Nucleic acid ligand diagnostic biochip

申请号 JP2009010592 申请日 2009-01-21 公开(公告)号 JP2009159965A 公开(公告)日 2009-07-23
申请人 Somalogic Inc; ソマロジック・インコーポレーテッドSomaLogic, Inc.; 发明人 GOLD LARRY; DROLET DANIEL; ZICHI DOMINIC A; JAYASENA SUMEDHA; CREIGHTON STEVE; GILL STANLEY;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To provide a biochip forming nucleic acid ligands on diversified target molecules and enabling these ligands to be used as a diagnostic tool. SOLUTION: The nucleic acid ligand "biochip" is provided, comprising a solid support to which one or more specific nucleic acid ligands is (are) attached in a spatially defined manner. Each of the nucleic acid ligands binds specifically to a particular target molecule contained within a test mixture, such as a bodily fluid. The target molecules include proteins (cellular, viral, bacterial, etc.) hormones, saccharides, metabolic byproducts, cofactors and intermediates thereof, drugs, and toxins. Bringing the test mixture into contact with the biochip leads to the binding of a target molecule to its cognate nucleic acid ligand. Binding of target to the nucleic acid ligand results in a detectable change at each specific location on the biochip. The location of the change reveals the kind of detected target molecule, and the magnitude of the change indicates the magnitude of it is present. COPYRIGHT: (C)2009,JPO&INPIT
权利要求
  • 被験混合物中の1以上のターゲット分子を検出するためのバイオチップであって、固体支持体を含み、この支持体が空間的に定められた複数のアドレスを含み、各アドレスに単一種の核酸リガンドの少なくとも1コピーが付着しており、核酸リガンド種それぞれが被験混合物に含有される疑いのあるターゲット分子の1つに対し特異的親和性をもち、核酸リガンド種それぞれが非ワトソン−クリック相互作用によりターゲット分子に結合しているか、または結合しうる、バイオチップ。
  • 空間的に定められた複数のアドレスで固体支持体と結合した核酸リガンドを含むバイオチップであって、空間的に定められたアドレスのそれぞれがターゲット分子に対し特異的親和性をもつ核酸リガンドを含み、空間的に定められたアドレスのそれぞれにおける複数の核酸リガンドのそれぞれが非ワトソン−クリック相互作用によりターゲット分子に結合しうるか、または結合している、バイオチップ。
  • 核酸リガンド(単数または複数)がRNAである請求項1または2に記載のバイオチップ。
  • 核酸リガンド(単数または複数)がDNAである請求項1または2記載のバイオチップ。
  • 核酸リガンド(単数または複数)が1本鎖である請求項1〜4のいずれかに記載のバイオチップ。
  • 核酸リガンド(単数または複数)が2本鎖である請求項1〜4のいずれかに記載のバイオチップ。
  • 核酸リガンド(単数または複数)が少なくとも1つの化学修飾をもつ請求項1〜6のいずれかに記載のバイオチップ。
  • 少なくとも1つの化学修飾がリボースの位置、リン酸の位置および塩基の位置から独立して選択される1以上の位置における化学的置換である請求項7に記載のバイオチップ。
  • 少なくとも1つの化学修飾が2'−位糖修飾、2'−アミノ(2'−NH 2 )、2'−フルオロ(2'−F)、2'−O−メチル(2'−OMe)、5−位ピリミジン修飾、8−位プリン修飾、シトシン環外アミンでの修飾、5−ブロモ−ウラシルの置換、主鎖の修飾、メチル化、3'キャップおよび5'キャップから独立して選択される請求項7に記載のバイオチップ。
  • 核酸リガンド(単数または複数)がターゲット分子と結合および/または架橋しうる光反応基を含む請求項1〜9のいずれかに記載のバイオチップ。
  • 固体支持体が平板状または球状である請求項1〜10のいずれかに記載のバイオチップ。
  • 固体支持体が以下のものから選択される請求項1〜11のいずれかに記載のバイオチップ:
    (a)ラングミュア−ブロジェット膜;
    (b)機能性ガラス;
    (c)ゲルマニウム;
    (d)シリコン;
    (e)PTFE;
    (f)ポリスチレン;
    (g)ヒ化ガリウム;
    (h)金;および(i)銀。
  • バイオチップの製造方法であって、
    I. 下記の方法でターゲットに対する核酸リガンドを同定し:
    (a)候補となる核酸配列混合物を調製する;
    (b)候補核酸混合物を生物学的溶液と接触させ、その際、生物学的溶液中に含有されるターゲット分子に対する親和性が候補混合物と比較して高い核酸は、候補混合物の残りのものから分離することができ、そしてそれぞれの核酸が非ワトソン−クリック相互作用によりそれぞれのターゲット分子に結合する;
    (c)親和性が高い核酸を、候補混合物の残りのものから分離する;
    (d)親和性が高い核酸を増幅して、ターゲット分子への結合の親和性および特異性が相対的に高い核酸配列を富化した核酸混合物を得て、これによってターゲット分子の核酸リガンドが同定される;
    (e)核酸リガンドが生物学的溶液中に含有されるターゲット分子に対し希望する親和性をもつまで、工程b)、c)およびd)を繰り返す;
    II. これらの核酸リガンドを固体支持体上の空間的に区別された位置に付着させることを含む方法。
  • 医学的診断または予後を可能にする方法であって、
    (a)個体から得た被検混合物中の1以上のターゲット分子を検出しうるバイオチップであって、固体支持体を含み、この固体支持体が1以上の空間的に定められたアドレスを含み、各アドレスに単一種の核酸リガンドの少なくとも1コピーが付着しており、核酸リガンド種それぞれが1以上のターゲット分子のうちの1つに対し特異的親和性をもち、核酸リガンド種それぞれが非ワトソン−クリック相互作用によりターゲット分子に結合しうる、バイオチップを調製する;
    (b)被検混合物を調製する;
    (c)前記バイオチップを被検混合物とin vitroで接触させる;
    (d)1以上の空間的に定められたアドレスのそれぞれにおいて、ターゲット分子のレベルを検出する;
    (e)ターゲット分子のレベルについての個人の結合パターンを判定する;そして(f)結合パターンを1以上の特性(signature)結合パターンと比較する;
    これにより、もしも個人の結合パターンが特定の医学的状態と関連する特性結合パターンと高度に類似しているなら、比較の結果が医学的診断または予後を可能にする方法。
  • 医学的診断または予後を可能にする方法であって、
    (a)空間的に定められた複数のアドレスで固体支持体と結合した核酸リガンドを含むバイオチップを調製し、ここで空間的に定められた複数のアドレスのそれぞれがターゲット分子に対し特異的親和性をもつ核酸リガンドを含み、空間的に定められたアドレスのそれぞれにおける複数の核酸リガンドのそれぞれが非ワトソン−クリック相互作用によりターゲット分子に結合されており、ターゲット分子が個人から得た被検混合物からin vitroで得られたものである;
    (b)複数の空間的に定められたアドレスのそれぞれにおいて、ターゲット分子のレベルを検出する;
    (c)ターゲット分子のレベルについての個人の結合パターンを判定する;そして(d)結合パターンを1以上の特性結合パターンと比較する;
    これにより、もしも個人の結合パターンが特定の医学的状態と関連する特性結合パターンと高度に類似しているなら、比較の結果が医学的診断または予後を可能にする方法。
  • 被験混合物中の1以上のターゲット分子を検出する方法であって、
    (a)バイオチップを調製し、このバイオチップは固体支持体を含み、この固体支持体が空間的に定められた複数のアドレスを含み、各アドレスに単一種の核酸リガンドの少なくとも1コピーが付着しており、核酸リガンド種それぞれが被験混合物に含有される疑いのあるターゲット分子の1つに対し特異的親和性をもち、核酸リガンド種それぞれが非ワトソン−クリック相互作用によりターゲット分子に結合しうるものである;
    (b)バイオチップと被験混合物を接触させ、これによりターゲット分子が定められたアドレスに付着した1以上の核酸リガンド種に結合する;
    (c)1以上のアドレスにおいてバイオチップに結合したターゲット分子それぞれの量を測定する;
    これにより、それらのアドレスに結合したターゲット分子の量が被験混合物中のターゲット分子の濃度を示す方法。
  • 被験混合物中の1以上のターゲット分子を検出する方法であって、
    (a)空間的に定められた複数のアドレスで固体支持体と結合した核酸リガンドを含むバイオチップを調製し、ここで空間的に定められたアドレスのそれぞれがターゲット分子に対し特異的親和性をもつ核酸リガンドを含み、空間的に定められたアドレスのそれぞれにおける複数の核酸リガンドのそれぞれが非ワトソン−クリック相互作用によりターゲット分子に結合されており、そしてターゲット分子が被検混合物から得られたものである;
    (b)空間的に定められた複数のアドレスのそれぞれにおいてターゲット分子の量を測定する;
    これにより、ターゲット分子の量が被験混合物中のターゲット分子の濃度を示す方法。
  • 核酸リガンド(単数または複数)がRNAである請求項13〜17のいずれかに記載の方法。
  • 核酸リガンド(単数または複数)がDNAである請求項13〜17のいずれかに記載の方法。
  • 核酸リガンド(単数または複数)が1本鎖である請求項13〜19のいずれかに記載の方法。
  • 核酸リガンド(単数または複数)が2本鎖である請求項13〜19のいずれかに記載の方法。
  • 核酸リガンド(単数または複数)が少なくとも1つの化学修飾をもつ請求項13〜21のいずれかに記載の方法。
  • 少なくとも1つの化学修飾がリボースの位置、リン酸の位置および塩基の位置から独立して選択される1以上の位置における化学的置換である請求項22に記載の方法。
  • 少なくとも1つの化学修飾が2'−位糖修飾、2'−アミノ(2'−NH 2 )、2'−フルオロ(2'−F)、2'−O−メチル(2'−OMe)、5−位ピリミジン修飾、8−位プリン修飾、シトシン環外アミンでの修飾、5−ブロモ−ウラシルの置換、主鎖の修飾、メチル化、3'キャップおよび5'キャップから独立して選択される請求項22に記載の方法。
  • 核酸リガンド(単数または複数)がターゲット分子と結合および/または架橋しうる光反応基を含む請求項13〜24のいずれかに記載の方法。
  • 固体支持体が平板状または球状である請求項13〜25のいずれかに記載の方法。
  • 固体支持体が以下のものから選択される請求項13〜26のいずれかに記載の方法:
    (a)ラングミュア−ブロジェット膜;
    (b)機能性ガラス;
    (c)ゲルマニウム;
    (d)シリコン;
    (e)PTFE;
    (f)ポリスチレン;
    (g)ヒ化ガリウム;
    (h)金;および(i)銀。
  • 被験混合物中に存在するかもしれないターゲット分子を検出する方法であって、
    a)第1プローブを含み、かつターゲット分子に対し特異的親和性をもつ核酸リガンドと被験混合物とを接触させ、核酸リガンドは非ワトソン−クリック相互作用によりターゲット分子に結合しうるものであり、ここで被験混合物中にターゲット分子が存在するときには核酸リガンド−ターゲット複合体が形成され;
    (b)第2プローブを含む固体支持体の表面と該核酸リガンド−ターゲット複合体とを、第1プローブが第2プローブと相互作用できるように接触させ;
    (c)行程(d)を行う前のいずれかの時点で、該核酸リガンド−ターゲット複合体と検出可能な分子とを接触させ;
    (d)検出可能な分子を検出することによって表面上のターゲット分子を検出する;
    ことを含む方法。
  • 核酸リガンドが1本鎖核酸または2本鎖核酸である請求項28に記載の方法。
  • 核酸リガンドがDNAまたはRNAを含む請求項29に記載の方法。
  • 核酸リガンドが少なくとも1つの化学修飾をもつ請求項30に記載の方法。
  • 少なくとも1つの化学修飾がリボースの位置、デオキシリボースの位置、リン酸の位置および塩基の位置から独立して選択される1以上の位置における化学的置換である請求項31に記載の方法。
  • 少なくとも1つの化学修飾が2'−位糖修飾、2'−アミノ(2'−NH 2 )、2'−フルオロ(2'−F)、2'−O−メチル(2'−OMe)、5−位ピリミジン修飾、8−位プリン修飾、シトシン環外アミンでの修飾、5−ブロモ−ウラシルの置換、5−ブロモデオキシウリジンの置換、5−ブロモデオキシシチジンの置換、主鎖の修飾、メチル化、3'キャップおよび5'キャップから独立して選択される請求項31に記載の方法。
  • 第1プローブが核酸リガンドの5'−末端に含まれる請求項28に記載の方法。
  • 第1プローブが核酸リガンドの3'−末端に含まれる請求項28に記載の方法。
  • ターゲット分子がタンパク質である請求項28に記載の方法。
  • 被験混合物が体液である請求項28に記載の方法。
  • 体液が、血漿、尿、精液、唾液、リンパ液、脳脊髄膜液、羊水、腺液、脳脊髄液、便、組織、および生検試料から選択される請求項37に記載の方法。
  • 第1プローブが第1ヌクレオチド配列を含み、第2プローブが第2ヌクレオチド配列を含み、ここで第1ヌクレオチド配列が第2ヌクレオチド配列と相補的である請求項28に記載の方法。
  • 第1プローブが第2プローブとハイブリダイゼーションによって相互作用する請求項39に記載の方法。
  • 該表面が空間的に定められた複数のアドレスを含み、ここで複数のアドレスのそれぞれがその上に配置された少なくとも1つのプローブを含む請求項28に記載の方法。
  • ターゲット分子の検出が、表面上のアドレスで検出可能な分子を検出することを含む請求項41に記載の方法。
  • 固体支持体がバイオチップである請求項28に記載の方法。
  • 被験混合物中に存在するかもしれないターゲット分子を検出する方法であって、
    a)第1プローブを含み、かつターゲット分子に対し特異的親和性をもつ核酸リガンドと被験混合物とを接触させ、核酸リガンドは非ワトソン−クリック相互作用によりターゲット分子に結合しうるものであり、ここで被験混合物中にターゲット分子が存在するときには核酸リガンド−ターゲット複合体が形成され;
    (b)核酸リガンド−ターゲット複合体を照射し、ここで核酸リガンド−ターゲット複合体が光架橋し;
    (c)第2プローブを含む固体支持体の表面と光架橋した核酸リガンド−ターゲット複合体とを、第1プローブが第2プローブと相互作用できるように接触させ;
    (d)行程(e)を行う前のいずれかの時点で、該光架橋した核酸リガンド−ターゲット複合体と検出可能な分子とを接触させ;
    (e)検出可能な分子を検出することによって表面上のターゲット分子を検出する;
    ことを含む方法。
  • 核酸リガンドが1本鎖核酸または2本鎖核酸である請求項44に記載の方法。
  • 核酸リガンドがDNAまたはRNAを含む請求項45に記載の方法。
  • 核酸リガンドが少なくとも1つの化学修飾をもつ請求項45に記載の方法。
  • 少なくとも1つの化学修飾がリボースの位置、デオキシリボースの位置、リン酸の位置および塩基の位置から独立して選択される1以上の位置における化学的置換である請求項47に記載の方法。
  • 少なくとも1つの化学修飾が2'−位糖修飾、2'−アミノ(2'−NH 2 )、2'−フルオロ(2'−F)、2'−O−メチル(2'−OMe)、5−位ピリミジン修飾、8−位プリン修飾、シトシン環外アミンでの修飾、5−ブロモ−ウラシルの置換、5−ブロモデオキシウリジンの置換、5−ブロモデオキシシチジンの置換、主鎖の修飾、メチル化、3'キャップおよび5'キャップから独立して選択される請求項47に記載の方法。
  • 第1プローブが核酸リガンドの5'−末端に含まれる請求項44に記載の方法。
  • 第1プローブが核酸リガンドの3'−末端に含まれる請求項44に記載の方法。
  • ターゲット分子がタンパク質である請求項44に記載の方法。
  • 被験混合物が体液である請求項44に記載の方法。
  • 体液が、血漿、尿、精液、唾液、リンパ液、脳脊髄膜液、羊水、腺液、脳脊髄液、便、組織、および生検試料から選択される請求項53に記載の方法。
  • 第1プローブが第1ヌクレオチド配列を含み、第2プローブが第2ヌクレオチド配列を含み、ここで第1ヌクレオチド配列が第2ヌクレオチド配列と相補的である請求項44に記載の方法。
  • 第1プローブが第2プローブとハイブリダイゼーションによって相互作用する請求項55に記載の方法。
  • 該表面が空間的に定められた複数のアドレスを含み、ここで複数のアドレスのそれぞれがその上に配置された少なくとも1つのプローブを含む請求項44に記載の方法。
  • ターゲット分子の検出が、表面上のアドレスで検出可能な分子を検出することを含む請求項57に記載の方法。
  • 固体支持体がバイオチップである請求項44に記載の方法。
  • 说明书全文

    発明の詳細な説明

    発明の分野 本発明は、被験溶液中のターゲット分子、特に体液中に含有される医学的関連のある分子の検出方法に関する。 本明細書に記載する方法は、固体支持体の空間的に区別された位置に付着させた特異的核酸リガンドを利用する。 本発明は、核酸リガンドに対するターゲット分子の結合を検出する方法、および核酸リガンドのアレイを医療診断用として使用する方法を提供する。

    発明の背景 ターゲット分子への特異的結合性の高い核酸分子をインビトロ進化させる方法が開発された。 SELEX(指数的富化によるリガンドの系統的進化、Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment)法と呼ばれるこの方法は、以下に記載されている:米国特許出願第07/536,428号、表題"指数的富化によるリガンドの系統的進化"、現在は放棄;米国特許出願第07/714,131号、1991年6月10日出願、表題"核酸リガンド"、現在は米国特許第5,475,096号;米国特許出願第07/931,473号、1992年8月17日出願、表題"核酸リガンドの同定方法"、現在は米国特許第5,270,163号(国際特許出願公開第WO91/19813号も参照);これらをそれぞれ本明細書に援用する。 本明細書にSELEX特許出願として総称するこれらの出願それぞれに、任意の目的ターゲット分子に対する核酸リガンドを製造するための基本的に新規な方法が記載されている。

    SELEX法は、混合物からの候補オリゴヌクレオチドの選択、ならびに同じ一般的選択方式を用いて、結合、分離および増幅の段階的反復を行い、目的とする実質的にいかなる基準の結合親和性および選択性をも達成するものである。 SELEX法は、好ましくはランダム配列のセグメントを含む核酸混合物から出発し、混合物を結合のために好ましい条件下でターゲットと接触させ、結合していない核酸をターゲット分子に特異的に結合した核酸から分離し、核酸−ターゲット複合体を解離させ、核酸−ターゲット複合体から解離した核酸を増幅してリガンドに富む核酸混合物を得る工程を伴い、次いで結合、分離、解離および増幅の各工程を任意のサイクル数反復して、ターゲット分子に対し特異性の高い高親和性核酸リガンドを得る。

    SELEX法には、リガンドに対する改善された特性、たとえば改善されたインビボ安定性または改善されたデリバリー特性を付与する修飾ヌクレオチドを含有する高親和性核酸リガンドの同定も包含される。 そのような修飾の例には、リボースおよび/またはホスフェートおよび/または塩基の位置における化学的置換が含まれる。 SELEX法により同定した修飾ヌクレオチドを含有する核酸リガンドは、米国特許出願第08/117,991号、1993年9月8日出願、表題"修飾ヌクレオチドを含有する高親和性核酸リガンド"に記載されている。 これには、ピリミジンの5−位と2'−位が化学的に修飾されたヌクレオチド誘導体を含有するオリゴヌクレオチドが記載されている。 前掲の米国特許出願第08/134,028号には、2'−アミノ(2'−NH 2 )、2'−フルオロ(2'−F)、および/または2'−O−メチル(2'−OMe)で修飾された1以上のヌクレオチドを含有する高特異性核酸リガンドが記載されている。 米国特許出願第08/264,029号、1994年6月22日出願、表題"分子内求核置換により既知および新規2'−修飾ヌクレオシドを製造するための新規方法"には、種々の2'−修飾ピリミジンを含有するオリゴヌクレオチドが記載されている。

    多様なターゲット分子に対し核酸リガンドを形成しうる優れた可能性があるので、それらのリガンドを診断の道具として利用する方法を得ることが望ましいであろう。 特に、ミクロ加工した固体支持体("バイオチップ")に多数の異なる核酸リガンドを付着させ、次いでこれらのリガンドに対する体液中のターゲット分子の結合をアッセイするのが望ましいであろう。 本出願は、そのような方法を提供する。

    発明の概要 本発明においては、診断および予後のための核酸リガンドを入手し、これらのリガンドをバイオチップに付着させ、そしてバイオチップに付着したこれらの核酸リガンドに対する体液中ターゲット分子の結合を検出する方法を提供する。 本発明の1態様においては、ある疾病の診断または予後となることが分かっている分子に結合する1以上の核酸リガンドを選び、次いでこれらのリガンドをバイオチップに付着させる。 核酸リガンドをバイオチップに付着させるための具体的方法を、後記の"核酸バイオチップの作成"と題する章に記載する。 バイオチップは、(i)単一ターゲット分子に対し選択した核酸リガンド;または、より好ましくは(ii)多数のターゲット分子に対し選択した核酸リガンドを含むことができる。 本発明においては、特定した空間位置における核酸リガンドへのターゲット分子結合レベルを、そのターゲット分子が診断または予後に役立つと知られている疾病を伴うことが分かっている個体からの体液を用い、また健康な個体からの体液を用いて、測定する。 次いで、診断報告を求めている個体からの体液をこのバイオチップによりアッセイし、3組のデータを比較すると、その個体に関する診断または予後情報を得ることができる。

    他の態様においては、バイオチップに付着した特異的核酸リガンドは健康な個体の血漿その他の体液のすべてまたは多数の成分に特異的に結合する。 次いで、健康な個体および種々の医学的状態を伴うと診断された個体について、これらのリガンドがそれらのターゲットに結合するパターンおよびレベルを後記の方法で判定する。 次いで、バイオチップ結合データのコンピューターデータベースを確立し、各疾病について特異な"シグネチャー"を得る。 次いで、予後または診断報告を得たい個体からの体液をこのバイオチップと接触させ、得られた結合パターンを参照データベースと比較する。

    関連の態様においては、付着した核酸リガンドは、特定の疾病を伴うことが分かっている個体からの血漿その他の体液のすべてまたは多数の成分に特異的に結合する。 その疾病を伴う個体について、このバイオチップに対するターゲット分子の結合のパターンおよびレベルが判定されると、このバイオチップを用いて、この疾病を発症するリスクのあることが分かる個体をスクリーニングすることができる。 この態様は、そのターゲット分子が健康な個体の体液中にはみられず、ターゲット自体がまだ同定されていない疾病(たとえば、分子レベルではその原因物質がまだ解明されていないウイルス、細菌または寄生虫感染症)に有用であろう。

    本発明に述べるすべての方法において、それぞれの核酸リガンドのいずれが結合したかを知る必要はない。 前2つの態様が特に好ましい。 それらによれば、現在はアッセイ法が知られていない疾病、および従来の診断法が顕性疾病症状の発現に依存している疾病の早期診断が可能だからである。 次いで関連ターゲット分子を結合した核酸リガンドを同定し、これによりそれらのターゲット分子を同定することができるであろう。 これらの態様は疾病の研究を大幅に促進し、管理された診断および薬物開発計画に使用できる多数の新規ターゲット分子を提供するであろう。 さらに、バイオチップ上で同定されたこれらのターゲット分子に結合する核酸リガンド自体を療法薬として使用できる可能性がある。

    最も好ましい態様においては、バイオチップには前記2態様に記載した両タイプの核酸リガンドが含まれる。 そのようなバイオチップは、診断または予後基準が以下のものである疾病を検出または予測できるであろう:(i)体液中に普通にみられる分子(1以上)の濃度の変化;および/または(ii)健康な個体の体液中に普通はみられない分子(たとえばウイルスタンパク質)の存在。 図1にそのようなバイオチップの使用を示す。 分かりやすくするために、簡単な4×4アレイを図示する。 典型的な態様には100×100以上のアレイが用いられるであろう。

    発明の詳細な説明内容I. 用語解説II. バイオチップに用いる核酸リガンドの入手III. 核酸リガンドバイオチップの作成IV. 蛍光法を用いる核酸リガンドへのターゲット分子結合の検出 A. 一般検出方法 B. 核酸リガンドに対し相補的な配列をもつオリゴヌクレオチドを用いる検出 C. ターゲット分子結合の検出を容易にするための、核酸リガンドへの小分子結合部位の取込み D. ハイブリダイゼーションカスケードによる検出 E. 分光分析により検出できる核酸リガンドへのターゲット分子の直接結合 F. ターゲット結合に伴う二重らせん性の変化の検出 G. インターフェロメトリーの使用による検出 H. 共有結合したターゲット分子の検出V. 蛍光を用いない方法によるターゲット分子結合の検出 A. 化学フィールド効果トランジスター(Chemical Field Effect Transistor)
    B. 表面プラズモン共鳴による検出 C. 質量分析を用いる検出 D. 原子顕微鏡検査(AFM)および走査型トンネル顕微鏡検査(STM)による検出VI. 実施例I. 用語解説
    以下の用語は、本明細書中で用いる場合下記の意味をもつものとする:
    1. "SELEX"法は、前記SELEX特許出願に詳述されるように、目的とする様式でターゲットと相互作用する(たとえばタンパク質に結合する)核酸リガンドを選択し、それらの選択された核酸を増幅させることを意味する。 選択/増幅の工程を反復サイクリングすることにより、きわめて多数の核酸を含有するプールから、ターゲットと最も強く相互作用する1または少数の核酸を選択できる。 選定した目標が達成されるまで、選択/増幅操作のサイクリングを続ける。

    2. "SELEXターゲット"または"ターゲット分子"または"ターゲット"は、本明細書において、予め定めた目的様式で核酸が作用しうる任意の化合物を意味する。 SELEXターゲット分子は、タンパク質、ペプチド、核酸、炭化物、脂質、多糖類、糖タンパク質、ホルモン、受容体、抗原抗体、ウイルス、病原体、毒性物質、基質、代謝産物、遷移状態の類似体、コファクター、阻害物質、薬物、色素、栄養素、成長因子、細胞、組織などであってよく、制限はない。 実質的にすべての化学的または生物学的エフェクターが適切なSELEXターゲットである。 任意の大きさの分子がSELEXターゲットとなりうる。 ターゲットは、ターゲットと核酸の相互作用の可能性を高めるために、ある種の方法で修飾されてもよい。

    3. "組織ターゲット"または"組織"は、本明細書において、あるサブセットの前記SELEXターゲットを意味する。 この定義によれば、組織は不均質環境中の高分子である。 本明細書中で用いる組織とは、単一細胞タイプ、細胞タイプの集まり、細胞の凝集体、または高分子の凝集体を意味する。 これは、より単純な、一般に単離された可溶性分子であるSELEXターゲット(たとえばタンパク質)とは異なる。 好ましい態様において、組織はより単純なSELEXターゲットより数桁大きな不溶性高分子である。 組織は、多数の高分子から構成され、各高分子が多数の潜在エピトープをもつ、複雑なターゲットである。 多数のエピトープを含む種々の高分子は、タンパク質、脂質、炭水化物など、またはその組合わせであってよい。 組織は一般に構造および組成の両方の点で流動性または固定された、高分子の物理的アレイである。 細胞外マトリックスは構造および組成の両方の点でより固定された組成の例であり、一方、膜二重層は構造および組成がより流動性である。 組織は一般に可溶性でなく、固相を維持し、したがって分離は比較的容易に行うことができる。 組織には、通常は特定の種類の細胞がそれらの細胞間物質、すなわちある器官(たとえば腎組織、脳組織)の全体的細胞構造物を表すのに一般に用いられる構造物質の1つを形成する物質と共に凝集したものが含まれるが、これらに限定されない。 4つの一般的組織クラスは、上皮組織、結合組織、神経組織および筋肉組織である。

    この定義に含まれる組織の例には、高分子の不均質凝集体、たとえば無細胞性のフィブリンクロット;細胞の均質または不均質凝集体;特定の機能をもつ細胞を含有する高次構造体、たとえば器官、腫瘍、リンパ節、動脈など;および個々の細胞が含まれるが、これらに限定されない。 組織または細胞は、それらの自然環境内にあってもよく、単離されていてもよく、または組織培養されていてもよい。 組織は無傷でもよく、修飾されていてもよい。 修飾には多数の変化、たとえば形質転換、トランスフェクション、活性化、および下位構造体(たとえば細胞膜、細胞核、細胞小器官など)の単離などが含まれる。

    組織、細胞または細胞下構造体は、原核細胞および真核細胞から得ることができる。 これにはヒト、動物、植物、細菌、真菌およびウイルス構造体が含まれる。

    4. "核酸"は、一本鎖または二本鎖のDNA、RNA、およびその任意の化学的修飾体を意味する。 修飾には、付加的な電荷、分極率、水素結合性、静電相互作用、およびフラックス性(fluxionality)を個々の核酸塩基または核酸全体に取り込ませる他の化学基を与えるものが含まれるが、これらに限定されない。 そのような修飾には、修飾された塩基、たとえば2'−位糖修飾、5−位ピリミジン修飾、8−位プリン修飾、シトシン環外アミンの修飾、5−ブロモ−ウラシルの置換;主鎖の修飾、メチル化、異例な塩基対合組合わせ、たとえばイソ塩基であるイソシチジンおよびイソグアニジンなどが含まれるが、これらに限定されない。 修飾には3'および5'修飾、たとえばキャッピングも含まれる。 各回の増幅後に行われる修飾も、本発明に適合する。 増幅後修飾は、各回の増幅後に可逆的または不可逆的に付加することができる。 実質的にすべての核酸修飾が本発明に包含される。

    5. "被験核酸混合物"または"候補核酸混合物"は、本明細書において、異なるランダム配列の核酸の混合物を意味する。 "被験核酸混合物"の供給源は、天然核酸、もしくはそのフラグメント、化学的に合成した核酸、酵素により合成した核酸、またはこれらの方法の組合わせにより製造したものであってよい。 好ましい態様において、増幅プロセスを促進するために、核酸はそれぞれランダム領域を囲む固定配列をもつ。 核酸のランダムセクションの長さは、一般に8〜250ヌクレオチド、好ましくは8〜60ヌクレオチドである。

    6. "核酸リガンド"は、本明細書において、候補核酸混合物から単離され、望ましい様式でターゲットに作用する核酸を意味する。 ターゲットに対する望ましい様式の作用には、ターゲットの結合、触媒作用によるターゲットの変化、ターゲットまたはターゲット機能活性を修飾/変化させるようなターゲットとの反応、自殺阻害物質の場合のようなターゲットへの共有結合、ターゲットと他の分子との反応の促進が含まれるが、これらに限定されない。 すべてではないが、大部分の場合、この望ましい様式は、ターゲットへの結合である。 最も好ましい態様において、核酸リガンドはターゲット分子に対する特異的親和性をもつ非天然核酸配列であり、そのようなターゲット分子は、主としてワトソン−クリック塩基対合または三重らせん結合に依存する機序により核酸リガンドに結合するポリヌクレオチド以外の三次元化学構造体である。 その際、核酸リガンドはターゲット分子が結合する既知の生理学的機能をもつ核酸ではない。 核酸リガンドには、SELEX法で実際に単離した核酸リガンドと実質的に相同な核酸配列が含まれる。 実質的に相同とは、一次配列相同性の程度が70%以上、最も好ましくは80%以上であることを意味する。 これまでに、一次相同性がほとんどまたは全くない種々の核酸リガンドが特定のターゲットに対し実質的に同じターゲット結合能をもつ可能性があることが示された。 これらの理由で、本発明にはSELEX法で同定した核酸リガンドと実質的に同じターゲット結合能をもつ核酸リガンドも含まれる。 実質的に同じターゲット結合能とは、その親和性が本明細書に記載するリガンドの親和性の数桁以内にあることを意味する。 ある配列−−本明細書に詳述するものと実質的に相同−−が実質的に同じターゲット結合能をもつか否かを判定するのは、当業者が容易になしうることである。

    7. "体液"は、本明細書において、生物から得られる高分子混合物を意味する。 これには、血漿、尿、精液、唾液、リンパ液、脳脊髄膜液、羊水、腺液、および脳脊髄液が含まれるが、これらに限定されない。 これには、前記すべてについて、実験により分離した画分も含まれる。 "体液"には、ホモジナイズした固体材料、たとえば便、組織、および生検試料を含有する、溶液または混合物も含まれる。

    8. "被験混合物"は、本明細書において、その少なくとも一部のアイデンティティーを核酸リガンドバイオチップにより検出できる複数の分子を含有する任意の試料を意味する。 これには前記の体液、ならびに環境試験および毒性試験のための任意の試料、たとえば汚染水および工業排水が含まれるが、これらに限定されない。

    9. "バイオチップ"は、分子が共有結合または非共有結合により付着できるミクロ加工した任意の固体表面である。 ラングミュア−ブロジェット膜、機能性ガラス、ゲルマニウム、シリコン、PTFE、ポリスチレン、ヒ化ガリウム、金および銀が含まれるが、これらに限定されない。 アミノ、カルボキシ、チオール、またはヒドロキシなどの官能基をその表面に取り込ませうる、当技術分野で既知の他の任意の材料も使用できる。 これには平坦な表面および球状の表面も含まれる。
    II. バイオチップに用いる核酸リガンドの入手
    多数の特定の目的を達成するために、基本的SELEX法が変更された。 たとえば米国特許出願第08/443,959号、1995年5月18日出願、表題"核酸リガンドの光選択"を支持するために放棄された米国特許出願第08/123,935号、1993年9月17日出願には、ターゲット分子に結合し、および/または光架橋し、および/またはそれを光不活性化しうる光反応性基を含む核酸リガンド選択のための、SELEXをベースとする方法が記載されている。 米国特許出願第08/443,957号、1995年5月18日出願(現在の米国特許第5,580,737号)、表題"テオフィリンとカフェインを識別する高親和性核酸リガンド"を支持するために放棄された米国特許出願第08/134,028号、1993年10月7日出願には、近縁分子を識別できる高特異性核酸リガンドを同定するための、カウンターSELEXと呼ばれる方法が記載されている。 米国特許出願第08/461,069号、1995年6月5日出願(現在の米国特許第5,567,588号)、表題"指数的富化によるリガンドの系統的進化:溶液SELEX"を支持するために放棄された米国特許出願第08/143,564号、1993年10月25日出願には、ターゲット分子に対し高い親和性をもつオリゴヌクレオチドと低い親和性をもつものを高い効率で分離するための、SELEXをベースとする方法が記載されている。 米国特許出願第08/442,062号、1995年5月16日出願、表題"核酸リガンドの調製方法"(現在の米国特許第5,595,877号)には、SELEXを実施した後に改良された核酸リガンドを得る方法が記載されている。 米国特許出願第08/400,440号、1995年3月8日出願(現在の米国特許第5,705,337号)、表題"指数的富化によるリガンドの系統的進化:化学的SELEX"には、リガンドをそのターゲットに共有結合させる方法が記載されている。 本出願に対して特に注目すべき米国特許出願第08/434,425号、1995年5月3日出願(現在の米国特許第5,789,157号)、表題"組織SELEX"には、組織全体に対する核酸リガンドを同定および調製する方法が記載されている。 この場合、組織は単一細胞タイプ、細胞タイプの集まり、細胞凝集体または高分子凝集体と定められている。 候補組織の例には、腫瘍および血漿が含まれる。 これらの方法は、米国特許出願第08/434,425、08/437,667、08/434,001、08/433,585、08/906,955、08/433,124および08/433,126号にも詳述されている。

    SELEX法には、選択したオリゴヌクレオチドと選択した他のオリゴヌクレオチドおよび非オリゴヌクレオチド官能単位を結合させるものが包含される:それぞれ米国特許出願第08/284,063号、1994年8月2日出願、表題"指数的富化によるリガンドの系統的進化:キメラSELEX"(現在の米国特許第5,637,459号)および米国特許出願第08/234,997号、1994年4月28日出願(現在の米国特許第5,683,867号)、表題"指数的富化によるリガンドの系統的進化:ブレンドSELEX"に記載。 これらの出願によれば、広範な一連の形状その他の特性ならびにオリゴヌクレオチドの効率的増幅および複製特性と、他の分子の望ましい特性とを組み合わせることができる。 基本的SELEX法の変更について記載した前記特許出願の全体を本明細書に援用する。 検出基(たとえば蛍光性化学物質、または抗体が認識できるジゴキシゲニンなどの基)、親和性基(たとえばビオチン)、反応性基(たとえば、バイオチップ表面にリガンドを付着させることができる光反応性基または化学基)、または他のSELEXターゲットの結合部位配列を取り込ませることができるいかなるSELEX変法も本発明に使用できる。

    好ましい態様においては、血漿中の他の分子と交差反応する可能性なしに特異的にターゲット分子を結合する核酸リガンドを最終的に得るために、血漿の存在下でSELEX操作を行う。 バイオチップに使用できる核酸リガンドの若干例には下記に対するリガンドが含まれるが、これらに限定されない:HIV−1 tatタンパク質(米国特許第5,527,894および5,637,461号)、HIV−1 gagタンパク質(米国特許第5,726,017号)、HIV−1インテグラーゼ(米国特許第5,587,468号)、HIV−1ヌクレオキャプシド成分(米国特許第5,654,151および5,635,615号)、HIV−1逆転写酵素(米国特許第5,496,938および5,503,978号)、トロンビン(米国特許第5,476,766および5,543,293号)、塩基性線維芽細胞増殖因子(米国特許第5,459,015および5,639,868号)、血管内皮細胞増殖因子(米国特許第5,811,533号)、インスリン受容体抗体(米国特許出願第08/248,632号、現在は放棄)、タキキニンサブスタンスP(米国特許第5,648,214および5,637,682号)、免疫グロブリンE(米国特許第5,629,155および5,686,592号)、分泌性ホスホリパーゼA 2 (米国特許第5,622,828号)、TGFβ(米国特許第5,731,144および5,731,424号)、血小板由来増殖因子(米国特許第5,668,264および5,723,594号、ならびに国際特許出願公開第WO96/38579号)、ヒト化細胞増殖因子(国際特許出願公開第WO96/38579号、米国特許第5,846,713号)、絨毛性性腺刺激ホルモン(米国特許第5,837,456および5,849,890号)、レクチン(米国特許第5,780,228号、ならびに米国特許出願第08/477,829および08/472,256号)、サイトカイン(米国特許出願第08/477,527および08/481,710号)、ループス抗体(米国特許出願第08/520,932号、現在は放棄)、および補体系タンパク質(米国特許出願第08/595,335号、現在は放棄)。

    SELEX特許出願に記載されるように、定常配列部とランダム配列部を含む核酸リガンドを形成することができる。 特に好ましい態様においては、予め定めた位置に共通短鎖配列(配列A)をもつ核酸リガンドを合成する。 次いで最初の候補混合物を、各リガンド上の共通短鎖配列に対し相補的な配列の固定化核酸(配列A')を含む固体支持体(好ましくはカラム)と接触させる。 その際、リガンドのプールは、AとA'間の相補的塩基対合によりカラムに結合するであろう。 次いでターゲット分子(1以上)を含有する混合物をカラムに通し、カラムから置換されたリガンドを採集する。 これらのリガンドの置換は、ターゲット分子の結合により、共通短鎖配列がもはやその相補配列に結合できないようにリガンドのコンホメーションが変化したことを示す。 関連する態様において、最初の候補核酸リガンド混合物を溶液相でターゲット分子と接触させ、結合を行わせる。 次いで核酸リガンドを上記のカラムと接触させる。 配列Aがカラム結合配列A'にハイブリダイズできないような状態でターゲットを結合している核酸リガンドはカラムを通過し、採集できるであろう。 これら2態様で得た核酸リガンドを、後記の"蛍光法を用いる核酸リガンドへのターゲット分子結合の検出"と題する章に詳述するバイオチップ中に使用できる。

    本発明の最も有効な態様の1つは、きわめて多数の核酸リガンドを同定しうることであり、これに対応して生物学的試料中の多数のターゲットが認識される。 本発明の多くの態様において、溶液または混合物中の同定できるターゲット数が多いほど良い。 SELEX法は、核酸リガンドがどの分子ターゲットに結合するかを知らなくても核酸リガンドを選択できる。 診断および予後のためには、ターゲットの存在パターンがある状態を指示するものであれば、具体的なターゲットはほとんど関係ない。 この方法によれば、関連がないと思われる多数のターゲットの存在が、ある状態の診断または予後に役立つと判定される可能性がある。 本発明によれば、検査員はその生物学的試料中のどのターゲットを検出すべきかを判定する必要がない。 SELEXは複雑な試料中のきわめて多数のエピトープに対するリガンドを同時に同定できるので、どのターゲットが重要であるかという従来の知識に依存しない新規な診断方法を採用できる。

    したがって本発明の1態様において、バイオチップは不確実なターゲットに対する、実に数千もの核酸リガンドを含むことができる。 他の態様においては、採用するSELEXの性質に基づき、付着した核酸リガンドそれぞれに対するターゲットは予め決定されてもよく、または核酸リガンドを同定した後に決定されてもよい。
    III. 核酸リガンドバイオチップの作成
    核酸を固定化したバイオチップの作成は当技術分野で周知である。 バイオチップは、ラングミュア−ブロジェット膜、機能性ガラス、ゲルマニウム、シリコン、PTFE、ポリスチレン、ヒ化ガリウム、金、銀、メンブラン、ナイロン、PVP、または官能基(たとえばアミノ、カルボキシ、ディールス−アルダー反応体、チオールまたはヒドロキシ)をその表面に取り込むことができる当技術分野で既知の他のいかなる材料であってよい。 好ましくは、次いでこれらの基を架橋剤に共有結合させると、これによりその後の核酸リガンドの付着およびターゲット分子との相互作用がバイオチップから妨害を受けずに溶液中で行われる。 代表的な架橋基にはエチレングリコールオリゴマー、ジアミン、およびアミノ酸が含まれる。 核酸リガンドをバイオチップに固定化するのに適した任意の手法を本発明に使用できる。

    1態様においては、結合剤上の光反応性保護基を用いるフォトリソグラフィーにより、1以上の核酸リガンドを支持体に結合させる。 そのような手法がマック・ガルらの米国特許第5,412,087号に開示されている。 光化学的に除去できる保護基をもつチオールプロピオネートを、バイオチップ表面の官能基に共有結合させる。 次いで適切な波長の光を用いて、予め定めた表面領域を照射すると、チオール基を光脱保護できる。 目的の部位またはアドレスにおいてのみ光脱保護が起きるのを確実にするために、マスクを用いる。 次いで、チオール反応基(たとえばマレイミド)を含む核酸リガンドをこの脱保護した領域に付着させる。 次いで、結合していない核酸リガンドを洗い去り、他の位置において他の核酸リガンドを用いてこの操作を繰り返す。 同様な方法で、アミノ化バイオチップに3'−ヒドロキシル基への結合を介して結合した5'−ニトロベラトリル保護チミジンを用いる(Fodor et al.(1991)Science, 251 :767−773)。 チミジン誘導体を光脱保護すると、ホスホルアミダイト活性化したモノマー(またはオリゴマー)がこの部位に反応できる。 他の方法では、光活性化可能なビオチン誘導体を用い、アビジン結合を空間的に配置する。 アビジンは、1より多いビオチン基を同時に結合できるので、ビオチン結合核酸リガンドをバイオチップに空間的に配置する手段として用いられる(バレットら、米国特許第5,252,743号および国際特許出願第91/07807号)。 原則として、ケージした(caged)結合剤の光脱保護法は、ペアの一方のメンバーが光不安定基で保護できる小分子である任意のリガンド−受容体ペアに使用できる。 そのようなリガンド−受容体ペアリングの他の例には、マンノースとコンカナバリンA、サイクリックAMPと抗−cAMP抗体、およびテトラヒドロ葉酸と葉酸結合性タンパク質が含まれる(米国特許第5,252,743号)。

    他の態様においては、付着のための光活性化工程それぞれで核酸リガンドと接触するバイオチップ領域を空間的に限定する。 これは、核酸リガンドを送り込む流路を含むブロックに支持体を乗せ、各流路によりバイオチップの小領域にのみ核酸リガンドを到達させることにより実施できる。 これにより、核酸リガンドが光活性化していない領域に間違って結合するのが阻止される。 さらにこれは、数種類の異なる核酸リガンドを同時に支持体に付着させるために使用できる。 この態様においては、マスクによりパターン化した照射を行い、その結果バイオチップの幾つかの領域を同時に光活性化することができる。 それぞれの光活性化領域の周囲の区域が前記の流路により隣接領域から隔離されていれば、異なる流路からそれぞれの核酸リガンドを送り込むことにより、異なる核酸リガンドがこれらの光活性化領域へ送達されるであろう(ウィンカーら、米国特許第5,384,261号)。

    前記方法で光活性化される領域は、少なくとも50mm 2程度の小さなものであろう。 可視光線により1cm 2当たり>250,000の結合部位が容易に達成されることが示された;上限は光の回折限界によってのみ決まる(Fodor
    et al. (1991)Science, 251 :767−773)。 したがって、より短い波長の電磁線を用いる光活性化を採用すると、それに応じてより密な結合アレイが形成されるであろう。 バイオチップが入射光線に対し透過性であれば、垂直に積み重ねたバイオチップについて同時にこの操作を行うことができ、バイオチップ作成効率が大幅に高まる。

    あるいは、ある形の鋳型スタンピングが考慮される。 この場合、核酸リガンドの定序アレイを含む型板(おそらく前記に従って加工したもの)を用いて、同じ定序アレイを多数のバイオチップに付着させる。

    他の態様においては、"インクジェット"法で核酸リガンドアレイをバイオチップ上に形成する。 これによれば、電気化学的ディスペンサーにより一定の位置にリガンドを付着させる。 ほぼ1000/cm 2密度のプローブアレイを形成できるインクジェットディスペンサーが、ハイエスらの米国特許第5,658,802号に記載されている。
    IV. 蛍光法を用いる核酸リガンドへのターゲット分子結合の検出
    A. 一般検出方法 1態様においては、バイオチップの表面にある核酸リガンドに結合したタンパク質ターゲット分子を、すべてのタンパク質に非特異的に結合するが、核酸には結合しない化学物質の添加により検出する。 より一般的には、そのような物質は好ましくは核酸上にあるタンパク質に結合する。 タンパク質を非特異的に結合することが知られている任意の蛍光性化学物質が適する。 適切な例には、モレキュラー・プローブ社から入手できる色素ナノレンジ(Nanorange)およびサイトプローブ(Cytoprobe)が含まれる。

    好ましい態様において、固定化したアプタマーに共有(または非共有)結合しているタンパク質の特異的検出は、核酸とタンパク質官能基の反応性の違いを利用して行うことができる。 核酸は強い求核基をもたないのに対し、リシンおよびシステイン側鎖はタンパク質に活性求核基を与える。 リシンは中程度に豊富なアミノ酸であり、大部分のタンパク質の側鎖の4〜6%を構成する。 システインはその豊富さがかなり変動し、しばしば他のシステイン残基とのジスルフィド結合中に封鎖され、より反応しにくくなっている。

    したがって、リシン残基によるタンパク質修飾の化学は十分に開発されている。 リシンと反応する多数の発蛍光団または他のタグ形成剤が開発された。 最も一般的な化学は、リシンとN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、イソチオシアナートとの反応、またはさまざまなアルデヒド反応によるものである。

    他の態様においては、核酸リガンドに結合したターゲット分子をバイオチップ表面でサンドイッチアッセイ法により検出する。 この方法は当業者に周知である。 サンドイッチアッセイ法では、特異的に結合したターゲット分子を認識する抗体、好ましくは核酸リガンドが認識した部位と異なる部位で結合するものを用いる。 そのようなサンドイッチアッセイ法では、抗体を蛍光標識するか、またはすべての免疫グロブリンに結合する蛍光標識プロテインAとバイオチップを接触させることにより、結合抗体そのものを検出することができる。 あるいは、第1(一次)抗体の免疫グロブリンサブタイプに特異的な二次抗体をバイオチップと接触させる。 二次抗体は蛍光標識されていてもよく、またはそれらはレポーター酵素に結合しており、この酵素が検出可能な化合物の産生を触媒してもよい。 サンドイッチアッセイは、検出可能な信号を大幅に増幅することができる:この場合は二次抗体が一次抗体の複数部位に結合できることによる。 当技術分野で既知のサンドイッチアッセイのすべての変法を本発明に使用できる。

    関連のサンドイッチアッセイにおいては、結合したターゲット分子は第2核酸リガンドを用いて検出される;このリガンドは、結合ターゲット上のバイオチップに結合している核酸リガンドが認識するものと異なる部位に結合する。 前章に記載したように、第2核酸リガンドを蛍光標識するか、またはそれをビオチンに結合させ、次いで蛍光標識アビジンもしくはアビジン結合レポーター酵素を第2核酸リガンドに結合させることができる。 あるいは、第1および第2核酸リガンドが後記の"核酸リガンドに対し相補的な配列をもつオリゴヌクレオチドを用いる検出"と題する章に記載するエネルギー移動ペアを形成するように、第1および第2核酸リガンドを適切に標識する。

    他の態様においては、当業者に周知の競合アッセイ法によりターゲット分子の結合を検出する。 バイオチップに結合した核酸リガンドと被験混合物を接触させた後、結合データを求めている各ターゲットを予め定めた量で含有する溶液を添加する。 これらのターゲット分子は、それらを検出できるように、当技術分野で既知の任意の方法で蛍光標識されている。 標識したターゲット分子は、固定化した核酸リガンドへの結合に対し競合する。 平衡が成立すると、各部位に結合した標識分子の量を用いて、元の被験混合物に含有されていたターゲット分子の量を計算する。

    他の態様においては、アプタマーに結合したタンパク質酵素を酵素活性のアッセイにより検出できる。

    B. 核酸リガンドに対し相補的な配列をもつオリゴヌクレオチドを用いる検出 ある好ましい態様においては(図2)、ターゲット分子に対する結合部位に結合した定常配列を含む核酸リガンド(21)を、バイオチップ(22)の特定領域に配置する。 そのような核酸リガンドの合成については前記の"バイオチップに用いる核酸リガンドの入手"と題する章に記載した。 次いでこのバイオチップ結合した核酸リガンドを、定常部に対し相補的な配列をもつオリゴヌクレオチド(23)とハイブリダイズさせる。 このバイオチップを被験混合物と接触させると、ターゲット分子(25)に結合した核酸リガンドからオリゴヌクレオチドが置換される(24)。 他の態様においては(図3)、当技術分野で既知の任意の方法で相補的オリゴヌクレオチド(32)が固定化されたバイオチップ(31)を作成する。 次いで核酸リガンド(33)をバイオチップ上の特定位置に付着させると、それらは塩基対合によりオリゴヌクレオチドと結合する。 次いでバイオチップを被験混合物と接触させる。 ターゲット分子(34)の結合により、核酸リガンドと支持体結合したオリゴヌクレオチドとの塩基対合が撹乱され(35)、こうして核酸リガンドはバイオチップから置換される。

    上記の例では、置換された核酸リガンド(26,36)が蛍光、テトラメチルローダミン、テキサス・レッド、または当技術分野で既知の他の任意の蛍光分子で標識されていると、ターゲット分子結合部位の蛍光強度が低下する。 その際、バイオチップ上の各アドレスにおいて検出される標識レベルは、アッセイされる混合物中のターゲット分子の量と逆に変化するであろう。 あるいは、核酸リガンドとオリゴヌクレオチドはエネルギー移動ペアを構成する。 たとえばペアの一方の分子をテトラメチルローダミンで標識し、他方をフルオレセイン標識する。 フルオレセインが発する緑色光はテトラメチルローダミン基により吸収されるので、そのような複合体のフルオレセインをベースとする蛍光は、青色光を照射すると消光する;この複合体のローダミンをベースとする蛍光は消光しない。 ターゲット分子の結合が起きると、このエネルギー移動ペアが2半分に分裂し、その結果バイオチップのその部位で発光プロフィルが変化する。 テトラメチルローダミン標識分子が置換されると、バイオチップ上のこの部位にフルオレセインをベースとする蛍光が突然現れ、同時に、ローダミンをベースとする蛍光は失われる。 2つの異なる発光プロフィルが同時に変化することにより、各部位のレシオメトリーによるイメージングを行うことができ、これによりターゲット分子結合の高感度測定ができる。 ほぼ調和した励起および発光スペクトルをもつ限りいかなるエネルギー移動ペアもこの態様に使用できることは、当業者には明らかである。

    別態様においては、置換された核酸はアフィニティーペアの一方のメンバー(たとえばビオチン)に結合している。 その際、アフィニティーペアの他方のメンバー(たとえばアビジン)には検出可能な分子を結合させる。 被験混合物をバイオチップに結合させた後、結合した検出可能な分子を添加する。 バイオチップ上の各部位における検出可能な分子の量は、被験混合物中に存在するターゲット分子の量と逆に変化するであろう。 他の態様においては、置換された核酸がビオチン標識されており、蛍光標識アビジンの添加により検出できる;その際、アビジンそのものは、他の蛍光標識されたビオチン結合した化合物に結合する。 置換されたオリゴヌクレオチド上のビオチン基も、アビジン結合したレポーター酵素の結合に利用できる;その際、この酵素は検出可能な化合物を沈着させる反応を触媒する。 あるいは、レポーター酵素は不溶性産物の生成を触媒し、この産物が本来蛍光性であるバイオチップの蛍光を局部的に消光させる。 置換アッセイの他の態様においては、置換されたオリゴヌクレオチドは免疫学的に検出できるプローブ、たとえばジゴキシゲニンで標識されている。 次いで、この置換されたオリゴヌクレオチドに、プローブを特異的に認識する第1組の抗体を結合させる。 次いでこれらの第1抗体に、蛍光標識された、またはレポーター酵素に結合した第2組の抗体を結合させる。 これらの例の多数の変法が当業者に周知である。

    上記例の変法においては、核酸リガンドが前記のような定常部を含まない。 これらの態様では、オリゴヌクレオチドは核酸リガンドの全体または一部に対し相補的な配列をもつ。 したがってそれぞれの核酸リガンドはユニーク配列を含むオリゴヌクレオチドを結合する。 前記のように、ターゲット結合するとオリゴヌクレオチドはバイオチップに配置された核酸リガンドから置換される可能性がある。 あるいは、前記のようにオリゴヌクレオチドをバイオチップ上の特定位置に配置し、これにより次いで核酸リガンドがオリゴヌクレオチドへの相補的塩基対合により特定位置に配置される。 この場合、ターゲット分子が結合すると、前記のように核酸リガンドがバイオチップから置換される。 それぞれの場合、オリゴヌクレオチドおよび/または核酸リガンドを前記のように標識する。

    他の態様においては、核酸リガンドをバイオチップの特定領域に配置する。 被験混合物を接触させた後、下記のいずれかを含有する溶液とバイオチップを接触させる:(i)核酸リガンドの定常部に対し相補的な配列をもつオリゴヌクレオチド;または(ii)それぞれの核酸リガンドの全体または一部に対し相補的な配列をもつオリゴヌクレオチド;このリガンドは先にこの章に記載したように、定常部を含まない。 これらの場合、ターゲットが結合すると、その後のオリゴヌクレオチドの結合が阻害される。 この場合も、オリゴヌクレオチドおよび/または核酸リガンドを先にこの章に記載したように標識して、オリゴヌクレオチドの結合を監視することができる。

    C. ターゲット分子結合の検出を容易にするための、核酸リガンドへの小分子結合部位の取込み 他の態様においては、特定の小分子に対する結合部位を含む核酸のプールを用いてSELEXを実施する。 そのような小分子の例は、カフェイン類似体テオフィリンである。 この分子に対する一本鎖核酸リガンドは、分子の5'末端と3'末端が互いに近接したヘアピンループをもつ二本鎖ステムを形成する。 この構造は、テオフィリンが存在する場合にのみ形成される。 この態様では、ヘアピンループ領域にランダム配列を含むテオフィリンリガンド候補混合物を合成し、次いでこの候補を、テオフィリンが結合している固体支持体(好ましくはカラム)に通する。 候補リガンドはテオフィリンに強固に結合し、カラムに固定化される。 ターゲット分子を含有する混合物をカラムに添加し、溶離したリガンドを採集する。 これにより、リガンドがもはやテオフィリンに結合しない様式でそれらのターゲット分子に結合するリガンドが選択される。 ターゲット分子を結合する構造適応によりテオフィリンを結合する構造が撹乱されるのであるから、そのようなリガンドは置換されるであろう。 リガンドは、SELEX特許出願に記載される標準法で精製される。 次いで、当技術分野で既知の任意の方法でテオフィリン(42)を付着させたバイオチップ(41)を作成する(図4)。 次いで1以上の個々の核酸リガンド種(43)をバイオチップ上の特定位置に付着させ、そこで核酸リガンドはテオフィリンに強固に結合する。 被験混合物とバイオチップを接触させると、コグネイトターゲット分子(45)に結合する核酸リガンドはバイオチップから置換される(44)。 置換は、前記に詳述した任意の手段(46)で検出できる。 この手法は、テオフィリンに類似するヘアピン型構造を形成する任意の核酸リガンド、または追加のランダム配列を含むものとして合成できる任意の核酸リガンドであって、その際、2種類の異なる化合物に、一方の化合物が結合すると他方が置換されるように、互いに排除する様式で結合するものに用いられる。

    関連の態様(図5)においては、特定の小分子、たとえばテオフィリンに対する結合部位およびランダムセグメントを含む核酸リガンドを、前節の記載に従って合成する。 このリガンド(51)はまた、エネルギー移動ペアの両メンバー(52,53)により、小分子の存在下ではこれらの基が互いに近接して蛍光が消光するように標識される。 次いでこれらのリガンドをバイオチップ(54)の特定領域に沈着させ、小分子をバイオチップに添加する。 リガンドは小分子を結合する構造をとり、蛍光が消光する。 次いで標識混合物をバイオチップに添加すると、ターゲット分子(56)が小分子を適切な核酸リガンドから置換する。 ターゲット分子を結合するために、核酸リガンドはコンホメーション変化を行い、これによりエネルギー移動ペアの2半分はもはや互いに隣接しなくなる(57)。 その結果、ターゲット分子が結合した各部位では蛍光プロフィルが変化するであろう。 この態様は、ターゲット分子により小分子が置換された際にリガンドがコンホメーション変化を行う限り、任意の小分子に対する結合部位を含むリガンドについて使用される。

    異なる置換方式では、標識した一本鎖DNA結合性タンパク質が、支持体結合した核酸リガンドから、ターゲット分子に依存して置換されるのを利用する。

    前掲のMcGallらは、多数のプローブを用いて同時に多数のターゲット核酸配列を同定する方法を示唆している。 考慮される方法においては、特定のターゲットに対する第1組の標識プローブを合成する;各プローブはその各プローブにユニークな追加配列を含む。 これらのユニーク配列は、バイオチップに固定化された第2組のオリゴヌクレオチドに対し相補的である。 著者らは、ターゲットと第1のプローブを溶液中で接触させ、形成された複合体を次いでバイオチップに添加することを想定している。 各プローブの追加ユニーク配列領域のため、複合体はバイオチップ上の特定アドレスに、その部位に結合している第2プローブとの相互作用により配置される。 結合した核酸を結合していないものから分離するのに採用できる方法が当技術分野で知られているので、この手法を本発明に適用できる。 具体的には、核酸リガンド種毎に異なり、好ましくは特異的結合相互作用にとって重要な残基から離れている追加配列をもつ核酸リガンドを合成する。 バイオチップには、それぞれの核酸リガンド種のユニーク領域に対し相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドが含まれる。 それぞれの核酸リガンドは、検出可能な基(たとえば発蛍光団)、および/または核酸リガンドを前記のように他の検出可能な基に結合させる手段をも含む。 あるいは前記のように、バイオチップに配置された第2組の核酸および核酸リガンドそのものを、それらがエネルギー移動ペアを形成するように標識してもよい。

    D. 信号増幅ハイブリダイゼーションカスケードによる結合検出 本発明の他の一連の態様は、1組の互いに相補的な核酸を用いるものである。 すべての方法において、核酸リガンドがターゲット分子に結合した際に、核酸リガンドはそれに他の核酸がハイブリダイズしうるようなコンホメーション変化を行う。 ターゲット結合した核酸リガンドにハイブリダイズする核酸も、ハイブリダイゼーション中に同様にそれに他の核酸がハイブリダイズしうるようなコンホメーション変化を行う。 このコンホメーション変化とハイブリダイゼーションの連鎖反応が継続して、バイオチップ上の核酸リガンドがターゲット分子に結合した各部位では次第に大きな分子間ハイブリダイゼーション複合体が形成される。 (i)ターゲット分子への結合に際し、および/または(ii)他の核酸へのハイブリダイゼーションに際し、ハイブリダイゼーションを促進するコンホメーション変化を行う任意の核酸構造体が、この態様に用いるのに適する。 カスケードハイブリダイゼーションの利用は、同一出願人による1997年12月15日出願の"ハイブリダイゼーションカスケードによる蛍光信号増幅システム"と題する出願に記載されており、これを本明細書に援用する。

    ハイブリダイズする核酸を、核酸がハイブリダイゼーション反応に関与していない場合のみ空間的に近接する位置において、蛍光基および消光基で標識する。 したがって、分子間複合体の形成に伴って、バイオチップ上のターゲット分子が核酸リガンドに結合した各部位では次第に大きな蛍光信号が発生するであろう。 この信号を当技術分野で既知の任意の蛍光法で検出できる。

    好ましい態様においては、1組の互いに相補的なステム−ループ核酸を合成する。 ターゲット分子結合部位がループ領域に配置された、ステム−ループ構造をもつ核酸リガンドを設計する。 それぞれの核酸リガンド種を、バイオチップ上の区別された位置に固定化する。 ステム領域は、限定された対合を行って不完全な分子内二重らせん(61)を形成しうる配列AおよびBの2つの部分相補的な"アーム"を含む(図6)。 この核酸リガンドは、ターゲット分子が結合すると、ステム領域が完全に撹乱されるような構造変化を行う(62)。 さらに3組以上の不完全ステム−ループ核酸を同様に合成する。 追加の第1組はバイオチップ結合した核酸リガンドと同じであるが、ループ領域(63)にターゲット分子結合部位を含まない。 後の2組のステム領域はC'/A'(64)およびB'/C(65)として表され、(i)核酸リガンドのステムのアームの一方に完全に結合でき(A'はAと完全に対合し、B'はBと完全に対合する)、(ii)第2組のアームは第3組のアームに完全に結合できる(C'はCと完全に対合する)。 これらの3組は、さらに蛍光基(66)および消光基(67)を、不完全ステム構造が形成された場合にのみそれらが空間的に近接するような位置に含む。 ステム−ループ核酸リガンドを含むバイオチップを被験混合物と接触させると、核酸リガンドのステム領域が撹乱される。 配列AおよびB共に塩基対合に利用できる状態になる。 次いでバイオチップを3組すべての核酸の溶液と接触させる。 その際、これらの核酸のステムのアームは、ターゲット結合反応した核酸リガンドがあれば、それらにハイブリダイズする(68)。 第2および第3組の核酸のステム領域は、核酸リガンドのアームに結合すると、同様に撹乱され、ハイブリダイズしていないアームは次いでそれらの相補配列にハイブリダイズする。 このプロセスは、不完全二重らせんと完全二重らせんの好ましい自由エネルギー差により推進され、溶液相から核酸のいずれかが枯渇するまで継続する。 各ハイブリダイゼーション工程で、他のアーム配列が相補的塩基対合に利用できる状態になり、これにより最終的に分子間二重らせんの多分子複合体が形成される。 各ハイブリダイゼーション工程に伴って、消光基が蛍光基から空間的に分離されると、バイオチップにおいて1つのターゲット分子が1つの核酸リガンドに最初に結合した部位に、高い蛍光信号(69)が発生する。 この態様では、最初の蛍光信号がハイブリダイゼーションカスケードによって高度に増幅される。

    E. 分光分析により検出できる核酸リガンドへのターゲット分子の直接結合 他の態様においては、分光分析により検出できる標識をもつ1以上の核酸リガンドをバイオチップに固定化する。 そのようなリガンドの合成はピットナーらの米国特許第5,641,629号および米国特許第5,650,275号に開示され、両者を本明細書に援用する。 そのようなリガンドの標識は、核酸リガンドがターゲット分子に結合すると、蛍光強度、蛍光偏光または蛍光寿命に検出可能な変化が起きる。 適切な標識には、蛍光標識(たとえばフルオレセイン、テキサス・レッド)、発光標識(たとえばルシフェリン、アクリジニウムエステル)、エネルギー移動ペア(たとえばフルオレセインとテトラメチルローダミン)、および近赤外標識(たとえばジシアニン類、ラヨラ・ブルー(La Jolla Blue)色素)が含まれる。 標識リガンドへのターゲット分子の結合は、蛍光の変化を測定することにより検出される。 これらには、蛍光偏光、蛍光異方性、蛍光強度および蛍光寿命の変化が含まれるが、これらに限定されない。 これらの測定は連続的に、または動的に行われる。 その際、バイオチップ上の相異が検出された位置にはターゲット分子が結合したことが分かり、被験混合物中の各ターゲット分子の定量が可能となる。

    好ましい態様においては、バイオチップに結合させる核酸リガンドを1以上のりん光基で標識する。 これらの基は、少なくともそれらの一部がターゲット分子結合部位内にある状態で、核酸リガンドに取り込まれる。 りん光基は、核酸リガンドへの不適切なターゲット分子の非特異的結合の半減期より予め定めただけ長い発光半減期をもつように、当技術分野で既知のものから選ばれる。 バイオチップをインキュベートする媒質は、りん光を効率的に消光しうる消光剤を予め定めた量で含有する。 ターゲット分子が特異的に核酸リガンドに結合すると、りん光基は消光剤から保護される。 次いでバイオチップを適切な波長の光で照射すると、特異的に結合したターゲット分子を含む核酸リガンドのりん光基はりん光を発光し、したがってバイオチップ上のリガンドに結合した部位に光が検出されるであろう。 結合されていない核酸リガンドのりん光は消光し、したがってバイオチップ上のそのような部位には光が検出されない。 不適切な非コグネイトターゲット分子を結合した核酸リガンドのりん光も消光する。 これらの複合体の形成についての半減期はりん光基の発光半減期よりはるかに短いからである。 すなわち、非特異的複合体の個々のりん光基は、特異的複合体の同じ基より、光子発生前に溶媒中の消光基に出会う可能性が何倍も高い。 特異的核酸リガンド−ターゲット複合体形成の半減期より長い半減期をもつ適切なりん光基はいずれも本発明に使用できる。 励起照射後、りん光の検出が予定した期間だけ遅延すると、そのりん光はバックグラウンド蛍光信号と識別できる。 これら後者の信号は、はるかに短い半減期をもつからである。 真に強固に結合された核酸リガンドのみが消光から保護されるので、この遅延も検出の特異性をさらに高める。 さらに、各照射間でバイオチップを所望により短期間洗浄すると、バイオチップの一連のイメージが得られる;次いでこの得られた一連のイメージを統合する。 特異的結合は照射間で持続し、一方、非特異的信号は持続しないので、これにより特異的信号を非特異的信号からさらに識別できる。

    他の態様においては、りん光基ではなく蛍光基を核酸リガンド上に用いて、上記の節に記載した手法を実施する。

    F. ターゲット結合に伴う二重らせん性の変化の検出 他の態様においては、核酸リガンドそれぞれの二本鎖形成度の変化を監視することにより、ターゲット分子結合を評価する。 ターゲットが結合すると核酸リガンドは、二本鎖領域の形成または伸展など、構造変化を行うことが知られている。 本発明においてこれらの変化は、蛍光性のインターカレーション色素、たとえば臭化エチジウムをバイオチップに添加し、被験混合物の存在下または不存在下でバイオチップ上の各位置の蛍光レベルを測定することにより検出できる。 ターゲット核酸配列へのオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションを測定するための類似法が、ロッカートら(米国特許第5,556,752号)により示唆されている。

    G. インターフェロメトリーの使用による検出 他の態様においては、インターフェロメトリー検知システムを用いてターゲット分子結合を検出する。 適切なシステムがLin et al. (1997)Science, 278 :840−842に記載されている。 核酸リガンドを微孔質バイオチップ表面に付着させる。 この表面を白色光で照射すると、干渉パターンが生じる。 これは多孔質バイオチップ表面の頂部と底から反射する光により生じる。 ターゲット分子と核酸リガンドが相互作用すると、バイオチップ表面の屈折率が局部的に変化し、これにより干渉フリンジパターンの波長が局部的に変化する。 これを、たとえば電荷結合素子カメラで測定できる。

    H. 共有結合したターゲット分子の検出 他の態様においては、1以上の光反応性基(たとえばヨードウリジン)を含む核酸リガンドを合成しうる、当技術分野で既知の方法を用いる。 これらのリガンドはそれらのターゲットに結合し、その際、適切な波長の光で反応性基を光活性化すると、ターゲットに共有結合することができる。

    大部分の好ましい態様において、これらのリガンドは核酸の光活性化により進化し(光SELEX)(米国特許第5,763,177号参照)、ターゲットに結合できる。 光分解すると、リガンドはターゲットに共有結合するようになる。 共有光架橋が加わると、普通は診断に際してみられない二次的特異性が得られる。 結合に加えて共有結合の形成は、化学反応性電子供与アミノ酸が光親和性標識の近くにある場合にのみ、タンパク質とアプタマーの間で起きうる。 この特異性は、架橋性アミノ酸が架橋形成できる配向にある場合、かつその場合にのみ、特異的ターゲットタンパク質に光架橋できる能力に基づいて、アプタマーを選択することにより達成される。 したがってアプタマーは、架橋するように特異的に選択されていないタンパク質には、それが非特異的に結合したとしても架橋はしない。 架橋は共有性が高いので、普通なら親和性をベースとする検出を撹乱する過酷な条件下で架橋複合体を洗浄できるという点でも、特異性を増す。 したがって、過酷な洗浄を利用して検出ノイズを減らし、これにより信号−ノイズ比を高めることができる。

    光反応性アプタマーのアレイを空間的に定められた様式でバイオチップその他の表面に付着させ、次いで被験混合物と接触させる。 チップをそのまま照射してもよく、あるいは照射前に穏やかに洗浄して、結合していないタンパク質を除去してもよい。 実際には、照射により、適正なタンパク質のみが、チップの表面に乗せたマトリックスの特定領域に提示された適正な光活性化できるアプタマーに共有結合する。 アプタマーに共有結合したタンパク質は、先に"一般検出法"と題する章に記載したように、サンドイッチアッセイ、または蛍光もしくは放射性タンパク質色素により検出できる。 共有結合を追加すると、タンパク質にユニークであってアプタマーまたはチップにはユニークでない反応性基を化学的に修飾することにより、タンパク質の検出を行うことができる。 さらに、共有結合によれば、複合体の解離により制限されない多数のタンパク質検出法、たとえば有機溶媒、温度、変性剤そのほか、一般に非共有結合を解離させる検出法を利用できる。

    あるいは、バイオチップ上の共有結合複合体を、核酸リガンドの配列全体または一部に対し相補的なオリゴヌクレオチドと接触させる。 ターゲットに共有結合した核酸リガンドは相補的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズできない。 前記のように、検出を容易にするために相補的オリゴヌクレオチドを当技術分野で既知の任意の方法で標識する。
    V. 蛍光を用いない方法によるターゲット分子結合の検出
    好ましい態様ではターゲット分子結合を測定するために蛍光およびりん光検出法を用いるが、本発明に有用な他の方法が当技術分野で知られている。

    A. 化学フィールド効果トランジスター 化学フィールド効果トランジスター(chemical field effect transistor,CHEM−FET)法は、ターゲット分子がそのリガンドに結合した際に生じる化学的電位の局部的変化を利用する。 この手法では、2つのn−型半導体の間に絶縁性シリカ"ゲート"を配置して、バイオチップを形成する。 ゲートに導電路が形成されて電位差が負荷されると、一方の半導体から他方へ電流が流れる。 そのような導電路は、イオン種がシリカゲートに結合した場合に開く(シェンクら、米国特許第4,238,757号)。 他の方法(ローウェら、米国特許第4,562,157号)では、一方の半導体の区別された領域にリガンドを誘導体形成基の光活性化により結合させる。 次いでこのバイオチップをターゲット分子含有混合物と接触させる。 ターゲット分子がリガンドに結合すると、バイオチップのその位置に正味のイオン損失または利得が生じる。 これらのイオンがこの位置のコンダクタンスを局部的に変化させ、次いでこれがバイオチップのこの領域のドレン電流(drain current)を変化させる。 バイオチップ上の区別された位置で電流ドレンが測定されるようにバイオチップが構成されている場合(マルチゲートCHEM−FET)、ターゲット結合を空間的および定量的に評価できる。 この技術分野の進歩により、この方法をスケールアップして、空間的に区別された数千ものドレン電流の変化を独立して精確に測定できるようになるであろう。

    CHEM−FETを利用して測定できる他の生物電気的変化は、二本鎖DNAにおいて起きる光誘導電子移動である(Murphy et al.(1993)Science, 262 :1025−1029)。 前記のように、核酸リガンドそれぞれの二本鎖形成度はターゲット分子が結合すると変化する可能性がある。 二重らせん度が変化すると、照射されているCHEM−FETバイオチップに局部的なドレン電流の変化が生じる。 ターゲット混合物との接触の前または後にCHEM−FETバイオチップを読み取ると、これらの相異の検出によりターゲット分子結合の部位および程度が分かる。

    B. 表面プラズモン共鳴による検出 好ましい態様においては、ターゲット分子の結合を表面プラズモン共鳴(SPR)により検出する。 この手法では、核酸リガンドをプリズム表面の金または銀皮膜上に固定化する;次いで金属皮膜を適切な液体媒質中でインキュベートする。 したがって、金属皮膜はプリズム−液体界面にある。 プリズムを通して媒質の方へ、臨界角を超えて光を向けると、光の全内部反射が起きる。 この臨界角を超えると、入射光の波長にほぼ等しい距離だけ、媒質中へと短命な(evanescent)波が広がる。 この短命な波は金属皮膜中の自由振動電子(表面プラズモンと呼ばれる)を励起し、それらを共鳴させる。 この過程で、短命な波からエネルギーが電子により吸収され、これにより内部反射光の強度が低下する。 全内部反射(したがって、共鳴)が起きる角度は、金属皮膜に隣接する媒質の屈折率の変化にきわめて敏感である。 ターゲット分子が皮膜表面の核酸リガンドに結合すると、この部位の屈折率が変化し、共鳴を起こすのに要する角度も変化する。 したがって、ターゲット分子の結合を検出するためには、入射光の角度が変化する検出器システムを配置し、反射光の強度を測定する。 反射光の強度が最小であるとき、共鳴が起きる。 その際、被験混合物の存在下で皮膜上の特定部位に共鳴を起こさせるのに要する入射光の角度の変化を測定すると、皮膜表面のどこで結合反応が起きたかについての情報を得ることができる。 BIAcore7と呼ばれるSPR測定装置が、ファルマシア・バイオセンサーズから市販されている。

    C. 質量分析を用いる検出 他の態様においては、核酸リガンド−ターゲット複合体の形成を質量分析により検出する。 バイオチップの表面を、バイオチップ上の生物学的材料をイオン化しうるレーザーにより、空間的に限定して連続的に照射する。 イオン化生成物の質量を質量分析法で検出し、結合していない同じリガンドのイオン化生成物の質量と比較すると、ターゲットの結合している位置が明らかになる。 この手法は当技術分野で、マトリックス吸収/レーザーデソープションイオン化(MALDI)飛行時間質量分析として知られている。 この態様では、先に"共有結合したターゲット分子の検出"と題する章に記載したように、核酸リガンド上に光活性化できる架橋基を用いることにより、核酸リガンドとターゲットを共有結合させることができる。

    D. 原子間力顕微鏡検査(AFM)および走査型トンネル顕微鏡検査(STM)による検出 これらの関連法は、ナノメーターレベルでの表面位相を表現するのに有用な手法として当技術分野で周知である。 したがって、この手法の進歩により、ターゲット分子がバイオチップ上で核酸リガンドに結合した部位を検出するのに適したものとなるであろう。

    原子間力顕微鏡検査(AFM)は非金属プローブを用い、これを目的表面(この場合はバイオチップ)上で走査する。 プローブを表面近くへ移動させ、これによりプローブを表面に結合した物質と電子反発相互作用させる。 反発により、プローブを取り付けた片持ばり(cantilever)のたわみが生じ、このたわみをレーザー−フォトダイオード検出システムにより測定する。 検査する表面を台に取り付け、この台をコンピューターによるたわみ検出システムに接続する。 プローブがたわむと、台が降下し、プローブはその表面についての電子密度の"輪郭地図"を描き出す。 この手法を用いて、緩衝液中の核酸バイオチップに関する標準地図を作成する。 これを、被験混合物と共にインキュベートした核酸バイオチップから得た地図と比較する。 2つの地図の比較により、バイオチップ上のターゲット分子結合部位を検出できる。

    走査型トンネル顕微鏡検査(STM)は、金属プローブを用い、これを目的表面上で走査する。 表面に結合した物質にプローブが近づくと、プローブとその物質の間を電子が"トンネル"することができ、生じる電流を検出することができる。 プローブを表面上で走査し、トンネルが可能となるようにプローブの垂直位置を連続的に変化させる。 これによりAFMとして電子密度地図が得られ、前節に記載したようにこの地図を用いて核酸リガンドバイオチップ上のターゲット分子結合を検出することができる。
    VI. 実施例
    A. 実施例1
    米国特許出願第08/434,425号、1995年5月3日出願、表題"組織SELEX"に記載されるように、U251グリオーマ細胞系に対するSELEX実験により核酸リガンドGB41を単離した。 この場合、核酸リガンドは5'ビオチンをもち、ストレプトアビジンコーティングしたカルボキシメチルデキストランバイオチップ表面(バイオコア(BIOCORE)2000)に固定化される。 GB41またはヌクレオチド配列がスクランブルされたGB41を含有するフローセルに、タンパク質を注入する。 スクランブルされた配列から、核酸リガンドに関する結合特異性の試験結果が得られる。 全長テネイシンに対する、および細菌により発現されたフィブロネクチンタイプIII反復配列(全長テネイシンの質量の12%を構成する)を表すタンパク質に対する、特異的結合を検出した。 これらのタンパク質はスクランブル配列のオリゴヌクレオチドには結合しなかった。 表面での多価相互作用により、全長テネイシン(六量体)が徐々に解離する可能性がある。 実験によりこのタンパク質−核酸リガンド相互作用についての会合定数と解離定数を確立した。 テネイシンのサイズが大きい(1.2ミクロンダルトン)ので会合期(0〜125秒)は直線的であり、このためデキストランマトリックス中へ徐々に拡散する(物質輸送限定された結合)。 この緩徐な拡散(125〜300秒)は、六量体タンパク質とデキストラン結合した核酸リガンドとの間に生じる多価相互作用によるものと思われた。

    B. 実施例2
    NHSおよびアルデヒド試薬を、核酸に対比したそれらとタンパク質の反応性について試験した。 フルオレセイン−NHS(モレキュラー・プローブズ)を、ヒト血清アルブミンまたはアルファ− HS糖タンパク質(2種類の豊富な血漿タンパク質)に5000倍モル過剰に添加した。 42−mer DNAもタンパク質に対し1000倍モル過剰に添加した。 反応を室温でpH8において30分間行わせた。 タンパク質、DNAおよび未反応発蛍光団をゲル電気泳動により分離し、各物質の相対強度を、モレキュラー・ダイナミック・フルオロイマージャー(Molecular Dynamics FluorImager)での走査および定量により測定した。 フルオレセイン−NHSは、DNAとより血清アルブミンとの方が反応性がモル:モル基準で2.1×10 4倍高く、質量基準では反応性が4400倍高かった。 アルファ− HS糖タンパク質は、DNAより反応性がモル基準で8000倍高く、質量基準では反応性が3700倍高かった。

    第一級アミンおよびシアナートと反応して蛍光性ベンゾイソインドール生成物を形成するアルデヒドであるAtto Tag CBQCA(モレキュラー・プローブ)とヒト血清アルブミンの反応について、同様な実験を行った。 この場合、タンパク質はアルブミンと容易に反応したが、DNAとの反応はアルブミンより1000倍過剰のDNAで検出可能であった。 アルブミンはDNAの場合よりこの試薬に対し反応性が少なくとも×10 4倍高いと計算された。

    パターン化した核酸リガンドのアレイの使用を示す。 バイオチップと被験混合物を接触させると、疾病の診断または予測に利用できる結合パターンが得られる。

    検出メカニズムの1つを示す。 この場合、核酸リガンドの全体または一部に対し相補的な配列のオリゴヌクレオチドが、ターゲット分子の結合により核酸リガンドから置換される、

    検出メカニズムの1つを示す。 この場合、核酸リガンドがそれとオリゴヌクレオチドの相互作用によりバイオチップに結合し、このオリゴヌクレオチドはバイオチップに付着しており、核酸リガンドの全体または一部に対し相補的な配列をもつ。

    検出メカニズムの1つを示す。 この場合、小分子がバイオチップの表面に結合しており、核酸リガンドはこの分子の対する結合部位を含む。

    ターゲット分子の検出メカニズムの1つを示す。 この場合、小分子に対する追加の結合部位を含む核酸リガンドをバイオチップに固定化する。

    核酸ハイブリダイゼーションカスケードを用いる検出システムを示す。

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