信号処理装置、レーダ装置、及び信号処理方法

申请号 JP2016573201 申请日 2015-12-15 公开(公告)号 JP6343356B2 公开(公告)日 2018-06-13
申请人 古野電気株式会社; 发明人 中谷 文弥;
摘要
权利要求

捜索救助用レーダトランスポンダからの遭難信号を検出する信号処理装置であって、 受波部で受波された受信波から生成される複素受信信号、の瞬時周波数の変化速度である瞬時周波数変化速度を算出する瞬時周波数変化速度算出部と、 遭難信号の周波数掃引速度である基準周波数掃引速度、に基づく値を記憶する記憶部と、 前記瞬時周波数変化速度算出部で算出された前記瞬時周波数変化速度と、前記記憶部で記憶されている前記基準周波数掃引速度に基づく値と、の比較結果に基づいて、前記捜索救助用レーダトランスポンダからの前記遭難信号の有無を判定する遭難信号判定部と、 を備えていることを特徴とする、信号処理装置。請求項1に記載の信号処理装置において、 前記複素受信信号の位相を時間微分することにより前記瞬時周波数を算出する瞬時周波数算出部を更に備え、 前記瞬時周波数変化速度算出部は、前記瞬時周波数算出部によって算出された前記瞬時周波数を時間微分することにより前記瞬時周波数変化速度を算出することを特徴とする、信号処理装置。請求項1又は請求項2に記載の信号処理装置において、 前記記憶部は、前記基準周波数掃引速度以上の値を有する上限閾値と、前記基準周波数掃引速度以下の値を有する下限閾値とを記憶し、 前記遭難信号判定部は、前記瞬時周波数変化速度が前記上限閾値以下且つ前記下限閾値以上であることを条件として、前記複素受信信号の中に前記遭難信号が含まれていると判定することを特徴とする、信号処理装置。請求項3に記載の信号処理装置において、 前記瞬時周波数変化速度算出部は、複数のタイミングで前記瞬時周波数変化速度を算出し、 前記遭難信号判定部は、前記上限閾値以下且つ前記下限閾値以上である前記瞬時周波数変化速度が所定数以上連続して出現することを条件として、前記複素受信信号の中に前記遭難信号が含まれていると判定することを特徴とする、信号処理装置。受信波を受波する受波部と、 前記受波部で受波された前記受信波から生成される複素受信信号を処理することにより、捜索救助用レーダトランスポンダからの遭難信号を検出するとともに探知領域内のレーダ映像を生成する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の信号処理装置と、 前記信号処理装置で検出された前記遭難信号に関する情報、及び前記レーダ映像を表示する表示器と、 を備えていることを特徴とする、レーダ装置。請求項5に記載のレーダ装置において、 前記信号処理装置は、前記探知領域内における少なくとも一部の領域としての第1領域について、当該第1領域内において前記遭難信号が検出されなかった領域では、送信波としての周波数変調パルスの反射波から得られる前記複素受信信号をパルス圧縮処理することにより前記レーダ映像を生成し、前記第1領域内において前記遭難信号が検出された領域では、送信波としての周波数無変調パルスの反射波から得られる前記複素受信信号を用いて前記レーダ映像を生成することを特徴とする、レーダ装置。捜索救助用レーダトランスポンダからの遭難信号を検出する信号処理方法であって、 受波部で受波された受信波から生成される複素受信信号、の瞬時周波数の変化速度である瞬時周波数変化速度を算出するステップと、 遭難信号の周波数変化速度である基準周波数掃引速度、に基づく値を記憶するステップと、 前記瞬時周波数変化速度を算出するステップで算出された前記瞬時周波数変化速度と、前記記憶するステップで記憶された前記基準周波数掃引速度に基づく値と、の比較結果に基づいて、前記捜索救助用レーダトランスポンダからの前記遭難信号の有無を判定するステップと、 を含むことを特徴とする、信号処理方法。

说明书全文

本発明は、信号処理装置、レーダ装置、及び信号処理方法に関する。

従来より、船舶や救命ボートには捜索救助用レーダトランスポンダ(SART:Search And Rescue Transponder)が装備される。SARTは遭難時に電源が入れられると、船舶や航空機からの9GHz帯レーダ電波を受信した直後に、同じ9GHz帯で遭難信号(SART遭難信号)を発信する。このSART遭難信号はのこぎり状に周波数掃引されたパルス状の応答信号である。船舶用レーダの受信帯域幅を遭難信号の周波数掃引帯域が横切るように設定されているため、レーダ装置は遭難信号を一定間隔のパルスとして受信することができ、レーダ映像にはSART遭難信号がSART位置を始点として距離方向に複数個の短点として現れる。

上述のようなSART遭難信号を検出するレーダ装置としては、例えば特許文献1に開示されるレーダ装置が知られている。このレーダ装置では、SART遭難信号と略等しい一定周期の信号と、レーダ装置により探知された探知データとを相互相関処理することにより、SART遭難信号の有無を判定している。

特開2001−141817号公報

ところで、上述したレーダ装置でSART遭難信号を検出する場合、SART遭難信号を構成する複数個(具体的には、12個)のパルスのいくつかが他のエコー信号によってマスクされた場合、SART遭難信号を正確に検出できなくなる虞が生じる。しかも、上述したレーダ装置では、ある程度の長さ(SART遭難信号の受信期間程度)を有する波形信号同士の相関演算が必要となるため、信号の処理負荷が比較的大きくなってしまう。

本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その目的は、捜索救助用レーダトランスポンダからの遭難信号を正確に検出するとともに、その検出のための演算負荷を小さくすることである。

(1)上記課題を解決するため、本発明のある局面に係る信号処理装置は、捜索救助用レーダトランスポンダからの遭難信号を検出する信号処理装置であって、受波部で受波された受信波から生成される複素受信信号、の瞬時周波数の変化速度である瞬時周波数変化速度を算出する瞬時周波数変化速度算出部と、遭難信号の周波数掃引速度である基準周波数掃引速度、に基づく値を記憶する記憶部と、前記瞬時周波数変化速度算出部で算出された前記瞬時周波数変化速度と、前記記憶部で記憶されている前記基準周波数掃引速度に基づく値と、の比較結果に基づいて、前記捜索救助用レーダトランスポンダからの前記遭難信号の有無を判定する遭難信号判定部と、を備えている。

(2)好ましくは、前記信号処理装置は、前記複素受信信号の位相を時間微分することにより前記瞬時周波数を算出する瞬時周波数算出部を更に備え、前記瞬時周波数変化速度算出部は、前記瞬時周波数算出部によって算出された前記瞬時周波数を時間微分すること により前記瞬時周波数変化速度を算出する。

(3)好ましくは、前記記憶部は、前記基準周波数掃引速度以上の値を有する上限閾値と、前記基準周波数掃引速度以下の値を有する下限閾値とを記憶し、前記遭難信号判定部は、前記瞬時周波数変化速度が前記上限閾値以下且つ前記下限閾値以上であることを条件として、前記複素受信信号の中に前記遭難信号が含まれていると判定する。

(4)更に好ましくは、前記瞬時周波数変化速度算出部は、複数のタイミングで前記瞬時周波数変化速度を算出し、前記遭難信号判定部は、前記上限閾値以下且つ前記下限閾値以上である前記瞬時周波数変化速度が所定数以上連続して出現することを条件として、前記複素受信信号の中に前記遭難信号が含まれていると判定する。

(5)上記課題を解決するため、本発明のある局面に係るレーダ装置は、受信波を受波する受波部と、前記受波部で受波された前記受信波から生成される複素受信信号を処理することにより、捜索救助用レーダトランスポンダからの遭難信号を検出するとともに探知領域内のレーダ映像を生成する、上述したいずれかの信号処理装置と、前記信号処理装置で検出された前記遭難信号に関する情報、及び前記レーダ映像を表示する表示器と、を備えている。

(6)好ましくは、前記信号処理装置は、前記探知領域内における少なくとも一部の領域としての第1領域について、当該第1領域内において前記遭難信号が検出されなかった領域では、送信波としての周波数変調パルスの反射波から得られる前記複素受信信号をパルス圧縮処理することにより前記レーダ映像を生成し、前記第1領域内において前記遭難信号が検出された領域では、送信波としての周波数無変調パルスの反射波から得られる前記複素受信信号を用いて前記レーダ映像を生成する。

(7)上記課題を解決するため、本発明のある局面に係る信号処理方法は、捜索救助用レーダトランスポンダからの遭難信号を検出する信号処理方法であって、受波部で受波された受信波から生成される複素受信信号、の瞬時周波数の変化速度である瞬時周波数変化速度を算出するステップと、遭難信号の周波数変化速度である基準周波数掃引速度、に基づく値を記憶するステップと、前記瞬時周波数変化速度を算出するステップで算出された前記瞬時周波数変化速度と、前記記憶するステップで記憶された前記基準周波数掃引速度に基づく値と、の比較結果に基づいて、前記捜索救助用レーダトランスポンダからの前記遭難信号の有無を判定するステップと、を含む。

本発明によれば、捜索救助用レーダトランスポンダからの遭難信号を正確に検出するとともに、その検出のための演算負荷を小さくできる。

本発明の実施形態に係るレーダ装置のブロック図である。

図1に示すレーダ装置の送信タイミングを示す図である。

図1に示すレーダ装置のレーダ映像構成図である。

SART遭難信号とレーダ受信信号のタイミングを示す図である。

SART遭難信号のレーダ映像構成図である。

図1に示すトランスポンダ応答波検出部のブロック図である。

図6に示すトランスポンダ応答波検出部の動作を示すフローチャートである。

無変調パルスの送受信期間の延長動作を説明するための図である。

無変調パルスの送受信期間の延長した場合のレーダ映像構成図である。

パルス圧縮処理されたSART遭難信号の映像表示例を示す図である。

以下、本発明の実施形態に係るレーダ装置1について図面を参照しつつ説明する。本発明は、信号処理装置、レーダ装置、及び受信波から生成される受信信号を処理する信号処理方法として広く適用することができる。

レーダ装置1は、固体化レーダ装置の1つであるパルス圧縮レーダ装置によって構成されている。レーダ装置1は、トランスポンダ(本実施形態の場合、捜索救助用レーダトランスポンダ)の応答信号である遭難信号(SART遭難信号)を検出してレーダ映像を生成する。

図1は、レーダ装置1のブロック図である。レーダ装置1は、送信側システムの構成要素として、送信タイミング制御部2a、送信波形生成部2b及び送信機3を備えている。また、レーダ装置1は、受信側システムの構成要素として、受信機6、無変調エコー信号処理部7、変調エコー信号処理部8、パルス合成部9及びトランスポンダ応答波検出部10を備えている。また、レーダ装置1は、その他に、サーキュレータ4、レーダアンテナ5、レーダ映像描画部11、及び表示器13を備えている。上述した送信タイミング制御部2a、送信波形生成部2b、送信機3、サーキュレータ4、受信機6、無変調エコー信号処理部7、変調エコー信号処理部8、パルス合成部9、トランスポンダ応答波検出部10、及びレーダ映像描画部11によって、信号処理装置15が構成される。

送信タイミング制御部2aは、送信波形生成部2bが出するレーダパルスの出力タイミングを制御するための送信トリガを出力する。送信タイミング制御部2aは、送信トリガによって変調パルスの送受信期間と無変調パルスの送受信期間とを制御する。無変調パルスの送受信期間に遭難信号を検出した場合は、無変調パルスの送受信期間を遭難信号の出現領域の終了点まで延長するように送受信タイミングを制御する。

送信波形生成部2は、送信タイミング制御部2aが出力する送信トリガに基づいて、レーダパルスを出力する。このパルス圧縮レーダ装置は、周波数変調されていない無変調パルスと、周波数変調されている変調パルスとをレーダパルスとして切り替えながら送信できるように構成されている。無変調パルスは、例えば0.1μ秒から1μ秒程度の短いパルス幅を有するように生成され、変調パルスは、例えば数μ秒から数十μ秒程度の長いパルス幅を有するように生成される。送信波形生成部2bは、図2に示すように、送信トリガに同期して、無変調パルスと変調パルスとを送信パルスとして時分割で交互に送信する。

送信機3は、送信波形生成部2bが出力するレーダパルスを所定帯域までアップコンバートすると共にパワー増幅して出力する。生成されたレーダパルスはサーキュレータ4を介してレーダアンテナ5へ供給される。レーダアンテナ5は、送信と受信とで兼用される送受信アンテナ(受波部)である。レーダアンテナ5は、ビーム指向性を持って回転する。

受信機6は、受信信号を増幅するアンプ、受信信号に含まれる所望周波数帯域の信号をダウンコンバートするミキサ、ダウンコンバートされた信号を直交検波して複素信号(複素受信信号)を出力する各種フィルタ(LPF)及びAD変換器等で構成される。レーダアンテナ5から放射されたレーダパルス(無変調パルス又は変調パルス)を受信したSARTが応答信号(遭難信号)を発信した場合、受信機6へ入力される受信信号に遭難信号が含まれる。

無変調エコー信号処理部7は、無変調パルス信号のパルス幅の逆数程度に相当する周波数幅の通過帯域を有するフィルタ等(例えば、LPF又はBPF)で構成される。無変調エコー信号処理部7は、無変調パルスの送受信期間に受信信号を取り込んで受信エコーを受信処理して近距離領域(第2領域)の受信エコーデータを抽出する。

変調エコー信号処理部8は、周波数変調された送信パルスとなる変調パルス信号と相関の高い係数が設定されたマッチドフィルタを備えて構成される。変調エコー信号処理部8は、変調パルスの送受信期間に受信信号を取り込んで受信エコーをパルス圧縮し、第1領域となる遠距離領域の受信エコーデータを抽出する。パルス圧縮される受信エコーは変調パルス信号の反射波であるので、マッチドフィルタによって変調パルス信号の受信エコーに対してピークを示す。すなわち、変調パルス信号のパルス幅に相当する長いパルス幅を有する受信エコーがパルス圧縮された1つのピーク波形に変換される。パルス圧縮されたピーク波形は、変調パルス信号のパルス幅に応じたピークレベルを示す。変調パルス信号は無変調パルスに比べてパルス幅が長いので、S/N比が改善される。

パルス合成部9は、無変調エコー信号処理部7から出力される無変調パルスの受信エコーと変調エコー信号処理部8から出力される変調パルスの受信エコーとを合成する。無変調エコー信号処理部7から出力される無変調パルスの受信エコーが近距離の受信エコーを表し、変調エコー信号処理部8から出力される変調パルスの受信エコーが遠距離の受信エコーを表すので、この2つの受信エコーを合成することにより、近距離から遠距離までの広範囲の受信エコーが得られる。変調パルスの送受信期間における近距離の不感地帯が無変調パルスの受信エコーの映像によって補われる。レーダ映像描画部11は、パルス合成部9から出力されるRθ座標系の受信信号(レーダエコー)をXY座標系に変換しながら表示器13へ転送する。パルス合成部9及びレーダ映像描画部11がレーダ映像を生成するレーダ映像生成部12を構成する。レーダ映像生成部12は、近距離の受信エコーデータと遠距離の受信エコーデータとを合成してレーダ映像を生成し、トランスポンダ応答波検出部10の検出結果に基づいて、トランスポンダ応答波が出現する領域では、パルス圧縮処理された受信信号を用いずにレーダ映像を構成する。表示器13はレーダ映像生成部12から入力されるレーダ映像を表示する。

ここで、無変調パルスと変調パルスを時分割送信することによって得られる受信エコーについて説明する。通常、船舶用レーダでは1つのレーダアンテナ5で送信と受信を行う。このため、送信期間中は送信波が直接受信機6に回り込む。この回り込み電波は受信エコーに対して極めて強いため受信エコーはマスクされてしまう。したがって、送信パルスのパルス幅に相当する距離範囲は不感地帯となる。パルス圧縮レーダでは、パルス圧縮処理後のS/N比を向上させるために比較的パルス幅の長い変調パルスを送信する。この結果、不感地帯も広くなってしまう。例えば、変調パルスのパルス幅が10μ秒であれば、船舶レーダから約1500mの範囲が不感地帯となる。

そこで、パルス圧縮レーダでは、変調パルスによるレーダ探知の不感地帯を、無変調パルスの送受信で補うように構成される。すなわち、エコー受信時にパルス圧縮処理を実施する変調パルスの送受信と、パルス圧縮処理を実施しない無変調パルスの送受信を時分割で行い、後に合成することでレーダ映像を生成する。図3は無変調パルスと変調パルスを時分割送信することによって得られる受信エコーを合成することで形成されるレーダ映像の模式図である。同図において中心のバツ印はパルス圧縮レーダ装置の位置である。パルス圧縮レーダ装置の位置を中心とした近距離範囲(第2領域)は無変調パルスの送受信時に検出された受信エコーに基づいた映像表示領域である。近距離範囲の外側に形成される遠距離範囲(第1領域)は変調パルスの送受信時に検出された受信エコーに基づいた映像表示領域である。なお、無変調パルスの送受信期間ではパルス圧縮利得(S/N向上)が得られない。しかし、無変調パルスの適用距離範囲をできるだけ自船近傍(変調パルスの パルス幅程度)に制限すれば、実用上問題にはならない。

トランスポンダ応答波検出部10は、パルス圧縮レーダにおいて、受信信号の中からSART遭難信号を検出する機能を備える。トランスポンダ応答波検出部10による検出結果に応じて送信タイミング制御部2a及びパルス合成部9の動作が制御される。

本実施形態では、トランスポンダとしてSARTを想定している。この場合のトランスポンダ応答波はSART遭難信号である。SART遭難信号は、のこぎり状に周波数掃引されたパルスであり、表1のように規定されている。

図4に、SARTがレーダ電波を受けてSART遭難信号を発信してから、レーダ装置でレーダ受信信号が得られるまでの模式的なタイミングチャートが示されている。SARTは、レーダ電波を受けると(図4A)、100μ秒の送信期間のSART遭難信号を発信する(図4B)。SART遭難信号の周波数掃引帯域は9200〜9500MHzであり、1回の送信動作ではのこぎり状に周波数掃引された12個のパルスが連続送信される(図4C)。一般的な船舶用レーダの受信帯域幅は例えば9400MHzを中心周波数として1〜40MHz程度である。したがって、レーダ装置は、SART遭難信号が下りの周波数掃引過程でレーダ受信帯域を横切る際に、SART遭難信号をパルスとして受信する(図4D)。SART遭難信号が上りの周波数掃引過程でもレーダ受信帯域を横切る際にSART遭難信号を受信するが、図4Cに示すように上りの周波数掃引は下りの周波数掃引に比べて傾きが急峻であるので、パルスとして検出されないか又は非常に信号レベルが小さくなる。図4DにはSART遭難信号が下りの周波数掃引過程で受信されたSART遭難信号がレーダ受信信号として示されている。表示器13に表示されるレーダ映像には、図5に示すように、SART位置を始点として距離方向に12個の短点として現れる。レーダ操作者は、この特徴的なパターンから直ちに遭難船の存在を知ることができ、所定の管理局へ通報、救助に向かうことができる。

[トランスポンダ応答波検出部の構成] トランスポンダ応答波検出部10は、受信信号の中からSART遭難信号を検出する。以下にトランスポンダ応答波検出部10の具体的な構成例について説明する。

図6は、トランスポンダ応答波検出部10の機能ブロックを示す図である。トランスポンダ応答波検出部10は、瞬時周波数算出部20、瞬時周波数変化速度算出部21、記憶部22、第1比較判定部23、受信レベル算出部24、第2比較判定部25、論理積演算部26、カウンタ部27、遭難信号判定部28、を備えている。

瞬時周波数算出部20は、受信機6から出力された複素受信信号の瞬時周波数f(t) を算出する。具体的には、瞬時周波数算出部20は、複素受信信号の位相を時間微分することにより、瞬時周波数f(t)を算出する。瞬時周波数算出部20は、一定の間隔で、各タイミングにおける瞬時周波数f(t)を算出し、算出した各タイミングにおける瞬時周波数f(t)を、瞬時周波数変化速度算出部21へ順次、出力する。

瞬時周波数変化速度算出部21は、瞬時周波数算出部20で算出された瞬時周波数f(t)に基づいて、瞬時周波数f(t)の変化速度(瞬時周波数変化速度Δf(t))を算出する。具体的には、瞬時周波数変化速度算出部21は、瞬時周波数f(t)を時間微分することにより、瞬時周波数変化速度Δf(t)を算出する。瞬時周波数変化速度算出部21は、瞬時周波数算出部20から順次、出力される瞬時周波数f(t)のそれぞれに対して瞬時周波数変化速度Δf(t)を算出し、それを第1比較判定部23へ順次、出力する。

記憶部22には、上限閾値Th_HiGH、下限閾値Th_LOW、及び第1閾値Th1が記憶されている。上限閾値Th_HiGHとしては、規格によって定められているSART遭難信号の周波数掃引速度(基準周波数掃引速度)よりもやや高い値が設定される。一方、下限閾値Th_LOWとしては、上述した基準周波数掃引速度よりもやや低い値が設定される。また、第1閾値Th1としては、SART遭難信号の信号強度に応じた値が設定される。具体的には、第1閾値Th1の値としては、SART遭難信号の信号強度より低く、ノイズ、小エコーの信号強度より高い値が好ましい。また、自船位置とSARTとの距離が離れるほどSART遭難信号の信号強度は減衰するため、第1閾値Th1は、近距離から遠距離にかけて徐々に減衰するカーブであることが好ましい。この第1閾値Th1は、ノイズ、小エコーを検出対象から除外するために用いられる。

第1比較判定部23は、瞬時周波数変化速度算出部21から順次、出力される瞬時周波数変化速度Δf(t)の値に応じて、フラグ1としての1又は0を、論理積演算部26に出力する。具体的には、第1比較判定部23は、瞬時周波数変化速度Δf(t)が下限閾値Th_LOW以上且つ上限閾値Th_HiGH以下の場合には、フラグ1としての1を論理積演算部26に出力する。一方、第1比較判定部23は、瞬時周波数変化速度Δf(t)が下限閾値Th_LOW未満又は上限閾値Th_HiGHを超える場合には、フラグ1としての0を論理積演算部26に出力する。すなわち、第1比較判定部23は、瞬時周波数変化速度算出部21からの瞬時周波数変化速度Δf(t)が、SART遭難信号の周波数掃引速度と概ね同じである場合には1を出力する一方、瞬時周波数変化速度Δf(t)がSART遭難信号の周波数掃引速度と大きく異なる場合には0を出力する。

受信レベル算出部24は、受信機6から出力される複素受信信号のレベル(受信信号レベルL(t))を算出する。受信レベル算出部24は、受信機6から順次、出力される各タイミングでの複素受信信号の受信信号レベルL(t)を算出する。

第2比較判定部25は、受信レベル算出部24から順次、出力される受信信号レベルL(t)の値に応じて、フラグ2としての1又は0を、論理積演算部26に出力する。具体的には、第2比較判定部25は、上記受信信号レベルL(t)の値が第1閾値Th1以上の場合には、フラグ2としての1を論理積演算部26に出力する。一方、第2比較判定部25は、上記受信信号レベルL(t)の値が第1閾値Th1未満の場合には、フラグ1としての0を論理積演算部26に出力する。すなわち、第2比較判定部25は、上記受信信号レベルL(t)の値が比較的大きく、当該受信信号がSART遭難信号である可能性が高い場合には1を出力する一方、上記受信信号レベルL(t)の値が比較的小さく、当該受信信号がSART遭難信号である可能性が低い場合には0を出力する。

論理積演算部26は、第1比較判定部23から出力されるフラグ1の値(0又は1)と 、第2比較判定部25から出力されるフラグ2の値(0又は1)との論理積を算出し、その算出結果をフラグ3としてカウンタ部27へ出力する。言い換えれば、論理積演算部26は、フラグ1の値が1であり、且つ当該フラグ1と対応するフラグ2の値が1である場合に、フラグ3としての1をカウンタ部27へ出力し、それ以外の場合には、フラグ3としての0をカウンタ部27へ出力する。すなわち、論理積演算部26は、あるサンプルデータが、瞬時周波数変化速度Δf(t)及び受信信号レベルL(t)の値の観点においてSART遭難信号である可能性が高い場合には、フラグ3として1を出力し、そうでない場合には、フラグ3として0を出力する。論理積演算部26は、第1比較判定部23から順次、出力されるフラグ1の値と、第2比較判定部25から順次、出力される、フラグ1に対応するフラグ2の値とに応じて、順次、フラグ3をカウンタ部27へ出力する。

カウンタ部27は、論理積演算部26から出力されるフラグ3の値が1の場合、当該カウンタ部27で記憶しているカウント値に1を追加する。一方、カウンタ部27は、論理積演算部26から出力されるフラグ3の値が0の場合、当該カウンタ部27で記憶しているカウント値をリセットして0にする。すなわち、カウンタ部27で記憶されるカウント値は、論理積演算部26から出力されたフラグ3としての1の値が連続して出現した数であって、その時点でフラグ3としての1の値が連続している場合に記憶されている値である。

遭難信号判定部28は、カウンタ部27で記憶されるカウンタ値が所定の閾値(第2閾値Th2)以上となった場合に、その複素受信信号にSART遭難信号が含まれていると判定する。

そして、送信タイミング制御部2a及びパルス合成部9は、上述のようにSART遭難信号が検出されたら、SART遭難信号と判定した受信期間では、変調パルスの受信信号をレーダ映像に反映しないように、送信タイミング制御およびパルス合成を行う。

[レーダ装置の動作] 次に、以上のように構成された本実施形態に係るレーダ装置1の動作について具体的に説明する。以下では、まず、トランスポンダ応答波検出部10におけるSART遭難信号の検出動作について、図7を用いて説明する。そして次に、無変調パルスの送受信期間にSART遭難信号が検出された場合、変調パルスの送受信期間にSART遭難信号が検出された場合、の動作について説明する。

図7は、トランスポンダ応答波検出部10の動作を示すフローチャートである。なお、トランスポンダ応答波検出部10での動作が開始される前、例えばレーダ装置1の製造時において、記憶部22に、上限閾値Th_HiGH、下限閾値Th_LOW、及び第1閾値Th1が記憶される(ステップS1)。

次に、ステップS2では、瞬時周波数算出部20が、レンジ方向における所定の位置のサンプルを対象サンプルとし、当該対象サンプルの複素受信信号の瞬時周波数f(t)を算出する。具体的には、ステップS2では、上記複素受信信号の位相の時間微分が算出されることにより、該複素受信信号の瞬時周波数f(t)が算出される。

次に、ステップS3では、瞬時周波数変化速度算出部21が、ステップS2で算出された瞬時周波数f(t)の変化速度(瞬時周波数変化速度Δf(t))を算出する。具体的には、ステップS3では、瞬時周波数f(t)の時間微分が算出されることにより、瞬時周波数変化速度Δf(t)が算出される。

次に、ステップS4では、第1比較判定部23によって、瞬時周波数変化速度Δf(t )が下限閾値Th_LOW以上且つ上限閾値Th_HiGH以下であるか否かが判定される。瞬時周波数変化速度Δf(t)が下限閾値Th_LOW以上且つ上限閾値Th_HiGH以下である場合(ステップS4のYes)、第1比較判定部23は、フラグ1としての1を論理積演算部26へ出力する(ステップS5)。一方、瞬時周波数変化速度Δf(t)が、下限閾値Th_LOW未満又は上限閾値Th_HiGHを超える場合(ステップS4のNo)、第1比較判定部23は、フラグ1としての0を論理積演算部26へ出力する(ステップS6)。

一方、以下で詳しく説明するステップS7からステップS10までの工程は、上述したステップS2からステップS6までの工程と並行して、或いは上述したステップS2からステップS6までの工程の前又は後に、行われる。

ステップS7では、受信レベル算出部24が、レンジ方向における所定の位置のサンプル(上述したステップS2における対象サンプルと同じサンプル)を対象サンプルとし、当該対象サンプルの複素受信信号の受信信号レベルL(t)を算出する。

次に、ステップS8では、第2比較判定部25によって、受信信号レベルL(t)が第1閾値Th1以上であるか否かが判定される。受信信号レベルL(t)が第1閾値Th1以上である場合(ステップS8のYes)、第2比較判定部25は、フラグ2としての1を論理積演算部26へ出力する(ステップS9)。一方、受信信号レベルL(t)が第1閾値Th1未満である場合(ステップS8のNo)、第2比較判定部25は、フラグ2としての0を論理積演算部26へ出力する(ステップS10)。

次に、ステップS11では、論理積演算部26が、フラグ1及びフラグ2の論理積を演算する。フラグ1及びフラグ2の論理積が1である場合(ステップS11のYes)、ステップS14に進む。一方、フラグ1及びフラグ2の論理積が0である場合(ステップS11のNo)、ステップS12に進む。

ステップS11においてフラグ1及びフラグ2の論理積が0である場合、ステップS12では、カウンタ部27で記憶されているカウンタ値がリセットされて0になる。

次に、ステップS13では、瞬時周波数f(t)及び受信信号レベルL(t)の算出対象となる対象サンプルが、レンジ方向に(具体的には、レンジ方向における自船から遠い側に)ずらされる。そして、ステップS2及びステップS7に戻り、新たに設定された対象サンプルの複素受信信号に対して、瞬時周波数f(t)及び受信信号レベルL(t)が算出される。

一方、ステップS11においてフラグ1及びフラグ2の論理積が1である場合、ステップS14では、カウンタ部27で記憶されているカウンタ値に1が加算される。

次に、ステップS15では、遭難信号判定部28が、遭難信号の有無を判定する。具体的には、ステップS15では、カウンタ部27で記憶されているカウンタ値が第2閾値Th2未満の場合(ステップS15のNo)、遭難信号判定部28は遭難信号を検出しない。そして、次に、ステップS13において対象サンプルがレンジ方向にずらされた後、新たに設定された対象サンプルの複素受信信号に対して、瞬時周波数f(t)及び受信信号レベルL(t)が算出される(ステップS2及びステップS7)。一方、カウンタ値が第2閾値Th2以上の場合(ステップS15のYes)、遭難信号判定部28は、複素受信信号に遭難信号が含まれているとして、遭難信号を検出する(ステップS16)。

次に、無変調パルスの送受信期間にSART遭難信号が検出された場合の動作について 説明する。上記したように、遭難信号判定部28によってSART遭難信号が検出される。SART遭難信号は、最初に検出された時刻から所定時間(例えば100μs)は継続して受信される可能性が高いため、その間は変調パルスの送受信期間に移行せず、無変調パルスの送受信期間が維持される。すなわち、SART遭難信号の出現領域が終了するまで無変調パルスの送受信期間が延長されるように、次の送信トリガが遅らせられる。パルス合成部9は、SART遭難信号の終了点までは無変調パルスの受信信号を用いて、それ以降では変調パルスの受信信号を用いて合成信号を生成する。

図8に無変調パルスの送受信期間でSART遭難信号を検出しなかった場合(図8(A))、無変調パルスの送受信期間でSART遭難信号を検出した場合(図8(B))の送信タイミングをそれぞれ示す。無変調パルスの送受信期間にSART遭難信号が検出された場合、SART遭難信号の出現領域が終了するまでは、変調パルスの送受信期間へは移行されない。

図9に無変調パルスの送受信期間でSART遭難信号を検出した場合に描画されるレーダ映像構成例を示す。無変調パルスの送受信期間にSART遭難信号が検出された場合、SART遭難信号の受信期間は無変調パルスの送受信期間が維持されるので、パルス圧縮処理されない無変調エコー信号処理部7の出力信号(SART遭難信号)によってレーダ映像が描画される。この結果、本来は変調パルスによる映像表示領域であっても、無変調パルスの送受信期間がSART遭難信号の出現領域の終了点まで延長され、SART遭難信号が出現する領域では無変調パルスのエコーでレーダ映像が描画される。

レーダアンテナ5はビーム指向性を持って回転しているため、SART位置が送信パルスの放射範囲から外れる表示領域では、SART遭難信号は現れなくなる。そして、SART遭難信号が検出されなくなったら、無変調・変調パルスの送受信期間を初期状態に戻す。これにより、図9に示すように、SART遭難信号が検出されなくなる方位では、無変調パルスのエコーによる映像表示領域の外側に、変調パルスのエコーによるレーダ映像が描画される。

図10にパルス圧縮処理されたSART遭難信号の映像表示例を示す。同図に示すように、12個の短点パターンは、パルス圧縮処理によって距離方向に延びてしまい、各短点同士が完全につながってしまう。これでは、12個の短点ではなくなるため、レーダ操作者はSART遭難信号であると認識できなくなる。また、本来のSART遭難信号の映像からは12個の短点の始点位置付近に遭難船がいると認識できるが、SART遭難信号をパルス圧縮処理した場合、手前距離側にも短点が伸びてしまうため、遭難船までの距離が分からなくなる。さらに、SART遭難信号上に物標がいた場合は、短点の隙間にエコーが表示されることでその物標の存在を認識することができるが、パルス圧縮処理によって隙間が埋まってしまうと、エコーが遭難信号によって完全にマスクされる。

本実施の形態では、SART遭難信号を検出したらSART遭難信号が出現する領域(方位・距離範囲)では、パルス圧縮処理をともなう変調パルスの受信信号を使わずに、レーダ映像を生成するので、図9に示すようにSART遭難信号は12個の短点パターンとして表示でき、エコーが遭難信号によって完全にマスクされる不都合も回避される。

次に、変調パルスの送受信期間にSART遭難信号が検出された場合の動作について説明する。

遭難信号判定部28によってSART遭難信号が検出されたら、判定したSART遭難信号の受信期間に対応するパルス圧縮処理後データ(変調エコー信号処理部8の出力)は使わずに、パルス合成する。このときSART遭難信号の受信期間として判定した受信期 間の映像データには、例えば前回の送受信期間(SART遭難信号を検出しなかった送受信期間)で得たパルス圧縮処理後データで代用する。

また、続く送受信周期においても同様の距離範囲にわたってSART遭難信号が出現する可能性が高い。上記のようにSART遭難信号を検出する前のデータで代用し続けると、その方位に真に存在するエコーを把握できない。そこで、変調パルスの送受信期間にSART遭難信号を検出した場合は、続く無変調パルスの送受信期間を、判定したSART遭難信号の受信期間の終了点まで延長するように送受信タイミング制御を行う。こうすることで、SART遭難信号が出現する領域では、無変調パルスエコーでレーダ映像を描画可能となる。

レーダアンテナ5はビーム指向性を持って回転しているため、上記いずれの場合でも、いずれSART遭難信号は現れなくなる。SART遭難信号が検出されなくなったら、無変調・変調パルスの送受信期間を初期状態に戻す。

このように本実施の形態に係るパルス圧縮レーダ装置は、受信信号の中からSART遭難信号を検出し、SART遭難信号を検出したらSART遭難信号が出現する領域(方位・距離範囲)では、パルス圧縮処理をともなう変調パルスの受信信号を使わずに、レーダ映像を生成する。これにより、従来技術ではSART遭難信号をパルス圧縮処理しレーダ映像に表示した場合には、レーダ操作者がSART遭難信号の特徴である12個の短点を正常に認識できなくなる、という問題を解決できる。また、SART遭難信号がパルス圧縮により距離方向に伸びてしまうためにSARTまでの距離を正確に把握できなくなる、他のエコーをマスクしてしまうという問題をも解決できる。

なお、本実施の形態では、SART遭難信号を検出したらSART遭難信号が出現する領域(方位・距離範囲)ではパルス圧縮処理をともなう変調パルスの受信信号を使わずに、レーダ映像を生成するように構成したが、次のような変形も可能である。

すなわち、SART遭難信号を検出したら、検出したSART遭難信号のレベルに基づいて、受信信号からSART遭難信号成分のみを減算してからパルス圧縮処理する、という構成にしてもよい。

または、SART遭難信号を検出したら、変調パルスの送信を一切行わずに、SART遭難信号が現れなくなるまで、全レーダ探知距離範囲にわたって無変調パルスの送受信のみでレーダ映像を生成する構成としてもよい。

ところで、従来から知られているレーダ装置では、SART遭難信号と略等しい一定周期の信号と、レーダ装置により探知された探知データとを相互相関処理することにより、SART遭難信号の有無を判定している。しかし、この手法では、SART遭難信号を構成する複数個(具体的には、12個)のパルスのいくつかが他のエコー信号によってマスクされた場合、SART遭難信号を正確に検出できなくなる虞が生じる。しかも、従来から知られているレーダ装置では、ある程度の長さ(SART遭難信号の受信期間程度)を有する波形信号同士の相関演算が必要となるため、信号の処理負荷が比較的大きくなってしまう。

これに対して、本実施形態に係る本実施形態に係るレーダ装置1では、レーダアンテナ5で受波された受信波から生成された複素受信信号から得られる瞬時周波数変化速度Δf(t)と、規格により定められたSART遭難信号の周波数掃引速度(基準周波数掃引速度)に基づく値(本実施形態の場合、上限閾値Th_HiGH及び下限閾値Th_LOW)との比較結果に基づいて、捜索救助用レーダトランスポンダからの遭難信号の有無が判定 されている。こうすると、SART遭難信号を構成する複数個のパルスのうちのいくつかがマスクされた場合であっても、検出精度の劣化を抑制することができる。しかも、レーダ装置1によれば、複素受信信号から得られる瞬時周波数変化速度と、SART遭難信号の周波数掃引速度との比較に基づいて捜索救助用レーダトランスポンダからの遭難信号の有無が判定されるため、信号の処理負荷を従来と比べて小さくできる。

[効果] 以上のように、本実施形態の信号処理装置15では、瞬時周波数変化速度Δf(t)と上限閾値Th_HiGH及び下限閾値Th_LOWとの比較結果に基づいて、捜索救助用レーダトランスポンダからの遭難信号の有無が判定されている。こうすると、従来の場合と比べて、SART遭難信号を構成する複数個のパルスのうちのいくつかがマスクされた場合であっても、検出精度の劣化を抑制することができるとともに、信号の処理負荷を従来と比べて小さくできる。

従って、信号処理装置15によれば、捜索救助用レーダトランスポンダからの遭難信号を正確に検出するとともに、その検出のための演算負荷を小さくできる。

また、信号処理装置15では、複素受信信号の位相を時間微分して瞬時周波数f(t)を算出し、更にその瞬時周波数f(t)を時間微分して瞬時周波数変化速度Δf(t)を算出している。すなわち、レーダ装置1では、複素受信信号の位相を二階時間微分して瞬時周波数変化速度Δf(t)を算出しているため、当該瞬時周波数変化速度Δf(t)の算出の際の処理負荷を比較的小さくできる。

また、信号処理装置15では、瞬時周波数変化速度Δf(t)が、基準周波数掃引速度以上の値を有する上限閾値Th_HiGHと、基準周波数掃引速度以下の値を有する下限閾値Th_LOWとの間に含まれることを条件として、SART遭難信号が検出される。これにより、瞬時周波数変化速度Δf(t)が、規格によって定められたSART遭難信号の周波数掃引速度と概ね一致していることを条件としてSART遭難信号を検出できるため、SART遭難信号を適切に検出できる。

また、信号処理装置15では、上限閾値Th_HiGH以下且つ前記下限閾値Th_LOW以上である前記瞬時周波数変化速度Δf(t)が所定数以上連続して出現することを条件として、複素受信信号の中に前記遭難信号が含まれていることが判定される。これにより、偶発的に上限閾値Th_HiGH以下且つ前記下限閾値Th_LOW以上となった瞬時周波数変化速度Δf(t)を排除することができるため、より正確にSART遭難信号を検出できる。

また、本実施形態に係るレーダ装置1によれば、遭難信号を正確に検出でき且つその検出のための演算負荷が小さい信号処理装置15を備えたレーダ装置を構成することができる。

また、本実施形態に係るレーダ装置1によれば、レーダ装置で探知される探知領域のうち遭難信号が検出された領域については、パルス圧縮処理を行うことなくレーダ映像が生成されるため、表示器13においてSART遭難信号を距離方向に伸びてしまう不具合(図10参照)を解消することができる。

[変形例] 以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。

(1)上述した実施形態では、遭難信号に関する情報として、SART遭難信号の映像(12個の短点)をレーダ映像内に表示したが、これに限らない。具体的には、検出したSART遭難信号に基づいて推測される救助対象(遭難船等)の位置を、レーダ映像上にアイコン等で表示してもよい。更には、検出したSART遭難信号に基づいて推測される救助対象の位置(緯度及び経度等)を、表示器のディスプレイにおけるレーダ画像が表示されている部分以外の部分に表示してもよい。

(2)上述した実施形態では、遭難信号判定部28は、瞬時周波数変化速度算出部21によって算出された瞬時周波数変化速度Δf(t)が連続して複数以上(第2閾値Th2以上)出現することを条件として遭難信号を検出したが、これに限らない。具体的には、例えば一例として、瞬時周波数変化速度算出部21によって算出された瞬時周波数変化速度Δf(t)が所定の周期で(具体的には、SART遭難信号の周期である7.5±1μsの周期で)出現することを条件として、遭難信号を検出してもよい。

1 レーダ装置 5 レーダアンテナ(受波部) 15 信号処理装置 21 瞬時周波数変化速度算出部 22 記憶部 28 遭難信号判定部

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