内燃機関の制御装置

申请号 JP2014003286 申请日 2014-01-10 公开(公告)号 JP2015132189A 公开(公告)日 2015-07-23
申请人 トヨタ自動車株式会社; 发明人 山口 雄士; 中川 徳久; 岡崎 俊太郎; 三好 悠司;
摘要 【課題】排気浄化触媒の硫黄成分吸蔵量を低く維持する。 【解決手段】内燃機関は、排気浄化触媒20と、排気浄化触媒の 温度 を検出又は推定する温度検出手段46とを具備する。制御装置は、排気浄化触媒に流入する排気ガスの 空燃比 が目標空燃比となるようにフィードバック制御を行うと共に、目標空燃比をリッチ設定空燃比とリーン設定空燃比とに交互に設定する目標空燃比の設定制御を行う。加えて、制御装置は、温度検出手段によって検出又は推定された排気浄化触媒の温度が予め定められた上限温度以下のときには、上限温度よりも高いときに比べて、リーン設定空燃比のリーン度合いからリッチ設定空燃比のリッチ度合いを減算した変動差を大きくするようにした。 【選択図】図6
权利要求

内燃機関の排気通路に配置されると共に酸素を吸蔵可能な排気浄化触媒と、該排気浄化触媒の温度を検出又は推定する温度検出手段とを具備する内燃機関の制御装置において、 前記排気浄化触媒に流入する排気ガスの空燃比が目標空燃比となるようにフィードバック制御を行うと共に、前記目標空燃比を理論空燃比よりもリッチなリッチ設定空燃比と理論空燃比よりもリーンなリーン設定空燃比とに交互に設定する目標空燃比の設定制御を行う内燃機関の制御装置において、 前記温度検出手段によって検出又は推定された前記排気浄化触媒の温度が予め定められた上限温度以下のときには、該上限温度よりも高いときに比べて、前記リーン設定空燃比と理論空燃比との差であるリーン度合いから前記リッチ設定空燃比と理論空燃比との差であるリッチ度合いを減算した変動差を大きくするようにした、内燃機関の制御装置。前記温度検出手段によって検出又は推定された前記排気浄化触媒の温度が前記上限温度以下のときには、該上限温度よりも高いときに比べて、前記リーン設定空燃比のリーン度合いを大きくするようにした、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。前記温度検出手段によって検出又は推定された前記排気浄化触媒の温度が前記上限温度以下のときには、該上限温度よりも高いときに比べて、前記リッチ設定空燃比のリッチ度合いを小さくするようにした、請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。前記温度検出手段は、内燃機関の吸入空気量を検出又は推定する吸入空気量検出手段であり、該吸入空気量検出手段によって検出又は推定された吸入空気量が予め定められた上限吸入空気量以下であるときには前記排気浄化触媒の温度が前記上限温度以下であると推定する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。前記温度検出手段は、前記内燃機関がアイドル運転を行っているときには、前記排気浄化触媒の温度が前記上限温度以下であると推定する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。前記排気浄化触媒の排気流れ方向下流側に配置されると共に該排気浄化触媒から流出する排気ガスの空燃比を検出する下流側空燃比センサを更に具備し、 前記目標空燃比の設定制御では、前記下流側空燃比センサによって検出された空燃比が理論空燃比よりもリッチなリッチ判定空燃比以下になったときに前記目標空燃比をリーン設定空燃比に切り替えると共に、前記排気浄化触媒の酸素吸蔵量が最大吸蔵可能酸素量よりも少ない所定の切替基準吸蔵量以上になったときに前記目標空燃比をリッチ設定空燃比に切り替える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。前記排気浄化触媒の排気流れ方向下流側に配置されると共に該排気浄化触媒から流出する排気ガスの空燃比を検出する下流側空燃比センサを更に具備し、 前記目標空燃比の設定制御では、前記下流側空燃比センサによって検出された空燃比が理論空燃比よりもリッチなリッチ判定空燃比以下になったときに前記目標空燃比をリーン設定空燃比に切り替えると共に、前記下流側空燃比センサによって検出された空燃比が理論空燃比よりもリーンなリーン判定空燃比以上になったときに前記目標空燃比をリッチ設定空燃比に切り替える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。

说明书全文

本発明は、内燃機関の制御装置に関する。

従来から、内燃機関の排気通路に空燃比センサを設け、この空燃比センサの出に基づいて内燃機関に供給する燃料量を制御する内燃機関の制御装置が広く知られている。特に、斯かる制御装置としては、機関排気通路に設けられた排気浄化触媒の上流側に空燃比センサを設けると共に、下流側に酸素センサを設けたものが知られている(例えば、特許文献1〜4)。

特に、特許文献1に記載された制御装置では、上流側の空燃比センサによって検出された空燃比に応じて、この空燃比が目標空燃比となるように内燃機関に供給する燃料量を制御するようにしている。加えて、下流側の酸素センサによって検出された酸素濃度に応じて、目標空燃比を補正するようにしている。特許文献1によれば、これにより、上流側の空燃比センサ等に経年劣化や固体バラツキが存在しても、排気浄化触媒に流入する排気ガスの空燃比を目標値に合致させることができるようになるとされている。

特開平8−232723号公報

特開2005−163614号公報

特開2006−183636号公報

特開平6−307271号公報

特開昭62−126234号公報

ところで、本願の発明者らによれば、上述した特許文献1に記載された制御装置とは異なる制御を行う制御装置が提案されている。この制御装置では、下流側空燃比センサによって検出された空燃比がリッチ判定空燃比(理論空燃比よりも僅かにリッチな空燃比)以下になったときには、目標空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比(以下、「リーン空燃比」という)に設定される。一方、目標空燃比がリーン空燃比とされている間に排気浄化触媒の酸素吸蔵量が最大吸蔵可能酸素量よりも少ない切替基準吸蔵量以上となったときには、目標空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比(以下、「リッチ空燃比」という)に設定される。すなわち、この制御装置では、目標空燃比がリッチ空燃比とリーン空燃比とに交互に切り替えられる。

このように、目標空燃比をリッチ空燃比とリーン空燃比とに交互に切り替える制御を行っている場合、排気浄化触媒では酸素の吸放出が行われる。ここで、排気浄化触媒の酸素吸蔵量が最大吸蔵可能酸素量に達すると、排気浄化触媒はそれ以上酸素を吸蔵することができなくなる。このため、排気浄化触媒からは酸素及びNOxが流出することになる。したがって、排気浄化触媒からNOxの流出を抑制するためには、排気浄化触媒の最大吸蔵可能酸素量を多く維持することが必要である。

ところで、機関本体から排出される排気ガス中にはSOx等の硫黄成分が含まれている。排気浄化触媒に斯かる硫黄成分が吸蔵されると、その分だけ排気浄化触媒の最大吸蔵可能酸素量が減少する。したがって、排気浄化触媒の最大吸蔵可能酸素量を高く維持するという観点からは、排気浄化触媒の硫黄成分吸蔵量を低く維持することが必要となる。

したがって、上記問題に鑑みて、本発明の目的は、目標空燃比をリッチ空燃比とリーン空燃比とに交互に切り替える制御を行っている内燃機関の制御装置において、排気浄化触媒の硫黄成分吸蔵量を低く維持することにある。

上記課題を解決するために、第1の発明では、内燃機関の排気通路に配置されると共に酸素を吸蔵可能な排気浄化触媒と、該排気浄化触媒の温度を検出又は推定する温度検出手段とを具備する内燃機関の制御装置において、前記排気浄化触媒に流入する排気ガスの空燃比が目標空燃比となるようにフィードバック制御を行うと共に、前記目標空燃比を理論空燃比よりもリッチなリッチ設定空燃比と理論空燃比よりもリーンなリーン設定空燃比とに交互に設定する目標空燃比の設定制御を行う内燃機関の制御装置において、前記温度検出手段によって検出又は推定された前記排気浄化触媒の温度が予め定められた上限温度以下のときには、該上限温度よりも高いときに比べて、前記リーン設定空燃比と理論空燃比との差であるリーン度合いから前記リッチ設定空燃比と理論空燃比との差であるリッチ度合いを減算した変動差を大きくするようにした、内燃機関の制御装置が提供される。

第2の発明では、第1の発明において、前記温度検出手段によって検出又は推定された前記排気浄化触媒の温度が前記上限温度以下のときには、該上限温度よりも高いときに比べて、前記リーン設定空燃比のリーン度合いを大きくするようにした。

第3の発明では、第1又は第2の発明において、前記温度検出手段によって検出又は推定された前記排気浄化触媒の温度が前記上限温度以下のときには、該上限温度よりも高いときに比べて、前記リッチ設定空燃比のリッチ度合いを小さくするようにした。

第4の発明では、第1〜第3のいずれか一つの発明において、前記温度検出手段は、内燃機関の吸入空気量を検出又は推定する吸入空気量検出手段であり、該吸入空気量検出手段によって検出又は推定された吸入空気量が予め定められた上限吸入空気量以下であるときには前記排気浄化触媒の温度が前記上限温度以下であると推定する。

第5の発明では、第1〜第3のいずれか一つの発明において、前記温度検出手段は、前記内燃機関がアイドル運転を行っているときには、前記排気浄化触媒の温度が前記上限温度以下であると推定する。

第6の発明では、第1〜第5のいずれか一つの発明において、前記排気浄化触媒の排気流れ方向下流側に配置されると共に該排気浄化触媒から流出する排気ガスの空燃比を検出する下流側空燃比センサを更に具備し、前記目標空燃比の設定制御では、前記下流側空燃比センサによって検出された空燃比が理論空燃比よりもリッチなリッチ判定空燃比以下になったときに前記目標空燃比をリーン設定空燃比に切り替えると共に、前記排気浄化触媒の酸素吸蔵量が最大吸蔵可能酸素量よりも少ない所定の切替基準吸蔵量以上になったときに前記目標空燃比をリッチ設定空燃比に切り替える。

第7の発明では、第1〜第5のいずれか一つの発明において、前記排気浄化触媒の排気流れ方向下流側に配置されると共に該排気浄化触媒から流出する排気ガスの空燃比を検出する下流側空燃比センサを更に具備し、前記目標空燃比の設定制御では、前記下流側空燃比センサによって検出された空燃比が理論空燃比よりもリッチなリッチ判定空燃比以下になったときに前記目標空燃比をリーン設定空燃比に切り替えると共に、前記下流側空燃比センサによって検出された空燃比が理論空燃比よりもリーンなリーン判定空燃比以上になったときに前記目標空燃比をリッチ設定空燃比に切り替える。

本発明によれば、排気浄化触媒の硫黄成分吸蔵量を低く維持することができる。

図1は、本発明の制御装置が用いられる内燃機関を概略的に示す図である。

図2は、排気浄化触媒の酸素吸蔵量と排気浄化触媒から流出する排気ガス中のNOx濃度又はHC、CO濃度との関係を示す図である。

図3は、各排気空燃比におけるセンサ印加電圧と出力電流との関係を示す図である。

図4は、センサ印加電圧を一定にしたときの排気空燃比と出力電流との関係を示す図である。

図5は、空燃比制御を行った際の目標空燃比等のタイムチャートである。

図6は、本実施形態におけるリッチ設定空燃比及びリーン設定空燃比の変更制御を行った際における、目標空燃比等のタイムチャートである。

図7は、1サイクルにおけるリッチ時間の比率に対するCmax比率を表すグラフである。

図8は、図6と同様な、目標空燃比等のタイムチャートである。

図9は、図6と同様な、目標空燃比等のタイムチャートである。

図10は、目標空燃比の設定制御における制御ルーチンを示すフローチャートである。

図11は、第一実施形態における設定空燃比の変更制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。

図12は、図6と同様な、目標空燃比等のタイムチャートである。

図13は、第二実施形態における設定空燃比の変更制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。

図14は、図6と同様な、目標空燃比等のタイムチャートである。

図15は、第三実施形態における設定空燃比の変更制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。

図16は、図6と同様な、目標空燃比等のタイムチャートである。

以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。

<内燃機関全体の説明> 図1は、本発明に係る制御装置が用いられる内燃機関を概略的に示す図である。図1において、1は機関本体、2はシリンダブロック、3はシリンダブロック2内で往復動するピストン、4はシリンダブロック2上に固定されたシリンダヘッド、5はピストン3とシリンダヘッド4との間に形成された燃焼室、6は吸気弁、7は吸気ポート、8は排気弁、9は排気ポートをそれぞれ示す。吸気弁6は吸気ポート7を開閉し、排気弁8は排気ポート9を開閉する。

図1に示したようにシリンダヘッド4の内壁面の中央部には点火プラグ10が配置され、シリンダヘッド4の内壁面周辺部には燃料噴射弁11が配置される。点火プラグ10は、点火信号に応じて火花を発生させるように構成される。また、燃料噴射弁11は、噴射信号に応じて、所定量の燃料を燃焼室5内に噴射する。なお、燃料噴射弁11は、吸気ポート7内に燃料を噴射するように配置されてもよい。また、本実施形態では、燃料として理論空燃比が14.6であるガソリンが用いられる。しかしながら、本実施形態の内燃機関は他の燃料を用いても良い。

各気筒の吸気ポート7はそれぞれ対応する吸気枝管13を介してサージタンク14に連結され、サージタンク14は吸気管15を介してエアクリーナ16に連結される。吸気ポート7、吸気枝管13、サージタンク14、吸気管15は吸気通路を形成する。また、吸気管15内にはスロットル弁駆動アクチュエータ17によって駆動されるスロットル弁18が配置される。スロットル弁18は、スロットル弁駆動アクチュエータ17によって回動せしめられることで、吸気通路の開口面積を変更することができる。

一方、各気筒の排気ポート9は排気マニホルド19に連結される。排気マニホルド19は、各排気ポート9に連結される複数の枝部とこれら枝部が集合した集合部とを有する。排気マニホルド19の集合部は上流側排気浄化触媒20を内蔵した上流側ケーシング21に連結される。上流側ケーシング21は、排気管22を介して下流側排気浄化触媒24を内蔵した下流側ケーシング23に連結される。排気ポート9、排気マニホルド19、上流側ケーシング21、排気管22及び下流側ケーシング23は、排気通路を形成する。

電子制御ユニット(ECU)31はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス32を介して相互に接続されたRAM(ランダムアクセスメモリ)33、ROM(リードオンリメモリ)34、CPU(マイクロプロセッサ)35、入力ポート36および出力ポート37を具備する。吸気管15には、吸気管15内を流れる空気流量を検出するためのエアフロメータ39が配置され、このエアフロメータ39の出力は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。また、排気マニホルド19の集合部には排気マニホルド19内を流れる排気ガス(すなわち、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガス)の空燃比を検出する上流側空燃比センサ40が配置される。加えて、排気管22内には排気管22内を流れる排気ガス(すなわち、上流側排気浄化触媒20から流出して下流側排気浄化触媒24に流入する排気ガス)の空燃比を検出する下流側空燃比センサ41が配置される。これら空燃比センサ40、41の出力も対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。さらに、上流側排気浄化触媒20には、上流側排気浄化触媒20の温度を検出する上流側温度センサ46が配置され、下流側排気浄化触媒24には、下流側排気浄化触媒24の温度を検出する下流側温度センサ47が配置される。これら温度センサ46、47の出力も対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。

また、アクセルペダル42にはアクセルペダル42の踏込み量に比例した出力電圧を発生する負荷センサ43が接続され、負荷センサ43の出力電圧は対応するAD変換器38を介して入力ポート36に入力される。クランクセンサ44は例えばクランクシャフトが15度回転する毎に出力パルスを発生し、この出力パルスが入力ポート36に入力される。CPU35ではこのクランク角センサ44の出力パルスから機関回転数が計算される。一方、出力ポート37は対応する駆動回路45を介して点火プラグ10、燃料噴射弁11及びスロットル弁駆動アクチュエータ17に接続される。なお、ECU31は、内燃機関の制御を行う制御装置として機能する。

なお、本実施形態に係る内燃機関は、ガソリンを燃料とする無過給内燃機関であるが、本発明に係る内燃機関の構成は、上記構成に限定されるものではない。例えば、本発明に係る内燃機関は、燃料の噴射態様、吸排気系の構成、動弁機構の構成、過給器の有無、及び過給態様等が、上記内燃機関と異なるものであってもよい。

<排気浄化触媒の説明> 上流側排気浄化触媒20及び下流側排気浄化触媒24は、いずれも同様な構成を有する。排気浄化触媒20、24は、酸素吸蔵能力を有する三元触媒である。具体的には、排気浄化触媒20、24は、セラミックから成る基材に、触媒作用を有する貴金属(例えば、白金(Pt))及び酸素吸蔵能力を有する物質(例えば、セリア(CeO2))を担持させたものである。排気浄化触媒20、24は、所定の活性温度に達すると、未燃ガス(HCやCO等)と窒素酸化物(NOx)とを同時に浄化する触媒作用に加えて、酸素吸蔵能力を発揮する。

排気浄化触媒20、24の酸素吸蔵能力によれば、排気浄化触媒20、24は、排気浄化触媒20、24に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーン(リーン空燃比)であるときには排気ガス中の酸素を吸蔵する。一方、排気浄化触媒20、24は、流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチ(リッチ空燃比)であるときには、排気浄化触媒20、24に吸蔵されている酸素を放出する。

排気浄化触媒20、24は、触媒作用及び酸素吸蔵能力を有することにより、酸素吸蔵量に応じてNOx及び未燃ガスの浄化作用を有する。すなわち、排気浄化触媒20、24に流入する排気ガスの空燃比がリーン空燃比である場合、図2(A)に実線で示したように、酸素吸蔵量が少ないときには排気浄化触媒20、24により排気ガス中の酸素が吸蔵される。また、これに伴って、排気ガス中のNOxが還元浄化される。一方、酸素吸蔵量が多くなると、最大吸蔵可能酸素量Cmax近傍の或る吸蔵量(図中のCuplim)を境に排気浄化触媒20、24から流出する排気ガス中の酸素及びNOxの濃度が上昇する。

一方、排気浄化触媒20、24に流入する排気ガスの空燃比がリッチ空燃比である場合、図2(B)に実線で示したように、酸素吸蔵量が多いときには排気浄化触媒20、24に吸蔵されている酸素が放出され、排気ガス中の未燃ガスは酸化浄化される。一方、酸素吸蔵量が少なくなると、ゼロ近傍の或る吸蔵量(図中のCdwnlim)を境に排気浄化触媒20、24から流出する排気ガス中の未燃ガスの濃度が急激に上昇する。

以上のように、本実施形態において用いられる排気浄化触媒20、24によれば、排気浄化触媒20、24に流入する排気ガスの空燃比及び酸素吸蔵量に応じて排気ガス中のNOx及び未燃ガスの浄化特性が変化する。なお、触媒作用及び酸素吸蔵能力を有していれば、排気浄化触媒20、24は三元触媒とは異なる触媒であってもよい。

<空燃比センサの出力特性> 次に、図3及び図4を参照して、本実施形態における空燃比センサ40、41の出力特性について説明する。図3は、本実施形態における空燃比センサ40、41の電圧−電流(V−I)特性を示す図であり、図4は、印加電圧を一定に維持したときの、空燃比センサ40、41周りを流通する排気ガスの空燃比(以下、「排気空燃比」という)と出力電流Iとの関係を示す図である。なお、本実施形態では、両空燃比センサ40、41として同一構成の空燃比センサが用いられる。

図3からわかるように、本実施形態の空燃比センサ40、41では、出力電流Iは、排気空燃比が高くなるほど(リーンになるほど)、大きくなる。また、各排気空燃比におけるV−I線には、V軸にほぼ平行な領域、すなわちセンサ印加電圧が変化しても出力電流がほとんど変化しない領域が存在する。この電圧領域は限界電流領域と称され、このときの電流は限界電流と称される。図3では、排気空燃比が18であるときの限界電流領域及び限界電流をそれぞれW18、I18で示している。したがって、空燃比センサ40、41は限界電流式の空燃比センサであるということができる。

図4は、印加電圧を0.45V程度で一定にしたときの、排気空燃比と出力電流Iとの関係を示す図である。図4からわかるように、空燃比センサ40、41では、排気空燃比が高くなるほど(すなわち、リーンになるほど)、空燃比センサ40、41からの出力電流Iが大きくなるように、排気空燃比に対して出力電流がリニアに変化する。加えて、空燃比センサ40、41は、排気空燃比が理論空燃比であるときに出力電流Iが零になるように構成される。また、排気空燃比が一定以上に大きくなったとき、或いは一定以下に小さくなったときには、排気空燃比の変化に対する出力電流の変化の割合が小さくなる。

なお、上記例では、空燃比センサ40、41として限界電流式の空燃比センサを用いている。しかしながら、排気空燃比に対して出力電流がリニアに変化するものであれば、空燃比センサ40、41として、限界電流式ではない空燃比センサ等、如何なる空燃比センサを用いてもよい。また、両空燃比センサ40、41は互いに異なる構造の空燃比センサであってもよい。

<基本的な空燃比制御> 次に、本実施形態の内燃機関の制御装置における基本的な空燃比制御の概要を説明する。本実施形態の空燃比制御では、上流側空燃比センサ40の出力空燃比(上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比に相当)に基づいて上流側空燃比センサ40の出力空燃比が目標空燃比となるように燃料噴射弁11からの燃料噴射量を制御するフィードバック制御が行われる。なお、「出力空燃比」は、空燃比センサの出力値に相当する空燃比を意味する。

一方、本実施形態の空燃比制御では、下流側空燃比センサ41の出力空燃比等に基づいて目標空燃比を設定する目標空燃比の設定制御が行われる。目標空燃比の設定制御では、下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリッチ空燃比となったときに、目標空燃比はリーン設定空燃比とされ、その後、その空燃比に維持される。リーン設定空燃比は、理論空燃比(制御中心となる空燃比)よりも或る程度リーンである予め定められた空燃比であり、例えば、14.65〜20、好ましくは14.65〜18、より好ましくは14.65〜16程度とされる。また、リーン設定空燃比は、制御中心となる空燃比(本実施形態では、理論空燃比)にリーン補正量を加算した空燃比として表すこともできる。また、本実施形態では、下流側空燃比センサ41の出力空燃比が理論空燃比よりも僅かにリッチであるリッチ判定空燃比以下になったときに、下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリッチ空燃比になったと判断される。

目標空燃比がリーン設定空燃比に変更されると、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの酸素過不足量が積算される。酸素過不足量は、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比を理論空燃比にしようとしたときに過剰となる酸素の量又は不足する酸素の量(過剰な未燃ガス等の量)を意味する。特に、目標空燃比がリーン設定空燃比となっているときには上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガス中の酸素は過剰となり、この過剰な酸素は上流側排気浄化触媒20に吸蔵される。したがって、酸素過不足量の積算値(以下、「積算酸素過不足量」という)は、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量OSAを表しているといえる。

なお、酸素過不足量の算出は、上流側空燃比センサ40の出力空燃比、及びエアフロメータ39の出力等に基づいて算出される燃焼室5内への吸入空気量の推定値又は燃料噴射弁11からの燃料供給量等に基づいて行われる。具体的には、酸素過不足量OEDは、例えば、下記式(1)により算出される。 ODE=0.23・Qi/(AFup−14.6) …(1) ここで、0.23は空気中の酸素濃度、Qiは燃料噴射量、AFupは上流側空燃比センサ40の出力空燃比をそれぞれ表している。

このようにして算出された酸素過不足量を積算した積算酸素過不足量が、予め定められた切替基準値(予め定められた切替基準吸蔵量Crefに相当)以上になると、それまでリーン設定空燃比だった目標空燃比が、リッチ設定空燃比とされ、その後、その空燃比に維持される。リッチ設定空燃比は、理論空燃比(制御中心となる空燃比)よりも或る程度リッチである予め定められた空燃比であり、例えば、12〜14.58、好ましくは13〜14.57、より好ましくは14〜14.55程度とされる。また、リッチ設定空燃比は、制御中心となる空燃比(本実施形態では、理論空燃比)からリッチ補正量を減算した空燃比として表すこともできる。なお、本実施形態では、リッチ設定空燃比の理論空燃比からの差(リッチ度合い)は、リーン設定空燃比の理論空燃比からの差(リーン度合い)以下とされる。

その後、下流側空燃比センサ41の出力空燃比が再びリッチ判定空燃比以下となったときに、目標空燃比が再びリーン設定空燃比とされ、その後、同様な操作が繰り返される。このように本実施形態では、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの目標空燃比がリーン設定空燃比とリッチ設定空燃比とに交互に設定される。

ただし、上述したような制御を行った場合であっても、積算酸素過不足量が切替基準値に到達する前に上流側排気浄化触媒20の実際の酸素吸蔵量が最大吸蔵可能酸素量に到達する場合がある。その原因としては、例えば、上流側排気浄化触媒20の最大吸蔵可能酸素量が低下したり、一時的に上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比が急激に変化したりすることが挙げられる。このように酸素吸蔵量が最大吸蔵可能酸素量に到達すると、上流側排気浄化触媒20からはリーン空燃比の排気ガスが流出することになる。そこで、本実施形態では、下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリーン空燃比となったときには、目標空燃比はリッチ設定空燃比に切り替えられる。特に、本実施形態では、下流側空燃比センサ41の出力空燃比が理論空燃比よりも僅かにリーンであるリーン判定空燃比以上になったときに、下流側空燃比センサ41の出力空燃比がリーン空燃比になったと判断される。

<タイムチャートを用いた空燃比制御の説明> 図5を参照して、上述したような操作について具体的に説明する。図5は、本実施形態の空燃比制御を行った場合における、目標空燃比AFT、上流側空燃比センサ40の出力空燃比AFup、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量OSA、積算酸素過不足量ΣOED、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwn及び上流側排気浄化触媒20から流出する排気ガス中のNOx濃度のタイムチャートである。

図示した例では、時刻t1以前の状態では、目標空燃比AFTがリッチ設定空燃比AFTrとされている。これに伴って、上流側空燃比センサ40の出力空燃比がリッチ空燃比となる。上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガス中に含まれている未燃ガスは、上流側排気浄化触媒20で浄化され、これに伴って、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量OSAは徐々に減少していく。したがって、積算酸素過不足量ΣOEDも徐々に減少していく。上流側排気浄化触媒20における浄化により上流側排気浄化触媒20から流出する排気ガス中には未燃ガスは含まれていないため、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnはほぼ理論空燃比となる。また、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比はリッチ空燃比となっているため、上流側排気浄化触媒20からのNOx排出量はほぼゼロとなる。

上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量OSAが徐々に減少すると、酸素吸蔵量OSAは時刻t1においてゼロに近づき、これに伴って、上流側排気浄化触媒20に流入した未燃ガスの一部は上流側排気浄化触媒20で浄化されずに流出し始める。これにより、時刻t1以降、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnが徐々に低下する。その結果、時刻t2において、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリッチ判定空燃比AFrichに到達する。

本実施形態では、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリッチ判定空燃比AFrich以下になると、酸素吸蔵量OSAを増大させるべく、目標空燃比AFTがリーン設定空燃比AFTlに切り替えられる。また、このとき、積算酸素過不足量ΣOEDは0にリセットされる。

時刻t2において、目標空燃比AFTをリーン設定空燃比AFTlに切り替えると、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比はリッチ空燃比からリーン空燃比に変化する。また、これに伴って、上流側空燃比センサ40の出力空燃比AFupがリーン空燃比となる(実際には、目標空燃比を切り替えてから上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比が変化するまでには遅れが生じるが、図示した例では便宜上同時に変化するものとしている)。時刻t2において上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比がリーン空燃比に変化すると、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量OSAは増大する。また、これに伴って、積算酸素過不足量ΣOEDも徐々に増大していく。

これにより、上流側排気浄化触媒20から流出する排気ガスの空燃比が理論空燃比へと変化し、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnも理論空燃比に収束する。このとき、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比はリーン空燃比となっているが、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵能力には十分な余裕があるため、流入する排気ガス中の酸素は上流側排気浄化触媒20に吸蔵され、NOxは還元浄化される。このため、上流側排気浄化触媒20からのNOxの排出はほぼゼロとなる。

その後、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量OSAが増大すると、時刻t3において、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量OSAが切替基準吸蔵量Crefに到達する。このため、積算酸素過不足量ΣOEDが、切替基準吸蔵量Crefに相当する切替基準値OEDrefに到達する。本実施形態では、積算酸素過不足量ΣOEDが切替基準値OEDref以上になると、上流側排気浄化触媒20への酸素の吸蔵を中止すべく、目標空燃比AFTがリッチ設定空燃比AFTrに切り替えられる。また、このとき、積算酸素過不足量ΣOEDが0にリセットされる。

ここで、図5に示した例では、時刻t3において目標空燃比を切り替えると同時に酸素吸蔵量OSAが低下しているが、実際には目標空燃比を切り替えてから酸素吸蔵量OSAが低下するまでには遅れが発生する。また、内燃機関を搭載した車両の加速により機関負荷が高くなって吸入空気量が瞬間的に大きくずれた場合等、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比が意図せずに瞬間的に目標空燃比から大きくずれる場合がある。これに対して、切替基準吸蔵量Crefは上流側排気浄化触媒20が新触であるときの最大吸蔵可能酸素量Cmaxよりも十分に低く設定される。このため、上述したような遅れが生じたり実際の排気ガスの空燃比が意図せずに目標空燃比から瞬間的に大きくずれたりしたときであっても、酸素吸蔵量OSAは基本的に最大吸蔵可能酸素量Cmaxには到達しない。逆に言うと、切替基準吸蔵量Crefは、上述したような遅れや意図しない空燃比のずれが生じても、酸素吸蔵量OSAが最大吸蔵可能酸素量Cmaxには到達しないように十分少ない量とされる。例えば、切替基準吸蔵量Crefは、上流側排気浄化触媒20が新触であるときの最大吸蔵可能酸素量Cmaxの3/4以下、好ましくは1/2以下、より好ましくは1/5以下とされる。

時刻t3において目標空燃比AFTをリッチ設定空燃比AFTrに切り替えると、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比はリーン空燃比からリッチ空燃比に変化する。これに伴って、上流側空燃比センサ40の出力空燃比AFupがリッチ空燃比となる(実際には、目標空燃比を切り替えてから上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比が変化するまでには遅れが生じるが、図示した例では便宜上同時に変化するものとしている)。上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガス中には未燃ガスが含まれることになるため、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量OSAは徐々に減少していき、時刻t4において、時刻t1と同様に、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnが低下し始める。このときも、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比はリッチ空燃比となっているため、上流側排気浄化触媒20からのNOxの排出はほぼゼロとされる。

次いで、時刻t5において、時刻t2と同様に、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリッチ判定空燃比AFrichに到達する。これにより、目標空燃比AFTがリーン設定空燃比AFTlに切り替えられる。その後、上述した時刻t1〜t5のサイクルが繰り返される。

以上の説明から分かるように本実施形態によれば、上流側排気浄化触媒20からのNOx排出量を常に抑制することができる。すなわち、上述した制御を行っている限り、基本的には上流側排気浄化触媒20からのNOx排出量をほぼゼロとすることができる。また、積算酸素過不足量ΣOEDを算出する際の積算期間が短いため、長期間に亘って積算する場合に比べて算出誤差が生じにくい。このため、積算酸素過不足量ΣOEDの算出誤差によりNOxが排出されてしまうことが抑制される。

また、一般に、排気浄化触媒の酸素吸蔵量が一定に維持されると、その排気浄化触媒の酸素吸蔵能力が低下する。すなわち、排気浄化触媒の酸素吸蔵能力を高く維持するためには、排気浄化触媒の酸素吸蔵量が変動することが必要になる。これに対して、本実施形態によれば、図5に示したように、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量OSAは常に上下に変動しているため、酸素吸蔵能力が低下することが抑制される。

なお、上記実施形態では、時刻t2〜t3において、目標空燃比AFTは一定のリーン設定空燃比AFTlに維持される。しかしながら、斯かる期間において、リーン設定空燃比AFTlは必ずしも一定に維持されている必要はなく、徐々に減少させる等、変動するように設定されてもよい。或いは、時刻t2〜t3の期間中において、リーン設定空燃比AFTlを一時的にリッチ空燃比としてもよい。

同様に、上記実施形態では、時刻t3〜t5において、目標空燃比AFTは一定のリッチ設定空燃比AFTrに維持される。しかしながら、斯かる期間において、リッチ設定空燃比AFTrは必ずしも一定に維持されている必要はなく、徐々に増大させる等、変動するように設定されてもよい。或いは、時刻t3〜t5の期間中において、リッチ設定空燃比AFTrを一時的にリーン空燃比としてもよい。

ただし、この場合であっても、時刻t2〜t3における目標空燃比AFTは、当該期間における目標空燃比の平均値と理論空燃比との差が、時刻t3〜t5における目標空燃比の平均値と理論空燃比との差よりも大きくなるように設定される。

なお、このような本実施形態における目標空燃比の設定は、ECU31によって行われる。したがって、ECU31は、下流側空燃比センサ41によって検出された排気ガスの空燃比がリッチ判定空燃比以下となったときに、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量OSAが切替基準吸蔵量Crefとなるまで、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの目標空燃比を継続的又は断続的にリーン空燃比にすると共に、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量OSAが切替基準吸蔵量Cref以上となったときに、酸素吸蔵量OSAが最大吸蔵可能酸素量Cmaxに達することなく下流側空燃比センサ41によって検出された排気ガスの空燃比がリッチ判定空燃比以下となるまで、目標空燃比を継続的又は断続的にリッチ空燃比にしているといえる。

より簡単に言えば、本実施形態では、ECU31は、下流側空燃比センサ41によって検出された空燃比がリッチ判定空燃比以下になったときに目標空燃比をリーン空燃比に切り替えると共に、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量OSAが切替基準吸蔵量Cref以上になったときに目標空燃比をリッチ空燃比に切り替えているといえる。

また、上記実施形態では、積算酸素過不足量ΣOEDは、上流側空燃比センサ40の出力空燃比AFup及び燃焼室5内への吸入空気量の推定値等に基づいて算出されている。しかしながら、酸素吸蔵量OSAはこれらパラメータに加えて他のパラメータに基づいて算出されてもよいし、これらパラメータとは異なるパラメータに基づいて推定されてもよい。また、上記実施形態では、酸素吸蔵量OSAの推定値が切替基準吸蔵量Cref以上になると、目標空燃比がリーン設定空燃比からリッチ設定空燃比へと切り替えられる。しかしながら、目標空燃比をリーン設定空燃比からリッチ設定空燃比へと切り替えるタイミングは、例えば目標空燃比をリッチ設定空燃比からリーン設定空燃比へ切り替えてからの機関運転時間や積算吸入空気量等、他のパラメータを基準としてもよい。ただし、この場合であっても、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量OSAが最大吸蔵可能酸素量よりも少ないと推定される間に、目標空燃比をリーン設定空燃比からリッチ設定空燃比へと切り替えることが必要となる。

<硫黄成分の吸蔵に関する特性> ところで、上述した切替基準吸蔵量Crefは、上流側排気浄化触媒20が新触であるときの最大吸蔵可能酸素量Cmaxよりも十分に低く設定される。このため、最大吸蔵可能酸素量Cmaxが高く維持されている限り、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量OSAが最大吸蔵可能酸素量Cmaxに到達してしまうことはほとんどない。ところが、上流側排気浄化触媒20の最大吸蔵可能酸素量Cmaxは常に一定ではなく、上流側排気浄化触媒20の劣化等により低下する。このように最大吸蔵可能酸素量Cmaxを低下させる一因として、上流側排気浄化触媒20への硫黄成分の吸蔵が挙げられる。

一般に、燃焼室5から排出される排気ガス中にはSOx等の少量の硫黄成分が含まれており、よって上流側排気浄化触媒20には斯かる硫黄成分を含んだ排気ガスが流入することになる。上流側排気浄化触媒20では、流入する排気ガス中に硫黄成分が含まれていると、上流側排気浄化触媒20の温度等の条件によっては硫黄成分が吸蔵される。このように、上流側排気浄化触媒20に硫黄成分が吸蔵されると、その分だけ上流側排気浄化触媒20の最大吸蔵可能酸素量Cmaxが減少する。したがって、上流側排気浄化触媒20の最大吸蔵可能酸素量Cmaxを高く維持するためには、上流側排気浄化触媒20の硫黄成分吸蔵量を低く維持することが必要となる。

ここで、上流側排気浄化触媒20による硫黄成分の吸蔵の有無は、上流側排気浄化触媒20の温度に応じて大きく変化する。上流側排気浄化触媒20の温度が或る一定の硫黄吸蔵上限温度(例えば、600℃)以下であるときには、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比がリーン空燃比であると、流入する排気ガス中の硫黄成分が上流側排気浄化触媒20に吸蔵せしめられる。他方、このときでも、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比がリッチ空燃比であると、流入する排気ガス中に硫黄成分が含まれていても、上流側排気浄化触媒20には硫黄成分はほとんど吸蔵されない。一方、上流側排気浄化触媒20の温度が硫黄吸蔵上限温度以上であるときには、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比にかかわらず、上流側排気浄化触媒20に硫黄成分は吸蔵されない。

<リッチ設定空燃比及びリーン設定空燃比の制御> そこで、本発明の実施形態では、上流側排気浄化触媒20の温度に応じて、リーン設定空燃比の理論空燃比からの差(リーン度合い)及びリッチ設定空燃比の理論空燃比からの差(リッチ度合い)を変更するようにしている。

図6は、本実施形態におけるリッチ設定空燃比及びリーン設定空燃比(以下、これらをまとめて「設定空燃比」という)の変更制御を行った際における、目標空燃比AFT等のタイムチャートである。図6に示した例においても、基本的に、図5と同様な空燃比制御が行われている。

図6に示した例では、時刻t5以前には、上流側排気浄化触媒20の温度CTが硫黄吸蔵上限温度CTlimよりも高い温度となっている。このときのリッチ設定空燃比AFTr及びリーン設定空燃比AFTlは、それぞれ第一リッチ設定空燃比AFTr1及び第一リーン設定空燃比AFTl1に設定されている。ここで、第一リッチ設定空燃比AFTr1の理論空燃比からの差は、第一リッチ度合いΔAFTr1となっている。また、第一リーン設定空燃比AFTl1の理論空燃比からの差は、第一リーン度合いΔAFTl1となっている。

したがって、時刻t1において、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリッチ判定空燃比AFrich以下になると、目標空燃比AFTが第一リーン設定空燃比AFTl1に切り替えられる。その後、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量OSAが切替基準吸蔵量Cref以上になると、すなわち積算酸素過不足量ΣOEDが切替基準値OEDref以上になると、目標空燃比AFTが第一リッチ設定空燃比AFTr1に切り替えられる。その後、時刻t5までは、斯かるサイクルが繰り返される。

その後、時刻t5において、上流側排気浄化触媒20の温度CTが硫黄吸蔵上限温度CTlim以下になると、リッチ設定空燃比AFTr及びリーン設定空燃比AFTlの値が変更される。図6に示した例では、リッチ設定空燃比AFTrが、第一リッチ設定空燃比AFTr1から第二リッチ設定空燃比AFTr2へと変更される。第二リッチ設定空燃比AFTr2の理論空燃比からの差は、第一リッチ度合いΔAFTr1よりも小さい第二リッチ度合いΔAFTr2となっている。したがって、第二リッチ設定空燃比AFTr2は、第一リッチ設定空燃比AFTr1よりも大きい(リーン側の)空燃比となっている。

加えて、図6に示した例では、時刻t5において、リーン設定空燃比AFTlが、第一リーン設定空燃比AFTl1から第二リーン設定空燃比AFTl2へと変更される。第二リーン設定空燃比AFTl2の理論空燃比からの差は、第一リーン度合いΔAFTl1よりも大きい第二リーン度合いΔAFTl2となっている。したがって、第二リーン設定空燃比AFTl2は、第一リーン設定空燃比AFTl1よりも大きい(リーン側の)空燃比となっている。

ここで、時刻t5以前の第一リーン度合いΔAFTl1から第一リッチ度合いΔAFTr1を減算した値を第一変動差ΔLR1とする(ΔLR1=ΔAFTl1−ΔAFTr1)。同様に、時刻t5以降の第二リーン度合いΔAFTl2から第二リッチ度合いΔAFTr2を減算した値を第二変動差ΔLR2とする(ΔLR2=ΔAFTl2−ΔAFTr2)。この場合、本発明の実施形態では、第二変動差ΔLR2は、第一変動差ΔLR1以上の値とされる(ΔLR2≧ΔLR1)。

その後、上流側排気浄化触媒20の温度CTが硫黄吸蔵上限温度CTlim以下になっている間は、リッチ設定空燃比AFTrは第二リッチ設定空燃比AFTr2に、リーン設定空燃比AFTlは第二リーン設定空燃比AFTl2にそれぞれ維持される。そして、時刻t10において上流側排気浄化触媒20の温度CTが再び硫黄吸蔵上限温度CTlimよりも高い温度に変化すると、リッチ設定空燃比AFTrは第一リッチ設定空燃比AFTr1に、リーン設定空燃比AFTlは第一リーン設定空燃比AFTl1に変更される。

<設定空燃比制御の効果> このように、本実施形態では、上流側排気浄化触媒20の温度CTが硫黄吸蔵上限温度CTlim以下のときには、硫黄吸蔵上限温度CTlimよりも高いときに比べて、リーン設定空燃比のリーン度合いからリッチ設定空燃比のリッチ度合いを減算した変動差ΔLRが大きくされる。以下では、リッチ設定空燃比及びリーン設定空燃比をこのように制御することの効果について説明する。

図6に示したように、上流側排気浄化触媒20の温度CTが硫黄吸蔵上限温度CTlimよりも高いときに、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリッチ判定空燃比AFrichに到達してから酸素吸蔵量OSAが切替基準吸蔵量Crefに到達するまでの時間をT1とする(例えば、時刻t1〜t2)。同様に、酸素吸蔵量OSAが切替基準吸蔵量Crefに到達してから下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリッチ判定空燃比AFrichに到達するまでの時間をT2とする(例えば、時刻t2〜t3)。したがって、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリッチ判定空燃比AFrichに達してから再度リッチ判定空燃比AFrichに達するまでの1サイクルにかかる時間はT1+T2で表せる(例えば、時刻t1〜t3)。

一方、上流側排気浄化触媒20の温度CTが硫黄吸蔵上限温度CTlim以下のときに、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリッチ判定空燃比AFrichに到達してから酸素吸蔵量OSAが切替基準吸蔵量Crefに到達するまでの時間をT3とする(例えば、時刻t6〜t7)。同様に、酸素吸蔵量OSAが切替基準吸蔵量Crefに到達してから下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリッチ判定空燃比AFrichに到達するまでの時間をT4とする(例えば、時刻t7〜t8)。したがって、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリッチ判定空燃比AFrichに達してから再度リッチ判定空燃比AFrichに達するまでの1サイクルにかかる時間はT3+T4で表せる(例えば、時刻t6〜t8)。

図6からわかるように、本実施形態では、上流側排気浄化触媒20の温度が高いとき(図中の時刻t5以前)には、1サイクルの時間(T1+T2)における時間T1の比率はそれほど低くない。すなわち、1サイクルの時間のうち上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比がリーン空燃比である時間(以下、「リーン時間」という)はそれほど短くない。これに対して、上流側排気浄化触媒20の温度が低いとき(図中の時刻t5〜t10)には、1サイクルの時間(T3+T4)における時間T3の比率は極めて低くなる。すなわち、1サイクルの時間のうちリーン時間が短くなる。これは、上流側排気浄化触媒20の温度CTが低いときに変動差ΔLRが大きくされるためである。

ここで、上述したように、上流側排気浄化触媒20では、その温度CTが硫黄吸蔵上限温度CTlim以下になると、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比がリーン空燃比のときに硫黄成分が吸蔵される。本実施形態では、上流側排気浄化触媒20の温度が低いときには、上流側排気浄化触媒20に流入する排気ガスの空燃比がリーン空燃比である時間が短くなるため、上流側排気浄化触媒20に硫黄成分が吸蔵されるのが抑制される。

一方、本実施形態では、上流側排気浄化触媒20の温度が高いときには、1サイクルの時間のうちリーン時間はそれほど短くない。しかしながら、上述したように、上流側排気浄化触媒20では、その温度CTが硫黄吸蔵上限温度CTlimよりも高い場合には、排気ガスの空燃比がリーン空燃比であっても上流側排気浄化触媒20には硫黄成分はほとんど吸蔵されない。したがって、排気ガスの空燃比がリーン空燃比である時間がそれほど短くなくても、上流側排気浄化触媒20には硫黄成分はほとんど吸蔵されない。以上より、本実施形態によれば、上流側排気浄化触媒20への硫黄成分の吸蔵を抑制することができ、よって上流側排気浄化触媒20の硫黄成分吸蔵量を低く維持することができる。

これに関する実験結果を、図7に示す。図7は、1サイクルの時間におけるリッチ時間の比率(例えば、T2/(T1+T2)、T4/(T3+T4))とCmax比率との関係を表すグラフである。図7に示したグラフは、新触の排気浄化触媒を用いて1サイクルにおけるリッチ時間の比率を一定に維持して内燃機関の運転を行い、その結果、最大吸蔵可能酸素量Cmaxがどのように変化したかを表している。図中のCmax比率は、新触時の最大吸蔵可能酸素量Cmaxを1としたときの最大吸蔵可能酸素量Cmaxの比率を表している。

図7からわかるように、排気浄化触媒の温度が低いとき(400℃)には、リッチ時間の比率が大きくなると、すなわちリーン時間の比率が小さくなるとCmax比率が増大する。これは、リーン時間の比率が小さくなるほど、排気浄化触媒に硫黄成分が吸蔵されにくくなっていることを裏付けるものである。一方、排気浄化触媒の温度が高いとき(700℃)には、Cmax比率は、排気浄化触媒の温度が低いときに比べて高いと共に、リッチ時間の比率に無関係にほぼ一定となっている。したがって、図7に示したグラフからも、本実施形態によれば、上流側排気浄化触媒20への硫黄成分の吸蔵を抑制することができることが裏付けられる。

なお、上記実施形態では、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリッチ判定空燃比AFrichに到達してから酸素吸蔵量OSAが切替基準吸蔵量Crefに到達するまでの間(例えば、時刻t1〜t2、t6〜t7)、目標空燃比AFTは一定に維持されている。すなわち、リーン設定空燃比は一定に維持されている。しかしながら、リーン設定空燃比は必ずしも一定でなくてもよく、或る程度変動してもよい。ただし、この場合であっても、時刻t6〜t7におけるリーン設定空燃比の平均値のリーン度合いは、時刻t1〜t2におけるリーン設定空燃比の平均値のリーン度合いよりも大きいものとされる。

同様に、上記実施形態では、酸素吸蔵量OSAが切替基準吸蔵量Crefに到達してから下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリッチ判定空燃比AFrichに到達するまで(例えば、時刻t2〜t3、t7〜t8)、目標空燃比AFTは一定に維持されている。すなわち、リッチ設定空燃比は一定に維持されている。しかしながら、リッチ設定空燃比も必ずしも一定でなくてもよく、或る程度変動してもよい。ただし、この場合であっても、時刻t6〜t7におけるリッチ設定空燃比の平均値のリッチ度合いは、時刻t1〜t2におけるリッチ設定空燃比の平均値のリッチ度合いよりも小さいものとされる。

また、上述した例では、上流側排気浄化触媒20の温度CTが硫黄吸蔵上限温度CTlim以下であるときに、リッチ設定空燃比AFTr及びリーン設定空燃比AFTlの両方を変更するようにしている。しかしながら、これら両設定空燃比を変更せずに一方のみを変更するようにしてもよい。

図8は、上流側排気浄化触媒20の温度CTが硫黄吸蔵上限温度CTlim以下であるときに、リーン設定空燃比AFTlのみを第一リーン設定空燃比AFTl1から第二リーン設定空燃比AFTl2へと変更し、リッチ設定空燃比AFTrは一定のまま維持している例を示している。この場合であっても、第二変動差ΔLR2(=ΔAFTl2−ΔAFTr1)は、第一変動差ΔLR1(=ΔAFTl1−ΔAFTr1)よりも大きな値とされる(ΔLR2>ΔLR1)。この結果、上流側排気浄化触媒20の温度CTが高いときにリーン時間の比率を高めることができ、よって上流側排気浄化触媒20への硫黄成分の吸蔵を抑制することができる。

図9は、上流側排気浄化触媒20の温度CTが硫黄吸蔵上限温度CTlim以下であるときに、リッチ設定空燃比AFTrのみを第一リッチ設定空燃比AFTr1から第二リッチ設定空燃比AFTr2へと変更し、リーン設定空燃比AFTlは一定のまま維持している例を示している。この場合であっても、第二変動差ΔLR2(=ΔAFTl1−ΔAFTr2)は、第一変動差ΔLR1(=ΔAFTl1−ΔAFTr1)よりも大きな値とされる(ΔLR2>ΔLR1)。この結果、図9に示した場合であっても、上流側排気浄化触媒20の温度CTが高いときにリーン時間の比率を高めることができ、よって上流側排気浄化触媒20への硫黄成分の吸蔵を抑制することができる。

また、上記実施形態では、上流側排気浄化触媒20の温度CTが硫黄吸蔵上限温度CTlimを境に、リッチ設定空燃比及びリーン設定空燃比を変更している。しかしながら、設定空燃比を切り替えるための温度は、必ずしも硫黄吸蔵上限温度CTlimでなくてもよく、これよりも低い温度であってもよい。また、上流側排気浄化触媒20の温度は、必ずしも上流側温度センサ46を設けて実際に検出せずに、上流側排気浄化触媒20の温度に関連する他のパラメータ(例えば、後述する第二実施形態のような吸入空気量等)に基づいて推定してもよい。

<フローチャート> 図10は、目標空燃比の設定制御における制御ルーチンを示すフローチャートである。図示した制御ルーチンは一定時間間隔の割り込みによって行われる。

図10に示したように、まず、ステップS11において目標空燃比AFTの設定条件が成立しているか否かが判定される。目標空燃比AFTの設定条件が成立している場合とは、通常制御中であること、例えば燃料カット制御中ではないこと等が挙げられる。ステップS11において目標空燃比の設定条件が成立していると判定された場合には、ステップS12へと進む。ステップS12では、上流側空燃比センサ40の出力空燃比及び燃料噴射量Qiに基づいて積算酸素過不足量ΣOEDが算出される。

次いでステップS13において、リーン設定フラグFlが0に設定されているか否かが判定される。リーン設定フラグFlは、目標空燃比AFTがリーン設定空燃比AFTlに設定されたときには1とされ、それ以外のときには0とされるフラグである。ステップS13においてリーン設定フラグFlが0に設定されていると判定された場合、すなわち目標空燃比AFTがリッチ設定空燃比AFTrに設定されている場合には、ステップS14へと進む。ステップS14では、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリッチ判定空燃比AFrich以下であるか否かが判定される。下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリッチ判定空燃比AFrichよりも大きいと判定された場合には制御ルーチンが終了せしめられる。

一方、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量OSAが減少して、上流側排気浄化触媒20から流出する排気ガスの空燃比が低下すると、次の制御ルーチンではステップS14にて下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリッチ判定空燃比AFrich以下であると判定される。この場合には、ステップS15へと進み、目標空燃比AFTがリーン設定空燃比AFTlとされる。次いで、ステップS16では、リーン設定フラグFlが1にセットされ、制御ルーチンが終了せしめられる。

次の制御ルーチンにおいては、ステップS13において、リーン設定フラグFlが0に設定されていないと判定されて、ステップS17へと進む。ステップS17では、ステップS12で算出された積算酸素過不足量ΣOEDが判定基準値OEDrefよりも少ないか否かが判定される。積算酸素過不足量ΣOEDが判定基準値OEDrefよりも少ないと判定された場合にはステップS18へと進む。ステップS18では、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリーン判定空燃比AFlean以上であるか否か、すなわち酸素吸蔵量OSAが最大吸蔵可能酸素量Cmax近傍に到達しているか否かが判定される。ステップS18において、出力空燃比AFdwnがリーン判定空燃比AFleanよりも小さいと判定された場合には、ステップS19へと進む。ステップS19では、目標空燃比AFTが引き続きリーン設定空燃比AFTlとされる。

一方、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量が増大すると、やがてステップS17において積算酸素過不足量ΣOEDが判定基準値OEDref以上であると判定され、ステップS20へと進む。或いは、酸素吸蔵量OSAが最大吸蔵可能酸素量Cmax近傍に到達すると、ステップS18において下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリーン判定空燃比AFlean以上であると判定され、ステップS20へと進む。ステップS20では、目標空燃比AFTがリッチ設定空燃比AFTrとされ、次いで、ステップS21では、リーン設定フラグFlが0にリセットされ、制御ルーチンが終了せしめられる。

図11は、設定空燃比の変更制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。図示した制御ルーチンは一定時間間隔の割り込みによって行われる。 まず、ステップS31において、上流側温度センサ46によって検出された上流側排気浄化触媒20の温度CTが硫黄吸蔵上限温度CTlim以下であるか否かが判定される。温度CTが硫黄吸蔵上限温度CTlimよりも高いと判定された場合には、ステップS32へと進む。ステップS32では、リッチ設定空燃比AFTrが第一リッチ設定空燃比AFTr1に設定される。次いで、ステップS33では、リーン設定空燃比AFTlが第一リーン設定空燃比AFTl1に設定され、制御ルーチンが終了せしめられる。

一方、ステップS31において、温度CTが硫黄吸蔵上限温度CTlim以下であると判定された場合には、ステップS34へと進む。ステップS34では、リッチ設定空燃比AFTrが第二リッチ設定空燃比AFTr2に設定される。次いで、ステップS35では、リーン設定空燃比AFTlが第二リーン設定空燃比AFTl2に設定され、制御ルーチンが終了せしめられる。

<第二実施形態> 次に、図12及び図13を参照して、本発明の第二実施形態に係る制御装置について説明する。第二実施形態の制御装置における構成及び制御は、基本的に第一実施形態の制御装置における構成及び制御と同様である。ただし、第二実施形態では、内燃機関の吸入空気量に基づいて、両設定空燃比の値が変更せしめられる。

一般に、上流側排気浄化触媒20の温度は、上流側排気浄化触媒20に流入する高温の排気ガスの流量、すなわち内燃機関の燃焼室5に供給される吸入空気量に応じて変化する。したがって、内燃機関の燃焼室5に供給される吸入空気量が多くなるほど、上流側排気浄化触媒20の温度も上昇する。このため、内燃機関の燃焼室5に供給される吸入空気量に基づいて上流側排気浄化触媒20の温度を推定することができる。具体的には、内燃機関の燃焼室5に供給される吸入空気量が上限吸入空気量以下であるときには、上流側排気浄化触媒20の温度が硫黄吸蔵上限温度以下であると推定することができる。逆に、内燃機関の燃焼室5に供給される吸入空気量が上限吸入空気量よりも多いときには、上流側排気浄化触媒20の温度が硫黄吸蔵上限温度よりも高いと推定することができる。

そこで、本実施形態では、エアフロメータ39の出力等に基づいて算出された吸入空気量に応じて、リーン設定空燃比の理論空燃比からの差(リーン度合い)及びリッチ設定空燃比の理論空燃比からの差(リッチ度合い)を変更するようにしている。

図12は、本実施形態におけるリッチ設定空燃比及びリーン設定空燃比の変更制御を行った際における、目標空燃比AFT等の、図6と同様なタイムチャートである。図12に示した例では、時刻t5以前には、内燃機関の燃焼室5に供給される吸入空気量Gaが上限吸入空気量Galimよりも多くなっている。このとき、リッチ設定空燃比AFTr及びリーン設定空燃比AFTlは、それぞれ第一リッチ設定空燃比AFTr1及び第一リーン設定空燃比AFTl1に設定されている。

一方、時刻t5において、内燃機関の燃焼室5に供給される吸入空気量Gaが上限吸入空気量Galim以下になると、リッチ設定空燃比AFTrが、第一リッチ設定空燃比AFTr1から第二リッチ設定空燃比AFTr2へと変更される。加えて、リーン設定空燃比AFTlが、第一リーン設定空燃比AFTl1から第二リーン設定空燃比AFTl2へと変更される。なお、本実施形態における第一リッチ設定空燃比AFTr1、第一リーン設定空燃比AFTl1、第二リッチ設定空燃比AFTr2及び第二リーン設定空燃比AFTl2の関係は、第一実施形態における関係と同様である。

本実施形態では、内燃機関の燃焼室5に供給される吸入空気量Gaが上限吸入空気量Galimになるのを境に両設定空燃比を変更している。この結果、実質的に、上流側排気浄化触媒20の温度CTが硫黄吸蔵上限温度CTlimになるのを境に両設定空燃比を変更しているといえる。したがって、本実施形態においても、上記第一実施形態と同様に、上流側排気浄化触媒20への硫黄成分の吸蔵を抑制することができ、よって上流側排気浄化触媒20の硫黄成分吸蔵量を低く維持することができる。

また、内燃機関の運転状態によっては、例えば、内燃機関の燃焼室5に供給される吸入空気量Gaが急激に上昇する場合がある。この場合、リーン設定空燃比AFTlのリーン度合いが高いと、上流側排気浄化触媒20に急激に酸素及びNOxが流入することになる。したがって、場合によっては、上流側排気浄化触媒20の酸素吸蔵量OSAが最大吸蔵可能酸素量Cmaxに到達して、上流側排気浄化触媒20からNOxが流出してしまう可能性がある。しかしながら、本実施形態では、内燃機関の燃焼室5に供給される吸入空気量Gaが大量に流入した場合にはリーン設定空燃比AFTlのリーン度合いが低くせしめられる。このため、このような場合であっても、上流側排気浄化触媒20からNOxが流出してしまうのが抑制される。

なお、本実施形態においても、図8及び図9に示した例と同様に、リーン設定空燃比AFTlのみ、或いはリッチ設定空燃比AFTrのみを変更するようにしてもよい。加えて、本実施形態においても、リーン設定空燃比AFTl及びリッチ設定空燃比AFTrは或る程度変動するように設定されてもよい。また、設定空燃比を変更するための吸入空気量は必ずしも上限吸入空気量でなくてもよく、これよりも少ない吸入空気量であってもよい。

図13は、本実施形態における設定空燃比の変更制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。図示した制御ルーチンは一定時間間隔の割り込みによって行われる。なお、図13のステップS42〜S45は、図11のステップS32〜S35と同様であるため、説明を省略する。

図13に示した制御ルーチンでは、ステップS41において、エアフロメータ39の出力等に基づいて算出された吸入空気量Gaが上限吸入空気量Galim以下であるか否かが判定される。吸入空気量Gaが上限吸入空気量Galimよりも多いと判定された場合には、ステップS42へと進み、リッチ設定空燃比AFTr及びリーン設定空燃比AFTlがそれぞれ第一リッチ設定空燃比AFTr1及び第一リーン設定空燃比AFTl1に設定される。一方、吸入空気量Gaが上限吸入空気量Galim以下であると判定された場合には、ステップS44へと進み、リッチ設定空燃比AFTr及びリーン設定空燃比AFTlがそれぞれ第二リッチ設定空燃比AFTr2及び第二リーン設定空燃比AFTl2に設定される。

<第三実施形態> 次に、図14及び図15を参照して、本発明の第三実施形態に係る制御装置について説明する。第二実施形態の制御装置における構成及び制御は、基本的に第一実施形態及び第二実施形態の制御装置における構成及び制御と同様である。ただし、第三実施形態では、内燃機関がアイドル運転を行っているか否かで、両設定空燃比の値が変更せしめられる。

ところで、内燃機関がアイドル運転を行っているときには、それ以外の運転を行っているときに比べて、燃焼室5から排出される排気ガスの温度が低いものとなる。この結果、上流側排気浄化触媒20の温度も低いものとなる。したがって、内燃機関がアイドル運転を行っているときは、上流側排気浄化触媒20の温度CTが硫黄吸蔵上限温度CTlimよりも低い所定の温度以下になっているといえる。そこで、本実施形態では、内燃機関がアイドル運転を行っているか否かに応じて、リーン設定空燃比の理論空燃比からの差(リーン度合い)及びリッチ設定空燃比の理論空燃比からの差(リッチ度合い)を変更するようにしている。

図14は、本実施形態におけるリッチ設定空燃比及びリーン設定空燃比の変更制御を行った際における、目標空燃比AFT等の図6と同様なタイムチャートである。図14に示した例では、時刻t5以前には、内燃機関はアイドル運転を行っていない。このとき、リッチ設定空燃比AFTr及びリーン設定空燃比AFTlは、それぞれ第一リッチ設定空燃比AFTr1及び第一リーン設定空燃比AFTl1に設定されている。

一方、時刻t5において、内燃機関がアイドル運転を開始すると、リッチ設定空燃比AFTrが、第一リッチ設定空燃比AFTr1から第二リッチ設定空燃比AFTr2へと変更される。加えて、リーン設定空燃比AFTlが、第一リーン設定空燃比AFTl1から第二リーン設定空燃比AFTl2へと変更される。なお、本実施形態における第一リッチ設定空燃比AFTr1、第一リーン設定空燃比AFTl1、第二リッチ設定空燃比AFTr2及び第二リーン設定空燃比AFTl2の関係は、第一実施形態における関係と同様である。

本実施形態では、内燃機関がアイドル運転を行っているか否かで両設定空燃比を変更している。この結果、実質的に、上流側排気浄化触媒20の温度CTが硫黄吸蔵上限温度CTlimよりも低い一定温度になるのを境に両設定空燃比を変更しているといえる。したがって、本実施形態においても、上記第一実施形態と同様に、上流側排気浄化触媒20への硫黄成分の吸蔵を抑制することができ、よって上流側排気浄化触媒20の硫黄成分吸蔵量を低く維持することができる。

また、内燃機関がアイドル運転を行っている際には、内燃機関の燃焼室5に供給される吸入空気量が極めて少ない。このため、吸入空気量等に乱れが生じても、上流側排気浄化触媒20に多量の酸素及びNOxが流入してしなうことはほとんどない。このため、吸入空気量等に乱れが生じることによって、上流側排気浄化触媒20から一時的にNOxが流出してしまうことが抑制される。なお、本実施形態においても、図8及び図9に示した例と同様に、リーン設定空燃比AFTlのみ、或いはリッチ設定空燃比AFTrのみを変更するようにしてもよい。

図15は、本実施形態における設定空燃比の変更制御の制御ルーチンを示すフローチャートである。図示した制御ルーチンは一定時間間隔の割り込みによって行われる。なお、図15のステップS52〜S55は、図11のステップS32〜S35と同様であるため、説明を省略する。

図15に示した制御ルーチンでは、ステップS51において、内燃機関がアイドル運転中であるか否かが判定される。内燃機関がアイドル運転中であるか否かは、例えば負荷センサ43よって検出される機関負荷及びクランク角センサ44によって検出される機関回転数に基づいて判定される。この場合、例えば、機関負荷が予め定められた所定のアイドル判定負荷以下であって且つ機関回転数が予め定められた所定のアイドル判定回転数以下であるときにアイドル運転中であると判定される。

ステップS51において内燃機関がアイドル運転中ではないと判定された場合には、ステップS52へと進み、リッチ設定空燃比AFTr及びリーン設定空燃比AFTlがそれぞれ第一リッチ設定空燃比AFTr1及び第一リーン設定空燃比AFTl1に設定される。一方、ステップS51において内燃機関がアイドル運転中であると判定された場合には、ステップS54へと進み、リッチ設定空燃比AFTr及びリーン設定空燃比AFTlがそれぞれ第二リッチ設定空燃比AFTr2及び第二リーン設定空燃比AFTl2に設定される。

ところで、上記第一実施形態から上記第三実施形態では、いずれも空燃比制御として図5に示した制御を行うことを前提としている。しかしながら、前提とする空燃比制御は必ずしも図5に示した制御を行う必要はなく、目標空燃比をリッチ空燃比とリーン空燃比とに交互に設定するような制御であれば如何なる制御であってもよい。

このような制御としては、例えば、図16に示した制御が考えられる。図16に示した制御においても、下流側空燃比センサ41の出力空燃比に基づいて目標空燃比を設定する目標空燃比の設定制御が行われる。この目標空燃比の設定制御では、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリッチ空燃比になったとき、具体的には出力空燃比AFdwnがリッチ判定空燃比AFrich以下になったときに、目標空燃比AFTがリーン設定空燃比AFTlとされる(例えば、図中の時刻t1、t3、t6、t8)。一方、下流側空燃比センサ41の出力空燃比AFdwnがリーン空燃比になったとき、具体的には出力空燃比AFdwnがリーン判定空燃比AFlean以上になったときに、目標空燃比AFTがリッチ設定空燃比AFTrとされる(例えば、図中の時刻t2、t4、t7、t9)。

このような空燃比制御を行っている場合でも、上記第一実施形態から上記第三実施形態と同様な制御が行われる。図16に示した例では、時刻t5以前には、上流側排気浄化触媒20の温度CTが硫黄吸蔵上限温度CTlimよりも高くなっている。このとき、リッチ設定空燃比AFTr及びリーン設定空燃比AFTlは、それぞれ第一リッチ設定空燃比AFTr1及び第一リーン設定空燃比AFTl1に設定される。

一方、時刻t5において、上流側排気浄化触媒20の温度CTが硫黄吸蔵上限温度CTlim以下になると、リッチ設定空燃比AFTrが、第一リッチ設定空燃比AFTr1から第二リッチ設定空燃比AFTr2へと変更される。加えて、リーン設定空燃比AFTlが、第一リーン設定空燃比AFTl1から第二リーン設定空燃比AFTl2へと変更される。

1 機関本体 5 燃焼室 7 吸気ポート 9 排気ポート 19 排気マニホルド 20 上流側排気浄化触媒 24 下流側排気浄化触媒 31 ECU 40 上流側空燃比センサ 41 下流側空燃比センサ

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