アイドルトーン分散装置及び周波数計測装置

申请号 JP2014101818 申请日 2014-05-15 公开(公告)号 JP2015220552A 公开(公告)日 2015-12-07
申请人 セイコーエプソン株式会社; 发明人 轟原 正義;
摘要 【課題】デルタシグマ変調で発生する周期的な量子化雑音であるアイドルトーンを抑圧する。 【解決手段】アイドルトーン分散装置1Aは、n個のFDSM(1)〜FDSM(n)と、アイドルトーンの位相が全て異なるように被測定 信号 Fxと基準信号Fcとの位相を相対的に調整して、n組の出 力 被測定信号及び出力基準信号を生成して、n個のFDSM(1)〜FDSM(n)の各々に供給する位相調整部10と、n個のFDSM(1)〜FDSM(n)の出力データOUT1〜OUTnを加算して周 波数 デルタシグマ変調信号Yを出力する加算器30とを備える。 【選択図】図1
权利要求

基準信号を用いて被測定信号を周波数デルタシグマ変調してアイドルトーンを分散させた周波数デルタシグマ変調信号を出するアイドルトーン分散装置であって、 n個の周波数デルタシグマ変調部と、 前記被測定信号と前記基準信号との位相を相対的に調整して、n(nは2以上の任意の自然数)組の出力被測定信号及び出力基準信号を生成して、各組の出力被測定信号及び出力基準信号を前記n個の周波数デルタシグマ変調部の各々に供給する位相調整部と、 前記n個の周波数デルタシグマ変調部の出力信号を加算して前記周波数デルタシグマ変調信号を出力する加算部とを備え、 前記n個の周波数デルタシグマ変調部の各々は、前記位相調整部から供給される前記出力基準信号を用いて前記出力被測定信号を周波数デルタシグマ変調し、 前記位相調整部は、前記n個の周波数デルタシグマ変調部の出力信号について、アイドルトーンの位相が全て異なるように、前記被測定信号と前記基準信号との位相を相対的に調整して、前記n組の出力被測定信号及び出力基準信号を生成する、 ことを特徴とするアイドルトーン分散装置。所定時間をD、前記被測定信号の1周期又は前記基準信号の1周期をT、mをn以下の任意の自然数、mD/nTを整数、mD/nTとmとが互いに素、i(iはn−1以下の任意の自然数)番目の周波数デルタシグマ変調部に供給する出力被測定信号と出力基準信号との位相差をPiとしたとき、 前記位相調整部は、 D/n=Pi+1−Piとなるように、前記被測定信号と前記基準信号との位相を相対的に調整して、前記n組の出力被測定信号及び出力基準信号を生成する、 ことを特徴とする請求項1に記載のアイドルトーン分散装置。前記周波数デルタシグマ変調部は、前記出力信号をデータストリーム形式で出力し、 前記被測定信号の1周期と前記基準信号の1周期とのうち短い周期をTxとし、i(iはn−1以下の任意の自然数)番目の周波数デルタシグマ変調部に供給する出力被測定信号と出力基準信号との位相差をPiとしたとき、 前記位相調整部は、Tx/n=Pi+1−Piとなるように、前記被測定信号と前記基準信号との位相を相対的に調整して、前記n組の出力被測定信号及び出力基準信号を生成する、 ことを特徴とする請求項1に記載のアイドルトーン分散装置。前記周波数デルタシグマ変調部は、前記出力信号をビットストリーム形式で出力し、 前記被測定信号の半周期と前記基準信号の1周期とのうち短い周期をTxとし、i(iはn−1以下の任意の自然数)番目の周波数デルタシグマ変調部に供給する出力被測定信号と出力基準信号との位相差をPiとしたとき、 前記位相調整部は、Tx/n=Pi+1−Piとなるように、前記被測定信号と前記基準信号との位相を相対的に調整して、前記n組の出力被測定信号及び出力基準信号を生成する、 ことを特徴とする請求項1に記載のアイドルトーン分散装置。前記位相調整部は、 それぞれの遅延時間がTx/nとなる直列に接続された複数の遅延回路を備え、 前記被測定信号と前記基準信号とのうち一方の信号を前記n個の周波数デルタシグマ変調部に供給し、前記被測定信号と前記基準信号とのうち他方の信号を前記複数の遅延回路を用いて遅延して前記n個の周波数デルタシグマ変調部に供給する、 ことを特徴とする請求項3又は4に記載のアイドルトーン分散装置。前記被測定信号の周波数と前記基準信号の周波数を比較する比較部を備え、 前記位相調整部は、前記比較部の比較結果に基づいて、前記被測定信号と前記基準信号との位相を相対的に調整して、前記n組の出力被測定信号及び出力基準信号を生成する、 ことを特徴とする請求項3乃至5のうちいずれか1項に記載のアイドルトーン分散装置。請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載のアイドルトーン分散装置と、 前記周波数デルタシグマ変調信号に基づいて前記被測定信号の周波数を示す周波数データを生成する周波数データ生成部と、 を備えることを特徴とする周波数計測装置。

说明书全文

この発明は、周波数デジタル信号変換の分解能を向上させるアイドルトーン分散装置及び周波数計測装置に関する。

アナログ信号をデジタル信号に変換する手法としてデルタシグマ変調方式が知られている。また、特許文献1には、デルタシグマ変調方式を用いて被測定信号の周波数を計測する周波数計測装置が開示されている。さらに、特許文献1には、この周波数計測装置において、不感期間の無い構成のカウント値の連続出が、被測定信号周波数の高低に対応する1次デルタシグマ変調信号に相当することが開示されている。以下の説明では、基準信号を用いて被測定信号をデルタシグマ変調方式で変換して被測定信号の周波数を特定するための変換器をFDSM(Frequency Delta Sigma Modulator)と称する。

一般に、デルタシグマ変調器の出力にはアイドルトーンと呼ばれる周期的な量子化雑音が発生することが知られている(例えば、非特許文献1、2.6章参照)。アイドルトーンはFDSMによる周波数測定においてもその測定精度の劣化に直結する雑音である。 非特許文献2では、被測定信号を順次遅延して並列化された複数のFDSMに供給するとともに、基準信号を全てのFDSMに供給し、並列化された複数のFDSMの出力を加算することによって、アイドルトーンを抑圧する方法が検討されている。

米国特許第6362769号

Richartd Schreier,Gabor C. Temes.;ΔΣ型アナログ/デジタル変換器入門,34〜41頁,2007

Dag T Wisland, et al., ESSCIRC2002, p.687-690, 2002

ところで、周波数変調信号を被測定信号としてFDSMに入力したとき、FDSMの出力は、被測定信号のベースバンド信号成分に量子化雑音成分が重畳したものとなる。非特許文献2の周波数計測装置は、被測定信号に遅延を施したものをFDSMに入力しても出力に含まれるベースバンド信号成分は変わらないが、出力に含まれる量子化雑音成分は並列出力間で比べると無相関であることを前提としている。そして、回路規模を最小化するために、ビットストリーム出力となるようFDSMの構成を限定した上で、被測定信号の周波数が基準信号の周波数より低い場合に、各々の遅延量が被測定信号の半周期を分割するように設計することで量子化雑音を分散させる効果が最大となるとしている。

しかしながら、非特許文献2では実験検証では期待通りの改善に至らなかったことも同時に報告されている。

本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、デルタシグマ変調で発生する周期的な量子化雑音であるアイドルトーンを抑圧することを解決課題の一つとする。

上記課題を解決するために本発明に係るアイドルトーン分散装置の一態様は、基準信号を用いて被測定信号を周波数デルタシグマ変調してアイドルトーンを分散させた周波数デルタシグマ変調信号を出力するものであって、n個の周波数デルタシグマ変調部と、前記被測定信号と前記基準信号との位相を相対的に調整して、n(nは2以上の任意の自然数)組の出力被測定信号及び出力基準信号を生成して、各組の出力被測定信号及び出力基準信号を前記n個の周波数デルタシグマ変調部の各々に供給する位相調整部と、前記n個の周波数デルタシグマ変調部の出力信号を加算して前記周波数デルタシグマ変調信号を出力する加算部とを備え、前記n個の周波数デルタシグマ変調部の各々は、前記位相調整部から供給される前記出力基準信号を用いて前記出力被測定信号を周波数デルタシグマ変調し、前記位相調整部は、前記n個の周波数デルタシグマ変調部の出力信号について、アイドルトーンの位相が全て異なるように、前記被測定信号と前記基準信号との位相を相対的に調整して、前記n組の出力被測定信号及び出力基準信号を生成する、ことを特徴とする。

周波数デルタシグマ変調部の出力信号には、アイドルトーンに起因する量子化雑音が重畳する。この態様によれば、n個の周波数デルタシグマ変調部の出力信号について、アイドルトーンの位相が全て異なるように、被測定信号と基準信号との位相を相対的に調整するので、n個の周波数デルタシグマ変調部の出力信号を加算することによって、アイドルトーンに起因する量子化雑音を抑圧することができる。 ここで、「被測定信号と基準信号との位相を相対的に調整」には、被測定信号のみに遅延を施す態様、基準信号にのみ遅延を施す態様、及び被測定信号及び基準信号に遅延を施す態様が含まれる。

上述したアイドルトーン分散装置の一態様において、所定時間をD、前記被測定信号の1周期又は前記基準信号の1周期をT、mをn以下の任意の自然数、mD/nTを整数、mD/nTとmとが互いに素、i(iはn−1以下の任意の自然数)番目の周波数デルタシグマ変調部に供給する出力被測定信号と出力基準信号との位相差をPiとしたとき、前記位相調整部は、D/n=Pi+1−Piとなるように、前記被測定信号と前記基準信号との位相を相対的に調整して、前記n組の出力被測定信号及び出力基準信号を生成することが好ましい。

mD/nTが整数であり、mD/nTとmが互いに素とならない場合、mD/nTとmの最大公約数をgとすると、アイドルトーンの位相関係の分散にm/g回で一巡する周期が生じる。この態様によれば、位相調整部は、mD/nTとmが互いに素となるように、所定時間Dを設定するので、アイドルトーンを確実に分散させることができる。この結果、周波数デルタシグマ変調信号のSNRを向上することができる。

上述したアイドルトーン分散装置の一態様において、前記周波数デルタシグマ変調部は、前記出力信号をデータストリーム形式で出力し、前記被測定信号の1周期と前記基準信号の1周期とのうち短い周期をTxとし、i(iはn−1以下の任意の自然数)番目の周波数デルタシグマ変調部に供給する出力被測定信号と出力基準信号との位相差をPiとしたとき、前記位相調整部は、Tx/n=Pi+1−Piとなるように、前記被測定信号と前記基準信号との位相を相対的に調整して、前記n組の出力被測定信号及び出力基準信号を生成することが好ましい。

データストリーム形式で生成される周波数デルタシグマ変調部の出力信号には、アイドルトーンに起因する量子化誤差が重畳する。この場合、アイドルトーンの周期は、被測定信号の周波数(周期)と基準信号の周波数(周期)とに応じて定まるが、その周期は、被測定信号の1周期と基準信号の1周期とのうち短い周期を下回ることはない。この態様によれば、i番目の周波数デルタシグマ変調部に供給する出力被測定信号と出力基準信号との位相差をPi、短い方の周期Txとしたとき、位相調整部は、Tx/n=Pi+1−Piとなるように、被測定信号と基準信号との位相を相対的に調整するので、n個の周波数デルタシグマ変調部から出力される出力信号に重畳するアイドルトーンの位相は、Tx/nずつずれる。よって、n個の出力信号に重畳するアイドルトーンを時間的に分散するので、周波数デルタシグマ変調信号に重畳するアイドルトーンに起因する量子化雑音が抑圧され、SNRが向上する。

上述したアイドルトーン分散装置の一態様において、前記周波数デルタシグマ変調部は、前記出力信号をビットストリーム形式で出力し、前記被測定信号の半周期と前記基準信号の1周期とのうち短い周期をTxとし、i(iはn−1以下の任意の自然数)番目の周波数デルタシグマ変調部に供給する出力被測定信号と出力基準信号との位相差をPiとしたとき、前記位相調整部は、Tx/n=Pi+1−Piとなるように、前記被測定信号と前記基準信号との位相を相対的に調整して、前記n組の出力被測定信号及び出力基準信号を生成することが好ましい。

ビットストリーム形式で生成される周波数デルタシグマ変調部の出力信号には、アイドルトーンに起因する量子化誤差が重畳する。この場合、アイドルトーンの周期は、被測定信号の周波数(周期)と基準信号の周波数(周期)とに応じて定まるが、その周期は、被測定信号の半周期と基準信号の1周期とのうち短い周期を下回ることはない。この態様によれば、i番目の周波数デルタシグマ変調部に供給する出力被測定信号と出力基準信号との位相差をPi、被測定信号の半周期と基準信号の1周期とのうち短い周期をTxとしたとき、位相調整部は、Tx/n=Pi+1−Piとなるように、被測定信号と基準信号との位相を相対的に調整するので、n個の周波数デルタシグマ変調部から出力される出力信号に重畳するアイドルトーンの位相は、Tx/nずつずれる。よって、n個の出力信号に重畳するアイドルトーンを時間的に分散するので、周波数デルタシグマ変調信号に重畳するアイドルトーンに起因する量子化雑音が抑圧され、SNRが向上する。

上述したアイドルトーン分散装置の一態様において、前記位相調整部は、それぞれの遅延時間がTx/nとなる直列に接続された複数の遅延回路を備え、前記被測定信号と前記基準信号とのうち一方の信号を前記n個の周波数デルタシグマ変調部に供給し、前記被測定信号と前記基準信号とのうち他方の信号を前記複数の遅延回路用いて遅延して前記n個の周波数デルタシグマ変調部に供給することが好ましい。

この態様によれば、位相調整部は、複数の遅延回路によって、被測定信号と基準信号との位相を相対的に調整するが、各遅延回路の遅延時間をTx/nに設定するので、遅延回路の個数及び複数の遅延回路の総遅延時間を最小にすることができる。よって、アイドルトーン分散装置の構成を簡素化することができる。

上述したアイドルトーン分散装置の一態様において、前記被測定信号の周波数と前記基準信号の周波数を比較する比較部を備え、前記位相調整部は、前記比較部の比較結果に基づいて、前記被測定信号と前記基準信号との位相を相対的に調整して、前記n組の出力被測定信号及び出力基準信号を生成することが好ましい。

この態様によれば、位相調整部は、比較部の比較結果に基づいて、被測定信号と基準信号との位相を相対的に調整するので、被測定信号の1周期又は半周期と基準信号の1周期とのどちらが短い周期であるかが不明である場合においても、n個の出力信号に重畳するアイドルトーンを時間的に分散させ、周波数デルタシグマ変調信号に重畳するアイドルトーンに起因する量子化雑音を抑圧できる。

次に、本発明に係る周波数計測装置は、上述したアイドルトーン分散装置と、前記周波数デルタシグマ変調信号に基づいて前記被測定信号の周波数を示す周波数データを生成する周波数データ生成部と、を備えることを特徴とする。この態様によれば、アイドルトーンに起因する量子化雑音が抑圧された周波数デルタシグマ変調信号に基づいて、周波数データを生成するので、周波数の計測精度を向上させることができる。

第1実施形態に係るアイドルトーン分散装置1Aのブロック図

出力基準信号Fcj及び出力被測定信号Fxjの一例を示すタイミングチャート

出力データOUTjの一例を示すタイミングチャート

出力被測定信号Fxjの周期の進みを示す説明図

FDSMを単純に並列化した装置のブロック図

図5に示す装置のタイミングチャート

位相調整部10の一例を示すブロック図

被測定信号Fxの周波数fxが基準信号Fcの周波数fcより高い場合におけるアイドルトーン分散装置1Aの構成例を示すブロック図

図8に示すアイドルトーン分散装置1Aのタイミングチャート

基準信号Fcの周波数fcが被測定信号Fxの周波数fxより高い場合におけるアイドルトーン分散装置1Aの構成例を示すブロック図

出力基準信号Fcj及び出力被測定信号Fxjの一例を示すタイミングチャート

FDSM(j)の出力データOUTjの一例を示すタイミングチャート

図10に示すアイドルトーン分散装置1Aのタイミングチャート

図10に示すアイドルトーン分散装置1Aから位相調整部10を削除した図5に示す装置のタイミングチャート

第2実施形態に係るアイドルトーン分散装置1Bのブロック図

出力基準信号Fcj及び出力被測定信号Fxjの一例を示すタイミングチャート

FDSM(j)の出力データOUTjの一例を示すタイミングチャート

アイドルトーン分散装置1Bにおいてn=4とした場合のタイミングチャート

アイドルトーン分散装置1Bから位相調整部10を削除した装置のタイミングチャート

出力基準信号Fcj及び出力被測定信号Fxjの一例を示すタイミングチャート

FDSM(j)の出力データOUTjの一例を示すタイミングチャート

アイドルトーン分散装置1Bにおいてn=4とした場合のタイミングチャート

アイドルトーン分散装置1Bから位相調整部10を削除した装置のタイミングチャート

被測定信号Fxの1.5周期をDとしてこれを4等分に分割した遅延を与える場合のアイドルトーン分散装置のタイミングチャート

被測定信号Fxの2周期をDとしてこれを2等分に分割した遅延を与える場合のアイドルトーン分散装置のタイミングチャート

式1を説明するためのタイミングチャート

比較部を備えたアイドルトーン分散装置のブロック図

実施例のFFT解析結果を示すグラフ

比較例1のFFT解析結果を示すグラフ

比較例2のFFT解析結果を示すグラフ

比較例2のタイミングチャート

用例に係る周波数計測装置100のブロック図

実施例の周波数計測結果を示すグラフ

比較例の周波数計測結果を示すグラフ

以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。 <1.第1実施形態> <1−1:全体構成> 図1に第1実施形態に係るアイドルトーン分散装置のブロック図を示す。この図に示すように、アイドルトーン分散装置1Aは、被測定信号Fxと基準信号Fcの位相を調整して、n(nは2以上の自然数)組の出力被測定信号Fx1〜Fxn及び出力基準信号Fc1〜Fcnを出力する位相調整部10と、並列化されたn個のFDSM(1)〜FDSM(n)と、加算器30とを備える。

j(jは1以上n以下の任意の自然数)番目のFDSM(j)は、出力基準信号Fcjを用いて出力被測定信号Fxjを周波数デルタシグマ変調して出力データOUTjを生成する。加算器30は出力データOUT1〜OUTnを加算して、周波数デルタシグマ変調信号Yを生成する。

FDSM(j)は、出力被測定信号Fxjの立ち上がりエッジをカウントしてカウント値を示すカウントデータDcを出力するアップカウンタ21と、出力基準信号Fcjの立ち上がりエッジに同期してカウントデータDcをラッチして第1データD1を出力する第1ラッチ22と、第1データD1を出力基準信号Fcjの立ち上がりエッジに同期して第1データD1をラッチして第2データD2を出力する第2ラッチ23と、第1データD1から第2データD2を減算して出力データOUTjを生成する減算器24とを備える。FDSM(1)〜FDSM(j−1)とFDSM(j+1)〜FDSM(n)とは、FDSM(j)と同様に構成されている。

この例のFDSM(j)は、一次周波数デルタシグマ変調器とも呼ばれ、出力被測定信号Fxjのカウント値を出力基準信号Fcjにより2回ラッチしており、出力基準信号Fcjの立ち上がりエッジをトリガとして出力被測定信号Fxjのカウント値を順次保持する。この例では、立ち上がりエッジでラッチ動作を行う場合を想定しているが、立ち下りエッジでラッチ動作を行ってもよい。また減算器24は保持されている2つのカウント値の差分を演算することで出力基準信号Fcjが1周期推移する間に観測される出力被測定信号Fxjのカウント値の増分を時間経過と共に不感期間無く出力する。被測定信号Fxの周波数をfx、基準信号Fcの周波数をfcとしたとき、周波数の比はfx/fcとなる。FDSM(j)は、周波数の比をデジタル信号列として出力するものである。FDSM(j)から出力される出力データOUTjは量子化誤差を含んでいる。

このデジタル信号列はデータ列・データストリーム、1ビットで表される場合は特にビット列・ビットストリーム、などと呼ばれる。第1実施形態のアイドルトーン分散装置1Aは、データストリームに対応するものである。ビットストリームに対応するものは、第2実施形態で説明する。

<1−2:周波数デルタシグマ変調とアイドルトーンとの関係> 次に周波数デルタシグマ変調とアイドルトーンとの関係について説明する。被測定信号Fxとして1周期21μSの信号(47.619047kHz)を考える。また基準信号Fcとして1周期66μSの信号(15.15kHz)を考える。これは、被測定信号Fxの周波数fxが基準信号Fcの周波数fcより高い場合に該当する。fxとfcの比は、次式で与えられる。 fx:fc=1/21e−6:1/66e−6=22:7 この場合、被測定信号Fxの22周期と基準信号Fcの7周期の時間が等しい。つまり、21μS×22=66μS×7=462μSごとに同じデータ列が繰り返される。

このときのFDSM(j)の動作について考えてみると出力基準信号Fcjが1周期進む間に出力被測定信号Fxjは22/7周期=3+1/7周期だけ進むことになり、カウント値は3又は4だけ増加する。従って減算器24からは3又は4が時間経過と共に出力される。これらの関係を出力基準信号Fcjと出力被測定信号Fxjとの立ち上がりエッジが一致する場合を起点として表すと図2になる。図2は出力基準信号Fcjと出力被測定信号Fxjの立ち上がりエッジが一致した瞬間から、462μS後に再び立ち上がりエッジが一致することも表している。一般に、出力基準信号Fcjと出力被測定信号Fxjとの立ち上がりエッジが一致しない場合を起点とした場合でも、その位相のずれに対応したパルス列が462μS周期で繰り返されることに変わりは無いが、ここでは簡単のために出力基準信号Fcjと出力被測定信号Fxjの立ち上がりエッジが一致する瞬間を起点とする場合を示している。

実際のFDSM(j)の出力データOUTjのデータ列には図3の様に「3433333」の繰り返しパターンが462μS周期で出現することになる。尚、図1のFDSM(j)は動作開始時の第1ラッチ22及び第2ラッチ23の出力が不定のため、図3は最初の462μSの周期が一巡した次の二巡目の繰り返しパターンを示している。この462μS周期の繰り返しパターンは図4に示す出力被測定信号Fxjの周期の進みを考えると理解しやすい。この例の場合、出力基準信号Fcjが最初の1周期進む間に出力被測定信号Fxjは3+1/7周期だけ進むが、出力被測定信号Fxjの4周期目に注目すると出力被測定信号Fxjの3周期目の終わりを基準として1/7周期だけ進んでいることを意味している。このような非整数が出るのは出力被測定信号Fxjと出力基準信号Fcjとの周波数比もしくは周期比の値が整数関係にないためで、出力被測定信号Fxjの3周期目の終わりから1/7周期だけ進んだ点が出力基準信号Fcjの2周期目での出力被測定信号Fxjの位相の起点となる。そして、出力基準信号Fcjの2周期目の終わりには出力被測定信号Fxjは最初から数えて6+2/7周期だけ進んでいることになる。このように考えると、出力基準信号Fcjが7周期進むごとに遷移回数の非整数分が0(出力被測定信号Fxjと出力基準信号Fcjの立ち上がりエッジが一致しない場合を起点とした場合には、その位相のずれに対応する非整数)に戻ることを意味している。出力被測定信号Fxjのレベルとは関係なく、このような周期性のある繰り返しパターンが持つ周波数成分に起因する雑音がアイドルトーンである。

アイドルトーンは出力基準信号Fcjと出力被測定信号Fxjとの位相関係に基づく量子化誤差によりFDSM(j)内部で発生するものである。もしアイドルトーンの発生が無かった場合、FDSM(j)の出力データOUTjの変化は出力基準信号Fcjに対する出力被測定信号Fxjのゆらぎや変動を表すことになるので、出力基準信号Fcjに対して出力被測定信号Fxjにゆらぎも変動もない場合の出力データOUTjは、アイドルトーンの影響を無視した場合、直流とみなすことができる。逆に言えば、出力データOUTj変化には出力基準信号Fcjに対する出力被測定信号Fxjの変動にアイドルトーンの影響が重畳されて出現する。アイドルトーンはFDSM(j)の出力データOUTjにフィルタ処理を施すことにより排除や軽減が可能である。

しかしながら、フィルタの性能は有限であり、出力被測定信号Fxjの周波数fxや変動が未知である場合は、フィルタの仕様を確定できないという問題もある。更に、フィルタの阻止域にある出力基準信号Fcjに対する出力被測定信号Fxjのゆらぎや変動成分の検出も阻止してしまう。よって、FDSMを用いた高精度測定においては、アイドルトーン自体の抑圧が重要な課題となる。

次に、FDSMを並列接続した場合のアイドルトーンについて検討する。図5は、4個のFDSM(1)〜FDSM(4)を単純に並列化し、出力データOUT1〜OUT4を加算した例である。この装置は、図1に示すアイドルトーン分散装置1Aから位相調整部10を削除して、4個のFDSM(1)〜FDSM(4)に被測定信号Fxと基準信号Fcとを直接供給する。

ここで、被測定信号Fxが図2に示す出力被測定信号Fxjであり、基準信号Fcが図2に示す出力基準信号Fcjと同じである場合、図5に示す装置のタイミングチャートは図6に示すものとなる。図6と図3とを比較すると、4個のFDSM(1)〜FDSM(4)を並列化しても、図3に示す1個のFDSM(j)の「3433333」の繰り返しパターンが「12 16 12 12 12 12 12」に変わっただけであることが判る。すなわち、周波数デルタシグマ変調信号Yの強度は4倍になるが量子化誤差も4倍になるため、「3433333」と「12 16 12 12 12 12 12」のSNRは同じと言える。つまり、FDSMを単純に並列接続しただけでは出現するアイドルトーンの影響は変わらないことを意味している。その理由は図6から明らかなように、FDSM(1)〜FDSM(4)出力間でアイドルトーンの位相関係が一致しているためである。従って4並列だけでなく5、6、7…n並列としても変わらない。

このようなアイドルトーンの位相はFDSMに入力される2つの信号の位相関係によって決まることは明らかである。また、n並列FDSM出力間でアイドルトーンの位相関係を分散させるためには、n並列を構成する各シングルFDSM出力に現れる繰り返しパターンの相対位置をずらせば良く、そのためには各FDSMへ入力する出力被測定信号と出力基準信号との並列入力間での相対位相関係を分散させる必要がある。

<1−3:位相調整部> 本実施形態では、位相調整部10は、出力データOUT1〜OUTnのアイドルトーンの位相が全て異なるように、被測定信号Fxと基準信号Fcとの位相を相対的に調整して、n組の出力被測定信号及び出力基準信号(Fx1,Fc1)、(Fx2,Fc2)、…(Fxn,Fcn)を生成する。 ここで、位相調整部10は、図7(A)に示すように、被測定信号Fxを遅延回路DLx1〜DLxn−1によって順次遅延して出力被測定信号Fx1〜Fxnを生成し、基準信号Fcを遅延回路DLc1〜DLxn−1によって順次遅延して出力基準信号Fc1〜Fcnを生成する。あるいは、図7(B)に示すように、位相調整部10において、被測定信号Fxを遅延回路DLx1〜DLxn−1によって順次遅延して出力被測定信号Fx1〜Fxnを生成し、基準信号Fcについては遅延せずに出力基準信号Fc1〜Fcnとしてもよい。また、図7(C)に示すように、位相調整部10において、被測定信号Fxについては遅延せずに出力被測定信号Fx1〜Fxnを生成し、基準信号Fcを遅延回路DLc1〜DLxn−1によって順次遅延して出力基準信号Fc1〜Fcnを生成してもよい。さらに、図7(D)に示すように、位相調整部10において、被測定信号Fx及び基準信号Fcにそれぞれに施す遅延量の増加順が異なるよう配線し入力することで最大の位相差を設けるように位相調整部10を構成してもよい。

<1−4:遅延量の決定及び信号への遅延の施し方> 次に、遅延量の決定及び信号への遅延の施し方について説明する。上述したように、出力被測定信号Fxjと出力基準信号FcjとをそれぞれFDSM(j)に入力した際の出力データOUTjは被測定信号Fxの周波数fxと基準信号Fcの周波数fcの比により決まる周期的なデータ列となる。被測定信号Fxに遅延を施した出力被測定信号Fxjと基準信号FcとをFDSM(j)に入力すると、被測定信号Fxに遅延を施さずに入力した場合に比べ、データ列の周期とデータ列に現れる繰り返しパターンは変わらないが、繰り返しパターンの開始位置がずれる。遅延を施す前後での出力の繰り返しパターンの開始位置を比べると、被測定信号Fxに施す遅延量が増えるに従って繰り返しパターンの開始位置がステップ状に変化する。また、被測定信号Fxに施す遅延量が被測定信号FxのKa周期(Kaは自然数)と等しくなるとき、出力被測定信号Fxjと基準信号Fcとの相対位相関係は遅延を施す前(被測定信号Fxと基準信号Fcとの相対位相関係)と等しくなる(条件A)。

同様に、被測定信号Fxに遅延を施すことなくFDSM(j)に入力し、基準信号Fcに遅延を施した出力基準信号FcjをFDSM(j)に入力する場合でも、基準信号Fcに遅延を施さずに入力した場合に比べ、出力データOUTjの繰り返しパターンとその周期は変わらないが、繰り返しパターンの開始位置がずれる。遅延を施す前後での出力の繰り返しパターンの開始位置を比べると、基準信号Fcに施す遅延量が増えるに従って繰り返しパターンの開始位置がステップ状に変化する。基準信号Fcに施す遅延量が基準信号FcのKb周期(Kbは自然数)と等しくなるとき、被測定信号Fxと出力基準信号Fcjとの相対位相関係は遅延を施す前(被測定信号Fxと基準信号Fcとの相対位相関係)と等しくなる(条件B)。

ここで、条件Aと条件Bのいずれかを満たす遅延量のうち、最小の遅延量τは、被測定信号Fxの1周期と基準信号Fcの1周期のうち短い方の周期に等しく、被測定信号Fx又は基準信号Fcに施す遅延量をτだけ増加させたときの相対位相関係は遅延を施す前の状態と等しくなる。条件Aと条件Bのいずれかを満たす遅延量になると、出力データOUTjの繰り返しパターンの開始位置が遅延を施さない場合と一致する。アイドルトーンを分散させるためには、繰り返しパターンの開始位置をずらす必要がある。

そこで、被測定信号Fxと基準信号Fcの周波数のうち高い周波数を持つ方の信号に対し、その信号の1周期に等しい遅延量τをn分割するように遅延を施して並列化することで、被測定信号Fxと基準信号Fcとの並列間での相対位相関係を分散させることができ、それにより繰り返しパターンの開始位置がずれることで、n並列のFDSM(1)〜FDSM(n)の出力データOUT1〜OUTn間でのアイドルトーンの位相関係は分散する。

次に、被測定信号Fxと基準信号Fcとの相対位相関係と、相対位相関係が等しくなる遅延量をTとしたとき、Tをn分割するように被測定信号Fxに遅延を施し並列化しても、被測定信号Fxには遅延を施さずTをn分割するように基準信号Fcに遅延を施し並列化しても、n並列のFDSM(1)〜FDSM(n)の出力データOUT1〜OUTn間でのアイドルトーンの位相関係を分散させるという効果は同じであることを説明する。

基準信号Fcをδだけ遅延を施した信号をFDSM(j)に入力した場合と、基準信号Fcを遅延させずに被測定信号Fxをδだけ先行させた信号をFDSM(j)に入力する構成とした場合を比べても、出力被測定信号Fxjと出力基準信号Fcjとの相対位相関係は変わらない。このことから、基準信号Fcをδだけ遅延を施した出力基準信号FcjをFDSM(j)に入力する代わりに、基準信号Fcに遅延を施さずに被測定信号Fxをδだけ先行させた出力被測定信号FxjをFDSM(j)に入力すると考えても、出力データOUTjのデータ列を議論する上では差し支えない。

一方で、出力被測定信号Fxjと出力基準信号Fcjとの相対位相関係が等しくなる先行量は遅延量Tに等しいので、遅延量もしくは先行量を変数とすると、出力被測定信号Fxjと出力基準信号Fcjとの相対位相関係は周期Tを持つ、と言える。 ここで、先行量Tをn分割するように先行させた出力被測定信号Fx1〜FxnをFDSM(1)〜FDSM(n)に入力して並列化しても、遅延量Tをn分割するように遅延を施した出力被測定信号Fx1〜FxnをFDSM(1)〜FDSM(n)に入力して並列化しても、相対位相関係が等しくなる周期T内で出力被測定信号と出力基準信号の相対位相関係を分散させていることに変わりはない。

このことから、「Tをn分割するように基準信号Fcに遅延を施す」→「Tをn分割するように被測定信号Fxを先行させる」→「Tをn分割するように被測定信号Fxに遅延を施す」のどれを考えても相対位相関係を分散させていることに変わりないことが解る。このことは被測定信号Fxと基準信号Fcを置き換えても成立する。

以上より、Tをn分割するように被測定信号Fxに遅延を施し並列化しても、被測定信号Fxには遅延を施さずTをn分割するように基準信号Fcに遅延を施し並列化しても、n並列のFDSM(1)〜FDSM(n)の出力データOUT1〜OUTn間でのアイドルトーンの位相関係を分散させるという効果は同じであると言える。

ここで、出力被測定信号Fxjと出力基準信号Fcjとの相対位相関係が等しくなる遅延量Tとして、被測定信号FxのKa周期(Kaは自然数)、又は基準信号FcのKb周期(Kbは自然数)のいずれかと等しくなるように選ぶことができるが、大きな遅延量(Kaが2以上又はKbが2以上)を設定する際はアイドルトーンの位相関係の分散に偏りが生じる場合があるので注意が必要となる。なお、アイドルトーンの位相関係の分散に偏りが生じない一般的な条件については後述する。

Tより小さい周期性を考慮しなくともよいよう、出力被測定信号Fxjと出力基準信号Fcjとの相対位相関係が等しくなる遅延量のうち最小のものをTに選べば都合がよい。すなわち、被測定信号Fxの周波数fxと基準信号Fcの周波数fcのうち周波数が高い方の1周期と等しくなるよう遅延量Tを決め、これをn分割するように遅延を施し並列化すればよい。図9の例のように周波数fxが周波数fcより高い場合、その遅延量は被測定信号Fxの1周期をn分割するように設定し、被測定信号Fx又は基準信号Fcに遅延を施して並列化することで、出力データOUT1〜OUTn間でのアイドルトーンの相対位相関係は分散し、出力データOUT1〜OUTnの合算値においては相殺効果を利用することができる。遅延信号同士の位相差は最小の位相差として最大値を確保できる均等遅延が好適であり、このときに最大の分散効果を得る。

<1−4−1:被測定信号Fxの周波数fxが基準信号Fcの周波数fcより高い場合> 図2に示す出力被測定信号Fxjと出力基準信号Fcjにおいて、これらの相対位相関係が等しくなる最小の遅延量は「fx>fc」より被測定信号Fxの1周期に等しい21μSである。n=4とした場合、アイドルトーン分散装置1Aは図8のように構成することができる。ここで、遅延回路DLx1〜DLx3の遅延量は21/4μSとなる。図8に示すアイドルトーン分散装置1Aのタイミングチャートを図9に示す。同図に示すように出力データOUT1〜OUT4のパターンは分散されるので、周波数デルタシグマ変調信号Yは、アイドルトーンが分散されたものとなる。

<1−4−2:基準信号Fcの周波数fcが被測定信号Fxの周波数fxより高い場合> 次に、基準信号Fcの周波数fcが被測定信号Fxの周波数fxより高い場合について説明する。n=4とした場合、アイドルトーン分散装置1Aは図10のように構成することがきる。 FDSM(j)(jはn以下の自然数)の動作は、図2の例に対して周波数関係を入れ替え、被測定信号Fxとして1周期66μSの信号(15.15kHz)を、基準信号Fcとして1周期21μSの信号(47.619047kHz)を考える。被測定信号Fxと基準信号Fcとの周波数の比[fx:fc]は、次式で与えられる。 fx:fc=1/66e−6:1/21e−6=7:22 となることから、被測定信号Fxの7周期と基準信号Fcの22周期の時間が等しく、66μS×7=21μS×22=462?Sごとに同じデータ列が繰り返されることがわかる。FDSM(j)の動作としては、図11に示すように、出力基準信号Fcjと出力被測定信号Fxjの立ち上がりエッジが一致した瞬間を起点とすると、出力基準信号Fcjが1周期進む間に出力被測定信号Fxjは7/22周期だけ進むことになり、カウントデータDcは0又は1だけ増加する。

この場合、FDSM(j)の出力データOUTjには、図12に示すように、462μS周期のデータ列「0100100100100100100100」が出現する。尚、図12のFDSM(j)も動作開始時の第1ラッチ22及び第2ラッチ23の出力が不定のため、最初の462μSのデータ列が一巡した次の二巡目のデータ列を示している。

被測定信号Fxより周波数の高い基準信号Fcの1周期は21μSであるので、図10に示す遅延回路DLc1〜DLc3の遅延量は21/4μSとなる。図10に示すアイドルトーン分散装置1Aのタイミングチャートを図13に示す。同図に示すように出力データOUT1〜OUT4のパターンは分散されるので、周波数デルタシグマ変調信号Yは、アイドルトーンが分散されたものとなる。これに対して、図10に示すアイドルトーン分散装置1Aから位相調整部10を削除した図5に示す装置のタイミングチャートは図14に示すものとなる。この場合は、アイドルトーンが分散されずSNRを改善することができない。

第1実施形態のアイドルトーン分散装置1Aは、FDSM(1)〜FDSM(n)は、データストリーム形式の出力データOUT1〜OUTnを生成する。また、上述したように位相調整部10は、被測定信号Fxの1周期と基準信号Fcの1周期とのうち短い周期をTxとすると、被測定信号Fxと基準信号Fcとのうち一方を、Tx/nだけ順次遅延して出力被測定信号Fx1〜Fxnと出力基準信号Fc1〜Fcnとを生成する。

ここで、アイドルトーンの周期は、被測定信号Fxの1周期と基準信号Fcの1周期とに応じて定まるが、Txを下回ることはない。一方、出力データOUT1〜OUTnの各々に重畳するアイドルトーンの位相は、FDSM(1)〜FDSM(n)に供給されるn組の出力被測定信号及び出力基準信号(Fx1,Fc1)、(Fx2,Fc2)、…(Fxn,Fcn)の位相によって定まる。上述したように被測定信号Fxと基準信号Fcとうち一方を、Tx/nだけ順次遅延すれば、出力データOUT1〜OUTnの各々に重畳するアイドルトーンの位相をTx/nずつずらすことができ、出力データOUT1〜OUTnの各々に重畳するアイドルトーンの位相を分散させることができる。

また、図7(A)〜(D)を参照して説明したように、遅延の施し方には各種の態様がある。アイドルトーンの位相はFDSMに供給される出力被測定信号及び出力基準信号の位相によって定まるので、出力データOUT1〜OUTnに重畳するアイドルトーンの位相をTx/nずつずらすように被測定信号Fxと基準信号Fcとの位相を相対的に調整して、n組の出力被測定信号及び出力基準信号(Fx1,Fc1)、(Fx2,Fc2)、…(Fxn,Fcn)を生成すればよい。

具体的には、i(iはn−1以下の任意の自然数)番目のFDSM(i)に供給する出力被測定信号Fxiと出力基準信号Fciとの位相差をPiとしたとき、位相調整部10は、Tx/n=Pi+1−Piとなるように、被測定信号Fxと基準信号Fcとの位相を相対的に調整して、n組の出力被測定信号及び出力基準信号(Fx1,Fc1)、(Fx2,Fc2)、…(Fxn,Fcn)を生成すればよい。

また、第1実施形態に係るアイドルトーン分散装置1Aでは、被測定信号Fxと基準信号Fcとを入れ替えても、カウントする信号とカウントされる信号が逆転するだけで、n並列のFDSM(1)〜FDSM(n)それぞれに対応するアイドルトーンの位相を分散させるという効果は損なわれないため、構成を変更する必要は無い(例えば、周波数計測装置における通常のカウント構成をレシプロカル構成で使うとき等)。これに対して、非特許文献2の技術では被測定信号の1周期(半周期)を基準として被測定信号に遅延を施す構成となることから、被測定信号と基準信号を入れ替える際には、遅延量を変更する必要がある。

<2.第2実施形態> <2−1:全体構成> 上述した第1実施形態の第1実施形態のアイドルトーン分散装置1Aは、データストリームに対応するものであった。これに対して、第2実施形態のアイドルトーン分散装置1Bは、ビットストリームに対応するものである。 図15に第2実施形態に係るアイドルトーン分散装置1Bのブロック図を示す。アイドルトーン分散装置1Bは、FDSM(1)〜FDSM(j)の詳細な構成を除いて、図1に示すアイドルトーン分散装置1Aと同様に構成されている。

FDSM(j)は、出力基準信号Fcjの立ち上がりエッジに同期して出力被測定信号Fxjをラッチして第1データd1を出力する第1ラッチ22と、出力基準信号Fcjの立ち上がりエッジに同期して第1データd1をラッチして第2データd2を出力する第2ラッチ23と、第1データd1と第2データd2の排他的論理和を演算して出力データOUTjを生成する排他的論理和回路25とを備える。第2実施形態の第1ラッチ22及び第2ラッチ23は、例えばDフリップフロップ回路で構成される。なお、FDSM(1)〜FDSM(j−1)とFDSM(j+1)〜FDSM(n)とは、FDSM(j)と同様に構成されている。

第2実施形態のFDSM(j)が図1に示す第1実施形態のFDSM(j)と相違するのは、第1実施形態では、第1ラッチ22によってカウントデータDcを保持し、出力基準信号Fcjが1周期推移する間に観測される出力被測定信号Fxjの立ち上がりエッジをカウントして得たカウントデータDcの増分を出力データOUTjとして出力するのに対し、第2実施形態では、第1ラッチ22によって出力被測定信号FxjのHighもしくはLowの状態を保持し、出力基準信号Fcjが1周期推移する間の反転回数の偶奇を出力データOUTjとして出力する点である(反転回数が偶数であれば0、奇数であれば1を出力する)。

ところで、出力被測定信号Fxjの1周期はHighとLowの反転遷移2回で構成されることから、出力基準信号Fcjに対する出力被測定信号Fxjの変動が、出力データOUTjに及ぼす変化の度合いは、図1のカウント値を保持する場合に比べ2倍となる。従って、ビットストリーム構成のFDSM(j)におけるアイドルトーンの振る舞いは、図1のFDSM(j)において、2倍の周波数の出力被測定信号FxjがFDSM(j)に入力された場合の振る舞いと一致する。第2実施形態におけるFDSM(j)の動作については、上記の性質を考慮し、必要に応じて被測定信号Fxの周波数fxを周波数2fxに置き換えて考えればよい。

<2−2:周波数2fxが周波数fcより高い場合> 次に、周波数2fx(被測定信号Fxに対応)が基準信号Fcの周波数fcより高い場合を説明する。被測定信号Fxとして1周期21μSの信号(47.619047kHz)を考える。また基準信号Fcとして1周期66μSの信号(15.15kHz)を考える。被測定信号Fxの1周期はHighとLowの反転遷移2回で構成されるので、以下では周波数fxの2倍の値を扱う。これは、被測定信号Fxの2倍の周波数2fxが基準信号Fcの周波数fcより高い場合に該当し、周波数の比2fx:fcは、次式で与えられる。 2fx:fc=2/21e−6:1/66e−6=44:7 この場合、被測定信号Fxが44回反転遷移する時間と基準信号Fcの7周期の時間が等しい。つまり、21/2μS×44=66μS×7=462μSごとに同じデータ列が繰り返される。

このときのFDSM(j)の動作について考えてみると出力基準信号Fcjが1周期進む間に出力被測定信号Fxjは44/7=6+2/7回だけ反転遷移することになる。これらの関係を出力基準信号Fcjと出力被測定信号Fxjの立ち上がりエッジが一致する場合を起点として表すと図16になる。

実際のFDSM(j)の出力データOUTjのデータ列には図17に示すように「0100100」のビット列が462μS周期で出現することになる。尚、図15のFDSM(j)は動作開始時の第1ラッチ22及び第2ラッチ23の出力が不定のため、図17は最初の462μSの周期が一巡した次の二巡目の繰り返しパターンを示している。

「2fx>fc」であり、ビットストリーム対応のFDSM(j)の振る舞いは、図1に示すデータストリーム対応のFDSM(j)において被測定信号Fxの2倍の周波数の信号がFDSM(j)に入力された場合の振る舞いと一致することから、被測定信号Fxの半周期を基準としてこれを分割するように遅延を施せばよい。

n=4とした場合、図8に示す構成を適用すればよい。ここで、遅延回路DLx1〜DLx3の遅延時間は、被測定信号Fxの半周期を4等分した時間(21/8μS)とすればよい。この場合、タイミングチャートは図18に示すものとなり、出力データOUT1〜OUT4の繰り返しパターンの開始位置がずれるため、アイドルトーンが分散される。 仮に、被測定信号Fxに遅延を施さず、図5に示すように、単に4個のFDSM(1)〜FDSM(4)を並列化したとすると、そのタイミングチャートは図19に示すものとなる。この場合は、出力データOUT1〜OUT4の繰り返しパターンの開始位置が一致するため、周波数デルタシグマ変調信号YのSNRを改善することができない。

<2−3:周波数fcが周波数2fxより高い場合> 次に、基準信号Fcの周波数fcが被測定信号Fxの2倍の周波数2fxより高い場合について説明する。 FDSM(j)(jはn以下の自然数)の動作は、図16の例に対して周波数関係を入れ替え、被測定信号Fxとして1周期66μSの信号(15.15kHz)を、基準信号Fcとして1周期21μSの信号(47.619047kHz)を考える。被測定信号Fxの1周期はHighとLowの反転遷移2回で構成されるので、以下では周波数fxの2倍の値を扱う。これは、基準信号Fcの周波数fcが被測定信号Fxの2倍の周波数2fxより高い場合に該当し、周波数の比2fx :fcは、次式で与えられる。 2fx:fc=2/66e−6:1/21e−6=7:11 このことから、被測定信号Fxの7周期と基準信号Fcの11周期の時間が等しく、66/2μS×7=21μS×11=231?Sごとに同じデータ列が繰り返されることになる。FDSM(j)の動作としては、図20に示すように、出力基準信号Fcjと出力被測定信号Fxjの立ち上がりエッジが一致した瞬間を起点とすると、出力被測定信号Fxjが1周期進む間に出力基準信号Fcjは7/22周期だけ進むことになり、7/22×2=7/11回だけ反転遷移することになる。

この場合、FDSM(j)の出力データOUTjには、図21に示すように、231μS周期のビット列「01101101101」が出現する。尚、図21のFDSM(j)も動作開始時の第1ラッチ22及び第2ラッチ23の出力が不定のため、最初のビット列が一巡した次の二巡目のビット列を示している。

n=4とした場合、図10に示す構成を適用すればよい。ここで、遅延回路DLc1〜DLc3の遅延時間は、基準信号Fcの1周期を4等分した時間(21/4μS)とすればよい。この場合、タイミングチャートは図22に示すものとなり、出力データOUT1〜OUT4の繰り返しパターンの開始位置がずれるため、アイドルトーンが分散される。

仮に、被測定信号Fxに遅延を施さず、図5に示すように、単に4個のFDSM(1)〜FDSM(4)を並列化したとすると、そのタイミングチャートは図23に示すものとなる。この場合は、出力データOUT1〜OUT4の繰り返しパターンの開始位置が一致するため、周波数デルタシグマ変調信号YのSNRを改善することができない。

第2実施形態におけるビットストリームに対応したアイドルトーン分散装置1Bでは絶対周波数を取得することはできないので、片方または両方の周波数が未知の場合、その判定は別途設けた周波数カウンタなどで粗く測定を行う必要性もありえるが、実際のアプリケーションにおいては周波数カウンタの動作周波数の規定などもあり、全く未知の周波数を測定することは考えにくい。例えば、10MHzの基準信号Fcを用いて、26MHzの晶センサの周波数を計測するようなシステムを考える場合には、両者周波数の高低関係は敢えて測定するに及ばないことは明らかである。

第2実施形態のアイドルトーン分散装置1Bにおいて、FDSM(1)〜FDSM(n)は、ビットストリーム形式の出力データOUT1〜OUTnを生成する。また、上述したように位相調整部10は、被測定信号Fxの半周期と基準信号Fcの1周期とのうち短い周期をTxとすると、被測定信号Fxと基準信号Fcとのうち一方を、Tx/nだけ順次遅延して出力被測定信号Fx1〜Fxnと出力基準信号Fc1〜Fcnを生成する。

第2実施形態のアイドルトーン分散装置1Bも、第1実施形態のアイドルトーン分散装置1Aと同様に、位相調整部10は、出力データOUT1〜OUTnに重畳するアイドルトーンの位相をTx/nずつずらすように被測定信号Fxと基準信号Fcとの位相を相対的に調整して、n組の出力被測定信号及び出力基準信号(Fx1,Fc1)、(Fx2,Fc2)、…(Fxn,Fcn)を生成すればよい。

具体的には、i(iはn−1以下の任意の自然数)番目のFDSM(i)に供給する出力被測定信号Fxiと出力基準信号Fciとの位相差をPiとしたとき、位相調整部10は、Tx/n=Pi+1−Piとなるように、被測定信号Fxと基準信号Fcとの位相を相対的に調整して、n組の出力被測定信号及び出力基準信号Fx1,Fc1)、(Fx2,Fc2)、…(Fxn,Fcn)を生成すればよい。

<3.第3実施形態> 第3実施形態では、上述した第1実施形態及び第2実施形態で説明したアイドルトーンを分散する方法の拡張について説明する。 <3−1:遅延時間のずれについて> 上述した第1実施形態及び第2実施形態では、出力被測定信号Fxjと出力基準信号Fcjの相対位相関係を分散させることで、n並列のFDSM(1)〜FDSM(n)の出力データOUT1〜OUTn間でのアイドルトーンの相対位相関係を分散させ、周波数デルタシグマ変調信号YのSNRを改善した。

具体的には、被測定信号Fxの周波数fx又はその2倍の周波数2fxと、基準信号Fcの周波数fcのうち、周波数が高い信号の1周期τ(ビットストリームの場合、2fx>fcであれば半周期をτとする)を基準とし、これをn分割するように遅延を施すことにより、出力データOUT1〜OUTn間でのアイドルトーンの相対位相関係は効率よく分散させた。出力被測定信号Fxjと出力基準信号Fcjとの位相差をPjとしたとき、Pj−1=Pjとなる均等遅延が好適であり、アイドルトーンを最も分散させることができる。

ここでは、Pj−1とPjとが不一致となる場合について検討する。基準となる量をDとし、Dをn分割するよう遅延を施す際に、Dが、被測定信号Fxと基準信号Fcのうち周波数が高い方(周期が短い方)の信号の1周期Txと一致しない場合の効果について説明する。

DがTxからずれる場合、n並列のFDSM(1)〜FDSM(n)の出力データOUT1〜OUTn間でのアイドルトーンの位相関係の分布は偏ることになり最大の分散効果は得られない。しかし、全てが同相となる特殊な事例以外はアイドルトーンが相応に分散するのでアイドルトーンの抑圧効果が全く無くなることはなく、一定の効果が得られる。例えば、図24に被測定信号Fxの1.5周期をDとしてこれを4等分に分割した例を示す。この場合、アイドルトーン分散装置1Aは図8に示す構成となる。遅延回路DLx1〜DLx3の遅延時間は、次式で与えられる。 Tx×3/2×1/4=3Tx/8

図24に示すように、被測定信号Fxの1周期目に出力被測定信号Fx1〜Fx4が3/8×Txずつ遅れて立ち上がるが、出力被測定信号Fx4が立ち上がるのは被測定信号Fxの2周期目に入って1/8×Txだけ遅れたタイミングである。この1周期を超えた立ち上がりエッジは1周期差し引いて考える必要がある。つまり、被測定信号Fxの1.5周期を均等に4分割しても、実際には0、1/8、3/8、6/8と不均等となってしまい、最大の分散効果は得られないが、一定の効果は得られる。 また、図25は被測定信号Fxの2周期を2等分に分割した例である。この場合は被測定信号Fxの2周期目以降では出力被測定信号Fx1と出力被測定信号Fx2の立ち上がりエッジは同時に発生する。つまり、FDSM(1)とFDSM(2)との間の位相ずれはなくなってしまい図6の例と同様にアイドルトーンの位相関係は分散せず、アイドリングトーンの抑圧効果はなくなってしまう。

このように、Dをn分割するよう遅延を施す際に、DがTxからずれると、アイドルトーンの分散効果は次第に減少し、遅延量がTxと一致するとアイドルトーンの分散効果は無くなってしまう。しかしながら、DがTxから多少ずれて。遅延量がTx/n+Δとなっても、遅延量がTxと一致する場合と比較して、出力データOUT1〜OUTnに重畳するアイドルトーンの位相を分散させることができ、周波数デルタシグマ変調信号Yの量子化雑音を抑圧することができる。従って、遅延量は必ずTx/nと一致する必要はない。

<3−2:アイドルトーンの位相の分散に偏りが生じない一般的な条件について> 次に、アイドルトーンの位相の分散に偏りが生じない一般的な条件について検討する。基準となる量Dをn等分するよう遅延を施そうとしたとき、アイドルトーンの位相関係の分散に偏りが生じる場合について、Dとnとの一般的な関係について説明する。 A,Bを実数とし、Bと基底としたMODφという演算子を次式で定義する。 A MODφ B≡A-kB(kはA≧kBを満たす整数のうち最大のもの) この場合、n並列のi番目の出力被測定信号Fxiに対する被測定信号Fxの相対的な位相差φiは、以下に示す式1で与えられる。 φi+1=(φi+D/n)MODφ T……(式1) 但し、Tは被測定信号Fx又は基準信号Fcの1周期であり、φ1=0としている。

i+1番目のFDSM(i+1)に供給する出力被測定信号Fxi+1の立ち上がりエッジとi番目のFDSM(i)に供給する出力被測定信号Fxiの立ち上がりエッジの時間差をD/nとしたとき、D/nは遅延回路の遅延時間となる。例えば、位相調整部10が図7(B)に示す構成である場合、D/nは遅延回路DLx1〜DLxn−1の各遅延時間となる。

一方、位相差φiは出力被測定信号Fxiに対する被測定信号Fxの相対的な位相差である。このため、D/nがaT+X(aは0以上の任意の整数、Xは0

1=0)、被測定信号Fxを22μSだけ遅延したものが出力被測定信号Fx2となり、出力被測定信号Fx1をさらに22μSだけ遅延したものが出力被測定信号Fx3となる。 ここで、出力被測定信号Fx2は被測定信号Fxを22μSだけ遅延したものとなるが、位相差φ2は2μSとなる。このため、φ2+ D/nは24μSとなり、(φ2+D/n) MODφ Tは、24μS MODφ 20μS=4μS=位相差φ3となる。

一方、yiを非負の整数、b,Mを自然数とし、(mod M)をMで割った剰余を与える演算子とすると、疑似乱数発生アルゴリズムとして知られている線形合同法の性質より、以下に示す式2で与えられる数列yiの周期がMよりも短くなるのは、bとMが2以上の公約数を持つ場合であることが知られている。 yi+1=(yi+b)mod M……(式2) 例えば、b=9、M=6とすれば、bとMの公約数は3となり、2以上の公約数を持つことになる。この場合、数列yjは、「0,3,0,3,0,3,…」となり、その周期は2(

ここで、y0が非負の実数である場合にはyiも非負の実数となるが、初期値が異なるだけで周期は変わらないと言える。従ってy0が非負の実数である場合に拡張しても、周期がMよりも短くなるのは、bとMが2以上の公約数を持つ場合であることに変わりない。 また、数列φiの代わりにこれをn/T倍した数列nφi/Tの性質を考えることにしても、数列の周期は保存される。加えて、式1に含まれるMODφ Tの基底Tの部分を自然数に置き換えることができ、MODφをmodに置き換えることができる。すなわち式1の両辺をn/T倍することで、式1は以下に示す式3に変形できる。 nφi+1/T=(nφi/T+D/T)mod n……(式3) 式3で与えられる数列nφi/Tと式1で与えられる数列φiの周期は変わらない。

線形合同法の性質より、式3で与えられるnφi/Tの数列において、D/Tが整数であり、D/Tとnが2以上の公約数を持つ場合、数列nφi/Tの周期(数列φiの周期と同じ)はnより短くなる。nはFDSMの並列数であるので、数列φiの周期がnより短くなると、n並列のFDSM(1)〜FDSM(n)に供給される出力被測定信号Fx1〜Fxnのうち、被測定信号Fxとの位相差が同じになるものが存在することになる。この場合、アイドルトーンの位相関係の分散に偏りが生じる。

従って、D/Tが整数となる場合でも、D/Tとnが互いに素となるようにDとnを選ぶことが望ましい。また、一般には、mD/nTが整数となる場合でも、mD/nTとm(mはn以下の任意の自然数)について互いに素となるようにDとnを選ぶことが望ましい。mD/nT が整数であり、mD/nTとmが互いに素とならない場合、mD/nTとmの最大公約数をgとすると、アイドルトーンの位相関係の分散にm/g回で一巡する周期が生じているからである。

以上の説明では、被測定信号FxをD/nずつ順次遅延して出力被測定信号Fx1〜Fxnを生成し、基準信号Fcを出力基準信号Fc1〜Fcnとして出力することとしたが、基準信号FcをD/nずつ順次遅延して出力基準信号Fc1〜Fcnを生成し、被測定信号Fxを出力被測定信号Fx1〜Fxnとして出力しても同じである。すなわち、位相調整部10は、被測定信号Fxと基準信号Fcとのうち一方の信号をn個のFDSM(1)〜FDSM(n)に供給し、被測定信号Fxと基準信号Fcとのうち他方の信号を複数の遅延回路を用いて遅延してn個のFDSM(1)〜FDSM(n)に供給する。

さらに、被測定信号Fx及び基準信号Fcに遅延を施して出力被測定信号Fx1〜Fxnと出力基準信号Fc1〜Fcnとを生成してもよい。すなわち、出力被測定信号Fxiと出力基準信号Fciとの位相差をPiとしたとき、位相調整部10は、D/n=Pi+1−Piとなるように、被測定信号Fxと基準信号Fcとの位相を相対的に調整して、出力被測定信号Fx1〜Fxnと出力基準信号Fc1〜Fcnとを生成すればよい。

被測定信号Fx及び基準信号Fcのどちらの1周期をTに代入しても、mD/nTが整数となる場合は、mD/nTとmが互いに素となるようにDとnを選ぶことが望ましいが、上述した第1実施形態及び第2実施形態では、被測定信号Fx及び基準信号Fcのうち周波数が高い方の信号の1周期と等しくなるようにDを選びこれをn分割するよう遅延を施す構成とすることで自動的に満たされる。

<3−3:被測定信号と基準信号との周波数の比較について> 上述した第1実施形態及び第2実施形態においては、被測定信号Fxの1周期(第2実施形態実施では半周期)と基準信号Fcの1周期のうち短い方をTx、i番目のFDSM(i)に供給する出力被測定信号Fxiと出力基準信号Fciとの位相差をPiとしたとき、位相調整部10は、Tx/n=Pi+1−Piとなるように、n組の出力被測定信号及び出力基準信号(Fx1,Fc1)、(Fx2,Fc2)、…(Fxn,Fcn)を生成した。予め被測定信号Fxの大まかな周波数と基準信号Fcの周波数とが既知である場合には、位相調整部10を構成する遅延回路の遅延時間を予め決定することができる。しかしながら、被測定信号Fx及び基準信号Fcの周波数が未知である場合には、決定することができない。

そこで、上述した第1実施形態(第2実施形態)のアイドルトーン分散装置1A(1B)を図27に示す。同図に示すようにアイドルトーン分散装置1A(1B)は、比較部50を備える。比較部50は、被測定信号Fxの周波数fxと基準信号Fcの周波数fcとを比較して比較結果を示す制御信号CTLを生成する。位相調整部10は、制御信号CTLに基づいて、被測定信号Fxと基準信号Fcとの位相を相対的に調整して、n組の出力被測定信号及び出力基準信号(Fx1,Fc1)、(Fx2,Fc2)、…(Fxn,Fcn)を生成する。

より具体的には、FDSM(1)〜FDSM(n)が第1実施形態のようにデータストリーム形式の出力データOUT1〜OUTnを生成する場合、比較部50は、周波数fxと周波数fcとのどちらが高いか(あるいは低いか)を示す制御信号CTLを生成する。一方、FDSM(1)〜FDSM(n)が第2実施形態のようにビットストリーム形式の出力データOUT1〜OUTnを生成する場合、比較部50は、周波数2fxと周波数fcとのどちらが高いか(あるいは低いか)を示す制御信号CTLを生成する。

位相調整部10は、制御信号CTLに基づいて、遅延回路の遅延時間を制御する。例えば、基準信号Fcの周波数fcが5MHz(1周期は200nS)であり、被測定信号Fxとして周波数fxが100kHz(1周期は50nS)と20MHz(1周期は50nS)となる水晶発振器の出力信号を想定する。出力データOUT1〜OUTnがデータストリーム形式の場合、fx=100kHzであれば、位相調整部10は、遅延回路の遅延時間が200nS/nとなるように遅延回路の遅延時間を制御し、fx=20MHzであれば、遅延回路の遅延時間が50nS/nとなるように遅延回路の遅延時間を制御する。一方、出力データOUT1〜OUTnがビットストリーム形式の場合、fx=100kHzであれば、位相調整部10は、遅延回路の遅延時間が200nS/nとなるように遅延回路の遅延時間を制御し、fx=20MHzであれば、遅延回路の遅延時間が25nS/nとなるように遅延回路の遅延時間を制御する。 このように比較部50を用いて位相調整部10を制御することによって、アイドルトーン分散装置1A(1B)に供給する被測定信号Fxの周波数範囲を拡大することができる。

<4.実施例> 上述した第2実施形態のアイドルトーン分散装置1Bの効果は、並列数が「100」、「1000」などの場合に顕著に表れる。実施例では、図15に示すアイドルトーン分散装置1Bを用いてn=100とし、周波数デルタシグマ変調信号YをFFT解析した。 次に、比較例1では、1個のFDSMの出力データをFFT解析した。また、非特許文献2には、被測定信号Fxの半周期をn等分するように被測定信号Fxに遅延を施して、FDSMをn並列する構成が開示されている。これを、比較例2として、周波数デルタシグマ変調信号YをFFT解析した。

被測定信号Fxとして、搬送波の中心周波数80kHz、変調周波数30kHz、変調幅±5kHzで変調した信号を周波数シンセサイザで生成し、周波数2MHzの基準信号Fcを用意した。 実施例では、被測定信号Fxの中心周波数の2倍(160kHz)よりも基準信号Fcの周波数(2MHz)が高いことから、基準信号Fcの1周期である1/2e+6Sを100等分するように被測定信号Fxに遅延を施した。一方、比較例2では、被測定信号Fxの中心周波数の半周期である1/160e+3Sを100等分するように被測定信号Fxに遅延を施した。

実施例のFFT解析結果を図28に、比較例1のFFT解析結果を図29に、比較例2のFFT解析結果を図30に示す。図30に示す非特許文献2の構成に対応する比較例2に対して、実施例では、アイドルトーン(量子化誤差)に起因するピーク成分が抑圧され、SNRは20〜40dB程度改善した。

被測定信号Fxの2倍の周波数2fxと基準信号Fcのうち周波数が高い方(周期が短い方)の信号の1周期をτ、基準となる量をDとし、Dをn分割するよう遅延を施しビットストリーム対応のn並列のFDSM(1)〜FDSM(n)を考えたとき、D/Tが整数となる場合でも、D/Tとnが互いに素、一般にはmD/nTとm(mはn以下の任意の自然数)について互いに素、となるようにDとnを選ぶことが設計上望ましいことを述べた。 ここでは、本願構成による100並列のFDSM、及び非特許文献2の構成による100並列FDSMについて、D/Tとnの関係について検討する。nはn=100となる。Tは基準信号Fcの1周期もしくは被測定信号Fxの半周期に等しい値である。被測定信号Fxは変調信号であることから周波数に幅を持つことになる(T=1/2e+6、1/170e+3〜1/150e+3)。

本願構成による100並列のFDSMのDはD=1/2e+6に設定したので、D/Tが整数となるのはT=1/2e+6のときに限られ、T=1/2e+6のときにD/Tは1となり、D/Tとnは2以上の公約数を持たないため、アイドルトーンの相対位相関係は効率よく分散する。 一方、非特許文献2の構成による100並列のFDSMのDはD=1/160e+3とした。T=1/2e+6としたとき、D/T=2e+6/160e+3=12.5となり整数とならないが、m=96のときに、mD/nT=12となり、12と96は公約数2,3,4,6,12を持つ。最大公約数が12であることから、アイドルトーンの相対位相関係の分散に96/12=8並列目で一巡する周期性が生じており、100並列のFDSMの出力間でのアイドルトーンの相対位相関係は効率よく分散するとは言えない。この場合の被測定信号Fxと基準信号Fcの位相関係をタイミングチャートで表したものを図31に示す。8並列目で一巡する周期が生じていることが、太字および太線で示した出力基準信号Fx1、Fx9、Fx97の関係から分かる。またm=96の96は、96÷8=12より、8並列目で一巡する周期の12周期目の最後が出力被測定信号Fx96であることに対応する。以上より、本願構成および非特許文献2の構成におけるアイドリングトーンの相対位相関係の分散のさせ方の差がSNR改善の程度の差となっている。

<5.応用例> 次に、上述した第1乃至第3実施形態及び実施例で説明したアイドルトーン分散装置を適用した周波数計測装置について説明する。 図32に、周波数計測装置100のブロック図を示す。この図に示すように周波数計測装置100は、アイドルトーン分散装置1A(1B)と周波数データ生成部40とを備える。周波数データ生成部40は、周波数デルタシグマ変調信号Yに基づいて、被測定信号Fxの周波数を示す周波数データDfを生成する。

周波数デルタシグマ変調信号Yが、第1実施形態で説明したデータストリームに対応するアイドルトーン分散装置1Aからの出力である場合、周波数デルタシグマ変調信号Yは被測定信号Fxの周波数fxと基準信号Fcの周波数fcとの比(fx/fc)を、量子化誤差を含んだ形で時間経過と共にデジタル信号列として出力するものである。一方、周波数デルタシグマ変調信号Yが、第2実施形態で説明したビットストリームに対応するアイドルトーン分散装置1Bからの出力である場合、周波数デルタシグマ変調信号Yは、被測定信号Fxの2倍の周波数2fxと基準信号Fcの周波数fcとの比(2fx/fc)を、量子化誤差を含んだ形で時間経過と共にデジタル信号列として出力するものである。

このため、周波数データ生成部40は、ローパスフィルタ41と、その出力をスケーリングして周波数データDfを生成するスケーリング部42を備える。周波数計測における時間分解能および周波数分解能はローパスフィルタ41の特性により定まる。ローパスフィルタ41としては、例えば、直近10サンプルの単純平均を行う移動平均フィルタを3つ配した3段移動平均フィルタを用いることができる。スケーリング部42は、ローパスフィルタ41の出力データ41aに補正係数を乗算して周波数データDfを生成する。例えば、周波数データ生成部40の前段にビットストリームに対応したアイドルトーン分散装置1Bが設けられており、被測定信号Fxの周波数fxが1MHz、基準信号Fcの周波数fcが2MHzとすると、2fx/fc=1となる。また、周波数デルタシグマ変調信号Yは被測定信号Fxの周波数fxに比例するので、補正係数は1Mとすればよい。

次に、周波数計測装置100の実施例と比較例とについて説明する。被測定信号Fxとして、搬送波の中心周波数80kHz、変調周波数30kHz、変調幅±5kHzで変調した周波数変調波を周波数シンセサイザで生成し、周波数fc=2MHzの基準信号Fcを用意した。 まず、実施例の周波数計測装置100は、ビットストリーム対応のアイドルトーン分散装置1Bを用い、並列数nを100とし、基準信号Fcの1周期である1/2e+6Sを100等分するように被測定信号Fxを順次遅延した出力被測定信号Fx1〜Fx100を生成し、FDSM(1)〜FDSM(100)に供給した。 次に、比較例の周波数計測装置は、非特許文献2に記載されたFDSMを100個並列化したものであり、被測定信号Fxの中心周波数の半周期である1/160e+3Sを100等分するように被測定信号Fxを順次遅延して並列化された100個のFDSMに供給するものである。

実施例の周波数計測結果を図33に示し、比較例の周波数計測結果を図34に示す。実施例は比較例と比べて、SNRが改善することが、実時間の周波数計測結果としても確認できた。

1A,1B…アイドルトーン分散装置、10…位相調整部、30…加算器、40…データ線、20…画像処理部、30…走査線駆動回路、40…周波数データ生成部、50…比較部、100…周波数計測装置、Fx…被測定信号、Fx1〜Fxn…出力被測定信号、Fc…基準信号、Fc1〜Fcn…出力基準信号、OUT1〜OUTn…出力データ、Y…周波数デルタシグマ変調信号。

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