Organic magnetic film and a method of manufacturing the same

申请号 JP5436293 申请日 1993-03-15 公开(公告)号 JP3388797B2 公开(公告)日 2003-03-24
申请人 松下電器産業株式会社; 发明人 忠 大竹; 小川  一文; 規央 美濃;
摘要
权利要求
  • (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 膜を構成する分子が基体と直接または間接的に、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、S、Cから選ばれる少なくとも1つの原子を介して共有結合で固定されている有機膜であって、前記有機膜内に金属及び/またはラジカルに由来する不対電子を有し、かつ磁性を有することを特徴とする有機磁性膜。 【請求項2】 有機膜が単分子膜である請求項1に記載の有機磁性膜。 【請求項3】 有機膜を構成する分子が、有機内層膜とSi、Ge、Sn、Ti、Zr、S、Cから選ばれる少なくとも1つの原子を介して共有結合で固定されている累積膜である請求項1に記載の有機磁性膜。 【請求項4】 磁性が、強磁性、フェリ磁性、常磁性若しくは反強磁性である請求項1、2または3に記載の有機磁性膜。 【請求項5】 金属が、有機金属若しくは有機金属錯体に含まれている金属である請求項1に記載の有機磁性膜。 【請求項6】 有機金属に含まれる金属が、Si,G
    e,Sn,Zn及びAsから選ばれる少なくとも一つの典型金属である請求項5に記載の有機磁性膜。 【請求項7】 有機金属錯体に含まれる金属が、Cr,
    Mn,Fe,Co,Ni,Zn,Y,Hg,Cd,R
    u,Rh,Sc,Ti,V,Pd,Pt,Nb,Mo,
    Tc,Hf,T,W,Re,Os及びIrから選ばれる少なくとも一つの遷移金属である請求項5に記載の有機磁性膜。 【請求項8】 ラジカルが、カルベン、一般式(化1)
    で示される官能基、一般式(化2)で示される官能基、
    一般式(化3)で示される官能基、一般式(化4)で示される官能基、一般式(化5)で示される官能基から選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載の有機磁性膜。 【化1】 【化2】 【化3】 【化4】 【化5】 【請求項9】 ラジカル発生前駆体基または金属イオン捕捉基を分子内に有し、かつ一般式(化6)で示される官能基、一般式(化7)で示される官能基、一般式(化8)で示されるハロゲン化スルフォニル基、一般式(化9)で示されるハロゲン化スルフィニル基、一般式(化10)、及びシアノ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する分子を、活性な水素またはアルカリ金属を有するかまたは付与した基体に接触させ、化学吸着反応させて有機膜を形成し、しかる後、前記有機膜にラジカルを発生させるかまたは金属イオンを捕捉させることを特徴とする有機磁性膜の製造方法。 【化6】 【化7】 【化8】 【化9】 【化10】 【請求項10】 ラジカルまたは金属を有する官能基を分子内に有し、かつ一般式(化11)で示される官能基、一般式(化12)で示される官能基、一般式(化1
    3)で示されるハロゲン化スルフォニル基、一般式(化14)で示されるハロゲン化スルフィニル基、一般式(化15)、及びシアノ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する分子を、活性な水素またはアルカリ金属を有するかまたは付与した基体に接触させ、化学吸着反応させて有機膜を形成することを特徴とする有機磁性膜の製造方法。 【化11】 【化12】 【化13】 【化14】 【化15】 【請求項11】 化学吸着分子を基体と接触させた後、
    非水系溶媒で洗浄して化学吸着単分子膜を形成する請求項9または10の有機磁性膜の製造方法。 【請求項12】 化学吸着単分子膜を形成した後、さらに化学吸着分子を接触させて累積膜を形成する請求項1
    1の有機磁性膜の製造方法。
  • 说明书全文

    【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、有機磁性膜およびその製造方法に関するものである。 さらに詳しくは、金属若しくはラジカルに由来する不対電子を有する有機分子が配列し、かつ磁性を示す有機磁性膜およびその製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】厳密な意味での有機磁性単分子膜および有機磁性累積膜は未だ存在例がない。 そもそも有機磁性体そのものの例が現在までにほとんどなく、有機磁性結晶にいたっては全く例がないという状況である。 【0003】ただ、磁性の発現までは至っていないが、
    電子スピン共鳴(ESR)測定検討がLB膜に関してされている例がある。 膜構成分子としては、ステアリン酸銅(J.Messierand G.Marc,J.P
    hys. (Paris),32,799(197
    1). )や炭素数18の脂肪酸をつけたジチオカルバミン酸銅(P.A.Chollot,J.Phys,C:
    Solid State Phys. ,7,4127
    (1974). )を用いている。 また薄膜という範疇でいえば、特開平3−160708号公報にある通り、プラズマ重合法により形成された有機磁性薄膜の例がある。 【0004】高分子化合物に磁性を付与する方法として、主鎖からぶら下がったペンダント部にラジカルを有する官能基をつけることで、スピンの向きを揃えるという方法がある。 また高分子の中にネオジウム、鉄、ボロン系若しくはサマリウム、コバルト系の磁性体粉末を分散させ作成する一般にプラスチック磁石と呼ばれるものは、原理的にその高分子を薄膜状にしさえすれば有機磁性薄膜は実現可能で、実際に加工プロセスもかなり確立している。 しかし後者の場合、有機分子そのものの物性が反映されているわけではなく、いわゆるコンポジットタイプである。 【0005】ところで、有機磁性体を得るには次の2条件を満足させることが必要となる。 第一に、多数の不対電子を安定に有機材料中に存在させることによりスピン密度を高める。 第二に、平行配列しているスピンの割合を増やす。 【0006】ところが、有機分子そのものの物性が反映されている公知の有機磁性体では、スピン密度、磁化率共に未だ小さい。 それは、スピン密度の向上およびスピンの配列制御が充分に行われていないことによるものと考えられる。 そのようなことで現在のところ実用上充分な磁性を有するものは報告例がない。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】不対電子を有する有機分子は厳密には個々には磁性を有するといってよい。 しかし、この分子が集合し結晶化すると相殺されて結晶全体としては磁性を持たなくなってしまう場合がほとんどである。 よって、結晶若しくは分子集合体が全体として磁性を持つためには、すなわち巨視的磁性を発現するためには、綿密な分子設計に基つ゛く分子の合成を行うことにより、まずスピンがより安定に存在するようにしてやり、かつスピンの向きが揃うように分子を立体的にうまく並べてやることが必要になってくる。 実際、これまでの有機磁性体の例ではそのほとんどがこのスピンを揃えてやる方法として、不活性ガス若しくは磁性を有する分子と立体構造が似ている他の反磁性安定物質の形成するマトリックス中に捕捉するという方法を採用し、そうして磁化測定して磁性を確認している。 【0008】本発明は、この不対電子を有する分子が膜状に配列することによりスピンの向きが揃い、巨視的な磁性を有する有機単分子膜および有機単分子累積膜を提供することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明の有機磁性膜は、膜を構成する分子が基体と直接または間接的に、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、
    S、Cから選ばれる少なくとも1つの原子を介して共有結合で固定されている有機膜であって、前記有機膜内に金属及び/またはラジカルに由来する不対電子を有し、
    かつ磁性を有することを特徴とする。 【0010】前記構成においては、有機膜が単分子膜であることが好ましい。 また前記構成においては、有機膜を構成する分子が、有機内層膜とSi、Ge、Sn、T
    i、Zr、S、Cから選ばれる少なくとも1つの原子を介して共有結合で固定されている累積膜であることが好ましい。 【0011】また前記構成においては、磁性が、強磁性、フェリ磁性、常磁性若しくは反強磁性であることが好ましい。 また前記構成においては、金属が、有機金属若しくは有機金属錯体に含まれている金属であることが好ましい。 【0012】また前記構成においては、有機金属に含まれてる金属が、Si,Ge,Sn,Zn及びAsから選ばれる少なくとも一つの典型金属であることが好ましい。 また前記構成においては、有機金属錯体に含まれてる金属が、Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Zn,Y,
    Hg,Cd,Ru,Rh,Sc,Ti,V,Pd,P
    t,Nb,Mo,Tc,Hf,T,W,Re,Os及びIrから選ばれる少なくとも一つの遷移金属であることが好ましい。 【0013】また前記構成においては、ラジカルが、カルベン、前記一般式(化1)〜(化5)で示される官能基から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
    次に本発明の第1番目の有機磁性膜の製造方法は、ラジカル発生前駆体基または金属イオン捕捉基を分子内に有し、かつ前記一般式(化6)で示される官能基、前記一般式(化7)で示される官能基、前記一般式(化8)で示されるハロゲン化スルフォニル基、前記一般式(化9)で示されるハロゲン化スルフィニル基、前記一般式(化10)、及びシアノ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する分子を、活性な素またはアルカリ金属を有するかまたは付与した基体に接触させ、化学吸着反応させて有機膜を形成し、しかる後、前記有機膜にラジカルを発生させるかまたは金属イオンを捕捉させることを特徴とする。 【0014】次に本発明の第2番目の有機磁性膜の製造方法は、ラジカルまたは金属を有する官能基を分子内に有し、かつ前記一般式(化11)で示される官能基、前記一般式(化12)で示される官能基、前記一般式(化13)で示されるハロゲン化スルフォニル基、前記一般式(化14)で示されるハロゲン化スルフィニル基、前記一般式(化15)、及びシアノ基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有する分子を、活性な水素またはアルカリ金属を有するかまたは付与した基体に接触させ、
    化学吸着反応させて有機膜を形成することを特徴とする。 【0015】前記構成においては、化学吸着分子を基体と接触させた後、非水系溶媒で洗浄して化学吸着単分子膜を形成することが好ましい。 また前記構成においては、化学吸着単分子膜を形成した後、さらに化学吸着分子を接触させて累積膜を形成することが好ましい。 【0016】 【作用】前記した本発明の構成によれば、化学吸着膜内に金属またはラジカルに由来する不対電子を有する有機分子が配列し、かつ化学吸着膜が磁性を有することにより、スピンの向きが揃い、巨視的な磁性を有する化学吸着された有機磁性膜とすることができる。 【0017】また、化学吸着膜が単分子膜であるという本発明の好ましい構成によれば、分子配向が良好でオングストロームオーダーまたはナノメーターレベルの成膜および膜厚制御が可能であり、これまでには存在しない薄さの強固な磁性超薄膜とすることができる。 【0018】また、化学吸着膜を構成する分子が化学吸着内層膜と直接もしくは間接的にSi、Ge、Sn、T
    i、Zr、S、Cから選ばれる少なくとも1つの原子を介して共有結合している累積膜であるという本発明の好ましい構成によれば、膜構成分子の密度を向上させることができる。 【0019】また、磁性が強磁性、フェリ磁性、常磁性若しくは反強磁性であるという本発明の好ましい構成によれば、優れた磁性特性を発現できる。 また、金属が有機金属及び/または有機金属錯体中の典型金属及び/または遷移金属であるという本発明の好ましい構成によれば、優れた磁性磁性を発現できる。 【0020】また、ラジカルが一般式(化1)〜(化5)で示される官能基であるという本発明の好ましい構成によれば、優れた磁性特性を発現できる。 次に、本発明の製造方法の構成によれば、前記した有機磁性膜を効率よく合理的に製造することができる。 【0021】 【実施例】以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。 本発明の有機磁性膜は、基体もしくは内層膜に直接もしくは間接的に共有結合により強固に固定されており、また原理的にオングストロームオーダーまたはナノメーターレベルの成膜および膜厚制御が可能であり、これまでには存在しない薄く、かつ強固な磁性超薄膜になる。 【0022】不対電子のスピンを揃える方法として、トポロジー的対称性を利用することとし、これにより上記課題を解決した。 つまり、膜構成分子が基体上でほぼ均一に分布し、かつ配向性が良好であると言われている化学吸着膜を利用し、その膜構成分子に磁性をもたせスピンの向きを揃えることにより有機磁性膜を形成した。 【0023】具体的には、この膜構成分子には、ラジカル発生前駆体、金属イオン捕捉剤、ラジカルを有する分子、そして金属を有する分子があたる。 前記第一の分子で構成された膜では、例えば紫外線照射により、また第二の分子で構成された膜では、例えば金属イオン溶存溶液への浸漬等の処理により不対電子をつくることになるが、不対電子ができた時点では分子は既に基体に固定されているために分子間の磁気的相互作用の要請に基つ゛く再配列はされず、できた不対電子のスピンは保存される。 こうして、高スピン密度および高スピン配列制御が果たせることにより、巨視的磁性の発現が可能となった。 【0024】なお、ここでいう磁性とは、金属及び/またはラジカル中の不対電子に由来されるものである。 また、オングストロームオーダーまたはナノメーターレベルの膜厚、または膜厚制御可能な薄膜を得るには、現段階の技術では単分子膜の作成法しかない。 現在よく知られている単分子膜作成方法としては、ラングミュア・ブロジェット法と化学吸着法の2通りがあるが、成膜後の加工に耐え得るという点で、本発明の化学吸着法は優れたものである。 【0025】本発明の有機磁性膜は、金属及び/またはラジカルに由来する不対電子を有する有機分子が配列し、かつ磁性を示すことを特徴としている。 化学吸着剤としては、ラジカル発生前駆体及び/または金属イオン捕捉剤そのもの及び/または、反応処理後それらに成り得る化合物、及び/またはラジカル及び/または金属を初めから有する化合物で、かつそれらを基体上及び/または既設の膜上に固定可能な官能基を有する分子になる。 基体上及び/またはあらかじめ形成した化学吸着膜の上に固定可能な官能基としては、前記一般式(化6)
    〜(化10)で示される官能基、またはシアノ基が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではないこともちろんである。 ただし、ここでいうハロゲンはC
    l、Br、若しくはIが挙げられるが、反応性の点ではClが好ましい。 BrやIであっても同様な化学吸着単分子膜および化学吸着累積膜が得られる。 【0026】前記の化学吸着膜を固定する先の基体としては、その表面に、水酸基、カルボキシル基、スルフィン酸基、スルフォン酸基、リン酸基、亜リン酸基、第四級アンモニウム基、第四級ホスフォニウム基、チオール基、アミノ基から選ばれる少なくとも一つの官能基、及び/または水酸基、、カルボキシル基、スルフィン酸基、スルフォン酸基、リン酸基、亜リン酸基、第四級アンモニウム基、第四級ホスフォニウム基、チオール基、
    アミノ基から選ばれる少なくとも一つの官能基のHがアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属で置換された官能基から選ばれるもの、及び前記した官能基を有する基体上にすでに固定され、かつ前記した官能基を膜上に有している化学吸着膜等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 【0027】基体表面に前記した官能基がないか、若しくは少ない場合にはUV/オゾン処理、酸素プラズマ処理、過マンガン酸カリウム液等の化合物酸化剤処理などを行って表面改質を施し、前記官能基を作り出すか若しくは増やすと効果的である。 【0028】また、前記化学吸着膜を前記基体に固定させる方法として、液体状及び/または気体状の前記化学吸着剤若しくは前記化学吸着剤を溶解させた溶液に基体を接触させる方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 【0029】ここで溶液として使用する場合、用いる溶媒としては、活性な水素が含まれていない分子からなるのが適当である。 例えば、化学吸着剤が長鎖のアルキル基を有する場合には、炭化水素類とハロゲン化炭素類などの混合溶媒を用い、カルボニル基を有する場合には、
    ハロゲン化炭素類や芳香族類などを用いるのが適当である。 しかしこれらに限定されるものではない。 【0030】化学吸着膜を基体上に固定させた後には、
    未反応の分子を除去する工程を採用するほうが、単分子膜及び単分子累積膜を作成しやすいので好ましい。 その洗浄除去の際に用いる溶媒としては、非プロトン系溶媒が好ましい。 例えば、ハロゲン化炭素類、エーテル類、
    ラクトン類、エステル類、ニトリル類、アミド類などが挙げられる。 しかしこれらに限定されるものではない。 【0031】ラジカル発生前駆体としては、例えばアジド基、ジアゾ基、アゾ基、ニトロ基、過酸基等を有する分子が挙げられるがこれらに限られないことは勿論である。 化学吸着膜内で、これらのうち1種類のみが存在していても、またこれらが混在していても構わないことは勿論である。 【0032】金属イオン捕捉剤としては、例えばキレート形成分子となる、ピリジン、ビピリジン、フェナントロリン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、S
    chiff塩基等あるいはやはりホスト化合物であるポリエーテル、ポリチオエーテル、トリアルキルホスフィン、トリフェニルホスフィン、フタロシアニン類、クロロフィル類、ポルフィリン類等が挙げられるので、これらの誘導体が用いるには適しているが、これらに限られないこと勿論である。 用いる場合、これらのうち1種類のみでもよいが、またこれらが混合していても構わないことは勿論である。 【0033】捕捉される金属としては、金属イオン捕捉剤により変わってくるが、いずれにしろ錯体を形成した後にs、p、d及び/またはf軌道に奇数個の電子を有するような金属が好ましい。 捕捉される金属は、1種類のみでも、また混合されていても構わないことは勿論である。 【0034】そうして形成されたラジカル発生前駆体若しくは遷移金属捕捉剤が膜構成分子である化学吸着膜を有する基体を、紫外線照射もしくは金属イオン溶存溶液への浸漬等の処理をして不対電子を発生させる。 不対電子が発生した時点では分子は既に共有結合により基体に固定されているために分子間の磁気的相互作用の要請に基づく再配列はされず、発生した不対電子のスピンは保存される。 これにより巨視的磁性の発現が可能となる。 【0035】また、化学吸着剤としてラジカル分子を用いる場合には、一般式(化1)〜(化5)で示される官能基から選ばれる少なくとも1つを有する分子が良いが、具体的には図1に示すような官能基を有する分子が挙げられるが、これらに限られないことは勿論である。
    用いる際、1種類のみでも、また複数種類混合して用いてもよいことは勿論である。 【0036】より強い磁性を得るための1つの方法として、不対電子を共役系の中に組み込んで共役安定化の寄与を得るという方法がある。 この場合、化学吸着剤の時点から共役系を有するものを用いる方法もあるが、化学吸着膜を形成してから膜上で重合させ共役系を作り出す方法もある。 後者の方法では例えば、アセチレン誘導体やジアセチレン誘導体等を化学吸着剤として用いてまず化学吸着膜を形成した後、電子線や触媒を用いて重合させ共役系を作り出すという方法があるが、これに限られるわけではない。 【0037】なお、本発明の有機磁性単分子膜および有機磁性累積膜の磁性は、次のようにして確認することができる。 簡便な方法としては、磁化させた鉄の超微粉末の上に薄い紙を乗せ、その上にこの有機磁性単分子膜若しくは有機磁性累積膜を有する基体を置きその薄い紙ごと基体を宙に浮かせ、磁化させた鉄の微粉末の紙へのくっつき具合を見るという方法がある。 基体を紙から離してみて、紙にくっついていた微粉末が落ちるのをみてやれば、磁性の有無がわかる。 また他の方法としては、E
    SR(電子スピン共鳴)等の磁化特性測定機を用いて、
    磁気特性を測定できる。 【0038】以下に、本発明の有機磁性単分子膜および有機磁性累積膜について、製造方法も含めより詳細に説明する。 ただし、本発明は以下の具体的実施例に限定されない。 【0039】(実施例1)はじめに、吸着溶液Aを調製した。 ヘキサデカンと四塩化炭素とクロロホルムを重量比で80:12:8の割合で混合した混合溶媒に化学吸着剤である8−オクチルトリクロロシランと14−
    (3,5−ジシアノフェニル)テトラデシルトリクロロシランをそれぞれ0.5wt%の濃度で溶解して調製し、
    これを吸着溶液Aとした。 【0040】図2に示す様に、親水性基板としてガラス基板1を用い、有機溶剤で洗浄した後、吸着溶液Aに1
    時間浸漬させた。 この処理により、まず8−オクチルトリクロロシランと14−(3,5−ジシアノフェニル)
    テトラデシルトリクロロシランのSi−Cl基とガラス基板1のOH基とで脱塩化水素反応を起こし、下記式(化16)と(化17)という結合がほぼ均一にでき、
    化学吸着膜がガラス基板1上に形成された。 【0041】 【化16】

    【0042】 【化17】 【0043】次に15分間の非水系溶媒のクロロホルム洗浄を行ない、その後15分間の水洗を行うと基板表面全面の前記式(化16)と(化17)が下記式(化1


    8)に変わり、図3に示したような化学吸着単分子膜2


    が形成された。 なお、吸着溶液Aの化学吸着剤の組成が1:1であるために式(化16)と(化17)はほぼ均一に交互に吸着していると考えることができ、そのために式(化18)で表される繰り返し単位で基体上を被覆していると考えられる。 この単分子膜は、強固に基板と固定されており、かつ極めて撥水性に富んでいた。 【0044】 【化18】 【0045】なお、得られた化学吸着膜は、フーリエ変換赤外吸収スペクトル(FTIR)測定で2925〜2


    840(帰属:−CH

    2 −)、2240(帰属:CN3


    重結合)、1620、1500、1450(以上3つ、


    帰属:ベンゼン骨格)、1470(帰属:−CH


    2 −)、1080(帰属:Si−O)cm

    -1にこの構造に特徴的なシグナルを得たことで、膜形成を確認できた。 【0046】次に、乾燥テトラヒドロフラン中でm−ジブロモベンゼンからつくったグリニア試薬を、化学吸着単分子膜2を有する基板1をおいた容器に注ぎ込み30


    分間反応させた。 そして、5分間のエーテル洗浄と5分間の水洗を行うと基板表面全面に図4に示したような化学吸着単分子膜3が形成できた。 この単分子膜は、強固に基板と固定されており、かつ極めて撥水性に富んでいた。 【0047】なお、得られた化学吸着膜は、フーリエ変換赤外吸収スペクトル(FTIR)測定で2240cm


    -1のシグナルが消失し、新たに1700(帰属:C=


    O)cm

    -1のシグナルが現れ、また1620、150


    0、1450cm

    -1のベンゼン環に帰属できるシグナルの強度が約2倍になったことで膜形成を確認できた。 【0048】次に、n−プロパノールにヒドラジン一水和物を混合した後そこへ化学吸着単分子膜3を有する基板1を浸漬し、30分間加熱還流下反応させた。 この反応の後、5分間のエーテル洗浄と5分間の水洗を行うと基板表面全面に図5に示したような化学吸着単分子膜4


    が形成された。 この単分子膜は、強固に基板と固定されており、かつ親水性に富んでいた。 【0049】なお、得られた化学吸着膜は、フーリエ変換赤外吸収スペクトル(FTIR)測定で1700cm


    -1のシグナルが消失し、新たに3500(帰属:N


    2 )、1650(帰属:C=N)cm

    -1のシグナルが現れたことで膜形成を確認できた。 【0050】つづいて、活性二酸化マンガンを乾燥エーテル中に懸濁させ、そこへ化学吸着単分子膜4を有する基板1を20分間浸漬した。 その後、5分間のエーテル洗浄と5分間の水洗を行うと基板表面全面に図6に示したような化学吸着単分子膜5が形成できた。 この単分子膜は、強固に基板と固定されており、かつ極めて撥水性に富んでいた。 【0051】なお、得られた化学吸着膜は、フーリエ変換赤外吸収スペクトル(FTIR)測定で1650cm


    -1のシグナルが消失し、新たに2140,2120(帰属:C=N

    2 )cm

    -1のシグナルが現れたことで膜形成を確認できた。 【0052】こうして得られた化学吸着単分子膜5はラジカル発生前駆体である。 次に、化学吸着膜上にラジカルを発生させその磁化確認を行った。 化学吸着単分子膜5を有する基板1を1.9Kにおいて、紫外線を照射しながら、ファラデー法を用いて磁化測定を行った。 図6


    中のジアゾ基は、紫外線照射によりN

    2を放出し、対応するカルベンを与え、図7に示すような化学吸着単分子膜6を形成した。 【0053】その結果、磁化はS字型の初期磁化曲線に従い、その後磁場の増減に伴い原点について点対称なヒステリシス・ループを示した。 また残留磁化も示した。


    以上から、この化学吸着単分子膜6は強磁性体としての特徴的な振る舞いをすることがわかった。 さらに温度を上昇させても同様であった。 また、この化学吸着単分子膜6を有する基板1を100Gの磁場の中に置くと、


    0.50emuGの磁化が得られた。 【0054】なお、図7中の結合については基板表面全面にわたって完全に重合しているとは考え難く、ある程度の重合度をもつ分子の集合体であるというイメージの方が現実的である。 しかしながら、これだけの強磁性を示すのはやはり化学吸着膜を利用し、トポロジー的対称性が生かされた成果であると考えられる。 【0055】(実施例2)はじめに、吸着溶液Bを調製した。 ヘキサデカンと四塩化炭素とクロロホルムを重量比で80:12:8の割合で混合した混合溶媒に化学吸着剤である10−((4−クロロメチル)フェニル)デシルトリクロロシランを約1wt%の濃度で溶解して調製し、これを吸着溶液Bとした。 【0056】親水性基板として実施例1と同様のガラス基板1を用い、有機溶剤で洗浄した後、吸着溶液Bに1


    時間浸漬させた。 この処理により、まず10−((4−


    クロロメチル)フェニル)デシルトリクロロシランのS


    i−Cl基とガラス基板1のOH基とで脱塩化水素反応を起こし、(化19)という結合がほぼ均一にでき、化学吸着膜がガラス基板1上に形成された。 【0057】 【化19】 【0058】次に15分間の非水系溶媒のクロロホルム洗浄と15分間の水洗を行うと基板表面全面の(化1


    9)が(化20)に変わり、図8に示したような化学吸着単分子膜7が形成された。 この単分子膜は、強固に基板と固定されており、かつ極めて撥水性に富んでいた。 【0059】 【化20】 【0060】なお、これはフーリエ変換赤外吸収スペクトル(FTIR)測定により3060(帰属:ベンゼンC−H)、2920〜2840(帰属:−CH

    2 −)、


    1890、1610、1500、1450(以上4つ、


    帰属:ベンゼン骨格)、1470(帰属:−CH


    2 −)、1080(帰属:Si−O)、850(帰属:


    ベンゼンC−H)cm

    -1にこの構造に特徴的なシグナルを得たことで、膜形成を確認できた。 【0061】つづいて、新たな化学吸着剤Cの合成を行った。 CとしてはShiff塩基を選んだ。 室温で、ジエチレントリアミンとベンズアルデヒドを1.5時間反応させ(化21)で示される化学吸着剤Cを合成した。 【0062】 【化21】 【0063】次に、化学吸着単分子膜7を有する基板1


    を1,4−ジオキサンに浸漬させ、そこへ化学吸着剤C


    の1,4−ジオキサン溶液を注ぎ込んだ。 30分間反応させた後、5分間のクロロホルム洗浄と5分間の水洗とを経ると図9で示される化学吸着単分子累積膜8を作成できた。 この膜は極めて撥水性に富んでいた。 【0064】なお、これはフーリエ変換赤外吸収スペクトル(FTIR)測定で新たに1650(帰属:C=


    N)cm

    -1にこの構造に特徴的なシグナルを得、また1


    890、1610、1450(以上3つ、帰属:ベンゼン骨格)のシグナルが約3倍になったことで、膜形成を確認できた。 【0065】この化学吸着単分子累積膜8を有する基板1を希塩酸で洗ってやることにより、基板表面全面が図10に示すような化学吸着単分子累積膜9を形成した。


    なお、これはフーリエ変換赤外吸収スペクトル(FTI


    R)測定で1650cm

    -1のシグナルの消失、また18


    90、1610、1450(以上3つ、帰属:ベンゼン骨格)のシグナルが約1/3倍になったことで、膜形成を確認できた。 【0066】それからNiCl

    2・6H

    2 O水溶液にこの化学吸着単分子累積膜9を有する基板1を室温で1時間浸漬させ、5分間の水洗を行った。 この処理により化学吸着単分子累積膜9は、Ni

    2+を取り込ませることができた。 【0067】なお、これはX線光電子分光(XPS)測定でNiに由来するシグナルを得たことで、Ni

    2+の取り込みを確認できた。 そして、Ni

    2+化学吸着単分子累積膜9を有する基板1を、磁化させた鉄の超微粉末の上に置いた薄い紙の上に10秒放置してから、紙ごと基板を持ち上げた。 するとその鉄の微粉末は紙にくっついているのが確認できた。 続いて基板を紙から離してみると、鉄の微粉末は落ちてしまった。 このことでこの化学吸着単分子膜9の磁性を確認できた。 【0068】(実施例3)はじめに、吸着溶液Dを調製した。 ヘキサデカンと四塩化炭素とクロロホルムを重量比で80:12:8の割合で混合した混合溶媒に、化学吸着剤である10−デシルトリクロロシリル(1−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)エーテルを約1wt%の濃度で溶解して調製し、これを吸着溶液Dとした。 【0069】基板として石英を用い、これを有機溶剤で洗浄した後、吸着溶液Dに1時間浸漬させた。 その後、


    15分間のクロロホルム洗浄を行うと、基板表面全面にわたり、図11に示すような化学吸着単分子膜10が形成された。 この単分子膜は、強固に基板と固定されていた。 【0070】なお、これはフーリエ変換赤外吸収スペクトル(FTIR)測定により、2920、2840(帰属:−CH

    2 −)、1080(帰属:Si−O)、96


    0(帰属:N−O)cm

    -1にこの構造に特徴的なシグナルを得たことで、膜形成を確認できた。 【0071】次に、ESRスペクトル測定を行った。 マイクロ波出0.3mW、変調幅0.1G、応答時間0.1秒、磁場3300±1000Gの測定条件で77


    Kにおいて、g値2.0064のシングレットシグナルが3本得られた。 これらのシグナルは、徐々に昇温させていくとブロード化してき、313Kになって消滅した。 なお、g値決定のリファレンスにはMnOを用いた。 【0072】また、電子分光分析装置(ESCA)により、磁性不純物、つまりFe、Co、Mn等が混入していないかを確認したところ、これらは確認されなかった。 以上の測定結果から、この化学吸着単分子膜10は室温においても強磁性であることが確認できた。 【0073】(実施例4)はじめに、吸着溶液Eを調製した。 ヘキサデカンと四塩化炭素とクロロホルムを重量比で80:12:8の割合で混合した混合溶媒に化学吸着剤である1,8−ビストリクロロシリルオクタンを約1wt%の濃度で溶解して調製し、これを吸着溶液Eとした。 【0074】親水性基板として実施例1と同様のガラス基板1を用い、有機溶剤で洗浄した後、吸着溶液Eに1


    時間浸漬させた。 その後、10分間のクロロホルム洗浄を行うと、基板表面全面にわたり、(化22)に示すような化学吸着単分子膜が形成された。 【0075】 【化22】 【0076】次に、この単分子膜を有するガラス基板を、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノ−1−オキソ/クロロホルム溶液に1.5時間浸漬させた。 続いて15分間のクロロホルム洗浄を行った。 以上の処理により図12に示すような単分子膜11


    が形成された。 【0077】なお、これはフーリエ変換赤外吸収スペクトル(FTIR)測定により、2920、2840(帰属:−CH

    2 −)、1080(帰属:Si−O)、96


    0(帰属:N−O)cm

    -1にこの構造に特徴的なシグナルを得たことで、膜形成を確認できた。 【0078】次に、ESRスペクトル測定を行った。 マイクロ波出力0.3mW、変調幅0.1G、応答時間0.1秒、磁場3300±1000Gの測定条件で77


    Kにおいて、g値2.0070のシングレットシグナルが3本得られた。 これらのシグナルは、徐々に昇温させていくとブロード化してき、303Kになって消滅した。 なお、g値決定のリファレンスにはMnOを用いた。 【0079】また、ESCAにより、磁性不純物、つまりFe、Co、Mn等が混入していないかを確認したところ、これらは確認されなかった。 以上の測定結果から、この化学吸着単分子膜11は室温においても強磁性であることが確認できた。 【0080】なお、ESRにおける測定可能の限界は通常スピン個数が常磁性体の場合、少なくとも約10

    10個と言われている。 しかし、例えば実施例4で作成した化学吸着単分子膜11では、スピン密度が1コ/25平方オングストロームであるので約1mm

    2の試料上では約10

    11個程度であるが、これは理論上の数字でありこれよりは幾分小さくなっていることは明かであり、十分測定可能であるとは本来ならば言えないところである。 しかし、これだけの少量のスピンで、このようにはっきりとスペクトルが得られたことは、この膜内での交換相互作用の大きさを示唆している。 【0081】以上説明した通り本実施例によれば、優れた有機磁性膜を実現できることができた。 即ち、膜構成分子の配向性の良好な薄膜を利用することにより実現が可能となったことで、有機磁性薄膜という新しい研究分野が開けるきっかけになる。 また、実用の面を考えると先端技術でその利用価値たるもの図り知れない。 従来の無機の磁性薄膜材料に置き代わり、優れた特性を発揮できる用途に叶う磁性薄膜材料を提供することも可能である。 【0082】本発明の有機磁性膜の用途としては、生体適合性を考慮すると、従来の無機磁性体よりはるかに優位であるバイオメディカル分野がある。 例えばマイクロ波吸収体としての有機磁性膜は、温熱型ガン治療補助材に利用できる。 また、磁気パルス媒体として、埋蔵型筋力促進素子、血流促進素子などに利用できる。 また本発明の有機磁性膜は充分薄いので、下地の色をそのまま外観に出すことが可能となる。 すなわち、従来の磁性体は黒一色であったが、これを解消し様々な色彩をもつことが可能となる。 さらに累積により膜の厚さを厚くすれば、逆に下地の色に影響を与えることも可能である。 またさらに、従来以上の大容量の磁気記録媒体や光記録媒体にすることも可能で、高精度の磁器記録ヘッドを作ることも可能である。 なお、磁化の程度の制御は、分子の密度、累積回数を制御する等により可能である。 【0083】 【発明の効果】以上説明した通り本発明によれば、化学吸着膜内に金属またはラジカルに由来する不対電子を有する有機分子が配列し、スピンの向きが揃い、巨視的な磁性を有する化学吸着された有機磁性膜を形成することができる。 また本発明の製造方法の構成によれば、前記した有機磁性膜を効率よく合理的に製造できる。

    【図面の簡単な説明】 【図1】 (a)〜(g)は、本発明で使用することができるラジカル分子の具体例である。 【図2】 本発明の一実施例の基板の要部を分子レベルまで拡大した拡大図である。 【図3】 本発明の一実施例の化学吸着単分子膜の要部を分子レベルまで拡大した拡大図である。 【図4】 本発明の一実施例の化学吸着単分子膜の要部を分子レベルまで拡大した拡大図である。 【図5】 本発明の一実施例の化学吸着単分子膜の要部を分子レベルまで拡大した拡大図である。 【図6】 本発明の一実施例の化学吸着単分子膜の要部を分子レベルまで拡大した拡大図である。 【図7】 本発明の一実施例の化学吸着単分子膜の要部を分子レベルまで拡大した拡大図である。 【図8】 本発明の別の実施例の化学吸着単分子累積膜の要部を分子レベルまで拡大した拡大図である。 【図9】 本発明の別の実施例の化学吸着単分子累積膜の要部を分子レベルまで拡大した拡大図である。 【図10】 本発明の別の実施例の化学吸着単分子膜の要部を分子レベルまで拡大した拡大図である。 【図11】 本発明のまた別の実施例の化学吸着単分子膜の要部を分子レベルまで拡大した拡大図である。 【図12】 本発明のさらに別の実施例の化学吸着単分子膜の要部を分子レベルまで拡大した拡大図である。 【符号の説明】 1: ガラス基板2、3、4、5、6、7、8、9、10、11: 化学吸着単分子膜

    ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−216515(JP,A) 特開 平3−241704(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl. 7 ,DB名) H01F 10/00 - 10/32 H01F 41/14 H01F 1

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