【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、動力伝達システムの技術に関し、特に車両用自動変速機に属するもので、具体的には、本発明は、車両の自動変速機においてトランスミッションオイルのレベルを正確に信頼性高く決定する装置及び方法に関する。 【0002】 【従来の技術】車両用自動変速機は、車両の効率及び操作者の快適さをもたらすため、一般的に用いられている。 しかしながら、自動変速機の動作効率は、多くの場合、自動変速機自体の内部にある伝達流体即ちトランスミッションオイルが適当な体積であるか否かによって決まるものである。 自動変速機の適切な動作は、トランスミッションオイルの適切な体積の使用に依存するだけでなく、伝達による摩耗を最少に止め、システムの寿命を延ばすことを保証する。 【0003】現在、自動変速機内のオイルレベルは典型的には計深棒を用いることによって監視されている。 しかしながら、正確なオイルレベルの測定のためには、計深棒を各設置毎に適切に較正しなければならず、しかも、最適な即ち理想的な状態の下で測定を行わなければならない。 これらの状態の中には、トランスミッションオイルが通常の動作温度であることの保証、エンジン速度又は自動変速機への入力速度が設定したレベルにあること、及び自動変速機に対するトランスミッションオイルのドレイン・バック(drain back)又は安定時間(settling time)の要件が満足されていることを含む。 勿論、いかなるこのような測定も、操作者が計深棒上のトランスミッションオイルのラインと最大/追加ラインとの間の差を正確に観察しかつ解釈しなければならないので、操作者の能力も、計深棒での読み取り精度に影響を及ぼすことになる。 測定を行う際、理想的な動作状態及び操作者の能力に対する要求が満たされないことが、非常に頻繁に起こっている。 その結果、自動変速機のオイルレベルが不正確に測定されてしまい、低いシフトの質、非効率的な動作、操作者の不快、及び変速機の寿命の短縮の原因となる。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】当技術においては、検査状態が理想的ではない場合を自動的に考慮して調整し、自動変速機におけるオイルレベルの標準許容レベルからの偏差を適切に決定する際に測定の主観的解釈を除去する、自動変速機におけるオイルレベル決定装置及び方法が必要とされている。 【0005】本発明に係る方法は、請求項1に具体化されている特徴によって特徴付けられる。 【0006】上述に関して、本発明は、自動変速機におけるトランスミッションオイルのレベル決定において、 測定時における理想的でない動作状態を考慮し且つ調整する方法を提供するものである。 【0007】また、本発明は、実質的に自動で、操作者の誤りを受け付けず、オイル温度及び結果的に得られる比重、エンジン速度及び安定時間の変動に適応し、非常に精度が高く且つ反復可能な測定を可能とし、更に、既存の自動変速機用電子制御装置と共に容易に実施できる方法を提供することもできる。 【0008】 【実施例】以下、本発明を添付図面を参照して、例に沿って説明する。 【0009】図面、特に図1は、本発明の概念を採用するのに適した車両用伝達システムを全体的に符号10で示している。 伝達システム10は、エンジン又は他の適切な動力源(図示せず)に適切に接続された入力軸12 と、車輪軸等(図示せず)のような被駆動部材に適切に接続された出力軸14とを含んでいる。 入力軸及び出力軸12、14の間に自動変速機16が介挿され、自動変速機は、当業者には公知のように、複数の油圧制御式ギア段を備えている。 所望ならば、自動変速機は、出力軸14と相互接続される流体力学的リターダ(hydro dynamicretarder)18を備え、出力軸14上の負荷を増加させることによって出力軸14の出力トルクを制動し、車両を制動する目的に用いてもよい。 【0010】電子制御装置20は、標準的には、データ及び制御バス22を介して自動変速機16及び流体力学的リターダ18と相互接続されている。 電子制御装置2 0は1つ以上の専用マイクロプロセッサ又は他の制御装置を含む。 電子制御装置20は、標準的な自動変速機1 6及び流体力学的リターダ18の動作を制御すると共に、それらと双方向通信を行い、動作データを得て、その結果として制御命令を発生するように構成されている。 【0011】図2に示すように、本発明によれば、電子制御装置20は、データ・制御バス22を介して複数のセンサ及び変換器とも通信し、本発明によるオイルレベル決定を補助する動作情報を得る。 本発明の一部として、適切なサーミスタ又は他の温度センサ24が自動変速機16の貯油槽(reservoir)内に保持されており、トランスミッションオイルの瞬時的温度に対応する出力信号を生成する。 同様に、自動変速機16の貯油槽空乏部内にオイルレベル・センサ26が設けられ、 当業者には公知のように、これは貯油槽内の実際のオイルレベル及び該オイルの比重の関数である出力信号を発生する。 本発明の好適実施例では、オイルレベル・センサ26は、浮きの上で動作するホール効果センサから成る。 勿論、本発明の概念を維持するのであれば、他のセンサを用いてもよい。 オイルの比重は温度と共に変化し、オイルレベル・センサ26の浮遊レベルは実際のオイルレベルだけでなくオイルの比重の関数でもあるので、オイルレベル・センサ26の出力は、トランスミッションオイルの実際のレベル及び温度によって影響されるトランスミッションオイルの比重の関数となる。 【0012】エンジン速度変換器28も電子制御装置2 0と相互接続されており、入力軸12に接続されたエンジンの瞬時的速度に対応する出力信号を生成する。 勿論、エンジン速度変換器28は、典型的には、入力軸1 2と動作的に相互接続されてもよい。 伝達速度変換器3 0も電子制御装置20と出力軸14との間に相互接続されており、出力軸14において認められる瞬時伝達出力速度に対応する信号を発生する。 【0013】1つ以上の専用マイクロプロセッサを備えていることが好ましい電子制御装置20を用いる場合、 そこに入力される信号は、アナログよりもデジタル信号であることが特に望ましい。 したがって、センサ及び変換器24−30はデジタル出力信号を発生するように選択してもよいし、適宜のアナログ/デジタル変換器を各センサ及び変換器24−30と電子制御装置20のと間に介挿し、デジタル情報が電子制御装置20に供給されるようにしてもよい。 【0014】図2に示されたセンサ及び変換器24−3 0から得られたデータは図3のプロセスにおいて用いられ、自動変速機16内に受容されて保持されているトランスミッションオイルの体積の理想値からの偏差に対応する高い信頼度の正確なデータが得られる。 このプロセスは全体的に符号32で示されている。 オイルレベル・ システムは、典型的には、車両が停止している時、自動変速機16がニュートラルにある時、及びエンジンが許容可能なアイドル速度で動作している時(このような基準は全て電子制御装置20によって感知される)にのみ動作可能である。 オイルレベル・システムが動作可能でない場合、プロセス32は、それが動作可能となるまで、単に保持モードに留まる。 【0015】オイルレベル・プロセスがブロック34において開始した時、オイルレベル・センサ26の出力がブロック36において求められ、フィルタ38に渡され、ここで出力信号がある時間にわたって積分され平均信号が求まる。 この平均信号はオイルレベル・センサ2 6の浮きを受容している自動変速機16の貯油槽内のオイルの実際のレベル及び比重を精度よく示すものである。 フィルタ38は効果的に信号ノイズ及び疑似又は無関係な信号を除去し、実際のオイルレベルに対応する精度の高い信号を供給する。 【0016】ブロック40において、図2のデータ信号について多数の診断が行われ、オイルレベル決定を行うことができるかを判断する。 この診断の中には、オイルレベル・センサ26の出力が上下の閾値レベル間に存在する適正な(legitimate)信号であるか否かについての決定が含まれている。 温度センサ24の出力を監視することによって、オイル温度に関する付加的な診断も行われ、オイル温度が許容限度内にあるか否かを決定する。 また、エンジン速度も、受けるべき検査に対して許容可能なアイドル速度であることを保証する特定の範囲内に収まっているか否かについて監視される。 【0017】先に示したように、エンジン速度はエンジン速度変換器28からの出力信号によって表わされる。 同様にして、伝達速度変換器30の出力についても診断が行われ、該出力が設定した閾値未満であることを保証するようにしている。 最後に、ブロック40における診断も、自動変速機のニュートラルへのシフトから所定期間が経過し、トランスミッションオイルに十分なドレイン・バック又は安定時間が確保されたかどうかを決定する。 【0018】判定ブロック42では、データ信号が、ブロック40の診断検査を満足するか否かについて、及び、自動変速機16をニュートラルにシフトしてから十分な期間が過ぎたかについて決定が行われる。 診断が満足されない場合、図示のようにプロセスは繰返し続けられる。 しかしながら、診断がブロック42で満足されたなら、ブロック44でトランスミッションオイルの比重について第1の計算が行われる。 上述のように、そして当技術では公知のように、トランスミッションオイルの比重は該オイルの温度の関数である。 したがって、電子制御装置20は、温度センサ24によって感知された温度に対応するオイル比重を決定するルックアップ・テーブルを単に用いることもできる。 オイルレベル・センサ26の出力は該センサの浮きの高さと相関関係があり、 これは貯油槽内のオイルの実際のレベルと該オイルの比重との関数であるので、オイル比重の通常値からのいかなる偏差に対しても補償が行われなければならない。 貯油槽内のトランスミッションオイルの有効体積は、自動変速機16の動作に起因してオイル内で結果的に起きる空気の混入(entrainment)による影響を受ける。 ブロック46では、このような補償が行われ、伝達動作による空気混入を含む所定の検査比重における貯油槽内の実際のオイルレベルが決定される。 勿論、このようなレベルは体積を表す。 【0019】ブロック48において、エンジン速度及び安定時間によって影響を受けたオイルレベル・センサ2 6の出力信号について、更に補償が行われる。 オイルレベルはアイドル速度に関係する。 このような関係は、電子制御装置20のメモリ内に保持されているルックアップ・テーブル内に定式化されている。 次に、エンジン速度変換器28から得られた信号を用いて、オイルレベル・センサ26の出力信号のデータを通常のアイドル速度、例えば600rpmのような値に補償又は調整する。 エンジンのアイドル速度は、エアコンディショナ又はその他の補助的負荷の作動のような、エンジン負荷を含む多くのパラメータの関数として変動し得る。 【0020】ブロック49において、安定時間に対して更に補償が行われる。 一旦自動変速機16をニュートラルにシフトさせると、オイルレベル・センサ26が保持されている貯油槽内にオイルが排出され始める。 同時に、伝達動作中にオイルに混入された空気がオイルから離れ始める。 したがって、貯油槽内の実際のオイル量は、ニュートラルへのシフト時点から測定される時間によって変化する。 オイルが貯油槽に還流する速度は容易に知ることができるので、安定時間を貯油槽に還流されるオイルの予測体積と相関付けたルックアップ・テーブルを電子制御装置20内に設けることもできる。 更に、 安定時間は温度にも依存するので、ルックアップ・テーブルが一群の曲線を含むようにしてもよい。 具体的な安定時間を求めるためのプロセス32の検査を用いると、 オイルレベル・センサ26の出力に影響を与える安定時間の偏差は、ルックアップ・テーブルから容易に補償することができる。 【0021】温度に関連するオイル比重、エンジン速度及び安定時間の変化に対してオイルレベル・センサ26 の出力信号を補償した後、オイルレベル・センサ26からの補正された信号は、理想的なアイドル状態の下での実際のオイルレベルを表すことになる。 標準許容レベルからの調整されたレベルのいかなる偏差も、ブロック5 0においては誤差として表される。 ブロック46、48 及び49における動作は、ミリメートルのような線測定(lineal measurement)におけるレベルの決定を意図したものであるので、ブロック50で決定される誤差もこのような線寸法で計算され、次いで体積に変換される。 誤差はリットル等のように容易に認識可能な測定単位で決定されるのが好ましい。 この誤差は、貯油槽内に適切なトランスミッションオイルがないこと、又は過剰なトランスミッションオイルがあることを示すこともできる。 【0022】上述のように、オイル比重は温度に依存する。 したがって、自動変速機16の貯油槽内のオイルの体積も温度に依存する。 このため、ブロック58において、オイルレベルを測定する実際の温度とオイルの典型的な動作温度との間のいかなる体積変化をも補償する必要がある。 そこで、図3に示すように、温度センサ24 によって感知されるオイル温度は、自動変速機16の動作の全期間中、ブロック52において連続的に監視される。 温度信号はブロック54において適切なフィルタによって処理され、ブロック56において積分又は平均化されて、車両動作期間における平均オイル温度が決定される。 この平均オイル温度はそれぞれの車両に固有であり、連続的に更新される。 こうして、ブロック56において、特徴的な動作オイル温度を決定することができる。 検査時のオイルの温度がオイルの平均動作温度とは異なることがあるので、ブロック58において温度差を、したがって、ブロック50において決定される誤差の結果的な相違を補償することが必要である。 検査温度と典型的な動作温度が同一であれば、ブロック50で決定した誤差は正確である。 しかしながら、検査温度が平均動作温度より高い或いは低い場合、ブロック50における誤差決定を調整し、自動変速機16に付加される又はそこから放出されるオイル量を適切なものにする必要がある。 補正量はブロック58においてルックアップ・ テーブルから得られ、自動変速機16の貯油槽の設計体積に対する熱膨張を認めるように較正される。 ブロック60において、温度補償されたレベルの読取り及びその結果得られる誤差について計算が行なわれる。 この情報は、自動変速機の貯油槽にトランスミッションオイルを付加する又はそこからトランスミッションオイルを除去するための適切な補正動作を行なうために運転者によって用いられる。 【0023】運転者は、補償されたオイルレベル及び/ 又は誤差決定の表示をブロック61において要求し、適切な補正動作を行うようにすることもできる。 このような要求は適宜のスイッチ等で行われる。 このような要求が行われると、ブロック62において適切な表示がLE D又は液晶装置のような読み取り装置上に行われる。 表示要求がない場合、プロセス32は単に元に戻り、新たに処理を開始する。 【0024】ブロック58で行われた温度の偏差に対する補償はブロック49と50との間行われてもよい。 言い替えれば、ブロック50における体積誤差の計算の前に、このような温度補償を行ってレベル決定を調整することができる。 また、こうした温度補償は上述し図示したように行うこともできる。 いずれの場合でも、典型的な動作温度からの偏差に対する補償が行われる。 【0025】本発明の概念は、トランスミッションオイルのレベルを精度よく測定し、測定したレベルを最適検査状態からの偏差に対して補償するように動作する。 このような補償は、オイル温度の公称検査温度からの偏差、又はエンジン速度及び安定時間の同様な偏差に基づいて行うことができる。 オイルレベル・センサ26からの出力信号は、まず、基準の所望検査状態からのオイル温度の偏差に起因するオイル比重の変化に対する調整を行なうために補償され、次にオイルレベル及び誤差を調整して前述の偏差を補償する。 したがって、理想的な状態からのいかなる偏差に対しても補償が行われるので、 各検査又は測定が理想的な検査状態で効果的に行われることになる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の概念を用いるのに適した伝達システムのブロック図である。 【図2】図1の構造における種々の伝達センサと交信する電子制御装置のブロック図である。 【図3】本発明に係る方法を表わす流れ図である。 【符号の説明】 10:伝達システム、 12:入力軸、 14:出力軸、 16:自動変速機、 18:流体力学的リターダ、 20:電子制御装置、 22:データ・制御バス、 24:温度センサ、 26:オイルレベル・センサ、 28:エンジン速度変換器、 30:伝達速度変換器 フロントページの続き (72)発明者 トーマス・ハワード・ウィルソン アメリカ合衆国インディアナ州46226, インディアナポリス,ノース・オーデュ ボン・ロード 4801 (72)発明者 フィリップ・フランクリン・マコーレイ アメリカ合衆国インディアナ州46077, ザイオンズヴィル,ブレントウッド・ア ベニュー 11061 (72)発明者 ロナルド・アラン・リー アメリカ合衆国インディアナ州46112, ブラウンズバーグ,マーステラ・ドライ ブ 501 (72)発明者 ウィリアム・マイケル・マーレイ アメリカ合衆国インディアナ州46167, ピッツボーロー,ルーラル・ルート ナ ンバー 1,ボックス 287ケイ (56)参考文献 特開 昭49−91673(JP,A) 特開 昭62−209268(JP,A) 特開 昭62−251566(JP,A) 実開 昭63−110765(JP,U) 実開 昭63−142465(JP,U) 実開 昭52−98076(JP,U) 実開 昭63−153135(JP,U) 米国特許5282386(US,A) 欧州公開589507(EP,A1) (58)調査した分野(Int.Cl. 6 ,DB名) F16H 57/04 G01F 23/00 |