Improvement of the sensor chip

申请号 JP2006517907 申请日 2004-07-08 公开(公告)号 JP2007525653A 公开(公告)日 2007-09-06
申请人 タクニア ピーティーワイ エルティーディー; 发明人 ジョンソン、ダニエル、ルーク; マーティン、リザンドラ、ローライン;
摘要 固体支持体の表面に選択的に分子を 配向 させる方法。 前記方法は、(a)固体支持体(1)の表面に、前記固体支持体に結合可能な頭部基と金属イオンにキレート結合可能な末端基(3,4)とを含むリンカー分子を付着させる工程と、(b)次に、前記金属イオン(5)を含有する溶液で前記固体支持体を処理する工程と、(c)金属イオンキレート標識を分子に付着させて標識分子を形成する工程と、(d)前記固体支持体を前記標識分子と 接触 させることによって前記標識分子を前記固体支持体上に捕捉し、前記固体支持体の前記表面上に、大部分の分子が前記表面(6)に対して同一の配向で保持されている分子の単分子膜を形成する工程とを含んでいる。 さらに本発明は、本発明の方法を用いて形成されるセンサチップを提供する。
【選択図】図1
权利要求
  • 固体支持体の表面に選択的に分子を配向させ固定化する方法であり、
    固体支持体の表面に、前記固体支持体に結合可能な頭部基と金属イオンにキレート結合可能な末端基とを含むリンカー分子を付着させる工程と、
    前記金属イオンを含有する溶液で前記固体支持体を処理し、前記金属イオンを前記末端基にキレート結合させる工程と、
    金属イオンキレート標識を分子に付着させて標識分子を形成する工程と、
    前記固体支持体を前記標識分子と接触させることによって前記標識分子を前記固体支持体上に捕捉し、前記固体支持体の前記表面上に、大部分の分子が前記表面に対して同一の配向で保持されている分子の単分子膜を形成する工程とを含む方法。
  • 前記リンカー分子の末端基が、前記金属イオンに配位結合可能な原子を3以上含む環状配位子である請求項1に記載の方法。
  • 前記リンカー分子の末端基が、前記金属イオンにキレート結合可能な大員環である請求項2に記載の方法。
  • 前記大員環が、四座大員環である請求項3に記載の方法。
  • 前記大員環が、1,4,7−トリアザシクロノナンの誘導体である請求項4に記載の方法。
  • 前記大員環が、1−アセタト−4−ベンジル−1,4,7−トリアザシクロノナンである請求項5に記載の方法。
  • 前記金属イオンが、正八面体配位可能である請求項5に記載の方法。
  • 前記金属イオンが、亜鉛、銅、コバルト、およびニッケルからなる群から選択される請求項7に記載の方法。
  • 前記標識が、キレート形成アミノ酸を含むペプチド鎖である請求項8に記載の方法。
  • 前記キレート形成アミノ酸が、システイン、リジン、ヒスチジン、およびアルギニンからなる群の1以上から選択される請求項9に記載の方法。
  • 前記標識が、連続したヒスチジン残基を4〜6含むペプチドである請求項10に記載の方法。
  • 前記標識が、連続したヒスチジン残基を6含むペプチドである請求項11に記載の方法。
  • 前記リンカー分子を付着させる前記固体支持体が、貴金属である請求項12に記載の方法。
  • 前記貴金属が、銀、金、白金、およびパラジウムからなる群から選択される請求項13に記載の方法。
  • 前記固体基板が、前記リンカー分子の頭部基が結合する金表面を含む請求項12に記載の方法。
  • 前記リンカー分子が、前記頭部基と前記末端基との間にスペーサを含む請求項15に記載の方法。
  • 前記スペーサが、前記頭部基と前記末端基との間に存在する炭素系鎖である請求項16に記載の方法。
  • 前記炭素系鎖が、アルキル鎖である請求項17に記載の方法。
  • 前記炭素系鎖が、2〜6原子の鎖長を有する請求項18に記載の方法。
  • 前記炭素系鎖が、前記頭部基と前記末端基との間において、3原子の鎖長を有する請求項19に記載の方法。
  • 前記頭部基が、前記貴金属表面に対して比較的高い親和性を有するヘテロ原子である請求項16に記載の方法。
  • 前記頭部基が、硫黄またはセレンである請求項21に記載の方法。
  • 前記分子が、タンパク質である請求項22に記載の方法。
  • 前記標識分子内の前記標識が、前記タンパク質の活性部位または認識領域から離れた位置で前記タンパク質に共有結合している請求項23に記載の方法。
  • 前記固体支持体が電極である請求項24に記載の方法。
  • 固体支持体の表面に選択的に分子を配向させ固定化する方法であり、
    固体支持体の金表面に、前記金表面に結合可能な頭部基と、金属イオンにキレート結合可能な四座大員環末端基と、前記頭部基と前記末端基との間に延びるスペーサとを含むリンカー分子を付着させる工程と、
    前記金属イオンを含有する溶液に前記固体支持体を接触させ、前記金属イオンを前記大員環に配位結合させる工程と、
    前記金属に配位結合可能な6 * his標識を分子に付着させて標識分子を形成する工程と、
    前記固体支持体を前記6 * his標識分子と接触させて前記6 * his標識を前記金属イオンに配位結合させることによって前記標識分子を前記固体支持体上に捕捉し、前記固体支持体の前記表面上に、大部分の分子が前記表面に対して同一の配向で保持されている分子の単分子膜を形成する工程とを含む方法。
  • 前記大員環が、1−アセタト−4−ベンジル−1,4,7−トリアザシクロノナンである請求項24に記載の方法。
  • 貴金属表面を有する固体支持体と、
    前記固体支持体に結合された頭部基と、金属イオンにキレート結合された四座大員環末端基とを含み、前記固体支持体の表面に付着されたリンカー分子と、
    前記固体支持体の前記表面に形成された分子の単分子膜とを含むセンサチップであり、
    前記各分子は、金属イオンキレート標識を含み、かつ前記標識が前記金属イオンに配位結合することによって大部分の分子が前記表面に対して同一の配向で保持されるように前記固体支持体の表面に保持されているセンサチップ。
  • 前記大員環が、1,4,7−トリアザシクロノナンの四座誘導体である請求項28に記載のセンサチップ。
  • 前記大員環が、1−アセタト−4−ベンジル−1,4,7−トリアザシクロノナンである請求項29に記載のセンサチップ。
  • 前記金属イオンが、亜鉛、銅、コバルト、およびニッケルからなる群から選択される請求項30に記載のセンサチップ。
  • 前記標識が、キレート形成アミノ酸を含むペプチド鎖である請求項31に記載のセンサチップ。
  • 前記キレート形成アミノ酸が、システイン、リジン、ヒスチジン、およびアルギニンからなる群の1以上から選択される請求項32に記載のセンサチップ。
  • 前記標識が、連続したヒスチジン残基を4〜6含むペプチドである請求項33に記載のセンサチップ。
  • 前記標識が、連続したヒスチジン残基を6含むペプチドである請求項34に記載のセンサチップ。
  • 前記貴金属が、銀、金、白金、およびパラジウムからなる群から選択される請求項35に記載のセンサチップ。
  • 前記貴金属が、金である請求項36に記載のセンサチップ。
  • 前記リンカー分子が、前記頭部基と前記末端基との間にスペーサを含む請求項36に記載のセンサチップ。
  • 前記スペーサが、前記頭部基と前記末端基との間に存在する炭素系鎖である請求項38に記載のセンサチップ。
  • 前記炭素系鎖が、アルキル鎖である請求項39に記載のセンサチップ。
  • 前記炭素系鎖が、2〜6原子の鎖長を有する請求項40に記載のセンサチップ。
  • 前記炭素系鎖が、前記頭部基と前記末端基との間において、3原子の鎖長を有する請求項41に記載のセンサチップ。
  • 前記頭部基が、前記貴金属表面に対して比較的高い親和性を有するヘテロ原子である請求項42に記載のセンサチップ。
  • 前記頭部基が、硫黄またはセレンである請求項43に記載のセンサチップ。
  • 前記分子が、タンパク質である請求項44に記載のセンサチップ。
  • 前記標識分子内の前記標識が、前記タンパク質の活性部位または認識領域から離れた位置で前記タンパク質に共有結合している請求項45に記載のセンサチップ。
  • 請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法によって改変されたセンサチップ。
  • 固体支持体の表面に固定化された分子の単分子膜を含むセンサチップであり、前記固定化された分子の大部分が前記表面に対して同一の配向を示すセンサチップ。
  • 請求項28〜48のいずれか1項に記載のセンサチップと、
    前記センサチップ上に固定化された分子のパラメータの変化を検出するための変換器とを備えたバイオセンサデバイス。
  • 試料中の分析物の存在を確認する方法であり、
    自己組織化単分子膜を固体支持体の表面に設ける工程であって、前記単分子膜は、前記固体支持体の前記表面に結合された頭部基と金属イオンにキレート結合された末端基とを含むリンカー分子と、前記金属イオンに結合した標識を有し、かつ前記固体支持体の前記表面に対して均一に配向している分析物結合分子とを含む工程と、
    前記分析物結合分子が固定化された前記自己組織化単分子膜を、ターゲット分析物を含有していると思われる試料と接触させる工程と、
    前記ターゲット分析物と前記分析物結合分子の結合を検出することにより、前記ターゲット分析物の有無を決定する工程とを含む方法。
  • 金表面を有する固体支持体上に選択的に分子を配向させ固定化する方法であり、
    前記金表面をメルカプトプロピオン酸で処理してメルカプトプロピオン酸自己組織化単分子膜を形成する工程と、
    前記メルカプトプロピオン酸自己組織化単分子膜を1,4,7−トリアザシクロノナンの四座誘導体で処理し、大員環で修飾されたメルカプトプロピオン自己組織化単分子膜を形成する工程と、
    前記大員環で修飾されたメルカプトプロピオン自己組織化単分子膜を、正八面体配位を形成しようとする金属で処理し、金属大員環で修飾されたメルカプトプロピオン自己組織化単分子膜を形成する工程と、
    前記金属大員環で修飾されたメルカプトプロピオン自己組織化単分子膜を6 * his標識分子を含有する溶液で処理し、固定化された分子の高配向な単分子膜を形成する工程とを含む方法。
  • 実質的に本明細書において実施例を参照して述べたような、固体支持体上に選択的に分子を配向させ固定化する請求項1に記載の方法。
  • 実質的に本明細書において実施例を参照して述べたような、請求項28に記載のセンサチップ。
  • 说明书全文

    本発明は、基板表面に固定化された分子の単分子膜を有するタイプのセンサチップに関するものである。 前記センサチップは、前記固定化された分子と他の分子との相互作用、または前記固定化された分子と前記基板表面との相互作用を調べるために使用できる。

    配位子と分子との相互作用および/または生体分子の電気化学的挙動の調査および/または分析は、生物学、免疫学、化学、薬理学を含む多くの分野において基本的に重要である。

    配位子と分子との相互作用の調査には、多数の分析技法が使用可能である。 例えば、生物学的な分析物は、配位子および受容体間における配位子特異的結合に基づいて検出または定量可能である。 一般的な配位子/受容体結合対として、抗原抗体、ホルモンと受容体、薬剤と受容体、細胞表面抗原とレクチン、ビオチンとアビジン、基質と酵素、および相補核酸鎖(complementary nucleic acid strands)同士の結合対が挙げられる。 検出対象の分析物は、前記結合対をなす物質のいずれか一方であってもよい。 あるいは、前記分析物は、前記受容体に結合する前記配位子に対応する配位子類似体であってもよい。

    その他の分析技法として、固体支持体表面における分子の酸化または還元を利用するものが挙げられる。 例えば、グルコースセンサは、グルコースを過酸化素を含む反応生成物へと変換するグルコースオキシターゼ等の酵素を含んでいてもよい。 次に、好適な電極により、生成された前記過酸化水素を電気信号として測定できる。 前記信号は、前記過酸化水素から前記電極への電子の移動に伴って生成される。 好適な条件下においては、前記酵素によって触媒された電流の流れは、試料中のグルコース濃度に比例する。 また、配位子と受容体との結合事象の存在に応じて起こる電流またはインピーダンスの変化を検出するための電流またはインピーダンス測定素子を、電極表面と併用してもよい。

    上述の分析技法の多くには、分子を固体支持体に固定化することが含まれている。 固体支持体は、分子を固定化するという役割以外には、後続の固定化分子の化学的または生物学的調査において何の役割を果たさなくともよい。 あるいは、固体支持体は、例えばそれが分子の電気化学的性質の調査に用いられる電極である場合等には、固定化された分子と相互作用してもよい。

    固体支持体の表面に分子を固定化する一般的な技法として、予めアルカンチオールで修飾した固体支持体の表面に分子を共有結合させることが挙げられる。 前記表面に前記分子を共有結合させることにより、前記固体支持体からの前記分子の拡散が防止されると共に、通常、単一の単分子膜に限定される分子の膜が形成され、これにより、必要な試料の体積が制限される。 このような分子の自己組織化単分子膜(「SAM」)の形成により、配位子と分子の結合の相互作用および特異的な酸化還元活性分析物の研究のための新たなインターフェースの設計が可能となった。 単分子膜の形成は、例えば、アルカンチオールと金との結合およびカルボキシレートやホスホネートと金属酸化物表面間での関連結合を介して行われてきた。 金表面に形成された単分子膜は、表面における生体分子認識を研究する上で特に好適である。 なぜなら、その明確な構造が、例えば、走査トンネル顕微鏡検査法、原子顕微鏡検査法、およびその他の光学的、電気化学的な生物学的分析技法を用いて行う分子レベルでの詳細なキャラクタリゼーションに適しているからである。

    固定化された分子の単分子膜を有する固体支持体は、一般に、「チップ」または「センサチップ」と呼ばれている。 センサチップは、通常、固定化された分子の1以上の特性を測定できるバイオセンサ機器に用いられる。 代表的なバイオセンサ機器として、ビアコア エービー(Biacore AB)(ウプサラ、スウェーデン)社製の商品名BIAcore(登録商標)(以下、「BIAcore機器」という)が挙げられる。 BIAcore機器は、発光ダイオードと、金薄膜で被覆されたセンサチップと、一体型流体カートリッジと、光検出器とを備えている。 測定対象分析物の受容体である分子を前記センサチップの表面に固定化し、前記測定対象分析物を含有する試料の流れに前記チップを接触させる。 次に、前記測定対象分析物の結合によって生じる前記センサチップの表面光学特性の変化を、強度損失または前記センサチップ表面の前記金薄膜に反射された光の「一時的減少(dip)」を検出することによって測定する。

    センサチップの使用に基づいて分析物の測定を行う多数の装置が、現在利用可能である。 しかしながら、利用可能なセンサチップの多くには、感度、被検試料の体積、再現性、応答速度、有効な用途の数、または検出範囲に関して何らかの制限がある。 臨床設定では、流体分析の際に比較的少ない体積の被検試料からなるべく多くのデータを得ることが目的となる。

    本明細書において本発明の背景について述べたのは、本発明がなされた状況を説明するためである。 よって、これは、記載された材料がいずれかの国において出版されている、公知である、または一般的な知識であると認めるものと解釈されるべきではない。 さらに、本明細書において、本発明の様々な態様を説明する目的で文献を参照する場合がある。 しかしながら、これは、本明細書において引用した文献がいずれかの国において当業界の一般的知識を構成していると認めるものではない。

    本発明は、固体基板の表面に分子を均一に配向させ、これにより前記分子の活性部位を前記表面上で均一に配向させることにより、前記固定化された分子と溶液相または前記固体支持体との相互作用の効率を高めることが可能であることを見出した、本発明者らによる研究から生じたものである。 固定化された全ての分子の活性部位または認識ドメインが適切な溶液相に対向していれば、各分子が適切な基板と相互作用し、バイオセンサ応答全体に貢献できる。 最適化された検出層は、より優れた感度および信頼性を示すことが期待され、好適な適用範囲の拡大や製造コストの削減の可能性を秘めている。

    本発明は、固体支持体の表面に選択的に分子を配向させ固定化する方法であり、固体支持体の表面に、前記固体支持体に結合可能な頭部基と金属イオンにキレート結合可能な末端基とを含むリンカー分子を付着させる工程と、前記金属イオンを含有する溶液で前記固体支持体を処理し、前記金属イオンを前記末端基にキレート結合させる工程と、金属イオンキレート標識を分子に付着させて標識分子を形成する工程と、前記固体支持体を前記標識分子と接触させることによって前記標識分子を前記固体支持体上に捕捉し、前記固体支持体の前記表面上に、大部分の分子が前記表面に対して同一の配向で保持されている分子の単分子膜を形成する工程とを含む方法を提供する。

    さらに本発明は、固体支持体の表面に捕捉された固定化分子の単分子膜を含むセンサチップであり、前記固定化された分子の大部分が前記表面に対して同一の配向を示すセンサチップを提供する。

    さらに本発明は、固体支持体に結合された頭部基と、金属イオンにキレート結合された末端基とを含み、前記固体支持体の表面に付着されたリンカー分子と、前記固体支持体の前記表面に形成された分子の単分子膜とを含むセンサチップであり、前記各分子は、金属イオンキレート標識を含み、かつ前記標識が前記金属イオンに配位結合することによって大部分の分子が前記表面に対して同一の配向で保持されるように前記固体支持体の表面に保持されているセンサチップを提供する。

    「大部分の分子が前記表面に対して同一の配向で保持」されているか否かを決定するため、本発明の方法を用いて固体支持体上で配向させた分子に対する酸化還元応答を、走査速度を徐々に上げて電気化学的応答を測定することによって比較することができる。 電気化学的可逆性の向上が観察された場合、前記分子は配向していると考えられる。

    前記リンカー分子の末端基が、前記金属イオンに配位結合可能な原子を3以上含む環状配位子であることが好ましい。 また、前記末端基が、前記金属イオンにキレート結合可能な四座大員環であることがより好ましい。

    さらに本発明は、固体支持体の表面に選択的に分子を配向させ固定化する方法であり、固体支持体の金表面に、前記金表面に結合可能な頭部基と、金属イオンにキレート結合可能な四座大員環末端基と、前記頭部基と前記末端基との間に延びるスペーサとを含むリンカー分子を付着させる工程と、前記金属イオンを含有する溶液に前記固体支持体を接触させ、前記金属イオンを前記大員環に配位結合させる工程と、前記金属に配位結合可能な標識を分子に付着させて標識分子を形成する工程と、前記固体支持体を前記標識分子と接触させて前記標識を前記金属イオンに配位結合させることによって前記標識分子を前記固体支持体上に捕捉し、前記固体支持体の前記表面上に、大部分の分子が前記表面に対して同一の配向で保持されている分子の単分子膜を形成する工程とを含む方法を提供する。

    大員環の効果の結果、大員環末端基の使用により、前記金属イオンの結合をより強固なものにすることができ、前記支持体からの金属イオンの脱落が低減されると考えられる。 「大員環の効果」という用語は、環状多座配位子を有する錯体の熱力学的安定性が、同等の非環状配位子によって形成される錯体のものよりも優れることを指す。

    さらに本発明は、本発明のセンサチップと、前記センサチップ上に固定化された分子のパラメータの変化を検出するための変換器とを備えたバイオセンサデバイスを提供する。

    さらに本発明は、固体支持体に固定化された分子のパラメータの測定感度を向上させる方法であり、本明細書に記載の方法を用いて固体支持体に分子を配向させる工程を含む方法を提供する。

    さらに本発明は、固体支持電極に固定化された酸化還元活性分子の電気化学的パラメータ測定の再現性および/または感度を向上させる方法であり、固体支持電極の表面に、前記固体支持体に結合可能な頭部基と、金属イオンにキレート結合可能な末端基と、前記頭部基と前記末端基との間に存在する2原子以上の鎖長を有するアルキル鎖とを含むリンカー分子を付着させる工程と、前記金属イオンを含有する溶液で前記固体支持体を処理し、前記金属イオンを前記末端基にキレート結合させる工程と、
    金属イオンキレート標識を酸化還元活性分子に付着させて標識分子を形成する工程と、前記固体支持体を前記標識酸化還元活性分子と接触させることによって前記標識酸化還元活性分子を前記固体支持体上に捕捉し、前記固体支持体の前記表面上に、大部分の分子が前記表面に対して同一の配向で保持されている酸化還元活性分子の単分子膜を形成する工程とを含む方法を提供する。

    さらに本発明は、試料中の分析物の存在を確認する方法であり、自己組織化単分子膜を固体支持体の表面に設ける工程であって、前記単分子膜は、前記固体支持体の前記表面に結合された頭部基と金属イオンにキレート結合された末端基とを含むリンカー分子と、前記金属イオンに結合した標識を有し、かつ前記固体支持体の前記表面に対して均一に配向している分析物結合分子とを含む工程と、前記分析物結合分子が固定化された前記自己組織化単分子膜を、ターゲット分析物を含有していると思われる試料と接触させる工程と、前記ターゲット分析物と前記分析物結合分子の結合を検出することにより、前記ターゲット分析物の有無を決定する工程とを含む方法を提供する。

    本発明の概要について述べる前に、本明細書において使用されるいくつかの用語を定義する。

    本明細書中で使用されている「分子」という用語は、固体支持体表面に捕捉することにより、化学的および/または物理的なパラメータあるいは特性を測定または決定できるあらゆる炭素系分子を意味するものと解釈されるべきである。 前記分子は、どのようなタンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質、または合成分子であってもよい。

    固体支持体表面に対する分子の配置に関連して本明細書中で使用されている「配向」という用語は、固体支持体表面に対する分子の位置と姿勢(attitude)を意味するものと解釈されるべきである。

    固体支持体表面上の分子に関連して本明細書中で使用されている「固定化する」という用語は、固体支持体を使用しようとする条件下において、分子が前記固体支持体に結合していることを意味するものと解釈されるべきである。 このような条件下において、前記分子は前記固体支持体の表面から移動できない。 しかしながら、特定の条件下で前記固体支持体から前記分子を除去できるように、前記分子を可逆的に結合させてもよいものと解釈されるべきである。

    上述のように、本発明は、固体支持体の表面に分子を固定化および選択的に配向する方法であり、固体支持体の表面に、前記固体支持体に結合可能な頭部基と金属イオンにキレート結合可能な末端基とを含むリンカー分子を付着させる工程と、前記金属イオンを含有する溶液で前記固体支持体を処理し、前記金属イオンを前記末端基にキレート結合させる工程と、金属イオンキレート標識を分子に付着させて標識分子を形成する工程と、前記固体支持体を前記標識分子と接触させることによって前記標識分子を前記固体支持体上に捕捉し、前記固体支持体の前記表面上に、大部分の分子が前記表面に対して同一の配向で保持されている分子の単分子膜を形成する工程とを含む方法を提供する。

    前記固体支持体表面に分子を選択的に配向することにより、既存の方法と比べて、分析物測定の感度を向上することが可能である。 なぜなら、前記分子のほとんどが、反応に好適な位置に活性部位がある状態で配向しているからである。 前記分子がタンパク質である場合、表面に存在するあらゆるアミンによってタンパク質のリンカー分子への付着箇所が提供されることから、既存の方法では、タンパク質の配向の制御には限界がある。 したがって、前記単分子膜はランダムな結合事象によって形成されることから、隣接する2つのタンパク質分子が互いに180°となってしまうこともある。 特定の基板を分析するためには、前記タンパク質表面の特定の領域がセンサ性能の最適化のために利用可能でなければならない。 上述のようなランダムな結合シナリオの下では、前記タンパク質単分子膜の半分が、基板の変換に不適切な配向状態にある場合もある。

    前記標識分子内の前記標識が、前記分子の活性部位(または認識領域)から離れた位置で前記分子に共有結合していることが好ましい。 前記分子の活性部位とは、前記分子が前記固体支持体に捕捉された状態で、調査対象の化学的および/または物理的な変換に関与する前記分子の部位であることは理解されるであろう。 例えば、ポリペプチドまたはタンパク質の場合、前記標識は、タンパク質の活性に影響を与えない限り、前記タンパク質のいずれの箇所に共有結合していてもよい。 このようにして、前記タンパク質は、未修飾部分ではなく修飾部分において、前記固体支持体に付着されている。 小有機分子の場合、前記標識は、前記分子の活性部位から前記標識を隔てるように作用する柔軟なリンカー鎖を介して前記小有機分子に付着していてもよい。 前記リンカー鎖は、例えば、官能化アルキル鎖であってもよい。

    前記標識は、キレート形成アミノ酸を含む短いペプチド鎖であることが好ましい。 好適なキレート形成アミノ酸としては、システイン、リジン、ヒスチジン、アルギニンが挙げられる。 前記標識は、連続したヒスチジン残基を少なくとも2、好ましくは4〜6含むペプチドであることがより好ましい。 前記標識は、連続したヒスチジン残基を6含むペプチド(本明細書において「6 * his」標識と称する)であることが最も好ましい。 前記6 * his標識は、キレート金属イオンへの結合に特に好適であることがわかっている。

    前記リンカー分子を付着させる前記固体支持体は、貴金属であることが好ましい。 好適な貴金属としては、銀、金、白金、およびパラジウムが挙げられる。 さらに、固体支持体として、グラファイト系材料、TiO 2 、IrO 2 、SnO 2 、Si系表面または粘土を使用してもよい。 前記固体支持体は、上述の材料のいずれか一種で形成された表面を有するチップであってもよい。 前記チップ自体は、ガラス、プラスティック、またはセラミック材料を含むがこれらに限定されない好適な材料で形成してもよい。 前記固体支持体が金表面を含むことが最も好ましい。

    前記リンカー分子は、直接または間接的に前記固体支持体に付着させればよい。 例えば、前記リンカー分子の頭部を、前記固体支持体上の貴金属表面に結合させてもよい。 あるいは、前記固体支持体は、前記リンカー分子を付着させるデキストラン被膜等の被膜を備えていてもよい。

    前記リンカー分子は、頭部基と、末端基と、前記頭部基と前記末端基の間に存在するスペーサ基とを有している。 前記スペーサ基は、前記頭部基および前記末端基に共有結合している。 前記スペーサ基の一機能は、前記末端基を前記固体支持体表面から離間させることである。 前記スペーサ基は、前記頭部基と前記末端基の間に存在する炭素系鎖であることが好ましい。 また、前記炭素系鎖は、アルキル鎖、あるいは、O、N、またはS等のヘテロ原子を含むアルキル鎖であることが好ましい。 前記炭素系鎖は、前記頭部基と前記末端基との間において、2〜6原子の鎖長を有することが好ましく、3原子の鎖長を有することがさらに好ましい。

    前記頭部基は、前記貴金属表面に対して比較的高い親和性を有するヘテロ原子であることが好ましい。 貴金属基板に関しては、硫黄およびセレンが頭部基として特に好ましいが、先に挙げた表面と反応できるものであれば、どのような原子または基を使用してもよい。

    本発明の特に好ましい形態においては、前記末端基は、前記金属イオンに配位結合可能な原子を3以上含む環状配位子である。 O、S、Se、N、P、As、またはルイス塩基として作用できる原子等のヘテロドナー原子を含む四座大員環が特に好ましい。 前記大員環は、1,4,7−トリアザシクロノナンの誘導体であることが好ましい。 1,4,7−トリアザシクロノナンの誘導体は、トリアザシクロノナン環から懸垂しているヘテロドナー原子を含むことがより好ましい。 例えば、前記ヘテロドナー原子は、カルボニル基(エステル、カルボン酸、ケトン、アルデヒド、アミド等)の酸素原子であってもよい。 前記大員環は、1−アセタト−4−ベンジル−1,4,7−トリアザシクロノナンであることが最も好ましい。

    前記金属イオンは、N、S、O等のヘテロ原子にキレート結合可能なイオンであればどのようなイオンであってもよい。 前記金属イオンは、正八面体配位が可能であることが好ましい。 好適な金属イオンとして、亜鉛、銅、コバルトおよびニッケルが挙げられる。

    本発明の好ましい一形態においては、前記固体支持体は電極である。 この構成によれば、前記固体支持体を電気化学的アレイの一部とし、表面に固定化された分子の酸化還元活性を求めることが可能である。 より具体的には、本発明の方法は、金属タンパク質を含む酸化還元活性タンパク質(酸化還元活性部位を有するチオレドキシンおよびその他のタンパク質等)または有機補因子を有する酸化還元活性タンパク質の直接的な電気化学的測定に特に好適である。 この構成によれば、測定対象のタンパク質における酸化還元の「痕跡(signature)」を直接測定することができる。 本発明の好ましい形態においては、前記リンカー分子の鎖長が3原子であり、よって、結合されたタンパク質は前記電極の比較的近傍に保持される。 前記電極の近傍であれば、強力かつ再生可能な電極センサ信号が得られる。

    あるいは、前記固体支持体は、例えば、その表面が、貴金属表面のように本発明に好適な材料で形成されたチップの一部分であってもよい。 前記チップは、ガラス、プラスティック、セラミック等で形成されていてもよい。 この場合、前記固定化された分子は、分析物が含まれていると疑われる試料中の特定の分析物を捕捉するために使用してもよい。

    本発明の特に好ましい実施形態においては、前記方法は、(i)メルカプトプロピオン酸(「MPA」)の自己組織化単分子膜を金の上に形成することと、(ii)カルボン酸基を活性化させて窒素求核試薬と反応させることと、(iii)活性化された前記基板を1,4,7−トリアザシクロノナンの好適な誘導体で処理することと、(iv)得られた反応生成物をキレート金属イオンZn 2+を含有する溶液で処理することと、(v)工程(iv)で得られた生成物を6 * his標識分子で処理してタンパク質(またはその他)の分子の自己組織化単分子膜を形成することを含む。

    本発明のセンサチップは、前記固体支持体の表面をイミダゾール(imadazole)、酸性pHで洗浄するか、またはルイス塩基である配位子を添加することによって再生し、同一または異なる分子を結合させることができるという点で有利である。 さらに、EDTAまたはその他公知の金属キレート配位子を用い、前記金属イオンを変更することも可能である。

    本発明はさらに、本明細書において上述したようなセンサチップを備えたバイオセンサデバイスを提供する。 前記バイオセンサは、前記センサチップ上の固定化分子のパラメータの変化を検出するための変換器をさらに備えている。 前記変換器は、例えば、グルコースバイオセンサにおいては電気的パラメータを、例えば、Biacore機器においては光学的パラメータを測定してもよく、その他の好適なパラメータを測定してもよい。

    当業者であれば、本発明のセンサチップを、前記センサチップ表面に固定化された分子および/または前記センサチップ表面に固定化された分子に結合している分子の1以上パラメータを測定するための既存の装置に使用してもよいことを理解するであろう。 前記装置は、通常、反応基板と、別個に設けられた読取り装置または検出装置(シンチレーションカウンターまたは分光光度計等)を備えている。 アッセイは、例えば、BIAcore(登録商標)機器やその手法のように、表面プラズモン共鳴(SPR)効果に基づいて行われる。 これらのアッセイは、SPR金・ガラス界面における摂動、例えば、結合事象に伴って起こるSPR表面の反射の変化を利用している。 適用例として、相互作用する種または官能基同士に対する、生物電気化学、蛍光研究、または発光研究を含む直接電気化学、ならびに抗体と抗原の相互作用等の免疫学的相互作用が関与する用途が挙げられる。

    また、表面に対して同一の配向で保持された分子の層を、前記表面に固定化された分子のパラメータを測定するという用途ではなく、前記固定化された分子の均一な配向を足場(scaffold)として用いる用途に使用することもまた本発明の範囲内であることも理解されるであろう。 この場合、固定化された分子の均一な配向は、例えば、他の分子、分子錯体、または細胞の足場として使用してもよい。

    したがって、別の形態において、本発明は、表面に捕捉された固定化分子の単分子膜を含む固体支持体であり、前記固定化された分子の大部分が前記表面に対して同一の配向を示し、前記固体支持体の前記表面上の前記固定化分子に付着または捕捉された1以上の分子をさらに含む固体支持体を提供する。

    さらに、固体支持体の表面に分子を選択的に配向および固定化する前記方法は、1以上の第2の分子を前記標識分子に付着または捕捉する工程をさらに有していてもよい。

    また、表面に対して同一の配向で保持された分子の層を、分析物との相互作用を伴うことなく固定化された分子の特性を評価する用途において使用することもまた本発明の範囲内であることも理解されるであろう。 例えば、直接電気化学によれば、電子交換によってタンパク質の特性を測定することができる。

    したがって、本発明はさらに、その表面に固定化された分子のパラメータを測定するためのセンサデバイスを提供する。

    したがって、本発明はさらに、本発明のセンサチップと、前記センサチップ上の固定化分子のパラメータを測定するための変換器とを備えたセンサデバイスを提供する。

    本発明の好ましい実施形態を、以下に挙げる非限定的な実施例によって説明する。

    自己組織化単分子膜(SAM)の形成 測定対象の分子の自己組織化単分子膜を、金表面上に形成した。 この固定化プロトコルの概略を図1に示す。

    清浄な金表面を、参照符号1で示すメルカプトプロピオン酸(MPA)のSAMで修飾した。 続いてこの単分子膜を、EDC/NHSで修飾し、NHS中間生成物2を生成した。 具体的には、金製のシートを、MPAの5mM溶液(エタノール:H 2 Oが重量比で75:25)中に一晩置いた。 次に、前記シートの表面をエタノールで洗浄して前記表面に結合しなかったMPAを除去し、N 2流下で乾燥させた。 乾燥させた前記金製のシートを、75mM EDCおよび25mM NHSを含有する水溶液中に30分間置き、水で洗浄して即座に使用した。

    修飾された大環状アミンである1−アセタト−4ベンジル−1,4,7トリアザシクロノナン3を、ワーデンら(Warden et al.)(Org. Lett. (2001) 3(18) 2855-2858)に記載の方法により合成した。 修飾して2の状態とした前記金製のシートを、20nM 1−アセタト−4−ベンジル−1,4,7−トリアザシクロノナン3を含有する水溶液中に3日間置いた。 次に、水で金を完全に洗浄し、即座に使用した。

    正八面体配位を形成しようとする金属(図示しているのはZn 2+ )を添加することにより、配位部位5が得られる。 具体的には、修飾して4の状態とした前記金製のシートを、ZnCl 2の20mM溶液中に20分間置いた。 水で金を完全に洗浄した後、前記シートを6 * his標識分子を含有する希薄溶液に浸漬し、高配向なタンパク質単分子膜6を得た。 例えば、前記修飾された金表面を、6 * his標識チオレドキシンを含有する水溶液(10mMリン酸緩衝液中にタンパク質0.2mg/mL、pH6.0)中に4℃で一晩置き、pH6.0の10mMリン酸緩衝液中で洗浄し、即座に使用すればよい。

    SAMの分析 実施例1の方法で形成したSAMを、文献(DL Johnson, J. Thompson, SM Brinkmann, KL Schuller & LL Martin, Electrochemical Characterisation of purified Rhus vernicifera laccase - voltametric evidence for a sequential 4-electron transfer, Biochemistry 2003, 42 :10229-10237 and references therein)に記載の電気化学的電池および表面キャラクタリゼーション技術を用いて調べた。

    DRIFT(図2)およびXPS実験(図示せず)の結果は、提案されている表面の化学的性質と一致していた。 図1のように修飾した微細銀粉末に対し、DRIFT分析を行った。 準備段階1、2、および4でのDRIFT分析の結果を図2に示している。 C−HおよびC=O伸縮領域において、表面修飾が首尾よく行われたことがはっきりと見てとれる。 1は、COOHの官能性に起因するC=O伸縮振動を1つ示し、2は、前記スクシンイミドにおける−COON−種およびカルボニル基に起因する顕著な2つのC=O伸縮振動を示し、4は、前記大環状アミンにおけるアミドおよびCOOH基に起因する2つの異なるC=O伸縮振動を示している。 XPS測定は、N 1sおよびO 1s結合領域において大幅な変動が見られたという点で一致していた。

    固定化されたチオレドキシンの電気化学的挙動:配向単分子膜と非配向単分子膜の比較 前記自己組織化単分子膜を、ヒスチジン標識大腸菌チオレドキシンに対する直接電気化学を用いて調査した。 チオレドキシンは、ジスルフィド結合を介して酸化還元作用を制御する成長中のスーパーファミリーにおける最も単純なメンバーである。 高度に保存された活性部位は、シーケンスがCys−XXX−XXX−Cysのシステイン残基を2含む。 酸化型はジスルフィド結合を含み、2つの電子を連続して付与することによって生成される還元型は、2つのチオール基を含む。

    この調査に使用したチオレドキシンは、大腸菌チオレドキシン遺伝子のコード領域とC末端におけるさらなるヒスチジン残基に対する6個のコドンとを含むノバゲン(Novagen)の発現プラスミドベクター pET−32a(+)を使用し、大腸菌に発現させたものである。 次に、前記ヒスチジン標識チオレドキシンを、ニッケル親和性(Ni/NTA)カラム(QIAGEN)を用い、SDS−PAGEの単一バンドでの評価による均質性が得られるまで精製した。 前記試料を5mg/mLに濃縮し、使用時までカリウムリン酸緩衝液(pH7.4)中に−80℃で保存した。

    金電極をメルカプトプロピオン酸(MPA)の5mM溶液(エタノール:水が体積比で75:25)中に一晩置き、大員環で修飾された電極を作成した。 次に、前記電極の表面をエタノールで洗浄して前記表面に結合しなかったMPAを除去し、窒素ガス流下で乾燥させた。 乾燥させた前記金電極を、75mM 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)および25mM N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を含有する水溶液中に30分間置き、水で洗浄して即座に使用した。 得られたSAM修飾電極を、20mM 1−アセタト−4−ベンジル−1,4,7−トリアザシクロノナンを含有するpH8の水溶液中に、最大30時間置いた。 前記金電極を水で洗浄して即座に使用した。 前記修飾電極をZnCl 2の20mM溶液中に20分間置き、前記大員環に金属イオンを取り込ませた。 前記電極を水で完全に洗浄し、チオレドキシンの水溶液(10mMリン酸緩衝液中にヒスチジン標識チオレドキシン0.2mg/mL、pH7.4)中に4℃で30分から3時間置き、同じ緩衝液中で洗浄して即座に使用した。 あるいは、His標識チトクロームP450c17およびプラストシアニンを、pH7.4の10mMリン酸緩衝液中の20mMタンパク質溶液を用い、4℃で一晩固定化させた。 また、比較のため、前記チオレドキシンを前記電極に直接共有結合させものを、前記大環状部分を付与せずに上述と同じ手順を行って前記電極をチオレドキシンタンパク質の表面アミンに付着させることによって得た。

    電気化学的測定値は全て、BAS 100B電気化学分析装置(バイオアナリティカルシステム(Bioanalytical Systems Inc.)社、ラフィーエット、米国)を室温で用いて得たものである。 Ag/AgCl(3M KCl)参照電極と、白金補助電極と、金電極とを、ボタン型電極(BAS社)または金製のシートのいずれかの形態で含む従来の電気化学的機構を採用した。 電位は、規定水素電極(NHE)を基準に補正した。

    本発明の方法を用いてヒスチジン標識を介して特異的に捕捉された大腸菌チオレドキシンの電気化学的挙動を、SAM上に共有結合によって固定化されたランダムな配向のチオレドキシンと比較した。 図3は、金電極で得られる典型的なサイクリックボルタモグラムを示している。 実線は、実施例1で述べた手順を用いて修飾されることにより、配向された単分子膜を備えた電極を表し、破線は、タンパク質の表面アミンを電極に結合させて修飾されることにより、ランダムな配向の単分子膜を備えた電極を表している。 図示されている走査速度は、a)200μV/秒、b)1mV/秒、c)10mV/秒である。 これは、pH7.0の20mMリン酸緩衝液中での走査速度である。 前記配向されたタンパク質層を用いた場合の方が、電子移動速度定数が速く(酸化還元信号がより可逆的)、バックグラウンドに対する信号の比率も向上しており、より優れた電気化学応答が観察された。

    表面プラズモン共鳴(SPR)分析による、本発明の方法で修飾した金チップと市販のBIAcore NTAチップとの比較 その他の固定化されたヒスチジン標識タンパク質としては、ウシチトクローム(bovine cytochrome)P450c17、クロオコッカス科(Synechocystis)のプラストシアニン、およびシモコモンサンゴ(Montipora efflorescens)緑色蛍光タンパク質(GFP)が挙げられる。

    BIAcoreスペクトルは、修飾されたJ1(J1は、非修飾の金表面である)およびNTAセンサチップ(ビアコア エービー、ウプサラ、スウェーデン)を使用したBIAcoreX分析システムで得られたものである。 前記J1チップは、実施例1で述べた方法によって修飾された1−アセタト−4−ベンジル−1,4,7−トリアザシクロノナン(以下、「AcBztacn」)チップであり、また、前記NTAチップは、購入時のものをそのまま使用した。 泳動用緩衝液(running buffer)は、10mM HEPES、150mM NaClであり、活性化用緩衝液は、500μM NiCl 2 、10mM HEPES、150mM NaClであり、試料緩衝液は、30μg/mLのチオレドキシンを含む10mM HEPES、150mM NaClであり、再生緩衝液は、350mM EDTA、10mM HEPES、150mM NaCl(全てpH7.4)であった。 溶液は全て新たに調製し、脱気し、0.2μmのミリポアフィルターでろ過した。 前記チップに、まず活性化用緩衝液(30μL/分で1分間)を、次に試料緩衝液(30μL/分で1分間)を充填することによって配向結合を評価した。 前記タンパク質と前記チップとの相互作用の安定性を、前記表面に泳動用緩衝液(20μL/分)を通液し、センサグラムの経時変化を観察することによって観察した。 解離速度を、線形減衰(linear decay)を示す2〜14時間の間に、1分当たりに失われる当初の結合の百分率として求めた。 Ni活性化の前に試料緩衝液を注入し、金属イオンによる前記チップの活性化前に緩やかに付着されたタンパク質材料と比較することによって、非特異的タンパク質結合を評価した。

    前記チップへのタンパク質結合を、図5に示すように、SPRを用いて評価した。 2種類のタンパク質、ヒスチジン標識チオレドキシンおよびシモコモンサンゴ緑色蛍光タンパク質(GFP(表1))について、本発明のAcBztacn電極とビアコア社製の市販のNTAチップとを比較した。 特に、相対結合強度、安定性(タンパク質の解離によって評価)、ヒスチジン標識チオレドキシンとシモコモンサンゴ緑色蛍光タンパク質(GFP)との非特異的結合の程度について調べた。 AcBztacn修飾表面は、低表面被覆率にもかかわらず、Ni処理表面に結合したタンパク質の量で評価した結合強度(表1)の増加が、5倍を上回っていた。 タンパク質とNiの相互作用の安定性は、タンパク質充填後のタンパク質解離の量として求められ、1分間当たりの解離の百分率として表される当初の結合強度の減衰速度によって評価した。 前記AcBztacn−Ni−タンパク質錯体は、NTA−Ni−タンパク質と比べて8倍も安定性が高かった(表1)。 したがって、前記NTAチップからは、40分経過しない内に結合タンパク質の50%が解離したのに対し、前記AcBztacn電極においては15時間が経過した後でも全タンパク質の40%しか損失していないため(表1の解離速度の比較によって示されている)、前記AcBztacn電極は、バイオセンサの長期使用という用途に使用できる可能性を秘めている。 Niイオン活性化前のタンパク質結合は、NTAに関しては桁違いに大きく、前記NTAチップにおいては非特異的結合成分が発生していることを示している。 タンパク質の結合の増加、安定性の向上、および非特異的結合の減少は、本発明のセンサチップのAcBztacn表面が、この市販のシステムよりも優れた品質を有していることを示している。

    最後に、本明細書において概略を述べた本発明の精神から逸脱しない限りにおいて、種々の改変および/または変更が可能であると理解されるべきである。

    図1は、本発明の方法によってSAMを製造する手順を概略的に示したフロー図である。

    図2は、本発明の方法によって形成したSAMの表面の化学的性質についての拡散反射フーリエ変換赤外線分光法(Diffuse Reflectance Infrared Fourier Transform (DRIFT) spectroscopy)による分析における波数対吸光度をグラフ化したものである。

    図3は、AcBztacn修飾金電極で得られたヒスチジン標識チオレドキシンの典型的なサイクリックボルタモグラム(5、実線)を、前記タンパク質を、工程2において表面リジン残基を介して前記電極に共有結合させた場合に得られたサイクリックボルタモグラム(破線)と比較して示した図である。 前記酸化チオレドキシンのラジカルアニオンへの一電子還元を示している。 走査速度は、(a)0.2mV/秒、(b)1.0mV/秒、(c)10mV/秒である。 20mMリン酸緩衝液(pH7.4)中における各走査速度に対する電流応答を示している。

    図4は、0.1Mリン酸緩衝液中、20mV/秒(対NHE)の走査速度でAcBztacn修飾金/Zn電極で得られた、ヒスチジン標識プラストシアニン(a)のサイクリックボルタモグラムと、0.1Mリン酸緩衝液および前記界面活性剤DDAB(ジドデシルアンモニウムブロミド(didodecylammonium bromide))中、NHEに対する走査速度5mV/秒でAcBztacn修飾金/Zn電極で得られた、ヒスチジン標識ウシチトクロームP450c17(b)のサイクリックボルタモグラムを示している。

    図5は、Acbztacn修飾表面およびNTA修飾表面に対するHis標識チオレドキシン、プラストシアニン、および緑色蛍光タンパク質の結合を示す図である。 タンパク質濃度は、pH7.4の10mM HEPESおよび150mM NaClにおいて30μgmL

    -1である。

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