Cell array structural body and cell array

申请号 JP2008068412 申请日 2008-03-17 公开(公告)号 JP2008259499A 公开(公告)日 2008-10-30
申请人 Canon Inc; キヤノン株式会社; 发明人 HONMA TSUTOMU; TAKAHASHI ATSUSHI; IBII TAKAHISA;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To provide a cell array excellent in handling a culture medium, a drug solution and the like, and handlability in washing treatment, when applied to applications such as medicine evaluations, and having a structure by which a desired cell is certainly harvested from the cell array with good operability, and a structural body therefor.
SOLUTION: The cell array structural body is provided by bringing a substrate to have a plurality of micropores piercing the substrate from one surface to another surface, through which a sample cell can pass, and a means for capturing or releasing the sample cell on a wall surface of each micropore, while the cell array is provided by detachably immobilizing sample cells in each micropore of the cell array structural body.
COPYRIGHT: (C)2009,JPO&INPIT
权利要求
  • 基板と、該基板の一方の面から他方の面に貫通し、被検体細胞が通過可能な複数の微細孔と、各微細孔の壁面に設けられた被検体細胞を着脱する手段と、を有することを特徴とする細胞アレイ用構造体。
  • 前記被検体細胞を着脱する手段が、前記微細孔の壁面に露出している刺激応答性高分子を構成要素として有する請求項1に記載の細胞アレイ用構造体。
  • 前記刺激応答性高分子が温度応答性高分子である請求項2に記載の細胞アレイ用構造体。
  • 前記温度応答性高分子が存在する領域を加熱するための電気熱変換体を備えてなる請求項3に記載の細胞アレイ用構造体。
  • 前記電気熱変換体が、各微細孔に対応して設けられている請求項4に記載の細胞アレイ用構造体。
  • 前記被検体細胞の着脱手段がその構成要素として、不均一電場を発生させるための電極を有する請求項1に記載の細胞アレイ用構造体。
  • 前記電極として板状電極と棒状電極とが対向した電極対からなる請求項6に記載の細胞アレイ用構造体。
  • 前記被検体細胞を着脱する手段が設けられた領域と前記一方の面の開口部との間の領域における微細孔の断面積が、該披検体細胞を着脱する手段が設けられた領域における微細孔の断面積以上であり、該被検体細胞を着脱する手段が設けられた領域と前記他方の面の開口部との間の領域の少なくとも一部における微細孔の断面積が、該披検体細胞を着脱する手段が設けられた領域における微細孔の断面積未満である請求項1に記載の細胞アレイ用構造体。
  • 基板と、該基板の一方の面から他方の面に貫通し、被検体細胞が通過可能な、複数の微細孔と、各微細孔の壁面に設けられた被検体細胞を着脱する手段と、を有する細胞アレイ用構造体と、前記微細孔内に保持された被検体細胞と、からなることを特徴とする細胞アレイ。
  • 说明书全文

    本発明は細胞アレイ用構造体および細胞アレイに関する。

    従来、薬物の評価等に細胞を使用する場合、ディッシュ、フラスコ等の容器、または96穴のマイクロタイタープレート等が使用されてきた。 しかしながら、近年の薬物評価等のハイスループット化、自動化、低コスト化等の要求に応じて、遺伝子解析に使われているDNAチップと同様に、細胞をガラス等の基板上にアレイ状に配列した「細胞アレイ」が開発されつつある。 この細胞アレイは、薬物の効果や安全性の評価、細胞を用いた医療診断、特定の機能を有する細胞のスクリーニング、細胞を用いた遺伝子発現解析等に用いることが出来ると期待されている。

    細胞アレイとしては、各種のものが提案されている。 例えば、特開2003−33177号公報には、細胞付着性高分子の被覆領域の複数を、細胞非付着性の親性高分子の被覆領域中に不連続に配置し、更に、これらの周囲を細胞非付着性の強疎水性材料の被覆領域で連続的に囲んだ構造の高密度細胞アレイ用基板が開示されている。 また、特開2004−173681号公報には、複数個のマイクロウェルを有し、各ウェルに1個の被検体リンパ球を格納し、抗原特異的リンパ球を1個単位で検出するマイクロウェルアレイチップが開示されている。

    細胞アレイは、多数の検体を1チップ上で同時に評価出来るため、細胞を用いた薬物評価のハイスループット化、自動化、低コスト化等を達成し得る優れた方法である。 しかしながら、従来の細胞チップは、平面基板の表面またはマイクロウェル中に細胞を保持して使用するため、培地や薬液の交換、細胞の洗浄など、細胞を用いた薬物評価に一般に用いられる処理が施し難いという課題があった。 また、従来の細胞アレイを用いて、多数の細胞の中から特定の細胞のみを選別して単離しようとする場合は、細胞アレイ上から顕微鏡下で判別した目的の細胞を、マイクロマニピュレーター等の特殊な装置を用いて回収する必要がある。 そのため、操作が極めて煩雑で、熟練を要するものであった。

    特開2003−33177号公報

    特開2004−173681号公報

    本発明の目的は、薬物評価等の用途に適用した場合に、培地や薬液などでの処理や、洗浄処理における取り扱い性に優れ、更に、細胞アレイから目的とする細胞を操作性よく、かつ確実に分取可能な構造を有する細胞アレイ及びそのための構造体を提供することにある。

    本発明の細胞アレイ用構造体は、基板と、該基板の一方の面から他方の面に貫通し、被検体細胞が通過可能な、複数の微細孔と、各微細孔の壁面に設けられた被検体細胞を着脱する手段と、を有することを特徴とする細胞アレイ用構造体である。

    本発明の細胞アレイは、上記構造の細胞アレイ用構造体の各微細孔に細胞が保持されてなることを特徴とする細胞アレイである。

    以上説明した本発明の細胞アレイ用構造体およびそれを用いた細胞アレイによれば、被検体細胞が保持された微細孔の一方の開口部からもう一方の開口部へと、液体を流すことが可能であり、培地や薬液の交換、細胞の洗浄などを極めて容易に行なうことが出来る。 さらに、細胞の着脱を、微細孔ごとに制御することも可能であることから、特定の細胞の選別・回収が極めて容易に行なえる。

    本発明の細胞アレイ用構造体は、基板の一方の面から他方の面に貫通する微細孔を有する。 この微細孔は被検体細胞が通過可能な構造を有する。 すなわち、微細孔の断面が被検体細胞よりも広く設定されている。 例えば、微細孔の断面が円形である場合は、その直径を被検体細胞の大きさよりも大きく設定する。 また、微細孔の断面が矩形などであれば、その辺の長さを被検体細胞の大きさよりも大きく設定する。 基板に設けられた複数の微細孔の各々の壁面は、被検体細胞の着脱手段を有する。 この着脱手段に被検体細胞を保持させることによって微細孔中に被検体細胞を保持した状態で、各種の試験や処理等を行なうことができる。 微細孔に細胞を保持した状態で微細孔の壁面と細胞との間に間隙が存在するようにしておくことで、微細孔一方の開口部からもう一方の開口部へと液体を流すことが可能となり、培地や薬液の交換、細胞の洗浄などを極めて容易に行なうことが出来る。 また、細胞の着脱を微細孔ごとに制御することも可能である。 そのような制御を行うことによって、特定の細胞の選別・回収を極めて容易に行うことができる。 微細孔は基板にアレイ状またはマトリックス状(格子状)に配列することができる。

    なお、本発明でいう「被検体細胞」とは、本発明の細胞アレイ用構造体に着脱して種々の目的に使用する細胞を言い、後に例示するような動物細胞、植物細胞、生物細胞などが挙げられる。 また、本発明でいう「被検体細胞の着脱」とは、被検体細胞を所望のタイミングで基板に捕捉・固定化させること、及び、基板に捕捉・固定化された被検体細胞を所望のタイミングで剥離・脱固定化させることを言う。 従って、本発明でいう「被検体細胞を着脱する手段」とは、被検体細胞を所望のタイミングで基板に捕捉・固定化させることができ、かつ、基板上の少なくとも一部分に捕捉・固定化された被検体細胞を所望のタイミングで剥離・脱固定化させることができる手段を言う。

    以下、本発明の細胞アレイ用構造体及び細胞アレイについて、実施の形態及び図面を用いて説明する。

    本発明の細胞アレイ用構造体の一例を図1及び図2に示す。 図1及び図2に示されるように、本例の細胞アレイ用構造体は、一方の面から他方の面に貫通した微細孔2を複数有する基板1からなる。 そして、図2に示すように、微細孔2の壁面には被検体細胞を着脱する手段3を有している。

    本発明の細胞アレイ用構造体の基板1としては、配列した複数の微細孔2が貫通されたシリコン、ガラス、プラスチック等、種々の基板を用いることができる。 基板1の大きさは特に制限されないが、300〜1000μmの厚さのものが通常用いられる。 また、微細孔2の断面の形状としては、正方形、長方形、円形、楕円形、3形など特に制限されない。 また、微細孔2の大きさは、被検体細胞を通過可能とする大きさであればよい。 更に、被検体細胞が保持された状態で微細孔を液体が通過可能であることが好ましい。 微細孔の断面が辺と角からなるものであれば一辺の長さが、円形(楕円の場合は短径)であれば直径が1000μm以下のものが好ましく、その下限は被検体細胞が通過可能なものであれば特に限定されない。 これらの長さを、被検体細胞が通過するのに十分な大きさ、具体的には、円形であればその直径、正方形であればその一辺の長さが、被検体細胞の大きさの1.5倍以上となるようにして十分な広さを確保することが好ましい。 微細孔2に十分な広さがないと、細胞の形態変化や、細胞が複数である場合の位置関係等によっては、微細孔2を被検体細胞が通過できないといった問題が発生する可能性がある。 また、微細孔2を細胞が塞いでしまう恐れがあり、本発明の効果である液交換や細胞回収の容易さが損なわれる可能性がある。 微細孔2の具体的な大きさは、被検体細胞の大きさによって最適に決められるものであるが、大きさの順番は変わるものではない。 例えば被検体細胞の直径を20μmとすると、微細孔2の断面の一辺の長さ(正方形の場合)又は直径(円形の場合)は20μmより十分に大きい大きさ、例えば500μm程度としておけばよい。 四角形以外の多角形の場合も、適宜調整することができる。 たとえば、16角形などの場合は、一辺の長さは20μmよりも小さくすることが可能である。 この他、被検体細胞の大きさは小さいもので数μm、大きいもので数十μmであるので、たとえば、微細孔2の断面の一辺の長さ(正方形の場合)又は直径(円形の場合)は10〜1000μmの間で最適な値とすることが望ましい。 より一般的には、微細孔の断面の内接円の直径が10〜1000μmであることが好ましく、100〜1000μmであることがさらに好ましい。

    微細孔の断面の形状及び広さを含む構造は基板の一方の面の開口部から基板の他方の面の開口部まで同じであっても良い。 更に、必要に応じて、図3に例示したように、基板4に設けられた微細孔5内の被検体細胞を着脱する手段6の下側の第一の領域7の断面の一辺または直径の大きさ8を、被検体細胞を着脱する手段6が備わった第二の領域9の断面の一辺の長さ又は直径10よりも小さくしてもよい。 これにより、第一の領域7と第二の領域9との境界に段差を設けることができ、より多くの被検体細胞11を保持したい場合などに、好適な構造を提供できる。 このような段差を設けることで、着脱手段が設けられた位置に被検体細胞を保持しやすくなり、効率よい被検体細胞の捕捉が可能となる。 図3に示すような構造を有する細胞アレイ用構造体を使用する場合、図中上側から細胞を貫通孔内に供給することが望ましい。

    より一般的には、以下の要件を満たすことにより、図3に示す構造を有する細胞アレイ用構造体と同様の効果を得ることができる。
    (1)被検体細胞を着脱する手段が設けられた領域と前記一方の面の開口部との間の領域における微細孔の断面積を、披検体細胞を着脱する手段が設けられた領域における微細孔の断面積以上とする。 及び(2)被検体細胞を着脱する手段が設けられた領域と前記他方の面の開口部との間の領域の少なくとも一部における微細孔の断面積を、披検体細胞を着脱する手段が設けられた領域における微細孔の断面積未満とする。

    一つの細胞アレイ用構造体が有する微細孔の数は、特に制限はないが、例えば、電極等の部材の配置等の観点から考えると、1cm 2当たり1個〜1,000個の範囲が好ましい。

    また、基板に微細孔を形成する方法も特に制限はない。 例えば、基板上にブラストマスクを設置し、サンドブラスト加工により微小貫通孔を形成する方法、ダイヤモンドドリルにて貫通孔を形成する方法、レジストを利用したエッチングによる方法などの穿孔法を用いることができる。

    なお、本発明における基板は、必要に応じて表面改質して使用することができる。 例えば、スライドガラスおよび石英基板等を基板として用いる場合に、所望に応じて表面改質剤での処理を予め行っておくことができる。 表面改質剤としては、例えば、酸、プラズマ、オゾン、有機系溶剤、水系溶剤、界面活性剤等を挙げることができる。 更に、シランカップリング等により所望置換基を表面に導入する処理や、表面自由エネルギーを制御する処理等を施すこともできる。

    前述したように本発明の細胞アレイ用構造体の微細孔は、その孔内の壁面に被検体細胞を着脱する手段を有している。 図2の例では、微細孔のほぼ全域に被検細胞着脱手段3が設けられている。 被検体細胞を着脱する手段には特に制限はないが、好ましくは、複数の微細孔について、それぞれ独立して、その細胞の着脱を制御できる手段であればなおよい。 この被検体細胞着脱手段は、微細孔の全域にわたって設けてもよく、また、所望とする少なくとも一つの領域に部分的に設けても良い。 このように被検体細胞着脱手段を部分的に設ける場合には、先に挙げた図3のような構造を利用することもできる。

    このような、被検体細胞を着脱する手段の構成要素としては、例えば、刺激応答性高分子を好適に利用できる。 この刺激応答性高分子を、微細孔の側面に露出するように(被検体細胞と接触可能であるように)設けることで、着脱手段を形成することができる。 具体的には、微細孔側壁に、刺激応答性高分子が露出した領域を設ける。 この領域に刺激を付与すると界面(刺激応答性高分子の表面)の細胞接着性が変化することを利用して、被検体細胞の着脱を制御することが可能となる。

    刺激応答性高分子としては、光応答性高分子や温度応答性高分子などが知られているが、特に温度応答性高分子を、その制御の容易さや細胞に与える影響の小ささから好適に用いることが出来る。 本発明で用いる温度応答性高分子は、ホモポリマーであっても共重合体であってもよい。 使用し得る温度応答性高分子の基本構成単位としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物、N−エチルアクリルアミド(境界温度72℃)、N−n−プロピルアクリルアミド(同21℃)、N−n−プロピルメタクリルアミド(同27℃)、N−イソプロピルアクリルアミド(同32℃)、N−イソプロピルメタクリルアミド(同43℃)、N−シクロプロピルアクリルアミド(同45℃)、N−シクロプロピルメタクリルアミド(同60℃)、N−エトキシエチルアクリルアミド(同約35℃)、N−エトキシエチルメタクリルアミド(同約45℃)、N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド(同約28℃)、N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(同約35℃)等のN−アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−エチルメチルアクリルアミド(境界温度56℃)、N,N−ジエチルアクリルアミド(同32℃)等のN,N−ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、さらに1−(1−オキソ−2−プロペニル)−ピロリジン(同56℃)、1−(1−オキソ−2−プロペニル)−ピペリジン(同約6℃)、4−(1−オキソ−2−プロペニル)−モルホリン、1−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)−ピロリジン、1−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)−ピペリジン、4−(1−オキソ−2−メチル−2−プロペニル)−モルホリン等の環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体、メチルビニルエーテル(境界温度35℃)等のビニルエーテル誘導体などを挙げることができる。 また、細胞の種類によって境界温度を調節する必要がある場合や、被覆物質と支持体との相互作用を高める必要が生じた場合や、細胞付着性表面の親水、疎水性のバランスを調整する等の目的で、上記以外のモノマー類との共重合、重合体同士のグラフト重合、共重合体あるいは重合体の混合物を用いてもよい。 また、重合体本来の性質を損なわない範囲で架橋することも可能である。 前記の温度応答性高分子は、温度を該高分子の境界温度以下に冷却することにより高い親水性を呈して細胞非接着性の表面となり、それ以上の温度では弱い疎水性を呈し、細胞接着性の表面となる。

    微細孔の壁面に刺激応答性高分子を設ける方法、微細孔の側面を刺激応答性高分子で被覆する方法、としては、以下の方法を挙げることができる。
    (1)壁面に刺激応答性高分子を塗布する方法。
    (2)壁面と刺激応答性高分子とを化学的な反応によって結合させる方法。
    (3)物理的な相互作用を利用する方法。

    これらを、単独または併用することができる。

    化学的な反応によって結合させる場合は、電子線照射、γ線照射、紫外線照射、プラズマ処理、コロナ処理等を用いることができる。 なお、これらの処理への適応性を考慮する場合は、基板として、照射線に対する透過性を有するものを使用することが好ましい。 さらに、壁面と刺激応答性高分子のいずれかもしくは双方が適当な反応性官能基を有する場合は、ラジカル反応、アニオン反応、カチオン反応等の一般に用いられる有機反応を利用することができる。 特に、上記の反応性官能基を有する基板を、反応性官能基を有しない基板で挟み込んで張り合わせれば、微細孔内部のみを効率的に被覆することが出来る。 その場合、予め微細孔の開いた基板同士を張り合わせても、張り合わせた基板に穿孔して微細孔を貫通させても良い。 物理的な相互作用による方法としては、被覆材料単独または支持体との相溶性のよいマトリックスを媒体として、塗布等の物理的吸着を用いる方法等がある。 マトリックスを媒体とする場合には、例えば、支持体を形成するモノマーまたは支持体と相溶性のよいモノマーと被覆材料とのグラフトポリマー、ブロックポリマー等を形成して被覆材料を基板に適用することができる。

    なお、複数基板の貼り合わせによる方法は、先に図3で説明した段差構造を得る場合にも好適に利用できる。

    刺激応答性高分子を用いる場合、被検体細胞を着脱する手段のその他の構成要素として、刺激応答性高分子に刺激を付与する手段を設けることが好ましい。 刺激応答性高分子として光応答性高分子を用いる場合は、微細孔内の光応答性高分子で被覆された領域に光を照射する機構を、刺激を付与する手段として用いる。 刺激応答性高分子として温度応答性高分子を用いる場合は、微小なヒーター等の電気信号を熱に変換する電気熱変換体が、刺激を付与する手段として好適に用いられる。 係る電気熱変換体としては、例えば、Ta 2 N、RuO 2 、Ta、Ta−Al合金を始めとする様々な金属、合金、金属化合物からなる発熱抵抗体を備えた電気熱変換体を用いることが出来る。 前記の発熱抵抗体は公知の方法、例えばDCスパッタ法、RFスパッタ法、イオンビームスパッタ法、真空蒸着法、あるいはCVD法等によって形成することができる。 係る電気熱変換体は、温度応答性高分子が存在する領域の近傍に設けることが好ましい。 ここで、「近傍」とは、微細孔内の所望とする位置(温度応答性高分子が存在する領域)に熱を付与可能な位置のことである。 このような位置であれば、電気熱変換体は、微細孔の内部にあっても、微細孔の外部にあってもよく、また、基板の表面にあっても、基板内部に埋め込まれていても良い。 例えば、プリント配線基板を用いて、これをヒーターとし、基板に貼り合わせることで、基板上の任意の場所を所定の温度に設定する電気熱変換体を例示することができる。 他方、冷却についても、ペルチェ素子を同様に貼り合わせることで、基板上の任意の場所を所定の温度に設定する電気熱変換体を例示することができる。 温度応答性高分子を微細孔ごとに制御するという観点からは、電気熱変換体は各微細孔に対応して(すなわち微細孔1個につき1個あるいは、複数のまとまった微細孔ごとに1個)設けておくことが好ましい。

    一方、被検体細胞を着脱する他の手段として、誘電泳動現象を利用して、被検体細胞の捕捉・剥離を制御する手段が例示できる。

    誘電泳動(dielectrophoresis)とは、空間的に高周波数帯域の交流電圧を印加することによって生じる不均一電場中での分極可能な物質または物体の移動である。 周知の電気泳動の現象とは完全に異なり、誘電泳動力はクーロン力からの寄与を受けないことから、電荷を帯びない物質または物体の捕捉や移動などに対しても適用することができる。 誘電泳動を利用した力は電場の不均一性と、電界によって誘導された分離対象粒子内での電荷の再分布との間の相互作用によって生じる。

    また、誘電泳動力は高周波数帯域の交流電圧によって発生する不均一電場によって誘起されるものなので、電気二重層の緩和時間が有限であるために電気二重層が微粒子に与える影響は無視できる。 このようなことから、誘電泳動における物体の捕捉や移動などは、非帯電物質等への適用が可能であること、対象物に対する影響も小さなものであることなどが特徴として挙げられる。 不均一電場中においてプローブ電極と微粒子を考えた場合、微粒子の性質に関連して2種類の誘電泳動力が考えられる。 例えば微粒子が溶媒等の周囲環境よりも分極されやすい場合、微粒子がより高電場の領域に引っ張られる誘電泳動力(正の誘電泳動力)が観察される。 逆に微粒子が周囲環境よりも分極されにくい場合、微粒子がより弱い電場領域に向かって押される誘電泳動力(負の誘電泳動力)が観察される。 これらの誘電泳動力から、アレイの構成に応じて選択した誘電泳動力を適宜用いることができる。

    上述の誘電泳動の原理を細胞に対して適用し、かつ電極へ保持させたい細胞の誘電率が媒質の誘電率より大きくなるように条件を整えることにより(すなわち正の誘電泳動力が働くようにすることにより)、前記細胞を電極へ捕捉・固定化することができる。 さらに、電極への電圧の印加を止めて誘電泳動力を一時的に消滅させるか、あるいは、負の誘電泳動力が働くようにすることにより、固定化された細胞を容易に剥離・脱固定化することができる。 複数の不均一な電場を発生させることための電極を形成し、各電極を独立して制御可能とすることにより、細胞アレイにおける各領域ごとに独立して、被検体細胞の着脱操作を行うことができる。

    本発明における「不均一な電場を発生させるための電極」としては、不均一な電場を形成するものであればどのような形状、材質のものでも特に限定されない。 「不均一な電場を発生させることが可能な電極」は通常、対向した電極対からなる。 そのような電極対の形状の一例としては、図4に示すような平板電極(板状電極)と棒状電極とが対向した電極対や、一対のくし型電極からなる電極対などを用いることができる。 図4に示す電極をさらに詳細に説明すれば、第一の電極12として線状又は面状の電極を用い、第二の電極13として棒状(より詳細には棒端部の点状)の電極を用いたものである。 この場合には、第二の電極13から第一の電極12に拡がる不均一電場を細胞14に印加することができる。 また、電極の材質は好ましくはアルミニウム、金、白金などを用いることができるが、これに限定されない。 上記電極を設ける基板の材質は、好ましくはガラスを用いることができるが、絶縁体であればこれに限定されない。 上記電極は公知の方法、例えば基板にスパッタリングや蒸着、メッキ等で成膜し、フォトリソグラフィー等でエッチングして形成することができる。

    本発明の誘電泳動力の発生手段として「不均一な電場を発生させるための電極」に印加する好ましい電気信号は高周波数帯の正弦交流波である。 ここで高周波数の範囲は100kHz〜100MHzの周波数帯域にあるものを指す。 本発明においては微小空間内へのジュール熱や装置への影響を考慮すると100kHz〜10MHzの範囲で行なわれるのが好ましい。 また、その際に印加する電圧は1〜10Vの範囲から選ばれることが好ましい。 「不均一電場を発生させるための電極」に交流電圧を印加することにより、不均一な電場を発生させることができる。

    本発明の細胞アレイ用構造体と組み合わせて細胞アレイを作製し得る被検体細胞としては、微生物細胞、動物細胞、植物細胞を例示することができる。 より具体的には、大腸菌、ストレプトミセス、枯草菌、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス等の原核細胞、酵母、アスペルギルス等の真核細胞、ドロソフィラS2、スポドプテラSf9等の昆虫細胞、L細胞、CHO細胞、COS細胞、HeLa細胞、HL60細胞、HepG2細胞、C127細胞、BALB/c3T3細胞(ジヒドロ葉酸レダクターゼやチミジンキナーゼなどを欠損した変異株を含む)、BHK21細胞、HEK293細胞、Bowesメラノーマ細胞、卵母細胞、T細胞等の動物細胞や植物細胞などを挙げることができる。

    また、被検物質が細胞に及ぼす影響の程度をインサイチューに検出することを容易ならしめるため、被検体細胞として形質転換細胞を用いることができる。 形質転換細胞として、例えば、被験物質との接触により発現する候補遺伝子のプロモーターの下流にレポーター遺伝子が連結された形質転換体を挙げることができ、これら形質転換体は常法により作製することができる。 レポーター遺伝子としては、GFP(グリーン蛍光タンパク質)等の蛍光発光タンパク質をコードするDNAや、ホタルルシフェラーゼ、バクテリアルシフェラーゼ等のルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ等の酵素遺伝子などを具体的に挙げることができる。 これらの中でもGFP遺伝子等の蛍光性タンパク質をコードするDNAが検出・確認の容易さからして好ましい。 かかるGFPには、EGFP(Enhanced GFP)、EYFP(Enhanced Yellow Fluorescent Protein)、ECFP(enhanced CYAN fluorescent protein)(青色)、DsRed(赤色)等の蛍光波長の異なる誘導体が存在し、多重ラベルを行なうこともできる。 GFPの利点は生細胞のままで簡単に解析できることであり、そのため経時的な観察が容易となる。

    本発明の細胞アレイ用構造体を用いた細胞アレイの作製方法を例示すると次のとおりである。 まず、被検体細胞を含む液体で細胞アレイ用構造体の上面を満たし、細胞アレイ用構造体の下面から緩やかに吸引する。 この吸引によって、懸濁した被検体細胞を微細孔に流し込み、次いで、被検体細胞を着脱する手段を作用させることによって、微細孔内に被検体細胞を固定化できる。

    本発明の細胞アレイは、微細孔中に被検体細胞を保持して各種の試験や処理等を行なうものである。 従って、該微細孔の一方の開口部からもう一方の開口部へと、液体を流すことが可能であり、培地や薬液の交換、細胞の洗浄などを極めて容易に行なうことが出来る。 さらに、細胞の着脱を、微細孔ごとに制御することも可能であることから、特定の細胞の選別・回収が極めて容易に行なえる。

    微細孔内を培地で満たしておくことによって、この細胞アレイで被検体細胞を培養することが可能である。 一般に、細胞培養を培養すると、培地中に老廃物が蓄積するなどして、細胞の生存や機能にとって好ましくない影響が生じる場合が多くある。 通常のフラスコやディッシュ等での細胞培養の場合、ピペッティングによって古い培地を新しい培地に交換するが、従来の細胞アレイ上で培養では、このような培地交換の操作が極めて困難であった。 しかしながら、本発明の細胞アレイでは、例えば以下のようにして、培地交換を極めて容易に行なうことが出来る。 即ち、新しい培地で細胞アレイの上面を満たし、細胞アレイの下面から緩やかに吸引することによって、微細孔内の培地を交換することができる。 さらに、上記の操作を連続して行なうことにより、常に新しい培地と入れ替えながら培養する「連続培養」を行なうことも可能である。

    本発明の細胞アレイを用いて、細胞を薬物に暴露させるには、例えば、被検薬物を含む液体で細胞アレイの上面を満たし、細胞アレイの下面から緩やかに吸引することによって、微細孔内を薬物を含む液体で満たす方法が利用できる。 同一アレイ上で、異なる種類や濃度の薬物に細胞を暴露させたい場合は、例えば、細胞アレイの上面に、各微細孔に連結したマイクロチャンネルを設置しても良いし、また、インクジェットプリンター等で各微細孔に向けて薬物を吐出しても良い。

    被検体細胞の洗浄は、挟雑物や不要な薬物の除去等の目的で、細胞を用いた薬物評価に一般に用いられる手法である。 特に、薬物への暴露時間を厳密に制御する場合や、標識抗体で細胞を処理する際に非結合抗体を除去する場合は、この細胞洗浄の操作は極めて重要である。 フラスコやディッシュ等での細胞培養の場合、遠心分離やピペッティング等の手法で洗浄液への懸濁と細胞回収を繰返して洗浄するが、従来の細胞アレイ上では、このような洗浄の操作が極めて困難であった。 しかしながら、本発明の細胞アレイでは、例えば以下のようにして、細胞洗浄を極めて容易に行なうことが出来る。 緩衝液等の洗浄液で細胞アレイの上面を満たし、細胞アレイの下面から緩やかに吸引することによって、微細孔内の液相を洗浄液に置換することができる。

    本発明の細胞アレイは、必要に応じて、固定化した細胞を容易に剥離・脱固定化させることが出来るので、該アレイ上での評価の後、被検体細胞を回収して別の評価等に容易に使用することができる。 また、アレイ上での評価の結果、ある特定の微細孔に保持された細胞のみを回収したい場合、従来の細胞アレイでは、顕微鏡下で目的の細胞を選別し、マイクロマニピュレーター等を用いて当該細胞を回収する必要があり、操作が極めて煩雑であった。 これに対して、本発明の細胞アレイでは、所望の微細孔の細胞のみを容易に剥離・脱固定化させることができるので、特定の細胞のみをきわめて容易に回収することが出来る。 このように検体細胞の回収を行う場合には、微細孔当たり1個〜数個の細胞が入るように作製した(用いる被検体細胞の懸濁液の濃度などで制御することができる)細胞アレイを使用することが好ましい。 例えば、被検体細胞を着脱する手段として温度応答性高分子を用いた場合は、所望の微細孔のみ温度を変えて細胞接着性を制御することにより、特定の微細孔中の細胞のみを回収することが出来る。 また、被検体細胞を着脱する手段として誘電泳動素子を用いた場合は、所望の微細孔のみの印加を変えて捕捉した細胞を引き剥がすことにより、特定の微細孔中の細胞のみを回収することが出来る。 このような機能は、例えば、生細胞と死細胞を分離する場合や、細胞集団から特定の種類の細胞のみを選別・取得する場合、特定の機能を有する細胞のみを選別・取得する場合などに極めて有効である。 かかる細胞アレイの機能は、医薬品開発や臨床検査、薬物毒性試験、産業上有用な物質を生産する細胞や微生物のスクリーニングなどに極めて有用である。 なお剥離した細胞は、培地等の液体で細胞アレイの上面を満たし、細胞アレイの下面から緩やかに吸引することによって、細胞アレイの下部に細胞を回収することができる。

    なお、被検物質としては、各種の変異原性物質、環境ホルモン、医薬候補物質、重金属イオン、神経伝達物質、サイトカイン、インターロイキンなどの化学物質の溶液や血清等の体液を例示することができる。 被検物質が細胞に及ぼす影響の程度を検出には、例えば、それぞれの微細孔の細胞から生じるシグナルを、空間分解能を有するCCDカメラ、フォトダイオードアレイ等のフォトダイオード類、各種スキャナー、写真乾板などで検出することができる。

    次に、前述した細胞アレイ用構造体の実施例について図面を用いて説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。

    (実施例1)
    図5は本実施例の細胞アレイ用構造体の模式的な斜視図、図6は図5中のX−Y断面図である。 本実施例の細胞アレイ用構造体は、厚さ2.0mmのガラス基板15の上面から下面に貫通する微細孔16を備える。 さらに、温度応答性高分子層17、発熱抵抗体層18を有する電気熱変換体が微細孔の内部の壁面に備えられている。 さらに、電気熱変換体には電極19が接続されている。 これらにより構造体の基本的な構成がなされている。 本実施例における温度応答性高分子層17は、温度応答性高分子としてのポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)の層が、共有結合で微細孔の側壁に固定化されて形成されたものである。 また、電気熱変換体は、Ta 2 Nからなる発熱抵抗体層18と該発熱抵抗体層18に接続された電極19とを有するものである。 電極19は電気熱変換体から発熱させるために、発熱抵抗体層18に通電するための電極であり、本実施例では電極19が各発熱抵抗体層18に個別に接続され、各発熱抵抗体層18への選択的通電を可能としている。

    次に、本実施例の細胞アレイ用構造体を製造する手順について図面を用いて説明する。 図7〜9は本実施例の細胞アレイ用構造体の製造手順を説明するための図である。

    図7は、本実施例の細胞アレイ用構造体の製造に用いる第一の構造体を、基板上面側より見た平面図である。 厚さ1.0mmの第一のガラス基板20を貫通する直径600μmの微細孔21を備える、かつ、該微細孔21の内壁に温度応答性高分子層22を備えている。 微細孔21は、3.0mmの間隔で縦4個×横4個が格子状に配列されている。

    図8は、本実施例の細胞アレイ用構造体の製造に用いる第二の構造体を、基板上面側より見た平面図である。 厚さ1.0mmの第二のガラス基板23を貫通する直径500μmの微細孔24を備え、かつ、該微細孔24の周囲に発熱抵抗体層25を有する電気熱変換体及び電極26を備えている。 微細孔24は、前記の第一の構造体の微細孔21と対応する位置に縦4個×横4個が格子状に配列されている。

    図9は、本実施例の細胞アレイ用構造体を、前記の第一の構造体と第二の構造体とを用いて製造する手順を説明するための、各構造体の断面図である。 前記の第一の構造体の形成は次のようにして行う。 まず、サンドブラスト加工により形成した微細孔21を備えた第一のガラス基板20を、30%N−イソプロピルアクリルアミド溶液に浸漬した。 次に微細孔21以外に付着したN−イソプロピルアクリルアミド溶液を拭取った後、電子線(強度0.25MGy)を照射してポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を固定化して前記の第一の構造体を得る。 また、前記の第二の構造体は、発熱抵抗体層25を有する電気熱変換体及び電極26を形成した第二のガラス基板23上にブラストマスクを設置し、サンドブラスト加工により微細孔24を貫通させて形成する。 第一の構造体27と第二の構造体28とを、微細孔の位置が合うように接着剤で接着させて、本実施例の細胞アレイ用構造体を製造する。

    (実施例2)
    ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)の代わりにポリ(N−n−プロピルメタクリルアミド)を使用する以外は、実施例1と同様にして、本実施例の細胞アレイ用構造体を製造する。
    (実施例3)
    ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)の代わりにポリ(N,N−ジエチルアクリルアミド)を使用する以外は、実施例1と同様にして、本実施例の細胞アレイ用構造体を製造する。

    (実施例4)
    以下の第一の構造体及び第二の構造を用いる以外は実施例1と同様にして本実施例の細胞アレイ用構造体を製造する。
    第一の構造体:
    微細孔直径:300μm
    着脱手段:温度応答性高分子層を微細孔内壁に配置微細孔の配列:3.0mmの間隔で縦6個×横6個を格子状に配列第二の構造体:
    微細孔直径:200μm
    加熱手段:微細孔の周囲に発熱抵抗体層を有する電気熱変換体及び電極を備える。
    微細孔の配列:第一の構造体の微細孔と対応する位置に縦6個×横6個が格子状に配列 (実施例5)
    図10は本実施例の細胞アレイ用構造体の模式的な斜視図、図11は図10中のX−Y断面図である。 本実施例の細胞アレイ用構造体は、厚さ2.0mmのガラス基板29の上面から下面に貫通する微細孔30を備え、基板上面から見て微細孔30の壁面と平行方向に配置された板状の金電極31を備える。 本実施例の細胞アレイ用構造体は、更に、基板上面から見て微細孔30の壁面と垂直方向に配置された棒状の金電極32を微細孔30の内部の壁面に備え、板状の金電極31と棒状の金電極32が微細孔30を挟んで向い合って配置されている。 さらに、各一対の電極に選択的に通電するための電極33が接続されている。 これらにより構造体の基本的な構成がなされている。 本実施例における板状の金電極31と棒状の金電極32は、微細孔30内に不均一電場を発生させるための電極である。 また、電極33は前記の板状の金電極31と棒状の金電極32に交流電圧を印加するための電極であり、本実施例では電極33が前記の板状の金電極31と棒状の金電極32に個別に接続され通電する。

    次に、本実施例の細胞アレイ用構造体を製造する手順について図面を用いて説明する。 図12〜14は本実施例の細胞アレイ用構造体の製造手順を説明するための図である。

    図12は、本実施例の細胞アレイ用構造体の製造に用いる第一の構造体を、基板上面側より見た平面図である。 厚さ1.0mmの第一のガラス基板34を貫通する、一辺の長さが500μmの正方形の微細孔35を備えている。 微細孔35は、3.0mmの間隔で縦4個×横4個が格子状に配列されている。

    図13は、本実施例の細胞アレイ用構造体の製造に用いる第二の構造体を、基板上面側より見た平面図である。 厚さ1.0mmの第二のガラス基板36を貫通する、一辺の長さが300μmの正方形の微細孔37を備えている。 さらに微細孔37の一つの辺に沿って配置された板状の金電極38を有し、かつ、微細孔37の前記の辺と平行なもう一つの辺に対して垂直方向に配置された棒状の金電極39を備えている。 すなわち、金電極38は、微細孔37の内壁面に平面を有して設けられており、この金電極38の平面に直交する方向に棒状の金電極39が配置され、各微細孔ごとに一対の電極が形成されている。 さらに、板状の金電極38と棒状の金電極39は、電極40を経て電源に接続されている。 微細孔37は、前記の第一の構造体の微細孔35と対応する位置に縦4個×横4個が格子状に配列されている。

    図14は、本実施例の細胞アレイ用構造体を、前記の第一の構造体と第二の構造体とを用いて製造する手順を説明するための、各構造体の断面図である。 前記の第一の構造体は、第一のガラス基板34上にブラストマスクを設置し、サンドブラスト加工により微細孔35を貫通させて形成する。 また、前記の第二の構造体は、蒸着法・フォトリソグラフィー法によって、板状の金電極38、棒状の金電極39及び電極40を形成した第二のガラス基板36上にブラストマスクを設置し、サンドブラスト加工により微細孔37を貫通させて形成する。 第一の構造体41と第二の構造体42とを、微細孔の位置が合うように接着剤で接着させて、本実施例の細胞アレイ用構造体を製造する。

    (実施例6)
    実施例1の細胞アレイ用構造体(図15)を、図16および図17に示すように基板固定用器具に装着する。 ここで、細胞アレイ用構造体44は、電極19に接続された電線43を経て、電気熱変換体に通電するための電源に接続されている。 さらに、細胞アレイ用構造体44は基板固定用器具45及び46によって挟んで固定されている。 基板固定用器具46には、シリコン製パッキン47と、真空ポンプなどを使用した吸引手段にシリコンチューブ48を経て接続された排出口49とを備えている。 排出口49を経て細胞アレイ用構造体44の下部の空間50を陰圧とすることによって、細胞アレイ用構造体44の上面に供給した細胞懸濁液、培地、緩衝液、反応試薬、被検薬剤溶液などの流体を微細孔16中に導入することができるようになっている。 また同様にして、微細孔16中にある前記のごとき流体を排出することもできるようになっている。

    実施例1の細胞アレイ用構造体を用いて細胞アレイを製造するには、まずは、細胞アレイ用構造体の周囲の環境を20℃に設定し、微細孔16の温度を電気熱変換体に通電して37℃に設定しておく。 電気熱変換体含まれる温度応答性高分子層17はポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)よりなる。 そのため、32℃を境界温度として、それ以上では弱い疎水性を呈するが、温度を境界温度以下に冷却することにより高い親水性を呈する。 よって、前記のごとき状態では、微細孔16の壁面の温度応答性高分子層17は疎水性を呈し、細胞接着性の表面となっている。 なお、微細孔16の温度を37℃に設定する通電条件は、予め検温用のプローブ等を用いて、微細孔ごとに設定しておくとよい。 次に、HepG2細胞(ヒト肝癌細胞)をPBS(−)緩衝液(pH7.4、2.68mM KCl、1.47mM KH 2 PO 4 、136.9mM NaCl、8.06mM Na 2 HPO 4 )に1.0×10 7 cells/mlとなるように懸濁した懸濁液51で細胞アレイ用構造体の上面を満たす。 そして、前記の基板固定用器具を用いて下面側より緩やかに吸引することにより、図18に示すように該懸濁液を微細孔16中に導入する。 導入された細胞は、細胞接着性の表面である温度応答性高分子層17に接着し捕捉される。 次に、細胞アレイ用構造体の上面に残留する細胞懸濁液を取り除き、30分間培養する。 次に、PBS(−)緩衝液で細胞アレイ用構造体の上面を満たし、緩やかに吸引することにより、該緩衝液を微細孔16中に導入する。 導入した緩衝液をそのまま排出することで、捕捉されなかった細胞の除去、並びに、捕捉された細胞の洗浄をおこない、図19のごときHepG2細胞52が微細孔16中に捕捉された本実施例の細胞アレイを得る。

    (実施例7)
    実施例1の細胞アレイ用構造体の代わりに、実施例2の細胞アレイ用構造体を用いる以外は、実施例6と同様にして、本実施例の細胞アレイを得る。

    (実施例8)
    実施例1の細胞アレイ用構造体の代わりに、実施例3の細胞アレイ用構造体を用いる以外は、実施例6と同様にして、本実施例の細胞アレイを得る。

    (実施例9)
    実施例1の細胞アレイ用構造体の代わりに、実施例4の細胞アレイ用構造体を用いる以外は、実施例6と同様にして、本実施例の細胞アレイを得る。

    (実施例10)
    HepG2細胞の代わりに、HeLa細胞(ヒト子宮頚癌細胞)を用いる以外は、実施例6と同様にして、本実施例の細胞アレイを得る。

    (実施例11)
    HepG2細胞をPBS(−)緩衝液に1.0×10 2 cells/mlとなるように懸濁した細胞懸濁液を調製した。 実施例6の細胞懸濁液の代わりに、前記の細胞懸濁液を使用する以外は、実施例6と同様にして、本実施例の細胞アレイを得る。 なお、該細胞アレイの各微細孔中には1個ずつの細胞が捕捉されるよう顕微鏡で確認する。 2個以上の細胞が捕捉された場合は、その微細孔の電気熱変換体の通電を止め、温度を32℃未満に下げることで一旦捕捉を解除し、再び通電して温度を37℃に引き上げて再捕捉する、という操作を、捕捉された細胞が1個になるまで繰返す。

    (実施例12)
    実施例1の細胞アレイ用構造体の替わりに、実施例5の細胞アレイ用構造体を用いる以外は実施例6と同様にして、細胞アレイ用構造体を基板固定用器具に装着する。 なお、本実施例では、実施例1のように電気熱変換体に通電するための電源の替わりに、不均一電場を発生させるための電極に印加するためのマルチファンクションシンセサイザ10(nf corp.)を用いて被検細胞の着脱を行う。

    この細胞アレイ用構造体を用いて細胞アレイを製造するには、まずは、HL60細胞(ヒト前骨髄性白血病細胞)を、200mMスクロース水溶液に1.0×10 7 cells/mlとなるように懸濁した懸濁液で細胞アレイ用構造体の上面を満たす。 そして、前記の基板固定用器具を用いて下面側より緩やかに吸引することにより、該懸濁液を図11の微細孔30中に導入する。 次に、微細孔30内に備えられた電極に交流電圧(10V、周波数10kHz)を印加することにより、微細孔30内に不均一電場を発生させる。 微細孔30内のHL60細胞は、誘電泳動現象によって、図11の棒状の金電極32上に捕捉される。 次に、細胞アレイ用構造体の上面に残留する被検体細胞の懸濁液を取り除く。 次に、洗浄液で細胞アレイ用構造体の上面を満たし、前記電極に印加したままで緩やかに吸引することにより、該洗浄液を微細孔30中に導入する。 導入した洗浄液をそのまま排出することで、捕捉されなかった細胞の除去、並びに、捕捉された細胞の洗浄をおこない、被検体細胞が微細孔30中に捕捉された本実施例の細胞アレイを得る。

    (実施例13)
    HL60細胞の代わりに大腸菌(Escherichia coli DH5α株)を使用する以外は、実施例12と同様にして、大腸菌が捕捉された本実施例の細胞アレイを得る。

    (実施例14)
    マウス脾臓細胞を、RPMI1640培地(日本製薬株式会社)で培養したのち、ろ過遠心法にて3回洗浄して取得した浮遊細胞を使用する以外は、実施例12と同様にして、該浮遊細胞が捕捉された本実施例の細胞アレイを得る。 なお、該細胞アレイの各微細孔中には1個ずつの細胞が捕捉されるよう顕微鏡で確認する。 2個以上の細胞が捕捉された微細孔については、その電極への印加を止めることで一旦捕捉力を解除し、適宜緩衝液で洗浄したのち、再び印加して再捕捉する、という操作を、捕捉された細胞が1個になるまで繰返す。

    (実施例15)
    図20および図21は、実施例6から実施例11の細胞アレイを使用する際に、該細胞アレイの各微細孔ごとに、細胞や反応液等を回収したい場合に用いる構成の一例を示している。 実施例6から実施例11の細胞アレイの少なくともいずれかを、図20および図21に示すように基板固定用器具に装着する。 ここで、細胞アレイ53は、電線54を経て、電気熱変換体に通電するための電源に接続されている。 さらに、細胞アレイ53は基板固定用器具55及び56によって挟んで固定されている。 基板固定用器具56は、シリコン製パッキン57と、真空ポンプなどを使用した吸引手段にシリコンチューブ58を経て接続された排出口59と、を備えている。 該排出口59を経て細胞アレイ53の下部の空間60を陰圧とすることによって、細胞アレイ53の上面に供給した細胞懸濁液、培地、緩衝液、反応試薬、被検薬剤溶液などの流体を微細孔16に導入することができるようになっている。 また同様にして、微細孔16中にある前記のごとき流体を排出することもできるようになっており、排出された流体は微細孔16の直下に備えられた回収用ウェル61に回収できるようになっている。 特定の微細孔中の細胞を回収したい場合は、その微細孔の電気熱変換体の通電を止め、温度を32℃未満に下げることで捕捉を解除し、緩やかに吸引することで、回収用ウェル61中に所望の細胞を回収することができる。

    (実施例16)
    実施例6から実施例11の細胞アレイの代わりに、実施例12から実施例13の細胞アレイを使用する以外は、実施例15と同様にして、該細胞アレイの各微細孔ごとに、細胞や反応液等を回収することができる。

    (実施例17)
    実施例14の細胞アレイを、実施例6に示すものと同様の基板固定用器具に装着する。 標識された抗CD4抗体試薬(COULTER CLONE T4−FITC、ベックマン・コールター株式会社)を血清加PBS(−)緩衝液で60倍希釈した抗体溶液で細胞アレイの上面を満たし、前記の基板固定用器具を用いて下面側より緩やかに吸引することにより、該懸濁液を図11の微細孔30中に導入する。 細胞アレイの上面に残留する抗体溶液をピペッティングで除去し、25℃、暗所で30分間反応させる。 次に、PBS(−)緩衝液で細胞アレイ用構造体の上面を満たし、緩やかに吸引することにより、該緩衝液を微細孔30中に導入する。 導入した緩衝液をそのまま排出することで、捕捉された細胞の洗浄をおこなう。 次に、溶血剤(OptiLyse C、ベックマン・コールター株式会社)で細胞アレイの上面を満たし、前記の基板固定用器具を用いて下面側より緩やかに吸引することにより、該懸濁液を図11の微細孔30中に導入する。 細胞アレイの上面に残留する溶血剤をピペッティングで除去し、25℃、暗所で30分間反応させたのち、PBS(−)緩衝液で細胞アレイ用構造体の上面を満たし、緩やかに吸引することにより、該緩衝液を微細孔30中に導入する。 25℃、暗所で15分間放置したのち、導入した緩衝液をそのまま排出する。

    次に、細胞アレイを前記の基板固定用器具から取り外し、蛍光顕微鏡(励起波長490nm、蛍光波長520〜540nm)で各微細孔の蛍光を観察することにより、細胞表面マーカーCD4を提示した細胞を判別する。 蛍光を発する細胞が16個の細胞のうち4個となれば、これら4個の細胞がCD4陽性であることがわかる。

    次に、実施例15に記載と同様の基板固定器具に細胞アレイを装着する。 蛍光が観察された微細孔中の細胞を回収するため、細胞アレイ上面をPBS(−)緩衝液で満たし、該当する微細孔の不均一電場発生用電極の通電を止め、緩やかに吸引することで、回収用ウェル中に所望の細胞を回収することができる。

    本発明の細胞アレイ用構造体の一例の斜視図である。

    本発明の細胞アレイ用構造体の一例の断面図である。

    本発明の細胞アレイ用構造体の一例の断面図である。

    不均一な電場を発生させるための電極の一例の概略図である。

    実施例1の細胞アレイ用構造体の模式的な斜視図である。

    実施例1の細胞アレイ用構造体の断面図である。

    実施例1の細胞アレイ用構造体の製造に用いる第一の構造体の平面図である。

    実施例1の細胞アレイ用構造体の製造に用いる第二の構造体の平面図である。

    実施例1の細胞アレイ用構造体を製造する手順を説明するための断面図である。

    実施例5の細胞アレイ用構造体の模式的な斜視図である。

    実施例5の細胞アレイ用構造体の断面図である。

    実施例5の細胞アレイ用構造体の製造に用いる第一の構造体の平面図である。

    実施例5の細胞アレイ用構造体の製造に用いる第二の構造体の平面図である。

    実施例5の細胞アレイ用構造体を製造する手順を説明するための断面図である。

    実施例1の細胞アレイ用構造体の模式的な斜視図である。

    実施例6の細胞アレイの製造方法を説明するための斜視図である。

    実施例6の細胞アレイの製造方法を説明するための断面図である。

    実施例6の細胞アレイの製造方法を説明するための断面図である。

    実施例6の細胞アレイの断面図である。

    実施例15の細胞アレイ用構造体の使用方法を説明するための斜視図である。

    実施例15の細胞アレイ用構造体の使用方法を説明するための断面図である。

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