抗ロタウィルス感染組成物、およびその製法

申请号 JP2005503566 申请日 2004-03-11 公开(公告)号 JPWO2004080475A1 公开(公告)日 2006-06-08
申请人 明治乳業株式会社; 发明人 義敬 金丸; 義敬 金丸; 中村 吉孝; 吉孝 中村; 高橋 毅; 高橋  毅; 真也 永淵; 真也 永淵; 山口 真; 真 山口; 英生 大友; 英生 大友; 中澤 賢一; 賢一 中澤;
摘要 ホエイの精密濾過保持物、遠心分離処理物および/または硫安沈殿処理物がロタウィルス感染阻害活性を有することを見出した。
权利要求
  • ホエイの精密濾過保持液、遠心分離処理液および/または硫安沈殿処理溶液またはその乾燥物であって、ロタウイルス感染防御作用を有する組成物。
  • 精密濾過膜の孔径が0.004〜1.4μmの範囲にある、請求項1記載の組成物。
  • 遠心分離処理の重力が300〜30,000gの範囲にある、請求項1記載の組成物。
  • 硫安沈殿の飽和度が30〜100%の範囲にある、請求項1記載の組成物。
  • 請求項1から4のいずれかに記載の組成物の有効量を含有する、ロタウイルス感染防御作用を有する食品。
  • 食品が育児用調製粉乳、高齢者用食品、保健機能食品および病者用食品からなる群より選ばれる請求項5記載の食品。
  • 請求項1から4のいずれかに記載の組成物の有効量を含有する、ロタウイルス感染防御作用を有する家畜飼料。
  • 請求項5または6の食品を製造するための請求項1から4のいずれかに記載の組成物の使用。
  • 請求項7の家畜飼料を製造するための請求項1から4のいずれかに記載の組成物の使用。
  • 说明书全文

    本発明は、抗ロタウィルス感染組成物とその製法、および該抗ロタウィルス感染組成物の有効量を含有せしめた抗ロタウィルス感染食品組成物に関する。

    ヒトロタウィルスを原因とする乳幼児冬季下痢症は、おもに2歳以下の幼児に、発熱、嘔吐、下痢、および脱症状を引き起こす重症の下痢症疾患である。 我が国では灰白色の便の性状から白痢とよばれたが、ヒトロタウィルス感染症であることが明らかにされている。 アメリカ合衆国では年間で5歳以下の子供の350万人の下痢症がロタウィルス感染症と診断され、5万5千人が入院し、20人が死亡している。 全世界では、主に発展途上国において、年間で約60万人の乳幼児が死亡している。 先進国での疫学調査から、衛生状態の改善はロタウィルスの有病率を減少させることはできないとされ、その対策のひとつとして世界的なロタウィルスワクチン開発が進められている。
    RRV−TV(rhesus rotavirus tetravalent)ワクチンは、先進国、発展途上国の両方でロタウィルスによる重症の下痢症の予防に高い効果を示し、1998年8月、米国食品医薬局はRRV−TVワクチンを世界ではじめてロタウィルスワクチンとして認可した。 しかしながら、腸重積症が副反応であることが米国疾病防疫センターから報告され、RRV−TVワクチンの投与は中止された(例えば、非特許文献1参照)。
    一方、ロタウィルス感染を阻害する食品成分あるいは組成物として、例えば、初乳中の免疫グロブリンおよびその組成物(例えば、特許文献1参照)、ウシκ−カゼイン(例えば、特許文献2参照)、乳ムチン(例えば、非特許文献2参照)、およびバターミルク由来ポリペプチド(例えば、非特許文献3参照)などが提案されているがその評価はこれからであり、未だ、抗ロタウィルス感染効果を有する新たな抗ロタウィルス感染組成物、および該組成物を含有せしめた食品組成物の登場が望まれている。
    石田真一他、「ロタウイルスワクチン」小児科診療 Vol 63,2000年,p. 1045−1049 Yolken,R. Y. et. al. ,「Human Milk Mucin Inhibits Rotavirus Replication and Prevents Experimental Gastroenteritis」J Clin Invest,Vol 90,1992年,p. 1984−1991 松本光晴他、「バターミルク由来抗ウシロタウイルスポリペプチド」日畜会報、Vol 73,2002年,p. 49−56

    特開平3−72432

    特表平10−505828

    本発明は、ロタウィルス感染防御効果を有する新規な食品組成物を提供することを課題とする。 また本発明は、該組成物の有効量を含有せしめた食品を提供することを課題とする。 さらにまた本発明は、該組成物の有効量を含有せしめた家畜飼料を提供することを課題とする。
    本発明者らは、上記課題を解決すべく検討した結果、ホエイの精密濾過(MF:micro filtration)処理により得られる保持物、遠心分離処理により得られる分画物および/または硫安沈殿(硫酸アンモニウム分画法、硫酸アンモニウム塩析法、又は硫酸アンモニウム沈殿法ともいう)処理により得られる分画物に強なロタウィルス感染阻害活性を見出した。 そしてこの保持物あるいは分画物を加熱処理してもロタウィルス感染阻害活性が失われないことを見出した。 すなわち本発明は、
    (1)ホエイの精密濾過保持液、遠心分離処理液および/または硫安沈殿処理分画物またはその乾燥物であって、ロタウイルス感染防御作用を有する組成物、
    (2)精密濾過膜の孔径が0.004〜1.4μmの範囲にある、前記(1)記載の組成物、
    (3)遠心分離処理の重力が300〜30,000gの範囲にある、請求項1記載の組成物、
    (4)硫安沈殿の飽和度が30〜100%の範囲にある、請求項1記載の組成物、
    (5)前記(1)から(4)のいずれかに記載の組成物の有効量を含有する、ロタウイルス感染防御作用を有する食品、
    (6)食品が育児用調製粉乳、高齢者用食品、保健機能食品および病者用食品からなる群より選ばれる前記(5)記載の食品、
    (7)前記(1)から(4)のいずれかに記載の組成物の有効量を含有する、ロタウイルス感染防御作用を有する家畜飼料、
    (8)前記(5)記載または前記(6)記載の食品を製造するための前記(1)から(4)のいずれかに記載の組成物の使用、
    (9)前記(7)記載の家畜飼料を製造するための前記(1)から(4)のいずれかに記載の組成物の使用、
    からなる。
    ホエイは、スィートホエイ(sweet whey)および酸ホエイ(acid whey)に分けられる。 スィートホエイは熟成型チーズの副産物であり、pH5.9〜6.3で甘味がある。 一方、酸ホエイは非熟成、フレッシュ型チーズの製造で得られ、通常pH4.4〜4.6で酸味がある。 また、カゼイン製造の際のホエイも酸ホエイである。 スィートホエイおよび酸ホエイの一般的組成を表1に示す(Milk Science Vol.51,No.1,2002)。 本発明はスィートホエイおよび酸ホエイを含む。
    本発明で用いるホエイはウシの各泌乳期の乳、もしくはこれらの濃縮物または乾燥物(以下これらをまとめて乳と記載することがある)を原料として、常法により調製したものである。 さらに、本発明においてはヒトおよびウシ以外の他の哺乳動物の乳を用いることもできる。 一般にホエイは、原乳を清浄化し、72〜75℃で15秒間加熱殺菌するHTST(High Temperature Short Time)殺菌および120〜150℃で1〜3秒間加熱殺菌するUHT(Ultra High Temperature)殺菌等の殺菌処理を施した後、大きく分けると以下の二つの方法で製造することができる。 一つはスィートホエイの製造法であり、殺菌した乳、または殺菌した乳を約30〜60℃に加温し数百G以上の重力をかけて脂肪をクリームとして脱脂した脱脂乳に各種レンネット(動物、生物および植物起源)を添加する方法である。 すなわち、硬質、半硬質または軟質チーズおよびレンネットカゼインを製造するときにホエイを溶液として排出する方法である。 もう一つは酸ホエイの製造法であり、上述の方法と同様の方法で得た脱脂乳に酸(酢酸や乳酸などの有機酸または塩酸や硫酸などの無機酸)を添加する方法である。 すなわち、脱脂乳のpHを酸で4.6に調整し、等電点沈殿したカゼインを濾過や遠心分離などで除去することで酸ホエイが得られる。 さらにこれら以外にも脱脂乳に乳酸菌を単独で、あるいは塩化カルシウムと酸の両者を添加し、生じるカゼインの沈殿を遠心分離等で除去した上清も酸ホエイとして利用することができる。

    スィートホエイには全固形分中約8%の脂質が含まれる(表1)。 この脂質は、WPCの風味を損なうことが指摘されている。 また、ホエイの脂質は、限外濾過膜(UF)、逆浸透膜(RO)などの膜処理効率とも関係があり、ホエイ中に残留脂質が多いほど膜分離中の流束速度が低下する。


    本発明では、ホエイを遠心分離/清浄化し、pHを中性付近(6.8〜7.2)に調節した後、MF膜処理する。 さらに保持液に加水→MF膜処理といった工程を複数回(通常3回)繰り返した後、保持液を常法により乾燥する。


    MF処理は目詰まりが発生し易いため実用化は遅かった。 1980年半ばにALFA−LAVAL Filtration System社(現Tetra Pak社)により乳の膜除菌システム「Bactocatch」が開発されて実用化された。


    MF膜の使用方法には膜面に平行に試料を流す方式(クロスフロー濾過:tangential flow filtrationまたはcross flow filtration)と膜面に垂直に試料を押す方式(全濾過:dead end filtration)があり乳業では乳製品の処理にクロスフロー濾過が、無菌タンク用空気除菌等には全濾過が用いられている。


    BactocatchはクロスフローMF(CFMF)濾過方式であり、MF膜(フランスSCT社製Membralox)はアルミナセラミックス製でカゼインミセルを透過して細菌を阻止するために孔径は1.4μmを採用している。 Bactocatchの最大の特徴は、透過流束を制御して、モジュール全体の膜間差圧を0.04MPa(0.1 MPa≒1気圧)程度の均一膜間差圧(UTP:uniform transmembrane pressure)で運転することを可能にした点である。 これにより目詰まりを防止することが可能となった。 その結果、脱脂乳では、除菌率99.9%以上を保ちつつ、温度50℃で500L/Hの透過流束を7時間安定して得られる(Olsen,N.et al.:Milchwissenschaft,44(8):p.476,1989)。 Bactocatchシステムで除菌した牛乳を原料とすることによりESL(Extended shelf life)牛乳の製造が可能となった。 また、チーズ原料の胞子除去にもこのBactocatchシステムが利用されている。 本発明においても、ホエイのMF処理に、このBactocatchシステムを含むクロスフロー濾過方式の装置の利用が考えられる。 さらにホエイのMF処理に全濾過方式の装置を使用することも可能である。 またMF膜には平膜型および中空糸型などの形状の違い、樹脂膜およびセラミック膜などの材質の違いがあり、これらを適宜使用することができる。


    ホエイ中の脂肪は遠心分離では完全に除去できず、0.05%ほど残留する。 このホエイよりタンパク質含量80%のWPC粉末を製造すると脂肪含量は5〜8%に達する(J.L.Maubois:Bulletin of the IDF 320:37−40,1997)。 この脂質は、WPCの機能性や風味を損なう原因になることが指摘されている(C.V.Morr and E.Y.W.Ha:CRC Crit.Rev.Food Sci.Nutr.,33:p.431,1993;J.N.de Wit,G.Klarenbeek and M.Adamse:Neth.Milk Dairy J.,40,p.41,1986;M.T.Patel and A.Kilara:J.Dairy Sci.,73:p.2731,1990)。 また、ホエイの脂質は限外濾過(UF)、逆浸透(RO)などの膜処理効果とも関連があり、ホエイ中に残留脂質が多いほど膜分離中の流束速度は低下する(J.N.de Wit and R.de Boer:Neth.Milk Dairy J.,29,p.198,1975)。 この脂肪の主体はリン脂質である。 この脂肪はホエイを0.1μmのMFで処理することにより大半除去される(P.Dejimek and B.Hallstroem:食品膜技術懇談会,第5回春期研究例会講演要旨集,p.36−45,1993;A.Nielsen:Danish Dairy & Food Ind.Worldwide,10:72−73,1996)。


    一般的に、孔径が0.2〜0.45μm程度のMF膜を用いることで透過液を無菌にすることができる。 細菌の大きさは脂肪球(脂肪球の大きさは直径0.1〜17μmの範囲にあり、平均3.4μmである)とほぼ同じである。 一般にMF膜の孔径は0.01μmから12μmである。 本発明に用いるMF膜の孔径は、実用的に0.1〜1.4μmの範囲にあると考えられるが、孔径の最適化は、当業者の通常の実験のなかで確認可能である。


    またより簡便には原乳から生クリームを分離するように、特にスィートホエイを約30〜60℃で遠心分離処理して得られるホエイクリームを再度遠心分離処理して得られる水相もMF保持液と同様に利用することができる。


    さらに上記遠心分離処理の変法として、95℃で30分間加熱処理した脱脂乳から得られる酸ホエイ、いわゆるプロテオース・ペプトンを硫安沈殿と遠心分離を組み合わせた方法で処理して得られる分画物もMF保持液と同様に利用することができる。


    これらのホエイのMF保持液、遠心分離処理液および/または硫安沈殿処理分画物あるいはその乾燥物は、後述する実施例に示すように抗ロタウイルス感染活性を示す。 また、これらを加熱しても抗ロタウイルス感染活性を保持している。 MF保持液あるいはその乾燥物は、MFおよびUFの組み合わせで製造されるホエイタンパク分離物(WPI)の副産物として得られる。 ホエイの遠心分離処理液あるいはその乾燥物は、バターオイルの副産物として得られる。 このようにして製造されるホエイのMF保持液および遠心分離処理液あるいはその乾燥物中にはリン脂質が濃縮されている。


    本発明の組成物は加熱処理が可能で食品(とりわけ育児用調製粉乳や仔ウシの飼料)にその有効量を混合することにより、ヒト乳児、仔ウシ、仔ウマなどにおけるロタウイルスが原因の下痢症を予防または治療するのに有効であることが期待できる。 本発明の組成物の有効量は最終製品に対して0.1〜50重量%の範囲にあると推定されるが、ヒトあるいは家畜による試験で決定されるべきである。


    ロタウィルスは小腸絨毛の先端部約1/3の上皮細胞で増殖する。 感染後、絨毛は矮小化し、微絨毛の配列の乱れや欠落などの病変を起こす。 その結果、生理機能が低下し、水の吸収が阻害され下痢を起こす。 ロタウィルスの感染は標的細胞への接着から始まり、侵入、定着という多段階の過程を含んでいる。


    本発明のホエイのMF保持液、遠心分離処理液および/または硫安沈殿処理分画物あるいはその乾燥物の抗ロタウィルス感染活性は、ロタウィルスが標的細胞へ接着することを阻害することによるものと推定されるが、今後の作用機作解明を要する。


    ロタウィルス感染における食品成分の抗ロタウィルス感染効果を検定・評価する方法は多岐にわたり、万全の検定・評価系はない。 これまでにさまざまな抗ロタウィルス感染効果の検定・評価法が報告されている。 例えば本発明で用いた方法以外に、実験動物(マウス)にロタウィルスおよび食品成分を投与し、下痢の発症および消化管粘膜へのロタウィルスの結合量を測定するなどの検定・評価系があげられる(Duffy L.C.Pediatr.Res.35:690−695(1994))。 本発明者は、これらの系を適切に用いて、該組成物の抗ロタウィルス感染活性をさらに詳細に調べることが可能である。


    本発明において用いる乳由来の組成物は長い食経験の中で安全性は確立されている。 したがってヒトによる試験で本発明品の有効性および有効量の確認が可能である。


    乳由来の該組成物を抗ロタウィルス感染組成物として用いる場合、それ自身(液状または粉末状)で、また、他の活性物質と共に、あるいは他の薬理学的な活性物質と共に用いることができる。 形態は、例えば、錠剤、もしくは被覆錠、カプセル、溶液、シロップ、乳液または分散性粉末を包含する。 摂取量は、年齢、身体状態等に依存して変化するが1日当たり0.001〜10g/kg体重、好ましくは0.01〜2g/kg体重である。


    乳由来の該組成物は、ロタウィルス感染に対する防御能の発達が未熟な乳幼児の育児用調製粉乳、あるいはロタウィルス感染に対する防御能の低下した高齢者向けの食品にその有効量を添加して抗ロタウィルス感染食品組成物とすることができる。 育児用調製粉乳とは、0〜12か月の乳児を対象とする乳児用調製粉乳、6〜9か月以降の乳児および年少幼児(3歳まで)を対象とするフォローアップミルク、出生時の体重が2500g未満の新生児(低出生体重児)を対象とする低出生体重児用調製粉乳、牛乳アレルギーや乳糖不耐症等の病的状態を有する児の治療に用いられる各種治療用ミルクなどを指す。 さらに、該組成物を保健機能食品や病者用食品に適用することができる。 保健機能食品制度は、内外の動向、従来からの特定保健用食品制度との整合性を踏まえて、通常の食品のみならず錠剤、カプセル等の形状をした食品を対象として設けられたもので、特定保健用食品(個別許可型)と栄養機能食品(規格基準型)の2種類の類型からなる。 さらに、該組成物を家畜用飼料にその有効量を添加して抗ロタウィルス感染組成物とすることができる。

    図1は、ゲル濾過(Sephacryl S−500)カラムを用いた抗ロタウィルス感染組成物の活性成分の分画パターンを示す図である。

    以下、本発明の効果を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
    [実施例1]ホエイからの抗ロタウィルス感染組成物およびその加熱処理物の調製〈材料および方法〉
    搾乳した未加熱の原乳100kgを72℃で15秒殺菌し、常法にしたがってモザレラチーズを調製し、生成したホエイのpHを6N NaOHで6.8とした。 遠心分離してクリーム画分と微細なカゼイン粒子を除去した。 クリーム画分およびカゼインを除去したホエイを精密濾過装置(日本ポール株式会社、MEMBRALOX、孔径0.1μm、入口圧3.0kg/cm 、温度25℃)で処理後、保持液を採取した。 得られた保持液に脱塩水を添加し、再度精密濾過装置に供する操作を3回繰り返した。 得られた保持液をスプレードライ法により乾燥した。
    加熱物の調製は、得られた粉末を蒸留水に10mg/mlとなるように溶解後、80℃30分間加熱処理した後、常法により凍結乾燥することにより行った。
    [実施例2]ウシ常乳由来の組成物のリン脂質含量の測定〈材料および方法〉
    牛乳を用いて前述した実施例1と同一の方法により製造した乳由来組成物のリン脂質含量を測定した。 はじめに試料10gに5% NaCl溶液50mlを加え溶解後、メタノール100mlを添加した。 次に、クロロホルム100mlを加え撹拌後、静置し、クロロホルム層を回収した。 同様の操作をさらに2回繰り返した。 得られたクロロホルム層を減圧乾固したものをn−ヘキサン30mlに溶解した。 n−ヘキサン飽和1%含水メタノール50mlを加え撹拌後、静置し、メタノール層を回収した。 同様の操作をさらに2回繰り返した。 得られたメタノール層を減圧乾固したものをクロロホルム:メタノール(2:1)に溶解し、リン脂質測定用試料を得た。 得られた試料中のホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルコリン(PC)、スフィンゴミエリン(SM)濃度をHPLC法により測定することで、試料中のリン脂質含量を求めた。
    〈結果と考察〉
    リン脂質の測定結果(重量%)はPE 0.69%、PC 1.36%、SM 0.85%であった。 牛乳中のリン脂質の含量は0.04〜0.05%であることが報告されている(乳の科学、上野川修一編、朝倉書店、1996)。 したがって、ホエイのMF膜保持物には牛乳中のリン脂質が高濃度で濃縮されていることが確認された。
    [実施例3]ウシ常乳由来の組成物、およびその加熱処理物のロタウィルス感染阻害活性の測定〈材料および方法〉
    牛乳を用いて前述した実施例1と同一の方法により製造した乳由来組成物、またはその加熱処理物のロタウィルス感染阻害活性を測定した。
    ウシ常乳由来の組成物、およびその加熱処理物を試料として、ヒトロタウィルスMO株の感染阻害活性を以下のように測定した。 10 FCFU(Fluorescent Cell Focus Forming Unit)/mlのヒトロタウィフレスMO株0.4mlと20μg/mlのトリプシン0.4mlを混合し、37℃で30分間インキュベートした。 予め10%ウシ胎児血清を含むイーグル培地にて各種濃度に希釈調製された試料50μl(試料溶液は0.45μmのフィルターで濾過滅菌)を分注した0.5mlエッペンドルフチューブに、調製したウィルス溶液をそれぞれ50μlずつ加えて37℃で1時間培養した。
    なお、空試験用としては、前記試料50μlに代えて、10%ウシ胎児血清を含むイーグル培地50μlを用いた。 この培養液が入った各エッペンドルフチューブにそれぞれ2×10 /mlのアカゲザル腎臓由来MA−104細胞を100μl添加し、混合後、各混合液の20μlをそれぞれ対応するスライドグラスに移し、37℃で45時間培養した。 これをアセトンで固定し、ヒトロタウィルス感染細胞数を、一次抗体としてハトロタウィルスPO−13株のVP6を特異的に認識するモノクローナル抗体、および二次抗体として蛍光標識したヤギ抗ウサギIgGを用いた間接蛍光抗体法で検出した。
    なお、感染阻害活性の評価は、下記の式から求められる値(阻害率)が50%以上の時、感染阻害活性ありと判断し、感染阻害活性がある最も低い試料濃度を最小阻害活性とした100×[1−(試料添加時の感染細胞数)/(空試験の感染細胞数)]
    〈結果と考察〉
    ウシ常乳由来の組成物、およびその加熱処理物の最小阻害活性は順に33、および35μg/ml(ウシ血清アルブミンで換算した場合のタンパク質濃度)であった。 この結果から、該組成物が抗ロタウィルス感染活性を有すること、加熱処理後も抗ロタウィルス活性がほとんど変化しないことが判明した。 なお、他の出発原料および方法により製造した本発明の組成物についても、ほぼ同様の結果が得られた。 したがって、ウシ乳より精密濾過膜による分離で得られる該組成物には抗ロタウィルス感染活性が存在すること、該組成物の抗ロタウィルス感染活性は耐熱性を有することが明らかとなった。
    ロタウィルスの感染は標的細胞への接着から始まり、侵入、定着という多段階の過程を含んでいる。 今回、該組成物を予めロタウィルスと混合してから標的細胞と反応させたところ、ロタウィルスの感染が阻害されたことから、該組成物の抗ロタウィルス感染活性は標的細胞へのロタウィルスの接着を阻害することにより発揮されていることが示唆された。
    [実施例4]牛乳を用いて前述した実施例1と同一の方法により製造した乳由来組成物を、0.5%配合した下記処方の乳児用調製粉乳を調製した。

    [実施例5]ホエイからの抗ロタウィルス感染組成物およびその加熱処理物の調製 搾乳した未加熱の原乳100kgを72℃で15秒殺菌し、常法にしたがってゴーダチーズを調製し、生成したホエイのpHを6N NaOHで6.8とした。 同様にHTST殺菌処理をした原乳100kgから常法にしたがってエメンタールチーズを調製し、生成したホエイのpHを6N NaOHで6.8とした。 これらのホエイを混合後、遠心分離してクリーム画分と微細なカゼイン粒子を除去した。 こうして得られたホエイを固形分が1.7%となるように水で希釈してから精密濾過装置(Exekia製のセラミックフィルター、孔径0.1μm、入口圧7.5kg/cm

    、温度50℃)で処理後、固形分8%の保持液を回収した。 得られた保持液はさらに減圧濃縮した後、スプレードライ法により乾燥した。


    加熱物の調製は、得られた粉末を蒸留水に1、5および10mg/mlとなるように溶解後、141℃5秒間加熱処理した後、常法により凍結乾燥することにより行った。 なお、10mg/mlとなるように溶解したものについては別途100℃5分間および80℃30分間加熱処理したものを調製し、常法により凍結乾燥した。


    [実施例6]ホエイからの抗ロタウィルス感染組成物およびその加熱処理物のロタウィルス感染阻害活性の測定〈材料および方法〉


    原乳を用いて前述した実施例5と同一の方法により製造した乳由来組成物、またはその加熱処理物のロタウィルス感染阻害活性を実施例3と同一の方法により測定した。


    すなわち、10

    FCFU(Fluorescent Cell Focus Forming Unit)/mlのヒトロタウィルスMO株0.4mlと20μg/mlのトリプシン0.4mlを混合し、37℃で30分間インキュベートした。 予め10%ウシ胎児血清を含むイーグル培地にて各種濃度に希釈調製された試料50μl(試料溶液は0.45μmのフィルターで濾過滅菌)を分注した0.5mlエッペンドルフチューブに、調製したウィルス溶液をそれぞれ50μlずつ加えて37℃で1時間培養した。 なお、空試験用としては、前記試料50μlに代えて、10%ウシ胎児血清を含むイーグル培地50μlを用いた。 この培養液が入った各エッペンドルフチューブにそれぞれ2×10

    /mlのアカゲザル腎臓由来MA−104細胞を100μl添加し、混合後各混合液の20μlをそれぞれ対応するスライドグラスに移した。 37℃で45時間培養した後、アセトンで固定し、ヒトロタウィルス感染細胞を間接蛍光抗体法(一次抗体としてハトロタウィルスPO−13株のVP6を特異的に認識するモノクローナル抗体、二次抗体として蛍光標識したヤギ抗ウサギIgG血清を使用)で検出した。 活性は実施例3と同様に最小阻害濃度で表した。


    〈結果と考察〉


    ホエイからの抗ロタウィルス感染組成物に各種食品の製造時の殺菌条件である加熱処理を加えても表3に示すようにその活性はほとんど低下しなかったことから、本活性は最終製品においても維持される可能性が高いと考えられた。


    [実施例7]ホエイから各種孔径の精密濾過膜を用いて調製した抗ロタウィルス感染組成物 搾乳した未加熱の原乳100kgに遠心分離処理(8000g、15分間、4℃)を行い、クリームを分離して脱脂乳を得た。 この脱脂乳を加温(20〜25℃)し、0.5N HClを添加してpH4.6とした。 この状態で15〜30分間保持した後、遠心分離処理(3000g、15分間、4℃)を行い、カゼインを分離して酸ホエイを得た。 この酸ホエイに0.5N NaOHを添加してpH6.0とした後、各種孔径(0.1、0.2、0.3、0.45、0.65、0.8、1.0μm)の精密濾過膜(セルロース混合エステルタイプ、アドバンテック東洋社製)を用いて酸ホエイの精密濾過処理を実施した。 この時の処理条件は入口圧3.0kg/cm

    、温度20〜25℃であった。 最初に酸ホエイを精密濾過膜で5倍濃縮し、次に濃縮液に加水しながら透析濾過を精密濾過膜の透過液のBrix値が2%未満となるまで行った。 最後に得られた精密濾過膜の保持液を常法により凍結乾燥し、さらにγ線滅菌処理をして試験試料とした。


    [実施例8]ホエイから各種孔径の精密濾過膜を用いて調製した抗ロタウィルス感染組成物のロタウィルス感染阻害活性の測定〈材料および方法〉


    原乳を用いて前述した実施例7と同一の方法により製造した抗ロタウィルス感染組成物のロタウィルス感染阻害活性を実施例6と同一の方法により測定した。


    〈結果と考察〉


    各試料の抗ロタウィルス活性の測定結果を表4に示した。 実験試料の最小阻害濃度は、ウシ血清アルブミンで換算した場合のタンパク質濃度で示した。


    その結果、MF膜の孔径が0.8μm以上になると、MF保持物の抗ロタウィルス活性の低下が顕著になった。 したがって、抗ロタウィルス感染組成物をホエイから調製するためには、用いる精密濾過膜の孔径を0.65μm以下にすることが望ましいと考えられた。


    [実施例9]ホエイから遠心分離処理で調製した抗ロタウィルス感染組成物 搾乳した未加熱の原乳100kgを63℃で30分間殺菌し、常法にしたがってカマンベールチーズを調製し、生成したホエイ(pH6.0)を分離した。 このホエイを加温し、遠心分離処理(3000g、20分間、40℃)を行い、ホエイクリームを得た。 さらにこのホエイクリームを再び50℃に加温し、遠心分離処理(3000g、20分間、50℃)を行った。 こうして得られた水相部分(以下、whey cream serumと略)を常法により凍結乾燥し、試験試料とした。


    [実施例10]ホエイから遠心分離処理で調製した抗ロタウィルス感染組成物のロタウィルス感染阻害活性の測定〈材料および方法〉


    原乳を用いて前述した実施例9と同一の方法により製造した抗ロタウィルス感染組成物のロタウィルス感染阻害活性を実施例6と同一の方法により測定した。 なお、比較のためにウシラクトフェリン(DMV社)を対照試料として用いた。


    〈結果と考察〉


    各試料の抗ロタウィルス活性の測定結果を表5に示した。 実験試料の最小阻害濃度は、ウシ血清アルブミンで換算した場合のタンパク質濃度で示した。


    whey cream serumはウシラクトフェリンを上回る強力な抗ロタウィルス活性を示した。


    以上より、抗ロタウィルス感染組成物はホエイから遠心分離処理のみで調製可能なことが明らかとなった。


    [実施例11]95℃で30分間加熱処理した脱脂乳から得られるホエイを硫安沈殿と遠心分離処理して調製した抗ロタウィルス感染組成物 搾乳した未加熱の原乳10kgに遠心分離処理(8000g、15分間、4℃)を行い、クリームを分離して脱脂乳を得た。 この脱脂乳を加熱処理(95℃、30分間)し、0.5N HClを添加してpH4.6とした。 この状態で15〜30分間保持した後、遠心分離処理(5000g、30分間、4℃)を行い、カゼインを分離して酸ホエイを得た。 この酸ホエイに硫酸アンモニウムを加え、35%飽和の状態とした。 この溶液を遠心分離処理(7000g、30分間、4℃)して沈殿物を除去した。 沈殿除去した溶液に再度硫酸アンモニウムを加え、55%飽和の状態とした。 この溶液を遠心分離処理(7000g、30分間、4℃)して再び沈殿物を除去した。 得られた溶液にさらに硫酸アンモニウムを加え、90%飽和の状態とした。 最後にこの溶液を遠心分離処理(7000g、30分間、4℃)して沈殿物を回収した。 90%飽和で得られた沈殿物は蒸留水に溶解後、蒸留水に対して透析し、常法により凍結乾燥し、試験試料とした。


    [実施例12]95℃で30分間加熱処理した脱脂乳から得られるホエイを硫安沈殿と遠心分離処理して調製した抗ロタウィルス感染組成物のロタウィルス感染阻害活性の測定〈材料および方法〉


    原乳を用いて前述した実施例11と同一の方法により製造した抗ロタウィルス感染組成物のロタウィルス感染阻害活性を実施例6と同一の方法により測定した。


    〈結果と考察〉


    90%飽和沈殿物は50μg/ml(ウシ血清アルブミンで換算した場合のタンパク質濃度)の最小阻害濃度を示した。


    95℃で30分間加熱処理した脱脂乳から得られるホエイ、いわゆるプロテオース・ペプトンの硫安沈殿処理画分が抗ロタウィルス活性を有することが明らかとなった。


    [実施例13]ゲル濾過カラムと硫安を用いた抗ロタウィルス感染組成物の活性成分の分画 原乳を用いて前述した実施例5と同一の方法により製造した乳由来組成物の活性成分をさらに分画した。


    実施例5で保持液をスプレードライして得られた粉末を蒸留水に5%となるように溶解後、95℃30分間の加熱処理を加えた。 この溶液の一部を下記のTris−HCl緩衝液に対して一晩透析し、ゲル濾過試料とした。


    Sephacryl S−500 HRを約480ml取り、数回のデカンテーションにより溶媒をMilli−Q水(超純水)に置き換えた。 ゲルを均一になるように攪拌し、リザーバーを装着したカラム(2.6×60cm)に静かに流し込んだ後、空気が入らないようリザーバーにMilli−Q水を充たし蓋をした。 カラムをAKTA explorer 10 C(アマシャムファルマシアバイオテク)に接続し、Milli−Q水を流してゲルを十分に沈積させた後、リザーバーを外してアダプターを装着した。 このカラムをpH8.0の0.05M Tris−HCl緩衝液(0.15M NaCl、1mM Na

    EDTA、0.02% NaN

    )により平衡化した。 上述の試料をカラムに11ml添加してから流速1.3ml/分で溶出させた。 この際、溶出液の280nmにおける吸光度の変化を調べ、ほとんど素通りしてくる画分C1を回収した。 このC1画分を蒸留水に対して一晩透析後、一部は常法により凍結乾燥し、試験試料とした。 残りは実施例11と同様に硫安を用いてさらに分画した。 すなわち、このC1画分溶液に硫酸アンモニウムを加え、35%飽和の状態とした。 この溶液を遠心分離処理(7000g、30分間、4℃)して沈殿物を除去した。 沈殿除去した溶液に再度硫酸アンモニウムを加え、55%飽和の状態とした。 この溶液を遠心分離処理(7000g、30分間、4℃)して再び沈殿物を除去した。 得られた溶液にさらに硫酸アンモニウムを加え、90%飽和の状態とした。 最後にこの溶液を遠心分離処理(7000g、30分間、4℃)して沈殿物を回収した。 90%飽和で得られた沈殿物は蒸留水に溶解後、蒸留水に対して透析し、常法により凍結乾燥し、試験試料とした。


    [実施例14]抗ロタウィルス感染組成物をゲル濾過(Sephacryl S−500)カラムと硫安で分画して得た成分のロタウィルス感染阻害活性の測定〈材料および方法〉


    原乳を用いて前述した実施例13と同一の方法により製造した成分のロタウィルス感染阻害活性を実施例6と同一の方法により測定した。


    〈結果と考察〉


    各試料の抗ロタウィルス活性の測定結果を表6に示した。 実験試料の最小阻害濃度は、ウシ血清アルブミンで換算した場合のタンパク質濃度で示した。


    ゲル濾過カラム後の硫安塩析により活性成分が濃縮されることが明らかとなった。


    [実施例15]遠心分離および限外濾過処理による抗ロタウィルス感染組成物の活性成分の分画 原乳を用いて前述した実施例5と同一の方法により製造した乳由来組成物の活性成分をさらに分画した。


    実施例5で保持液をスプレードライして得られた粉末を蒸留水に10%となるように溶解後、0.5N HClを添加してpH4.6とした。 この状態で15〜30分間保持した後、遠心分離処理(6000g、20分間、4℃)を行い、沈殿画分と上清画分に分けた。 沈殿画分は再度蒸留水に分散させた後、常法により凍結乾燥して試験試料Aとした。 上清画分は分画分子量1万の限外濾過膜(日本ミリポア社製)を用いて限外濾過処理に供した。 処理温度は20〜25℃であった。 最初に上清画分を限外濾過膜で1/4に濃縮し、次に濃縮液を4倍に加水希釈し、その後再び容量が1/4になるように透析濾過を行った。 最後に得られた限外濾過膜の保持液を常法により凍結乾燥して試験試料Bとした。


    [実施例16]抗ロタウィルス感染組成物を遠心分離および限外濾過処理で分画して得た成分のロタウィルス感染阻害活性の測定〈材料および方法〉


    原乳を用いて前述した実施例15と同一の方法により製造した成分のロタウィルス感染阻害活性を実施例6と同一の方法により測定した。 なお、比較のために未分画の試料を対照試料として用いた。


    〈結果と考察〉


    各試料の抗ロタウィルス活性の測定結果を表7に示した。 実験試料の最小阻害濃度は、ウシ血清アルブミンで換算した場合のタンパク質濃度で示した。


    遠心分離および限外濾過処理により活性成分が濃縮されることが明らかとなった。


    産業上の利用の可能性

    本発明により新たなロタウィルス感染防御作用を有する組成物が提供される。 該組成物は、その有効量を育児用調製粉乳に配合することができる。

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