細菌毒素由来輸送配列を使用する生物活性剤の送達の系および方法

申请号 JP2016250581 申请日 2016-12-26 公开(公告)号 JP2017093449A 公开(公告)日 2017-06-01
申请人 マースニー,ランドル,ジェイ; MRSNY,Randall,J; マームード,タヒール; MAHMOOD,Tahir; 发明人 マースニー,ランドル,ジェイ; マームード,タヒール;
摘要 【課題】コレラ菌Cholix遺伝子の非毒性突然変異体形態(ntCholix)、アミノ酸A386においてトランケートされたCholixのバリアント(Cholix386)および 生物 活性薬学的治療剤の腸送達を向上させるための他の種々のCholix由来ポリペプチド配列の使用。 【解決手段】巨大分子用量を注射なしで送達する能 力 を有する、積み荷、例えば(限定されるものではないが)siRNA又はアンチセンス分子を、活性が要求される細胞内区画中に送達する能力、ならびに他の場合においてほとんどの 生物膜 の障壁特性に起因して妨害されている、生物膜を越えるCholix由来のポリペプチド配列を含むナノ粒子およびデンドリマーベースの担体。 【選択図】図1
权利要求

トランスポータードメインおよび積み荷を含む単離された送達構築物において、前記積み荷を標的化された細胞内区画中に送達し得ることを特徴とする構築物。トランスポータードメインおよび巨大分子を含む単離された送達構築物において、前記巨大分子を注射なしで対象の生物学的区画に送達し得ることを特徴とする構築物。請求項1または2のいずれか一項に記載の構築物において、開裂可能なリンカーをさらに含むことを特徴とする構築物。請求項1または2のいずれか一項に記載の構築物において、前記トランスポータードメインはCholix由来ポリペプチド配列を含むことを特徴とする構築物。請求項1に記載の構築物において、前記積み荷は、巨大分子、小分子、siRNA、PNA、miRNA、DNA、プラスミドおよびアンチセンス分子からなる群から選択されることを特徴とする構築物。標的化された細胞内区画中への積み荷の送達のためのものであることを特徴とする、請求項1に記載の構築物の使用。生物膜を越えるナノ粒子およびデンドリマーベースの担体の送達を介する積み荷の送達のためのものであることを特徴とする、請求項1に記載の融合物または構築物の使用。生物膜を越える積み荷の送達のための、トランスポータードメインによりデコレートされており、リンカーによりデコレートされているかまたはされていないことを特徴とする、請求項6に記載のナノ粒子およびデンドリマーベースの担体の使用。請求項1乃至5の何れかの何れか1項に記載の送達構築物および薬学的に許容可能な担体を含むことを特徴とする医薬組成物。送達構築物をコードするポリヌクレオチドにおいて、前記送達構築物は、トランスポータードメインおよび積み荷を含み、前記構築物は、前記積み荷を標的化された細胞内区画中に送達し得ることを特徴とするポリヌクレオチド。請求項10に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とする発現ベクター。請求項11に記載の発現ベクターを含むことを特徴とする単離された宿主細胞。

細胞単層の頂端表面から側底表面の方向に極性上皮細胞を通って治療用積み荷を送達させるための単離された構築物であって、前記構築物が成熟Cholix毒素のアミノ酸残基Val1−Ala386からなる非毒性Cholix毒素と、これにカップリングされた治療用積み荷とを含むことを特徴とする構築物。請求項1に記載の単離された送達構築物において、前記送達が注射なしで行われることを特徴とする送達構築物。請求項1に記載の単離された送達構築物において、前記治療用積み荷が巨大分子、小分子、siRNA、PNA、miRNA、DNA、プラスミドおよびアンチセンス分子からなる群から選択されることを特徴とする送達構築物。請求項1に記載の単離された送達構築物において、前記治療用積み荷がサイトカインであることを特徴とする送達構築物。細胞単層の頂端表面から側底表面の方向に極性上皮細胞を通って治療用積み荷を送達させるための医薬組成物であって、薬学的に有効量の請求項1に記載の単離された送達構築物と、薬学的に許容可能な担体とを含むことを特徴とする医薬組成物。経口投与、局所投与、経投与、鼻腔内投与、バッカル投与、舌下投与、または眼球投与のためのものであることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。経口投与用であることを特徴とする、請求項6に記載の医薬組成物。カプセル剤または錠剤として製剤化されていることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。前記単離された送達構築物を約1μgないし約1g含むことを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。前記単離された送達構築物が約10μgないし約100mgであることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。細胞単層の頂端表面から側底表面の方向に極性上皮細胞を通って治療用積み荷を送達させるための単離された構築物であって、前記構築物が成熟Cholix毒素をGlu581で欠失させた非毒性Cholix毒素と、これにカップリングされた治療用積み荷とであることを特徴とする構築物。

说明书全文

関連出願の相互参照 本出願は、参照により全体として本明細書に組み込まれる、2010年9月15日に出願された米国仮特許出願第61/403,394号明細書の利益を主張する。

本発明の分野は、1つには、新規薬学的適用についての戦略に関する。より具体的には、本発明は、コレラ菌(Vibrio cholera)Cholix遺伝子の非毒性突然変異体形態(ntCholix)、アミノ酸A386においてトランケートされたCholixのバリアント(Cholix386)および生物活性治療剤の腸送達を向上させるための他の種々のCholix由来ポリペプチド配列の使用に関する。重要なことに、本明細書に記載の系および方法は、以下のもの、すなわち、巨大分子用量を注射なしで送達する能;積み荷、例えば(限定されるものではないが)siRNAまたはアンチセンス分子を、活性が要求される細胞内区画中に送達する能力;ならびに他の場合においてほとんどの生物膜の障壁特性に起因して妨害されている、生物膜を越えるナノ粒子およびデンドリマーベースの担体の送達を提供する。

現在承認されている大多数の小分子薬物は、小腸の粘膜を越えて吸収されて全身循環への送達を提供する。実際、小分子薬物は、それらの安定性および腸粘膜を越える効率的な吸収に基づき選択される。生物活性ポリペプチド(アミノ酸残基から構成されるポリマーを指し;典型的にはタンパク質またはペプチドと定義される)の類似の経口送達が、薬学産業の長期にわたる目標である。胃腸(GI)管は食事タンパク質およびペプチドを消化するように設計されているため、小分子により達成可能なものと類似の方式における腸からの治療タンパク質およびペプチド取り込みの実現性を制限する多数の物理的、生理学的、および生物学的障壁が存在する;Mahato,R.I.ら,Crit Rev Ther Drug Carrier Syst,20(2−3):p.153−214(2003年)。

胃を経る治療タンパク質およびペプチドを保護するために使用することができ、それらが小腸中の上皮細胞の吸収表面に到達することを可能とし、それらを食事タンパク質およびペプチドを分解するように機能する胃および腸環境から分離する多数の技術が同定されている。しかしながら、残念ながら、細胞のこの単一の単層を越える効率的な輸送は、内腔表面におけるポリペプチドのエンドソーム取り込み後の分解性リソソーム区画への細胞内トラフィッキングに起因して実質的な障壁のままである;Woodley,J.F.,Crit Rev Ther Drug Carrier Syst,11(2−3):p.61−95(1994年)。実際、この障壁は、タンパク質およびペプチドの取り込みを、それらの巨大分子がアミノ酸およびジまたはトリペプチドトランスポーターを介する吸収のために十分に分解され得るまで阻害するように設計されている。このことに関して、腸粘膜の物理的、生理学的、および生物学的障壁を克服するための多数の試みが試験されている。

腸粘膜の細胞障壁を構成する、単層上皮を越える2つの基本経路が存在する。具体的には、分子は、被覆粘膜層を越えると、隣接する上皮細胞間を移動し得(傍細胞経路)、また細胞質内でトラフィックするが含有物を細胞質と混ぜない一連の小胞を介して細胞を経て移動し得る(経細胞経路);T.Jungら,Eur J Pharm Biopharm,50:147−160(2000年)。換言すると、両経路において、輸送タンパク質またはペプチド治療剤は、細胞中に流入するのでなく、細胞の細胞質外部の環境内に留まる。

傍細胞経路を経る治療タンパク質およびペプチド移動の不定期移動に対する主要な障壁は、タイトジャンクション(TJ)として公知の、それらの細胞の頂端側の隘路におけるタンパク質の複合体である。TJ構造の一過的開放および閉鎖が腸上皮を越えるペプチドの輸送を促進し得る一方、このアプローチは重要な制限を有する、すなわち、例えば、これは約5kDa超の分子について十分に機能せず;これは腸内腔から体内への材料の非選択的流入についての潜在性を有し;これは腸上皮のごくわずかの表面積のみが関与する経路を表す。

経細胞経路を介する細胞を越えるタンパク質またはペプチド治療物の不定期移行に対する主要な障壁は、小胞の含有物を分解性(リソソーム)経路に送達するデフォルトの小胞トラフィッキングである。傍細胞経路と比較すると、小胞経細胞経路を経る移動は、直径100nmほども大きい材料を収容し得、本質的に上皮細胞表面全体が関与し、小胞流入についての受容体−リガンド相互作用の使用を介する材料の取り込みにおいて高度に選択的であり得る。したがって、経細胞経路は、分解性経路を回避することができる場合、タンパク質またはペプチド治療剤の上皮輸送について極めて魅力的である。

一部の病原菌は、宿主の感染を促進および/または安定化するように機能する分泌されたポリペプチド毒性因子の効率的なトランスサイトーシスにより実証されるとおり、トラフィッキング障壁問題を解消した。外毒素は、強力な毒性因子として機能する種々の微生物により放出されるタンパク質のクラスを表す。外毒素は、ヒトにおいて強力な毒素として作用する能力により多細胞生物に対して機能する;Roszak,D.B.,and Colwell,R.R.,Microbiol Rev 51:365−379(1987年)。これらのタンパク質は、一般に、タンパク質合成の選択的撹乱を含む機序を介して宿主細胞を殺傷または不活化する。したがって、数種の分子のみが殺傷に要求され、細菌外毒素が公知の最も毒性のある作用物質の一部である観察と一致する。ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria)からのジフテリア毒素(DT)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)からの外毒素A(PE)、および近年同定された、コレラ菌(Vibrio cholera)からのCholixと称されるタンパク質からなるタンパク質のファミリーからなるそれらのタンパク質のサブセットは、伸長因子2(EF2)のADP−リボシル化を介して宿主細胞を毒性化するように機能する;Yates,S.P.ら,Trends Biochem Sci,31:123−133(2006年)。これらの外毒素は、標的化、流入、および宿主細胞の毒性化における特異的機能を有すると同定されている別々のドメインに折り畳まれるアミノ酸の単鎖として合成される。

緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)からの外毒素A(PE)の生物学が、近年記載されている;Mrsny,R.J.ら,Drug Discov Today,7(4):p.247−58(2002年)。PEは、66828.11 Daの理論分子量(MW)、5.28の等電点(pI)を有し、ドメインI(Ala1−Glu252)、ドメインII(Gly253−Asn364)、ドメインIII(Gly405−Lys613、ADP−リボシルトランスフェラーゼ活性部位を含有)で示される3つの別々のドメイン、ならびにIbループとして公知の、ドメインIIおよびIIIを結合する短いジスルフィド結合ループ(Ala365−Gly404)に機能的に折り畳まれる613アミノ酸の単鎖から構成される。pH8.0におけるこれらのドメインの組織化が、約1.5Åにおける解像度における結晶回折から決定された;Wedekind,J.E.ら,J Mol Biol,314:823−837(2001年)。ドメインI(Ia+Ib)は13のストランドからなるβ−ロールから形成されたコアを有し、ドメインIIは6つのα−ヘリックスから構成され、ドメインIIIは複合体α/β−折り畳み構造を有する。研究は、PEのモジュール性質が別々のドメイン機能を可能となるという着想を支持する、すなわち、ドメインIは宿主細胞受容体に結合し、ドメインIIは膜トランスロケーションに関与し、ドメインIIIはADP−リボシルトランスフェラーゼとして機能する。PEは、緑膿菌(P.aeruginosa)により上皮細胞頂端表面のすぐ近くで、おそらく環境信号および/または細胞シグナルに応答して分泌されると考えられる;Deng,Q.and J.T.Barbieri,Annu Rev Microbiol,62:p.271−88(2008年)。PEが分泌されると、PEのドメインIが膜タンパク質α2−マクログロブリン、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)またはCD91としても公知のタンパク質に結合した後、細胞中への内在化が生じる;例えば、FitzGerald,D.J.ら,J Cell Biol,129(6):p.1533−41(1995年);Kounnas,M.Z.ら,J Biol Chem,267(18):p.12420−3(1992年)参照。内在化に続き、PEは、リソソームへのトラフィッキングを回避し、代わりに細胞の側底表面に効率的に送達され、この表面においてPEが生物学的活性形態で放出される;Mrsny,R.J.ら,Drug Discov Today,7(4):p.247−58(2002年)。PEは、上皮を越えると、粘膜下空間内のCD91陽性細胞(マクロファージおよび樹状細胞)中に流入することにより毒性因子として機能し、次いでこの細胞中でアンフォールディング経路と交差し、この経路がドメインIIIの細胞質送達をもたらす;例えば、Mattoo,S.,Y.M.Lee,and J.E.Dixon,Curr Opin Immunol,19(4):p.392−401(2007年);Spooner,R.A.ら,Virol J,3:p.26(2006年)参照。

コレラ菌(Vibrio cholerae)細菌は、急性の生命を脅かす重度の様下痢を引き起こし得るその名にちなんだ毒性作用物質コレラ毒素(CT)が最も公知である。CTは、上皮の頂端表面において細胞表面GM1ガングリオシド構造に結合するBサブユニットのペンタマーと組織化された単一のAサブユニットから構成されるタンパク質複合体である。CTは、コレラ菌(V.cholera)により、CTXfまたはCTXφと呼ばれる溶原性バクテリオファージのバリアントを担持するコレラ菌(V.cholera)の毒性株との遺伝子の水平伝播後に分泌される。しかしながら、近年のコレラ発生は、一部の血清学的グループの株(non−O1、non−O139)がCTを発現するのではなく、他の毒性因子を使用することを示唆している。non−O1、non−O139の環境および臨床データの詳細な分析は、PEとのいくらかの類似性を有する新規推定分泌外毒素の存在を示唆した。

Jorgensen,R.ら,J Biol Chem,283(16):10671−10678(2008年)は、コレラ菌(V.cholera)の一部の株が、実際、PEとの類似性を有し、Cholix毒素(Cholix)と称されるタンパク質毒素を含有することを報告した。PEと比較して、Cholixは、わずかに大きい理論MW(70703.89Da)およびわずかに高い酸性理論pI(5.12)を有する。634アミノ酸のCholixタンパク質の結晶構造は、約2Åに解像された。ドメイン構造および組織化は、PEといくぶん類似していることが見出された。すなわち、ドメインI(Val1−Lys265)、ドメインII(Glu266−Ala386)、ドメインIII(Arg426−Lys634)、およびIbループ(Ala387−Asn425)。PEとの追加の構造類似性には、細胞活性化のためのフリンプロテアーゼ部位;毒素を宿主細胞の小胞体に送り得るC末端KDEL配列;およびドメインIII内のADP−リボシルトランスフェラーゼ活性部位が含まれる。

際立っていることに、PEおよびCholixは、アミノ酸アラインメントによる有意な遺伝的および限定的類似性を共有しない。PE様ヌクレオチド配列についてのコレラ菌(V.cholera)ゲノムの探索は、いかなる種類の一致ももたらすことはなかった。PE様タンパク質がこの細菌により生成され得るという手掛かりは、タンパク質配列レベルにおいてのみ存在する。この場合でも、PEおよびCholixのアミノ酸配列間で32%の相同性のみが存在し、類似性(42%相同性)は、ドメインIIIのADPリボシル化エレメントに集中し、この2つのタンパク質についてドメインIおよびIIのほとんどのセグメントについてアミノ酸相同性は低レベルである(約15〜25%)。さらに、PEに対するこのCholixの全配置がいっそうより目立ち、それというのも、類似のエレメントを有するそれら2つのタンパク質が2つの別々の方向に由来したためであり、すなわち、緑膿菌(P.aeruginosa)はGCリッチの細菌である一方、コレラ菌(V.cholera)はATリッチである。これら2つの毒素が2つの異なる遺伝的方向から進化してほぼ同一の構造に至るが32%のアミノ酸相同性のみを示すことは、CholixおよびPEの構造および機能的類似性が類似の遺伝的背景を介するよりも類似の生存圧力に基づく可能性が高いことを示唆する。これら2つのタンパク質についてのドメインIおよびIIの極めて低いアミノ酸相同性は、これら2つのタンパク質の折り畳み構造の機能的重要性を強調し、それらのアミノ酸配列の機能的重要性を強調しない。

CholixおよびPEのC末端部分は、比較可能な様式においてEF2のADP−リボシル化を介して細胞の毒性化において機能すると考えられる。トランスフェリン受容体に指向された抗体へのコンジュゲーションを介する癌細胞にCholixの後半部(ドメインI欠失)を標的化した近年の研究は、EF2のADP−リボシル化に関与するPEおよびCholixのC末端部分が実際に機能的に類似することを示唆する;Sarnovsky,R.ら,Cancer Immunol Immunother 59:737−746(2010年)。Cholixのこの遠位部分がPEと36%同一であり、50%類似する一方、動物内で生成されたポリクローナル抗血清およびPEのこの同一の遠位部分に対する中和免疫応答を有する患者からの血清は、Cholixのこの後半部分と交差反応することはなかった。同様に、このCholixに対して生成された抗血清は、PEと交差反応することはなかった。このデータは、PEおよびCholixの両方が類似の機序を介して細胞を毒性化する能力を共有することならびにそれら2つのタンパク質が共通のコア構造を共有し、それらのタンパク質の表面において発現されるそれらのエレメントの目立った差異が存在することを示唆する。

PEを使用する先行研究は、この毒素がインビトロおよびインビボで毒性化なしで上皮細胞の極性単層を越えて容易に輸送されることを実証しているため;Mrsny,R.J.ら,Drug Discov Today,7(4):p.247−58(2002年)、本発明者らは、Cholixの特性および生物学をさらに評価するための研究を開始し、Cholixの近位部分の機能的局面に特に集中し;具体的には、腸上皮単層を越える輸送を促進するためのドメインIおよびIIの使用である。ドメインIおよびIIaは、上皮トランスサイトーシスに要求されるPEの唯一の必須エレメントであると考えられるため、Cholix中のそれらの同一のドメインを試験することは特に重要であった。上記のとおり、ドメインIおよびIIaの一部であるとみなされる領域のほとんどにわたり約15〜25%のみのアミノ酸相同性が存在する。本発明者らは、一連の研究を介してドメインを試験した。すなわち、インビボでの上皮表面への適用後のCholixの生物学的分布の追跡、インビトロでの極性上皮細胞単層を越えるCholix経細胞輸送特性の評価、およびCholixタンパク質中にそのC末端において遺伝的に統合された生物学的活性積み荷の送達。Cholixの最初の2つのドメイン(アミノ酸1〜386)を緑色蛍光タンパク質(GFP)に遺伝子融合することまたはそれらの発現ドメインを100nm直径ラテックスビーズに化学結合させることにより作成された予備データは、100nmラテックスビーズに付着したCholixがインビトロおよびインビボで腸上皮単層を越えて輸送されることが観察されることを実証した。トランスサイトーシスプロセスの間およびその後にGFP積み荷がその蛍光特性を保持したことも、Cholixが極性上皮細胞を経る非分解性(または寛容)トラフィッキング経路を利用するという主張を支持する。この成果は、生物学的活性積み荷を身体の上皮障壁、例えば気道および胃腸管の上皮障壁を越えて送達するためのツールとしてのその(反復)適用に良い前兆である。

また、予備研究から重要な留意点は、PEとCholixとの間の明らかな細胞受容体相互作用の差異を示唆する観察である。上記のとおり、PEは、PEのドメインIが膜タンパク質α2−マクログロブリン、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)またはCD91としても公知のタンパク質に結合した後に上皮細胞中に流入する。Cholixについての表面受容体の正確なアイデンティティーが確立されていない一方、予備研究は、Cholixが、CD91を発現する一部の細胞系を毒性化せず、CD91を発現する一部の細胞系を毒性化することを示唆する。CD91の他に、どの他の受容体がPEの上皮トランスサイトーシスに関与し得るかは現在不明確である。これにもかかわらず、CholixおよびPEは、別々の細胞受容体相互作用を有すると考えられ、経口生物製剤および生物活性剤の細胞内送達の両方についての極めて異なる予期されない適用を示唆するために十分な明確な差異を実証する。

本発明は、Cholixの膜トラフィッキング特性およびCholixが気道および腸の極性上皮細胞を越えて効率的に輸送される実証に基づき、Cholix由来ポリペプチド配列(例として、そのタンパク質の近位エレメント)をタンパク質およびナノ粒子の効率的なトランスサイトーシスに使用することができることを示唆し、新規薬学的適用についての戦略を表す。

例えば、本発明の一態様は、トランスポータードメイン(例えば、Cholix由来ポリペプチド配列)および積み荷を含む単離された送達構築物(例えば、遺伝子融合物または化学構築物)を提供することである。輸送ドメインおよび積み荷の両方は、変動する化学量論比および空間的組織化で発現/結合させることができる。異なる積み荷を同一の構築物上で発現/結合させることもできる。好ましい実施形態において、そのような積み荷には、タンパク質、ペプチド、小分子、siRNA、PNA、miRNA、DNA、プラスミド、およびアンチセンスの1つ、またはいずれかが含まれ得る。

本発明の別の態様は、積み荷、例えば巨大分子を注射なしで送達する能力を提供することである。

本発明の別の態様は、積み荷、例えば(限定されるものではないが)巨大分子、小分子、siRNA、PNA、miRNA、DNA、プラスミド、およびアンチセンス分子を、活性が要求される細胞内区画中に送達する能力を提供することである。

本発明の別の態様は、生物膜を越えるナノ粒子および/またはデンドリマーベースの担体の送達を介する積み荷の輸送を提供することである。

本発明における使用に企図される投与/送達の方法には、例えば、経口投与、経投与、鼻腔内投与、バッカル投与、舌下投与、眼球投与(例として、限定されるものではないが、ガラス体、膜、結膜、強膜、ならびに眼の前方および後方区画への送達)、局所適用、注射(針または無針)、静脈内注入、極微針適用、薬物デポー配合物を介する投与、鞘内適用を介する投与、腹腔内適用を介する投与、関節内適用を介する投与、細胞内送達、血液脳関門を越える送達、血液網膜関門を越える送達、局部送達および作用のための投与、ならびに/または全身送達のため送達が含まれる。

さらに別の態様において、本発明は、送達構築物および薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。

図1は、積み荷との融合を促進するためのntCholixのC末端修飾に使用される戦略の概要を示し、この例において、積み荷はAlexa488蛍光色素である。

図2は、インビトロでの極性腸上皮細胞を越えるntCholix−Alexa488(登録商標)の輸送を示す。Caco−2細胞単層を試験材料に4時間曝露した。輸送された材料の百分率を、試料中に存在する蛍光の標準曲線分析により決定し、平均(N=4)として表した。BSA−Alexa488を対照として使用した。

当業者が認識するとおり、前記の記載は、本発明のある好ましい実施形態を詳細に記載し、したがって代表例にすぎず、本発明の実際の範囲を示すものではない。本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的のものにすぎず、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定するものではないことも理解すべきである。

特に定義のない限り、本明細書において使用される全ての技術および科学用語は、本発明が属する分野の当業者により一般に理解される意味を有する。本明細書において使用される以下の用語は、特に規定のないかぎりそれらに属する意味を有する。

本発明の根底をなす研究は、生物活性治療剤の腸送達を向上させるための単離された送達構築物を調製するために使用すべきトランスポータードメインとしてのCholix由来ポリペプチド配列の使用に関する。重要なことに、本明細書に記載の系および方法は、以下のもの、すなわち、巨大分子用量を注射なしで送達する能力;「積み荷」を、活性が要求される細胞内区画中に送達する能力;ならびに他の場合においてほとんどの生物膜の障壁特性に起因して妨害されている、生物膜を越えるナノ粒子および/またはデンドリマーベースの担体の送達を提供する。

成熟Cholix毒素(「Cholix」)は、コレラ菌(Vibrio cholerae)により分泌され、3つの主要な球形ドメイン(Ia、II、およびIII)ならびにドメインIIおよびIIIを連結する1つの小さいサブドメイン(Ib)から構成される極端に活性なモノマータンパク質(分子量70kD)である。成熟Cholix毒素のアミノ酸配列は、Jorgensen,R.ら,J Biol Chem,283(16):10671−10678(2008年)およびそれに引用される参照文献に提供されている。本発明の単離された送達構築物の調製において使用されるCholix由来ポリペプチド配列は、成熟Cholixの報告された634アミノ酸タンパク質配列に由来する。

したがって、本発明の送達構築物はトランスポータードメインを含む。本明細書において使用される「トランスポータードメイン」は、ある機能、例えば、細胞認識(すなわち、受容体結合ドメインを含む)およびトランスサイトーシス(すなわち、トランスサイトーシスドメインを含む)を遂行し得る構造ドメインを指す。一般に、本発明の送達構築物の調製において使用すべきトランスポータードメインは、Cholixの機能ドメイン、例えばIaおよびIIに対応する構造ドメインを有するCholix由来ポリペプチド配列である。

Cholix機能ドメインに対応する分子の一部に加え、本発明の送達構築物は、対象の生物学的区画への送達のための巨大分子をさらに含み得る。ある実施形態において、巨大分子は、核酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、多糖、および脂質の群から選択される。さらなる実施形態において、ポリペプチドは、注射により対象に一般に投与されるポリペプチドホルモン、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、および凝固因子からなる群から選択される。それらの巨大分子の全ての配列は当業者に周知であり、送達構築物へのそれらの巨大分子の付着は、標準技術を使用する当業者の技能の十分範囲内である。

巨大分子は、細胞結合もトランスサイトーシス活性も撹乱しない送達構築物の任意の部分中に導入することができる。巨大分子は、開裂可能なリンカーを介して送達構築物の残部に連結される。「リンカー」は、2つの他の分子を共有的に、またはイオン、ファン・デル・ワールスもしくは水素結合を介して結合させる分子、例えば、5’末端においてある相補的配列および3’末端において別の相補的配列にハイブリダイズし、ひいては2つの非相補的配列を結合させる核酸分子を指す。「開裂可能なリンカー」は、分解またはそうでなければ切断して開裂可能なリンカーにより連結された2つの構成成分を分離することができるリンカーを指す。開裂可能なリンカーは、一般に、酵素、典型的にはペプチダーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、リパーゼなどにより開裂される。開裂可能なリンカーは、環境信号、例えば、温度、pH、塩濃度などの変化などにより開裂することもでき、それは、極性上皮膜を越える送達構築物のトランスサイトーシス後にそのような環境の変化が存在する場合である。

ある実施形態において、送達構築物は、核酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、脂質、および有機小分子からなる群から選択される第2の巨大分子ならびに第2の開裂可能なリンカーをさらに含み、前記第2の開裂可能なリンカーにおける開裂は、前記第2の巨大分子を前記構築物の残部から分離する。ある実施形態において、第1の巨大分子は第1のポリペプチドであり、前記第2の巨大分子は第2のポリペプチドである。ある実施形態において、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、会合してマルチマーを形成する。ある実施形態において、マルチマーはダイマー、テトラマー、またはオクタマーである。さらなる実施形態において、ダイマーは抗体である。

ある実施形態において、巨大分子は、上皮細胞の側底膜に存在する酵素により開裂可能でないように選択することができる。例えば、本実施例に記載のアッセイを使用してそのような開裂酵素が送達すべき巨大分子を開裂し得るかどうかを定型的に試験することができる。開裂し得る場合、開裂酵素により認識される不所望なアミノ酸配列を排除するように巨大分子を定型的に変化させることができる。次いで、変化した巨大分子を試験して当分野において定型的な方法を使用してそれが活性を保持することを確保することができる。

ある実施形態において、第1および/または第2の開裂可能なリンカーは、極性上皮細胞の頂端側上よりも極性上皮細胞の側底上で高い活性を示す酵素により開裂可能である。ある実施形態において、第1および/または第2の開裂可能なリンカーは、極性上皮細胞の頂端側上よりも細胞膜中で高い活性を示す酵素により開裂可能である。

ある実施形態において、開裂可能なリンカーは、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質巨大分子を送達する場合、送達すべき巨大分子中に存在する配列を含む開裂可能なリンカーの使用を回避するようにその配列に基づき選択することができる。例えば、巨大分子がAALを含む場合、開裂可能なリンカーはこの配列を認識しない酵素により開裂されるように選択することができる。

Cholix機能ドメインに対応する分子の一部に加え、本発明の送達構築物は、活性が要求される細胞内区画中への送達のための「積み荷」をさらに含み得る。本明細書において使用される「積み荷」には、限定されるものではないが、巨大分子、小分子、siRNA、PNA、miRNA、DNA、プラスミドおよびアンチセンス分子が含まれる。本発明により送達することができる積み荷の他の例には、限定されるものではないが、抗新生物化合物、例えばニトロソウレア、例えば、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾトシン;メチルヒドラジン、例えば、プロカルバジン、ダカルバジン;ステロイドホルモン、例えばグルココルチコイド、エストロゲン、プロゲスチン、アンドロゲン、テトラヒドロデスオキシカリコステロン(tetrahydrodesoxycaricosterone);免疫活性化合物、例えば免疫抑制薬、例えば、ピリメタミン、トリメトプテリン(trimethopterin)、ペニシラミン、シクロスポリン、アザチオプリン;および免疫刺激薬、例えば、レバミゾール、ジエチルジチオカルバメート、エンケファリン、エンドルフィン;抗菌化合物、例えば抗生物質、例えば、β−ラクタム、ペニシリン、セファロスポリン、カルバペニム(carbapenim)およびモノバクタム、β−ラクタマーゼ阻害剤、アミノグリコシド、マクロライド、テトラサイクリン、スペクチノマイシン;抗マラリア薬、抗アメーバ薬;抗原虫薬;抗真菌薬、例えば、アンホテリシンβ、抗ウイルス薬、例えば、アシクロビル、イドクスウリジン、リバビリン、トリフルリジン、ビダルビン(vidarbine)、ガンシクロビル;抗寄生虫薬;駆虫薬(antihalmintic);放射性医薬品;胃腸薬;血液学的化合物;免疫グロブリン;血液凝固タンパク質、例えば、抗血友病因子、第IX因子複合体;抗凝固薬、例えば、ジクマロール、ヘパリンNa;フィブロリシン(fibrolysin)阻害剤、例えば、トラネキサム酸;心血管薬;末梢抗アドレナリン作動薬;中枢作用降圧薬、例えば、メチルドパ、メチルドパHCl;降圧直接血管拡張薬、例えば、ジアゾキシド、ヒドララジンHCI;レニン−アンギオテンシン系に影響する薬物;末梢血管拡張薬、例えば、フェントラミン;抗狭心症薬;強心配糖体;強心性血管拡張薬、例えばアムリノン、ミルリノン、エノキシモン、フェノキシモン、イマゾダン、スルマゾール;抗不整脈薬;カルシウム流入遮断剤;血中脂質に影響する薬物、例えば、ラニチジン、ボセンタン、レズリン(rezulin);呼吸器薬;交感神経様作用薬、例えば、アルブテロール、ビトルテロールメシル酸塩、ドブタミンHCl、ドーパミンHCl、エフェドリンSo、エピネフリン、フェンフルラミンHCl、イソプロテレノールHCl、メトキサミンHCl、二酒石酸ノルエピネフリン、フェニレフリンHCl、リトドリンHCl;コリン模倣薬、例えば、アセチルコリンCl;抗コリンエステラーゼ薬、例えば、エドロホニウムCl;コリンエステラーゼ再活性化剤;アドレナリン遮断薬、例えば、アセブトロールHCl、アテノロール、エスモロールHCl、ラベタロールHCl、メトプロロール、ナドロール、フェントラミンメシル酸塩、プロパノロールHCl;抗ムスカリン薬、例えば、臭化メチルアニソトロピン、アトロピンSOsub.4、クリニジウムBr、グリコピロレート、イプラトロピウムBr、スコポラミンHBr;神経筋遮断薬;脱分極薬、例えば、アトラクリウムベシル酸塩、ヘキサフルオレニウムBr、ヨウ化メトクリン、サクシニルコリンCl、ツボクラリンCl、ベクロニウムBr;中枢作用筋弛緩薬、例えば、バクロフェン;神経伝達物質および神経伝達作用剤、例えば、アセチルコリン、アデノシン、アデノシン三リン酸;アミノ酸神経伝達物質、例えば、興奮性アミノ酸、GABA、グリシン;生体アミン神経伝達物質、例えば、ドーパミン、エピネフリン、ヒスタミン、ノルエピネフリン、オクトパミン、セロトニン、チラミン;ニューロペプチド、一酸化窒素、K.sup.+チャネル毒素;抗パーキンソン薬、例えば、アマルチジン(amaltidine)HCl、ベンズトロピンメシル酸塩、カルビドパ;利尿薬、例えば、ジクロルフェナミド、メタゾラミド、ベンドロフルメチアジド、ポリチアジド;抗偏頭痛薬、例えば、カルボプロストトロメタミンメシル酸塩、メチセルジドマレイン酸塩が含まれる。本発明の送達構築物のトランスポータードメインは、一般に、受容体結合ドメインを含む。受容体結合ドメインは、限定されるものではないが上皮細胞の頂端膜上に存在する細胞表面受容体に結合することが当業者に公知の任意の受容体結合ドメインであり得る。好ましくは、受容体結合ドメインは細胞表面受容体に特異的に結合する。受容体結合ドメインは、送達構築物のエンドサイトーシスを可能とするために十分な親和性で細胞表面受容体に結合すべきである。

ある実施形態において、受容体結合ドメインは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、脂質、炭水化物、もしくは有機小分子、またはそれらの組合せを含み得る。上皮細胞の頂端膜上に存在する細胞表面受容体に結合するこれらの分子のそれぞれの例は、当業者に周知である。好適なペプチドまたはポリペプチドには、限定されるものではないが、細菌性毒素受容体結合ドメイン、例えばPE、コレラ毒素、Cholix毒素、ボツリヌス毒素、ジフテリア毒素、志賀毒素、志賀様毒素などからの受容体結合ドメイン;抗体、例としてモノクローナル、ポリクローナル、および単鎖抗体、またはそれらの誘導体、成長因子、例えばEGF、IGF−I、IGF−II、IGF−IIIなど;サイトカイン、例えばIL−1、IL−2、IL−3、IL−6など;ケモカイン、例えばMIP−1a、MIP−1b、MCAF、IL−8など;ならびに他のリガンド、例えばCD4、免疫グロブリンスーパーファミリーからの細胞接着分子、インテグリン、IgA受容体に特異的なリガンドなどが含まれる。当業者は、受容体結合ドメインが結合する受容体の発現パターンに基づき適切な受容体結合ドメインを選択することができる。

受容体結合ドメインは、限定されるものではないがそのような分子の付着に有用であり得ることが当業者に公知の任意の方法または手段により送達構築物の残部に付着させることができる。ある実施形態において、受容体結合ドメインは、送達構築物の残部と一緒に融合タンパク質として発現される。そのような実施形態は、受容体結合ドメインおよび構築物の残部がペプチドまたはポリペプチドから形成される場合、特に有用である。

本発明の送達構築物のトランスポータードメインは、トランスサイトーシスドメインをさらに含む。トランスサイトーシスドメインは、上皮細胞の頂端膜上に存在する細胞表面受容体に結合したキメラタンパク質のトランスサイトーシスを生じさせることが当業者に公知の任意のトランスサイトーシスドメインであり得る。好ましい実施形態において、トランスサイトーシスドメインはCholixのドメインIIである。

いかなる特定の理論にも作用機序にも限定されるものではないが、トランスサイトーシスドメインは、送達構築物が極性上皮細胞の頂端表面上に存在する受容体に結合した後、極性上皮細胞を介する送達構築物のトラフィッキングを可能とすると考えられる。極性上皮細胞を介するそのようなトラフィッキングは、本明細書において「トランスサイトーシス」と呼ぶ。このトラフィッキングは、極性上皮細胞の側底膜からの送達構築物の放出を可能とする。

細胞内活性を目的とする積み荷の送達のため、送達構築物は、積み荷を細胞内にトラフィッキングするためのエンドサイトーシスドメインを含み、開裂可能なリンカーも含み得る。これには、担体表面をエンドサイトーシスドメインの1つ以上のコピーによりデコレートし、リンカーによりデコレートするかまたはしないことにより細胞表面受容体に標的化されたナノ粒子および/またはデンドリマーベースの担体を使用する積み荷の細胞内送達が含まれる。

いかなる特定の理論にも作用機序にも限定されるものではないが、エンドサイトーシスドメインは、送達構築物が細胞の表面上に存在する受容体に結合した後、細胞内への送達構築物のトラフィッキングを可能とすると考えられる。細胞内へのそのようなトラフィッキングは、本明細書において「エンドサイトーシス」と呼ぶ。このトラフィッキングは、関連する細胞内区画、例として(限定されるものではないが)核および核エンベロープ、リボソーム小胞、小胞体、ミトコンドリア、ゴルジ装置、およびサイトゾル中への送達構築物の放出を可能とする。

本発明のある実施形態において、それらの細胞の側底表面において生じる生物学的プロセスを機能させるプロテアーゼおよびペプチダーゼの同定を評価する。それらのプロテアーゼおよびペプチダーゼは、それらの基質により定義することができるいくつかのカテゴリーに分類される、すなわち、1)上皮側底表面から分泌され、活性化のためにトリミングが要求されるプレプロホルモンおよび酵素、2)活性が開裂イベントにより中和されて活性が調節される活性ホルモンまたは酵素、ならびに3)側底表面における作用が酵素的修飾により変化する全身性酵素または成長因子。それらの種々のカテゴリーに分類され、担体−リンカー−積み荷構築物の側底開裂に有用であり得るいくつかの潜在活性の例には、当分野において記載されているS9Bプロリルオリゴペプチダーゼサブファミリーのメンバー、例えばFAPおよびDDP IVが含まれる。

本発明の核酸配列およびポリヌクレオチドは、任意の好適な方法、例として、例えば、適切な配列のクローニングまたはNarangら,Meth.Enzymol.,68:90−99(1979年)のホスホトリエステル法;Brownら,Meth.Enzymol.,68:109−151(1979年)のホスホジエステル法;Beaucageら,Tetra.Lett.,22:1859−1862(1981年)のジエチルホスホラミダイト法;例えば、Needham−VanDevanterらNucl.Acids Res.12:6159−6168(1984年)に記載の、例えば、自動合成装置を使用するBeaucage & Caruthers,Tetra.Letts.,22(20):1859−1862(1981年)により記載された固相ホスホラミダイトトリエステル法;および米国特許第4,458,066号明細書の固体担持法などの方法による直接化学合成により調製することができる。化学合成は、一本鎖オリゴヌクレオチドを生成する。これは、相補的配列とのハイブリダイゼーションにより、または一本鎖をテンプレートとして使用するDNAポリメラーゼによる重合により二本鎖DNAに変換することができる。当業者は、DNAの化学合成が約100塩基の配列に限定される一方、より長い配列をより短い配列のライゲーションにより得ることができることを認識する。

好ましい実施形態において、本発明の核酸配列は、クローニング技術により調製する。適切なクローニングおよびシーケンシング技術の例、ならびに当業者を多くのクローニング訓練に導くために十分な指示は、Sambrookら,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL(2ND ED.),Vols.1−3,Cold Spring Harbor Laboratory (1989年))、Berger and Kimmel(eds.)、GUIDE TO MOLECULAR CLONING TECHNIQUES,Academic Press,Inc.,San Diego Calif.(1987年))、またはAusubelら(eds.),CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,Greene Publishing and Wiley−Interscience,NY(1987年)に見出される。生物試薬および実験装置の製造業者からの生成物情報も有用な情報を提供する。そのような製造業者には、SIGMA chemical company(Saint Louis,Mo.)、R&D systems(Minneapolis,Minn.),Pharmacia LKB Biotechnology(Piscataway,N.J.)、CLONTECH Laboratories,Inc.(Palo Alto,Calif.)、Chem Genes Corp.,Aldrich Chemical Company(Milwaukee,Wis.)、Glen Research,Inc.,GIBCO BRL Life Technologies,Inc.(Gaithersberg,Md.)、Fluka Chemica−Biochemika Analytika(Fluka Chemie AG,Buchs,Switzerland)、Invitrogen,San Diego,Calif.、およびApplied Biosystems(Foster City,Calif.)、ならびに当業者に公知の多くの他の商業的供給源が含まれる。

複製およびタンパク質の組換え発現の支持に好適な細胞は、当分野において周知である。そのような細胞は、特定の発現ベクターにより適宜形質移入または形質導入することができ、大量のベクター含有細胞を大規模発酵槽の播種のために成長させて臨床用途に十分な量のタンパク質を得ることができる。そのような細胞には、原核微生物、例えば大腸菌(E.coli);種々の真核細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、NSO、292;酵母;昆虫細胞;ならびにトランスジェニック動物およびトランスジェニック植物などが含まれ得る。標準的技術は、外来遺伝子をそれらの系中で発現させる分野において公知である。

本発明の医薬組成物は、本発明の遺伝子融合物または化学構築物および薬学的に許容可能な担体を含む。本明細書において使用される「薬学的に許容可能な担体」は、生理学的に適合可能な任意のおよび全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを意味する。薬学的に許容可能な担体の一部の例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組合せである。多くの場合、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを組成物中に含めることが好ましい。薬学的に許容可能な物質の追加の例は、湿潤剤または抗体の保存期間もしくは有効性を向上させる少量の補助物質、例えば湿潤剤もしくは乳化剤、保存剤または緩衝剤である。任意の慣用の賦形剤、担体またはビヒクルが本発明の送達構築物と不適合性である場合を除き;本発明の医薬製剤におけるその使用が企図される。

ある実施形態において、活性化合物の医薬組成物は、組成物を急速放出から保護する担体を用いて調製することができ、例えば制御放出配合物、例としてインプラント、経皮貼付剤、およびマイクロカプセル化送達系である。生分解性の生体適合性ポリマー、例えばエチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を使用することができる。そのような配合物を調製する多くの方法は、特許されるか、一般に当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems(J.R.Robinsonら,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978年)参照。

ある実施形態において、本発明の送達構築物は、例えば、不活性希釈剤または吸収性食用担体とともに経口投与することができる。化合物(および、所望により他の成分)を硬または軟シェルゼラチンカプセル剤中に封入し、錠剤に圧縮し、または対象の食事中に直接取り込むこともできる。経口治療剤投与のため、送達構築物を賦形剤とともに取り込み、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、オブラート剤などの形態で使用することができる。本発明の化合物を非経口投与以外により投与するため、化合物をその不活性化を防止するための材料によりコートし、または化合物をその材料と同時投与することが必要であり得る。

一般に、薬学的有効量の本発明の送達構築物を対象に投与する。当業者は、送達構築物の投与量が有効量の下記巨大分子を送達するために十分かどうかを容易に決定することができる。ある実施形態において、約1.mu.gから約1gの送達構築物を投与する。他の実施形態において、約10.mu.gから約500mgの送達構築物を投与する。さらに他の実施形態において、約10.mu.gから約100mgの送達構築物を投与する。さらに他の実施形態において、約10.mu.gから約1000.mu.gの送達構築物を投与する。さらに他の実施形態において、約10.mu.gから約250.mu.gの送達構築物を投与する。さらに他の実施形態において、約10.mu.gから約100.mu.gの送達構築物を投与する。好ましくは、約10.mu.gから約50.mu.gの送達構築物を投与する。

本発明の送達構築物は、対象への巨大分子の局部または全身送達のための慣用の技術と比べていくつかの利点を提供する。そのような利点のうちの最大のものは、針を使用して対象の皮膚を穿刺することなく巨大分子を送達する能力である。多くの対象が、反復の常用量の巨大分子を要求する。例えば、糖尿病患者は、インスリンを1日数回注射して血糖濃度を管理しなければならない。巨大分子の送達を注射なしで達成することができる場合、疼痛またはそれに伴う潜在的な合併症を回避することにより、そのような対象の生活の質が大幅に改善される。

さらに、送達構築物の多くの実施形態を構築し、組換え系中で発現させることができる。組換え技術は、任意の好適な巨大分子の導入のために設計された挿入部位を有する送達構築物の作製を可能とする。そのような挿入部位は、必要が生じれば、当業者が新規巨大分子の送達のための送達構築物を迅速に容易に生成することを可能とする。

さらに、上皮細胞の側底膜に存在する酵素により開裂されるリンカーによる送達構築物の残部への巨大分子の連結は、上皮膜を越えるトランスサイトーシス直後に巨大分子の送達構築物からの遊離および送達構築物の残部からの放出を可能とする。そのような遊離は、巨大分子に対する免疫応答の誘導の可能性を低減させる。これは、巨大分子と、送達構築物の残部から離れたその標的との相互作用も可能とする。

本発明の送達構築物の他の利点は、当業者には明らかである。

実施例1 上記のとおり成熟コレラ菌(Vibrio cholera)Cholixをコードするプラスミド構築物を調製し、使用して成熟Cholixタンパク質を大腸菌(E.coli)発現系中で発現させた;例えば、Jorgensen,R.ら,J Biol Chem,283(16):10671−10678(2008年)参照。Cholix遺伝子の非毒性突然変異形態(以下、「ntCholix」と称する)も、立体配座の顕著な変化なしで非毒性となるPEタンパク質における欠失(ΔE553)と類似するアミノ酸位置581におけるグルタミン酸の遺伝子欠失(ΔE581)により調製した;Killeen,K.P.and Collier,R.J.,Biochim Biophys Acta,1138:162−166(1992年)。タンパク質発現は、大腸菌(E.coli)DH5α細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用して適切なプラスミドによる熱ショック(42℃において1分間)による形質転換後に達成した。抗生物質含有培地に基づき選択された形質転換細胞を単離し、Luria−Bertaniブロス(Difco)中で成長させた。タンパク質発現は、1mMのイソプロピル−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加により誘導した。IPTG誘導2時間後、細胞を5,000×gにおいて4℃において10分間遠心分離することにより回収した。細胞溶解後に封入体を単離し、タンパク質を6MのグアニジンHClおよび2mMのEDTA(pH8.0)、さらに65mMのジチオトレイトール中で可溶化させた。リフォールディングおよび精製後、タンパク質をCa2+およびMg2+を欠くPBS(pH7.4)中で約5ml/mlで−80℃において保存した。それらの試験において使用した全てのタンパク質を、サイズ排除クロマトグラフィーに基づき>90%の純度であることを確認した。

次いで、ntCholix形態をそのC末端において修飾してタンパク質のC末端付近に局在する遊離スルフヒドリル残基を介する直接化学カップリングを可能とした。C末端修飾についての戦略を図1に示す。C末端修飾は、タバコエッチ病ウイルス(TEV)からの高度に選択的なプロテアーゼのためのコンセンサス開裂配列(ENLFQS)を有するシステイン拘束ループ、第2のシステイン、およびヘキサ−ヒスチジン(His6)タグを含むものであった。第2のCysは、カップリングのために最終的に使用されるCysとのジスルフィド架橋を形成するために含めた。His6配列をタンパク質に添加することにより精製を簡便化し、TEV開裂配列は軽度の還元後に末端Cys残基を選択的に除去するための機序を提供した。ntCholix構築物の発現および単離後のTEV開裂および0.1mMのジチオトレイトールによる軽度の還元は、積み荷付着の包括的機序としてのマレイミドベース反応を介する積み荷、Alexa Fluor(登録商標)488蛍光色素の直接化学カップリングを可能とした。得られた構築物を本明細書においてntCholix−Alexa488と呼ぶ。TEVプロテアーゼ開裂、還元、および遊離スルフヒドリルとのマレイミド反応を介する積み荷カップリング後、遊離したC末端配列の除去を第2のNi2+カラムクロマトグラフィー工程により達成した。

実施例2 ntCholix−Alexa488の経上皮輸送を、インビトロでCaco−2単層を使用して評価した。第1に、Caco−2細胞(継代数25−35)を上記のとおりコンフルエント単層に成長させた;Rubasら,Pharm Res,10:113−118(1993年)。手短に述べると、細胞を37℃においてDMEM/2mMのL−グルタミン、10%のウシ胎児血清、および100単位のペニシリン/ストレプトマイシンが濃縮されたDMEM/高成長培地中で5%CO2および90%湿度の雰囲気中で維持した。細胞を、75cm2フラスコ中で1:3の分割比において毎週継代し、Corning Costar(Cambridge,MA)製の予備湿潤化およびコラーゲンコートされた浸透性(0.4μm細孔サイズ)ポリカルボネート(Transwell(商標))フィルター支持体上に、63,000個の細胞/cm2の密度において播種した。成長培地を1日おきに交換した。電圧抵抗計(World Precision Instruments,Sarasota,FL)を使用する顕著な経上皮抵抗(TEER)測定の収集により決定したコンフルエント単層を、播種20〜26日後に使用した。

Cholixのインビトロ輸送を評価するための対照として使用すべき2つの追加の材料も調製した。フィルター損傷についての内部対照として、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)標識70kDaデキスタン(dextan)を商業的供給源(Sigma)から入手した。非特異的色素介在輸送についての対照として、ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma)の表面上の遊離アミンの一部をAlexa488カルボン酸スクシンイミジルエステル(A488−CASE;Invitrogen)と反応させた。カップリング反応は、室温において中性pHにおいて10:1のA488−CASE:BSAのモル比において4時間実施し、この時点において過剰のグリシンを添加して反応停止させた。得られた精製生成物は、BSA1分子当たり約3つのAlexa488分子を含有した。テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)標識70kDaデキスタン(Sigma)をフィルター損傷についての内部対照として使用した。蛍光計測は、BMG labtech FLUOstar Omega機器をTRITC−デキストラン(最適Ex=547およびEm=572)について540nmの励起および610nmの発光に、Alexa488タンパク質(最適Ex=496およびEm=519)について480nmの励起および520nmの発光に設定して使用して行った。

経上皮輸送流動速度は、インビトロでCaco−2細胞の極性単層を使用して頂端(Ap)から側底(Bl)およびBlからAp方向において計測して粘膜から漿膜および漿膜から粘膜の流動イベントをそれぞれ記載した。輸送試験の開始直前、それぞれのフィルターの経上皮抵抗(TEER)を計測し;<200Ω・cm2の単層TEER読取りを試験から排除した。ApおよびBl培地を含まれる単層から除去し、それらの表面をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)により1回洗浄した。次いで、単層の1つの組は、10μgのntCholix−A488および10μgのTRITC−デキストランまたは10μgのBSA−A488および10μgのTRITC−デキストランを含有する100μLのPBSのAp(ドナー)適用を受けた。次いで、レシーバー(Bl)区画は、500μLのPBSを受けて輸送試験についてのT0を設定した。ドナーおよびレシーバーの両区画を37℃における4時間のインキュベーション後にサンプリングして単層を越えて輸送された材料の量および頂端表面に保持された量をそれぞれ測定した。

曝露の4時間後、それらの単層の頂端表面に添加された材料の約5%の輸送が観察された(図2参照)。基底区画中の75kDaのTRITC−デキストランのレベルを示すいずれのフィルターも分析から排除した。BSA−Alexa488の対照タンパク質は、この同一の4時間の期間にわたり基底区画中でいかなる有意なレベルも示し得なかった(図2参照)。輸送の平均は、Cholixについて5.025±1.13%であり、BSAについて0.56±0.33であった(N=4)。このデータは、Cholixの遺伝子的に解毒された形態がインビトロでヒト腸癌細胞系Caco−2の極性単層を越えて効率的に輸送され得ることを確立した。

実施例3 アミノ酸A386においてトランケートされたCholixのバリアント(Cholix386)およびCholix386のC末端における緑色蛍光タンパク質(GFP)の遺伝子ライゲーション物(Cholix386GFP)も調製し、大腸菌(E.coli.)中で発現させた。タンパク質発現は、大腸菌(E.coli)DH5α細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用して、適切なプラスミドによる熱ショック(42℃における1分間)による形質転換後に達成した。抗生物質含有培地に基づき選択された形質転換細胞を単離し、Luria−Bertaniブロス(Difco)中で成長させた。タンパク質発現は、1mMのイソプロピル−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加により誘導した。IPTG誘導2時間後、細胞を5,000×gにおいて4℃において10分間遠心分離することにより回収した。細胞溶解後に封入体を単離し、タンパク質を6MのグアニジンHClおよび2mMのEDTA(pH8.0)、さらに65mMのジチオトレイトール中で可溶化させた。リフォールディングおよび精製後、タンパク質をCa2+およびMg2+を欠くPBS(pH7.4)中で約5ml/mlで−80℃において保存した。Cholix386GFPリフォールディングは、この蛍光タンパク質に伴う蛍光サインの収集および保持によりモニタリングした;Sampleら,Chem Soc Rev,38(10):p.2852−64(2009年)。緑色蛍光タンパク質(GFP)は、Upstate(Charlottesville,VA)から購入した。それらの試験において使用した全てのタンパク質を、サイズ排除クロマトグラフィーに基づき>90%の純度であることを確認した。

468/508nmの励起/発光特性を有する共有結合により統合された赤色蛍光色素を含有し、アルデヒド表面官能基を有するポリスチレンビーズ(10nm直径)(XPR−582)を、Duke Scientific(Palo Alto,CA)から入手した。100μlのXPR−582ビーズ(2%の固体における)を約2.5nモルのGFPまたはCholix386GFPと、200μlの最終容量の中性(pH7.0)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で混合した。室温において穏やかに2時間振とうした後、20μlのウシ血清アルブミン(BSA;Sigma,St.Louis,MO)のPBS中2mg/ml溶液を添加した。次いで、調製物をPBSによる希釈およびMillipore(Bedford,MA)製の100,000分子量カットオフMicroconフィルター装置を使用する濃縮の3回のサイクルにより透析した。コートされたビーズの最終調製物は、1%の固体であった。

実施例4 A549(ATCC CCL−185(商標))、L929(ATCC CRL−2148(商標))、およびCaco−2(ATCC HTB−37(商標))細胞を、5%CO2中で37℃において完全培地、すなわち、10%のウシ胎児血清、2.5mMのグルタミン、100Uのペニシリン/ml、および100μgのストレプトマイシン/mlが補給されたDulbecco改変Eagle培地F12(DMEM F12)(Gibco BRL,Grand Island,N.Y.)中で維持した。細胞に2から3日毎にこの培地(完全培地と称する)を供給し、5から7日毎に継代した。アッセイのため、細胞を24または96ウェルプレート中に播種し、コンフルエンスまで成長させた。

Caco−2細胞をコンフルエント単層としてコラーゲンコートされた0.4μm細孔サイズのポリカルボネート膜transwell支持体(Corning−Costar,Cambridge,MA)上で成長させ、箸型Millicell−ERS(登録商標)電圧計(Millipore)を使用して計測して>250Ω・cm2の経上皮電気抵抗(TEER)に達して18〜25日後に使用した。CholixまたはCholix386GFPの頂端から側底(A→B)および側底から頂端(B→A)のそれらの単層を越える輸送は、37℃における20μgの適用4時間後に輸送されたタンパク質の量を計測することにより決定した。TEER計測および10kDa蛍光デキストランの広がり(HPLCサイズ排除プロトコルを使用して計測)を使用して試験過程の間の単層障壁特性を確認した。Cholix輸送の程度は、細胞ベース細胞毒性アッセイにおいて回収した培地の滴定により決定した。輸送されたCholix386GFPは、捕捉のための抗GFP抗体および検出のためのCholixに対するポリクローナル血清を使用する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により計測した。

インビトロでの極性Caco−2細胞単層を越える輸送速度は、ELISAフォーマット分析により評価されたとおり、Cholix、ntCholixおよびCholix386GFPについて比較可能であった。Cholixの場合、極性Caco−2細胞は、アポトーシスのTUNEL検出またはラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)放出について試験した場合、タンパク質により毒性化されなかった。重要なことに、CholixおよびCholixベースタンパク質キメラは、Caco−2単層の頂端から側底表面に効率的に輸送されるが、側底から頂端方向においては輸送されないことが見出された。これらの輸送速度および方向性は、この同一のフォーマットにおいて試験されたPEについて既に観察されたものと比較可能であった。さらに、ウサギ抗Cholix抗血清の添加は、インビトロでCaco−2単層を越えるCholixの効率的輸送もCholix関連タンパク質の効率的輸送も遮断し得ないことが観察された。

共焦点蛍光顕微鏡法を使用してインビトロでCaco−2単層を越えるCholix386GFPトランスサイトーシスの性質を試験した。経時試験は、上皮細胞中へのCholix386GFP流入をその頂端適用の5分以内で示し、細胞の側底領域への細胞を介する輸送を15分以内で示した。頂端Cholix386GFPに15分間曝露し、続いて過剰のCholix386GFPを頂端室(apical chamber)から除去した試料において、GFP蛍光は、細胞の側底表面の方向において継続し、頂端表面に戻って継続しないことが観察された。Cholix386GFPのこの一方向移動は、頂端および側底区画中のCholix386GFP含有量をこの経時にわたり計測することにより確認された。Caco−2単層の側底表面におけるCholix386GFPの適用は、細胞中に流入するいかなる有意な蛍光も示さず、輸送試験と一致した。輸送されたCholix、ntCholixおよびCholix386GFPのウエスタンブロット分析は、それらのタンパク質が大きい変化なしで輸送されることを示唆した。

インビトロ試験は、Cholix386GFPに化学的にカップリングさせた100nm直径の蛍光ラテックスビーズが、頂端適用後にCaco−2単層を越えて効率的に輸送されることも示した。100nm直径を有するラテックスビーズの選択は、クラスリンコートピット由来の125nm直径のエンドソームの内腔内に容易にフィットし得る材料を提供した。したがって、これらの研究は、Cholix386GFP−ラテックスビーズが頂端細胞表面におけるエンドソーム取り込みに続くエンドソームベースの細胞内トラフィッキングと一致する機序により極性Caco−2細胞を経て移動することを示唆する。Cholix386GFP−カップリング100nm直径蛍光ラテックスビーズの、抗Cholix抗血清との予備インキュベーションは、それらのビーズの輸送を変化させ得なかった。100nm直径蛍光ラテックスビーズに化学的にカップリングした同様の量のGFPは、Caco−2単層を越えるそれらの粒子のインビトロ輸送を促進しなかった。共焦点蛍光顕微鏡試験は、Cholix386GFPとGFPによりコートしたラテックスビーズについてトランスサイトーシスにおいて観察される差異と一致した。

CholixがPEと同様に極性上皮障壁を越えて輸送され得るという結果は、予期されるものではない。それらの構造が結晶学的分析により示唆されるとおり同様である一方、それらの表面のアミノ酸組成は著しく異なり;実際、アミノ酸類似性に基づくアラインメント法はそれら2つのタンパク質に容易に合致しない。このことは、病原菌由来タンパク質、例えばそれら2つの毒性因子の、宿主細胞受容体と相互作用する能力が表面発現アミノ酸構成成分を必要とすることが想定されるという点で重要である。それらのタンパク質(それらの実質的に異なるアミノ酸配列を有する)の両方が極性上皮を越えて効率的に輸送されるため、一部の他の機序がこの輸送能についてのその基礎を形成する可能性が極めて高い。PEおよびCholixにより共有される構造関連性がそれらの効率的なトランスサイトーシスの固有能の基礎を形成することが本発明者らの主張である。PEおよびCholixタンパク質の両方が頂端表面受容体に結合してエンドソーム区画に接近する能力を有する一方、この相互作用およびそれらのタンパク質の細胞内トラフィッキングに関与する他の受容体についての潜在性がタンパク質表面上の特異的なアミノ酸よりも立体配座構造に基づく可能性がより高い。

本明細書において開示および特許請求される物品および方法の全ては、本開示に照らして過度の実験なしで行い、遂行することができる。本発明の物品および方法を好ましい実施形態に関して記載したが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく変形を物品および方法に加えることができることは当業者には明らかである。当業者に明らかな全てのそのような変形形態および均等物は、目下既存であるか後に開発されるかにかかわらず、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の趣旨および範囲内にあるものとみなす。本明細書に挙げられる全ての特許、特許出願、および刊行物は、本発明が属する分野の当業者の水準を示す。全ての特許、特許出願、および刊行物は、全ての目的のために、それぞれの個々の刊行物が任意のおよび全ての目的のために参照により全体として組み込まれることが具体的および個別的に示されるのと同程度に参照により全体として本明細書に組み込まれる。本明細書に説明的に記載される本発明は、好適には、本明細書に具体的に開示されていないいかなる要素の不存在下でも実施することができる。したがって、例えば、本明細書におけるそれぞれの場合、用語「含む」、「本質的に〜からなる」、および「からなる」のいずれかを、他の2つの用語のいずれとも置き換えることができる。用いられる用語および表現は、説明の用語として使用され、限定の用語として使用されるものではなく、そのような用語および表現の使用において、記載される特徴およびその一部のいかなる均等物も排除するものではないが、種々の改変が特許請求される本発明の範囲内で考えられることが認識される。したがって、本発明が好ましい実施形態および任意選択の特徴により具体的に開示されているが、本明細書において開示される概念の改変および変形を当業者がし得ること、ならびにそのような改変形態および変形形態は添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲内であるとみなされることを理解すべきである。

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