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グリシルtRNA合成酵素のタンパク質フラグメントに関連した治療用、診断用および抗体組成物の革新的発見

申请号 JP2013519776 申请日 2011-07-12 公开(公告)号 JP6116479B2 公开(公告)日 2017-04-19
申请人 エータイアー ファーマ, インコーポレイテッド; パング バイオファーマ リミテッド; 发明人 グリーン, レスリー アン; チャン, カイル ピー.; ホン, フェイ; バサロット, アレイン ピー.; ロー, ウィン−セー; ワトキンス, ジェフリー ディー.; クイン, シェリル エル.; メンドレイン, ジョン ディー.;
摘要
权利要求

治療用組成物であって、 前記治療用組成物は、配列番号151からなるか、あるいは、1、2、または3個のアミノ酸の置換、削除および/または付加により、配列番号151とは異なる単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)ポリペプチドを含み、 前記ポリペプチドは、細胞外シグナル伝達活性を有し、かつ、中または生理的pHの生理緩衝液中で室温または37℃にて少なくとも5mg/mLの溶解度を有し、 前記組成物の前記AARSポリペプチドの純度がタンパク質ベースで少なくとも95%であり、エンドトキシンが10EU/mgタンパク質未満である、 治療用組成物。前記AARSポリペプチドが配列番号151からなる、請求項1に記載の治療用組成物。前記AARSポリペプチドは異種ポリペプチドと融合している、請求項1または2に記載の治療用組成物。前記異種ポリペプチドは、精製タグ、エピトープタグ、標的化配列、シグナルペプチド、膜転位配列およびPK調節物質からなる群より選択される、請求項3に記載の治療用組成物。配列番号151からなるか、あるいは、1、2、または3個のアミノ酸の置換、削除および/または付加により、配列番号151とは異なる単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)ポリペプチドであって、前記ポリペプチドは細胞外シグナル伝達活性を有する、単離AARSポリペプチド。前記AARSポリペプチドが配列番号151からなる、請求項5に記載の単離AARSポリペプチド。前記AARSポリペプチドは異種ポリペプチドと融合している、請求項5または6に記載の単離AARSポリペプチド。前記異種ポリペプチドは、精製タグ、エピトープタグ、標的化配列、シグナルペプチド、膜転位配列およびPK調節物質からなる群より選択される、請求項7に記載の単離AARSポリペプチド。請求項5〜8のいずれか一項に記載の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)ポリペプチドを含む組成物であって、前記ポリペプチドが、水中または生理的pHの生理緩衝液中で室温または37℃にて少なくとも5mg/mLの溶解度を有し、前記組成物の前記AARSポリペプチドの純度がタンパク質ベースで少なくとも95%であり、エンドトキシンが10EU/mgタンパク質未満である、組成物。少なくとも1つの部分が、前記ポリペプチドと共有結合または非共有結合し、前記部分が、検出可能な標識もしくはPEGであるか、または、固体基質が、前記ポリペプチドと結合している、請求項9に記載の組成物。細胞組成物または細胞増殖装置であって、 前記細胞組成物または細胞増殖装置は、請求項5〜8のいずれか一項に記載のアミノアシルtRNA合成酵素(AARS)ポリペプチド、およびエレメントを含み、 前記エレメントは、 (i)操作された細胞集団であって、少なくとも1個の細胞が前記AARSポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、前記細胞は無血清培地で増殖することができる、操作された細胞集団、ならびに、 (ii)操作された細胞集団であって、少なくとも1個の細胞が前記AARSポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む操作された細胞集団と、少なくとも10リットルの無血清細胞培地と、無菌容器 からなる群より選択される、 細胞組成物または細胞増殖装置。単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)ポリヌクレオチドまたは発現ベクターであって、請求項5〜8のいずれか一項に記載のAARSポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)ポリヌクレオチドまたは発現ベクター。請求項5〜8のいずれか一項に記載のアミノアシルtRNA合成酵素(AARS)ポリペプチドと特異的に結合する化合物を同定する方法であって、 前記方法は、 a)適当な条件下で、前記AARSポリペプチドと少なくとも1つの試験化合物とを混合すること、および b)前記AARSポリペプチドと前記試験化合物との結合を検出して、それにより前記AARSポリペプチドと特異的に結合する化合物を同定すること、 を含む、方法。請求項5〜8のいずれか一項に記載のAARSポリペプチド、または請求項12に記載のAARSポリヌクレオチドもしくは発現ベクター、および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。細胞の細胞活性またはタンパク質を調節するための医薬またはキットの製造における、請求項5〜8のいずれか一項に記載のAARSポリペプチド、または請求項12に記載のAARSポリヌクレオチドもしくは発現ベクター、または請求項14に記載の医薬組成物の使用。請求項5または6に記載のAARSポリペプチドのタンパク質分解生成を可能にする異種性タンパク質分解部位を含む、操作された完全長アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質。炎症性障害、自己免疫性疾患、組織移植/臓器拒絶、癌、感染、代謝性疾患、悪液質、筋骨格疾患、心血管疾患、肥満症、リポジストロフィー、または糖尿病の合併症を治療するための医薬の製造における、請求項1〜4のいずれか一項に記載の治療用組成物、請求項5〜8のいずれか一項に記載のAARSポリペプチド、または請求項12に記載のポリヌクレオチドもしくは発現ベクターの使用。前記筋骨格疾患が筋ジストロフィーである、請求項17に記載の使用。細胞の細胞活性またはタンパク質を調節するための医薬またはキットであって、請求項5〜8のいずれか一項に記載のAARSポリペプチド、または請求項12に記載のAARSポリヌクレオチドもしくは発現ベクター、または請求項14に記載の医薬組成物を含む、医薬またはキット。炎症性障害、自己免疫性疾患、組織移植/臓器拒絶、癌、感染、代謝性疾患、悪液質、筋骨格疾患、心血管疾患、肥満症、リポジストロフィー、または糖尿病の合併症を治療するための医薬であって、請求項1〜4のいずれか一項に記載の治療用組成物、請求項5〜8のいずれか一項に記載のAARSポリペプチド、または請求項12に記載のポリヌクレオチドもしくは発現ベクターを含む、医薬。前記筋骨格疾患が筋ジストロフィーである、請求項20に記載の医薬。

说明书全文

関連出願の相互参照 本願は、2010年7月12日に出願された米国特許仮出願第61/363,449号、2010年7月12日に出願された米国特許仮出願第61/363,456号、2010年7月12日に出願された米国特許仮出願第61/363,461号、2011年5月20日に出願された米国特許仮出願第61/488,349号、2011年5月20日に出願された米国特許仮出願第61/488,351号および2011年5月20日に出願された米国特許仮出願第61/488,357号の利益を主張するものであり、上記各明細書の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。

配列表に関する記述 本願に関連する配列表は、紙のコピーの代わりにテキストフォーマットで提供され、ここにおいて参照により本明細書に組み込まれる。配列表を掲載しているテキストファイル名は120161_447PC_SEQUENCE_LISTING.txtである。このテキストファイルは約246KBであり、2011年7月8日に作成され、EFS−Webを介して電子的に提出されている。

本発明は概略的には、アミノアシルtRNA合成酵素およびその他のタンパク質の新規に同定されたタンパク質フラグメント、それをコードするポリヌクレオチドおよびその相補体を含む組成物、関連薬剤、ならびに診断、創薬、研究および治療への応用におけるその使用法に関する。

40年以上の間、アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)は、タンパク質翻訳過程における遺伝情報解読の一部としてtRNA分子のアミノアシル化を触媒する、不可欠なハウスキーピングタンパク質であると考えられていた。この点においてAARSは広く研究され、その完全長配列の多くが、配列解析のために、また豊富な生化学実験の入手源を提供するためにクローニングされた。しかし、AARSおよびその他のタンパク質の一部のフラグメントは、タンパク質翻訳以外の経路を調節する細胞外シグナル伝達活性を含めた、アミノアシル化とは関係のない予想外の活性を有する。一般にこのような予想外の活性は、完全長または親タンパク質配列との関連においては見られず、代わりに、その親配列からAARSタンパク質フラグメントを除去または切除するか、またはフラグメントのAARS配列を発現させて十分に精製してから、合成酵素と無関係な新規な活性に関して試験することにより見られる。

AARSの完全長配列は以前から知られていたが、このようなAARSタンパク質フラグメントまたは関連タンパク質のタンパク質フラグメントを解明するための、または完全長AARSタンパク質のアミノ酸合成関連以外の新規な生物活性の潜在的役割を評価するための体系的な実験的解析は行われてこなかった。本明細書の一部では、このようなAARSタンパク質フラグメント、AARSドメインまたはAARSの選択的スプライスバリアントを、本明細書では「リセクチン(resectin)」と呼ぶ。「リセクチン(resectin)」という用語は、その最も広い文脈において、その新規な生物活性を覆い隠す場合が多い、その天然の完全長または親タンパク質配列との関連から切り取られたまたは限定された(タンパク質分解、選択的スプライシング、変異誘発または組換え遺伝子工学のいずれかの手段により)タンパク質の一部分を指す。同様に、種々の医学的状態の治療におけるこのようなリセクチン(resectin)の生物学的治療薬、診断剤または薬物標的としての使用、またはそのヒト疾患との潜在的な関連性を探るための体系的な実験的解析は行われていない。哺乳動物において生命に重要な既知の機能を有する不可欠なハウスキーピング遺伝子として、AARSは、哺乳動物における薬物標的として考えられたことはなく、また非合成酵素活性を有するリセクチン(resectin)を同定するために、標準的なゲノム配列決定、バイオインフォマティクスまたはそれと同様の努よって解析されることもなかった。標準的な生化学研究の努力は、AARSリセクチン(resectin)の生物学的特性およびその治療および診断との潜在的な関連性を特徴付けることとは異なる方向に同様に向けられてきたが、それは主として、その対応する完全長親AARSの役割が既に理解されているからである。

本発明の実施形態は概略的には、細胞外シグナル伝達活性のような非カノニカルな生物活性ならびに/または治療および診断関連のその他の特徴を有するアミノアシルtRNA合成酵素(AARS)のタンパク質フラグメントの発見に関する。AARSは、あらゆる生物体で見られるタンパク質合成機構の普遍的かつ不可欠な要素であるが、ヒトAARSおよびその関連タンパク質は、ヒトの正常な機能に寄与する強力な細胞シグナル伝達活性を有する、天然の切除されたバリアントを有する。これらのタンパク質フラグメントの活性は、AARSに関して一般に知られているタンパク質合成活性とは異なるものであり、本発明は、新規な生物学的治療薬、新規な発見研究用試薬としての、また多種多様なヒト疾患、例えば炎症性、血液性、神経変性性、自己免疫性、造血性、心血管性および代謝性の疾患または障害などに対する可能性のある治療または診断に使用し得る指向性の生物製剤および診断剤のための新規な抗原/標的としての、これらの切除されたタンパク質の発見および開発を含む。

したがって、本発明のAARSタンパク質フラグメントを「リセクチン(resectin)」または代わりに「アペンダクリン(appendacrine)」と呼ぶ場合がある。上述のように、「リセクチン(resectin)」という用語は、所与のAARSタンパク質フラグメントを、通常はその非カノニカルな活性を覆い隠しているその完全長親AARS配列との関連から切り取るまたは切除する過程に由来する。ある場合には、本発明のAARSタンパク質フラグメントおよびポリヌクレオチドは、天然に存在するもの(例えば、タンパク質分解性のスプライスバリアント)、人工的に誘導されたものまたは予測されたものを問わず、この切除過程が生じることにより同定された。「アペンダクリン(appendacrine)」という用語は、「append(付加する)」(ラテン語「appender」に由来)と「separate(分離する)」または「discern(識別する)」こと(ギリシャ語「crines」に由来)とを組み合わせたものに由来し、これもAARSタンパク質フラグメントの1つ以上の付加ドメインをその対応する完全長または親AARS配列から分離することを表している。

少数のAARSフラグメントが非合成酵素活性を有することが既に示されているが、このようなフラグメントのバイオセラピューティック、発見または診断での使用のための発現、単離、精製および特徴付けは限られており、このような活性がAARSの全ファミリーの各メンバーまたは別のフラグメントと関連があるということを、当業者は容易に理解しなかったであろう。ここでは系統的アプローチを用いて、バイオセラピューティック発見および診断での使用に関して20のミトコンドリアAARSおよび20の細胞質AARS(および関連タンパク質)のAARSタンパク質フラグメントを発見し、検証した。例えば、本発明のAARSタンパク質フラグメントおよびそれをコードするポリヌクレオチドの特定のものは、主としてタンパク質分解フラグメントを同定する質量分析(MS)を用いて生物試料から同定され、他のものは、主としてスプライスバリアントを同定するディープシーケンシング技術により同定された。他のAARSタンパク質フラグメントは、例えばヒトおよび下等生物由来の合成酵素を鍵となる境界(例えば、プロテアーゼ部位)とともにコンピュータ的に比較するなどして、アミノ酸配列のコンピュータ予測を用いて同定され、このアプローチでは、非カノニカルな生物活性を有するタンパク質分解フラグメントおよび機能ドメインを識別する特定の基準に基づく完全長AARSの配列解析を用いた。

AARSの新規なリセクチン(resectin)は予想外であり、その差次的発現も予想外である。特定の切除は通常、異なる処理下で(例えば、有血清または無血清培地で増殖した細胞から)、異なる成長段階(例えば、成体脳対胎児脳)において、異なる組織タイプ(例えば、膵臓対肝臓)で見られる。すべてのアミノアシルtRNA合成酵素にカノニカルな機能が同じ細胞部位において、比較的均整のとれた量で必要とされるにもかかわらず、発現パターンがすべてのアミノアシルtRNA合成酵素で同じというわけではない。同時に他のアミノアシルtRNA合成酵素活性の量が増加することなく、1つのアミノアシルtRNA合成酵素活性のレベルが増加するとは考えられないであろう。質量分析法およびディープシーケンシングのデータは、アミノアシルtRNA合成酵素リセクチン(resectin)は、確かにレベルが様々であり、また異なる部位で、異なる段階で生じるということを示している。

さらに、AARSタンパク質フラグメントを発現させ、その生物学的特性を識別するのに十分な純度にまで精製することができる。これまでフラグメントは、非合成酵素活性の適切な生物学的特徴付けができるほど純度、フォールディングおよび安定性が十分ではないことが多かった。例えば、細胞ベースのアッセイを純度、安定性、可溶性およびフォールディングが十分なリセクチン(resectin)とともに用いて、その重要なバイオセラピューティック、発見または診断の活性を明らかにする。

具体的には、本発明の実施形態は、グリシルtRNA合成酵素のタンパク質フラグメント、関連する薬剤、およびバイオセラピューティック、発見または診断での使用のための組成物、ならびにその使用法に関する。本発明の組成物は、本明細書に記載されているような各種診断、創薬および治療応用において有用である。好ましくは、AARSタンパク質およびフラグメントを精製し、このようなバイオセラピューティック、発見または診断での使用で必要とされるまで適当な条件下で保管する。

特定の実施形態は、表1〜3または表4〜6または表7〜9に記載されているアミノ酸配列を含み、かつ溶解度が少なくとも約5mg/mlである、少なくとも約100、90、80、70、60、50または40個のアミノ酸の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントを含む組成物を含み、組成物はタンパク質ベースで少なくとも約95%の純度およびタンパク質1mg当たり約10EU未満のエンドトキシンを有する。一態様では、組成物は治療用組成物である。特定の実施形態では、組成物は実質的に無血清である。ある実施形態では、AARSタンパク質フラグメントは非カノニカルな活性を含む。ある実施形態では、非カノニカルな生物活性は、細胞外シグナル伝達の調節、細胞増殖の調節、細胞分化の調節、遺伝子転写の調節、サイトカイン産生もしくは活性の調節、サイトカイン受容体活性の調節および炎症の調節から選択される。ある実施形態では、AARSタンパク質フラグメントは、細胞ベースの非カノニカルな生物活性に関して、EC50が約1nM、約5nM、約10nM、約50nM、約100nM未満または約200nM未満である。

特定の実施形態では、AARSタンパク質フラグメントは異種ポリペプチドと融合している。ある実施形態では、AARS融合タンパク質は、AARSタンパク質フラグメントの非カノニカルな活性を実質的に保持している。ある実施形態では、AARS融合タンパク質は、AARSタンパク質フラグメントの非カノニカルな活性を抑制する。ある実施形態では、異種ポリペプチドはAARSタンパク質フラグメントのN末端に結合している。ある実施形態では、異種ポリペプチドはAARSタンパク質フラグメントのC末端に結合している。上記いずれかの実施形態の一態様では、異種ポリペプチドは、精製タグ、エピトープタグ、標的化配列、シグナルペプチド、膜転位配列およびPK調節物質からなる群より選択される。

特定の実施形態では、組成物は、AARSタンパク質フラグメントを少なくとも約10mg/mlの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物は、少なくとも90%の単分散であるAARSタンパク質フラグメントを含む。特定の実施形態では、組成物は、約3%未満の高分子量凝集タンパク質を含む。特定の実施形態では、組成物は、PBS中少なくとも10mg/mLの濃度に4℃で1週間保管された場合、3%未満の凝集を示す。特定の実施形態では、組成物は、PBS中少なくとも10mg/mLの濃度に室温で1週間保管された場合、3%未満の凝集を示す。

リセクチン(resectin)のこのような特性を測定するための各種アッセイが本明細書に記載され、本発明の態様を定義するために使用され得る。特定の態様では、これらの特性は、本明細書に記載のAARSタンパク質フラグメントのバイオセラピューティックでの使用に好ましいものである。

特定の実施形態は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のアミノ酸の置換、削除および/または付加により表1〜3または表4〜6または表7〜9に記載されているアミノ酸配列とは異なる、少なくとも40アミノ酸の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントを含む組成物を含み、改変タンパク質フラグメントは、実質的に未改変タンパク質の非カノニカルな活性を保持しているか、または非カノニカルな活性に関してドミナントネガティブ表現型を有し、タンパク質フラグメントの溶解度は少なくとも約5mg/mlであり、組成物はタンパク質ベースで少なくとも約95%の純度およびタンパク質1mg当たり約10EU未満のエンドトキシンを有する。特定の実施形態では、組成物は実質的に無血清である。

他の実施形態は、表1〜3または表4〜6または表7〜9に記載されている単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントと特異的に結合する単離抗体を含む組成物を含み、AARSタンパク質フラグメントに対する抗体の親和性は、対応する完全長AARSポリペプチドに対するその親和性よりも約10倍強い。本発明の驚くべき態様の1つは、抗体またはその他の指向性生物製剤が接近しやすい「新規な」表面を有する特定のリセクチン(resectin)を含むが、これに対し完全長AARSは、他の配列または近接するドメインでこれらの表面を「隠している」か、または覆っている。また切除過程により、これまでに未同定の生物活性を明らかにするためのへの露出度も高まり得る。ある実施形態は、表1〜3または表4〜6または表7〜9に記載されている単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントと特異的に結合する単離抗体を含む組成物を含み、抗体は、AARSタンパク質フラグメントに対する少なくとも約10nMの親和性および対応する完全長AARSポリペプチドに対する少なくとも約100nMの親和性を有する。ある実施形態では、抗体は、表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載されているAARSポリペプチドに固有のスプライスジャンクション内にあるエピトープ、あるいはこのスプライス部位のアミノ酸配列C末端と結合する。特定の実施形態では、抗体は、AARSタンパク質フラグメントの非カノニカルな活性に拮抗する。このようなアンタゴニストは、対応する親または完全長AARSと任意に結合し得る。

他の態様は、表1〜3または表4〜6または表7〜9に記載されているアミノ酸配列を含む少なくとも40個のアミノ酸の実質的に純粋なアミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントと、AARSタンパク質フラグメントと結合する結合パートナーとを含むバイオアッセイ系に関する。一態様では、結合パートナーは、細胞表面受容体タンパク質、核酸、脂質膜、細胞調節タンパク質、酵素および転写因子からなる群より選択される。任意に、このような受容体は細胞、好ましくは、明らかになったリセクチン(resectin)の生物学に関連した細胞の一部であり得る。

特定の実施形態は、表1〜3または表4〜6または表7〜9に記載されているアミノ酸配列を含む少なくとも40個のアミノ酸の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントと、少なくとも1個の細胞が前記AARSタンパク質フラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む操作された細胞集団とを含む、細胞組成物を含む。一態様では、細胞は無血清培地で増殖することができる。

また、表1〜3または表4〜6または表7〜9に記載されているアミノ酸配列を含む少なくとも50個または100個のアミノ酸の実質的に純粋なアミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントと、タンパク質フラグメントと結合する細胞表面受容体またはその細胞外部分を含む細胞と、AARSタンパク質フラグメントと細胞外受容体の間の結合または相互作用を調節する約2000ダルトン未満の分子または第二のポリペプチドとを含む、検出系も含まれる。

特定の実施形態は、表1〜3または表4〜6または表7〜9に記載されているアミノ酸配列を含む少なくとも40個のアミノ酸の実質的に純粋なアミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントと、AARSタンパク質フラグメントと結合する細胞表面受容体またはその細胞外部分を含む細胞とを含む診断系を含み、系または細胞は、細胞表面受容体またはその細胞外部分のレベルまたは活性の変化の検出を可能にする指示分子を含む。

特定の実施形態は、表1〜3または表4〜6または表7〜9に記載されているアミノ酸配列を含む少なくとも40個のアミノ酸の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントと、少なくとも1個の細胞が前記AARSタンパク質フラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む操作された細胞集団と、少なくとも約10リットルの無血清細胞培地と、無菌容器から成る細胞増殖装置を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の方法または組成物のいずれかで使用する細胞は、任意に抗生物質と誘導物質とを含む無血清培地中で増殖することができる。

ある実施形態は、表1〜3または表4〜6または表7〜9に記載されているAARSスプライスバリアントの固有のスプライスジャンクションを標的とする配列を含む、アンチセンスまたはRNA干渉(RNAi)剤に関する。

また、表1〜3または表4〜6または表7〜9に記載されているアミノ酸配列を含む少なくとも40個のアミノ酸の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントを含む治療用組成物も含まれ、タンパク質フラグメントは結合パートナーと特異的に結合し、かつ少なくとも約5mg/mlの溶解度を有し、組成物は、タンパク質ベースで少なくとも約95%の純度を有する。ある態様では、組成物はタンパク質1mg当たり10EU未満のエンドトキシンを有する。

また、表1〜3または表4〜6または表7〜9に記載されているアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%同一である少なくとも40個のアミノ酸の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントを含む組成物も含まれ、タンパク質フラグメントの溶解度は少なくとも約5mg/mlであり、組成物はタンパク質ベースで少なくとも約95%の純度およびタンパク質1mg当たり10EU未満のエンドトキシンを有する。任意の上記実施形態では、組成物は、自身の見かけの分子質量に対して少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約95%の単分散であるAARSタンパク質フラグメントを含み得る。任意の上記実施形態の別の態様では、組成物は、約10%未満(タンパク質ベース)の高分子量凝集タンパク質、または約5%未満の高分子量凝集タンパク質、または約4%未満の高分子量凝集タンパク質、または約3%未満の高分子量凝集タンパク質、または2%未満の高分子量凝集タンパク質、または約1%未満の高分子量凝集タンパク質を含む。

任意の上記実施形態の別の態様では、組成物は、PBS中少なくとも10mg/mLの濃度に4℃で1週間保管された場合、約10%未満の凝集、またはPBS中少なくとも10mg/mLの濃度に4℃で1週間保管された場合、約5%未満の凝集、またはPBS中少なくとも10mg/mLの濃度に4℃で1週間保管された場合、約3%未満の凝集、またはPBS中少なくとも10mg/mLの濃度に4℃で1週間保管された場合、約2%未満の凝集、またはPBS中少なくとも10mg/mLの濃度に4℃で1週間保管された場合、約1%未満の凝集を示す。

特定の実施形態は、表1〜3または表4〜6または表7〜9に記載されているアミノ酸配列を含む少なくとも40個のアミノ酸の実質的に純粋なアミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントと、それと共有結合または非共有結合している少なくとも1つの部分とを含む、組成物を含む。ある実施形態では、部分は検出可能な標識である。ある実施形態では、部分は水溶性ポリマーである。ある実施形態では、部分はPEGである。任意の上記実施形態の一態様では、部分はタンパク質フラグメントのN末端と結合している。任意の上記実施形態の一態様では、部分はタンパク質フラグメントのC末端と結合している。

特定の実施形態は、表1〜3または表4〜6または表7〜9に記載されているアミノ酸配列を含む少なくとも40個のアミノ酸の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントあるいはその生物学的に活性なフラグメントまたはバリアントと結合した固体基質を含む組成物を含み、タンパク質フラグメントの溶解度は少なくとも約5mg/mlであり、組成物はタンパク質ベースで少なくとも約95%の純度を有する。

また、表1〜3または表4〜6または表7〜9に記載されている単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントと特異的に結合する結合物質を含む組成物も含まれ、結合物質剤は、タンパク質フラグメントに対して少なくとも約1nMの親和性を有する。一態様では、結合物質は、表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載されているAARSポリペプチドに固有のスプライスジャンクション内にあるエピトープ、あるいはこのスプライス部位のアミノ酸配列C末端と結合する。ある実施形態では、結合物質は、AARSポリペプチドの非カノニカルな活性に拮抗する。

特定の実施形態は、本明細書に記載のAARSタンパク質フラグメントのアミノ酸配列、本明細書に記載のAARSポリヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列、またはそのバリアントもしくはフラグメントを含む、単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)ポリペプチドを含む。特定のAARSポリペプチドは、表1〜3もしくは表4〜6もしくは表7〜9または表E2に開示されているAARS参照配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%同一である、アミノ酸配列を含む。特定のAARSポリペプチドは、表1〜3もしくは表4〜6もしくは表7〜9または表E2に開示されているAARS参照配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%同一であるアミノ酸配列から実質的になる。特定の実施形態では、ポリペプチドは非カノニカルな生物活性を含む。特定の実施形態では、非カノニカルな生物活性は、細胞シグナル伝達(例えば、細胞外シグナル伝達)の調節、細胞増殖の調節、細胞遊走の調節、細胞分化の調節、アポトーシスもしくは細胞死の調節、血管新生の調節、細胞結合の調節、細胞代謝の調節、細胞内取込みの調節、遺伝子転写の調節、または分泌、サイトカイン産生もしくは活性の調節、サイトカイン受容体活性の調節および炎症の調節から選択される。

他の態様は、本明細書に記載の単離AARSポリペプチド、AARSポリペプチドの結合パートナーまたは両者の複合体に対する結合特性を示す、抗体およびその他の結合物質を含む。ある実施形態では、AARSポリペプチドに対する抗体または結合物質の親和性は、対応する完全長AARSポリペプチドに対するその親和性よりも約10倍強い。特定の実施形態では、結合物質は、ペプチド、ペプチド模倣物、アドネクチン、アプタマーおよび小分子から選択される。特定の実施形態では、抗体または結合物質は、AARSポリペプチドの非カノニカルな活性に拮抗する。他の実施形態では、抗体または結合物質は、AARSポリペプチドの非カノニカルな活性を刺激する。

特定の実施形態は、本明細書に記載のAARSポリポリヌクレオチドのヌクレオチド配列、本明細書に記載のAARSタンパク質フラグメントをコードするヌクレオチド配列、またはそのバリアント、フラグメントもしくは相補体を含む、単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)ポリヌクレオチドを含む。特定のAARSポリヌクレオチドは、表1〜3もしくは表4〜6もしくは表7〜9または表E2に開示されているAARS参照ポリヌクレオチドと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%同一であるヌクレオチド配列またはその相補体を含む。ある実施形態では、ヌクレオチド配列は、細菌での発現に対してコドン最適化されている。一態様では、ヌクレオチド配列は、表E2に開示されているポリヌクレオチド配列と少なくとも80%同一である。

特定のAARSポリヌクレオチドは、表1〜3もしくは表4〜6もしくは表7〜9または表E2に開示されているAARS参照ポリヌクレオチドと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%同一であるヌクレオチド配列またはその相補体から実質的になる。他のAARSポリヌクレオチドは、表1〜3もしくは表4〜6もしくは表7〜9または表E2に開示されているAARS参照ポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含むか、またはそのようなヌクレオチド配列から実質的になる。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、プライマー、プローブおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドから選択される。特定の実施形態では、プライマー、プローブまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドは、AARSポリヌクレオチド内の特定のもしくは固有のスプライス部位および/またはこのスプライス部位の配列3’に対して標的化されている。

特定の実施形態は、試料中のAARSタンパク質フラグメントの存在またはレベルを決定する方法を含み、この方法は、試料を本明細書に記載のAARSタンパク質フラグメントと特異的に結合する1つ以上の結合物質と接触させ、結合物質の有無を検出し、これによりAARSタンパク質フラグメントの存在またはレベルを決定することとを含む。他の実施形態は、試料中のAARSタンパク質フラグメントの存在またはレベルを決定する方法を含み、この方法は、本明細書に記載のタンパク質フラグメントを特異的に同定することができる検出器で試料を解析し、これによりAARSタンパク質フラグメントの存在またはレベルを決定することを含む。特定の実施形態では、検出器は、質量分析器(MS)、フローサイトメータ、タンパク質イメージング装置、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)またはタンパク質マイクロアレイである。特定の実施形態は、AARSタンパク質フラグメントの存在またはレベルを対照試料または所定の値と比較することを含む。特定の実施形態は、試料の状態を特徴付けて、それを対照と区別することを含む。特定の実施形態では、試料および対照は細胞または組織を含み、その方法は、異なる種間の細胞もしくは組織、異なる組織もしくは器官の細胞、異なる細胞発生段階の細胞、異なる細胞分化段階の細胞、異なる生理状態の細胞、または健常細胞と疾患細胞を区別することを含む。例えば、選択されたリセクチン(resectin)は、ストレスまたは傷害のような条件下でより大量に存在し得る。

特定の実施形態は、本明細書に記載のアミノアシルtRNA合成酵素(AARS)ポリペプチドまたはその1つ以上の細胞結合パートナーと特異的に結合する化合物を同定する発見方法およびそのような化合物を同定するための関連組成物を含み、これらは、a)AARSポリペプチドまたはその細胞結合パートナーまたはその両方を適当な条件下で少なくとも1つの試験化合物と結合させ、b)AARSポリペプチドまたはその細胞結合パートナーまたはその両方と試験化合物との結合を検出することにより、AARSポリペプチドまたはその細胞結合パートナーまたはその両方と特異的に結合する化合物を同定することを含む。特定の実施形態では、試験化合物は、ポリペプチドもしくはペプチド、抗体もしくはその抗原結合フラグメント、ペプチド模倣物または小分子である。特定の実施形態では、試験化合物は、AARSポリペプチドまたはその細胞結合パートナーの非カノニカルな生物活性を刺激する。他の実施形態では、試験化合物は、ARSポリペプチドまたはその細胞結合パートナーの非カノニカルな生物活性に拮抗する。特定の実施形態は、上記方法により同定されるアゴニスト(例えば、小分子、ペプチド)のような化合物を含む。

特定の実施形態は、試料中のAARSスプライスバリアントのポリヌクレオチド配列の存在またはレベルを決定する方法を含み、この方法は、試料を本明細書に記載のAARSポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズする1つ以上のオリゴヌクレオチドと接触させることと、試料中のオリゴヌクレオチドの有無を検出することと、これによりAARSスプライスバリアントのポリヌクレオチド配列の存在またはレベルを決定することとを含む。他の実施形態は、試料中のAARSスプライスバリアントのポリヌクレオチド配列の存在またはレベルを決定する方法を含み、この方法は、試料を、本明細書に記載のAARSポリヌクレオチドを特異的に増幅させる少なくとも2つのオリゴヌクレオチドと接触させることと、増幅反応を行うことと、増幅産物の有無を検出することと、これによりAARSスプライスバリアントのポリヌクレオチド配列の存在またはレベルを決定することとを含む。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、AARSスプライスバリアントに固有のスプライス部位と特異的にハイブリダイズするか、またはこれを特異的に増幅させる。特定の実施形態は、AARSタンパク質フラグメントまたはスプライスバリアントの存在またはレベルを対照試料または所定の値と比較することを含む。特定の実施形態は、試料の状態を特徴付けて、それを対照と区別することを含む。特定の実施形態では、試料および対照は細胞または組織を含み、その方法は、異なる種間の細胞もしくは組織、異なる組織もしくは器官の細胞、異なる細胞発生段階の細胞、異なる細胞分化段階の細胞、または健常細胞と疾患細胞を区別することを含む。

ある実施形態は、本明細書に記載のAARSポリヌクレオチド、本明細書に記載のAARSポリペプチド、本明細書に記載の結合物質、または上記方法により同定されるもしくは本明細書に記載されている化合物と、薬学的に許容される添加剤もしくは担体とを含む、医薬組成物を含む。

特定の実施形態は、細胞の細胞活性を調節する方法を含み、この方法は、細胞を、本明細書に記載のAARSポリヌクレオチド、本明細書に記載のAARSポリペプチド、本明細書に記載の結合物質、上記方法によるもしくは本明細書に記載の化合物、または本明細書に記載の医薬組成物と接触させることを含む。特定の実施形態では、細胞活性は、細胞増殖、細胞遊走、細胞分化、アポトーシスまたは細胞死、細胞シグナル伝達、血管新生、細胞結合、細胞内取込み、細胞分泌、代謝、サイトカイン産生または活性、サイトカイン受容体活性、遺伝子転写および炎症から選択される。一態様では、細胞は、脂肪前駆細胞、骨髄、好中球、血液細胞、肝細胞、アストロサイト、間葉系幹細胞および骨格筋細胞からなる群より選択される。

特定の実施形態では、細胞は対象中に存在する。特定の実施形態は、対象の治療を含み、対象は、腫瘍性疾患に関連した状態、免疫系の疾患もしくは状態、感染症、代謝性疾患、炎症性障害、神経細胞/神経疾患、筋/心血管疾患、造血異常に関連した疾患、血管新生異常に関連した疾患または異常な細胞生存に関連した疾患を有する。

また医薬化合物を製造するプロセスも含まれ、このプロセスは、a)表1〜3または表4〜6または表7〜9に記載されているアミノ酸配列を含む少なくとも40個のアミノ酸のAARSタンパク質フラグメントの存在下で、1つ以上の候補化合物のin vitroスクリーニングを行って、AARSタンパク質フラグメントと特異的に結合する化合物を同定し。b)工程a)で同定された化合物に関して細胞ベースアッセイまたは生化学アッセイまたは受容体アッセイを行って、AARSタンパク質フラグメントの1つ以上の非カノニカルな活性を調節する化合物を同定し、c)工程b)で同定された化合物の構造活性相関(SAR)を任意に評価してその構造を非カノニカルな活性の調節と関連付け、化合物を任意に誘導して非カノニカルな活性を調節するその能力を改変し、およびd)ヒトでの使用に十分な量の工程b)で同定された化合物または工程c)で誘導体化された化合物を生産することにより、医薬化合物を製造することを含む。

他の実施形態は医薬化合物を製造するプロセスを含み、このプロセスは、a)表1〜3または表4〜6または表7〜9のAARSタンパク質フラグメントと特異的に結合する細胞表面受容体またはその細胞外部分の存在下で、1つ以上の候補化合物のin vitroスクリーニングを行って、細胞表面受容体またはその細胞外部分と特異的に結合する化合物を同定し、b)工程a)で同定された化合物に関して細胞ベースアッセイまたは生化学アッセイまたは受容体アッセイを行って、AARSタンパク質フラグメントの1つ以上の非カノニカルな活性を調節する化合物を同定し、c)工程b)で同定された化合物の構造活性相関(SAR)を任意に評価してその構造を非カノニカルな活性の調節と関連付け、化合物を任意に誘導して非カノニカルな活性を調節するその能力を改変し、およびd)ヒトでの使用に十分な量の工程b)で同定された化合物または工程c)で誘導体化された化合物を生産することにより、医薬化合物を製造することを含む。

ある実施形態は、少なくとも1個の細胞が、異種性完全長アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、操作された細胞集団を含む細胞組成物を含み、細胞は無血清培地中で増殖することができる。一態様では、完全長アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質は、AARSタンパク質フラグメントの精製を容易にする異種性の精製タグまたはエピトープタグを含む。別の態様では、完全長アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質は、切断時のAARSタンパク質フラグメントの生成を可能にする異種性タンパク質分解部位を含む。

ある実施形態は、細胞内で表1〜3または表4〜6または表7〜9または表E2に記載されているAARSポリペプチドをin situで作製する方法を含み、この方法は、i)異種性完全長アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質を細胞内で発現させることを含み、細胞は、異種性完全長アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質を切断してAARSポリペプチドを生成することができるプロテアーゼを含む。

ある実施形態は、表1〜3または表4〜6または表7〜9または表E2に記載されているAARSポリペプチドを作製する方法を含み、この方法は、単離完全長アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質を、完全長アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質を切断してAARSポリペプチドを生成することができるプロテアーゼと接触させることを含む。

ある実施形態は、表1〜3または表4〜6または表7〜9または表E2のいずれかに記載されているAARSタンパク質フラグメントのタンパク質分解生成を可能にする異種性タンパク質分解部位を含む、操作された完全長アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質を含む。

ある実施形態は、単離完全長アミノアシルtRNA合成酵素タンパク質を含む組成物を含み、組成物は、タンパク質ベースで少なくとも約95%の純度およびタンパク質1mg当たり約10EU未満のエンドトキシンを有し、かつ実質的に無血清である。一態様では、完全長アミノアシルtRNA合成酵素タンパク質は、少なくとも10mg/mLの濃度で存在し、かつ少なくとも90%の単分散である。

特定の実施形態は、グリシルtRNA合成酵素(GlyRS)の変異、不適切な細胞内関係、過剰発現および/または細胞内分布により仲介される疾患の少なくとも1つの症状を低減または改善する方法を含み、この方法は、表1〜3または表4〜6または表7〜9または表E2のいずれかに記載のアミノ酸配列から実質的になる単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントを対象に投与することを含む。ある実施形態では、AARSタンパク質フラグメントは少なくとも40個のアミノ酸を有する。特定の実施形態では、AARSタンパク質フラグメントは非カノニカルな活性を有する。特定の実施形態では、AARSタンパク質フラグメントは異種融合パートナーと融合している。

異なる実施形態では、疾患は2D型シャルコー・マリー・トゥース病(CMT2D)またはV型遠位型脊髄性筋萎縮症(dSMA−V)である。特定の実施形態では、疾患はCMT2Dであり、少なくとも1つの症状は神経伝導速度の低下を含む。特定の実施形態では、対象は、E71G、L129P、P234KY、G240R、I280F、H418R、D500N、G526R、S581LおよびG598Aからなる群より選択されるグリシルtRNA合成酵素に少なくとも1つの変異を有することが決定されている。

ある実施形態では、疾患はdSMA−Vである。特定の実施形態では、少なくとも1つの症状は筋衰弱である。これらのおよび関連する実施形態では、対象は、E71G、L129P、G240RおよびG526Rからなる群より選択されるグリシルtRNA合成酵素に少なくとも1つの変異を有することが決定されている。

上記のように、表1〜3または表4〜6または表7〜9または表E2のいずれか1つのAARSタンパク質フラグメントと異種融合パートナーとを含む、融合タンパク質も含まれる。特定の実施形態では、AARS融合タンパク質は、AARSタンパク質フラグメントの非カノニカルな活性を実質的に保持している。ある実施形態では、AARS融合タンパク質は、AARSタンパク質フラグメントの非カノニカルな活性を抑制する。特定の実施形態では、異種ポリペプチドは、AARSタンパク質フラグメントのN末端に結合している。ある実施形態では、異種ポリペプチドは、AARSタンパク質フラグメントのC末端に結合している。特定の実施形態では、異種ポリペプチドは、精製タグ、エピトープタグ、標的化配列、シグナルペプチド、膜転位配列およびPK調節物質からなる群より選択される。

また、グリシルtRNA合成酵素(GlyRS)の変異、不適切な細胞内関係、過剰発現および/または細胞内分布により仲介される疾患の症状を低減または改善する方法も含まれ、この方法は、表1〜3または表4〜6または表7〜9または表E2のいずれかに記載の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントと特異的に結合する単離抗体または結合物質を対象に投与することを含み、ここでは、AARSタンパク質フラグメントに対する抗体の親和性は、対応する完全長AARSポリペプチドに対するその親和性よりも少なくとも約10倍強い。特定の実施形態では、抗体または結合物質は、AARSポリペプチドの非カノニカルな活性に拮抗する。 一実施形態において、例えば、以下の項目が提供される。 (項目1) 表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む少なくとも40個のアミノ酸の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントを含み、前記タンパク質フラグメントの溶解度が少なくとも約5mg/mLである組成物であって、タンパク質ベースで少なくとも約95%の純度およびタンパク質1mg当たり約10EU未満のエンドトキシンを有し、かつ実質的に無血清である、組成物。 (項目2) 前記AARSタンパク質フラグメントが、配列番号12、配列番号20、配列番号24、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号77、配列番号106、配列番号79、配列番号135、配列番号137および配列番号151からなる群より選択される配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目1に記載の組成物。 (項目3) 前記AARSタンパク質フラグメントが非カノニカルな生物活性を含む、項目1〜2のいずれかに記載の組成物。 (項目4) 前記非カノニカルな生物活性が、細胞外シグナル伝達の調節、好中球活性化の調節、細胞接着または走化性の調節、転写の調節、サイトカイン産生または活性の調節、炎症の調節およびサイトカイン受容体活性の調節から選択される、項目3に記載の組成物。 (項目5) 前記非カノニカルな生物活性が遺伝子転写の調節である、項目4に記載の組成物。 (項目6) 前記AARSタンパク質フラグメントが異種ポリペプチドと融合している、項目1〜5のいずれかに記載の組成物。 (項目7) 前記AARSタンパク質フラグメントの非カノニカルな活性を実質的に保持している、項目6に記載のAARS融合タンパク質。 (項目8) 前記AARSタンパク質フラグメントの非カノニカルな活性を抑制する、項目6に記載のAARS融合タンパク質。 (項目9) 前記異種ポリペプチドが、前記AARSタンパク質フラグメントのN末端に結合している、項目6に記載のAARS融合タンパク質。 (項目10) 前記異種ポリペプチドが、前記AARSタンパク質フラグメントのC末端に結合している、項目6に記載のAARS融合タンパク質。 (項目11) 前記異種ポリペプチドが、精製タグ、エピトープタグ、標的化配列、シグナルペプチド、膜転位配列およびPK調節物質からなる群より選択される、項目6に記載のAARS融合タンパク質。 (項目12) AARSタンパク質フラグメントを少なくとも約10mg/mLの濃度で含む、項目1〜5のいずれかに記載の組成物。 (項目13) 前記AARSタンパク質フラグメントが少なくとも90%の単分散である、項目12に記載の組成物。 (項目14) 約3%未満の高分子量凝集タンパク質を含む、項目12または13に記載の組成物。 (項目15) PBS中少なくとも10mg/mLの濃度に4℃で1週間保管された場合に3%未満の凝集を示す、項目12〜14のいずれかに記載の組成物。 (項目16) 約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11個のアミノ酸の置換、削除および/または付加により、表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列とは異なる少なくとも40個のアミノ酸の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントを含み、前記改変タンパク質フラグメントが未改変の前記タンパク質の非カノニカルな活性を実質的に保持し、溶解度が少なくとも約10mg/mLである組成物であって、タンパク質ベースで少なくとも約95%の純度およびタンパク質当たり約10EU未満のエンドトキシンであり、かつ実質的に血清が混入していない、組成物。 (項目17) 表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントと特異的に結合する単離抗体を含む組成物であって、前記AARSタンパク質フラグメントに対する前記抗体の親和性が、対応する完全長AARSポリペプチドに対するその親和性よりも約10倍強く、前記抗体が、前記AARSタンパク質フラグメントの非カノニカルな活性に拮抗する、組成物。 (項目18) 表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントと特異的に結合する単離抗体を含む組成物であって、前記抗体が、前記AARSタンパク質フラグメントに対する少なくとも約10nMの親和性と、対応する完全長AARSポリペプチドに対する少なくとも約100nMの親和性とを有する、組成物。 (項目19) 前記抗体が、表1〜3もしくは表4〜6もしくは表7〜9のいずれかに記載のAARSポリペプチド固有のスプライス部位内にあるエピトープまたはこのスプライス部位のアミノ酸配列C末端と結合する、項目17または18のいずれかに記載の組成物。 (項目20) 前記抗体が、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号84および配列番号87からなる群より選択される少なくとも5個の連続するアミノ酸を含むエピトープと結合する、項目17または18のいずれかに記載の組成物。 (項目21) 前記AARSポリペプチドの非カノニカルな活性に拮抗する、項目17または18のいずれかに記載の組成物。 (項目22) 表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む少なくとも40個のアミノ酸の実質的に純粋なアミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントと、前記AARSタンパク質フラグメントと結合する結合パートナーとを含む、バイオアッセイ系。 (項目23) 前記結合パートナーが、細胞表面受容体タンパク質、核酸、脂質膜、細胞調節タンパク質、酵素および転写因子からなる群より選択される、項目22に記載のバイオアッセイ系。 (項目24) 前記AARSタンパク質フラグメントが、配列番号12、配列番号20、配列番号24、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号77、配列番号106、配列番号79、配列番号135、配列番号137および配列番号151からなる群より選択される配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目22に記載の組成物。 (項目25) 表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む少なくとも40個のアミノ酸の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントと、少なくとも1個の細胞が前記AARSタンパク質フラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む操作された細胞集団とを含み、前記細胞が無血清培地で増殖することができる、細胞組成物。 (項目26) 表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む少なくとも40個のアミノ酸の実質的に純粋なアミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントと、前記タンパク質フラグメントと結合する細胞表面受容体またはその細胞外部分を含む細胞と、前記AARSタンパク質フラグメントと前記細胞外受容体との結合または相互作用を調節する約2000ダルトン未満の分子または第二のポリペプチドとを含む、検出系。 (項目27) 表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む少なくとも40個のアミノ酸の実質的に純粋なアミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントと、前記タンパク質フラグメントと特異的に結合する細胞表面受容体またはその細胞外部分を含む細胞とを含み、前記細胞が、前記細胞表面受容体またはその細胞外部分のレベルまたは活性の変化の検出を可能にする指示分子を含む、診断系。 (項目28) 表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載されているアミノ酸配列を含む少なくとも40個のアミノ酸の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントと、少なくとも1個の細胞が前記AARSタンパク質フラグメントをコードするポリヌクレオチドを含む操作された細胞集団と、少なくとも約10リットルの無血清増殖培地と、無菌容器とを含む、細胞増殖装置。 (項目29) 表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載のAARSスプライスバリアント固有のスプライス部位を標的とする配列を含む、アンチセンスまたはRNA干渉(RNAi)剤。 (項目30) 表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む少なくとも40個のアミノ酸の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントを含み、前記タンパク質フラグメントが、結合パートナー特異的と結合して生理作用を及ぼし、かつ少なくとも約5mg/mLの溶解度を有する治療用組成物であって、タンパク質ベースで少なくとも約95%の純度およびタンパク質1mg当たり約10EU未満である、治療用組成物。 (項目31) 前記AARSタンパク質フラグメントが、配列番号12、配列番号20、配列番号24、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号77、配列番号106、配列番号79、配列番号135、配列番号137および配列番号151からなる群より選択される配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目29に記載の治療用組成物。 (項目32) 前記結合パートナーが、細胞表面受容体、核酸、脂質膜、調節タンパク質、酵素および転写因子からなる群より選択される、項目29または30に記載の治療用組成物。 (項目33) 前記AARSタンパク質フラグメントが異種ポリペプチドと融合している、項目29または30に記載の治療用組成物。 (項目34) 前記AARS融合タンパク質が、前記AARSタンパク質フラグメントの非カノニカルな活性を実質的に保持している、項目32に記載の治療用組成物。 (項目35) 前記AARS融合タンパク質が、前記AARSタンパク質フラグメントの非カノニカルな活性を抑制する、項目32に記載の治療用組成物。 (項目36) 前記異種ポリペプチドが、前記AARSタンパク質フラグメントのN末端に結合している、項目32に記載の治療用組成物。 (項目37) 前記異種ポリペプチドが、前記AARSタンパク質フラグメントのC末端に結合している、項目32に記載の治療用組成物。 (項目38) 前記異種ポリペプチドが、精製タグ、エピトープタグ、標的化配列、シグナルペプチド、膜転位配列およびPK調節物質からなる群より選択される、項目32に記載の治療用組成物。 (項目39) AARSタンパク質フラグメントを少なくとも約10mg/mLの濃度で含む、項目29〜30のいずれかに記載の治療用組成物。 (項目40) 前記AARSタンパク質フラグメントが少なくとも90%の単分散である、項目29〜30のいずれかに記載の治療用組成物。 (項目41) 約3%未満の高分子量凝集タンパク質を含む、項目39に記載の治療用組成物。 (項目42) PBS中少なくとも10mg/mLの濃度に4℃で1週間保管された場合に3%未満の凝集を示す、項目39に記載の治療用組成物。 (項目43) 表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%同一である少なくとも40個のアミノ酸の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントを含み、前記タンパク質フラグメントの溶解度が少なくとも約5mg/mLである組成物であって、タンパク質ベースで少なくとも約95%の純度およびタンパク質1mg当たり約10EU未満のエンドトキシンを有する、組成物。 (項目44) 表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む少なくとも40個のアミノ酸の実質的に純粋なアミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントと、それと共有結合または非共有結合している少なくとも1つの部分とを含む、組成物。 (項目45) 前記AARSタンパク質フラグメントが、配列番号12、配列番号20、配列番号24、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号77、配列番号106、配列番号79、配列番号135、配列番号137および配列番号151からなる群より選択される配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目42に記載の組成物。 (項目46) 前記部分が検出可能な標識である、項目42または43に記載の組成物。 (項目47) 前記部分が水溶性ポリマーである、項目42または43に記載の組成物。 (項目48) 前記水溶性ポリマーがPEGである、項目42または43に記載の組成物。 (項目49) 前記部分が前記タンパク質フラグメントのN末端に結合している、項目42または43に記載の組成物。 (項目50) 前記部分が前記タンパク質フラグメントのC末端に結合している、項目42または43に記載の組成物。 (項目51) 表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む少なくとも40個のアミノ酸の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントと結合した固体基質を含み、前記タンパク質フラグメントの溶解度が少なくとも約5mg/mLである組成物であって、タンパク質ベースで少なくとも約95%の純度有する、組成物。 (項目52) 表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントと特異的に結合する結合物質を含み、前記結合物質が、前記タンパク質フラグメントに対して少なくとも約1nMの親和性を有する、組成物。 (項目53) 前記結合物質が、表1〜3もしくは表4〜6もしくは表7〜9のいずれかに記載のAARSポリペプチド固有のスプライス部位内にあるエピトープまたはこのスプライス部位のアミノ酸配列C末端と結合する、項目52に記載の組成物。 (項目54) 前記結合物質が、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号84および配列番号87からなる群より選択される少なくとも5個の連続するアミノ酸を含むエピトープと結合する、項目52に記載の組成物。 (項目55) 前記AARSポリペプチドの非カノニカルな活性に拮抗する、項目52に記載の組成物。 (項目56) 表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載のAARSタンパク質フラグメントのアミノ酸配列を含む、単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)ポリペプチド。 (項目57) 前記AARSポリペプチドが、配列番号12、配列番号20、配列番号24、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号77、配列番号106、配列番号79、配列番号135、配列番号137および配列番号151からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、項目56に記載の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)ポリペプチド。 (項目58) 表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかの配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)ポリペプチド。 (項目59) 前記AARSポリペプチドが、配列番号12、配列番号20、配列番号24、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号77、配列番号106、配列番号79、配列番号135、配列番号137および配列番号151からなる群より選択される、項目58に記載の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)ポリペプチド。 (項目60) 表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかの配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%同一であるアミノ酸配列から実質的になる、単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)ポリペプチド。 (項目61) 前記AARSポリペプチドが、配列番号12、配列番号20、配列番号24、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号77、配列番号106、配列番号79、配列番号135、配列番号137および配列番号151からなる群より選択される、項目60に記載の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)ポリペプチド。 (項目62) 非カノニカルな生物活性を含む、項目61に記載のポリペプチド。 (項目63) 前記非カノニカルな生物活性が、細胞外シグナル伝達の調節、好中球活性化の調節、細胞接着または走化性の調節、転写の調節、サイトカイン産生または活性の調節、炎症の調節およびサイトカイン受容体活性の調節から選択される、項目62に記載のポリペプチド。 (項目64) 前記非カノニカルな生物活性が転写の調節である、項目63に記載のポリペプチド。 (項目65) 前記AARSタンパク質フラグメントが異種ポリペプチドと融合している、項目62に記載のポリペプチド。 (項目66) 前記AARSタンパク質フラグメントの非カノニカルな活性を実質的に保持している、項目65に記載のAARS融合タンパク質。 (項目67) 前記AARSタンパク質フラグメントの非カノニカルな活性を抑制する、項目65に記載のAARS融合タンパク質。 (項目68) 前記異種ポリペプチドが、前記AARSタンパク質フラグメントのN末端に結合している、項目65に記載のAARS融合タンパク質。 (項目69) 前記異種ポリペプチドが、前記AARSタンパク質フラグメントのC末端に結合している、項目65に記載のAARS融合タンパク質。 (項目70) 前記異種ポリペプチドが、精製タグ、エピトープタグ、標的化配列、シグナルペプチド、膜転位配列およびPK調節物質からなる群より選択される、項目65に記載のAARS融合タンパク質。 (項目71) AARSタンパク質フラグメントを少なくとも約10mg/mLの濃度で含む、項目62に記載の組成物。 (項目72) 少なくとも90%の単分散であるAARSタンパク質フラグメントを含む、項目62に記載の組成物。 (項目73) 約3%未満の高分子量凝集タンパク質を含む、項目62に記載の組成物。 (項目74) 4℃で1週間、PBS中で少なくとも10mg/mLの濃度で保管された場合に3%未満の凝集を示す、項目62に記載の組成物。 (項目75) 項目60に記載の単離AARSポリペプチド、前記AARSポリペプチドの結合パートナーまたはその両方に対する結合特異性を示し、前記AARSポリペプチドに対する親和性が、対応する完全長AARSポリペプチドに対するその親和性よりも約10倍強い、抗体。 (項目76) 表1〜3もしくは表4〜6もしくは表7〜9のいずれかに記載のAARSポリペプチド固有のスプライス部位内にあるエピトープまたはこのスプライス部位のアミノ酸配列C末端と結合する、項目75に記載の抗体。 (項目77) 配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号84および配列番号87からなる群より選択される少なくとも5個の連続するアミノ酸を含むエピトープと結合する、項目75または76のいずれかに記載の抗体。 (項目78) 単離AARSポリペプチドとの結合に関して、項目75〜77のいずれかに記載の抗体と競合する抗体。 (項目79) 項目62に記載の単離AARSポリペプチドまたは前記AARSポリペプチドの結合パートナーに対して結合特異性を示す結合物質。 (項目80) ペプチド、可溶性受容体、アドネクチン、小分子およびアプタマーから選択される、項目79に記載の結合物質。 (項目81) 前記AARSポリペプチドの非カノニカルな活性に拮抗する、項目75〜80のいずれか1項に記載の抗体または結合物質。 (項目82) 前記AARSポリペプチドの非カノニカルな活性を刺激する、項目75〜80のいずれか1項に記載の抗体または結合物質。 (項目83) 表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載のAARSタンパク質フラグメントをコードするヌクレオチド配列、少なくとも80%の配列同一性を有するそのバリアント、そのフラグメントまたは相補体を含む、単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)ポリヌクレオチド。 (項目84) 前記ヌクレオチド配列が、配列番号13、配列番号21、配列番号25、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号78、配列番号107、配列番号80、配列番号136、配列番号138および配列番号152からなる群より選択される配列と少なくとも80%同一である、項目83に記載のポリヌクレオチド。 (項目85) 前記ヌクレオチド配列が細菌発現に対してコドン最適化されている、項目83に記載のポリヌクレオチド。 (項目86) 配列番号38、配列番号182、配列番号183、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号133、配列番号132、配列番号134、配列番号175、配列番号176および配列番号177から選択される配列と少なくとも80%同一である、項目85に記載のポリヌクレオチド。 (項目87) 項目83に記載のポリヌクレオチドと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%同一であるヌクレオチド配列またはその相補体を含む、項目83に記載のポリヌクレオチド。 (項目88) 項目83に記載のポリヌクレオチドと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または100%同一であるヌクレオチド配列またはその相補体から実質的になる、項目83に記載のポリヌクレオチド。 (項目89) 項目83に記載のポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)ポリヌクレオチド。 (項目90) プライマー、プローブおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドから選択される、項目89に記載のポリヌクレオチド。 (項目91) 前記AARSポリヌクレオチドの固有のスプライス部位と特異的にハイブリダイズする、項目90に記載のポリヌクレオチド。 (項目92) 試料中のAARSタンパク質フラグメントの存在またはレベルを決定する方法であって、前記試料を、表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載のAARSタンパク質フラグメントと特異的に結合する1つ以上の結合物質と接触させ、前記結合物質の有無を検出し、これにより前記AARSタンパク質フラグメントの存在またはレベルを決定することを含む、方法。 (項目93) 試料中のAARSタンパク質フラグメントの存在またはレベルを決定する方法であって、表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載のタンパク質フラグメントを特異的に同定することができる検出器で前記試料を解析し、これにより前記AARSタンパク質フラグメントの存在またはレベルを決定することを含む、方法。 (項目94) 前記検出器が、質量分析器(MS)、フローサイトメータ、タンパク質撮像装置、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)またはタンパク質マイクロアレイである、項目93に記載の方法。 (項目95) 試料中のAARSスプライスバリアントのポリヌクレオチド配列の存在またはレベルを決定する方法であって、前記試料を、項目83に記載のAARSポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズする1つ以上のオリゴヌクレオチドと接触させ、前記試料中の前記オリゴヌクレオチドの有無を検出し、これにより前記AARSスプライスバリアントのポリヌクレオチド配列の存在またはレベルを決定することを含む、方法。 (項目96) 試料中のAARSスプライスバリアントのポリヌクレオチド配列の存在またはレベルを決定する方法であって、前記試料を、項目83に記載のAARSポリヌクレオチドを特異的に増幅する少なくとも2つのオリゴヌクレオチドと接触させ、増幅反応を行うことと、増幅産物の有無を検出し、これにより前記AARSスプライスバリアントのポリヌクレオチド配列の存在または有無を決定することを含む、方法。 (項目97) 前記オリゴヌクレオチドが、AARSスプライスバリアントに固有のスプライス部位と特異的にハイブリダイズするか、またはこれを特異的に増幅する、項目95または96に記載の方法。 (項目98) 前記AARSタンパク質フラグメントまたはスプライスバリアントの存在またはレベルを、対照試料または所与の値と比較することをさらに含む、項目95〜97のいずれか1項に記載の方法。 (項目99) 前記試料の状態を特徴付けて、それを前記対照と区別することをさらに含む、項目98に記載の方法。 (項目100) 前記試料および対照が細胞または組織を含む項目98に記載の方法であって、異なる種間の細胞もしくは組織、異なる組織もしくは器官の細胞、異なる細胞発生段階の細胞、異なる細胞分化段階の細胞、異なる生理状態の細胞、または健常細胞と疾患細胞を区別することを含む、方法。 (項目101) 表1〜3もしくは表4〜6もしくは表7〜9のいずれかに記載のアミノアシルtRNA合成酵素(AARS)ポリペプチドまたはその1つ以上の細胞結合パートナーと特異的に結合する化合物を同定する方法であって、a)前記AARSポリペプチドまたはその細胞結合パートナーまたはその両方を適当な条件下で少なくとも1つの試験化合物と結合、b)前記AARSポリペプチドまたはその細胞結合パートナーまたはその両方と前記試験化合物との結合を検出することにより、前記AARSポリペプチドまたはその細胞結合パートナーまたはその両方と特異的に結合する化合物を同定することを含む、方法。 (項目102) 前記試験化合物が、ポリペプチドもしくはペプチド、抗体もしくはその抗原結合フラグメント、ペプチド模倣物または小分子である、項目101に記載の方法。 (項目103) 前記試験化合物が、前記AARSポリペプチドまたはその細胞結合パートナーの非カノニカルな生物活性を完全にまたは部分的に刺激する、項目101に記載の方法。 (項目104) 前記試験化合物が、前記AARSポリペプチドまたはその細胞結合パートナーの非カノニカルな生物活性に完全にまたは部分的に拮抗する、項目101に記載の方法。 (項目105) 項目101〜104のいずれか1項に記載の方法により同定される化合物。 (項目106) 項目56〜74のいずれか1項に記載のAARSポリペプチド、項目75〜82のいずれか1項に記載の抗体もしくは結合物質、項目83〜91のいずれか1項に記載のAARSポリヌクレオチドまたは項目105に記載の化合物と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。 (項目107) 対象における免疫応答で刺激を引き起こさない、項目106に記載の医薬組成物。 (項目108) 対象における免疫応答を刺激する少なくとも1つのアジュバントを含む、項目106に記載の医薬組成物。 (項目109) 細胞の細胞活性またはタンパク質を調節する方法であって、前記細胞またはタンパク質を、項目56〜74のいずれか1項に記載のAARSポリペプチド、項目75〜82のいずれか1項に記載の抗体または結合物質、項目83〜91のいずれか1項に記載のAARSポリヌクレオチド、項目105に記載の化合物または項目108に記載の医薬組成物と接触させることを含む、方法。 (項目110) 前記細胞活性が、細胞増殖、細胞分化、細胞シグナル伝達、遺伝子転写、血管新生、細胞結合、代謝、サイトカイン産生または活性、サイトカイン受容体活性および炎症から選択される、項目109に記載の方法。 (項目111) 前記細胞の型が、脂肪前駆細胞、骨髄、好中球、血液細胞、肝細胞、アストロサイト、間葉系幹細胞および骨格筋細胞からなる群より選択される、項目110に記載の方法。 (項目112) 前記細胞が対象中に存在する、項目111に記載の方法。 (項目113) 前記対象の治療を含み、前記対象が、腫瘍性疾患に関連した状態、免疫系の疾患もしくは状態、炎症性障害、感染症、代謝性疾患、神経細胞/神経疾患、筋/心血管疾患、造血異常に関連した疾患、血管新生異常に関連した疾患または異常な細胞生存に関連した疾患を有する、項目112に記載の方法。 (項目114) 医薬化合物を製造する工程であって、 a)表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む少なくとも40個のアミノ酸のAARSタンパク質フラグメントの存在下で、1つ以上の候補化合物のin vitroスクリーニングを行って、前記AARSタンパク質フラグメントと特異的に結合する化合物を同定し、 b)段階a)で同定された化合物に関して細胞ベースのアッセイを行って、前記AARSタンパク質フラグメントの1つ以上の非カノニカルな活性を調節する化合物を同定することと、 c)任意に、段階b)で同定された化合物の構造活性相関(SAR)を評価してその構造を前記非カノニカルな活性の調節と関連付け、任意に、前記化合物を誘導して前記非カノニカルな活性を調節するその能力を改変することと、 d)ヒトでの使用に十分な量の段階b)で同定された化合物または段階c)で誘導体化された化合物を生産することにより、医薬化合物を製造することと を含む、方法。 (項目115) 医薬化合物を製造するプロセスであって、 a)表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかのAARSタンパク質フラグメントと特異的に結合する細胞表面受容体またはその細胞外部分の存在下で、1つ以上の候補化合物のin vitroスクリーニングを行って、前記細胞表面受容体またはその細胞外部分と特異的に結合する化合物を同定し、 b)工程a)で同定された化合物に関して細胞ベースのアッセイを行って、前記AARSタンパク質フラグメントの1つ以上の非カノニカルな活性を調節する化合物を同定し、 c)任意に、工程b)で同定された化合物の構造活性相関(SAR)を評価してその構造を前記非カノニカルな活性の調節と関連付け、任意に、前記化合物を誘導して前記非カノニカルな活性を調節するその能力を改変するは、 d)ヒトでの使用に十分な量の段階b)で同定された化合物または段階c)で誘導体化された化合物を生産することにより、医薬化合物を製造することと を含む、方法。 (項目116) 少なくとも1個の細胞が、異種性完全長グリシルアミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、操作された細胞集団を含み、前記細胞が無血清培地中で増殖することができる、細胞組成物。 (項目117) 前記完全長アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質が、AARSタンパク質フラグメントの精製を容易にする異種性の精製タグまたはエピトープタグを含む、項目116に記載の細胞組成物。 (項目118) 前記完全長アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質が、切断時の前記AARSタンパク質フラグメントの生成を可能にする異種性タンパク質分解部位を含む、項目116または117に記載の細胞組成物。 (項目119) 細胞内で項目56〜74のいずれか1項に記載のAARSポリペプチドをin situで作製する方法であって、i)異種性完全長グリシルアミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質を細胞内で発現させることを含み、前記細胞が、前記異種性完全長アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質を切断して前記AARSポリペプチドを生成することができるプロテアーゼを含む、方法。 (項目120) 項目56〜74のいずれか1項に記載のAARSポリペプチドを作製する方法であって、単離完全長グリシルアミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質を、前記完全長アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質を切断してAARSポリペプチドを生成することができるプロテアーゼと接触させることを含む、方法。 (項目121) 表1〜3または表4〜6または表7〜9のいずれかに記載のAARSタンパク質フラグメントのタンパク質分解生成を可能にする異種性タンパク質分解部位を含む、操作された完全長グリシルアミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質。 (項目122) 単離完全長グリシルアミノアシルtRNA合成酵素タンパク質を含み、タンパク質ベースで少なくとも約95%の純度およびタンパク質1mg当たり約10EUのエンドトキシンを有し未満であり、かつ実質的に無血清である、組成物。 (項目123) 前記完全長グリシルアミノアシルtRNA合成酵素タンパク質が、少なくとも10mg/mLの濃度で存在し、かつ少なくとも90%の単分散である、項目122に記載の組成物。 (項目124) グリシルtRNA合成酵素(GlyRS)の変異、不適切な細胞内関係、過剰発現、または細胞内分布により仲介される疾患の少なくとも1つの症状を低減または改善する方法であって、表1〜3または表4〜6または表7〜9または表E2に記載のアミノ酸配列から実質的に成る単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントを対象に投与することを含む、方法。 (項目125) 前記疾患が、2D型シャルコー・マリー・トゥース病(CMT2D)またはV型遠位型脊髄性筋萎縮症(dSMA−V)である、項目124に記載の方法。 (項目126) 前記疾患がCMT2Dである、項目125に記載の方法。 (項目127) 前記少なくとも1つの症状が神経伝導速度の低下である、項目126に記載の方法。 (項目128) 前記対象が、E71G、L129P、P234KY、G240R、I280F、H418R、D500N、G526R、S581LおよびG598Aからなる群より選択されるグリシルtRNA合成酵素に少なくとも1つの変異を有することが決定されている、項目127に記載の方法。 (項目129) 前記疾患がdSMA−Vである、項目128に記載の方法。 (項目130) 前記少なくとも1つの症状が筋衰弱である、項目129に記載の方法。 (項目131) グリシルtRNA合成酵素(GlyRS)の変異、不適切な細胞内関係、過剰発現または細胞内分布により仲介される疾患の症状を低減または改善する方法であって、表1〜3または表4〜6または表7〜9または表E2に記載の単離アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)タンパク質フラグメントと特異的に結合する単離抗体または結合物質を対象に投与することを含み、前記AARSタンパク質フラグメントに対する前記抗体の親和性が、対応する完全長AARSポリペプチドに対するその親和性よりも少なくとも約10倍強い、方法。 (項目132) 前記抗体または結合物質が、前記AARSポリペプチドの非カノニカルな活性に拮抗する、項目131に記載の方法。

同定されたN末端AARSポリペプチドの相対的な位置およびサイズと重ね合わせたグリシルアミノアシルtRNA合成酵素のドメイン構造を模式的に示した図である。図1Aは質量分析から同定されたフラグメントを表し、図1Bはトランスクリプトームのディープシーケンシングから同定されたフラグメントを表し、図1Cはバイオインフォマティクス解析から同定されたフラグメントを表している。

同定されたN末端AARSポリペプチドの相対的な位置およびサイズと重ね合わせたグリシルアミノアシルtRNA合成酵素のドメイン構造を模式的に示した図である。図1Aは質量分析から同定されたフラグメントを表し、図1Bはトランスクリプトームのディープシーケンシングから同定されたフラグメントを表し、図1Cはバイオインフォマティクス解析から同定されたフラグメントを表している。

同定されたN末端AARSポリペプチドの相対的な位置およびサイズと重ね合わせたグリシルアミノアシルtRNA合成酵素のドメイン構造を模式的に示した図である。図1Aは質量分析から同定されたフラグメントを表し、図1Bはトランスクリプトームのディープシーケンシングから同定されたフラグメントを表し、図1Cはバイオインフォマティクス解析から同定されたフラグメントを表している。

同定されたC末端AARSポリペプチドの相対的な位置およびサイズと重ね合わせたグリシルアミノアシルtRNA合成酵素のドメイン構造を模式的に示した図である。図2Aは質量分析から同定されたフラグメントを表し、図2Bはトランスクリプトームのディープシーケンシングから同定されたフラグメントを表し、図2Cはバイオインフォマティクス解析から同定されたフラグメントを表している。

同定されたC末端AARSポリペプチドの相対的な位置およびサイズと重ね合わせたグリシルアミノアシルtRNA合成酵素のドメイン構造を模式的に示した図である。図2Aは質量分析から同定されたフラグメントを表し、図2Bはトランスクリプトームのディープシーケンシングから同定されたフラグメントを表し、図2Cはバイオインフォマティクス解析から同定されたフラグメントを表している。

同定されたC末端AARSポリペプチドの相対的な位置およびサイズと重ね合わせたグリシルアミノアシルtRNA合成酵素のドメイン構造を模式的に示した図である。図2Aは質量分析から同定されたフラグメントを表し、図2Bはトランスクリプトームのディープシーケンシングから同定されたフラグメントを表し、図2Cはバイオインフォマティクス解析から同定されたフラグメントを表している。

同定された内部AARSポリペプチドの相対的な位置およびサイズと重ね合わせたグリシルアミノアシルtRNA合成酵素のドメイン構造を模式的に示した図である。図3Aは質量分析から同定されたフラグメントを表し、図3Bはバイオインフォマティクス解析から同定されたフラグメントを表している。

同定された内部AARSポリペプチドの相対的な位置およびサイズと重ね合わせたグリシルアミノアシルtRNA合成酵素のドメイン構造を模式的に示した図である。図3Aは質量分析から同定されたフラグメントを表し、図3Bはバイオインフォマティクス解析から同定されたフラグメントを表している。

目次 I.概要 [0054] II.定義 [0063] III.精製AARSタンパク質フラグメントおよびバリアント [0106] IV.AARSポリヌクレオチド [0184] V.抗体 [0229] VI.抗体代替物およびその他の結合物質 [0244] VII.バイオアッセイおよび解析アッセイ [0259] VIII.発現系および精製系 [0266] IX.診断法および診断用組成物 [0304] X.アンチセンス剤およびRNAi剤 [0358] A.アンチセンス剤 [0361] B.RNA干渉剤 [0389] XI.創薬 [0415] XII.使用法 [0446] XIII.医薬製剤、投与およびキット [0474] XIV.実施例 [0509]

I.概要 本発明は、少なくとも部分的には、新規AARSポリペプチドの発見ならびにその調製法および使用法に関し、これは、天然の野生型タンパク質を天然の完全グリシルtRNA合成酵素遺伝子と比べて著しく異なる特性を示す新たな形態へ形質転換することを意味する。このようなAARSポリペプチドは、様々な組織で発現されるグリシルtRNA合成酵素の広範な配列解析および質量スペクトル解析を行い、次いで、潜在的な各AARSポリペプチドを体系的に作製および試験し、新規な生物活性および治療薬として好ましい特性を示す安定な可溶性タンパク質ドメインを表すタンパク質配列を同定することにより同定された。

この解析に基づき、グリシルtRNA合成酵素に由来するAARSポリペプチドの少なくとも6つの新規ファミリーが同定された。

一態様では、上記のグリシルRNA合成酵素由来AARSポリペプチドは、グリシルtRNA合成酵素のアミノ酸55〜450前後を含むポリペプチド配列を含む。

第二の態様では、上記のグリシルtRNA合成酵素由来AARSポリペプチドは、グリシルtRNA合成酵素のアミノ酸55〜189前後を含むポリペプチド配列を含む。

第三の態様では、上記のグリシルtRNA合成酵素由来AARSポリペプチドは、グリシルtRNA合成酵素のアミノ酸91〜561前後を含むポリペプチド配列を含む。

第四の態様では、上記のグリシルtRNA合成酵素由来AARSポリペプチドは、グリシルtRNA合成酵素のアミノ酸612〜739前後を含むポリペプチド配列を含む。

第五の態様では、上記のグリシルtRNA合成酵素由来AARSポリペプチドは、グリシルtRNA合成酵素のアミノ酸57〜121前後を含むポリペプチド配列を含む。

第六の態様では、上記のグリシルtRNA合成酵素由来AARSポリペプチドは、グリシルtRNA合成酵素のアミノ酸316〜739前後を含むポリペプチド配列を含む。

これらの新規AARSポリペプチドファミリーは、特にi)新規な生物活性、ii)好ましいタンパク質安定性および凝集性、ならびにiii)原核発現系において高レベルで発現および産生される能力を示す、これまで未知であった新規なタンパク質産物であり、上記の特性は無傷野生型タンパク質では見られない著しく異なったものである。

II.定義 別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術・科学用語は、本発明の属する分野の当業者により一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様のまたは同等の任意の方法および材料を本発明の実施また試験に用いることができるが、好適な方法および材料を記載する。本発明の目的のために、次の用語を以下で定義する。

冠詞「a」および「an」(1つの)は、冠詞の1つまたは1つを超えるまで(すなわち、少なくとも1つまで)の文法上の目的語を指すために本明細書で使用される。例として、「1つの要素(an element)」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。

「約」は、基準となる量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量、重量または長さが30、25、20、25、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1%だけ異なる量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量、重量または長さを意味する。

「アゴニスト」は、活性を増大させるまたは模倣する分子を指す。例えば、AARSまたは別のタンパク質の非カノニカルな生物活性。アゴニストは、AARSもしくはその結合パートナーと直接相互作用することにより、またはAARSが関与する生物学的経路の成分に作用することによりAARSの活性を調節する、タンパク質、核酸、炭水化物、小分子または他の任意の化合物もしくは組成物を包含し得る。部分アゴニストおよび完全アゴニストが包含される。

本明細書で使用される「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸および非天然に存在するアミノ酸だけでなく、アミノ酸の類似体および模倣物も意味するものとする。天然アミノ酸としては、タンパク質の生合成時に利用される20個の(L)−アミノ酸のほか、例えば4−ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、デスモシン、イソデスモシン、ホモシステイン、シトルリンおよびオルニチンなどの他のアミノ酸が挙げられる。非天然アミノ酸としては、例えば、(D)−アミノ酸、ノルロイシン、ノルバリン、p−フルオロフェニルアラニン、エチオニンなどが挙げられ、これらは当業者には公知である。アミノ酸類似体としては、改変型の天然に存在するアミノ酸および非天然に存在するアミノ酸が挙げられる。このような改変としては、例えば、アミノ酸の化学基および化学部分の置換すなわち置き換え、またはアミノ酸の誘導体化によるものを挙げることができる。アミノ酸模倣物としては、例えば、参照アミノ酸に特有の電荷および電荷間隔のような機能的に類似した特性を示す有機構造体が挙げられる。例えば、アルギニン(ArgまたはR)を模倣する有機構造体は、天然Argアミノ酸側鎖のe−アミノ基と類似した分子空間に位置し同じ移動度を有する正電荷部分を有し得る。また模倣物は、アミノ酸またはアミノ酸官能基の最適な間隔および電荷相互作用を維持するように拘束された構造も含み得る。当業者は、機能的に等価なアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物を構成する構造を知っているか、または決定することができる。

特定の態様では、非天然アミノ酸の使用を利用して、AARSタンパク質フラグメントの選択された非カノニカルな活性を改変する(例えば、増大させる)、またはタンパク質のin vivoもしくはin vitro半減期を変化させることができる。また非天然アミノ酸を用いて、AARSタンパク質の(選択的)化学修飾(例えば、PEG化)を容易にする(選択的)ことができる。例えば、特定の非天然アミノ酸により、所与のタンパク質にPEGのようなポリマーを選択的に付加してその薬物動態特性を向上させることが可能である。

アミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物の具体例は、例えば、RobertsおよびVellaccio,The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology,GrossおよびMeinhofer編,第5巻,p.341,Academic Press,Inc.,New York,N.Y.(1983)に記載されており、この巻全体が参照により本明細書に組み込まれる。その他の例としては、ペルアルキル化アミノ酸、特にペルメチル化アミノ酸が挙げられる。例えば、Combinatorial Chemistry,WilsonおよびCzarnik編,第11章,p.235,John Wiley & Sons Inc.,New York,N.Y.(1997)(この書物全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。さらに他の例としては、アミド部分(したがって、得られるペプチドのアミド骨格)が例えば糖環、ステロイド、ベンゾジアゼピンまた炭素環式化合物に置き換わっているアミノ酸が挙げられる。例えば、Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery,Manfred E.Wolff編,第15章,pp.619−620,John Wiley & Sons Inc.,New York,N.Y.(1995)(この書物全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣物およびタンパク質を合成する方法は当該技術分野で公知である(例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,420,109号;M.Bodanzsky,Principles of Peptide Synthesis(第1版および改訂第2版),Springer−Verlag,New York,N.Y.(1984 & 1993),第7章を参照;StewartおよびYoung,Solid Phase Peptide Synthesis,(第2版),Pierce Chemical Co.,Rockford,Ill.(1984)を参照されたい)。したがって、本発明のAARSポリペプチドは、天然および非天然アミノ酸、ならびにアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物から構成され得る。

「アンタゴニスト」という用語は、活性を低下させるまたは弱める分子を指す。例えば、AARSまたは別のタンパク質の非カノニカルな生物活性。アンタゴニストは、AARSもしくはその結合パートナーと直接相互作用することにより、またはAARSが関与する生物学的経路の成分に作用することによりAARSまたはその結合パートナーの活性を調節する、抗体のようなタンパク質、核酸、炭水化物、小分子または他の任意の化合物もしくは組成物を包含し得る。部分アンタゴニストおよび完全アンタゴニストが包含される。

「アミノアシルtRNA合成酵素」(AARS)という用語は一般に、その天然型または野生型で特定のアミノ酸またはその前駆体をすべてのその適合性のある同族の1つにエステル化してアミノアシルtRNAを形成することを触媒することができる酵素を指す。この「カノニカルな」活性において、アミノアシルtRNA合成酵素は2段階の反応を触媒する。すなわち、まずアミノアシルtRNA合成酵素が、アミノアシルアデニル酸を形成することによりそれぞれのアミノ酸を活性化し、ここではアミノ酸のカルボキシルがピロリン酸と置き換わってATPのα−リン酸と結合する。次いで、正しいtRNAが結合すると、アミノアシルアデニル酸のアミノアシル基がtRNAの2’または3’末端のOHに転移される。

クラスIアミノアシルtRNA合成酵素は一般に、2つの高度に保存された配列モチーフを有する。この酵素はアデノシンヌクレオチドの2’−OHにおいてアミノアシル化し、通常は単量体または二量体である。クラスIIアミノアシルtRNA合成酵素は一般に、3つの高度に保存された配列モチーフを有する。この酵素は同じアデノシンの3’−OHにおいてアミノアシル化し、通常は二量体または四量体である。クラスII酵素の活性部位は主に、αへリックスが隣接した7本鎖の逆平行βシートで構成されている。フェニルアラニン−tRNA合成酵素はクラスIIであるが、2’−OHにおいてアミノアシル化する。

AARSポリペプチドは、ミトコンドリア型および細胞質型のチロシルtRNA合成酵素(TyrRS)、トリプトファニルtRNA合成酵素(TrpRS)、グルタミニルtRNA合成酵素(GlnRS)、グリシルtRNA合成酵素(GlyRS)、ヒスチジルtRNA合成酵素(HisRS)、セリルtRNA合成酵素(SerRS)、フェニルアラニルtRNA合成酵素(PheRS)、アラニルtRNA合成酵素(AlaRS)、アスパラギニルtRNA合成酵素(AsnRS)、アスパルチルtRNA合成酵素(AspRS)、システイニルtRNA合成酵素(CysRS)、グルタミルtRNA合成酵素(GluRS)、プロリルtRNA合成酵素(ProRS)、アルギニルtRNA合成酵素(ArgRS)、イソロイシルtRNA合成酵素(IleRS)、ロイシルtRNA合成酵素(LeuRS)、リジルtRNA合成酵素(LysRS)、スレオニルtRNA合成酵素(ThrRS)、メチオニルtRNA合成酵素s(MetRS)またはバリルtRNA合成酵素(ValRS)の源を含む。これらのAARSポリペプチドの野生型または親配列は当該技術分野で公知である。

「コード配列」は、遺伝子のポリペプチド産物のコードに寄与する任意の核酸配列を意味する。これに対し、「非コード配列」という用語は、遺伝子のポリペプチド産物のコードに寄与しない任意の核酸配列を指す。

本明細書全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む」(「comprise」、「comprises」および「comprising」)という語は、記載されている工程もしくは要素または工程群もしくは要素群を包含し、また他のいかなる工程もしくは要素または工程群もしくは要素群も除外しないことを意味するものと理解される。

「〜からなる」は、語句「〜からなる」の後に続くすべてのものを含み、かつそれに限定されることを意味する。したがって、「〜からなる」という語句は、列挙された要素が必要または必須であり、また他の要素は一切存在し得ないことを表す。「〜から本質的になる」は、この語句の後に列挙されたどの要素も含み、かつ列挙された要素に関して本開示で明示される活性または作用に干渉しないまたはそれに寄与する他の要素に限定されることを意味する。したがって、「〜から本質的になる」という語句は、列挙された要素が必要または必須であるが、列挙された要素の活性または作用に著しい影響を与えるか否かによって、任意に他の要素が存在してもしなくてもよい。

「エンドトキシンフリー」または「実質的にエンドトキシンフリー」という記述は、一般的には、多くても微量(例えば、対象に対して臨床的に有害な生理作用を有さない量)のエンドトキシン、好ましくは検出不可能な量のエンドトキシンを含む組成物、溶媒および/または容器に関するものである。エンドトキシンとは、特定の細菌、通常はグラム陰性細菌に関連する毒素のことであるが、リステリア菌(Listeria monocytogenes)のようなグラム陽性細菌でもエンドトキシンが見られる場合がある。最もよく見られるエンドトキシンは、各種グラム陰性細菌の外膜で見られるリポ多糖(LPS)またはリポオリゴ糖(LOS)であり、これらは上記細菌が疾患を引き起こす能力において中心的な病原性を表す。ヒトでは少量のエンドトキシンが、有害な生理作用の中でも特に、発熱、血圧低下、ならびに炎症および凝固の活性化を引き起こし得る。

したがって、ヒトでは少量でも有害な作用が生じ得るため、AARSポリペプチドの薬剤生産では多くの場合、製剤および/または薬品容器からエンドトキシンの大部分またはすべての痕跡を除去することが望ましい。大部分のエンドトキシンを分解するためには一般に300℃を超える温度が必要であるため、発熱物質除去オーブン(depyrogenation oven)をこの目的に使用し得る。例えば、シリンジまたはバイアルのような一次包装材料に基づき、エンドトキシンレベルを3log減少させるためには、多くの場合、250℃のガラス温度と30分間の保持時間を組み合わせたもので十分である。本明細書に記載のまたは当該技術分野で公知の、例えばクロマトグラフィー法およびろ過法を含めた、エンドトキシンを除去するための他の方法が企図される。また、本発明の組成物中にエンドトキシンが存在する危険性を取り除かないまでも、低減するために、AARSポリペプチドを哺乳動物細胞のような真核細胞内で産生させて、そこから単離するという方法も含まれる。AARSポリペプチドを無血清細胞中で産生させて、そこから単離するという方法が好ましい。AARSポリペプチドを含むこのような組成物は、AARSポリペプチドと結合してその新規な生物学的特性を変化させる可能性のある血清またはエンドトキシンが混入したAARSポリペプチド組成物では見られない、新規で新しい生物学的および治療的特性を示す新しい製剤である。

エンドトキシンを、当該技術分野で公知の日常的な技術を用いて検出することができる。例えば、カブトガニ由来の血液を用いるリムルス試験(Limulus Ameobocyte Lysate assay)は、エンドトキシンの存在を検出するための非常に高感度な試験であり、この試験に基づくエンドトキシン検出のための試薬、キットおよび器具類を、例えばLonza Groupから購入することができる。この試験では、この反応を増幅する強力な酵素カスケードにより、検出可能なこのリムルスライセートの凝固が極めて低レベルのLPSで起こり得る。また、エンドトキシンを酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により定量化することもできる。実質的にエンドトキシンフリーであるためには、エンドトキシンレベルが、タンパク質1mg当たり約0.001EU、0.005EU、0.01EU、0.02EU、0.03EU、0.04EU、0.05EU、0.06EU、0.08EU、0.09EU、0.1EU、0.5EU、1.0EU、1.5EU、2EU、2.5EU、3EU、4EU、5EU、6EU、7EU、8EU、9EU未満または10EU未満であり得る。通常、1ngのリポ多糖(LPS)は約1〜10EUに相当する。

特定の実施形態では、組成物中の任意の所定の薬剤(例えば、AARSタンパク質フラグメント)の「純度」を具体的に定め得る。例えば、特定の組成物は、限定されるわけではないが、例えば、生化学および分析化学において化合物を分離、同定および定量化するために頻繁に使用される、よく知られた形態のカラムクロマトグラフィーである高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)による測定で、間の少数をすべて含めた少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%純粋な薬剤を含み得る。

本明細書で使用される「機能」および「機能的」などの用語は、生物学的機能、酵素機能または治療的機能を指す。

「遺伝子」は、染色体上の特定の遺伝子座を占め、転写制御配列および/または翻訳制御配列および/またはコード領域および/または非翻訳配列(例えば、イントロン、5’および3’非翻訳配列)からなる遺伝の単位を意味する。

「相同性」は、同一の、あるいは保存的置換を構成するアミノ酸のパーセンテージ数を指す。同一性は、参照により本明細書に組み込まれるGAP(Deverauxら、1984,Nucleic Acids Research 12,387−395)のような配列比較プログラムを用いて決定され得る。この方法では、本明細書に挙げられている配列と同じ長さまたは実質的に異なる長さの配列を、アライメントへのギャップ挿入により比較し得るが、このようなギャップは、例えばGAPで使用する比較アルゴリズムにより決定される。

「宿主細胞」という用語は、本発明の任意の組換えベクター、単離ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを受容し得るまたは受容した、個々の細胞または細胞培養物を包含する。宿主細胞は単一の宿主細胞の子孫を包含し、その子孫は、自然な、偶発的なまたは意図的な突然変異および/または変化により、元の親細胞と必ずしも(形態または総DNA量が)完全に一致していなくてもよい。宿主細胞は、in vivoまたはin vitroで本発明の組換えベクターまたはポリヌクレオチドによりトランスフェクトされた、またはこれに感染した細胞を包含する。本発明の組換えベクターを含む宿主細胞は組換え宿主細胞である。

「単離(された)」は、天然の状態で通常は付随している成分を、実質的にまたは本質的に含まない物質を意味する。例えば、本明細書で使用される「単離ポリヌクレオチド」は、その天然の状態では隣接する配列から精製されたポリヌクレオチド、例えば、通常はそのフラグメントと隣接する配列から切り取られたDNAフラグメントを包含する。あるいは、本明細書で使用される「単離ペプチド」または「単離ポリペプチド」などは、ペプチドまたはポリペプチド分子をその天然の細胞環境から、およびその細胞の他の成分との関係からin vitroで単離および/または精製することを包含する;すなわち、それはin vivoの物質がほとんど付随していない。

本明細書で使用される「mRNA」または時に「mRNA転写産物」と呼ばれる用語は、特に限定されないが、1つもしくは複数の遺伝子のプレmRNA転写産物、転写プロセシング中間体、翻訳の準備ができた成熟mRNAおよび転写産物、またはmRNA転写産物に由来する核酸を包含する。転写プロセシングは、スプライシング、編集および分解を含み得る。本明細書で使用される場合、mRNA転写産物由来の核酸は、mRNA転写産物またはその配列が最終的に鋳型として働いて合成された核酸を指す。mRNAから逆転写されるcDNA、そのcDNAから転写されるRNA、そのcDNAから増幅されるDNA、その増幅されたDNAから転写されるRNAなどはすべて、mRNA転写産物に由来するものであり、このような由来産物の検出は、試料中に元の転写産物が存在することおよび/または多量に存在することを示すものとなる。したがって、mRNA由来の試料としては、1つまたは複数の遺伝子のmRNA転写産物、そのmRNAから逆転写されるcDNA、そのcDNAから転写されるcRNA、遺伝子から増幅されるDNA、その増幅された遺伝子から転写されるRNAなどが挙げられるが、これらに限定されない。

本明細書で使用される「非カノニカルな」活性は一般に、i)インタクトな天然の完全長親タンパク質が有さず、本発明のAARSポリペプチドが有する新規な活性、またはii)インタクトな天然の完全長親タンパク質が有していた活性で、AARSポリペプチドがインタクトな天然の完全長親タンパク質に比べて有意に高い(すなわち、少なくとも20%高い)比活性を示す、もしくは新たな関連において活性を示す(例えば、インタクトな天然の完全長親タンパク質が有する他の活性から分離することにより)ような活性を指す。AARSポリペプチドの場合、非カノニカルな活性の非限定的な例としては、細胞外シグナル伝達、RNA結合、アミノ酸結合、細胞増殖の調節、細胞遊走の調節、細胞分化の調節(例えば、造血、ニューロン新生、筋形成、骨形成および脂肪生成)、遺伝子転写の調節、アポトーシスまたはその他の形態の細胞死の調節、細胞シグナル伝達の調節、細胞の取込みまたは分泌の調節、血管新生の調節、細胞結合の調節、細胞代謝の調節、サイトカイン産生または活性の調節、サイトカイン受容体活性の調節、炎症の調節などが挙げられる。

「半最大有効濃度」または「EC50」という用語は、定められた曝露時間後にベースラインと最大の中間の反応を誘発する、本明細書に記載のAARSタンパク質フラグメント、抗体または他の薬剤の濃度を指し、したがって、段階的な用量反応曲線のEC50は、その最大効果の50%が見られる化合物の濃度を表す。特定の実施形態では、本明細書に記載の薬剤のEC50は、上述の「非カノニカルな」活性に関して示される。またEC50は、in vivoで最大効果の50%を得るために必要な血漿中濃度も表す。同様に「EC90」は、その最大効果の90%が見られる薬剤または組成物の濃度を指す。「EC90」は、「EC50」とHillスロープから算出するか、または当該技術分野の日常的な知識を用いてデータから直接決定することができる。ある実施形態では、AARSタンパク質フラグメント、抗体または他の薬剤のEC50は、約0.01nM、0.05nM、0.1nM、0.2nM、0.3nM、0.4nM、0.5nM、0.6nM、0.7nM、0.8nM、0.9nM、1nM、2nM、3nM、4nM、5nM、6nM、7nM、8nM、9nM、10nM、11nM、12nM、13nM、14nM、15nM、16nM、17nM、18nM、19nM、20nM、25nM、30nM、40nM、50nM、60nM、70nM、80nM、90nM未満または100nM未満である。好ましくは、バイオセラピューティック組成物のEC50値は約1nM未満である。

「調節」という用語は、通常、対照と比べて統計的に有意なまたは生理学的に有意な量で「増加」または「刺激」、および「減少」または「低減」を包含する。したがって、「調節物質」は、使用する条件に応じてアゴニスト、アンタゴニストまたはその任意の混合物であり得る。「増加した」または「増強された」量とは通常、「統計的に有意な」量のことであり、組成物なしで(薬剤または化合物が存在しない)または対照組成物により生じる量の1.1、1.2、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30倍以上(例えば、500倍、1000倍)(1までの間または1を超えるすべての整数および小数点、例えば、1.5、1.6、1.7.1.8などを含む)の増加を包含し得る。「減少した」または低減された量とは通常、「統計的に有意な」のことであり、組成物なしで(薬剤または化合物が存在しない)または対照組成物により生じる量が1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%(間の整数をすべて含む)減少したことを包含し得る。非限定的な例として、カノニカルな活性と非カノニカルな活性との比較における対照は、その対応する完全長AARSと比較される目的AARSタンパク質フラグメント、またはその対応する完全長AARSに匹敵するカノニカルな活性を有するフラグメントAARSを含み得る。「統計的に有意な」量の他の例が本明細書に記載されている。

「〜から得られた」は、試料、例えばポリヌクレオチド抽出物またはポリペプチド抽出物などが、対象の特定の入手源から単離されるまたはそれに由来することを意味する。例えば、抽出物を、対象から直接分離した組織または生体液から得ることができる。また「〜に由来する」または「〜から得られた」は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の入手源を指す場合がある。例えば、本発明のAARS配列は、天然に存在するか人工的に生成されたかに関係なく、AARSタンパク質分解フラグメントまたはAARSスプライスバリアントまたはその一部分の配列情報に「由来」し得る、したがって、その配列を含む、その配列から実質的になる、またはその配列からなるものであり得る。

「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書では、アミノ酸残基ポリマー、そのバリアントならびに合成および天然の類似体を表すために互換的に使用される。したがって、これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が天然のアミノ酸に対応する化学的類似体のような非天然の合成アミノ酸であるアミノ酸のポリマー、ならびに天然のアミノ酸ポリマーおよびその天然の化学的誘導体などに適用される。このような誘導体は、例えば、AARS参照フラグメントのピログルタミル、iso−アスパルチル、タンパク質分解、リン酸化、グリコシル化、酸化、異性化および脱アミノ化バリアントを含めた翻訳後修飾および分解産物を包含し得る。

本明細書で使用される「配列同一性」という記述または例えば、「〜と50%同一の配列」を含む記述は、比較ウインドウにおけるヌクレオチド対ヌクレオチドに基づいて、またはアミノ酸対アミノ酸に基づいて配列が同一である程度を指す。したがって、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウインドウにおいて最適に整列された2つの配列を比較し、両配列において同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一アミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が存在する位置の数を決定して一致する位置の数を出し、その一致する位置の数を比較ウインドウ内の位置の総数(すなわち、ウインドウサイズ)で割り、その結果に100を掛けることにより、配列同一性のパーセンテージを出す。

2つ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列の関係を記述するために使用される用語には、「参照配列」、「比較ウインドウ」、「配列同一性」「配列同一性のパーセンテージ」および「実質的な同一性」がある。「参照配列」は、長さがヌクレオチドおよびアミノ酸残基を含めた少なくとも12個、多くは15〜18個、および多くの場合少なくとも25個のモノマー単位である。2つのポリヌクレオチドはそれぞれ、(1)2つのポリヌクレオチドの間で同じである配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列の一部分のみ)および(2)2つのポリヌクレオチド間で異なる配列を含み得るため、2つ(以上)のポリヌクレオチド間の配列比較は通常、「比較ウインドウ」において2つのポリヌクレオチドの配列を比較し、配列類似性の局所領域を同定および比較することにより行われる。「比較ウインドウ」は、2つの配列を最適に整列させた後、配列を同じ数の連続する位置の参照配列と比較するための、少なくとも6個、一般的には約50〜約100個、より一般的には約100〜約150個の連続する位置からなる概念上のセグメントを指す。比較ウインドウは、2つの配列の最適アライメントの参照配列(追加または削除を含まない)と比較して、約20%以下の追加または削除(すなわち、ギャップ)を含み得る。比較ウインドウを整列させるために最適な配列アライメントは、アルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0、Genetics Computer Group、575 Science Drive Madison、WI、USAのGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)のコンピュータ処理の実行により、または閲覧、および選択された各種方法のいずれかで得られた最良のアライメント(すなわち、比較ウインドウにおいて最も高いパーセンテージが得られる)により行い得る。また、例えばAltschulら(1997,Nucl.Acids Res.25:3389)により開示されているような、BLASTファミリーのプログラムを参照してもよい。配列解析の詳細な記述は、Ausubelら,“Current Protocols in Molecular Biology,” John Wiley & Sons Inc,1994−1998,Chapter15のUnit19.3に見ることができる。

配列間の配列類似性または配列同一性(本明細書では2つの用語は互換的に使用される)の計算は、次のように行う。2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント同一性を決定するために、最適比較目的で配列を整列させる(例えば、最適アライメントのために第一および第二のアミノ酸配列または核酸配列の一方または両方にギャップを挿入してもよく、また比較目的で非相同配列を無視してもよい)。特定の実施形態では、比較目的で整列させた参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、60%、さらにより好ましくは、少なくとも70%、80%、90%、100%である。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第一の配列内のある位置が、第二の配列内の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドで占められていれば、その分子はその位置において同一である。

2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列の最適アライメントのために挿入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮した、その配列に共通する同一位置の数の関数である。

2つの配列の比較およびパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを用いて行うことができる。好適な実施形態では、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムに導入されているNeedlemanおよびWunsch(1970,J.Mol.Biol.48:444−453)のアルゴリズムを使用し、Blossum62マトリックスまたはPAM250マトリックスのどちらか、および16、14、12、10、8、6または4のギャップ重み付け、および1、2、3、4、5または6の長さ重み付けを用いて、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性を決定する。さらに別の好適な実施形態では、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムを使用し、NWSgapdna.CMPマトリックス、および40、50、60、70または80のギャップ重み付け、および1、2、3、4、5または6の長さ重み付けを用いて、2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性を決定する。特に好適なパラメータのセット(および特に明示されない限り使用するべきパラメータのセット)は、ギャップペナルティが12、ギャップ伸長ペナルティが4およびフレームシフトギャップペナルティが5のBlossum62スコア行列である。

ALIGNプログラム(version 2.0)に導入されたE.MeyersおよびW.Miller(1989,Cabios,4:11−17)のアルゴリズムを使用し、PAM120重み付け残基表、ギャップ長さペナルティ12およびギャップペナルティ4を用いて、2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列間のパーセント同一性を決定することができる。

本明細書に記載の核酸およびタンパク質の配列を「クエリ配列」として用いて公的データベースの検索を行い、例えば、他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定することができる。このような検索は、Altschulら(1990,J.Mol.Biol,215:403−10)のNBLASTおよびXBLASTプログラム(version 2.0)を用いて行うことができる。NBLASTプログラムでscore=100、wordlength=12としてBLASTヌクレオチド検索を行って、本発明の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を入手することができる。XBLASTプログラムでscore=50、wordlength=3としてBLASTタンパク質検索を行って、本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を入手することができる。比較目的でギャップアライメントを得るためには、Altschulら(1997,Nucleic Acids Res,25:3389−3402)により記載されているようにギャップBLASTを用いることができる。BLASTおよびギャップBLASTプログラムを用いる場合、各プログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトのパラメータを使用することができる。

「溶解度」という用語は、本明細書に記載の薬剤が液体溶媒に溶解して均質溶液を形成する特性を指す。溶解度は通常、溶媒の単位体積あたりの溶質の質量(溶媒1kg当たりの溶質のグラム、g/dL(100mL)、mg/mlなど)、モル濃度、質量モル濃度、モル分率またはその他の同様の濃度表現法による濃度で表される。溶媒量当たりに溶解し得る溶質の最大平衡量が、温度、圧力、pHおよび溶媒の性質を含めた特定の条件下でのその溶媒における溶質の溶解度である。特定の実施形態では、生理的pHで溶解度を測定する。特定の実施形態では、水またはPBSのような生理緩衝液中で溶解度を測定する。特定の実施形態では、血液または血清のような生体液(溶媒)中で溶解度を測定する。特定の実施形態では、温度はほぼ室温(例えば、約20、21、22、23、24、25℃)またはほぼ体温(37℃)である。特定の実施形態では、AARSタンパク質フラグメントのような薬剤の溶解度は、室温または37℃で、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25または30mg/mlである。

本明細書で使用される「スプライス部位」は、第一のエクソンの3’末端が第二のエクソンの5’末端と結合する、成熟mRNA転写産物またはコードされたポリペプチド内の領域を包含する。領域の大きさは様々であり得、1つのエクソンの3’末端が別のエクソンの5’末端と結合する正にその残基の両側に、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100個以上(間にあるすべての整数を含む)のヌクレオチドまたはアミノ酸残基を含み得る。「エクソン」は、シススプライシングにより前駆体RNAの両側部分が除去されるか、またはトランススプライシングにより2つ以上の前駆体RNA分子が連結した後の成熟型のRNAi分子で表される核酸配列を指す。成熟RNA分子は、メッセンジャーRNA、またはrRNAもしくはtRNAのような機能型の非コードRNAであり得る。文脈によっては、エクソンはDNAまたはそのRNA転写産物中の配列を指す場合がある。「イントロン」は、タンパク質へ翻訳されない、遺伝子内の非コード核酸領域を指す。非コードのイントロン部分は、前駆体mRNA(プレmRNA)およびいくつかの他のRNA(長い非コードRNAなど)に転写され、次いで、成熟RNAへプロセシングされる際に、スプライシングにより除去される。

「スプライスバリアント」は、RNAスプライシングの際にRNAのエクソン(一次遺伝子転写産物またはプレmRNA)が複数の方法で再結合される過程である選択的スプライシングにより生成される、成熟mRNAおよびそれによりコードされたタンパク質を指す。生じた様々なmRNAは様々なタンパク質アイソフォームに翻訳され、これにより、単一の遺伝子が複数のタンパク質をコードすることが可能となる。

本明細書で使用される「対象」は、本発明のAARSポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドにより治療または診断が可能な症状を呈する、または症状を示す危険性のある、任意の動物を包含する。また、診断またはその他の目的で、本発明のAARSポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドのレベルをプロファイルすることが望ましい対象も包含される。適当な対象(患者)としては、実験動物(マウス,ラット,ウサギまたはモルモットなど)、家畜、および飼育動物すなわちペット(ネコまたはイヌなど)が挙げられる。非ヒト霊長類、好ましくはヒト患者が包含される。

本明細書で使用される「治療」は、本明細書に記載のAARSポリヌクレオチドまたはポリペプチドの非カノニカルな活性によりもたらされ得る、疾患または状態の症状または病状に対する任意の所望の効果を包含し、また治療する疾患または状態の1つ以上の測定可能なマーカーにおけるわずかな変化または改善も包含し得る。また、本明細書に記載のAARS配列により治療の臨床マーカーが提供される非AARS療法に関連する治療も包含される。「治療」は、疾患もしくは状態またはそれに関連した症状の完全な根絶または治癒を必ずしも表すわけではない。本治療を受ける対象は、それを必要とする任意の対象である。臨床改善のマーカーの例は当業者に明らかであろう。

本発明の実施においては、そうでないことが特に明示されない限り、当該分野の技術の範囲内である従来の分子生物学および組換えDNA技術の方法を用いるが、その多くを例示の目的で以下に記載する。このような技術は文献中で十分に説明されている。例えば、以下のものを参照されたい:Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版,2000);DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I & II(D.Glover編);Oligonucleotide Synthesis(N.Gaitら,1984);Oligonucleotide Synthesis:Methods and Applications(P.Herdewijnら,2004);Nucleic Acid Hybridization(B.HamesおよびS.Higgins編,1985);Nucleic Acid Hybridization:Modern Applications(BuzdinおよびLukyanov編,2009);Transcription and Translation(B.HamesおよびS.Higgins編,1984);Animal Cell Culture(R.Freshney編,1986);Freshney,R.I.(2005)Culture of Animal Cells,a Manual of Basic Technique,第5版.Hoboken NJ,John Wiley & Sons;B.Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(第3版,2010);Farrell,R.,RNA Methodologies:A Laboratory Guide for Isolation and Characterization(第3版,2005),Methods of Enzymology:DNA Structure Part A:Synthesis and Physical Analysis of DNA Methods in Enzymology,Academic Press;Using Antibodies:A Laboratory Manual:Por表Protocol NO.I by Edward Harlow,David Lane,Ed Harlow(1999,Cold Spring Harbor Laboratory Press,ISBN 0−87969−544−7);Antibodies:A Laboratory Manual by Ed Harlow(Editor),David Lane(Editor)(1988,Cold Spring Harbor Laboratory Press,ISBN 0−87969−3,4−2),1855.Handbook of Drug Screening,Ramakrishna Seethala,Prabhavathi B.Fernandes編(2001,New York,N.Y.,Marcel Dekker,ISBN 0−8247−0562−9);ならびにLab Ref:A Handbook of Recipes,Reagents,and Other Reference Tools for Use at the Bench,Jane RoskamsおよびLinda Rodgers編(2002,Cold Spring Harbor Laboratory,ISBN 0−87969−630−3)。

本明細書に引用されているすべての刊行物、特許および特許出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。

III.治療剤およびその他の適用のための精製AARSタンパク質フラグメントおよびバリアント 驚くべきことに、アミノアシル化活性しか知られていないその完全長親配列とは異なり、AARSフラグメントがバイオセラピューティック、発見および診断への適用に重要な生物活性を有するということがわかった。したがって、本発明の実施形態は、アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)の生物学的に活性なバリアントおよびフラグメントに加え、その完全長タンパク質、成熟タンパク質アイソフォームおよびタンパク質フラグメントを含む。特定の実施形態では、タンパク質およびフラグメントは、種々の機序の中でも特に内因性のタンパク質分解、in vitroでのタンパク質分解、スプライス変異またはコンピュータ予測により生じ得る。本明細書に記載のAARSタンパク質フラグメントおよびそのバリアントは、少なくとも1つの「非カノニカルな」生物活性を有し得る。また本発明のAARSタンパク質フラグメントは、本明細書では「AARSポリペプチド」または「AARS参照ポリペプチド」とも呼ばれる。特定の実施形態では、本明細書に記載のAARSポリペプチドは、グリシルtRNA合成酵素の各種フラグメントのアミノ酸配列を表す下の表1〜3または表4〜6または表7〜9に記載されているAARSポリペプチド「参照配列」の全部または一部を含むか、またはそれらから実質的になる。マウスとヒトのAARSタンパク質配列は関連性が高く、通常、配列全体、特定のドメインまたは特定のタンパク質フラグメント内において数個以下のアミノ酸しか異ならない。

N末端AARSポリペプチド:(表1、2および3)

C末端AARSポリペプチド:(表4、5および6)

内部AARSポリペプチド:(表7、8および9)

タンパク質分解フラグメントもしくはスプライスバリアントフラグメントのような「タンパク質フラグメント」またはタンパク質フラグメントのアミノ酸配列を、各種技術により特徴付ける、同定するまたは誘導することができる。例えば、スプライスバリアントをディープシーケンシングのような技術により同定することができる(例えば、Xingら,RNA.14:1470−1479,2008;およびZhangら,Genome Research.17:503−509,2007を参照されたい)。さらなる例として、完全長または他のAARSポリペプチドを選択されたプロテアーゼとインキュベートするなどして、タンパク質分解フラグメントのようなタンパク質フラグメントをin vitroで同定することが可能であり、またはこれらを生体内(例えば、in vivo)で同定することが可能である。特定の実施形態では、例えば、選択されたプロテアーゼを1つ以上含むように改変されているか、または選択されたAARSポリペプチドに作用することができるプロテアーゼを生来的に1つ以上含む、選択された微生物または真核細胞内で、完全長または他のAARSポリペプチドを組換えにより発現させ、そこから内生的に産生されたタンパク質フラグメントを単離および特徴付けすることにより、内因性タンパク質分解フラグメントのようなタンパク質フラグメントを生成し同定することができる。

特定の実施形態では、例えば、様々な細胞画分(例えば、細胞質、膜、核の画分)および/または例えば、免疫細胞、例えば単球、樹状細胞、マクロファージ(例えば、RAW264.7マクロファージ)、好中球、好酸球、好塩基球およびリンパ球(例えば、一次T細胞およびJurkatT細胞のようなT細胞系含めたB細胞およびT細胞(例えば、CD4+ヘルパー細胞およびCD8+キラー細胞)、ならびにナチュラルキラー(NK)細胞など)などを含めた様々な細胞型の増殖培地から、内因性(例えば、天然の)タンパク質分解フラグメントのようなタンパク質フラグメントを生成し同定することができる。

特定の実施形態では、内因性タンパク質分解フラグメントのようなタンパク質フラグメントを、生成方法に関係なく、質量分析のような技術またはそれと同等の技術より同定することができる。in vitroまたは生体内で同定されるタンパク質フラグメントが一度生成または同定されれば、それをマッピングして配列決定し、例えば、組換え産生用の発現ベクター中にクローニングするか、または合成により作製することができる。

タンパク質分解フラグメントのようなAARSタンパク質フラグメントの配列の作製、同定、誘導または特徴付けを行うために、多種多様なプロテアーゼを使用することができる。一般にプロテアーゼは、通常、構造から明らかになる3つの主な基準:(i)触媒する反応、(ii)触媒部位の化学的性質および(iii)進化的関係に従って分類される。触媒の機序により分類されるプロテアーゼまたはプロテイナーゼの一般的な例としては、アスパラギン酸プロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼおよびメタロプロテアーゼが挙げられる。

アスパラギン酸プロテアーゼの多くはペプシンファミリーに属する。このファミリーには、消化酵素、例えばペプシンおよびキモシン、ならびにリソソームカテプシンDおよびレニンのようなプロセシング酵素など、ならびに特定の真菌プロテアーゼ(例えば、ペニシロペプシン、リゾプスペプシン、エンドチアペプシン)が含まれる。アスパラギン酸プロテアーゼの第二のファミリーには、レトロペプシンとも呼ばれるAIDSウイルス(HIV)由来のプロテアーゼのようなウイルスプロテイナーゼが含まれる。

セリンプロテアーゼには2つの異なるファミリーがある。1つ目は、哺乳動物酵素、例えばキモトリプシン、トリプシン、エラスターゼおよびカリクレインなどが含まれるキモトリプシンファミリー、2つ目は、スブチリシンのような細菌酵素が含まれるスブチリシンファミリーである。これら2つのファミリー間での全体的な3D構造は異なっているが、両ファミリーの活性部位は同じ幾何学配置であり、同じ機序を介して触媒反応が進行する。セリンプロテアーゼは、異なる基質特異性、主に様々な酵素サブサイト(基質と残基が相互作用する部位)でのアミノ酸置換に関する違いを示す。セリンプロテアーゼには、広範囲な基質との相互作用部位を有するものもあれば、P1基質残基に限定された特異性を有するものもある。

システインプロテアーゼファミリーには、パパイン、アクチニジンおよびブロメラインのような植物プロテアーゼ、いくつかの哺乳動物リソソームカテプシン、細胞質カルパイン(カルシウム活性化)、ならびにいくつかの寄生虫プロテアーゼ(例えば、トリパノソーマ(Trypanosoma)、住血吸虫(Schistosoma))が含まれる。パパインはこのファミリーメンバーの原型であり、かつ最も研究されている。最近解明されたインターロイキン−1−ベータ変換酵素のX線構造から、システインプロテイナーゼの新規なタイプのフォールドが明らかになった。

メタロプロテアーゼはプロテアーゼの古いクラスの1つであり、細菌、真菌および高等生物で見られる。メタロプロテアーゼはその配列および3D構造が多種多様であるが、酵素の大部分が触媒活性のある亜鉛原子を含んでいる。ある場合には、タンパク質分解活性が失われることなく、亜鉛がコバルトまたはニッケルのような別の金属に置き換わっていることがある。細菌サーモリシンがよく特徴付けられており、その結晶構造は、亜鉛に2つのヒスチジンと1つのグルタミン酸が結合していることを示している。多くのメタロプロテアーゼが配列モチーフHEXXHを含んでおり、このモチーフが亜鉛に対する2つのヒスチジンリガンドを与えている。第三のリガンドは、グルタミン酸(サーモリシン、ネプリライシン、アラニルアミノペプチダーゼ)またはヒスチジン(アスタシン、セラリシン)である。

例示的なプロテアーゼとしては、例えば、アクロモペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、アンクロッド、アンジオテンシン変換酵素、ブロメライン、カルパイン、カルパインI、カルパインII、カルボキシペプチダーゼA、カルボキシペプチダーゼB、カルボキシペプチダーゼG、カルボキシペプチダーゼP、カルボキシペプチダーゼW、カルボキシペプチダーゼY、カスパーゼ1、カスパーゼ2、カスパーゼ3、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ6、カスパーゼ7、カスパーゼ8、カスパーゼ9、カスパーゼ10、カスパーゼ11、カスパーゼ12、カスパーゼ13、カテプシンB、カテプシンC、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンG、カテプシンH、カテプシンL、キモパパイン、キマーゼ、キモトリプシン、クロストリパイン、コラゲナーゼ、補体C1r、補体C1s、補体因子D、補体因子I、ククミシン、ジペプチジルペプチダーゼIV、エラスターゼ(白血球)、エラスターゼ(膵臓)、エンドプロテアーゼArg−C、エンドプロテアーゼAsp−N、エンドプロテアーゼGlu−C、エンドプロテアーゼLys−C、エンテロキナーゼ、因子Xa、フィシン、フューリン、グランザイムA、グランザイムB、HIVプロテアーゼ、IGアーゼ、カリクレイン組織、ロイシンアミノペプチダーゼ(全身性)、ロイシンアミノペプチダーゼ(細胞質性)、ロイシンアミノペプチダーゼ(ミクロソーム性)、マトリックスメタロプロテアーゼ、メチオニンアミノペプチダーゼ、ニュートラーゼ、パパイン、ペプシン、プラスミン、プロリダーゼ、プロナーゼE、前立腺特異的抗原、好アルカリ性ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)由来のプロテアーゼ、アスペルギルス(Aspergillus)由来のプロテアーゼ、アスペルギルス・サイトイ(Aspergillus saitoi)由来のプロテアーゼ、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)由来のプロテアーゼ、プロテアーゼ(バチルス・リケニフォルミス(B.licheniformis))(アルカリ性またはアルカラーゼ)、バチルス・ポリミキサ(Bacillus polymyxa)由来のプロテアーゼ、バチルス属(Bacillus sp.)由来のプロテアーゼ、リゾプス属(Rhizopus sp.)由来のプロテアーゼ、プロテアーゼS、プロテアソーム、コウジカビ(Aspergillus oryzae)由来のプロテイナーゼ、プロテイナーゼ3、プロテイナーゼA、プロテイナーゼK、タンパク質C、ピログルタミン酸アミノペプチダーゼ、レンニン、レンニン、ストレプトキナーゼ、スブチリシン、サーモリシン、トロンビン、組織プラスミノーゲン活性化因子、トリプシン、トリプターゼおよびウロキナーゼが挙げられる。

特定の実施形態は、内因性の天然のAARSポリペプチドフラグメントに由来するアミノ酸配列を含むか、それから実質的になるか、またはそれからなる単離AARSポリペプチド、および前記フラグメントを含む医薬組成物、およびその使用法に関する。これらのおよび関連する実施形態は、in vivo、ex vivoおよび/またはin vitroで生成または同定することができる。特定の好適なin vitroの実施形態では、完全長AARSポリペプチドのようなAARSポリペプチドを、1つ以上の単離ヒトプロテアーゼ、主にヒトに内因性または天然である、例えばエラスターゼおよび本明細書に記載のまたは当該技術分野で公知の他のプロテアーゼなどとインキュベートすることにより、AARSタンパク質分解フラグメントを生成または同定する。他の実施形態は、内因性の天然のAARSスプライスバリアントに由来するアミノ酸配列を含むか、それから実質的になるか、またはそれからなる単離AARSポリペプチド、および前記フラグメントを含む医薬組成物、およびその使用法に関する。基本的には、AARSタンパク質フラグメントを、in vivoまたはin vitroに関係なくプロテアーゼと接触させた試料から単離することができる。

特定の実施形態では、質量分析のような技術またはそれと同等の技術によりAARSタンパク質フラグメントを同定することができる。単なる例であり、限定するものではないが、特定の実施形態では、様々な生理状態(例えば、低酸素、食事、年齢、疾患)の様々な細胞型、組織または体液またはその画分由来のプロテオームを1D SDS−PAGEにより分離し、バンドを一定の間隔で切った後、任意にバンドをトリプシンのような適当なプロテアーゼで消化してペプチドを解離させ、次いでこれを1D逆相LC−MS/MSにより分析し得る。得られたプロテオームデータをいわゆるペプトグラフ(peptograph)にまとめ得る。ペプトグラフ(peptograph)では、左側のパネルに、縦寸法で表したSDS−PAGEの移動(上から下に向かって高分子量から低分子量)に対して所与のタンパク質の配列範囲を水平寸法で(左から右に向かってN末端からC末端で)プロットする。次いで、特定のペプチドフラグメントを配列決定し、マッピングすることができる。特定の実施形態では、AARS参照フラグメントを、例えば対応する完全長AARSの分子量と比較した、その固有の分子量により特徴付け得る。

上述のように、本発明の実施形態は、表1〜3または表4〜6または表7〜9に記載されているAARSポリペプチドを含む。また、AARS参照ポリペプチドの「バリアント」も含まれる。ポリペプチド「バリアント」という記述は、少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、削除および/または置換により参照AARSポリペプチドから区別され、かつ通常は参照AARSポリペプチドの1つ以上の非カノニカルな活性を保持している(例えば、模倣する)または調節する(例えば、拮抗する)、ポリペプチドを指す。

さらに、ヒトシグリシルtRNA合成酵素は、数百の極めて関連性の高い多形型を含み、これらは少なくとも一部が機能的に互換可能であることが当該技術分野で公知である。したがって、例えば表Aに挙げられている単一ヌクレオチドの多形型を含めたグリシルtRNA合成酵素の天然のバリアントを選択し、グリシルtRNA合成酵素のヒトおよびその他の種のホモログ、オルソログおよび天然のアイソフォームのいずれかの配列に基づく1つ以上のアミノ酸変化を含むAARSポリペプチドを作出することは日常的な事柄である。

特定の実施形態では、ポリペプチドバリアントは、本明細書に記載されているようにまたは当該技術分野で公知のように、保存的または非保存的であり得る1つ以上の置換によって参照ポリペプチドから区別される。特定の実施形態では、ポリペプチドバリアントは保存的置換を含み、この点に関して、ポリペプチドの活性の性質を変化させずに、一部のアミノ酸をほぼ同様の特性を有する他のアミノ酸に変化させ得ることが、当該技術分野において十分に理解されている。

特定の実施形態では、バリアントポリペプチドは、本明細書に記載のAARS参照ポリペプチドの対応する配列と少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%以上の配列同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含み、かつその参照ポリペプチドの非カノニカルな活性を実質的に保持している。また、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150個以上のアミノ酸の付加、削除または置換により参照AARS配列とは異なるが、参照AARSポリペプチドの特性は保持している配列も含まれる。特定の実施形態では、アミノ酸の付加または削除は、AARS参照ポリペプチドのC末端および/またはN末端で生じる。特定の実施形態では、アミノ酸付加は、AARS参照ポリペプチドのC末端および/またはN末端に近位の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50個以上の野生型(すなわち、対応する完全長AARSポリペプチド由来の)残基を含む。

特定の実施形態では、バリアントポリペプチドは、対応するAARS参照配列と少なくとも1%で20%、15%、10%または5%未満の残基分だけ異なる。(この比較にアライメントが必要であれば、最大の類似性になるように配列を整列させるべきである。削除もしくは挿入またはミスマッチにより「ループアウトした」配列が相違部分であると考えられる。)相違は、非必須残基における相違もしくは変化、または保存的置換であることが適切である。特定の実施形態では、バリアントAARSポリペプチドの分子量は、AARS参照ポリペプチドの分子量と約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%以上異なる。

また、AARS参照ポリペプチドの生物学的に活性な「フラグメント」、すなわち、AARSタンパク質フラグメントの生物学的に活性なフラグメントも含まれる。代表的な生物学的に活性なフラグメントは一般に、相互作用、例えば分子内または分子間相互作用に関与する。分子間相互作用は、特定の結合相互作用または酵素的相互作用であり得る。分子間相互作用は、AARSポリペプチドと細胞結合パートナー(AARSポリペプチドの非カノニカルな活性に関与する細胞受容体またはその他の宿主分子など)との間のものであり得る。ある実施形態では、AARSタンパク質、バリアントおよびその生物学的に活性なフラグメントは、1つ以上の細胞結合パートナーと少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40または50nMの親和性で結合する。選択された結合パートナー、特に非カノニカルな活性に関与する結合パートナーに対するAARSタンパク質フラグメントの結合親和性は通常、AARSタンパク質フラグメントの対応する完全長AARSポリペプチドの結合親和性よりも、少なくとも約1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍以上(間にあるすべての整数を含む)強い。AARSの少なくとも1つのカノニカルな活性に関与する結合パートナーに対するAARSタンパク質フラグメントの結合親和性は通常、AARSタンパク質フラグメントの対応する完全長AARSポリペプチドの結合親和性よりも、少なくとも約1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍以上弱い。

通常は、生物学的に活性なフラグメントは、AARS参照ポリペプチドの活性を少なくとも1つ有するドメインまたはモチーフを含み、また種々の活性なドメインを1つ以上(場合によってはすべて)含むこともあり、また非カノニカルな活性を有するフラグメントを含む。ある場合には、AARSポリペプチドの生物学的に活性なフラグメントが特定の短縮されたフラグメントに固有の生物活性を有するため、完全長AARSポリペプチドがその活性を有さないことがある。場合によっては、生物学的に活性なAARSポリペプチドフラグメントを他の完全長AARSポリペプチド配列から分離することにより、または生物学的に活性なドメインを覆い隠している完全長AARS野生型ポリペプチド配列の特定の残基を変化させることにより、生物活性が示され得る。

AARS参照ポリペプチドの生物学的に活性なフラグメントは、本明細書に記載のAARS参照ポリペプチドのいずれか1つに記載されているアミノ酸配列の、例えば、間にあるすべての整数(例えば、101、102、103)および範囲(例えば、50〜100、50〜150、50〜200)を含めた10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、450、500、550、600、650、700、750個以上の連続するまたは連続しないアミノ酸であるポリペプチドフラグメントであり得るが、通常は完全長AARSを除外し得る。特定の実施形態では、生物学的に活性なフラグメントは、非カノニカルな活性に関連した配列、ドメインまたはモチーフを含む。特定の実施形態では、任意のAARS参照ポリペプチドのC末端またはN末端領域は、短縮されたAARSポリペプチドが参照ポリペプチドの非カノニカルな活性を保持している限り、間にあるすべての整数および範囲(例えば、101、102、103、104、105)を含めた約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650または700個以上のアミノ酸だけ、または約10〜50、20〜50、50〜100、100〜150、150〜200、200〜250、250〜300、300〜350、350〜400、400〜450、450〜500、500〜550、550〜600、600〜650、650〜700個分以上のアミノ酸が短縮されていてよい。通常、生物学的に活性なフラグメントは、それが由来する生物学的に活性(すなわち、非カノニカルな活性)なAARS参照ポリペプチドの約1%、約5%、約10%、約25%または約50%以上の活性を有する。このような非カノニカルな活性を測定する方法の例を実施例に記載する。

上述のように、アミノ酸の置換、削除、短縮および挿入を含めた様々な方法でAARSポリペプチドを改変し得る。このような操作の方法は、当該技術分野で一般に公知である。例えば、AARS参照ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントを、DNAの変異により調製することができる。変異誘発およびヌクレオチド配列改変の方法は当該技術分野で公知である。例えば、Kunkel(1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.82:488−492)、Kunkelら(1987,Methods in Enzymol,154:367−382)、米国特許第4,873,192号、Watson,J.D.ら(“Molecular Biology of the Gene”,第4版,Benjamin/Cummings,Menlo Park,Calif.,1987)およびそこに引用されている参考文献を参照されたい。目的タンパク質の生物活性に影響を及ぼさない適当なアミノ酸置換に関する手引きは、Dayhoffら(1978)(Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.))のモデルに見ることができる。

同様に、AARSポリペプチドの使用で免疫原性の懸念が生じる場合に、例えば、潜在的なT細胞エピトープを同定するための自動コンピュータ認識プログラムおよび免疫原性の低い形態を同定するための指向進化法の使用によりこれに対処するおよび/またはこれを軽減することは、当該分野の技術の範囲内である。

点突然変異または短縮により作製されたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物のスクリーニング、および選択された特性を有する遺伝子産物に関するcDNAライブラリーのスクリーニングの方法は、当該技術分野で公知である。このような方法は、コンビナトリアルな変異誘発法により生成されたAARSポリペプチドの遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングに適用できる。ライブラリー内の機能的な変異体の頻度を増加させる技術である帰納的集団変異誘発(recursive ensemble mutagenesis)(REM)をスクリーニングアッセイと組み合わせて使用し、AARSポリペプチドバリアントを同定することができる(ArkinおよびYourvan(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7811−7815;Delgraveら(1993)Protein Engineering,6:327−331)。以下でより詳細に述べるように、1つのアミノ酸を同様の特性を有する別のアミノ酸に置き換えるような保存的置換が望ましい場合がある。

生物学的に活性な短縮されたおよび/またはバリアントのAARSポリペプチドは、参照AARSアミノ酸残基と比較したその配列の様々な位置に、保存的アミノ酸置換を含み得る。さらに、AARSタンパク質の天然バリアントの配列が決定されており、少なくとも一部が機能的に互換性であることが当該技術分野で公知である。したがって、AARSタンパク質のヒトおよびその他の種の既知のAARSタンパク質ホモログ、オルソログおよび天然アイソフォームの天然の配列バリエーションに基づき、アミノ酸位置を選択して、保存的または非保存的な変異をAARSポリペプチド内に導入することは日常的な事柄である。

「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基を類似した側鎖を有するアミノ酸残基に置き換えるアミノ酸置換のことである。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該技術分野において明らかにされており、一般に次のように下位分類されている。

酸性:生理的pHでは、残基はHイオンを失うため負電荷を有し、またペプチドが生理的pHの水性媒体中にある場合、残基は、それが含まれるペプチドのコンホメーションにおける表面位置を求めて水溶液の方に引き付けられる。酸性側鎖を有するアミノ酸には、グルタミン酸およびアスパラギン酸がある。

塩基性:生理的pHまたはその1pHもしくは2pH単位以内(例えば、ヒスチジン)では、残基はHイオンと結合するため正電荷を有し、またペプチドが生理的pHの水性媒体中にある場合、残基は、それが含まれるペプチドのコンホメーション表面の位置を求めて水溶液の方に引き付けられる。塩基性側鎖を有するアミノ酸には、アルギニン、リジンおよびヒスチジンがある。

荷電:生理的pHで残基は荷電しており、したがって、酸性または塩基性側鎖を有するアミノ酸(すなわち、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、リジンおよびヒスチジン)が含まれる。

疎水性:生理的pHでは残基は荷電せず、またペプチドが水性媒体中にある場合、残基は、それが含まれるペプチドのコンホメーションにおける内部の位置を求めて水溶液から遠ざかる。疎水性側鎖を有するアミノ酸には、チロシン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニンおよびトリプトファンがある。

中性/極性:生理的pHでは残基は荷電しないが、ペプチドが水性媒体中にある場合、残基は、それが含まれるペプチドのコンホメーション内部の位置を求めて水溶液からあまり遠ざからない。中性/極性側鎖を有するアミノ酸には、アスパラギン、グルタミン、システイン、ヒスチジン、セリンおよびスレオニンがある。

またこの記載では、特定のアミノ酸のことを、極性基がなく疎水性が付与されていても側鎖が十分な大きさでないため、「小型」と特徴付ける。プロリンを除けば、「小型」アミノ酸とは、側鎖に少なくとも1つの極性基がある場合は4個以下の炭素を有するアミノ酸、また極性基がない場合は3個以下の炭素を有するアミノ酸のことである。小型の側鎖を有するアミノ酸には、グリシン、セリン、アラニンおよびスレオニンがある。遺伝子にコードされる第二級アミノ酸のプロリンは、ペプチド鎖の二次構造に対するその既知の作用により特殊な場合となる。プロリンの構造は、側鎖がα−炭素だけでなくα−アミノ基の窒素とも結合しているという点で、他のすべての天然アミノ酸とは異なる。いくつかのアミノ酸類似性マトリックスが当該技術分野で公知である(例えば、Dayhoffら,1978,A model of evolutionary change in proteinsにより開示されているPAM120マトリックスおよびPAM250マトリックスを参照されたい)。しかし、M.O.Dayhoff(編),Atlas of protein sequence and structure,Vol.5,pp.345−358,National Biomedical Research Foundation,Washington DC;およびGonnetら(Science,256:14430−1445,1992)により記載されている距離関係を決定するためのマトリックスでは、プロリンがグリシン、セリン、アラニンおよびスレオニンと同じグループに含まれている。したがって、本発明の目的のために、プロリンを「小型」アミノ酸に分類する。

極性または非極性に分類するために必要な引力または反発力の程度は任意のものであり、したがって、本発明で具体的に企図されるアミノ酸は、どちらか一方に分類される。具体的に指定されないほとんどのアミノ酸は、既知の挙動に基づいて分類される。

さらにアミノ酸残基を、残基の側鎖置換基に関する文字通りの分類として、環状または非環状および芳香族または非芳香族、ならびに小型または大型に下位分類することができる。残基の含む炭素が、カルボキシル炭素を含めて、追加の極性置換基が存在する場合は合計4個以下、追加の極性置換基が存在しない場合は3個以下であれば、その残基は小型であると見なされる。当然のことながら、小型の残基は必ず非芳香族である。アミノ酸残基は、その構造的特性によっては2つ以上のクラスに入る場合がある。このスキームによる天然のタンパク質アミノ酸の下位分類を表Bに示す。

また保存的アミノ酸置換は、側鎖に基づく分類を含む。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸のグループは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン;脂肪族−ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸のグループは、セリンおよびスレオニン;アミド含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、アスパラギンおよびグルタミン;芳香族側鎖を有するアミノ酸のグループは、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン;塩基性側鎖を有するアミノ酸のグループは、リジン、アルギニンおよびヒスチジン;ならびに硫黄含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、システインおよびメチオニンである。例えば、イソロイシンもしくはバリンによるロイシンの置換、グルタミン酸によるアスパラギン酸の置換、セリンによるスレオニンの置換、または構造的に関連のあるアミノ酸によるアミノ酸の同様の置き換えは、得られるバリアントポリペプチドの特性に大きな影響を与えないと予想するのが妥当である。アミノ酸変化が機能的な短縮されたおよび/またバリアントのAARSポリペプチドを生じるか否かは、本明細書に記載されているようにその非カノニカルな活性をアッセイするにより容易に決定することができる。保存的置換をアミノ酸置換の例という見出しで表Cに示す。本発明の範囲内にあるアミノ酸置換は一般に、(a)置換領域のペプチド骨格の構造、(b)標的部位での分子の電荷または疎水性、(c)側鎖のかさ高さ、または(d)生物学的機能の維持に対するその作用があまり異ならない置換を選択することにより達成される。置換を導入した後に、生物活性を調べるためにそのバリアントをスクリーニングする。

あるいは、保存的置換を行うための同様のアミノ酸を、側鎖の同一性に基づき3つのカテゴリーに分類することができる。Zubay、G.、Biochemistry、第3版、Wm.C.Brown Publishers(1993)に記載されているように、1つ目のグループには、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、リジン、ヒスチジンが含まれ、これらはすべて荷電した側鎖を有し;2つ目のグループには、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、グルタミン、アスパラギンが含まれ;3つ目のグループには、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニンが含まれる。

したがって、短縮されたおよび/またはバリアントのAARSポリペプチドの予測される非必須アミノ酸残基は通常、同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基に置き換えられる。あるいは、飽和変異誘発などによりAARSコード配列の全体または一部にランダムに変異を導入し、得られた変異体の親ポリペプチドの活性をスクリーニングして、その活性を保持している変異体を同定することができる。コード配列の変異誘発の後に、コードされているペプチドを組換え発現させ、そのペプチドの活性を決定することができる。「非必須」アミノ酸残基とは、その1つ以上の活性を消失または実質的に変化させることなく、実施形態のポリペプチドの参照配列から変化させることができる残基のことである。変化がこれらの活性の1つを実質的に消失させないことが適切であり、例えば、活性は、参照AARS配列の少なくとも20%、40%、60%、70%または80%、100%、500%、1000%以上である。「必須」アミノ酸残基とは、AARSポリペプチドの参照配列から変化させたとき、親分子の活性が消失して、参照活性の20%未満が存在する残基のことである。例えば、このような必須アミノ酸残基としては、様々な入手源由来のAARSポリペプチドの活性な結合部位またはモチーフにおいて保存されている配列を含めた、異なる種間でAARSポリペプチドにおいて保存されているアミノ酸残基が挙げられる。

一般に、ポリペプチドおよび融合ポリペプチド(およびそれをコードするポリヌクレオチド)は単離されている。「単離」ポリペプチドまたはポリヌクレオチドとは、その元の環境から取り出されたポリペプチドまたはポリヌクレオチドのことである。例えば、天然のタンパク質が、天然の系で共存する物質の一部またはすべてから分離されていれば、その天然のタンパク質は単離されている。好ましくは、このようなポリペプチドは、少なくとも約90%純粋、より好ましくは少なくとも約95%純粋、最も好ましくは少なくとも約99%純粋である。ポリヌクレオチドが、天然の環境の一部ではないベクター中にクローニングされていれば、そのポリヌクレオチドは単離されていると見なされる。

特定の実施形態は、AARSポリペプチドの二量体も包含する。二量体は、例えば、2つの同一のAARSポリペプチド間でのホモ二量体、2つの異なるAARSポリペプチド間でのヘテロ二量体(例えば、完全長YRSポリペプチドと短縮されたYRSポリペプチド;短縮されたYRSポリペプチドと短縮されたWRSポリペプチド)および/またはAARSポリペプチドと異種ポリペプチド間でのヘテロ二量体を含み得る。AARSポリペプチドと異種ポリペプチド間でのヘテロ二量体のような特定のヘテロ二量体は、本明細書に記載されているように二機能性であり得る。

また、1つ以上の置換、短縮、削除、付加、化学修飾またはこれらの改変の組合せのいずれによるものであるかに関係なく、第二のAARSポリペプチドと実質的に二量体化しない単離AARSポリペプチドモノマーを含めた、AARSポリペプチドのモノマーも含まれる。特定の実施形態では、単量体AARSポリペプチドは、二量体または多量体のAARSポリペプチド複合体が有さない、非カノニカルな活性を含めた生物活性を有する。

本発明の特定の実施形態は、本明細書に記載されている、AARSポリペプチドの所望の特徴を向上させた改変を含めた、改変AARSポリペプチドの使用も企図する。本発明のAARSポリペプチドの改変は、アセチル化、ヒドロキシル化、メチル化、アミド化および炭水化物または脂質部分、補助因子の付加などを含む側鎖改変、骨格改変ならびにN末端およびC末端改変を含めた、1つ以上の構成アミノ酸における化学的なおよび/または酵素による誘導体化を含む。また改変の例として、AARSポリペプチドのPEG化も挙げられる(例えば、ともに参照により本明細書に組み込まれる、VeroneseおよびHarris,Advanced Drug Delivery Reviews 54:453−456,2002:453−456,2002;ならびにPasutら,Expert Opinion.Ther.Patents 14(6)859−894 2004を参照されたい)。

PEGはよく知られたポリマーであり、水や多くの有機溶媒に溶解し、毒性がなく、免疫原性がないという特性を有する。またPEGは、無色透明、無臭で化学的に安定でもある。こうした理由などにより、PEGは付加するのに好適なポリマーとして選択されてきたが、それは限定するのではなく単に例示する目的で用いられてきただけである。同様の生成物が他の水溶性ポリマーでも得られ、このようなものとしては、ポリビニルアルコール、ポリ(プロピレングリコール)などのような他のポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ポリオキシエチル化グリセロール)などのようなポリ(ポリオキシエチル化ポリオール)、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルプロリドン(polyvinyl purrolidone)、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−l,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸およびポリアミノ酸が非限定的に挙げられる。当業者は、所望の投与、循環時間、タンパク質分解に対する耐性またはその他の考慮事項に基づいて、所望のポリマーを選択することができる。

具体的には、多種多様なPEG誘導体が入手可能であり、かつPEGコンジュゲートの調製での使用に適している。例えば、SUNBRIGHT(登録商標)シリーズの商標で販売されているNOF社のPEG試薬は、様々な方法によるAARSポリペプチドのN末端、C末端または任意の内部アミノ酸へのカップリングのためのメトキシポリエチレングリコールおよび活性化PEG誘導体、例えばメトキシ−PEGアミン、マレイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルおよびカルボン酸などを含めた数多くのPEG誘導体を提供している。またNektar Therapeutics社のAdvanced PEGylation技術も、AARSポリペプチドベースの治療剤の安全性および有効性を向上させる可能性のある多様なPEGカップリング技術を提供している。

また本開示を読む当業者は、特許、公開特許出願および関連する刊行物を検索しても、重要かつ可能なPEG−カップリング技術およびPEG−誘導体が得られるであろう。例えば、その内容全体が参照により組み込まれる、米国特許第6,436,386号;同第5,932,462号;同第5,900,461号;同第5,824,784号;および同第4,904,584号には、このような技術および誘導体とその製造方法が記載されている。

特定の態様では、化学選択的連結技術を用いて、例えば制御された方法で特定部位にポリマーを付加することなどにより、本発明のAARSポリペプチドを改変し得る。このような技術は通常、化学選択的アンカーを化学的手段または組換え手段によりタンパク質骨格内に組み込み、次いで相補的なリンカーを有するポリマーで修飾することによるものである。その結果、得られたタンパク質−ポリマーコンジュゲートの組立ておよび共有結合構造を制御して、有効性および薬物動態特性のような薬物特性の合理的な最適化を可能にし得る(例えば、Kochendoerfer,Current Opinion in Chemical Biology 9:555−560,2005を参照されたい)。

他の実施形態では、AARSポリペプチドと他のタンパク質との融合タンパク質も含まれ、これらの融合タンパク質は、AARSポリペプチドの生物活性、分泌、標的化、生物学的寿命、細胞膜もしくは血液脳関門を透過する能力、または薬物動態特性を増強し得る。薬物動態特性を向上させる融合タンパク質(「PK調節物質」)の例としては、ヒトアルブミン(Osbornら:Eur.J.Pharmacol.456(1−3):149−158,(2002))、抗体Fcドメイン、ポリGluまたはポリAsp配列およびトランスフェリンとの融合物が非限定的に挙げられる。さらに、アミノ酸Pro、AlaおよびSer(「PASylation」)またはヒドロキシエチルデンプン(HESYLATION(登録商標)の商標で販売されている)からなる構造的に無秩序なポリペプチド配列との融合は、AARSポリペプチドの流体力学的体積を増加させる簡単な方法である。この付加された延長物は、かさ高いランダムな構造をしており、得られた融合タンパク質の大きさを著しく増大させる。これにより、腎臓ろ過による小型AARSポリペプチドの通常の迅速除去が数桁遅延される。さらに、IgG融合タンパク質の使用により、いくつかの融合タンパク質が血液脳関門を透過することが可能になることも示されている(Fuら(2010)Brain Res.1352:208−13)。

細胞膜透過を向上させる融合タンパク質の例としては、膜転位配列との融合物が挙げられる。この文脈において、「膜転位配列」という用語は、細胞膜を横切る膜転位を可能にする天然または合成のアミノ酸配列を指す。代表的な膜転位配列としては、Tatタンパク質およびホメオティック転写タンパク質アンテナペディアに由来する天然の膜転位配列に基づく配列、ならびに全部または一部がポリアルギニンおよびリジン残基に基づく合成の膜転位配列が挙げられる。代表的な膜転位配列としては、例えば、以下の特許に開示されている配列が挙げられる:米国特許第5,652,122号;同第5,670,617号;同第5,674,980号;同第5,747,641号;同第5,804,604号;同第6,316,003号;同第7,585,834号;同第7,312,244号;同第7,279,502号;同第7,229,961号;同第7,169,814号;同第7,453,011号;同第7,235,695号;同第6,982,351号;同第6,605,115号;同第7,306,784号;同第7,306,783号;同第6,589,503号;同第6,348,185号;同第6,881,825号;同第7,431,915号;国際公開第0074701A2号;同第2007111993A2号;同第2007106554A2号;同第02069930A1号;同第03049772A2号;同第03106491A2号;および同第2008063113A1号。

任意に、本明細書に開示されるAARSポリペプチドと融合タンパク質の間に可動性分子のリンカー(またはスペーサー)を挿入し、共有結合させ得るということが理解されるであろう。

さらに、ある実施形態では、AARSポリペプチドは、よく特徴付けられた他の分泌タンパク質に由来する合成または天然の分泌シグナル配列を含み得る。ある実施形態では、このようなタンパク質は、in situでタンパク質分解性の切断によりプロセシングされてAARSポリペプチドを形成し得る。このような融合タンパク質は、例えば、新たなN末端アミノ酸が生じるAARSポリペプチドとユビキチンの融合物、または細胞外培地へのAARSポリペプチドの高レベルの分泌を仲介する分泌シグナルの使用、または精製もしくは検出を向上させるN末端もしくはC末端エピトープタグを含む。

本明細書に記載のAARSポリペプチドを、組換え技術のような当業者に公知の任意の適当な方法により調製し得る。組換え作製法に加え、固相技術を用いた直接ペプチド合成により、本発明のポリペプチドを作製することができる(Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85:2149−2154(1963))。タンパク質合成を手作業による技術を用いて、または自動化により行い得る。例えば、Applied Biosystems 431A Peptide Synthesizer(Perkin Elmer)を用いて自動合成を行い得る。あるいは、様々なフラグメントを別々に化学合成し、化学的方法により結合させて所望の分子を作製し得る。

IV.AARSポリヌクレオチド 本発明の実施形態は、アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)の1つ以上の新規に同定されたタンパク質フラグメントをコードするポリヌクレオチド、ならびにその相補体、バリアントおよびフラグメントを含む。特定の実施形態では、AARSポリヌクレオチドは、グリシルtRNA合成酵素のスプライスバリアント、タンパク質分解フラグメントまたはその他のタイプのフラグメントを表す、表1〜3または表4〜6または表7〜9に記載されているAARSポリペプチド参照配列のすべてまたは一部をコードする。特定の実施形態は、これらのスプライスバリアントの1つ以上のスプライス部位の配列を含むポリペプチドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチド、ならびにその相補体、バリアントおよびフラグメントを含む。特定の実施形態では、通常は、新規なまたは例外的な方法でエクソンを結合させる選択されたAARSスプライスバリアントの特異な性質により、AARSポリヌクレオチド参照配列は、固有のまたは例外的なスプライス部位を含む。特定の実施形態は、対応する完全長AARSポリペプチドを含まない。

また本明細書に記載されているように、上記参照ポリヌクレオチドのすべてまたは一部を含む、上記参照ポリヌクレオチドのすべてまたは一部に相補的な、または上記参照ポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズするプライマー、プローブ、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびRNA干渉剤も本発明のAARSポリヌクレオチドの範囲に含まれる。

本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、mRNA、RNA、cRNA、cDNAまたはDNAを指す。この用語は通常、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチド、またはいずれかのタイプの改変型ヌクレオチドで、長さが少なくとも10塩基のポリマー形態のヌクレオチドを指す。この用語は、一本鎖および二本鎖型のDNAを包含する。「DNA」および「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は、特定の種の全ゲノムDNAから単離されたDNA分子を指す。したがって、ポリペプチドをコードする単離DNAセグメントは、1つ以上のコード配列を含むが、そのDNAセグメントが得られた種の全ゲノムDNAから実質的に単離または精製されているDNAセグメントを指す。また、AARSポリペプチドをコードしない非コードポリヌクレオチド(例えば、プライマー、プローブ、オリゴヌクレオチド)も包含される。用語「DNAセグメント」および「ポリヌクレオチド」には、DNAセグメントおよびそのセグメントの小型のフラグメント、ならびに、例えばプラスミド、コスミド、ファージミド、ファージ、ウイルスなどを含めた組換えベクターも包含される。

本発明のポリヌクレオチド内にさらなるコードまたは非コード配列が存在してもよいが、存在している必要はなく、またポリヌクレオチドは他の分子および/または支持体材料と結合していてもよいが、結合している必要はない。したがって、本発明のポリヌクレオチドを、コード配列自体の長さに関係なく他のDNA配列、例えばプロモーター、ポリアデニル化シグナル、追加の制限酵素部位、多重クローニング部位、他のコードセグメントなどと結合させ得るため、その全体の長さはかなり多様であり得る。

したがって、ほとんどあらゆる長さのポリヌクレオチドフラグメントが使用され得ることが企図され、その全長は、対象とする組換えDNAプロトコルでの調製および使用の容易さにより限定されることが好ましい。AARS参照ポリヌクレオチド(例えば、塩基数がX〜Yで、式中、Xは約1〜3000以上、Yは約10〜3000以上である)の任意の部分またはフラグメント(例えば、長さが約6、7、8、9または10ヌクレオチドよりも長い)またはその相補体を含めた、長さが約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、41、43、44、45、46、47、48、49、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、220、240、260、270、280、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000以上(間にあるすべての整数を含む)の塩基のポリヌクレオチドが含まれる。

また本発明の実施形態は、AARS参照ポリヌクレオチド配列の「バリアント」も含む。ポリヌクレオチド「バリアント」は、参照ポリヌクレオチドに関して1つ以上の置換、付加、削除および/または挿入を含み得る。一般にAARS参照ポリヌクレオチド配列のバリアントは、本明細書の他の箇所に記載されている配列アライメントプログラムによりデフォルトパラメータを用いて決定される、その特定ヌクレオチド配列との配列同一性が、少なくとも約30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、一般には少なくとも約75%、80%、85%、望ましくは約90%〜95%以上、より適切には約98%以上であり得る。特定の実施形態では、バリアントは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、41、43、44、45、46、47、48、49、50、60、70、80、90、100個(間にあるすべての整数を含む)以上の塩基だけ参照配列と異なり得る。特定の実施形態では、例えばポリヌクレオチドバリアントが非カノニカルな活性を有するAARSポリペプチドをコードする場合などでは、コードされるAARSポリペプチドの所望の活性は、未改変のポリペプチドに比べて実質的に低下していない。コードされるポリペプチドの活性に対する効果は一般に、本明細書に記載の通りに評価され得る。

特定の実施形態は、以下に記載するストリンジェンシー条件下で参照AARSポリヌクレオチド配列またはその相補体とハイブリダイズする、ポリヌクレオチドを含む。本明細書で使用される「低ストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシー、高ストリンジェンシーまたは非常に高いストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする」という用語は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を述べたものである。ハイブリダイゼーション反応を行うための手引きは、Ausubelら(1998,上記),第6.3.1−6.3.6節に見ることができる。この参考文献には水性および非水性の方法が記載されており、どちらを用いてもよい。

本明細書における低ストリンジェンシー条件という表現は、42℃でのハイブリダイゼーション用に少なくとも約1%v/v〜少なくとも約15%v/vのホルムアミドと、少なくとも約1M〜少なくとも約2Mの塩、および42℃での洗浄用に少なくとも約1M〜少なくとも約2Mの塩を含み、包含する。また低ストリンジェンシー条件は、65℃でのハイブリダイゼーション用に1%ウシ血清アルブミン(BSA)、1mM EDTA、0.5M NaHPO4(pH7.2)、7%SDS、および室温での洗浄用に(i)2×SSC、0.1%SDS;または(ii)0.5%BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO4(pH7.2)、5%SDSも含み得る。低ストリンジェンシー条件の一実施形態は、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃でのハイブリダイゼーションと、それに続く0.2×SSC、0.1%SDS中、少なくとも50℃での2回の洗浄(低ストリンジェンシー条件では、洗浄の温度を55℃まで上げてもよい)を含む。

中程度のストリンジェンシー条件は、42℃でのハイブリダイゼーション用に少なくとも約16%v/v〜少なくとも約30%v/vのホルムアミドと、少なくとも約0.5M〜少なくとも約0.9Mの塩、および55℃での洗浄用に少なくとも約0.1M〜少なくとも約0.2Mの塩を含み、包含する。また中程度のストリンジェンシー条件は、65℃でのハイブリダイゼーション用に1%ウシ血清アルブミン(BSA)、1mM EDTA、0.5M NaHPO4(pH7.2)、7%SDS、および60〜65℃での洗浄用に、(i)2×SSC、0.1%SDS;または(ii)0.5%BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO4(pH7.2)、5%SDSも含む。中程度のストリンジェンシー条件の一実施形態は、6×SSC中、約45℃でのハイブリッド形成と、それに続く0.2×SSC、0.1%SDS中、60℃での1回以上の洗浄を含む。高ストリンジェンシー条件は、42℃でのハイブリダイゼーション用に少なくとも約31%v/v〜少なくとも約50%v/vのホルムアミドと約0.01M〜約0.15Mの塩、および55℃での洗浄用に約0.01M〜約0.02Mの塩を含み、包含する。

また高ストリンジェンシー条件は、65℃でのハイブリダイゼーション用に1%BSA、1mM EDTA、0.5M NaHPO4(pH7.2)、7%SDS、および65℃を超える温度での洗浄用に、(i)0.2×SSC、0.1%SDS;または(ii)0.5%BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO4(pH7.2)、1%SDSも含み得る。高ストリンジェンシー条件の一実施形態は、6×SSC中、約45℃でのハイブリッド形成と、それに続く0.2×SSC、0.1%SDS中、65℃での1回以上の洗浄を含む。非常に高いストリンジェンシー条件の一実施形態は、0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDS中、65℃でのハイブリッド形成と、それに続く0.2×SSC、1%SDS中、65℃での1回以上の洗浄を含む。

他のストリンジェンシー条件は当該技術分野で公知であり、当業者は、様々な因子を操作してハイブリダイゼーションの特異性を最適化することができることを理解するであろう。最後の洗浄のストリンジェンシーの最適化は、高度のハイブリダイゼーションを確実に行うのに役立ち得る。詳細な例に関しては、Ausubelら(上記)の2.10.1〜2.10.16ページおよびSambrookら(1989,上記)の第1.101〜1.104節を参照されたい。

ストリンジェント洗浄は通常、約42℃〜68℃の温度で行うが、当業者は、他の温度がストリンジェント条件に適する場合もあることを理解するであろう。最大ハイブリダイゼーション速度は通常、DNA−DNAハイブリッド形成のTmよりも低い約20℃〜25℃で生じる。Tmは融解温度、すなわち2つの相補的なポリヌクレオチド配列が解離する温度であることは当該技術分野で公知である。Tmを推定する方法は当該技術分野で公知である(Ausubelら(上記)2.10.8ページを参照されたい)。

一般に、完全にマッチしたDNAの二本鎖のTmは、次式による近似値として予測され得る:Tm=81.5+16.6(log10M)+0.41(%G+C)−0.63(%ホルムアミド)−(600/長さ)、式中:MはNa+の濃度であり、0.01モル濃度〜0.4モル濃度の範囲が好ましい;%G+Cは、塩基総数のパーセンテージで表したグアノシン塩基とシトシン塩基の合計であり、30%〜75%G+Cの範囲内にある;%ホルムアミドは、体積パーセントでのホルムアミド濃度である;長さは、DNA二本鎖中の塩基対の数である。二本鎖DNAのTmは、ランダムにミスマッチした塩基対の数が1%増加するごとに約1℃ずつ低下する。洗浄は一般に、高ストリンジェンシーではTm−15℃、中程度のストリンジェンシーではTm−30℃で行う。

ハイブリダイゼーション手順の一例では、固定化したDNAを含んだ膜(例えば、ニトロセルロース膜またはナイロン膜)を、標識したプローブを含有するハイブリダイゼーション緩衝液(50%の脱イオン化ホルムアミド、5×SSC、5×Denhardt溶液(0.1%フィコール、0.1%ポリビニルピロリドンおよび0.1%ウシ血清アルブミン)、0.1%SDSおよび200mg/mlの変性サケ精子DNA)中、42℃で一晩ハイブリダイズさせる。次いで、膜に中程度のストリンジェンシーでの洗浄(すなわち、2×SSC、0.1%SDS、45℃で15分間、次いで、2×SSC、0.1%SDS、50℃で15分間)を2回連続で行った後、高ストリンジェンシーでの洗浄(すなわち、0.2×SSC、0.1%SDS、55℃で12分間、次いで、0.2×SSCと0.1%SDSの溶液、65〜68℃で12分間)を2回連続で行う。

上述のように、特定の実施形態は、AARSポリペプチドをコードするAARSポリヌクレオチドに関する。他の使用の中でも特に、これらの実施形態を用いて、組換えにより所望のAARSポリペプチドまたはそのバリアントを作製するか、または選択された細胞もしくは対象内でAARSポリペプチドを発現させる。遺伝暗号の縮重の結果、本明細書に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が多数存在し得るということを、当業者は理解するであろう。これらのポリヌクレオチドの一部は、任意の天然遺伝子のヌクレオチド配列と最小限の相同性を有し得る。それでも、コドン使用頻度の違いにより異なるポリヌクレオチド、例えば、ヒトおよび/または霊長類のコドン選択に最適化されたポリヌクレオチドが本発明により具体的に企図される。

したがって、複数のポリヌクレオチドが本発明のAARSポリペプチドをコードし得る。さらに、ポリヌクレオチド配列を様々な理由で操作し得る。例としては、特に限定されないが、好適なコドンを組み込んで、様々な生物内でのポリヌクレオチドの発現を増強することが挙げられる(一般的には、Nakamuraら,Nuc.Acid.Res.(2000)28(1):292を参照されたい)。さらに、制限部位を導入もしくは除去する、CpGジヌクレオチドモチーフの密度を減少させる(例えば、Kamedaら,Biochem.Biophys.Res.Commun.(2006)349(4):1269−1277)、または一本鎖配列がステムループ構造を形成する能力を低下させる:(例えば、Zuker M.,Nucl.Acid Res.(2003);31(13):3406−3415を参照されたい)ために、サイレント突然変異を組み込むことができる。加えて、開始コドンにKozakコンセンサス配列[すなわち、(a/g)cc(a/g)ccATGg]を含ませることにより、哺乳動物での発現をさらに最適化することができる。この目的に有用なKozakコンセンサス配列は当該技術分野で公知である(Mantyhら,PNAS 92:2662−2666(1995);Mantyhら,Prot.Exp.& Purif.6,124(1995))。

本発明のポリヌクレオチドを、コード配列自体の長さに関係なく他のDNA配列、例えばプロモーター、ポリアデニル化シグナル、追加の制限酵素部位、多重クローニング部位、他のコードセグメントなどと結合させ得る。したがって、ほとんどあらゆる長さのポリヌクレオチドフラグメントが使用され得ることが企図され、その全長は、対象とする組換えDNAプロトコルでの調製および使用の容易さにより限定されることが好ましい。

当該技術分野において既知で利用可能な各種の十分に確立された任意の技術を用いて、ポリヌクレオチドおよびその融合物を調製、操作および/または発現し得る。例えば、本発明のポリペプチドまたはその融合タンパク質もしくは等価物をコードするポリヌクレオチド配列を組換えDNA分子中で用いて、適当な宿主細胞内でAARSポリペプチドを発現させ得る。遺伝暗号が生来的に縮重していることから、実質的に同じまたは機能的に同等なアミノ酸配列をコードする他のDNA配列を作製し、これらの配列を用いて所与のポリペプチドをクローニングして発現させ得る。

当業者に理解されるように、非天然のコドンを有するポリペプチドコードヌクレオチド配列を作製することが有利な場合がある。例えば、特定の原核宿主または真核宿主に好まれるコドンを選択して、タンパク質発現の速度を増加させるか、または天然の配列から生じる転写産物よりも半減期が長いなどの望ましい特性を有する組換えRNA転写産物を産生させることができる。一般に、このようなポリヌクレオチドを「コドン最適化されている」という。本明細書に記載の任意のポリヌクレオチドをコドン最適化された形態で使用し得る。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドを、特定の細菌、例えば大腸菌(E.coli)または出芽酵母(S.cerevisiae)のような酵母などで使用するためにコドン最適化することができる(例えば、Burgess−Brownら,Protein Expr Purif.59:94−102,2008;Ermolaeva MD(2001)Curr.Iss.Mol.Biol.3(4)91−7;Welchら,PLoS ONE 4(9):e7007 doi:10.1371/journal.pone.0007002を参照されたい)。

さらに、様々な理由で、配列をコードするポリペプチドに対して、特に限定されないが、遺伝子産物のクローニング、プロセシング、発現および/または活性を修正する改変を含めた改変を行うために、当該技術分野で一般に公知の方法を用いて本発明のポリヌクレオチド配列を操作することができる。

本発明の別の態様では、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、例えば遺伝子治療技術を用いて、対象にin vivoで送達することができる。遺伝子治療は一般に、このような治療法が求められる疾患または状態を有する哺乳動物、特にヒトの特定細胞、標的細胞に異種核酸を転移させることを指す。核酸は、異種DNAが発現され、それにコードされている治療用産物が産生されるように、選択された標的細胞内に導入される。

本明細書で教示される遺伝子治療に使用し得る様々なウイルスベクターとしては、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、または好ましくは、レトロウイルスのようなRNAウイルスが挙げられる。レトロウイルスベクターは、マウスまたはトリレトロウイルスの派生物であるか、またはレンチウイルスベクターであることが好ましい。好適なレトロウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。単一の外来遺伝子を挿入することができるレトロウイルスベクターの例としては、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MuMTV)、SIV、BIV、HIVおよびラウス肉腫ウイルス(RSV)が挙げられるが、これらに限定されない。数多くのさらなるレトロウイルスベクターが複数の遺伝子を組み込むことができる。これらのベクターはすべて、形質導入された細胞を特定し作製することができるように、選択マーカーの遺伝子を転移させるまたは組み込むことができる。例えば、目的とするジンクフィンガー由来DNA結合ポリペプチド配列を、特定の標的細胞上の受容体に対するリガンドをコードする別の遺伝子とともにウイルスベクターに挿入することにより、ベクターを標的特異的にし得る。例えばタンパク質(二量体)をコードするポリヌクレオチドを挿入することにより、レトロウイルスベクターを標的特異的にすることができる。例示的な標的化は、レトロウイルスベクターを標的とする抗体を用いて行い得る。当業者は、レトロウイルスゲノム内に挿入して、ジンクフィンガー−ヌクレオチド結合タンパク質ポリヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターの標的特異的送達を可能にすることができる特定のポリヌクレオチド配列を知っているか、または必要以上の実験を行わずに容易に確認することができる。

組換えレトロウイルスは不完全であるため、感染性ベクター粒子を産生するためには補助が必要である。この補助は、例えば、LTR内において制御配列の制御下でレトロウイルスの全構造遺伝子をコードするプラスミドを含むヘルパー細胞系用いることにより与えられる。これらのプラスミドには、パッケージング機構が封入のためのRNA転写産物を認識することを可能にするヌクレオチド配列がない。パッケージングシグナルが削除されているヘルパー細胞系としては、例えばPSI.2、PA317およびPA12が挙げられるが、これらに限定されない。これらの細胞系はゲノムがパッケージされていないため、空のビリオンを産生する。パッケージングシグナルはインタクトであるが、構造遺伝子が他の目的遺伝子に置き換わっているこのような細胞にレトロウイルスベクターを導入すると、ベクターがパッケージされてベクタービリオンが産生され得る。次いで、この方法により作製されたベクタービリオンを用いてNIH3T3細胞のような組織細胞系に感染させ、大量のキメラレトロウイルスビリオンを作製することができる。

また、例えばDNA−リガンド複合体、アデノウイルス−リガンド−DNA複合体、DNAの直接注入、CaPO4沈殿法、遺伝子銃技術、エレクトロポレーション、リポソーム、リポフェクションなどを含めた、遺伝子治療のための「非ウイルス」送達技術も使用することができる。これらの方法はいずれも当業者に広く利用可能であり、本発明での使用に適するであろう。他の適当な方法が当業者に利用可能であり、任意の利用可能なトランスフェクションの方法を用いて本発明を遂行することができることを理解するべきである。リポフェクションは、単離DNA分子をリポソーム粒子内に封入して、このリポソーム粒子を標的細胞の細胞膜と接触させることにより行うことができる。リポソームは自己集合性のコロイド粒子であり、粒子内ではホスファチジルセリンまたはホスファチジルコリンのような両親媒性分子からなる脂質二重層が、周囲媒質の一部を封入して親水性の内側を取り囲んでいる。所望の化学物質、薬物または本発明のような単離DNA分子が内側に含まれるように、単層膜または多層膜リポソームを構築することができる。

別の態様では、細胞療法でAARSポリペプチドを発現させ送達するために、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを使用し得る。したがって別の態様では、本発明は、AARSポリペプチドを発現するまたは発現することができる宿主細胞の投与を含む、疾患または障害を治療するための細胞療法を含む。

細胞療法は、体外で選択して増殖させ、薬理学的処理または改変(すなわち、遺伝子改変)を施した細胞の投与を含む(Bordignon,C.ら,Cell Therapy:Achievements and Perspectives(1999),Haematologica,84,pp.1110−1149)。このような宿主細胞としては、例えば、AARSポリペプチドを発現するように遺伝子改変された、マクロファージを含めた初代細胞および幹細胞が挙げられる。細胞療法の目的は、損傷を受けた組織または器官の生物学的機能を代替する、修復するまたは増強することである。

移植細胞の使用は、数多くの内分泌障害、例えば貧血および小人症、血液疾患、腎不全および肝不全、下垂体欠損およびCNS欠損、ならびに糖尿病などの治療のために研究されてきた(Uludagら,Technology of Mammalian Cell Encapsulation(2000),Advanced Drug Delivery Reviews,42,pp.29−64)。移植細胞は、もたらされた系において、本発明のAARSポリペプチドのような生物活性化合物を放出し、存在しないまたは十分な量が産生されない内因性のAARSポリペプチドを代替することにより機能し得る。

また本発明の実施形態は、検出、増幅、アンチセンス療法または他の目的のためのオリゴヌクレオチドも含む。これらのおよび関連する目的のために、「オリゴヌクレオチド」または「オリゴ」または「オリゴマー」という用語は、単数の「オリゴヌクレオチド」だけでなく複数の「オリゴヌクレオチド」も包含するものとし、またこの用語は、本発明の増幅方法、およびそれに続く検出方法において試薬として使用される、2個以上のヌクレオチド、ヌクレオシド、核酸塩基または関連化合物からなる任意のポリマーを指す。オリゴヌクレオチドは、DNAおよび/またはRNAおよび/またはその類似体であり得る。

オリゴヌクレオチドという用語は、必ずしも試薬に対して任意の特定の機能を表すわけではなく、むしろ、本明細書に記載のこのような試薬すべてを含めるために一般的に使用されるものである。オリゴヌクレオチドは様々な異なる機能を果たし得る。例えば、相補鎖とハイブリダイズが可能で、さらに核酸ポリメラーゼの存在下で伸長可能であれば、オリゴヌクレオチドはプライマーとして機能し、またRNAポリメラーゼにより認識される配列を含み、かつ転写を可能にするのであれば、オリゴヌクレオチドはプロモーターを提供し、また適切に位置しかつ/または改変されていれば、オリゴヌクレオチドはハイブリダイゼーションまたはプライマー伸長を妨げる機能を果たし得る。またオリゴヌクレオチドは、プローブまたはアンチセンス剤としても機能し得る。オリゴヌクレオチドの長さは実質的に任意であり、例えば、増幅反応、増幅反応の増幅産物の検出またはアンチセンスもしくはRNA干渉適用におけるその特定の機能によってのみ限定される。本明細書に記載のいずれのオリゴヌクレオチドも、プライマー、プローブ、アンチセンスオリゴマーまたはRNA干渉剤として使用することができる。

本明細書で使用される「プライマー」という用語は、例えば緩衝液および温度によって定められる適当な条件下、4つの異なるヌクレオシド三リン酸、およびDNAもしくはRNAポリメラーゼまたは逆転写酵素のような重合のための薬剤の存在下で、鋳型によるDNA合成の開始点として働くことができる一本鎖オリゴヌクレオチドを指す。プライマーの長さは、任意の場合において、例えば意図されるプライマーの使用によって決まり、一般に約15〜30ヌクレオチドの範囲であるが、これよりも短いまたは長いプライマーも使用し得る。短いプライマー分子は一般に、鋳型と十分に安定なハイブリッド複合体を形成するためには低い温度を必要とする。プライマーは鋳型の正確な配列を反映する必要はないが、その鋳型とハイブリダイズするのに十分なだけ相補的でなければならない。プライマー部位とは、プライマーがハイブリダイズする鋳型の領域のことである。プライマーペアとは、増幅する配列の5’末端とハイブリダイズする5’上流プライマーと、増幅する配列の3’末端の相補体とハイブリダイズする3’下流プライマーとを含む、プライマーのセットのことである。

本明細書で使用される「プローブ」という用語は、特定の標的により認識され得る、表面に固定化された分子または可溶性であるが固定化可能な分子を包含する。例えば、10個、12個およびそれを超える塩基のプローブの可能なすべての組合せを有するアレイの例に関しては、米国特許第6,582,908号を参照されたい。本明細書で使用されるプローブおよびプライマーは一般に、既知の配列の少なくとも10〜15個の連続するヌクレオチドを含む。特異性を増強するために、もっと長いプローブおよびプライマー、例えば、AARS参照配列またはその相補体の少なくとも20、25、30、40、50、60、70、80、90、100個または少なくとも150個のヌクレオチドを含むプローブおよびプライマーなどを用いてもよい。プローブおよびプライマーはこの例よりも大幅に長くてもよく、当該技術分野の知識ならびに表、図および配列表を含めた本明細書により裏付けられる任意の長さを使用し得ることが理解される。

プローブおよびプライマーを調製および使用するための方法は、参照文献、例えば、Sambrook,J.ら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,vol.1−3,Cold Spring Harbor Press,Plainview N.Y.;Ausubel,F.M.ら(1987)Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publ.Assoc.& Wiley−Intersciences,New York N.Y.;Innis,M.ら(1990)PCR Protocols.A Guide to Methods and Applications,Academic Press,San Diego Califに記載されている。PCRプライマーペアは、それを目的としたPrimer(Version 0.5,1991,Whitehead Institute for Biomedical Research,Cambridge Mass.)のようなコンピュータプログラムを使用することにより、既知の配列から導くことができる。

プライマーまたはプローブとして使用するためのオリゴヌクレオチドを、当該技術分野で公知のソフトウェアを用いて選択し得る。例えば、OLIGO4.06ソフトウェアは、32キロベース以下の入力ポリヌクレオチド配列から、それぞれが100ヌクレオチド以下であるPCRプライマーペアを選択する、ならびにオリゴヌクレオチドおよび5,000ヌクレオチドまでの大型のポリヌクレオチドを解析するのに有用である。同様のプライマー選択プログラムには、能力拡張のためにさらなる機能が組み込まれている。例えば、PrimOUプライマー選択プログラム(University of Texas South West Medical Center,Dallas Tex.のGenome Centerから一般に入手可能である)は、メガベースの配列から特定のプライマーを選択することができるため、ゲノム全域にわたる範囲でのプライマーの設計に有用である。

Primer3プライマー選択プログラム(Whitehead Institute/MIT Center for Genome Research,Cambridge Mass.から一般に入手可能である)では、ユーザーは、プライマー結合部位として避けるべき配列がユーザー指定になっている「ミスプライミングライブラリー」を入力することができる。Primer3は、マイクロアレイ用のオリゴヌクレオチドの選択に特に有用である(後の2つのプライマー選択プログラムのソースコードをそれぞれの入手源から入手し、ユーザーの特定の必要に合わせて改変し得る)。PrimeGenプログラム(UK Human Genome Mapping Project Resource Centre,Cambridge UKから一般に入手可能である)は、複数の配列アライメントに基づいてプライマーを設計することにより、整列させた核酸配列の最も保存性の高い領域または最も保存性の低い領域とハイブリダイズするプライマーの選択が可能である。したがって、このプログラムは、固有のおよび保存されたオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドフラグメントの同定に有用である。上記選択方法のいずれかにより同定されたオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドフラグメントは、例えば、PCRもしくは配列決定プライマー、マイクロアレイの構成要素、または核酸試料中の完全にもしくは部分的に相補的なポリヌクレオチドを同定するための特異的プローブとして、ハイブリダイゼーション技術において有用である。オリゴヌクレオチド選択の方法は、本明細書に記載されている方法に限定されない。

特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドを、混合物または非荷電および陽イオン性の骨格結合を有するオリゴヌクレオチドの合成に関して上記参考文献および以下で詳述されている方法を用いて、段階的固相合成法により調製することができる。ある場合には、例えば、薬物動態を増強するまたは化合物の捕捉もしくは検出を容易にするために、オリゴヌクレオチドに追加の化学的部分を付加することが望ましいことがある。このような部分は、標準的な合成法に従って、通常はオリゴマーの末端と共有結合させ得る。例えば、ポリエチレングリコール部分またはその他の親水性ポリマー、例えば10〜100個の単量体サブユニットを有するものを付加することは、溶解度の増大に有用であり得る。1つ以上の荷電基、例えば有機酸のような陰イオン荷電基は細胞内取込みを増大させる。

各種の検出可能な分子、例えば放射性同位元素、蛍光色素、色素、酵素、ナノ粒子、化学発光マーカー、ビオチン、または直接的に(例えば、光放射により)または間接的に(例えば、蛍光標識した抗体により)検出され得る当該技術分野で公知のその他のモノマーなどを用いて、オリゴヌクレオチドまたはタンパク質を検出可能にし得る。

放射性同位元素は、本発明の特定の実施形態で使用することができる検出可能な分子の例である。例えば32P、33P、35S、3Hおよび125Iを含めたいくつかの放射性同位元素を、ヌクレオチドまたはタンパク質を標識するための検出可能な分子として使用することができる。これらの放射性同位元素は半減期、崩壊のタイプおよびエネルギーのレベルが異なっており、特定のプロトコルでの必要に応じて合わせることができる。例えば、3Hはエネルギー放射が低く、これにより低いバックグラウンドレベルが得られるが、またこの低いエネルギーによりオートラジオグラフィーの時間が長くもなる。放射性標識されたリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドおよびアミノ酸は市販されている。1番目すなわちαのリン酸基または3番目すなわちγのリン酸基において放射性標識されたヌクレオチドが入手可能である。例えば、[α−32P]dATPおよび[γ−32P]dATPがともに市販されている。さらに、様々な比活性で放射性標識されたヌクレオチドも市販されており、様々なプロトコルに合わせることができる。

オリゴヌクレオチドの検出に用いることができる検出可能な分子の他の例としては、フルオロフォアが挙げられる。例えばフルオレセイン、テトラメチルローダミン、テキサスレッドおよびその他多数のものを含めたいくつかのフルオロフォアを、ヌクレオチド標識のために使用することができる(例えば、Haugland,Handbook of Fluorescent Probes−第9版,2002,Molec.Probes,Inc.,Eugene OR;Haugland,The Handbook:A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies−第10版,2005,Invitrogen,Carlsbad,CA)。

一例として、ヌクレオチド合成時のアミンまたはチオールの組込みによりフルオロフォアの付加が可能であるため、オリゴヌクレオチドを化学合成の際に蛍光標識し得る。蛍光標識されたヌクレオチドは市販されている。例えば、スペクトルをカバーする10種の異なるフルオロフォアと結合したウリジンおよびデオキシウリジン三リン酸が入手可能である。ヌクレオチドと直接結合することができる蛍光色素も検出可能な分子として用いることができる。例えば、FAM、JOE、TAMRAおよびROXは、ヌクレオチドと結合させて、自動化されたDNA配列決定で使用するアミン反応性蛍光色素である。これらの蛍光標識されたヌクレオチド、例えば、ROX−ddATP、ROX−ddCTP、ROX−ddGTPおよびROX−ddUTPが市販されている。

非放射性および非蛍光性の検出可能な分子も利用可能である。上述のように、ビオチンをヌクレオチドと直接結合させて、比色反応を触媒する酵素(例えばホスファターゼ、ルシフェラーゼまたはペルオキシダーゼなど)と化学的にカップリングしたアビジンまたはストレプトアビジンとの特異的かつ高親和性の結合により検出することができる。ジゴキシゲニン標識ヌクレオチドも同様に、核酸の非同位体検出に使用することができる。ビオチン化ヌクレオチドおよびジゴキシゲニン標識ヌクレオチドは市販されている。

ナノ粒子と呼ばれる微小な粒子もオリゴヌクレオチドプローブを標識するために使用することができる。ナノ粒子は1〜1000nmの範囲の大きさであり、多様な金および銀粒子ならびに量子ドットのような化学構造体がこれに含まれる。40〜120nmの範囲の銀または金ナノ粒子は、斜めの入射白色光が当たると高強度の単色光を散乱する。散乱光の波長は粒子の大きさによって決まる。近接した4〜5個の異なる大きさの粒子がそれぞれ単色光を散乱し、それらが重ね合わさると特定の固有の色が生じる。粒子はGenicon Sciences(Carlsbad,CA)のような会社により製造されている。誘導体化された銀または金粒子をタンパク質、抗体、小分子、受容体リガンドおよび核酸を含めた広範囲の分子に付加することができる。例えば、粒子の表面を化学的に誘導体化して、ヌクレオチドに付加することができる。

検出可能な分子の検出に使用することができる他のタイプのナノ粒子としては、量子ドットが挙げられる。量子ドットは、広範囲の波長の光により励起される、直径1〜5nmの蛍光性の結晶である。これらの結晶は、適当な波長の光により励起されると単色光のような光を発し、その波長は結晶の化学組成および大きさによって決まる。CdSe、ZnSe、InPまたはInAsのような量子ドットは固有の光学的特性を有し、これらのおよびそれと同様の量子ドットは多数の商業的供給源から入手可能である(例えば、NN−Labs,Fayetteville,AR;Ocean Nanotech,Fayetteville,AR;Nanoco Technologies,Manchester,UK;Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)。

量子ドット結晶の大きさの種類の数に従って、数多くの種類の粒子を作出することができる。結晶の大きさの種類は、1)結晶形成パラメータを厳密に制御して、所望の各種類の大きさの粒子を作出する、または2)緩く制御された結晶形成パラメータの下で多数の結晶を作出した後、所望の大きさおよび/または放射波長に従って分別することにより作出される。半導体発光/光検出装置に本来備わっているシリコンエピタキシャル層内に量子ドットを埋め込む参考文献の2つの例は、Chapple Sokolらに対する米国特許第5,293,050号および同第5,354,707号である。

特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブを1つ以上の発光するまたはその他の検出可能な色素で標識し得る。色素が発する光は、紫外線または赤外光のような可視光または不可視光であり得る。例示的な実施形態では、色素は以下に挙げるものであり得る:蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)色素;フルオレセインおよびローダミンのようなキサンテン色素;アルファまたはベータの位置にアミノ基を有する色素(例えばナフチルアミン色素、1−ジメチルアミノナフチル−5−スルホナート色素、1−アニリノ−8−ナフタレンデ(naphthalende)スルホナートおよび2−p−トウイジニル(touidinyl)−6−ナフタレンスルホナートなど;3−フェニル−7−イソシアナートクマリンを有する色素;9−イソチオシアナートクマリンおよびアクリジンオレンジのようなアクリジン;ピレン、ベンソオキサジアゾール(bensoxadiazole)およびスチルベン;3−(ε−カルボキシペンチル)−3’−エチル−5,5’−ジメチルオキサカルボシアニン(CYA)を有する色素;6−カルボキシフルオレセイン(FAM);5&6−カルボキシローダミン−110(R110);6−カルボキシローダミン−6G(R6G);N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA);6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX);6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン(JOE);ALEXA FLUOR(商標);Cy2;テキサスレッドおよびローダミンレッド;6−カルボキシ−2’,4,7,7’−テトラクロロフルオレセイン(TET);6−カルボキシ−2’,4,4’,5’,7,7’−ヘキサクロロフルオレセイン(HEX);5−カルボキシ−2’,4’,5’,7’−テトラクロロフルオレセイン(ZOE);NAN;NED;Cy3;Cy3.5;Cy5;Cy5.5;Cy7;およびCy7.5;IR800CW,ICG,Alexa Fluor350;Alexa Fluor488;Alexa Fluor532;Alexa Fluor546;Alexa Fluor568;Alexa Fluor594;Alexa Fluor647;Alexa Fluor680またはAlexa Fluor750。

本発明のAARSポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドを、本明細書に記載の治療、診断、研究または創薬のための組成物および方法のいずれにおいても使用することができる。

V.抗体 別の態様では、本発明は、AARSポリペプチドまたはその天然の細胞結合パートナー(すなわち、細胞受容体、脂質、炭水化物、タンパク質または核酸結合パートナー)またはその複合体に対して結合特異性を示す抗体、およびその使用法をさらに提供する。抗体という用語は、抗体の様々な変化物、例えば、本明細書に記載されているおよび当該技術分野で公知のFAB、ヒト抗体、改変ヒト抗体、一本鎖、非ヒト抗体および抗原に対する免疫系リガンドの基礎となる免疫グロブリンフォールドの他の誘導体を包含する。抗体を、本明細書で提供される治療、診断、創薬またはタンパク質発現/精製のための方法および組成物のいずれにおいても使用することができる。

本発明の特定の抗体は、通常、対応する完全長AARSよりも高い親和性でAARSタンパク質フラグメントと結合することにより、表1〜3または表4〜6または表7〜9のAARSタンパク質フラグメントとその対応する完全長AARSを識別することができるため、これまでに作製された特定の抗体とは異なる。一般に、このような抗体は、スプライス変異、タンパク質分解または本発明のAARSタンパク質フラグメントを生じるその他の細胞過程(例えば、特に限定されないがタンパク質構造を変化させるリン酸化およびその他の修飾を含めた、翻訳後プロセシング)により生じるまたは現れる、固有の配列または構造と結合し得る。ある態様では、抗体は、固有のスプライス部位付近の配列(例えば、表2B、5Bまたは8Bに挙げられているスプライス部位配列から選択される少なくとも5個の連続するアミノ酸の1つ以上の領域、または代わりに、例えば、表2B、5Bまたは8Bに挙げられている、このスプライス部位の任意のアミノ酸配列C末端)と結合し得る。例えば、このような抗体は、AARSタンパク質フラグメントでは露出しているが完全長AARSでは露出していない、1つ以上の非溶媒露出面、または完全長AARSにおいては見られないまたは接触できない配列に対する結合特異性を有し得る。また抗体は、AARSタンパク質フラグメントと完全長AARSの間でのフォールディングに違いにより生じる固有の三次元構造とも結合し得る。このようなフォールディングの違いは、局所的に(例えば、特定のドメインまたは領域に)または広範囲に存在し得る。一例として、AARSタンパク質フラグメントのフォールディングは、対応するAARSすなわち親AARSでは見られない固有の連続または不連続エピトープを生じ得る。また例として、スプライス変異、タンパク質分解またはその他の細胞過程により生じたN末端またはC末端と特異的に結合する抗体も挙げられ、このような末端は、完全長AARSに比べて固有のものである得るか、または完全長型では大きなAARS親分子の全体構造の中にその末端が完全にまたは部分的に埋もれているため、抗体結合に曝され得ない。

ある実施形態では、本明細書で提供される抗体は、凝集体を形成せず、所望の溶解度を有し、かつ/または本明細書に記載され当該技術分野で公知であるヒトでの使用に適した、免疫原性プロファイルを有する。また、本明細書に記載のAARSタンパク質フラグメントの精製のような作製作業に適した抗体も含まれる。好ましくは、活性な抗体を少なくとも約10mg/mlに濃縮し、任意にバイオセラピューティックでの使用のために製剤化することができる。

特定の実施形態では、抗体は、本発明のAARSポリペプチドにより仲介される1つ以上の非カノニカルな活性を調節するのに有効である。特定の実施形態では、例えば、抗体は、AARSポリペプチドおよび/またはその結合パートナーと結合し、互いに相互作用するその能力を阻害し、かつ/またはAARSポリペプチドの非カノニカルな活性に拮抗する抗体である。特定の実施形態では、例えば、抗体はAARSポリペプチドの細胞結合パートナーと結合し、AARSポリペプチドにより仲介される非カノニカルな活性を増加させるまたは刺激することなどによりAARSポリペプチド活性を模倣する。したがって、抗体を用いて、部分的にまたは完全に本発明のAARSポリペプチドの活性に拮抗するかまたはそれを刺激することにより、本発明のAARSポリペプチドにより仲介される疾患、障害またはその他の状態を、診断、治療または予防し得る。

抗体またはその抗原結合フラグメントは、それが検出可能なレベルで(例えば、ELISAアッセイにおいて)本発明のポリペプチドと反応し、かつ同様の条件下で、無関係のポリペプチドとの統計的に有意な検出可能な反応が見られない場合、本発明のポリペプチドに対して「特異的に結合する」、「免疫学的に結合する」および/または「免疫学的に反応性である」という。場合によっては、結合物質は完全長型のAARSポリペプチドと有意に相互作用しない。

この文脈で使用される免疫学的結合は一般に、免疫グロブリン分子と、免疫グロブリンが特異性を有する抗原との間に生じるタイプの非共有相互作用を指す。免疫学的結合相互作用のような結合の強さ、すなわち親和性は、相互作用の解離定数(Kd)で表すことができ、この場合、小さなKdほど大きな親和性を表す。選択されたポリペプチドの免疫学的結合特性を、当該技術分野で公知の方法を用いて定量化することができる。例えば、Daviesら(1990)Annual Rev.Biochem.59:439−473を参照されたい。特定の例示的な実施形態では、AARSタンパク質フラグメントに対する抗体の親和性は、少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40または50nMである。特定の実施形態では、AARSタンパク質フラグメントに対する抗体の親和性は、対応する完全長AARSポリペプチドに対するその親和性よりも通常、約1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍以上(間にあるすべての整数を含む)強い。特定の実施形態では、対応する完全長AARSタンパク質に対する抗体の親和性は、少なくとも約0.05、0.1、0.25、0.5、0.75、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20μMである。特定の実施形態では、抗体と完全長AARSタンパク質との結合は、弱いかまたは実質的に検出不可能である。

抗体の「抗原結合部位」または「結合部分」は、免疫グロブリン分子内の抗原結合に関与する部分を指す。抗原結合部位は、重(「H」)鎖および軽(「L」)鎖のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基により形成される。重鎖および軽鎖のV領域内にある3つの非常に多岐にわたる区間は「超可変領域」と呼ばれ、「フレームワーク領域(framework region)」すなわち「FR」として知られる、隣接する保存性の高い区間の間に挟まれている。したがって、「FR」という用語は、免疫グロブリンの超可変領域に本来挟まれているまたは隣接しているアミノ酸配列を指す。抗体分子中では、軽鎖の3つの超可変領域と重鎖の3つの超可変領域が、抗原結合表面を形成するように三次元空間内で互いに対して配置されている。抗原結合表面は、結合抗原の三次元表面に対して相補的であり、各重鎖および軽鎖の3つの超可変領域は、「相補性決定領域(complementarity−determining region)」すなわち「CDR」と呼ばれる。

当業者に公知の任意の各種技術により抗体を調製し得る。例えば、HarlowおよびLane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照されたい。目的とするポリペプチドに対して特異的なモノクローナル抗体を、例えば、KohlerおよびMilstein,Eur.J.Immunol.6:511−519,1976の技術およびそれを改良したものを用いて調製し得る。また、トランスジェニックマウスのようなトランスジェニック動物を用いてヒト抗体を発現させる方法も挙げられる。例えば、Neubergerら,Nature Biotechnology 14:826,1996;Lonbergら,Handbook of Experimental Pharmacology 113:49−101,1994;およびLonbergら,Internal Review of Immunology 13:65−93,1995を参照されたい。具体例としては、REGENERON(登録商標)によるVELOCIMMUNE(登録商標)プラットフォームが挙げられる(例えば、米国特許第6,596,541号を参照されたい)。また、ファージディスプレイまたは酵母ディスプレイライブラリーの使用により抗体を作製または同定することもできる(例えば、米国特許第7,244,592号;Chaoら,Nature Protocols.1:755−768,2006を参照されたい)。利用可能なライブラリーの非限定的な例としては、ヒト抗体レパートリーの構造的多様性が7つの重鎖および7つの軽鎖可変領域遺伝子により表されるヒトコンビナトリアル抗体ライブラリー(HuCAL)のような、クローンライブラリーまたは合成ライブラリーが挙げられる。これらの遺伝子の組合せにより、マスターライブラリー内に49のフレームワークが生じる。これらのフレームワークに可変性の高い遺伝子カセット(CDR=相補性決定領域)を重ね合わせることにより、莫大なヒト抗体レパートリーを作製することができる。また、軽鎖可変領域、重鎖CDR−3をコードするヒトドナー起源のフラグメントと、重鎖CDR−1の多様性をコードする合成DNAと、重鎖CDR−2の多様性をコードする合成DNAとを用いて設計されたヒトライブラリーも挙げられる。使用に適した他のライブラリーは、当業者に明らかであろう。本発明のポリペプチドを精製工程、例えばアフィニティークロマトグラフィー工程で使用し得る。

「Fv」フラグメントは、選択的なタンパク質分解によるIgM免疫グロブリン分子、およびまれにIgGまたはIgA免疫グロブリン分子の切断により作製され得る。しかし、当該技術分野で公知の組換え技術を用いてFvフラグメントを得る方が一般的である。Fvフラグメントは、天然の抗体分子の抗原認識および抗原結合能の大部分を保持している抗原結合部位を含む、非共有結合VH::VLヘテロ二量体を含む。例えば、Inbarら(1972)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 69:2659−2662;Hochmanら(1976)Biochem 15:2706−2710;およびEhrlichら(1980)Biochem 19:4091−4096を参照されたい。

一本鎖Fv(「sFv」)ポリペプチドは、ペプチドコードリンカーにより連結されたVHおよびVLをコードする遺伝子を含む遺伝子融合体から発現される、非共有結合VH::VLヘテロ二量体である。Hustonら(1988)PNAS USA.85(16):5879−5883。本来は凝集しているが化学的に分離された、抗体V領域由来の軽ポリペプチド鎖および重ポリペプチド鎖を、抗原結合部位の構造と実質的に同様の三次元構造にフォールディングするsFv分子に変換するための化学構造を識別する方法が多数記載されている。例えば、Hustonらに対する米国特許第5,091,513号および同第5,132,405号ならびにLadnerらに対する米国特許第4,946,778号を参照されたい。

上記各分子は重鎖CDRセットおよび軽鎖CDRセットを含み、CDRセットは、CDRを支えてCDRの互いに対する空間的関係を定めている、それぞれ重鎖FRセットおよび軽鎖FRセットの間に挟まれている。本明細書で使用される「CDRセット」という用語は、重鎖または軽鎖V領域の3つの超可変領域を指す。この3つの領域は、重鎖または軽鎖のN末端から順にそれぞれ「CDR1」、「CDR2」および「CDR3」と呼ばれる。したがって、抗原結合部位には、重鎖および軽鎖V領域由来のCDRセットを含む6つのCDRが含まれる。単一のCDR(例えば、CDR1、CDR2またはCDR3)を含むポリペプチドは、本明細書では「分子認識単位」と呼ぶ。CDRのアミノ酸残基が結合抗原との広範囲にわたる接触を形成し、広範囲の抗原接触のほとんどが重鎖CDR3によるものであることが、数多くの抗原−抗体複合体の結晶学的解析により示されている。したがって、分子認識単位は主に抗原結合部位の特異性に関与する。

本明細書で使用される「FRセット」という用語は、重鎖または軽鎖V領域のCDRセットのCDRを形作る、4つの隣接するアミノ酸配列を指す。一部のFR残基は結合抗原と接触し得るが、FR、特にCDRに直接隣接するFR残基は、主にV領域を抗原結合部位にフォールディングすることに関与する。FR内では、特定のアミノ残基および特定の構造的特徴が極めて高度に保存されている。この点に関して、すべてのV領域配列は、約90アミノ酸残基の内部ジスルフィドループを含んでいる。V領域が結合部位にフォールドすると、抗原結合表面を形成する突出したループモチーフとしてCDRが提示される。特定の「カノニカルな」構造にフォールドされたCDRの形状に影響を与える保存されたFRの構造領域が、正確なCDRアミノ酸配列に関係なく存在するということが一般に認められている。さらに、特定のFR残基が、抗体の重鎖と軽鎖の相互作用を安定させる非共有結合によるドメイン間の接触に関与することが知られている。

特定の実施形態は、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体フラグメントを指す単一ドメイン抗体(sdAbまたは「ナノボディ」)(例えば、米国特許第5,840,526号;同第5,874,541号;同第6,005,079号;同第6,765,087号;同第5,800,988号;同第5,874,541号;および同第6,015,695号を参照されたい)を含む。このようなsdABは通常、分子量が約12〜15kDaである。特定の態様では、sdABおよびその他の抗体分子を、免疫化したラクダおよびラマ(ラクダ類と呼ぶことが多い)に固有の重鎖抗体から得るまたは単離することができる。例えば、Conrathら,JBC.276:7346−7350,2001を参照されたい。

非ヒト免疫グロブリン由来の抗原結合部位を含む「ヒト化」抗体分子が多数記載されており、ヒト定常ドメインと融合したげっ歯類V領域およびそれに付随するCDR(Winterら(1991)Nature 349:293−299;Lobuglioら(1989)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:4220−4224;Shawら(1987)J Immunol.138:4534−4538;およびBrownら(1987)Cancer Res.47:3577−3583)、適当なヒト抗体定常ドメインとの融合前にヒト支持FR内に移植されたげっ歯類CDR(Riechmannら(1988)Nature 332:323−327;Verhoeyenら(1988)Science 239:1534−1536;およびJonesら(1986)Nature 321:522−525)ならびに組換えにより化粧張りした(veneered)げっ歯類FRにより支持されたげっ歯類CDR(1992年12月23日に公開された欧州特許公開第号519,596号)を有するキメラ抗体がこれに含まれる。これらの「ヒト化」分子は、これらの部分のヒト被投与者における治療適用の持続時間および有効性を制限する、げっ歯類抗ヒト抗体分子に対する望ましくない免疫応答を最小化するように設計されている。例えば、米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,762号;同第6,180,370号;および同第7,022,500号を参照されたい。

本発明の抗体は、本明細書に記載の治療、診断、創薬、タンパク質精製および分析のための方法および組成物のいずれにおいても使用することができる。

VI.抗体代替物およびその他の結合物質 別の態様では、本発明は、本明細書に開示されるAARSポリペプチドもしくはその細胞結合パートナーまたはその一部分、バリアントもしくは誘導体に対して結合特異性を示す抗体代替物またはその他の結合物質、例えば可溶性受容体、アドネクチン、ペプチド、ペプチド模倣物、小分子、アプタマーなど、ならびにその組成物および使用法をさらに提供する。結合物質を、本明細書に記載の治療、診断、創薬またはタンパク質発現/精製および分析のための方法および組成物のいずれかで使用することができる。アドネクチン、可溶性受容体、アビマーおよびトリネクチンのような生物製剤ベースの結合物質が特に有用である。

特定の実施形態では、このような結合物質は、本発明のAARSポリペプチドにより仲介される1つ以上の非カノニカルな活性を調節するのに有効である。ある実施形態では、例えば、結合物質は、AARSポリペプチドおよび/またはその結合パートナーと結合し、互いに相互作用するその能力を阻害し、かつ/またはAARSポリペプチドの非カノニカルな活性に拮抗するものである。特定の実施形態では、例えば、結合物質はAARSポリペプチドの細胞結合パートナーと結合し、AARSポリペプチドにより仲介される非カノニカルな活性を増加させるまたは刺激することなどによりAARSポリペプチド活性を模倣する。したがって、このような結合物質を用いて、部分的にまたは完全に本発明のAARSポリペプチドの活性に拮抗するかまたはそれを刺激することにより、本発明のAARSポリペプチドにより仲介される疾患、障害またはその他の状態を、診断、治療または予防し得る。

結合物質は、それが検出可能なレベルで(例えば、ELISAアッセイにおいて)本発明のポリペプチドまたはその細胞結合パートナーと反応し、かつ同様の条件下で、無関係のポリペプチドとの統計的に有意な検出可能な反応が見られない場合、本発明のポリペプチドまたはその細胞結合パートナーと「特異的に結合する」という。場合によっては、結合物質は完全長型のAARSポリペプチドと有意に相互作用しない。特定の例示的な実施形態では、AARSタンパク質フラグメントまたはその細胞結合パートナーに対する結合物質の親和性は、少なくとも約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40または50nMである。特定の実施形態では、AARSタンパク質フラグメントに対する結合物質の親和性は、対応する完全長AARSポリペプチドに対するその親和性よりも通常、約1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍以上(間にあるすべての整数を含む)強い。特定の実施形態では、対応する完全長AARSタンパク質に対する結合物質の親和性は、少なくとも約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20μMである。

上述のように、結合物質として「ペプチド」が含まれる。ペプチドという用語は通常、アミノ酸残基のポリマーならびにそのバリアントおよび合成類似体を指す。特定の実施形態では、用語「ペプチド」は比較的短いポリペプチドを指し、間にあるすべての整数および範囲(例えば、5〜10、8〜12、10〜15)を含めた約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45または50個のアミノ酸からなり、かつAARSポリペプチド、その細胞結合パートナーまたはその両方と相互作用するペプチドがこれに包含される。ペプチドは、本明細書に記載されているように、天然のアミノ酸および/または非天然のアミノ酸から構成され得る。

天然のアミノ酸のみからなるペプチドに加え、ペプチド模倣物またはペプチド類似体も提供される。ペプチド類似体は、鋳型ペプチドと類似した特性を有する非ペプチド薬として、製薬業界では一般的に用いられている。このようなタイプの非ペプチド化合物は「ペプチド模倣物」と呼ばれる(Luthmanら,A Textbook of Drug Design and Development,14:386−406,第2版,Harwood Academic Publishers(1996);Joachim Grante,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,33:1699−1720(1994);Fauchere,J.,Adv.Drug Res.,15:29(1986);VeberおよびFreidinger TINS,p.392(1985);ならびにEvansら,J.Med.Chem.30:229(1987))。ペプチド模倣物は、ペプチドの生物活性を模倣するが、化学的性質においてはもうペプチドではない分子である。ペプチド模倣物の化合物は当該技術分野で公知であり、例えば米国特許第6,245,886号に記載されている。

また本発明はペプトイドも含む。ペプチドのペプトイド誘導体は別の形態の改変ペプチドであり、生物活性に重要な構造決定因子を保持しているがペプチド結合は含まないため、タンパク質分解に対して耐性が付与されている(Simonら,PNAS USA.89:9367−9371,1992)。ペプトイドはN−置換グリシンのオリゴマーである。アルキル基が多数記載されており、それぞれが天然アミノ酸の側鎖に対応する。本発明のペプチド模倣物は、少なくとも1つのアミノ酸、数個のアミノ酸またはすべてのアミノ酸残基が、対応するN−置換グリシンに置き換わっている化合物を含む。例えば米国特許第5,811,387号には、ペプトイドライブラリーが記載されている。

また結合物質は、1つ以上の小分子も包む。「小分子」は、合成または生物起源(生体分子)であるが、通常、ポリマーではない有機化合物を指す。有機化合物は、分子が炭素を含む化合物の大きなクラスを指し、通常、炭酸エステル、単純な炭素の酸化物またはシアン化物のみを含むものは除外される。「生体分子」は一般に、生物により産生される有機分子を指し、ペプチド、多糖および核酸のような大型のポリマー分子(生体高分子)、ならびに小分子、例えば主要な二次代謝産物、脂質、リン脂質、糖脂質、ステロール、グリセロ脂質、ビタミンおよびホルモンなどがこれに包含される。「ポリマー」は一般に、反復構造単位からなる巨大分子または高分子を指し、反復構造単位は通常、共有化学結合に連結されている。

特定の実施形態では、小分子の分子量は、約50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、500、650、600、750、700、850、800、950、1000または2000ダルトンを含めた、1000〜2000ダルトン未満、通常約300〜700ダルトンの間である。小分子ライブラリーを本明細書の他の箇所に記載する。

また結合物質としてアプタマーも含まれる(例えば、Ellingtonら,Nature.346,818−22,1990;およびTuerkら,Science.249,505−10,1990を参照されたい)。アプタマーの例としては、核酸アプタマー(例えば、DNAアプタマー、RNAアプタマー)およびペプチドアプタマーが挙げられる。核酸アプタマーは一般に、SELEX(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)法のようなin vitro選択法またはそれと同等の方法のラウンドを反復して、小分子、タンパク質、核酸のような様々な分子標的、さらには細胞、組織および生物体と結合するように操作された核酸種を指す。例えば、米国特許第6,376,190号;および同第6,387,620号を参照されたい。したがって、本明細書に記載のAARSポリペプチドおよび/またはその細胞結合パートナーと結合する核酸アプタマーが含まれる。

ペプチドアプタマーは通常、タンパク質足場の両側に結合した可変ペプチドループを含み、この二重の構造的制約が通常、ペプチドアプタマーの結合親和性を抗体に匹敵するレベルまで増大させる(例えば、ナノモル濃度範囲で)。特定の実施形態では、可変ループの長さは約10〜20個(間にあるすべての整数を含む)のアミノ酸からなり、また足場は、優れた溶解性および緻密性を有する任意のタンパク質を含み得る。特定の模範的実施形態では、足場タンパク質として細菌タンパク質チオレドキシンAを使用し、可変ループを還元活性部位内(野生型タンパク質の−Cys−Gly−Pro−Cys−ループ)に挿入してもよく、2つのシステイン側鎖はジスルフィド架橋を形成することができる。ペプチドアプタマーを同定する方法は、例えば米国特許出願第2003/0108532号に記載されている。したがって、本明細書に記載のAARSポリペプチドおよび/またはその細胞結合パートナーと結合するペプチドアプタマーが含まれる。ペプチドアプタマーの選択は、酵母ツーハイブリッド法を含めた当該技術分野で公知の様々な系を用いて行うことができる。

また、本発明のAARSタンパク質フラグメントと特異的に結合するADNECTINS(商標)、AVIMERS(商標)、アナフォン(anaphones)およびアンチカリンも含まれる。ADNECTINS(商標)は、生来的に他のタンパク質と結合する豊富な細胞外タンパク質であるヒトフィブロネクチン由来の標的化生物製剤の種類を指す。例えば、米国特許出願公開第2007/0082365号;同第2008/0139791号;および同第2008/0220049号を参照されたい。ADNECTINS(商標)は通常、天然のフィブロネクチン骨格と、ヒトフィブロネクチンの特定部分の複数の標的化ドメインとからなる。標的化ドメインを操作して、ADNECTIN(商標)が本発明のAARSタンパク質フラグメントのような目的とする治療標的を特異的に認識できるようにすることができる。

AVIMERS(商標)は、in vitroエクソンシャッフリングおよびファージディスプレイを用いて操作された多量体の結合タンパク質またはペプチドを指す。複数の結合ドメインが結合しているため、単一エピトープ免疫グロブリンドメインに比べて親和性および特異性が高い。例えば、Silvermanら,Nature Biotechnology.23:1556−1561,2005;米国特許第7,166,697号;ならびに米国特許出願公開第2004/0175756号、同第2005/0048512号、同第2005/0053973号、同第2005/0089932号および同第2005/0221384号を参照されたい。

また、設計されたアンキリン反復タンパク質(DARPin)も含まれ、創薬および薬物開発での標的結合において抗体を上回る利点をもたらし得る非免疫グロブリンタンパク質のクラスがこれに含まれる。各種用途の中でも、DARPinは小さなサイズおよび高い安定性を含めたその好ましい分子特性により、in vivoイメージングまたは毒素もしくはその他の治療ペイロード送達に理想的に適している。細菌での低コスト生産および多数の標的特異的DARPinの迅速な生成により、DARPinは創薬に有用なアプローチとなっている。さらに、DARPinを多重特異性の形態で容易に作製することができるため、エフェクターDARPinを特定の器官に対して標的化する、または複数のDARPinからなる1つの分子で複数の受容体を標的とする可能性がもたらされる。例えば、Stumppら,Curr Opin Drug Discov Devel.10:153−159,2007;米国特許出願第2009/0082274号;および国際出願PCT/EP2001/10454号を参照されたい。

特定の実施形態は「モノボディ」を含み、モノボディは通常、足場としてヒトフィブロネクチン(FNfn10)の第10フィブロネクチンIII型ドメインが用いられ、標的結合のための複数の表面ループを提示する。FNfn10は、免疫グロブリンフォールドと同様のβサンドイッチ構造を有する小型の(94残基)タンパク質である。FNfn10はジスルフィド結合または金属イオンがなくても非常に安定であり、細菌内で正確にフォールドされた形態で、高レベルで発現させることができる。FNfn10足場は実質的にあらゆるディスプレイ技術に適合する。例えば、Batoriら,Protein Eng.15:1015−20,2002;およびWojcikら,Nat Struct Mol Biol.,2010;および米国特許第6,673,901号を参照されたい。

アンチカリンは抗体模倣物の1クラスを指し、通常、強固な構造のフレームワークに支持された超可変ループ領域を有する結合タンパク質のファミリーであるヒトリポカリンから合成される。例えば、米国特許出願第2006/0058510号を参照されたい。アンチカリンの大きさは通常、約20kDaである。アンチカリンは、4つのペプチドループおよび結合したαへリックスにより対で連結された8つの逆平行β鎖により形成されるバレル構造(安定なβバレル足場)により特徴付けることができる。特定の態様では、特異的結合を得るために超可変ループ領域に構造上の偏りを生じさせる。例えば、参照により本明細書に組み込まれるSkerra,FEBS J.275:2677−83,2008を参照されたい。

VII.薬物放出試験および製品規格、診断法ならびに試薬に関するバイオアッセイならびに解析アッセイ また、治療および診断試薬としてのAARSタンパク質フラグメントおよび関連薬剤に関連したバイオアッセイも含まれる。例としては、特に純度、生物活性、親和性、溶解度、pH、エンドトキシンレベルを測定するバイオアッセイおよび解析アッセイが挙げられ、これらは本明細書に多数記載されている。また、用量反応曲線を確立し、かつ/または様々なバッチの薬剤を比較するための1つ以上の基礎を提供するアッセイも含まれる。バッチ比較は、化学的特徴付け、生物学的特徴付けおよび臨床的特徴付けのいずれか1つ以上に基づくものであり得る。タンパク質剤に関しては、選択された薬剤の効力、安定性、薬物動態および免疫原性を評価する方法も含まれる。各種用途の中でも特に、これらおよびその他の方法を、本明細書に記載のAARSタンパク質フラグメント、抗体、結合物質、ポリヌクレオチド(アンチセンス剤およびベクターなど)およびその他のものを含めた、生物学的または化学的薬剤のロット放出試験のために使用することができる。

特定の実施形態は、バイオアフィニティーアッセイの使用を含む。このようなアッセイを用いて、例えば、AARSタンパク質フラグメントと細胞結合パートナーとの間、またはAARSタンパク質フラグメントと抗体との間の結合親和性を評価することができる。また、AARSタンパク質フラグメントと候補試験化合物またはリード試験化合物のような別の結合物質(例えば、AARSの小分子調節物質)との間、またはAARS細胞結合パートナーと候補試験化合物またはリード試験化合物との間の結合親和性を測定することもできる。特定の模範的結合親和性アッセイでは、本明細書に記載され当該技術分野で公知であるELISAアッセイを使用し得る。特定のアッセイでは、高速受容体結合クロマトグラフィーを用いる(例えば、Roswallら,Biologicals.24:25−39,1996を参照されたい)。その他の結合親和性アッセイの例では、表面プラズモン共鳴(SPR)に基づく技術を使用し得る。例としてはBIACore技術が挙げられ、このうちのあるものでは、SPR技術とマイクロ流体系を合体させて、pM〜mMの範囲の濃度での分子相互作用をリアルタイムでモニターする。また、結合特異性、結合親和性および結合キネティクス/速度定数を正確に測定できるKINEXA(商標)アッセイも含まれる。

特定の実施形態は、タンパク質剤の免疫原性を評価または最適化するイムノアッセイに関する。例としては、治療用タンパク質の潜在的な免疫原性に関する有用な情報が得られるex vivoヒト細胞アッセイおよびin vitro免疫酵素アッセイが挙げられる 。ex vivo細胞応答アッセイを用いて、例えば、抗原提示細胞(APC)とT細胞の間での細胞間共同作用を再現することにより、目的タンパク質との接触後のT細胞活性化を測定することができる。特定のin vitro酵素アッセイでは、関連するヒト集団の大部分をカバーする組換えHLA−DR分子の収集物を使用し、またペプチド(治療用タンパク質の断片化により生じたもの)とHLA−DR分子との結合を試験するための自動化された免疫酵素アッセイを含み得る。また、これらのおよび関連する方法を用いて、タンパク質剤由来の1つ以上のT細胞エピトープを同定しこれを除去または改変するなどして、選択されたタンパク質の免疫原性を低下させる方法も含まれる。

また、非カノニカルな生物活性および細胞毒性を含めた特定の生物活性のようなパラメータを測定する生物学的放出アッセイ(例えば、細胞ベースのアッセイ)も含まれる。特定の具体的な生物学的アッセイとしては、例えば、本明細書に記載されているような、非カノニカルな生物活性の蛍光または発光指標のような読取り物質と機能的に結合した、選択されたAARSタンパク質フラグメントの細胞結合パートナー(例えば、細胞表面受容体)を用いる細胞ベースのアッセイが挙げられる。例えば、特定の実施形態は、AARSタンパク質フラグメントと結合する細胞表面受容体またはその細胞外部分を含む細胞を含み、ここでは細胞は、検出物質または読取り物質を含む。また、AARSポリペプチドまたは抗体のような薬剤の薬物動態を特徴付けるための、操作されたマウスまたはその他の哺乳動物を通常用いたin vivo生物学的アッセイも挙げられる(例えば、Leeら,The Journal of Pharmacology.281:1431−1439,1997を参照されたい)。細胞毒性ベースの生物学的アッセイの例としては、特に用量反応曲線、バッチ試験、または米国食品医薬品局(FDA)のような様々な規制当局による認可に関連したその他の特性を確立するためにAARSタンパク質フラグメントの細胞毒性を評価することができる、放出アッセイ(例えば、アポトーシスを測定するクロムまたはユウロピウム放出アッセイ;例えば、von Zonsら,Clin Diagn Lab Immunol.4:202〜207,1997を参照されたい)が挙げられる。

このようなアッセイを用いて、例えば、選択されたAARSタンパク質フラグメントもしくはその他の薬剤の用量反応曲線を作成し、かつ/または異なるバッチのタンパク質もしくはその他の薬剤の用量反応曲線を比較することができる。用量反応曲線は、ストレッサーの程度と受容体の反応との関係を表すX−Y軸グラフであり、反応は生理的また生化学的反応、例えばin vitroの細胞またはin vivoの細胞もしくは組織における非カノニカルな生物活性、in vivoで測定される治療有効量(例えば、EC50により測定される)、あるいはin vitroまたはin vivoで測定される死(例えば、細胞死、生物死)などであり得る。死は通常、統計的に導かれたモデル化母集団の50%致死量であるLD50で表されるが、LC01(試験動物母集団の1%致死量)、LC100(試験動物母集団の100%致死量)またはLCLO(致死性となる最小量)で表されることもある。ほぼあらゆる所望の効果またはエンドポイントをこのようにして特徴付けることができる。

通常、反応曲線では測定された用量がX軸上にされ、反応がY軸上にプロットされる。より一般的には用量の対数がX軸上にプロットされ、急勾配の部分が中央にくるS字状曲線となる場合が最も多い。無影響量(NOEL)は測定可能な作用が見られない実験上の最小量を指し、閾値量は反応がゼロを超えたことを示す、グラフ上の最初の点を指す。一般的な法則として、強い薬物ほど急勾配の用量反応曲線が得られる。多くの薬物では、閾値量よりもわずかに多い量で所望の効果が見られるが、これは多くの場合、これより低い用量では比較的効果が少なく、また高い用量では望ましくない副作用を生じるからである。in vivoで作成した用量反応曲線では、必要に応じて、体重当たりのμg/kg、mg/kgまたはg/kgのような値により曲線を特徴付けることができる。

バッチ比較では、異なるバッチの異なる用量反応曲線の間(例えば、異なるバッチのAARSタンパク質フラグメント、抗体、またはその他の薬剤の間)の変動係数(CV)を算出することが有用であり得るが、これは一部、異なる単位または異なる平均値のデータのセットの比較がCVにより可能になるという理由による。例えば、特定の実施形態の例では、2つまたは3つ以上の異なるバッチのAARSタンパク質フラグメントまたはその他の薬剤の間のCVは、4、5、6、7または8ポイントの用量曲線で約15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%未満である。特定の実施形態では、用量反応曲線を細胞ベースのアッセイで測定し、その読取りは、AARSタンパク質フラグメントの選択された非カノニカルな活性の増加または減少に関するものである。特定の実施形態では、用量反応曲線を細胞放出アッセイまたは動物モデル(例えば、マウスモデル)で測定し、その読取りは細胞死または動物死に関するものである。その他のバリエーションは当業者に明らかであろう。

VIII.発現系および精製系 本発明の実施形態は、本発明のAARSタンパク質フラグメントまたはその他のポリペプチド系薬剤の発現および精製のための方法および関連組成物を含む。このような組換えAARSポリペプチドは、例えば、Sambrookら(1989,上記)、特に第16節および17節;Ausubelら(1994,上記)、特に第10章および16章;ならびにColiganら,Current Protocols in Protein Science(John Wiley & Sons,Inc.1995−1997)、特に第1章、5章および6章に記載されているような標準的なプロトコルを用いて調製することが好都合であろう。一般的な一例として、AARSポリペプチドを次に挙げる工程の1つ以上を含む手順で調製し得る:(a)AARSポリペプチドをコードし調節エレメントと作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列を含む構築物を調製する工程;(b)構築物を宿主細胞に導入する工程;(c)宿主細胞にAARSポリペプチドを発現させる工程;および(d)宿主細胞からAARSポリペプチドを単離する工程。

AARSポリヌクレオチドは本明細書の他の箇所に記載されている。所望のポリペプチドを発現させるために、そのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列またはその機能的同等物を適当な発現ベクター、すなわち、挿入されたコード配列の転写および翻訳に必要なエレメントを含むベクター内に挿入する。当業者に公知の方法を用いて、目的ポリペプチドをコードする配列と、適当な転写および翻訳制御エレメントとを含む発現ベクターを構築し得る。そのような方法としては、in vitro組換えDNA技術、合成技術およびin vivo遺伝子組換えが挙げられる。このような技術は、Molecular Cloning,A Laboratory Manual(1989)およびAusubelら,Current Protocols in Molecular Biology(1989)に記載されている。

各種発現ベクター/宿主系が知られており、これらを用いてポリヌクレオチド配列を含ませ発現させ得る。このような系としては、組換えバクテリオファージDNA発現ベクター、プラスミDNA発現ベクタードまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌のような微生物;酵母発現ベクターで形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)または細菌発現ベクター(例えば、TiまたはpBR322プラスミド)で形質転換させた植物細胞系;あるいは哺乳動物細胞系、より具体的にはヒト細胞系を含めた動物細胞系が挙げられるが、これらに限定されない。

発現ベクター中に存在する「制御エレメント」または「制御配列」とは、宿主細胞タンパク質と相互作用して転写および翻訳を行うベクターの非翻訳領域、すなわちエンハンサー、プロモーター、5’および3’非翻訳領域のことである。このようなエレメントはその強さおよび特異性が異なり得る。使用するベクター系および宿主に応じて、構成的プロモーターおよび誘導性プロモーターを含めた任意の数の適当な転写エレメントおよび翻訳エレメントを使用し得る。例えば、細菌系でクローニングを行う場合、PBLUESCRIPTファージミド(Stratagene、La Jolla、Calif.)またはPSPORT1プラスミド(Gibco BRL、Gaithersburg、Md.)のハイブリッドlacZプロモーターなどのような誘導性プロモーターを使用し得る。哺乳動物細胞系では、一般に哺乳動物遺伝子由来または哺乳動物ウイルス由来のプロモーターが好ましい。ポリペプチドをコードする配列の複数のコピーを含む細胞系を作製する必要がある場合は、SV40またはEBVベースのベクターを適当な選択マーカーとともに使用するのが有利であろう。

細菌系では、発現させるポリペプチドに対して意図する使用に応じて、数多くの発現ベクターを選択し得る。例えば、大量に必要とする場合、精製が容易な融合タンパク質の高レベルの発現を指令するベクターを使用し得る。このようはベクターとしては、ハイブリッドタンパク質が産生されるように、目的ポリペプチドをコードする配列をβ−ガラクトシダーゼのアミノ末端Metとそれに続く7残基の配列とインフレームでベクター内に連結し得る、BLUESCRIPT(Stratagene)のような多機能性大腸菌(E.coli)クローニングベクターおよび発現ベクター;pINベクター(Van Heeke & Schuster,J.Biol.Chem.264:5503−5509(1989))などが挙げられるが、これらに限定されない。またpGEXベクター(Promega、Madison、Wis.)を用いて、外来ポリペプチドをグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現させてもよい。一般にこのような融合タンパク質は可溶性であり、グルタチオン−アガロースビーズへの吸着、次いで、遊離グルタチオン存在下での溶離により溶解細胞から容易に精製することができる。このような系で作製されたタンパク質をヘパリン、トロンビンまたは因子XAプロテアーゼ切断部位を含むように設計して、クローニングされた目的ポリペプチドをGST部分から随意に遊離できるようにしてもよい。

特定の実施形態では、大腸菌(E.coli)ベースの発現系を使用し得る(例えば、Structural Genomics Consortiumら,Nature Nature.5:135−146,2008を参照されたい)。これらのおよび関連する実施形態は、適当な発現ベクターを作製するのに一部または全部をライゲーションによるクローニング(LIC)に依存し得る。特定の実施形態では、タンパク質発現をT7 RNAポリメラーゼにより制御し得る(例えば、pETベクターシリーズ)。これらのおよび関連する実施形態では、T7仲介性の発現を支持し、かつ標的タンパク質の安定性の向上のためにlonプロテアーゼおよびompTプロテアーゼを欠くBL21のλDE3溶原菌である、発現宿主株BL21(DE3)を使用し得る。また、大腸菌(E.coli)ではほとんど使用されないtRNAをコードするプラスミドを保有する発現宿主株、例えばROSETTA(商標)(DE3)およびRosetta2(DE3)株も含まれる。また、BENZONASE(登録商標)ヌクレアーゼおよびBUGBUSTER(登録商標)タンパク質抽出試薬の商標で販売されている試薬を用いて、細胞溶解および試料処理も向上させ得る。細胞培養では、自動誘導培地によりハイスループットな発現系を含めた多くの発現系の効率を上げることができる。このタイプの培地(例えば、OVERNIGHT EXPRESS(商標)Autoinduction System)は、代謝変化により、IPTGのような人工の誘導剤の添加なしでタンパク質発現を徐々に誘導する。特定の実施形態では、ヘキサヒスチジンタグ(HIS・TAG(登録商標)融合物の商標で販売されているものなど)、次いで固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)精製または関連する技術を用いる。しかし、特定の態様では、アフィニティータグを使用してまたは使用せずに臨床グレードのタンパク質を大腸菌(E.coli)封入体から単離することができる(例えば、Shimpら,Protein Expr Purif.50:58−67,2006を参照されたい)。さらなる例として、特定の実施形態では、大腸菌(Escherichia coli)における低温でのタンパク質の過剰発現がタンパク質の溶解度および安定性を向上させることから、低温ショック誘導性の大腸菌(E.coli)高収率産生系を使用し得る(例えば、Qingら,Nature Biotechnology.22:877−882,2004を参照されたい。

また高密度細菌発酵系も含まれる。例えば、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)の高細胞密度培養により、150g/Lを上回る細胞密度でのタンパク質産生および10g/Lを上回る力価での組換えタンパク質発現が可能である。

酵母(Saccharomyces cerevisiae)では、アルファ因子のような構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター、アルコールオキシダーゼおよびPGHを含む数多くのベクターを使用し得る。総説として、Ausubelら(上記supra)およびGrantら,Methods Enzymol.153:516−544(1987)を参照されたい。またピキア・パンドリス(Pichia pandoris)発現系も含まれる(例えば、Liら,Nature Biotechnology.24,210−215,2006;およびHamiltonら,Science,301:1244,2003を参照されたい)。特定の実施形態は、特にヒト化N−グリコシル化経路を有する酵母を含めた、選択的にタンパク質をグリコシル化するように操作された酵母系を含む(例えば、Hamiltonら,Science.313:1441−1443,2006;Wildtら,Nature Reviews Microbiol.3:119−28,2005;およびGerngrossら,Nature−Biotechnology.22:1409−1414,2004;米国特許第7,629,163号;同第7,326,681号;および同第7,029,872号を参照されたい)。単なる例に過ぎないが、特にFernbachフラスコまたは15L、50L、100Lおよび200Lの発酵槽内で、組換え酵母培養物を増殖させることができる。

植物発現ベクターを使用する場合、多数あるプロモーターのいずれかによりポリペプチドをコードする配列の発現を駆動させ得る。例えば、CaMVの35Sおよび19Sプロモーターのようなウイルスプロモーターを単独で、またはTMV由来のオメガリーダー配列と組み合わせて使用し得る(Takamatsu,EMBO J.6:307−311(1987))。あるいは、RUBISCOの小サブユニットのような植物プロモーターまたは熱ショックプロモーターを使用し得る(Coruzziら,EMBO J.3:1671−1680(1984);Broglieら,Science 224:838−843(1984);およびWinterら,Results Probl.Cell Differ.17:85−105(1991))。これらの構築物を、直接DNA形質転換または病原体を仲介によるトランスフェクションにより植物細胞内に導入することができる。このような技術は一般的に入手可能な数多くの総説に記載されている(例えば、Hobbs in McGraw Hill,Yearbook of Science and Technology,pp.191−196(1992)を参照されたい)。

また、昆虫系を用いて目的ポリペプチドを発現させることもできる。例えば、1つのこのような系では、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多体病ウイルス(AcNPV)をベクターとして使用し、ヨウトガ(Spodoptera frugiperda)細胞またはトリコプラシア(Trichoplusia)細胞内で外来遺伝子を発現させる。ポリペプチドをコードする配列をウイルスのポリヘドリン遺伝子のような非必須領域内にクローニングして、ポリヘドリンプロモーターの制御下に配置し得る。ポリペプチドコード配列の挿入が成功すれば、ポリヘドリン遺伝子が不活性化されて、コートタンパク質を欠く組換えウイルスが産生される。次いで、この組換えウイルスを用いて、例えばヨウトガ(S.frugiperda)細胞またはトリコプラシア(Trichoplusia)細胞に感染させ、細胞内で目的ポリペプチドを発現させ得る(Engelhardら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:3224−3227(1994))。また、SF9、SF21およびT.ni細胞を用いるものを含めたバキュロウイルス発現系も含まれる(例えば、MurphyおよびPiwnica‐Worms,Curr Protoc Protein Sci.Chapter 5:Unit5.4,2001を参照されたい)。昆虫系では、哺乳動物系と同様の翻訳後修飾が得られる。

哺乳動物宿主細胞では、数多くのウイルスベースの発現系が一般に利用可能である。例えば、発現ベクターとしてアデノウイルスを使用する場合、目的ポリペプチドをコードする配列を、後期プロモーターと三部のリーダー配列とからなるアデノウイルス転写/翻訳複合体内に連結し得る。ウイルスゲノムの非必須であるE1またはE3領域への挿入を用いて、感染宿主細胞内でポリペプチドの発現が可能な生存ウイルスを入手し得る(LoganおよびShenk,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:3655−3659(1984))。さらに、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサーのような転写エンハンサーを用いて、哺乳動物宿主細胞内での発現を増加させ得る。

有用な哺乳動物宿主細胞系の例としては、以下のものが挙げられる。SV40により形質転換されたサル腎臓CV1系(COS−7、ATCC CRL 1651);懸濁培養での増殖用にサブクローニングしたヒト胎児腎臓系(293または293細胞、Grahamら,J.Gen Virol.36:59(1977));ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243−251(1980));サル腎細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB8065);マウス乳腺腫瘍(MMT060562、ATCC CCL51);TR1細胞(Matherら,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;およびヒト肝細胞癌系(Hep G2)。その他の有用な哺乳動物宿主細胞系としては、DHFR−CHO細胞を含めたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaubら,PNAS USA 77:4216(1980));ならびにNSOおよびSp2/0のような骨髄腫細胞系が挙げられる。抗体産生に適した特定の哺乳動物宿主細胞系の総説としては、例えば、YazakiおよびWu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C Lo編,Humana Press,Totowa,N.J.,2003),pp.255−268を参照されたい。特定の好ましい哺乳動物細胞発現系としては、CHO細胞およびHEK293細胞ベースの発現系が挙げられる。哺乳動物発現系では、当該技術分野で公知のものの中でも特に、例えばT−フラスコ、ローラーボトルまたはセルファクトリー中での付着細胞系、あるいは例えば1Lおよび5Lのスピナー、5L、14L、40L、100Lおよび200Lの攪拌タンクバイオリアクターまたは20/50Lおよび100/200LのWAVEバイオリアクター中での懸濁培養を用いることができる。

またタンパク質の無細胞発現も含まれる。これらのおよび関連する実施形態では通常、精製されたRNAポリメラーゼ、リボソーム、tRNAおよびリボヌクレオチドを用いるが、これらの試薬は、細胞または細胞ベースの発現系からの抽出により作製し得る。

また特定の開始シグナルを用いて、目的ポリペプチドをコードする配列のより効率的な翻訳を達成し得る。このようなシグナルとしては、ATG開始コドンおよび隣接する配列が挙げられる。ポリペプチドをコード配列、その開始コドンおよび上流配列を適当な発現ベクターに挿入する場合、追加の転写または翻訳制御シグナルは必要ないであろう。しかし、コード配列またはその一部分のみを挿入する場合、ATG開始コドンを含めた外来性の翻訳制御シグナルを加えるべきである。さらに開始コドンは、挿入物全体が確実に翻訳されるように正確なリーディングフレーム内にあるべきである。外来性の翻訳エレメントおよび開始コドンは、天然および合成の両方の様々な起源であり得る。文献に記載されているような、使用する特定の細胞系に適したエンハンサーを含ませることにより、発現効率を増強させ得る(Scharfら,Results Probl.Cell Differ.20:125−162(1994)).

さらに、挿入配列の発現の調節または発現タンパク質のプロセシングを所望の方式で行うその能力によって、宿主細胞株を選択し得る。このようなポリペプチドの修飾としては、翻訳後修飾、例えばアセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化などが挙げられるが、これらに限定されない。また、「プレプロ」形態のタンパク質を切断する翻訳後プロセシングを用いて、正確な挿入、フォールディングおよび/または機能を促進し得る。細菌細胞に加えて、このような翻訳後活性のための特定の細胞機構および特有の機序を有するまたは欠く様々な宿主細胞、例えば酵母、CHO、HeLa、MDCK、HEK293およびW138などを選択して、外来タンパク質の正確な修飾およびプロセシングを確実に行わせ得る。

長期間にわたる高収率での組換えタンパク質産生のためには、安定な発現が一般的に好ましい。例えば、ウイルスの複製起点および/または外来性の発現エレメントおよび選択マーカー遺伝子を同じまたは別のベクター上に含み得る発現ベクターを用いて、目的ポリヌクレオチドを安定に発現する細胞系を形質転換させ得る。ベクターの導入後、細胞を強化培地で約1〜2日間増殖させてから選択培地に切り替え得る。選択マーカーの目的は選択に対する耐性を付与することであり、それが存在することにより、導入配列を良好に発現する細胞の増殖および回収が可能となる。細胞型に適した組織培養技術を用いて、安定に形質転換された細胞の耐性クローンを増殖させ得る。また、トランスフェクションまたは感染などによる一過性の産生を用いることもできる。一過性の産生に適した哺乳動物発現系の例としては、HEK293およびCHOベースの系が挙げられる。

形質転換または形質導入された細胞系を回収するために、任意の数の選択系を使用し得る。このような系としては、それぞれtk細胞およびaprt細胞で使用することができる、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wiglerら,Cell 11:223−232(1977))およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら,Cell 22:817−823(1990))遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。また代謝拮抗剤、抗生物質または除草剤に対する耐性を選択基準として使用することも可能であり、このようなものして、例えば、メトトレキサートに対する耐性を付与するdhfr(Wiglerら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.77:3567−70(1980));アミノグリコシド、ネオマイシンおよびG−418に対する耐性を付与するnpt(Colbere−Garapinら,J.Mol.Biol.150:1−14(1981));ならびにクロルスルフロンおよびホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性をそれぞれ付与するalsまたはpat(Murry,上記)がある。さらなる選択遺伝子、例えば、細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用できるようにするtrpB、または細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノール(histinol)を利用できるようにするhisDが記載されている(HartmanおよびMulligan,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:8047−51(1988))。緑色蛍光タンパク質(GFP)およびその他の蛍光タンパク質(例えば、RFP、YFP)、アントシアニン、β−グルクロニダーゼとその基質GUS、ならびにルシフェラーゼとその基質ルシフェリンのような可視マーカーの使用が普及してきており、これらは形質転換細胞の同定だけでなく、特定のベクター系による一過性のまたは安定なタンパク質発現量の定量化にも広く用いられている(例えば、Rhodesら,Methods Mol.Biol.55:121−131(1995)を参照されたい)。

また本発明の実施形態は、ハイスループットなタンパク質産生系または微小産生系も含む。特定の態様では、例えば、金属キレートで修飾したスライド表面またはMagneHis Ni−Particle上でのタンパク質発現および精製のためのヘキサ−ヒスチジン融合タグを使用し得る(例えば、Kwonら,BMC Biotechnol.9:72,2009;およびLinら,Methods Mol Biol.498:129−41,2009を参照されたい)。またハイスループットな無細胞タンパク質発現系も含まれる(例えば、Sitaramanら,Methods Mol Biol.498:229−44,2009を参照されたい)。これらのおよび関連する実施形態を用いて、例えば、AARSタンパク質フラグメントのマイクロアレイを作製することができ、次いでこれをスクリーニングライブラリーに使用して、AARSタンパク質フラグメントと相互作用する薬剤を同定することができる。

ポリヌクレオチドコード産物の発現を、その産物に特異的な結合物質またはポリクローナルもしくはモノクローナル抗体のような抗体を用いて検出および測定するための各種プロトコルが、当該技術分野で公知である。例としては、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)、ウエスタン免疫ブロット、ラジオイムノアッセイ(RIA)および蛍光標示式細胞分取(FACS)が挙げられる。これらおよびその他のアッセイは、特にHamptonら,Serological Methods,a Laboratory Manual(1990)およびMaddoxら,J.Exp.Med.158:1211−1216(1983)に記載されている。

多種多様な標識およびコンジュゲーション技術が当業者に公知であり、これらを様々な核酸およびアミノ酸のアッセイに使用し得る。ポリヌクレオチドに関連した配列を検出するための標識ハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプローブを作製する手段としては、標識ヌクレオチドを使用したオリゴ標識、ニックトランスレーション、末端標識またはPCR増幅が挙げられる。あるいは、配列またはその任意の一部分をmRNAプローブ産生用のベクター中にクローニングし得る。このようなベクターは当該技術分野において公知で、市販されており、T7、T3またはSP6のような適当なRNAポリメラーゼおよび標識ヌクレオチドを加えてin vitroでRNAプローブを合成するために使用し得る。市販の各種キットを用いてこれらの方法を実施してもよい。使用し得る適当なレポーター分子または標識としては、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤または発色剤、および基質、補助因子、阻害剤、磁性粒子などが挙げられる。

目的のポリヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞を、細胞培養物からのタンパク質の発現および回収に適した条件下で培養し得る。特定の具体的な実施形態では、無血清細胞発現系を用いる。例としては、無血清培地で増殖可能なHEK293細胞およびCHO細胞が挙げられる(例えば、Rosserら,Protein Expr.Purif.40:237−43,2005;および米国特許第6,210,922号を参照されたい)。

組換え細胞により産生されたタンパク質は、使用する配列および/またはベクターに応じて、分泌される場合もあれば、細胞内に含まれている場合もある。本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを、コードされたポリペプチドが原核または真核細胞膜を通って分泌されるよう指令するシグナル配列を含むように設計し得ることも、当業者は同様に理解するであろう。他の組換え構築物を用いて、目的ポリペプチドをコードする配列を、可溶性タンパク質の精製および/または検出を容易にするポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列と連結してもよい。このようなドメインの例としては、切断可能なおよび切断不可能なアフィニティー精製タグおよびエピトープタグ、例えばアビジン、FLAGタグ、ポリヒスチジンタグ(例えば、6×His)、cMycタグ、V5−タグ、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)タグなどが挙げられる。

組換え細胞により産生されたタンパク質を、当該技術分野で公知の各種技術に従って精製し特徴付けることができる。タンパク質精製およびタンパク質純度の解析を行うためのシステムの例としては、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)(例えば、AKTA社およびBio−Rad社のFPLCシステム)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)(例えば、Beckman社およびWaters社のHPLC)が挙げられる。精製のための化学の例としては、当該技術分野で公知のものの中でも特に、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、Q、S)、サイズ排除クロマトグラフィー、塩勾配、アフィニティー精製(例えば、Ni、Co、FLAG、マルトース、グルタチオン、プロテインA/G)、ゲルろ過、逆相、セラミックHYPERD(登録商標)イオン交換クロマトグラフィーおよび疎水性相互作用カラム(HIC)が挙げられる。またSDS−PAGE(例えば、クーマシー染色、銀染色)、免疫ブロット、Bradford法およびELISAのような解析方法も挙げられ、これらは通常、タンパク質組成物の純度を測定するために、産生または精製工程の任意の段階において使用され得る。

また、AARSタンパク質フラグメントの濃縮方法および濃縮された可溶性タンパク質を含む組成物も含まれる。様々な態様において、このようなAARSポリペプチドの濃縮溶液は、タンパク質を約5mg/ml、約8mg/ml、約10mg/ml、約15mg/ml、または約20mg/mlの濃度で含み得る。

一態様では、このような組成物は実質的に単分散であり得る、すなわち、例えばサイズ排除クロマトグラフィー、動的光散乱法または分析用超遠心法により評価したとき、AARSポリペプチド組成物が主として(すなわち、少なくとも約90%以上)1つの見かけの分子量の形態で存在する。

別の態様では、このような組成物は、少なくとも約90%の純度(タンパク質ベース)、またある態様では少なくとも約95%の純度、またある実施形態では少なくとも98%の純度である。純度は、当該技術分野で公知の任意の日常的な分析方法により決定され得る。

別の態様では、このような組成物は、存在する全タンパク質に対する高分子量凝集体含有量が約10%未満であり、またある実施形態では、このような組成物は高分子量凝集体含有量が約5%未満であり、またある態様では、このような組成物は高分子量凝集体含有量が約3%未満であり、またある実施形態では、高分子量凝集体含有量が約1%未満である。高分子量凝集体含有量は、例えばサイズ排除クロマトグラフィー、動的光散乱法または分析用超遠心法を含めた、各種分析技術により決定され得る。

特定の実施形態では、本明細書に記載されているように、AARSポリペプチド組成物は、エンドトキシン含有量がAARSポリペプチド1mg当たり約10EU未満、または約5EU未満、約3EU未満、または約1EU未満である。

本明細書で企図される濃縮方法の例としては凍結乾燥が挙げられ、これは通常、溶液が目的タンパク質以外の可溶性成分をほとんど含有しない場合に用いられる。凍結乾燥はHPLC実行後に行われることが多く、揮発性物質成分の大部分またはすべてを混合物から除去することができる。また限外ろ過技術も挙げられ、この技術では通常、タンパク質溶液を濃縮するために1つ以上の選択的透過性の膜を用いる。この膜は水および小分子は通過させてタンパク質を保持するもので、各種技術の中でも特に、機械的ポンプ、ガス圧力または遠心分離により、溶液を膜に押し付ける。

特定の実施形態では、試薬、AARSタンパク質フラグメントまたは関連薬剤(例えば、抗体)は、当該技術分野の日常的な技術による測定で、純度が少なくとも約90%である。診断用組成物または特定の治療用組成物のような特定の実施形態では、本発明のAARS組成物は、純度が少なくとも約95%である。治療用組成物または医薬組成物のような特定の実施形態では、本発明のAARS組成物は、純度が少なくとも約97%または98%または99%である。参照用または研究用試薬として使用する場合のような他の実施形態では、AARSタンパク質フラグメントの純度はもっと低くてよく、少なくとも約50%、60%、70%または80%の純度であってよい。全体での純度または他のタンパク質のような選択された成分に対する純度、例えばタンパク質ベースの純度を測定してもよい。

精製AARSタンパク質フラグメントを、その生物学的特性に従って特徴付けることもできる。例としては、本明細書に記載されているような、選択されたリガンド(例えば、細胞表面受容体またはその細胞外ドメインのようなAARSタンパク質フラグメントの細胞結合パートナー)に対する結合親和性または結合キネティクス、および1つ以上のカノニカルまたは非カノニカルな生物活性の存在またはレベルが挙げられる。結合親和性および結合キネティクスは、当該技術分野で公知の各種技術、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)を利用したBIACORE(登録商標)および関連技術、未標識の反応体のリアルタイムでの検出が可能な光学現象などにより測定することができる。SPRベースのバイオセンサーは、親和性およびキネティクスの両方に関する活動濃度の決定、スクリーニングおよび特徴付けに使用することができる。1つ以上のカノニカルまたは非カノニカルな生物活性の存在またはレベルは、本明細書に記載されているように、非カノニカルな生物活性の蛍光指標物質または発光指標物質のような読取り物質または指標物質と機能的に結合した、選択されたAARSタンパク質フラグメントの細胞結合パートナー(例えば、細胞表面受容体)を用いるものを含めた、細胞ベースのアッセイにより測定することができる。

特定の実施形態では、上述のように、AARSポリペプチド組成物は、例えば約95%エンドトキシンフリー、好ましくは約99%エンドトキシンフリー、より好ましくは約99.99%エンドトキシンフリーを含めた、ほぼ実質的にエンドトキシンフリーである。エンドトキシンの存在は、本明細書に記載されているような、当該技術分野の日常的な技術により検出することができる。特定の実施形態では、AARS組成物を、実質的に無血清の培地で哺乳動物細胞またはヒト細胞のような真核細胞から作製する。

特定の実施形態では、AARSポリペプチド組成物は、約10%wt/wt未満の高分子量凝集体、または約5%wt/wt未満の高分子量凝集体、または約2%wt/wt未満の高分子量凝集体、または約1%wt/wt未満の高分子量凝集体を含む。

またタンパク質ベースの解析アッセイおよび解析方法も含まれ、これらを用いて、各種特性の中でも特に、例えばタンパク質の純度、大きさ、溶解度および凝集度を評価することができる。タンパク質純度は数多くの方法で評価することができる。例えば、一次構造、高次構造、大きさ、電荷、疎水性およびグリコシル化に基づいて純度を評価することができる。一次構造を評価する方法の例としては、N末端およびC末端配列決定法およびペプチドマッピング(例えば、Allenら,Biologicals.24:255−275,1996を参照されたい)が挙げられる。高次の構造を評価する方法の例としては、円二色性(例えば、Kellyら,Biochim Biophys Acta.1751:119−139,2005を参照されたい)、蛍光分光測定法(例えば、Meagherら,J.Biol.Chem.273:23283−89,1998を参照されたい)、FT−IR、アミド水素−重水素交換キネティクス、示差走査熱量測定法、NMR分光測定法、構造的に高感度な抗体による免疫反応性が挙げられる。また、pH、温度または添加塩のような各種パラメータの関数として高次構造を評価することもできる。タンパク質の大きさのような特性を評価する方法の例としては、分析用超遠心法およびサイズ排除HPLC(SEC−HPLC)が挙げられ、また電荷を測定する方法の例としては、イオン交換クロマトグラフィーおよび等電点電気泳動が挙げられる。疎水性は、例えば、逆相HPLCおよび疎水性相互作用クロマトグラフィーHPLCにより評価することができる。グリコシル化は薬物動態(例えば、クリアランス)、コンホメーションまたは安定性、受容体結合およびタンパク質機能に影響を及ぼすことがあり、例えば、質量分析法および核磁気共鳴(NMR)分光測定法により評価することができる。

上述のように、特定の実施形態は、各種用途の中でも特に、タンパク質の純度、大きさ(例えば、大きさの均一性)または凝集のような特性を評価するために、および/またはタンパク質を精製するためにSEC−HPLCを使用することを含む。ゲルろ過クロマトグラフィー(GFC)およびゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)も含めたSECは、溶液中の分子がその大きさ、より具体的にはその流体力学的体積、拡散係数および/または表面特性に基づき多孔性物質内で分離されるクロマトグラフ法を指す。この工程は一般に、生体分子を分離するため、ならびにポリマーの分子量および分子量分布を決定するために使用される。通常、生体試料またはタンパク質試料(本明細書に記載のおよび当該技術分野で公知のタンパク質発現法により作製されたタンパク質抽出物など)を、定められた固定相(多孔性物質)、好ましくは試料中のタンパク質と相互作用しない相を含む、選択されたサイズ排除カラムに負荷する。特定の態様では、固定相は、ガラスまたはスチール製のカラム内の高密度三次元マトリックス内に詰め込まれた不活性な粒子からなる。移動相は純粋、水性緩衝液、有機溶媒またはその混合物であり得る。固定相の粒子は通常、特定の大きさ以下の分子のみが入ることのできる小孔および/またはチャネルを有する。したがって、大型の粒子はこれらの小孔およびチャネルから排除され、固相との相互作用が制限されるため、実験開始時の「完全に排除された」ピークとして溶出する。小型の分子は小孔に収まることができるため、流れる移動相から外れ、固定相の小孔内で分子が固定化されている時間の長さは、部分的にはそれが小孔内に侵入する深さによって決まる。小型の分子は移動相の流れから外れるため、カラムから溶出するまでの時間が長く、その結果、粒子の大きさの違いに基づいた粒子間での分離が生じる。所与のサイズ排除カラムには、分離可能な分子量の範囲がある。一般的に、上限よりも大きい分子は固定相に引っ掛からず、下限よりも小さい分子は固相内に完全に入り込んで単一のバンドとして溶出し、範囲内の分子は、その流体力学的体積のような特性によって決まる様々な速度で溶出する。医薬タンパク質で実施されるこれらの方法の例としては、Brunerら,Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis.15:1929−1935,1997を参照されたい。

臨床応用のためのタンパク質純度も、例えばAnicettiら(Trends in Biotechnology.7:342−349,1989)により考察されている。タンパク質純度を解析するための比較的最近の技術としては、特に限定されないが、タンパク質および核酸の迅速な解析用の自動化プラットフォームであるLabChip GXIIが挙げられ、これはハイスループットなタンパク質の力価解析、サイズ決定および純度解析を提供するものである。特定の非限定的な実施形態では、各種方法の中でも特に、少なくとも2つの互いに独立した段階でクロマトグラフィー材料を組み合わせて用いることにより、臨床グレードのタンパク質フラグメントおよび抗体のようなタンパク質を得ることができる(例えば、Therapeutic Proteins:Methods and Protocols.Vol.308,SmalesおよびJames編,Humana Press Inc.,2005を参照されたい)。通常、タンパク質剤(例えば、AARSタンパク質フラグメント、抗体、結合物質)およびその他の薬剤(例えば、アンチセンス、RNAi、小分子)は、当該技術分野で公知のおよび本明細書に記載の技術による測定で、実質的にエンドトキシンフリーである。

またタンパク質の溶解度アッセイも含まれる。このようなアッセイを用いて、例えば、組換え産生に最適な増殖および精製条件を決定する、緩衝液の選択を最適化する、およびAARSタンパク質フラグメントまたはそのバリアントの選択を最適化することができる。溶解度または凝集は、温度、pH、塩および他の添加物質の有無のような各種パラメータによって評価することができる。溶解度スクリーニングアッセイの例としては、特に限定されないが、エンドポイントとして濁度またはその他の尺度を用いてタンパク質の溶解度を測定し、精製組換えタンパク質の溶解度解析のためのハイスループットなアッセイである、マイクロプレートベースの方法(例えば、Stenvallら,Biochim Biophys Acta.1752:6−10,2005を参照されたい)、遺伝マーカータンパク質の構造的相補性用いて、タンパク質のフォールディングおよび溶解度をin vivoでモニターおよび測定するアッセイ(例えば、Wigleyら,Nature Biotechnology.19:131−136,2001を参照されたい)、ならびに走査型電気化学顕微鏡(SECM)を用いた、大腸菌(Escherichia coli)における組換えタンパク質の溶解度の電気化学的スクリーニング(例えば、Nagamineら,Biotechnology and Bioengineering.96:1008−1013,2006を参照されたい)が特に挙げられる。溶解度の増加した(または凝集の減少した)AARSタンパク質フラグメントは、単純なin vivoでのタンパク質溶解度のアッセイを含めた当該技術分野の日常的な技術により、同定または選択することができる(例えば、Maxwellら,Protein Sci.8:1908−11,1999を参照されたい)。

またタンパク質の溶解度および凝集を、動的光散乱技術により測定することもできる。凝集は、可溶性/不溶性、共有結合性/非共有結合性、可逆性/不可逆性および天然/変性の相互作用および特性を含めたいくつかのタイプの相互作用または特性を包含する一般用語である。タンパク質治療剤では、凝集は免疫原性の反応を引き起こし得る(例えば、小さな凝集体)、または投与の際に有害事象を引き起こし得る(例えば、微粒子)という懸念から、その存在は通常、望ましくないと考えられている。動的光散乱法は、懸濁液中の小粒子または溶液中のタンパク質のようなポリマーのサイズ分布プロファイルを決定するために使用することができる技術を指す。光子相関分光法(PCS)または準弾性光散乱法(QELS)とも呼ばれるこの技術は、散乱光を用いてタンパク粒子の拡散速度を測定するものである。溶液中の分子および粒子のブラウン運動による散乱強度の変動を観察することができる。この運動のデータを従来通りに処理して試料のサイズ分布を導出し、ここでは、サイズはタンパク質粒子のストークス半径または流体力学的半径で与えられる。流体力学的サイズは質量と形状(コンホメーション)の両方によって決まる。動的散乱法では、広範囲の質量を含む試料中においても、極めて少量の凝集タンパク質(0.01重量%未満)の存在を検出することができる。また動的散乱法を用いて、例えば、温度上昇時の変化のリアルタイムの監視による適用を含めた、異なる製剤の安定性の比較を行うこともできる。したがって、特定の実施形態は、動的光散乱法を用いて、本発明のAARSタンパク質フラグメント、抗体またはその他の薬剤を含有する試料中の溶解度および/または凝集体の存在を解析することを含む。

IX.診断法および診断用組成物 本明細書に記載のAARSタンパク質フラグメント、AARSポリヌクレオチドならびに抗体およびその他の結合物質のようなAARS剤を、診断検査および診断用組成物に使用することができる。特に生化学的、組織学的および細胞ベースの方法および組成物が含まれる。

これらのおよび関連する実施形態は、1つ以上の新規に同定されたAARSポリペプチドとも呼ばれるAARSタンパク質フラグメントの、AARSポリヌクレオチド配列もしくは対応するAARSポリペプチド配列またはその一部分の検出を含む。例えば、特定の態様は、1つ以上の新規に同定されたAARSスプライスバリアントおよび/またはこれらのスプライスバリアントの1つ以上のスプライス部位の、AARSポリヌクレオチド配列もしくは対応するポリペプチド配列またはその一部分の検出を含む。特定の実施形態では、少なくとも1つのスプライス部位のポリヌクレオチドまたは対応するポリペプチド配列は、その特定のAARSスプライスバリアントに固有のものである。

また、スプライスバリアント、タンパク質分解フラグメントなどを含めたAARSタンパク質フラグメントの直接検出も含まれる。特定の実施形態では、1つ以上の新規に同定されたAARSタンパク質フラグメントの存在またはレベルは、1つ以上の細胞のタイプまたは細胞の状態に関連する。したがって、AARSポリペプチドまたはポリヌクレオチドの存在またはレベルを用いて、異なる細胞のタイプまたは異なる細胞の状態を区別することができる。AARSタンパク質フラグメントまたはその関連ポリヌクレオチドの存在またはレベルは、本明細書に記載のおよび当該技術分野で公知のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドベースの診断技術により検出することができる。

特定の態様では、AARSタンパク質フラグメント、抗体またはAARSポリヌクレオチドを、典型的には対象または対象集団が特定の医学的処置に良好に応答するか否かを評価するための併用診断法の一部として使用することができる。例えば、対象が所与の疾患または状態に対する1つ以上の選択されたバイオマーカーを有するか否かに基づき、所与のAARS治療剤(例えば、タンパク質フラグメント、アンチセンス、RNAi、抗体、結合物質)が対象または特定の対象集団に適することを確認し得る。バイオマーカーの例としては、血清/組織マーカーおよび医用画像工学により同定可能なマーカーが挙げられる。特定の実施形態では、天然のAARSタンパク質フラグメント(またはその対応するポリヌクレオチド)自体が、薬物効果を測定するまたは特定の対象もしくは特定の対象集団での薬物使用が望ましいか否かを評価するために使用することができる、血清および/または組織バイオマーカーになり得る。特定の態様では、AARSポリペプチドまたはポリヌクレオチド参照配列の同定は、本明細書に記載のおよび当該技術分野で公知のように、選択された対象、選択された組織またはその他におけるその配列の差次的発現を特徴付けることを含み得る。

本明細書に記載の特定の方法では、AARSポリペプチドまたはポリヌクレオチドの差次的発現によって、細胞、組織または対象の健康状態または状態を特徴付け、それを別の細胞、組織または対象と区別する。非限定的な例としては、生物試料中のAARSポリペプチドまたはポリヌクレオチド存在またはレベル検出して、異なる種の細胞または組織、異なる組織または器官の細胞、新生児および成人などの細胞発達の状態、細胞分化の状態、健常、疾患および治療済みのような状態、細胞内および細胞外画分、ならびに不死化細胞培養物のような初代細胞培養物およびその他の細胞培養物を区別する方法が挙げられる。

差次的発現は、AARSポリヌクレオチドまたはポリペプチド参照配列の1つ以上の遺伝子発現レベルと、適当な対照における同じ配列の発現レベルとの比較における統計的有意差を含む。統計的有意差は、RNAレベル、タンパク質レベル、タンパク質機能または本明細書に記載のようなその他の任意の関連する遺伝子発現の尺度による測定での発現レベルの増加または減少のいずれかに関連し得る。また、本発明のAARSポリヌクレオチドまたはポリペプチドと、通常は同じまたは対応するタイプの完全長または野生型の細胞質AARS配列またはミトコンドリアAARS配列との間の比較も含まれる。差次的発現は、リアルタイムPCR、サブトラクティブハイブリダイゼーション、ポリヌクレオチドアレイおよびポリペプチドアレイなどのようなポリヌクレオチドベースおよびポリペプチドベースの技術を含めた、当該技術分野のおよび本明細書に記載の各種技術により検出することができる。

ある結果が、偶然生じた可能性の低いものであれば、通常、それは統計的に有意であるという。試験または結果の有意性のレベルは、伝統的には頻度派の統計的仮説検定の概念に関するものである。単純な場合には、統計的有意性は、帰無仮説が実際には真であるのに帰無仮説を棄却する判断を下す(第一種過誤または「偽陽性判定」として知られる判断)確率であると定義され得る。この判断はp値を用いて行われる場合が多く、p値が有意なレベル未満であれば帰無仮説は棄却される。p値が小さいほど結果の有意性は高い。また、統計的有意性を判定するためにベイズ因子が用いられる場合もある(例えば、Goodman S.,Ann Intern Med 130:1005−13,1999を参照されたい)。

より複雑ではあるが実用上重要な場合では、試験または結果の有意性のレベルは、帰無仮説が実際には真であるのに帰無仮説を棄却する判断を下す確率が、定められた確率以下である解析を反映し得る。このタイプの解析は、棄却する判断を下す確率が、帰無仮説内に含まれる何組かの仮説の有意性のレベルを大きく下回るような適用が可能である。

特定の実施形態の例では、統計的に有意な差次的発現は、被検生物試料における所与のAARS配列の発現レベルが、適当な対照と比べて、間にあるすべての整数および小数(例えば、1.24倍、1.25倍、2.1倍、2.5倍、60.0倍、75.0倍など)を含めた少なくとも約1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2.0倍、2.2倍、2.4倍、2.6倍、2.8倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍、6.0倍、7.0倍、8.0倍、9.0倍、10.0倍、15.0倍、20.0倍、50.0倍、100.0倍以上の発現の差(すなわち、より高いまたは低い発現であり得る差次的発現)を示す状態を含み得る。特定の実施形態では、統計的に有意な差次的発現は、被検生物試料における所与のAARS配列の発現レベルが、適当な対照と比べて、間にあるすべての整数および小数を含めた少なくとも約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000パーセント(%)以上の発現の差(すなわち、より高いまたは低い発現であり得る差次的発現)を示す状態を含み得る。

さらなる例として、本明細書に記載のおよび当該技術分野で公知のように、Z検定、すなわちZの絶対値を計算することにより差次的発現を決定し得る(実施例1を参照されたい)。Z検定は通常、標本平均と母集団平均の間の有意差を確認するために用いられる。例えば、95%信頼区間(すなわち、5%の有意性レベル)で標準正規表(例えば、対照組織)と比較し、Zの絶対値が1.96よりも大きければ、それは非ランダム性であることを示している。99%信頼区間でZの絶対値が2.58よりも大きければ、それはp<0.01であることを意味し、その差の有意性はさらに高い、すなわち、帰無仮説をより高い信頼度で棄却できる。これらのおよび関連する実施形態では、間にあるすべての小数(例えば、10.1、10.6、11.2など)を含めた1.96、2、2.58、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上の絶対Zスコアは、統計的有意性の有力な尺度となり得る。特定の実施形態では、6より大きい絶対Zスコアは、非常に高い統計的有意性を示し得る。

実質的な類似性は一般に、生物試料と参照対照の間に発現レベルの統計的有意差がないことに関するものである。実質的に類似した発現レベルの例としては、被検生物試料における所与のSSCIGSの発現レベルが、参照試料と比べて、間にあるすべての小数(例えば、15倍、0.25倍、0.35倍など)を含めた約0.05倍、0.1倍、0.2倍、0.3倍、0.4倍、0.5倍、0.6倍、0.7倍、0.8倍、0.9倍、1.0倍、1.1倍、1.2倍、1.3倍または1.4倍未満の発現の差(すなわち、より高いまたは低い発現であり得る差次的発現)を示す状態を挙げ得る。特定の実施形態では、差次的発現は、被検生物試料における所与のAARSの発現レベルが、参照試料と比べて、間にあるすべての小数を含めた約0.25.0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50パーセント(%)未満の発現の差(すなわち、より高いまたは低い発現であり得る差次的発現)を示す状態を含み得る。

特定の実施形態では、例えばAffymetrix Microarrayを用いてAARSポリヌクレオチドまたはポリペプチド参照配列の発現レベルを測定するような場合、通常1000のスケールの平均発現値を用いた、Affymetrix Microarray Suite5ソフトウェア(Affymetrix、Santa Clara、CA)または他の同様のソフトウェアでまとめた平均発現値により、差次的発現を決定することもできる。

本発明の実施形態は、AARSポリヌクレオチドもしくはポリペプチド参照配列またはその一部分の存在またはレベルを検出して、異なる生物体または種の細胞または組織などの生物試料を区別する方法を含み、ここでは、その配列の存在またはレベルが選択された生物体または種に関連する。一般的な例としては、細菌、真菌、植物およびその他の非ヒト動物の任意の組合せと、ヒトとを区別する方法が挙げられる。脊椎動物、例えば魚類、両生類、爬虫類、鳥類および非ヒト哺乳動物などならびに無脊椎動物、例えば昆虫、軟体動物、甲殻類およびサンゴなどを含めた脊椎動物および無脊椎動物の任意の組合せと、ヒトとを区別する方法が動物に含まれる。アフリカトガリネズミ目、ハネジネズミ目、管歯目、イワダヌキ目、長鼻目、海目、被甲目、有毛目、ツパイ目、皮翼目、霊長目、げっ歯目、ウサギ目、ハリネズミ目、トガリネズミ目、翼手目、有鱗目、クジラ目、食肉目、奇目または偶蹄目の非ヒト動物の任意の組合せと、ヒトとの区別の方法が非ヒト動物に含まれる。霊長目に含まれるのは、当該技術分野で公知のものの中でも特に、有尾猿、無尾猿、ゴリラおよびチンパンジーである。したがって、本明細書に記載されているAARSポリヌクレオチドもしくはポリペプチド参照配列またはバリアントの存在またはレベルを用いて、これらの生物の任意の組合せを区別することにより、または生物のパネルのようなこれらの生物のいずれか1つ以上と、ヒトとを区別することにより、細胞、組織または器官のような所与の生物試料の入手源を同定し得る。特定の実施形態では、AARS配列またはその一部分の存在またはレベルを、予め決定されている値と比較することにより、所与の生物試料の入手源を決定してもよい。

本発明の実施形態は、AARSポリヌクレオチドもしくはポリペプチド参照配列またはその一部分の存在またはレベルを検出して、異なる組織または器官に由来する細胞またはその他の生物試料を区別する方法を含む。非限定的な例としては、皮膚(例えば、真皮、表皮、皮下層)、毛包、神経系(例えば、脳、脊髄、末梢神経)、聴覚系または平衡器官(例えば、内、中耳、外耳)、呼吸器系(例えば、鼻、気管、肺)、胃食道組織、胃腸管系(例えば、口、食道、胃、小腸、大腸、直腸)、脈管系(例えば、心臓、血管および動脈)、肝臓、胆嚢、リンパ/免疫系(例えば、リンパ節、リンパ濾胞、脾臓、胸腺、骨髄)、泌尿生殖器系(例えば、腎臓、尿管、膀胱、尿道、子宮頸部、卵管、卵巣、子宮、外陰部、前立腺、尿道球腺、精巣上体、前立腺、精嚢、精巣)、筋骨格系(例えば、骨格筋、平滑筋、骨、軟骨、、靭帯)、脂肪組織、乳房組織および内分泌系(例えば、視床下部、下垂体、甲状腺、膵臓、副腎)の任意の組合せに由来する細胞またはその他の生物試料を区別する方法が挙げられる。したがって、本明細書に記載のAARSポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の関連に基づき、これらの方法を用いて、細胞またはその他の生物試料が由来する組織または器官の同定または特徴付けを行い得る。

本発明の実施形態は、AARSポリヌクレオチドもしくはポリペプチド参照配列またはその一部分の存在またはレベルを検出して、細胞の発達または分化の状態を区別するまたは特徴付けることができる。また、生殖細胞、幹細胞および体細胞を識別する方法も含まれる。発達状態の例としては、新生児および成人が挙げられる。細胞分化の状態の例としては、全能性細胞、万能性細胞、多能性前駆体幹細胞および成熟し完全に分化した細胞の間での目立たない同定可能なすべての段階が挙げられる。

全能性細胞は全潜在能力を有し、通常、有性および無性生殖時に生じ、胞子および接合体がこれに含まれるが、場合によっては、細胞が脱分化して全能性を取り戻すことがある。万能性細胞には、内胚葉(胃内膜、消化管、肺)、中胚葉(筋肉、骨、血液、泌尿生殖器)および外胚葉(上皮組織および神経系)を含めた3つの胚葉のいずれにも分化する潜在能力を有する幹細胞がある。多能性前駆細胞は通常、限られた数のタイプの組織に分化することができる。多能性細胞の例としては、赤血球、白血球および血小板のような免疫細胞が生じる骨髄由来の造血幹細胞(成体幹細胞)、間質細胞、脂肪細胞および各種タイプの骨細胞が生じる骨髄由来の間葉系幹細胞(成体幹細胞)、各種タイプの皮膚細胞が生じる上皮幹細胞(前駆細胞)、ならびに分化した筋肉組織に寄与する筋サテライト細胞(前駆細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、特定のAARSポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列(例えば、AARSスプライスバリアントのスプライス部位、AARSタンパク質分解フラグメント)の存在またはレベルを用いて、対照または所定のレベルとの比較により上記細胞分化の状態を区別する、または特徴付けることができる。

本発明の実施形態は、AARSポリヌクレオチドまたはポリペプチド参照配列の存在またはレベルを検出して、状態または細胞、組織、器官もしくは対象を特徴付けるまたは診断する方法を含み、ここでは、状態を健常、罹患、罹患の危険性または治療済みで特徴付け得る。このような診断目的では、「診断の」または「診断された」という用語は、病的状態の存在または性質の同定、そのような状態が発達する危険性の特徴付け、および/または治療に応答した病的状態の変化(または不変)の測定を包含する。診断方法の感度および特異性は異なり得る。特定の実施形態では、診断検査の「感度」は、検査結果が陽性の罹患した細胞、組織または対象のパーセンテージ(「真陽性」のパーセンテージ)を指す。検査で検出されない罹患した細胞、組織または対象を通常、「偽陰性」と呼ぶ。罹患しておらず検査で陰性と出る細胞、組織または対象を「真の陰性」と呼ぶことがある。特定の実施形態では、診断検査の「特異性」は、(1)から偽陽性率を引いたものと定義され得るが、ここで「偽陽性」率は、疾患を有さず検査結果が陽性の試料または対象の割合と定義される。特定の診断方法では状態の確定診断が下されない場合があるが、診断に役立つ陽性の表示がその方法から得られれば十分である。

場合によっては、病的状態と関連する1つ以上の選択されたAARSポリヌクレオチドもしくはポリペプチド参照配列またはその一部分の存在またはレベルを、適当な対照と比較したレベルの増加または減少で比較することにより、その病的状態の存在または発達の危険性を診断することができる。「適切な対照」あるいは「適当な対照」は、組織または生物の細胞またはその他の生物試料、例えば状態が存在しないなどの正常な形質を示す対照または正常の細胞、組織または生物において決定される値、レベル、特徴、特性または性質を包む。特定の実施形態では、「適切な対照」あるいは「適当な対照」は、予め定められた値、レベル、特徴、特性または性質である。他の適当な対照は当業者には明らかであろう。疾患および状態の例を本明細書の他所に記載する。

本発明の実施形態は、検出感度による特定の利点があるAARSポリヌクレオチドまたは核酸ベースの検出技術を含む。したがって、特定の実施形態は、診断の方法またはアッセイの一部としてのAARSポリヌクレオチドの使用または検出に関する。AARSポリヌクレオチドの存在および/またはレベルは、特に、ノーザンブロットのようなハイブリダイゼーションアッセイ、定量的もしくは定性的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、定量的もしくは定性的逆転写酵素PCR(RT−PCR)、マイクロアレイ、ドットブロットもしくはスロットブロット、または蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)のようなin situハイブリダイゼーションを含めた当該技術分野で公知の任意の方法により測定し得る。これらの特定の方法を以下でさらに詳細に記載する。

AARSのDNAおよびRNAのようなポリヌクレオチドは、Kingston(2002 Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publ.Assoc.Inc.& John Wiley & Sons,Inc.,NY,NY(例えば、Nelsonら,Proc Natl Acad Sci USA,99:11890−11895,2002による記載を参照されたい)およびその他に記載されているような当該技術分野で公知の技術を用いて、血液、生体液、組織、器官、細胞系またはその他の関連する試料から採取および/または作製することができる。さらに、各種の市販のRNA構築用キットが本発明で使用するRNAの作製に有用である。正常な健常対象から得られた器官/組織/細胞からRNAを構築してもよいが、本発明は罹患対象からのRNA構築も企図する。特定の実施形態は、任意のタイプの対照または動物由来の任意のタイプの器官の使用を企図する。試験試料用に、目に見える疾患を有するまたは有さない個体(例えば、哺乳動物を含めた任意の動物)から、および組織試料、生体液(例えば、全血)などからRNAを得てもよい。

特定の実施形態では、cDNA配列の増幅または構築が検出能力を増強するのに役立ち得る。当該技術分野のみならず本開示でも、このような作業を行うために必要な詳細を記載する。実施形態の一例では、全血をRNAの入手源として使用し、したがって、例えばThachら,J.Immunol.Methods.Dec 283(1−2):269−279,2003およびChaiら,J.Clin.Lab Anal.19(5):182−188,2005(ともに参照により組み込まれる)に記載されているPAXチューブのような、RNA安定化試薬を任意に使用する。Ausubelら(2001 Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publ.Assoc.Inc.& John Wiley & Sons,Inc.,NY,NY);Sambrookら(1989 Molecular Cloning,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,Plainview,NY);Maniatisら(1982 Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Laboratory,Plainview,NY)およびその他に記載されているような当該技術分野で公知の技術を用いて、相補的なDNA(cDNA)ライブラリーを作製することができる。さらに、各種市販のcDNAライブラリー構築用のキットが本発明のcDNAライブラリー作製に有用である。正常な健常対象から得られた器官/組織/細胞からライブラリーを構築することができる。

特定の実施形態では、AARSポリヌクレオチド配列を検出するためにハイブリダイゼーション法を使用し得る。ポリヌクレオチドハイブリダイゼーションアッセイを行うための方法は、当該技術分野において十分に開発されている。ハイブリダイゼーションアッセイの手順および条件は適用によって異なり、Maniatisら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989);BergerおよびKimmel Methods in Enzymology,Vol.152,Guide to Molecular Cloning Techniques(Academic Press,Inc.,San Diego,Calif.,1987);YoungおよびDavis,PNAS.80:1194(1983)で言及されているものを含めた既知の一般的な結合方法に基づいて選択する。ハイブリダイゼーション反応を反復し制御して行うための方法および装置は、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,871,928号、同第5,874,219、同第6,045,996号および同第6,386,749号、同第6,391,623号に記載されている。

特定の実施形態では、AARSポリヌクレオチド配列を検出するために核酸増幅法を使用し得る。「増幅」または「核酸増幅」という用語は、対象とする特定の標的核酸配列の少なくとも一部分を含む標的核酸の複数コピーの作製を指す。複数コピーをアンプリコンまたは増幅産物と呼ぶこともある。特定の実施形態では、増幅される標的が含む部分は、完全な標的遺伝子配列(イントロンおよびエクソン)または発現された標的遺伝子配列(エクソンと隣接非翻訳配列からなるスプライス転写産物)よりも少ない。例えば、標的ポリヌクレオチドの内部の位置とハイブリダイズ、そこから重合を開始する増幅プライマーを用いて、標的ポリヌクレオチドの一部分を増幅することにより、特定のアンプリコンを作製し得る。好ましくは、増幅された部分は、各種公知の方法のいずれかを用いて検出され得る検出可能な標的配列を含む。

本明細書で使用される「選択的増幅」または「特異的増幅」は、本発明による標的核酸配列の増幅を指し、ここでは、標的配列の検出可能な増幅は、試験する目的核酸試料が関与する標的配列の増幅に実質的に限定され、かつ他のいくつかの試料入手源、例えば増幅反応の際に使用する試薬中または増幅反応を行う環境中に存在する夾雑物が関与する標的核酸配列はこれに関与しない。

「増幅条件」という用語は、本発明の核酸増幅が可能な条件を指す。増幅条件は、ある実施形態では、本明細書に記載の「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」よりも低ストリンジェンシーであり得る。本発明の増幅反応で使用するオリゴヌクレオチドは、増幅条件下でその対象とする標的とハイブリダイズするが、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下ではハイブリダイズしてもよいし、しなくてもよい。これに対し、本発明の検出プローブは通常、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。本発明の核酸増幅を行うのに許容される条件は、使用する特定の増幅方法に応じて、当業者により容易に確認され得る。

核酸増幅の多くの公知の方法では、二本鎖核酸の変性とプライマーとのハイブリッド形成を交互に行うための温度サイクリングが必要であるが、他の公知の核酸増幅法は等温型である。ポリメラーゼ連鎖反応(米国特許第4,683,195号;同第4,683,202号;同第4,800,159号;同第4,965,188号)は一般にPCRと呼ばれ、変性、プライマーペアと反対鎖のアニーリングおよびプライマー伸長からなる複数のサイクルを用いて、標的配列のコピー数を指数関数的に増加させる。RT−PCRと呼ばれるバリエーションでは、逆転写酵素(RT)を用いてmRNAから相補的なDNA(cDNA)を生成させ、次いでこのcDNAをPCRにより増幅してDNAの複数コピーを作製する。

上述のように、「PCR」という用語は、標的核酸種を選択的に増幅する複数の増幅サイクルを指す。定量的PCR(qPCR)、リアルタイムPCR、逆転写PCR(RT−PCR)がこれに含まれ、当該技術分野では定量的逆転写PCR(qRT−PCR)がよく記載されている。「pPCR」という用語は定量的ポリメラーゼ連鎖反応を指し、「qRT−PCR」という用語は定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を指す。qPCRおよびqRT−PCRを用いて、標的cDNA分子を増幅すると同時に定量化し得る。これによりcDNAプール内の特定の配列、例えば選択されたAARSの遺伝子または転写産物などの検出および定量化の両方が可能となる。

用語「リアルタイムPCR」では、PCR中のすべての二本鎖(ds)DNAと結合するDNA結合色素を用いて、色素の蛍光を生じさせ得る。したがって、PCRにおけるDNA産物の増加は蛍光強度を増大させ、これが各サイクルにおいて測定されるため、DNA濃度の定量化が可能となる。しかし、SYBR GreenのようなdsDNA色素はすべてのdsDNA PCR産物と結合する。蛍光はリアルタイムPCRサーモサイクラー内で検出および測定され、産物の指数関数的増加に対応するその幾何学的増加を用いて、各反応の(「Ct」)閾値サイクルが決定される。

「Ctスコア」という用語は閾値サイクル数を指し、これはPCR増幅が閾値レベルを上回ったときのサイクルである。試料中に特定の遺伝子に対するmRNAが多量に存在すれば、増幅される開始RNAがそれだけ多量に存在するため、低発現遺伝子よりも早く閾値を越える。したがって、低いCtスコアは試料中での高い遺伝子発現を示し、高いCtスコアは低い遺伝子発現を示す。

特定の実施形態では、一般にLCRと呼ばれるリガーゼ連鎖反応(Weiss,Science.254:1292,1991)を使用し得るが、この反応では、標的核酸の近接領域とハイブリダイズする相補的なDNAオリゴヌクレオチドのセットを2つ用いる。温度変性、ハイブリダイゼーションおよび連結のサイクルを繰り返す間にDNAオリゴヌクレオチドがDNAリガーゼにより共有結合し、検出可能な連結された二本鎖のオリゴヌクレオチド産物が生成される。

もう1つの方法が、一般にSDAと呼ばれる鎖置換増幅法(Walker,G.ら,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:392−396;米国特許第5,270,184号および同第5,455,166号)であり、この方法では、プライマー配列のペアと標的配列の反対鎖とのアニーリング、dNTPαSの存在下でのプライマー伸長による二本鎖の半ホスホチオアート化されたプライマー伸長産物の生成、エンドヌクレアーゼ−による半修飾制限酵素認識部位のニック形成、ならびにポリメラーゼによるニックの3’末端からのプライマー伸長により、存在する鎖を置換して、次のプライマーアニーリング、ニック形成および鎖置換のラウンドのための鎖を生成することからなるサイクルを用いて、産物の幾何学的増幅を生じる。好熱性のSDA(tSDA)では、基本的には同じ方法で、より高い温度で好熱性のエンドヌクレアーゼおよびポリメラーゼを用いる(欧州特許第0684315号)。

その他の増幅法としては、例えば、一般にNASBAと呼ばれる核酸配列ベースの増幅(米国特許第5,130,238号);一般にQβレプリカーゼと呼ばれるRNAレプリカーゼを用いてプローブ分子自体を増幅する方法(Lizardi,P.ら,1988,BioTechnol.6:1197−1202);転写ベースの増幅法(Kwoh,D.ら,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173−1177);自家持続配列複製法(Guatelli,J.ら,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874−1878);および一般にTMAと呼ばれる転写増幅法(米国特許第5,480,784号および同第5,399,491号)が挙げられる。既知の増幅法に関するさらなる考察に関しては、Persing,David H.,1993,“In Vitro Nucleic Acid Amplification Techniques” in Diagnostic Medical Microbiology:Principles and Applications(Persingら編.),pp.51−87(American Society for Microbiology、Washington、DC)を参照されたい。

本発明の例示的な転写ベースの増幅系としては、RNAポリメラーゼを用いて標的領域のRNA転写産物を多数生成させるTMAが挙げられる(米国特許第5,480,784号および同第5,399,491号)。TMAでは、逆転写酵素とRNAポリメラーゼの存在下で標的核酸とハイブリダイズして二本鎖プロモーターを形成する「プロモータープライマー」を使用し、形成された二本鎖プロモーターからRNAポリメラーゼがRNA転写産物を生成する。これらの転写産物は、そのRNA転写産物とハイブリダイズすることができる第二のプライマーの存在下で、TMAのさらなるラウンドのための鋳型となり得る。熱変性を必要とするPCR、LCRまたはその他の方法とは異なり、TMAは等温型の方法であり、RNアーゼH活性を用いてRNA:DNAハイブリッドのRNA鎖を消化することにより、プライマーまたはプロモータープライマーとのハイブリダイゼーションに利用されるDNA鎖を生成する。全般的に、増幅用に加えられた逆転写酵素のRNアーゼH活性を利用する。

例示的なTMA法では、1本の増幅プライマーは、標的結合配列の5’側に位置し二本鎖のときに機能するプロモーター配列を含む、オリゴヌクレオチドプロモータープライマーであり、増幅する配列の3’の位置で標的RNAの結合部位とハイブリダイズすることができる。プロモータープライマーは、T7RNAポリメラーゼの認識に特異的である場合、「T7プライマー」と呼ばれることがある。特定の状況下では、プロモータープライマーまたはそのようなプロモータープライマーの亜集団の3’末端を修飾して、プライマー伸長をブロックまたは低減し得る。未修飾のプロモータープライマーから逆転写酵素が標的RNAのcDNAコピーを生成する一方で、RNアーゼH活性により標的RNAが分解される。次いで、第二の増幅プライマーがcDNAと結合する。「T7プライマー」と区別するために、このプライマーを「非T7プライマー」と呼ぶことがある。この第二の増幅プライマーから逆転写酵素が別のDNA鎖を生成し、一端に機能的なプロモーターを有する二本鎖DNAが生じる。プロモーター配列は、二本鎖のときにRNAポリメラーゼと結合し、プロモータープライマーがハイブリダイズした標的配列の転写を開始させることができる。RNAポリメラーゼはこのプロモーター配列を用いて、一般に約100〜1,000コピーの多数のRNA転写産物(すなわち、アンプリコン)を生成する。新たに合成された各アンプリコンは第二の増幅プライマーとアニールすることができる。次いで、逆転写酵素はDNAコピーを生成することができ、その一方でRNアーゼH活性によりこのRNA:DNA二本鎖のRNAが分解される。次いで、プロモータープライマーは新たに合成されたDNAと結合することができるため、逆転写酵素は二本鎖DNAを生成することができ、この二本鎖DNAからRNAポリメラーゼが多数のアンプリコンを生成する。したがって、2つの増幅プライマーを用いて10億倍の等温増幅を行うことができる。

特定の実施形態では、マイクロアレイ解析(Han,M.ら,Nat Biotechnol,19:631−635,2001;Bao,P.ら,Anal Chem,74:1792−1797,2002;Schenaら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:10614−19,1996;およびHellerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:2150−55,1997)およびSAGE(遺伝子発現連続解析)を含めた他の技術を用いて、特定のcDNAライブラリー由来の転写産物のRNA転写産物を評価し得る。SAGEはMPSSと同様にデジタル式であり、MPSSのような技術から入手できるものに比べると桁数が少ないが、多数のサイン配列を生成することができる(例えば、Velculescu,V.E.ら,Trends Genet,16:423−425.,2000;Tuteja R.およびTuteja N.,Bioessays.2004 Aug;26(8):916−22を参照されたい)。

特定の実施形態では、「マイクロアレイ」という用語は、複数の核酸が基質に結合し、その複数の結合した核酸とのハイブリダイゼーションがそれぞれ個別に検出可能である「核酸マイクロアレイ」を包含する。基質は、固体または多孔質、平面状または非平面状、単一型または分散型であり得る。核酸マイクロアレイは、Schena(編),DNA Microarrays:A Practical Approach(Practical Approach Series),Oxford University Press(1999);Nature Genet.21(1)(suppl.):1−60(1999);Schena(編),Microarray Biochip:Tools and Technology,Eaton Publishing Company/BioTechniques Books Division(2000)においてそのように称されるすべての装置を包含する。核酸マイクロアレイは、基質と結合した複数の核酸であって、例えばBrennerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97(4):1665−1670(2000)に記載されているように、単一の平面基質上よりもむしろ複数のビーズ上に配置されている複数の核酸を含み得る。核酸マイクロアレイの例は、その開示が参照により組み込まれる、米国特許第6,391,623号、同第6,383,754号、同第6,383,749号、同第6,380,377号、同第6,379,897号、同第6,376,191号、同第6,372,431号、同第6,351,712号、同第6,344,316号、同第6,316,193号、同第6,312,906号、同第6,309,828号、同第6,309,824号、同第6,306,643号、同第6,300,063号、同第6,287,850号、同第6,284,497号、同第6,284,465号、同第6,280,954号、同第6,262,216号、同第6,251,601号、同第6,245,518号、同第6,263,287号、同第6,251,601号、同第6,238,866号、同第6,228,575号、同第6,214,587号、同第6,203,989号、同第6,171,797号、同第6,103,474号、同第6,083,726号、同第6,054,274号、同第6,040,138号、同第6,083,726号、同第6,004,755号、同第6,001,309号、同第5,958,342号、同第5,952,180号、同第5,936,731号、同第5,843,655号、同第5,814,454号、同第5,837,196号、同第5,436,327号、同第5,412,087号および同第5,405,783号に見ることができる。

さらなる例としては、Affymetrix社(Santa Clara、Calif.)からGENECHIP(商標)の商標名で購入できる核酸アレイが挙げられる。アレイの作製法および使用法のさらなる例は、例えば、米国特許第7,028,629号;同第7,011,949号;同第7,011,945号;同第6,936,419号;同第6,927,032号;同第6,924,103号;同第6,921,642;および同第6,818,394号に記載されている。

アレイおよびマイクロアレイに関連する本発明は、固体基質に付着したポリマーの数多くの用途も企図する。このような用途としては、遺伝子発現モニタリング、プロファイリング、ライブラリースクリーニング、遺伝子型同定および診断が挙げられる。遺伝子発現モニタリングおよびプロファイリングの方法、ならびに遺伝子モニタリングおよびプロファイリングに有用な方法は、米国特許第5,800,992号、同第6,013,449号、同第6,020,135号、同第6,033,860号、同第6,040,138号、同第6,177,248号および同第6,309,822号に記載されている。遺伝子型同定およびその用途は、米国特許出願第10/442,021号、同第10/013,598号(米国特許出願第2003/0036069号)ならびに米国特許第5,925,525号、同第6,268,141号、同第5,856,092号、同第6,267,152号、同第6,300,063号、同第6,525,185号、同第6,632,611号、同第5,858,659号、同第6,284,460号、同第6,361,947号、同第6,368,799号、同第6,673,579号および同第6,333,179号に記載されている。本明細書に開示される方法と組み合わせて使用し得る、核酸の増幅、標識および解析のその他の方法は、米国特許第5,871,928号、同第5,902,723号、同第6,045,996号、同第5,541,061号および同第6,197,506号に具体的に記載されている。

当業者には明らかであるように、特定の実施形態は、本明細書に記載のように、増幅または検出にプライマーまたはプローブのようなオリゴヌクレオチドを使用し得る。定められた配列および化学構造のオリゴヌクレオチドを、当業者に公知の技術、例えば化学的または生化学的合成など、および組換え核酸分子、例えば細菌またはウイルスベクターからのin vitroまたはin vivo発現などにより作製し得る。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、野生型染色体DNAまたはそのin vivo転写産物だけで構成されるわけではない。

所与の改変が所与のオリゴヌクレオチドの所望の機能に適合する限り、任意の方法でオリゴヌクレオチドまたはプライマーを改変してもよい。当業者は、所与の改変が本発明の任意のオリゴヌクレオチドに適するまたは望ましいか否かを容易に決定することができる。関連するAARSオリゴヌクレオチドは本明細書の他の箇所で詳細に記載されている。

オリゴヌクレオチドの設計および配列は、本明細書に記載のその機能によって決まるが、いくつかの変数が一般に考慮される。最も関連するものには、長さ、融解温度(Tm)、特異性、系の他のオリゴヌクレオチドとの相補性、G/C含有量、ポリピリミジン(T、C)またはポリプリン(A、G)ストレッチ、および3’末端配列が含まれる。これらのおよびその他の変数の制御は、オリゴヌクレオチド設計の標準的でよく知られた側面であり、最適なオリゴヌクレオチドに関して可能性のある多数のオリゴヌクレオチドをスクリーニングするための様々なコンピュータプログラムを容易に入手することができる。

したがって、特定の実施形態は、試料中の標的AARSポリヌクレオチドを検出する方法であって、このポリヌクレオチドが本明細書に記載の参照AARSポリヌクレオチドの配列を含み、a)試料を、試料中の標的ポリヌクレオチドに相補的な配列を含むプローブとハイブリダイズさせる工程であって、このプローブと前記標的ポリヌクレオチドまたはそのフラグメントとの間でハイブリダイゼーション複合体が形成される条件下で、前記プローブが前記標的ポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズする工程と、b)前記ハイブリダイズ複合体の有無を検出し、存在すれば任意にその量を検出する工程とを含む、方法を含む。また、試料中の標的AARSポリヌクレオチドを検出する方法であって、このポリヌクレオチドが本明細書に記載の参照AARSポリヌクレオチドの配列を含み、a)標的ポリヌクレオチドまたはそのフラグメントを増幅する工程と、b)増幅された前記標的ポリヌクレオチドまたはそのフラグメントの有無を検出し、存在すれば任意にその量を検出する工程とを含む、方法も含まれる。特定の実施形態は、ハイブリダイゼーション、増幅またはその他の検出方法によるAARSスプライスバリアントに固有のスプライス部位の検出などにより、AARSスプライスバリアントを検出することに関する。

本発明の実施形態は、抗体ベースの検出技術を含めた各種のAARSポリペプチドベースの検出技術を含む。これらの実施形態には、AARSポリペプチドを使用して抗体またはその他の結合物質を作製することが含まれ、次いで、その抗体またはその他の結合物質を診断方法および診断用組成物に使用して、通常は対象に由来する細胞またはその他の生物試料中の選択されたAARSポリペプチドを検出または定量化し得る。

特定の実施形態では、標準的な方法論および検出法、例えばウエスタンブロット法および免疫沈降法、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、フローサイトメトリー、および画像装置を用いた免疫蛍光アッセイ(IFA)などを使用し得る。これらの公知の方法では通常、本発明の選択されたAARSポリペプチドまたはそのAARSポリペプチドの固有の領域と特異的に結合し、かつ一般的には完全長AARSポリペプチドのような他のAARSポリペプチドとほとんど結合しない、本明細書に記載の1つ以上のモノクローナルまたはポリクローナル抗体を用いる。特定の実施形態では、AARSポリペプチドの固有の領域は、AARSの新規に同定されたタンパク質フラグメントが有する固有の三次元構造を示し得る。

また特定の実施形態では、「マイクロアレイ」のように「アレイ」を使用し得る。特定の実施形態では、「マイクロアレイ」は、基質に結合した一群のまたは複数のポリペプチドを有し、その複数の結合した各ポリペプチドとの結合が個別に検出可能である、「ペプチドマイクロアレイ」または「タンパク質マイクロアレイ」を指すこともある。あるいは、ペプチドマイクロアレイは、本明細書に記載のAARSポリペプチドの結合を特異的に検出することができる、特に限定されないがモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ファージディスプレイ結合物質、酵母ツーハイブリッド結合物質およびアプタマーを含めた複数の結合物質を有し得る。アレイは、例えばRobinsonら,Nature Medicine 8(3):295−301(2002)に記載されているような、これらのAARSポリペプチドの自己抗体検出に基づくものであり得る。ペプチドアレイの例は、それぞれ参照により組み込まれる、国際公開第02/31463号、同第02/25288号、同第01/94946号、同第01/88162号、同第01/68671号、同第01/57259号、同第00/61806号、同第00/54046号、同第00/47774号、同第99/40434号、同第99/39210号および同第97/42507号、ならびに米国特許第6,268,210号、同第5,766,960号および同第5,143,854号に見ることができる。

特定の実施形態では、AARSポリペプチド配列を診断用に検出するために、MSまたはその他の分子量ベースの方法を使用し得る。質量分析法(MS)は一般に、試料または分子の元素組成を決定するための分析技術を指す。また、MSをペプチドおよびその他の化合物のような分子の化学構造決定に使用することもある。

一般にMSの原理は、化合物をイオン化して荷電分子または荷電分子フラグメントを生成し、次いで、その質量電荷比を測定することからなる。例示的なMS手順では、試料をMS機器にかけて気化させ、試料の成分を各種方法の1つにより(例えば、試料の成分に電子ビームを衝突させることにより)イオン化すると正荷電粒子が形成され、次いで、陽イオンを磁場により加速させ、イオンが磁場を通過する際の詳細な運動に基づいて粒子の質量電荷比(m/z)を計算し、前段階でm/zに従って選別されたイオンを検出する。

例示的なMS機器には3つのモジュール、すなわち、気相の試料分子をイオンに変換する(またはエレクトロスプレーイオン化の場合、溶液中に存在するイオンを気相中に移動させる)イオン源、電磁気場を加えてイオンをその質量により選別する質量分析部、および指標量の値を測定して、存在する各イオンの量を計算するためのデータを得る検出部がある。

MS技術には、未知化合物の同定、分子中の元素の同位体組成の決定および断片化の観測による化合物の構造決定を含めた、定性的用途と定量的用途の両方がある。他の用途としては、試料中の化合物量の定量化または気相イオン化学(真空中でのイオンおよび中性物質の化学)の基礎の研究が挙げられる。ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MSまたはGC−MS)、液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MSまたはLC−MS)およびイオン移動度分光分析/質量分析(IMS/MSまたはIMMS)が挙げられる。したがって、MS技術を本明細書に記載のいずれかの方法に従って使用し、生物試料中の本発明のAARSポリペプチドの存在またはレベルを測定し、対照試料または予め定められた値と比較し得る。

特定の実施形態では、細胞分取または細胞視覚化もしくは画像化の装置/技術を用いて、AARSポリヌクレオチドまたはポリペプチドの存在またはレベルを検出または定量化し得る。例としては、フローサイトメトリーまたはFACS、免疫蛍光解析(IFA)、および蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)のようなin situハイブリダイゼーション技術が挙げられる。

特定の実施形態では、診断目的で従来の生物学的方法、ソフトウェアおよびシステムを使用し得る。本発明のコンピュータソフトウェア製品は通常、本発明の方法の論理的段階を行うためのコンピュータ実行命令を有するコンピュータ読取り可能媒体を含む。適当なコンピュータ読取り可能媒体としては、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM/DVD/DVD−ROM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ、ROM/RAM、磁気テープなどが挙げられる。コンピュータ実行命令は、適当なコンピュータ言語または複数の言語の組合せで書かれていてよい。基礎的な計算生物学は、例えば、SetubalおよびMeidanisら,Introduction to Computational Biology Methods(PWS Publishing Company,Boston,1997);Salzberg,Searles,Kasif(編),Computational Methods in Molecular Biology,(Elsevier,Amsterdam,1998);RashidiおよびBuehler,Bioinformatics Basics:Application in Biological Science and Medicine(CRC Press,London,2000)ならびにOuelette and Bzevanis Bioinformatics:A Practical Guide for Analysis of Gene and Proteins(Wiley & Sons,Inc.,2nd ed.,2001)に記載されている。米国特許第6,420,108号を参照されたい。

特定の実施形態では、プローブ設計、データ管理、解析および機器操作のような各種目的で様々なコンピュータプログラム製品およびソフトウェアを使用し得る。米国特許第5,593,839号、同第5,795,716号、同第5,733,729号、同第5,974,164号、同第6,066,454号、同第6,090,555号、同第6,185,561号、同第6,188,783号、同第6,223,127号、同第6,229,911号および同第6,308,170号を参照されたい。

全ゲノムサンプリングアッセイ(WGSA)が、例えば、Kennedyら,Nat.Biotech.21,1233−1237(2003)、Matsuzakiら,Gen.Res.14:414−425,(2004)およびMatsuzakiら,Nature Methods 1:109−111(2004)に記載されている。マッピングアッセイで用いるアルゴリズムが、例えば、Liuら,Bioinformatics,19:2397−2403(2003)およびDiら,Bioinformatics.21:1958(2005)に記載されている。WGSAおよびWGSAの適用に有用な、WGSAおよびアレイに関連したさらなる方法が、例えば、2005年4月29日に出願された米国特許出願第60/676,058号、2004年10月5日に出願された同第60/616,273号、同第10/912,445号、同第11/044,831号、同第10/442,021号、同第10/650,332号および同第10/463,991号に開示されている。マッピングアッセイを用いた全ゲノム関連研究が、例えば、Huら,Cancer Res.;65(7):2542−6(2005)、Mitraら,Cancer Res.,64(21):8116−25(2004)、Butcherら,Hum Mol Genet.,14(10):1315−25(2005)およびKleinら,Science.308(5720):385−9(2005)に記載されている。

さらに特定の実施形態は、例えば、米国特許出願第10/197,621号、同第10/063,559号(米国特許出願公開第2002/0183936号)、同第10/065,856号、同第10/065,868号、同第10/328,818号、同第10/328,872号、同第10/423,403号および同第60/482,389号に示される、インターネットのようなネットワーク上の遺伝情報を入手するための方法を含み得る。

X.アンチセンス剤およびRNAi剤 また本発明の実施形態は、AARSポリヌクレオチド配列を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドおよびRNAi剤、ならびに選択されたAARS転写産物および/またはタンパク質フラグメントの発現を減少させるためのその使用法も含む。特定の実施形態は、本発明のAARSタンパク質フラグメントであるスプライスバリアントを生じる1つ以上のスプライス部位(多くの場合は固有である)の標的化に関連する。また、特定のスプライス型を標的として、選択されたタンパク質フラグメントのスプライシングを促進または抑制する、アンチセンスまたはRNAi阻害の方法も含まれる。特定の好適な実施形態では、AARSタンパク質フラグメントを生じるスプライス部位は特定の組織で過剰発現され、そのスプライスバリアントに固有のものである。これらのおよび関連する実施形態では、このようなスプライスバリアントは、標的細胞型における細胞質AARS活性の唯一の源ではない。例えば、標的となる特定のスプライスバリアントは、所与の細胞または組織中のAARS RNAスプライスバリアントの全コピー数の約10%〜50%、好ましくは、所与の細胞または組織中のAARS RNAスプライスバリアントの約1〜10%であり得る。所与の細胞または組織中のAARS RNAスプライスバリアントの全コピー数の約1%未満のスプライスバリアントバリアントも標的になり得る。

特定の実施形態では、完全長タンパク質が、タンパク質合成において鍵となる段階に関与するため、アンチセンス剤またはRNAi剤はこのような完全長タンパク質を標的とせず、野生型AARSノックアウトによりしばしば生じる致死性が回避される。したがって、本明細書に記載の特定の方法を用いて、慢性および急性両方の治療における毒性のような望ましくない作用を回避し、かつAARSタンパク質フラグメントの非カノニカルな活性を選択的に調節することができる。しかし、特定の実施形態では、標的細胞または組織を殺す、またはその細胞生理を乱すために、完全長AARS配列を含めたAARS配列を全般的に標的とし得る。

特定の実施形態では、標的となるAARSスプライスバリアントは、非カノニカルな生物活性を有する。ある実施形態では、AARSスプライスバリアントは減少したまたは検出不可能なカノニカルなAARS活性を有し、アンチセンスまたはRNAi関連の方法が、より特異的にその非カノニカルな活性を調節する。特定の実施形態では、アンチセンスまたはRNAi関連の薬剤を標的化または局所送達のアプローチと組み合わせて、非標的細胞または組織に対する全身性の望ましくない作用を低減することができる。本明細書に記載されている中でも特に、この方法で標的化し得る細胞または組織の例としては、癌細胞、および局所適用による腫瘍または上皮のような局所標的化に適する組織に対する細胞が挙げられる。

A.アンチセンス剤 「アンチセンスオリゴマー」または「アンチセンス化合物」またはアンチセンスオリゴヌクレオチド」という用語は互換的に使用され、それぞれが塩基対形成部分を有する環状サブユニットの配列を指す。これらのサブユニットを結合するサブユニット間結合により、塩基対形成部分はWatson−Crick塩基対形成により核酸(通常はRNA)内の標的配列とハイブリダイズして、標的配列内で核酸:オリゴマーのヘテロ二本鎖を形成し、通常そのRNAの翻訳を阻害することができる。また、スプライスバリアントまたはタンパク質分解フラグメントおよび/またはその対応するポリペプチドのような選択されたAARS転写産物の発現を調節するためのその使用法も含まれる。

アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約8〜40個の間のサブユニット、通常約8〜25個のサブユニット、好ましくは約12〜25個のサブユニットを含み得る。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、以下で定義されるように、標的配列に対して正確に配列相補的またはほぼ相補的であり得る。特定の実施形態では、標的とアンチセンス標的化配列との間の相補性の程度は、安定な二本鎖を形成するのに十分である。アンチセンスオリゴマーの標的RNA配列との相補性の領域は、短くて8〜11の塩基でもよいが、好ましくは12〜15の塩基以上、例えば、12〜20の塩基または12〜25の塩基である(これらの範囲の間にあるすべての整数を含む)。選択されたAARS遺伝子の標的化において、固有の相補的な配列を有するには、一般に約14〜15の塩基のアンチセンスオリゴマーが十分な長さである。特定の実施形態では、本明細書で述べられているように、必要な結合Tmを達成するために、最小の長さの相補的な塩基が必要とされ得る。

特定の実施形態では、40の塩基の長さのアンチセンスオリゴマーが適することもあり、この場合、少なくとも最小数の塩基、例えば10〜12の塩基が標的配列に相補的である。しかし一般的には、細胞の取込みの促進または活性化が最適化されるのは、オリゴマーの長さが約30未満のときである。以下で詳細に記載される特定のオリゴマーでは、結合安定性と取込みの最適なバランスは一般に、18〜25の塩基の長さで得られる。約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40の塩基からなり、このうち少なくとも約6、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40個の連続するまたは不連続の塩基がAARS標的配列またはそのバリアントに相補的である、アンチセンスオリゴマー(例えば、PNA、LNA、2’−OMe、MOE)が挙げられる。

特定の実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、AARS核酸標的配列に100%相補的であり得るか、または、オリゴマーとAARS核酸標的配列との間で形成されるヘテロ二本鎖が、細胞ヌクレアーゼの作用またはin vivoで起こり得る他の様式の分解に抵抗するのに十分に安定である限り、例えばバリアントに適合させるために、ミスマッチを含み得る。「標的配列」という用語は、オリゴヌクレオチドが指向する標的RNAの一部分、すなわち、オリゴヌクレオチドが、相補的な配列のWatson−Crick塩基対形成によりハイブリダイズする配列を指す。特定の実施形態では、標的配列は、AARS mRNAの連続する領域(例えば、AARS mRNAの固有のスプライス部位)であり得るか、またはmRNAの不連続領域から構成され得る。

ヌクレアーゼによる切断に対して比較的感受性の低いオリゴマー骨格を以下に述べる。ミスマッチが存在すれば、それはハイブリッド二本鎖の中央部よりも末端領域に向かうほど不安定化作用が低い。許容されるミスマッチ数は、よく理解されている二本鎖安定性の原理によれば、オリゴマーの長さ、二本鎖中のG:C塩基対のパーセンテージおよび二本鎖中でのミスマッチの位置によって決まる。このようなアンチセンスオリゴマーは、AARS核酸標的配列に必ずしも100%相補的である必要はないが、核酸標的の生物活性、例えばAARSタンパク質の発現を調節するためには、標的配列と安定的かつ特異的に結合するのが効率的である。

オリゴマーと標的配列との間で形成される二本鎖の安定性は、結合Tmと、細胞酵素による切断に対する二本鎖の感受性によって決まる。相補的配列のRNAに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドのTmは、Hamesら,Nucleic Acid Hybridization,IRL Press,1985,pp.107−108またはMiyada C.G.に記載されているような従来の方法により、またWallace R.B.,1987,Oligonucleotide hybridization techniques,Methods Enzymol.Vol.154 pp.94−107に記載されている通りに測定し得る。特定の実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、相補的配列のRNAに対して、体温よりも高い、好ましくは50℃よりも高い結合Tmを有し得る。60〜80℃またはそれより高い範囲のTmが好ましい。公知の原理によれば、相補性に基づくRNAハイブリッドに関するオリゴマー化合物のTmは、二本鎖中のC:G対塩基の比を増加させることにより、および/またはヘテロ二本鎖の(塩基対の)長さを増加させることにより、増大させることができる。同時に、細胞内取込みを最適化させるためには、アンチセンスオリゴマーの大きさを制限することが有利である。このような理由で、高いTm値を得るのに25の塩基よりも多く必要とする化合物よりも、25の塩基以下の長さで高いTm(50℃以上)示す化合物の方が一般に好ましい。

アンチセンスオリゴマーは、mRNAの翻訳をブロックまたは阻害するように、または天然のプレmRNAスプライス過程を阻害するように、または標的mRNAの分解を誘導するに設計することが可能であり、ハイブリダイズする標的配列を「指向する」または「標的とする」と呼ばれることがある。特定の実施形態では、標的配列は、AARS mRNA転写産物の任意のコード配列または非コード配列を含んでよく、したがって、エクソン内またはイントロン内にあってよい。特定の実施形態では、標的配列はAARS(例えば、完全長AARS)の中では比較的固有または例外的であり、選択されたAARSタンパク質フラグメント(例えばタンパク質分解フラグメントまたはスプライスバリアントなど)の発現の減少に関して選択的である。特定の実施形態では、標的部位は、プレプロセシングされたmRNAの3’もしくは5’スプライス部位、または分岐点を含む。スプライス部位の標的配列は、プレプロセシングされたmRNAのスプライスアクセプター部位の下流またはスプライスドナー部位の上流1〜約25〜約50の塩基対の5’末端を有するmRNA配列を含み得る。特定の実施形態では、標的配列は選択的スプライスAARS mRNAのスプライス部位、例えば完全長AARSでは生じない、または他のAARSスプライスバリアントでは生じないか、もしくはごく稀にしか生じないという点でその転写産物に固有または例外的であるスプライス部位などを含み得る。オリゴマーが標的の核酸に対して本明細書に記載の様式で標的化されている場合、より一般的にはそれを、参照AARSポリヌクレオチドのような生物学的に関連する標的「に対して標的化されている」と呼ぶ。

オリゴヌクレオチドは通常、標的DNAまたはRNAのような標的配列に相補的である。「相補的」および「相補性」という用語は、塩基対形成の法則により関係しているポリヌクレオチド(すなわち、ヌクレオチドの配列)を指す。例えば、配列「A−G−T」は配列「T−C−A」に相補的である。相補性は「部分的」なこともあり、その場合、核酸塩基の一部のみが塩基対形成の法則に従ってマッチしている。あるいは、核酸の間に「完全な」相補性(100%)が存在し得る。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率および強度に大きな影響を与える。多くの場合、完全な相補性が望まれるが、ある実施形態は、標的配列に対して1つ以上、好ましくは20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個のミスマッチ含み得る。オリゴマー内での任意の位置での変化が含まれる。特定の実施形態では、オリゴマーの末端付近での配列の変化は、一般に内部での変化よりも好ましく、それが存在する場合、通常、5’および/または3’末端から約10、9、8、7、6、5、4、3、2または1ヌクレオチド以内である。

「標的化配列」または特定の実施形態では「アンチセンス標的化配列」という用語は、DNAまたはRNA標的分子内の標的配列に相補的な(実質的に相補的という意味でもある)、オリゴヌクレオチド内の配列を指す。アンチセンス化合物の全配列またはその一部分が標的配列に相補的であり得る。例えば、20〜30の塩基のオリゴヌクレオチドでは、約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28または29の塩基が、標的領域に相補的な標的化配列であり得る。通常、標的化配列は連続する塩基から形成されるが、代わりに、例えばオリゴヌクレオチドの正反対から合わせると標的配列に及ぶ配列となる、不連続の配列から形成されていてもよい。

標的と標的化配列は、逆平行の配置でハイブリダイゼーションが生じれば、互いに「相補的」であると呼ばれる。標的化配列は、標的配列に対して「ほぼ」または「実質的に」相補的であり、かつ依然として本発明の目的のために機能し得る、すなわち、依然として機能的に「相補的」であり得る。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、標的配列に対して最大で10ヌクレオチド中1個、好ましくは最大で20ヌクレオチド中1個のミスマッチを有し得る。あるいは、オリゴヌクレオチドは、本明細書に記載のAARS参照ポリヌクレオチド配列またはその相補体に対して、少なくとも約80%、85%、90%の配列相同性、好ましくは少なくとも95%配列相同性を有し得る。

オリゴマーが、生理的条件下で標的(例えば、AARS参照ポリヌクレオチドまたはその相補体)とハイブリダイズし、Tmが実質的に45℃より大きい、好ましくは少なくとも50℃、通常は60℃〜80℃以上である場合、オリゴヌクレオチドは標的ポリヌクレオチドと「特異的にハイブリダイズする」ことになる。このようなハイブリダイゼーションは、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に相当する。所与のイオン強度およびpHにおいて、Tmとは、標的配列の50%が相補的なポリヌクレオチドとハイブリダイズする温度のことである。繰り返すが、このようなハイブリダイゼーションは、アンチセンスオリゴマーが標的配列に対して正確に相補的である場合だけでなく、「ほぼ」または「実質的に」相補的である場合でも生じ得る。

特異的に結合するまたは特異的にハイブリダイズするという用語は一般に、選択されたハイブリダイゼーション条件下で対象とする標的試料中の遺伝子配列と結合するだけでなく、試料中の他の標的配列とほとんど結合しないため、標的プール中の対象とする標的と他のすべての標的とを識別する、オリゴヌクレオチドプローブまたはポリヌクレオチド配列を指す。また、対象とする標的配列と特異的にハイブリダイズするプローブは、本明細書に記載のように、選択されたハイブリダイゼーション条件下での濃度の差も検出し得る。

「ヌクレアーゼ耐性」オリゴマー分子(オリゴマー)は、非ハイブリダイズ形態またはハイブリダイズ形態において、その骨格が体内の通常の細胞外および細胞内ヌクレアーゼによるヌクレアーゼ切断に対して実質的に耐性であるオリゴマー分子を指す、すなわち、体内で曝される通常のヌクレアーゼ条件下で、そのオリゴマーがヌクレアーゼ切断をほとんどまたは全く示さないということである。

「ヘテロ二本鎖」は、オリゴヌクレオチドと、標的DNAまたはRNAのような標的ポリヌクレオチドの相補的部分との間の二本鎖を指す。「ヌクレアーゼ耐性ヘテロ二本鎖」は、二本鎖のRNA/RNAまたはRNA/DNA複合体を切断することができる、RNアーゼHのような細胞内および細胞外ヌクレアーゼによるin vivo分解に対してヘテロ二本鎖が実質的に耐性となるように、オリゴマーがその相補的な標的と結合することにより形成されたヘテロ二本鎖を指す。

オリゴヌクレオチドの「サブユニット」は、1つのヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)単位を指す。この用語は、サブユニット間結合を有するまたは有さないヌクレオチド単位を指し得るが、「荷電サブユニット」というときは、電荷は通常、サブユニット間結合(例えば、リン酸もしくはホスホロチオアート結合または陽イオン結合)内に存在する。

オリゴヌクレオチドの環状サブユニットは、リボースもしくは別のペントース糖、または特定の実施形態では、別のもしくは修飾された基に基づくものであり得る。修飾オリゴヌクレオチド骨格の例としては、ホスホロチオアート、キラルホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’−アルキレンホスホナートおよびキラルホスホナートを含めたメチルおよびその他のアルキルホスホナート、ホスフィナート、3’−アミノホスホルアミダートおよびアミノアルキルホスホルアミダートを含めたホスホルアミダート、チオノホスホルアミダート、チオノアルキルホスホナート、チオノアルキルホスホトリエステル、ならびに通常の3’−5’結合を有するボラノリン酸、これらの2’−5’結合類似体、ならびに隣接するヌクレオシド単位のペアが3’−5’と5’−3’または2’−5’と5’−2’で結合し極性の反転したものが挙げられるが、これらに限定されない。また、当該技術分野で公知のヌクレオチドの中でも特に、ペプチド核酸(PNA)、ロックト核酸(LNA)、2’−O−メチルオリゴヌクレオチド(2’−OMe)、2’−メトキシエトキシオリゴヌクレオチド(MOE)オリゴも企図される。

プリンまたはピリミジン塩基対形成部分は通常、アデニン、シトシン、グアニン、ウラシル、チミンまたはイノシンである。また、ピリジン−4−オン、ピリジン−2−オン、フェニル、プソイドウラシル、2,4,6−トリメトキシベンゼン、3−メチルウラシル、ジヒドロウリジン、ナフチル、アミノフェニル、5−アルキルシチジン(例えば、5−メチルシチジン)、5−アルキルウリジン(例えば、リボチミジン)、5−ハロウリジン(例えば、5−ブロモウリジン)または6−アザピリミジンまたは6−アルキルピリミジン(例えば、6−メチルウリジン)、プロピン、キューソシン(quesosine)、2−チオウリジン、4−チオウリジン、ワイブトシン、ワイブトキソシン、4−アセチルチジン(acetyltidine)、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、5’−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウリジン、β−D−ガラクトシルキュエオシン、1−メチルアデノシン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアノシン、3−メチルシチジン、2−メチルアデノシン、2−メチルグアノシン、N6−メチルアデノシン、7−メチルグアノシン、5−メトキシアミノメチル−2−チオウリジン、5−メチルアミノメチルウリジン、5−メチルカルボニルネチルウリジン(methylcarbonyhnethyluridine)、5−メチルオキシウリジン、5−メチル−2−チオウリジン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデノシン、β−D−マンノシルキュエオシン、ウリジン−5−オキシ酢酸、2−チオシチジン、スレオニン誘導体など(Burginら,1996,Biochemistry,35,14090;Uhlman & Peyman,上記)のような塩基も含まれる。本態様における「修飾塩基」は、上に例示したようなアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)およびウラシル(U)以外のヌクレオチド塩基を意味し、このような塩基をアンチセンス分子の任意の位置で使用することができる。オリゴマーの用途に応じて、TとUは互換性があることを当業者は理解するであろう。例えば、RNAの方に類似した2’−O−メチルアンチセンスオリゴヌクレオチドのような他のアンチセンス化合物では、T塩基をUと表すことがある。

上述のように、本明細書に記載の特定のオリゴヌクレオチドはペプチド核酸(PNA)を含む。ペプチド核酸(PNA)とは、骨格が構造的にデオキシリボース骨格と同形で、ピリミジンまたはプリン塩基が結合したN−(2−アミノエチル)グリシン単位からなる、DNAの類似体のことである。天然のピリミジンおよびプリン塩基を含むPNAは、Watson−Crick塩基対形成の法則に従って相補的なオリゴヌクレオチドとハイブリダイズし、塩基対認識という点でDNAを模倣する(Egholm,Buchardtら,1993)。PNAの骨格はホスホジエステル結合ではなくペプチド結合により形成されているため、PNAはアンチセンス適用によく適している(以下の構造を参照されたい)。骨格が非荷電であるため、通常よりも高い熱安定性を示すPNA/DNAまたはPNA/RNA二本鎖が生じる。PNAはヌクレアーゼまたはプロテアーゼによって認識されない。

当該技術分野で公知の任意の技術を用いて、PNAを合成により作製し得る。PNAは、DNAの従来のリン酸リボース環がポリアミド骨格に置き換わったDNA類似体である。PNAは、天然の構造を根本的に変化させたものであるにもかかわらず、DNAまたはRNAとへリックス形態で配列特異的に結合することができる。PNAの特徴としては、相補的なDNAまたはRNAに対する高い結合親和性、単一塩基ミスマッチにより生じる不安定化作用、ヌクレアーゼおよびプロテアーゼに対する耐性、塩濃度と無関係なDNAまたはRNAとのハイブリダイゼーション、ならびにホモプリンDNAとの三重鎖形成が挙げられる。Panagene(商標)社は、特許登録されたBts PNAモノマー(Bts;ベンゾチアゾール−2−スルホニル基)および特許登録されたオリゴマー形成工程を開発した。Bts PNAモノマーを用いたPNAオリゴマー形成は、脱保護、カップリングおよびキャップ形成の反復サイクルからなる。Panagene社のこの技術に対する特許としては、米国特許第6969766号、同第7211668号、同第7022851号、同第7125994号、同第7145006号および同第7179896号が挙げられる。PNA化合物の調製を教示する代表的な米国特許としては、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,539,082号;同第5,714,331号;および同第5,719,262号が挙げられるが、これらに限定されない。PNA化合物のさらなる教示は、Nielsenら,Science,1991,254,1497に見ることができる。

また「ロックト核酸」サブユニット(LNA)も含まれる。LNAの構造は当該技術分野で公知である(例えば、Wengelら,Chemical Communications(1998)455;Tetrahedron(1998)54,3607およびAccounts of Chem.Research(1999)32,301);Obikaら,Tetrahedron Letters(1997)38,8735;(1998)39,5401およびBioorganic Medicinal Chemistry(2008)16,9230)。

オリゴヌクレオチドは1つ以上のLNAを組み込み得るが、ある場合には、化合物は完全にLNAで構成され得る。個々のLNAヌクレオシドサブユニットの合成およびオリゴヌクレオチドへのその組込みの方法は当該技術分野で公知である(米国特許第7,572,582号、同第7,569,575号、同第7,084,125号、同第7,060,809号、同第7,053,207号、同第7,034,133号、同第6,794,499号;および同第6,670,461号)。典型的なサブユニット間リンカーとしては、ホスホジエステルおよびホスホロチオアート部分が挙げられるが、リンを含まないリンカーを代わりに使用してもよい。好適な実施形態は、各LNAサブユニットがDNAサブユニット(すなわち、デオキシリボースヌクレオチド)により分離されているLNA含有化合物である。さらに好適な化合物は、交互に存在するLNAおよびDNAのサブユニットからなり、サブユニット間のリンカーがホスホロチオアートである。

特定のオリゴヌクレオチドは、非荷電または実質的に非荷電である結合により結合した、塩基対形成部分を有するモルホリノベースのサブユニットを含み得る。「モルホリノオリゴマー」または「PMO」(ホスホルアミダートまたはホスホロジアミダートモルホリノオリゴマー)という用語は、モルホリノサブユニット構造からなり、(i)その構造がリン含有結合により結合しており、リン含有結合は、原子1〜3個の長さ、好ましくは原子2個の長さで、好ましくは非荷電または陽イオン性であり、リン含有結合1つのサブユニットのモルホリノ窒素と、隣接するサブユニットの5’環外炭素とを結合させている結合であり、かつ(ii)各モルホリノ環は、塩基特異的水素結合によりポリペプチド中の塩基と結合するのに有効な、プリンもしくはピリミジンまたはそれに相当する塩基対形成部分を有する、オリゴヌクレオチド類似体を指す。

結合または活性に干渉しない限り、この結合を変化させることができる。例えば、リンと結合した酸素を硫黄で置換し得る(チオホスホロジアミダート)。5’酸素をアミノまたは低級アルキル置換アミノで置換し得る。リンと結合しているペンダント窒素は、未置換、または(任意に置換された)低級アルキルによる一置換もしくは二置換であり得る。プリンまたはピリミジン塩基対形成部分は通常、アデニン、シトシン、グアニン、ウラシル、チミンまたはイノシンである。モルホリノオリゴマーの合成、構造および結合特性は、米国特許第5,698,685号、同第5,217,866号、同第5,142,047号、同第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,521,063および同第5,506,337号、ならびに国際出願PCT/US07/11435号(陽イオン結合)および同US08/012804号(改良された合成)(すべて参照により本明細書に組み込まれる)に詳述されている。

またモルホリノサブユニットは、以下で詳細に記載されているように、非リンベースのサブユニット間結合により結合していてもよく、ここでは少なくとも1つの結合が上記ペンダント陽イオン基で修飾されている。未修飾の状態では非荷電であるが、ペンダントアミン置換基も有し得る、その他のオリゴヌクレオチド類似体結合を使用することができる。例えば、スルファミド結合または尿素結合(リンがそれぞれ炭素または硫黄に置き換わっている)において、モルホリノ環状の5’窒素原子が使用され、上の構造(b3)の5’−窒素原子に類似した様式で修飾され得る。

特定の実施形態は、実質的に非荷電のホスホロジアミダート結合したモルホリノオリゴマーのような、実質的に非荷電のモルホリノオリゴマーを含む。オリゴヌクレオチド類似体の実質的に非荷電のリン含有骨格は、サブユニット結合の大部分、例えばその結合の50〜100%の間、通常、少なくとも60%〜100%または75%または80%が生理的pHにおいて非荷電であり、かつ単一のリン原子を含む。リン含有骨格を有するモルホリノオリゴヌクレオチドの例としては、ホスホロアミダート結合したおよびホスホロジアミダート結合したモルホリノオリゴヌクレオチドが挙げられる。特定の実施形態は、好ましくはその骨格結合の約10%〜50%が正荷電基を含み得る。

モルホリノベースのサブユニットの特性としては、例えば、安定な非荷電または正荷電骨格結合によりオリゴマー形態で結合する能力、形成されるポリマーが相補的塩基の標的核酸(標的RNAを含む)とハイブリダイズし得るようにヌクレオチド塩基(例えば、アデニン、シトシン、グアニン、チミジン、ウラシルおよびヒポキサンチン)を支持する能力、比較的短いオリゴヌクレオチド(例えば、10〜15の塩基)で約45℃を上回るTm値、オリゴヌクレオチドが能動的または受動的に哺乳動物細胞内へ輸送される能力、およびアンチセンスオリゴヌクレオチド:RNAヘテロ二本鎖がそれぞれ、RNアーゼおよびRNアーゼHによる分解に抵抗する能力が挙げられる。

特定の実施形態では、実質的に非荷電のオリゴヌクレオチドを、例えば、非荷電結合2〜5個当たり約1個以下、例えば非荷電結合10個当たり約4〜5個などの荷電結合を含むように修飾し得る。特定の実施形態では、骨格結合の約25%が陽イオン性である場合に、アンチセンス活性の最適な向上が見られ得る。特定の実施形態では、少数の、例えば10〜20%の陽イオン結合で、または陽イオン結合の数が50〜80%の範囲、例えば約60%などである場合に、増強が見られ得る。特定の実施形態では、電荷の大部分をアンチセンスオリゴヌクレオチドの「中心領域」の骨格結合付近に分布させる、例えば、8個の陽イオン骨格結合を有する20量体オリゴヌクレオチドにおいて、これらの荷電結合の少なくとも70%を中央の10個の結合に局在させることにより、陽イオン骨格電荷をさらに増大させ得る。

AARSポリヌクレオチド参照配列またはその相補体の1つ以上の部分を標的とするオリゴヌクレオチドを、本明細書に記載のおよび当業者に明らかな治療、診断または薬剤スクリーニングの方法のいずれにおいても使用し得る。

B.RNA干渉剤 特定の実施形態は、アミノアシルtRNA合成酵素(AARS)参照ポリヌクレオチドの1つ以上のmRNA転写産物(そのフラグメントおよびスプライスバリアントを含む)を標的とするRNA干渉(RNAi)剤に関する。また、例えばAARSスプライスバリアントまたは内因性タンパク質分解フラグメントのような選択されたAARS転写産物を調節するためのその使用法も含まれる。

「二本鎖の」という用語は、鎖の少なくとも一部分が、水素結合して二本鎖構造を形成する程度に相補的である領域を含む、2つの別々の核酸鎖を意味する。「二本鎖」または「二本鎖構造」という用語は、2つの別々の鎖が実質的に相補的で互いにハイブリダイズしている、二本鎖分子の領域を指す。「dsRNA」は、2つの相補的で逆平行の核酸鎖(すなわち、センス鎖とアンチセンス鎖)を含む二本鎖構造を有する、リボ核酸分子を指す。dsRNAのすべてのヌクレオチドがWatson−Crick塩基対を示す必要はなく、2つのRNA鎖が実質的に相補的であってもよい。2つのRNA鎖は、ヌクレオチドの数が同じであっても異なっていてもよい。

特定の実施形態では、dsRNAは、標的RNAに対して少なくとも部分的に相補的である領域であるか、またはこれを含む。特定の実施形態では、dsRNAは標的RNAに対して完全に相補的である。dsRNAと標的が完全に相補的である必要はないが、dsRNAまたはその切断産物が標的RNAのRNAi切断などによる配列特異的サイレンシングを指令できる程度には一致していなければならない。標的鎖との相補性または相同性の程度は通常、アンチセンス鎖において最も重要である。特にアンチセンス鎖においては完全な相補性が望まれる場合が多いが、ある実施形態は、標的RNAに対して1つ以上、好ましくは6、5、4、3、2個以下のミスマッチを含み得る。ミスマッチは末端領域で最も許容され、これが存在する場合、末端領域または5’および/または3’末端の例えば6、5、4もしくは3ヌクレオチド以内の領域に存在することが好ましい。センス鎖は、アンチセンス鎖に対して、分子の全体的な二本鎖性を維持する程度に実質的に相補的であればよい。

本明細書で使用される「修飾dsRNA」は、同じ標的RNAを認識する同一のdsRNA分子よりもヌクレアーゼ(例えば、タンパク質キナーゼ)に対する耐性を高める少なくとも1つの修飾を含む、dsRNA分子を指す。修飾dsRNAsは、一本鎖ヌクレオチドオーバーハングおよび/または少なくとも1つの置換ヌクレオチドを含む。

本明細書で使用される「ヌクレオチドオーバーハング」は、一方のRNA鎖の3’末端が他方の鎖の5’末端よりもはみ出しているまたはその逆の場合に二本鎖構造から突出している、対形成しない1つまたは複数のヌクレオチドを指す。「平滑」または「平滑末端」は、dsRNAの末端部分に対形成しないヌクレオチドが存在しない、すなわち、ヌクレオチドオーバーハングが存在しないことを意味する。「平滑末端」dsRNAとは、その全長にわたって二本鎖である、すなわち、分子のどちらの端にもヌクレオチドオーバーハングが存在しないdsRNAのことである。

本明細書で使用される「末端塩基対」という用語は、二本鎖分子の二本鎖領域の一端にある最後のヌクレオチド塩基対を指す。例えば、dsRNAなどの分子が平滑末端である(すなわち、ヌクレオチドオーバーハングがない)場合、分子両端の最後のヌクレオチド塩基対が末端塩基対となる。dsRNAなどの分子が二本鎖構造の一端または両端にヌクレオチドオーバーハングを有する場合、ヌクレオチドオーバーハングのすぐ隣にある最後のヌクレオチド塩基対が、分子のその末端の末端塩基対となる。

特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、選択されたフラグメントまたはスプライスバリアントのようなAARS転写産物の発現を減少させるための調節物質として、二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子を用いる。dsRNAsは一般に、2つの一本鎖を含む。dsRNAの一方の鎖は、標的遺伝子または標的領域の一部分と実質的に同一のヌクレオチド配列を含み(「センス」鎖)、他方の鎖(「相補的」鎖または「アンチセンス」鎖)は、標的領域の一部分と実質的に相補的な配列を含む。2つの鎖は、ハイブリダイズして二本鎖構造を形成する程度に相補的である。特定の実施形態では、相補的なRNA鎖は、長さが30ヌクレオチド未満、25ヌクレオチド未満、または長さが19〜24ヌクレオチドであり得る。特定の態様では、相補的なヌクレオチド配列は、20〜23ヌクレオチドの長さまたは22ヌクレオチドの長さであり得る。

特定の実施形態では、少なくとも一方のRNA鎖が、1〜4ヌクレオチドの長さのヌクレオチドオーバーハングを含む。他の実施形態では、dsRNAは、少なくとも1つの化学的に修飾されたヌクレオチドをさらに含み得る。特定の態様では、1〜4ヌクレオチドの一本鎖オーバーハングを含むdsRNAは、末端ヌクレオチド対と直接隣り合う一本鎖オーバーハングの対形成しないヌクレオチドがプリン塩基を含む分子を含み得る。他の態様では、dsRNA両端の最後の相補的クレオチド対がG−C対であるか、または最後の4つの末端ヌクレオチド対の少なくとも2つがG−C対である。

本発明の特定の実施形態は、マイクロRNAを含み得る。マイクロRNAは、生物内で自然に産生される低分子RNAの1つの大きなグループであり、その一部のものは標的遺伝子の発現を調節する。マイクロRNAは、約70ヌクレオチドの一本鎖ヘアピン前駆体転写産物からダイサーにより形成される(V.Ambrosら,Current Biology 13:807,2003)。特定のマイクロRNAは、ヘアピンRNA前駆体として転写された後、ダイサー酵素によりプロセシングされて成熟型となる。

特定の実施形態では、短鎖干渉RNA(siRNA)も使用し得る。特定の実施形態では、二本鎖オリゴヌクレオチドの第一の鎖が、ヌクレオシド残基を第二の鎖よりも2個多く含む。他の実施形態では、第一の鎖と第二の鎖が同じ数のヌクレオシドを有するが、第一と第二の鎖は、第一と第二の鎖の2つの末端ヌクレオシドが相補鎖上の残基と対形成しないように相殺的であり得る。場合によっては、対形成しない2つのヌクレオシドはチミジン残基である。

また、短鎖ヘアピンRNA(shRNAs)およびマイクロRNA(miRNA)も含まれる。shRNAの二本鎖構造は、単一の自己相補的なRNA鎖により形成され、RNA二本鎖形成は、細胞内または細胞外のいずれでも開始され得る。マイクロRNA(miRNA)は、20〜22ヌクレオチドの非コード低分子RNAであり、通常、プレmiRNAとして知られる約70ヌクレオチドの折り返したRNA前駆体から切り出される。

調節物質がsiRNAを含む場合、その物質は、siRNA剤またはそのフラグメントが標的RNAの下方調節を仲介できるように、標的領域と十分に相同な領域を含み、かつヌクレオチドの長さが十分であるべきである。「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」という用語は、修飾RNAまたはヌクレオチド代替物の場合、1つ以上の位置にある修飾ヌクレオチドまたは代替置換部分も表し得ることが理解されるであろう。したがってsiRNA剤は、本明細書に記載のように、標的RNAに対して少なくとも部分的に相補的な領域であるか、またはそれを含む。

さらにsiRNA調節物質は、修飾されているか、またはヌクレオシド代替物を含んでいてもよい。siRNA剤の一本鎖領域が修飾されているか、またはヌクレオシド代替物を含んでいてもよく、例えば、対形成していない領域またはヘアピン構造の領域、例えば2つの相補的な領域を結ぶ領域が、修飾されているか、またはヌクレオシド代替物を有していてもよい。siRNA剤の1つ以上の3’または5’−末端を、例えばエキソヌクレアーゼに対して安定化させる、またはアンチセンスsiRNA剤がRISC内に入るのを補助するための修飾も有効である。修飾は、C3(またはC6、C7、C12)アミノリンカー、チオールリンカー、カルボキシルリンカー、非ヌクレオチドスペーサー(C3、C6、C9、C12、脱塩基、トリエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール)、およびホスホラミダイトを生じ、また別のDMT保護ヒドロキシル基を有しRNA合成の際に複数のカップリングを可能にする、特殊なビオチンまたはフルオレセイン試薬を含み得る。

siRNA剤は、例えば、インターフェロン応答を誘発する程度の長さの分子(ダイサーにより切断されて(Bernsteinら,2001.Nature,409:363−366)、RISC(RNAi誘導型サイレンシング複合体)に入ることができる)、およびインターフェロン応答を誘発しない程度に十分に短い分子(この分子もダイサーにより切断され、かつ/またはRISCに入ることができる)、例えばRISC内に入ることが可能な大きさの分子、例えばダイサー切断産物に類似している分子を含み得る。siRNA調節物質またはその切断産物は、例えば、標的RNA、好ましくは選択されたスプライスバリアントのようなAARS標的に対してRNAiを誘導することにより、標的遺伝子を下方制御することができる。

siRNA剤の各鎖は、35、30、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16または15ヌクレオチド以下の長さであり得る。鎖は、好ましくは少なくとも19ヌクレオチドの長さである。例えば、各鎖は21〜25ヌクレオチドの間の長さであり得る。好適なsiRNA剤は、17、18、19、29、21、22、23、24または25ヌクレオチド対の二本鎖領域と、1つ以上のオーバーハング、好ましくは2〜3ヌクレオチドの1つまたは2つの3’オーバーハングとを有する。

標的RNAとの相同性および標的遺伝子を下方制御する能力に加えて、siRNA剤は、以下の特性を1つ以上有し得る:非常に多くのまたはすべてのヌクレオシドに対する修飾にもかかわらず、正確な塩基対を形成し、例えば標的RNAの切断による標的の下方制御が可能な程度に十分な、相同な標的RNAとの二本鎖を形成することができるように、適切な三次元フレームワークで塩基(または修飾塩基)を提示することができるアンチセンス鎖を有し得る;非常に多くのまたはすべてのヌクレオシドに対する修飾にもかかわらず、依然として「RNA様の」特性を有し得る、例えば、リボヌクレオチドベースの含有物だけまたはその一部であっても、RNA分子の全体的な構造、化学的特性および物理的特性を有し得る。例えば、siRNA剤は、例えば、すべてのヌクレオチド糖が、例えば2’ヒドロキシルの代わりに2’フルオロを含むセンスおよび/またはアンチセン鎖を含み得る。このデオキシリボヌクレオチド含有物質は依然として、RNA様の特性を示すことが予想され得る。理論に拘束されることを望むものではないが、負の電荷を有するフッ素は、リボースC2’位置に結合した場合、軸方向の配向を好む。そして、フッ素のこの空間的選択性が糖にC3’エンドパッカー構造をとらせ得る。これはRNA分子で見られるものと同じパッカリング様式であり、RNAに特徴的なAファミリー形のへリックスを生じる。さらに、フッ素は優れた水素結合アクセプターであるため、RNA構造を安定化させることが知られている、水分子と同じ水素結合相互作用に関与することができる。一般に、2’糖位置の修飾部分が、デオキシリボヌクレオチドのH部分よりもリボヌクレオチドのOH部分に特徴的なH結合内に入ることが可能であるのが好ましい。

本明細書で使用される「一本鎖RNAi剤」とは、単一分子からなるRNAi剤のことである。一本鎖RNAi剤は、鎖間対形成により形成される二本鎖領域を含んでいてもよく、例えば、一本鎖RNAi剤は、ヘアピン型もしくはフライパンの柄型の構造であるか、またはそれを含み得る。一本鎖RNAi調節物質は、好ましくは標的分子に対してアンチセンスである。一本鎖RNAi調節物質は、RISCに入り、RISCの仲介による標的mRNA切断に関与することが可能な長さであるべきである。一本鎖RNAi剤は、少なくとも14ヌクレオチド、より好ましくは、少なくとも15、20、25、29、35、40または50ヌクレオチドの長さである。一本鎖RNAi剤は、200、100または60ヌクレオチド未満の長さであることが好ましい。

ヘアピン型RNAi調節物質は、少なくとも17、18、19、29、21、22、23、24または25ヌクレオチド対またはこれに等しい二本鎖領域を有し得る。二本鎖領域は、好ましくは200、100または50以下の長さであり得る。二本鎖領域の特定の長さの範囲は、15〜30、17〜23、19〜23および19〜21ヌクレオチド対である。ヘアピンは、好ましくはヘアピン側のアンチセンスの好ましくは3’側に、一本鎖オーバーハングまたは末端の対形成していない領域を有し得る。特定の実施形態では、オーバーハングは2〜3ヌクレオチドの長さである。

本明細書に記載の方法に従って使用する特定の調節物質はキメラオリゴヌクレオチド、つまり、それぞれ少なくとも1つのモノマー単位(すなわち、オリゴヌクレオチド化合物の場合はヌクレオチド)からなる2つ以上の化学的に異なる領域を含む「キメラ」のようなRNAiオリゴヌクレオチドを含み得る。これらのオリゴヌクレオチドは通常、オリゴヌクレオチドのヌクレアーゼ分解に対する耐性、細胞内取込みおよび/または標的核酸に対する結合親和性を増大させるようにオリゴヌクレオチドが修飾されている、少なくとも1つの領域を含む。その結果、キメラオリゴヌクレオチドを用いると、ホスホロチオアートオリゴデオキシヌクレオチドよりも短いオリゴヌクレオチドでそれに匹敵する結果が得られる場合が多い。キメラオリゴヌクレオチドは、上記のような2つ以上のオリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチド模倣物の複合構造として形成され得る。このようなオリゴヌクレオチドは、当該技術分野ではハイブリッドまたはギャップマーとも呼ばれている。このようなハイブリッド構造の調製を教示する代表的な米国特許としては、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,013,830号;同第5,149,797号;同第5,220,007号;同第5,256,775号;同第5,366,878号;同第5,403,711号;同第5,491,133号;同第5,565,350号;同第5,623,065号;同第5,652,355号;同第5,652,356号;同第5,700,922号;および同第5,955,589号が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、キメラオリゴヌクレオチドはRNA−DNA、DNA−RNA、RNA−DNA−RNA、DNA−RNA−DNAまたはRNA−DNA−RNA−DNAであり、オリゴヌクレオチドが5〜60ヌクレオチドの間の長さである。

本発明の一態様では、RNAi剤は、改変または非天然核酸塩基に係留された少なくとも1つのリガンを含むオリゴヌクレオチドに関する。多数の化合物が改変塩基として機能し得る。改変塩基の構造は、改変塩基がオリゴヌクレオチドとその標的、例えばmRNAとの結合を実質的に妨げない限り重要である。特定の実施形態では、改変塩基は、ジフルオロトリル、ニトロピロリル、ニトロイミダゾリル、ニトロインドリル、ナフタレニル、アントランセニル(anthrancenyl)、ピリジニル、キノリニル、ピレニルまたは本明細書に記載の非天然核酸塩基のいずれか1つの二価ラジカルである。特定の実施形態では、非天然核酸塩基は、ジフルオロトリル、ニトロピロリルまたはニトロイミダゾリルである。特定の実施形態では、非天然核酸塩基はジフルオロトリルである。多種多様なリガンドが当該技術分野において公知であり、本発明に適する。例えば、リガンドは、ステロイド、胆汁酸、脂質、葉酸、ピリドキサール、B12、リボフラビン、ビオチン、芳香族、多環式化合物、クラウンエーテル、インターカレーター、切断分子、タンパク質結合物質または炭水化物であり得る。特定の実施形態では、リガンドはステロイドまたは芳香族化合物である。場合によっては、リガンドはコレステリルである。

他の実施形態では、RNAi剤は、細胞標的化および細胞内取込みを向上させる目的でリガンドに係留させたオリゴヌクレオチドである。例えば、RNAi剤を抗体またはその抗原結合フラグメントに係留させ得る。さらなる例として、RNAi剤を、特定の細胞表面受容体と特異的に結合するポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントのような特定のリガンド結合分子に係留させ得る。

他の実施形態では、調節物質は、本明細書に記載の非天然核酸塩基を含む。場合によっては、ヌクレオシド中に天然に存在するリボース糖部分がヘキソース糖に置き換わっている。特定の態様では、ヘキソース糖は、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロースまたはそれらの誘導体である。好適な実施形態では、ヘキソースはD−ヘキソースである。場合によっては、ヌクレオシド中に天然に存在するリボース糖部分が、多環式ヘテロアルキル環またはシクロヘキセニル基に置き換わっている。場合によっては、多環式ヘテロアルキル基は、環内に1個の酸素原子を含む二環式環である。場合によっては、多環式ヘテロアルキル基は、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[3.2.1]オクタンまたはビシクロ[3.3.1]ノナンである。また修飾RNAi剤の例として、本明細書に記載のように修飾骨格または非天然ヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドも挙げられる。

本発明はさらに、リボザイムを用いたオリゴヌクレオチドを包含する。高度に特異的なエンドリボヌクレアーゼ活性を触媒する合成RNA分子およびその誘導体は、リボザイムとして知られている(例えば、Haseloffらに対する米国特許第5,543,508号およびGoodchildらに対する米国特許第5,545,729号を参照されたい)。切断反応はRNA分子自体によって触媒される。天然のRNA分子では、自己触媒切断部位は、RNA二次構造の高度に保存された領域にある(Buzayanら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1986,83,8859;Forsterら,Cell,1987,50,9)。天然の自己触媒RNA分子を改変して、特定の細胞または病原性RNA分子に対して高い特異性で標的化することができるリボザイムが生成されている。したがって、リボザイムは、アンチセンスオリゴヌクレオチド同じ一般的な目的(すなわち、特定遺伝子の発現の調節)を果たし、またオリゴヌクレオチドと同様に、大部分の一本鎖性を有する核酸である。

場合によっては、本明細書に記載の方法に使用するRNAi剤またはアンチセンスオリゴヌクレオチドを、非リガンド基により修飾し得る。オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、細胞標的化または細胞内取込みを増強するために、多数の非リガンド分子がオリゴヌクレオチドとコンジュゲートされており、またこのようなコンジュゲーションを調製するための手順が科学文献で入手可能である。このような非リガンド部分は、コレステロールのような脂質部分(Letsingerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1989,86:6553)、アルギニンリッチペプチド、コール酸(Manoharanら,Bioorg.Med.Chem.Lett.,1994,4:1053)、チオエーテル、例えばヘキシル−5−トリチルチオール(Manoharanら,Ann.N.Y.Acad.Sci.,1992,660:306;Manoharanら,Bioorg.Med.Chem.Let.,1993,3:2765)、チオコレステロール(Oberhauserら,Nucl.Acids Res.,1992,20:533)、脂肪族鎖、例えばドデカンジオールまたはウンデシル残基(Saison−Behmoarasら,EMBO J.,1991,10:111;Kabanovら,FEBS Lett.,1990,259:327;Svinarchukら,Biochimie,1993,75:49)、リン脂質、例えばジ−ヘキサデシル−rac−グリセロールまたは1,2−di−O−ヘキサデシル−rac−グリセロ−3−H−ホスホン酸トリエチルアンモニウム(Manoharanら,Tetrahedron Lett.,1995,36:3651;Sheaら,Nucl.Acids Res.,1990,18:3777)、ポリアミンまたはポリエチレングリコール鎖(Manoharanら,Nucleosides & Nucleotides,1995,14:969)、またはアダマンタン酢酸(Manoharanら,Tetrahedron Lett.,1995,36:3651)、パルミチル部分(Mishraら,Biochim.Biophys.Acta,1995,1264:229)、オクタデシルアミンまたはヘキシルアミノ−カルボニル−オキシコレステロール部分(Crookeら,J.Pharmacol.Exp.Ther.,1996,277:923)を含んでいる。このようなオリゴヌクレオチドコンジュゲートの調製を教示する代表的な米国特許は上に挙げた通りである。典型的なコンジュゲーションのプロトコルでは、配列の1つ以上の位置にアミノリンカーを有するオリゴヌクレオチドを合成する。次いで、適当なカップリング試薬または活性化試薬を用いて、コンジュゲートする分子とアミノ基を反応させる。コンジュゲーション反応は、オリゴヌクレオチドを固体支持体に結合させたままで行っても、オリゴヌクレオチドを液相中へ切断した後に行ってもよい。通常、HPLCによりオリゴヌクレオチドコンジュゲートを精製して、純粋なコンジュゲートを得る。

RNAi剤のさらなる例は、参照により組み込まれる、米国特許出願公開第2007/0275465号、同第2007/0054279号、同第2006/0287260号、同第2006/0035254号、同第2006/0008822号に見ることができる。また、本明細書に記載のAARS標的化配列を発現することができるベクター送達システムも含まれる。siRNAまたはその他の二本鎖形成RNA干渉分子を発現するベクターが含まれる。

ベクター系または核酸構築物系は、ともに宿主細胞のゲノムに導入する全DNAを含む単一のベクターもしくはプラスミド、2つ以上のベクターもしくはプラスミド、またはトランスポゾンを含み得る。ベクターの選択は通常、ベクターと、ベクターを導入する宿主細胞との適合性によって決まる。本発明の場合には、ベクターまたは核酸構築物は、筋細胞のような哺乳動物細胞内で作動可能に機能的なベクターであることが好ましい。またベクターは、適当な形質転換体またはトランスフェクタントの選択または同定に使用することができる、抗生物質耐性もしくは薬物耐性遺伝子またはレポーター遺伝子(すなわち、緑色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)のような選択マーカーも含み得る。送達システムの例としては、当該技術分野で公知のものの中でも特にウイルスベクター系(例えば、ウイルスによる形質導入)が挙げられ、特に限定されるわけではないが、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)ベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターおよびヘルペスウイルスベクターがこれに含まれる。

XI.創薬 特定の実施形態は、通常は参照AARSポリペプチド、例えばAARSタンパク質フラグメントの1つ以上の非カノニカルな活性を調節する薬剤を同定するための、創薬におけるAARSポリペプチド、抗体またはポリヌクレオチドの使用に関する。例えば、特定の実施形態は、AARS参照ポリペプチドの1つ以上の「細胞結合パートナー」、例えばAARSポリペプチドと直接的にまたは物理的に相互作用する細胞タンパク質、脂質、核酸またはその他の宿主分子などの同定方法を含む。具体例としては、例えば、GPCRのような細胞表面受容体、タンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、およびそれらの細胞外または細胞内ドメインが挙げられる。

また、細胞結合パートナーと直接的または間接的に相互作用して、非カノニカルな活性におけるその役割を調節するか、または結合パートナーにより調節される分子を含めた、AARSポリペプチドの1つ以上の非カノニカルな活性に関与する宿主分子の同定方法も含まれる。このような宿主分子には、細胞結合パートナー/AARSタンパク質相互作用に関連した、通常は経路の約1、2、3、4、5個以上の同定可能な工程に関連する、非カノニカルな経路の上流および下流両方の成分が含まれる。

特定の態様は、AARSポリペプチドおよび/または1つ以上のその細胞結合パートナーと相互作用することなどにより、AARS参照ポリペプチドまたはその活性なバリアントの非カノニカルな活性を刺激するまたはこれに拮抗する化合物(例えば、ポリペプチド)またはその他の薬剤の同定方法を含む。また、AARSスプライスバリアントの発現(例えば、スプライシング)を調節する、または別の方法で内因性AARSタンパク質フラグメント(リセクチン(resectin))の産生をタンパク質レベルで制御するプロテアーゼの活性を調節する薬剤の同定方法も含まれる。

したがって、特定の実施形態は、AARS参照ポリペプチドの結合パートナーの同定方法を含み、この方法は、a)適当な条件下でAARSポリペプチドと生物試料とを混合すること、およびb)AARSポリペプチドと結合パートナーとの特異的結合を検出して、AARS参照ポリペプチドと特異的に結合する結合パートナーを同定することを含む。また、AARS参照ポリペプチドまたはAARSポリペプチドの結合パートナーと特異的に結合する化合物のスクリーニング方法も含まれ、この方法は、a)適当な条件下で、ポリペプチドまたは結合パートナーと少なくとも1つの試験化合物とを混合すること、およびb)ポリペプチドまたは結合パートナーと試験化合物との結合を検出して、ポリペプチドまたはその結合パートナーと特異的に結合する化合物を同定することを含む。特定の実施形態では、化合物はポリペプチドまたはペプチドである。特定の実施形態では、化合物は小分子またはその他の(例えば、非生物学的)化合物である。特定の実施形態では、化合物はペプチド模倣物である。

AARS参照ポリペプチド、1つ以上のその細胞結合パートナーまたはその両方と相互作用する細胞タンパク質を同定するために、タンパク質−タンパク質相互作用の検出に適した任意の方法を使用し得る。使用し得る従来の方法の例としては、主にAARSポリペプチドと相互作用する溶解物中のタンパク質を同定するための、細胞溶解物または細胞溶解物から得られたタンパク質の共免疫沈降、架橋、および勾配またはクロマトグラフ用カラムを用いた共精製が挙げられる。

これらのおよび関連する実施形態では、AARSポリペプチドまたはその結合パートナーと相互作用するタンパク質のアミノ酸配列の少なくとも一部分を、Edman分解法のような当業者に公知の技術を用いて確認することができる。例えば、Creighton Proteins:Structures and Molecular Principles,W.H.Freeman & Co.,N.Y.,pp.34 49,1983を参照されたい。得られたアミノ酸配列を、このようなタンパク質をコードする遺伝子配列のスクリーニングに使用できるオリゴヌクレオチド混合物の作製の指針として使用し得る。スクリーニングは、本明細書に記載のおよび当該技術分野で公知の、例えば標準的なハイブリダイゼーションまたはPCR技術により行い得る。オリゴヌクレオチド混合物の作製およびスクリーニングのための技術は公知である。例えば、Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.,1989;およびInnisら編,PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications Academic Press,Inc.,New York,1990を参照されたい。

さらに、結合パートナーまたはその他のポリペプチドをコードする遺伝子の同時同定に方法を使用し得る。これらの方法としては、例えば、公知の技術であるラムダ−gt11ライブラリーの抗体探索と同様の方法で、標識AARSタンパク質または別のポリペプチド、ペプチド、または融合タンパク質、例えばマーカー(例えば、酵素、蛍光、発光タンパク質または色素)またはIg−Fcドメインと融合したバリアントAARSポリペプチドまたはAARSドメインを用いた発現ライブラリーの探索が挙げられる。

単なる例示であって限定するためのものではないが、in vivoでのタンパク質相互作用を検出する方法の1つであるツーハイブリッド法を詳細に記載する。この系の1つの例が記載されており(Chienら,PNAS USA 88:9578 9582,1991)、Clontech(Palo Alto、Calif.)から購入できる。

簡潔に述べれば、このような系を用いて、2つのハイブリッドタンパク質をコードするプラスミドを構築し得る:一方のプラスミドは、AARS参照ヌクレオチド配列(または、特定の実施形態では、その結合パートナー)と融合した転写アクチベータータンパク質のDNA結合ドメインをコードするヌクレオチドまたはそのバリアントからなり、他方のプラスミドは、cDNAライブラリーの一部としてプラスミド内に組換えにより組み込まれた未知のタンパク質をコードするcDNA(またはcDNAの集団)と融合した、転写アクチベータータンパク質の活性化ドメインをコードするヌクレオチドからなる。DNA結合ドメイン融合プラスミドとアクチベーターcDNAライブラリーを、レポーター遺伝子(例えば、HBSまたはlacZ)を含み、そのレポーター遺伝子の調節領域が転写アクチベーターの結合部位を含む酵母株(Saccharomyces cerevisiae)内に形質転換する。DNA結合ドメインハイブリッドはその活性化機能を発揮しないため、また活性化ドメインハイブリッドはアクチベーターの結合部位に局在できないため、いずれのハイブリッドタンパク質も単独ではレポーター遺伝子の転写を活性化することができない。2つのハイブリッドタンパク質の相互作用により、機能的なアクチベータータンパク質が再構築されてレポーター遺伝子の発現が起こり、これがレポーター遺伝子産物のアッセイにより検出される。

ツーハイブリッド法およびその他のこのような方法論を用いて、「おとり」遺伝子産物と相互作用するタンパク質に関して活性化ドメインライブラリーをスクリーニングすることができる。限定するわけではないが、例として、AARS参照ポリペプチドまたはバリアントをおとり遺伝子産物として使用し得る。またAARS結合パートナーも「おとり」遺伝子産物として使用し得る。全ゲノムまたはcDNA配列を、活性化ドメインをコードするDNAと融合させる。このライブラリー、およびDNA結合ドメインと融合したおとりAARS遺伝子産物をコードするプラスミドをレポーター酵母内に同時形質転換し、得られた形質転換体を、レポーター遺伝子を発現するものに関してスクリーニングする。

おとりAARS遺伝子産物と相互作用するタンパク質を検出する細胞系のcDNAライブラリーを、当該技術分野において日常的に実施されている方法を用いて作製することができる。例えば、cDNAフラグメントを、それがGAL4の転写活性化ドメインと翻訳融合されるようにベクターに挿入することができる。このライブラリーを、GAL4活性化配列を含むプロモーターにより駆動されるlacZ遺伝子を含む酵母株内に、おとり遺伝子−GAL4融合プラスミドとともに同時形質転換することができる。GAL4転写活性化ドメインと融合したcDNAコードタンパク質で、おとり遺伝子産物と相互作用するものは、活性なGAL4タンパク質を再構築してHIS3遺伝子の発現を駆動する。HIS3を発現するコロニーは、ヒスチジンを欠く半固体寒天ベースの培地を含むペトリ皿でそれが増殖することにより検出することができる。次いで、cDNAをこれらの菌株から精製し、当該技術分野において日常的に実施されている技術を用いて、おとりAARS遺伝子と相互作用するタンパク質を産生および単離するために、これを使用することができる。

また、酵母内でのRNA−タンパク質相互作用の検出が可能なスリーハイブリッド系も含まれる。例えば、Hookら,RNA.11:227−233,2005を参照されたい。したがって、これらのおよび関連する方法を用いて、AARSポリペプチドの細胞結合パートナーを同定し、またAARSポリペプチド、細胞結合パートナーまたはその両方と相互作用するその他のタンパク質または核酸を同定することができる。

特定の実施形態は、インタラクトームスクリーニング法の使用に関する。具体例としては、タンパク質ドメインベースのスクリーニングが挙げられる(例えば、Boxemら,Cell.134:534−545,2008;およびYuら,Science.322:10−110,2008を参照されたい)。

上述のように、結合パートナーが一度単離されると、それを同定し、今度は標準的な技術とともに用いて、それが相互作用するタンパク質またはその他の化合物を同定することができる。したがって、特定の実施形態は、AARS参照ポリペプチドの結合パートナーと特異的に結合する化合物スクリーニングする方法に関するものであり、この方法は、a)適当な条件下で、結合パートナーと、少なくとも1つの試験化合物とを混合すること、およびb)結合パートナーと試験化合物との結合を検出して、結合パートナーと特異的に結合する化合物を同定することを含む。特定の実施形態では、試験化合物はポリペプチドである。特定の実施形態では、試験化合物は、小分子またはペプチド模倣物のような化合物である。

特定の実施形態は、AARS参照ポリペプチドの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法を含み、この方法は、a)ポリペプチドの活性が可能な条件下で、ポリペプチドと、少なくとも1つの試験化合物とを混合し、b)試験化合物の存在下でのポリペプチドの活性を評価し、およびc)試験化合物の存在下でのポリペプチドの活性と、試験化合物の非存在下でのポリペプチドの活性とを比較することを含み、ここでは、試験化合物の存在下でのポリペプチドの活性の変化が、ポリペプチドの活性を調節する化合物を示す。特定の実施形態は、AARS参照ポリペプチドの結合パートナーの活性を調節する化合物をスクリーニングする方法を含み、この方法は、a)結合パートナーの活性が可能な条件下で、ポリペプチドと、少なくとも1つの試験化合物とを混合し、b)試験化合物の存在下での結合パートナーの活性を評価し、およびc)試験化合物の存在下での結合パートナーの活性と、試験化合物の非存在下での結合パートナーの活性とを比較することを含み、ここでは、試験化合物の存在下での結合パートナーの活性の変化が、結合パートナーの活性を調節する化合物を示す。通常、これらのおよび関連する実施形態は、AARSポリペプチドまたはその結合パートナーに関連する、選択された非カノニカルな活性を評価することを含む。細胞培養条件のようなin vitroおよびin vivoの条件が含まれる。

特定の実施形態は、AARS参照ポリペプチドまたはその活性なフラグメントもしくはバリアントの完全アゴニストまたは部分アゴニストとして有効な化合物をスクリーニングする方法を含み、この方法は、a)ポリペプチドを含む試料を化合物に曝し、およびb)通常はAARSポリペプチドの非カノニカルな活性の増加を測定することにより、試料中のアゴニスト活性を検出することを含む。特定の方法は、a)AARSポリペプチドの結合パートナーを含む試料を化合物に曝し、およびb)通常はAARSポリペプチドの選択された非カノニカルな活性の増加を測定することにより、試料中のアゴニスト活性を検出することを含む。特定の実施形態は、この方法により同定されたアゴニストと、薬学的に許容される担体または添加剤とを含む組成物を含む。

また、AARS参照ポリペプチドの完全アンタゴニストまたは部分アンタゴニストとして有効な化合物をスクリーニングする方法も含まれ、この方法は、a)ポリペプチドを含む試料を化合物に曝し、およびb)通常はAARSポリペプチドの非カノニカルな活性の増加を測定することにより、試料中のアンタゴニスト活性を検出することを含む。特定の方法は、a)AARSポリペプチドの結合パートナーを含む試料を化合物に曝すこと、およびb)通常はAARSポリペプチドの選択された非カノニカルな活性の減少を測定することにより、試料中のアンタゴニスト活性を検出することを含む。特定の実施形態は、この方法により同定されたアンタゴニストと、薬学的に許容される担体または添加剤とを含む組成物を含む。

特定の実施形態では、AARS参照配列またはその結合パートナーと相互作用するかまたはそれを調節することができる化合物を同定するためのin vitro系を設計し得る。このような系により同定された特定の化合物は、経路の活性を調節すること、および経路の成分自体を変化させることに有用であり得る。またこれらを、経路の成分間の相互作用を崩壊させる、またはこのような相互作用を直接崩壊させ得る化合物を同定するためのスクリーニングに使用し得る。アプローチの1つの例では、AARSポリペプチドと試験化合物が相互作用し結合するのに十分な条件および時間の下で、この2つの反応混合物を調製することにより複合体を形成させ、この複合体を反応混合物から取り出す、および/または反応混合物中で検出することができる。

in vivoスクリーニングアッセイを各種の方法で行うことができる。例えば、AARSポリペプチド、細胞結合パートナーまたは試験化合物を固相に固定し得る。これらのおよび関連する実施形態では、反応終了時に、得られた複合体を固相上で捕捉し検出し得る。このような方法の1つの例では、AARSポリペプチドおよび/またはその結合パートナーを固体表面に固定し、また試験化合物は固定せずに直接的または間接的に標識して、固体表面の成分によるその捕捉を検出することができる。他の例では、試験化合物を固体表面に固定し、またAARSポリペプチドおよび/またはその結合パートナーは固定せず、標識するか、あるいは何らかの方法で検出可能にする。特定の実施形態では、マイクロタイタープレートを固相として使用することが好都合であり得る。固定された成分(または試験化合物)を非共有結合または共有結合により固定化し得る。非共有結合は単純に、タンパク質の溶液で固体表面をコーティングし乾燥させることで達成し得る。あるいは、固定化するタンパク質に特異的な固定化抗体、好ましくはモノクローナル抗体を用いて、タンパク質を固体表面に固定し得る。この表面を予め調製して保管し得る。

アッセイの一例を行うために、通常、固定された成分を含むコーティングされた表面に非固定化成分を加える。反応終了後に、形成された任意の特定の複合体が固体表面に固定化されて保たれる条件下で、未反応成分を除去する(例えば、洗浄により)。固体表面に固定された複合体の検出は、数多くの方法で行うことができる。例えば、これまでに固定化されなかった成分を予め標識する場合、表面に固定化された標識の検出が複合体の形成を示す。これまでに固定化されなかった成分を予め標識しない場合、間接的な標識を用いて、例えば、これまでに固定化されなかった成分に特異的な標識抗体を用いて(そして、標識した抗Ig抗体でこの抗体を直接的または間接的に標識し得る)、表面に固定された複合体を検出することができる。

あるいは、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)および指標としての共鳴角の変化を用いて、試験化合物の結合の有無を判定することができ、この場合、AARSポリペプチドまたは細胞結合パートナーを従来の方法に従って市販のセンサーチップ(例えば、Biacore(商標)社により製造されている)の表面に固定化し、これと試験化合物とを接触させ、センサーチップを特定の角度から特定の波長の光で照射する。また、AARSポリペプチドまたは細胞結合パートナーを質量分析器に適応可能なタンパク質チップの表面に固定化し、これと試験化合物とを接触させ、MALDI−MS、ESI−MS、FAB−MSなどのようなイオン化法を質量分析器(例えば、二重収束質量分析器、四極子質量分析器、飛行時間型質量分析器、フーリエ変換質量分析器、イオンサイクロトロン質量分析器など)と組み合わせる方法で、試験化合物に対応するピークの出現を検出することにより、試験化合物の結合を測定することもできる。

特定の実施形態では、細胞ベースのアッセイ、膜小胞ベースのアッセイまたは膜画分ベースのアッセイを用いて、選択されたAARSポリペプチドの非カノニカルな経路における相互作用を調節する化合物を同定することができる。この目的のために、AARSポリペプチドおよび/もしくは結合パートナーまたはこのようなタンパク質のドメインもしくはフラグメントを含む融合タンパク質(またはそれらの組合せ)を発現する細胞系、あるいはこのようなタンパク質または融合タンパク質を発現するように遺伝子操作された細胞系(例えば、COS細胞、CHO細胞、HEK293細胞、Hela細胞など)を使用することができる。非カノニカルな活性に影響を与える試験化合物を、対照または所定の量と比較したその活性の変化(例えば、統計的に有意な変化)をモニターすることにより、同定することができる。

アンチセンスおよびRNAi剤に関連する実施形態では、例えば、AARS参照ポリヌクレオチドの発現を変化させることに有効な化合物のスクリーニング方法も含まれ、この方法は、a)AARS参照ポリヌクレオチドを含む試料と、潜在的なアンチセンスオリゴヌクレオチドのような化合物とを接触させ、およびb)AARSポリヌクレオチドの発現の変化を検出することを含む。特定の非限定的な例では、これらのおよび関連する実施形態を、当該技術分野において日常的な技術に従って、細胞ベースのアッセイまたは無細胞翻訳アッセイで用いることができる。また、このような方法により同定されたアンチセンスおよびRNAi剤も含まれる。

また、AARSタンパク質フラグメントに対する抗体を、例えばAARSと特異的に結合する薬剤を同定するため、AARSタンパク質フラグメントと結合する薬剤の特異性もしくは親和性を確認するため、または薬剤とAARSタンパク質フラグメントの間での相互作用の部位を特定するためなどのスクリーニングアッセイで使用することもできる。抗体を薬剤の競合阻害剤として使用するアッセイが含まれる。例えば、既知の親和性でAARSタンパク質フラグメントと特異的に結合する抗体は、選択された薬剤の競合阻害剤として働き、これをAARSタンパク質フラグメントに対する薬剤の親和性を計算するために用いることができる。また、AARSタンパク質フラグメントの既知のエピトープまたは部位と特異的に結合する1つ以上の抗体を競合阻害剤として用いて、薬剤がその同じ部位で結合するか否かを確認することができる。他のバリエーションは当業者に明らかであろう。

またハイスループットスクリーニング(HTS)に適した、任意の上記方法または当該技術分野で公知のその他のスクリーニング方法も含まれる。HTSでは通常、候補化合物ライブラリーのアッセイ、例えば、本明細書に記載のような非カノニカルな活性の増加または減少を測定するアッセイのスクリーニングを実行するために、自動化を用いる。

本明細書に記載のいずれのスクリーニング方法でも、小分子ライブラリーまたはコンビナトリアル化学により作製されたライブラリーを使用し得る。真菌、細菌または藻類の抽出物のような化学的および/または生物学的混合物のライブラリーが当該技術分野で公知であり、本発明のアッセイのいずれでもスクリーニングすることができる。分子ライブラリーの合成方法の例は、Carellら,1994a;Carellら,1994b;Choら,1993;DeWittら,1993;Gallopら,1994;Zuckermannら,1994に見ることができる。

化合物のライブラリーは、溶液中(Houghtenら,1992)またはビーズ上(Lamら,1991)、チップ(Fodorら,1993)、細菌、胞子(Ladnerら,米国特許第5,223,409号,1993)、プラスミド(Cullら,1992)またはファージ(Cwirlaら,1990;Devlinら,1990;Feliciら,1991;Ladnerら,米国特許第5,223,409号,1993;ScottおよびSmith,1990)上に提供され得る。本発明の実施形態は、1つ以上のAARSタンパク質フラグメント、その細胞結合パートナーおよび/またはそれに関連する非カノニカルな活性の小分子調節物質を同定するための様々なライブラリーの使用を包含する。本発明の目的に有用なライブラリーとしては、(1)化学ライブラリー、(2)天然産物ライブラリーおよび(3)ランダムなペプチド、オリゴヌクレオチドおよび/または有機分子からなるコンビナトリアルライブラリーが挙げられるが、これらに限定されない。

化学ライブラリーは、既知の化合物または天然産物スクリーニングにより「ヒット」もしくは「リード」として同定された化合物の構造類似体からなる。天然産物ライブラリーは、スクリーニングのための混合物を作製するために使用する微生物、動物、植物または海洋生物の収集物から、(1)土壌、植物もしくは海洋微生物由来の培養液の発酵および抽出、または(2)植物もしくは海洋微生物の抽出により得られたものである。天然産物ライブラリーは、ポリケチド、非リボソームペプチドおよびそれらのバリアント(非天然)を含む。例えば、Caneら,Science 282:63−68,1998を参照されたい。コンビナトリアルライブラリーは、混合物としての多数のペプチド、オリゴヌクレオチドまたは有機化合物で構成され得る。これらは、従来の自動化された合成方法、PCR、クローニングまたは特許登録された方法により調製することが比較的容易である。

より具体的には、コンビナトリアル化学ライブラリーは、化学合成または生合成により、試薬のような多数の化学的「ビルディングブロック」を組み合わせて生成された、多様な化合物の集まりである。例えば、ポリペプチドライブラリーのような線形コンビナトリアル化学ライブラリーは、一組の化学的ビルディングブロック(アミノ酸)を、所与の化合物の長さ(すなわち、ポリペプチド化合物中のアミノ酸数)で可能なあらゆる方法で組み合わせることにより形成される。このような化学的ビルディングブロックのコンビナトリアルな混合により、無数の化合物を合成することができる。

コンビナトリアル化学およびそこから作製されるライブラリーの概説に関しては、例えば、Huc,I.およびNguyen,R.(2001)Comb.Chem.High Throughput Screen 4:53−74;Lepre,C A.(2001)Drug Discov.Today 6:133−140;Peng,S.X.(2000)Biomed.Chromatogr.14:430−441;Bohm,H.J.およびStahl,M.(2000)Curr.Opin.Chem.Biol.4:283−286;Barnes,CおよびBalasubramanian,S.(2000)Curr.Opin.Chem.Biol.4:346−350;Lepre,Enjalbal,C.ら,(2000)Mass Septrom Rev.19:139−161;Hall,D.G.,(2000)Nat.Biotechnol.18:262−262;Lazo,J.S.およびWipf,P.(2000)J.Pharmacol.Exp.Ther.293:705−709;Houghten,R.A.,(2000)Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.40:273−282;Kobayashi,S.(2000)Curr.Opin.Chem.Biol.(2000)4:338−345;Kopylov,A.M.およびSpiridonova,V.A.(2000)Mol.Biol.(Mosk)34:1097−1113;Weber,L.(2000)Curr.Opin.Chem.Biol.4:295−302;Dolle,R.E.(2000)J.Comb.Chem.2:383−433;Floyd,C D.ら,(1999)Prog.Med.Chem.36:91−168;Kundu,B.ら,(1999)Prog.Drug Res.53:89−156;Cabilly,S.(1999)Mol.Biotechnol.12:143−148;Lowe,G.(1999)Nat.Prod.Rep.16:641−651;Dolle,R.E.およびNelson,K.H.(1999)J.Comb.Chem.1:235−282;Czarnick,A.W.およびKeene,J.D.(1998)Curr.Biol.8:R705−R707;Dolle,R.E.(1998)Mol.Divers.4:233−256;Myers,P.L.,(1997)Curr.Opin.Biotechnol.8:701−707;ならびにPluckthun,A.およびCortese,R.(1997)Biol.Chem.378:443を参照されたい。

コンビナトリアルライブラリーを調製するための装置が市販されている(例えば、357MPS、390MPS、Advanced Chem Tech、Louisville Ky.、Symphony、Rainin、Woburn、Mass.、433A Applied Biosystems、Foster City、Calif.、9050Plus、Millipore、Bedford、Mass.を参照されたい)。さらに、コンビナトリアルライブラリー自体が多数市販されている(例えば、ComGenex、Princeton、N.J.、Asinex、Moscow、Ru、Tripos,Inc.、St.Louis、Mo.、ChemStar,Ltd.、Moscow、RU、3D Pharmaceuticals、Exton、Pa.、Martek Biosciences、Columbia、Md.などを参照されたい)。

XII.使用法 本発明の実施形態は、治療法を含む。したがって、AARSポリペプチド、AARSポリヌクレオチド、AARSポリヌクレオチドベースのベクター、AARS発現宿主細胞、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAi剤ならびに結合物質、例えばペプチド、抗体および抗原結合フラグメントなど、ペプチド模倣物ならびにその他の小分子を含めた本明細書に記載のAARS剤を用いて、参照AARSの非カノニカルな活性に関連した各種の非限定的な疾患または状態を治療することができる。このような非カノニカルな活性の例としては、細胞外シグナル伝達の調節、細胞増殖の調節、細胞遊走の調節、細胞分化の調節(例えば、造血、ニューロン新生、筋形成、骨形成および脂肪生成)、アポトーシスまたはその他の形態の細胞死の調節、血管新生の調節、細胞結合の調節、細胞代謝の調節、サイトカイン産生または活性の調節、サイトカイン受容体活性の調節、細胞内取込みまたは分泌の調節、免疫調節、炎症の調節、グルコース制御のような代謝過程の調節などが挙げられる。

アンチセンス療法およびRNAi干渉療法のようなポリヌクレオチドベースの治療法が含まれ、これらは通常、非カノニカルな活性の一因となる内因性のAARSフラグメントまたはAARSポリペプチドの細胞結合パートナーのような標的分子の発現減少に関連する。アンチセンスまたはRNAi療法は通常、AARS参照ポリペプチドの発現を減少させることなどにより、非カノニカルな活性に拮抗する。また、ポリペプチドもしくはペプチドベース、抗体もしくは抗原結合フラグメントベース、ペプチド模倣物ベースまたはその他の小分子ベースの治療法も含まれ、これらの治療法は、AARSポリペプチド、その細胞結合パートナーまたはその両方と直接相互作用することなどにより、AARS参照ポリペプチドの非カノニカルな活性を刺激するまたはそれに拮抗する。

これらのおよび関連する実施形態は、細胞、組織または対象を治療するために本発明のAARS剤または組成物を使用する方法を含む。本発明により治療または調節される細胞または組織は、好ましくは哺乳動物の細胞または組織、より好ましくはヒトの細胞または組織である。このような細胞または組織は、健常状態または疾患状態のものであり得る。

特定の実施形態では、例えば、特に限定されないが細胞代謝、細胞分化、細胞増殖、細胞内取込み、細胞分泌、細胞死、細胞動員、細胞遊走、遺伝子転写、mRNA翻訳、細胞インピーダンス、免疫応答、炎症性応答などを含めた、治療に関連する細胞活性を調節する方法が提供され、この方法は、細胞と、本明細書に記載のAARS剤または組成物とを接触させることを含む。特定の実施形態では、細胞は対象中にある。したがって、1つ以上のこのような活性の調節が有効であり得る実質的に任意の細胞または組織または対象の治療にAARS組成物を使用し得る。

またAARS剤および組成物を、例えば、腫瘍性疾患、免疫系疾患または状態(例えば、自己免疫疾患および炎症)、感染症、代謝疾患、神経細胞/神経疾患、筋/心血管疾患、造血異常に関連した疾患、筋形成異常に関連した疾患、ニューロン新生異常に関連した疾患、脂肪生成異常に関連した疾患、骨形成異常に関連した疾患、血管新生異常に関連した疾患、細胞生存の異常に関連した疾患、脂質取込み異常に関連した疾患、加齢に関連した疾患(例えば、聴力損失、末梢神経または自律神経障害、老人性認知症、網膜症)などの治療または予防と関連するものを含めた、任意の数多くの治療状況でも使用し得る。

例えば、特定の例示的な実施形態では、本発明のAARS組成物を用いて、例えば内皮細胞の増殖および/またはシグナル伝達の調節により、血管新生を調節し得る。内皮細胞の増殖および/またはシグナル伝達は、適当な細胞系(例えば、ヒト微小血管内皮肺細胞(HMVEC−L)およびヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC))を用いて、および適当なアッセイ(例えば、内皮細胞移動アッセイ、内皮細胞増殖アッセイ、管形成アッセイ、マトリゲルプラグアッセイなど)を用いてモニターされ得るが、これらの多くは、当該技術分野において公知で利用可能である。

したがって、関連する実施形態では、血管新生の調節が有効であり得る実質的に任意の細胞または組織または対象の治療に本発明の組成物を使用し得る。例えば、ある実施形態では、血管新生(例えば、血管新生状態)を経験しているまたは起こしやすい細胞または組織または対象と、適当な本発明の組成物とを接触させて、血管新生状態を抑制し得る。他の実施形態では、抗血管新生活性に干渉するおよび/または血管新生を促進するために、不十分な血管新生(例えば、抗血管新生状態)を経験しているまたは起こしやすい細胞または組織と、適当な本発明の組成物とを接触させ得る。

また、造血およびこれに関連する状態を調節する方法も含まれる。本発明のAARSポリペプチドにより調節され得る造血過程の例としては、骨髄性細胞(例えば、赤血球細胞、マスト細胞、単球/マクロファージ、骨髄性樹状細胞、顆粒球(例えば好塩基球、好中球および好酸球、巨核球、血小板など)およびリンパ性細胞(例えば、ナチュラルキラー細胞、リンパ性樹状細胞、B細胞およびT細胞)の形成が挙げられるが、これらに限定されない。特定の造血過程としては、赤血球生成、顆粒球生成、リンパ球生成、巨核球生成、 血小板生成などが挙げられる。また、造血幹細胞、前駆細胞、赤血球、顆粒球、リンパ球、巨核球および血小板を含めた造血細胞の輸送または動員を調節する方法も含まれる。

造血を調節する方法を、in vivo、in vitro、ex vivoまたはそれらの任意の組合せで実施し得る。これらの方法を、造血幹細胞、造血前駆細胞、または造血系統に沿って分化することが可能な他の幹細胞もしくは前駆細胞(例えば、脂肪組織由来の幹細胞)を含有する任意の生物試料、細胞培養または組織に対して実施することができる。in vitroおよびex vivoの方法では、本明細書に記載のおよび当該技術分野で公知の技術および特徴に従って、造血系起源か否かに関係なく、幹細胞および前駆細胞を単離および/または同定することができる。

また本発明の組成物は、自己免疫性および/または炎症性の疾患、状態および障害を直接的または間接的に仲介する細胞を調節することによる抗炎症性または炎症誘発性の適応症の治療のための免疫調節剤としても有効であり得る。本発明の組成物の免疫調節剤または炎症調節剤としての有用性は、例えば、移動アッセイ(例えば、白血球またはリンパ球を用いるもの)または細胞生存アッセイ(例えば、B細胞、T細胞、単球またはNK細胞を用いるもの)を含めた、当該技術分野において公知で利用可能な多数の技術のいずれかを用いてモニターすることができる。

「炎症」は一般に、病原体、損傷細胞(例えば、創傷)および刺激物質のような有害刺激に対する組織の生物学的応答を指す。「炎症性応答」という用語は、炎症が生じ調節される特定の機序を指し、単なる例として、本明細書に記載のおよび当該技術分野で公知のものの中で特に、キニン放出、線維素溶解および凝固を含めた免疫細胞の活性化または移動、サイトカイン産生、血管拡張がこれに含まれる。

慢性炎症の臨床兆候は、疾病の持続期間、炎症性病変、原因および罹患している解剖学的領域によって決まる(例えば、Kumarら,Robbins Basic Pathology−第8版,2009 Elsevier,London;Miller,LM,Pathology Lecture Notes,Atlantic Veterinary College,Charlottetown,PEI,Canadaを参照されたい)。慢性炎症は、例えば、本明細書に記載のおよび当該技術分野で公知のものの中でも特にアレルギー、アルツハイマー病、貧血、大動脈弁狭窄症、関節炎(例えば関節リウマチおよび変形性関節症など)、癌、うっ血性心不全、線維筋痛症、線維症、心臓発作、腎不全、狼瘡、膵炎、脳卒中、外科合併症、炎症性肺疾患、炎症性腸疾患、アテローム性動脈硬化症、神経障害、糖尿病、代謝障害、肥満症および乾癬を含めた各種病的状態または疾患に関連する。したがって、慢性炎症を治療もしくは管理する、任意の1つ以上の個々の慢性炎症性応答を調節する、または慢性炎症に関連した任意の1つ以上の疾患もしくは状態を治療するためにAARS組成物を使用し得る。

例えば認められている臨床基準に従って改善を判定することにより、鑑別診断を行う、また監視治療を行う、例えば治療過程において治療有効量が投与されたか否かを決定するなどの目的を含めた、炎症性およびその他の状態の兆候および症状を評価するための基準は当業者に明らかであり、例えば、Berkowら編,The Merck Manual,第16版,Merck and Co.,Rahway,N.J.,1992;Goodmanら編,Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,第10版,Pergamon Press,Inc.,Elmsford,N.Y.,(2001);Avery’s Drug Treatment:Principles and Practice of Clinical Pharmacology and Therapeutics,第3版,ADIS Press,Ltd.,WilliamsおよびWilkins,Baltimore,MD.(1987);Ebadi,Pharmacology,Little,Brown and Co.,Boston,(1985);Osolciら編,Remington’s Pharmaceutical,第18版,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990);Katzung,Basic and Clinical Pharmacology,Appleton and Lange,Norwalk,CT(1992)の教示により例示されている。

他の実施形態では、細胞の増殖および/または生存を調節するために、したがって、細胞の増殖および/または生存の異常を特徴とする疾患、障害または状態を治療するために本発明のAARS組成物を使用し得る。例えば、特定の実施形態では、アポトーシスを調節する、および/または異常なアポトーシスに関連した疾患または状態を治療するためにAARS組成物を使用し得る。アポトーシスを、例えばDNA断片化、膜非対称性の変化、アポトーシス性カスパーゼの活性化および/またはシトクロームCおよびAIFの放出を測定するアッセイを含めた、当該技術分野において公知で利用可能な数多くの利用可能な技術によりモニターすることができる。

また本発明の実施形態は、親アミノアシルtRNA合成酵素の変異、不適切な細胞内関係、過剰発現および/または細胞内分布に関連した疾患を治療および予防する方法も含む(例えば、Parkら,PNAS USA.105:11043−11049,2008を参照されたい)。

アミノアシルtRNA合成酵素の変異に関連した疾患の例としては、例えば、グリシルtRNA合成酵素およびチロシルtRNA合成酵素の変異により生じるシャルコー・マリー・トゥース病およびV型遠位型脊髄性筋萎縮症;システイニルtRNA合成酵素の変異に関連した糖尿病性腎症(Pezzolesiら,Diabetes 58:1403−1410,2009を参照されたい);ならびにミトコンドリアアスパルチルtRNA合成酵素の変異に関連した白質脳症が挙げられる。アミノアシルtRNA合成酵素の不適切な細胞内関係に関連した疾患の例としては、例えば、リジルtRNA合成酵素とスーパーオキシドジスムターゼ1の間の相互作用に関連した筋萎縮性側索硬化症(Banksら,PLOSone 4(7)e6218:1−12,2009)が挙げられる。tRNA合成酵素の過剰発現により生じる、またはそれに関連した疾患の例としては、例えば、癌の発達および進行における様々なアミノアシルtRNA合成酵素、例えばメチオニル、システイニル、イソロイシル、グルタミル−プロリル、フェニルアラニル、グリシル、リジル、チロシルおよびトリプトファニルtRNA合成酵素などの関連が挙げられる(例えば、Kushnerら,Proc.Soc.Exp.Biol.Med.153 273−276,1976;Waseniusら,Clin.Cancer.Res.9:68−75,2003;Scandurroら,Int.J.Oncol.19:129−135,2001;およびParkら,PNAS USA 105: 11043−11049,2008を参照されたい)。

したがって特定の実施形態では、本発明は、好ましいタンパク質安定性および凝集性、ならびに原核発現系において高レベルで発現および産生される能力を示す可溶性AARSタンパク質フラグメントを提供し、これを疾患に関連した親tRNA合成酵素の活性を補完または抑制するために使用することができる。

したがって、本発明は、アミノアシルtRNA合成酵素に関連した疾患の治療および予防にこのようなAARSタンパク質フラグメントを使用するための治療法も含む。いかなる特定の作用理論にも拘束されるわけではないが、このようなAARSタンパク質フラグメントは、変異体アミノアシルtRNA合成酵素の喪失機能を補完する、コンホメーション、剛性の変化を抑制する、変異体AARSの二量化状態を変化させる、および/または野生型もしくは変異体AARSと不適切に相互作用し得る第二の分子に対するおとりとして働くように作用し得ると考えられる。

特定の実施形態では、このような治療法は、表1〜3または表4〜6または表7〜9の1つ以上のグリシルAARSタンパク質フラグメントを、グリシルtRNA合成酵素の変異、不適切な細胞内関係、過剰発現および/または細胞内分布を特徴とする疾患を有するか、またはそれが発達する危険性のある対象に投与することを含む。

特定の実施形態では、このようなAARSタンパク質フラグメントを用いて、同様に親アミノアシルtRNA合成酵素に関連した疾患表現型を抑制するように作用し得る新規な潜在性エピトープに対する抗体および結合物質を開発することを可能にする、抗体または結合物質を開発し得る。したがって、特定の実施形態は、表1〜3または表4〜6または表7〜9のグリシルAARSポリペプチドに対する1つ以上の抗体または結合物質を、グリシルtRNA合成酵素の変異、不適切な細胞内関係、過剰発現および/または細胞内分布を特徴とする疾患を有するか、またはそれが発達する危険性のある対象に投与することを含む。

本発明のAARSポリペプチドまたはその他の化合物により治療することができる、グリシルtRNA合成酵素の変異に関連した疾患の特定の例としては、例えば、本明細書に記載のおよび当該技術分野で公知のものの中でも特に、2D型シャルコー・マリー・トゥース病(CMT2D)およびV型遠位型脊髄性筋萎縮症(dSMA−V)のような、遠位型脊髄性筋萎縮症(dSMA)および遠位型遺伝性運動ニューロパチー(dHMN)が挙げられる。例えば、Sivakamurら,Brain.128:2304−2314,2005;およびAntonellisら,Am.J.Hum.Genet.72:1293−1299,2003を参照されたい。

遠位型脊髄性筋萎縮症(dSMA)、およびCMTのような遠位型遺伝性運動ニューロパチー(dHMN)は、末梢神経(すなわち、脳および脊髄の外にある神経)を冒す遺伝性障害のグループの代表的なものである。これらの疾患は、例えば、各種過程の中でも特に、進行性の前角細胞変性により生じる、四肢遠位部における緩徐進行性の筋衰弱および筋萎縮により特徴付けられ得る。1型CMT(CMT1)は、例えばシュワン細胞の変性により引き起こされる、末梢運動性および感覚性の脱髄性ニューロパチーであり、2型CMT(CMT2)は通常、原発性の軸索変性を特徴とする。CMT2は多くの場合、遠位筋萎縮、複合運動活動電位の低下および/または感覚神経活動電位の低下、ならびに正常なまたは軽度に低下した運動神経伝導速度を特徴とする。

またCMT疾患は、シャルコー・マリー・トゥース病、シャルコー・マリー・トゥースニューロパチー、遺伝性運動感覚ニューロパチー(HMSN)、V型遺伝性運動ニューロパチー(dHMN−V)、遺伝性感覚運動ニューロパチー(HSMN)および腓骨筋萎縮症としても知られている。現在不治であるこの疾患ファミリーは、最もよく見られる遺伝性神経障害の1つであり、2500人に1人が罹患していると推定される(例えば、Krajewskiら,Brain.123:1516−27,2000;およびSkre,Clin.Genet.6:98−118,1974を参照されたい)。

特定の実施形態では、本発明は、GlyRSの1つ以上の変異を特徴とするCMT1もしくはCMT2(CMT2Dを含む)のようなCMT疾患またはdSMA−Vを有するか、またはそれが発達する危険性のある対象を治療する方法を含み、この方法は、その疾患の1つ以上の症状を治療するまたはその発達の危険性を低減する、表1〜3もしくは表4〜6もしくは表7〜9の1つ以上のグリシルAARSタンパク質フラグメント、または表1〜3もしくは表4〜6もしくは表7〜9の任意のグリシルAARSタンパク質フラグメントに対する抗体もしくは結合物質を投与する工程を含む。特定の実施形態では、治療する対象は特定のGlyRS変異を有する。特定の疾患関連GlyRS変異の例としては、例えば、ヒトGlyRSのA57V、E71G、L129P、C157R、P234KY、G240R、P244L、I280F、H418R、D500N、G526R、S581LおよびG598Aが挙げられる。例えば、Nangleら,PNAS USA.104:11239−11244,2007;Parkら,PNAS USA.105:11043−11049,2008を参照されたい。

上記特徴に加え、CMTのような神経疾患の臨床症状の例としては、足変形(足のアーチが非常に高い)、下垂足(足を水平に保つことができない)、下腿筋肉の喪失、腓腹が痩せる、足または脚部の痺れ感、「はたき」歩行(足で地面を強くはたくような歩行)、および臀部、脚部または足の衰弱が非限定的に挙げられる。これらの症状は、小児期中期から成人初期の間に現れることが多い。後に、例えば鉤爪様の手変形を含めた同様の症状が、腕および手に現れる場合がある。また、進行性の歩行不能、進行性の衰弱および感覚の低下した身体部位の損傷のような合併症も挙げられる。特定の症状の1つは神経伝導速度の低下である。したがって、本明細書に記載のGlyRSポリペプチド、抗体、結合物質およびその他の化合物は、CMT1およびCMT2(CMT2Dを含む)のようなCMT疾患を含めたdSMAおよびdHMNのような神経疾患のこれらの特徴、症状または合併症のいずれか1つ以上を低減または改善し得る。

CMTのような神経疾患を、当該技術分野において日常的な技術に従って診断することができる。例えば、身体検査を用いて、例えば足を上げてつま先を前に出す動きが困難である、脚の伸展反射が見られない、足または脚部筋肉のコントロール喪失また萎縮(筋肉の減少)、脚部皮下の神経束の肥厚などの兆候を観察し得る。筋生検および/または神経生検を用いて診断を確定する場合もあり、また神経伝導検査を用いて、異なる形態の疾患の違いを区別することができる。

特定の実施形態では、対象は、GlyRSの過剰発現を特徴とする癌を有するか、またはそれが発達する危険性のあり、治療法は、癌を治療または縮小する、または癌の発達の危険性を低減する、および/または癌の再発を低減する、表1〜3もしくは表4〜6もしくは表7〜9の1つ以上のグリシルAARSタンパク質フラグメント、または表1〜3もしくは表4〜6もしくは表7〜9の任意のグリシルAARSタンパク質フラグメントに対する抗体もしくは結合物質を投与する段階を含む。特定の実施形態では、癌は、甲状腺癌および肝臓癌から選択される。

これらのおよびその他の治療法(例えば、ex vivo療法)の進行を、従来の方法およびアッセイにより、または医師もしくは当業者に公知の基準に基づいてモニターすることができる。

XIII.医薬製剤、投与およびキット 本発明の実施形態は、単独でまたは1つ以上の他の様式の治療法と組み合わせて細胞または動物に投与するために、薬学的に許容されるまたは生理的に許容される溶液中で製剤化された、本明細書に記載のAARSポリヌクレオチド、AARSポリペプチド、AARSポリペプチドを発現する宿主細胞、結合物質、調節物質またはその他の化合物を含む。また、必要に応じて、本発明の組成物を他の薬剤、例えば、他のタンパク質もしくはポリペプチドまたは様々な薬学的に活性な薬剤と併用して投与し得ることも理解されるであろう。組成物中に同様に含まれ得る他の成分は、達成が望まれる調節その他の作用に追加の薬剤が悪影響を及ぼさない限り、実質的に限定されない。

本発明の医薬組成物では、薬学的に許容される添加剤および担体溶液の製剤は当業者に公知であり、また、例えば経口、非経口、静脈内、鼻腔内、皮下および筋肉内投与ならびに製剤化を含めた各種治療レジメンにおける本明細書に記載の特定の組成物の使用に適した用量および治療レジメンの開発も同様である。

特定の適用では、本発明の医薬組成物または治療用組成物は、免疫反応を刺激しない。他の実施形態では、通常1つ以上のAARSポリペプチドもしくはポリヌクレオチドを含む本発明の医薬組成物または治療用組成物は、ワクチンもしくは関連組成物中でアジュバントとして働くこと、または免疫応答を刺激する別個のアジュバントもしくは薬剤とともに組成物中に存在することなどにより、免疫反応を刺激する。

特定の実施形態では、AARSポリペプチド、AARSポリヌクレオチドおよび抗体のようなAARS剤は、静脈内投与のような特定の投与様式に望ましい溶解度を有する。望ましい溶解度の例としては、少なくとも約1mg/ml、少なくとも約10mg/ml、少なくとも約25mg/mlおよび少なくとも約50mg/mlが挙げられる。

特定の適用では、本明細書に開示される医薬組成物を経口投与により対象に送達し得る。したがって、これらの組成物を不活性希釈剤または吸収可能な食用担体で製剤化しても、硬殻ゼラチンまたは軟殻ゼラチンカプセルに封入しても、圧縮して錠剤にしても、食事療法の食物に直接組み込んでもよい。

特定の状況では、本明細書に開示される医薬組成物を、例えば、米国特許第5,543,158号;同第5,641,515号および同第5,399,363号(それぞれ具体的にその内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、非経口的に、皮下に、静脈内に、筋肉内に、動脈内に、髄腔内に、実質内に、大槽内に、脳室内に、尿道内に、胸骨内に、頭蓋内に、滑液嚢内にまたは腹腔内に送達することが望ましいであろう。非経口投与に適した装置としては、有針(顕微針を含む)注射器、無針注射器および注入技術が挙げられる。

遊離の塩基または薬学的に許容される塩としての活性化合物の液剤を、ヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤と適当に混合して水で調製し得る。また、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物ならびに油で分散液剤も調製し得る。通常の保管および使用条件下において、これらの製剤は微生物の増殖を防ぐための保存剤を含有する。

注射用途に適した医薬形態としては、無菌注射用液剤または分散液剤の即時調製のための無菌液剤または分散液剤および無菌粉末剤が挙げられる(具体的にその内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,466,468号)。あらゆる場合において、医薬形態は、無菌であるべきであり、かつ容易に注射可能である程度に流動性であるべきである。医薬形態は、製造および保管条件下で安定であるべきであり、かつ細菌および真菌のような微生物の汚染活動から保護されるべきである。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、適当なそれらの混合物および/または植物油を含有する、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング剤の使用、分散液剤の場合は必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用により維持され得る。様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどにより、微生物の活動の防止を容易にすることができる。多くの場合、等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅延させる物質を組成物中に使用することによりもたらすことができる。

水溶液での非経口投与では、例えば、溶液を必要に応じて適切に緩衝するべきであり、また液体希釈剤を最初に十分な生理食塩水およびグルコースで等張にするべきである。これらの特定の水溶液は、特に静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内への投与に適している。これに関連して、使用可能な無菌水性媒体は、当業者が本開示を踏まえればわかるであろう。例えば、1用量を1mlの等張NaCl溶液に溶かし、1000mlの皮下注入液に加えるか、または意図する注入部位に注射し得る(例えば、Remington’s Pharmaceutical,第15版,pp.1035−1038および1570−1580を参照されたい)。治療する対象の状態に応じて、多少の用量の変動が必然的に生じるであろう。いずれにせよ、投与に関与する者が個々の対象に適した用量を決定することになる。さらに、ヒトへの投与に関しては、製剤は、FDA生物系審査部の基準により必要とされる無菌性、発熱原性ならびに一般的な安全性および純度の基準を満たすべきである。

無菌注射用液剤は、必要量の活性化合物を、必要に応じて上で列挙した他の様々な成分と共に適当な溶媒中に組み入れ、次いでろ過滅菌することにより調製することができる。一般に分散液剤は、滅菌した様々な有効成分を、基礎分散媒と上で列挙した成分のうち必要な他の成分とを含有する無菌溶剤中に組み入れることにより調製される。無菌注射用液剤の調製のための無菌粉末剤の場合、望ましい調製法は真空乾燥および凍結乾燥技術であり、これらの技術では、予め滅菌ろ過した任意の追加の所望成分の溶液に由来するその成分が有効成分に加わった粉末が得られる。

本明細書に開示される組成物を、中性または塩の形態で製剤化し得る。薬学的に許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ酸基で形成されている)、および無機酸(例えば、塩酸またはリン酸)または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸で形成されている塩が挙げられる。またカルボキシル基で形成されている塩を、無機塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化鉄から、またイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基から得ることもできる。製剤では、液剤を製剤に適合する様式で、治療的に有効な量で投与する。製剤は、注射用液剤、薬物放出カプセル剤などの各種剤形で容易に投与される。

本明細書で使用される「担体」は、あらゆる溶媒、分散媒、溶剤、コーティング剤、希釈剤、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤、緩衝剤、担体溶液、懸濁剤、コロイドなどを包含する。薬学的に活性な物質に対するこのような媒質および薬剤の使用は、当該技術分野で公知である。任意の従来の媒質または薬剤が有効成分に適合しない場合を除き、その治療用組成物での使用が企図される。また補助的な有効成分も組成物中に組み入れることができる。

「薬学的に許容される」という語句は、ヒトに投与した場合にアレルギー反応または同様の有害な反応を生じない分子的実体および組成物を指す。有効成分としてタンパク質を含有する水性組成物の調製は、当該技術分野において十分に理解されている。通常このような組成物は、液体の溶液または懸濁液の注射溶剤として調製されるが、注射前に液体となる液剤または懸濁剤も調製することができる。また製剤を乳化することもできる。

特定の実施形態では、医薬組成物を鼻腔内スプレー、吸入および/またはその他のエアロゾル送達媒体により送達し得る。遺伝子、ポリヌクレオチドおよびペプチド組成物を経鼻エアロゾルスプレーにより肺に直接送達する方法が、例えば、米国特許第5,756,353号および同第5,804,212号(それぞれ、具体的にその内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。同様に、鼻腔内微粒子樹脂(Takenagaら,1998)およびリゾホスファチジルグリセロール化合物(具体的にその内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,725,871号)を用いた薬物の送達も製薬業界において公知である。同様に、ポリテトラフルオロエチレン支持マトリックス形態での経粘膜薬物送達が米国特許第5,780,045号(具体的にその内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。

医薬組成物を即放性および/または徐放性になるように製剤化し得る。徐放組成物は、遅延された、修正された、パルス状の、制御された、標的化された、およびプログラムされた放出を含む。したがって、組成物を、AARSポリヌクレオチド、AARSポリペプチド、結合物質、調節物質およびその他の活性薬剤の徐放をもたらす埋込みデポ剤として投与するための、懸濁液としてまたは固体、半固体もしくはチキソトロピック液として製剤化し得る。このような製剤の例としては、薬物充填ポリ(DL−乳酸−co−グリコール酸)(PGLA)、ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)(PLG)またはポリ(ラクチド)(PLA)ラメラ小胞または微粒子を含む薬物コーティングステントならびに半固体剤および懸濁剤、ヒドロゲル(Hoffman AS:Ann.N.Y.Acad.Sci.944:62−73(2001))、Flamel Technologies社により開発されMEDUSA(登録商標)の商標名で販売されているポリアミノ酸ナノ粒子システム、Atrix社により開発されATRIGEL(登録商標)の商標名で販売されている非水性ゲルシステム、Durect社により開発されSABER(登録商標)の商標名で販売されているショ糖酢酸イソ酪酸エステル徐放製剤、ならびにSkyePharma社により開発されDEPOFOAM(登録商標)の商標名で販売されている脂質ベースのシステムが非限定的に挙げられる。

所望の用量の医薬組成物を長時間にわたり送達することができる徐放装置が当該技術分野で公知である。例えば、米国特許第5,034,229号;同第5,557,318号;同第5,110,596号;同第5,728,396号;同第5,985,305号;同第6,113,938号;同第6,156,331号;同第6,375,978号;および同第6,395,292号は、所望の速度で長時間(すなわち、2週間から1年以上までの範囲の期間)にわたり液剤または懸濁剤のような活性薬剤の製剤を送達することができる、浸透圧駆動型の装置を教示している。他の徐放装置の例としては、有効物質の製剤の一定流量、調節可能な流量またはプログラム可能な流量が得られる、Medtronic社から入手可能なSYNCHROMED INFUSION SYSTEM(登録商標)の商標名で販売されている髄腔内ポンプを含めた調節型のポンプ、CODMAN(登録商標)division pumpの商標名で販売されているJohnson and Johnson社のシステム、およびINSET(登録商標)technologiesポンプが挙げられる。装置のさらなる例が米国特許第6,283,949号;同第5,976,109号;同第5,836,935号;および同第5,511,355号に記載されている。

特定の実施形態では、本発明の組成物を適当な宿主細胞に導入するためのリポソーム、ナノカプセル、微粒子、マイクロスフィア、脂質粒子、小胞などの使用により送達が生じ得る。特に、本発明の組成物を、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフェア、ナノ粒子などに封入して送達用に製剤化し得る。このような送達媒体の製剤化および使用は、既知の従来の技術を用いて行うことができる。

特定の実施形態では、本明細書に記載の薬剤を、ポリマーおよびマトリックスのような生体適合性生分解性基質を含めた薬学的に許容される固体基質に結合させ得る。このような固体基質の例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とγ−エチル−L−グルタマートのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー(例えばポリ(乳酸−co−グリコール酸)(PLGA)およびLUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーと酢酸リュープロリドとからなる注射用マイクロスフィア)など)、ポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸、コラーゲン、金属、ヒドロキシアパタイト、バイオガラス、アルミン酸、バイオセラミック材料および精製タンパク質が非限定的に挙げられる。

1つの特定の実施形態では、固体基質は、ATRIGEL(商標)(QLT,Inc.、Vancouver、B.C.)の商標名で販売されている生分解性ポリマーを含む。ATRIGEL(登録商標)薬物送達システムは、生体適合性の担体に溶解させた生分解性ポリマーからなる。この液体送達システムに医薬品を製造時に混ぜ合わせるか、製品によっては、後で医師が使用時に医薬品を加えることができる。液体の製品を小ゲージの針で皮下の間隙に注入するか、または到達可能な組織部位にカニューレで注入する場合、組織液中の水がポリマーを沈殿させて、固体埋植物中に薬物を捕捉させる。次いで、時間とともにポリマーマトリックスが分解されるにつれて、埋植物内に封入されている薬物が制御されて放出される。

また本発明で使用する医薬組成物を、皮膚または粘膜へ局所的に、皮膚(皮内)にまたは経皮的に投与し得る。この目的のための典型的な製剤としては、ゲル剤、ヒドロゲル剤、ローション剤、液剤、クリーム剤、軟膏剤、粉剤、包帯剤、泡状剤、フィルム剤、皮膚パッチ、カシェ剤、埋植剤、スポンジ剤、ファイバー剤、包帯およびマイクロエマルション剤が挙げられる。またリポソームも使用し得る。典型的な担体としては、アルコール、水、鉱油、液体ワセリン、白ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールが挙げられる。浸透促進剤も加え得る。例えば、FinninおよびMorgan:J.Pharm.Sci.88(10):955−958,(1999)を参照されたい。局所投与のその他の手段としては、エレクトロポレーション、イオントフォレシス、フォノフォレシス、ソノフォレシスおよびマイクロニードルまたは、例えばPOWDERJECT(商標)およびBIOJECT(商標)の商標名で販売されているシステムを用いた無針注射による送達が挙げられる。

製剤化の方法は当該技術分野において公知であり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,第20版,ISBN:0683306472(2000)に開示されている。本明細書に記載の組成物および薬剤を、任意の治療上有効な投与レジメンで、本発明の方法に従って投与し得る。投与の量および頻度を選択して、有害作用を伴わない薬剤の有効レベルを設定する。本発明の化合物の有効量は、投与経路、治療する温血動物の種類および考慮する特定の温血動物の身体的特性によって決まる。これらの因子およびその有効量決定との関係は、医療分野の当業者に公知である。有効量および投与方法は、最適な効果を得るために調整することができるが、体重、食事、併用する薬剤および医療分野の当業者が認めるその他の因子によって決まる。

特定の実施形態では、投与する組成物または薬剤の量は一般に、約0.1〜約100mg/(kg・日)の範囲であり、経口投与または静脈内投与の場合は通常、約0.1〜10mg/kgである。特定の実施形態では、用量は5mg/kgまたは7.5mg/kgである。様々な実施形態において、用量は、1日当たり約50〜2500mg、100〜2500mg/日、300〜1800mg/日または500〜1800mg/日である。一実施形態では、用量は約100〜600mg/日の間である。別の実施形態では、用量は約300〜1200mg/日の間である。特定の実施形態では、組成物または薬剤の投与を、100mg/日、240mg/日、300mg/日、600mg/日、1000mg/日、1200mg/日または1800mg/日の用量で、1日当たり1回以上の投与で行う(すなわち、用量の合計が所望の1日用量に達する場合)。関連する実施形態では、用量は、100mgを1日2回、150mgを1日2回、240mgを1日2回、300mgを1日2回、500mgを1日2回または600mgを1日2回である。様々な実施形態において、組成物または薬剤を単回投与または反復投与で投与する。初回用量とそれに続く用量は同じであっても異なっていてもよい。

特定の実施形態では、組成物または薬剤を、0.1〜10mg/kgまたは0.5〜5mg/kgの1回用量で投与する。他の実施形態では、組成物または薬剤を、0.1〜50mg/(kg・日)、0.5〜20mg/(kg・日)または5〜20mg/(kg・日)の用量で投与する。

特定の実施形態では、組成物または薬剤を、例えば約10分〜90分の時間にわたる注入により、例えば経口または静脈内投与する。他の関連する実施形態では、組成物または薬剤を、例えば、約0.1〜約10mg/(kg・時)の用量で一定の時間にわたり、持続注入により投与する。時間の長さは様々であり得るが、特定の実施形態では、時間の長さは約10分〜約24時間の間、または約10分〜約3日間の間であり得る。

特定の実施形態では、有効量または治療有効量は、対象の血漿中の組成物または薬剤の総濃度が、約0.1μg/ml〜約20μg/mlの間または約0.3μg/ml〜約20μg/mlの間のCmaxに達するのに十分な量である。特定の実施形態では、経口用量は、約0.1μg/ml〜約5μg/mlの間または約0.3μg/ml〜約3μg/mlの間の血漿中濃度(Cmax)に達するのに十分な量である。特定の実施形態では、静脈内用量は、約1μg/ml〜約10μg/mlの間または約2μg/ml〜約6μg/mlの間の血漿中濃度(Cmax)に達するのに十分な量である。関連する実施形態では、対象の血漿中の薬剤の総濃度は、平均トラフ濃度が約20μg/ml未満および/または定常状態濃度が約20μg/ml未満である。さらなる実施形態では、対象の血漿中の薬剤の総濃度は、平均トラフ濃度が約10μg/ml未満および/または定常状態濃度が約10μg/ml未満である。

さらに別の実施形態では、対象の血漿中の薬剤の総濃度は、平均トラフ濃度が約1ng/ml〜約10μg/mlの間および/または定常状態濃度が約1ng/ml〜約10μg/mlの間である。一実施形態では、対象の血漿中の薬剤の総濃度は、平均トラフ濃度が約0.3μg/ml〜約3μg/mlの間および/または定常状態濃度が約0.3μg/ml〜約3μg/mlの間である。

特定の実施形態では、哺乳動物において、平均トラフ濃度が約1ng/ml〜約10μg/mlの間および/または定常状態濃度が約1ng/ml〜約10μg/mlの間である血漿中濃度を達成するのに十分な量で、組成物または薬剤を投与する。関連する実施形態では、哺乳動物の血漿中の薬剤の総濃度は、平均トラフ濃度が約0.3μg/ml〜約3μg/mlの間および/または定常状態濃度が約0.3μg/ml〜約3μg/mlの間である。

本発明の特定の実施形態では、組成物もしくは薬剤の有効量、または組成物もしくは薬剤の血漿中濃度が、例えば、少なくとも15分、少なくとも30分、少なくとも45分、少なくとも60分、少なくとも90分、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも8時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも4か月、少なくとも6か月、少なくとも1年、少なくとも2年、または2年超で達成されるか、またはこの間維持される。

特定のポリペプチドベースの実施形態では、投与するポリペプチドの量は通常、患者の体重当たりで約0.1μg/kg〜約0.1mg/kg〜約50mg/kgの範囲である。疾患のタイプおよび重症度によっては、例えば1回以上の分割投与であっても、持続注入であっても、体重あたりで約0.1μg/kg〜約0.1mg/kg〜約50mg/kg(例えば、約0.1〜15mg/(kg・用量))のポリペプチドが患者への初回投与量の候補となり得る。例えば、投与レジメンは、約4mg/kg初回負荷量、次いで約2mg/kgすなわち負荷量の約半分の週1回維持量のポリペプチドの投与を含み得る。しかし、他の投与レジメンも有効であり得る。典型的な1日用量は、上記因子に応じて、約0.1μg/kg〜約1μg/kg〜100mg/kg以上の範囲であり得る。数日以上にわたる反復投与では、状況に応じて、疾患症状の所望の抑制が見られるまで治療を持続する。

特定の実施形態では、効果的な用量により、本明細書に記載の組成物または薬剤の血漿レベルまたは平均トラフ濃度が達成される。これらは日常的な手順を用いて容易に決定され得る。

他の態様では、本発明の実施形態は、本明細書に記載されている本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、抗体、多ユニットの複合体、その組成物などを1つ以上充填した容器を1つ以上含むキットを提供する。キットは、このような組成物の使用方法(例えば、細胞シグナル伝達,血管新生,癌,炎症性状態、診断を調節するための)に関する取扱説明書を含み得る。

また本明細書のキットは、治療する適応症または所望の診断的適用に適するもしくは望まれる、1つ以上の追加の治療剤またはその他の成分も含み得る。追加の治療剤は、必要に応じて第二の容器に収納され得る。追加の治療剤の例としては、抗腫瘍剤、抗炎症剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、血管新生剤などが挙げられるが、これらに限定されない。

また本明細書のキットは、意図する様式の送達(例えば、ステント、埋植用デポ剤など)を容易にするために必要なまたは望まれるシリンジまたはその他の構成要素を1つ以上含み得る。

本明細書で引用される刊行物、特許出願および発行済み特許はすべて、個々の刊行物、特許出願または発行済み特許が、それぞれ具体的かつ個別に参照により組み込まれることが明示されたものとして、参照により本明細書に組み込まれる。

明確な理解を目的として、説明および例示により上記発明がいくらか詳細に記載されているが、本発明の教示を踏まえた当業者には、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲を逸脱することなく、特定の変更および修正をこれに施し得ることが容易わかるであろう。以下の実施例は、限定するためではなく、単に説明するために記載されるものである。当業者は、変更または修正を加えても実質的に同様の結果が得られる各種の重要ではないパラメータを容易に認識するであろう。

XIV.実施例 一般的方法 下の実施例において別途明記されない限り、下の実施例に記載されているAARSポリペプチドの作製および特徴付けを行うために、以下の遺伝子最適化、小規模および大規模なタンパク質発現、タンパク質精製、転写プロファイリングおよびスクリーニングの一般的な方法を用いた。

遺伝子の合成および発現ベクター中へのクローニング エピトープタグ化した型のAARSポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を、以下に挙げる方法を用いてコドン最適化し、細菌発現ベクター中にクローニングした。

方法(1)では、各AARSポリペプチドをコードする大腸菌(E.coli)コドン最適化したDNA(Welchら,PLoS ONE 4(9):e7007 doi:10.1371/journal.pone.0007002)をDNA2.0(Menlo Park、CA)により合成し、ヒスチジンタグ6個とV5エピトープタグの両方を含むエピトープタグと結合したN末端またはC末端を含む、2つの型の各AARSポリペプチドを合成する。

5’から3’に向かってリボソーム結合部位(rbs(以下の下線部))、NdeI制限部位、6個のヒスチジンタグおよびV5エピトープタグをコードする5’伸長(AGGAGGTAAAACATATGCATCATCATCATCATCACGGTAAGCCTATCCCTAACCCTTTGCTCGGTCTCGATTCTACG)(配列番号1)を、予測されるAARSポリペプチドオープンリーディングフレームとインフレームで融合して、N末端タグ化AARSポリペプチドをコードするDNAを合成する。予測される天然の開始メチオニン(ATG)残基をAARSポリペプチドが含む場合、または予測されるAARSポリペプチドの最初のアミノ酸残基がMetである場合は、これを削除した。予測されるAARSポリペプチドオープンリーディングフレームの最後の部分に、2つの停止コドンおよび1つのXhoI部位(TAATGACTCGAG)(配列番号2)を付加する。

rbs(以下の下線部)およびNdeI制限部位をコードし、予測されるAARSポリペプチドの天然の開始コドンを繰り返すか、または予測されるAARSポリペプチドオープンリーディングフレームとインフレームでATGが挿入されている5’伸長(AGGAGATAAAACATATG)(配列番号3)を用いて、C末端タグ化AARSポリペプチドをコードするDNAを合成する。異なる実施形態では、リボソーム結合部位は配列「AGGAGGTAAAACAT」(配列番号4)、「AGGAGATAAAACAT」(配列番号5)またはGAAGGAGATATACAT(配列番号6)を含み得る。予測されるAARSポリペプチドオープンリーディングフレームの3’末端において、5’から3’へ向かって順番にV5エピトープタグ、6個のヒスチジンタグ、2つの停止コドンおよび1つのXhoI部位をコードする3’伸長(GGTAAGCCTATCCCTAACCCTCTCCTCGGTCTCGATTCTACGCACCACCATCATCACCATTAATGACTCGAG)(配列番号7)を合成し、予測されるAARSポリペプチドオープンリーディングフレームとインフレームで融合する。AARSポリペプチドが予測される天然の停止コドンを含む場合は、これを削除した。

AARSポリペプチドをコードする合成DNA配列をpJExpress411ベクター(DNA2.0)中にサブクローニングする。配列決定して正確な生成物の合成を確認した後、発現ベクターを、以下でより詳細に記載するように、タンパク質合成用の細菌中に形質転換する。

方法(2)では、各AARSポリペプチドをコードする大腸菌(E.coli)コドン最適化DNA(Ermolaeva MD(2001)Curr.Iss.Mol.Biol.3(4)91−7)を、GENEWIZ(South Plainfield、NJ)により合成する。次のクローニングのために、固有の制限部位を含む短い5’および3’伸長により、AARSポリペプチドをコードする各ポリヌクレオチド配列を合成した。

具体的には、予測されるオープンリーディングフレームの5’末端にBamHI制限部位を挿入した。予測される天然の開始メチオニン残基(ATG)をAARSポリペプチドが含む場合、または予測されるAARSポリペプチドの最初のアミノ酸残基がMetである場合には、これを削除した。さらに、予測されるオープンリーディングフレームの3’末端にXhoI制限部位を挿入した。AARSポリペプチドが予測される天然の停止コドンを含む場合は、これを削除した。

制限消化後、得られたDNA配列を、ヒスチジン6個とV5エピトープタグとを含むエピトープタグと結合したN末端(pET24b_N−6×His/V5)またはC末端(pET24b_C−V5/6×His)を含む改変pET−24bベクター(EMD、Gibbstown、NJ)中にサブクローニングする(GENEWIZ(South Plainfield、NJ)によるベクター改変)。

制限消化とクローニングの後、N−タグ化AARSポリペプチドをコードするDNAは、ヒスチジン6個とV5エピトープタグとをコードする5’DNA配列(CATATGCATCATCATCATCATCACGGTAAGCCTATCCCTAACCCTCTCCTCGGTCTCGATTCTACGGGATCC)(配列番号8)を含むN−タグ化ベクター(pET24b_N−6×His/V5)中に、NdeI制限部位内に組み込まれた開始コドン(ATG)とインフレームでクローニングされる。この5’伸長は、短い2アミノ酸リンカー(GS)を介して、予測されるAARSポリペプチドオープンリーディングフレームと融合する。

N−タグ化AARSポリペプチドをコードするDNAは、予測されるオープンリーディングフレームの3’末端に、2アミノ酸伸長(LE)とそれに続く2つの終止コドンをコードするDNA配列(CTCGAGTAATGA)(配列番号9)を含む。

制限消化とクローニングの後、C−タグ化ベクター(pET24b_C−V5/6×His)中にクローニングされた、C−タグ化AARSポリペプチドをコードするDNAは、NdeI制限部位内に組み込まれた開始コドン(ATG)をコードする5’配列(CATATGGGATCC)(配列番号10)を含み、この配列は、短い2アミノ酸リンカー(GS)を介して、予測されるAARSポリペプチドオープンリーディングフレームと融合している。

C−タグ化AARSポリペプチドをコードするDNAは、予測されるオープンリーディングフレームの3’末端に、短いリンカー2アミノ酸リンカー(LE)、次いでV5エピトープタグ、次いで6個のヒスチジンおよび2つの停止コドンをコードする3’DNA配列(CTCGAGGGTAAGCCTATCCCTAACCCTCTCCTCGGTCTCGATTCTACGCACCACCACCACCACCACTAATGA)(配列番号11)を含む。

AARSポリペプチドの発現、精製および生物物理学的特徴付け 必要なタンパク質の量に応じて、6×Hisタグ化AARSポリペプチドを中程度のスループットの形式で細菌内で、および/またはより大規模のフラスコ培養で発現させる。以下に記載のように、また特定の実験に関して明記されているように、アフィニティークロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーを用いてAARSポリペプチドを精製する。

細菌培養:各AARSポリペプチド(上記)をコードするコドン最適化DNAを含む100ngの発現ベクターを、PCRプレートでBL21(DE3)(EMD chemicals、カタログ番号69450)コンピテント大腸菌(E.coli)中に42℃で30秒間、形質転換する。またC41(DE3)(Lucigen、カタログ番号60442)、HMS174(DE3)(EMD chemicals、カタログ番号69453)および and Origami2(DE3)(EMD chemicals、カタログ番号71345)菌株も評価する。プレートを氷上に2分間置き、100μLのSOC培地を加え、次いで37℃で1時間インキュベートする。カナマイシン(100μg/mL)を添加した5mLの自己誘導培地(EMD chemicals、カタログ番号71491)を、24ウェルブロック(Qiagen、カタログ番号19583)の各ウェルに加える。形質転換反応物を個々のウェルに加え、ブロックを粘着フィルム(VWR、カタログ番号60941−078)で密閉し、37℃の振盪器中、250rpmで一晩インキュベートする。低温(25℃)条件を用いる場合、代わりにインキュベーションを48時間行う。

より大きな規模での発現では、カナマイシン(100μg/mL)を添加した200mLの自己誘導培地を、ベントキャップ付きの500mLのErlenmeyerフラスコ(Corning、カタログ番号431401)に加える。形質転換反応物を個々のフラスコに加え、37℃の振盪器中、250rpmで30時間インキュベートする。1Lの規模では、自己誘導培地の代わりにTB培地(BD Biosciences、カタログ番号243820)を使用し、培養物が0.6〜1のOD600に達したときに4時間の誘導(0.5mM IPTG)を開始する。

タンパク質単離:培養物が定常期(典型的な3〜6のOD600)に達した後、ブロックを3600×gで10分間、遠心分離する。培地を慎重に吸引し、ブロックを−80℃または−20℃で10分間、凍結させる。次いで、ブロックを室温で解凍し、1mLの溶解緩衝液(200μLのlysonase(EMD chemicals、カタログ番号71370)を加えたBugbuster100mLおよびプロテアーゼ阻害剤「complete mini EDTA−free」(Roche、カタログ番号11 836 170 001))を各ウェルに加える。塊が見えなくなるまでピペッティングを繰り返してペレットを再懸濁させ、エッペンドルフチューブに移し、次いで、振盪器で10〜20分間、室温でインキュベートする。4℃、16,000gで10分間遠心分離した後、溶解物をNi−NTA Superflow 96 BioRobot Kit(Qiagen、カタログ番号969261)に備えられたTurboFilter96プレートに加え、500gで5〜10分間遠心分離する。

より大きな規模での発現では、定常期の培養物を500mLのボトルに移し、6,000gで10分間、遠心分離する。培地をデカントし、さらなる処理までペレットを−80℃または−20℃で保管する。次いで、ペレットを室温で解凍し、20mLの溶解緩衝液を各ボトルに加える。塊が見えなくなるまでピペッティングを繰り返してペレットを再懸濁させ、次いで、振盪器で20分間、室温でインキュベートする。4℃、10,000gで30分間遠心分離した後、溶解物をきれいなチューブまたはボトルに移す。移す際に微量の残渣が混入した場合、試料を再び遠心分離するか、または0.45μm酢酸セルロース膜(Corning、カタログ番号430314)に通してさらに清澄化する。1Lの規模では、溶解緩衝液の代わりに14,000psi(約97,000kPa)での顕微溶液化(Microfluidics、カタログ番号110L)を用いる。

アフィニティー精製:Ni−NTA Superflow 96 BioRobot Kitに備えられたQIAFilter96プレートに200μLのNi−NTA Superflowスラリーを入れ、600μLの結合緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、500mM塩化ナトリウムおよび10mMイミダゾール、pH7.5)を加えてレジンを平衡化する。緩衝液がすべてレジンを通過するまで−15in.Hg(約−5.1×104Pa)の真空をかける。次いで、前工程の清澄化した細胞溶解物をQIAFilter(登録商標)96プレートに加え、5分間結合させる。試料がすべてレジンを通過するまで、約5分間、−3in.Hg(約−1.0×104Pa)の真空をかける。次いで、レジンを1mLの結合緩衝液で洗浄した後、0.1%のTritonX−100を含有する1mLの結合緩衝液で2回洗浄する。次いで、TritonX−100を含まない1mLの結合緩衝液でレジンを10回洗浄する。結合した6×His−タグ化AARSポリペプチドを450μLの溶出緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、500mM塩化ナトリウムおよび500mMイミダゾール、pH7.5)で溶出させ、4℃で保管する。

より大きな規模での発現では、空の使い捨てカラム「ポリ−Prep」(Bio−Rad、カタログ番号731−1550)に1mLのNi−NTA Superflowスラリー(Qiagen、カタログ番号30450)を加え、5mLの結合緩衝液の添加によりレジン0.5mLを平衡化する。次いで、前工程の清澄化した細胞溶解物をカラムに負荷し、重力により通過させる。最初にレジンを、0.1%のTritonX−100を加えた結合緩衝液50mLで洗浄し、次いでTritonX−100を含まない結合緩衝液50mLで洗浄する。結合した6×His−タグ化AARSポリペプチドを2mLの溶出緩衝液で溶出させ、4℃で保管する。

脱塩および仕上げ工程:分子質量が10kDaを超えるAARSポリペプチドでは、AcroPrep96フィルタープレート(Pall、カタログ番号5034)のOmega 10K膜を20μLの1×PBSで洗浄し、液体がすべて通過するまでプレートを真空マニホールド(>10in Hg(約3.4×104Pa))に置く。前工程の溶出液(Ni−NTA)を各ウェルに分配し、液体がすべて通過するまで真空をかける。溶出液の全体積(450μL)が処理されるまで、これらの工程を繰り返す。各ウェルに180μLの1×PBS(pH7.4)を加え、慎重に10回上下にピペッティングしてAARSポリペプチドを回収してから、きれいなブロックに移す。1ウェル当たり総体積が360μLになるまでこの工程を繰り返し、ブロックを4℃で保管する。分子質量が10kDa未満のAARSポリペプチドでは、Ni−NTAの溶出物をUltracel−3膜を備えたAmicon Ultra−15 Centrifugal Filter Unit(Millipore、カタログ番号UFC900308)に入れ、次いで10mLの1×PBSを加えて、体積が360μL未満になるまで3,600gで10〜30分間遠心分離する。試料を回収し、最終体積360μLになるまで1×PBSを加える。

エンドトキシンを除去するために、Mustang Q膜を備えたAcroPrep Advanceフィルタープレート(Pall、カタログ番号8171)を300μLの1×PBSで洗浄し、1,000gで5分間遠心分離して緩衝液を除去する。脱塩されたAARSポリペプチド(360μL/ウェル)をフィルタープレートに加え、振盪器で5〜10分間インキュベートする。次いで、プレートを1,000gで5〜10分間遠心分離し、AARSポリペプチドを含有する通過画分を収集して4℃で保管する。

これより規模の大きな発現では、Ni−NTAの溶出物を、AARSポリペプチドの分子量に応じてUltracel−3またはUltracel−10膜を備えたAmicon Ultra−15 Centrifugal Filter Unit(Millipore、カタログ番号UFC900308またはUFC901008)に入れて、体積が250μLに減少するまで3,600gで10〜30分間遠心分離する。試料を10mLの1×PBS(pH7.4)中で混合し、3,600gで10〜30分間、体積が約250μLになるまで再び遠心分離する。この工程をもう一度繰り返し、上清を回収して、最終体積1.5mLになるまで1×PBSを加える。1Lの規模では、ろ過を用いる代わりに、Ni−NTA溶出物を1×PBSに対して一晩透析する。

エンドトキシンを除去するために、Sartobind Q5強陰イオンイオン交換体膜(Sartorius、カタログ番号Q5F)に1mLの1×PBSを流し、プラスチックシリンジを用いてAARSポリペプチドに徐々に膜を通過させる。AARSポリペプチドを含有する通過画分を96−ディープウェルブロックに収集して密閉し、4℃で保管する。

細菌内で発現されて封入体に存在する6×His−タグ化AARSポリペプチドを、以下に記載のように、アフィニティークロマトグラフィーおよび一連のリフォールディング工程を用いて精製する。

細菌培養:各AARSポリペプチドをコードする100ngのプラスミドを、PCRプレートでBL21(DE3)(EMD chemicals、カタログ番号69450)またはC41(DE3)(Lucigen、カタログ番号60442)コンピテント大腸菌(E.coli)中に42℃で30秒間、形質転換する。プレートを氷上に2分間置き、100μLのSOC培地を加え、次いで37℃で1時間インキュベートする。カナマイシン(100μg/mL)を添加した5mLの自己誘導培地(EMD chemicals、カタログ番号71491)を、24ウェルブロック(Qiagen、カタログ番号19583)の各ウェルに加える。形質転換反応物を個々のウェルに加え、ブロックを粘着フィルム(VWR、カタログ番号60941−078)で密閉し、37℃の振盪器中、250rpmで一晩インキュベートする。

より大きな規模での発現では、カナマイシン(100μg/mL)を添加した200mLの自己誘導培地を、ベントキャップ付きの500mLのErlenmeyerフラスコ(Corning、カタログ番号431401)に加える。形質転換反応物を個々のフラスコに加え、37℃の振盪器中、250rpmで30時間インキュベートする。1Lの規模では、自己誘導培地の代わりにTB培地(BD Biosciences、カタログ番号243820)を使用し、培養物が0.6〜1のOD600に達したときに4時間の誘導(0.5mM IPTG)を開始する。

単離:培養物が定常期(典型的な3〜6のOD600)に達した後、ブロックを3600×gで10分間、遠心分離する。培地を慎重に吸引し、ブロックを−80℃または−20℃で10分間、凍結させる。次いで、ブロックを室温で解凍し、1mLの溶解緩衝液(200μLのlysonase(EMD chemicals、カタログ番号71370)を加えたBugbuster100mLおよびプロテアーゼ阻害剤「complete mini EDTA−free」(Roche、カタログ番号11836170001))を各ウェルに加える。塊が見えなくなるまでピペッティングを繰り返してペレットを再懸濁させ、エッペンドルフチューブに移し、次いで、振盪器で10〜20分間、室温でインキュベートする。4℃、16,000gで10分間遠心分離した後、可溶性の溶解物を棄て、封入体を変性結合緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、500mM塩化ナトリウム、6M塩酸グアニジン、10mMイミダゾール、pH7.5)中で十分に再懸濁させる。試料を16,000gで10分間遠心分離し、上清をNi−NTA Superflow 96 BioRobot Kit(Qiagen、カタログ番号969261)に備えられたTurboFilter96プレートに加えてから、500gで5〜10分間遠心分離する。ろ液をきれいな96ウェルブロック(Greiner、カタログ番号780286)に収集する。

より大きな規模での発現では、定常期の培養物を500mLのボトルに移し、6,000gで10分間、遠心分離する。培地をデカントし、さらなる処理までペレットを−80℃または−20℃で保管する。次いで、ペレットを室温で解凍し、20mLの溶解緩衝液を各ボトルに加える。塊が見えなくなるまでピペッティングを繰り返してペレットを再懸濁させ、次いで、振盪器で20分間、室温でインキュベートする。4℃、10,000gで30分間遠心分離した後、可溶性の溶解物を棄て、不溶性の封入体を変性結合緩衝液中で十分に再懸濁させる。1Lの規模では、溶解緩衝液の代わりに14,000psi(約97,000kPa)での顕微溶液化(Microfluidics、カタログ番号110L)を用いる。封入体の再懸濁後、10,000gで30分間の遠心分離工程を追加し、次いで、0.45μmのPES膜(VWR、カタログ番号87006)でろ過する。

アフィニティー精製:Ni−NTA Superflow 96 BioRobot Kitに備えられたQIAFilter96プレートに200μLのNi−NTA Superflowスラリーを入れ、600μLの変性結合緩衝液(上記参照)を加えてレジンを平衡化する。緩衝液がすべてレジンを通過するまで−15in.Hg(約−5.1×104Pa)の真空をかける。次いで、前工程の清澄化した細胞溶解物をQIAFilter(登録商標)96プレートに加え、5分間結合させる。試料がすべてレジンを通過するまで、約5分間、3インチ水銀(約1.0×104Pa)の真空をかける。次いで、レジンを1mLの変性結合緩衝液で洗浄した後、0.1%のTritonX−100を含有する1mLの変性結合緩衝液で5回洗浄する。次いで、TritonX−100を含まない1mLの変性結合緩衝液でレジンを15回洗浄する。結合した6×His−タグ化AARSポリペプチドを450μLの変性溶出緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、500mM塩化ナトリウム、6M塩酸グアニジンおよび500mMイミダゾール、pH7.5)で溶出させ、4℃で保管する。

より大きな規模での発現では、空の使い捨てカラム「ポリ−Prep」(Bio−Rad、カタログ番号731−1550)に1mLのNi−NTA Superflowスラリー(Qiagen、カタログ番号30450)を加え、5mLの変性結合緩衝液(上記参照)の添加によりレジン0.5mLを平衡化する。次いで、前工程の変性封入体をカラムに負荷し、重力により通過させる。最初にレジンを、0.1%のTritonX−100を加えた変性結合緩衝液50mLで洗浄し、次いでTritonX−100を含まない変性結合緩衝液50mLで洗浄する。結合した6×His−タグ化AARSポリペプチドを2mLの変性溶出緩衝液で溶出させ、4℃で保管する。

リフォールディング:10kDaを超えるAARSポリペプチドでは、AcroPrep96フィルタープレート(Pall、カタログ番号5034)のOmega 10K膜を20μLの1×PBSで洗浄し、液体がすべて通過するまでプレートを真空マニホールド(>10in.Hg(約3.4×104Pa))に置く。前工程の溶出液(Ni−NTA)を各ウェルに分配し、液体がすべて通過するまで真空をかける。溶出液の全体積(450μL)が処理されるまで、これらの工程を繰り返す。各ウェルに200μLのリフォールディング緩衝液(50mM Tris、250mM塩化ナトリウム、10mM塩化カリウム、2mM塩化マグネシウム、2mM塩化カルシウム、400mMスクロース、500mMアルギニン、1mM DTTおよび0.01%ポリソルベート80を含有、pH7.4)を加え、慎重に10回上下にピペッティングしてAARSポリペプチドを回収してから、きれいなブロックに移す。1ウェル当たり総体積が400μLになるまでこの工程を繰り返し、ブロックを4℃で一晩、振盪器に置く。10kDa未満のAARSポリペプチドでは、Ni−NTAの溶出物をUltracel−3膜を備えたAmicon Ultra−15 Centrifugal Filter Unit(Millipore、カタログ番号UFC900308)に入れ、次いで10mLのリフォールディング緩衝液を加えて、体積が400μL未満になるまで3,600gで10〜30分間遠心分離する。試料を回収し、最終体積400μLになるまでさらにリフォールディング緩衝液を加える。試料を96ウェルブロックに移し、フィルムで密閉し、4℃で一晩、振盪器に置く。

より大きな規模での発現では、Ni−NTAの溶出物を、Ultracel−3またはUltracel−10膜を備えたAmicon Ultra−15 Centrifugal Filter Unit(Millipore、AARSポリペプチドの分子量に応じてカタログ番号UFC900308またはUFC901008)に入れて、体積が約500μLに減少するまで3,600gで10〜30分間遠心分離する。pIが7を超えるAARSポリペプチドでは、試料を以下の緩衝液で20倍に希釈する:50mM酢酸ナトリウム、10mM塩化ナトリウム、0.4mM塩化カリウム、1mM EDTA、400mMスクロース、500mMアルギニン、1mM DTTおよび0.01%ポリソルベート80、pH6.0。pIが7未満のAARSポリペプチドでは、試料を以下の緩衝液で20倍に希釈する:50mM Tris、250mM塩化ナトリウム、10mM塩化カリウム、2mM塩化マグネシウム、2mM塩化カルシウム、400mMスクロース、500mMアルギニン、1mM DTTおよび0.01%ポリソルベート80、pH8.0。試料を4℃で一晩、振盪器でインキュベートする。

脱塩および仕上げ工程:一晩のインキュベーション後、96ウェルブロックを3,600gで遠心分離して、可能性のあるあらゆる凝集物を除去する。次いで、上清に対して1×PBS(Invitrogen、カタログ番号10010)による緩衝液交換を行う。10kDaを超えるAARSポリペプチドでは、AcroPrep96フィルタープレートのOmega 10K膜を20μLの1×PBSで洗浄し、液体がすべて通過するまでプレートを真空マニホールド(>10in.Hg(約3.4×104Pa))に置く。リフォールディング緩衝液中の試料を各ウェルに分配し、液体がすべて通過するまで真空をかける。溶出液の全体積(400μL)が処理されるまで、これらの工程を繰り返す。各ウェルに180μLの1×PBS(pH7.4)を加え、慎重に10回上下にピペッティングしてAARSポリペプチドを回収してから、きれいなブロックに移す。1ウェル当たり総体積が360μLになるまでこの工程を繰り返し、ブロックを4℃で保管する。10kDa未満のAARSポリペプチドでは、リフォールディング試料を、Ultracel−3膜を備えたAmicon Ultra−15 Centrifugal Filter Unit(Millipore、カタログ番号UFC900308)に入れ、次いで10mLの1×PBSを加えて、体積が360μL未満になるまで3,600gで10〜30分間遠心分離する。試料を回収し、最終体積360μLになるまで1×PBSを加える。

エンドトキシンを除去するために、Mustang Q膜を備えたAcroPrep Advanceフィルタープレート(Pall、カタログ番号8171)を300μLの1×PBSで洗浄し、1,000gで5分間遠心分離して緩衝液を除去する。AARSポリペプチド(360μL/ウェル)をフィルタープレートに加え、振盪器で5〜10分間インキュベートする。次いでプレートを1,000gで5〜10分間遠心分離し、AARSポリペプチドを含有する通過画分を収集して、4℃で保管する。

より大きな規模での培養では、一晩のインキュベーション後に、リフォールディング試料を10,000gで10分間遠心分離して、あらゆる不溶性凝集体を除去する。上清をAmicon Ultra−15 Centrifugal Filter Unitに入れ、体積が250μLに減少するまで3,600gで遠心分離する。試料を10mLの1×PBS中で混合し、体積が約250μLになるまで10〜30分間、3,600gで再び遠心分離する。1×PBSのpHを、リフォールディング緩衝液のpHに合わせてpH6.0またはpH8.0に調整するということに留意する。この工程をもう一度繰り返し、上清を回収して、最終体積1.5mLになるまで1×PBSを加える。1Lの規模では、ろ過を用いる代わりに、リフォールディング試料を1×PBSに対して一晩透析するする。

エンドトキシンを除去するために、Sartobind Q5強陰イオンイオン交換体膜(Sartorius、カタログ番号Q5F)に1mLの1×PBSを流し、プラスチックシリンジを用いてAARSポリペプチドに徐々に膜を通過させる。AARSポリペプチドを含有する通過画分を96−ディープウェルブロックに収集して密閉し、4℃で保管する。

生物物理学的特徴付け:すべての精製AARSポリペプチドをSDS−PAGEにより解析し、その濃度をA280および算出吸光係数(ExPASyサーバ上のProtParam)に基づいて決定する。製造者の使用説明書に従って、QCL−1000 Endpoint Chromogenic LALアッセイ(Lonza、カタログ番号50−648U)によりエンドトキシンレベルを測定する。

動的光散乱法:Wyatt Technology DynaPro99機器および温度調節器(20℃)を実験前に15分間温めた後、Dynamicsソフトウェアを機器に接続する。複数の収集に対して収集時間を10秒間に設定し、レーザー出力を100%に設定する。石英セルを脱イオン水とメタノールで十分に洗浄した後、タンパク質試料(PBS中約1mg/mL濃度で15μL)を加える。セルを軽くたたいて気泡を除去してから、セルを曇った側を左にしてホルダに挿入する。強度が高すぎる場合(スクリーン上に警告メッセージが表示される)、強度が正常範囲に減少するまで試料をPBSでさらに希釈する。収集されるデータには、流体力学的半径、多分散度、予測平均分子量、強度の百分率および質量の百分率が含まれる。

サイズ排除クロマトグラフィー:タンパク質試料を約5〜10mg/mLの濃度までPBSで希釈してから、General Electric AKTA FPLCの100μLのサンプルループに添加する。分離にはSuperdex200 10/300 GLサイズ排除カラム(General Electric、カタログ番号17−5175−01)を使用する。最初にカラムを1.5カラム体積(CV)の1×PBS緩衝液で平衡化した後、試料を注入する。280nmでの吸光度をモニターしながら、カラムに1CVの1×PBS緩衝液(定組成流)を流す。ピーク面積の総和を出し、ソフトウェアにより百分率を計算する。溶出体積を用いて、ゲルろ過校正キット(General Electric、カタログ番号28−4038−41および28−4038−42)による比較に基づく分子量を推定する。

高濃度保管時のタンパク質回収率:Amicon Ultra−15フィルターユニット(Millipore、分子量に応じてカタログ番号UFC901024またはUFC900324)を用いて10mg/mL以上に濃縮したAARSポリペプチド10μLを、きれいな微小遠心管に移す。試料を室温で1週間保管した後、16,000gで10分間遠心分離して、あらゆる沈殿物をペレット化する。Bradfordタンパク質アッセイにより上清の濃度を決定して、室温に1週間曝す前に測定した濃度と比較する。回収率を開始濃度の百分率で表す。

LC−MSによるAARSポリペプチドの特徴付け:精製AARSポリペプチド(1mg/mL)を0.1%ギ酸で1:10に希釈し、0.6μgのタンパク質をDionexオートサンプラーを用いてC4キャピラリーカラムに負荷する。150mmの溶融シリカチュービング(OD:0.36mm、ID:0.1mm、Polymicro Technologies、カタログ番号2000023)を切断してキャピラリーカラムを調製する。キャピラリーの一端をSuter Instrument Laser Fiber Pullerで引っ張り、溶融シリカカッターで切って5μmの先端部を作る。圧力ボンベを用いて、キャピラリーに75mmの長さまでC4レジンを詰める(5μm、300Å、Michrom、カタログ番号PM5/64300/00)。Dionex Ultimate3000 HPLCシステムと接続したThermoFisher LTQ イオントラップ質量分析器でLC−MS解析を行う。0.9μL/分の流速で、0.1%ギ酸中5〜70%のアセトニトリルの勾配を35分間用いて、分析物をカラムから溶出させる。スプレー電圧2.5kVのMSフルスキャンモード(300〜2,000m/z)でLTQを作動させる。

データの収集および解析:LTQ XL質量分析器で稼動するXCaliburにより作成されたRAWファイルに、生の質量分析データを保存する。クロマトグラフ上の主要ピークのMSスペクトルをThermoFisherデコンボリューションアルゴリズムProMassによりさらに解析して、AARSポリペプチド分子量を得る。

AARSポリペプチドの機能解析 転写プロファイリング 背景および治療的関連:従来の標的同定技術に加え、AARSポリペプチドの作用機序の解明に役立つ重要なアプローチとしてゲノムツールが近年見られるようになり、創薬の初期において治療的関連の直接的な洞察を得ることができる。潜在的な治療的有用性の理解を容易にするために、初代ヒト細胞型をAARSポリペプチドとともに培養し、AARSポリペプチドとのインキュベーション後の2つの異なる時点で、転写プリファイリングを評価する。

転写プロファイリング用に選択された細胞型は、対象となる細胞の万能性および直接的な治療効果のあるAARSポリペプチドの同定の可能性に基づくものである。例えば、間葉系幹細胞(MSC)は、特定の刺激に曝されると、骨形成系列、脂肪生成系列、軟骨形成系列、心筋系列また神経系列へ分化することができるため、AARSポリペプチドの広範囲の細胞型および疾患との潜在的関連性を理解する上で魅力的である。

骨髄間質細胞は、造血細胞を支持することに加え、骨、軟骨および脂肪のような異なる結合組織系列の細胞へ分化するよう誘導され得る。ヒト間葉系幹細胞(hMSCs)が多分化能を維持しin vitroで大量に増殖する潜在能力は、損傷組織または患部組織の修復における細胞ベースの治療法のための新たな手段をもたらす。また近年の報告では、HMSCが胚葉の境界を越えた細胞運命の能力を有することも示されている。これらの細胞は、中胚葉の多系列への分化に加え、外胚葉起源のニューロンおよび内胚葉起源の肝細胞様細胞に分化することもできる。これらの細胞は、分化の過程で特定の系列に特異的な転写産物の発現パターンを修正し得る。

したがって、特定のAARSポリペプチドがHMSCにおいて遺伝子の特定のパターンを時間依存的に調節する能力は、このタンパク質が広範囲の分化経路だけでなく、機能不全またはこれらの過程もしくは対応する細胞型の悪化に起因する疾患および障害において重要な役割を果す可能性を示している。さらに、MSCにおいて遺伝子転写を調節する能力を有するAARSポリペプチドは、造血、ニューロン新生、筋形成、骨形成および脂肪生成だけでなく、例えば炎症性応答、自己免疫、癌、ニューロン変性、筋ジストロフィー、骨粗鬆症およびリポジストロフィーを含めた広範な障害および疾患のin vitroまたはin vivoでの調節を可能にする、重要な治療的有用性を有する。

ヒト骨格筋細胞(HSkMC)は、分化を経てアクチンおよびミオシン筋フィラメントを示すことができ、悪性高熱症1のような遺伝性筋疾患の研究に使用されてきた。またHSkMCは、心臓への損傷を修復する心移植片として働く可能性も有する。最近では、ヒト骨格筋に対する低重力環境の影響を研究する微小重力実験で、培養ヒト骨格筋細胞が使用されている。

したがって、特定のAARSポリペプチドが、HSkMCにおける遺伝子の特定のパターンを時間依存的に調節する能力は、このタンパク質が筋形成の過程だけでなく、機能不全またはこれらの過程および筋細胞の発達もしくは代謝の悪化に起因する疾患および障害においても重要な役割を果たす可能性を示している。したがって、筋細胞における遺伝子転写を調節する能力を有するAARSポリペプチドは、例えば代謝性疾患、悪液質、様々な筋萎縮状態および筋骨格疾患の治療を含めた、広範な疾患における治療的有用性を有する。

方法:ハイスループットなマイクロ流体リアルタイム定量的PCR(RT−qPCR)法(Fluidigm Corporation)(Petrivら,(2010)PNAS(doi/10.1073/pnas.1009320107)を参照されたい)をヒト骨髄間質細胞(HMSC)およびヒト骨格筋細胞(HSkMC)に用いて、AARSポリペプチドが遺伝子発現を調節する能力を評価する。ここで報告する実験では、ヒトHSkMC(カタログ番号150−05f)およびHMSC(カタログ番号492−05f)をCell Applications社から購入した。HMSC細胞を二代目で凍結保存し、培養して10集団倍加数まで増殖させることができる。ここでは、6代目のHMSCを使用する。ヒト骨格筋細胞(HSkMC)を二代目で凍結保存し、培養して少なくとも15集団倍加数まで増殖させることができる。ここで報告する実験では、正常ヒトドナーから採取後6代目のHSkMCを使用する。

いずれの場合にも、細胞を100μL体積の増殖培地に50000細胞/mLで播き、24時間および72時間、250nMの濃度または下に別途明記される別の濃度でAARSポリペプチドに曝す。対照には、(1)脂肪生成、(2)骨形成、(3)軟骨形成および(4)骨格筋筋管形成を促進する標準的なカクテルを含む分化培地が含まれる。さらなる対照には、増殖培地のみを含む未処置のウェルが含まれる。各分化対照を2つのウェルで進めた。対照:すべての培地を基本培地としてDMEMを用いて作成した。標準的な文献に従い、分化培地をCell Applications社から購入した。販売業者において、分化培地に以下の添加剤を含ませた:骨格筋分化カクテル:FBS、インスリン、グルタミン、FGF、EGF;脂肪生成カクテル:インスリン、デキサメタゾンおよびIBMX;骨形成カクテル:FBS、デキサメタゾン、アスコルビン酸−2−リン酸、β−グリセロリン酸塩;軟骨形成カクテル:インスリン、アスコルビン酸−2−リン酸およびTGF−β1。

ABI(Applied Biosystems、商品番号AM1728)TAQMAN(登録商標)Gene Expression Cells−to−CT(商標)Kitを使用するための標準的プロトコルを用いて、細胞を溶解させ、ゲノム物質を採取する。ABI Pre−Amp Mix(Applied Biosystems、商品番号4391128)を用いて予備増幅を開始させる。遺伝子特異的プライマーを、Primer3プログラムを用いて作製する、およびIDT technologies社から購入する。実際の定量的PCRには、標準的なFluidigm負荷試薬およびピペッティング装置を用いてFluidigmプロファイリングアレイ(商品番号BMK−M−96.96)を使用した。プロファイリングを行った遺伝子を下の表E1に挙げる。

バイオインフォマティクス解析:Fluidigm社のBiomark機から.csv形式で読み出したデータを、試料、mRNAおよび複製物の情報を生の蛍光値とともに含む表形式に変換する。失敗したPCR反応は欠測として記録される。mRNA種の全発現に正規化した後に、複数の実験を合わせた。測定されたすべてのmRNA発現を、試験した全生物学的複製物の少なくとも2つにおける検出の必要性に基づき、フィルター処理する。本発明者らは、データセット全体の技術的、生物学的およびセットの平均偏差を評価した。

データ解析では、最初にすべての目的遺伝子のCt値を、対応する試料由来のハウスキーピング遺伝子の平均Ct値に正規化して、ΔCt値を得る(ΔCt=Ct(遺伝子)−Ct(平均ハウスキーピング遺伝子))。次いで、各試料由来の遺伝子を未処置対照の同じ遺伝子に正規化して、ΔΔCt値(ΔΔCt=ΔCt(対照試料)−ΔCt(試験試料))を得る。

変化倍数値を得るために、上方制御された遺伝子(すなわち、0よりも大きいΔΔCt)に対して以下の計算を行う:変化倍数=2^ΔΔCt。下方制御された遺伝子(すなわち、0未満のΔΔCt)に対しては以下の計算を行う:変化倍数=−(2^|ΔΔCt|)。

細胞増殖アッセイ(下のデータ表のアッセイA1−A11) 背景および治療的関連:様々な細胞型の細胞増殖およびアポトーシスの速度を調節する能力は、数多くの治療用化合物の基本的特性を表し、広範な疾患および障害の治療および予防に直接関連する。

したがって、細胞増殖および/またはアポトーシスの速度を調節する能力を有するAARSポリペプチドは、広範な疾患および障害において幹細胞の増殖因子および分化因子などとして、また例えば造血細胞、免疫調節細胞、癌を含めた目的とする特定の細胞型の増殖をin vivoまたはin vivoで増大または抑制するための治療レジメンにおいて、また例えば神経変性、末梢神経障害ならびに筋肉および軟組織の緊張低下を含めた加齢に関連する疾患の治療および予防において、重要な治療的有用性を有する。

方法:以下に挙げる方法の1つ以上を用いて、また以下の方法でより具体的に詳述される通りに、細胞増殖に対するAARSポリペプチドの効果を評価する。

ヘキスト33432 増殖を評価するための標準的な細胞計数を、dsRNAと結合すると青い蛍光を発する細胞透過性の核対比染色剤であるヘキスト33432を用いて行う。ヘキスト33432は溶液として入手可能であり(Invitrogen、カタログ番号H−3570)、培地またはPBS中1ug/mLの最終濃度で使用する。細胞型に応じて、標準的な増殖時間である48時間またはそれより長い時間、下の実施例に記載されているように、細胞をARSポリペプチドの存在下、96ウェルプレートで増殖させる。

ATP−lite 細胞のATPレベルは細胞の健康状態と関連し、各種市販のキットで容易に決定することができる。溶解液とATP検出試薬の均一混合物であるATP−lite(Perkin−Elmer、カタログ番号6016947、Boston、MA02481)を使用前に予め混合し、培養細胞に対して1:1の体積比で使用する。プレートを5分間インキュベートして溶解を促進し、発光プレートリーダーを用いてプレートを測定する。細胞型に応じて、標準的な増殖時間である48時間またはそれより長い時間、下の実施例に記載されているように、細胞をAARSポリペプチドの存在下、96ウェルプレートで増殖させる。

ALAMARBLUE(登録商標)(レサズリン)は、酸化還元状態の細胞に基づく細胞生存の指示薬である。活性成分のレサズリンは無毒で細胞透過性の化合物であり、青色で、その酸化型で存在するときは実質的に無蛍光である。しかし、正常な生存細胞内に入ると、レサズリンは速やかにレゾルフィンに還元されて、赤色の蛍光シグナルを発する。生存細胞が継続的にレサズリンをレゾルフィンに変換することで、生存能および細胞傷害が定量的に測定される。毒性がないため、細胞に悪影響を及ぼすことなく細胞をレサズリンに長時間曝すことが可能であり、レサズリンの存在下で増殖した細胞は、フローサイトメトリー解析による測定で対照細胞と同様の生存細胞数を示した。

レサズリン/ALAMARBLUE(登録商標)の溶液を細胞に加えて1〜4時間インキュベートし、蛍光光度または吸光度を読み取ることにより測定を行う。蛍光量または吸光量は生存細胞の数に比例し、細胞代謝活性に対応する。損傷細胞および生存不能細胞は自然な代謝活性が低下しているため、これに比例して健常細胞よりも低いシグナルを発生する。ALAMARBLUE(登録商標)とのインキュベーション後、蛍光光度計および吸光度計で試料を用意に測定することができる。蛍光光度の読取りでは、530nm励起および590nm発光フィルターの設定を用いる。

細胞型に応じて、標準的な増殖時間である48時間またはそれより長い時間、下の実施例に記載されているように、細胞をAARSポリペプチドの存在下、96ウェルプレートで増殖させる。

HEPG2C3Aヒト肝細胞におけるアセチル化LDL取込み(下のデータ表のアッセイB1) 背景および治療的関連:LDLは血中コレステロールの主な担体であり、血漿中コレステロールの60%超を占めている。ヒトでは、循環からの血漿LDLの約70%の除去に肝LDL受容体が関与している。内部に取り込まれたLDLは、リソソーム内で分解されて遊離コレステロールとアミノ酸になる。肝臓は、ヒトでのLDL異化作用およびLDL受容体活性にとって最も重要な器官である。内部に取り込まれず循環中に残ったLDLは、血管内皮細胞により血管壁内に運ばれて、アテローム性動脈硬化プラークの形成の原因となり得る。また循環するLDLは、マクロファージによっても取り込まれ、これがプラーク形成の一因となることもある。肝組織内へのLDL取込みの増加はヒトに健康に有益であると考えられており、また、この過程を正に調節し得る安全かつ有効な治療剤の発見は、心血管疾患および代謝性疾患の新たな治療法をもたらすかもしれない。AARSポリペプチドの固有の特性がアセチル化LDLの取込みを調節することができるか否かを調べるために、アセチル化LDL取込みを測定するための標準的なアッセイをHepG2C3a細胞で用いる。

したがって、LDL取込みを調節する能力を有するAARSポリペプチドは、広範な疾患において、例えば高コレステロール血症、高脂血症、1型および2型糖尿病、代謝症候群ならびにアテローム性動脈硬化症を含めた血管疾患の治療での重要な治療的有用性を有する。

方法:HEPG2C3a細胞(ATCC番号CRL−10741)を、75mLのフラスコに入れた15mL培地中、10%FBS(HyClone、カタログ番号SH30910.03)、50u/mLのペニシリン/50μg/mLのストレプトマイシン(Invitrogen)を添加したEagleの最少必須(EMEM)培地で維持する。細胞を加湿環境中、37℃、5%CO2で増殖させ、無菌技術ならびにゴーグル、手袋および実験着を含めた適当な個人用保護具を用いて、BSL2認定済みの組織培養フード内で使用する。HEPG2C3aは、透明底のコラーゲンコートプレートで増殖させた場合、LDL受容体を発現し、アセチル化LDL取込み能力を有するようになる。100μL体積の細胞を、完全培地(上記)中、50,000細胞/mLの細胞密度でコラーゲンコートプレート(Invitrogen、カタログ番号A11428)に一晩播く。細胞をPBS(Invitrogen、カタログ番号10010)で1回洗浄し、80μLの無血清EMEMを各ウェルに加える。1ウェル当たり250nMの最終濃度のAARSポリペプチドを、無菌PBS中一定体積で各ウェルに加える。16時間のインキュベーション後、上清を収集し、RND Systems社の標準的なELISAキット(カタログ番号DY643)を用いて可溶性ICAMを測定し、5μg/mLのac−LDL(Alexa Fluor488標識、カタログ番号L23380、Invitrogen)を添加した無血清培地を各ウェルに加える。37℃、5%CO2で2時間インキュベートした後、細胞を無菌PBSで2回洗浄した後、定量化のために100μLのPBSを各ウェルに加える。Victor X5蛍光プレートリーダー(Perkin Elmer)でボトムリードを用いて、プレートの総蛍光強度を485nmを中心とした励起波長および535nmを中心とした発光波長で解析した。細胞をヘキスト色素で染色し、405nm励起/450nM発光の蛍光強度を読み取って、プレート全体にわたり全細胞数が一定であることを確認する。

ヒト好中球の酸化バーストおよびエラスターゼ産生の調節(下のデータ表のアッセイC1〜C3) 好中球酸化バースト 背景および治療的関連:多形核好中球および単球による食作用は、細菌および真菌を含めた微生物による感染に対する宿主防御の重要な武器を構成している。食作用の過程は、次のようないくつかの主な段階に分けることができる:走化性(炎症部位への食細胞の移動)、食細胞の細胞表面への粒子の付着、取込み(食作用)ならびに酸素依存性(酸化バースト)および酸素非依存性の機序による細胞内殺作用。慢性肉芽腫性疾患(CGD)のような先天的欠陥では、バースト活性の低下または欠如が見られる。CGDは遺伝性疾患の異質性のグループであり、通常、生後2年の間に発症する。この疾患は、細菌および真菌微生物により繰り返し引き起こされる致命的な感染症が特徴である。これらの感染症は通常、肺炎、リンパ節炎、またはリンパ節、肺および肝臓に影響する膿瘍からなる。NADPHオキシダーゼは、過酸化水素およびヒドロキシルラジカルへ速やかに変換されるスーパーオキシド陰イオンの生成に関与する酵素系である。NADPHオキシダーゼ酵素系の成分ペプチドの異常は、CGDに特徴的な機能不全を引き起こす。CGD患者の好中球では、刺激後の重要な酸化バーストが生じない。様々な形態のCGDが記載されている(古典的X関連CGDおよび常染色体劣性遺伝パターン)。移植、HIV感染後期および高齢者では顆粒球の酸化バーストが低下して、これらの者は二次感染および炎症性疾患の増悪を引き起こしやすくなる。様々な免疫調節剤(例えば、サイトカイン(GM−CSF、G−CSF、TNF)または薬物)も酸化バーストに影響を及ぼすと思われる。治療的方法で酸化バーストを上方制御または下方制御する能力を有するタンパク質は、各種の様々な病的状態に対して有効である可能性がある。

方法:このアッセイでは、酸化バースト過程のアゴニストとしてタンパク質キナーゼCリガンドのホルボール12−ミリスタート13−アセタート(PMA)を使用することができる。ヘパリン処置した全血を無菌デキストラン(0.6%の最終濃度)と1時間混合して層に分離させる。下層には好中球、単球および赤血球が含まれている。塩化アンモニウム溶解工程を用いてRBCをすべて除去し、単球が約3%混入した純度97%の好中球集団が溶解工程の後に残る。刺激時に、顆粒球および単球が、食胞内の細菌を破壊する反応性酸素代謝産物(スーパーオキシド陰イオン、過酸化水素、次亜塩素酸)を生成する。酸化バースト時の反応性オキシダントの形成は、Amplex Redの添加および酸化によりモニターすることができる。次いで、蛍光プレートリーダーを用いて、生成された反応性酸素ラジカルを有する細胞の百分率およびその平均蛍光強度を解析する。この反応の典型的な時間経過は10分であり、明らかなバーストは2分後までに見られ、シグナルの減少は20分後までに見られる。このアッセイは、AARSポリペプチドと、EC50より低い濃度のPMAとを同時に投与して、PMA非存在下のアゴニストモードで、またはアンタゴニストモードで行うことができる。

ヒト好中球エステラーゼ産生の調節 背景および治療的関連:好中球エラスターゼは、肺および心血管系の炎症性障害を含めた広範なヒト疾患の発達において特定の役割を有すると考えられているセリンプロテアーゼである。その鍵となる生理的役割は生得的な宿主防御におけるものであるが、好中球エラスターゼは組織リモデリングにも関与している可能性があり、現在、局所的な炎症シグナルに重要であることが認められている分泌促進剤作用を有する。好中球エラスターゼ活性は、数十年間、肺気腫の発達に関与するとされてきたが、比較的最近になってようやく、過剰な細胞外マトリックスの沈着が生じる状況での病原性機能はこのセリンプロテアーゼが原因であるとされた。その作用が繊維症の肺修復に影響し得るその考え得る道筋の解明が、遺伝子操作された動物モデルの使用により始まっている。新たに得られた証拠により、線維形成メディエーターの生成およびコラーゲン合成に対してより直接的な作用を有する細胞経路の関与が、肺のマトリックス蓄積促進における好中球エラスターゼの作用を支持するらしいことが示唆されている。また、ヒト好中球エラスターゼはアテローム性動脈硬化プラーク内にも存在し、そこでは、動脈瘤形成とプラーク破裂の合併症に関連したマトリックス分解および血管壁の脆弱化の一因となっている。これらの作用には他の細胞外プロテアーゼも加わるが、この破壊的なプロテアーゼは、好中球脱顆粒に関連した活性と結び付く広範な基質およびこの酵素の効力ゆえに、動脈硬化性疾患における治療標的として選ばれる。

方法:このアッセイでは、ENZCHEK(登録商標)Elastase Assay Kit(Invitrogen、カタログ番号E−12056)を使用する。6%デキストラン溶液を用いて新鮮なヒト血液から好中球を調製し、赤血球を溶解させてから、細胞をRPMI培地(培地は血清、抗生物質を含まない未添加であるべきである)に播く。凍結乾燥させた基質を含む3つのバイアルのうちの1つに脱イオン水(dH2O)1.0mLを直接加え、かき混ぜて溶解させることにより、1.0mg/mLのDQエラスチン基質ストック溶液を調製する。10×反応緩衝液6mLを54mLのdH2Oで希釈して、1×反応緩衝液を調製する。DQエラスチンストック溶液を1×反応緩衝液で10倍に希釈して、100μg/mLのDQエラスチン基質希釈標準溶液を調製する。dH2Oで100U/mLのストック溶液を作製して、ブタ膵臓エラスターゼストック溶液を調製する。エラスターゼ活性をアッセイするために、1×反応緩衝液50μLを、30μL体積中500,000好中球/mLを含む各アッセイウェルにピペットで加える。1ウェル当たり8μLの各AARSポリペプチドを加え、試料を37℃で20分間インキュベートする。100μg/mLのDQエラスチン希釈標準溶液50μLを各ウェルに加えてかき混ぜる。試料を光から保護しながら、室温で30分間インキュベートする。標準的なフルオレセインフィルター(ex485/Em535)蛍光を備えた蛍光マイクロプレートリーダーで蛍光強度を複数の時点にわたり測定する。

Toll様受容体との結合およびNFκBの活性化(下のデータ表のアッセイD1〜D4) 背景および治療的関連:マクロファージは自然免疫系において主要な役割を果たし、免疫応答を強力に調節および制御するToll様受容体(TLR)のファミリーを含めた、幅広いレパートリーの様々なクラスのパターン認識受容体(PRR)を発現する。

微生物病原体および内因性リガンドによるTLRの刺激がシグナル伝達カスケードを惹起し、下流の適応免疫応答を指令する炎症誘発性サイトカインとエフェクターサイトカインの分泌が誘発される。内因性リガンドおよび微生物成分はTLRにより認識され、またこれを活性化することができるため、これらの受容体が複数の疾患に対する新たな治療法開発の重要な標的である可能性が高まる。

したがって、TLR受容体活性を調節するAARSポリペプチドは、広範な疾患および障害における、例えば炎症性の疾患および障害、自己免疫性疾患、組織移植/臓器拒絶、癌の予防または治療、造血および感染の調節を含めた治療的有用性を有する。

RAW−BLUE細胞におけるTLR活性化の測定 RAW−BLUE(商標)細胞(Invivogen、カタログコード:raw−sp)の商標名で販売されているマウスマクロファージは、TLR5以外のすべてのTLRを発現し、NF−κBおよびAP−1転写因子により誘導される分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)遺伝子を含む。TLR刺激時に、RAW−BLUE(商標)細胞がNF−κBおよび/またはAP−1を活性化してSEAPが分泌され、これはSEAP検出培地を使用すれば測定可能である。

方法:RAW−BLUE(商標)細胞をPBSで2回洗浄し、トリプシン処理して、新鮮な培地(増殖培地:DMEM、4.5g/lのグルコース、10%熱不活性化ウシ胎仔血清(56℃で30分)、100mg/mLのZEOCIN(商標)、2mMのL−グルタミン)中で再懸濁させる。細胞を50,000細胞/ウェルの濃度で、96ウェルプレートに総体積100μLで播き、AARSポリペプチド、対照またはAARSポリペプチド(+LPS)を、以下で概説する実験で示される濃度で各ウェルに加える。細胞を5%CO2インキュベーター中、37℃で18時間インキュベートする。実験の2日目に、SEAP検出培地(QUANTI−BLUE(商標))(Invivogen、カタログコード:rep−qb1)を説明書に従って調製し、1ウェル当たり120μLを透明平底96ウェルプレートに加え、細胞上清を加える(20μL)。試料を37℃で約30分〜2時間インキュベートする。分光光度計を用いて650nMでの吸光度を読み取り、SEAPレベルを決定する。

TLR活性化を特異的にブロックするAARSポリペプチドを検出するために、このアッセイを改変して潜在的なTLRアンタゴニストを同定することができる。この場合、50ng/mLのLPSを加える1時間前に、AARSポリペプチドを1ウェル当たり約250nMの最終濃度で(または以下の実施例で別途明記されている通りに)細胞に加える。細胞をインキュベートし、SEAPを上記のように検出する。LPSを含まない、すなわちAARSポリペプチドを単独で加えたPBS対照ウェルを用いて、測定時のTLR刺激の基底レベルを調べる。対照ウェルを、PBSならびに既知のTLRアゴニストおよびアンタゴニストで前処理する。バックグラウンドを差し引いた[PBS+LPSのシグナル]と[AARSポリペプチド+LPSのシグナル]の比を用いて、拮抗作用のパーセントを決定する。

Hek293細胞におけるヒトTLRスクリーニング ヒトHEK293細胞は遺伝子が改変されており、HEK−Blue(商標)TLR細胞(Invivogen)の商標名で販売されている。この細胞型のTLR2およびTLR4バージョンはすべてのTLR2またはTLR4を選択的に発現し、5つのNF−κBおよびAP−1転写因子結合部位と融合したIFN−ベータミニマルプロモーターの制御下にある分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子を含む。特定のTLR2またはTLR4アゴニスト(それぞれ)を使用すると、Hek−Blue(商標)TLR2およびHek−Blue(商標)TLR4細胞がNF−κBおよび/またはAP−1を活性化してSEAPが分泌され、これはSEAP検出試薬を用いれば検出可能である。Hek−Blue(商標)TLR2細胞をLPS共受容体タンパク質CD14でコトランスフェクトして、TLR2応答性を増強しシグナルの質を向上させる。親細胞は、内因性レベルのTLR1、3、5、6およびNOD1を発現する。

方法:Hek−Blue(商標)−TLR2またはHek−Blue(商標)−TLR4細胞をPBSで2回洗浄し、トリプシン処理して、新鮮な培地(増殖培地:DMEM、4.5g/lのグルコース、10%熱不活性化ウシ胎仔血清(56℃で30分)、100mg/mLのZEOCIN(商標)、2mMのL−グルタミン)中で再懸濁させる。細胞を50,000細胞/ウェルの濃度で、96ウェルプレートに総体積100μLで播き、AARSポリペプチド、対照またはAARSポリペプチド(+LPS)を、以下で概説する実験で示される濃度で各ウェルに加える。細胞を5%CO2インキュベーター中、37℃で18時間インキュベートする。実験の2日目に、SEAP検出培地(QUANTI−BLUE(商標))(Invivogen、カタログコード:rep−qb1)を説明書に従って調製し、1ウェル当たり120μLを透明平底96ウェルプレートに加え、細胞上清を加える(20μL)。試料を37℃で約30分〜2時間インキュベートする。分光光度計を用いて650nMでの吸光度を読み取り、SEAPレベルを決定する。対照ウェルをPBSおよびUltraPure LPS(TLR−4)またはPAM3CSK4(TLR−2)のような既知のTLRアゴニストで前処理する。バックグラウンドを差し引いた[PBS+LPSのシグナル]と[AARSポリペプチド+LPSのシグナル]の比を用いて、アゴニズムのパーセントを決定する。

サイトカイン放出(下のデータ表のアッセイE1〜E17) 背景および治療的関連:サイトカインは、細胞間コミュニケーションに広く利用され、免疫調節および制御を含めた正常な身体ホメオスタシスにおいて重要な役割を果たしている、多様な小分子の細胞シグナル伝達タンパク質分子の集まりである。従って、サイトカインの放出または生物活性を調節するAARSポリペプチドは、広範な疾患および障害における、例えば炎症性の疾患および障害、自己免疫性疾患、組織移植/臓器拒絶、癌の予防または治療、造血および感染の調節を含めた治療的有用性を有する。

培養細胞からのサイトカイン放出 方法:試験細胞を、1mL増殖培地中約106細胞/ウェルの密度で24ウェルプレートに播く。細胞をAARSポリペプチド(下の実施例で示される濃度)または等体積のPBSで処置し、5%CO2、37℃で一晩インキュベートする。細胞処置の後、試料をスイングバケット遠心機で5分間、2,000×g、4℃で遠心分離する。細胞ペレットを崩さないように培地を慎重に取り出し、新しいチューブに移す。試料を直ちにアッセイするか、または次の解析のために液体窒素中で急速凍結する。市販のキット(R&D Systems,Inc、MN、USA)を用いて、または開発業務受託機関(MD Biosciences(St.Paul、MN)を通じて、サイトカイン放出(MIF、IL−8、IL−10、セルピンE1、GM−CSF、GRO、IL−1アルファ、IL−1ベータ、IL−1ra、IL−6、MCP−1、MIP−1、RANTESおよびTNF−アルファのサイトカインを含む)を判定する。

ヒト全血からのサイトカイン放出 方法:ヒト全血を正常なヒトドナーから採取し、標準的な採血管にヘパリンとともに収集する。適切な細胞の健康状態を確保するために、血液を収集した同じ日にこれを使用する。血液を穏やかにかき混ぜ、100μLの体積で96ウェルポリカーボネートV底プレートに播く。マルチチャンネルピペットセットを50μLで2回使用して、AARSポリペプチドを血液に加えてゆっくりかき混ぜる。すべての実験でフィルターチップを使用し、フルPPEを装着する。すべての実験を、ヒト血液での実験に適した専用のバイオセーフティフード内で行う。血液を5%CO2、37℃で一晩インキュベートする。細胞処置の後、スイングバケット遠心機で試料を2,000×gで5分間、遠心分離する。上清をサイトカインELISA用に収集する。ELISAを既に記載の通りに行う。

PBMCからのサイトカイン放出 方法:末梢血単核球を分離するために、新たに分離したヒト全血を50mLのコニカルチューブ中、室温で、Sigma社のHISTOPAQUE(登録商標)−1077により1:1の比で、室温で穏やかに層状にする。層状の試料を、スイングバケット臨床用遠心機で30分間、ブレーキなしで400×gで遠心分離する。次いで、血漿と密度勾配の境界にある白血球の層をピペットで取り出す。この末梢血単核球を、希釈および250×gで10分間の遠心分離によりRPMI−1640(Invitrogen、番号22400−105)で2回洗浄する。洗浄したPBMCをRPMI−1640+10%FBS中に再懸濁させ、1×106細胞/mLで播く。

THP−1およびHL60細胞からのサイトカイン放出 方法:THP1およびHL60細胞をRPMI−1640+10%FBS中で増殖させ、96ウェルプレートに1×106細胞/mLで播く。別途記載がない限り、細胞を250nMの濃度のAARSポリペプチドで48時間処置する。これらの2種類の細胞型は通常、単球様またはマクロファージ様であると考えられており、これらが骨髄系列であることを示唆する多数のマーカーを有している。したがって、これらの細胞は各種の生物学的刺激に応答して様々なサイトカインを産生し、in vitroでの炎症応答または抗炎症応答を捜すために使用されることが多い。市販のキット(R&D Systems、Inc、MN、USA)を用いて、または開発業務受託機関(MD Biosciences、St. Paul、MN)を通じて、サイトカイン放出(MIF、IL−8、IL−10、セルピンE1、GM−CSF、GRO、IL−1アルファ、IL−1ベータ、IL−1ra、IL−6、MCP−1、MIP−1、RANTESおよびTNF−アルファのサイトカインを含む)を判定する。

ヒト滑膜細胞からのサイトカイン放出 背景および治療的関連:いくつかの疾患ではIL−6およびIL−8が過剰に産生されるため、これらが炎症性疾患の発病において基本的な役割を果たし得ることが、数多くの研究により示されている。IL−6は内皮細胞産生を活性化し、IL−8および単球化学誘引物質タンパク質の放出、接着分子の発現および炎症部位への白血球動員を引き起こす。これらのサイトカインは、全身性若年性関節炎、全身性エリテマトーデス、クローン病および関節リウマチの発病に関与する細胞を含めた、炎症性疾患に関連した細胞型で発現される。サイトカイン産生の中で最も重要な全身作用の1つは、急性期応答の誘発である。急性期タンパク質は主として肝臓により産生され、補体活性化、炎症誘発性サイトカインの誘導および好中球走化性の刺激を介して免疫応答を促進するタンパク質がこれに含まれる。あるいは、急性期応答は役に立つ場合もあり、プロテイナーゼアンタゴニスト、オプソニンおよびプロコアグラントのような急性期タンパク質は、炎症を消散させることにより組織破壊を制限するのに役立つ。特に、IL−6は滑膜細胞増殖および破骨細胞活性化を刺激して、滑膜パンヌスの形成および修復をもたらし得る。IL−6はIL−1とともに作用してマトリックスメタロプロテイナーゼの産生を増加させ、これが関節および軟骨破壊の一因となり得る。しかし、IL−6を抗原誘導性関節炎のマウス関節内に注射すると、このサイトカインが組織メタロプロテアーゼ阻害物質の発現を誘導してプロテオグリカン合成を刺激するという知見により示唆されるように、IL−6は関節における保護作用も有し得る。ヒト線維芽細胞様滑膜細胞−関節リウマチ(HFLS−RA)は、関節リウマチ(RA)の患者から採取した滑膜組織から分離される。これを二代目で凍結保存し、培養して少なくとも5集団倍加数まで増殖させることができる。HFLSは、軟骨分解の一因となるサイトカインおよびメタロプロテイナーゼの産生による関節破壊でのその役割で長い間知られている。

したがって、線維芽細胞様滑膜細胞−関節リウマチ(HFLS−RA)の増殖、分化またはサイトカイン放出プロファイルを調節する能力を有するAARSポリペプチドは、広範な疾患における、例えば炎症性疾患ならびに全身性若年性関節炎、全身性エリテマトーデス、クローン病および関節リウマチを含む障害の治療を含めた治療的有用性を有する。

方法:HFLS−RAの成体細胞(Cell Applications、カタログ番号408RA−05a)を、使用前に125mLフラスコ内の15mL培地中、滑膜細胞増殖培地(Cell Applications、カタログ番号415−50)で一継代維持する。細胞を加湿環境中、5%CO2、37℃で維持し、無菌技術ならびにゴーグル、手袋および実験着を含めた適当な個人用保護具を用いて、BSL2認定済みの組織培養フード内で使用する。80μL体積の細胞を約50,000細胞/mLの細胞密度で増殖培地に一晩播く。一晩の付着の後、AARSポリペプチドを無菌PBS中、1ウェル当たり250nMの最終濃度(または下の実施例で別途明記されている通り)で各ウェルに加える。対照ウェルは未処置細胞を含み、これを等体積のPBSとともにインキュベートする。細胞を基本培地(Cell Applications、カタログ番号310−470)中でタンパク質またはPBSに24時間曝露する。上清を取り出し、製造者の説明書に従ってIL−8、IL−6およびTNFaのELISAアッセイを行う(RND Systems、カタログ番号DY206およびDY−208、DY−210 Duo−setキット)。既に記載されている通りに、レサズリンを含有する新たな培地を上清除去後にプレートに加え、37℃で3時間インキュベートすることにより、増殖をレサズリンで評価する。プレートを蛍光プレートリーダーで読み取り、AARSポリペプチドで処置したウェルのレゾルフィンに関連する蛍光を、PBSのみで処置したウェルのレゾルフィンに関連する蛍光で割った関数として、生存率/増殖を表す。

ヒトアストロサイト増殖および炎症性サイトカイン産生 背景および治療的関連:ヒトアストロサイト(HA)はヒト大脳皮質から得られる。これを二代目で凍結保存し、培養して10集団倍加数まで増殖させることができる。HAは中枢神経系に最も豊富に存在する細胞であり、ニューロンへの機械的支持および栄養分の提供ならびにニューロンの不要物の除去のような数多くの機能を担っている。最適なニューロン機能に重要な補助的役割を果たすことに加え、HAは、血液脳関門を形成している血管内皮細胞の生化学的補助も行っている。最近の研究では、アストロサイトが、幹細胞をニューロン分化に運命付け単一シナプスの機能を制御することによりニューロン新生を調節すること可能であり、脳内の情報の伝達および保存に積極的に関わっているということが示されている。神経系の機能におけるアストロサイトの重要性がますます認識されつつある。HAは、アストロサイト機能の多様性を探るための有用なin vitroモデルとして働き得る。アストロサイトは、IL6およびTNFアルファに応答して増殖することが示されている。さらに、この細胞は自身のIL6およびTNFアルファを生成することができる。したがって、HAの増殖およびサイトカイン産生を調節するAARSポリペプチドは、神経炎症、神経変性、脳の腫瘍形成ならびに脳の虚血および修復を含めた各種神経疾患における治療的有用性を有する。

方法:Cell Applications社のヒトアストロサイト(HA)(カタログ番号882K−05f)を、製造者の説明書に従ってCell Applications社のHA細胞増殖培地(カタログ番号821−500)で維持する。細胞を加湿環境中、5%CO2、37℃で維持し、無菌技術ならびにゴーグル、手袋および実験着を含めた適当な個人用保護具を用いて、BSL2認定済みの組織培養フード内で使用する。80μL体積の細胞を、完全培地(上記)中、50,000細胞/mLの細胞密度でコラーゲンコートプレートに一晩播く。細胞をPBSで1回洗浄し、80μLの無血清増殖培地を各ウェルに加える。1ウェル当たり250nMの最終濃度(または下の実施例で別途明示されている通り)のAARSポリペプチドを、無菌PBS中一定体積で各ウェルに加える。細胞をAARSポリペプチドに48時間曝露し、使用済みの培地をサイトカイン評価(既に記載されている通り)用に取り出す。細胞を基本培地(Cell Applications、カタログ番号310−470)中でタンパク質またはPBSに48時間曝露する。上清を取り出し、製造者の説明書に従ってIL−8、IL−6およびTNFaのELISAアッセイを行う(RND Systems、カタログ番号DY206およびDY−208、DY−210 Duo−setキット)。既に記載されている通りに、レサズリンを含有する新たな培地を上清除去後にプレートに加え、37℃で3時間インキュベートすることにより、増殖をレサズリンで評価する。プレートを蛍光プレートリーダーで読み取り、AARSポリペプチドで処置したウェルのレゾルフィンに関連する蛍光を、PBSのみで処置したウェルのレゾルフィンに関連する蛍光で割った関数として、生存率/増殖を表す。

ヒト肺微小血管内皮細胞(HLMVEC)の増殖および炎症性サイトカイン産生 背景および治療的関連:肺血管系は生理学的/病理学的に非常に重要である。肺血管系は、循環する基質および有形成分と相互作用して全身動脈血の組成を調節し、標的器官の機能に影響を及ぼし、血栓症、止血および免疫反応ならびに腫瘍転移の一因となる、代謝的に活性で機能的に応答する細胞からなる組織であることが現在認められている。ヒト肺微小血管内皮細胞(HLMVEC)は、急性肺傷害時に白血球が肺に向かって移動するための重要なキューを与える化学誘引物質サイトカインおよび細胞接着分子の高い発現を示す。この主要な細胞型は、肺微小血管系の病理学および生物学の様々な側面をin vitroで研究するための有用なツールとなり得る。炎症性刺激に応答した微小血管系の構造および機能の変化は、臓器損傷において鍵となる因子であると考えられており、また適切な条件下では、修復のための刺激をもたらし得る。これらの血管変化の重要な原因は、白血球浸潤が関与する炎症性反応の誘導である。内皮細胞への顆粒球接着に焦点を当てた各種の研究により、白血球の動員および遊出には、よく組織化された接着カスケードが伴うことが明らかになっている。接着カスケードは、顆粒球が内皮細胞に付着し、低速度で液流の方向に転がり始めることで始まる。顆粒球は転がる間に活性化され、次いで内皮細胞にしっかりと接着し、内皮細胞を横断して血管外スペースへ移動する。これらの接着事象は、顆粒球表面のCAMと内皮細胞上に存在する同族糖タンパク質との間で生じる分子相互作用により一部仲介される。内皮細胞接着分子であるE−セレクチンは、顆粒球リガンドであるSLex型グリカンと相互作用して、接着カスケードのうちの付着とローリングの工程を仲介し得るということが、各種の研究により明らかになっている。カスケードの下流工程には、内皮細胞で発現する細胞間接着分子と顆粒球で発現するCD18インテグリンとの相互作用が含まれる。

したがって、ヒト肺微小血管内皮細胞の増殖および/またはサイトカイン産生を調節するAARSポリペプチドは、例えば肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾患、特発性肺線維症および喘息を含む炎症性および閉塞性の肺疾患を含めた各種血管および肺疾患における治療的有用性を有する。

方法:HLMVEC(Cell Applications、カタログ番号540−05)をCell Applications社の微小血管内皮細胞増殖培地(カタログ番号111−500)で維持する。適切な増殖のために、細胞を播く前に、コラーゲンを含有するAttachment Factor Solution(Cell Applications、カタログ番号123−100)を用いてプレートおよびフラスコをコーティングする。細胞を加湿環境中、5%CO2、37℃で維持し、無菌技術ならびにゴーグル、手袋および実験着を含めた適当な個人用保護具を用いて、BSL2認定済みの組織培養フード内で使用する。80μL体積の細胞を、完全培地(上記)中、50,000細胞/mLの細胞密度でコラーゲンコートプレートに一晩播く。細胞をPBSで1回洗浄し、80μLの無血清増殖培地を各ウェルに加える。1ウェル当たり250nMの最終濃度(または下の実施例で別途明示されている通り)のAARSポリペプチドを、無菌PBS中一定体積で各ウェルに加える。細胞をAARSポリペプチドに48時間曝露し、使用済みの培地を細胞接着分子のELISAおよびサイトカイン評価(既に記載されている通り)用に取り出す。可溶性VCAMおよび/またはICAMを含む細胞接着分子を、RND Systems社の標準的なELISAキット(それぞれ、カタログ番号DY643およびDY720)を用いて測定する。既に記載されている通りに、レサズリンを含有する新たな培地を上清除去後にプレートに加え、37℃で3時間インキュベートすることにより、増殖をレサズリンで評価する。プレートを蛍光プレートリーダーで読み取り、AARSポリペプチドで処置したウェルのレゾルフィンに関連する蛍光を、PBSのみで処置したウェルのレゾルフィンに関連する蛍光で割った関数として、生存率/増殖を表す。

細胞接着(下のデータ表のアッセイF1〜F7) 背景および治療的関連:細胞接着分子(CAM)は細胞表面に存在するタンパク質であり、細胞接着と呼ばれる過程で他の細胞または細胞外マトリックス(ECM)との結合に関与する。これらのタンパク質は通常、膜貫通型受容体であり、3つのドメインすなわち、細胞骨格と相互作用する細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン、および同じ種類の他のCAMと相互作用する(ホモフィリック結合)または他のCAMもしくは細胞外マトリックスと相互作用する(ヘテロフィリック結合)細胞外ドメインからなる。CAMの大部分は、Ig(免疫グロブリン)スーパーファミリー(IgSF CAM)、インテグリン、カドヘリンおよびセレクチンの4つのタンパク質ファミリーに属する。免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)細胞接着分子はカルシウム依存性膜貫通型糖タンパク質であり、神経細胞接着分子(NCAM)、細胞間細胞接着分子(ICAM)、血管細胞接着分子(VCAM)、血小板内皮細胞接着分子(PECAM−1)、内皮細胞選択性接着分子(ESAM)、接合部接着分子(JAM)、ネクチンおよびその他の細胞接着分子がこれに含まれる。

細胞接着分子は、各種炎症性肝疾患における白血球の類洞内皮への接着および遊出および細胞傷害性に重要な細胞表面糖タンパク質である。ICAM−1は炎症において重要な役割を果たし、内皮細胞上でのICAM−1発現増加は内皮細胞の活性化に反映される。ICAM−1は、内皮細胞との堅固な接着を媒介し白血球遊出を促進することから、特に重要である。炎症性の肝臓状態、例えばB型肝炎ウイルス感染、自己免疫性肝障害、アルコール性肝炎および肝臓同種移植片拒絶などでは、類洞細胞および肝細胞の両方でICAM−1の上方制御が見られることが研究により示されている。

したがって、細胞接着分子産生および内皮細胞への細胞接着を調節するAARSポリペプチドは、例えば心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、自己免疫および肺高血圧症を含めた各種炎症性疾患における治療的有用性を有する。

方法:ヒト臍帯静脈細胞(ATCC、カタログ番号CRL−2873)(HUVEC)を製造者の説明書に従って、ヒトフィブロネクチン付着溶液でコーティングした12ウェルプレートに、推奨されるATCCの培地および添加物中、約1.2×105細胞/ウェルの濃度で播いて増殖させる。示される濃度のAARSポリペプチドまたはPBS単独で細胞を刺激し、増殖培地で一晩インキュベートする。ヒト急性単球性白血病(THP−1(TIB−202))細胞を、カルセインAM(6μL/mL;Invitrogen、カタログ番号C1430)を含む0.1%BSA/RPMI無血清培地中に再懸濁させ、30分間インキュベートする。標識された細胞を回収し、10%FBSを含有するRPMI培地中で再懸濁させ、密度を2×106細胞/mLに調整する。

標識されたTHP−1細胞100μL(2×105個)を各ウェルの増殖培地1mL中のHUVEC単層に播き、15分間インキュベートする。ウェルをPBSで2回洗浄して未結合細胞を除去した後、励起波長488nm/発光波長530nmの蛍光プレートリーダーで細胞を読み取る。

THP−1細胞からの細胞接着分子放出 方法:THP1細胞をRPMI−1640+10%FBS中で増殖させ、1×106細胞/mLで播いた。細胞を別途記載がない限り、細胞を250nMの濃度のAARSポリペプチドで48時間処置し、TNF−アルファ、IL−6およびIL−8、ならびに各種細胞接着分子に関するELISAを、既に記載のように評価した。この細胞型は通常、単球様またはマクロファージ様であると考えられており、これらが骨髄系列であることを示唆する多数のマーカーを有している。したがって、これらの細胞は各種の生物学的刺激に応答して様々なサイトカインを産生し、細胞接着分子の調節および産生を含めたin vitroでの炎症応答または抗炎症応答を捜すために使用されることが多い。

細胞分化(下のデータ表のアッセイG1〜G4) 初代ヒト脂肪前駆細胞における脂肪細胞の分化および増殖 背景および治療的関連:肥満症およびリポジストロフィーはともに、糖尿病および心血管疾患を含めた病態に関連することが多い。脂肪組織は多種多様な因子を分泌する内分泌器官であり、分泌の調節異常は脂肪生成だけでなく、全身のグルコース/インスリンホメオスタシスにも影響を与えるということが現在認められている。肥満症を招く過剰な脂肪組織は、周知の深刻な健康上の脅威となっている。脂肪組織の発達は、遺伝的背景、ホルモンバランス、食事および身体活動により影響され得る。トリアシルグリセロールの蓄積が高まって脂肪細胞の大きさが増加すると、脂肪組織量が増加し得る。さらに、前駆細胞の脂肪細胞への分化により生じる脂肪細胞の数が成体でも増加することがあり、これは重症のヒト肥満症および高炭水化物食または高脂肪食を摂取したげっ歯類において観察されている。脂肪細胞は特に、間葉細胞が拘束および分化の過程である脂肪生成を経て生じると考えられている。前脂肪細胞細胞系は、合成糖質コルチコイド、デキサメタゾン(DEX)、イソブチルメチルキサンチン(IBMX)およびインスリンからなる脂肪生成剤による処置で脂肪細胞分化を経ることができ、これらの研究では有用であった。転写因子のペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)およびCCAATエンハンサー結合タンパク質(C/EBP)ファミリーでは、脂肪細胞分化において重要な役割を果たすという十分な確証が得られている。脂肪細胞分化の初期に、C/EBPβおよびC/EBPδがそれぞれDEXおよびIBMXより誘導され、次いでこの2つがPPARγおよびC/EBPαを誘導して、脂肪細胞機能に必要な様々な脂肪細胞マーカーを活性化する。他の転写因子も脂肪生成を正または負に調節することが報告されており、また様々な増殖因子およびホルモンが、脂肪生成転写因子の発現を調節することにより脂肪細胞分化に影響を及ぼし得る。実際、脂肪組織は、トリアシルグリセロールを貯蔵し、必要時に脂肪酸を放出することにより、哺乳動物の主なエネルギー貯蔵部位となっていることに加え、免疫応答、血管機能およびエネルギー恒常性を含めた多様な生理過程に関与する広範な分子を分泌する。TNF−αおよびIL−6のようなサイトカインが脂肪細胞から分泌される。これらの因子の一部も、オートクリン/パラクリン作用により脂肪組織の増殖および発達に影響を及ぼし得る。

したがって、正常なヒト脂肪前駆細胞の分化および/または増殖を調節する能力を有するAARSポリペプチドは、広範な疾患における、例えば、代謝性疾患、心血管疾患、肥満症およびリポジストロフィーならびに糖尿病の長期合併症の治療および予防を含めた治療的有用性を有する。

方法:HPAd(ヒト脂肪前駆細胞)(Cell Application、カタログ番号803sD)を販売業者の説明書に従って維持する。培養のために、細胞を急速に解凍し、直ちに15mLの脂肪細胞増殖培地(Cell Application、カタログ番号811M−250)へ移し、標準的な無菌組織培養処置フラスコに播く。細胞の集密度が60%を超えるまで、培地を1日置きに新鮮な脂肪細胞増殖培地と交換する。細胞を加湿環境中、5%CO2、37℃で増殖させ、無菌技術ならびにゴーグル、手袋および実験着を含めた適当な個人用保護具を用いて、BSL2認定済みの組織培養フード内で使用する。分化用に、細胞を透明底黒壁96ウェルの組織培養処理アッセイプレートに約50,000細胞/mLの濃度で播く。1ウェル当たり250nMの最終濃度(または下の実施例で別途明示されている通り)のAARSポリペプチドを各ウェルに加える。脂肪生成分化培地(Cell Applications、カタログ番号811D−250)で刺激する陽性対照を除くすべての細胞を、増殖培地で2日間維持する。細胞をAARSポリペプチドに48時間曝露する。可溶性VCAMおよび/またはICAMを含む細胞接着分子を、RND Systems社の標準的なELISAキット(それぞれ、カタログ番号DY643およびDY720)を用いて測定する。既に記載されている通りに、レサズリンを含有する新たな培地を上清除去後にプレートに加え、37℃で3時間インキュベートすることにより、増殖をレサズリンで評価する。プレートを蛍光プレートリーダーで読み取り、AARSポリペプチドで処置したウェルのレゾルフィンに関連する蛍光を、PBSのみで処置したウェルのレゾルフィンに関連する蛍光で割った関数として、生存率/増殖を表す。新鮮な培地を加え、最初の培地交換後の16日間、細胞の健康を維持するために1日置きに新鮮な培地に交換しながら分化を維持する。15日目に、細胞を無血清培地に播く。16日目に、成熟脂肪細胞への分化をナイルレッド(Invitrogen、最終濃度3μM)染色により評価し、適当な波長の蛍光プレートリーダーで定量化する。このアッセイを行うために、細胞を10%パラホルムアルデヒドで固定し、PBSで洗浄して、0.5%BSAと0.1%TritonX−100を含有するPBS中で透過処理する。既に記載されているように、蛍光リーダーによる最終濃度1ug/mLのヘキスト色素33432での強度測定により細胞増殖を評価する。脂肪生成をナイルレッドのシグナルの強度で表す。ヘキスト染色のシグナルを用いて細胞数を評価する。

ヒト骨格筋細胞の分化および増殖 背景および治療的関連:骨格筋の発生は、多能性中胚葉細胞から筋芽細胞を生じるという決定、筋芽細胞の細胞周期からの離脱および筋細胞への分化、そして最後に骨格筋線維の増殖および成熟を含む、多段階の過程である。骨格筋分化には、筋特異的な調節遺伝子および構造遺伝子の誘導とともに、筋芽細胞の整列、伸長および多核性筋管への融合が含まれる。分子レベルにおいて、筋原性への拘束および筋特異的遺伝子発現には、MyoD、ミオゲニン、myf−5およびMRF4を含めた骨格筋特異的ヘリックス−ループ−ヘリックス(bHLH)MyoDファミリーのタンパク質、ならびに筋細胞エンハンサー結合因子2(MEF2)が含まれる。MyoDファミリータンパク質のDNA結合活性はIdにより弱められるが、このIdは、増殖中の細胞ではE2a遺伝子産物と複合体を形成し、細胞が分化するように誘導されると下方制御される。筋管への分化の決定は、複数の因子により負の影響を受ける。筋芽細胞をウシ胎仔血清、塩基性線維芽細胞増殖因子2またはトランスフォーミング増殖因子β1で処置すると、筋芽細胞の分化が抑制されることが知られている。また筋形成は、癌遺伝子、例えばc−myc、c−jun、c−fos、H−rasおよびE1aなどによっても負の調節を受ける。血清枯渇時に筋芽細胞において誘発され、MyoDファミリー遺伝子発現の誘導および筋肉分化を引き起こすシグナル伝達に関する情報はほとんどない。筋原性分化は、筋芽細胞の細胞膜上に存在するインテグリンの活性化に依存すると思われ、このことは、インテグリンが上流分子種である「裏返し」の生化学的経路の働きを示唆している。インスリン様成長因子(IGF)−Iおよび−IIとその受容体との相互作用も骨格筋分化の正の調節因子である。

したがって、筋肉発生を調節する能力を有するAARSポリペプチドは、広範な疾患における、例えば代謝性疾患、悪液質、様々な筋萎縮状態、ならびに筋萎縮が発病および症状において鍵となる役割を果たす筋骨格疾患の治療を含めた、治療的有用性を有する。ヒト骨格筋細胞(HSkMC)は、分化を経てアクチンおよびミオシン筋フィラメントを示す。HSkMCは、悪性高熱症のような遺伝性筋疾患の研究に使用されてきた。またHSkMCは、心臓への損傷を修復する心移植片として働く可能性もあるため、筋肉発生を調節する能力を有するAARSポリペプチドは、筋形成のin vitroおよびin vivoの調節因子としても有用である。

方法:この過程におけるAARSポリペプチドの潜在的な役割を評価するために、骨格筋細胞分化の標準的なアッセイを用いた。このアッセイでは、ヒト成人骨格筋細胞(HSkMC、Cell Application、カタログ番号150−05f)を健常なヒトドナーの角膜縁の骨格筋から分離する。細胞をHSkMC増殖培地(Cell Applications、カタログ番号151−500)で維持する。これらの細胞を培養し、少なくとも15集団倍加数まで増殖させることができる。分化用に、細胞を増殖培地で一継代維持し、次いで、コラーゲンで処理した96ウェル透明底黒壁TC処理プレートに、培地1mL当たり50,000細胞、1ウェル当たり100μLで細胞を播く。細胞を一晩付着させる。PBS中250nMタンパク質の最終濃度(または下の実施例で別途明示されている通り)のAARSポリペプチドまたはPBSのみを各ウェルに加える。このとき、対照ウェルには同じ体積の分化培地(Cell Applications、カタログ番号151D−250)を加える。細胞をタンパク質または分化培地とともに48時間インキュベートする。48時間後、細胞培養上清を全ウェルから回収し、増殖培地で維持されている対照ウェルを除いたプレート全体に、体積150μLの分化培地を加える。既に記載されている通りに、上清を用いて、IL6およびIL8を含めたサイトカイン産生を評価する。既に記載されている通りに、レサズリンを含有する新たな培地を上清除去後にプレートに加え、37℃で3時間インキュベートすることにより、増殖をレサズリンで評価する。顕微鏡下で細胞をモニターし、2日置きに新鮮な分化培地に交換する。10日目に、培地を除去し、細胞を10%パラホルムアルデヒドで30分間固定する。0.1%TritonX−100を含むPBSで細胞を15分間透過処理し、TR標識ファロイジンおよびヘキスト33432(既に記載されている)で細胞を染色して、アクチンと核をそれぞれ明確にする。核の強度を用いて各ウェルでの細胞増殖を決定し、ファロイジンの強度を用いて総アクチン含有量を決定する。また、細胞をアルファアクチン骨格筋抗体(GenTex、カタログ番号GTX101362)でも染色する。全ウェルに対して蛍光顕微鏡を用いたデジタル写真撮影、ならびに目視検査および採点を行う。

ヒト骨髄間葉系の分化および増殖 背景および治療的関連:間葉系幹細胞(MSC)は、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞、脂肪細胞、ベータ−膵島細胞および可能性として神経細胞を含めた各種細胞型に分化することができる多能性幹細胞である。多数の経路の転写因子、補助因子およびシグナル伝達中間体の複雑なネットワークの協調を含めた多くの様々な事象が、他の系列へのMSCの拘束に寄与する。MSCは、広範な急性および変性性の疾患を治療する可能性のある細胞集団であるため、強い治療学的関心がもたれている。

さらに、MSCの様々な発生経路への分化を調節する能力を有するAARSポリペプチドは、造血、ニューロン新生、筋形成、骨形成および脂肪生成のin vitroまたはin vivoでの調節を可能にする、ならびに例えば炎症性応答、自己免疫、癌、ニューロン変性、筋ジストロフィー、骨粗鬆症およびリポジストロフィーを含めた広範な障害および疾患における、重要な治療的有用性を有する。ヒトMSCは、免疫特権をもつ、同種移植に有利な細胞型であり、移植の拒絶および合併症のリスクを減らす。最近では、自己間葉系幹細胞を使用した、軟骨および半月板、腱ならびに骨折を含めたヒト組織の再生においても著しい進歩が見られる。また数多くの研究により、ラットにおけるMI後の心機能向上のために血管内皮増殖因子でトランスフェクトしたMSCの移植、マウス腫瘍内へのインターフェロン−β送達媒体としてのMSC、および骨形成を促進するためのBMPを発現するMSCによる遺伝子治療を含めた、遺伝子治療へのMSCの使用が調査されている。したがって、そのままでのおよび改変された治療剤としてのMSC、ならびにAARSポリペプチドが治療剤として作用しin vivoでMSCの分化を調節する可能性への強い関心により、MSCの増殖および分化の潜在的な誘導物質としてAARSポリペプチドを試験した。

方法:hMSC(ヒト骨髄間質細胞)(Cell Application、カタログ番号492−05f)を販売業者の説明書に従って維持する。培養のために、細胞を急速に解凍し、直ちに15mLの骨髄間質細胞増殖培地(Cell Application、カタログ番号811M−250)へ移し、標準的な無菌組織培養処置フラスコに播く。細胞の集密度が60%を超えるまで、培地を1日置きに新鮮な骨髄間質細胞増殖培地と交換する。細胞を加湿環境中、5%CO2、37℃で増殖させ、無菌技術ならびにゴーグル、手袋および実験着を含めた適当な個人用保護具を用いて、BSL2認定済みの組織培養フード内で使用する。分化用に、細胞を透明底黒壁96ウェルの組織培養処理アッセイプレートに50,000細胞/mLの濃度で播く。1ウェル当たり250nMの最終濃度(または下の実施例で別途明示されている通り)のtRNA合成酵素由来タンパク質を各ウェルに加える。骨形成または軟骨形成分化培地(StemPro、Invitrogen、それぞれカタログ番号A10072−01およびA10071−01)で刺激する陽性対照を除くすべての細胞を、増殖培地で2日間維持する。細胞をAARSポリペプチドに48時間曝露する。可溶性VCAMをRND Systems社の標準的なELISAキット(カタログ番号DY643)を用いて測定する。既に記載されている通りに、レサズリンを含有する新たな培地を上清除去後にプレートに加え、37℃で3時間インキュベートすることにより、増殖をレサズリンで評価する。プレートを蛍光プレートリーダーで読み取り、AARSポリペプチドで処置したウェルのレゾルフィンに関連する蛍光を、PBSのみで処置したウェルのレゾルフィンに関連する蛍光で割った関数として、生存率/増殖を表す。細胞生存率を評価した後、2回の培地交換によりレサズリンを除去し、0.5×分化培地を全ウェルに加える。培地交換後の10日間、細胞の健康を維持するために1日置きに新鮮な培地に交換しながら、全ウェルの目視検査により分化をモニターする。最初の分化交換の10日後に、ELF−97色素(Invitrogen、カタログ番号E6601)を用いたアルカリホスファターゼ染色により分化を評価した(Yangら,Nature Protocol(6)187−213(2011) doi:10.1038/nprot.2010.189)。

ヒト肺動脈平滑筋細胞(hPASMC)の増殖および分化 背景および治療的関連:正常なヒト成人の肺血管の肺動脈平滑筋細胞(PASMC)のほとんどが静止状態かつ非遊走性であり、主として肺での収縮機能の遂行に関与している。しかし、PASMCは分化を終えたわけではなく、自らの表現型を調節する能力を有し、局所的な環境的キューの変化に応答してその静止状態から脱する。この分化状態は、組織の要求の変化に応答した発生、組織損傷および血管再構築において生じ得る。肺高血圧症(PH)は、血管緊張およびPASMC収縮性の増加ならびに血管再構築の結果としての末梢肺血管抵抗の増加を含めた各種の基礎状態に関連する。血管再構築には、小肺動脈(PA)壁でのPASMC増殖、マトリックス物質合成ならびに細胞間および細胞−マトリックス間の相互作用の変化が含まれ、これにより血管壁の平滑筋要素の厚さの増大および通常は筋肉化されていない遠位部PAの異常な筋肉化が生じる。この過程は、管腔径縮小および末梢抵抗増加の一因となる。疾患の一次的原因におけるPASMCの正確な役割は議論の余地のあるところだが、生じる変化が疾患の臨床的帰結において鍵となる役割を果たす。細胞分化研究の重要な工程は、細胞の分化した機能に寄与する細胞特異的または細胞選択的な遺伝子セットの同定である。血管SMCの分化または成熟の相対的状態の有用なマーカーとして働く各種の平滑筋細胞(SMC)遺伝子、例えばSMアルファ−アクチン、SM MHC、h1−カルポニン、SM22−アルファ、デスミン、メタビンキュリン、スムーテリンなどが同定されている。最も広く使用されているマーカーはSMアルファ−アクチンであるが、それは部分的には、このタンパク質に対して非常に親和性および選択性の高い多数の抗体が購入できるという理由による。PASMCの変化がその本来の特性によるものなのか、またはPASMC増殖を支配する分子事象の調節不全によるものなのかは依然として不明である。しかし、調節キューを決定し、潜在的な調節不全を管理することにより、肺高血圧症、血管疾患を含めた各種の血管および肺疾患の管理に対する重要な治療的洞察が得られる。

したがって、正常な成人ヒト由来のヒトPASMCの分化および/または増殖を調節する能力を有するAARSポリペプチドは、例えば肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾患、特発性肺線維症および喘息を含む炎症性および閉塞性肺疾患を含めた各種の血管および肺疾患における治療的有用性を有する。

方法:HPASMC(Cell Applications、カタログ番号352−05a)を、使用前に125mLフラスコ内の15mL培地中、HPASMC増殖培地(Cell Applications、カタログ番号352−05a)で一継代維持する。細胞を加湿環境中、5%CO2、37℃で維持し、無菌技術ならびにゴーグル、手袋および実験着を含めた適当な個人用保護具を用いて、BSL2認定済みの組織培養フード内で使用する。80μL体積の細胞を、増殖培地中、約50,000細胞/mLの細胞密度でコラーゲンコートプレートに一晩播く。AARSポリペプチドを無菌PBS中、1ウェル当たり250nMの最終濃度(または下の実施例で別途明記されている通り)で各ウェルに加える。対照ウェルは同じ体積のPBSのみを含む。陽性対照試料を販売業者提供のHPASMC分化培地(Cell Applications、カタログ番号311D−250)でインキュベートする。細胞を基本培地(Cell Applications、カタログ番号310−470)中、AARSポリペプチドまたはPBSに48時間曝露した後、全プレートの培地を分化培地に交換する。上清を回収し、既に記載されている通りに、IL6およびIL8を含めたサイトカイン産生の評価に用いる。既に記載されている通りに、レサズリンを含有する新たな培地を上清除去後にプレートに加え、37℃で3時間インキュベートすることにより、増殖をレサズリンで評価する。1日置きに培地を交換しながら、細胞を10日間モニターする。上記の固定、0.1%TritonX−100による透過処理の後、抗SMA−アルファ抗体(GeneTex、カタログ番号GTX101362)およびAlexa405コンジュゲート二次抗体を用いた平滑筋アクチン−アルファ染色の定量化により、分化を評価する。10%ホルムアルデヒドで30分間の細胞を固定した後、ヘキスト染色により増殖を評価する。励起波長(Ex)405nm/発光波長(Em)450nmのボトムリーディング蛍光プレートリーダーを用いて、ヘキスト色素を読み取る。Alexa−488標識ファロイジン染色剤(Invitrogen、カタログ番号A12379)を使用して、総アクチン染色を評価する。

AARSポリペプチドの細胞との結合の解析(下のデータ表のアッセイH1〜H10) 背景および治療的関連:AARSポリペプチドと特定の細胞型との結合は、対象とする細胞型が、対象とするAARSポリペプチドに対して特異的な受容体を発現することを示す。細胞結合は、対象とする細胞型に応じて、その細胞または同様の型の細胞の活性または挙動の調節におけるin vivoでのAARSポリペプチドの潜在的な役割を示唆する。このような調節的な役割の具体例としては、例えば、B細胞およびT細胞(免疫調節/走化性/自己免疫/炎症);HepG2細胞(代謝制御、コレステロールの取込みまたは代謝);THP−1、jurkat、Raji細胞(免疫調節/走化性/自己免疫/炎症)、血小板(血小板生成)、3T3L1脂肪細胞(脂質生成/代謝)ならびにC2C12マウス筋芽細胞(筋形成、骨形成)の結合および調節が挙げられる。

血液細胞との結合 方法:血液を健常なドナーからEDTAチューブに採取する。2mLの全血を5mLのFalcon FACSチューブに入れる。2mLの染色緩衝液(PBS+2%FBS)を加え、3〜5秒間ボルテックスし、300×gで5分間、遠心分離する。上清を吸引し、洗浄を繰り返し、ペレットを2mLの染色緩衝液中で再懸濁させる。

洗浄した血液100μlをきれいな5mLのFACS試料チューブに移す。His6−またはV5−His6−タグ化AARSポリペプチドを、以下で概説する具体的な実験で明記される濃度でチューブに加え、氷上で45分間インキュベートする。インキュベーション後、様々な細胞型の表面マーカーに対する抗体(BD Pharmigen、カタログ番号560910、555398、555415、340953、560361)およびFITC標識抗V5タグ抗体(V5−FITC、Invitrogen、カタログ番号R96325)またはFITC標識抗His6抗体(AbCam、カタログ番号ab1206)をチューブに加え、暗所で30分間、氷上でインキュベートする。インキュベーション後、2mLのBD FACS溶解溶液(カタログ番号349202)をチューブに加えた。試料をボルテックスし、氷上に15分間置く。FACS解析の前に、試料を2mLのPBSで1回洗浄し、2%ホルムアルデヒドを含むPBS2mL中で再懸濁させる。抗体だけでは有意なシグナルを発しない細胞集団の25%を上回る細胞と結合するAARSポリペプチドをヒットと見なす。

血小板結合アッセイ:洗浄した血液50μLをきれいな5mLのFACS試料チューブに移し、His6−またはV5−His6−タグ化AARSポリペプチドを、以下で概説する具体的な実験で明記される濃度でチューブに加え、チューブを氷上で45分間インキュベートする。20μLのCD61汎用血小板抗体(BD Pharmigen、カタログ番号555754)および0.5μLの抗V5−FITC標識抗体(Invitrogen、R96325)またはFITC標識抗His6抗体(AbCam、カタログ番号ab1206)を各チューブに加える。チューブを30分間、光から保護しながら氷上に置く。1%ホルムアルデヒドを含むPBSで試料を総体積2mLとし、24時間以内にフローサイトメトリーで解析する。抗体だけでは有意なシグナルを発しない細胞集団の25%を上回る細胞と結合するAARSポリペプチドをヒットと見なす。

培養中での細胞との結合:完全RPMI培地100μL中約1×106個の細胞を5mLのFACSチューブに入れる。His6−またはV5−His6−タグ化AARSポリペプチドを、以下で概説する具体的な実験で明記される濃度でチューブに加え、チューブを45分間、氷上に置く。細胞試料を1mLの染色緩衝液(PBS+2%FBS)で2回洗浄し、次いで、200μg/mLのヒトIgGを含み、抗V5−FITC抗体(Invitrogen、R96325)またはFITC標識抗His6抗体(AbCam、カタログ番号ab1206)を含む有染色緩衝液0.5μLを加え、試料を30分間、光から保護しながら氷上でインキュベートする。試料を1mLの染色緩衝液で2回洗浄した後、1%ホルムアルデヒドを含むPBSで総体積2mLとし、24時間以内にフローサイトメトリーで解析する。抗体だけでは有意なシグナルを発しない細胞集団の25%を上回る細胞と結合するAARSポリペプチドをヒットと見なす。

動物実験:造血および循環サイトカインの調節 背景および治療的関連:造血(「hematopoiesis」;あるいは「haemopoiesis」または「hemopoiesis」)とは、血液細胞成分の形成のことである。細胞性血液成分はすべて、骨の髄質(骨髄)に存在しすべての異なる成熟血液細胞タイプを生じる固有の能力を有する造血幹細胞(HSC)から生じる。HSCは自己再生する、すなわち、HSCが増殖するとき、少なくともその一部の娘細胞がHSCのままで存在するため、幹細胞のプールが枯渇することはない。しかし、それ以外のHSC娘細胞(骨髄前駆細胞およびリンパ球前駆細胞)は、1つ以上の特定のタイプの血液細胞が生じる別の分化経路のいずれかにそれぞれ従うことができるが、それ自体は自己再生することができない。したがって、AARSポリペプチドへの曝露に応答した血液成分の変化は、AARSポリペプチドが造血を調節し、造血幹細胞の発生を制御することが可能であることを示す。

すべての血液細胞は3つの系列、すなわち赤血球細胞、リンパ球および骨髄細胞に分けることができる。

赤血球細胞は、酸素を運搬する赤血球である。網状赤血球および赤血球はともに機能性であり、血液中に放出される。したがって、網状赤血球数から赤血球生成の速度が推定され、赤血球数の変化は、AARSポリペプチドが赤血球生成を調節することを示す。

リンパ球は適応免疫系の土台である。リンパ球は共通のリンパ球前駆細胞から生じる。リンパ球系は主としてT細胞とB細胞(白血球のタイプ)からなる。したがって、AARSポリペプチドへの曝露に応答した白血球の数または組成の変化は、AARSポリペプチドがリンパ球生成を調節することを示す。

骨髄細胞には顆粒球、巨核球およびマクロファージがあり、これらは共通の骨髄前駆細胞から生じ、自然免疫、適応免疫および血液凝固を含めた様々な役割に関与する。したがって、AARSポリペプチドへの曝露に応答した骨髄性細胞の数および組成の変化は、AARSポリペプチドが骨髄造血を調節することを示す。同じ原理を用いて、AARSポリペプチドへの曝露に応答した顆粒球数の変化を測定することにより、AARSポリペプチドが顆粒球生成を調節するか否かを確証することができる。血液中の巨核球または血小板の組成または数の変化により、巨核球形成調節におけるAARSポリペプチドの役割を推測し得る。

野生型マウスまたは炎症の各種動物モデル系におけるサイトカイン放出により、AARSポリペプチドが炎症性応答を調節する潜在的な能力の初期評価が得られる。例えば、急性慢性炎症過程におけるAARSポリペプチドの役割を、食餌性肥満(DIO)のマウスモデルを用いて容易に評価することができる。DIOモデルは、げっ歯類を高脂肪食で数か月間飼育し、肥満、インスリン抵抗性および免疫系機能不全の増大を引き起こすことを軸としたものある。この免疫系調節不全の具体的な結果として、DIO個体における炎症誘発性サイトカインの産生が増加し、慢性全身性炎症の状態が生じる。低悪性度の炎症が、肥満症ならびにヒトでは代謝症候群と呼ばれる状態で見られるものと同じ糖尿病表現型の発達および維持の一因であることを示す証拠が増えている。したがって、AARSポリペプチドが、免疫系を調節し、この慢性炎症状態の分利に向けてホメオスタシスのバランスを回復する能力は、特に限定されないが、代謝性疾患、糖尿病、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、肥満症、ならびに例えば多発性硬化症、血管障害およびアレルギー性障害を含めた様々な自己免疫性の疾患および障害の症状ならびに副次的影響の治療ならびに予防を含め、数多くの疾患および障害において特に有効であろう。

方法:雄性野生型の対照マウス(C57BL/6)または食餌性肥満マウス(C57BL/6NHsd)をHarlan社(Indianapolis、IN)から購入し、個別に飼育する。DIOマウスには高脂肪食(カタログ番号TD.06414、カロリー(kcal)の60%が脂肪)を与え、対照マウスには通常の食餌(カタログ番号2018S−、カロリー(kcal)の18%が脂肪)を与える。DIOマウスを6週齢から始めて合計10週間、高脂肪食で飼育する。DIOマウスおよび対照マウスはともに、食餌と水分を自由に摂取させる。16週齢で、マウスを体重別に5個体からなる群に分けて無作為化する。2日目に、マウスの体重を量り、処置前の全血球計算(CBC)解析用に尾静脈採血(10μL)を行う。1日目に、マウスの体重を量り、溶媒(PBS)または10mg/kgの個々のAARSポリペプチドを尾静脈から静脈内に注射する。注射の4時間後、後のサイトカイン用にマウスの顔面静脈から採血(150−200μL)を行う。2、3および4日目に、1日目と同じようにマウスに静脈内投与を行う。5日目に、体重測定後にマウスを屠殺し、全血球計算(CBC解析)(血漿−EDTA)およびサイトカイン試験(血清)用に血液を心臓穿刺により採取する。

CBCおよびサイトカイン解析:注射前(−2日目)および最後の注射の24時間後(5日目)の採血の全血球計算を解析する。CBC値を全白血球数および全赤血球形態について評価する。好中球、リンパ、単球、好酸球および好塩基球の全体および部分の百分率により白血球をさらに特徴付ける。赤血球分析には、ヘモグロビン(dL)、ヘマトクリット値(%)、平均血球体積(fL)、平均赤血球ヘモグロビン、平均赤血球ヘモグロビン濃度(%)および全血小板数(103/μL)の測定が含まれる。CBC解析はAntech Diagnostics社(Fishers、IN)が行う。

注射の4時間後(1日目)および最後の注射の24時間後(5日目)に循環サイトカインレベルを調べる。多分析物プロファイリングのために、血清を分離して急速凍結し、Rules Based Medicine社(Austin、TX)に送る。血清試料を、Apo A−1、CD40、CD40−L、CRP、ET−1、エオタキシン、EGF、第VII因子、フィブリノーゲン、FGF−9、塩基性FGF、GST−α、GCP−2、GM−CSF、KC/GROα、ハプトグロビン、IgA、IFNγ、IP−10、IL−1α、IL−1β、IL−10、IL−11、IL−12p70、Il−17A、IL−18、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、LIF、リンホタクチン、M−CSF−1、MIP−1α、MIP−1β、MIP−1γ、MIP−2、MIP−3β、MDC、MMP−9、MCP−1、MCP−3、MCP−5、MPO、ミオグロビン、SAP、SGOT、SCF、RANTES、TPO、組織因子、TIMP−1、TNF−α、VCAM−1、VEGF−AおよびvWFを含めた59の固有のバイオマーカーを含むRodentMapパネルを用いて解析する。サイトカインが、溶媒対照と比べて少なくとも2倍増加するか、または少なくとも50%減少していれば、サイトカインレベルの変化をヒットとして数えた。

実施例1 タンパク質トポグラフィーおよび泳動解析プラットフォームを用いたAARSS由来のタンパク質分解フラグメントおよび選択的スプライシング産物の同定 細胞系、馴化培地および組織のAARSフラグメントを同定するために、試料を以下の方法で調製する。

マウスマクロファージ(RAW264.7)、細胞質ゾルおよび馴化培地:細胞を15×106細胞/フラスコの密度で無血清DMEM培地により処理する。48時間後、馴化培地および細胞ペレットを回収して処理する。分泌プロテオームおよび細胞質ゾルプロテオーム画分のタンパク質200μgをSDS−PAGEで分離し、質量分析法による解析用にゲルスライスを調製する。

マウス膵臓組織:3匹のマウスの膵臓を、プロテアーゼ阻害剤を加えたPBS中で、刻んで、dounceホモジナイザーでホモジナイズし、超音波処理する。細胞質ゾルプロテオームを遠心分離により分離し、タンパク質200μgをSDS−PAGEで分離し、質量分析法による解析用にゲルスライスを調製する。

マウス肝臓組織:3匹のマウス肝臓を、プロテアーゼ阻害剤を加えたPBS中で、刻んで、douncホモジナイザーでホモジナイズし、超音波処理する。細胞質ゾルプロテオームを遠心分離により分離し、タンパク質200μgをSDS−PAGEで分離し、質量分析法による解析用にゲルスライスを調製する。

ultimate 3000 μLCシステム(Dionex)を備えたLTQ XLイオントラップ質量分析器(ThermoFisher)でゲル内消化物を解析する。最初に、Dionexオートサンプラーを用いて、アセトニトリル5%を含む0.1%ギ酸とともに試料をPepTrap(michrom)に10分間負荷する。次いで、10cmのC18レジン(michrom)を含んだ100μm(内径)のフューズドシリカキャピラリーカラムで試料を分析する。5〜33.5%のアセトニトリルを含む0.1%ギ酸の直線勾配を110分以内に用いて、ペプチドを流速0.45μl/分でカラムから質量分析器へ溶出させる。

1つのMSフルスキャンの後に、最も多く存在する7つのイオンの7つのMS/MSスキャンが続くように、LTQをデータ依存型のスキャンモードで作動させる。動的排除を、繰り返し回数が1、繰り返し持続時間が20秒、排除リストのサイズが300および排除持続時間が60秒で有効にする。

LC−MS/MS解析の後、BioWorks3.3.1(SEQUEST)でマウスIPIデータベースの連結標的/デコイバリアントを用いて、生データを検索する。DTASelectでSEQUESTデータのフィルター処理および選別を行う。この方法で同定された配列を表1、4および7に示す。

実施例2 ディープシーケンシングを用いたスプライスバリアントの同定 アミノアシルtRNA合成酵素転写産物に関して濃縮されたcDNAライブラリーのハイスループットシーケンシングを用いて、アミノアシルtRNA合成酵素のスプライスバリアントを同定する。ヒト成人および胎児脳のような組織の全RNA抽出物からcDNA鋳型を調製し、すべての注釈付きヒトアミノアシルtRNA合成酵素およびその関連タンパク質のすべての注釈付きエクソンに特異的なプライマー配列を用いて、アミノアシルtRNA合成酵素転写産物に関して濃縮する。

ヒト全RNAをClontech社から入手する。細胞系およびマウス組織試料用に、RNA ExtractII Kit(MN)を用いて全RNAを抽出する。全RNA試料中のゲノムDNAをDNAアーゼIで消化する。成熟メッセンジャーRNA(mRNA)を得るために、polyA+RNAの結合および5’−リン酸依存性エキソヌクレアーゼによる5’−キャップのないRNAの消化により、RNA試料を2回濃縮する。アミノアシルtRNA合成酵素遺伝子のエクソン配列とアニールするプライマーを用いて、成熟RNAから相補的なDNA(cDNA)を合成する。アミノアシルtRNA合成酵素遺伝子に関して濃縮したトランスクリプトームを、アミノアシルtRNA合成酵素エクソン特異的cDNAおよびアミノアシルtRNA合成酵素エクソンプライマーの様々な組合せを用いた多重PCRにより増幅する。二本鎖アミノアシルtRNA合成酵素濃縮トランスクリプトームPCR産物の両端を酵素により修復した後、修復されたフラグメントの3’末端にA−オーバーハングを付加する。次いで、Illumina社のMultiplex Sequencing KitによりアミノアシルtRNA合成酵素濃縮トランスクリプトームPCR産物にシーケンシングアダプターおよびインデックス配列を付加して、ディープシーケンシングのためのcDNAライブラリーを作製する。簡潔に述べれば、3’−Aオーバーハングを有するアミノアシルtRNA合成酵素濃縮トランスクリプトームPCR産物を、キット中に含まれるInPEアダプターオリゴヌクレオチドと連結する。InPEアダプターを有するPCR産物にインデックス配列を付加する。ディープシーケンシングに十分なDNAフラグメントを得るために、インデックス配列を有するPCR産物をPCRでさらに増幅する。様々なインデックスを有するアミノアシルtRNA合成酵素濃縮cDNAライブラリーをプールし、Illumin社のDNA配列決定機を用いて配列決定し、50塩基のペアエンドリードを得る。選択的スプライシング事象の同定のために、シーケンシングリードをヒトまたはマウスゲノムにマッピングする。「Splicemap」ソフトウェア(http://www−stat.stanford.edu/〜kinfai/SpliceMap/の公開ダウンロードで入手)を用いて、スプライス部位を同定する。

これらのcDNAのディープシーケンシングを行って、約1×106個の約50ヌクレオチド長のシーケンシングリードを作製する。アミノアシルtRNA合成酵素のエクソンに特異的な配列を注釈付きエクソン部位に対して問い合わせ、新規なエクソン部位を選択的スプライシング事象として同定する。

表2、5および8の「5’エクソン」および「3’エクソン」が書かれた欄があれば、それはそのエクソンがcDNA配列中でともに融合されているといことを示す。表2、5および8は、選択的スプライス事象、このようなスプライス事象を含む転写産物およびこれらの転写産物により発現されたポリペプチドに関して同定された配列を示す。ディープシーケンシングにより同定された選択的スプライスバリアントは、表2、5および8では、ヒト成人または胎児脳の「シーケンシングリード」と書かれた欄に1以上の数が記入されているものと確認される。

実施例3 バイオインフォマティクスを用いたAARSポリペプチドの同定 バイオインフォマティクスを用いてAARSタンパク質フラグメント(リセクチン(resectin)またはアペンダクリン(appendacrine) ペプチド)を同定する。FASTA(ウェブサイトhttp://fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/fasta_www.cgiで入手可能)またはNCBIのBLASTPプログラム(ウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgi?PROGRAM=blastp&BLAST_PROGRAMS=blastp&PAGE_TYPE=BlastSearch&SHOW_DEFAULTS=on&LINK_LOC=blasthomで入手可能)のようなプログラムを用いて、完全長ヒトアミノアシルtRNA合成酵素のアミノ酸配列を、細菌(Escherichia coli)由来のそのオルソログの完全長アミノ酸配列とともに整列させる。ヒトタンパク質由来のリセクチン(resectin)配列を、アライメント中の細菌配列にギャップが存在する領域または2種間の相同性が低い領域をカバーする配列として同定する。表3、6および9のペプチドおよび対応するDNA配列には、この方法で同定された例が含まれている。

実施例4 質量分析法によるAARSポリペプチドの差次的発現の同定 実施例1に記載されているPROTOMAP技術を用いて、様々な組織/細胞型におけるグリシルtRNA合成酵素の差次的発現を比較する(配列および比較に関しては、表1、4および7を参照されたい)。すなわち、アミノアシルtRNA合成酵素リセクチン(resectin)の発現を、マウス肝臓組織とマウス膵臓組織との間で比較する。アミノアシルtRNA合成酵素リセクチン(resectin)の発現を、RAW264.7の細胞質ゾルと血清飢餓の48時間後にRAW264.7細胞から回収した馴化培地との間で比較する。

実施例5 ディープシーケンシングによるAARSポリペプチドの差次的発現の同定 スプライス事象の差次的発現を試験するために、様々な組織から調製したcDNAに対してディープシーケンシングを行う。

アミノアシルtRNA合成酵素に特異的な選択的スプライス事象の発現は予想外のことであり、かつ生物学的重要性を示している。様々なトランスクリプトーム試料のディープシーケンシングで見られるリードの相対数のばらつきは、アミノアシルtRNA合成酵素の選択的スプライス事象が特異的に制御されるものであり、試料処理に起因する単なるアーチファクトではないということを示している。

実施例6 抗体スクリーニング 特定のアミノアシルtRNA合成酵素フラグメントとの選択的結合(例えば、親完全長酵素と比べて親和性が10倍以上高い)を示す抗体の発見を容易にするために、ヒト抗体ファージディスプレイライブラリーを、アフィニティー濃縮技術(パニング)を用いてAbD Serotec社(MorphoSys(商標)社、Martinsried/Planegg、Germanyの一部門)でスクリーニングする。アミノアシルtRNA合成酵素フラグメントによる複数ラウンドのスクリーニング後に濃縮された抗体を、次いで、フラグメントおよび親完全長酵素に対する反応性に関してELISAにより特徴付ける。アミノアシルtRNA合成酵素フラグメントとの選択的結合(例えば、10倍以上高い親和性)を示すクローンをさらに特徴付ける。

必要な特異性がこの工程の終了時に得られない場合、完全長酵素による予備吸着工程および/またはカウンタースクリーニングのようなサブトラクション法を用いて、交差反応抗体を排除し、選択工程をアミノアシルtRNA合成酵素フラグメント上の固有のエピトープに向けて進める。

実施例7 体系的なPCRを用いたスプライスバリアントの同定 組織または細胞(例えば、ヒト脳、IMR−32およびHEK293T)の全RNA抽出物からPCR反応用のcDNA鋳型を逆転写する。遺伝子の5’非翻訳領域または5’側半分のエクソンとアニールするように設計された順方向プライマー(FP1)と、遺伝子の3’側半分のエクソンまたは3’UTRとアニールするように設計された逆方向プライマー(RP1)とをペアにしたアミノアシルtRNA合成酵素特異的プライマーを用いて、PCR反応を行う。増幅されたDNA産物をアガロースゲル電気泳動により解析して、カノニカルな転写産物から増幅されたフラグメントと大きさの異なるPCR産物を同定する。これらの異なるPCR産物を切り取ってゲルから単離し、標準的なDNA配列解析用のベクター内に連結する。カノニカルな転写産物とは異なる配列として選択的スプライシングバリアントを同定する。この体系的なPCR法により同定されたスプライスバリアントを、表2、5および8に示す。

実施例8 選択されたAARSポリヌクレオチドのコドン最適化 さらなる生化学的、生物物理学的および機能的特徴付けのために、典型的なAARSポリペプチド(表E2にまとめてある)を以下の1つ以上の基準に基づいて選択する:i)AARSポリペプチドタンパク質分解フラグメントの同定、ii)AARSポリペプチドスプライスバリアントの同定、iii)バイオインフォマティック解析によるAARSポリペプチドの同定、iv)特定のAARSポリペプチドの差次的発現の証拠、v)AARSタンパク質のドメイン構造、vi)AARSポリペプチドの大きさ、およびvii)同様の重複した配列の最小化。

表E2に記載の選択されたAARSポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、表E2に記載の遺伝子合成法を用いて、一般的な材料および方法の節に記載されている通りに、適当なN末端またはC末端エピトープタグとともに合成およびクローニングする。

実施例9 小規模な細菌発現および精製 表E2に記載のAARSポリペプチドを、一般的な材料および方法の節に記載されている通りに大腸菌(E.coli)内で発現させる。可溶性および封入体局在性のAARSポリペプチドの相対的発現を下の表E3にまとめる。

驚くべきことに、タンパク質発現データは、大腸菌(E.coli)での発現で可溶性タンパク質の高レベルな発現を示すタンパク質ドメインファミリーが少なくとも2つ存在することを示している。具体的には、データは、AARSポリペプチドGlyRS1C15(アミノ酸612〜739)により、大腸菌(E.coli)で高度に発現される第一の新規タンパク質ドメインの境界が定められ、またAARSポリペプチドGlyRS1I3(アミノ酸57〜121)により、大腸菌(E.coli)で高度に発現される第二の新規タンパク質ドメインの境界が定められることを示している。さらに、残りのタンパク質の大部分を、続くリフォールディングのために封入体内で容易に発現させることができた。

実施例10 大規模なAARSポリペプチド産生 さらなる機能的および生物物理学的特徴付けを可能にするために、典型的なAARSポリペプチドを大量に調製する。表E4に記載のAARSポリペプチドを、一般的な材料および方法の節に記載されている通りに大腸菌(E.coli)内で発現させる。発現された各可溶性タンパク質の収量および生物物理学的特性を下の表E4にまとめる。

これらの実験の結果から、AARSタンパク質のGlyRS1N6、GlyRS1I3およびGlyRS1C15ファミリーの典型的なAARSタンパク質が、適切な初期のタンパク質発現収量および溶解性を示すことが確証される。

実施例11 典型的なAARSポリペプチドの転写プロファイリング AARSポリペプチドが遺伝子発現を調節する能力を試験するために、選択されたAARSポリペプチドを間葉系幹細胞またはヒト骨格筋細胞とともに、表E5に示される時間および濃度でインキュベートした。

表E5において、各カラム内の数値は、一般的方法の節に記載されているように対照試料に比べて正または負に少なくとも4倍調節された遺伝子の数を表す。試験した特定の形態のAARSポリペプチドが、間葉系幹細胞(MSC)および/またはヒト骨格筋細胞(HSkMC)に添加すると転写を調節する驚くべき能力を有し、したがって発生運命または分化状態を調節する可能性があることをデータは示している。表中の数字が太字の網掛けセルは、AARSポリペプチドが、表中に示される細胞系および時間で遺伝子転写の調節に対して有意な影響を示す例を表す。

GlyRS1N1、GlyRS1N6、GlyRS1C1、GlyRS1C2、GlyRS1C3、GlyRS1C4、GlyRS1C5、GlyRS1C15、GlyRS1I1、GlyRS1I2およびGlyRS1I3は、間葉系幹細胞および/またはヒト骨格筋細胞遺伝子発現の主要な調節因子であるらしいと結論付けられる。

実施例12 AARSポリペプチドの機能プロファイリング AARSポリペプチドが表現型の過程の範囲を調節する能力を試験するために、選択されたAARSポリペプチドを、一般的方法の節ならびに表E5およびE6に記載されている細胞型および条件を用いてインキュベートした。

GlyRS1N1、GlyRS1N6、GlyRS1C1、GlyRS1C2、GlyRS1C3、GlyRS1C4、GlyRS1C5、GlyRS1C15、GlyRS1I1、GlyRS1I2およびGlyRS1I3は、増殖、分化、サイトカイン放出、好中球活性化、アセチル化LDL取込み、細胞接着および走化性の主要な調節因子であろうと結論付けられる。多くの場合に、N末端およびC末端融合タンパク質が、転写プロファイリング実験および表現型スクリーニング実験の両方において活性の様々なパターンを有するというのは、注目すべきことである。このデータは、これらのAARSポリペプチドに関して、AARSポリペプチドがインタクトなtRNA合成酵素の一部である場合、または翻訳により別のタンパク質の一端に融合された場合には新規な生物活性が抑制されるが、AARSポリペプチドが遊離のアミノ末端またはカルボキシ末端を有する場合は、この生物活性が明らかになるという仮説と一致する。

転写プロファイリング実験との関連で考えれば、表現型スクリーニングデータは、AARSポリペプチドGlyRS1N1(アミノ酸55〜450)により、広範囲の表現型スクリーニングアッセイにおいて非常に活性な第一の新規タンパク質ドメインの境界が定められることを示している。

したがって、i)機能的に非常に活性であり、ii)大腸菌(E.coli)で容易に作製および産生することができ、かつiii)好ましいタンパク質安定性および凝集性を示す、非常に活性な第一の新規AARSポリペプチドドメインのおよその境界(すなわち、約+/−5アミノ酸以内)が、グリシルtRNA合成酵素のアミノ酸55〜450を含むAARSポリペプチドにより定められると結論付けられる。

また表現型スクリーニングのデータは、AARSポリペプチドGlyRS1N6(アミノ酸55〜189+8aa)により、広範囲の表現型スクリーニングアッセイにおいて非常に活性な、第二の新規タンパク質ドメインの境界が定められることも示している。したがって、グリシルtRNA合成酵素のアミノ酸55〜189を含むAARSポリペプチドにより、i)機能的に非常に活性であり、ii)大腸菌(E.coli)で容易に作製および産生することができ、かつiii)好ましいタンパク質安定性および凝集性を示す、非常に活性な第二の新規AARSポリペプチドドメインのおよその境界(すなわち、約+/−5アミノ酸以内)が定められると結論付けられる。

また表現型スクリーニングのデータは、AARSポリペプチドGlyRS1I1(アミノ酸213〜554)およびGlyRS1I2(アミノ酸91〜561)により、広範囲の表現型スクリーニングアッセイにおいて非常に活性な第三の新規タンパク質ドメインの境界が定められることも示している。したがって、グリシルtRNA合成酵素のアミノ酸213〜554を含むAARSポリペプチドにより、i)機能的に非常に活性であり、ii)大腸菌(E.coli)で容易に作製および産生することができ、かつiii)好ましいタンパク質安定性および凝集性を示す、非常に活性な第三の新規AARSポリペプチドドメインのおよその境界(すなわち、約+/−5アミノ酸以内)が定められると結論付けられる。

グリシルtRNA合成酵素のアミノ酸213〜554を含むものから、グリシルtRNA合成酵素のアミノ酸91〜561を含むものまでの任意のAARSポリペプチドが、記載の特定のAARSポリペプチドと機能的に同等であるということを当業者は理解するであろう。

また表現型スクリーニングのデータは、AARSポリペプチドGlyRS1C2(アミノ酸510〜739)、GlyRS1C4(アミノ酸481〜739)、GlyRS1C5(アミノ酸3aa+567〜739)およびGlyRS1C15(アミノ酸612〜739)により、広範囲の表現型スクリーニングアッセイにおいて非常に活性な第四の新規タンパク質ドメインの境界が定められることも示している。したがって、グリシルtRNA合成酵素のアミノ酸612〜739を含むAARSポリペプチドにより、i)機能的に非常に活性であり、ii)大腸菌(E.coli)で容易に作製および産生することができ、かつiii)好ましいタンパク質安定性および凝集性を示す、非常に活性なさらなる新規AARSポリペプチドドメインのおよその境界(すなわち、約+/−5アミノ酸以内)が定められると結論付けられる。

グリシルtRNA合成酵素のアミノ酸612〜739を含むものから、グリシルtRNA合成酵素のアミノ酸510〜739を含むものまでの任意のAARSポリペプチドが、記載の特定のAARSポリペプチドと機能的に同等であるということを当業者は理解するであろう。

また表現型スクリーニングのデータは、AARSポリペプチドGlyRS1I3(アミノ酸57〜121)により、広範囲の表現型スクリーニングアッセイにおいて非常に活性な第五のさらなる新規タンパク質ドメインの境界が定められることも示している。したがって、グリシルtRNA合成酵素のアミノ酸57〜121を含むAARSポリペプチドにより、i)機能的に非常に活性であり、ii)大腸菌(E.coli)で容易に作製および産生することができ、かつiii)好ましいタンパク質安定性および凝集性を示す、非常に活性なさらなる新規AARSポリペプチドドメインのおよその境界(すなわち、約+/−5アミノ酸以内)が定められると結論付けられる。

また表現型スクリーニングのデータは、AARSポリペプチドGlyRS1C1(アミノ酸303〜739)およびGlyRS1C3(アミノ酸316〜739)により、広範囲の表現型スクリーニングアッセイにおいて非常に活性な第六の新規タンパク質ドメインの境界が定められることも示している。したがって、グリシルtRNA合成酵素のアミノ酸316〜739を含むAARSポリペプチドにより、i)機能的に非常に活性であり、ii)大腸菌(E.coli)で容易に作製および産生することができ、かつiii)好ましいタンパク質安定性および凝集性を示す、非常に活性なさらなる新規AARSポリペプチドドメインのおよその境界(すなわち、約+/−5アミノ酸以内)が定められると結論付けられる。

グリシルtRNA合成酵素のアミノ酸316〜739を含むものから、グリシルtRNA合成酵素のアミノ酸303〜739を含むものまでの任意のAARSポリペプチドが、記載の特定のAARSポリペプチドと機能的に同等であるということを当業者は理解するであろう。

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