ウィルソン病の処置に使用するための核酸構築物及び遺伝子治療ベクター

申请号 JP2017532746 申请日 2015-12-17 公开(公告)号 JP2018500904A 公开(公告)日 2018-01-18
申请人 フンダシオン パラ ラ インベスティガシオン メディカ アプリカダ; 发明人 ムリージョ・サウカ,オイハナ; ゴンサレス・アセグイノラザ,グロリア; エルナンデス・アルコセバ,ルーベン;
摘要 本発明は、銅輸送ATPase2の欠損又は機能不全に関連する状態、及び特に、ウィルソン病の処置に使用するための、ATP7B変異体を含む核酸構築物及び遺伝子治療ベクターに関する。本発明に従って発明されたAAVベクターは、このベクターで処置されたウィルソン病マウスにおける尿中Cu排泄及び肝臓Cu含量を顕著に減少させた。一方で、セルロプラスミン活性は、顕著に回復された。一方、ベクターの投与により、 炎症 性浸潤の顕著な減少を伴って、血清トランスアミナーゼレベル及び肝臓の組織学の正常化がもたらされた。
权利要求

a)真核生物プロモータのヌクレオチド配列と、 b)N末端重金属結合部位HMA1、HMA2、HMA3、及びHMA4が完全に欠失されており、HMA5及びHMA6が欠失していないままである、トランケートされた銅輸送ATPase2をコードするヌクレオチド配列と、 c)ポリアデニル化シグナル配列と を含む、核酸構築物。トランケートされたATP7Bにおける欠失が、配列番号:2の配列のアミノ酸57〜486を含む、請求項1記載の核酸構築物。トランケートされた銅輸送ATPase2のアミノ酸配列が、配列番号:7である、請求項1又は2記載の核酸構築物。トランケートされた銅輸送ATPase2をコードするヌクレオチド配列が、 a)配列番号:6のコード配列CDS、塩基473..3580、 b)配列番号:8の配列、及び c)トランケートされた銅輸送ATPase2をコードする、少なくとも827、少なくとも879、少なくとも931、又は少なくとも983のコドンが、配列番号:8のコード配列のコドンと同一である配列からなる群より選択される、請求項3記載の核酸構築物。真核生物プロモータのヌクレオチド配列が、α1−アンチトリプシン遺伝子プロモータのヌクレオチド配列、又は、アルブミン遺伝子エンハンサーエレメントと組み合わせられたα1−アンチトリプシン遺伝子プロモータ配列を含むキメラプロモータ配列である、請求項1〜4のいずれか一項記載の核酸構築物。真核生物プロモータのヌクレオチド配列が、配列番号:1(AAT)の塩基156..460又は配列番号:5(EalbPa1AT)により範囲設定された配列である、請求項1〜5のいずれか一項記載の核酸構築物。構築物が、ウイルスの5’ITR及び3’ITR配列を更に含む、請求項1〜6のいずれか一項記載の核酸構築物。5’ITR及び3’ITR配列が、アデノ関連ウイルス(AAV)のものである、請求項7記載の核酸構築物。AAVの5’ITR及び3’ITR配列が、AAV1、AAV2、及びAAV4からなる群より選択される血清型のものであり、好ましくは、AAV2血清型のものである、請求項8記載の核酸構築物。請求項1〜9のいずれか一項記載の核酸構築物を含む、発現ベクター。ベクターが、AAVベクターである、請求項10記載の発現ベクター。請求項1〜9のいずれか一項記載の核酸構築物、又は、請求項10もしくは11記載の発現ベクターを含む、ホスト細胞。請求項1〜9のいずれか一項記載の核酸構築物、又は、請求項10もしくは11記載の発現ベクターを含む、ウイルス粒子。ウイルス粒子が、AAVのカプシドタンパク質を含む、請求項13記載のウイルス粒子。ウイルス粒子が、AAV1、AAV5、AAV7、AAV8、AAV9、及びAAV10からなる群より選択される血清型、好ましくは、AAV8又はAAV9の血清型のAAVのカプシドタンパク質を含む、請求項12記載のウイルス粒子。核酸構築物の5’ITR及び3’ITR配列が、AAV2血清型のものであり、カプシドタンパク質が、AAV8血清型のものである、請求項15記載のウイルス粒子。請求項1〜9のいずれか一項記載の核酸構築物、請求項10もしくは11記載の発現ベクター、請求項12記載のホスト細胞、又は請求項13〜16のいずれか一項記載のウイルス粒子と、薬学的に許容し得る担体とを含む、医薬組成物。請求項1〜9のいずれか一項記載の核酸構築物、請求項10もしくは11記載の発現ベクター、請求項12記載のホスト細胞、もしくは請求項13〜16のいずれか一項記載のウイルス粒子、又は請求項17記載の医薬組成物を、1つ以上の容器に含み、場合により、核酸構築物、ベクター、ホスト細胞、ウイルス粒子、又は医薬組成物を患者に投与する方法を説明する説明書又は包装材を更に含む、キット。医薬として使用するための、請求項1〜9のいずれか一項記載の核酸構築物、請求項10もしくは11記載の発現ベクター、請求項12記載のホスト細胞、又は請求項13〜16のいずれか一項記載のウイルス粒子。銅輸送ATPase2の欠損又は機能不全に起因する状態の処置、好ましくは、ウィルソン病の処置に使用するための、請求項1〜9のいずれか一項記載の核酸構築物、請求項10もしくは11記載の発現ベクター、請求項12記載のホスト細胞、もしくは請求項13〜16のいずれか一項記載のウイルス粒子、又は請求項17記載の医薬組成物。銅輸送ATPase2の欠損又は機能不全に起因する状態の処置、好ましくは、ウィルソン病の処置に使用するための医薬の調製における、請求項1〜9のいずれか一項記載の核酸構築物、請求項10もしくは11記載の発現ベクター、請求項12記載のホスト細胞、又は請求項13〜16のいずれか一項記載のウイルス粒子の使用。患者における銅輸送ATPase2の欠損又は機能不全に起因する状態の処置、好ましくは、ウィルソン病の処置のための方法であって、 治療的に有効な量の、請求項1〜9のいずれか一項記載の核酸構築物、請求項10もしくは11記載の発現ベクター、請求項12記載のホスト細胞、請求項13〜16のいずれか一項記載のウイルス粒子、又は請求項17記載の医薬組成物を、患者に投与することを含む、方法。a)請求項12記載のホスト細胞を培養培地中で培養する工程と、 b)細胞培養上清及び/又は細胞内からウイルス粒子を収集する工程とを含む、 請求項13〜16のいずれか一項記載のウイルス粒子を製造する方法。ウイルス粒子を製造するための、請求項1〜9のいずれか一項記載の核酸構築物、又は、請求項10もしくは11記載の発現ベクターの使用。

说明书全文

本発明は、ウィルソン病及び他の状態の処置に使用するための核酸構築物及び遺伝子治療ベクターに関する。

ウィルソン病の遺伝子治療に関する技術準は、Merle et al.(Current Gene Therapy 2007; 7: 217-220)にレビューされており、そこで概説されており、その後に開示された参考文献と共に完成されている。

ウィルソン病(WD)は、平均有病率1:30,000の、銅代謝の常染色体性劣性遺伝障害である。WDは、P型銅輸送ATPaseをコードするATP7B遺伝子の変異により生じる。同ATP7B遺伝子は、13番染色体に位置している。ATP7Bは、肝細胞において主に発現され、銅の膜透過輸送において機能する。ATP7Bタンパク質の機能欠如又は同機能の低下により、銅の胆汁への低下した肝細胞排泄がもたらされる結果、主に肝臓に銅蓄積がもたらされ、その後、神経系及び他の組織に蓄積がもたらされる。銅をセルロプラスミンに包含させるのを失敗することは、機能的なATP7Bタンパク質の損失の更なる結果である。

WDは、肝臓疾患として、進行性の神経障害として、又は精神疾患として、臨床的に表れ得る。肝臓WDを患う患者は、通常、小児期後期又は青年期に表れ、急性肝炎、劇症型肝不全、又は進行性慢性肝疾患の特徴を示す。WDの神経兆候は、典型的には、肝疾患より遅く、典型的には、20代又は30代に表れ、錐体外路、小脳、及び大脳関連兆候を含む。

WDの医療処置の目的は、銅の毒性堆積物を身体から除去し、その再蓄積を予防することである。3つの抗銅薬剤:D−ペニシラミン、トリエンチン、及び亜鉛塩が、WDについて現在認可されている。医学療法は、総じて有効であるが、WDを患う全ての患者に有効であるとは限らない。肝臓移植は、劇症型肝不全又は進行性肝不全を表わしているWD患者の治療選択肢である。肝臓移植は、WDの表現型を修正するのが示されており、優れた長期生存を提供する。

しかしながら、治療の中断又は不適切な処置により、数か月以内に死に至るおそれがある。WDの薬物治療は定期的に行われる必要があるため、一部の患者、特に、青年期のWD患者における処置に対するアドヒアランスは乏しい。

治療下において、神経兆候が残るのが、比較的普通であり、進行性兆候も生じるおそれがある。現在の医療処置の選択肢は、WD患者の全てに有効なわけではなく、治療へのアドヒアランスの問題があるため、より包括的な解決策には、遺伝子治療を必要とする場合がある。

理論的には、肝細胞中での野生型ATP7Bの発現は、全ての疾患に関連する異常を逆転させ、肝臓及び神経の兆候を救済するであろう。WDに理想的な遺伝子治療の究極の目的は、ATP7Bを十分な量で、生存している間に肝細胞に特異的に送達することであろう。

WDについてのアデノウイルス遺伝子導入の全ての公表された研究は、一過性の導入遺伝子発現のみを生じる、初期世代のアデノウイルスベクターを使用している。Terada et al.[Terada et al. J. Biol. Chem. 1998; 273:1815-1820;Terada et al. FEBS Lett. 1999; 448: 53-56]には、LECラットモデルにおけるアデノウイルス媒介性遺伝子送達による遺伝子導入の成功が示されている。ホロセルロプラスミン合成の回復、血清セルロプラスミンオキシダーゼ活性の回復、及び胆汁への銅排泄の回復が示された。これらは、遺伝子導入の治療的効果を示す。これらの効果は、非常に限られた期間のものであり、3日目に最大レベルとなり、その後低下した。Ha-Hao et al.[Z. Gastroenterol. 2002; 40: 209-216]にも、アデノウイルス媒介性ATP7B遺伝子導入後に、LECラットの糞中の銅含量の増大が示された。これは、胆汁への銅排泄の増大を示す。加えて、治療効果は、ホロセルロプラスミン及びそのフェロオキシダーゼ活性の回復により示された。しかしながら、再度、これらの実験における治療効果の持続性は、数日の限られた期間での一過性でしかなかった。

ガットレスアデノウイルスベクターは、従来、この用途には試験されてこなかった。

他の一般的に使用される非組込み型ウイルスベクター系であるアデノ関連ウイルス(AAV)も、従来、WDに試験されてこなかった。主には、ATP7B遺伝子(約4.4kbの大きさ)により、AAVベクター内に、必要な配列(例えば、プロモータ、ポリAシグナル配列等)の残り部分を割り当てるための最小空間しか残らないためである。同AAVベクターのパッケージング能は、4.4〜4.7kbである。ドイツ国特許出願公開公報第100156121号(2003年に公開)では、短縮された金属感受性プロモータ(メタロチオネイン−Iプロモータ)を有し、ATP7B導入遺伝子の銅又は亜鉛誘導性発現を生じる、WDの遺伝子治療用のリコンビナントアデノ関連ウイルスベクターが提案された。それにも関わらず、この文献では、治療効率及びベクターの性能に関する情報が何ら提供されておらず、その後に開示されてもいない。

一方、野生型ATP7Bを有する複数のレンチウイルスベクターが、WDの動物モデルに試験されている。Merle et al.[Scan. J. Gastroenterol. 2006; 41: 974-982]により、ホスホグリセロキナーゼプロモータの制御下においてATP7Bを発現しているレンチウイルスベクターによるLECラットにおける全身性遺伝子治療が報告された。遺伝子導入後24週間で、未処置対照と比較して、処置ラットにおいて、肝臓銅含量が、顕著に低下し、肝臓の組織学が改善したが、その効果は、部分的でしかなかった。血清セルロプラスミンオキシダーゼ活性は、対照と比較して、遺伝子導入後2週間で増大した。しかしながら、処置後24週間で、より低いレベルに低下した。ごく最近、Roybal et al.[Gene Therapy 2012; 19: 1085-1094]により、アポリポタンパク質E及びアルファ−1アンチトリプシンのエレメントを含有した肝臓特異的プロモータの転写制御下においてヒトATP7Bを有するレンチウイルスによるATP7B−/−マウスにおける妊娠初期遺伝子導入が報告されている。子宮へのベクター投与により、肝臓銅レベルの低下、正常な肝臓組織学の維持、セルロプラスミンへの銅取込みの回復、及び改善されたコレステロール生合成が提供された。しかしながら、処置の効率は、マウス間で非常に変動があり、時間と共に低下し、種々の病的に変化したパラメータの完全な修正を達成できなかった。

本発明者らは、種々のトランケート型の酵素ATP7Bをコードする導入遺伝子を有する複数のウイルスベクター:例えば、ATP7B(d223−366)[ATP7B−T1]をコードするベクターAAV2/8−AAT−ATP7B(d223−366)、及び、ATP7B(d57−486)[ATP7B−T2]をコードするベクターAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)を操作し、試験してきた。ATP7Bノックアウトマウス(ウィルソン病の認識された動物モデル)に投与された場合、ATP7B−T2を有するAAVベクターにより、処置後少なくとも24週間、主なウィルソン病の病的な特徴が修正された。一方、ATP7B−T1を有するAAVベクターは、部分的な効果のみを有した。Cu排泄(Cu尿中含量)及び肝臓Cu含量は、AAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)ベクターで処置されたウィルソン病マウスにおいて、顕著に低下し、セルロプラスミン活性は、顕著に回復した。一方、このベクターの投与により、血清トランスアミナーゼレベル及び肝臓の組織学の回復がもたらされ、これらと共に、炎症性浸潤、胆管増生及び線維症の顕著な減少がもたらされた。

さらに、AAV2/8−AAT−wtATP7Bベクターの1×1010vg/マウス用量が、血清セルロプラスミン活性の正常化及び肝臓におけるCu蓄積の減少の両方を得るための、wt構築物についての「最適以下用量」であることが示された(図10A及び図11A)。一方、トランケート型を有するベクターは、前記最適以下用量において、統計学的に有意な治療効果(対非処置)を提供するのが示された(図10B及び図11B)。さらに、1×1010vg/マウス用量において、全長ATP7BとT2構築物との間の活性に観察された差異も、これら2つの治療効果について、統計学的に有意であることが示された(図12及び図14)。

これらの観察から、トランケート型ATP7B(d57−486)をコードする核酸構築物及びそれを有するベクター、特に、AAVベクターは、ATP7Bの欠損又は機能不全に関連する銅の蓄積の最も関連する病的な影響を克服することができるため、銅輸送ATPase2の欠損又は機能不全に起因する状態、例えば、ウィルソン病、又は、ATP7B依存性リソソームエキソサイトーシスの低下及び銅蓄積に関連する疾患及び/もしくは状態に適用される遺伝子治療に非常に適し得ることが示された。さらに、予期しなかったことに、トランケート型ATP7B(d57−486)及びそれを有するベクターは、全長ATP7Bタンパク質及びそれをコードするベクターがほとんど効果的でないと証明された用量において、疾患のこれらの病的な兆候の一部の正常化を達成するのが示された。

したがって、第1の態様では、本発明は、a)真核生物プロモータのヌクレオチド配列と、b)N末端重金属結合部位HMA1、HMA2、HMA3、及びHMA4が完全に欠失されており、HMA5及びHMA6が欠失していないままである、トランケートされた銅輸送ATPase2(ATP7B)をコードするヌクレオチド配列と、c)ポリアデニル化シグナル配列とを含む、核酸構築物(以下、「本発明の核酸構築物」とも呼ばれる)に関する。

別の態様では、本発明は、本発明の核酸構築物を含む、発現ベクター(以下、「本発明の発現ベクター」とも呼ばれる)に関する。

別の態様では、本発明は、本発明の核酸構築物又は発現ベクターを含む、ホスト細胞に関する。

別の態様では、本発明は、本発明の核酸構築物又は発現ベクターを含む、ウイルス粒子(以下、「本発明のウイルス粒子」とも呼ばれる)に関する。好ましくは、核酸構築物は、ウイルスベクターのゲノム配列を構成している。

別の態様では、本発明は、本発明の製品、すなわち、本発明の核酸構築物を含む製品と、薬学的に許容し得る担体とを含む、医薬組成物に関する。本明細書で使用する場合、「本発明の製品」という用語は、a)本発明の核酸構築物、b)本発明の発現ベクター、c)本発明のホスト細胞、及びd)本発明のウイルス粒子のいずれかを意味し、区別なく包含する。

別の態様では、本発明は、更に、本発明の核酸構築物、ベクター、ホスト細胞、ウイルス粒子、又は医薬組成物を、1つ以上の容器に含む、キットに関する。

別の態様では、本発明は、医薬に使用するための(医薬又は医薬組成物としての)、本発明の製品に関する。医薬におけるこの使用は、銅輸送ATPase2の欠損又は機能不全に起因する状態の処置を含む。すなわち、本発明は、銅輸送ATPase2の欠損又は機能不全に起因する状態の処置に使用するための医薬の調製における、本発明の製品の使用、及び、対象又は患者における銅輸送ATPase2の欠損又は機能不全に起因する状態の処置のための方法に関する。同方法は、対象又は患者に、治療的に有効な量の本発明の製品を投与することを含む。より特定の態様では、本発明の製品は、ウィルソン病の処置に使用される。

別の態様では、本発明は、更に、本明細書で記載された医薬及び治療方法において提案された使用のための、上記された本発明の製品を含む、医薬組成物に関する。

更なる態様では、本発明は、 a)本発明の核酸構築物又は発現ベクターを含有するホスト細胞を培養培地中で培養する工程と、 b)細胞培養上清及び/又は細胞内からウイルス粒子を収集する工程とを含む、 本発明のウイルス粒子を製造する方法に関する。

関連する態様では、本発明は、ウイルス粒子の製造のための、本発明の核酸構築物又は本発明の発現ベクターの使用に関する。

図1:ヒトATP7Bを有するベクターAAV2/8−AAT−wtATP7B;トランケート型ATP7B(d223−366)[ATP7B−T1]を有するベクターAAV2/8−AAT−ATP7B(d223−366);及びトランケートされたATP7B(d57−486)[ATP7B−T2]を有するベクターAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)の核酸構築物の概略図。構築物のエレメントは、a)アルファ−1−アンチトリプシン遺伝子プロモータ(AAT);b)ヒトATP7B、ATP7B−T1、又はATP7B−T2をそれぞれコードするヌクレオチド配列;c)ポリアデニル化シグナル(pA)と隣接するベクターゲノムと、d)AAV2の末端逆位配列(ITR)とである。

図2:野生型のオスマウス[WT]、ATP7B欠損のオスマウス[ウィルソン病マウス、WD]、及び、ベクターAAV2/8−AAT−wtATP7B[WD AAV−ATP7B]、AAV2/8−AAT−ATP7B(d223−366)[WD AAV−T1];又はAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)[WD AAV−T2]で処置されたWDオスマウスにおける血清アラニントランスアミナーゼ(ALT)レベル。ベクター用量3×10

10vg/マウスを、動物が6週齢になった時点で投与した。ALTレベルを、処置後4、9、14、及び24週間[週数]で測定し、IU/L(IU:国際単位)として表現する。ns:有意差無し;

*:p<0.05、

**:p<0.01;

***:p<0.001[Mann-Whitney独立試験]。

図3:野生型のオスマウス[WT]、ウィルソン病のオスマウス[WD]、及び、ベクターAAV2/8−AAT−wtATP7B[WD AAV−ATP7B]、AAV2/8−AAT−ATP7B(d223−366)[WD AAV−T1];又はAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)[WD ATP7B−T2]で処置されたWDオスマウスにおける尿中総銅含量。ベクター用量:3×10

10vg/マウス。銅含量を、処置後4、9、14、及び24週間[週数]での24時間の尿で測定し、Cuのナノグラムとして表現した(ngr/24h)。

図4:野生型のオスマウス[WT]、ウィルソン病のオスマウス[WD]、及び、ベクターAAV2/8−AAT−wtATP7B[WD AAV−ATP7B]、AAV2/8−AAT−ATP7B(d223−366)[WD AAV−T1];又はAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)[WD ATP7B−T2]で処置されたWDオスマウスにおける血清セルロプラスミン活性。ベクター用量:3×10

10vg/マウス。セルロプラスミン活性を、処置後4週間で測定し、波長570nmで測定した吸光度[Abs(570nm)]として表現した。ns:有意差無し;

*:p<0.05、

**:p<0.01;

***:p<0.001[Mann-Whitney独立試験]。

図5.野生型のオスマウス[WT]、ウィルソン病のオスマウス[WD]、及び、ベクターAAV2/8−AAT−wtATP7B[WD AAV−ATP7B]、AAV2/8−AAT−ATP7B(d223−366)[WD AAV−T1];又はAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)[WD ATP7B−T2]で処置されたWDオスマウスにおける肝臓Cu含量。ベクター用量:3×10

10vg/マウス。銅含量を、処置後24週間で動物を殺処分した後に、原子吸光分光法により決定し、μg/gとして表現した(Cuμg/乾燥肝臓組織g)。ns:有意差無し;

*:p<0.05、

**:p<0.01;

***:p<0.001[Mann-Whitney独立試験]。

図6:野生型動物のオスマウス[WT]、ウィルソン病のオスマウス[WD]、及び、ベクターAAV2/8−AAT−wtATP7B[WD AAV−ATP7B]、AAV2/8−AAT−ATP7B(d223−366)[WD AAV−T1];又はAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)[WD ATP7B−T2]で処置されたWDオスマウスの肝臓の組織学画像。ベクター用量:3×10

10vg/マウス。画像を、動物(30週齢)を殺処分した後に撮影した。A:ヘマトキシリン及びエオシンで染色された肝臓断片の画像。B:銅の堆積を検出するためのTimm’s硫化銀技術により染色された組織学サンプルの画像。

図7:肝臓の炎症、胆管増生、及び線維症の分析。野生型のオスマウス[WT]、ウィルソン病のオスマウス[WD]、及び、ベクターAAV2/8−AAT−wtATP7B[WD AAV−ATP7B]、AAV2/8−AAT−ATP7B(d223−366)[WD AAV−T1];又はAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)[WD ATP7B−T2]で処置されたWDオスマウスの肝臓の画像。ベクター用量:3×10

10vg/マウス。分析を、動物(30週齢)を殺処分した後に行った。CD45:肝臓の炎症性浸潤を検出するために抗CD45で免疫染色された肝臓断片の画像。PANCK:胆管増生を検出するために抗PANCKで免疫染色された肝臓断片の画像。SR:線維症を検出するためにSirius redで染色された肝臓断片の画像。

図8:野生型のメスマウス[WT]、WDメスマウス[WD]、及び、ベクターAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)[WD AAV−T2]で処置されたWDメスマウスにおける血清アラニントランスアミナーゼ(ALT)レベル。種々の群の6週齢のWDメスマウスに、種々の用量のベクター(それぞれ、1×10

10、3×10

10、1×10

11vg/マウス)を投与した。ALTレベルを、処置後4、9、14、及び24週間[週数]で測定し、IU/Lとして表現する。ns:有意差無し;

*:p<0.05、

**:p<0.01;

***:p<0.001[Mann-Whitney独立試験]。

図9:野生型のメスマウス[WT]、WDメスマウス[WD]、及び、ベクターAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)[WD AAV−T2]で処置されたWDメスマウスにおける尿中Cu含量レベル。種々の群の6週齢のWDメスマウスに、種々の用量のベクター(それぞれ、1×10

10、3×10

10、1×10

11vg/マウス)を投与した。尿中銅レベルを、処置後4、9、14、及び24週間[週数]で測定し、24時間の尿中のCuのngr(ngr/24h)として表現する。ns:有意差無し;

*:p<0.05、

**:p<0.01;

***:p<0.001[Mann-Whitney独立試験]。

図10:血清中のセルロプラスミン活性を、野生型のメスマウス[WT]、WDメスマウス[WD]、及び、ベクターAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)[WD+AAV−T2]又はベクターAAV2/8−AAT−wtATP7B[WD+AAV−ATP7B]で処置されたWDメスマウスにおいて測定した。各実験群について、種々の群の6週齢のWDメスマウスに、種々の用量のベクター(それぞれ、1×10

10、3×10

10、1×10

11vg/マウス)を投与した。セルロプラスミン活性を、処置後4週間で測定し、波長570nmで測定した吸光度[Abs(570nm)]として表現する。ns:有意差無し;

*:p<0.05、

**:p<0.01;

***:p<0.001[Mann-Whitney独立試験]。

図11:肝臓Cu含量を、野生型のメスマウス[WT]、WDマウス[WD]、及び、ベクターAAV2/8−AAT−wtATP7B[WD AAV ATP7B]又はベクターAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)[WD AAV T2]で処置されたWDメスマウスにおいて測定した。各実験群について、種々の群の6週齢のWDメスマウスに、種々の用量のベクター(それぞれ、1×10

10、3×10

10、1×10

11vg/マウス)を投与した。銅濃度を、処置後24週間で測定し、μg/乾燥組織gとして表現する。ns:有意差無し;

*:p<0.05、

**:p<0.01;

***:p<0.001[Mann-Whitney独立試験]。

図12:野生型のオスマウス[WT;n=15]、WDオスマウス[WD;n=25]、及び、ベクターAAV2/8−AAT−wtATP7B[WD AAV ATP7B;n=7]又はベクターAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)[WD AAV T2;n=7]で処置されたWDオスマウスにおける肝臓Cu含量。各実験群について、動物が6週齢になった時点で、WDマウスに、最適以下用量(1×10

10vg/マウス)のベクターを投与した。銅濃度を、処置後24週間で測定し、μg/乾燥組織gとして表現する。ns:有意差無し;

*:p<0.05、

**:p<0.01;

***:p<0.001[Mann-Whitney独立試験]。

図13:野生型のオスマウス[WT;n=15]、WDオスマウス[WD;n=25]、及び、ベクターAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)[WD AAV T2;n=13]又はベクターAAV2/8−AAT−coATP7B(d57−486)[WD AAV coT2;n=4]で処置されたWDオスマウスにおける肝臓Cu含量。各実験群について、6週齢のWDオスマウスに、最適以下用量(1×10

10vg/マウス)のベクターを投与した。銅濃度を、処置後24週間で測定し、μg/乾燥組織gとして表現する。ns:有意差無し;

*:p<0.05、

**:p<0.01;

***:p<0.001[Mann-Whitney独立試験]。

図14:野生型のオスマウス[WT;n=15]、WDオスマウス[WD;n=25]、ならびに、ベクターAAV2/8−AAT−wtATP7B[WD AAV ATP7B;n=10]、AAV2/8−AAT−coATP7B[WD AAV coATP7B;n=8]、AAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)[WD AAV T2;n=13]、及びAAV2/8−AAT−coATP7B(d57−486)[WD AAV coT2;n=4]で処置されたWDオスマウス群の血清中のセルロプラスミン活性。各実験群について、6週齢のWDオスマウスに、最適以下用量(1×10

10vg/マウス)のベクターを投与した。セルロプラスミンのオキシダーゼ活性を、処置後4週間で測定し、波長570nmで測定した吸光度[Abs(570nm)]として表現する。ns:有意差無し;

*:p<0.05、

**:p<0.01;

***:p<0.001[Mann-Whitney独立試験]。

[発明の詳細な説明] 本明細書で使用する場合、本願における全ての用語は、特に断りない限り、当技術分野において公知のその通常の意味を有すると理解されたい。本願に使用される特定の用語についての他のより特別な定義は、以下で説明された通りであり、他の方法で明確に述べられた定義がより広い定義を提供しない限り、本明細書及び特許請求の範囲全体を通して一様に適用することを意図している。

「核酸配列」及び「ヌクレオチド配列」という用語は、単量体ヌクレオチドから構成されるか、又は、同ヌクレオチドを含む任意の分子を意味するのに、互換的に使用することができる。核酸は、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドであることができる。ヌクレオチド配列は、DNA又はRNAであることができる。ヌクレオチド配列は、化学的に修飾され、又は、人工的であることができる。ヌクレオチド配列は、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ及びロックド核酸(LNA)、ならびにグリコール核酸(GNA)及びトレオース核酸(TNA)を含む。これらの配列はそれぞれ、天然のDNA又はRNAとは、分子の骨格に対する変化により区別される。また、ホスホロチオアートヌクレオチドも使用することができる。他のデオキシヌクレオチド類似物は、メチルホスホナート、ホスホラミダート、ホスホロジチオアート、N3’P5’−ホスホラミダート、ならびにオリゴリボヌクレオチドホスホロチオアート及びその2’−0−アリル類似物及び2’−0−メチルリボヌクレオチドメチルホスホナートを含む。これらは、本発明のヌクレオチドに使用することができる。

本明細書で使用する場合、「核酸構築物」という用語は、リコンビナントDNA技術の使用により生じる人工の核酸分子を意味する。核酸構築物は、一本鎖又は二本鎖のいずれかの核酸分子であり、他の方法で天然には存在しないであろう方法において組み合わせられ、並べられた核酸配列のセグメントを含有するように修飾されている。核酸構築物は、通常、「ベクター」、すなわち、外因的に作製されたDNAをホスト細胞内に送達するのに使用される核酸分子である。

本明細書で使用する場合、「発現ベクター」又は「ベクター」という用語は、このような配列に適合したホスト細胞又はホスト生物中で遺伝子(導入遺伝子)を発現させることができる、リコンビナントヌクレオチド配列を意味する。導入遺伝子と共に、発現ベクターは、典型的には、少なくとも適切な転写レギュラトリー配列を含み、場合により、3’転写終了シグナルを含む。発現を達成するのに必須であるか、又は、同達成に有用な更なる因子、例えば、的確な誘導性シグナル(外因性又はキメラ転写因子)に応答可能であるか、又は、特定の細胞、臓器、もしくは組織に特異的な発現エンハンサーエレメントも存在することができる。

本明細書で使用する場合、「対象」又は「患者」という用語は、哺乳類を意味する。開示された処置方法により利益を得ることができる哺乳類種は、ヒト、非ヒト霊長類、例えば、類人猿;チンパンジー;サル、及びオランウータン、飼育動物(イヌ及びネコを含む)、ならびに家畜、例えば、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、及びヤギ、又は、他のほ乳類種(マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ハムスターを含むが、これらに限定されない)等を含むが、これらに限定されない。

本明細書で使用する場合、「パッケージング細胞」という用語は、ヘルパーベクターもしくはウイルス又はDNA構築物によりトランスフェクションすることができる細胞又は細胞株を意味し、ウイルスベクターの完全な複製及びパッケージングに必要な失われた機能を全てトランスに提供する。典型的には、パッケージング細胞は、構成的又は誘導性の方法において、1つ以上の前記失われたウイルス機能を発現する。

本発明の核酸構築物 真核生物プロモータのヌクレオチド配列 本明細書で使用する場合、「真核生物プロモータ」という用語は、真核生物細胞における、特定の遺伝子又は1つ以上のコード配列の転写を開始するDNA配列領域を意味する。プロモータは、遺伝子又はコード配列の転写レベルを指示するために、他のレギュラトリー領域又はエレメントと共同して作用することができる。これらのレギュラトリーエレメントは、転写因子結合部位、リプレッサー及びアクチベータタンパク質結合部位、ならびに、プロモータからの転写量をレギュレーションするのに直接的又は間接的に作用することが当業者に公知の任意の他のヌクレオチド配列(例えば、アテニュエータ、エンハンサ、及びサイレンサを含む)を含むが、これらに限定されない。プロモータは、同じ鎖上のDNA配列上流(センス鎖の5’領域に向かう)に操作可能に連結された遺伝子又はコード配列の転写開始部位近くに位置している。プロモータは、長さが約100〜1000塩基対であることができる。プロモータにおける位置は、特定の遺伝子についての転写開始部位に対して指定される(すなわち、位置上流は、−1から逆に数える負の数字であり、例えば、−100は、100塩基対上流の位置である)。

「コアプロモータ」又は「ミニマルプロモータ」という用語は、転写を適切に開始するのに必要なプロモータ配列の最小部分を意味する。コアプロモータ又はミニマルプロモータは、直接上流の転写開始部位(TSS)及びエレメント;RNAポリメラーゼ(RNAポリメラーゼII)に対する結合部位、及び一般的な転写因子結合部位を含む。一般的に、プロモータは、他の一次レギュラトリーエレメント(例えば、エンハンサ、サイレンサ、バウンダリーエレメント/インシュレータ)を含有する近位プロモータ配列(コアプロモータの上流)、及び、更なるレギュラトリーエレメントを含有する場合があり、通常、遺伝子の転写レベルに、より弱い影響を有する遠位プロモータ配列(コアプロモータの下流)も含む。

本発明によれば、真核生物プロモータの配列は、トランケートされた銅輸送ATPase2をコードするヌクレオチド配列に操作可能に連結される。本明細書で使用する場合、「操作可能に連結され」という用語は、機能的な関係における、ポリヌクレオチド(又はポリペプチド)エレメントの連結を意味する。核酸は、別の核酸配列と機能的な関係にある場合に、「操作可能に連結され」ている。例えば、プロモータ又は転写レギュラトリー配列は、それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合に、コード配列に操作可能に連結されている。操作可能に連結され、は、連結されているDNA配列が典型的には連続的であることを意味する。この場合、2つのタンパク質コード領域を連結させる必要がある。それらは連続的であり、リーディングフレーム内にある。

本発明によれば、本核酸構築物の真核生物プロモータ配列は、コアプロモータを少なくとも含み、場合により、同じ遺伝子又は異なる遺伝子の他のレギュラトリー領域又はエレメントを含む(すなわち、ハイブリッド又はキメラプロモータ)。

一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、真核生物プロモータは、構成的プロモータ、組織特異的プロモータ、又は誘導性プロモータである。

本明細書で使用する場合、「構成的」プロモータは、大部分の生理学的及び発達条件下において、大部分の真核生物組織中で活性なプロモータである。

「組織特異的プロモータ」は、特定種の組織又は細胞においてのみ活性なプロモータである。すなわち、本発明の文脈において、組織特異的プロモータは、他の組織においてより、1つ又は複数(例えば、2つ、3つ、又は4つ)の特定の組織において活性なプロモータである(すなわち、このプロモータは、それに操作可能に連結しているコード配列を他のものより特異的な組織においてより高く発現させることができる)。典型的には、「組織特異的」プロモータの下流の遺伝子は、プロモータが任意の他の組織においてより特異的である組織において、非常に高い度合いに活性である。この場合、プロモータが特異的である組織以外の任意の組織において、プロモータの活性がほとんどない、又は、同活性が実質的にないことができる。

「誘導性」プロモータは、例えば、化学誘導剤の適用により、生理学的に又は発達的にレギュレーションされるプロモータである。

多くのプロモータが、当技術分野において公知である[Sambrook and Russell (Molecular Cloning: a Laboratory Manual; Third Edition; 2001 Cold Spring Harbor Laboratory Press);及びGreen and Sambrook (Molecular Cloning: a Laboratory Manual, cuarta edicion, 2012 Cold Spring Harbor Laboratory Press)]。

適切な組織特異的プロモータは、the Tissue-Specific Promoter Database, TiProD(Nucleic Acids Research 2006; J4: D104-D107)に見出すことができる。

一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、真核生物プロモータは、肝臓特異的プロモータである。本発明の文脈において、「肝臓特異的プロモータ」は、身体の任意の他の組織におけるより、肝臓において活性なプロモータである。典型的には、肝臓特異的プロモータの活性は、他の組織におけるより肝臓において相当高いであろう。例えば、このようなプロモータは、(例えば、他の細胞又は組織において発現させるその能との比較において、所定の組織において発現させるその能力により決定した場合)少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍、より活性であることができる。したがって、肝臓特異的プロモータは、それに連結している遺伝子の肝臓における活発な発現を可能にし、他の細胞又は組織におけるその発現を防止する。

一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、真核生物プロモータは、α1−アンチトリプシン遺伝子プロモータ(AAT)のヌクレオチド配列又は、アルブミン遺伝子エンハンサエレメント(Ealb)と組み合わせられたα1−アンチトリプシン遺伝子プロモータ配列(AATもしくはPalAT)を含むキメラプロモータ配列EalbPa1ATである。両プロモータ配列は、肝臓特異的プロモータの特性を有する。

特定の実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、真核生物プロモータ配列は、配列番号:1(AAT)の塩基156..460;又は配列番号:5(EalbPa1AT)により範囲設定された配列である。

トランケートされた銅輸送ATPase2(ATP7B) 銅輸送ATPase2(ATP7B)は、銅を細胞外に排出するのに機能するP型カチオン輸送ATPaseである。

ヒト酵素をコードする遺伝子は、13番染色体に位置している(染色体位置13q14.3;遺伝子名ATP7B)。ヒトATP7Bポリペプチドの情報(アミノ酸配列、構造、ドメイン、及び他の特徴)は、例えば、Uniprotにおいて、アクセッションナンバー:P35670(http://www.uniprot.org/uniprot/P35670;エントリーバージョン168(2014年9月3日)、配列バージョン4(2009年6月16日))で利用可能である。この酵素をコードするATP7B遺伝子の情報は、Entrezにおいて、アクセッションナンバー遺伝子ID:540(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/540;2014年9月19日に更新)で利用可能である。選択的スプライシングにより生成される4つのアイソフォームが、ATP7Bについて記載されている。アイソフォーム1(識別子P35670−1、1465個のアミノ酸長)が、正準配列として選択される。

一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、本発明の核酸構築物は、トランケート型のヒトATP7B、好ましくは、アミノ酸配列が正準配列(配列番号:2)であるヒトATP7B(本明細書において、wtATP7Bとも呼ばれる)をコードするヌクレオチド配列を含む。

複数の保存されたモチーフが、P型ATPaseタンパク質ファミリーに特徴的なATP7Bに存在する。これらのモチーフは、ATP触媒に必要であり、ヌクレオチド結合ドメイン(N−ドメイン)、リン酸化ドメイン(P−ドメイン)、及びアクチュエータドメイン(A−ドメイン)を含む。高度に保存されたシグネチャー残基:N−ドメインにおけるSEHPL、P−ドメインにおけるDKTG、及びA−ドメインにおけるTGEが、これらのモチーフに存在する。ヒトATP7Bのアミノ末端テイルは、「6つの金属結合部位(MBS)」(「重金属結合(HMA)」部位又はドメインとも区別なく命名され、それぞれ、コア配列MxCxxCを含有する)を含有する。これらのHMAは、HMA当たりに1つのCu(I)原子の化学量論において、Cu(I)に結合する。ATP7Bのこれらのアミノ末端HMAは、その機能の複数の態様に必要である。同機能は、銅移行、銅のキュプロ酵素への包含、ATPase活性、局在、及び細胞内輸送、ならびに、タンパク質−タンパク質相互作用を含む。HMA部位は、アミノ末端から開始して、ドメインHMA1(正準配列におけるアミノ酸59〜125)、HMA2(アミノ酸144〜210)、HMA3(258〜327)、HMA4(360〜426)、HMA5(489〜555)、及びHMA6(565〜631)として特定される。

本発明によれば、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、本核酸構築物は、N末端重金属結合部位HMA1、HMA2、HMA3、及びHMA4が完全に又は部分的に欠失されている、トランケートされたATP7Bをコードするヌクレオチド配列を含む。

一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、トランケートされたATP7Bをコードするヌクレオチド配列は、ATP7BのN末端シグナル配列の56個のアミノ酸を維持している。

一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、トランケートされたATP7Bにおける欠失は、正準配列のアミノ酸57〜486を含む。

一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、ヌクレオチド配列は、アミノ酸配列が配列番号:7である、トランケートされたATP7Bをコードする。

コドン重複性のために、同じアミノ酸配列を有するATP7Bポリペプチドをコードして生成することができる数多くのヌクレオチド配列が存在する。

一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、トランケートされた銅輸送ATPase2をコードするヌクレオチド配列は、配列番号:6のコード配列CDS、塩基473..3580である。

別の実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、トランケートされた銅輸送ATPase2をコードするヌクレオチド配列は、ヒト細胞に最適化されたコドン利用バイアスを有する配列である配列番号:8である。

一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、トランケートされた銅輸送ATPase2をコードするヌクレオチド配列は、トランケートされた銅輸送ATPase2をコードするコドンの内の少なくとも827、少なくとも879、少なくとも931、又は少なくとも983がコード配列である配列番号:8のコドンと同一である、配列である。

ポリアデニル化シグナル配列 本明細書で使用する場合、「ポリアデニル化シグナル」又は「ポリ(A)シグナル」という用語は、遺伝子の3’非翻訳領域(3’UTR)内の特異的認識配列を意味する。ポリアデニル化シグナル又はポリ(A)シグナルは、mRNA前駆体分子に転写され、遺伝子転写の終了をガイドする。ポリ(A)シグナルは、新たに形成されたmRNA前駆体のその3’−端におけるヌクレオチド鎖開裂用のシグナル、及び、アデニン塩基のみからなるRNAストレッチのこの3’−端への付加(ポリアデニル化プロセス;ポリ(A)テイル)用のシグナルとして機能する。ポリ(A)テイルは、mRNAの核外移行、翻訳、及び安定性に重要である。本発明の文脈において、ポリアデニル化シグナルは、哺乳類細胞において、哺乳類遺伝子及び/又はウイルス遺伝子のポリアデニル化を指示することができる認識配列である。

ポリ(A)シグナルは、典型的には、a)プレメッセンジャーRNA(プレ−mRNA)の3’−端開裂及びポリアデニル化の両方に必要であり、下流での転写終了を促進することが示されているコンセンサス配列AAUAAAと、b)ポリ(A)シグナルとしてAAUAAAの利用効率を制御するAAUAAAの上流及び下流の更なるエレメントとからなる。哺乳類遺伝子のこれらのモチーフにおいて、かなりの変異性が存在する。

一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、本発明の核酸構築物のポリアデニル化シグナル配列は、哺乳類遺伝子又はウイルス遺伝子のポリアデニル化シグナル配列である。適切なポリアデニル化シグナルは、中でも、SV40初期ポリアデニル化シグナル、SV40後期ポリアデニル化シグナル、HSVチミジンキナーゼポリアデニル化シグナル、プロタミン遺伝子ポリアデニル化シグナル、アデノウイルス5Elbポリアデニル化シグナル、成長ホルモンポリアデニル化シグナル、PBGDポリアデニル化シグナル、in silicoで設計されたポリアデニル化シグナル(合成)等を含む。

一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、本核酸構築物のポリアデニル化シグナル配列は、トランケートされたATP7Bをコードするヌクレオチド配列の転写から生じたmRNA前駆体のヌクレオチド鎖開裂及びポリアデニル化を指示し、達成することもできる合成ポリ(A)シグナル配列である。

一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、本核酸構築物のポリアデニル化シグナル配列は、配列番号:1の塩基4877..4932により範囲設定された合成ポリ(A)シグナル配列である。

他のヌクレオチドエレメント 一実施態様において、本発明の核酸構築物は、遺伝子治療用の発現ベクターである本発明の発現ベクター、とりわけ、遺伝子治療用のウイルスベクターのリコンビナントゲノムを構成する。

このため、一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、本発明の核酸構築物は、ウイルスの5’ITR及び3’ITRを更に含む。

本明細書で使用する場合、「末端逆位配列(ITR)」という用語は、パリンドローム配列を含有し、DNA複製の開始中にプライマーとして機能するT型ヘアピン構造を形成するように折り畳むことができる、ウイルスの5’−端に位置しているヌクレオチド配列(5’ITR)及び3’−端に位置しているヌクレオチド配列(3’ITR)を意味する。また、ホストゲノムへのウイルスゲノムの組込み、ホストゲノムからのレスキュー、及び成熟ビリオン内でのウイルス核酸のカプシド形成にも必要である。ITRは、ベクターゲノムの複製及びウイルス粒子内へのそのパッケージングにシスで必要である。

一実施態様において、本核酸構築物は、ウイルスの5’ITR、Ψパッケージングシグナル、及び3’ITRを含む。「Ψパッケージングシグナル」は、ウイルスゲノムのシス作用型ヌクレオチド配列である。同配列は、一部のウイルス(例えば、アデノウイルス、レンチウイルス...)において、複製中にウイルスゲノムをウイルスカプシド内にパッケージングするプロセスに必須である。

一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、本核酸構築物は、パルボウイルス(特に、アデノ関連ウイルス)、アデノウイルス、アルファウイルス、レトロウイルス(特に、ガンマレトロウイルス及びレンチウイルス)、ヘルペスウイルス、及びSV40からなる群より選択されるウイルスの5’ITR及び3’ITRを含む。好ましい実施態様では、ウイルスは、アデノ関連ウイルス(AAV)、アデノウイルス(Ad)、又はレンチウイルスである。

一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、本核酸構築物は、AAVの5’ITR及び3’ITRを含む。

AAVゲノムは、4681個の塩基を含有する、直線状の一本鎖DNA分子から構成される(Berns and Bohenzky, (1987) Advances in Virus Research (Academic Press, Inc.) 32:243-307)。このゲノムは、DNA複製起点及びウイルスについてのパッケージングシグナルとしてシスに機能する末端逆位配列(ITR)を各端部に含む。ITRは、長さが約145bpである。このゲノムの内部非繰返し部分は、それぞれAAV rep及びcap遺伝子として公知の2つの大きなオープンリーディングフレームを含む。これらの遺伝子は、ビリオンの複製及びパッケージングに関与するウイルスタンパク質をコードする。特に、少なくとも4つのウイルスタンパク質は、その見掛けの分子量に従って命名された、AAV rep遺伝子Rep78、Rep68、Rep52、及びRep40から合成される。AAV cap遺伝子は、少なくとも3つのタンパク質VP1、VP2、及びVP3をコードする。AAVゲノムの詳細な説明については、例えば、Muzyczka, N. (1992) Current Topics in Microbiol. and Immunol. 158:97-129を参照のこと。

リコンビナントAAVビリオンの構築は、当技術分野において一般的に公知であり、例えば、米国特許第5,173,414号及び同第5,139,941号;国際公開公報第92/01070号、同第93/03769号に記載されている(Lebkowski et al. (1988) Molec. Cell. Biol. 8:3988-3996;Vincent et al. (1990) Vaccines 90 (Cold Spring Harbor Laboratory Press);Carter, B. J. (1992) Current Opinion in Biotechnology 3:533-539;Muzyczka, N. (1992) Current Topics in Microbiol. and Immunol. 158:97-129;及びKotin, R. M. (1994) Human Gene Therapy 5:793-801)。

本発明は、任意のAAV血清型のITRを使用することにより行うことができる。同血清型は、AAV1、AAV2、AAV3(3A型及び3B型を含む)、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、鳥類のAAV、ウシのAAV、イヌ科のAAV、ウマのAAV、ヒツジのAAV、及び、現在公知又は後に発見される任意の他のAAV血清型を含む。

一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、本核酸構築物は、AAV1、AAV2、及びAAV4からなる群より選択される血清型のAAVの5’ITR及び3’ITRを含む。好ましい実施態様では、本核酸構築物は、配列番号:1の塩基1..141及び塩基4968..5107により範囲設定されたITR配列を含む。同ITR配列は、AAV2のITR配列である。

ITRは、AAVゲノム複製及びウイルス粒子内へのそのパッケージングにシスで必要とされるAAVウイルスエレメントのみである。

一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、本核酸構築物は、分類サブクラス(A〜F)いずれかの中のいずれかの血清型のアデノウイルスの5’ITR、Ψパッケージングシグナル、及び3’ITRを含む。特定の実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、これらの5’ITR、Ψシグナル、及び3’ITR配列は、サブクラスCのアデノウイルスに由来し、より好ましくは、血清型2(Ad2)又は血清型5(Ad5)のアデノウイルスに由来する。

一方、他の実施態様では、本発明は、合成の5’ITR及び/又は3’ITRを使用することにより、また、種々の血清型のウイルスに由来する5’ITR及び3’ITRを使用することによっても行うことができる。

ウイルスベクター複製に必要な全ての他のウイルス遺伝子は、以下に記載されたウイルス産生細胞(パッケージング細胞)内にトランスに提供することができる。したがって、本発明のウイルスベクターゲノムの核酸構築物中へのその包含は任意である。

一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、発現ベクターは、AAVベクターである。

特定の実施態様では、本発明の核酸構築物は、 a)AAV2の5’ITR及び3’ITRヌクレオチド配列、AATプロモータ配列、ならびにトランケートされたヒトATP7B(d57−486)をコードするヌクレオチド配列を含むベクター、 b)AAV2の5’ITR及び3’ITRヌクレオチド配列、AATプロモータ配列、ならびにトランケートされたヒトATP7B(d57−486)をコードする配列番号:8のコドン最適化ヌクレオチド配列を含むベクター、 c)AAV2の5’ITR及び3’ITRヌクレオチド配列、EalbPa1ATハイブリッドプロモータ配列、ならびにトランケートされたヒトATP7B(d57−486)をコードするヌクレオチド配列を含むベクター、ならびに d)AAV2の5’ITR及び3’ITRヌクレオチド配列、EalbPa1ATハイブリッドプロモータ配列、ならびにトランケートされたヒトATP7B(d57−486)をコードする配列番号:8のコドン最適化ヌクレオチド配列を含むベクターからなる組み合わせの群より選択されるAAVベクターを構成する。

これらのAAVベクターの実施態様はそれぞれ、ポリアデニル化シグナル配列、例えば、配列番号:1の合成のポリ(A)シグナル配列又は任意の他の適切なポリ(A)シグナルも、他の任意のヌクレオチドエレメントを伴って、又は、同エレメントを伴わずに含む。

別の実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、発現ベクターは、アデノウイルスベクターである。本発明のこのアデノウイルスベクターは、特に、第1世代、第2世代、又は第3世代のアデノウイルス[Adenovirus. Methods and Protocols. Chillon M. and Bosch A. (Eds); third Edition; 2014 Springerを参照のこと]又は既知もしくは後に記載される任意の他のアデノウイルスベクター系であることができる。

特定の実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、本発明のウイルスベクターは、「第3世代のアデノウイルス」である。同アデノウイルスは、「ガットレスアデノウイルス」、「ヘルパー依存性アデノウイルス(HD−Ad)」、又は「高性能アデノウイルス(HC−Ad)」と呼ぶこともできる。第3世代のアデノウイルスは、全てのウイルスコード領域が除去されており(ガットレス)、複製をヘルパーアデノウイルスに依存し(ヘルパー依存性)、最大36kbpインサートの外来性の遺伝子材料を、ホスト細胞内に輸送し、送達することができる(高容量)。ガットレスアデノウイルスは、末端逆位配列ITR(5’及び3’)及びパッケージングシグナル(Ψ)を維持している。

本明細書で記載された本発明の核酸構築物及び発現ベクターは、当業者に公知の従来法:Sambrook and Russell (Molecular Cloning: a Laboratory Manual; Third Edition; 2001 Cold Spring Harbor Laboratory Press);及びGreen and Sambrook (Molecular Cloning: a Laboratory Manual; Fourth Edition; 2012 Cold Spring Harbor Laboratory Press)により調製し、得ることができる。

遺伝子治療用の本発明のウイルス粒子 「ウイルス粒子」及び「ビリオン」という用語は、本明細書において、互換的に使用され、カプシド、場合により、カプシドを囲う脂質エンベロープ内にパッケージングされたウイルスゲノム(すなわち、発現ウイルスベクターの核酸構築物)を含む感染性で、典型的には、複製欠損のウイルス粒子に関する。

一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、本発明のビリオンは、本発明のAAVベクターの核酸構築物をタンパク質シェル中にパッケージングすることにより得られる「リコンビナントAAVビリオン」又は「rAAVビリオン」である。

アデノ関連ウイルスのウイルスカプシドのタンパク質(カプシドタンパク質VP1、VP2、及びVP3)は、1つのウイルス遺伝子(cap遺伝子)から生成される。種々のAAV血清型のカプシドタンパク質配列間の差異により、細胞内侵入のために種々の細胞表面レセプターを使用することになる。別の細胞内処理経路との組み合わせで、これは、各AAV血清型について別箇の組織向性を生じさせる。

特定の実施態様では、本発明のリコンビナントAAVビリオンは、特定のAAV血清型に由来するAAVベクター/ゲノムの核酸構築物を、同じ特定の血清型のAAVに対応する天然のCapタンパク質により形成されたウイルス粒子にカプシド形成させることにより調製することができる。それにも関わらず、複数の技術が、天然のAAVウイルス粒子の構造的及び機能的特性を修飾し、改善するのに開発されてきた(Bunning H et al. J Gene Med 2008; 10: 717-733)。このため、本発明の別のAAVウイルス粒子では、所定のAAV血清型のITRに隣接するウイルスベクターのヌクレオチド構築物は、例えば、a)同じかもしくは異なるAAV血清型由来のカプシドタンパク質[例えば、AAV2 ITR及びAAV5カプシドタンパク質;AAV2 ITR及びAAV8カプシドタンパク質等]から構成されるウイルス粒子;b)種々のAAV血清型もしくは変異体由来のカプシドタンパク質[例えば、AAV2 ITRとAAV1及びAAV5カプシドタンパク質]の混合物から構成されるモザイクウイルス粒子;c)種々のAAV血清型又は変異間でドメインスワッピングによりトランケートされているカプシドタンパク質[例えば、AAV2 ITRとAAV3ドメインを有するAAV5カプシドタンパク質]から構成されるキメラウイルス粒子;又はd)ターゲット細胞特異的レセプターとのストリンジェントな相互作用を可能にする選択性結合ドメイン[例えば、AAV4 ITRとペプチドリガンドの挿入により遺伝的にトランケートされたAAV2カプシドタンパク質;又はカプシド表面にペプチドリガンドをカップリングさせることにより非遺伝的に修飾されたAAV2カプシドタンパク質]を提示するように操作されたターゲット化ウイルス粒子内にパッケージングすることができる。

当業者であれば、本発明のAAVビリオンが任意のAAV血清型由来のカプシドタンパク質を含むことができることを理解するであろう。一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、ウイルス粒子は、AAVのカプシドタンパク質を含む。特定の実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、AAVウイルス粒子は、肝臓細胞への送達により適したAAV1、AAV5、AAV7、AAV8、及びAAV9からなる群より選択される血清型由来のカプシドタンパク質(Nathwani et al. Blood 2007; 109: 1414-1421;Kitajima et al. Atherosclerosis 2006; 186:65-73)を含む。特定の実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、本ウイルス粒子は、本核酸構築物の5’ITR及び3’ITR配列がAAV2血清型のものであり、カプシドタンパク質がAAV8血清型のものである、本発明の核酸構築物を含む。

特定の実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、AAVウイルス粒子は、肝臓、筋肉、及び網膜をターゲット化するのに非常に強力な遺伝子治療ベクターとして挙動する、ウイルスAAV血清型1、2、8、及び9の予想される祖先であるAnc80由来のカプシドタンパク質(Zinn et al. Cell Reports 2015; 12:1-13)を含む。より特定の実施態様では、ウイルス粒子は、Anc80L65 VP3カプシドタンパク質(Genbankアクセッションナンバー:KT235804)を含む。

ウイルスグリカン相互作用は、ホスト細胞侵入の重要な決定因子である。特定の実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、AAVウイルス粒子は、1つ以上のアミノ酸置換を含み、そしてここで、この置換は、新たなグリカン結合部位をAAVカプシドタンパク質に導入する、カプシドタンパク質を含む。より特定の実施態様では、アミノ酸置換は、AAV2におけるアミノ酸266、アミノ酸463〜475、及びアミノ酸499〜502、又は、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、もしくは任意の他のAAV血清型(Anc80及びAnc80L65も含む)において対応するアミノ酸位置においてである。

導入された新たなグリカン結合部位は、ヘキソース結合部位[例えば、ガラクトース(Gal)、マンノース(Man)、グルコース(Glu)、又はフコース(fuc)結合部位];シアル酸(Sia)結合部位[例えば、Sia残基は、例えば、N−アセチルノイラミン酸(NeuSAc)又はN−グリコリルノイラミン酸(NeuSGc)];又は二糖類結合部位であることができる。この場合、二糖類は、例えば、Sia(アルファ2,3)Gal又はSia(アルファ2,6)Galの形態において、ガラクトースに結合しているシアル酸である。別の血清型のAAVのカプシドタンパク質におけるAAV血清型由来の新たな結合部位を導入するための詳細なガイダンスは、国際公開公報第2014144229号及びShen et al. (J. Biol. Chem. 2013; 288(40):28814-28823)に与えられる。特定の実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、AAV9由来のGal結合部位は、AAV2 VP3骨格内に導入され、細胞内侵入のためにHS及びGalレセプターの両方を使用することができる二重グリカン結合AAV株を生じる。好ましくは、前記二重グリカン結合AAV株は、AAV2G9である。Shen et al.は、AAV9 VP3カプシドタンパク質サブユニットのGal認識部位に直接関与し、同部位のすぐ隣りのアミノ酸残基を、AAV2 VP3サブユニットコード領域における対応する残基上に置換することにより、AAV2G9を生成した(AAV2 VP3ナンバリング、Q464V、A467P、D469N、I470M、R471A、D472V、S474G、Y500F、及びS501A)。

別の実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、本発明のビリオンは、アデノウイルスビリオン、例えば、Ad5ビリオンである。AAVビリオンの場合、Adビリオンのカプシドタンパク質は、その向性及び細胞ターゲット化特性を改変するのにも操作することができる。代替的なアデノウイルス血清型も利用することができる。

ウイルス粒子の製造 本発明の発現ウイルスベクターの核酸構築物を有するウイルス粒子の製造は、従来の方法及びプロトコールにより行うことができる。同方法及びプロトコールは、製造される核酸構築物及びベクターのウイルス粒子の実際の実施態様に選択される構造的特徴を考慮して選択される。

簡潔に、ウイルス粒子は、ヘルパーベクターもしくはウイルス又は他のDNA構築物の存在下において、パッケージングされるベクターの核酸構築物によりトランスフェクションされる、特異的なウイルス産生細胞(パッケージング細胞)中で製造することができる。

したがって、一態様において、本発明は、ウイルス粒子を製造するための、本発明の核酸構築物又は発現ベクターの使用に関する。

関連する態様では、本発明は、 a)本発明の核酸構築物又は発現ベクターを含むホスト細胞を、培養培地中で培養する工程と、 b)細胞培養上清及び/又は細胞内からウイルス粒子を収集する工程とを含む、本発明のウイルス粒子を製造する方法に関する。

好ましくは、前記ホスト細胞は、以下に記載されたパッケージング細胞である。適切な培養培地は、当業者に公知であろう。このような培地を構成する成分は、培養される細胞種に応じて変化させることができる。栄養組成に加えて、浸透圧及びpHが、培養培地の考慮される重要なパラメータである。細胞増殖培地は、当業者に周知の数多くの成分を含む。同成分は、アミノ酸、ビタミン、有機塩及び無機塩、炭水化物の供給源、脂質、微量元素(CuSO4、FeSO4、Fe(NO3)3、ZnSO4...)を含む。各成分は、in vitroにおいて細胞の培養(すなわち、細胞の生存及び増殖)を支援する量で存在する。また、成分は、種々の補助物質、例えば、緩衝物質(例えば、炭酸ナトリウム、Hepes、Tris...)、酸化安定剤、機械的応力を打ち消す安定剤、プロテアーゼ阻害剤、動物成長因子、植物加水分解物、抗凝集剤、消泡剤を含むこともできる。細胞増殖培地の特徴及び組成は、具体的な細胞要求に応じて変化する。市販の細胞増殖培地の例は、MEM(Minimum Essential Medium)、BME(Basal Medium Eagle)DMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s Medium)、Iscoves DMEM(Iscove’s modification of Dulbecco’s Medium)、GMEM、RPMI 1640、Leibovitz L−15、CHO、McCoy’s、Medium 199、HEK293、Ham(Ham’s Media)F10及び派生品であるHam F12、DMEM/F12等である。

本発明のホスト細胞 別の態様では、本発明は、本発明の核酸構築物又は発現ベクターを含む、ホスト細胞に関する。

本明細書で使用する場合、「ホスト細胞」という用語は、対象となるウイルスによる感染に感受性であり、in vitroにおける培養に適している、任意の細胞株を意味する。

本発明のホスト細胞は、ex vivoでの遺伝子治療目的で使用することができる。このような実施態様では、細胞は、本発明の核酸構築物又はウイルスベクターによりトランスフェクションされ、その後に、患者又は対象に移植される。移植される細胞は、自家、同種、又は異種起源を有することができる。臨床使用のために、細胞の単離は、一般的には、医薬品の製造及び品質管理に関する基準(GMP)の条件下において行われるであろう。移植前に、典型的には、細胞の品質及び微生物又は他の汚染物質が存在しないことが確認され、例えば、放射線及び/又は免疫サプレッション処理による肝臓の前処理が行われる場合がある。さらに、ホスト細胞は、細胞増殖及び/又は分化を刺激する成長因子、例えば、肝細胞成長因子(HGF)と共に移植することができる。

特定の実施態様では、ホスト細胞は、肝臓におけるex vivoでの遺伝子治療に使用される。好ましくは、前記細胞は、真核生物細胞、例えば、哺乳類細胞である。これらは、ヒト、非ヒト霊長類、例えば、類人猿;チンパンジー;サル及びオランウータン、飼育動物(イヌ及びネコを含む)、ならびに家畜、例えば、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、及びヤギ、又は、他のほ乳類種(マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ハムスターを含むが、これらに限定されない)等を含むが、これらに限定されない。当業者であれば、移植される患者又は対象に応じて、より適切な細胞を選択するであろう。

前記ホスト細胞は、自己複製能及び多能性を有する細胞、例えば、幹細胞又は誘導多能性幹細胞であることができる、幹細胞は、好ましくは、間葉系幹細胞である。間葉系幹細胞(MSC)は、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、又は筋細胞の内の少なくとも1つに分化可能であり、任意の種類の組織から単離することができる。一般的には、MSCは、骨髄、脂肪組織、臍帯、又は末梢血から単離されるであろう。それを得るための方法は、当業者に周知である。誘導多能性幹細胞(iPS細胞又はiPSCとしても公知)は、成熟細胞から直接生じさせることができる種類の多能性幹細胞である。Yamanaka et al.は、Oct3/4、Sox2、Klf4、及びc−Myc遺伝子を、マウス及びヒト繊維芽細胞内に導入し、これらの細胞にこれらの遺伝子を発現させることにより、iPS細胞を誘導した(国際公開公報第2007/069666号)。Thomson et al.は、Klf4及びc−Mycに代えてNanog及びLin28を使用して、ヒトiPS細胞を後に生じさせた(国際公開公報第2008/118820号)。

前記ホスト細胞は、肝細胞であることもできる。細胞単離及びヒト又はマウスレシピエントへのその後の移植を含む肝細胞移植法は、例えば、Filippi and Dhawan, Ann NY Acad Sci. 2014, 1315 50-55;Yoshida et al., Gastroenterology 1996, 111: 1654-1660;Irani et al. Molecular Therapy 2001, 3:3, 302-309;及びVogel et al. J Inherit Metab Dis 2014, 37:165-176に記載されている。ウイルスベクターを肝細胞にex vivoで導入するための方法は、例えば、Merle et al., Scandinavian Journal of Gastroenterology 2006, 41:8, 974-982に記載されている。

別の特定の実施態様では、ホスト細胞は、パッケージング細胞である。前記細胞は、付着細胞又は懸濁細胞であることができる。パッケージング細胞及びヘルパーベクター又はDNA構築物は共に、ウイルスベクターの完全な複製及びパッケージングに必要な全ての損なわれた機能をトランスに提供する。

好ましくは、前記パッケージング細胞は、真核生物細胞、例えば、哺乳類細胞であり、類人猿、ヒト、イヌ、及びげっ歯類の細胞を含む。ヒト細胞の例は、PER.C6細胞(国際公開公報第01/38362号)、MRC−5(ATCC CCL-171)、WI−38(ATCC CCL-75)、HEK−293細胞(ATCC CRL-1573)、HeLa細胞(ATCC CCL2)、及びアカゲザル胎児細胞(ATCC CL-160)である。非ヒト霊長類細胞の例は、Vero細胞(ATCC CCL81)、COS−1細胞(ATCC CRL-1650)、又はCOS−7細胞(ATCC CRL-1651)である。イヌ細胞の例は、MDCK細胞(ATCC CCL-34)である。げっ歯類細胞の例は、ハムスター細胞、例えば、BHK21−F、HKCC細胞、又はCHO細胞である。

哺乳類ソースの代替として、本発明の使用するための細胞株は、鳥類ソース、例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、又はキジから得ることができる。鳥類細胞株の例は、鳥類胚性幹細胞(国際公開公報第01/85938号及び同第03/076601号)、不死化アヒル網膜細胞(同第2005/042728号)、鳥類胚性幹細胞由来の細胞(ニワトリ細胞(同第2006/108846号)又はアヒル細胞、例えば、EB66細胞株(同第2008/129058号及び同第2008/142124号)を含む)を含む。

別の実施態様では、前記ホスト細胞は、昆虫細胞、例えば、SF9細胞(ATCC CRL-1711)、Sf21細胞(IPLB-Sf21)、MG1細胞(BTI-TN-MG1)、又はHigh Five(商標)細胞(BTI-TN-5B1-4)である。

したがって、特定の実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、ホスト細胞は、 a)一般的には、プラスミドとしての、本発明の核酸構築物もしくは発現ベクター(すなわち、リコンビナントAAVゲノム)、 b)ITR配列を有さない、AAV rep及び/もしくはcap遺伝子をコードする、一般的には、プラスミドである核酸構築物、ならびに/又は c)ウイルスヘルパー遺伝子を含む、一般的には、プラスミドもしくはウイルスである核酸構築物 を含む。

AAV複製に必須のウイルス遺伝子は、本明細書において、ウイルスヘルパー遺伝子と呼ばれる。典型的には、AAV複製に必須の前記遺伝子は、アデノウイルスヘルパー遺伝子、例えば、E1A、E1B、E2a、E4、又はVA RNAである。好ましくは、アデノウイルスヘルパー遺伝子は、Ad5又はAd2血清型のものである。

従来法は、AAVベクターのウイルス粒子を製造するのに使用することができる。同方法は、本発明のリコンビナントAAVベクター/ゲノムを有する核酸構築物(例えば、プラスミド);rep及びcap遺伝子をコードするが、ITR配列を有さない核酸構築物(例えば、AAVヘルパープラスミド);及び、AAV複製に必須のアデノウイルス機能を提供する第3の核酸構築物(例えば、プラスミド)による一過性細胞共トランスフェクションからなる。

このため、特定の実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、前記ホスト細胞は、 i)本発明の核酸構築物又は発現ベクター(すなわち、リコンビナントAAVゲノム)、 ii)AAV rep及びcap遺伝子をコードし、ITR配列を有さない核酸構築物、ならびに iii)アデノウイルスヘルパー遺伝子を含む核酸構築物 を含むことにより特徴付けられる。

あるいは、rep、cap、及びアデノウイルスヘルパー遺伝子は、1つのプラスミド上で組み合わせることができる(Blouin Vet al. J Gene Med. 2004; 6(suppl): S223-S228;Grimm D. et al. Hum. Gene Ther. 2003; 7: 839-850)。このため、別の特定の実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、前記ホスト細胞は、 i)本発明の核酸構築物又は発現ベクター(すなわち、リコンビナントAAVゲノム)、ならびに ii)AAV rep及びcap遺伝子をコードし、ITR配列を有さず、アデノウイルスヘルパー遺伝子を更に含むプラスミド を含むことにより特徴付けられる。

更なる特定の実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、前記ホスト細胞は、 a)本発明の核酸構築物又は発現ベクター(すなわち、リコンビナントAAVゲノム)、 b)AAV rep及びcap遺伝子をコードし、ITR配列を有さないプラスミド、ならびに c)アデノウイルスヘルパー遺伝子E2a、E4、及びVA RNAを含むプラスミド を含み、そしてここで、共トランスフェクションは、アデノウイルスE1遺伝子を構成的に発現しており、トランス相補している(transcomplement)細胞、好ましくは、哺乳類細胞、例えば、HEK−293細胞(ATCC CRL-1573)中で行われる。

本発明のAAVベクターの大規模生産は、例えば、リコンビナントバキュロウイルスの組み合わせによる、昆虫細胞の感染によっても行うことができる(Urabe et al. Hum. Gene Ther. 2002; 13: 1935-1943)。SF9細胞は、それぞれAAV rep、AAV capを発現するバキュロウイルスベクターと、パッケージングされるAAVベクターとにより共感染される。リコンビナントバキュロウイルスベクターは、ウイルスの複製及び/又はパッケージングに必要なウイルスヘルパー遺伝子機能を提供するであろう。

AAV血清型のrep ORF(オープンリーディングフレーム)と、異なる血清型AAVのcap ORFとをコードするヘルパープラスミドを使用することにより、所定のAAV血清型のITRに隣接するベクターを異なる血清型のカプシド構造タンパク質から構築されたビリオン内にパッケージングするのが可能である。この同じ手法により、モザイク、キメラ、又はターゲット化ベクターをパッケージングするのも可能である。

一方、本発明のHC−Adベクターの製造は、アデノウイルスE1遺伝子及びCreリコンビナーゼをも構成的に発現しており、トランス相補している哺乳類細胞(例えば、293Cre細胞)により行うことができる。これらの細胞は、HC−Adベクターゲノムでトランスフェクションされ、第1世代のアデノウイルスヘルパーウイルス(E1欠失)により感染される。同ウイルスにおいて、パッケージングシグナルは、loxP配列に隣接している[Parks RJ et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1996; 13565-13570;293Cre細胞については、Palmer and Engel. Mol. Ther. 2003; 8:846-852を参照のこと]。HC−Adベクター、例えば、AdAdLC8clucをパッケージングするのに使用することができる複数のCre/loxP系ヘルパーウイルス系又は最適化された自己不活性化AdTetCreヘルパーウイルスが記載されている(欧州特許第2295591号;Gonzalez-Aparicio et al. Gene Therapy 2011; 18: 1025-1033)。

本発明の遺伝子治療用のウイルスベクターの構築及び製造のための更なるガイダンスは、以下に見出すことができる。 Viral Vectors for Gene Therapy, Methods and Protocols. Series: Methods in Molecular Biology, Vol. 737. Merten and Al-Rubeai (Eds.); 2011 Humana Press (Springer) Gene Therapy. M. Giacca. 2010 Springer-Verlag Heilbronn R. and Weger S. Viral Vectors for Gene Transfer: Current Status of Gene Therapeutics. In: Drug Delivery, Handbook of Experimental Pharmacology 197; M. Schafer-Korting (Ed.). 2010 Springer-Verlag; pp. 143-170 Adeno-Associated Virus: Methods and Protocols. R.O. Snyder and P. Moulllier (Eds). 2011 Humana Press (Springer) Bunning H. et al. Recent developments in adeno-associated virus technology. J. Gene Med. 2008; 10:717-733 Adenovirus: Methods and Protocols. M. Chillon and A. Bosch (Eds.); Third Edition. 2014 Humana Press (Springer)

治療的使用 更なる態様では、本発明は、医薬として使用するための、発明の概要内で定義された本発明の製品に関する。

更なる態様では、本発明は、銅輸送ATPase2の欠損又は機能不全に起因する状態の処置、ならびに、銅輸送ATPase2の発現及び活性のアップレギュレーションにより治療的利益又は改善が生じる可能性がある任意の他の状態及び疾患、特に、ATP7B依存性リソソームエキソサイトーシスの低下及びリソソーム中の銅蓄積に関連する疾患又は状態、例えば、胆汁うっ滞性障害、アルツハイマー病、及び/又はガン(Polishchuck et al. Dev Cell. 2014, 29(6), 686-700;Gupta and Lutsenko, Future Med. Chem. 2009, 1, 1125-1142)の処置に使用するための、発明の概要内で定義された本発明の製品に関する。

処置される対象は、哺乳類、及び特に、ヒトの患者であることができる。

特定の実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、銅輸送ATPaseの欠損又は機能不全に起因する状態は、ウィルソン病(WD、Online Mendelian Inheritance in Man catalog accession number OMIN 277900;http://www.omim.org/entry/277900)である。

関連する態様では、本発明は、銅輸送ATPase2の欠損又は機能不全に起因する状態の処置、ならびに、銅輸送ATPase2の発現及び活性のアップレギュレーションにより治療的利益又は改善が生じる可能性がある任意の他の状態及び疾患の処置、好ましくは、ウィルソン病の処置に使用するための医薬の調製における、発明の概要内で定義された本発明の製品の使用に属する。

更なる態様では、本発明は、治療的に有効な量の、本発明の核酸構築物、発現ベクター、ホスト細胞、ウイルス粒子、又は医薬組成物を患者に投与することを含む、患者における、銅輸送ATPase2の欠損又は機能不全に起因する状態の処置、ならびに、銅輸送ATPase2の発現及び活性のアップレギュレーションにより治療的利益又は改善が生じる可能性がある任意の他の状態及び疾患の処置、好ましくは、ウィルソン病の処置における使用に関する。

本発明の製品による処置は、WDの1つ以上の兆候の重症度を、緩和し、改善し、又は低下させることができる。例えば、処置は、ホロセルプラスミン合成、セルロプラスミンオキシダーゼ活性、及び/又は胆汁中への銅排泄を増大させ、及び/又は、回復させ(これにより、血清、肝臓、脳、及び尿中の銅蓄積を減少させ)、その結果として、腹痛、疲労、黄疸の重症度、制御不能な運動、筋肉のこわばり、会話、嚥下、又は肉体的整合を伴う問題を緩和し、改善し、又は低下させることができる。

本発明の製品は、典型的には、医薬組成物又は医薬中に、場合により、医薬担体、希釈剤、及び/又は補助剤との組み合わせで含まれるであろう。このような組成物又は医薬品は、本発明の製品を、所望の治療効果を提供するのに十分な有効量で含み、薬学的に許容し得る担体又は賦形剤を含む。

したがって、更なる態様では、本発明は、本発明の核酸構築物、発現ベクター、ホスト細胞、又はウイルス粒子と、薬学的に許容し得る担体とを含む、医薬組成物に関する。

任意の適切な薬学的に許容し得る担体又は賦形剤が、本発明の医薬組成物を調製するのに使用することができる(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Alfonso R. Gennaro (Editor) Mack Publishing Company, April 1997を参照のこと)。医薬組成物は、典型的には、製造及び保存の条件下において無菌であり、安定している。医薬組成物は、液剤(例えば、生理食塩水、デキストロース溶液、もしくは緩衝溶液、又は、他の薬学的に許容し得る無菌流体)、微小エマルション剤、リポソーム剤、又は、高い製品濃度を収容するのに適した他の規則正しい構造体(例えば、微粒子又はナノ粒子)として製剤化することができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液状ポリエチレングリコール等)、及びそれらの適切な混合物を含有する溶媒又は分散媒体であることができる。適切な流動性は、例えば、コーティング、例えば、レシチンの使用により、分散剤の場合には、必要とされる粒径の維持により、及び、界面活性剤の使用により維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、ポリアルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムを組成物中に含むのが好ましいであろう。注入用組成物の延長した吸収は、組成物中に吸収を遅延させる作用剤、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを含ませることによりもたらすことができる。本発明の製品は、例えば、組成物中に徐放性ポリマー又は急速な放出から本製品を保護する他の担体を含む放出制御製剤(インプラント及びマイクロカプセル化送達システムを含む)において投与することができる。生分解性及び生体適合性ポリマー、例えば、エチレンビニルアセタート、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸、及びポリ乳酸/ポリグリコール酸コポリマー(PLG)を使用することができる。好ましくは、前記医薬組成物は、液剤として、より好ましくは、場合により緩衝生理食塩水溶液として製剤化される。

補助的な活性化合物も、本発明の医薬組成物中に包含することができる。更なる治療剤の共投与のガイダンスは、例えば、the Compendium of Pharmaceutical and Specialties (CPS) of the Canadian Pharmacists Associationに見出すことができる。

一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、本発明の医薬組成物は、非経口医薬組成物であり、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、又は筋肉内投与に適した組成物を含む。これらの医薬組成物は、単なる例示であり、他の非経口及び経口投与経路に適した医薬組成物を制限するものではない。

本発明の文脈において、「有効量」は、治療的に有効な量を意味する。

本明細書で使用する場合、「治療的に有効な量」は、所望の治療的結果、例えば、銅輸送活性の向上による、胆汁中の銅の増大ならびに血清、感情、脳、及び尿中の銅の減少を達成するのに必要とされる用量及び期間において有効な量を意味する。本発明の製品又はそれを含む医薬組成物の治療的に有効な量は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、ならびに製品又は医薬組成物が個体中で所望の応答を引き出す能力等の要因に応じて変動する場合がある。投与計画は、最適な治療応答を提供するのに調節することができる。治療的に有効な量は、典型的には、治療的に有益な効果が本製品又は医薬組成物の任意の毒性又は有害な作用を上回る量でもある。

一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、本発明の製品を有する医薬組成物は、対象又は患者に非経口経路により投与される。

一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、本医薬組成物は、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、又は筋肉内経路により投与される。

一実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、本発明の製品を含む医薬組成物は、間質経路により、すなわち、組織の隙間への注入、又は、組織の隙間内への注入により投与される。組織ターゲットは、例えば、肝臓組織に特異的であることができ、又は、複数の組織の組み合わせ、例えば、筋肉及び肝臓組織であることができる。例示的な組織ターゲットは、肝臓、骨格筋、心筋、脂肪堆積物、腎臓、肺、血管内皮、上皮及び/又は造血細胞を含むことができる。好ましい実施態様では、場合により、上記され又は以下に記載された種々の実施態様の1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、本発明の製品を含む医薬組成物は、肝臓内注入、すなわち、肝臓組織の間質空間内への注入により投与される。

対象又は患者に投与される本発明の製品量は、個々の対象もしくは患者の特定の状態(個体の年齢、性別、及び体重を含む);疾患の性質及びステージ、疾患の進行性;投与経路;ならびに/又は対象もしくは患者に処方された併用医薬に応じて変動する場合がある。投与計画は、最適な治療応答を提供するように調節することができる。

任意の特定の対象について、特別な投与計画が、個々の必要性及び、組成物を投与し、組成物の投与を管理する専門家の判断に従って、経時的に調節することができる。本明細書で説明された投与量範囲は、単なる例示であり、医療実務家が選択することができる投与量範囲を制限するものではない。

一実施態様において、本発明のAAVベクターは、対象又は患者に、ウィルソン病の処置のために、5×1011〜1×1014vg/kg(vg:ウイルスゲノム;kg:対象又は患者の体重)の範囲内に含まれる量又は用量で投与することができる。より特定の実施態様では、AAVベクターは、1×1012〜1×1013vg/kgの範囲内に含まれる量で投与される。

別の実施態様では、本発明のHC−Adベクターは、対象又は患者に、ウィルソン病の処置のために、1×109〜1×1011iu/kg(iu:ベクターの感染単位)の範囲内に含まれる量又は用量で投与することができる。

別の態様では、本発明は、更に、本発明の核酸構築物、ベクター、ホスト細胞、ウイルス粒子、又は医薬組成物を、1つ以上の容器中に含む、キットに関する。本発明のキットは、キット内に収容された本発明の核酸構築物、ベクター、ホスト細胞、又はウイルス粒子を患者に投与する方法を説明する説明書又は包装材を含むことができる。本キットの容器は、任意の適切な材料、例えば、ガラス、プラスチック、金属等のものであることができ、任意の適切なサイズ、形状、又は構成のものであることができる。特定の実施態様では、本キットは、本発明の核酸構築物、ベクター、ホスト細胞、ウイルス粒子、又は医薬組成物を、適切な液状又は溶液状で収容する、1つ以上のアンプル又はシリンジを含むことができる。

本説明及び特許請求の範囲の全体を通して、「含む」という語及びその変形例は、他の技術的特徴、添加剤、成分、又は工程を除外することを意図していない。さらに、「含む」という語は、「からなる」の場合を包含する。本発明の更なる目的、利点、及び特徴は、本説明の検討に基づいて当業者に明らかになるであろう、又は、本発明の実施により知ることができる。下記実施例は、例示として提供され、本発明を限定することを意図するものではない。さらに、本発明は、本明細書に記載された特定の実施態様及び好ましい実施態様の全ての可能性のある組み合わせに及ぶ。

実施例1.リコンビナント発現ベクターの構築 ヒトATP7B又はトランケート型のヒトATP7Bを有し、これらのATP7Bを発現する5種類のAAVベクター:AAV2/8−AAT−wtATP7B、AAV2/8−AAT−coATP7B、AAV2/8−AAT−ATP7B(d223−366)、AAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)、及びAAV2/8−AAT−coATP7B(d57−486)を、ウィルソン病(WD)の遺伝子治療を行うために、設計し、生成した。

1.1 ベクターAAV2/8−AAT−wtATP7B[本明細書において、AAV−wtATP7Bとも命名]

このベクターのゲノム配列は、配列番号:1として特定される。

まず、プラスミドpUC−ATP7Bを、核酸構築物をpUC57プラスミド内にクローニングすることにより、要求に応じて構築した(GenScript)。核酸構築物は、ヒトATP7B(導入遺伝子)をコードするcDNA配列を、この導入遺伝子の下流の合成ポリアデニル化シグナル配列(Levitt N. et al. Genes & Development 1989; 3(7):1019-1025)と共に含有した。

次に、アルファ1アンチトリプシン遺伝子(AAT)のミニマルプロモータを、プラスミドpUC−ATP7BのATP7B遺伝子上流に導入した。ミニマルプロモータは、AATプロモータのcap部位に対するヌクレオチド−261〜ヌクレオチド+44の配列からなり(Kramer M.G. et al. Mol. Therapy 2003; 7(3): 375-385)、肝臓機能に必要な組織特異的エレメント(TSE)と、プロモータの全体活性に必要な遠位領域(DRI)とを含有する。AATプロモータは、(M.G. Kramerにより提供された)pEnhAlbAAT−ルシフェラーゼプラスミドをテンプレートとして使用し、下記プライマーを使用するPCR増幅により得られた。

プライマーAAT−フォワード 5’ CTGGTCTAGAACGCGTCGCCACCCCCTCCACCTTGG 3’(配列番号:10)及び プライマーAAT−リバース 5’ ATCATGATGCGGCCGCTTCACTGTCCCAGGTCAGTG 3’(配列番号:11)

AAT−フォワードプライマーは、XbaI及びMluIについての制限部位を有する。3’AAT−リバースプライマーは、NotIについての制限部位を有する。

したがって、プラスミドpUC−AAT−ATP7Bを得るために、プラスミドpUC−ATP7Bを、XbaI及びNotIで消化し、同じ酵素で予め消化されたAATプロモータをライゲーションした。

その後、発現カセットを、AAV導入プラスミドpAAV−MCS(Agilent technologies)内に、制限酵素PmlI及びMluIでの消化によりサブクローニングし、これにより、プラスミドpAAV2−AAT−wtATP7Bを生成した。

プラスミドを構築した後、AAVベクターを、プラスミドpAAV2−AAT−ATP7B及びプラスミドpDP8(PlasmidFactory, Bielefeld, Germanyから得た;プラスミドpDP8は、AAV8カプシドタンパク質、AAV2 repタンパク質、ならびに、AAVの生成及びパッケージングに必要なアデノウイルス分子を発現する)の、293細胞内への二重トランスフェクションにより作製した。

このベクターを、イオジキサノール勾配により最終的に精製し、定量PCRによりタイトレーションした。

1.2 ベクターAAV2/8−AAT−coATP7B[本明細書において、AAV−coATP7Bとも命名]

このベクターのゲノム配列は、配列番号:3として特定される。

コドン最適化版のATP7B遺伝子(coATP7B)を発現するAAVベクターを得るために、まず、プラスミドpUC−coATP7Bを、核酸構築物をpUC57プラスミド内にクローニングすることにより、要求に応じて構築した(GenScript)。次に、coATP7Bを、制限酵素NotI及びKpnIによる消化により、pUC−coATP7Bから切除し、同じ酵素であるNotI及びKpnIで予め消化されたpAAV2−AAT−wtATP7Bプラスミド内にサブクローニングして、プラスミドpAAV2−AAT−coATP7Bを得た。

プラスミドを構築した後、ベクターゲノムの生成及びウイルス粒子のパッケージングについて、ベクターAAV2/8−AAT−wtATP7Bについて先に記載されたように、先に得られたプラスミドpAAV2−AAT−coATP7BとプラスミドpDP8との二重トランスフェクション、精製(イオジキサノール勾配)、及びタイトレーションを行った。

1.3 ベクターAAV2/8−AAT−ATP7B(d223−366)[本明細書において、AAV−T1とも命名] このベクターは、導入遺伝子として、アミノ酸223〜366が欠失しているトランケート型のヒトATP7BであるATP7B(d223−366)をコードする核酸配列(配列番号:12)を有する。欠失配列は、HMA3ドメイン及びHMA4ドメインの7つのアミノ酸を含む。

ベクターを得るために、プラスミドpUC57−wtATP7Bを、制限酵素MfeI及びNaeIにより消化して、プラスミドpUC57−ATP7B−T1を得た。このようにして、コディファイ領域のサイズを、432個のヌクレオチド、タンパク質サイズを、144個のアミノ酸に小さくした。

プラスミドpUC57−ATP7B−T1を構築した後、ベクターゲノムの生成及びウイルス粒子のパッケージングについて、ベクターAAV2/8−AAT−wtATP7Bについて先に記載されたように、AATプロモータのライゲーション、プラスミドpAAV−MCS内へのサブクローニング、先に得られたプラスミドpAAV2−AAT−T1とプラスミドpDP8との二重トランスフェクション、ウイルス精製(イオジキサノール勾配)、及びタイトレーションを行った。

1.4 ベクターAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)[本明細書において、AAV−T2とも命名]

このベクターのゲノム配列は、配列番号:6として特定される。

このベクターは、導入遺伝子として、アミノ酸57〜486が欠失しているトランケート型のヒトATP7BであるATP7B(d57−486)[ATP7B−T2とも命名される]をコードする核酸配列を有する。このようにして、最初の4つのHMAドメインは除去されているが、アミノ末端領域の56個のアミノ酸を含むシグナル配列は維持されており、コディファイ領域のサイズを1.29Kb、タンパク質を430個のアミノ酸に小さくした。

ATP7B(d57−486)のヌクレオチド配列を、テンプレートとしてpUC57−wtATP7Bを使用し、2つのセットのプライマーを使用するPCR増幅により得た。

アミノ末端配列を増幅する第1のセットのプライマー プライマーF1: 5’ CTAGATGCGGCCGCCACCATGCCTG 3’(配列番号:14)及び プライマーR1: 5’ CTGAGAAGAAGGGCCCAGGCC 3’(配列番号:15)ならびに カルボキシ末端領域を増幅する第2のセットのプライマー プライマーF2: 5’ GGCCCTTCTTCTCAGCCGCAGAAGTGCTTCTTACAG 3’(配列番号:16)及び プライマーR2: 5’ ACCAAAATCGATAAAACCGATTACAATCC 3’(配列番号:17)

プライマーR1及びF2の5’末端配列は相補である。テンプレートとして等量の2つのPCR精製フラグメントを使用し、プライマーF1及びR2を使用して、PCRを、ATP7B(d57−486)をコードするヌクレオチド配列を得るために行った。ついで、PCR産物を、NotI及びClaIにより消化し、両酵素で予め消化されたpUC57−AAT−wtATP7Bプラスミド内にクローニングして、プラスミドpUC57−ATP7B−T2を得た。

プラスミドpUC57−ATP7B−T2を構築した後、ベクターゲノムの生成及びウイルス粒子のパッケージングについて、ベクターAAV2/8−AAT−wtATP7Bについて先に記載されたように、AATプロモータのライゲーション、プラスミドpAAV−MCS内へのサブクローニング、先に得られたプラスミドpAAV2−AAT−T2とプラスミドpDP8との二重トランスフェクション、精製(イオジキサノール勾配)、及びタイトレーションを行った。

1.5 ベクターAAV2/8−AAT−coATP7B(d57−486)[本明細書において、AAV−AAT−coT2とも命名] このベクターは、導入遺伝子として、ATP7B(d57−486)もコードする、コドン最適化核酸配列[配列番号:8;coATP7B(d57−486)又はcoATP7B−T2]を有する。

coATP7B(d57−486)のヌクレオチド配列を、テンプレートとしてpUC57−coATP7Bを使用し、2つのセットのプライマーを使用するPCR増幅により得た。

アミノ末端配列を増幅する第1のセットのプライマー プライマーF3: 5’ ACGCGTGCGGCCGCCACCATGCCAG 3’(配列番号:18)及び プライマーR3: 5’ CTGGGAGCTAGGTCCCAGTCC 3’(配列番号:19)ならびに カルボキシ末端領域を増幅する第2のセットのプライマー プライマーF4: 5’ GGACCTAGCTCCCAGCCTCAGAAGTGTTTTCTGCAG 3’(配列番号:20)及び プライマーR4: 5’ TGTTCCTCGCGAATGATCAGGTTGTCCTC 3’(配列番号:21)

プライマーR3及びF4の5’末端配列は相補である。テンプレートとして等量の2つのPCR精製フラグメントを使用し、プライマーF3及びR4を使用して、PCRを、ATP7B(d57−486)をコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を得るために行った。ついで、PCR産物を、NotI及NruIにより消化し、両酵素で予め消化されたpUC57−AAT−wtATP7Bプラスミド内にクローニングして、プラスミドpUC57−coATP7B−T2を得た。

プラスミドpUC57−coATP7B−T2を構築した後、ベクターゲノムの生成及びウイルス粒子のパッケージングについて、ベクターAAV2/8−AAT−wtATP7Bについて先に記載されたように、AATプロモータのライゲーション、プラスミドpAAV−MCS内へのサブクローニング、先に得られたプラスミドpAAV2−AAT−coT2とプラスミドpDP8との二重トランスフェクション、ウイルス精製(イオジキサノール勾配)、及びタイトレーションを行った。

実施例2.ウィルソン病動物モデル:ATP7B KO ベクターAAV2/8−AAT−ATP7B−T1及びAAV2/8−AAT−ATP7B−T2の治療性能を、WDの代表的な動物モデルである、ATP7Bノックアウトマウス(ATP7B KO、ATP7B−/−、又はWDマウス)において試験した。この動物モデルは、Buiakova et al.によって、対向する転写フレーム中に方向付けられたネオマイシンカセットによりATP7B エクソン2の一部の置換を操作することで、マウスATP7B mRNAに早期終止コドンを導入することにより開発された(Buikova O.I. et al. Human Molecular Genetics 1999; 8(9): 1665-1671)。ATP7Bノックアウトマウスは、肝臓におけるATP7Bの発現を示さず、尿中の高いCu排泄、血清中の低いホロセルロプラスミンレベル、高いトランスアミナーゼレベル、肝臓中の高いCu濃度、及び病的な肝臓組織学を示す。これらのマウスは、神経病変(neurological affectation)を除いて、ヒトのウィルソン病の典型的な生化学的特徴を示す(Lutsenko S. Biochemical Society Transactions 2008; 36(Pt 6): 1233-1238)。

実施例3.ウィルソン病マウスにおけるウイルスベクターAAV2/8−AAT−ATP7B−T1及びAAV2/8−AAT−ATP7B−T2の治療効果の決定 6週(6w)齢のオスATP7B−/−マウスを、各5匹のマウスの4つの群に分割した。これらの群の1つに、ベクターAAV2/8−AAT−wtATP7Bを、用量3×1010vg/マウス(vg:ウイルスゲノム)で静脈内処置した。第2の群は、同じ用量のベクターAAV2/8−AAT−ATP7B−T1で静脈内処置した。第3の群は、同じ用量のベクターAAV2/8−AAT−ATP7B−T2で静脈内処置した。第4の群は、処置しないままとした。野生型マウスの追加群を、対照群(対照)として処置せずに維持した。動物を、ベクター投与後24週(w30)で殺処分した。

ベクター投与後4週間及びその後30週まで5週間毎に、血清トランスアミナーゼ(ALT)レベル及び尿中Cu含量を、全ての群において決定した。血清セルロプラスミン活性を、処置後4週間で測定した。

血清トランスアミナーゼ(ALT)レベルを、Hitachi 747 Clinical Analyzer(Hitachi, Tokyo, Japan)を使用するDGKC法(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)により決定した。

血清セルロプラスミン活性を、基質としてのo−ジアニシジン二塩酸(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメトキシ−ビフェニル)(Sigma-Aldrich, San Louis, MO, United States)により、Schosinsky and cols.(Clinical Chemistry 1974; 20(12): 1556-1563)に記載されたように決定した。吸光度を、分光計において540nmで測定した。

尿中銅含量を、原子吸光分光法(SIMAA 6000, from Perkin-Elmer GmbH, Bodenseewerk)により決定した。

殺処分後、肝臓を、組織学的分析のために切除した。

肝臓銅含量を、乾燥肝臓組織中において、原子吸光分光法(SIMAA 6000、from Perkin-Elmer GmbH, Bodenseewerk)及びTimm’sスルフィド銀染色(Danscher G. and Zimmer J. Histochemistry 1978; 55(1): 27-40)により決定した。

肝臓の構造を、ヘマトキシリン及びエオシンで染色された切片において評価した。

抗マウスCD45抗体(BioLegend, San Diego, USA;カタログナンバー103102)による免疫組織化学を、肝臓における炎症性浸潤を検出するのに行った。

抗マウスPanCk抗体(Invitrogen/Life Technologies, 18-0132, clon AE1/AE3)による免疫組織化学も、胆管細胞を検出するのに行った。

線維症を判定するために、コラーゲン定量用の方法として、従来のSirius Red染色を使用した。

図2に示されたように、トランスアミナーゼレベルは、AAV2/8−AAT−wtATP7B又はAAV2/8−AAT−ATP7B−T2を受けたマウスにおいて正常化されたが、AAV2/8−AAT−ATP7B−T1で処置された動物では正常化されなかった。さらに、尿中Cu濃度は、AAV2/8−AAT−wtATP7B、AAV2/8−AAT−ATP7B−T1、又はAAV2/8−AAT−ATP7B−T2を受けた動物において顕著に低下したが、AAV2/8−AAT−ATP7B−T1は、尿中Cu濃度を低下させるのにほとんど効率的ではなかった(図3)。セルロプラスミン活性は、AAV2/8−AAT−wtATP7B又はAAV2/8−AAT−ATP7B−T2を受けた動物において、処置後4週間で回復したが、AAV2/8−AAT−ATP7B−T1で処置された動物では回復しなかった(図4)。この結果は、ウェスタンブロット分析により確認された。ホロセルロプラスミンは、AAV2/8−AAT−wtATP7B又はAAV2/8−AAT−ATP7B−T2で処置されたマウスにおいて検出されたが、AAV2/8−AAT−ATP7B−T1で処置された動物では検出されなかった。一方、処置されなかったWDマウスでは、アポセルロプラスミン型のみを検出することができた。

一方、AAV2/8−AAT−wtATP7B、AAV2/8−AAT−ATP7B−T1、又はAAV2/8−AAT−ATP7B−T2の投与により、肝臓におけるCu含量は有意に減少したが、AAV2/8−AAT−ATP7B−T1は、肝臓におけるCu濃度を低下させるのにほとんど効率的ではなかった(図5)。この結果は、Timm’s染色後に得られた画像において確認された(図6B)。肝臓の組織学に関して、処置されなかった動物は、巨大な核を含有する巨大な肝細胞を伴う異常な肝臓アーキテクチャを示した。ベクターAAV2/8−AAT−wtATP7B又はAAV2/8−AAT−ATP7B−T2の投与により、肝臓の組織学の正常化がもたらされたが、AAV2/8−AAT−ATP7B−T1によっては、同正常化がもたらされなかった(図6A)。さらに、WD動物は、CD45陽性細胞により主に構成される強力な肝臓浸潤を表わした。浸潤は、リコンビナントウイルスベクターによる処置後に消失した(図7)。このため、AAVベクターの投与により、炎症性浸潤の顕著な減少がもたらされた。さらに、胆管増生及び肝臓線維症も、AAV2/8−AAT−wtATP7B、AAV2/8−AAT−ATP7B−T2、及びAAV2/8−AAT−ATP7B−T1で処置されたWDマウスにおいて顕著に低下した(図7)。

実施例4.ウィルソン病のメスマウスにおけるウイルスベクターAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)の治療効果 6週(6w)齢のメスATP7B−/−マウスを、各5匹のマウスの4つの群に分割した。群1〜3の動物に、ウイルスベクターAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)を静脈内処置した。各群に、種々の用量(それぞれ、1×1010、3×1010、及び1×1011vg/マウス)を受けさせた。第4の群は、処置しないままとした。野生型マウスの追加群を、対照群(WT)として処置せずに維持した。

ベクター投与後4週間及びその後投与後24週(マウスが30週齢になる)まで5週間毎に、血清トランスアミナーゼ(ALT)レベル及び尿中Cu濃度を、全ての群において、実施例3で記載されたのと同じ方法により決定した。

図8に示されたように、AAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)により、WDメスマウスにおいて、2つの最も高い用量(3×1010及び1×1011vg/マウス)でトランスアミナーゼレベルが正常化された。最も低い用量の1×1010vg/マウスにより、トランスアミナーゼレベルが有意に低下したが、肝臓の傷害は消えなかった。一方、3種類の用量での処置により、WTマウスに見出されるレベルに達するCu尿中排泄が低下した(図9)。

実施例5.ウィルソン病のメスマウスにおける、ウイルスベクターAAV2/8−AAT−wtATP7B及びAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)の治療効果の比較 2つの実験群を確立した。各実験群について、6週(6w)齢のメスATP7B−/−マウスを、各5匹のマウスの4つの群に分割した。3つの群に、試験されるウイルスベクターを静脈内処置した。各群に、種々の用量(それぞれ、1×1010、3×1010、及び1×1011vg/マウス)を受けさせた。第4の群は、処置しないままとした。野生型マウスの追加群を、対照群(WT)として処置せずに維持した。

第1の実験群(実験群1)において、処置を受けたWDマウスに、ベクターAAV2/8−AAT−wtATP7Bを投与した。第2の実験群(実験群2)において、処置を受けたWDマウスに、ベクターAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)を投与した。

処置後4週間で決定される血清セルロプラスミン活性及び処置後24週間で決定される肝臓Cu含量を、実施例3に記載されたのと同じ方法により測定した。

血清セルロプラスミン活性 血清セルロプラスミン活性は、最も高い用量のAAV2/8−AAT−wtATP7Bベクターの投与によってのみ修正された(図10A、実験群1)、2つの最も低い用量の投与後には、効果は観察されなかった。

逆に、AAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)ベクターにより、1×1010vg/マウスの最も低い用量で、セルロプラスミンレベルが有意に向上した。中間用量のベクターの投与により、セルロプラスミンレベルは正常化した。最も高い用量により、セルロプラスミン活性は、正常レベルを超えて向上した(図10B、実験群2)。

肝臓におけるCu濃度 その上、肝臓におけるCu濃度は、2つの最も高い用量のAAV2/8−AAT−wtATP7Bの投与により低下したが、正常化されなかった。最も低い用量では、効果が観察されなかった(図11A,実験群1)。対照的に、Cu濃度は、全ての試験された用量において、AAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)ベクターの投与後に低下するのが示された。最も高い用量では、レベルは、正常に近づいた(図11B、実験群2)。

したがって、AAV2/8−AAT−wtATP7Bベクターの1×1010vg/マウス用量は、血清セルロプラスミン活性の正常化及び肝臓におけるCu蓄積の減少の両方に関して、wt構築物についての「最適以下用量」であることが示された。一方、トランケート型を有するベクターにより、予期せず、前記最適以下用量において、統計学的に有意な治療効果が提供された。

実施例6.WDマウスにおけるウイルスベクターAAV2/8−AAT−wtATP7B及びAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)の治療効果の比較 6週(6w)齢のオスATP7B−/−マウスを、3つのマウス群に分割した。2つの群の動物それぞれを、ベクターAAV2/8−AAT−wtATP7B又はベクターAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)の最適以下静脈内用量(1×1010vg/マウス)で処置した。第3の群は、処置しないままとした。野生型マウスの追加群を、対照群(WT)として処置せずに維持した。

肝臓Cu含量を、実施例3で記載されたのと同じ方法により測定した。

図12に示されたように、最適以下用量で与えられたAAV2/8−AAT−wtATP7B及びAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)ベクターの両方により、WDマウスの肝臓における銅蓄積が減少したが、AAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)により、AAV2/8−AAT−wtATP7Bで提供された減少より有意に大きい肝臓銅含量の減少が提供された。

実施例7.WDマウスにおけるウイルスベクターAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)及びAAV−AAT−coATP7B(d57−486)の治療効果の比較 6週(6w)齢のオスATP7B−/−マウスを、3つのマウス群に分割した。2つの群の動物それぞれを、ベクターAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)及びAAV−AAT−coATP7B(d57−486)の最適以下静脈内用量(1×1010vg/マウス)で処置した。第3の群は、処置しないままとした。野生型マウスの追加群を、対照群(WT)として処置せずに維持した。

肝臓Cu含量を、実施例3で記載されたのと同じ方法により測定した。

図13に示されたように、最適以下用量で与えられたAAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)及びAAV2/8−AAT−coATP7B(d57−486)ベクターの両方により、WDマウスの肝臓における銅蓄積が減少したが、AAV2/8−AAT−coATP7B(d57−486)により、AAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)で提供された減少より有意に大きい肝臓銅含量の減少が提供された。

実施例8.WDマウスにおけるコドン最適化ウイルスベクターAAV2/8−AAT−coATP7B(d57−486)の治療効果 6週(6w)齢のオスATP7B−/−マウスを、5つのマウス群に分割した。4つの群の動物それぞれを、ベクターAAV2/8−AAT−wtATP7B、AAV2/8−AAT−coATP7B、AAV2/8−AAT−ATP7B(d57−486)、又はAAV2/8−AAT−coATP7B(d57−486)の最適以下静脈内用量(1×1010vg/マウス)で処置した。第5の群は、処置しないままとした。野生型マウスの追加群を、対照群(WT)として処置せずに維持した。

血清セルロプラスミン活性を、実施例3で記載されたのと同じ方法により測定した。

図14に示されたように、トランケートされたATP7B−T2のヌクレオチド配列を有する2つのベクターにより、最適以下用量でWDマウスに投与された場合、セルロプラスミンオキシダーゼ活性が回復した。一方、完全なヒトATP7Bをコードするヌクレオチド配列を有するベクターによっては、同じ処置条件で投与された場合、セルロプラスミン活性の有意な改善が何ら提供されなかった。

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