神経保護のための方法および組成物

申请号 JP2014540054 申请日 2012-11-01 公开(公告)号 JP6118331B2 公开(公告)日 2017-04-19
申请人 クォーク ファーマシューティカルズ インコーポレーティッド; QUARK PHARMACEUTICALS,INC.; 发明人 フェインスタイン エレナ;
摘要
权利要求

神経保護を必要とする対象の内のニューロンの神経保護を提供するために使用するための医薬の製造のための、配列番号1〜3のいずれか1つに示される配列を有するmRNAをコードするCASP2遺伝子の発現を下方制御する二本鎖RNA(dsRNA)化合物またはその塩の使用であって、前記対象は、メニエール病に罹っているか、または罹りやすい対象である、使用。メニエール病を予防または治療するための医薬の製造のための、配列番号1〜3のいずれか1つに示される配列を有するmRNAをコードするCASP2遺伝子の発現を下方制御する二本鎖RNA(dsRNA)化合物またはその塩の使用。前記dsRNA化合物が、配列番号8に示されるヌクレオチド配列を有するセンス鎖と、配列番号9に示されるヌクレオチド配列を有するアンチセンス鎖とを含む、請求項1または2に記載の使用。前記ニューロンが、神経節内に含まれる、請求項1または3に記載の使用。前記神経節が、らせん神経節または前庭神経節である、請求項4に記載の使用。前記神経保護が、細胞死からニューロンを保護することを含む、請求項1または3〜5のいずれか一項に記載の使用。前記ニューロンの細胞死が、アポトーシス細胞死を含む、請求項6に記載の使用。前記ニューロンの細胞死が、疾患または障害、虚血、身体的/器質的外傷、化学薬品、感染病原体、免疫反応、および栄養の不均衡のうちの1つ以上に関連している、請求項6または7に記載の使用。前記ニューロンの細胞死が、疾患または障害と関連している、請求項8に記載の使用。前記神経保護が、蝸機能のおよび/または前庭機能の回復を含む、請求項1に記載の使用。前記dsRNA化合物が、前記対象の内耳内の細胞中のCASP2発現を下方制御する、請求項1〜10のいずれかに記載の使用。前記dsRNA化合物が、構造: 5’ z”−GCCAGAAUGUGGAACUCCU−Z’ 3’(センス鎖、配列番号24) 3’ Z−CGGUCUUACACCUUGAGGA 5’(アンチセンス鎖、配列番号25) を有し、式中、各A、C、U、およびGは、非修飾もしくは修飾リボヌクレオチド、または非定型的部分であり、各連続するリボヌクレオチドもしくは非定型的部分は、次のリボヌクレオチドもしくは非定型的部分とホスホジエステル結合によって接合されており、前記センス鎖は、5’終端から数えて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、および19位に非修飾リボヌクレオチド、18位にL−デオキシシチジン(配列番号24に示される)を含み、前記アンチセンス鎖は、少なくとも5つの交互の非修飾および2’−O−メチル糖修飾リボヌクレオチドを含み、ZおよびZ’のそれぞれは独立して、存在または不在であるが、存在する場合、独立して、その中にそれが存在する鎖の3’終端で共有結合する1〜5連続ヌクレオチドもしくは非ヌクレオチド部分またはそれらの組み合わせを含み、z”は、存在または不在であってもよいが、存在する場合、センス鎖の5’終端で共有結合するキャッピング部分である、請求項1〜11のいずれかに記載の使用。各ZおよびZ’は不在であり、前記アンチセンス鎖は、5’終端から数えて、2、4、6、8、11、13、15、17、および19位のそれぞれに2’O−メチル糖修飾リボヌクレオチド、および1、3、5、7、9、10、12、14、16、および18位のそれぞれに非修飾リボヌクレオチド(配列番号25に示される)を含む、請求項12に記載の使用。z”が、前記センス鎖(配列番号26)の5’終端に共有結合し、逆位デオキシ脱塩基部分を含む、請求項13に記載の使用。前記dsRNA分子が、経鼓室(transtympanic)投与用に製剤化される、請求項1〜14のいずれかに記載の使用。前記dsRNA分子が、点耳剤として製剤化される、請求項1〜14のいずれかに記載の使用。前記対象が、哺乳動物である、請求項1〜16のいずれかに記載の使用。前記対象が、ヒトである、請求項17に記載の使用。

说明书全文

関連出願

本出願は、2011年11月3日に出願された「Compositions and Methods For Treating Meniere’s Disease」と題される米国仮特許出願第61/554,982号および2012年6月25日に出願された「Compositions and Methods For Treating Meniere’s Disease」と題される米国仮特許出願第61/663,627号の利益を主張するものであり、そのすべての内容はあらゆる目的にのために参照することにより本明細書に組み込まれる。

配列表 本出願は、2012年11月1日に、MSウィンドウズとオペレーティングシステム互換性を有するIBM−PCT機械形式で作成された、33キロバイトの大きさの「240_PCT1_ST25.txt」という名前のファイルに存在するヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列を参照により組み込む。

対象の内のニューロンの神経保護に使用するため、ならびに蝸機能および/または前庭機能の損失の回復および/または付随する症状の軽減のための、CASP2、NOX3、CAPNS1、またはRHOAを標的とする二本鎖RNA化合物の使用を本明細書に提供する。メニエール病または同様の疾患および障害の危険性がある、またはそれに罹っている対象の治療に有用である方法およびキットがさらに提供される。

ヒトの耳は3つの主要構成部分、すなわち、外耳、中耳、および内耳からなり、これらは共同で機能し、音波を神経インパルスに変換して脳へ移動させ、神経インパルスはそこで音として認識される。内耳はまた、平衡維持にも役立つ。

中耳と内耳の解剖学的構造は当業者によく知られている(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Atlas of Sensory Organs:Functional and Clinical Analysis,Andrs Csillag,Humana Press(2005)、1〜82ページを参照されたい)。簡単に述べると、中耳は、鼓膜、および鼓膜と内耳を結ぶ小骨として知られている3本の小さな骨を収容する小さな空気で満たされた空間から成る。

内耳(迷路)は、聴覚器官である蝸牛および平衡器官である前庭系から成る複雑な構造である。前庭系は、位置感覚を決定する球形嚢および平衡維持に役立つ卵形嚢から成る。

蝸牛にはコルチ器があり、このコルチ器は、部分的に、「内耳有毛細胞」または「有毛細胞」と称される、約20,000個の特殊な感覚細胞から成る。これらの細胞は、蝸牛内液中へ伸びている極細の小突起(繊毛)を有する。中耳の小骨から内耳内の卵円窓へ伝わる音の振動は、液体と繊毛を振動させる。蝸牛の各所にある有毛細胞は異なる音の周波数に反応して振動し、その振動を神経インパルスに変換し、それは脳に送られて処理および解釈される。内耳有毛細胞は内耳支持細胞に囲まれている。支持細胞は、内耳内の感覚有毛細胞の下に位置し、感覚有毛細胞を少なくとも部分的に囲んで物理的に支えている。支持細胞の代表例としては、内柱(柱細胞)、外柱(柱細胞)、内指節細胞、外指節細胞(ダイテルス細胞)、Held細胞、ヘンセン細胞、クラウディウス細胞、ベッチャー細胞、歯間細胞、および聴歯(フシュケ)が挙げられる。

らせん神経節は、蝸牛から脳へ音の表現を送る神経細胞群である。らせん神経節ニューロンの細胞体は、蝸牛のらせん構造に見られ、中枢神経系の一部である。それらの樹状突起は有毛細胞基底とシナプス結合し、それらの軸索はともに束になり、第8脳神経(前庭蝸牛耳神経)の聴覚部分を形成する。前庭神経節(スカルパ神経節としても知られている)は、双極性の一次求心性ニューロンの細胞体を含む前庭神経の神経節であり、その末梢性突起は前庭感覚器終末器官の有毛細胞とのシナプス結合を形成する。

米国特許出願公開第20090162365号および第20110112168号は、プロアポトーシス遺伝子発現に関連する疾患および障害を治療するためのsiRNA化合物、siRNA化合物を含む組成物、ならびにそれらの使用方法に関する。

米国特許第7,825,099号は、プロアポトーシス遺伝子を阻害することにより聴障害を治療する方法に関する。

米国特許第8,088,359号および米国特許出願公開第20120252868号は、聴力損失および幻聴を治療する方法に関する。

米国特許出願公開第20110142917号は、dsRNA分子を耳に送達する非侵襲性の方法を開示する。

米国特許出願公開第20110034534号は、特に、CAPNS1を標的とするdsRNA分子に関する。

米国特許出願公開第20110229557号は、眼疾患の治療に有用な、CASP2を含む様々な遺伝子標的へのdsRNA分子に関する。

PCT特許公開第WO2011/163436号は、RHOAを標的とするdsRNAを開示する。

耳鳴およびメニエール病は、世界的に多くの患者がおり、現在の治療法はニューロン変性および付随する聴力損失の進行を防ぐのに成功していない。有毛細胞ならびにらせんおよび前庭神経節細胞を含む内耳ニューロンを損傷および細胞死(例えば、アポトーシス)から保護し、それによって例えば、メニエール患者の聴力損失を減弱する、または防止する治療処置が、非常に望ましい。したがって、耳鳴もしくはメニエール病に冒されているまたは同様の症状を有するヒト対象を含む対象の耳のニューロンの神経保護を、そのような活性を有すると以前は知られていなかったdsRNA化合物を使用して行うための方法を提供することがひとつの態様である。

本開示は、対象の耳のニューロンに、例えば、らせん神経節細胞および前庭神経節細胞に神経保護を提供するための方法およびキットを対象とする。1つの態様において、配列番号1〜3、配列番号4、配列番号5〜6、または配列番号7のいずれか1つに示される配列を有するmRNAをコードするCASP2遺伝子、NOX3遺伝子、CAPNS1遺伝子、またはRHOA遺伝子の発現を下方制御し、神経保護を必要とする対象の耳内のニューロンの神経保護において使用するための二本鎖RNA(dsRNA)化合物が本明細書で開示される。様々な態様において、耳内のニューロンに神経保護を提供する方法が提供され、方法は、CASP2遺伝子、NOX3遺伝子、CAPNS1遺伝子、またはRHOA遺伝子の発現を下方制御し、それによって対象の耳の神経細胞に神経保護を提供する治療的有効量の二本鎖RNA(dsRNA)分子化合物を対象の耳に投与することを含む。いくつかの実施形態において、ニューロンは、神経節である。いくつかの実施形態において、ニューロンは、神経節内に含まれる。いくつかの実施形態において、ニューロンは、らせん神経節細胞および/または前庭神経節細胞を含む。いくつかの実施形態において、CASP2遺伝子は、配列番号1〜3のいずれか1つに示される配列を有するmRNAをコードする。いくつかの実施形態において、NOX3遺伝子は、配列番号4に示される配列を有するmRNAをコードする。いくつかの実施形態において、CAPNS1遺伝子は、配列番号5〜6のいずれか1つに示される配列を有するmRNAをコードする。いくつかの実施形態において、RHOA遺伝子は、配列番号7に示される配列を有するmRNAをコードする。いくつかの実施形態において、CASP2は、好ましい標的遺伝子であり、好ましい実施形態において、dsRNA分子化合物は、配列番号8に示されるヌクレオチド配列を有するセンス鎖と、配列番号9に示されるヌクレオチド配列を有するアンチセンス鎖とを含む。いくつかの実施形態において、神経保護は、神経細胞死、好ましくはアポトーシス細胞死の減弱、防止、または減少を含む。いくつかの実施形態に従うと、ニューロンの細胞死は、疾患もしくは障害、虚血、身体的/器質的外傷、化学薬品もしくは感染病原体への曝露、免疫反応、または栄養の不均衡の1つ以上に関連している。いくつかの実施形態において、ニューロンの細胞死は、虚血に関連している。いくつかの実施形態において、ニューロンの細胞死は、疾患または状態に関連している。いくつかの実施形態において、疾患は、遺伝性疾患または障害である。様々な実施形態において、疾患または状態は、聴覚器官の病理学的異常に関連する障害および前庭器官の病理学的異常に関連している障害から成る群から選択される。いくつかの実施形態において、聴覚器官は、コルチ器である。前庭神経節は、内耳道の外端の上部に位置する、第8脳神経の前庭部分の感覚神経節である。いくつかの実施形態において、前庭器官は、卵形嚢、球形嚢、内耳道、および膨大部から選択される。

いくつかの実施形態において、対象は、突発性眩暈、聴力損失、耳鳴、および耳閉塞感から成る群から選択される疾患もしくは状態、またはそれらの症状の1つ以上に罹っているか、または発病する危険性がある。ある特定の実施形態において、対象は、メニエール病に罹っているか、または発病しやすい。

いくつかの実施形態において、CASP2、NOX3、RHOA、またはCAPNS1遺伝子の発現を下方制御する治療的有効量のdsRNA化合物を対象に投与して、それによって対象を治療することを含む、メニエール病に罹っている対象を治療する方法が本明細書に提供される。

いくつかの実施形態において、CASP2、NOX3、RHOA、またはCAPNS1遺伝子の発現を下方制御し、それによってメニエール病の症状を減弱する治療的有効量のdsRNA化合物を対象に投与することを含む方法は、メニエール病に罹っている対象のメニエール病の症状を減弱することを含む。いくつかの実施形態において、症状は、耳鳴、進行性の聴力損失、ELH、回転性眩暈、悪心、または耳閉塞感の1つ以上を含む。いくつかの実施形態において、方法は、メニエール病の症状の1つ以上の軽減を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、聴覚の部分的な回復または完全な回復を提供する。

いくつかの実施形態において、方法およびキットは、対象のらせん神経節および/または前庭神経節をアポトーシスから救出することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、らせん神経節および/または前庭神経節の生着を促進することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、対象のらせん神経節細胞および、または前庭神経節細胞のアポトーシス細胞死を防止することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、対象のらせん神経節細胞および、または前庭神経節細胞の神経保護を提供することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、対象の蝸牛機能の回復を含む。蝸牛機能は、部分的または完全な聴覚の回復を含む。いくつかの実施形態において、方法は、対象の前庭機能の回復を含む。前庭機能は、部分的または完全な平衡の回復を含む。

CASP2、NOX3、RHOA、またはCAPNS1遺伝子の発現を下方制御する治療的有効量のdsRNA化合物を含む、メニエール病に罹っている対象を治療するためのキットがさらに提供される。いくつかの実施形態において、キットは、dsRNA化合物の対象への投与のための機器、および任意に使用説明書をさらに含む。いくつかの実施形態において、キットは、CASP2遺伝子の発現を下方制御するdsRNA化合物を含む。好ましい実施形態において、CASP2遺伝子は、配列番号1〜3のいずれか1つに示されるmRNAをコードする。好ましい実施形態において、キットは、配列番号8に示されるヌクレオチド配列を有するセンス鎖と、配列番号9に示されるヌクレオチド配列を有するアンチセンス鎖とを含むdsRNA化合物を提供する。

いくつかの実施形態において、方法およびキットは、それぞれ、配列番号1〜3、配列番号4、配列番号5〜6、および配列番号7を例とする、CASP2、NOX3、CAPNS1、およびRHOAから選択されるヒト標的遺伝子をコードするヌクレオチド配列(mRNA配列等)と結合するdsRNA化合物(例えば、小干渉核酸(siNA)、小干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、または小ヘアピンRNA(shRNA))の使用を含む。好ましい実施形態において、方法およびキットは、配列番号1〜3のいずれか1つに示されるヒトCASP2 mRNAと結合するdsRNA化合物の使用を含む。

好ましい実施形態において、CASP2dsRNA化合物は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、アンチセンス鎖は、ヌクレオチド配列AGGAGUUCCACAUUCUGGC(5’から3’への方向)(配列番号9)を含む。好ましい実施形態において、dsRNA化合物は、構造: 5’ z"-GCCAGAAUGUGGAACUCCU-Z 3’(センス鎖、配列番号8) 3’ Z’-CGGUCUUACACCUUGAGGA 5’(アンチセンス鎖、配列番号9) を有し、式中、A、C、U、およびGは、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、または非定型的部分であり、各連続するリボヌクレオチドまたは非定型的部分は、共有結合によって次のリボヌクレオチドまたは非定型的部分に接合され、 式中、ZおよびZ’のそれぞれは独立して、存在または不在であるが、存在する場合、独立して、その中にそれが存在する鎖の3’終端で共有結合する1〜5連続ヌクレオチドもしくは非ヌクレオチド部分またはそれらの組み合わせを含み、 式中、z"は、存在または不在であってもよいが、存在する場合、センス鎖の5’終端で共有結合するキャッピング部分である。いくつかの実施形態において、dsRNA化合物は、非修飾および修飾リボヌクレオチドを含む。好ましい実施形態において、dsRNA化合物は、非修飾および修飾リボヌクレオチド、少なくとも1つの非定型的部分を含む。

いくつかの実施形態において、dsRNAは、少なくとも1つの非定型的部分をさらに含む。ある特定の好ましい実施形態において、CASP2のdsRNAは、構造: 5’ z"-GCCAGAAUGUGGAACUCCU-Z’ 3’(センス鎖、配列番号24) 3’ Z-CGGUCUUACACCUUGAGGA 5’(アンチセンス鎖、配列番号25) を有し、式中、各A、C、U、およびGは、非修飾もしくは修飾リボヌクレオチド、または非定型的部分であり、各連続するリボヌクレオチドもしくは非定型的部分は、次のリボヌクレオチドもしくは非定型的部分とホスホジエステル結合によって接合されており、センス鎖は、5’終端から数えて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、および19位に非修飾リボヌクレオチド、18位にL−デオキシシチジンを含み、アンチセンス鎖は、少なくとも5つの交互の非修飾および2’−O−メチル糖修飾リボヌクレオチドを含み、z"、Z、およびZ’は任意に不在である。いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖は、(5’から3’への方向で)1、3、5、7、9、11、13、15、17、および19位に存在する2’−O−メチル糖修飾リボヌクレオチド、および2、4、6、8、10、12、14、16、および18位に存在する非修飾リボヌクレオチドを含み、好ましくは、アンチセンス鎖は、(5’から3’の方向で)2、4、6、8、11、13、15、17、および19位に2’O−メチル糖修飾リボヌクレオチドを含む。

好ましい実施形態において、dsRNA化合物は、構造: 5’ iB-GCCAGAAUGUGGAACUCCU-Z’ 3’(センス鎖、配列番号26) 3’ Z-CGGUCUUACACCUUGAGGA 5’(アンチセンス鎖、配列番号27) を有し、式中、A、C、U、およびGは、非修飾リボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、または非定型的部分であり、各連続するリボヌクレオチドまたは非定型的部分は、共有結合によって次のリボヌクレオチドまたは非定型的部分に接合され、 式中、各ZおよびZ’は不在であり、センス鎖は、5’終端から数えて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、および19位に非修飾リボヌクレオチド、18位にL−デオキシシチジンを含み、z"は存在し、逆位デオキシ脱塩基部分を含み、 式中、アンチセンス鎖は、5’終端から数えて、2、4、6、8、11、13、15、17、および19位のそれぞれに2’O−メチル糖修飾リボヌクレオチド、および1、3、5、7、9、10、12、14、16、および18位のそれぞれに非修飾リボヌクレオチドを含む。この分子はまた、1007としても知られている。

dsRNA化合物は、侵襲性および非侵襲性送達方法を含む、従来の投与経路のいずれかによって投与される。dsRNA化合物は、化合物自体として、または薬学的に許容される塩として投与されてもよく、単独で、または薬学的に許容される担体、溶剤、希釈剤、賦形剤、アジュバント、およびビヒクルと組み合わせて活性成分として投与されてもよいということに留意されたい。

dsRNA化合物は、好ましくは、局所的に、または注射を介して鼓室を経由するように(transtympanically)投与される。液体形態が投与のために調製され得る。液体組成物は、有機共溶剤を含むまたは含まない溶液、水性または油性懸濁液、食用油を含む乳濁液、ならびに同様の薬剤ビヒクルを含む。1つの実施形態において、投与は、局所投与、特に外耳道への局所投与、鼓膜への局所投与、またはそれらの組み合わせを含み、それによって、dsRNA化合物が鼓膜を通過することを可能にする。いくつかの実施形態において、本出願の化合物は、点耳剤として鼓膜に適用される。一部の好ましい実施形態において、dsRNA化合物は、経鼓室注射によって、または点耳剤によって投与される。

様々な実施形態、特に、本発明の薬学的組成物が局所的に投与される実施形態において、薬学的組成物は、浸透促進剤としても知られている透過性促進剤をさらに含む。

様々な実施形態において、浸透促進剤は、メニエール病に冒されている対象の耳内の鼓膜を通して治療用オリゴヌクレオチドの浸透を増強する任意の化合物または任意の2つ以上の化合物の組み合わせから選択される。ある特定の実施形態において、透過性促進剤は、ポリオールである。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、ポリオールとの混合物である。いくつかの実施形態において、ポリオールは、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。

1つの実施形態に従うと、ポリオールは、グリセロールである。様々な実施形態において、グリセロールは、薬学的組成物の体積で約0.1%〜約35%、約1%〜約30%、約5%〜約25%、好ましくは約10%〜約20%の最終濃度で存在する。

いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、対象の頭部が片側に傾けられ、治療される耳が上を向くとき、外耳道に適用される。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、例えば、1滴あたり10〜100マイクロリットルの点滴器、またはウィック等を用いて、液体用容器を使用して耳に適用される。 本発明のさらなる実施形態は、メニエール病に冒されている対象の治療のための薬物の調製における上記組成物のいずれかの使用を提供する。神経保護を必要とする対象の耳のニューロンに神経保護を提供するためのCASP2発現を阻害する化合物がさらに提供される。

ここに記載される方法、材料、および実施例は、例示に過ぎず、制限されるとは意図されない、つまり、本明細書に記載のものと同様または同等の材料および方法が本発明の実施または試験において使用され得る。本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から、および特許請求の範囲から明らかになる。

本開示は、本明細書の様々な実施形態において開示される特徴の組み合わせのいかなるおよびすべての適合または変化をも網羅すると意図される。特定の実施形態が例示され、本明細書に記載されているが、本発明は、同じ目的を実現するためのこれらの実施形態の特徴の任意の組み合わせを包含することを理解されたい。本明細書に具体的に記載されない実施形態を形成するための上記の特徴の組み合わせは、即時の説明の再検討によって当業者に理解される。

野生型(左パネル)およびPhex

hyp−Duk変異体(右パネル)内耳組織の組織切片を示す。矢印は、内リンパ水腫(ELH)を示す。左下のパネルにおいて、Gはらせん神経節ニューロンを指し、右下のパネルにおいて、Mは変異体らせん神経節ニューロンを指し、それはPhex

hyp−Duk変異体マウスにおいて(GをMと比較して)より少ない。Phex

hyp−Duk変異体マウスは、自然発症的に内リンパ水腫を発症し、このため、平衡障害および聴力損失の表現型を呈している。主要な欠損の1つは、細胞死またはアポトーシスによる内耳神経節(前庭およびらせん)内のニューロンの損失である。

点耳剤送達によるsiRNAの安全性の影響評価の実験的設計を示す。「Px」は、出生後のx日目を指す。

内耳へのdsRNAまたはビヒクル点耳剤による毎週の治療が、野生型マウスの聴覚機能に影響しないことを示す棒グラフである。

メニエール病のマウスモデルの聴覚機能の保存における試験分子の有効性を試験するための実験的設計を示す。(P15、P29、P90−出生後の日数。P15より前のsiRNA送達は耳道が閉じているため不可能であり、P29〜30以前のABR測定は技術的に不可能である)。

陰性対照(ビヒクル処置またはsiEGFP処置)またはsiRNA処置Phex

hyp−Duk/Yマウスにおける聴覚機能(ABR)の経時的解析を示す。グラフ上のデータは、指定された試験可聴周波数(kHz)での聴性誘発脳幹反応(ABR)閾値(db)を示す。

ビヒクル処置およびsiEGFP処置動物と比較して、siRNA処置動物において、P90でのABRにて相対的な改善を示す棒グラフである。

Phex

hyp−Duk/Yマウスの内耳ニューロンの組織学的評価、ならびにsiCASP2(1007)によって提供されるらせんおよび前庭神経節の有意な神経保護を示す。図6Aおよび6Bの矢印は、らせん神経節(SG)を示す。図6Aおよび6Bは、ビヒクル処置Phex

hyp−Duk/YマウスにおけるSGの障害および死を示し、図6Bおよび6Dは、siCASP2処置Phex

hyp−Duk/YマウスにおけるSGの救出を示す。図6Eおよび6Fは、それぞれ、ビヒクル処置Phex

hyp−Duk/YマウスおよびsiCASP2処置Phex

hyp−Duk/Yマウスにおける前庭神経節の別々の組織切片を示す。

Phex

hyp−Duk/Yマウスの内耳ニューロンの組織学的評価、ならびにビヒクル処置およびsiEGFP処置動物(図7A)と比較してsiCAPNS1(図7B)、siNOX3(図7C)、およびsiRHOA(図7D)によって提供されるらせん神経節の有意な神経保護を示す。

Phex

hyp−Duk/Yマウスの内耳ニューロンの組織学的評価、ならびにビヒクル処置およびsiEGFP処置動物(図8A)と比較してsiCAPNS1(図8B)、siNOX3(図8C)、およびsiRHOA(図8D)によって提供される前庭神経節の有意な神経保護を示す。

siCASP2処置の耳におけるP90でのらせん神経節細胞の保護を示す。

本出願は、オリゴヌクレオチド分子、オリゴヌクレオチド分子を含む組成物、メニエール病を治療するための、および振動性の聴力損失、突発性眩暈、および/または耳鳴を含む付随する症状の1つ以上を寛解させるためのそれらを使用する方法およびキットを提供する。本開示は、一部、カスパーゼ2(CASP2)、NADPHオキシダーゼ3(NOX3)、カルパインS1(CAPNS1)、およびRasホモログ遺伝子ファミリーメンバーA(RHOA)から選択される標的遺伝子のいずれか1つの阻害の発見に基づく。

1つの態様において、CASP2の発現を阻害しする治療的有効量のオリゴヌクレオチド分子を対象に投与して、それによってらせん神経節細胞および/または前庭神経節細胞に神経保護を与えることを含む、らせん神経節細胞および/または前庭神経節細胞の神経保護を、それを必要とする対象に与える方法が本明細書に提供される。別の態様において、CASP2の発現を阻害するオリゴヌクレオチド分子を対象に投与して、それによって患者を治療することを含む、メニエール病に罹っている対象を治療する方法が本明細書に提供される。特発性内リンパ水腫(ELH)としても知られるメニエール病は、回転性眩暈および耳鳴、ならびに最終的に聴力損失を引き起こすニューロン損傷をもたらす内耳の障害である。メニエール病の正確な原因は不明であるが、根底にある機構は内リンパの蓄積による膜迷路の歪みであると考えられている。内リンパは、蝸牛内の血管条によって主に生成され、また前庭迷路の半月面および暗細胞によっても生成される(Sajjadi H,Paparella MM.Meniere’s disease.Lancet.372(9636):406−14)。内リンパ水腫は、前庭水道を通る内リンパ嚢への内リンパ液腔からの内リンパの流れが妨げられる場合に、起こり得る。メニエール病は、対象の耳の片方または両方に発症し得る。メニエール病に伴う主要な病的状態は、回転性眩暈および進行性の聴力損失の衰弱させる性質である。

様々な実施形態において、方法は、対象における聴力損失を減弱することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、メニエール病に罹っている対象における進行性の聴力損失を防止することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、らせん神経節細胞の細胞死からの保護を含む。いくつかの実施形態において、方法は、細胞死からの前庭神経節細胞の保護を含む。

好ましい実施形態において、対象は、哺乳動物、好ましくはヒト対象である。 様々な実施形態において、CASP2を下方制御する分子は、二本鎖RNAオリゴヌクレオチド、任意にsiNA、より好ましくは以下の表Aに詳しく述べられるdsRNA分子、特に、以下のアンチセンス配列5’AGGAGUUCCACAUUCUGGCを含むsiNA(CASP2_4としても知られている)等のカスパーゼ2阻害剤であり、状態および障害の治療に使用するための薬物の調製における本オリゴヌクレオチドの使用が本明細書で開示される。1つの実施形態において、障害は、らせん神経節死または前庭神経節死を含む。いくつかの実施形態において、細胞死は、アポトーシス細胞死を含む。

これらのdsRNAに関する追加の情報、ならびに本方法に有用なCASP2、NOX3、またはRHOAを標的とする、または下方制御する追加のdsRNAが、PCT公開第WO2008/050329号および同第WO2010/048352号に提供される。本方法に有用なCAPNS1を標的とする、または下方制御するdsRNAの非制限的な例は、米国特許出願公開第20110034534号に提供されている。

理論に束縛されるものではないが、CASP2は、軸索損傷後の神経節細胞(GC)で特異的に発現され、活性化されるプロアポトーシス遺伝子である。本譲受人は、視神経損傷のラットモデルにおけるCASP2の阻害が、網膜神経節細胞(RGC)をアポトーシス死から着実に救出する結果をもたらすことを以前示した(PMID:21677688)。いくつかの実施形態において、方法は、CASP2発現を下方制御するか、または阻害するオリゴヌクレオチド分子の使用を含む。いくつかの実施形態において、方法は、NOX3発現を下方制御するか、または阻害するオリゴヌクレオチド分子の使用を含む。いくつかの実施形態において、方法は、CAPNS1発現を下方制御するか、または阻害するオリゴヌクレオチド分子の使用を含む。いくつかの実施形態において、方法は、RHOA発現を下方制御するか、または阻害するオリゴヌクレオチド分子の使用を含む。

定義 便宜上、本明細書、実施例、および特許請求の範囲で使用される、ある特定の用語についてここに記載する。

本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明らかに記載しない限り、複数形を含むことに留意されたい。

本発明の態様または実施形態がマーカッシュ群または他の代替の群に関して記載されている場合、本発明が、それによりその群の任意の個々の要素または要素の亜群についても記載されることを当業者は認識するであろう。

「阻害剤」とは、遺伝子の発現またはかかる遺伝子の生成物の活性を、(部分的または完全に)所望の生物学的または生理学的作用を成し遂げるのに十分な程度まで低減できる化合物である。本明細書で使用される場合、「阻害剤」という用語は、siRNA阻害剤を含むdsRNA阻害剤を指す。

本明細書で使用される場合、遺伝子発現に関する「阻害する」、「下方制御する」、または「低減させる」という用語は、遺伝子の発現、あるいはRNA分子または1つ以上のタンパク質もしくはタンパク質サブユニット(例えば、mRNA)をコードする同等のRNA分子のレベル、あるいは1つ以上のタンパク質もしくはタンパク質サブユニットの活性が、阻害因子(例えば、本明細書に記載される構造的特徴を有する核酸分子等、例えば、siNA)の不在下で観察されるものよりも低減されることを意味し、例えば、発現は、阻害剤の不在下で観察されるものの90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、またはそれ以下に低減され得る。本明細書で開示される方法およびキットのいくつかの実施形態において、標的遺伝子の下方制御は、神経細胞の対照群と比較して、神経細胞の集団において神経細胞死の少なくとも10%の減少をもたらす。

「二本鎖RNA阻害剤」とは、遺伝子の発現またはかかる遺伝子の生成物の活性を所望の生物学的または生理学的作用を成し遂げるのに十分な程度まで低減できる化合物である。本明細書で使用される場合、用語は、siRNA、shRNA、および合成shRNAのうちの1つ以上を指す。阻害はまた、下方制御も指し得、またはRNAiの場合、サイレンシングも指し得る。

「阻害する」という用語は、本明細書で使用される場合、遺伝子の発現またはかかる遺伝子の生成物の活性を所望の生物学的または生理学的作用を成し遂げるのに十分な程度まで低減させることを指す。阻害は完全であるか部分的である。例えば、APP遺伝子の「阻害」は、遺伝子発現(転写または翻訳)またはそれらの異型またはSNP(一塩基多型)の1つ以上のポリペプチド活性の阻害を意味する。

配列番号1は、ヒトカスパーゼ2、アポトーシス関連システインペプチダーゼ(CASP2)、転写変異体1、mRNAgi番号|320461578|参照|NM_032982.3|を指す。

配列番号2は、ヒトカスパーゼ2、アポトーシス関連システインペプチダーゼ(CASP2)、転写変異体3、mRNAgi番号|320461587|参照|NM_032983.3|を指す。

配列番号3は、ヒトカスパーゼ2、アポトーシス関連システインペプチダーゼ(CASP2)、転写変異体2、mRNAgi番号|331999981|参照|NM_001224.4|を指す。

配列番号4は、ヒトNADPHオキシダーゼ3(NOX3)、mRNAgi番号|229331997|参照|NM_015718.2|を指す。

配列番号5は、ヒトカルパイン、小サブユニット1(CAPNS1)、転写変異体1、mRNAgi番号|51599152|参照|NM_001749.2|を指す。

配列番号6は、ヒトカルパイン、小サブユニット1(CAPNS1)、転写変異体2、mRNAgi番号|51599150|参照|NM_001003962.1|を指す。

配列番号7は、ヒトrasホモログファミリーメンバーA(RHOA)、mRNAgi番号|50593005|参照|NM_001664.2|を指す。

本発明の1つの態様は、本明細書で開示されるdsRNAの「神経保護」活性を含む。本発明の方法は、損傷、死、または老化からのニューロンの保護を提供するか、あるいはニューロン機能を保護する、または改善する。本明細書で使用される場合、「神経保護」という用語は、神経変性の進行の停止および/または緩徐化および/または減弱および/または逆転に関する。本明細書で使用される場合、「神経変性」という用語は、ニューロンの進行性の損失を意味する。これは、ニューロンの即時損失と、それに続く連結している、または隣接するニューロンの後続の損失が挙げられるが、これに限定されない。

「ニューロン」、「神経細胞」、「神経細胞」、および「神経系細胞」(神経系前駆細胞および神経系幹細胞を含む)は、神経細胞、すなわち、神経インパルスを身体の一部から別の部分へ伝導する原因である細胞を指すために、互換的に使用される。ほとんどのニューロンは、神経核を含有する細胞体、および2つの異なる種類の細胞質突起、すなわち樹状突起ならびに軸索の3つの別個の部分から成る。ニューロンの受取り部分である樹状突起は、通常高度に分岐した、細胞体の太い伸張部分である。軸索は、神経インパルスを細胞体から離れて別のニューロンまたは筋肉組織もしくは腺組織に伝導するように特定化された典型的は単一の細長い突起である。軸索は、「軸索側枝」と称される端の分岐を有し得る。軸索側枝および軸索は、終末分枝と称される多くの繊細なフィラメントに分岐することにより終結し得る。終末分枝の遠位端は、シナプス終末小体または軸索末端と称され、神経伝達物質を蓄えるシナプス小胞を含有する。軸索は、髄鞘と称される多層の白いリン脂質の分割型の被覆によって囲まれ得、それは末梢神経系中のシュワン細胞および中枢神経系中のオリゴデンドロサイトによって形成される。そのような被覆を含む軸索は、「有髄化」される。ニューロンは、末梢中の受容体から脳および脊髄へ、ならびに中枢神経系のより低い中枢からより高い中枢へインパルスを伝達する感覚(求心性)ニューロンを含む。ニューロンはまた、脳および脊髄から末梢中のエフェクターへ、ならびに中枢神経系のより高い中枢からより低い中枢へインパルスを伝達する運動(遠心性)ニューロンであることができる。他のニューロンは、感覚ニューロンから運動ニューロンへインパルスを輸送し、中枢神経系内に位置付けられる連合(連結する、またはニューロン間の)ニューロンである。束内に配置される求心性および遠心性ニューロンの突起は、CNSの外側またはCNSの内側の場合繊維路に位置するとき、「神経」と称される。

「局所投与」または「局部適用」という用語は、好ましくは対象の外耳道への、また任意に局所投与が関連する鼓膜への組成物の局所的投与を意味するように使用される。

「耳の」および「耳介の」という用語は、本明細書において互換的に使用され、概して、外耳、中耳、および内耳を含む耳の中および/または周囲の組織を指す。

「外耳道(ear canal)」または「外耳道(external auditory meatus)」という用語は、外耳から中耳に走る管を意味するように使用される。

「鼓膜(tympanic membrane)」(または鼓室または鼓膜(myrinx))は、外耳を中耳から隔てる薄膜を指す。

「薬学的組成物」または「耳用薬学的組成物」または「眼用薬学的組成物」、「薬学的製剤」または「製剤調製物」等の用語は、本明細書において互換的に使用され、概して、1つ以上のオリゴヌクレオチド活性化合物の耳への、具体的には動物またはヒトの内耳の組織への投与および送達に適合された製剤を指す。

「治療」、「治療する」、または「治療すること」は、本明細書で使用される場合、哺乳動物、具体的にはヒトの疾患または状態の任意の治療を網羅し、(a)疾患または状態の訴因となり得るが、それに有しているとはまだ診断されていない対象に疾患または状態が発生することを防ぐこと、(b)疾患または状態を阻害すること、すなわち、その発達または進行を減弱する、または停止する、または緩徐化させる、または延ばすこと、(c)疾患または状態を軽減する、および/または寛解させること、すなわち、疾患または状態および/またはそれらの症状の退行を引き起こすこと、あるいは(d)疾患または状態を治癒すること、すなわち、その発達または進行を停止すること、を含む。本発明の方法で治療される対象群は、望ましくない状態または疾患に冒されている対象、ならびに状態または疾患の発病の危険性がある対象を含む。

本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、治療用薬剤に加えて、製剤を成す構成要素が、本発明に従って治療される患者/対象への投与に適していることを意味する。

「浸透促進剤」または「透過性促進剤」は、動物またはヒトの耳内の鼓膜を通る治療用オリゴヌクレオチドの浸透を増強する化合物または化合物の組み合わせを指す。

本明細書で使用される場合、「組織」という用語は、特定の機能の遂行において一団となった、類似して特化された細胞の集合を指す。

本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は、互換的に使用され得、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を含むヌクレオチド配列を指す。これらの用語は、等価物として、ヌクレオチド類似体から作られるRNAまたはDNAのいずれかの類似体を含むと理解される。本出願を通して、mRNA配列は、対応する遺伝子を表すものとして示される。

「オリゴヌクレオチド」および「オリゴマー」は、互換的に使用され、約2〜約50ヌクレオチドのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド配列を指す。各DNAまたはRNAヌクレオチドは、独立して、天然または合成、および、または修飾または非修飾である。修飾は、オリゴヌクレオチ中の糖部分、塩基部分、および、またはヌクレオチド間の結合に対する変化を含む。本発明の化合物は、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、非定型的部分、およびそれらの組み合わせを含む分子を包含する。オリゴヌクレオチドは、アンチセンスおよびshRNAを含む単鎖分子と、二本鎖RNA(dsRNA)、siNA、siRNA、およびmiRNAを含む二本鎖分子とを包含するものである。

実質的に相補的とは、別の配列に対し約84%を超える相補性を指す。例えば、19塩基対から成る二重鎖領域において、1つのミスマッチは94.7%の相補性をもたらし、2つのミスマッチは約89.5%の相補性をもたらし、3つのミスマッチは約84.2%の相補性をもたらし、二重鎖領域を実質的に相補的にする。したがって、実質的に同一とは、別の配列に対し約84%を超える同一性を指す。いくつかの好ましい実施形態において、センス鎖およびアンチセンス鎖は完全に相補的(100%)である。いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖は、標的mRNAに完全に相補的(100%)である。いくつかの実施形態において、センスアンチセンス鎖は、標的mRNAに対するミスマッチを含む。例えば、アンチセンス鎖の第1位にA、C、またはGを有するアンチセンス鎖は、第1位(5’)の「U」を有して生成され、それによってアンチセンス鎖と標的mRNAとの間のミスマッチを生成する。

「ヌクレオチド」は、天然または合成、および、または修飾または非修飾であり得るデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを包含するものである。修飾は、オリゴリボヌクレオチド中の糖部分、塩基部分、および、またはリボヌクレオチド間の結合の変化を含む。本明細書で使用される場合、「リボヌクレオチド」という用語は、天然または合成、非修飾および修飾リボヌクレオチドを包含する。修飾は、オリゴヌクレオチ中の糖部分、塩基部分、および/またはリボヌクレオチド間の結合の変化を含む。

ヌクレオチドは、自然発生または合成修飾塩基から選択され得る。自然発生の塩基には、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、およびウラシルが挙げられる。ヌクレオチドの修飾塩基には、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、6−メチル、2−プロピル、および他のアルキルアデニン、5−ハロウラシル、5−ハロシトシン、6−アザシトシンおよび6−アザチミン、偽ウラシル、4−チオウラシル、8−ハロアデニン、8−アミノアデニン、8−チオールアデニン、8−チオールアルキルアデニン、8−ヒドロキシルアデニンおよび他の8−置換アデニン、8−ハログアニン、8−アミノグアニン、8−チオールグアニン、8−チオアルキルグアニン、8−ヒドロキシルグアニン、および他の置換グアニン、他のアザおよびデアザアデニン、他のアザおよびデアザグアニン、5−トリフルオロメチルウラシル、ならびに5−トリフルオロシトシンが挙げられる。いくつかの実施形態において、オリゴマー中の1つ以上のヌクレオチドは、イノシンで置換される。

本発明のいくつかの実施形態において、阻害性オリゴヌクレオチド化合物は、非修飾および修飾ヌクレオチドならびに/または非定型的部分を含む。化合物は、糖修飾、塩基修飾、およびヌクレオチド間結合修飾から成る群から選択される少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含み、DNA、ならびにLNA(ロックド核酸)、ENA(エチレン−架橋核酸)、PNA(ペプチド核酸)、アラビノシド、ホスホノカルボン酸塩、またはホスフィノカルボン酸塩ヌクレオチド(PACEヌクレオチド)、鏡像体ヌクレオチド、または6炭素糖を有するヌクレオチド等の修飾ヌクレオチドを含み得る。

ヌクレオチド/オリゴヌクレオチドのすべての類似体、またはそれらの修飾が、該類似体または修飾がヌクレオチド/オリゴヌクレオチドの機能に実質的に不利に影響しないことを条件として、本発明で用いられる。許容される修飾には、糖部分の修飾、塩基部分の修飾、ヌクレオチド間結合中の修飾、およびそれらの組み合わせが挙げられる。

糖修飾には、糖残基の2’部分上の修飾が含まれ、アミノ、フルオロ、アルコキシ(例えば、メトキシ)、アルキル、アミノ、フルオロ、クロロ、ブロモ、CN、CF、イミダゾール、カルボン酸塩、チオエート、C1〜C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリール(alkaryl)、またはアラルキル、OCF3、OCN;O−、S−、もしくはN−アルキル;O−、S、もしくはN−アルケニル;SOCH3;SO2CH3;ONO2;NO2、N3;ヘテロシクロアルキル;ヘテロシクロアルカリール;アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ、または置換シリル、特に、欧州特許第EP0586520B1号または同第EP0618925B1号に記載されるものを包含する。

1つの実施形態において、二本鎖RNA化合物は、糖部分上の2’修飾(「2’糖修飾」)を含む少なくとも1つのリボヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、化合物は、任意に交互の位置に、2’O−アルキルもしくは2’−フルオロもしくは2’O−アリル、または任意の他の2’修飾を含む。他の安定化修飾もまた可能である(例えば、末端修飾)。いくつかの実施形態において、好ましい2’O−アルキルは、2’O−メチル(メトキシ)糖修飾である。

いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドの骨格は修飾されており、リン酸−D−リボース実体を含むが、チオリン酸−D−リボース実体、トリエステル、チオエート、2’−5’架橋骨格(5’−2’とも称され得る)、PACE等を含有してもよい。

本明細書で使用される場合、「非対合ヌクレオチド類似体」という用語は、6デスアミノアデノシン(Nebularine)、4−Me−インドール、3−ニトロピロール、5−ニトロインドール、Ds、Pa、N3−MeリボU、N3−MeリボT、N3−Me dC、N3−Me−dT、N1−Me−dG、N1−Me−dA、N3−エチル−dC、N3−Me dCが挙げられるが、これらに限定されない非塩基対合部分を含むヌクレオチド類似体を意味する。いくつかの実施形態において、非塩基対合ヌクレオチド類似体は、リボヌクレオチドである。他の実施形態において、それはデオキシリボヌクレオチドである。加えて、ポリヌクレオチドの類似体は、1つ以上のヌクレオチドの構造が根本的に改変され、治療用または実験用試薬としてより適合するように調製され得る。ヌクレオチド類似体の一例は、DNA(またはRNA)中のデオキシリボース(またはリボース)リン酸骨格がペプチドに見られるものに類似したポリアミド骨格と置換されているペプチド核酸(PNA)である。PNA類似体は、酵素による分解に耐性であり、インビボおよびインビトロで増強された安定性を有することが示されている。オリゴヌクレオチドの合成に有用な他の修飾としては、ポリマー骨格、環式骨格、非環式骨格、チオリン酸−D−リボース骨格、トリエステル骨格、チオエート骨格、2’−5’架橋骨格(2’5’ヌクレオチド、または2’5’リボヌクレオチド[3’OHを有する]としても知られる)、人工核酸、モルホリノ核酸、グリコール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、アラビノシド、および鏡像体ヌクレオシド(例えば、β−D−デオキシリボヌクレオシドに代わるβ−L−デオキシリボヌクレオシド)が挙げられる。LNAヌクレオチドを含むsiRNA化合物の例は、Elmenら(NAR2005、33(1):439−447)に開示される。

いくつかの実施形態において、二本鎖RNA化合物は、1つ以上の逆位ヌクレオチド、例えば逆位チミジンまたは逆位アデニンを用いて合成できる(例えば、Takeiら、2002、JBC 277(26):23800−06を参照されたい)。

他の修飾としては、オリゴヌクレオチドの5’および/または3’部分の末端修飾が挙げられ、キャッピング部分としても知られている。かかる末端修飾は、ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、脂質、ペプチド、糖、および逆位脱塩基部分から選択される。

本発明において「脱塩基ヌクレオチド」または「脱塩基ヌクレオチド類似体」と時折称されるものは、より好適には偽ヌクレオチドまたは非定型的部分と称される。ヌクレオチドは核酸のモノマー単位であり、リボースもしくはデオキシリボース糖、リン酸、および塩基(DNAにおいてはアデニン、グアニン、チミン、またはシトシン、RNAにおいてはアデニン、グアニン、ウラシル、またはシトシン)から成る。修飾ヌクレオチドは、糖、リン酸、およびまたは塩基のうちの1つ以上における修飾を含む。この脱塩基偽ヌクレオチドは塩基欠損であり、このため厳密にはヌクレオチドではない。

「キャッピング部分」という用語(「z"」)は、本明細書で使用される場合、脱塩基リボース部分、脱塩基デオキシリボース部分、修飾脱塩基リボースおよび脱塩基デオキシリボース部分(2’Oアルキル修飾など);逆位脱塩基リボースおよび脱塩基デオキシリボース部分ならびにそれらの修飾;C6−イミノ−Pi;鏡像体ヌクレオチド(L−DNAおよびL−RNAなど);5’O−Meヌクレオチド;ならびにヌクレオチド類似体(4’,5’−メチレンヌクレオチドなど);1−(β−D−エリトロフラノシル)ヌクレオチド;4’−チオヌクレオチド、炭素環状ヌクレオチド;5’−アミノ−アルキルリン酸;1,3−ジアミノ−2−プロピルリン酸、3−アミノプロピルリン酸;6−アミノヘキシルリン酸;12−アミノドデシルリン酸;ヒドロキシプロピルリン酸;1,5−アンヒドロヘキシトールヌクレオチド;α−ヌクレオチド;トレオ−ペントフラノシルヌクレオチド;非環状3’,4’−セコヌクレオチド;3,4−ジヒドロキシブチルヌクレオチド;3,5−ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、5’−5’−逆位脱塩基部分;1,4−ブタンジオールリン酸;5’−アミノ;ならびに架橋もしくは非架橋メチルホスホン酸塩および5’−メルカプト部分を含む。

特定の好ましいキャッピング部分は、脱塩基リボースまたは脱塩基デオキシリボース部分、逆位脱塩基リボースまたは脱塩基デオキシリボース部分、C6−アミノ−Pi、鏡像体ヌクレオチド(L−DNAおよびL−RNAなど)である。別の好ましいキャッピング部分は、プロパンジオール由来のC3非ヌクレオチド部分である。

「非定型的部分」という用語は、本明細書で使用される場合、脱塩基リボース部分、脱塩基デオキシリボース部分、デオキシリボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、非塩基対合ヌクレオチド類似体および2’−5’ヌクレオチド間リン酸結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチド、架橋核酸(LNAおよびエチレン架橋核酸など)を指す。

本発明のいくつかの実施形態において、好ましい非定型的部分は、脱塩基リボース部分、脱塩基デオキシリボース部分、デオキシリボヌクレオチド、鏡像体ヌクレオチド、および2’−5’ヌクレオチド間リン酸結合により隣接ヌクレオチドに連結しているヌクレオチドである。

脱塩基デオキシリボース部分としては、例えば脱塩基デオキシリボース−3’−リン酸、1,2−ジデオキシ−D−リボフラノース−3−リン酸、1,4−アンヒドロ−2−デオキシ−D−リビトール−3−リン酸が挙げられる。逆位脱塩基デオキシリボース部分としては、逆位デオキシリボ脱塩基、3’,5’逆位デオキシ脱塩基5’−リン酸が挙げられる。

「鏡像体ヌクレオチド」は、自然発生または一般に使用されるヌクレオチドと逆キラリティーを有するヌクレオチド、すなわち、自然発生(D−ヌクレオチド)の鏡像(L−ヌクレオチド)(鏡像体リボヌクレオチドの場合はL−RNAとも称される)、および「シュピーゲルマー(spiegelmer)」である。ヌクレオチドは、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドでもあり得、さらに少なくとも1個の糖、塩基、およびまたは骨格修飾を含み得る。米国特許第6,586,238号を参照されたい。また、米国特許第6,602,858号は、少なくとも1つのL−ヌクレオチド置換を含む核酸触媒を開示する。鏡像体ヌクレオチドには、例えばL−DNA(L−デオキシリボアデノシン−3’−リン酸(鏡像体dA);L−デオキシリボシチジン−3’−リン酸(鏡像体dC);L−デオキシリボグアノシン−3’−リン酸(鏡像体dG);L−デオキシリボチミジン−3’−リン酸(鏡像dT))およびL−RNA(L−リボアデノシン−3’−リン酸(鏡像体rA);L−リボシチジン−3’−リン酸(鏡像体rC);L−リボグアノシン−3’−リン酸(鏡像体rG);L−リボウラシル−3’−リン酸(鏡像体rU)が挙げられる。

修飾デオキシリボヌクレオチドには、例えば5’末端位置(1位)のヌクレオチドとして有用であり得る5’OMe DNA(5−メチル−デオキシリボグアノシン−3’−リン酸);PACE(デオキシリボアデニン3’ホスホノアセテート、デオキシリボシチジン3’ホスホノアセテート、デオキシリボグアノシン3’ホスホノアセテート、デオキシリボチミジン3’ホスホノアセテート)が挙げられる。

架橋核酸には、LNA(2’−O,4’−C−メチレン架橋核酸アデノシン3’一リン酸、2’−O,4’−C−メチレン架橋核酸5−メチル−シチジン3’一リン酸、2’−O,4’−C−メチレン架橋核酸グアノシン3’一リン酸、5−メチル−ウリジン(またはチミジン)3’一リン酸);ならびにENA(2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸アデノシン3’一リン酸、2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸5−メチル−シチジン3’一リン酸、2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸グアノシン3’一リン酸、5−メチル−ウリジン(またはチミジン)3’一リン酸)が挙げられる。一態様にしたがうと、本発明は、非修飾および修飾ヌクレオチドを含む阻害性オリゴヌクレオチド化合物を提供する。化合物は、糖修飾、塩基修飾、およびヌクレオチド間架橋修飾から成る群から選択される少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含み、DNA、ならびにLNA(ロックド核酸)(ENA(エチレン架橋核酸)、PNA(ペプチド核酸)、アラビノシド、PACE(ホスホノアセテートおよびその誘導体)など)、鏡像体ヌクレオチド、または6炭素糖を有するヌクレオチドといった修飾ヌクレオチドを含み得る。

本明細書で開示される修飾のいずれも、本発明の組成物に組み込まれるオリゴヌクレオチドの調製に用いられ得る。好ましい修飾スキームが、例えば、PCT公開第WO 2006/023544号、同第WO 2010/048352号、同第WO2009/116037号、同第WO 2009/147684号、同第WO 2011/066475号、同第WO 2011/084193号に開示され、すべてはその発明の譲受人に帰する。

カスパーゼ2(ヒトCASP2)mRNAの例示的な核酸配列は、例えば、配列番号1〜3として記載されるように図1A〜1Cに示される。当業者は、所与の配列は、時とともに、および本明細書に従って核酸分子に必要とされる任意の変更を組み込むように変化し得ることを理解するものである。本明細書で開示される方法は、NOX3、CAPNS1(カルパインS1)、およびRHOAの発現を下方制御するdsRNA分子の使用をさらに包含する。

RNA干渉およびsiNA核酸分子 RNA干渉とは、小干渉RNA(siRNA)により媒介される動物内の配列特異的転写後遺伝子サイレンシングのプロセスを指す(Zamore et al.,2000,Cell,101,25−33、Fire et al.,1998,Nature,391,806、Hamilton et al.,1999,Science,286,950−951、Lin et al.,1999,Nature,402,128−129、Sharp,1999,Genes&Dev.,13:139−141、およびStrauss,1999,Science,286,886)。植物中の対応するプロセス(Heifetzら、国際PCT公開第WO99/61631号)はしばしば、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)またはRNAサイレンシングと称される。転写後遺伝子サイレンシングのプロセスは、外来遺伝子の発現を防ぐために用いられる進化的に保存されている細胞防御機構であると考えられている(Fire et al.,1999,Trends Genet.,15,358)。そのような外来遺伝子発現からの保護は、ウイルス感染、または相同単鎖RNAまたはウイルスゲノムRNAを特異的に破壊する細胞応答を介するトランスポゾン要素の宿主ゲノム内へのランダムインテグレーションに由来する二本鎖RNA(dsRNA)の生成に反応して進化してきた可能性がある。細胞中のdsRNAの存在は、まだ完全に特性が明らかになっていない機構を介してRNAi応答を誘起する。この機構は、リボヌクレアーゼLによるmRNAの非特異的切断をもたらすタンパク質キナーゼPKRおよび2’,5’−オリゴアデニレートシンテターゼのdsRNA媒介活性化に起因するインターフェロン応答といった、二本鎖RNA−特異的リボヌクレアーゼを含む他の既知の機構とは異なるようにみえる(例えば、米国特許第6,107,094号、同第5,898,031号、Clemens et al.,1997,J.Interferon&Cytokine Res.,17,503−524、Adah et al.,2001,Curr.Med.Chem.,8,1189を参照されたい)。

細胞中の長鎖dsRNAの存在は、ダイサーと称されるリボヌクレアーゼIII酵素の活性を刺激する(Bass,2000,Cell,101,235、Zamore et al.,2000,Cell,101,25−33、Hammond et al.,2000,Nature,404,293)。ダイサーは、dsRNAの小干渉RNA(siRNA)として知られているdsRNAの小片へのプロセシングに関与する(Zamore et al.,2000,Cell,101,25−33、Bass,2000,Cell,101,235、Berstein et al.,2001,Nature,409,363)。ダイサー活性に由来する小干渉RNAは、典型的に約21〜約23ヌクレオチドの長さであり、約19塩基対の二重鎖を含む(Zamore et al.,2000,Cell,101,25−33、Elbashir et al.,2001,Genes Dev.,15,188)。ダイサーはまた、翻訳対照における関与が示されている、保存構造の前駆体RNAからの21−および22−ヌクレオチド小分子RNA(stRNA)の切除に関連づけられている(Hutvagner et al.,2001,Science,293,834)。RNAi応答はまた、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖と相補的な配列を有する単鎖RNAの切断を媒介する一般的にRNA誘発サイレンシング複合体(RISC)と称されるエンドヌクレアーゼ複合体を特徴とする。標的RNAの切断は、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖に相補的な領域の中間で行われる(Elbashir et al.,2001,Genes Dev.,15,188)。

RNAiは、様々な系において研究されている。Fireら(1998,Nature,391,806)は、線虫におけるRNAiの観察を先駆けて行った。BahramianおよびZarbl(1999,Molecular and Cellular Biology,19,274−283)、ならびにWiannyおよびGoetz(1999,Nature Cell Biol.,2,70)は、哺乳動物の系におけるdsRNAによって媒介されたRNAiを記載する。Hammondら(2000,Nature,404,293)は、dsRNAを遺伝子導入されたショウジョウバエ細胞におけるRNAiを記載する。Elbashirら(2001,Nature,411,494)およびTuschlら(PCT公開第WO 01/75164号)は、ヒト胚腎臓およびHeLa細胞を含む培養された哺乳動物細胞中の合成21−ヌクレオチドRNAの二重鎖の導入によって誘発されたRNAiを記載する。ショウジョウバエ胚ライセートにおける研究(Elbashir et al.,2001,EMBO J.,20,6877)およびTuschlら(PCT公開第WO 01/75164号)は、効率的なRNAi活性を媒介するために必須であるsiRNAの長さ、構造、化学組成物、および配列の特定要件を明らかにした。

核酸分子(例えば、本明細書に記載される構造的特徴を有するもの)は、配列特異的な様式でRNA干渉「RNAi」または遺伝子サイレンシングを調節することによって、遺伝子発現またはウイルス複製を阻害し得るか、または下方制御し得る。例えば、Zamore et al.,2000,Cell,101,25−33、Bass,2001,Nature,411,428−429、Elbashir et al.,2001,Nature,411,494−498、ならびにKreutzerらのPCT公開第WO00/44895号、Zernicka−GoetzらのPCT公開第WO01/36646号、FireのPCT公開第WO99/32619号、PlaetinckらのPCT公開第WO00/01846号、MelloおよびFireのPCT公開第WO01/29058号、Deschamps−DepailletteのPCT公開第WO99/07409号、およびLiらのPCT公開第WO00/44914号、Allshire,2002,Science,297,1818−1819、Volpe et al.,2002,Science,297,1833−1837、Jenuwein,2002,Science,297,2215−2218、およびHall et al.,2002,Science,297,2232−2237、Hutvagner and Zamore,2002,Science,297,2056−60、McManus et al.,2002,RNA,8,842−850、Reinhart et al.,2002,Gene&Dev.,16,1616−1626、およびReinhart&Bartel,2002,Science,297,1831)を参照されたい。

siNA核酸分子は、一方の鎖がセンス鎖であり、他方がアンチセンス鎖である2つの別々のポリヌクレオチド鎖から構築されてもよく、アンチセンス鎖およびセンス鎖が提供されるような核酸分子に関して本明細書に記載される任意の長さおよび構造を有する二重鎖または二本鎖構造を形成する場合、例えば、二本鎖領域(二重鎖領域)は、約15〜約49(例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、または49塩基対)であり、アンチセンス鎖は、標的核酸分子(すなわち、mRNA)またはその一部分のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含み、センス鎖は、標的核酸配列またはその一部分に対応するヌクレオチド配列(例えば、本明細書の核酸分子の約17〜約49以上のヌクレオチドが、標的核酸またはその一部分に相補的である)を含むように、アンチセンスおよびセンス鎖は、自己相補的である(すなわち、各鎖が、他方の鎖のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含む)。

ある特定の態様および実施形態において、本明細書に提供される核酸分子(例えば、siNA分子)は、「RISC長」分子であってもよく、または以下により詳細に記載されるようにダイサー基質であってもよい。pre−miRNA等のより長い分子もまた、RISCにおいて機能し得る。

siNA核酸分子は、別々のセンスおよびアンチセンス配列または領域を含んでもよく、そこでセンスおよびアンチセンス領域は、当分野で知られているようにヌクレオチドまたは非ヌクレオチドリンカー分子によって共有結合的に連結されるか、または代替的にイオン性相互作用、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、および/またはスタッキング相互作用によって非共有結合的に連結される。核酸分子は、標的遺伝子のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含み得る。核酸分子は、標的遺伝子の発現を阻害する方法で標的遺伝子のヌクレオチド配列と相互作用し得る。

代替的に、siNA核酸分子は、単一ポリヌクレオチドから構築され、そこで核酸分子の自己相補的なセンスおよびアンチセンス領域は、核酸塩基のまたは非核酸塩基のリンカー(複数可)の手段によって連結される、すなわち、アンチセンス鎖およびセンス鎖は、二重鎖領域を形成するように(例えば、当分野でよく知られている「ヘアピン」構造を形成するように)折り畳むアンチセンス領域およびセンス領域を有する単一ポリヌクレオチドの部分である。そのようなsiNA核酸分子は、自己相補的なセンスおよびアンチセンス領域を有する二重鎖、非対称二重鎖、ヘアピン、または非対称ヘアピン二次構造のポリヌクレオチドであってもよく、アンチセンス領域は、別々の標的核酸分子またはその一部分のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含み、センス領域は、標的核酸配列(例えば、mRNAの配列)に対応するヌクレオチド配列を有する。そのようなsiNA核酸分子は、2つ以上のループ構造および自己相補的なセンスおよびアンチセンス領域を含む基部を有する環状単鎖ポリヌクレオチドであってもよく、アンチセンス領域は、標的核酸分子またはその一部分のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含み、センス領域は、標的核酸配列またはその一部分に対応するヌクレオチド配列を有し、環状ポリヌクレオチドは、RNAiを媒介することができる活性核酸分子を生成するように、インビボまたはインビトロのいずれかでプロセシングされ得る。

以下の命名法が、siNA分子の長さおよびオーバーハングを記述するために当分野でしばしば使用され、本明細書および実施例を通して使用され得る。二重鎖に与えられる名称は、オリゴマーの長さおよびオーバーハングの存在または不在を示す。例えば、「21+2」二重鎖は、その両方が21ヌクレオチドの長さであり、また21量体siRNA二重鎖または21量体核酸と名付けられる2つの核酸鎖を含有し、2ヌクレオチド 3’−オーバーハングを有する。「21−2」設計は、2ヌクレオチド 5’オーバーハングを有する21量体核酸二重鎖を指す。21−0設計は、オーバーハングを有しない(平滑化)21量体核酸二重鎖である。「21+2UU」は、2−ヌクレオチド 3’−オーバーハングを有する21量体二本鎖であり、3’末端の末端2ヌクレオチドが両方U残基である(これは標的配列のミスマッチをもたらし得る)。前述の命名法は、様々な長さの鎖、二重鎖、およびオーバーハングのsiNA分子に適用され得る(19−0、21+2、27+2等)。代替的であるが類似の命名法において、「25/27」は、2−ヌクレオチド 3’−オーバーハングを有する25塩基センス鎖および27塩基アンチセンス鎖を有する非対称二本鎖である。「27/25」は、27塩基センス鎖および25塩基アンチセンス鎖を有する非対称二本鎖である。

化学修飾 ある特定の態様および実施形態において、本明細書に提供される核酸分子(例えば、siNA分子を含むdsRNA)は、1つ以上の修飾(または化学修飾)を含み、1つ以上の非定型的部分の存在を含む。ある特定の実施形態において、そのような修飾は、分子を、「非修飾」リボヌクレオチドまたは非修飾リボ核酸と称され得る、標準リボヌクレオチドまたはRNA分子(すなわち、それは標準アデニン、シトシン、ウラシル、またはグアニン部分を含む)と異なるものにする核酸分子またはポリヌクレオチドに対する任意の変化を含む。アデニン、シトシン、チミン、またはグアニン部分によって表される2’−デオキシ糖を有する従来のDNA塩基およびポリヌクレオチドは、「非修飾デオキシリボヌクレオチド」または「非修飾デオキシリボ核酸」と称されてもよく、したがって、「非修飾ヌクレオチド」または「非修飾核酸」という用語は、本明細書で使用される場合、異なる明確な指示がない限り、「非修飾リボヌクレオチド」または「非修飾リボ核酸」を指す。そのような修飾は、ポリヌクレオチドのヌクレオチド糖、ヌクレオチド塩基、ヌクレオチドリン酸基、および/またはリン酸骨格内であってもよく、RNAおよびDNAの鏡像異性体を含む。

ある特定の実施形態において、本明細書で開示される修飾は、分子のRNAi活性を上昇させる、および/または分子のインビボ安定性、特に血清中の安定性を上昇させる、および/または分子の生物学的利用率を増加させるために使用され得る。修飾の非限定的な例には、ヌクレオチド間またはヌクレオシド間結合;任意の位置のデオキシリボヌクレオチドまたはジデオキシリボヌクレオチドおよび核酸分子の鎖;好ましくはアミノ、フルオロ、メトキシ、アルコキシ、およびアルキルから選択される2’位に修飾を有する核酸(例えば、リボ核酸);2’−デオキシリボヌクレオチド、2’−O−メチルリボヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−フルオロリボヌクレオチド、「ユニバーサル塩基」ヌクレオチド、「非環状」ヌクレオチド、5−C−メチルヌクレオチド、ビオチン基、および末端グリセリルおよび/または逆位デオキシ脱塩基残基取り込み、蛍光分子等の立体障害分子が挙げられるが、これらに限定されない。他のヌクレオチド修飾因子には、3’−デオキシアデノシン(コルジセピン)、3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)、2’,3’−ジデオキシイノシン(ddI)、2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン(thiacytidine)(3TC)、2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシチミジン(d4T)、ならびにモノリン酸ヌクレオチドの3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)、2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン(3TC)、および2’,3’−ジデヒドロ−2’,3’−ジデオキシチミジン(d4T)が挙げられ得る。様々な修飾のさらなる詳細は、以下より詳細に記載される。

修飾ヌクレオチドは、ノーザン構造を有するものを含む(例えば、ノーザン擬回転サイクル、例えば、Saenger,Principles of Nucleic Acid Structure,Springer−Verlag ed.,1984を参照されたい)。ノーザン配置を有するヌクレオチドの非限定的な例には、ロックド核酸(LNA)ヌクレオチド(例えば、2’−O、4’−C−メチレン−(D−リボフラノシル)ヌクレオチド);2’−メトキシエトキシ(MOE)ヌクレオチド;2’−メチル−チオ−エチル、2’−デオキシ−2’−フルオロヌクレオチド、2’−デオキシ−2’−クロロヌクレオチド、2’−アジドヌクレオチド、および2’−O−メチルヌクレオチドが挙げられる。ロックド核酸またはLNAは、例えば、Elman et al.,2005、Kurreck et al.,2002、Crinelli et al.,2002、Braasch and Corey,2001、Bondensgaard et al.,2000、Wahlestedt et al.,2000、および特許公開第WO00/47599号、同第WO99/14226号、および同第WO98/39352号、ならびに同第WO2004/083430号に記載される。1つの実施形態において、LNAは、センス鎖の5’終端に組み込まれる。

化学修飾はまた、その中にC2’−C3’結合が存在しない非ヌクレオチド、非環状類似体である非ロックド(unlocked)核酸またはUNAを含む(UNAは実はヌクレオチドではないが、それらは、本明細書において考えられるように「修飾」ヌクレオチドまたは修飾核酸の範囲に明確に含まれる)。特定の実施形態において、オーバーハングを有する核酸分子は、オーバーハング位置でUNAを有するように修飾され得る(すなわち、2ヌクレオチドオーバーハンド)。他の実施形態において、UNAは、3’−または5’−末端において含まれる。UNAは、核酸鎖どこにでも、すなわち7位に位置され得る。核酸分子は、1つ以上のUNAを含み得る。例となるUNAは、Nucleic Acids Symposium Series No.52 p.133−134(2008)に開示される。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される核酸分子(例えば、siNA分子)は、1つ以上のUNA、または1つのUNAを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される3’−オーバーハングを有する核酸分子(例えば、siNA分子)は、3’オーバーハングに1つまたは2つのUNAを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される核酸分子(例えば、siNA分子)は、アンチセンス鎖中、例えば、アンチセンス鎖の6位または7位にUNA(例えば、1つのUNA)を含む。化学修飾はまた、例えば、本明細書で開示される非対合ヌクレオチド類似体を含む。化学修飾は、本明細書で開示される非定型的部分をさらに含む。

化学修飾はまた、オリゴヌクレオチドの5’および/または3’部分上に末端修飾を含み、それはまた、キャッピング部分としても知られている。そのような末端修飾は、ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、脂質、ペプチド、および糖から選択される。

化学修飾はまた、六員「六員環ヌクレオチド類似体」を含む。六員環ヌクレオチド類似体の例は、Allartら(Nucleosides&Nucleotides,1998,17:1523−1526、およびPerez−Perez,et al.,1996,Bioorg.and Medicinal Chem Letters 6:1457−1460)に開示される。ヘキシトールおよびアルトリトールヌクレオチド単量体を含む六員環ヌクレオチド類似体を含むオリゴヌクレオチドは、特許出願公開第WO2006/047842号に開示される。

化学修飾はまた、正常な自然発生のヌクレオチドと比較して逆キラリティーを有する「鏡像体」ヌクレオチドを含む、つまり、鏡像体ヌクレオチドは自然発生のD−ヌクレオチドの「L−ヌクレオチド」類似体であり得る(米国特許第6,602,858号を参照されたい)。鏡像体ヌクレオチドは、例えば、ホスホロチオエートまたはホスホン酸塩部分等の本明細書に記載の少なくとも1つの糖または塩基修飾および/または骨格修飾をさらに含み得る。米国特許第6,602,858号は、少なくとも1つのL−ヌクレオチド置換を含む核酸触媒を開示する。鏡像体ヌクレオチドには、例えば、L−DNA(L−デオキシリボアデノシン−3’−リン酸(鏡像体dA)、L−デオキシリボシチジン−3’−リン酸(鏡像体dC)、L−デオキシリボグアノシン−3’−リン酸(鏡像体dG)、L−デオキシリボチミジン−3’−リン酸(鏡像体dT))、およびL−RNA(L−リボアデノシン−3’−リン酸(鏡像体rA)、L−リボシチジン−3’−リン酸(鏡像体rC)、L−リボグアノシン−3’−リン酸(鏡像体rG)、L−リボウラシル−3’−リン酸(鏡像体dU)が挙げられる。

いくつかの実施形態において、修飾リボヌクレオチドは、例えば5’末端位置(位番号1)においてヌクレオチドとして有用であり得る5’OMe DNA(5−メチル−デオキシリボグアノシン−3’−リン酸)、PACE(デオキシリボアデニン3’ホスホノアセテート、デオキシリボシチジン3’ホスホノアセテート、デオキシリボグアノシン3’ホスホノアセテート、デオキシリボチミジン3’ホスホノアセテートといった修飾デオキシリボヌクレオチドを含む。

修飾は、本明細書で開示される核酸分子の1つ以上の鎖中に、例えば、センス鎖、アンチセンス鎖、または両方の鎖中に存在し得る。ある特定の実施形態において、アンチセンス鎖は、修飾を含んでもよく、センス鎖は、非修飾RNAを含むだけであってもよい。

核酸塩基 本明細書で開示される核酸の核酸塩基は、アデニン、グアニン、シトシン、ウリジン等の非修飾リボヌクレオチド(プリンおよびピリミジン)を含み得る。一方または両方の鎖中の核酸塩基は、チミン、キサンチン、ヒポキサンチン、イノシン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよび他のアルキル誘導体、任意の「ユニバーサル塩基」ヌクレオチド;アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよび他のアルキル誘導体、5−ハロウラシルおよびシトシン、5−プロピニルウラシルおよびシトシン、6−アゾウラシル、シトシン、およびチミン、5−ウラシル(偽ウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、アミノ、チオール、チオアルキル、ヒドロキシルおよび他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニン、デアザプリン、プリンおよびピリミジンの複素環置換類似体、例えば、アミノエチオキシ(ethyoxy)フェノキサジン、プリンおよびピリミジンの誘導体(例えば、1−アルキル−、1−アルケニル−、複素芳香族−および1−アルキニル誘導体)、およびそれらの互変異性体、8−オキソ−N6−メチルアデニン、7−ジアザキサンチン、5−メチルシトシン、5−メチルウラシル、5−(1−プロピニル)ウラシル、5−(1−プロピニル)シトシン、および4,4−エタノシトシン)等の天然および合成核酸塩基で修飾され得る。好適な塩基の他の例には、2−アミノピリジンおよびトリアジン等の非プリニルおよび非ピリミジニル塩基が挙げられる。

糖部分 本明細書で開示される核酸中の糖部分は、いかなる修飾も伴わない2’−ヒドロキシル−ペントフラノシル糖部分を含み得る。代替的に、糖部分は、2’−O−アルキル(2’−O−メチルおよび2’−O−エチルを含む)、すなわち、2’−アルコキシ、2’−アミノ、2’−O−アリル、2’−S−アルキル、2’−ハロゲン(2’−フルオロ、クロロ、およびブロモを含む)、2’−メトキシエトキシ、2’−O−メトキシエチル、2’−O−2−メトキシエチル、2’−アリルオキシ(−OCH2CH=CH2)、2’−プロパルギル、2’−プロピル、エチニル、プロペニル、CF、シアノ、イミダゾール、カルボン酸塩、チオエート、C1〜C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリールもしくはアラルキル、OCF3、OCN、O−、S−、またはN−アルキル;O−、S、またはN−アルケニル;SOCH3;SO2CH3;ONO2;NO2、N3;ヘテロジクロアルキル(heterozycloalkyl);ヘテロジクロアルカリール(heterozycloalkaryl);アミノアルキルアミノ;ポリアルキルアミノ、または置換シリル、特に、例えば、欧州特許第EP 0 586 520 B1号、または同第EP 0 618 925 B1号に記載されるもの等のペントフラノシル糖部分の2’位における2’−デオキシ−ペントフラノシル糖部分、D−リボース、ヘキソース修飾のように修飾され得る。

アルキル基は、直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等)、分岐鎖アルキル基(イソプロピル、tert−ブチル、イソブチル等)、シクロアルキル(脂環式)基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル)、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む飽和脂肪族基を含む。ある特定の実施形態において、直鎖または分岐鎖アルキルは、その骨格内に6個以下の炭素原子(例えば、直鎖に対してC1〜C6、分岐鎖に対してC3〜C6)、およびより好ましくは4個以下の炭素原子を有する。同様に、好ましいシクロアルキルは、その環構造中に3〜8炭素原子を有し得、およびより好ましくは環構造中に5または6個の炭素を有する。C1〜C6という用語は、1〜6個の炭素原子を含むアルキル基を含む。アルキル基は、炭化水素骨格の1つ以上の炭素上の水素を置換する置換基を有するアルキル部分等の置換アルキル基であり得る。そのような置換基には、例えば、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボン酸塩、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボン酸塩、硫酸塩、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド(sulfonamido)、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくは複素芳香族部分が挙げられ得る。

アルコキシ基は、酸素原子に共有結合的に連結される置換および非置換アルキル、アルケニル、およびアルキニル基を含む。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、プロポキシ、ブトキシ、およびペントキシ基が挙げられる。置換アルコキシ基の例には、ハロゲン化アルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基は、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボン酸塩、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、リン酸、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボン酸塩、硫酸塩、アルキルスルフィニル、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくは複素芳香族部分等の基で置換され得る。ハロゲン置換アルコキシ基の例には、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシ等が挙げられるが、これらに限定されない。

いくつかの実施形態において、ペンタフロノシル(pentafuronosyl)環は、ペンタフロノシル環のC2’−C3’結合を欠いている非環状誘導体で置換され得る。例えば、シクロヌクレオチドは、通常dNMPs中に存在する2’−デオキシリボフラノシル糖の2−ヒドロキシエトキシメチル基を置換し得る。

ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を含む。

骨格 本明細書で開示される核酸のヌクレオシドサブユニットは、ホスホジエステル結合によって互いに連結され得る。ホスホジエステル結合は、任意に他の結合で置換えられてもよい。例えば、アルキルホスホトリエステル、ホスホトリエステルリン結合、5’−エトキシホスホジエステル、P−アルキルオキシホスホトリエステル、メチルホスホン酸塩、ならびに非リン含有結合、例えば、炭素塩、カルバマート、シリル、硫黄、スルホン酸塩、スルホンアミド、ホルムアセタール、チオホルムアセチル、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ、およびメチレンオキシメチルイミノ結合等の、ホスホロチオエート、チオリン酸−D−リボース実体、トリエステル、チオエート、2’−5’架橋骨格(5’−2’としても称され得る)、PACE、3’−(または−5’)デオキシ−3’−(または−5’)チオ−ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレン酸塩、3’−(または−5’)デオキシホスフィナート、ボラノリン酸、3’−(または−5’)デオキシ−3’−(または5’−)アミノホスホロアミド酸、水素ホスホン酸塩、ホスホン酸塩、ボラノリン酸エステル、ホスホロアミド酸、アルキルまたはアリールホスホン酸塩、およびホスホトリエステル修飾。

本明細書で開示される核酸分子は、ペプチド核酸(PNA)骨格を含み得る。PNA骨格は、ペプチド結合によって連結される反復N−(2−アミノエチル)−グリシン単位を含む。プリン、ピリミジン、天然および合成塩基等の様々な塩基は、メチレンカルボニル結合によって骨格に連結される。

末端リン酸 修飾は、末端リン酸基で行われ得る。例えば、核酸配列の3’末端を安定化するために、以下を含む、安定化化学の非限定的な例が使用され得る:(1)[3−3’]−逆位デオキシリボース、(2)デオキシリボヌクレオチド、(3)[5’−3’]−3’−デオキシリボヌクレオチド、(4)[5’−3’]−リボヌクレオチド、(5)[5’−3’]−3’−O−メチルリボヌクレオチド、(6)3’−グリセリル、(7)[3’−5’]−3’−デオキシリボヌクレオチド、(8)[3’−3’]−デオキシリボヌクレオチド、(9)[5’−2’]−デオキシリボヌクレオチド、および(10)[5−3’]−ジデオキシリボヌクレオチド。非修飾骨格化学に加えて、本明細書に記載の1つ以上の異なる骨格修飾と組み合わせられてもよい。

例示的な化学修飾末端リン酸基は、以下に示されるものを含む。

1つの態様において、構造(A1)を有する、対象の耳内のニューロンの神経保護に使用するための二本鎖核酸分子が提供される:

式中、NおよびN’のそれぞれは、非修飾もしくは修飾であるヌクレオチド、または非定型的部分であり、 式中、(N)xおよび(N’)yのそれぞれは、その中で各連続するNまたはN’が共有結合によって次のNまたはN’に接合されるオリゴヌクレオチドであり、ZおよびZ’のそれぞれは独立して、存在または不在であるが、存在する場合、独立して、その中にそれが存在する鎖の3’終端で共有結合する1〜5連続ヌクレオチドもしくは非ヌクレオチド部分またはそれらの組み合わせを含み、 式中、z"は、存在または不在であってもよいが、存在する場合、(N’)yの5’終端で共有結合するキャッピング部分であり、 xおよびyのそれぞれは独立して、18〜40の整数であり、 式中、(N’)yの配列は、(N)xの配列に相補性を有し、(N)xは、標的mRNAのアンチセンス配列を含み、標的mRNAは、配列番号1〜3、配列番号4、配列番号5〜6、または配列番号7のいずれか1つに示される配列を含む。

いくつかの実施形態において、x=yであり、xおよびyのそれぞれは、19、20、21、22、または23である。様々な実施形態において、x=y=19である。いくつかの実施形態において、アンチセンスおよびセンス鎖は、塩基対形成によって二本鎖を形成する。いくつかの実施形態において、(N)xおよび(N’)yは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるPCT特許公開第WO2008/050329号、同第WO2009/044392号、同第WO2008/106102号、同第WO2009/001359号、同第WO/2009/090639号に提供されるオリゴヌクレオチド対である。

いくつかの実施形態において、x=yであり、xおよびyのそれぞれは、19、20、21、22、または23である。様々な実施形態において、x=y=19である。いくつかの実施形態において、アンチセンスおよびセンス鎖は、塩基対形成によって二本鎖を形成する。

提供される1つの実施形態に従って、以下に記載される構造(A2)を有する、対象の耳内のニューロンの神経保護に使用するための修飾核酸分子が提供される:

式中、N2、N、およびN’のそれぞれは独立して、非修飾もしくは修飾ヌクレオチド、または非定型的部分であり、 式中、(N)xおよび(N’)yのそれぞれは、その中で各連続するNまたはN’が共有結合によって隣接するNまたはN’に接合されるオリゴヌクレオチドであり、 xおよびyのそれぞれは独立して、17〜39の整数であり、 式中、(N’)yの配列は、(N)xの配列に相補性を有し、(N)xは、標的mRNA中の連続配列に相補性を有し、 式中、N1は、(N)xに共有結合し、標的mRNAに対しミスマッチであり、標的mRNAは、配列番号1〜3、配列番号4、配列番号5〜6、または配列番号7のいずれか1つに示され、 式中、N1は、ウリジン、修飾ウリジン、リボチミジン、修飾リボチミジン、デオキシリボチミジン、修飾デオキシリボチミジン、リボアデニン、修飾リボアデニン、デオキシリボアデニン、または修飾デオキシリボアデニンから成る群から選択される部分であり、 式中、N1およびN2は、塩基対を形成し、 式中、ZおよびZ’のそれぞれは独立して、存在または不在であるが、存在する場合、独立して、その中にそれが存在する鎖の3’終端で共有結合する1〜5連続ヌクレオチドもしくは非ヌクレオチド部分またはそれらの組み合わせであり、 式中、z"は、存在または不在であってもよいが、存在する場合、(N’)yの5’終端で共有結合するキャッピング部分である。

いくつかの実施形態において、各連続するNまたはN’を接合する共有結合は、ホスホジエステル結合である。

いくつかの実施形態において、ZおよびZ’は不在である。他の実施形態において、その全体を参照することにより本明細書に組み込まれるPCT特許公開第WO/2011/085056号に開示されるように、ZまたはZ’のうちの1つが存在し、非ヌクレオチドオーバーハング部分を含む。

構造A1の特定の実施形態において、x=y=19であり、Zは、少なくとも1つのC3アルキルオーバーハングを含む。構造A2の特定の実施形態において、x=y=18であり、Zは、少なくとも1つのC3アルキルオーバーハングを含む。いくつかの実施形態において、C3−C3オーバーハングは、共有結合、好ましくはホスホジエステル結合を介して、(N)xまたは(N’)yの3’終端に共有結合する。いくつかの実施形態において、第1のC3と第2のC3との間の結合は、ホスホジエステル結合である。いくつかの実施形態において、3’非ヌクレオチドオーバーハングは、C3Pi−C3Piである。いくつかの実施形態において、3’非ヌクレオチドオーバーハングは、C3Pi−C3Psである。いくつかの実施形態において、3’非ヌクレオチドオーバーハングは、C3Pi−C3OH(OHはヒドロキシである)である。いくつかの実施形態において、3’非ヌクレオチドオーバーハングは、C3Pi−C3OHである。

様々な実施形態において、アルキル部分は、末端ヒドロキシル、末端アミノ、または末端リン酸基を含むC3アルキル、C4アルキル、C5アルキル、またはC6アルキル部分を含むアルキル誘導体を含む。いくつかの実施形態において、アルキル部分は、C3アルキルまたはC3アルキル誘導体部分である。いくつかの実施形態において、C3アルキル部分は、プロパノール、プロピルリン酸、プロピルホスホロチオエート、またはそれらの組み合わせを含む。C3アルキル部分は、ホスホジエステル結合を介して(N’)yの3’終端および/または(N)xの3’終端に共有結合的に連結される。いくつかの実施形態において、アルキル部分は、プロパノール、プロピルリン酸、またはプロピルホスホロチオエートを含む。いくつかの実施形態において、ZおよびZ’のそれぞれは独立して、プロパノール、プロピルリン酸プロピルホスホロチオエート、それらの組み合わせ、またはそれらの複数体(multiples)、特に、2または3の、共有結合的に連結されるプロパノール、プロピルリン酸、プロピルホスホロチオエート、またはそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、ZおよびZ’のそれぞれは独立して、プロピルリン酸、プロピルホスホロチオエート、プロピルホスホ−プロパノール;プロピルホスホ−プロピルホスホロチオエート;プロピルホスホ−プロピルリン酸;(プロピルリン酸)3、(プロピルリン酸)2−プロパノール、(プロピルリン酸)2−プロピルホスホロチオエートから選択される。任意のプロパンまたはプロパノール結合部分が、ZまたはZ’内に含まれ得る。

例となる3’末端非ヌクレオチド部分の構造は以下のとおりである:

いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の5’末端ヌクレオチド(アンチセンス鎖の1位)は、標的mRNAにミスマッチである。いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の5’末端ヌクレオチドは、修飾リボアデノシンまたは修飾リボウリジンである。

いくつかの実施形態において、(N)xおよび(N’)yのそれぞれは独立して、3’および5’終端でリン酸化されるか、または非リン酸化である。

別途指示がない限り、本明細書で考察される構造の好ましい実施形態において、各連続するNとN’との間の共有結合は、ホスホジエステル結合である。

共有結合は、1つのヌクレオチド単量体を隣接するヌクレオチド単量体に結びつけるヌクレオチド間結合を指す。共有結合には、例えば、ホスホジエステル結合、ホスホロチオエート結合、P−アルコキシ結合、P−カルボキシ結合等が挙げられる。RNAおよびDNAの通常のヌクレオシド間結合は、3’〜5’ホスホジエステル結合である。ある特定の好ましい実施形態において、共有結合は、ホスホジエステル結合である。共有結合は、開示される特に第WO2004/041924号に開示されるもの等の非亜リン酸含有ヌクレオシド間結合を包含する。別途指示がない限り、本明細書で考察される構造の好ましい実施形態において、各連続するNとN’との間の共有結合は、ホスホジエステル結合である。

上記の構造のすべてに関して、いくつかの実施形態では、(N)xのオリゴヌクレオチド配列は、(N’)yのオリゴヌクレオチド配列に完全に相補的である。他の実施形態において、(N)xおよび(N’)yは、実質的に相補的である。ある特定の実施形態において、(N)xは、標的mRNA中の18〜40の連続するヌクレオチドに完全に相補的である。他の実施形態において、(N)xは、標的mRNA中の18〜40の連続するヌクレオチドに実質的に相補的である。

いくつかの実施形態において、(N)xおよび(N’)yのどちらも3’および5’終端でリン酸化されない。他の実施形態において、(N)xおよび(N’)yのいずれかまたは両方が、3’終端(3’ Pi)でリン酸化される。さらに別の実施形態において、(N)xおよび(N’)yのいずれかまたは両方が、切断できないリン酸基を用いて3’終端でリン酸化される。さらに別の実施形態において、(N)xおよび(N’)yのいずれかまたは両方が、切断可能または切断できないリン酸基を用いて末端2’終端位置でリン酸化される。さらに、本発明の阻害性核酸分子は、1つ以上の間隙および/または1つ以上のニックおよび/または1つ以上のミスマッチを含み得る。理論に束縛されるものではないが、間隙、ニック、およびミスマッチは、その阻害成分内へのDICER、DROSHA、またはRISC等の内在性細胞機構によってより容易にプロセシングされ得るように核酸/siRNAを部分的に不安定化する利点を有する。

二本鎖RNA化合物の合成 本発明の薬学的組成物の調製に有用な二本鎖RNA化合物は、リボ核(またはデオキシリボ核)オリゴヌクレオチドの合成のための当分野でよく知られている方法のいずれかの方法によって合成される。そのような合成は、特に、Beaucage and Iyer,Tetrahedron 1992;48:2223−2311、Beaucage and Iyer,Tetrahedron 1993;49: 6123−6194、およびCaruthers,et.al.,Methods Enzymol.1987;154:287−313に記載され、チオエートの合成は、特に、Eckstein,Ann.Rev.Biochem.1985;54:367−402に記載され、RNA分子の合成は、Sproat,in Humana Press 2005 Herdewijn P.編;Kap.2:17−31に記載され、それぞれの下流プロセスは、特に、Pingoud et al.,in IRL Press 1989 Oliver R.W.A.編;Kap.7: 183−208に記載される。

他の合成手順は、当分野で知られており、例えば、Usman et al.,1987,J.Am.Chem.Soc.,109,7845、Scaringe et al.,1990,NAR.,18,5433、Wincott et al.,1995,NAR.23,2677−2684、およびWincott et al.,1997,Methods Mol.Bio.,74,59に記載される手順が、5’−末端のジメトキシトリチルおよび3’−末端のホスホラミダイト等の一般的な核酸保護およびカップリング基として使用され得る。修飾(例えば、2′−O−メチル化)ヌクレオチドおよび非修飾ヌクレオチドは、所望に応じて組み込まれる。

本発明の薬学的組成物の調製に有用なオリゴヌクレオチドは、例えば、核酸連結によって(Moore et al.,1992,Science 256,9923、Draper et al.,特許公開第WO93/23569号、Shabarova et al.,1991,NAR 19,4247、Bellon et al.,1997,Nucleosides&Nucleotides,16,951、Bellon et al.,1997,Bioconjugate Chem.8,204)、または合成に続くハイブリダイゼーションおよび/もしくは脱保護によって、別々に合成され、合成後にともに接合される。

市販の機械(特に、アプライドバイオシステムズから入手可能である)が使用されてもよく、オリゴヌクレオチドは、本明細書で開示される配列に従って調製されることに留意する。化学合成された断片の重複する対は、当分野でよく知られている方法を用いて結合されてもよい(例えば、米国特許第6,121,426号を参照されたい)。鎖は、別々に合成され、次いで管の中で互いにアニーリングされる。次いで、二本鎖siRNAは、(例えば、それらのうちの1つの過剰のため)HPLCによってアニーリングされなかった単鎖オリゴヌクレオチドから分離される。本発明のsiRNAまたはsiRNA断片に関して、本発明における使用のために2つ以上のそのような配列が、合成され、ともに連結され得る。

本発明の薬学的組成物の調製に有用な二本鎖RNA化合物はまた、例えば、米国特許公開第2004/0019001号に記載されるタンデム合成方法論を介して合成されてもよく、そこでは、siRNA鎖の両方が、切断可能なリンカーによって分離される単一の近接オリゴヌクレオチド断片または鎖として合成され、その切断可能なリンカーは、その後切断されて、ハイブリッド形成し、siRNA二本鎖の浄化を可能にする別々のsiRNA断片または鎖を提供する。リンカーは、ポリヌクレオチドリンカーまたは非ヌクレオチドリンカーから選択される。

本発明の組成物は、好ましくは2つ以上のオリゴヌクレオチドを含み、これらのオリゴは、上述のプロセスに従って、別々に合成されてもよく、ならびにともに混合、または(共有結合的または非共有結合的に)合成後にともに接合、またはともに合成されてもよい。

薬学的組成物 本発明のオリゴヌクレオチド化合物は、未加工の化学物質として投与されることが可能であるが、それらを薬学的組成物として提供することが望ましい。いくつかの実施形態において、オリゴリボヌクレオチド化合物は、内在性細胞内複合体によって生成される。

本明細書で開示される薬学的組成物は、任意の化学修飾または非修飾二本鎖RNAオリゴヌクレオチド化合物を用いて調製される。ダイサー基質であるsiRNAまたは非対称siRNAが、本発明に使用され得る。本発明に使用される二本鎖RNAオリゴヌクレオチド化合物は、任意の薬学的に許容される塩、エステル、かかるエステルの塩、またはヒトを含む哺乳動物への投与するときに、耳の疾患、障害、および傷害を治療することができる任意の他の化合物を包含する。「薬学的に許容される塩」という用語は、生理学的および薬学的に許容される塩、すなわち、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、それへの所望されない毒物学的作用に影響しない塩を指す。いくつかの実施形態において、本発明の薬学的組成物は、本明細書で開示される構造において、またはタンデムsiRNAまたはRNAstarとして示される修飾のうちの1つに従って化学的におよび、または構造的に修飾される二本鎖RNA化合物を用いて調製される(第WO2007/091269号を参照されたい)。ある特定の好ましい分子は、CASP2、NOX3、CAPNS1、またはRHOAを標的とする化学合成され、修飾されるdsRNA分子である。ある特定の好ましい分子は、CASP2_4オリゴヌクレオチド配列を用いるdsRNAである。

本発明は、1つ以上の阻害性オリゴヌクレオチド化合物、透過性促進剤および薬学的に許容されるビヒクルまたは担体を含む薬学的組成物をさらに提供する。いくつかの実施形態において、組成物は、2つ以上の異なるオリゴヌクレオチド/siRNA化合物の混合物を含む。

本化合物は、経口的に、皮下に、または静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、経鼓室、ならびにくも膜下腔内、および注入技術を含む非経口的に投与され得る。化合物の埋め込み物もまた有用である。好ましい投与方法は、経鼓室である。皮下、経皮的、静脈内、筋肉内、くも膜下腔内、経鼓室注射および他の投与の親の経路(parental routes)を含む注射用に、液体形状が調製され得る。液体組成物には、有機共溶剤を含むか含まない水溶液、水性または油性の懸濁液、食用油、ならびに同様の薬剤ビヒクルを含む乳濁液が挙げられる。1つの実施形態において、投与は、静脈内投与を含む。好ましい実施形態において、投与は、局所投与、特に外耳道への局所投与、鼓膜への局所投与、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、本出願の化合物は、鼓膜に点耳剤として適用される。一部の好ましい実施形態において、dsRNA分子は、経鼓室注射によって、または点耳剤によって投与される。

様々な実施形態、特に、本発明の薬学的組成物が局所的に投与される実施形態において、薬学的組成物は、浸透促進剤としても知られている透過性促進剤をさらに含む。様々な実施形態において、浸透促進剤は、内耳の疾患、障害、または傷害、好ましくはメニエール病に冒されているか、またはその危険性がある対象の耳内の皮膚および/または鼓膜を通る治療用オリゴヌクレオチドの浸透を増強する任意の化合物または任意の2つ以上の化合物の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、浸透/透過性促進剤は、制限されることなく、ポリエチレングリコール(PEG)、グリセロール(グリセリン)、マルチトール、ソルビトール等;ジエチレングリコールモノエチルエーテル、アゾン、塩化ベンザルコニウム(ADBAC)、塩化セチルペリジウム(cetylperidium chloride)、臭化セチルメチルアンモニウム、デキストラン硫酸塩、ラウリン酸、メントール、メトキシサリチラート、オレイン酸、ホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン、ポリソルベート80、グリコール酸ナトリウム(sodium glycholate)、硫酸ラウリルナトリウム、サリチル酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、スルホキシド、デオキシコール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、ならびに硫酸ラウリルナトリウム、ラウレス(laureth)−9、塩化セチルピリジニウム、およびポリオキシエチレンモノアルキルエーテル等の界面活性剤、サリチル酸ナトリウムおよびメトキシサリチラート等の安息香酸、ラウリン酸、オレイン酸、ウンデカン酸、およびオレイン酸メチル等の脂肪酸、オクタノールおよびノナノール等の脂肪アルコール、ラウロカプラム(laurocapram)、シクロデキストリン、チモール、リモネン、尿素、キトサン、ならびに他の天然および合成ポリマーから選択される。

ある特定の実施形態において、透過性促進剤は、ポリオールである。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドは、ポリオールと混合される。本発明の溶液中の封入に好適なポリオールには、グリセロールおよびソルビトール、マンニトール、またはキシリトール等の糖アルコール、ポリエチレングリコール、ならびにそれらの誘導体が挙げられる。

いくつかの実施形態において、本発明の薬学的組成物はまた、これらに制限されることなく、緩衝剤、保存剤、界面活性剤、担体、溶剤、希釈剤、共溶剤、粘性構築/強化剤、賦形剤、アジュバント、およびビヒクルのうちの1つ以上等の様々な他の薬学的に許容される成分の1つ以上を含む。ある特定の実施形態において、塩化ベンザルコニウムおよびエデト酸ナトリウム(EDTA)等の認可されている保存剤が、組成物の重量に基づいて約0.0001〜0.1%の効果的な抗微生物作用に十分な濃度で本発明の組成物中に含まれる。

1つの実施形態に従うと、ポリオールはグリセロールである。様々な実施形態において、グリセロールは、薬学的組成物の体積で約0.1%〜約35%、約1%〜約30%、約5%〜約25%、好ましくは約10%〜約20%の最終濃度で存在する。いくつかの実施形態において、薬学的組成物中のグリセロールの最終濃度は、薬学的組成物の体積で約2%、2.5%、5%、10%、12.5%、15%、17.5%、20%、22.5%、25%、27.5%、または約30%である。1つの実施形態において、薬学的組成物中のグリセロールの最終濃度は、薬学的組成物の体積で約2%である。別の実施形態において、薬学的組成物中のグリセロールの最終濃度は、薬学的組成物の体積で約5%または約10%である。さらに別の実施形態において、薬学的組成物中のグリセロールの最終濃度は、薬学的組成物の体積で約20%である。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、適用の前に約30℃〜約38℃である、ほぼ対象の体温にされる。耳の障害を治療するためのある特定の方法は、PCT特許公開第WO2011/072091号に開示され、その全体が参照することにより本明細書に組み込まれる。

様々な実施形態において、オリゴヌクレオチド組成物は、任意の好適な投与方法による局所投与用に製剤化される。本発明の薬学的組成物の好適な投与方法は、これらに制限されることなく、(例えば、点耳溶液の)滴下注入、(注射用製剤の)注射、(固形または半固形製剤、例えば、軟膏、ゲルの)沈着、点滴または噴霧等の侵襲性および非侵襲性の投与方法を含む。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、局所的に投与される。送達は、内耳の内側に組成物を配置するための、または(例えば、鼓膜を通して)組成物を注射するための任意の効果的な器具を使用して任意の手段(例えば、液滴、噴霧剤)によってもたらされ得る。

本発明はまた、当業者に知られている製剤技術に従って、本発明の薬学的組成物を調製するためのプロセスを提供する。いくつかの実施形態において、本発明の薬学的組成物を調製するためのプロセスは、任意の好適な順序で、治療的有効量の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド化合物、1つ以上の透過性促進剤、および少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤もしくは担体、またはそれらの混合物を組み合せることを含み、そのような組成物がは、好ましくは本明細書に記載されるような広範な化学的および/または物理的安定性を有する。いくつかの実施形態において、本発明の薬学的組成物を調製するためのプロセスは、任意の好適な順序で、治療的有効量の少なくとも1つのオリゴヌクレオチド化合物、1つ以上の透過性促進剤、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤もしくは担体、またはそれらの混合物、ならびに抗菌剤および/または保存剤を組み合せることを含む。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、二本鎖RNA化合物の溶解を補助する薬理学的に許容される界面活性剤を含む。ある特定の実施形態において、本発明の薬学的組成物は、追加の治療的活性剤をさらに含み、そのような組成物は、本明細書に記載の併用療法において有用である。本発明のいくつかの実施形態において、追加の薬学的活性剤は、これらに限定されることなく、非ステロイド系抗炎症剤、副腎皮質ステロイド、抗真菌薬、抗菌薬等から選択される。

別の態様において、本発明は、メニエール病を治療するための、耳鳴、EHL、突発性眩暈、および聴力損失から成る群から選択される症状の1つ以上を減弱するための、進行性の聴力損失を減弱するための、らせん神経節細胞の神経保護を提供するための、前庭神経節細胞の神経保護を与えるための、らせん神経節細胞内のアポトーシス細胞死を防ぐための、ならびに前庭神経節細胞内のアポトーシス細胞死を防ぐための本発明に従う薬学的組成物を提供する。

本明細書で開示される分子の改良された送達のための組成物は、二本鎖RNA分子の標的化分子への複合体化を含む。複合体は通常、サイレンシング活性を破壊しないように標的化分子の二本鎖RNAのセンス鎖への共有結合を通して形成される。本発明に有用な可能性のある標的化分子には、タンパク質、ペプチド、およびアプタマー、ならびに例えば、コレステロール等の天然化合物が挙げられる。標的化抗体に関して、プロタミン融合タンパク質への複合体化が使用されている(Song et al., Antibody mediated in vivo delivery of small interfering RNAs via cell−surface receptors,Nat Biotechnol.2005.23(6):709−17を参照されたい)。

CASP2、NOX3、CAPNS1の発現を低減させるための、核酸分子を患者に投与する、または分配するための本明細書に提供される核酸分子(例えば、siNA分子)を含むキット、容器、および製剤がまた適用される。キットは、少なくとも1つの容器および少なくとも1つのラベルを含み得る。好適な容器には、例えば、ボトル、小瓶、シリンジ、および試験管が挙げられる。容器は、ガラス、金属、またはプラスチック等の種々の材料から形成され得る。キットは、関連す適応および/または説明書をさらに含んでもよく、そのような目的に対して使用される試薬および他の組成物またはツールがまた含まれ得る。

容器は、代替的に、状態の治療、診断、予後診断、または予防に有効な組成物を保持し得、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内の溶液袋、または皮下注射針によって貫通可能な留め具を有する小瓶であってもよい)。組成物中の活性剤は、CASP2、NOX3、CAPNS1と特異的に結合する、および/またはそれらの機能を調節することができる核酸分子であってもよい。

キットは、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液および/またはデキストロース溶液等の薬学的に許容される緩衝材を含む第2の容器をさらに含み得る。それは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルタ、撹拌機、針、シリンジ、および/または指示および/または説明書を伴う添付文書を含む商用およびユーザ観点から望ましい他の材料をさらに含み得る。

その中で核酸分子が使用前にパッケージ化される単位投与量アンプルまたは多用量(multidose)容器は、それらの薬学的に有効な用量または複数の有効な用量に好適な一定量のdsRNAまたはdsRNAを含む溶液を封入する密閉容器を含み得る。dsRNAは無菌製剤としてパッケージ化され、密閉容器は、使用するまで製剤の無菌性を保護するように設計される。

細胞の免疫応答要素またはそれらの断片をコードする配列を含むdsRNAを含む容器は、ラベルが付されたパッケージを含んでもよく、ラベルは、政府機関、例えば米国食品医薬品局によって指示された形態による通知を有し得、通知はその中にヒト投与のためのポリヌクレオチド材料の製造、使用、および販売の連邦法下での認可を反映する。

連邦法は、ヒトの治療における薬学的組成物の使用が、連邦政府の機関によって認可されていることを要求する。米国において、この施行は、合衆国法典第21編第301〜392条に詳細に記載される、そのような認可を保証するための適切な規則を発布する米国食品医薬品局の責任である。動物の組織から作られる生成物を含む生物由来材料に関する規則は、合衆国法典第42編第262条において提供される。同様の認可が、大部分の諸外国で必要とされる。規則は、国によって異なるが、個々の手段は、当業者によく知られており、本明細書に提供される組成物および方法は、好ましくはそれに従う。

投与 本明細書で開示される方法は、個々の患者の臨床状態、治療される疾患、投与の部位および方法、投与の予定、患者の年齢、性別、体重、ならびに医師に知られている他の要因を考慮すして、適正な医療行為に従う分子の投与および投薬を含む。

「治療的に有効な用量」または「治療的有効量」とは、改善された生存率、より迅速な回復、抑制された疾患の進行、または症状の改善もしくは除去、ならびに適切な測定尺度として当業者によって選択される他の指標を含むが、これらに限定されない、対象またはその生理学的システムにおける改善を達成するために有効な薬学的化合物または組成物の量を指す。

本明細書における目的の「治療的に有効な用量」または「治療的有効量」は、したがって、当分野で知られているそのような考察によって決定される。用量は、改善された生存率もしくはより迅速な回復、または症状の改善もしくは除去、ならびに適切な測定尺度として当業者によって選択される他の指標が挙げられるが、これらに限定されない改善の達成に有効でなければならない。本発明の薬学的組成物は、単一用量または複数の用量で投与される。

特に、オリゴヌクレオチドの活性、障害の徴候および重症度によって投与量が決定され、約0.1ng〜約10mg、約1ng〜約1mg、または約10ng〜約1mgの用量で薬学的に許容される賦形剤もしくは担体中の総オリゴヌクレオチドを投与することを含む。組成物中の二本鎖RNA化合物の濃度は、0.1mg/ml〜100mg/ml、好ましくは1mg/ml〜100mg/ml、およびより好ましくは5mg/ml〜20mg/mlである。

いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチド化合物のヒトに対する活性用量は、1〜4週間以上の期間、またはさらに対象の生涯にわたり、1日あたり1回用量、または1日あたり2回もしくは3回もしくはそれ以上の回数で投与される単一用量または複数の用量のレジメンにおいて、1日あたり1ng/kg体重から約20〜100mg/kg体重、好ましくは1日あたり約0.01mgから約2〜10mg/kg体重の範囲である。

本発明の薬学的組成物は、任意の好適な投与方法によって対象に投与される。本発明のオリゴヌクレオチド組成物の好適な投与方法は、制限されることなく、(点耳剤の)滴下注入、注射、沈着、または耳内への噴霧等の侵襲性および非侵襲性の投与方法を含む。ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、点耳剤として外耳道内に局所的に投与されるか、またはカニューレを通して外耳道内に注射されるか、または鼓膜を通して注射される(経鼓室注射)。多くの場合において、投与方法は、制限されることなく、患耳の治療される疾患または状態または傷害の性質および重症度、ならびに個々の対象の他の臨床状態を含む多くの要因に左右され得る。

様々な実施形態において、本発明の薬学的組成物は、保護または治療効果を提供するのに有効な量で送達される。保護または治療効果の例には、標的タンパク質発現の阻害または少なくとも1つの標的遺伝子のノックダウンを含む。ある特定の実施形態において、少なくとも1つの標的遺伝子の発現を阻害することは、細胞および/または組織の神経保護特性を与える。

したがって、本発明の薬学的組成物は、活性成分(複数可)(すなわち、少なくとも1つのオリゴヌクレオチド化合物)が、本明細書で開示される疾患および状態を防ぐ、抑制する、寛解させる、またはさもなければ治療することを可能にする任意の形態で投与される。非限定的な例として、薬学的組成物は、クリーム、泡、ペースト、軟膏、乳濁液、液体溶液、ゲル、噴霧剤、懸濁液、マイクロ乳濁液、小球体、マイクロカプセル、ナノ球体、ナノ粒子、脂質小胞、リポソーム、ポリマー小胞、パッチ、生物学的挿入、エアロゾル、ポリマーまたはポリマー様材料ならびに/または除去可能および/もしくは吸収性、溶解可能および/もしくは分解性移植片等の既知のまたは新規の薬学的送達システムまたは機器に好適である任意の形態を含む当分野で知られている任意の他の形態として製剤化され得る。無菌液体薬学的組成物、溶液、または懸濁液は、例えば、硝子体内もしくは経鼓室注射によって侵襲的に、または例えば、点耳剤、耳用泡沫剤(ear foam)、噴霧剤、ゲル、クリーム、もしくは軟膏によって局所的に使用され得る。液体組成物には、有機共溶剤を含むおよび含まない水溶液、水性または油性の懸濁液、例えば食用油を含む乳濁液、ならびに類似の薬剤ビヒクルが挙げられる。

耳疾患および障害 対象の耳内のニューロンの神経保護に有用な方法およびキットが、本明細書に開示される。方法およびキットは、らせん神経節の神経保護を提供し、それによって進行性の聴力損失および耳鳴を含む蝸牛機能の減弱または防止に有用である。ニューロンは、外傷、虚血、化学薬品(例えば、耳毒性物質)、感染病原体、免疫反応または栄養の不均衡によって引き起こされる傷害または損傷を含む様々な侵襲から保護され得る。いくつかの実施形態において、聴覚系および/または前庭系の組織内の病理学的異常または変化に関連している疾患に冒されている対象のらせん神経節および/または前庭神経節中のニューロン細胞の損失を低減させるための方法であって、CASP2遺伝子、NOX3遺伝子、CAPNS1遺伝子、またはRHOA遺伝子の発現を下方制御し、それによって対象の耳内のらせん神経節細胞および/または前庭神経節細胞に神経保護を提供する用量の二本鎖RNA(dsRNA)化合物を対象の耳に投与することを含む方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、該投与することは、神経細胞の対照集団と比較して神経細胞の集団中の神経細胞の死の少なくとも10%の減少をもたらす。様々な実施形態において、異常または変化は、特に聴覚器官の組織の病理学的異常/変化および/または前庭器官の組織の病理学的異常/変化に関連しており、そのような変化は、例えば、ニューロン分解または神経細胞死である。いくつかの実施形態において、dsRNA化合物は、CASP2遺伝子を下方制御し、配列番号8に示されるヌクレオチド配列を有するセンス鎖と、配列番号9に示されるヌクレオチド配列を有するアンチセンス鎖とを含み、好ましくはセンス鎖は配列番号24または26に示され、アンチセンス鎖は配列番号25または27に示される。

いくつかの実施形態において、本明細書で開示される方法は、対象の聴覚系および/または前庭系の組織内の病理学的異常/変化に関連している耳疾患の作用を防ぐ、治療する、または緩和することを含み、CASP2遺伝子、NOX3遺伝子、CAPNS1遺伝子、またはRHOA遺伝子の発現を下方制御し、それによって対象の耳内のらせん神経節細胞および/または前庭神経節細胞に神経保護を提供する用量の二本鎖RNA(dsRNA)化合物を対象の耳に投与することを含む。いくつかの実施形態において、該投与することは、神経細胞の対照集団と比較して神経細胞の集団中の神経細胞の死の少なくとも10%の減少をもたらす。様々な実施形態において、異常または変化は、特に聴覚器官の組織の病理学的異常/変化および/または前庭器官の組織の病理学的異常/変化に関連しており、そのような変化は、例えば、ニューロン分解または神経細胞死である。いくつかの実施形態において、dsRNA化合物は、CASP2遺伝子を下方制御し、配列番号8に示されるヌクレオチド配列を有するセンス鎖と、配列番号9に示されるヌクレオチド配列を有するアンチセンス鎖とを含み、好ましくはセンス鎖は配列番号24または26に示され、アンチセンス鎖は配列番号25または27に示される。

本明細書で開示される文脈における「耳毒性物質」とは、その化学作用を通して、聴覚または平衡に関連するニューロンの活性を損傷、障害、または阻害する物質を意味し、それは聴覚および/または平衡を次々に損なう。耳毒性物質は、抗悪性腫瘍薬、サリチル酸塩、ループ利尿剤、キニーネ剤、およびアミノグリコシド系抗菌薬を含む治療用薬剤、食物または医薬品中の混入物、ならびに環境または産業汚染物質を含む。

したがって、1つの態様において、対象に本明細書で開示されるdsRNAを投与することにより、対象の耳のニューロンに神経保護を提供し、それによって、難聴、障害または不均衡、例えば、耳毒性物質誘発難聴、障害または不均衡を防ぐ、低減させる、または治療するための方法およびキットが提供される。

耳毒性アミノグリコシド系抗菌薬には、ネオマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、リビドマイシン、カナマイシン、アミカシン、トブラマイシン、バイオマイシン、ゲンタマイシン、シソマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、ジベカシン、ホルチミシン、およびジヒドロストレプトマイシン、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。具体的な抗菌薬には、ネオマイシンB、カナマイシンA、カナマイシンB、ゲンタマイシンC1、ゲンタマイシンC1a、およびゲンタマイシンC2、ならびに重大な毒性、特にそのような抗菌剤の有用性を低減させる耳毒性および腎毒性を有することが知られている同等物が挙げられる。

耳毒性はまた、抗癌剤に対する重大な用量制限の副作用である。耳毒性新生物薬剤には、ビンクリスチン、ビンブラスチン、シスプラチンおよびシスプラチン様化合物、ならびにタキソールおよびタキソール様化合物が挙げられるが、これらに限定されない。シスプラチン様化合物には、カルボプラチン(パラプラチン(登録商標))、テトラプラチン、オキサリプラチン、アロプラチン(aroplatin)およびトランスプラチン(transplatin)が挙げられ、特に白金系化学療法剤である。

既知の耳毒性副作用を伴う利尿剤、特に「ループ」利尿剤には、これらに制限されることなく、フロセミド、エタクリル酸、および水銀剤が挙げられる。

耳毒性キニーネ剤には、典型的にマラリアの治療に使用されるキニーネ剤の合成代替物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、聴覚障害は、シルデナフィル(バイアグラ(登録商標))、バルデナフィル(レビトラ(登録商標))、およびタダラフィル(シアリス)を含む5型ホスホジエステラーゼ(PDE−5)の阻害剤の副作用である。

アスピリン等のサリチル酸塩は、耳鳴(「耳内での鳴り響き」)および一時的な聴力損失を含む耳毒性副作用を有する。さらに、薬剤が長期間に高用量で使用される場合、難聴は、遷延性および不可逆性となり得る。

ニューロンは、器質的または身体的外傷によって損傷される耳のニューロンの神経保護の提供に有用な方法およびキットが、本明細書でさらに開示される。

様々な実施形態において、対象の耳内の前庭神経節の神経保護の方法が本明細書に提供される。方法およびキットは、前庭神経節の神経保護を提供し、それによって悪心、平衡の損失、または回転性眩暈が挙げられるが、これらに限定されない前庭機能を減弱する、または防ぐのに有用である。ヒトを含む大部分の哺乳動物における前庭感覚神経系は、平衡ならびに空間定位および安定性の感覚に寄与する。

メニエール病 特発性内リンパ水腫(ELH)としても知られるメニエール病はまた、回転性眩暈および耳鳴、ならびに最終的に聴力損失を引き起こすニューロン損傷をもたらす内耳の障害である。メニエール病の原因は不明のままである。それは蝸牛前庭の機能障害および内リンパ水腫によって特徴づけられる(検死解剖)。メニエール病の主要な徴候および症状は以下の通りである。 a)突発性回転性眩暈。回転性眩暈のエピソードは、典型的に何の前兆もなく起こり、通常約20分間〜2時間以上、最大24時間続く。重度の回転性眩暈は、悪心および嘔吐を生じ得る。 b)聴覚損失。メニエール病における聴覚損失は、特に疾患の過程の初期に変動することがある。最終的に、ほとんどの人々は、ある程度の永久的な聴力損失を経験する。聴覚損失は、片耳または両耳であり得る。 c)耳鳴。耳鳴は、耳内での鳴り響き、虫の羽音、轟音、笛声音、または風切り音の知覚である。メニエール病においては、耳鳴はしばしば低音である。 d)耳閉塞感。耳閉塞感は、耳内で膨満や圧力を感じることである。

理論に束縛されるものではないが、メニエール病の患者における蝸牛有毛細胞死および前庭有毛細胞死によって聴力損失が生じることが、概して認められている。有毛細胞は、内耳内に位置する感覚受容器である。聴覚有毛細胞は、蝸牛のコルチ器内に位置し、音の検知および神経繊維を介して脳へ送られる電気信号への音の変換に関与する。前庭有毛細胞は、内耳(卵形嚢、球形嚢、膨大部)の前庭(平衡)器官内に位置する。それらは頭部位置の変化を検知し、体位、眼の位置、および平衡の維持を補助するための信号を脳へ送る。聴覚または前庭有毛細胞の不在下では、音波または重力由来のエネルギーは神経信号に変換されず、聴覚または平衡の欠損が続いて生じる。

好ましい実施形態において、治療される対象は、温血動物、特に哺乳動物、および好ましくはヒトである。

「対象を治療する」とは、疾患または状態に関連している症状を緩和する、もしくは減弱する、疾患の発症を遅延させる、疾患進行を緩徐にさせる、重症度を和らげる、もしくは疾患を治癒する、または疾患の発生を防ぐのに有効な治療的な物質を対象に投与することを指す。「治療」とは、治療処置および予防的もしくは防止的措置の両方を指し、目的は、障害を防ぐ、疾患の進行を緩徐にさせる、または障害の症状を低減させることである。治療を必要としているものには、疾患または状態を既に経験しているもの、疾患または状態を有する危険性があるか、またはその傾向があるもの、および疾患または状態が防がれるものが挙げられる。本発明の組成物は、メニエール病の発症の前に、間に、またはその後に投与される。

聴覚系および/または前庭系の病理学的異常に関連している疾患に冒されている対象のらせん神経節および/または前庭神経節中のニューロン細胞の損失を低減させ、CASP2遺伝子の発現を下方制御する用量の二本鎖RNA(dsRNA)化合物を対象の耳に投与することを含む方法であって、遺伝子は、配列番号1〜3のいずれか1つに示されるmRNAをコードし、それによって対象の耳内のらせん神経節細胞および/または前庭神経節細胞に神経保護を提供する方法が本明細書に提供される。好ましい実施形態において、dsRNA化合物は、配列番号8に示されるヌクレオチド配列を有するセンス鎖と、配列番号9に示されるヌクレオチド配列を有するアンチセンス鎖とを含む。

併用療法 本明細書で開示されるメニエール病ならびに関連する疾患および障害を治療するための方法は、CASP2遺伝子に向けられる二本鎖RNA化合物を投与することを含む。新規の薬学的組成物と併用して、メニエール病に冒されている、または発症している、または罹りやすい対象を治療するための既知の治療法を含む併用療法がさらに開示され、本明細書に記載の治療法は本発明の一部と見なされる。

「併用して」または「組み合わせて」とは、追加の薬学的に有効な化合物が、本発明の薬学的組成物の投与の前に、同時に、または後に投与されることを意味する。上述のそのような組み合わせの個々の成分は、したがって、同じまたは別々の薬学的製剤から、順次または同時のいずれかで投与される。第2の治療用薬剤は、任意の好適な経路で、例えば、眼内、耳内、経口、頬側、吸入、舌下、直腸内、腟内、経尿道、経鼻、局所的、経皮(percutaneous)(すなわち、経皮的)、または非経口(静脈内、筋肉内、皮下、および冠内を含む)投与によって、投与される。

いくつかの実施形態において、本明細書で開示される分子および第2の治療用薬剤/組成物は、同じ経路で投与され、単一組成物で、または2つ以上の異なる薬学的組成物としてのいずれかで提供される。しかしながら、他の実施形態において、本発明の新規の薬学的組成物および第2の治療用組成物/薬剤に対する異なる経路の投与が、可能であるか、あるいは好ましい。当業者は、単独で、または組み合わせるいずれかでの、各治療用薬剤の最良の投与方法を知っている。

本発明は例証的に記載されており、使用される用語は、制限ではなく記述の表現の性質を意図するものであることが理解されるべきである。

上述の教示に照らして本発明の多くの修正および変形が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、具体的に説明されたとおり以外にも実施できることが理解される。

本願全体で、米国特許を含む様々な刊行物が、著者、年、および特許番号により参照される。これらの刊行物ならびに特許および特許出願の開示は、本発明が関連する分野の状態をより詳細に述べるために、それらの全体が本願への参照により本明細書に組み込まれる。

本発明は、実施例を参照して以下詳細に例示説明されるが、それに限定されるとは解釈されない。

本明細書におけるいかなる文献の引用も、かかる文献が、好適な先行技術であること、または本願の特許請求の範囲の特許性に対して考慮される文献であることの承認であるとは意図されない。いかなる文献の内容または日付に関するいかなる記述も、出願の時点で出願人に入手可能な情報に基づいており、かかる記述の正確性に関する承認を構成するものではない。

さらなる詳細を伴わずに、当業者は上記の説明を用いて、本発明を最大限に利用できると考えられる。したがって、以下の好ましい具体的な実施形態は、単に例示説明であると解釈されるべきであり、いかなる意味でも特許請求される本発明を限定するものではない。

一般手順−分子生物およびイムノアッセイ 本明細書に特記していない当分野において既知である標準分子生物学的プロトコルは、概して基本的に、Sambrook et al.,Molecular cloning:A laboratory manual、Cold Springs Harbor Laboratory,New−York(1989,1992)のとおり、およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1988)、およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989)のとおり、およびPerbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley&Sons,New York(1988)、のとおり、およびWatson et al.,Recombinant DNA,Scientific American Books,New York、およびBirren et al(eds)Genome Analysis:A Laboratory Manual Series,Vols.1−4 Cold Spring Harbor Laboratory Press,New Yor(1998)、ならび米国特許第4,666,828号、同第4,683,202号、同第4,801,531号、同第5,192,659号、および同第5,272,057号に説明されている方法論に従い、これらは参照により本明細書に組み込まれる。ポリメラーゼ鎖反応(PCR)を、PCRプロトコル:A Guide To Methods And Applications,Academic Press,San Diego,CA(1990)に記載されるように行った。フローサイトメトリー(FACS)と併用したインサイツPCRは、特異的DNAおよびmRNA配列を含む細胞の検出に使用できる(Testoniら、Blood 1996,87:3822)。定量的PCRおよびRT−PCRの実施方法も当分野においてよく知られている。

本明細書に具体的に記載されない、当分野において既知である標準有機合成プロトコルは、概して基本的に、Organic syntheses:Vol.1−79,editors vary,J.Wiley,New York,(1941−2003)、Gewert et al.,Organic synthesis workbook,Wiley−VCH,Weinheim(2000)、Smith&March,Advanced Organic Chemistry,Wiley−Interscience;5th edition(2001)のとおりに従う。

本明細書に具体的に記載されない当分野において既知である標準医薬品化学法は、概して基本的に、様々な著者および編者による、Pergamon Pressより出版された「Comprehensive Medicinal Chemistry」シリーズのとおりに従う。

一般的に、ELISAは、好ましいイムノアッセイである。ELISAアッセイは、当業者によく知られている。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方がアッセイにおいて使用され得る。適切な場合、ラジオイムノアッセイ(RIA)等の他のイムノアッセイが、当業者に知られているように使用することができる。利用可能なイムノアッセイは、本特許および科学文献において広範に記載される。例えば、米国特許第3,791,932号、同第3,839,153号、同第3,850,752号、同第3,850,578号、同第3,853,987号、同第3,867,517号、同第3,879,262号、同第3,901,654号、同第3,935,074号、同第3,984,533号、同第3,996,345号、同第4,034,074号、同第4,098,876号、同第4,879,219号、同第5,011,771号、および同第5,281,521号、ならびにSambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor,New York,1989を参照されたい。

siRNA活性 活性で治療的に有用なdsRNAの生成に有用なセンスおよびアンチセンス配列は、専売アルゴリズムまたは当分野で既知であるアルゴリズムを使用して生成される。

一般的に、6ウェルプレートに、ウェルあたり約1.5〜2x105の試験細胞(ヒト遺伝子を標的化するsiRNAのためのHeLa細胞および/または293T細胞、ならびにラット/マウス遺伝子を標的とするsiRNAのためのNRK52(正常なラットの腎臓近位尿細管細胞)細胞および/またはNMuMG細胞(マウスの乳腺上皮株細胞))が播かれる(70〜80%集密度)。

24時間後、5nMまたは20nMの最終濃度でLipofectamine(商標)2000試薬(Invitrogen)を使用して、細胞にsiRNA化合物を遺伝子導入する。この細胞をCO2インキュベーターで、37℃で72時間インキュベートする。

遺伝子導入の陽性対照として、PTEN−Cy3標識siRNA化合物を使用する。様々な化学修飾siRNA化合物を活性に対して試験する。siRNA活性の陰性対照としてGFP siRNA化合物を使用する。

遺伝子導入の72時間後、細胞を収集し、細胞からRNAを抽出する。蛍光顕微鏡法により、遺伝子導入効率を試験する。

特異的な好ましいsiRNA構造を用いた遺伝子発現の阻害%を、内在性遺伝子を発現する細胞におけるCasp2遺伝子の定量的qPCR分析を用いて判定する。

概して、インビトロ試験用に選択された特異的配列を有するsiRNAは、ヒト、および非ヒト霊長類、ラット、またはウサギ遺伝子等の2種目に対して特異的である。

血清安定性実験 本発明に従う化学修飾siRNA化合物をヒト血清における二本鎖の安定性に関して以下のように試験する。

7uMの最終濃度のsiRNA分子を100%ヒト血清(Sigma Cat#H4522)内で、37℃でインキュベートする。(ヒト血清1:14.29で希釈されたsiRNAストック100uM)。

5μlを異なる時点(0、30分、1時間、3時間、6時間、8時間、10時間、16時間、および24時間)で15μlの1.5xTBE添加液に添加する。試料を液体窒素中で直ちに凍結し、−20℃で保持する。

各試料を非変性20%アクリルアミドゲルに負荷し、当分野で知られている方法に従って調製する。オリゴを紫外線下で臭化エチジウムを用いて可視化する。

実施例1:マウス内耳内のCASP2の発現 Phexhyp−Duk遺伝性マウスモデルは、内リンパ水腫(ELH)および進行性の聴力損失を含むヒトにおけるメニエール病の症状を模倣する。このモデルは、Megerianら("A mouse model with postnatal endolymphatic hydrops and hearing loss",Hearing Res 2008;237(1−2):90−105)に詳細に記載され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。出生直後、変異体マウスは、前庭機能障害を伴うELHを自然発症的に発病し、前庭およびらせん神経節内のニューロンのアポトーシスが続く。最終的に、前庭および蝸牛区画両方の感覚細胞が変性し、進行性の聴力損失および平衡の悪化が起こる。

マウス内耳内のCASP2の発現を野生型およびPhexhyp−Dukマウスで評価した。Casp2タンパク質レベルを3週齢、2月齢、および3月齢の野生型およびPhexhyp−Duk変異体雄マウスを含む2つの個々の実験において質的に評価した。マウスの内耳を聴覚および前庭区画の、ならびにらせん神経節の表現を有するスライドを得るために切除し、固定し、パラフィンに包埋し、薄片にした。スライドを組織学的評価に使用した。耳あたり3つのスライドを内耳内のdsRNA分布のインサイツハイブリダイゼーション分析に使用した。Casp2タンパク質発現を、Casp2抗体(SantaCruz、SC−623)を使用してスライドの免疫組織化学的検査によって評価し、HRP信号を増幅システム(TSA(商標)、パーキンエルマー)を用いて増幅した。

Casp2陽性細胞が、すべての試料中に観察され、有毛細胞中のコルチ器、らせん神経節(SG)、蝸牛神経、および前庭感覚上皮(斑)を特異的に染色した。加えて、少数の試料において、骨小腔(恐らく骨髄)内および血管(内皮細胞)内で非特異的染色が生じた。試験期間におけるCasp2前駆体タンパク質レベルにおいて、変異体と野生型との間で差異は観察されなかった。染色結果は、本明細書において以下の表1に提供される。

実施例2:マウス内耳へのsiRNA送達およびメニエール病のPhexhyp−Duk/Yマウスモデルにおける4つのsiRNA分子の有効性の評価 目的:メニエール病(MD)のマウスモデルを4つの標的遺伝子のサイレンシングに関するいくつかのdsRNA分子の安全性および可能性のある治療効果を評価するために使用した。

Phexhyp−Duk遺伝性マウスモデルは、内リンパ水腫(ELH)および進行性の聴力損失を含むヒトにおけるメニエール病の症状を模倣する。このモデルは、Megerianら("A mouse model with postnatal endolymphatic hydrops and hearing loss",Hearing Res 2008;237(1−2):90−105)に詳細に記載され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。

内耳内のdsRNAの安全性および治療効果の影響評価を、以下によって行った。 皮質脳波の活動指標の評価、 内耳の組織切片の評価、 内耳機能の評価(両耳)、 非侵襲性の聴覚試験、 クリック、8、16、および32Hzにおける聴性誘発脳幹反応(ABR)、 歪成分耳音響放射(DPOAE)−4、6、8、10、12、14、16、18、および20kHzの振幅、 非侵襲性前庭機能試験、 前庭誘発筋電位。

研究は2つの段階で実行された。

研究1。正常な野生型マウスにおけるパイロットdsRNA内耳送達および安全性研究。

研究2。雄Phexhyp−Duk/Yマウスにおける、4つの異なる遺伝子を標的とするdsRNA分子の治療効果の評価。

研究1の目的:点耳剤を使用する非侵襲性の内耳送達およびマウスにおける内耳への複数のdsRNA投与の安全性の影響評価。研究1:研究設計は、表2および図2に示される。

*P=出生後日数、すなわち、P15は、生後15日を指す。

dsRNAまたはビヒクルをそれぞれP15から開始する3匹のマウスの7群に週1回の頻度で送達した。検査または対照品目の最後の投与の前日およびそれらの投与前に機能検査を実施した。dsRNA分子の投与は、40〜60分間の動物の拘束(麻酔)を必要とする。したがって、麻酔を必要とする機能検査実施の予定の最適化を実施した。同年齢の無処置の非処置マウスにおける機能検査は、ベースライン対照として用いた。

図3は、野生型マウスの内耳へのdsRNAまたはビヒクル点耳剤による毎週の処置が、ABR閾値によって評価して、聴覚機能に影響しないことを示す。各KHz測定に関して、siRNA処置動物に対する結果は左、未処置動物は中央、およびビヒクル処置動物は右側である。

研究2:雄Phexhyp−Duk/Yマウスにおける4つの異なる遺伝子、すなわちCASP2、NOX3、CAPNS1、およびRHOAを標的とする4つのdsRNA分子の治療効果のパイロット評価

研究目的:機能および組織学的評価の使用によるメニエール病のマウス遺伝性モデルにおけるdsRNA試験分子の有効性の影響評価。

研究2:研究設計が、表3ならびに図4Aおよび4Bに示される。図4Aは、Phexhyp−Duk/Yの内耳内における現象の、おおよそのタイムラインを示す。点線は、表現型の発生、軽度の聴力損失(HL)、内リンパ水腫(ELH)の徴候、らせん神経節細胞(SGC)変性、または有毛細胞変性を示し、動物間の、発生、外見、および重症度について、いくらかの変動を示す。点線に続く実線は、年齢とともに表現型が確立していることを示す。(Hear Res.2008 March;237(1−2):90−105より)。

dsRNAまたはビヒクルをそれぞれP15から開始しP63までの12匹のマウスの6群に週1回の頻度で送達した。試験または対照品目の投与日およびそれらの投与前に毎週機能試験を実施した。dsRNAの投与は、40〜60分間の動物の拘束(麻酔)を必要とし、麻酔を必要とする機能検査実施の予定の最適化を実施した。同年齢の無処置の非処置マウスにおける機能検査は、ベースライン対照として用いた。

集団拡大の過程で、動物を漸増的に研究群に追加した。

年齢を適合させた処置および対照PhexHyp−Duk/Yマウス間の聴覚試験、前庭試験、および行動試験の結果を比較するために統計分析を実施した。P<0.05を有意差であると見なした。

終了時に、聴覚および前庭区画両方の、ならびにらせん神経節の表現を得るために、マウスの内耳を切除し、固定し、パラフィンに包埋し、薄片にした。スライドを内耳形態の組織学的評価に使用した。本研究に用いられた薬学的組成物の調製に使用されたCASP2 dsRNA化合物(siCASP2、QPI1007、または1007として設計されたCASP2 siRNA)は、以下に示される1、3、5、7、9、10、12、14、16、および18位(大文字)に非修飾リボヌクレオチド、および2、4、6、8、11、13、15、17、および19位に2’OMe糖修飾リボヌクレオチド(小文字)を含むアンチセンス鎖(AS、ガイド鎖)、ならびに18位に非修飾リボヌクレオチドおよびL−デオキシリボヌクレオチド(二重下線)、および5’終端に逆位デオキシリボ脱塩基部分(iB)を含むセンス鎖(SEN、パッセンジャー鎖)を持つ2つの別々の鎖を有する19ヌクレオチド平滑末端化二本鎖である。

NOX3 dsRNA化合物(siNOX3_4)は、2、4、6、8 10、12、14、16、および18位に非修飾リボヌクレオチド(大文字)、および1、3、5、7、9、11、13、15、17、および19位に2’OMe糖修飾リボヌクレオチド(小文字)を含むアンチセンス鎖(AS、ガイド鎖)、ならびに2、4、6、8 10、12、14、16、および18位に2’OMe糖修飾リボヌクレオチド(小文字)、および1、3、5、7、9、11、13、15、17、および19位に非修飾リボヌクレオチド(大文字)を含むセンス鎖(SS、パッセンジャー鎖)を持つ2つの別々の鎖を有する(ヒト、マウス、ラット異種間の)19ヌクレオチド平滑末端化二本鎖である。センス鎖の3’終端およびアンチセンス鎖の3’終端は、非リン酸化である。

CAPNS1 dsRNA化合物(siCAPNS1_13)は、2、4、6、8 10、12、14、16、および18位に非修飾リボヌクレオチド(大文字)、および1、3、5、7、9、11、13、15、17、および19位に2’OMe糖修飾リボヌクレオチド(小文字)を含むアンチセンス鎖(AS、ガイド鎖)、ならびに2、4、6、8 10、12、14、16、および18位に2’OMe糖修飾リボヌクレオチド(小文字)、および1、3、5、7、9、11、13、15、17、および19位に非修飾リボヌクレオチド(大文字)を含むセンス鎖(SS、パッセンジャー鎖)を持つ2つの別々の鎖を有する19ヌクレオチド平滑末端化二本鎖である。

RHOA dsRNA化合物(siRHOA_4)は、2、4、6、8 10、12、14、16、および18位に非修飾リボヌクレオチド(大文字)、および1、3、5、7、9、11、13、15、17、および19位に2’OMe糖修飾リボヌクレオチド(小文字)を含むアンチセンス鎖(AS、ガイド鎖)、ならびに2、4、6、8 10、12、14、16、および18位に2’OMe糖修飾リボヌクレオチド(小文字)および1、3、5、7、9、11、13、15、17、および19位に非修飾リボヌクレオチド(大文字)を含むセンス鎖(SS、パッセンジャー鎖)を持つ2つの別々の鎖を有する19−ヌクレオチド平滑末端化二本鎖である。

EGFP(増強された緑蛍光タンパク質)対照dsRNA化合物(siEGFP_5)は、2、4、6、8 10、12、14、16、および18位に非修飾リボヌクレオチド(大文字)、および1、3、5、7、9、11、13、15、17、および19位に2’OMe糖修飾リボヌクレオチド(小文字)を含むアンチセンス鎖(AS、ガイド鎖)、ならびに2、4、6、8 10、12、14、16、および18位に2’OMe糖修飾リボヌクレオチド(小文字)、および1、3、5、7、9、11、13、15、17、および19位に非修飾リボヌクレオチド(大文字)を含むセンス鎖(SS、パッセンジャー鎖)を持つ2つの別々の鎖を有する19ヌクレオチド平滑末端化二本鎖である。

結果および結論。 ABR機能検査の結果:Phexhyp−Duk/Yマウスは、すべての周波数において聴覚の著しい損失を示す。聴覚機能の主要な損失は、系統的測定を開始したとき、P29の前に生じ、陰性対照群においてさらなる悪化の傾向があったが、siRNA処置群においてはなかった。P29時点で既に、siRNA処置マウス(P15およびP22で2回の処置)における聴覚機能は、すべての頻度においてビヒクル処置マウスよりも著しく優れているようにみえ、siRNA処置マウスに有利なこの差異は、時間とともによ大きくなった。P70から開始して、16〜32kHzでの聴覚機能は、siEGFP−処置動物と比較してすべてのsiRNA処置群において著しく優れていた。P90日におけるABR結果が、図5Eに示される。すべての図5A〜5Dにおいて、白四を伴う点線はビヒクルを表し、白三角を伴う短線の破線はsiCASP2処置動物を表す、プラス記号(「+」)を伴う中線の破線はsiEGFP処置動物を表し、黒丸を伴う中線の破線はsiEGFP処置動物を表し、星を伴う長線の破線はsiRHOA処置動物を表し、白丸を伴う実線はsiCAPNS1処置動物を表す。x軸は、P29〜P90の毎週の試験日を表し、およびy軸はABR検査からのdB示数を表す。y軸は、4つの試験において異なるスケールであり、クリックは、約75〜87.5dB、8KHzは、約60〜80、16KHzは、約40〜70、および32KHzは、約55〜75である。

図5Eは、試験化合物で処置された動物におけるP90日時点でのABRの改善を示す。ビヒクルとsiEGFPとの間に統計的に有意な差異はない。クリック:55dBにおける、8kHz:40dBにおける、16kHz:35dB、32kHz 40dBにおける正常なマウスに対するABR。

結論:Phexhyp−Duk/Yマウスは、siCASP2、siCAPNS1、siNOX3、およびsiRHOA処置群において聴覚機能保護を示した。組織学的検査は、らせん神経節および前庭神経節ニューロンの神経保護を立証した。

組織染色の結果:研究終了時のすべてのマウスから調製された内耳切片の組織分析は、対照と比較してsiRNA処置マウスにおけるらせんおよび前庭神経節細胞の実質的および有意な保存を示した。本モデルに典型的なELH(内リンパ水腫)表現型は、siRNA治療に影響されなかった。想定通り、疾患(P90)のこの段階において、すべての研究群において感覚上皮の変化は観察されなかった。らせん神経節細胞および前庭神経節細胞は、ビヒクル処置群と比較してPhexhyp−Duk/YマウスのdsRNA処置耳におけるアポトーシス死からの有意な保護を示した。図6Bを6Aと、6Dを6Cと、および6Fを6Eと比較されたい。黒(歪んだ組織)は、図6Aでは神経節細胞死の領域、および図6Bでは高密度の神経節の領域を示す。蝸牛有毛細胞および前庭有毛細胞は、モデル中で無影響にみえ、siCASP2での治療は、対照と比較して追加の効果を生じなかった。同様の結果がsiCAPNS1、siNOX3、およびsiRHOA処置動物で得られた。図7Aは、ビヒクル処置(左パネル)またはsiEGFP処置(右パネル)Phexhyp−Duk変異体マウスからの蝸牛頂回転における神経節細胞を示す。図7B、7C、および7Dは、それぞれsiCAPNS1、siNOX3、およびsiRHOA処置動物からの蝸牛頂回転における神経節細胞を示す。すべての拡大率は63倍である。図8Aは、ビヒクル処置(左パネル)またはsiEGFP処置(右パネル)Phexhyp−Duk変異体雄マウスからの前庭神経節細胞を示す。図8B、8C、および8Dは、それぞれsiCAPNS1、siNOX3、およびsiRHOA処置動物中の前庭神経節細胞を示す。すべての拡大率は63倍である。らせん神経節細胞の残存は、聴覚の保存の極めて重要な要因である。

本研究におけるマウス中のdsRNA送達は、点耳剤適用によって達成した。臨床状況において、薬剤の経鼓室注射は、臨床的ルーチンであり、dsRNAの送達のための点耳剤の使用が可能である。さらに、本明細書で開示される研究において用いられるdsRNAは、CASP2、NOX3、CAPNS1、およびRHOAを下方制御するdsRNAの単なる非限定的な例であり、それらのそれぞれ遺伝子の下方制御において活性である異なる配列および構造を有するdsRNA種が、本明細書で開示される方法およびキットの実施において有用である。

本発明は、広く包括的に本明細書に記載された。包括的な開示に含まれる狭域の種のそれぞれおよび亜属の群はまた、本発明の一部である。これは、属から任意の対象を除外する条件または否定的限定を伴う本発明の包括的な記載を、除外される材料が本明細書に具体的に記載されているかどうかにかかわらず含む。他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。

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