【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、一般的にいって生物学的マイクロアレイ技法に関する。 特に、ゼラチン基体上にある微小球に関し、そして微小球の表面を試験試料に含有された検体に曝す方法に関する。 好ましくは、微小球は、捕捉剤(プローブともいう)を有する。 【0002】 【従来の技術】 1990年代の始め(サイエンス、251、767−773、1991)に発明されて以来、二次元固体支持体上に立体的にアドレス可能な合成によって形成される高密度アレイは、生物学的研究および開発のプロセスを大きく拡大しかつ簡単にした。 現行のマイクロアレイ技法の鍵は、「立体的にアドレス可能」な方法でマイクロチップ上の1つの点に生物活性剤を付着させることである。 【0003】 現行の技法は種々の方法を用いてマイクロアレイを作っている。 例えば、米国特許第5,412,087号および同第5,489,678号明細書には、ペプチドおよびDNAマイクロアレイを形成するために写真法を用いることが記載されている。 この特許明細書は、1cm×1cmチップ上の決められた点をフォトサーモグラフィリソグラフィで脱保護して、活性化されたアミノ酸またはDNA塩基で全面を溢れさせる連続サイクルでペプチドおよびDNAマイクロアレイを調製するために、光不安定性保護基を用いることを教示する。 このプロセスを反復することによって、アレイの種々の点のところで、数千の任意の種類のペプチドまたはオリゴヌクレオチド配列によってペプチドまたはDNAマイクロアレイを構成することができる。 この方法は高価である。 【0004】 他では(例えば、米国特許第6,079,283号、同第6,083,762号および同第6,094,966号明細書)、立体的にアドレス可能なアレイを作製するためにインクジェット法が用いられるが、この技法も製造コストが高く、さらにスポットサイズが40〜100μmと、相対的に大きいという欠点がある。 シングルチップ上に配置される生物活性プローブの数は、通常、大体1000〜100,000プローブにもなるので、立体アドレス方法はこのチップがどのような方法で製造されようとも、本来的に高価である。 【0005】 立体的にアドレス可能な方法の別法は、生物活性多重アレイを製造するために蛍光色素が混入されたポリマービーズを用いるという考え方である。 米国特許第5,981,180号明細書には、多重生物学的アッセイを行うために血球計算法と組合せてカラーコード化ビーズを用いる方法が開示されている。 表面上にあるDNAまたはモノクロナール抗体で共役された微小球が、種々の比率の2種類の蛍光色素で内部的に着色されている。 数百もの「立体的にアドレス」された微小球が、生物学的試料と反応可能であり、1つの微小球をフロー血球計算セルに通して試料情報をデコードすることによって、この「液体アレイ」を分析する。 【0006】 米国特許第6,023,540号明細書には、色素充填微小球を取付けるために末端部のところでプリエッチされたマイクロウェルを有する光ファイバー束を用いることが開示されている。 立体的にアドレスされた各微小球の表面は、唯一の生物活性剤と結合され、種々の生物活性プローブを載せた数千もの微小球が一緒になって、光ファイバー束のプリエッチされたマイクロウェル上で「ビーズアレイ」を形成する。 【0007】 最近、新規な光学的にコード化された微小球法が、微小球に導入された種々の大きさの、硫化亜鉛でキャップされたセレン化カドミウムナノ結晶を用いて達成された(Nature Biotech. 19 , 631−635, (2001))。 これらのナノ結晶によって示される狭い半値幅を用いると、この方法は微小球における立体的バーコード付け容量を著しく拡張する。 【0008】 【特許文献1】 米国特許第5,412,087号明細書【特許文献2】 米国特許第5,489,678号明細書【特許文献3】 米国特許第5,981,180号明細書【特許文献4】 米国特許第6,023,540号明細書【特許文献5】 米国特許第6,079,283号明細書【特許文献6】 米国特許第6,083,762号明細書【特許文献7】 米国特許第6,094,966号明細書【特許文献8】 米国特許第6,023,540号明細書【特許文献9】 米国特許第6,280,912号明細書【特許文献10】 米国特許公開第20030068609号明細書【非特許文献1】 「生体分子の多重化光学コード化のための量子ドット標識したマイクロビーズ」(Quantum−dot−tagged microbeads for multiplexed optic al coding biomolecules)、ナチュレバイオテック(Nature Biotech) 、2001年、 19 、p. 631−635 【非特許文献2】 ルロイド ヴィ. アレン(Lloyd V. Allen)著、セキュンダムアータム(Secundum Artem)、第4巻、No. 5、 19 、p. 631−635 【非特許文献3】 ティー. エイチ. ホワイトサイドおよびディ. エス. ロス(T.H.White side and D.S.Ross)著、「限定凝集プロセスの実験的および理論的分析:段階限定凝集」(Experimental and Theoretical Analysis of th e Limited Coalescence Process: Stepwise Limited Coalescence)、ジャーナルオブコロイドアンドインターフェースサイエンス(Journal of Colloid and Interface Science)、1985年、169巻、p. 48−59 【非特許文献4】 ステファン ピー. エー. フォーダー等(Stephen P.A. Fodor et al. )著、「光指向された、立体的にアドレス可能な並列化学合成」(Ligh t−Directed, Spatially Addressable Parallel Chemical Synthesis) 、サイエンス、251(Science, 251)、1991年、p. 767−773 【0009】 【発明が解決しようとする課題】 「立体的にアドレスされた微小球」法は、マイクロアレイ製造における旧式の「立体的にアドレス可能」な方法を超える簡便さの利点を提供するが、この分野では依然として、生物学的マイクロアレイの製造をより簡単に、より安価にするニーズが存在する。 【0010】 欧州特許出願第02078433.6号は、支持体が改質される必要がなく、それでも微小球は基体上で固定化されたままであるために、今まで述べた方法よりもより安く調製がより簡単なマイクロアレイを提供する。 欧州特許出願第02078433.6号は、ゲル化する薬剤またはゲル化する薬剤の前駆体を含有する流体に分散された微小球を含む組成物で被覆された基体を含んでなるマイクロアレイであって、前記微小球が基体上のランダムな位置で固定されているマイクロアレイを提供する。 この基体は微小球と物理的にまたは化学的に相互作用するように設計されたレセプターをもたない。 この発明は、独特な被膜組成物と、当該技術分野で開示されているような、マイクロウェルでプリエッチする必要がなく、また微小球を引きつける位置にいずれの方法にしてもプリマークする必要の無い基体上にマイクロアレイを調製する技法とを用いる。 【0011】 欧州特許出願第02078433.6号は、種々のコーティング方法を教示するが、マシンコーティングを例示する。 そこでは、支持体はゼラチンに分散された微小球を含む流体塗布組成物で塗布される。 コーティング直後にこの支持体は塗工機内の冷却チャンバーに通され、そこでゼラチンが急速ゲル化を受け、微小球が固定化される。 【0012】 上記発明は現行の技法を上回る大きな製造上の利点を提供するが、従来技術に対するその潜在的価値全体を最大にするためにはいくらかの改良を必要とする。 問題点は、そのようなマシン塗工および急速ゲル化の際に、ゲル化する薬剤が微小球の表面を覆うので、検体(例えば、DNA)がゼラチンオーバーコートを通って浸透して、微小球の表面上でプローブとハイブリッド化するのを妨げる傾向があるということである。 【0013】 【課題を解決するための手段】 本発明は、微小球の結合性または微小球面上のDNAプローブ損傷を与えないで酵素によって微小球の表面からゲル化する薬剤を除去することによって、上述の問題点を克服する。 酵素処理された表面はDNAハイブリダイゼーションプロセスを通してその物理的結合性を維持し、マイクロアレイは非常に強いハイブリダイゼーション信号を示す。 【0014】 利点は、ゼラチンオーバーコートから必要量を除去するために、酵素消化を容易にコントロールできることである。 さらに、酵素、プロテアーゼが容易に入手可能であり、経済的に得られることである。 【0015】 本発明は、 支持体を用意し、 前記支持体上に微小球およびゼラチンを含有する流体組成物を塗布し、 ゼラチン塗膜内に前記微小球を固定化し、 酵素で前記ゼラチンを部分的に消化し、そして前記酵素および消化されたゼラチンを前記塗膜から除去する各工程を含んでなるマイクロアレイの製造方法を提供する。 【0016】 本発明のもう一つの態様は、 支持体を用意し、 前記支持体上に微小球およびゼラチンを含有する流体組成物を塗布し、そして周囲温度で前記ゼラチンをゲル化させて前記支持体上に前記微小球を固定化する各工程を含んでなるマイクロアレイの製造方法であって、前記支持体が前記微小球を引きつける予め決められた位置をもたないマイクロアレイの製造方法を開示する。 また、ランダムマイクロアレイも開示する。 【0017】 【発明の実施の形態】 本明細書で使用する用語「酵素」は、生物学的触媒を意味する。 伝統的な化学触媒と同様、酵素は、触媒されてない反応よりも低い活性エネルギーを有する遷移状態を生成することによって生物学的反応の速度を速くする。 言い換えると、酵素は、それが触媒する反応のために特化されたタンパク質である。 本発明に用いられる好ましい酵素は、ゼラチンの結合を触媒的に加水分解する酵素であって、「ゼラチナーゼ(gelatinase)」と称することができる。 使用される特定の酵素は、ゲル化する薬剤の選択による。 【0018】 本発明は、基体上に微小球(「ビーズ」ともいう)のアレイを作製する方法であって、微小球の表面が、それが接触する検体に容易にアクセス可能な捕捉剤(即ち、プローブ)を有している微小球アレイを作製する方法を開示する。 基体上の微小球の分布またはパターンは完全にランダムであり、微小球は、上述した他の方法のような基体上にプリマークまたは予定された位置に引きつけられない(即ち、保持されない)。 本発明では、微小球は、含まれているゲル化する薬剤がゾルからゲルへの転位(「ゲル化」ともいう)を行う際にランダムに固定化される。 【0019】 本明細書で用いる「ゾルからゲルへの転位」または用語「ゲル化」は、溶液はまた粒子懸濁物が、定常状態流を示さない連続三次元網状組織を形成するプロセスを意味する。 これは、多官能性モノマーの存在下での重合により、 反応側基を有する溶解したポリマーの共有結合架橋により、また溶液中のポリマー分子間の副結合、例えば、水素結合により生じる場合がある。 ゼラチンのようなポリマーは、後者のタイプに含まれる熱ゲル化を示す。 ゲル化または硬化のプロセスは、粘性に不連続が生じることによって特徴づけられる。 (ピー.アイ.ローズ(P.I. Rose)著、「写真プロセスの理論」(The Theory of the Photographic Process)、第4版、ティー.エイチ.ジェームズ(T.H. James)編、p.51−67を参照されたい) 【0020】 本明細書で用いる場合、用語「ゲル化する薬剤」は、上述のようなゲル化を受けることができる物質を意味する。 例としては、熱ゲル化を受ける、ゼラチン、水溶性セルロースエーテルまたはポリ(n−イソプロピルアクリルアミド)等の材料、またはホウ酸塩化合物によって化学的架橋を受けることができるポリビニルアルコール等の物質が含まれる。 好ましいゲル化する薬剤はアルキル前処理されたゼラチンである。 ゲル化する他の薬剤は、紫外線等の輻射線によって架橋することができるポリマーであることができる。 ゲル化する薬剤の追加の例には、アラビアゴム、アルギン酸、ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セトステアリルアルコール、コロイド状二酸化ケイ素、エチルセルロース、ゼラチン、ガーゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ケイ酸アルミウニムマグネシウム、マルトデキストリン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポビドン、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸ナトリウム、グリコール酸デンプンナトリウム、デンプン、トラガカントゴムおよびキサンタンガムが含まれる。 ゲル化する薬剤の詳細は、ルロイド ヴィ. アレン(Lloyd V. Allen)著、セキュンダムアータム(Secundum Artem)、第4巻、No. 5を参照されたい。 アルファもしくはベータアミラーゼまたはセルラーゼも、過剰のポリサッカリドを除去するのに用いることができ、アガラーゼは過剰の寒天を除去するのに用いることができる。 【0021】 本発明は、ポリマーラテックス系ランダムマイクロアレイを開示する。 このアレイ中の各ビーズは、そのビーズを識別する個々のサインを有する。 そのようなサインは、ビーズの色、形状または大きさに基づくことができる。 色に基づくサインの場合、この色は、個々の「色アドレス」(特定のRGB値、例えば、R=0、G−204、B=153)をもつ数千の識別可能なビーズを創るために、主たる色、R、G、Bを表す3種類の色素を混合することから得ることができる。 【0022】 このビーズを、「活性」であるそれらの表面上の部位とともに作製することができる。 「活性」とは、そのような部位のところで、物理的または化学的な相互作用が、ビーズと他の分子または化合物の間で容易に生じることを意味する。 そのような化合物は有機物または無機物となることができる。 通常、分子または化合物は有機物であり、核酸およびそれらのフラグメントが例である。 後で示す実施例のように、前もって合成されたオリゴヌクレオチド、または他の生物学的試薬を各々の色コード化されたビーズに結合させることができる。 従って、それぞれの色アドレスは、特定の生物活性プローブに対応することができる。 これらのビーズを等量で混合し、単一フォーマットまたは多層フォーマットで前記混合ビーズを塗布することによってランダムマイクロアレイを作製することができる。 【0023】 塗工方法は、エドワードコーエンおよびエドガー ビー. グトフ(Edward Cohen and Edgar B. Gutoff)著、「最新塗工技法および乾燥技法」(Modern Coating And Drying Technology)、第1章、インターフェイシャルエンジニアリングシリーズ(Interfacial Engineering Series)、第1巻、1992年、VCH Publishers Inc. , New York, NY. に詳細に記載されている。 単層フォーマットの場合、好適な塗工方法には、ディップ塗工法、ロッド塗工法、ナイフ塗工法、ブレード塗工法、エアナイフ塗工法、グラビア塗工法、前進および反転ロール塗工法、ならびにスロットおよび押出塗工法が含まれる。 【0024】 乾燥方法も色々であり、時には予想外に変わる結果を伴う。 例えば、流体ゼラチン/微小球組成物が、冷却硬化によって急速に乾燥されると、ゼラチンが微小球の高い面から流れる時間を得る前にゲル化が起き、微小球面とそこに付着する薬剤との直接的接触を阻止するゼラチン層を形成する。 その流体組成物が周囲温度でよりゆっくりと乾燥できれば、ゼラチンが微小球面から流れ、実質的にゼラチンの無い微小球が残る。 ここで「実質的に無い」とは、微小球の表面に、プローブまたはそれに結合する試薬と相互作用するゼラチンが実質的に無いことを意味する。 【0025】 蛍光/化学ルミネッセンス標識された生物学的試料をビーズ系ランダムマイクロアレイにハイブリッド化することができる。 「色アドレス可能」なポリマービーズおよび蛍光/化学ルミネッセンスで非選択的に標識された生物学的試料からの信号を、光学系を通して画像拡大した後電荷結合デバイスで分析することができる。 画像処理アルゴリズムによって、記録されたアレイ画像を自動的に分析し、各ビーズにRGBカラーコードに基づく生物活性プローブ情報を得て、その情報を蛍光/化学ルミネッセンス画像と比較し、試料中の特定の生物学的検体物質を検出かつ定量することができる。 光学または他の電磁気手段を、サインを確認するために適用することができる。 【0026】 調製が容易であるので、実質的に曲線形状を有する微小球または粒子が好ましいが、他の形状、例えば、楕円体または立方体粒子も用いることができる。 粒子を調製するのに適した方法は、アイ. ピルマ(I. Piirma)著、「乳化重合」(Emulsion Polymerization)、アカデミックプレス(Academic Press)、New York、1982、に記載されているような乳化重合、またはティー. エイチ. ホワイトサイドおよびディ. エス. ロス(T.H.Whiteside and D.S.Ross)著、「限定凝集プロセスの実験的および理論的分析:段階限定凝集」(Experimental and Theoretical Analysis of the Limited Coalescence Process: Stepwise Limited Coalescence)、ジャーナルオブコロイドアンドインターフェースサイエンス(Journal of Colloid and Interface Science)、1985年、169巻、p. 48−59に記載されているような限定凝集である。 【0027】 粒子または微小球を作製するのに用いられる特定のポリマーは、着色できる水不混和性合成ポリマーである。 好ましいポリマーは、任意のアモルファス水不混和性ポリマーである。 有用なポリマータイプの例は、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートまたはポリブチルアクリレートである。 スチレンおよびブチルアクリレートのコポリマーのようなコポリマーも用いることができる。 ポリスチレンポリマーが都合よく用いられる。 形成された微小球を顔料または塗工時もしくはその後の処理で溶解しない色素である不溶性着色剤を用いて着色する。 好適な色素は油溶性となることができる。 微小球内に導入されたとき、色素が非螢光性となるのが好ましい。 【0028】 この微小球は、平均直径1〜50μmの範囲、より好ましくは、3〜30μmの範囲、最も好ましくは、5〜20μmの範囲を有するように形成されるのが好ましい。 塗膜中の微小球の密度が、1cm 2当たり100〜100万個、より好ましくは、1000〜2000,000個、最も好ましくは、10,000〜100,000個の範囲にあるのが好ましい。 【0029】 化学的に官能化された微小球面への生物活性剤(「プローブ」と称せられることが多い)の結合は、当該技術分野で公開された手順(Bangs Laboratories, Inc, Technote #205)に従って行うことができる。 通常用いられるいくつかの化学官能基には、カルボキシル、アミノ、ヒドロキシル、ヒドラジド、アミド、クロロメチル、エポキシ、アルデヒド等が含まれるが、これらに限定されない。 生物活性剤またはプローブの例には、オリゴヌクレオチド、DNAおよびDNAフラグメント、PNA、ならびに核酸配列等の標的と特異的に相互作用できる合成分子が含まれるが、これらに限定されない。 【0030】 本発明に用いられる酵素には、任意の酵素、酵素標本、またはゼラチンもしくは使用されるゲル化する薬剤を溶解もしくは分解できかつプローブを実質的に消化もしくは不活性にできない酵素含有調合物が含まれる。 ここで「不活性化する」とは、正常な反応条件下で、プローブが特定の標的と反応するのを抑制されることを意味する。 従って、本明細書における「酵素」には、植物またはバクテリア発酵ブイヨン粗抽出物等の粗酵素標本、ならびに植物、動物、またはバクテリア源から精製された酵素を含む。 本プロセスで使用可能な酵素の標本は、活性化因子(activator)、共同因子、および酵素活性に必要な安定化剤、ならびに酵素活性を増強または保護する安定化剤を包含すると理解される。 【0031】 好適な酵素の例には、セリンプロテアーゼ、例えば、Esperase TM 、Alcalase TM 、およびSavinase TM (Novo Nordisk Corporationから市販されている酵素標本);Multifect P−3000 TM 、HT Proteolytic 200 TM 、Protex6L TMおよびProtease 899 TM (Genencor International Corporationから市販されている酵素標本);スルフヒドリルプロテアーゼ、例えば、パパインおよびブロメライン;ならびにメタロプロテアーゼ、例えば、Neutrase TM (Novo Nordisk Corporationから市販されているバクテリア金属酵素標本)が含まれる。 これらの酵素および酵素タイプの組合せて使用することも本発明では考えられる。 酵素分子が合成ポリマーに結合されている合成ポリマーを伴う酵素のアダクツも考えられる。 合成ポリマーは酵素よりも大きくても小さくてもよい。 【0032】 他の酵素、好ましくはタンパク分解酵素も本発明では好適である。 これらの酵素および酵素タイプを組合せて使用することも本発明では考えられる。 酵素分子が合成ポリマーに結合されている合成ポリマーを伴う酵素のアダクツも考えられる。 合成ポリマーは酵素よりも大きくても小さくてもよい。 【0033】 【実施例】 例1 この例は、微小球内に色素を導入することによって着色される微小球の調製および着色微小球を含有する塗膜の調製法を具体的に説明する。 【0034】 乳化重合によって調製され、平均径9.5μmを有するポリスチレンビーズの4%水性懸濁物24gを、ポリビニルアルコール(75%加水分解、分子量2000)0.48gと混合した。 【0035】 先ず、トルエン0.08gおよびアセトン7.92g中に色素1を0.084g溶解してマゼンタ着色ビーズの懸濁物を調製した。 ポリビニルアルコールを含有するポリスチレンビーズの上記懸濁物から8.16gの量を、撹拌しながらゆっくりとこの色素溶液に加え、着色ビーズの懸濁物を調製した。 そしてこの着色ビーズの懸濁物を多孔質コットンフィルタで濾過し、透析バッグ(12,000〜14,000分子量カットオフ)に注ぎ、蒸留水で1時間洗浄した。 洗浄後、この着色ビーズの懸濁物を多孔質コットンフィルタで再度濾過した。 この最終工程後の懸濁物中のマゼンタ着色ビーズの濃度は1.2%であった。 【0036】 シアンおよびオレンジ着色ビーズの懸濁物を、色素1に代えて、それぞれ色素2および色素3(Sudan Orange 220、BASF Co.製)を用いて同様に調製した。 これらの懸濁物中の着色ビーズの濃度は、それぞれ1.6%および1.45%であった。 【0037】 塗工用調合物を以下のようにして調製した。 調合物1(本発明) シアン着色ビーズの懸濁物4.0g、マゼンタ着色ビーズの懸濁物5.33g、オレンジ着色ビーズの懸濁物4.41gを、ライム処理したオセインゼラチンの11.5%水溶液13.91g、塗布助剤(Triton X 200Eの6.8%水溶液)3.2g、および蒸留水49.15gと混合して、この調合物を調製した。 【0038】 調合物2(対照) 同量のシアン、マゼンタおよびオレンジ着色ビーズを、ポリビニルアルコール(GH23、Nippon Gohsei製)7.27gおよび水55.79gと混合して、第二の塗工用調合物を調製した。 塗布助剤の量は調合物1と同じであった。 ポリビニルアルコールの量はより高い温度(以下参照)のところでの調合物1の粘度と合うように選択した。 【0039】 両方の試料(調合物1および調合物2)を、50℃温浴中で30分間平衡させ、その後、レオメトリックフルイドレオメータ(Rheometric Fluid Rheometer)を使って分析した。 動的振動技法によって、この試料を1分当たり1℃の割合で冷却して、温度の関数として粘度を測定した。 【0040】 【表1】
【0041】 上記データから、より高温(約30℃より上)では、両方の試料とも冷却時の粘度上昇に関して同様の挙動を示したことが判る。 しかし、約25度より下では、ゲル化のために、調合物1(本発明)はより劇的な粘度増加を示した。 そのような挙動は調合物2(対照)では見られなかった。 調合物1の粘度は、温度が25度〜10度に低下すると数桁の大きさまで増大する。 ゲル化開始温度は21.8℃であると思われる。
【0042】
【化1】
【0043】
【化2】
【0044】
先ず、トルエン0.05gおよびアセトン4.95g中に色素2を0.001g溶解してシアン着色ビーズの懸濁物を調製した。 乳化重合によって調製され、平均径9.5μmを有するポリスチレンビーズの4%水性懸濁物2.5gを、撹拌しながらゆっくりとこの溶液に加え(滴下)、1%充填シアン色素の懸濁物を調製した。 そしてこの着色ビーズの懸濁物を多孔質コットンフィルタで濾過し、透析バッグ(12,000〜14,000分子量カットオフ)に注ぎ、蒸留水で1時間洗浄した。 この最終工程後の懸濁物中のシアンビーズの濃度は0.78%であった。
【0045】
0.002gの色素2、0.006gの色素2、0.007gの色素2、0.009gの色素2、および0.01gの色素2を用いて、別の5つのレベルのシアン色素をビーズに導入した懸濁物を同様に調製した。
【0046】
最後の2つの試料の調製の場合、乳化重合によって調製され、平均径9.5μmを有するポリスチレンビーズの4%水性懸濁物2.5gを、ポリビニルアルコール(75%加水分解、分子量2000)0.48gと混合した。 これを、ポリスチレンビーズ単独のものの代わりに用いた。
【0047】
乳化重合によって調製され、平均径9.5μmを有するポリスチレンビーズの2.5gの4%水性懸濁物を、ポリビニルアルコール(75%加水分解、分子量2000)0.48gと混合した。
【0048】
先ず、トルエン0.05gおよびアセトン4.95g中に色素1を0.01g溶解してマゼンタ着色ビーズの懸濁物を調製した。 ポリビニルアルコールを含有するポリスチレンビーズの上記懸濁物から5.00gの量を、撹拌しながらゆっくりとこの色素溶液に加え(滴下)、5%色素充填されたマゼンタ色素の懸濁物を調製した。 そしてこの着色ビーズの懸濁物を多孔質コットンフィルタで濾過し、透析バッグ(12,000〜14,000分子量カットオフ)に注ぎ、蒸留水で1時間洗浄した。 洗浄後、この着色ビーズの懸濁物を多孔質コットンフィルタで再度濾過した。 この最終工程後の懸濁物中のマゼンタ着色ビーズの濃度は2.59%であった。
【0049】
それぞれ0.05gの次の色素:色素2(114FN−D89)、色素3(BASF Sudan Orange 220)、色素4(MM2500FAN)、および色素5(BASF Yellow 0.75)用いて、別の4つ色の色素をビーズに導入した懸濁物を同様に調製した。 カラー白色の場合、プレーンポリスチレンビーズも4%で用いた。
【0050】
例1の調合物1および調合物2を、図1に示す塗工装置を使って、二酸化チタン6質量%含有するポリエチレンテレフタレート(PET)の0.18mm厚基体上に塗布した。 これらの調合物を45度の温度でモータM4で駆動されているスロットコーティングダイ2を通して、3.7m/分の速度で移動している12.7cm幅ウェブ6上に導入した。 流速を調節して、シアン、マゼンタおよびオレンジ着色ビーズそれぞれにおいて、0.043g/m
2のレベルを提供した。 これらの塗膜を、温度4℃およびRH56.6%に維持された2.4m長冷却セクション8内で冷却硬化し、その後コンディショニングチャンバー10に通した後、第一乾燥セクション12で乾燥させ、そして第二乾燥セクション14で乾燥させた。 乾燥セクションはそれぞれ9.8m長および11.6m長である。 第一乾燥セクションは、温度21℃およびRH33.2%に維持され、第二乾燥セクションは、温度37.8℃およびRH18.6%に維持されていた。 【0051】
例2 この例は、色素導入ビーズの表面に対して、前もって合成された単独の標準オリゴヌクレオチドプローブを結合することを具体的に説明する。
【0052】
この例では、3種類のDNAオリゴヌクレオチドプローブ配列およびそれらの相補の標的配列を用いた。 プローブ配列をそれらの5プライム端のところで第一級アミンで改変し、標的配列をそれらの5プライム端のところでビオチンで改変した。
【0053】
色素導入ビーズ100マイクロリットル(4%w/v)を、アセトン緩衝液(0.01M、pH5.0)中で3回すすぎ、20mMの2−(4−ジメチルカルボモイル−ピリジノ)−エタン−1−スルホネートおよび10%のポリエチレンイミン100マイクロリットルと混合した。 この混合物を室温で1時間撹拌し、ナトリウムホウ酸緩衝液(0.05M、pH8.3)で3回すすいだ。 このビーズをナトリウムホウ酸緩衝液に再懸濁させた。
【0054】
5'−アミノ−C6改変を伴うオリゴヌクレオチドDNAプローブを、ナトリウムホウ酸緩衝液100マイクロリットルに溶解して、最終濃度40nモルにした。 このDNAプローブ液にアセトニトリル中のシアヌル酸塩化物20マイクロリットルを添加し、ナトリウムホウ酸緩衝液を用いて総容量を250マイクロリットルにした。 この溶液を室温で1時間撹拌し、その後室温で3時間、1リットルのホウ酸緩衝液に対して透析した。
【0055】
透析したDNA溶液100マイクロリットルをビーズ懸濁物200マイクロリットルと混合した。 この混合物を室温で1時間撹拌し、その後リン酸ナトリウム緩衝液(0.01M、pH7.0)で3回すすいだ。 改変したビーズを、例1に記載したように調合物1に従って、透明プラスチック支持体上に塗布した。
【0056】
例3 この例は、ゼラチンコート微小球系マイクロアレイに対する標的核酸配列のハイブリダイゼーションおよび検出を具体的に説明する。
【0057】
5'−ビオチン標識を伴うオリゴヌクレオチドDNA(DNAプローブに対して相補的な配列を有する)を、0.9MのNaCl、0.06MのNaH
2 PO 4 、0.006MのEDTA、および0.1%のSDSを含有するハイブリダイゼーション溶液、pH7.6(6XSSPE−SDS)に溶解して、最終濃度を1マイクロMにした。 ビーズコートマイクロアレイを、このハイブリダイゼーション溶液でハイブリッド化し、68℃で始めて、室温までゆっくりと冷却した。 ハイブリダイゼーションの後、このマイクロアレイを0.5XSSPE−SDSで15分間洗浄した(3回)。 このマイクロアレイを0.01Mリン酸塩緩衝0.1MのNaCl、pH7.0中にストレプトアビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼ共役体を含有する溶液で、室温で1時間インキュベートさせた。 インキュベーションの後、マイクロアレイをこのインキュベーション緩衝液で3回すすいだ。 【0058】
ハイブリダイゼーションが終わったマイクロアレイを、Olympus BH−2顕微鏡(Diagnostic Instruments, Inc. SPOTカメラ、CCD解像度1315×1033画素)を使って白色光照明で画像形成して、カラービーズバーコードサイン情報を得て、次いでマイクロアレイの上にSuperSignal(商標)ELISA化学ルミネッセンス基体溶液の薄層を置くことによって、暗視野化学ルミネッセンス画像を捕捉した。
【0059】
例4 この例は、着色微小球またはビーズを含有する塗膜上へDNAハイブリダイゼーションの酵素消化の作用を説明する。
【0060】
ゼラチナーゼを、Genencor International Inc. から購入し、さらに精製することなく用いた。 ゼラチナーゼ0.5gを水60mLに溶解した。 着色微小球を有する塗膜を、37℃で種々の時間、この酵素に浸漬し、そしてこの酵素処理した塗膜を流水浴に5分間浸漬することによってこの酵素分解反応を停止させた。 ゼラチナーゼで3分、5分、7分処理した塗膜の断面を作製し、顕微鏡下でこの断面の画像を作製して、ゼラチン除去の範囲を目に見えるようにした。 この画像を図2、図3、図4および図5に表した。 ビーズ面上のプローブDNA配列に対して相補のビオチン標識標的DNAフラグメントを種々の時間ゼラチナーゼで処理した塗膜に対してハイブリッド化した。 例3に記載したように化学ルミネッセンス信号を検出し、結果を表2に要約した。
【0061】
【表2】
【0062】
3分、5分、7分酵素処理した化学ルミネッセンス画像を図6、図7および図8に表した。
この例は酵素分解反応の一つの状態を説明するだけである。 しかし、酵素分解反応の状態は、緩衝された溶液または有機溶剤に酵素を溶解し、適当な温度で実施することによっても行うことができる。 当業者であれば、一定の所望の用途に合わせるようにこのプロセスを変えることができるであろう。
【0063】
ゲル化する薬剤が実質的に微小球の表面から除去される(即ち、その表面に結合されたプローブは実質的にゼラチンが無く、目的とする標的と相互作用することを意味する)酵素分解のいずれの方法も本発明の範囲に入る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は塗工装置の概略を表した図である。
【図2】図2は、0分間ゼラチナーゼで処理したマイクロアレイの断面図の顕微鏡写真である。
【図3】図3は、3分間ゼラチナーゼで処理したマイクロアレイの断面図の顕微鏡写真である。
【図4】図4は、5分間ゼラチナーゼで処理したマイクロアレイの断面図の顕微鏡写真である。
【図5】図5は、7分間ゼラチナーゼで処理したマイクロアレイの断面図の顕微鏡写真である。
【図6】図6は、3種類の標的核酸配列に曝した後、照明無しの暗視野下で捕捉された塗布されたDNAマイクロアレイを示す写真。
【図7】図7は、3種類の標的核酸配列に曝した後、照明無しの暗視野下で捕捉された塗布されたDNAマイクロアレイを示す写真。
【図8】図8は、3種類の標的核酸配列に曝した後、照明無しの暗視野下で捕捉された塗布されたDNAマイクロアレイを示す写真。
【符号の説明】
2…スロットコーティングダイ4…モータ6…ウェブ8…冷却セクション10…コンディショニングチャンバー12…第一乾燥セクション14…第二乾燥セクション
|