 実際に、後記比較例1に示すように、特許文献1記載の製造方法にて得られた変性蛋白質は熱安定性に欠けていた。このことから、分散剤等を混合しない特許文献1記載の変性ホエイ蛋白質自体では製品の風味や外観等の性質に好ましくない影響が生じると言える。 上述のように、さらなる製品の風味や外観等の性質に好ましくない影響を与えないような変性ホエイ蛋白質が望まれているのが実状である。 このため、本開示は、斯かる実状に鑑み、好ましくない影響を製品の性質に与えないような熱安定性に優れた変性ホエイ蛋白質の製造方法を提供しようとするものである。

そこで、本発明者らは、鋭意検討を行った結果、ホエイ蛋白質溶液を、特定の範囲の圧及び温度にて加圧加熱処理する工程とこの加圧加熱処理後圧力を開放して処理する工程とを連続的に2回以上繰り返し処理することで、好ましくない影響を製品の性質に与えないような優れた変性ホエイ蛋白質を得、本発明を完成させた。さらに、この得られた変性ホエイ蛋白質は、熱安定性が良好であり、この変性ホエイ蛋白質を使用した製品を加熱処理した後の外観及び風味、食感も良好であった。

なお、「好ましくない影響を製品の性質に与えない」とは、少なくとも、変性ホエイ蛋白質を含有させた製品に加熱処理を行なった場合でも、変性ホエイ蛋白質が、好ましくない影響(例えば、ゲル化、凝集、増粘等によって生じる影響)を、製品の性質(例えば、製品の外観、風味及び食感等)に与えないことをいう。 このため、変性ホエイ蛋白質の熱安定性について、熱安定性試験を行い、「良好」と判断されたものを、「加熱処理によって製品の性質に影響を与えない変性ホエイ蛋白質」と判断する。

<熱安定性試験> 試料を蛋白質10質量%溶液とし、その溶液をオートクレーブで120℃、15分間の加熱を行った際に、目視できるゲル化・凝集が発生したものと、発生せずに液状のものとを判断する。さらに発生しなかったものについては、増粘の程度を確認する。増粘の程度については、加熱テストにおいて粘度8mPa・s以上のものを「増粘あり」、粘度8mPa・s未満のものを「増粘せず」と判断する。 これにより、目視できるゲル化・凝集が発生したものを「熱安定性:不良(×)」、目視できるゲル化・凝集が発生しないものの増粘があるものを「熱安定性:良好(○)」、目視できるゲル化・凝集が発生せず増粘もないものを「熱安定性:非常に良好(◎)」と判断する。 なお、本熱安定性試験は、通常殺菌する際に行われるオートクレーブ処理である。このオートクレーブ処理は、過酷な加熱条件での殺菌法であるレトルト殺菌法により、製品の加熱殺菌を想定したものである。

すなわち、本開示は、ホエイ蛋白質溶液を、以下の(1)の工程及び(2)の工程を連続的に2回以上繰り返して処理することを特徴とする変性ホエイ蛋白質の製造方法を提供するものである。 (1)50MPa以上、85〜100℃で加圧加熱処理する工程、 (2)前記(1)の加圧加熱処理後に、0.05〜0.5MPaに減圧処理し、前記(1)の工程の加熱温度の±10℃の範囲で温度を保持する工程。

本開示によれば、製品の性質に、好ましくない影響を与えないような優れた熱変性ホエイ蛋白質を得ることが可能となる。

本開示の製造方法に使用する装置の一例の加圧式ホモジナイザーを示す概略図である。

本開示の製造方法に使用する加圧式ホモジナイザーの均質化部の加圧機構及び均質バルブ機構を示す概略図である。

比較品1の加熱処理後の外観を示す図面代用写真である。

実施品1の加熱処理後の外観を示す図面代用写真である。

本開示の製造方法は、ホエイ蛋白質溶液を、加圧加熱処理する工程及びその加圧加熱処理後に大気圧状態に減圧して処理する工程を連続的に繰り返して処理して変性ホエイ蛋白質を製造する方法である。ホエイ蛋白質溶液を所望の温度に達するまで前記2工程を連続的に繰り返し処理してもよい。 そして、本開示の製造方法は、(1)特定の圧力及び温度にて瞬時に加圧加熱処理する工程と(2)この加圧加熱処理後圧力を開放して処理する工程とで連続的に2回以上繰り返し処理することを特徴とする。本開示の製造方法により、熱安定性に優れた変性ホエイ蛋白質を得るものである。 また、本開示の製造方法にて得られた変性ホエイ蛋白質は、ホエイ蛋白質を製品に用いた場合と比較して、製品の性質を良好にさせていることから、本開示の製造方法はホエイ蛋白質の改質方法又は改質ホエイ蛋白質の製造方法として行うことも可能である。

本開示の原料として使用される「ホエイ蛋白質」は、乳由来の蛋白質であるホエイであれば、特に限定されない。 例えば、牛乳、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳等のホエイを含有する原料から、常法により精製して得られるホエイである。 ホエイの精製方法としては、牛乳又は脱脂粉乳にレンネット等を加えてカゼインと乳脂肪とを取り除く方法;前記工程からさらにゲル濾過法、限外濾過法、イオン交換法等により処理する方法等が挙げられるが、これに限定されるものはない。このホエイの精製法によって、得られるWPC(ホエイ蛋白質濃縮物)及びWPI(ホエイ蛋白質分離物)等を使用することができる。 また、市販品のWPC及びWPI等の各種ホエイ蛋白質を使用することもできる。その他、生乳、脱脂乳、脱脂粉乳等のホエイ蛋白質を含有する通常の乳製品をそのまま使用することもできる。

一般的に「WPC」は蛋白質含有量が25〜80質量%としたものであり(山内、横山編集,「ミルク総合事典」初版第6刷,朝倉書店,2004年,第356−357頁)、本開示において蛋白質含有量が80%超を「WPI」、蛋白質含有量が25質量%未満は「未精製ホエイ」という。 本開示のホエイ蛋白質溶液の原料ホエイ蛋白質として、未精製ホエイ、WPC及びWPIから選ばれる1種又は2種以上のものを使用することが可能である。原料ホエイ蛋白質の形態は特に限定されず、液状又は粉末状のいずれでもよい。

前記ホエイ蛋白質溶液におけるホエイ蛋白質の濃度は、蛋白質換算で、好ましくは6質量%以上、より好ましくは10〜18質量%、さらに好ましくは10〜16質量%である。この濃度範囲で本開示の処理を行うことで、ホエイ蛋白質のゲル化や凝集等を起こさずに効率良く改質することが可能となる。 なお、ホエイ蛋白質溶液の濃度を調整する場合には、溶媒は特に制限されないが、、生乳、脱脂乳等を用いるのが好適である。

また、前記ホエイ蛋白質溶液のpHは中性付近の領域であることが好ましく、中性で行うことも可能であり、弱酸性領域で行うことも可能である。具体的には、当該pHは、好ましくは5.5〜7.5、より好ましくは5.5〜7.0、さらに好ましくは5.8〜7.0、よりさらに好ましくは、6.0〜7.0、特に好ましくは6.0〜6.7、さらに特に好ましくは6.0〜6.5である。 当該pHが5.5未満、特に5.0以下又は未満であると、ホエイ蛋白質のゲル化や凝集が生じる恐れがあり、このためpHは5.5以上であることが好ましい。また、当該pHが7.0よりアルカリ側、特に7.5以上であるとホエイ蛋白質の粘度が増加する恐れがあり、このためpHは7.0以下であることが好ましい。

上述のホエイ蛋白質溶液が、以下の(1)工程及び(2)工程を連続的に2回以上繰り返して処理することで熱安定性に優れた変性ホエイ蛋白質となるが、出発原料のホエイ蛋白質を含む溶液から目的とする変性ホエイ蛋白質を含む溶液になるまでの間の溶液を、以下「原料溶液」という。

前記(1)工程は、原料溶液を特定の圧力及び温度にて加圧加熱処理する工程である。 前記原料溶液を加圧加熱処理する際の加圧条件は、50MPa以上であり、好ましくは59MPa以上であり、より好ましくは75MPa以上である。この場合、加圧条件は圧力が大きいほどよく、使用される装置の上限の範囲内で実施されることが好ましい。 なお、単段又は二段の何れの圧力で行なってもよいが、二段式の場合には、第一段階の圧力>第二段階の圧力であり、第一及び第二段階の圧力の合計量である。 50MPa未満で得られた変性ホエイ蛋白質は、熱安定性に欠けるので、本開示の製造方法において、目的とする変性ホエイ蛋白質を得るためには、前記加圧条件は50MPa以上とすることが重要である。

一般的に市販されている圧力式ホモジナイザーの圧力の上限は200MPa程度と言われている。しかし、将来的に機器の性能の向上に伴って200MPa以上の加圧が可能となっても、後記〔表1〕からすると圧力が上昇するほど熱安定性が良好となったことから、目的とする本開示の変性乳清蛋白質を製造することが可能と考える。

前記ホエイ蛋白質を加圧加熱処理する際の加熱温度条件は、本開示の製造方法で得られた変性ホエイ蛋白質の熱安定性等の品質を保持するために好適には85〜120℃で、より好適には85〜100℃で加熱処理することが好ましく、90〜95℃で加熱処理することが特に好ましい。 加圧加熱処理の際に80℃及び130℃で処理して得られた変性ホエイ蛋白質は、熱安定性に欠けるので、本開示の製造方法において、目的とする変性ホエイ蛋白質を得るためには、前記加熱温度条件は85〜120℃とすることが重要である。

前記原料溶液を加圧加熱処理する際の処理時間は、好ましくは3秒以下であるのが、この範囲では優れた変性ホエイ蛋白質が得られるので、好適である。この処理時間は均質化部で行われる処理時間であり、後記〔実施例〕の均質化部では約1秒程度で処理されている。

前記(2)工程は、前記(1)工程で加圧加熱処理された原料溶液を、圧力を開放して処理する工程である。

前記「圧力を開放する」こととは、加圧状態の溶液を加圧状態の圧力よりも低い圧力の空隙に移行させることによって生じる圧力の変化であり、その溶液の圧力が減少することをいう。圧力を開放することによって、原料溶液中の粒子の均質化がより良好に行われる。 前記原料溶液の圧力の状態は、開放することによって大気圧程度になることが好適である。前記原料溶液の圧力の状態は、0.05〜0.5MPa程度であり、この範囲の圧力状態にすることで後述する(2)工程の保持温度の範囲内にすることが可能となる。さらに、前記原料溶液の圧力の状態は、0.1〜0.5MPaがより好ましく、0.3〜0.5MPaが特に好ましい。

前記(1)工程で加圧加熱処理後の前記(2)工程における保持温度は、前記(1)工程の加熱温度の±10℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは±5℃での範囲内である。また、前記(1)工程で加圧加熱処理後の前記(2)工程における保持温度は、前記(1)工程の加熱処理の温度と同じ範囲内であることが好ましい。好ましくは85〜120℃であり、より好ましくは85〜100℃である。 また、前記(1)工程の加熱処理の温度が85〜100℃の場合には、前記(2)工程における保持温度は85〜100℃であるのが好適である。

前記圧力を開放した後の処理時間は、好ましくは1.34分以下であり、より好ましくは0.67分以下であるのが好適である。 なお、「前記圧力を開放した後の処理時間」とは、原料溶液が均質化部から出たときから、返送経路、原料投入部及び供給経路を経て、均質化部に入るときまでに要する時間である。 「循環回数1の処理時間」=「系内量(g)/流量(g/h)」×60分で求めることができ、例えば1.34分は、「系内量(g)/流量(g/h)」=0.0223の条件であり、0.0223×60=1.338で求めることができる。

本開示の方法は、前記(1)工程及び前記(2)工程を連続的に2回以上繰り返し、原料溶液を処理する。 この繰り返し回数は、好ましくは2.25回以上であり、より好ましくは3.75回以上である。この繰り返し回数は多ければ多いほど、好ましくない影響を製品の性質に与えにくい本開示の変性ホエイ蛋白質を得ることができるため、前記繰り返しの回数は、さらに好ましくは4.5回以上、より好ましくは6回以上とすることが望ましい。この繰り返し回数は、作業効率の利点で7回以下が望ましいが、回数が多いほど製品の性質に好ましくない影響を与えないような熱安定性に優れた変性ホエイ蛋白質を得ることができる。

なお、この繰り返し回数は、「流量(g/h)×処理時間(分)/60/系内量(g)」にて算出することが可能である。この処理時間の起点は、前記(1)工程にて85℃ 達温したときを起点とするものである。本発明者が種々の実験を行った際に前記(1)工程にて85℃に達温するまでの処理時間は3〜10分程度であり、少なくともこの処理時間内であれば熱安定性に優れた変性ホエイ蛋白質を得ることが可能であろう。 また、本開示の「系内量(g)/流量(g/h)」は、0.03以下であり、好ましくは0.0223以下、より好ましくは0.0223〜0.0022であるのが好適である。

上述の所定の繰り返し処理が終了した後に、終了した原料溶液を変性ホエイ蛋白質溶液として回収する。回収された変性ホエイ蛋白質溶液は、適宜、そのままの溶液、希釈物、濃縮物等の液状、乾燥物等の粉末状として製品に使用することが可能である。これにより、優れた変性ホエイ蛋白質を得ることができる。 本開示の変性ホエイ蛋白質は、従来の製造方法により得られた変性ホエイ蛋白質と比較して、熱安定性、食感等の点で優れている。

本開示の変性ホエイ蛋白質溶液中の変性ホエイ蛋白質の平均粒子径は、好ましくは0.3〜13.8μmの範囲、より好ましくは0.3〜1.84μmの範囲、さらに好ましくは0.38〜0.7μmの範囲である。本開示の熱変性ホエイ蛋白質は、従来の熱変性蛋白質と比較して、熱安定性が良好であり、また脂肪感も良好であり、滑らかな食感を有するものである。なお、平均粒子径を測定する際には、製造後3〜48時間を測定するものである。

<平均粒子径の測定方法> 平均粒子径の測定方法は、得られた変性ホエイ蛋白質の試料溶液について、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、商品名:LA−500)を使用して、循環流量2、撹拌速度2の条件で測定した時の平均粒子径(粒度累積分布の50%に相当する粒子径)の値を測定する。

また、本開示の変性ホエイ蛋白質溶液中の蛋白質不溶解度は、特に限定されないが、好ましくは30〜60%であり、より好ましくは35〜55%であり、さらに好ましくは40〜50%である。 <蛋白質不溶解度の測定方法> 変性ホエイ蛋白質溶液の蛋白質濃度が10質量%溶液を10,000gで10分間遠心分離し、変性ホエイ蛋白質溶液の全蛋白質量における沈殿した蛋白質量の割合を算出する ことによって蛋白質不溶解度を測定することができる。 「蛋白質不溶解度(%)」=「沈殿した蛋白質量」/「全蛋白質量」×100

以上のように、本開示の方法により得られた変性ホエイ蛋白質は、飲食品に配合した場合においても、加熱殺菌処理(加熱)によって生じるホエイ蛋白質の凝集、ゲル化、沈殿等の影響が少なく、食感や風味の良好な製品を提供することが可能な素材である。本開示の変性ホエイ蛋白質は、優れた熱安定性を有しているので、良好な風味等を製品に付与することも可能である。 また、本開示の変性蛋白質は、分散性がよくて沈殿せず、ざらつき感等がなく喉越しも良好である。

そして、本開示の変性ホエイ蛋白質は、食品素材として、ゼリー、プリン、アイスクリーム、ドリンクヨーグルト、ジュース、乳飲料、加工乳、コーヒー、スポーツドリンク、スープ、焼成食品、粉乳、育児用調整乳、及び流動食等の食品群に好適に使用することが可能である。本開示の変性ホエイ蛋白質は、喉越し感等が良好であるので、例えばドリンクヨーグルト等の飲料に使用することが適している。 その他、低脂肪食品用の脂肪代替原料として、又はシャンプー、リンス、クリーム等の化粧品にも好適に使用することが可能である。

また、本開示の製造方法において、酵素や有機溶媒等の添加物を使用しなくとも、良好な変性ホエイ蛋白質を得ることができる。このため、これら添加物を製造工程において除去する工程も必要がないため、作業効率向上や製造コスト低減等を図ることが可能である。また、安心した食品素材を提供することも可能である。

また、本開示の製造方法にて得られた変性ホエイ蛋白質は、乳化剤等の添加物を使用しなくとも、製品の熱安定性や食感、乳化状態等が良好である。このため、本開示の製造方法において酵素や有機溶媒等の添加物も使用しなくともよいことと相俟って、本開示のホエイ蛋白質は、添加物フリー又はより低減した食品、すなわち、より安心の高い食品を提供することが可能である。

本開示の製造方法の一例を図1及び図2を参照して説明するが、本開示の方法は、以下の説明に限定されず、本開示の範囲内で自由に実施することができる。

図1を参照して、本開示の方法について概略を説明する。 ホエイ蛋白質と水等の原料を、原料投入部2に投入し、撹拌して原料溶液21を得る。この原料溶液は、原料投入部2に備えられたポンプ(図中「P」)にて供給経路3を経て均質化部4に移送される。 移送された原料溶液は均質化部4内にて加圧加熱処理され、その後加熱温度は保持された状態で大気圧に開放され、原料溶液の均質化が行われ、原料溶液内にある粒子が細かくなる。

さらに、均質化が行われた原料溶液は、均質化部4から返送経路5を経て原料投入部2に返送される。さらに、返送された原料溶液は、ポンプにて均質化部4に供給され、この均質化部4にて再び均質化が行われ、原料投入部2に返送される。この連続的な循環を所望の範囲にて行った後に、原料投入部2から、原料溶液を回収し、回収されたものを本開示の変性ホエイ蛋白質溶液とする。

図2を参考にして、より詳細に原料溶液の均質化について説明する。 図2は均質化部4における加圧式のホモジナイザーの概略図である。この均質化部4は、ピストンを備えたプランジャー式高圧ポンプ(図示せず)の加圧機構とその下流に間隙を調整可能な均質バルブの均質バルブ機構から構成される。 原料溶液が、加熱処理されつつ、複数のプランジャーポンプによって高圧かつ低速でホモバルブシート42の流路に入り圧縮されてホモバルブ43に衝突する。なお、図2では、このホモバルブ43は、ホモバルブシート側に移動しているが、適宜ホモバルブシート42の反対側に移動可能である。

衝突した原料溶液は、さらにホモバルブ43とホモバルブシート42との間の狭い流路へ流れ、この流路を流れ出るに従って、速度が急速に増加し、又は相対して圧力が急激に低下し、この流路から原料溶液の温度は保持されたまま排出される。このときに激しい乱流が発生し、間隙44から排出する際に、粒子が均質化される。そして、ブレーカーリング45に衝突し、均質化された原料溶液が返送経路に排出される。

本技術は以下の構成を採用することも可能である。 〔1〕 ホエイ蛋白質溶液を、以下の(1)及び(2)の工程を連続的に2回以上繰り返して処理することを特徴とする変性ホエイ蛋白質の製造方法又はホエイ蛋白質の改質方法。 (1)50MPa以上、85〜120℃で加圧加熱処理する工程、 (2)前記(1)の加圧加熱処理後に、0.05〜0.5MPaに減圧処理し、前記(1)の工程の加熱温度の±10℃の範囲で温度を保持する工程。 〔2〕 ホエイ蛋白質溶液を、以下の(1)及び(2)の工程を連続的に2回以上繰り返して処理することを特徴とする変性ホエイ蛋白質の製造方法又はホエイ蛋白質の改質方法。 (1)50MPa以上、85〜100℃で加圧加熱処理する工程、 (2)前記(1)の加圧加熱処理後に、0.05〜0.5MPaに減圧処理し、前記(1)の工程の加熱温度の±10℃の範囲で温度を保持する工程。 〔3〕 前記ホエイ蛋白質溶液のpHが、5.5〜7.5である前記〔1〕又は〔2〕記載の変性ホエイ蛋白質の製造方法又はホエイ蛋白質の改質方法。 〔4〕 前記(1)の工程の加圧加熱処理時間が、3秒以下である前記〔1〕〜〔3〕の何れか1項記載の変性ホエイ蛋白質の製造方法又はホエイ蛋白質の改質方法。 〔5〕 前記(1)の工程の加圧が、75MPa以上である前記〔1〕〜〔4〕の何れか1項記載の変性ホエイ蛋白質の製造方法又はホエイ蛋白質の改質方法。75MPa以上200MPa以下でもよい。 〔6〕 前記(1)の工程の加熱温度が、90〜95℃である前記〔1〕〜〔5〕の何れか1項記載の変性ホエイ蛋白質の製造方法又はホエイ蛋白質の改質方法。 〔7〕 前記(2)の工程の保持温度が、前記(1)の工程の加熱温度の±5℃の範囲で温度を保持する前記〔1〕〜〔6〕の何れか1項記載の変性ホエイ蛋白質の製造方法又はホエイ蛋白質の改質方法。 〔8〕 前記(2)の工程の保持温度が、85〜100℃である前記〔1〕〜〔7〕の何れか1項記載の変性ホエイ蛋白質の製造方法又はホエイ蛋白質の改質方法。 〔9〕 前記(2)の工程の減圧後の処理時間が、1.34分以下である前記〔1〕〜〔8〕の何れか1項記載の変性ホエイ蛋白質の製造方法又はホエイ蛋白質の改質方法。より好ましくは、0.67分以下である。 〔10〕 前記(1)及び(2)の工程は、連続的に2〜5回繰り返すものである前記〔1〕〜〔9〕の何れか1項記載の変性ホエイ蛋白質の製造方法又はホエイ蛋白質の改質方法。 〔11〕 前記ホエイ蛋白質溶液におけるホエイ蛋白質濃度は、蛋白質換算で、6質量%以上、好ましくは10〜16質量%である前記〔1〕〜〔10〕の何れか1項記載の変性ホエイ蛋白質の製造方法又はホエイ蛋白質の改質方法。 また、前記〔1〕〜〔11〕の何れか1項記載のホエイ蛋白質溶液におけるpHは、好ましくは中性付近の領域(中性〜弱酸性領域)、より好ましくは5.5〜7.0、さらに好ましくは6.0〜7.0、特に好ましくは6.0〜6.5である。 〔12〕 前記〔1〕〜〔11〕記載の製造方法又は改質方法にて得られた変性ホエイ蛋白質。

以下に、具体的な実施例等を説明するが、本発明(本開示)はこれに限定されるものではない。

<実施例1> 3000gのバットのなかで、未変性ホエイ(乳清)蛋白質濃縮物(WPC、ミライ80:ミライ社製)が12.5質量%(蛋白質濃度10%)となるように、25℃の水に溶解して、全量2000gの未変性WPC溶液(以下、WPC原料溶液とする)を調製した。この原料溶液のpHは、6.3であった。

このWPC含有の原料溶液全量を圧力式ホモジナイザー(APVラニエ社製、処理能力180kg/h)の原料投入部のホッパーに投入した。 WPC含有の原料溶液を、圧力式ホモジナイザーの高圧ポンプにより、流量180000g/hにて連続的に加圧しながら、原料投入部、供給経路、均質化部(処理圧;1段目70MPa、2段目5MPa)、返送経路、原料投入部の順に循環させた。 均質化部内の加熱機構にて85℃に昇温したWPC含有の原料溶液を2段加圧工程(処理圧;1段目70MPa、2段目5MPa)で処理し、その後原料溶液を加圧状態から開放し大気圧状態(約0.1MPa)にまで減圧した。

加圧状態から開放された原料溶液(80〜90℃)は、均質化部を出て、返送経路を経て原料投入部のホッパーに返送された。再び、WPC含有の原料溶液(80〜90℃)を、高圧ポンプにて加圧しながら均質化部に移送した。この操作を3分行った時の循環回数は4.5回であった。

なお、原料溶液が加圧加熱処理後に大気圧状態に開放された後の処理時間は、0.67(=2,000/180,000×60)分であった。 これより、実施品1を得た。

<比較例1> 特許4637449号(現フォールジャーズ)公報(特許文献1/family;US 6,605,311 B2)記載の実施例1に基づき、蛋白質熱変性条件下で高圧剪断混合処理、次いで高圧(49MPa)ホモジナイザーの循環を行なって、変性ホエイ蛋白質(比較品1)を得た。詳細な手順は以下のとおりである。

部分変性ホエイ蛋白質濃縮物(WPC、シンプレッセ:CPケルコ社製)を含む20質量%の蛋白質及び20℃の水80質量%の混合物3リットル(pH6.5)を4000mlビーカーで調製した。 この混合物を、一定の高剪断混合下でプライミクス社製、TKホモミキサーMarkII高剪断混合機を使用して、12,000rpmで操作して、75℃の温度まで加熱した。高剪断混合の連続的適用下で混合物を、76.7℃に30分間保持し、次いで少なくとも32.22℃の温度まで冷却した。これにより、熱と剪断による変性ホエイ蛋白質溶液を得た。 部分未変性ホエイ蛋白質溶液を次いで、単段で約7000psi(約49MPa)の圧力で操作されるAPVガウリンホモジナイザー(Gaulin Homogenizer)を使用して、混合物を均質化し、均質化工程は3回繰り返し、比較品1を得た。

実施品1及び比較品1を対比した。 これらを120℃15分間によるオートクレーブ処理を行い、オートクレーブ後の両者の熱安定性について、検討を行った。

図3、図4に示すように、熱安定性試験について、比較品1(図3)は、視認可能な程度にまでゲル化が確認できたのに対し、実施品1(図4)では、ゲル化せず液状のままであった。 また、比較品1の出来立ての平均粒子径は、1.6μmであり、熱安定性試験した後は、ゲル化のため測定不可能であったのに対し、実施品1の出来立ての平均粒子径は、0.38〜0.7μmであり、熱安定性試験した後は0.5〜3.5μmであった。

なお、平均粒子径は、上述の<平均粒子径の測定方法>に従って測定した。「出来立て」とは、平均粒子径を測定する際には製造後3〜48時間を測定したものである。 また、実施品1の蛋白質不溶解度は、上述の<蛋白質不溶解度の測定方法>に従って測定し、43〜47%であった。 以上のことより、実施品1は、比較品1と比較して、熱安定性がはるかに優れていることが認められた。

特許文献1の実施例2及び3において、蛋白質変性条件で高速剪断混合処理次いで高圧(49MPa)ホモジナイザーで処理して変性ホエイ蛋白質を得ている。これは、高圧剪断混合処理にて変性ホエイ蛋白質を得、その後にこれを均質処理するという考え方であるので、本技術とは、工程手順及び処理対象が全く相違する。そして、特許文献1の実施例2及び3の変性ホエイ蛋白質と、本技術の変性ホエイ蛋白質とは当然にモノとしても全く別物である。このことは、上述した本件の実施品1及び比較品1の対比結果から明らかである。 また、特許文献1のホモジナイザーでの加圧条件は42MPa/49MPaである。これは、変性させたものを砕く意味合いで、低い加圧条件にて均質化処理するという考え方であるので、本技術の高い加圧条件にて均質化処理するという考え方とは全く相違する。そして、本件の試験例1の表1に示すように、加圧条件50MPa未満では、本技術の目的を達成できない。

特許文献1の実施例1のホモジナイザー処理は、約60kgを処理能力200L/hで処理しているので、見かけの循環時間が18分間((60/200)×60=18分)となり、特許文献1の循環時間は長時間の傾向にあるので、本技術の循環時間を短くしようとする考え方とは全く相違する。そして、本件の試験例4の表4に示すように、特許文献3の循環時間18分では、本技術の目的を達成できない。

従って、特許文献1記載の変性ホエイ蛋白質は、上述した本件の比較品1に示すように、どろどろした状態であり、本技術の目的を達成できないモノである。一方で、本技術の製造方法により得られた変性ホエイ蛋白質は、製品の性質に好ましくない影響を与えないような熱安定性に優れたものである。

<熱安定性試験> 試料を蛋白質10質量%溶液とし、その溶液をオートクレーブで120℃−15分の加熱を行った際に、目視できるゲル化・凝集が発生したものを「熱安定性:不良(×)」とし、発生しなかったものを以下の増粘の基準にて「熱安定性:非常に良好(◎)、良好(○)」と判断した。 熱安定性評価 ◎:液状(増粘せず)。 ○:液状(増粘あり)加熱テストにおいて粘度8mPa・s以上。 ×:ゲル化あり。

(試験例1:加圧条件) 表1に示すように、加圧条件(処理圧;1段目20、37、54、70、95MPa)を変更した以外は、実施例1と同様の方法にして変性ホエイ蛋白質を得た。 3000gのバットのなかで、未変性ホエイ(乳清)蛋白質濃縮物(WPC、ミライ80:ミライ社製)が12.5質量%(蛋白質濃度10%)となるように、25℃の水に溶解して、全量2000gの未変性WPC溶液(以下、WPC原料溶液とする)を調製した。この原料溶液のpHは、6.3であった。

このWPC含有の原料溶液全量を圧力式ホモジナイザー(APVラニエ社製、処理能力180kg/h)の原料投入部のホッパーに投入した。 次いで、WPC含有の原料溶液を、圧力式ホモジナイザーの高圧ポンプにより、流量180000g/hにて連続的に加圧しながら均質化部に供給経路を経て移送した。 移送されたWPC含有の原料溶液を均質化部内にて85℃に昇温し、昇温したWPC含有の原料溶液を2段工程(処理圧;1段目20、37、54、70、95MPa、2段目5MPa)で処理し、さらに原料溶液は大気圧(約0.1MPa)に減圧された後に、均質化部を出て、返送経路を経て原料投入部のホッパーに返送した。再び、WPC含有の原料溶液を、高圧ポンプにて加圧しながら均質化部に移送した。 この操作を3分行った時の循環回数は4.5回であった。なお、原料溶液が加圧加熱処理後に大気圧状態に開放された後の処理時間は、0.67分であった。

表1に示すように、25、42、59、75、100(1段目+2段目)MPaで処理したときに、加圧が42MPa以下の場合には、熱安定性が好ましくない変性ホエイ蛋白質となった。このようなことから、50MPa以上で加圧加熱処理することが重要である。 なお、本試験の加圧条件(50MPa以上)における熱安定性の効果については、原料溶液のpHが6.0、6.1、および6.4の条件においても、増粘せずに液状である非常に良好な効果を有するものであった。また、原料溶液のpHが5.5、5.7、5.8、6.5、および6.6の条件においても、熱安定性が良好以上の効果を有するものであった。

(試験例2:加熱温度条件) 表2に示すように、実施例1の加熱温度及び処理時間条件を変更して変性ホエイ蛋白質を得た。 1000gのバットのなかで、未変性ホエイ(乳清)蛋白質濃縮物(WPC、ミライ80:ミライ社製)が12.5質量%(蛋白質濃度10%)となるように、25℃の水に溶解して、全量400gの未変性WPC溶液(以下、WPC原料溶液とする)を調製した。この原料溶液のpHは6.3であった。

このWPC含有のWPC原料溶液全量を圧力式ホモジナイザー(APVラニエ社製、処理能力180kg/h)の原料投入部のホッパーに投入した。 次いで、WPC含有の原料溶液を圧力式ホモジナイザーの高圧ポンプにより、流量180000g/hにて連続的に加圧しながら均質化部に供給経路を経て移送した。 移送されたWPC原料溶液を均質化内部にて、(1)130℃、(2)120℃、(3)100℃、(4)95℃、(5)〜(7)85℃に昇温し、昇温したWPC原料溶液を2段工程(処理圧;1段目:70MPa、2段目:5MPa)で処理し、さらに原料溶液は大気圧(約0.1MPa)に開放された後に、均質化部を出て、返送経路を経て原料投入部のホッパーに返送した。再び、WPC原料溶液を、高圧ポンプにて加圧しながら均質化部に移送した。 この操作を(1)60秒、(2)60秒、(3)60秒、(4)60秒、(5)60秒、(6)30秒、(7)0秒行った。また、循環する際の保持温度は、(1)130℃、(2)120℃、(3)100℃、(4)95℃、(5)〜(7)85℃であった。

表2に示すように加熱温度が80℃以下の場合には、熱安定性が好ましくない変性ホエイ蛋白質となった。このようなことから、85℃以上で加圧加熱処理することが重要である。 また、表2中の加熱温度試験のうちで95℃付近で処理して得られた変性ホエイ蛋白質が熱安定性に優れ、品質が良好に保持されていた。 なお、本試験の加熱条件(85〜120℃)における熱安定性の効果については、原料溶液のpHが5.9、6.0および6.2の条件においても、増粘せずに液状である非常に良好な効果を有するものであった。また、原料溶液のpHが5.6、5.8、6.4、 6.5、および6.7の条件においても、熱安定性が良好以上の効果を有するものであった。

(試験例3:循環回数条件) 表3に示すように、実施例1の循環回数を変更して変性ホエイ蛋白質を得た。 3000gのバットのなかで、未変性ホエイ(乳清)蛋白質濃縮物(WPC、ミライ80:ミライ社製)が12.5質量%(蛋白質濃度10%)となるように、25℃の水に溶解して、全量2000gの未変性WPC溶液(以下、WPC原料溶液とする)を調製した。この原料溶液のpHは6.3であった。

このWPC原料溶液全量を圧力式ホモジナイザー(APVラニエ社製、処理能力180kg/h)の原料投入部のホッパーに投入した。 次いで、WPC原料溶液を圧力式ホモジナイザーの高圧ポンプにより、流量180000kg/hにて連続的に加圧しながら均質化部に供給経路を経て移送した。 移送されたWPC原料溶液を均質化部内にて85℃に昇温し、昇温したWPC原料溶液を2段工程(処理圧;1段目:70MPa、2段目:5MPa)で処理し、さらに原料溶液は大気圧(約0.1MPa)に開放された後に、均質化部を出て、返送経路を経て原料投入部のホッパーに返送した。再び、WPC原料溶液を高圧ポンプにて加圧しながら均質化部に移送した。 この操作を(1)30秒(循環回数0.75回)、(2)60秒(循環回数1.5回)、(3)90秒(循環回数2.25回)、(4)120秒(循環回数3回)、(5)150秒(循環回数3.75回)、(6)180秒(循環回数4.5回)行った。

表3に示すように循環回数が1.5回以下の場合には、熱安定性が好ましくない変性ホエイ蛋白質となった。このようなことから、循環回数2回以上で加圧加熱処理することが重要である。

(試験例4:加圧加熱処理後の処理時間条件) 表4に示すように、実施例1の加圧加熱処理後の処理時間(1循環に掛かる時間(分))を変更して変性ホエイ蛋白質を得た。 未変性ホエイ(乳清)蛋白質濃縮物(WPC、ミライ80:ミライ社製)が12.5質量%(蛋白質濃度10%)となるように、25℃の水に溶解して、全量が400、500、2000、4000、5500、7000gの各未変性WPC溶液(以下、WPC原料溶液とする)を調製した。この原料溶液のpHは6.3であった。

各WPC原料溶液全量を、それぞれ圧力式ホモジナイザー(APVラニエ社製、処理能力180kg/h)の原料投入部のホッパーに投入した。 次いで、各WPC原料溶液を圧力式ホモジナイザーの高圧ポンプにより、流量180000kg/hにて連続的に加圧しながら均質化部に供給経路を経て移送した。 移送された各WPC原料溶液を均質化部内にて85℃に昇温し、昇温したWPC原料溶液を2段工程(処理圧;1段目:70MPa、2段目:5MPa)で処理し、さらにWPC原料溶液は大気圧(約0.1MPa)に開放された後に、均質化部を出て、返送経路を経て原料投入部のホッパーに返送した。再び、各WPC原料溶液を高圧ポンプにて加圧しながら均質化部に移送した。この操作を180秒間行った。 加圧加熱処理後の各WPC原料溶液の処理時間(1循環に掛かる時間(分))に掛かる時間は、それぞれ0.14、0.17、0.67、1.34、1.84、2.34分であった。

表4に示すように加圧加熱処理後の処理時間(分)が1.84分以上の場合には、熱安定性が好ましくない変性ホエイ蛋白質となった。このことから、加圧加熱処理後の処理時間(分)は1.34分以下とすることが重要であり、処理時間が短いほど変性ホエイ蛋白質の熱安定性に優れていた。

(試験例5:ホエイ蛋白質濃度条件) ホエイ蛋白質濃度を「15%」に変更した以外は、実施例1と同様にして変性ホエイ蛋白質を得た。熱変性試験は良好「○」という結果であった。

<処方例1:マンゴー風味ゼリー>

下記の表5の処方及び1〜5の工程に従って、蛋白質入りゼリーを処方した。 1.蛋白質原料を水に溶解後、撹拌しながらコーン油、糖、ゲル化剤、乳化剤、大豆多糖類を添加する。 2.80℃に加温後、10分間撹拌しながら溶解する。 3.クエン酸、スクラロース、色素、香料を添加する。 4.85℃で30分間保持し、殺菌する。 5.質量補正後、容器に充填する。

本実施例1で製造した変性ホエイ蛋白質(実施品1)を使用したゼリーは、滑らかな食感を有していたのに対し、WPC80のホエイ蛋白質を使用したゼリーは、ざらついた食感となった。すなわち、本開示の変性ホエイ蛋白質は、製品に好ましくない影響を与えず、製品全体に良好な風味を付与できるものであった。

1 高圧式ホモジナイザー;2 原料投入部;21 原料溶液;3 供給経路;4 均質化部;42 ホモバルブシート;43 ホモバルブ;44 間隙;25 ブレーカーリング;5 返送経路

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