【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、多数の押釦スイッチ用のキートップを1枚のフイルム板上に設けたキートップ板に関するものである。 【0002】 【従来技術】従来、1枚の樹脂製フイルム板上に多数のキートップを形成したキートップ板が利用されている。 図7はこの種の従来のキートップ板の使用例を示す分解斜視図である。 【0003】同図に示すようにこのキートップ板80はその上に外装ケース90を取り付け、その下に硬質基板95を取り付けて使用される。 ここでキートップ板80 は可撓性を有するフイルム板81の中に、多数のキートップ83を取り付けて構成されている。 このキートップ83はフイルム板81にモールド樹脂を成型することによって形成されている。 【0004】外装ケース90は硬質の合成樹脂板で、前記キートップ板80の各キートップ83に対向する位置に貫通孔91を設けて構成されている。 また硬質基板9 5はその上面の前記各キートップ83に対向する位置に金属ドーム状の可動接点97を設けて構成されている。 【0005】そしてこれら外装ケース90とキートップ板80と基板95を重ね合わせるが、このときキートップ板80と基板95にそれぞれ設けた貫通孔85,99 に外装ケース90の下面に設けた突起(図示せず)を挿入し、その先端を基板95の下面側で熱かしめする。 これによってこれら各部材は一体化される。 【0006】そして外装ケース90の貫通孔91から露出するキートップ83を指で押圧すれば、キートップ8 3下面に設けた押圧部(図示せず)が可動接点97を押圧してこれをオンする。 【0007】なおキートップ板80は可撓性があるので、たとえ外装ケース90が1方向に向かって凸又は凹状に湾曲していてもこれに容易に対応して同様に湾曲できる。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】ところで近年電子機器の中には外装ケースのキートップを取り付ける部分の表面形状を2方向に向かって凸又は凹状に湾曲させたもの、即ち3次元的な湾曲形状を有するものが登場している。 【0009】図5はこのような電子機器の一例にかかる携帯電話機100を示す斜視図である。 また図6は図5 に示す携帯電話機100のキートップ83部分の概略断面図であり、同図(a)は図5に示すC方向の断面図、 同図(b)は図5に示すD方向の断面図である。 【0010】両図に示すようにこの携帯電話機100の外装ケース103の表面には、プッシュホンダイヤル用等の多数のキートップ83が露出している。 【0011】そしてこの外装ケース103のキートップ83を取り付けた部分は横方向(C方向)に向かって凸状に湾曲しており、また縦方向(D方向)に向かって凹状に湾曲している。 【0012】そしてこの外装ケース103の形状に添うようにその裏面に図7に示す構造のキートップ板80を取り付けようとすると、該キートップ板80も図8に示すように、C方向に向かっては凸状に湾曲し、D方向(C方向と直交する方向)に向かっては凹状に湾曲するようにしなければならない。 【0013】しかしながらこのようにキートップ板80 のフイルム板81を湾曲することは不可能である。 何故ならC方向とD方向に同時に湾曲させようとすると、図8に示す2辺aとbは伸びなければならず、一方その中央部dは縮まなければならなくなるからである。 フイルム板81は伸ばしたり縮めたりすることができない。 【0014】一方この問題を解決するためには、前記キートップ板80全体をラバーで構成すれば良い。 キートップ板80としてラバーを用いれば、これを図8に示すように湾曲することが可能となる。 【0015】しかしながらキートップ板80としてラバーを用いた場合は、そのキートップ83部分もラバーで構成することとなるが、このキートップ83は軟らかく、いわゆるハードキーにならず、その押圧感覚が悪いという問題点があった。 またキートップ板80のコストが高くなるという問題点もあった。 【0016】本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、たとえ外装ケースの表面が異なる2方向に湾曲するように形成されていても、これに容易に対応できるハードキータイプのキートップ板を提供することにある。 【0017】 【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するため本発明は、可撓性を有する樹脂フイルムからなるフイルム板を具備し、該フイルム板の面の少なくとも異なる2方向に向かってそれぞれ複数個ずつのキートップを取り付け、且ついずれか一方の方向に向かって湾曲された状態で他の部材に取り付けられる構造の押釦スイッチのキートップ板において、前記キートップ板の湾曲されない方向に向かう複数個のキートップの内、少なくとも1 個のキートップのフイルム板からの高さを、他のキートップのフイルム板からの高さよりも高く或いは低くした。 【0018】また本発明は、可撓性を有する樹脂フイルムからなるフイルム板を具備し、該フイルム板の面の少なくとも異なる2方向に向かってそれぞれ複数個ずつのキートップを取り付け、且ついずれか一方の方向に向かって湾曲された状態で他の部材に取り付けられる構造の押釦スイッチのキートップ板において、前記キートップ板の所定位置を、該キートップ板を複数の部分に分割するように1本以上の連結部を残して切り欠き、該連結部の部分を境にしてキートップ板を折り曲げた。 【0019】また本発明は、可撓性を有する樹脂フイルムからなるフイルム板を具備し、該フイルム板の面の少なくとも異なる2方向に向かってそれぞれ複数個ずつのキートップを取り付け、且ついずれか一方の方向に向かって湾曲された状態で他の部材に取り付けられる構造の押釦スイッチのキートップ板において、前記各キートップの下面から突出する各押圧部のフイルム板からの高さを、該キートップ板を湾曲させた状態で各押圧部下面の位置がほぼ同一平面上に位置するようにその高さを異ならせしめた。 【0020】 【作用】このキートップ板を取り付ける外装ケースの表面形状が、異なる2方向に向かって湾曲または折り曲げられていても、キートップ板は一方の方向のみに向かって湾曲せしめるだけで良い。 他方の方向については、各キートップの高さを変化することによってその湾曲形状に対応するか、または連結部の部分で折り曲げることによって対応する。 【0021】またキートップの各押圧部のフイルム板からの高さを異ならせることで、このキートップ板の下に配置する基板を平面状にできる。 【0022】 【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。 図1は本発明の第1実施例にかかるキートップ板10を示す図であり、同図(a)は平面図、同図(b)は同図(a)のE−E断面図、同図(c)は同図(a)のF−F断面図である。 【0023】同図に示すようにこのキートップ板10 は、可撓性を有する熱可塑性の合成樹脂フイルム(例えばポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等)からなるフイルム板11を具備し、該フイルム板11の面の縦方向Gと横方向Hに向かってそれぞれ複数個ずつのキートップ13を取り付けて構成されている。 【0024】ここで各キートップ13は、フイルム板1 1を上方向に向かって湾曲せしめると同時に該湾曲部1 2の下面側凹部内にモールド樹脂15を充填固化せしめることによって該湾曲部12とモールド樹脂15を直接溶着一体化せしめることによって構成されている。 【0025】ここで図9はフイルム板11にキートップ13を形成する具体的方法を説明するための要部概略側断面図である。 同図に示すように、フイルム板11を上金型200と下金型250の間に挟み込む。 ここで上金型200にはキートップ13を形成するための凹部20 1が設けられており、また下金型250にはキートップ13の押圧部16を形成するための凹部251が設けられている。 また下金型250の凹部251には、ピンゲート253が設けられている。 【0026】そしてピンゲート253から高温・高圧にて熱可塑性の溶融モールド樹脂(例えばポリカーボネート樹脂)を圧入すれば、フイルム板11の凹部201に位置する部分が熱と圧力で引き延ばされながら押し上げられて変形し、点線で示すように凹部201の内面に密着して湾曲部12が形成され、同時に該凹部201と凹部251内に溶融樹脂が充填される。 【0027】ところでこのように樹脂フイルムを高温・ 高圧状態で引き延ばしながらこれに高温高圧のモールド樹脂を触れさせれば、該樹脂フイルムとモールド樹脂は何らの接着剤を用いなくても両者は一体に強固に融着されることが本発明者の各種実験によって見出されている。 【0028】従って前記フイルム板11の湾曲部12と圧入されたモールド樹脂15とは何らの接着剤なしに強固に融着され、剥がれることはない。 【0029】そして上下金型200,250を取り外せば、図1に示すキートップ板10が完成する。 【0030】ところで図1(c)に示すように、本発明にかかるキートップ板10の横方向Hに向かう各キートップ13の内、中央のキートップ13は、両側のキートップ13のフイルム板11からの高さL 1よりもその高さL 2を高く構成している。 【0031】一方キートップ板10の縦方向Gに向かう各キートップ13の高さは各列において、それぞれ同一の高さとされている。 つまり左側の列の各キートップ1 3と右側の列の各キートップ13の高さはいずれもL 1 で同一とされ、中央の列の各キートップ13の高さはL 2で同一とされている。 【0032】またキートップ13下面の押圧部16の高さは、同図(b)に示すように、各キートップ13の縦方向Gに向かって、それぞれフイルム板11からの高さが異ならされている。 一方該押圧部16の高さは、同図(c)に示すように、横方向Hに向かっては同一とされている。 【0033】次に図2は外装ケース20の裏面側に前記キートップ板10と基板30を取り付けた状態を示す図であり、同図(a)は平面図、同図(b)は同図(a) のK−K断面図、同図(c)は同図(a)のL−L断面図である。 【0034】同図に示すように、外装ケース20の表面は横方向Hには凸状に湾曲しており、同時に縦方向Gには凹状に湾曲している。 そしてこの外装ケース20の前記各キートップ13に対向する位置には多数の貫通孔2 1が設けられており、一方その下面側からは4本の突起23が突出されている。 【0035】次に基板30は平板状の硬質基板上に多数のスイッチ接点31を設けて構成されている。 各スイッチ接点31は前記各キートップ13の押圧部16に対向する位置に設けられており、該各スイッチ接点31の上には金属ドーム状の可動接点33が貼り付けられている。 【0036】そしてこれらを組み立てるには、まず外装ケース20の裏面側にキートップ板10を密着するように取り付ける。 このとき外装ケース20の突起23をキートップ板10に設けた孔17(図1(a)参照)に挿入する。 この状態で各キートップ13は外装ケース20 の各貫通孔21から表面に露出する。 【0037】次にキートップ板10の裏面側に、矩形状の枠状スペーサ25を取り付け、さらにその裏面側に基板30を取り付ける。 このとき外装ケース20の突起2 3を基板30に設けた孔35(図2(b)参照)に挿入してその先端を熱かしめし、これによってこれら各部材を一体に固定する。 これによってキートップ板10の外周は枠状スペーサ25によって外装ケース20の裏面に押し付けられるので、該キートップ板10は外装ケース20の裏面に密着する。 また各押圧部16は各可動接点33上に当接又は接近する。 そして各キートップ13を押圧すれば、その押圧部16が可動接点33を反転させると共に、その下のスイッチ接点31をオンする。 【0038】ところでこのとき、キートップ板10を構成するフイルム板11は縦方向Gには凹状に湾曲しているが、横方向Hには湾曲しておらず直線状である。 即ちフイルム板11の湾曲は1方向のみに向かって行われているのでその湾曲は容易に行える。 【0039】一方横方向Hにはフイルム板11は湾曲していないが、その分横方向Hに並ぶキートップ13の高さをその中央の列のもののみが高くなるように(高さL 2 )構成しており、これによって外装ケース20の横方向Hへの凸状の湾曲表面に対応することができる。 【0040】次に図3は本発明の第2実施例にかかるキートップ板40を示す図であり、同図(a)は平面図、 同図(b)は同図(a)のM−M断面図、同図(c)は同図(a)のN−N断面図である。 【0041】同図に示すようにこのキートップ板40 は、前記キートップ板10と同様に、可撓性を有する熱可塑性の合成樹脂フイルムからなるフイルム板41を具備し、該フイルム板41の面の縦方向Gと横方向Hに向かってそれぞれ複数個ずつのキートップ43を取り付けて構成されている。 そして各キートップ43は、前記キートップ13と同様に、フイルム板41を上方向に向かって湾曲せしめると同時に該フイルム板41の湾曲部4 2の下面側にモールド樹脂45を充填固化せしめることによって該湾曲部42とモールド樹脂45を直接溶着一体化せしめることによって構成されている。 なおモールド樹脂45の下面には押圧部46が設けられている。 【0042】このキートップ板40において前記キートップ板10と相違する点は、いずれのキートップ43のフイルム板41からの高さL 3も同一とした点と、そのほぼ中央位置に1本の連結部49を残して切り欠いた点である。 なお押圧部46の長さは必要に応じてキートップ43毎に異なっている。 【0043】次に図4は外装ケース50の裏面側に前記キートップ板40と基板60を取り付けた状態を示す図であり、同図(a)は図3に示すM−M部分の切断部に相当する側断面図、同図(b)は図3に示すN−N部分の切断部に相当する側断面図、同図(c)は図3に示すO−O部分の切断部に相当する側断面図である。 【0044】同図(b),(c)に示すように外装ケース50は、図3に示す横方向Hに向かって湾曲している。 この湾曲面は外装ケース50の上下全体にわたっている。 【0045】一方同図(a)に示すようにこの外装ケース50は、図3に示す縦方向Gに向かって直線状に形成されており、その略中央位置Pにおいて折り曲げられている。 なおこの折り曲げられた位置Pは、前記キートップ板40の連結部49に対向する位置にある。 また外装ケース50の各キートップ43に対向する位置には、貫通孔51が設けられている。 【0046】基板60は平板状であり、それぞれキートップ板40の各押圧部46に対向する位置に可動接点6 3付きのスイッチ接点61が設けられている。 【0047】そしてこのキートップ板40を外装ケース50の下面側に配置し、その下に枠状スペーサ55を介して基板60を固定する(固定手段は図示せず)。 キートップ板40は枠状スペーサ55によってその外周が外装ケース50の下面に押し付けられ、該外装ケース50 の下面に密着するように固定される。 この状態で各キートップ43は外装ケース50の各貫通孔51から表面に露出する。 【0048】このときキートップ板40はその全体が横方向Hに向かって凸状に湾曲した状態で位置P部分で縦方向Gに向かって折り曲げられているが、該折り曲げられる位置Pは連結部49のみによって連結されているので、たとえキートップ板40全体が横方向Hに湾曲していても、その折り曲げが容易に行える。 つまり一方の方向に湾曲し、他方の方向に折り曲げられた表面形状の外装ケースに容易に対応できる。 【0049】なおこの実施例においては連結部49部分でキートップ板40を2つに折り曲げる例を示したが、 該連結部49を複数箇所に設けてキートップ板40を複数箇所で折り曲げてもよい。 また一箇所に設ける連結部49の数を1本でなく複数本としても良い。 【0050】また上記第1,第2実施例においては、キートップ板を一方の方向に湾曲し、且つ該湾曲する方向とは直交する方向に湾曲又は折り曲げる例を示したが、 該湾曲したり折り曲げる方向を直交方向以外の他の方向としても良い。 【0051】上記第1実施例(第2実施例でも同様)ではフイルム板11にキートップ13を取り付ける構造として、フイルム板11を上方向に向かって湾曲せしめると同時に該フイルム板11の湾曲部12内にモールド樹脂を充填固化せしめることによってフイルム板11とモールド樹脂15を直接溶着せしめる例を示したが、フイルム板11の材料や、モールド樹脂15の材料や、他のモールド樹脂15の成型条件によっては、両者の接着強度が強くない場合がある。 このような場合は、両者間に接着剤層を介在させて接着すれば良い。 接着剤層の材質は、塩化ビニール樹脂,ポリエステル樹脂等のホットメルト型接着剤でも良いし、ウレタン樹脂,エポキシ樹脂等の熱硬化型接着剤でもよい。 【0052】このようにフイルム板11に何ら貫通孔を設けずにキートップ13を設ければ、このキートップ板10に防水効果を持たせることができ、好適である。 【0053】なお本発明は上記構造のキートップ板に限定されるものではなく、例えばフイルム板に貫通孔を設け、該貫通孔を介してその上下にモールド樹脂を充填し、これによってキートップを形成しても良い。 またフイルム板のキートップを設けた部分の周囲を例えばC字状に切り欠いて、キートップの上下動作を容易としても良い。 【0054】要は可撓性を有する樹脂フイルムからなるフイルム板の面の少なくとも異なる2方向(直交する方向でなくても良い)に向かってそれぞれ複数個ずつのキートップを取り付けた構造のキートップ板であれば、どのような構造のものでも良いのである。 【0055】 【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明にかかるキートップ板によれば、たとえ外装ケースの表面が2方向に湾曲したり折り曲げられたりしていても、これに容易に対応してハードキータイプの各キートップを外装ケースの貫通孔から表面に露出できるという優れた効果を有する。 【0056】またキートップの各押圧部のフイルム板からの高さを異ならせたので、このキートップ板の下に配置する基板を平面状にできる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の第1実施例にかかるキートップ板10 を示す図であり、同図(a)は平面図、同図(b)は同図(a)のE−E断面図、同図(c)は同図(a)のF −F断面図である。 【図2】外装ケース20の裏面側にキートップ板10と基板30を取り付けた状態を示す図であり、同図(a) は平面図、同図(b)は同図(a)のK−K断面図、同図(c)は同図(a)のL−L断面図である。 【図3】本発明の第2実施例にかかるキートップ板40 を示す図であり、同図(a)は平面図、同図(b)は同図(a)のM−M断面図、同図(c)は同図(a)のN −N断面図である。 【図4】外装ケース50の裏面側にキートップ板40と基板60を取り付けた状態を示す図であり、同図(a) は図3に示すM−M部分の切断部に相当する側断面図、 同図(b)は図3に示すN−N部分の切断部に相当する側断面図、同図(c)は図3に示すO−O部分の切断部に相当する側断面図である。 【図5】携帯電話機100を示す斜視図である。 【図6】図5に示す携帯電話機100のキートップ83 部分の概略断面図であり、同図(a)は図5に示すC方向の断面図、同図(b)は図5に示すD方向の断面図である。 【図7】従来のキートップ板の使用例を示す分解斜視図である。 【図8】キートップ板80を直交する2方向に湾曲させた状態を示す斜視図である。 【図9】フイルム板11にキートップ13を形成する具体的方法を説明するための要部概略側断面図である。 【符号の説明】 10,40 キートップ板 11,41 フイルム板 12,42 湾曲部 13,43 キートップ 15,45 モールド樹脂 49 連結部 |