ハイブリッド車の制御装置

申请号 JP2016149897 申请日 2016-07-29 公开(公告)号 JP2018016255A 公开(公告)日 2018-02-01
申请人 トヨタ自動車株式会社; 发明人 橋本 洋人; 木村 浩章; 大野 智仁; 井口 拓也;
摘要 【課題】エンジンの回転を止めるためのクラッチとして噛み合い式クラッチを備えたハイブリッド車の制御装置を提供する。 【解決手段】クラッチ機構は、固定部材と、同一軸線上で対向して配置された回転部材と、固定部材と回転部材との互いに対向する面のそれぞれに設けられかつ前記互いに対向する面に向けて先細る形状の係合歯とを備え、エンジンを始動する要求の成立によって磁気吸引 力 が消失するように電磁アクチュエータをオフ制御し、かつオフ制御後に係合歯同士が互いに噛み合っている状態で、第1モータのトルクをクラッチ機構に作用させる。 【選択図】図4
权利要求

要素と出力要素と反力要素との少なくとも3つの回転要素によって差動作用を行う動力分割機構と、 前記入力要素に連結されたエンジンと、 前記反力要素に連結された第1モータと、 前記出力要素に連結された第2モータと、 前記入力要素の回転を選択的に止める噛み合い式のクラッチ機構と、 前記エンジンおよび前記第1モータならびに前記第2モータおよび前記クラッチ機構を制御するコントローラとを備え、 前記クラッチ機構は、固定部材と、前記固定部材と同一軸線上で対向して配置された回転部材と、前記固定部材と前記回転部材との互いに対向する面のそれぞれに設けられかつ前記互いに対向する面に向けて先細る形状の係合歯と、それぞれの係合歯同士が互いに噛み合うように前記固定部材と前記回転部材とを互いに接近させる方向に磁気吸引力を発生する電磁アクチュエータとを備え、 停止している前記エンジンを始動する際に前記第1モータによって前記エンジンをモータリングするように構成されたハイブリッド車の制御装置において、 前記コントローラは、 前記エンジンを始動する要求の成立によって前記磁気吸引力が消失するように前記電磁アクチュエータをオフ制御し、かつ前記オフ制御後に前記係合歯同士が互いに噛み合っている状態で、前記第1モータのトルクを前記クラッチ機構に出力させることを特徴とするハイブリッド車の制御装置。請求項1に記載のハイブリッド車の制御装置において、 前記第1モータが出力するトルクの方向は前記エンジンがトルクを出力する方向である ことを特徴とするハイブリッド車の制御装置。請求項1または2に記載のハイブリッド車の制御装置において、 前記固定部材と前記回転部材とは、前記電磁アクチュエータがオフ制御されて前記係合歯同士が噛み合わない原点位置に復帰し、かつ前記電磁アクチュエータによる磁気吸引力によって前記係合歯同士が噛み合うように前記軸線の方向に相対移動するように構成され、 前記コントローラは、 前記エンジンを始動する要求の成立によって前記磁気吸引力が消失するように前記電磁アクチュエータをオフ制御しかつ前記オフ制御後に前記係合歯同士が互いに噛み合っている状態で前記第1モータのトルクを前記クラッチ機構に作用させた場合の、前記固定部材と前記回転部材との前記原点位置から測った寸法である相対的な軸線方向への移動量が、予め定められた所定値未満の場合と前記所定値以上の場合とで、前記第1モータが出力するトルクの大きさを異ならせる ことを特徴とするハイブリッド車の制御装置。請求項3に記載のハイブリッド車の制御装置において、 前記コントローラは、 前記エンジンをモータリングするための第1目標トルクと前記第1目標トルクより大きな目標トルクであって前記係合歯同士が噛み合っている状態で前記クラッチ機構に作用させる第2目標トルクとの少なくとも2つの目標トルクを有し、 前記移動量が前記所定値未満の場合は前記第1目標トルクになるよう前記第1モータが出力するトルクを制御し、前記移動量が前記所定値以上の場合は前記第2目標トルクになるよう前記第1モータが出力トルクを制御する ことを特徴とするハイブリッド車の制御装置。請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のハイブリッド車の制御装置において、 前記電磁アクチュエータは、 通電されると磁力を発生するコイルと前記コイルを巻き回したヨークと前記ヨークと同一軸線上に対向して配置されかつ前記磁気吸引力により前記ヨークに接近する方向に移動するアーマチュアと前記ヨークと前記アーマチュアとが離間する方向に力が働くリターンスプリングとを備えている ことを特徴とするハイブリッド車の制御装置。請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のハイブリッド車の制御装置において、 前記コントローラは、 前記第1モータが出力したトルクを打ち消す方向に前記第2モータのトルクを出力させるように制御する ことを特徴とするハイブリッド車の制御装置。

说明书全文

この発明は、エンジンの回転を止めてモータの出で走行可能なハイブリッド車の制御装置であって、特に、動力分割機構を構成している差動機構における入力要素もしくはその入力要素と一体となっている部材の回転を止めるためのクラッチ機構を備えるハイブリッド車の制御装置に関するものである。

特許文献1には、エンジンおよび第1モータならびに第2モータを駆動力源とするハイブリッド車両の駆動装置が記載されている。この特許文献1に記載されたハイブリッド車両の駆動装置は、エンジンおよび第1モータの出力トルクを駆動輪側へ伝達する動力分割機構を備えている。動力分割機構は、シングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。その遊星歯車機構のキャリヤにエンジンが連結され、サンギヤに第1モータが連結され、リングギヤに駆動輪へ動力を伝達する出力部材が連結されている。そして、エンジンを停止した状態で第1モータおよび第2モータの少なくとも一方から出力された動力を駆動輪に伝達させる電気走行モードと、第1モータおよび第2モータの少なくとも一方を発電機として機能させて車両の有する運動エネルギを電力として回生する回生走行モードと、エンジンから出力された動力を駆動輪に伝達させるエンジン走行モードとを選択的に設定することができる。また、この特許文献1に記載されたハイブリッド車両の駆動装置は、上記の電気走行モードにおいて、エンジンの回転を止めて固定するための噛み合い式クラッチを備えている。

また、特許文献2には、歯側面にクラッチの軸線方向の抜き勾配をつけられた噛み合い式クラッチ(ドグクラッチ)を係合もしくは解放するためのアクチュエータとしてソレノイドを使用した構成が開示されている。この特許文献2に記載されたソレノイドは、円筒状のコイルへ通電することにより、ばねの弾性力に抗して前記コイルの中心軸線方向での一方に移動させられるロッドを備えている。そのロッドには、噛み合い式クラッチの可動ドグの外周に装着したスリーブに係合するフォークが取付けられていて、スリーブをロッドとが一体となって前記中心軸線方向に進退するようになっている。円筒状のコイルへの通電を停止すると、ロッドおよびスリーブを前記中心軸線方向での一方に移動させていた電磁力が消失する。これに対して、ばねの付勢力に加えて、歯側面に軸線方向の抜き勾配が付けられていることにより歯側面同士の圧接力の中心軸線方向分力がロッドに作用しているので、これらの力によって、スリーブが中心軸線方向での他方に押し戻される。

特開2009−120043号公報

特開平11−240350号公報

特許文献2に記載されているソレノイドを、アーマチュアを電磁力で吸引するタイプのソレノイドに変更し、そのアーマチュアを可動ドグと一体化させておき、ソレノイドに通電することにより噛み合い式クラッチを係合させるように構成することが可能である。その場合、そのアーマチュアと電磁コイルもしくはヨークとの間隔(ギャップ)を可及的に小さくすれば、所定の磁気吸引力を発生させるのに要する電流を少なくできる。その反面、上記のギャップを小さくした場合には、ソレノイドへの通電を止めるいわゆるオフ制御を行った場合、残留磁気などの影響で磁気吸引力が直ちには消失せず、前記ギャップが小さいことによる比較的大きい磁気吸引力が残ってしまう。そのため、特許文献1に記載されているようにエンジンの回転を止めるためのクラッチとして、上記のギャップの小さいソレノイドを使用した場合には、クラッチの解放応答性あるいはエンジンの始動応答性が低下する可能性がある。

この発明は上記の技術的課題に着目して創作されたものであり、動力分割機構を構成している差動機構の入力要素の回転を止めるための噛み合い式クラッチの解放応答性を向上させることを目的とするものである。

上記の目的を達成するために、この発明は、入力要素と出力要素と反力要素との少なくとも3つの回転要素によって差動作用を行う動力分割機構と、前記入力要素に連結されたエンジンと、前記反力要素に連結された第1モータと、前記出力要素に連結された第2モータと、前記入力要素の回転を選択的に止める噛み合い式のクラッチ機構と、前記エンジンおよび前記第1モータならびに前記第2モータおよび前記クラッチ機構を制御するコントローラとを備え、前記クラッチ機構は、固定部材と、前記固定部材と同一軸線上で対向して配置された回転部材と、前記固定部材と前記回転部材との互いに対向する面のそれぞれに設けられかつ前記互いに対向する面に向けて先細る形状の係合歯と、それぞれの係合歯同士が互いに噛み合うように前記固定部材と前記回転部材とを互いに接近させる方向に磁気吸引力を発生する電磁アクチュエータとを備え、停止している前記エンジンを始動する際に前記第1モータによって前記エンジンをモータリングするように構成されたハイブリッド車の制御装置において、前記コントローラは、前記エンジンを始動する要求の成立によって前記磁気吸引力が消失するように前記電磁アクチュエータをオフ制御し、かつ前記オフ制御後に前記係合歯同士が互いに噛み合っている状態で、前記第1モータのトルクを前記クラッチ機構に出力させることを特徴とする。

また、この発明では、前記第1モータが出力するトルクの方向は前記エンジンがトルクを出力する方向であってよい。

また、この発明では、前記固定部材と前記回転部材とは、前記電磁アクチュエータがオフ制御されて前記係合歯同士が噛み合わない原点位置に復帰し、かつ前記電磁アクチュエータによる前記磁気吸引力によって前記係合歯同士が噛み合うように前記軸線の方向に相対移動するように構成され、前記コントローラは、前記エンジンを始動する要求の成立によって前記磁気吸引力が消失するように前記電磁アクチュエータをオフ制御しかつ前記オフ制御後に前記係合歯同士が互いに噛み合っている状態で前記第1モータのトルクを前記クラッチ機構に作用させた場合の、前記固定部材と前記回転部材との前記原点位置から測った寸法である相対的な軸線方向への移動量が、予め定められた所定値未満の場合と前記所定値以上の場合とで、前記第1モータが出力するトルクの大きさを異ならせていてよい。

また、この発明では、前記コントローラは、前記エンジンをモータリングするための第1目標トルクと前記第1目標トルクより大きな目標トルクであって前記係合歯同士が噛み合っている状態で前記クラッチ機構に作用させる第2目標トルクとの少なくとも2つの目標トルクを有し、前記移動量が前記所定値未満の場合は前記第1目標トルクになるよう前記第1モータが出力するトルクを制御し、前記移動量が前記所定値以上の場合は前記第2目標トルクになるよう前記第1モータが出力するトルクを制御してもよい。

また、この発明では、前記電磁アクチュエータは、通電されると磁力を発生するコイルと、前記コイルを巻き回したヨークと、前記ヨークと同一軸線上に対向して配置されかつ前記磁気吸引力により前記ヨークに接近する方向に移動するアーマチュアと、前記ヨークと前記アーマチュアとが離間する方向に力が働くリターンスプリングとを備えていてよい。

また、この発明では、前記コントローラは、前記第1モータが出力したトルクを打ち消す方向に前記第2モータのトルクを出力させるように制御してもよい。

この発明によれば、停止しているエンジンを始動する要求が成立して電磁アクチュエータをオフ状態に制御した場合にクラッチ機構のそれぞれの係合歯同士が互いに噛み合っている状態では、第1モータのトルクをクラッチ機構に出力させる。そのような場合、上記の第1モータのトルクに応じた回転部材における回転軸中心線方向の分力が互いに噛み合っているそれぞれの係合歯の歯面で生じ、その分力が、それぞれの係合歯同士、すなわち、固定部材と回転部材とを回転部材における回転軸中心線方向に相対的に離間させるように作用し、クラッチ機構の解放が促進される。つまり、エンジンの始動要求があり電磁アクチュエータをオフ状態に制御した際に直ちに磁気吸引力が消失しない場合であっても第1モータが出力したトルクをクラッチ機構に作用させるので、クラッチ機構が解放されるまでの時間を短くできる。これによりクラッチ機構の解放応答性あるいはエンジンの始動応答性を向上させることができる。

また、この発明によれば、停止しているエンジンを始動する要求が成立して電磁アクチュエータをオフ状態に制御した場合にクラッチ機構のそれぞれの係合歯同士が互いに噛み合っている状態で、第1モータが出力するトルクの方向はエンジンがトルクを出力する方向と同じである。そのような場合、第1モータのトルクに応じた軸線方向の分力により、クラッチ機構が解放されるとエンジンが回転する。これによりクラッチ機構が解放されるとそのままモータリング状態となるため、エンジンのトルクを出力しない方向に第1モータのトルクを出力した場合と比較してエンジン始動応答性を向上させることができる。

また、この発明によれば、停止しているエンジンを始動する要求が成立して電磁アクチュエータをオフ状態に制御した場合には、クラッチ機構の固定部材と回転部材とが噛み合っていない原点位置からの固定部材と回転部材との相対的な軸線方向への移動量が所定値未満の場合に第1モータが出力するトルクは、第1目標トルクとしている。一方で、所定値以上の場合に第1モータが出力するトルクは、第1目標トルクよりも大きい第2目標トルクとなるように制御している。固定部材と回転部材との軸線方向への移動量が所定値以上となる、例えば、第1モータが出力するトルクを伝達可能にクラッチ機構のそれぞれの係合歯が互いに接触している場合には、第2目標トルクとなるように第1モータのトルクを出力している。そのためクラッチ機構が解放されるまでの時間を短くできる。一方で所定値未満となる、例えば、第1モータが出力するトルクを伝達可能にクラッチ機構のそれぞれの係合歯が互いに接触していない場合はエンジンをモータリングするための第1目標トルクとなるように第1モータがトルクを出力している。そのため第2目標トルクとなるように出力した場合に比べてエンジンの回転数上昇が急峻にならないためエンジンのイナーシャトルクの増大やそれに起因する駆動トルクの低下を抑制することかできる。

この発明の実施形態で対象となるハイブリッド車の一例を示すスケルトン図である。

クラッチ機構および電磁アクチュエータの一例を説明するための図である。

図2におけるクラッチ機構のIV-IV線に沿う断面図である。

この発明の実施形態で実行される制御例の一例を概念的に示すフローチャートである。

図4の制御例を実行した場合における車速、クラッチ機構の係合指示、アクチュエータ電流値、クラッチ機構のストローク位置、エンジン回転数、MG1回転数、MG1トルク、MG2回転数、MG2トルクの変化の一例を説明するタイムチャートである。

この発明の実施形態を、図を参照しつつ説明する。先ず、図1に、この発明の実施形態におけるハイブリッド車のギヤトレーンの一例を示してある。なお、図1では、主な電気的な接続関係を破線で示している。図1に示すハイブリッド車両Veは、エンジン1、および、第1モータ(以下、MG1とも記す)2ならびに第2モータ(以下、MG2とも記す)3の複数の駆動力源を備えている。ハイブリッド車両Veは、エンジン1が出力する動力を、動力分割機構4によって第1モータ2側と駆動軸5側とに分割して伝達するように構成されている。また、第1モータ2で発生した電力を第2モータ3に供給し、第2モータ3が出力する駆動力を駆動軸5および駆動輪6に付加することができるように構成されている。

動力分割機構4は、エンジン1および第1モータ2と駆動輪6との間でトルクを伝達する伝動機構であり、サンギヤ7、リングギヤ8、および、キャリヤ9を有する遊星歯車機構によって構成されている。図1に示す例では、シングルピニオン型の遊星歯車機構が用いられている。遊星歯車機構のサンギヤ7に対して同心円上に、内歯歯車のリングギヤ8が配置されている。これらサンギヤ7とリングギヤ8とに噛み合っているピニオンギヤ10がキャリヤ9によって自転および公転が可能なように保持されている。なお、サンギヤ7がこの発明の実施形態における「反力要素」に相当し、キャリヤ9がこの発明の実施形態における「入力要素」に相当し、リングギヤ8がこの発明の実施形態における「出力要素」に相当する。なお、シングルピニオン型の遊星歯車機構に限定されることなく、ダブルピニオン型の遊星歯車機構やラビニヨ型の遊星歯車機構などの少なくとも三つの回転要素を有する差動機構によって動力分割機構4が構成されていてもよい。

動力分割機構4は、エンジン1および第1モータ2と同一の軸線上に配置されている。動力分割機構4を構成している遊星歯車機構のキャリヤ9に、動力分割機構4の入力軸4aが連結されている。入力軸4aには、フライホイール11、ならびに、エンジン1の出力軸1aが連結されている。具体的には、出力軸1aと入力軸4aとが、フライホイール11に取り付けられたダンパ機構12および第1トルクリミッタ13を介して、互いに連結されている。したがって、キャリヤ9は、入力軸4a、第1トルクリミッタ13、ダンパ機構12、および、フライホイール11を介して、出力軸1aに連結されている。

上記のフライホイール11、ダンパ機構12、および、第1トルクリミッタ13は、出力軸1aと入力軸4aとの間に設けられている。フライホイール11は、出力軸1aに連結されている。フライホイール11のエンジン1とは反対側(図1の左側)に、ダンパ機構12が取り付けられている。ダンパ機構12は、従来一般的に用いられているダンパ機構と同様に構成されている。例えば、前述の特許文献2に記載されているダンパ機構と同様の構成であり、ダンパばね12aの作用により、エンジン1のトルク変動や振動に起因する出力軸1aのねじり振動を抑制するように構成されている。

ダンパ機構12の外周部分に、第1トルクリミッタ13が設けられている。第1トルクリミッタ13は、駆動輪6とエンジン1との間で伝達されるトルクの大きさを制限するための機構である。第1トルクリミッタ13は、従来一般的に用いられているトルクリミッタと同様に構成され、例えば、図示しない出力軸1a側の摩擦プレートと入力軸4a側の摩擦プレートとが、皿ばねの付勢力によって互いに押し付けられ、その摩擦プレート同士が互いに摩擦係合させられるように構成されている。またその摩擦係合力は、皿ばねの付勢力に応じて決まる。そのため、例えば、皿ばねのばね定数や初期に設定される変形量を調整することにより、この第1トルクリミッタ13によって制限されるトルクの値、すなわち、第1トルクリミッタ13を介して伝達可能なトルクの上限値が設定される。

遊星歯車機構のサンギヤ7には、第1モータ2が連結されている。第1モータ2は、動力分割機構4に隣接してエンジン1とは反対側(図1の左側)に配置されている。その第1モータ2のロータ2aに一体となって回転するロータ軸2bが、サンギヤ7に連結されている。なお、ロータ軸2bおよびサンギヤ7の回転軸は中空軸になっている。それらロータ軸2bおよびサンギヤ7の回転軸の中空部に、オイルポンプ14の回転軸14aが配置されている。すなわち、回転軸14aは、上記の中空部を通って入力軸4aに連結されている。

遊星歯車機構のリングギヤ8の外周部分に、外歯歯車の第1ドライブギヤ15がリングギヤ8と一体に形成されている。また、動力分割機構4および第1モータ2の回転軸線と平行に、カウンタシャフト16が配置されている。このカウンタシャフト16の一方(図1での右側)の端部に、上記の第1ドライブギヤ15と噛み合うカウンタドリブンギヤ17が一体となって回転するように取り付けられている。一方、カウンタシャフト16の他方(図1での左側)の端部には、カウンタドライブギヤ(ファイナルドライブギヤ)18がカウンタシャフト16に一体となって回転するように取り付けられている。カウンタドライブギヤ18は、終減速機であるデファレンシャルギヤ19のデフリングギヤ(ファイナルドリブンギヤ)20と噛み合っている。したがって、動力分割機構4のリングギヤ8は、上記の第1ドライブギヤ15、カウンタシャフト16、カウンタドリブンギヤ17、カウンタドライブギヤ18、および、デフリングギヤ20からなる出力ギヤ列21を介して、駆動軸5および駆動輪6に動力伝達可能に連結されている。

このハイブリッド車両Veの動力伝達装置は、上記の動力分割機構4から駆動軸5および駆動輪6に伝達されるトルクに、第2モータ3が出力するトルクを付加することができるように構成されている。具体的には、第2モータ3のロータ3aに一体となって回転するロータ軸3bが、上記のカウンタシャフト16と平行に配置されている。そのロータ軸3bの先端(図1での右端)に、上記のカウンタドリブンギヤ17と噛み合う第2ドライブギヤ22が一体となって回転するように取り付けられている。したがって、動力分割機構4のリングギヤ8には、上記のような出力ギヤ列21および第2ドライブギヤ22を介して、第2モータ3が動力伝達可能に連結されている。すなわち、リングギヤ8は、第2モータ3と共に、出力ギヤ列21を介して、駆動軸5および駆動輪6に動力伝達可能に連結されている。

さらに、このハイブリッド車両Veの動力伝達装置には、ロック機能およびトルクリミット機能を有するクラッチ機構23が設けられている。このクラッチ機構23は、トゥースブレーキ24によって構成されている。ここでいうロック機能とは、動力分割機構4における入力要素であるキャリヤ9やエンジン1の出力軸1aの回転を止める機能をいい、またトルクリミット機能とは、トゥースブレーキ24を構成する固定歯24aと回転歯24bとが係合した状態で上記のロック機能が作用している場合であっても、作用するトルクが予め設定されている上限値を超えることによりロック状態が解除されて動力伝達装置における過負荷を回避もしくは抑制する機能をいう。

図1に示す例では、トゥースブレーキ24からなるクラッチ機構23と、第1モータ2と、第2モータ3と、動力分割機構4などがトランスミッションケース25の内部に収納されている。このクラッチ機構23は、入力軸4aとキャリヤ9との間に設けられている。また図2に示すように、トゥースブレーキ24は、固定歯24aが設けられた固定部材24cと、回転歯24bが設けられた回転部材24dとを有し、固定部材24cと回転部材24dとが軸線方向に相対移動することで固定歯24aと回転歯24bとが係合状態および解放状態となるように構成されている。なお、上記の固定歯24aおよび回転歯24bがこの発明の実施形態における「係合歯」に相当する。また、特に記載しない場合、「軸線方向」とは固定部材24cおよび回転部材24dの中心軸線Xの方向を示し、「回転方向」とは、中心軸線Xを回転中心とする回転方向を示すものとする(図2参照)。

固定部材24cは、回転不可能なように、かつ、軸線方向(図2での左右方向)に移動可能に、例えばスプラインによってトランスミッションケース25に取り付けられている。また、軸線方向で、固定部材24cに対向して回転部材24dが設けられている。その回転部材24dは、円環形状の部材であり、入力軸4aと同軸上に配置されている。この回転部材24dは、入力軸4aに対して例えばスプラインによって取り付けられており、入力軸4aと一体回転する。すなわち、固定部材24cと回転部材24dとが同一軸線上で対向して配置されるとともに、固定部材24cと回転部材24dとの互いに対向する面のそれぞれに設けられた固定歯24aと回転歯24bとが互いに噛み合ってトルクを伝達するように構成されている。

また、このトゥースブレーキ24に設けられた固定歯24aおよび回転歯24bは、図3に示すように、例えば断面形状が台形(もしくは三形状)の歯により構成されている。回転歯24bは、固定歯24a側の先端に向けて入力軸4aの回転方向の長さ(歯幅)が、次第に短くなるように形成され、一方、固定歯24aは、回転歯24b側の先端に向けて入力軸4aの回転方向の長さが、次第に短くなるように形成されている。すなわち、固定部材24cと回転部材24dとの互いに対向する面に向けて先細りとなるように固定歯24aと回転歯24bとが形成され、固定歯24aと回転歯24bとが傾斜面で噛み合っている。

なお、軸線方向のうち、固定部材24cが回転部材24dに向けて移動する方向を「係合方向」と称し、係合方向と反対方向を「解放方向」と称する。図2では、左側から右側へ向かう方向が係合方向であり、右側から左側へ向かう方向が解放方向である。

上記の係合歯、すなわち固定歯24aと回転歯24bとが互いに噛み合うように、固定部材24cと回転部材24dとを互いに接近させる方向に磁気吸引力を発生する電磁アクチュエータ26(以下、単にアクチュエータと記す)が設けられ、その固定歯24aと回転歯24bとの係合もしくは解放の動作はこのアクチュエータ26によって操作される。そのアクチュエータ26は、アーマチュア26aと、ヨーク26bと、リターンスプリング26cと、コイル26dとから構成され、また、上述したように固定部材24cを回転部材24d側に吸引する磁気吸引力Faを発生する。

アーマチュア26aとヨーク26bとは軸線方向で対向して配置され、図2の左側にアーマチュア26a、右側にヨーク26bが配置されている。また、そのアーマチュア26aとヨーク26bとの間にリターンスプリング26cが配置され、コイル26dに通電することにより、アーマチュア26aがヨーク26bに引きつけられ、リターンスプリング26cを圧縮する。なお、コイル26dはヨーク26bに囲まれるように配置されている。リターンスプリング26cのばね力に対抗して上記のアクチュエータ26の磁気吸引力Faを作用させるように構成されている。したがって、アクチュエータ26の磁気吸引力Faの方向は、トゥースブレーキ24の固定歯24aを回転歯24bに係合させる方向であり、アクチュエータ26の磁気吸引力Faを増大させることにより、固定歯24aが回転歯24bとの係合方向に移動し、一方、アクチュエータ26の磁気吸引力Faを低減させることによりリターンスプリング26cのばね力によって固定歯24aが回転歯24bから離間するように構成されている。なお、アクチュエータ26の磁気吸引力Faの大きさは、コイル26dに通電される電流値に応じて変化する。なお、固定歯24aが回転歯24bから離間させる方向に力を働かせるためにリターンスプリング26cを設けたが、アクチュエータや他の弾性体であってもよい。

このように構成されたクラッチ機構23は、上記のコイル26dに通電されると、コイル26dの周囲に磁界が発生する。その発生した磁界により、アーマチュア26aを係合方向に向けて吸引する磁気吸引力が発生する。すなわち、アーマチュア26aがヨーク26b側に向け引きつけられる。そして、アーマチュア26aが引きつけられることによりリターンスプリング26cが圧縮されて固定部材24cが回転部材24d側に押圧される。したがって、固定歯24aと回転歯24bとが係合して噛み合い、その状態で、その係合面あるいは固定歯24aと回転歯24bとの接触面(歯面)にトルクが作用することにより、図3に示すような軸線方向の分力Fb1が生じる。この軸線方向の分力Fb1とは固定歯24aと回転歯24bとの接触面(歯面)とが接触している際に生じる接触面と垂直な方向に働く垂直抗力Fbに対する軸線方向の分力である。また、この垂直抗力Fbに対する回転方向の分力はFb2である。

そして、その回転歯24bに伝達されたトルクによって生じる軸線方向の分力Fb1やリターンスプリング26cのばね力などの合算値が、アクチュエータ26による磁気吸引力Faや摩擦抵抗力よりも小さい場合には、その係合状態が維持される。したがって、このトゥースブレーキ24を動作させて固定歯24aと回転歯24bとを係合させることにより、入力軸4a、ならびに、入力軸4aに連結されている出力軸1aおよびキャリヤ9の回転を停止し、つまりロック機構(もしくはブレーキ機構)として機能する。

これとは反対に、回転歯24bに伝達されたトルクによって生じる軸線方向の分力Fb1やリターンスプリング26cのばね力などの合算値が、アクチュエータ26による磁気吸引力Faや摩擦抵抗力よりも大きい場合には、その係合状態が解除される。すなわち、互いに噛み合っている係合歯(固定歯24aおよび回転歯24b)の歯面で生じる軸線の方向のスラスト力によって固定部材24cと回転部材24dとが軸線方向に相対的に離間して係合歯の噛み合いが外れることによりトルクの伝達が遮断される。つまり、回転歯24bに過大なトルクが伝達された場合には、固定歯24aと回転歯24bとの歯面同士が滑ることで、固定歯24aと回転歯24bとが軸線方向に離間し、その係合状態を解除してトゥースブレーキ24が解放状態になることにより、リミッタ機構として機能する。つまり、このトゥースブレーキ24は、回転部材24dと固定部材24cとの係合歯が互いに噛み合ってトルクを伝達するとともに、固定部材24cと回転部材24dとの間で伝達可能な上限トルク以上のトルクが回転部材24dに入力された場合には、軸線方向で固定部材24cと回転部材24dとが離間して係合歯の噛み合いが外れることによりトルクの伝達を遮断するように構成されている。また、上記の伝達可能な上限トルクとは、固定歯24aと回転歯24bとが接触して伝達可能なトルクの最大値である。なお、リミッタ機能としてトゥースブレーキ24が解放状態になると、係合歯(固定歯24aおよび回転歯24b)の歯面同士が接触していないことから上記の軸線の方向のスラスト力が無くなる。そのため、磁気吸引力Faによって再度係合状態となる。再度係合状態となる場合、未だ上記の上限トルクを超えるような大きさのトルクが回転歯24bに入力された場合、再び解放状態になってしまう。このような解放と係合とを繰り返すラチェット現象を抑制するため、リミット機能が働いた場合、速やかにコイル26dへの通電をオフにして、磁気吸引力Faが消失するように制御してよい。

なお、この図2に示す例では、アクチュエータ26は、固定部材24cを動作させて回転部材24dに噛み合わせるように構成されているものの、この発明の実施形態では、これとは反対に回転部材24dを動作させて固定部材24cに噛み合わせるように構成してもよい。

上述したハイブリッド車両Veは、エンジン1を動力源としたHV走行や第1モータ2、第2モータ3を蓄電装置(図示せず)の電力で駆動して走行する両駆動モードや第2モータ3を蓄電装置の電力で駆動して走行する単駆動モードなどの走行形態が可能である。このような各モードの設定や切り替え、ならびに、上記のトゥースブレーキ24の係合あるいは解放する制御は、電子制御装置(ECU)28により実行される。このECU28は、この発明の実施形態における「コントローラ」に相当し、マイクロコンピュータを主体にして構成され、入力されたデータや予め記憶しているデータならびにプログラムを使用して演算を行い、その演算結果を制御指令信号として出力するように構成されている。その入力されるデータは、車速、車輪速、アクセルペダルの踏み込み角度、蓄電装置の充電残量(SOC)、トゥースブレーキ24の移動量、シフトポジション、エンジン温、エンジン油温などであり、また予め記憶しているデータは、各走行モードを決めてあるマップなどである。そして、ECU28は、制御指令信号として、エンジン1の始動や停止の指令信号、第1モータ2のトルク指令信号、第2モータ3のトルク指令信号、エンジン1のトルク指令信号、アクチュエータ26の電流指令信号などを出力する。なお、図1では1つのECU28が設けられた例を示しているが、ECUは、例えば制御する装置ごと、あるいは制御内容ごとに複数設けられていてもよい。

上記のように構成されたハイブリッド車両Veでは、上述したようなエンジン1の回転を止めるクラッチ機構23を設けた場合、エンジン1の始動要求があり、アクチュエータ26のコイル26dに通電する電流をオフに制御した場合、残留磁気などの影響により磁気吸引力Faが直ちにはゼロにならず、比較的大きい磁気吸引力Faが残ってしまうことがある。このような場合には、トゥースブレーキ24の固定歯24aと回転歯24bとの係合状態が続いてしまうためクラッチ機構23の解放応答性あるいはエンジンの始動応答性が低下する可能性がある。そこで、この発明の実施形態においては、上記のような場合に第1モータ2のトルクをクラッチ機構23に作用させるように制御している。以下に、ECU28によって実行される具体的な制御例について説明する。

図4はその制御の一例を概念的に示すフローチャートであって、ハイブリッド車両Veが走行している状態あるいは制御システムをアクティブにしているレディー・オン(Ready on)の状態で実行される。

先ず、両駆動要求判定およびエンジン1の始動判定を行うサブルーチンを実行する(ステップS1)。これらの判定は、ECU28に予め定められて記憶されているマップ等から従来知られている手法によって行うことができる。ついで、その両駆動要求があるか否かが判断される(ステップS2)。このステップS2で否定的、すなわち、両駆動要求があると判断された場合には両駆動モードを維持して走行するため、ステップS1に戻る。

これとは反対に、ステップS2で肯定的に判断された場合、すなわち、両駆動要求が無いと判断された場合には、アクチュエータ26のコイル26dに通電される電流をオフにする制御が行われる(ステップS3)。なお、両駆動要求がない場合とは、エンジン1を始動する要求が成立した場合、もしくは単駆動モードに移行する要求が成立した場合のことである。ついで、アクチュエータ26の電流値が所定電流値α未満となったか否かが判断される(ステップS4)。この所定電流値αはアクチュエータに流れる電流値がゼロもしくは実質的にゼロに等しい値であり、設計などに応じて種々変更されてよい。このステップS4で否定的に判断された場合、すなわち所定電流値α未満となっていない場合はステップS3に戻る。

これとは反対に、ステップS4で肯定的に判断された場合には、エンジン1を始動する要求があるか否かが判断される(ステップS5)。前述したように、ステップS2での両駆動要求がないことの判断は、単駆動モードに移行する条件が成立した場合と、エンジン1を動力源とするHVモードに移行する条件が成立した場合との両方の場合に肯定的となる。そのために、ハイブリッド車両Vの現在の状態が単駆動モードに移行すべき状態か、HVモードに移行する状態かをステップS5で判断する。このエンジン1を始動する要求とはECU28に予め定められて記憶されているマップ等から従来知られている手法によって判断する。ステップS5で否定的に判断された場合、すなわち、エンジン1を始動する要求がない場合は、トゥースブレーキ24の固定歯24aに磁気吸引力Faが働いていなくかつリターンスプリング26cのばね力により回転歯24bから離間している状態(この発明の実施形態における原点位置)からの固定歯24aと回転歯24bとの軸線方向への移動量すなわちストローク量が、所定値β未満か否かが判断される(ステップS6)。所定値βとはトルク伝達可能に固定歯24aと回転歯24bとが接触している状態か否かを判断するための閾値であり、設計などに応じて種々設定もしくは変更されてよい。従って所定値β以上の場合はトルク伝達可能に固定歯24aと回転歯24bとが接触している状態であって、所定値β未満の場合は上記とは反対で接触していない状態となる。このステップS6で否定的に判断された場合、すなわち、ストローク量が所定値β未満となるまでは、ステップS5に戻る。なお、トルク伝達可能に固定歯24aと回転歯24bとが接触している状態のことを以下ではトゥースブレーキ24が係合している状態またはそれに相当する表現で示し、これに対して、接触していない状態のことをトゥースブレーキ24が解放されている状態またはそれに相当する表現で示す。

これとは反対に、ステップS6で肯定的に判断がされた場合には、トゥースブレーキ24が解放されている状態であるため、第2モータ3を蓄電装置(図示せず)の電力で駆動して走行する単駆動モードに移行してこの図4に示すフローチャートを終了する。このようにエンジン1を始動する要求がない場合には特にクラッチ機構23の解放応答性あるいはエンジンの始動応答性が求められている状態ではない。従って電力消費によりSOCが減少するのを抑制するために、第1モータ2や第2モータ3がトルクを出力することなく、トゥースブレーキ24の固定歯24aと回転歯24bとの噛み合いがリターンスプリング26cのばね力によって解放されるようにしてもよい。

一方で、ステップS5で肯定的に判断された場合は、トゥースブレーキ24の固定歯24aと回転歯24bとの軸線方向への移動量、すなわち、ストローク量が所定値β未満か否かが判断される(ステップS8)。ステップS8で否定的に判断された場合は、まだトゥースブレーキ24が係合している状態となっていると判断できるため、第1モータ2のトルクをトゥースブレーキ24へ出力させる制御が行われる(ステップS9)。このステップS9では、クラッチ解放目標トルクとなるように第1モータ2がトルクを出力する。

このクラッチ解放目標トルクはトゥースブレーキ24を解放するための予め定めた目標トルクであることから、トゥースブレーキ24が解放されている場合に第1モータ2が出力すべき目標トルクとは異なっていてよい。そのため、このクラッチ解放目標トルクはトゥースブレーキ24を解放させたい時間に応じて適宜大きさを設定することができる。さらに、この発明の実施形態では、クラッチ解放目標トルクは、エンジン1をモータリングさせるための目標トルク(後述するモータリング目標トルク)よりも大きい値に設定されている。なお、このクラッチ解放目標トルクがこの発明の実施形態における「第2目標トルク」に相当し、モータリング目標トルクがこの発明の実施形態における「第1目標トルク」に相当している。

第1モータ2がクラッチ解放目標トルクとなるようトルクを出力した後、第1モータ2が出力したトルクの反力が駆動軸5に伝わってしまい、駆動輪6のトルクが変動してしまう。このことを抑制するために第1モータ2が出力したトルクを打ち消し、もしくは減じるようにクラッチ解放目標トルクに対応するMG2補正トルクAとなるように第2モータ3がトルクを出力する(ステップS10)。その後、ステップS8へと戻る。なお、このMG2補正トルクAはクラッチ解放目標トルクに対応させていることから目標トルクであるが、第1モータ2が実際に出力しているトルクに応じて第2モータ3がトルクを出力するようにしてもよい。

これとは反対に、このステップS8で肯定的に判断された場合は、第1モータ2が出力すべき目標トルクとしてモータリング目標トルクとなるように第1モータ2がトルクを出力する(ステップS11)。このステップS11ではトゥースブレーキ24が解放され、かつ、エンジンを始動する要求があることから、エンジン1をモータリングさせるために第1モータ2がトルクを出力しており、このトルクによりエンジン1が回転し始めて回転数が上昇する。その第1モータ2により出力したトルクを打ち消すようにモータリング目標トルクに対応するMG2補正トルクBとなるように第2モータ3がトルクを出力する(ステップS12)。

ついで、ステップS11やステップS12でエンジン1の回転数が上昇した後、エンジン1を始動させ(ステップS13)、HV走行に移行(ステップS14)してこの図4に示すフローチャートを終了する。

なお、トゥースブレーキ24が係合状態のときにはクラッチ解放目標トルク、トゥースブレーキ24が解放状態のときにはモータリング目標トルクとなるように第1モータ2のトルクを制御したが、係合状態のときにモータリング目標トルク、解放状態のときにクラッチ解放目標トルクとなるようにしてもよい。そのような場合、解放状態になってからモータリング目標トルクより大きなクラッチ解放目標トルクがとなるように第1モータ2のトルクが制御されるので、エンジン1が始動できる回転数まで上昇させる時間を短縮できる。

図5は上述した図4の制御例を実行したときのタイムチャートであって、特に、車速、クラッチ機構の係合指示、アクチュエータ電流値、クラッチ機構のストローク位置、エンジン回転数、MG1回転数、MG1トルク、MG2回転数、MG2トルクの変化の一例を示すタイムチャートである。

先ず、図5に示すように、t1時点では、トゥースブレーキ24を係合する指示がある状態から解放する指示に切り替わり、アクチュエータ26の電流をゼロにするオフ制御が実行され始める。

ついで、t2時点では、アクチュエータの電流値がゼロもしくは実質的にゼロとなり、アクチュエータ26のストローク位置、すなわち、トゥースブレーキ24の固定歯24aと回転歯24bとの軸線方向へのストローク位置が未だトゥースブレーキ24が係合状態である位置、すなわち所定値β以上となっている。第1モータ2が負トルクを出力していることからまず第1モータ2がトルクを出力することを停止する制御が行われる。またこの制御により駆動輪6の回転数が変化してしまうのを抑制するため第2モータ3は正トルクを出力する。なお、正トルクとはエンジン1がトルクを出力する方向を指し、負トルクとはその逆を指している。

ついで、t3時点では、アクチュエータ26のストローク位置に変化がないことから、磁気吸引力Faがトゥースブレーキ24に作用して係合状態が維持されている。このときエンジン1の始動する要求があり、トゥースブレーキ24を解放するために第1モータ2がクラッチ解放目標トルクとなるように正トルクを出力し始める。一方で、その第1モータ2のトルクを打ち消すべく第2モータ3も同様にトルクを出力する。

ついで、t4時点では、第1モータ2のトルクによりアクチュエータ26のストローク位置が変化、すなわち、トゥースブレーキ24が係合状態から解放状態へと遷移し始めている。つまり、第1モータ2のトルクの軸線方向の分力とばね力との合算値が磁気吸引力Faや摩擦抵抗力に勝り、図2に示すような解放方向へと回転部材24dが移動し始める。

ついで、t5時点では、アクチュエータ26のストローク位置がトゥースブレーキ24が解放状態となる位置に移動したことで、エンジン1の回転数が上昇し始める。このときトゥースブレーキ24を係合状態から解放状態にするために必要な第1モータ2のトルク(t3〜t4間)とt5のようにエンジン1をモータリングさせるために必要な第1モータ2のトルクは異なることから第1モータ2のトルク対時間の変化量が異なっている。

ついで、t6時点では、エンジン1を始動できる回転数までモータリングが終わり、エンジンを始動させたことから、第1モータ2のトルクを下げている。同様に第2モータ3のトルクも下げる制御が行われる。

図4や図5で説明した実施例では、トゥースブレーキ24が係合状態(t3〜t4間)とトゥースブレーキ24が解放状態(t5〜t6間)における第1モータ2のトルク対時間の変化量が前者が後者より大きくなるように設定したが、その変化量は同じとなってもよい。前者のようにトゥースブレーキ24を解放状態にするために第1モータ2のトルクを出力した場合、クラッチ解放目標トルクとなるように出力される第1モータ2のトルクによりエンジン1がモータリングされるため、エンジン始動までの時間を短くすることができる。

また、図5に示すようにトゥースブレーキ24を解放するために印加した第1モータ2のトルクは正トルクとしたが、負トルクであってもよい。負トルクとした場合であっても、その負トルクの軸方向の分力によって回転部材24dと固定部材24cとが離間する方向に力が働くため、正トルクをかけた場合と同様にトゥースブレーキ24が解放状態となるまでの時間を短くすることができる。

2…第1モータ、 3…第2モータ、 3b…ロータ軸、 4…動力分割機構(伝動機構)、 4a…入力軸、 6…駆動輪、 7…サンギヤ、 8…リングギヤ、 9…キャリヤ、 15…第1ドライブギヤ、 23…ブレーキ機構、 24…トゥースブレーキ、 24a…固定歯、 24b…回転歯、 24c…固定部材、 24d…回転部材、 26…アクチュエータ、 28…電子制御装置(ECU)、 Ve…ハイブリッド車両、 α…所定電流値、 β…所定値、 Fa…磁気吸引力。

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