【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明に係るトルク伝達機構は、主に車両用のシートの着座面の高さ調整装置または窓開閉装置などの操作力伝達機構として利用され、操作側から装置に回転を伝達するように出力軸を回転させることができるが、装置側からは出力軸を回転はできないようにするものである。 【0002】 【従来の技術】この様な特性を実現するトルク伝達装置としては、例えば米国特許5460253に開示されているものがある。 このトルク伝達装置は、固定部材に結合される内側リングと、内側リングと隙間を有して配置される外側リングと、隙間に挟まれて配置される2組の対のローラと、対のローラの間に配置されローラの間隔を広げるように作用するバネと、外側リングの側壁に設けられた穴から挿入され対のローラをバネとは反対側から挟む形状の爪部分を持ち、内側リングの外径上で回転可能に支持される操作レバーと、外側リングに固定され且つ内側リングの内径を貫通するように配置されたシャフトとを有している。 そして、内側リングと外側リングの隙間は徐々に狭くなる部分的を有し、各対のローラの間に配置されたバネによって、各ローラを隙間の狭い方向に押しつけている。 このように構成されたトルク伝達装置では、狭い隙間に押し付けられたローラのいわゆるクサビ効果で、ローラと内側および外側リングとの間に大きな荷重を発生させ、その荷重に伴う大きな摩擦力を得る。 このために、内側および外側リングは強固に相互の回転が阻止される。 このようなトルク伝達装置が応用装置に組付けた状態で、応用装置のギヤ等に回転を伝達するように連結されたトルク伝達装置のシャフト側に応用装置から反力として回転トルクを与えられた場合、回転トルクはシャフトから外側リングに伝えられるが、外側リング、ローラ、及び内側リングは強固に相互の回転が阻止され、且つ内側リングは固定部材に結合されているためシャフトは回転しない。 【0003】一方、操作レバーを回転操作すると、爪部分はバネ力に抗してローラを内側リングと外側リングの隙間の挟み込みから開放するように変位させ、かつ外側リングの側壁の穴と爪部分の当接によって、操作レバーは外側リングを回転させることによって、シャフトを軽い操作力で回転させることができる構成となっている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した従来の技術のように、外側リングと内側リングの間の隙間にローラを挟み外側リングと内側リングを係止する構成のトルク伝達装置では、外側リングからローラを介して内側リングに伝達される場合、内側および外側の各リングとローラとは線接触となる。 そして、この接触箇所には、荷重が集中し大きな応力が発生する。 また、作動時の内側および外側の各リングとローラとは、ほぼ一定の位置で接触するため、各リングの摩耗も大きくなる問題が生じる。 本発明はこの問題を解消するため、内側および外側の各リングへ加わる荷重の集中を無くし、摩耗の少ない耐久性に優れるトルク伝達装置を実現することを課題とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】上記した課題を解決するために、本発明で講じた技術的な手段は、外周上に配置される第1の接触面部を有する内側支持部材と、内周上に配置される第2の接触面部を有する外側支持部材と、 前記第1の接触面部と前記第2の接触面部の間隔が、周上の一方向に向かって狭くなる第1の挟持部と、周上の他方向に向かって狭くなる前記第2の挟持部と、前記第 1の挟持部と第2の挟持部にそれぞれ挟まれる対の介在部材と、前記介在部材間に配置され、前記各介在部材を前記挟持部の間隔が狭くなる方向へ前記各介在部材を付勢する弾性部材と、前記弾性部材の作用力に抗して、前記介在部材のいずれか一方を前記第1または第2の挟持部の間隔が広くなる方向へ移動させる操作部材とを備えるトルク伝達装置において、前記介在部材は、それぞれ前記第1接触面部と面接触で当接する第3の接触面部と、第2の接触面部と面接触で当接する第4の接触面部とを有するようにしたことである。 【0006】この構成によって、内側および外側の各支持部へは面接触で荷重が伝達され、荷重の集中が無くなる。 この結果、摩耗の少ない耐久性に優れるトルク伝達装置が実現される。 【0007】 【発明の実施の形態】以下、本発明に関るトルク伝達装置の実施形態を図1乃至図3に従って説明する。 【0008】本発明に係るトルク伝達装置1のハウジング20には、一方端が縦壁面部26によって塞がれ、他方が開放される円筒部25によって空間部2が形成されている。 縦壁面部26の中央部には軸受け穴22が形成され、円筒部25の開放端側には径方向の外側に広がって延びるフランジ部24が形成されている。 フランジ部24には、複数個の取付け穴23が設けられ、トルク伝達装置1を応用装置80(図3)に取付けるのに使われる。 【0009】ハウジング20の空間部2の奥で、縦壁面部26にもっとも近い底部に操作板30が配置される。 操作板30は平板で外形が円筒部25の内径よりわずか小さい円形に形成され、その周囲の4個所に所定の幅の切欠き部32を有している。 さらに中央部分には穴33 が形成され、穴33は対向する並行面の部分33aを有する形状となっている。 【0010】穴33には、穴33とほぼ隙間なく係合するよう並行面の部分12aを有する段差部12が形成されたシャフト10が挿入されている。 シャフト10は、 ハウジング20の軸受け穴22を貫通して挿入され、シャフト10にはシャフト10の一方側をハウジング20 に回転自在に支持するための大径軸部11が形成されている。 さらにシャフト10が軸受け穴22からハウジング20を貫通して、ハウジング20の外側に突出する部分の外径には、軸方向に延びる複数の溝によるセレーション15が形成され、シャフト10を回転操作するための操作ハンドル90(図3)が固定して取付けられる。 さらに、シャフト10には段差部12と接しボス部13 が形成され、またセレーション15とは反対側となる他方端部に小径軸部14が形成されている。 【0011】ハウジング20の空間部2の開放端側に最も近い部分には、略円盤形状の内側支持部材50が配置されている。 内側支持部材50の外径は、ハウジング2 0の円筒部25の内径面21に嵌り、且つ回転自在に支持される寸法となっている。 内側支持部材50の軸方向の一方側の面上には、空間部2の外に突出するように歯車53が一体的に形成されている。 この歯車53を例えば後述するシートの着座位置調整装置80(図3)の作動歯車70と噛み合うように取付け、着座位置調整装置80を作動させるように連結する。 内側支持部材50の軸方向の他方側面には、空間部2内に向かって突出するようにリング部58が形成されている。 リング部58の内径はシャフト10のボス部13を収納できる大きさの形状となっている。 またリング部58の外径形状には、 図2に最も良く示されるように、上下および左右に、その中心に対して対称形状となる4個所の傾斜面51が形成されている。 この傾斜面51は、図2で右側に一対と左側に一対となっていて、さらに対となる傾斜面51同士は中央部で接続し、この接続部51aの位置でハウジング20の円筒部25の内径面21と最も大きな間隔を有する形状になっている。 各傾斜面51は、図2の上側に示される方は周の反時計方向周りに、下側に示される方は時計方向周りに、内径面21との間隔が徐々に小さくなる形状を有している。 そして、各傾斜面51はそれぞれが周方向にほぼ50度程度の角度範囲を占めるように形成されている。 図2に示されるように、左右に配置される各対の傾斜面51の間には、傾斜面51よりリング部58の中心から近い位置に円弧面の段差径部56が形成され、傾斜面51と段差径部56の境界部には肩部55が形成されている。 【0012】図2に最も良く示されているように、各傾斜面51とハウジング20の円筒部25の内径面21との間に形成される挟持部51a内に挟まれて、かつ各対の傾斜面51上を覆うように当接して、4個の介在部材40が配置されている。 各介在部材40は、それぞれ対応する傾斜面51と概略40度程の範囲で当接する内側接触面44を備えている。 介在部材40の一方端部には肩部55と係合可能となる突起部42が形成され、通常は肩部55と微小間隔dをもって配置されている。 また介在部材40は傾斜面51と当接するとともに、内径面21ともその外側接触面45で当接し、傾斜面51と内径面21の両側に同時に密着して挟まれる。 このために、介在部材40の幅が徐々に狭くなるクサビ形状となっている。 【0013】図2に示されるように、リング部58の外径と円筒部25の内径面21の間には、対となっている介在部材40の間に、相互の間隔を広げるように作用力を及ぼすばね60が配置されている。 このばね60は、 W字形状とした板ばねで成形され、その両側の接触片6 1によって、介在部材40を常に傾斜面51と内径面2 1の間隔の狭くなる方へと押し付けている。 この押し付け力はいわゆるクサビ効果によってリング部58と円筒部25の双方に対して大きな押す荷重を発生させ、この荷重に伴う摩擦力でハウジング20とリング部50は介在部材40を介して強固に固定される構成となっている。 【0014】介在部材40のほぼ中央部には、操作板3 0の周囲4個所に形成された切欠き部32に挿入されるように突出する突起41が形成されている。 突起41の幅は切欠き部32の幅より小さく、また突起41の一方側で切欠き部32の端面と微小隙間eをもって対向し、 他方側には大きな隙間を残して配置されている。 各隙間eは、操作板30が、図2で時計方向、または反時計方向のいずれの方向に回転した場合にも、この隙間eに相当する角度の操作板30の回転で、操作板30が突起4 1の一方側と当接し、介在部材40を傾斜面51に沿って傾斜面51と内径面21の間隔の広くなる方に押すことができる配置となっている。 このとき、介在部材40 は傾斜面51と内径面21の間隔の広くなる方に押す出されるために傾斜面51および内径面21と密着した状態は解除される。 【0015】既に説明したように、操作ハンドル90 は、シャフト10を介して操作板30を連結されている。 従って、操作ハンドル90を回転すると、操作板3 0と介在部材40が当接して回転する。 これによって傾斜面51と内径面21に対する介在部材40の密着した状態が解除される。 そして介在部材40が隙間d分移動すると、介在部材40に設けられた突起部42がリング部50の突起55と係合し、リング部50を同方向に回転させる。 リング部50がハウジング20に対して回転することによって、今度は操作板30と当接していないもう一方側の介在部材40を挟んでいる傾斜面51と内径面21の間隔が広がり、この部分での密着状態が解除される。 結果的に4個所全ての密着状態が解除され、操作ハンドル90の軽い回転操作力によってリング部50 に一体形成された歯車53を回転させることができる構成となっている。 【0016】次に、以上のように構成されたトルク伝達装置1を、例えば車両用のシートの座面高さを調整する装置80に応用した場合の作動を説明する。 装置80 は、その機構(図示せず)を作動させるための歯車70 を備え、トルク伝達装置1の歯車53と噛み合っている。 乗員は最適な着座高さを実現するために、操作ハンドル90を回転操作して、歯車70を回転させ、装置8 0の機構(図示せず)を作動させる。 最適高さを実現した後、車両の走行中に振動などによって機構(図示せず)に発生する荷重が、歯車53に伝達されるが、上記したトルク伝達装置1を構成するハウジング20とリング部50および介在部材40間の強固な拘束力で最適高さ位置は保持される。 【0017】 【発明の効果】本発明によれば、内側および外側の各支持部は介在部材と面で接触して拘束力を発揮する構成となっているために、内側および外側の各支持部と介在部材には荷重が集中することが無く、大きな応力の発生が防止される。 この結果、摩耗の少ない耐久性に優れるトルク伝達装置が実現される。 また、介在部材には、前記内側支持部と係合可能な一体的に形成された係合部を有し、部品点数が少なく安価で強固なトルク伝達装置が実現される。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明にトルク伝達装置の分解斜視図である。 【図2】本発明に係るトルク伝達装置の平面図である。 【図3】本発明に係るトルク伝達装置の中央部での断面図である。 【符号の説明】 1 トルク伝達装置 20 外側支持部材(ハウジング) 21 第2の接触面部(内径面) 30 操作部材(操作板) 40 介在部材 42 係合部 44 第3の接触面部(内側接触面部) 45 第4の接触面部(外側接触面部) 50 内側支持部材 51 第1の接触面部 51b 第1挟持部、第2挟持部(挟持部) 60 弾性部材(ばね) |