Surface treatment method of ornaments, decorations and electronic equipment

申请号 JP27783997 申请日 1997-10-09 公开(公告)号 JP3557868B2 公开(公告)日 2004-08-25
申请人 セイコーエプソン株式会社; 发明人 明 内山;
摘要
权利要求
  • TiまたはTi合金の表面に機械加工を施し、
    前記機械加工を施した表面の表面付着物を除去した後、
    前記機械加工の種類に応じて希釈されたガラスコーティング液を、前記表面付着物を除去した表面に付着させたことを特徴とする装飾品の表面処理方法。
  • 前記機械加工は、ホーニング加工、スジ目加工または鏡面加工のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の装飾品の表面処理方法。
  • 前記鏡面加工に使用するガラスコーティング液の希釈率は、前記ホーニング加工および前記スジ目加工に対して使用する希釈率よりも高いことを特徴とする請求項2に記載の装飾品の表面処理方法。
  • 前記ガラスコーティング液の付着後、乾燥することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の装飾品の表面処理方法。
  • 前記ガラスコーティング液の粘度は、150cps(25℃)以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の装飾品の表面処理方法。
  • 前記ガラスコーティング液の粘度は、前記機械的加工の種類がホーニング加工またはスジ目加工の場合、200〜500cps(25℃)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の装飾品の表面処理方法。
  • 前記ガラスコーティング液の粘度は、前記機械的加工の種類が鏡面加工の場合、150〜400cps(25℃)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の装飾品の表面処理方法。
  • 前記ホーニング加工またはスジ目加工の場合の前記ガラスコーティング液の粘度は、前記鏡面加工の場合の前記ガラスコーティング液の粘度より高いことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の装飾品の表面処理方法。
  • 前記乾燥は、異なる乾燥条件で2回以上行われることを特徴とする請求項4ないし8のいずれかに記載の装飾品の表面処理方法。
  • 前記表面付着物を除去する処理は、エッチング処理液による化学研磨、電解研磨または表面洗浄のいずれか1種または2種以上を組み合せて行なわれることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の装飾品の表面処理方法。
  • 前記エッチング処理液は、HF、HNO およびH SO を含む混合液からなることを特徴とする請求項10に記載の装飾品の表面処理方法。
  • 前記エッチング処理液は、HF:1〜10vol%、HNO :15〜40vol%、H SO :30〜60vol%を含む水溶液であることを特徴とする請求項10に記載の装飾品の表面処理方法。
  • 前記エッチング処理液の温度が30〜75℃、前記エッチング処理液による処理時間が5〜60秒であることを特徴とする請求項10ないし12のいずれかに記載の装飾品の表面処理方法。
  • 前記電解研磨に用いられる電解液は、H PO を含むものであることを特徴とする請求項10に記載の装飾品の表面処理方法。
  • 前記電解研磨は、陽極の電流密度を0.5〜10A/cm として行われることを特徴とする請求項14に記載の装飾品の表面処理方法。
  • 電解処理時間が3秒〜2分であることを特徴とする請求項14または15に記載の装飾品の表面処理方法。
  • 前記表面付着物は、Ti酸化物を含むものであることを特徴とする請求項1ないし16のいずれかに記載の装飾品の表面処理方法。
  • 請求項1ないし17のいずれかの方法によって作られたことを特徴とする装飾品。
  • 前記装飾品は、時計外装部品であることを特徴とする請求項18に記載の装飾品。
  • 請求項18または19に記載の装飾品を少なくとも一部に有することを特徴とする電子機器。
  • 前記電子機器は時計であることを特徴とする請求項20に記載の電子機器。
  • 说明书全文

    【0001】
    【発明の属する技術分野】
    本発明は、装飾品の表面処理方法、装飾品および電子機器に係り、特に、TiまたはTi合金の表面に透明な保護層を施す技術に関する。
    【0002】
    【従来の技術】
    従来、実開昭56−74060号公報、特開昭58−96869号公報、特開昭62−263977号公報等に記載されているように、耐食性、耐摩耗性、耐衝撃性等を確保する目的で、アルミニウム等の金属表面に硬質の透明コーティング膜を形成する方法が知られている。 この透明コーティング膜は、種々の有機樹脂や無機物から構成されている。
    【0003】
    このような表面コーティング技術の中で、例えば、腕時計の分野では、金属で構成された外装ケースの表面に、酸化アルミニウムや酸化シリコン等からなる無機質の硬質な透明コーティング層を形成することが従来から行われている。
    【0004】
    腕時計の場合には、予め、ステンレス鋼、黄銅その他の各種金属からなる外装ケースの表面に対し、鏡面研磨、スジ目加工、ホーニング加工等の機械的加工を施す。 そして、その表面に、透明な保護層を形成する。
    【0005】
    【発明が解決しようとする課題】
    ところで、近年、腕時計の外装ケースを構成する金属材料として、軽量、高耐食性、高強度および耐金属アレルギー素材であるTiが注目されている。 しかし、Tiを腕時計の外装ケースに用いた場合には、以下のような問題点がある。
    【0006】
    Ti製外装ケースの表面仕上げとしては、Ti素材の性質上、ホーニング加工(ホーニング仕上げ)が最も多いが、ホーニング加工では、ガラスビーズによりTi表面が叩かれるので、表面層が損傷し、酸化する。 このため、外観が黒っぽい色となり、また、ホーニング加工により表面に微小な凹凸が形成されるので、一旦表面に指紋等が付着すると、それが取れなくなるという問題がある。
    【0007】
    また、Tiは、ビッカース硬度Hvが150以下であり、ステンレス鋼(SUS)のHv200に比べて硬度が低いため、腕時計の場合には、小傷が付き易いという問題がある。
    【0008】
    このため、このようなTi製外装ケースにおいても、表面に上述の透明保護層を形成することが考えられる。 しかしながら、既にホーニング加工工程において黒色化している凹凸表面に保護層形成用のコーティングを施すと、凹凸表面をで濡らした場合と同様に、濡れ現象によってさらに黒色化が進んでしまうという外観上の問題がある。 これは、装飾品としての意味合いが強い時計外装にとっては、高級感が失われるので、大きな欠点となる。
    【0009】
    また、表面にTi酸化物層やその他の異物が存在すると、透明保護層の密着性が低下し、耐衝撃性、耐久性等が低下する。
    【0010】
    そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その目的は、指紋の付着等による汚れや傷付きを防止するとともに、外観品質を向上することができる表面処理方法、装飾品および電子機器を提供することにある。
    【0011】
    【課題を解決するための手段】
    上記目的を達成する本発明は、TiまたはTi合金の表面に機械加工を施し、前記機械加工を施した表面の表面付着物を除去した後、前記機械加工の種類に応じて希釈されたガラスコーティング液を、前記表面付着物を除去した表面に付着させたことを特徴とする装飾品の表面処理方法である。
    この本発明により、傷付きや汚れを防止することができ、また、外観品質を良好とすることができる。 特に、酸化物層のような表面付着物を除去した後、ガラスコーティング液を付着させるので、外観上、白色化され、光沢も得られる。 従って、高級感のある装飾品が得られる。 また、ガラスコーティング液の密着性が高く、耐久性に優れる。
    さらに、コーティング液はガラス成分を含むため、十分な硬度を備え、耐擦傷性に優れた表面を形成することができ、指紋の付着等の汚れや傷付きをより高いレベルで防止することができる。
    また、前記機械加工は、ホーニング加工、スジ目加工または鏡面加工のいずれかであることを特徴とする。
    このような加工を行う場合には、酸化物層等の表面付着物が生じ易いので、外観品質の向上がより顕著となる。 また、これらの加工のうちのいずれを施した場合にも、上記効果が発揮される。
    また、前記鏡面加工に使用するガラスコーティング液の希釈率は、前記ホーニング加工および前記スジ目加工に対して使用する希釈率よりも高いことを特徴とする。
    これにより、前記機械加工に応じて良好な外観品質を得ることができる。
    また、前記ガラスコーティング液の付着後、乾燥することを特徴とする。
    この構成により、ガラスコーティング液の膜質および密着性が向上する。
    また、前記ガラスコーティング液の粘度は、150cps(25℃)以上であることを特徴とする。
    また、前記ガラスコーティング液の粘度は、前記機械的加工の種類がホーニング加工またはスジ目加工の場合、200〜500cps(25℃)であることを特徴とする。
    また、前記ガラスコーティング液の粘度は、前記機械的加工の種類が鏡面加工の場合、150〜400cps(25℃)であることを特徴とする。
    また、前記ホーニング加工またはスジ目加工の場合の前記ガラスコーティング液の粘度は、前記鏡面加工の場合の前記ガラスコーティング液の粘度より高いことを特徴とする。
    これらの構成により、前記機械加工に応じて良好な外観品質を得ることができる。
    また、前記乾燥は、異なる乾燥条件で2回以上行われることを特徴とする。
    この構成により、ガラスコーティング層の膜質および密着性が向上する。
    また、前記表面付着物を除去する処理は、エッチング処理液による化学研磨、電解研磨または表面洗浄のいずれか1種または2種以上を組み合せて行なわれることを特徴とする。
    この構成により、表面付着物、特に異物やTi酸化物層等を効率よく除去することができる。
    また、前記エッチング処理液は、HF、HNO およびH SO を含む混合液からなることを特徴とする。
    この構成により、TiまたはTi合金の表面を荒らすことなく表面の白色化を図ることができる。
    また、前記エッチング処理液は、HF:1〜10vol%、HNO :15〜40vol%、H SO :30〜60vol%を含む水溶液であることを特徴とする。
    この構成により、優れた外観品質の装飾品等を、高い生産性で、安定的に製造することができる。
    また、前記エッチング処理液の温度が30〜75℃、前記エッチング処理液による処理時間が5〜60秒であることを特徴とする。
    この構成により、さらに優れた外観品質が得られ、また、生産性も向上する。
    また、前記電解研磨に用いられる電解液は、H PO を含むものであることを特徴とする。
    この構成により、電解処理後の表面性状を特に良好にすることができる。
    また、前記電解研磨は、陽極の電流密度を0.5〜10A/cm として行われることを特徴とする。
    この構成により、白色度が高く、外観品質の優れた電解研磨を迅速に行うことができる。
    また、電解処理時間が3秒〜2分であることを特徴とする。
    この構成により、生産性を低下することなく、必要かつ十分な電解研磨を行うことができる。
    【0044】
    また、前記表面付着物は、Ti酸化物を含むものであることを特徴とする。
    【0045】
    この構成により、白色化の度合いを高め、外観品質を向上することができる。
    【0046】
    また、本発明は、前記したいずれかの装飾品の表面処理方法によって作られたことを特徴とする装飾品である。
    この本発明により、傷付きや汚れを防止することができ、また、外観品質が良好な、装飾品が提供される。 特に、酸化物層のような表面付着物が除去された状態で、前記機械加工に応じたガラスコーティング層が形成されているので、外観上、白色化され、光沢も得られる。 従って、高級感のある装飾品が得られる。
    【0057】
    また、前記装飾品は、時計外装部品であるのが好ましい。
    【0058】
    時計外装部品は、特に優れた外観品質を要求されるので、上述の効果が得られる本発明を適用するにあたり、その利用価値が高い。
    【0059】
    また、本発明は、前記記載の装飾品を少なくとも一部に有する電子機器として構成することが好ましい。
    【0060】
    ここで、前記電子機器は時計であるのが好ましい。
    【0061】
    【発明の実施の形態】
    以下、本発明に係る実施形態について説明する。 以下に述べる本実施形態は、腕時計(携帯時計)の外装ケースに対して本発明を適用した例である。
    【0062】
    まず、時計外装ケースについて説明する。
    【0063】
    時計外装ケースは、胴(ケース本体)、裏蓋、カバーガラス等の時計外装部品を組み立ててなるものであり、また、カバーガラスの外周に縁(ベゼル)を有するものもある。 これら時計外装部品のうち、例えば、胴、縁の少なくとも一方をTi(純Ti)またはTi合金で構成することができ、このようなTiまたはTi合金製の時計外装部品に本発明が適用される。
    【0064】
    Ti合金は、Tiを主とし、他の種類の1または2以上の金属が含有されたものである。 Tiに対し合金(または金属間化合物)化される金属としては、例えば、Al、V、Mo、W、Fe、Co、Cr、Cu、Ag、Pt、Pd、Zn等のうちの1種または2種以上が挙げられるが、これに限定されるものではない。 また、このような金属の含有量も、Tiの特性を大幅に変化させない限り、特に限定はない。
    【0065】
    腕時計の時計外装部品は、前述したようなTiまたはTi合金を材料として、例えば、プレス成形法、鋳造法、粉末冶金法、ロストワックス法、金属射出成形法(MIM)等により製造される。 特に、プレス成形法によって製造された外装部品は、必要に応じ、適宜切削加工が施される。
    【0066】
    このような時計外装部品の表面には、必要に応じ、機械的加工が施される。 この機械的加工としては、例えば、微細粒子を吹き付けることによるホーニング加工を行う場合と、スジ目加工を行う場合と、バフ研磨、バレル研磨等によって鏡面加工を行う場合とがある。
    【0067】
    Tiは、酸化され易い金属であるため、表面が酸化され、Ti酸化物を主とする酸化物層(変色層)が形成されることがある。 特に、前記機械的加工を施す際には、この酸化物層の形成がなされる。 この酸化物層は、黒色化をもたらし、時計外装部品の外観品質を低下させるので、なるべく、無いほうがよい。
    【0068】
    次に、図1〜図3を参照しつつ、本発明を説明する。
    【0069】
    TiまたはTi合金製の時計外装部品10の表面付近には、前記機械的加工によって、機械的な損傷を受け、またはTiの酸化により生じた酸化物層(損傷酸化物層)11が形成される。 図1は、前記機械的加工、特に、ホーニング加工を施した時計外装部品表面の様子を概念的に示すものである。
    【0070】
    この酸化物層11は、黒色化をもたらすため、これをそのまま残存させておくと、例えガラスコーティング層のような透明保護層12を被覆形成しても、外観に影響を与え、時計外装ケースの高級感が低下する。
    【0071】
    そこで、例えば化学研磨を施すことにより、図2に示すように、表面10aから酸化物層11を除去する。 この化学研磨は、例えば、表面10aをエッチング液に接触させることにより行われる。
    【0072】
    次に、この酸化物層11が除去された表面10a上に、図3に示すように、透明保護層12を形成する。 これにより、本発明の装飾品(時計外装部品)が完成する。
    【0073】
    透明保護層12としては、ガラスコーティング層のようなガラス成分を含む層が好ましい。 これにより、屈折率等に起因する濡れ効果が発揮され、黒色化が防止され、外観を白色化することができ、光沢も高くなる。 また、表面10aに指紋が付着し、その跡により外観を損なうということも防止される。
    【0074】
    なお、ガラスコーティング層に代表される透明保護層12の厚さは、特に限定されないが、0.2〜15μm 程度が好ましく、0.8〜5.0μm 程度がより好ましい。 透明保護層12の厚さが厚すぎると、透明保護層内の内部応が高まり、衝撃を受けたときにクラックが発生し易くなり、また、薄すぎると、指紋付着防止および小傷防止の効果が少なくなる。
    【0075】
    また、透明保護層12の硬度は、特に限定されないが、JIS Z 2244に規定するビッカース硬度(Hv)が180〜700程度であるのが好ましく、300〜500程度であるのがより好ましい。 これにより、優れた耐摩耗性、耐擦傷性が得られる。
    【0076】
    次に、本発明の表面処理方法について説明する。
    【0077】
    <1>表面付着物の除去時計外装部品10の表面10a付近、特に前記機械的加工が施された面に付着した前記酸化物層11やその他汚れ等の異物(これらを総称して「表面付着物」と言う)を除去する。 これにより、それまで表面が黒ずんだ色のものであったとしても、時計外装部品10の素地本来の色が現れ、よって、白色化の度合いが高まり、また、より高い光沢が得られ、外観品質が向上する。
    【0078】
    この表面付着物を除去する処理の代表例としては、▲1▼エッチング処理液による化学研磨、▲2▼電解研磨、▲3▼洗浄(酸洗、アルカリ洗、水洗等)が挙げられる。 以下、順次説明する。
    【0079】
    ▲1▼エッチング処理液による化学研磨時計外装部品を例えばエッチング処理液に浸漬する等してエッチング処理液と接触させ、その表面に化学研磨を施す。
    【0080】
    エッチング処理液の組成、温度、浸漬時間等は、特に限定されないが、その好適例を以下に説明する。
    【0081】
    エッチング処理液は、HF、HNO およびH SO を含む混合液からなるものであるのが好ましい。 HFとHNO との混合液を用いてもよいが、さらにH SO を加えることにより、TiまたはTi合金の表面を荒らすことなく、表面の白色化を図ることが可能となる。
    【0082】
    特に、エッチング処理液は、HF:1〜10vol%、HNO :15〜40vol%、H SO :30〜60vol%を含む水溶液であるのが好ましい。 このような組成範囲(以下「最適範囲」と言う)とすることにより、比較的短い処理時間で、すなわち高い生産性で、表面荒れ(肌荒れ)を引き起こすことなく外装部品表面を十分に白色化することができ、光沢を出すことができる。
    【0083】
    HFとHNO のいずれか一方が存在しないかまたは極めて少ないと、エッチングが実質的に進行しないかまたはその進行が遅い。 HFが1vol%未満またはHNO が15vol%未満であると、エッチング処理効果が少なく、処理時間が長くなる。
    【0084】
    逆に、HFが10vol%を超えるかまたはHNO が40vol%を超えると、表面荒れが生じ易くなる。 H SO が30vol%未満の場合も、表面荒れが生じ易くなり、H SO が60vol%を超えると、エッチング処理効果が低下する。
    【0085】
    特に、鏡面加工を施した時計外装部品の場合には、表面荒れの影響が大きいので、この場合には、エッチング処理液の組成は、HF:1〜5vol%、HNO :15〜35vol%、H SO :40〜60vol%とすることがより好ましい。
    【0086】
    エッチング処理液の具体例としては、市販の45〜50vol%のHF(フッ化水素酸)を5vol%、市販の60〜70vol%のHNO 硝酸)を45vol%、市販の98vol%のH SO (濃硫酸)を50vol%混合した液が挙げられる。 このエッチング処理液の組成は、HF:2.25〜2.5vol%、HNO :27〜31.5vol%、H SO :49vol%、残部が水となり、組成の最適範囲を満足する。 時計外装部品は、このエッチング処理液に例えば約30秒間浸漬され、化学研磨処理される。
    【0087】
    なお、下記表1中の実施例8〜14に示すように、エッチング処理液の組成が前記最適範囲を外れるものであったとしても、エッチング処理液への浸漬時間や液温等の他の条件を適宜調整することにより、良好な外観が得られるので、本発明に用いられるエッチング処理液の組成は、前記最適範囲に限定されるものではない。
    【0088】
    次に、エッチング処理液の組成とエッチング処理液への浸漬時間とを種々変更して化学研磨を行い、次いで水洗したときの、当該研磨面の外観品質を調べた。 その結果をエッチング条件とともに下記表1に示す。
    【0089】
    なお、時計外装部品の素地は、金属粉末射出成形法により成形された焼結体であり、その構成材料の金属組成は、Ti−6wt%Al−1wt%V合金である。 そして、その全表面に、ホーニング加工を施した。
    【0090】
    また、エッチング処理液の温度は、いずれの場合も、70℃とした。
    【0091】
    【表1】

    【0092】


    表1において、エッチング後の外観品質は、目視判定により以下の5段階に分類して評価した。


    【0093】


    A:外観優良(白色度極めて大)


    B:外観良(白色度大)


    C:外観普通(白色度中、表面荒れわずかにあり)


    D:外観やや不良(黒色化あり、または表面荒れ目立つ)


    E:外観不良(黒色化顕著、または表面荒れ顕著)


    なお、評価A、Bは、実際に製品化した場合に、全く問題を生じないものであり、評価Cは、例えば高級品のような特別高品質を要求される特殊な製品を除き、問題を生じないものである。


    【0094】


    実施例1〜7は、エッチング処理液の組成が最適範囲に入るもの、実施例8〜14は、エッチング処理液の組成が最適範囲から外れるものである。 実施例1〜7は、実施例8〜14に比べ、全体的に、外観品質が優れている。


    【0095】


    以下詳述すると、実施例1、2、4および7においては、それぞれ、エッチング処理液への浸漬時間が30秒、60秒と比較的長い場合に最も優良な外観が得られ、実施例3、5、6においては、エッチング処理液への浸漬時間が5秒、30秒と比較的短い場合に、最も優良な外観が得られている。


    【0096】


    実施例8においては、HFが比較的少ないため、エッチング処理液への浸漬時間が60秒と長いときに、良好な外観が得られている。 逆に、実施例9においては、HFが比較的多いため、エッチング処理液への浸漬時間が5秒と短いときに、良好な外観が得られている。


    【0097】


    実施例10においては、HNO

    が比較的少ないため、エッチング処理液への浸漬時間が60秒と長いときに、良好な外観が得られている。 逆に、実施例11においては、HNO

    が比較的多いため、エッチング処理液への浸漬時間が5秒と短いときに、良好な外観が得られている。


    【0098】


    実施例12においては、H

    SO

    が比較的少ないため、エッチング処理液への浸漬時間が5秒と短いときに、良好な外観が得られている。 逆に、実施例13においては、H

    SO

    が比較的多いため、エッチング処理液への浸漬時間が60秒と長いときに、良好な外観が得られている。


    【0099】


    実施例14においては、H

    SO

    が無添加であるため、浸漬時間が60秒まででは、外観は普通であるが、さらに長時間の浸漬を行えば、良好な外観が得られた。


    【0100】


    これに対し、エッチングによる化学研磨を行っていない比較例1は、外観品質が悪い。


    【0101】


    次に、前記と同様の時計外装部品(ホーニング加工済)に対し、表1中の実施例3と同一組成のエッチング処理液を用い、その液温を一定とし、処理時間(浸漬時間)を種々変更した場合の外観品質を調べた。 その結果を下記表2に示す。


    【0102】


    また、前記と同様の時計外装部品(ホーニング加工済)に対し、表1中の実施例3と同一組成のエッチング処理液を用い、その処理時間(浸漬時間)を一定とし、液温を種々変更した場合の外観品質を調べた。 その結果を下記表3に示す。


    【0103】


    なお、表2および表3中の外観品質の評価方法は、前記表1と同様である。


    【0104】


    【表2】


    【0105】


    【表3】


    【0106】


    表2に示すように、エッチング処理液の液温70℃において、5秒から50秒程度の処理時間で最も優れた外観品質が得られ、70秒とそれより処理時間を長くすると、徐々に表面荒れが生じる傾向を示す。 そのため、最良の表面性状を得、かつ生産性の向上を図るという点を考慮して、処理時間(浸漬時間)は5〜50秒程度が好ましく、5〜30秒程度がより好ましい。


    【0107】


    また、表3に示すように、処理時間30秒において、液温30〜75℃の範囲で最も優れた外観品質が得られたが、液温が25℃と低い場合には、白色度が若干低下し、また、液温が80℃とより高温になると、エッチング作用が強くなり、表面荒れが若干生じる傾向となる。 そのため、最良の表面性状を得、かつ安全上の理由からなるべく低温で処理することを考慮すると、液温は、30〜75℃程度が好ましく、30〜60℃程度がより好ましい。


    【0108】


    ▲2▼電解研磨TiまたはTi合金よりなる時計外装部品に電解研磨を施す。 この電解研磨は、電解液中で時計外装部品を陽極として電解処理し、溶解(陽極溶解)せしめることによりなされる。 以下、図4〜図6を参照しつつ説明する。


    【0109】


    図4に示すように、TiまたはTi合金製の時計外装部品10の表面10aには、前記機械的加工によって、時計外装部品10の素地金属以外の物質による異物13が付着する。 特に、ホーニング加工を施した時計外装部品10の場合には、加工時に打ち込まれた異物が存在する。


    【0110】


    この異物13を表面10aにそのまま残存させておくと、例えガラスコーティング層のような透明保護層12を被覆形成したとき、その透明保護層12の密着性が低下し、耐久性が劣る。


    【0111】


    そこで、電解研磨を施すことにより、図5に示すように、表面10aから異物13を除去し、この異物13が除去された表面10a上に、図6に示すように、透明保護層12を形成する。 これにより、本発明の装飾品(時計外装部品)が完成する。


    【0112】


    なお、表面10aに前述した酸化物層が形成されている場合、この電解研磨により、異物13とともに酸化物層も除去することができる。


    【0113】


    この方法によれば、表面10a上から異物13等が除去されること、および表面10aの均質化、ある程度の平滑化がなされることにより、透明保護層12の膜質および表面10aへの密着力が向上する。 よって、耐指紋付着性、耐擦傷性に優れた透明保護層12を形成することができ、その耐久性も高い。


    【0114】


    電解研磨において、電解液(電解処理液)の組成、温度、電流密度、処理時間等は、特に限定されないが、その好適例を以下に説明する。


    【0115】


    電解液の組成は、特に限定されないが、H

    PO

    (リン酸)を含むものが好ましい。 H

    PO

    を含む電解液は、特に、TiまたはTi合金に対する電解処理に適し、処理後の表面性状を良好にすることができる。


    【0116】


    この場合、電解液中のH

    PO

    の濃度は、8〜12vol%であるのが好ましい。 電解液中のH

    PO

    の濃度が低すぎると、研磨力が低下し、短時間では十分な異物除去がなされず、また濃度が高すぎると、研磨力が高すぎ、外観が変色し易くなる。


    【0117】


    また、電解液のpHは、特に限定されないが、通常、1.0〜1.2程度が好ましく、1.05〜1.1程度がより好ましい。


    【0118】


    電解液の液温は、特に限定されず、例えば25〜30℃程度とすることができる。


    【0119】


    電解処理時間は、特に限定されず、電解液の組成や電流密度等の条件に応じて適宜決定されるが、通常、3秒〜2分程度が好ましく、5秒〜1分程度がより好ましい。 電解処理時間が短過ぎると、十分な電解研磨がなされず、また、電解処理時間を前記より長くしても効果の向上が見られず、生産性を低下させる。


    【0120】


    また、電解研磨において、陽極の電流密度は、特に限定されないが、0.5〜10A/cm

    程度とするのが好ましく、1〜5A/cm

    程度とするのがより好ましい。 この電流密度が低すぎると、短時間では十分な電解研磨を行うことができず、また、電流密度が高すぎると、特に電解研磨処理時間が長い場合に、陽極酸化の作用により時計外装部品10の表面10aが変色(黄変)し、白色度を低下させることがある。


    【0121】


    なお、電解研磨における電解液の組成、pH、温度、電流密度等の条件は、上記のものに限定されないことは、言うまでもない。


    【0122】


    次に、電解研磨の具体例を説明する。


    【0123】


    プレス成形加工および切削加工を経て時計外装部品を製造し、その全表面にホーニング加工を施した。 なお、この時計外装部品の素地の金属組成は、純Tiである。


    【0124】


    次に、この時計外装部品に対し、アルカリ脱脂および酸中和処理を順次行い、その後、2種の電解液を用い、陽極電流密度および電解処理時間を種々変更して電解研磨を行い、さらに、温水洗浄(70℃)を行った。 得られた時計外装部品の外観品質を調べた。 電解液組成および他の電解条件を下記表4に示し、実験結果を下記表5に示す。


    【0125】


    【表4】


    【0126】


    【表5】


    【0127】


    表5において、エッチング後の外観品質は、目視判定により以下の5段階に分類して評価した。


    【0128】


    A:外観優良(白色度極めて大)


    B:外観良(白色度大)


    C:外観普通(白色度中、わずかに黄色化あり)


    D:外観やや不良(黄色化あり、または異物の残存わずかにあり)


    E:外観不良(黄色化顕著、または異物の残存あり)


    なお、評価A、Bは、実際に製品化した場合に、全く問題を生じないものであり、評価Cは、例えば高級品のような特別高品質を要求される特殊な製品を除き、問題を生じないものである。


    【0129】


    実施例15〜28のいずれの場合も、良好な外観品質が得られている。 これらのうち、特に、陽極電流密度および電解処理時間を最適の範囲としたものは、最も優れた外観品質が得られている。


    【0130】


    また、電流密度が比較的低い場合(実施例15、22)では、電解液におけるリン酸濃度を高くするかまたは電解処理時間を若干長くすることにより、良好な外観品質が得られる。


    【0131】


    また、電流密度が比較的高い場合(実施例20、21、26、27、28)では、電解液におけるリン酸濃度を低くするかまたは電解処理時間を若干短くすることにより、良好な外観品質が得られる。


    【0132】


    これに対し、電解研磨処理を行っていない比較例2は、外観品質が悪い。


    【0133】


    ▲3▼洗浄洗浄としては、酸洗、アルカリ洗(アルカリ脱脂、酸中和処理等を含む)、水洗、温水洗、高圧水蒸気洗浄や、アルコール等の有機溶媒による洗浄、オイル洗浄が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を適宜組み合わせて行うことができる。


    【0134】


    この場合、前記酸洗における酸洗液としては、例えば、硫酸3〜5%程度のものが好適に使用され、前記アルカリ洗におけるアルカリ洗液としては、例えば、ディプソール41C(ディプソール社製)3.5〜5%程度のものが好適に使用される。


    【0135】


    また、洗浄の方法は、特に限定されず、例えば、シャワー洗浄、ジェット洗浄、超音波洗浄、精密洗浄、あるいは、単なる洗浄液への浸漬や、撹拌を伴う洗浄液への浸漬等、いかなるものでもよい。


    【0136】


    洗浄液の温度も、特に限定されず、常温程度から100℃程度の高温洗浄まで、いかなるものでもよい。


    【0137】


    ▲4▼前記▲1▼〜▲3▼の組み合わせ前記▲1▼〜▲3▼の処理を任意の順序で任意の回数組み合わせて行うことができる。


    【0138】


    例えば、▲1▼または▲2▼を実施した後、▲3▼を行うことができ、これにより、表面10aの性状をより良好にすること、またはより清浄にすることができる。


    【0139】


    このような異なる種類の処理を併用することで、表面10aの性状を微妙に調整することが可能となり、それによって、例えば後述する透明保護層12の密着性を向上させることもできる。


    【0140】


    <2>透明保護層の形成以上のような表面付着物の除去を行った後は、図3、図6に示すように、時計外装部品10の表面10a上に、透明保護層12を形成する。


    【0141】


    この透明保護層12は、例えばガラスコーティング層で構成することができる。 以下、その形成方法の一例を説明する。


    【0142】


    時計外装部品10の表面10aに、ガラスコーティング液を例えば塗布法により付着せしめ、次いでこれを乾燥することにより、透明なガラスコーティング層を形成することができる。


    【0143】


    透明保護層12を形成するためのガラスコーティング液としては、主成分がアルカリ珪酸塩と超微粒子状シリカとを加熱溶解して形成した生成物からなるもの(例えば、奥野製薬工業社製の透明ガラスコーティング剤、商品名:CRMコート 100)を用いることができる。


    【0144】


    この種のガラスコーティング液(原液)は、ナトリウム珪酸塩、カリウム珪酸塩等のアルカリ珪酸塩の固形分換算100重量部と、平均粒径が40μm 以下程度の超微粒子状シリカ5〜100重量部とを、好ましくは50〜100℃、より好ましくは80〜100℃の温度で加熱溶解し、約1〜2時間撹拌し、超微粒子状シリカをアルカリ珪酸塩に溶解(分散)させることによって生成したものである。


    【0145】


    ここで、前記溶解時において、上記の固形分総量100重量部に対し、好ましくは600重量部を上限として水を存在させることができ、これにより、溶解を容易、迅速に行うことができる。


    【0146】


    このようにして得られた透明で無機質なガラスコーティング液は、原液のままで使用するか、あるいは希釈液で希釈したものを使用することができるが、希釈液で希釈したものを用いるのが好ましい。 これにより、ガラスコーティング液の塗布作業の作業性が向上するとともに、得られる透明保護層の膜質、特に、膜の硬度および耐食性が向上する。


    【0147】


    この場合、ガラスコーティング液の希釈倍率は、時計外装部品に施された前記機械的加工の種類、すなわちホーニング加工、スジ目加工または鏡面加工のいずれであるかに応じて、選定されるのが好ましい。 これにより、透明保護層12の耐食性、耐摩耗性、耐擦傷性を高く維持しつつ、白色化度や光沢の度合いをより向上することができる。


    【0148】


    機械的加工の種類に応じた希釈率の好ましい範囲は、下記の通りである。 なお、塗布されるガラスコーティング液の粘度にも、好ましい範囲がある。 この粘度は、前記希釈率に対応しており、希釈率と併せて下記に示す。


    【0149】


    ・ホーニング加工希釈率は、85%以下が好ましく、30〜70%程度がより好ましい。 例えば、原液に水を加えて、希釈率を70%(水:コーティング原液(容積比)=70:30)とすることができる。 粘度は、150cps(25℃)以上が好ましく、200〜500cps(25℃)程度がより好ましい。


    【0150】


    ・スジ目加工希釈率は、85%以下が好ましく、30〜70%程度がより好ましい。 例えば、原液に水を加えて、希釈率を70%(水:コーティング原液(容積比)=70:30)とすることができる。 粘度は、150cps(25℃)以上が好ましく、200〜500cps(25℃)程度がより好ましい。


    【0151】


    ・鏡面加工希釈率は、50〜98%程度が好ましく、90〜98%程度がより好ましい。 例えば、原液に水を加えて、希釈率を95%(水:コーティング原液(容積比)=95:5)とすることができる。 粘度は、150〜400cps(25℃)が好ましく、150〜250cps(25℃)程度がより好ましい。


    【0152】


    希釈率が高すぎる(粘度が低すぎる)と、ガラスコーティングにより得られた透明保護層の耐食性、耐摩耗性または耐擦傷性が低下する場合がある。 また、希釈率が低すぎる(粘度が高すぎる)と、特に、鏡面加工を施したものの場合に、白色化度または光沢の度合いが低下する。


    【0153】


    なお、透明保護層を例えば有機被膜のようなガラス材以外の材料で構成する場合、そのコーティングに用いる希釈液としては、水の他、例えば、アルコール類、ベンゼン、トルエン等の有機溶媒を用いることもでき、また、これらの有機溶媒を水と混合して用いることもできる。


    【0154】


    以上のようなガラスコーティング液の塗布方法としては、例えば、浸漬法(ディッピング)、スプレー法、ロールコーター、はけ塗り等が挙げられる。


    【0155】


    次に、表面10aに塗布されたガラスコーティング液は、乾燥される。 この乾燥条件は、特に限定されないが、常温〜250℃の温度で、1〜20分間行うのが好ましく、150〜230℃の温度で、5〜15分間行うのがより好ましい。


    【0156】


    また、このような乾燥は、同一または異なる乾燥条件で、2回以上行われてもよい。 特に、乾燥を異なる条件(乾燥方法、乾燥温度、乾燥時間(乾燥速度)等の条件のうち、1つでも異なる)で2回以上行う場合には、透明保護膜12の膜質(特に、緻密性、均質性、厚さの均一性)や密着性の向上に寄与する。


    【0157】


    また、ガラスコーティング液の塗布およびその乾燥を1工程として、この工程を複数回繰り返し行ってもよい。


    【0158】


    一例を挙げると、所定の希釈率に希釈された前記ガラスコーティング液を、スプレーガンにより腕時計の胴の表側の表面10aに吹き付け、次いで、150℃×10分間の仮乾燥を行う。 次に、この胴の裏側(内側)の表面10aに、同じガラスコーティング液を同様に吹き付け、150℃×10分間の仮乾燥を行う。 その後、乾燥ファン、排気ファンを稼動させた状態で180℃×10分間の本乾燥を行う。 これにより、ガラス層による透明保護層が形成される。 このような透明保護層は、耐食性、耐摩耗性、耐擦傷性、耐衝撃性、耐指紋付着性および密着性に優れている。


    【0159】


    なお、透明保護層による耐食性、耐摩耗性、耐擦傷性等をより高めるために、前記本乾燥の前に、ガラスコーティング液(塗布液)の塗布を、複数回行うこともできる。


    【0160】


    以下、具体的実施例を挙げて説明する。


    【0161】


    ナトリウム珪酸塩を固形分換算100重量部と、平均粒径30μm の超微粒子状シリカ50重量部とを、85℃で加熱溶解し、約1時間撹拌して、超微粒子状シリカをアルカリ珪酸塩に溶解(分散)させ、ガラスコーティング液の原液を得た。


    【0162】


    次に、このガラスコーティング原液を水で希釈し、その希釈率および粘度(25℃)を下記表6に示すように種々変更したガラスコーティング液を調製した。


    【0163】


    次に、各ガラスコーティング液を、それぞれ、前記実施例1(エッチング液への浸漬時間=30秒)で得られた時計外装部品の表面にスプレー法により塗布し、乾燥して、表6に示す厚さ(平均値)の透明保護層を形成した。


    【0164】


    なお、乾燥は、160℃×8分間の仮乾燥と、185℃×10分間の本乾燥とを行った。


    【0165】


    得られた各時計外装部品について、透明保護層形成面の外観品質、ビッカース硬度(Hv)、耐指紋付着性(指紋の付着し難さ)、耐擦傷性および透明保護層の密着性を調べた。 その結果を下記表6に示す。


    【0166】


    【表6】


    【0167】


    なお、表6中の外観品質の評価において、Hはホーニング加工をしたもの、Sはスジ目加工を施したもの、Mは鏡面研磨加工を施したものをそれぞれ示す。


    【0168】


    また、外観品質は、目視判定により以下の5段階に分類して評価した。


    【0169】


    A:外観優良(白色度極めて大および光沢極めて大)


    B:外観良(白色度大および光沢大)


    C:外観普通(白色度中および光沢中)


    D:外観やや不良(白色度やや小および光沢小)


    E:外観不良(白色度小および光沢なし)


    なお、評価A、Bは、実際に製品化した場合に、全く問題を生じないものであり、評価Cは、例えば高級品のような特別高品質を要求される特殊な製品を除き、問題を生じないものである。


    【0170】


    また、表6中の耐指紋付着性は、機械的加工がHおよびMの場合において、軽く手の指を触れさせたときの指紋の付き具合により判断し、以下の4段階に分類して評価した。


    【0171】


    ◎:指紋付着が全くないもの○:指紋付着がほとんどないもの△:指紋付着が若干あるもの×:指紋付着が激しいものまた、表6中の耐擦傷性は、機械的加工がHの場合において調べた。 このうち、試験1は500g/cm

    で加圧した状態で皮で1.5万回の摩耗試験をした結果を、試験2はAl材により引っ掻き試験をした結果を、試験3はBS鋼材にて引っ掻き試験を行った結果を、試験4はステンレス鋼の線材で引っ掻き試験を行った結果をそれぞれ示すものである。 それぞれ、以下の4段階に分類して評価した。


    【0172】


    ◎:擦傷痕が全く付かないもの○:擦傷痕がほとんど付かないもの△:擦傷痕が若干付くもの×:擦傷痕が激しく付くものまた、表6中の透明保護層の密着性は、機械的加工がSおよびMの場合において、粘着テープを貼り、それを剥がしたときの透明保護層の剥離の有無により判断し、以下の4段階に分類して評価した。


    【0173】


    ◎:透明保護層の剥離が全くないもの○:透明保護層の剥離がほとんどないもの△:透明保護層の剥離が若干あるもの×:透明保護層の剥離が激しいもの表6に示すように、実施例29〜35では、いずれも、優れた外観品質、耐指紋付着性、耐擦傷性および透明保護層の密着性が得られている。 特に、機械的加工の種類(H、S、M)に応じて適正な希釈率を選択することにより、白色化度や光沢の度合いが高まり、外観品質をより向上することができることがわかる。


    【0174】


    これに対し、透明保護層を形成しない比較例3は、耐指紋付着性および耐擦傷性が劣っている。 また、電解研磨(表面付着物を除去する処理)を行わずに透明保護層を形成した比較例4は、外観品質が悪く、しかも、透明保護層の密着性が劣っている。


    【0175】


    次に、前記実施例18(電解処理時間=30秒)で得られた時計外装部品の表面に透明保護層を形成した以外は、前記と同様にして、透明保護層形成面の外観品質、ビッカース硬度(Hv)、耐指紋付着性(指紋の付着し難さ)、耐擦傷性および透明保護層の密着性を調べた。 その結果を下記表7に示す。


    【0176】


    【表7】


    【0177】


    表7に示すように、実施例36〜42では、いずれも、優れた外観品質、耐指紋付着性、耐擦傷性および透明保護層の密着性が得られている。 特に、機械的加工の種類(H、S、M)に応じて適正な希釈率を選択することにより、白色化度や光沢の度合いが高まり、外観品質をより向上することができることがわかる。


    【0178】


    これに対し、透明保護層を形成しない比較例5は、耐指紋付着性および耐擦傷性が劣っている。 また、電解研磨(表面付着物を除去する処理)を行わずに透明保護層を形成した比較例6は、外観品質が悪く、しかも、透明保護層の密着性が劣っている。


    【0179】


    本発明では、透明保護層を形成するためのコーティング液は、前述したものに限定されず、透明保護層を形成し得るものであれば、コーティング液の組成、温度、希釈率、粘度、塗布方法等の条件は、任意のものが可能である。


    【0180】


    例えば、無機質の酸化アルミニウム、酸化シリコン、水ガラス系等を含む種々のコーティング液が使用可能である。


    【0181】


    また、透明保護層は、無機質のものに限らず、例えば硬質樹脂のような高分子材料で構成されたもの(有機被膜)でもよい。


    【0182】


    さらに、透明保護層の形成方法は、前述したような塗布法(コーティング)に限らず、例えば、各種湿式メッキ、乾式メッキ(例:蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD)等によるものでもよい。


    【0183】


    また、透明保護層の形成は、前述の表面付着物の除去工程が終了後、通常144時間以内に行うことが好ましい。 144時間を超えると、表面に酸化物層が形成され始め、若干の変色が発生し始める可能性があるからである。


    【0184】


    また、本発明は、腕時計の外装部品またはこれを組み立ててなる外装ケース等のほぼ全体を透明保護層により被覆する場合に限らず、腕時計の外装部品、外装ケース、その他各種装飾品等の表面の一部分に、あるいはその表面上の複数箇所に対し、ガラスコーティング層等の透明保護層を設けてもよい。


    【0185】


    例えば、時計外装ケースの内側にマスキングを行った状態で、透明保護層の形成処理を行うと、時計外装ケースの内面には透明保護層が形成されないので、内部の機械体(ムーブメント)を収納、固定するに際して、機械体の正確な位置決めを行うことができ、また、透明保護層の構成物質による機械体への悪影響も防止できる。


    【0186】


    例えば、裏蓋を胴にスナップ取付する際、胴または裏蓋の係合面における透明保護層の削れカスが機械体に進入し機械体の駆動を阻害し遅れや止まりを引き起こす可能性がある場合には、両者のスナップ係合面に透明保護層を形成しないことにより、このような不都合を防止することができる。


    【0187】


    また、本発明は、TiまたはTi合金の素地上に透明保護層を形成するものに限らず、所定の基材上に形成されたTiまたはTi合金層の表面に、透明保護層を形成するものでもよい。


    【0188】


    本発明は、腕時計の外装ケースやバンド、それらを用いた時計完成品に適用できるが、これらに限らず、その他の携帯時計、あるいは置時計、掛け時計等の他の種類の時計にも同様に適用することができる。


    【0189】


    また、時計以外の、例えば、メガネフレーム、ネクタイピン、カフスボタン、ライターまたはそのケース、ペン、指輪、ネックレス、ブレスレット、ブローチ、ペンダント、イヤリング、ピアス、ティアラ、宝飾品、置物類、インテリア製品等の装飾品(装飾性を少しでも備えたもの)または装身具に適用することもできる。


    【0190】


    また、本発明は、前述したような装飾品を一部に備えた(少なくとも一部に装飾的効果を発揮し得るように用いられた)電子機器類も対象となる。 このような電子機器としては、例えば、電子時計、携帯電話機、ポケットベル、電卓、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、プリンタ、複写機、カメラ、ビデオ装置、テレビ、オーディオ機器、電子玩具、各種測定機器等が挙げられる。


    【0191】


    さらには、このような装飾品、装身具、電子機器に限らず、種々のTiまたはTi合金製の部材に適用することもできる。


    【0192】


    【発明の効果】


    以上述べたように、本発明によれば、以下の効果を奏する。


    【0193】


    透明保護層を形成することにより、優れた耐擦傷性および耐指紋付着性が得られる。 特に、透明保護層をガラスコーティング層のようなガラス成分を含む層とすることにより、透明保護層の形成を容易に行うことができるとともに、高硬度で、耐食性、耐摩耗性に優れた透明保護層とすることができる。


    【0194】


    また、このような透明保護層を形成するのに先立ち、TiまたはTi合金の表面に、例えばエッチング処理液による化学研磨や電解研磨を施して、表面付着物、特に変色をもたらす付着物を除去するので、TiまたはTi合金材料が持つ本来の色が現れ、白色化や光沢の度合いが高くなり、外観品質が向上する。 これにより、装飾品においては、高級感が増し、価値が高まる。 また、透明保護層の密着性も高い。


    【0195】


    特に、エッチング処理液による化学研磨を行う場合は、エッチング処理液の組成やその他の処理条件を適宜選定することにより、研磨面を荒らすことなく、白色化を図ることができる。


    【0196】


    また、電解研磨を行う場合は、電解液の組成や電流密度、その他の処理条件を適宜選定することにより、平滑で良好な研磨面が得られ、白色化の度合いを向上することができる。


    【0197】


    また、TiまたはTi合金の表面に対し事前にホーニング加工、スジ目加工、鏡面加工等の機械的加工が施された場合であっても、前述したような優れた表面品質が得られる。


    【図面の簡単な説明】


    【図1】本発明に係る実施形態の処理工程における表面状態を概念的に示す説明図である。


    【図2】本発明に係る実施形態の処理工程における表面状態を概念的に示す説明図である。


    【図3】本発明に係る実施形態の処理工程における表面状態を概念的に示す説明図である。


    【図4】本発明に係る実施形態の処理工程における表面状態を概念的に示す説明図である。


    【図5】本発明に係る実施形態の処理工程における表面状態を概念的に示す説明図である。


    【図6】本発明に係る実施形態の処理工程における表面状態を概念的に示す説明図である。


    【符号の説明】


    10 時計外装部品10a 表面11 酸化物層12 透明保護膜13 異物

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