酸素添加酵素含有組成物の活性化方法並びにこれに基づく汚染物質の無害化方法及び装置

申请号 JP2013141383 申请日 2013-07-05 公开(公告)号 JP2015012830A 公开(公告)日 2015-01-22
申请人 株式会社タカハタ電子; Takahata Denshi:Kk; 国立大学法人山形大学; Yamagata Univ; アプリザイム株式会社; Applizyme Inc; 发明人 HARA TOMIJIRO; TAKATSUKA YUMIKO; KATAKURA SONOKA; MAKUTA HISANORI; SANO KATSUNORI; NIIGUNI TOKIO;
摘要 【課題】トルエン、ベンゼン、ダイオキシン類やポリ塩化ビフェニル類等の単環若しくは多環 芳香族化合物 に由来する汚染物質を、酵素反応により 酸化 的に分解するプロセスを効率化する。【解決手段】飽和溶存酸素濃度を超える量の酸素を含有し、少なくとも当該酸素の一部がマイクロバブルとして存在する 水 性媒体中で、酸素添加酵素含有組成物と汚染物質を含む油性成分との混合物を、通気及び/又は攪拌することを含む。【選択図】図3
权利要求
  • 酸素添加酵素を含有する組成物を、常温、常圧の大気環境下での飽和溶存酸素濃度を超える量の酸素を含有した水性媒体中に溶解又は分散させることを特徴とする、酸素添加酵素含有組成物の活性化方法。
  • 飽和溶存酸素濃度を超える量の酸素を含有した水性媒体中で、酸素添加酵素含有組成物と汚染物質を含む油性成分との混合物を攪拌することを含む、汚染物質の分解又は無害化方法。
  • 前記水性媒体中へマイクロバブルを供給することを含む請求項1または請求項2に記載の方法。
  • 前記マイクロバブルが、前記水性媒体及び/又は前記水性媒体と油性成分の混合物へ、酸素を流しながら超音波処理を行うことにより発生する請求項3に記載の方法。
  • 前記マイクロバブルが、前記水性媒体及び/又は前記水性媒体と油性成分の混合物を、加圧処理することにより発生する請求項3に記載の方法。
  • 前記汚染物質が、トルエン、ベンゼン、ダイオキシン類及び/又はポリ塩化ビフェニル類を含む、単環若しくは多環芳香族化合物からなる請求項2〜5の何れか一項に記載の方法。
  • 前記酸素添加酵素含有組成物が、芳香環水酸化ジオキシゲナーゼを微生物細胞内で発現させた微生物製剤である請求項1〜6の何れか一項に記載の方法。
  • 前記混合物が、場合により界面活性剤又はアルコールを含み、前記水性媒体と油性成分とのエマルジョンである請求項2〜7の何れか一項に記載の方法。
  • 通気手段、攪拌手段及び/又は温度制御手段を備えた攪拌槽と、
    前記攪拌槽と連通し水性媒体及び/又は汚染物質を含む油性成分を導入する試料導入部と、
    前記攪拌槽内の試料にマイクロバブルを供給するマイクロバブル発生部とを備えることを特徴とする、汚染物質の無害化装置。
  • 前記マイクロバブル発生部が、前記攪拌槽に備えられた超音波型マイクロバブル発生装置である請求項9に記載の装置。
  • 前記マイクロバブル発生部が、前記試料導入部に備えられた加圧型マイクロバブル発生装置である請求項9に記載の装置。
  • 請求項2〜8の何れかに記載の方法に使用するための請求項9〜11の何れか一項に記載の装置。
  • 说明书全文

    本発明は、トルエンやベンゼン等の単環芳香族化合物、及びダイオキシン類やポリ塩化ビフェニル類等の多環芳香族炭化素を含む汚染物質の分解又は無害化方法並びにそのための装置に関する。 さらに詳細には、マイクロバブルを分散させることにより溶存酸素濃度を高めた水性媒体中で、酸素添加酵素含有組成物と汚染物質を含む油性成分との混合物を、通気及び/又は撹拌することにより前記汚染物質を酸化還元反応により分解する方法並びにそのための装置に関する。

    汚染物質の例で挙げれば、ポリ塩化ビフェニル類(PCBs)は難分解性有機塩素化合物の一種で、化学的に安定な性質から幅広い産業分野で用いられたが、生体への蓄積性や内分泌系に対する撹乱作用を示すことが明らかとなって以来、国際的にその製造や使用が禁じられている。 PCBsは化学的にも安定で、長期間にわたって自然分解することなく残留するため、人体への影響のみならず地球上に存在する様々な生命体にも深刻な影響をもたらすことが大きな問題となっている。

    国内でこれまでに輸入・製造販売されたPCBsは、およそ55,000トンと推定される。 その使用が禁止された上、使用者に対する保管が義務付けられた後、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法等により、所定の期限までに無害化する計画が立てられている。 近年、電気機器中の絶縁油に、1kg当たり数十mg程度という微量のPCBsが検出されるものが大量に存在することが明らかとなったが、この微量PCBs汚染油については、使用あるいは保管に関する正確な数量は把握できていない。 PCBsの分解方法としては、従来からの焼却法に加えて、脱塩素化分解法、水熱酸化分解法、水素供与物質による還元熱化学分解法、紫外線照射法等による光分解法等が知られている。 これらのうち、紫外線分解法は、PCBsを極性有機溶媒中に溶かして紫外線を照射することにより脱塩素化し、残留するPCBsを生物処理又は触媒処理等によって無害化するものであり、常温、常圧処理できるため安全性が高く、毒性を有するPCBsを、生命体である微生物が異化することでその分解物の安全性が高いと想定され、化学処理等に較べて利点があると考えられる。

    例えば、特許文献1に記載された方法は、最初にPCBsを紫外線に曝して脱塩素処理を行い、次に大型発酵プラントの微生物で分解に至るものである。 しかしながら、この処理法は60から80%(w/v)にもなる高濃度なPCBsで汚染した油を一度に大量処理する点に問題があり、紫外線照射工程に続く微生物処理工程で大量の培地を加えてPCBs濃度を調整しなければならず、微生物の培養や増殖とPCBs分解とを同時に行わなければならないという困難性があった。

    一方、近年では直径100μm以下の気泡であるマイクロバブルを、工業のみならず農業や水産業、医療へ利用する動きが広がっている。 マイクロバブルは体積当たりの表面積が広く浮上速度も極めて遅いため、効果的に酸素等の気体を液体に溶解させることができる。 また、電荷を帯びることで液中に均一に分散する。 例えば、浄化水槽でのばっ気プロセスに酸素のマイクロバブルを充填することは、活性汚泥中の好気性微生物の活性化・高効率化に有効とされている(非特許文献1参照)。 また、特許文献2には、揮発性有機化合物で汚染された汚染土壌または地下水を、微細気泡と、前記汚染土壌中に生息している微生物によって浄化する方法も報告されているが、汚染物質を分解する酵素反応自体を、マイクロバブルによって促進するプロセスは知られていない。

    特開2001−46547号公報

    特開2012−40476号公報

    Terasaka K et al., Chem Eng Sci, 2011, Vol.66, pp.3172-3179

    本発明は、トルエンやベンゼン等の単環芳香族化合物、及びダイオキシン類やポリ塩化ビフェニル類等の多環芳香族炭化水素に由来する汚染物質を、酵素を用いた酸化還元反応により分解するプロセスの効率化を図ることを目的とする。 特に、初発酸化反応として一連の分解反応の進行に重要な役割を果たす酸素添加酵素による反応を促進することにより、これらの汚染物質を効率的に分解し、無害化する方法及びそのための装置を提供することを課題とする。

    本発明者らの分析によれば、従来からの好気性微生物による分解酵素の生産と、汚染物質の分解とを同時に行う発酵方法において、通常の大気下の酸素分圧環境中での培養液では、この発酵反応に必要な十分な量の酸素を供給することが難しい。 これに対し、あらかじめ微生物等により生産した酸素添加酵素組成物、例えば、芳香環水酸化ジオキシゲナーゼを含む多成分酵素を大量に菌体内に発現させた微生物製剤を用いるとともに、当該酵素反応が進行する水性媒体中にマイクロバブルを分散させて水性媒体中の溶存酸素濃度を高めることにより、基質の分解に用いられる分子状酸素の供給が増強され、さらに分解反応に関与する各成分が十分に分散されてそれらが効率的に接触し、その結果、汚染物質の分解率が顕著に向上することを見いだした。 本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。

    すなわち、本発明の1つの視点において、酸素添加酵素を含有する組成物を、常温、常圧の大気環境下での飽和溶存酸素濃度を超える量の酸素を含有した水性媒体中に溶解又は分散させることを特徴とする、酸素添加酵素含有組成物の活性化方法を提供する。 また別の視点において、本発明は、汚染物質の分解又は無害化方法を提供するものであって、当該方法は、飽和溶存酸素濃度を超える量の酸素を含有した水性媒体中で、酸素添加酵素含有組成物と汚染物質を含む油性成分との混合物を攪拌することを特徴とする。 前記水性媒体中の酸素の少なくとも一部は、マイクロバブルとして存在することが好ましく、したがって、1つの実施形態における本発明の方法は、前記水性媒体中へマイクロバブルを供給することを含む。

    本発明の他の視点では、上記汚染物質の分解又は無害化方法に使用しうる装置を提供するものであって、当該装置は、通気手段、攪拌手段及び/又は温度制御手段を備えた攪拌槽と、前記攪拌槽と連通し水性媒体及び/又は汚染物質を含む油性成分を導入する試料導入部と、前記攪拌槽内の試料にマイクロバブルを供給するマイクロバブル発生部と、を備えることを特徴とする。 前記マイクロバブル発生部が、前記攪拌槽に備えられた超音波型マイクロバブル発生装置であるか、又は前記試料導入部に備えられた加圧型マイクロバブル発生装置であることが好ましい。

    本発明の方法によれば、汚染物質の分解に用いられる分子状酸素の供給が増強されて酸素添加酵素による反応速度が向上する。 さらに、分解効率も向上することで比較的低濃度の汚染物質でも効率的に無害化することができる。 加えて、マイクロバブルを含有する水性媒体は、微生物製剤のような酵素組成物の分散性が向上し、汚染物質を含む油性成分と容易にエマルジョンを形成して、汚染物質の分解に適した環境を整えることができると考えられる。

    また、本発明の汚染物質の無害化装置は、水性媒体中にマイクロバブルを効率的に供することができるとともに、分解反応の進行とともに減少へと転ずる溶存酸素濃度を補う目的で適切な時期にマイクロバブルで酸素を供給することができるため、より効率的に汚染物質を無害化することができると考えられる。

    参考例2で行った酸素添加酵素遺伝子を発現する組成物であることを示す電気泳動の結果である。

    実施例1で行った酸素添加酵素遺伝子を発現する組成物がPCBsを分解することを示すガスクロマト質量分析計が出したトータルイオン・クロマトグラフの結果である。

    本発明の1つの実施形態に係る汚染物質の無害化装置の概略断面図である。

    本発明の方法又は無害化装置に用いられる好適なマイクロバブル発生装置の概略を示す斜視図である。

    実施例2で行ったPCBs分解試験の結果である。

    実施例3で行った経時的PCBs分解試験の結果である。

    以下に、本発明に係る酸素添加酵素含有組成物の活性化方法、及びこれに基づく汚染物質の無害化方法と、これに使用しうる無害化装置についてそれぞれ詳細に説明する。 本明細書において、用語「無害化」とは、生体に対する毒性を低下させることを意味し、必ずしも汚染物質を完全に分解する必要はないが、環境中に放出された場合でも生物への悪影響を軽減できるように、好ましくはそれぞれの物質について一般的に安全であると認められるか、あるいは法律等で定められた基準値を下回るような濃度まで低下させることをいう。 本発明の汚染物質の無害化方法は、酸素添加酵素含有組成物を、高濃度酸素及びマイクロバブルを分散した水性媒体中で、汚染物質を含む油性成分と混合し、これらの混合物を通気及び/又は撹拌して分解することを特徴とするものであり、以下に、その構成要素ごとに順を追って説明する。

    [酸素添加酵素含有組成物]
    本発明の方法に使用しうる酸素添加酵素は、汚染物質を酸化的に分解しうる酵素であれば特に限定されるものではなく、多種多様な汚染物質を分解するものとして多くの動物又は微生物由来の酸素添加酵素を用いることができる。 これらの中でも、特に、芳香環水酸化ジオキシゲナーゼ、又はRieske non-heme iron oxygenaseと称される一群の酵素が好ましく、これらは多くの芳香族化合物分解経路での最初の反応であるcis型二水酸化反応を触媒する。 トルエンやナフタレンに加えてベンゼン、クメン、フェナントレン、ピレン等の単環・多環の芳香族炭化水素に限らず、ダイオキシン類、ジベンゾチオフェン、カルバゾール等のヘテロ環式芳香族化合物、PCBs等のビフェニル環化合物等の種々の芳香族化合物の好気的代謝経路において、これらの酵素は初発酸化酵素として一連の分解反応の進行の有無を左右する重要な役割を果たしている。 芳香環水酸化ジオキシゲナーゼは、基質を認識し酸化反応を行う酸化酵素(TO:terminal oxygenase)と、電子をNAD(P)HからTOに伝える電子伝達系から構成される多成分酵素である。 電子伝達系は、NAD(P)Hから電子を受け取るレダクターゼ(Red)単独で構成される場合と、Redとフェレドキシン(Fdx)の二つで構成される場合がある。

    微生物は、芳香族化合物への暴露とそれへの適応、進化を通じて多種多様の芳香環水酸化ジオキシゲナーゼを生み出してきたと考えられ、現在では、数十種以上の化合物の分解酵素として200以上の芳香環水酸化ジオキシゲナーゼが単離されている。 電子伝達鎖の特徴による芳香環水酸化ジオキシゲナーゼの分類、及び酸化酵素触媒サブユニットのアミノ酸配列アライメントに基づく各酵素の分子系統樹による分類等は、「野尻秀昭他3名、蛋白質核酸酵素Vol.50, No.12, (2005) pp.1519-1526」に記載されており、その全内容は参照により本願に組み込まれるものとする。

    好ましい実施形態において、本発明の方法に使用する酸素添加酵素含有組成物は、上記芳香環水酸化ジオキシゲナーゼを微生物細胞内に発現させた微生物製剤であり、二水酸化反応によって生じた中間体生成物をさらに分解して最終的にはアセチルCoAやピルビン酸等のエネルギー物質にまで変換しうるその他の代謝酵素を含む。 例えば、ビフェニル分解に関与する一連の酵素群を挙げれば、芳香環水酸化ジオキシゲナーゼとしてのビフェニルジオキシゲナーゼ(BphA酵素)の他に、BphAの反応産物から2つの水素を除くジヒドロジオールデヒドロゲナーゼ(BphB酵素)、BphB反応産物に酸素1分子を付加して2−ヒドロキシ−6−オキソ−6−フェニルヘキサ−2,4−ジエン酸(HOPDA)を生成する2,3−ジヒドロキシビフェニルジオキシゲナーゼ(BphC酵素)、ついで、HOPDAを安息香酸と2−ヒドロキシペンタ−2,4−ジエン酸とに分解する2−ヒドロキシ−6−オキソ−6−フェニルヘキサ−2,4−ジエン酸ヒドロラーゼ(BphD酵素)、そして、アセチルCoAとピルビン酸に転換する2−ヒドロキシペンタ−2,4−ジエン酸ヒドラターゼ(BphE酵素)、4−ヒドロキシ−2−オキソ吉草酸アルドラーゼ(BphF酵素)及びアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(BphG酵素)等を含む。 ビフェニル分解に関与する一連の酵素群による物質変換経路等に関しては、「原富次郎、高塚由美子、産業と環境 2012年10月号 pp.65-69」に記載されており、その全内容は参照により本願に組み込まれるものとする。

    このような芳香環水酸化ジオキシゲナーゼを有する微生物は、自然環境中から対象とする汚染物質又はそれと構造の類似する化合物を培地に添加して、当業者に既知の方法によりスクリーニングすることができる。 例えば、PCBs分解菌は、ビフェニルを単一の炭素源として生育し得る微生物からのスクリーニングを繰り返し行うことにより見出される。 天然にビフェニル分解酵素を産生する微生物としては、シュードモナス属、コマモナス属、バークホルデリア属、スフィンゴモナス属、ロドコッカス属、ラルストニア属等に属する多くの細菌があるが、ビフェニル資化性菌のスクリーニング段階でビフェニル分解活性の一つの指標となる黄橙色を示すメタ開裂物質(例えば、2-hydroxy-6-oxo-6-phenylhexa-2,4-dienoate)を速やかに生産し、且つ生育速度が速い微生物を選択することで、PCBs分解活性に優れる微生物の取得が期待できる。

    さらに、スクリーニングにより得られた微生物から当該物質の分解に関与する酵素遺伝子、例えば、ビフェニル分解酵素遺伝子をクローン化し、これらに部位特異的突然変異誘発法等によって変異を導入することで、さらにPCB分解活性の向上した遺伝子群を作製することができる。 なお遺伝子に変異を導入する方法には、Kunkel法、Gapped duplex法等の公知の手法又はこれに準ずる方法を採用することができる。 また、エラー導入PCRやDNAシャッフリング等の手法により、遺伝子の変異導入やキメラ遺伝子を構築することもできる。 エラー導入PCR及びDNAシャッフリング手法は、当技術分野で公知の手法であり、例えば、エラー導入PCRについてはChen K, and Arnold FH. 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5618-5622を、またDNAシャフリングやカセットPCR等の分子進化工学的手法は、例えば、Kurtzman,AL,Govindarajan, S., Vahle, K., Jones, JT, Heinrichs, V., Patten PA, Advances in directed protein evolution by recursive genetic recombination: applications to therapeutic proteins. Curr. Opinion Biotechnol.,12, 361-370, 2001等に記載されている。 これらの手法によって作製された突然変異遺伝子を、もとの微生物のゲノムDNAと置換するか、プラスミドDNAやコスミドDNAにクローン化して宿主微生物に導入し、新規な微生物を作製することも可能である。 本発明の方法に使用しうる酸素添加酵素、好ましくは芳香環水酸化ジオキシゲナーゼを産生する微生物は、このような方法により、当業者であれば容易に入手しうると考えられる。

    酸素添加酵素を産生する微生物の培養方法も、特に限定されるものではなく、当業者に公知の培養方法及び培養装置を用いて培養し、培養して得られた微生物菌体から通常の方法により酸素添加酵素を抽出、精製することができる。

    あるいは、酸素添加酵素を産生する微生物を含む培養物は、そのまま粉体にするか、水や界面活性剤等を含む分散媒で洗浄して、菌体内酵素のままで使用することもできる。 培養後の培養液をそのまま利用することもできるし、減圧濃縮することもできる。 また、遠心分離による集菌や密度勾配遠心法、二相分離法等を行い、高濃度に酸素添加酵素を産生する微生物を分離回収することができる。 各種分散媒で酸素添加酵素を産生する微生物を分散した懸濁液を用いてもよい。

    液剤組成物を製造する際に、上記培養物に、必要に応じて、保存性や安定性の向上を目的とした物質を追加することもできる。 例えば、pH調整剤、保存剤、抗酸化剤、安定化剤、緩衝剤等を添加することができる。

    粉体組成物であれば、上記培養物から得られる微生物菌体を乾燥させる必要がある。 菌体の乾燥方法としては、自然乾燥や凍結乾燥、スプレードライ等で生菌のまま粉末化することができる。 この際、スキムミルク等の保護剤を用いることが望ましい。 また、製剤化のために増量剤等の任意の物質を添加することができる。 賦形剤としては、例えば、D−マンニトール、D−ソルビトール、白糖等の糖類、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン等のデンプン類、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム等の無機塩類の他、脱脂米糠、大豆粉、おから、ピーナッツの皮、フスマ、もみがら粉、炭酸カルシウム、糖、澱粉、ビール酵母、小麦粉等、飼料安全法で認可されている任意の賦形剤があげられる。 これらの賦形剤は1種のみならず2種以上併用してもよい。

    本発明の好ましい実施形態において、微生物菌体は、生理食塩水あるいは20mMのリン酸緩衝液で少なくとも2回洗浄することが望ましく、リン酸塩はリン酸ナトリウム塩を用いるのが良い。 また、菌体に対し糖アルコール等の賦形剤を加えて、糖アルコールはアルファ、ベータあるいはデルタ型のマンニトールでも良く、最終的に−20〜−80℃までに調温された冷凍庫等で保存でき、乾燥粉体化させた場合は、15〜25℃の常温で保存できる酸素添加酵素含有組成物が得られる。

    また、酸素添加酵素組成物は、汚染物質を効率よく分解するよう適切な配合率で複合化させた組成物であることが望ましく、例えば、微生物菌体を乾燥させる前の湿菌体の状態で汚染物質を効率よく分解するよう適切な配合率で複合化させ、この複合体に対し糖アルコール等の賦形剤を加えた微生物製剤からなる酸素添加酵素組成物としてもよい。
    例えば、汚染物質としてのPCBsを分解するためには、コマモナス属、シュードモナス属、アクロモバクター属、ロドコッカス属、及びステノトロフォモナス属からなる群より選択される少なくとも1種、あるいはそれ以上のPCBs分解菌を用いることができる。 これらの菌株は、2,3-ビフェニルジオキシゲナーゼ(2,3-biphenyl dioxygenase)が共通に選択する基質特異性を示し、PCBs異性体に対しては更に狭い範囲の基質特異性を示す。 具体的には、2,2',3,4−テトラクロロビフェニルや、3,3',4,4'−テトラクロロビフェニル、2,3,3',6−テトラクロロビフェニル,3,4,4'−トリクロロビフェニル、2,2',3,4'−テトラクロロビフェニル、2,3,3',4',テトラクロロビフェニル、2,3,4,4',テトラクロロビフェニル、2,2',3,5,5'−ペンタクロロビフェニル、2,2',4,4'−テトラクロロビフェニル、2,2',4,5−テトラクロロビフェニル、2,2',3,5'−テトラクロロビフェニルを選択的に分解する複数の細菌を混合して複合化させることが好ましい。

    [酸素添加酵素含有組成物の活性化方法]
    このような酸素添加酵素含有組成物を、常温、常圧の大気環境下での飽和溶存酸素濃度を超える量の酸素を含有した水性媒体中に溶解又は分散させることにより、酸素添加酵素含有組成物を活性化することができる。 特に、酸素添加酵素含有組成物として上述した微生物製剤を用いた場合に、顕著な活性化効果を得ることができる。 水性媒体中の溶存酸素濃度の上昇によって、酸素添加酵素含有組成物が活性化されること、例えば、あらかじめ芳香環水酸化ジオキシゲナーゼを高発現させた微生物製剤による基質の分解反応が向上するメカニズムについては現在のところ明らかではないが、考えられる要因は、まず、水性媒体中の微生物細胞外の酸素濃度が高まることで、受動輸送により、極めて短時間に、微生物細胞内の酸素濃度が水性媒体中の酸素濃度近くまで上昇する。 次に、微生物細胞内と細胞外の酸素濃度の平衡化現象は、微生物細胞内で行われる芳香環水酸化ジオキシゲナーゼの基質に対する酸素添加反応の速度向上へ寄与していることである。 さらに、この酸素添加反応の生成物は、高酸素下で誘導された酸化ストレスによって活性化した酵素組成物中に含まれるその他の代謝系酵素類や補酵素類が、より低分子にまで物質変換を進めるため、基質を完全に分解することができると考えられる。

    [マイクロバブル含有水性媒体]
    本明細書において、用語「マイクロバブル」とは、概ね直径1mm以下、好ましくは直径100μm以下の気泡をいう。 外部から酸素や空気等の気体を供給して気泡を形成してもよいし、水性媒体中に溶存している酸素や空気等を用いてもよいが、水性媒体の溶存酸素濃度を高めるためには、酸素ガスを外部から供給しつつマイクロバブルを発生させることが好ましい。 マイクロバブルは体積当たりの表面積が広く浮上速度も極めて遅いため、効果的に酸素等の気体を液体に溶解させることができる。 また、電荷を帯びることで液中に均一に分散し、水性媒体中で油性成分のエマルジョン化を促進する。 マイクロバブルは負の表面電荷を有するため、一般に正の表面電荷を持つ微生物菌体等との相互作用を介して、これらを水性媒体中で均一に分散させることが可能になる。

    水性媒体にマイクロバブルを分散させる工程は、汚染物質を含む油性成分との混合前であってもよいし、あるいは、水性媒体と汚染物質を含む油性成分とを混合した後に、これらの混合液中へマイクロバブルを発生させてもよい。 マイクロバブルを発生させる方法は、微小孔を有する管又は多孔質体を通じて気体を液体中に噴出させる方法、噴流や旋回流中で生じるせん断力を利用して気相を液相に巻き込む方法、超音波を利用して気液界面振動させて微細な気泡を生成させる方法等いずれの方法を用いてもよい。

    本発明の方法では、少なくとも水性媒体中における飽和溶存酸素濃度を超える量の酸素を当該水性媒体に含有させることが好ましく、そのため酸素ガスを流しながら超音波処理を行うことによりマイクロバブルを発生させることが好ましい。 以下、これを酸素マイクロバブルと呼ぶ。 水溶液中の飽和溶存酸素濃度は、気圧、水温、溶存塩濃度等によって変化するが、大気圧下、30℃における蒸留水中の溶存酸素濃度は約7.5mg/Lである。 本発明の方法において、水性媒体中の溶存酸素濃度は、30℃において、少なくとも初期濃度で約8mg/Lであり、15mg/L以上が好ましく、25mg/L(ppm)以上がさらに好ましい。 1つの実施形態において、上記超音波発生法により酸素マイクロバブルを水性媒体中へ充填した場合、その溶存酸素濃度は実測値で28mg/L程度である。 一般に水性媒体中に溶解した高濃度状態の酸素は、周辺環境中の酸素濃度と均衡を保とうとする性質から減少に転じると考えられる。 したがって、酸素添加酵組成物による汚染物質の分解反応を最適化するためには、28mg/L程度まで上昇した溶存酸素濃度を維持することが望ましく、適宜マイクロバブル発生器により連続、あるいは断続的に酸素マイクロバブルを供給し続けることが望ましい。

    [汚染物質の分解反応]
    本発明の分解又は無害化方法の対象となる汚染物質は、酸素添加酵素によって酸化的に分解されるものであれば特に限定されるものではないが、単環若しくは多環芳香族化合物であることが好ましく、これらの中にはトルエン及び/又はベンゼン若しくはダイオキシン類及び/又はポリ塩化ビフェニル類を含む。 本明細書において、ダイオキシン類とは、ポリ塩素化ジベンゾ−p−ダイオキシン、ポリ塩素化ジベンゾフラン、及びコプラナーPCB(特に、オルト位以外に塩素原子が置換したポリ塩化ビフェニル)の全ての総称である。 本発明では、「ダイオキシン類」は、特に断らない限りこれらの化合物の一部又は全部を表す。

    本発明で対象となるPCBsとしては、ビフェニル化合物に塩素原子が置換した化合物が含まれ、その置換塩素原子の数は1〜10個である。 平均置換塩素原子数は、一般に2〜6個である。 本発明では、これらのPCBsから選択された少なくとも一種を用いることができ、それぞれ単独で又は二種以上を任意に組み合わされたものへも用いることができる。 一般に、PCBsは単一化合物として存在せずに、塩素原子の数や置換位置が異なる配合物として存在する。 従って、塩素原子の数及び置換位置の組み合せからして、理論上209種類の異性体が存在し、市販品には、およそ70から100、あるいはこれらを越える数の異性体が配合存在している。

    本発明の分解あるいは無害化の方法で処理できるPCBsとしては、特徴的には、3,4,4',5−テトラクロロビフェニルや3,3',4,4'−テトラクロロビフェニル、3,3',4,4',5−ペンタクロロビフェニル、2,3,3',4,4'−ペンタクロロビフェニル、2,3,4,4',5−ペンタクロロビフェニル、2,3',4,4',5−ペンタクロロビフェニル、2',3,4,4',5−ペンタクロロビフェニルに加えて、2,2',4,4'−テトラクロロビフェニルや2,2',4,5−テトラクロロビフェニル、2,2',3,5'−テトラクロロビフェニル等が挙げられるが、これらに限定されない。

    PCBsは、過去にPCB単体からなる配合物として市販されたものであり、これがコンデンサーやトランスの絶縁油として用いられた。 また現在でも、その一部が絶縁油で希釈された比較的低濃度のPCBsとして、一部のコンデンサーやトランスに包含されている。 その具体例としては、鐘淵化学(株)が製造販売したカネクロールKC−200(含有異性体が2塩化ビフェニルを中心としたもの)やKC−300(含有異性体が3塩化ビフェニルを中心としたもの)、KC−400(含有異性体が4塩化ビフェニルを中心としたもの)、KC−500(含有異性体が5塩化ビフェニルを中心としたもの)、KC−600(含有異性体が6塩化ビフェニルを中心としたもの)、KC−1000(KC500/トリクロルべンゼン=60/40(質量比)の配合物)や、三菱モンサント(株)が製造販売したアロクロール1254(54%Chlorine)等も挙げられる。

    本発明の一つの実施形態における汚染物質の分解又は無害化の方法は、上記の酸素添加酵素含有組成物と汚染物質を含む油性成分とを、高濃度の酸素マイクロバブル含有水性媒体中で混合する工程と、当該混合物を通気及び攪拌する工程とを含む。 本発明の好ましい実施形態では、汚染物質として、比較的低濃度のPCBs汚染油を用いたときに、高いPCBs分解活性を発揮し、効果的に無害化することができる。

    他の実施形態では、上記の酸素添加酵素含有組成物と汚染物質を含む油性成分とを、水性媒体中で撹拌会合させつつ、これらの混合物へさらに酸素マイクロバブルを通気供給しながら分散させることで汚染物質を分解してよい。 さらに、これらの実施形態を組み合わせて、あらかじめ酸素マイクロバブルを分散させた水性媒体中で上記酸素添加酵素含有組成物と汚染物質を含む油性成分とを分散会合させるとともに、撹拌しながら混合液中の溶存酸素濃度の低下を補うようにマイクロバブルを追加的に供給することも可能である。

    さらに別の1つの実施形態によれば、酸素添加酵素組成物として微生物製剤を用いた場合は、分解工程の所定の時期に混合物を超音波処理することにより微生物製剤を破砕し、菌体内酵素を混合物中に遊離分散させることもできる。 一般的に、ダイオキシンやPCBsを含む芳香族化合物は疎水性であるため油性成分中に飽和溶解又は分散しているが、微生物菌体と接触するとその細胞膜を透過して菌体内で一連の酸素添加酵素による分解反応を受けると考えられる。 しかしながら、分解反応が進行して汚染物質の濃度が低下することにより混合物中での物質移動が分解反応の律速段階となった場合は、超音波処理により菌体内から酵素を混合液中に放出させて残存する汚染物質と反応させることが好ましい。

    1つの実施形態として、前記の混合物は水性媒体と油性成分とのエマルジョンを形成し、これは水中油型(o/w)エマルジョン又は油中水型(w/o)エマルジョンのいずれであってもよい。 前記水性媒体と油性成分との混合比率は、3:7〜100:1までの任意の比率でよいが、エマルジョンを形成するためには、3:7〜7:3の比率であることが好ましく、より好ましくは、1:2〜2:1の比率であり、最も好ましくは約1:1の比率である。 分解すべき汚染物質は、エマルジョン全量に対し0.05〜1000mg/L、好ましくは1〜100mg/L程度含むことができ、当該エマルジョン中に、酸素添加酵素含有組成物を0.2〜20重量%、好ましくは2〜12重量%程度添加することにより行うことができる。 エマルジョン化しない場合は、トリトンX−100等の界面活性剤0.005%を加え、さらに必要な場合は超音波を加えて均質化させる。 さらにエマルジョン化を促進するために、油性成分の粘性を下げる処理、例えば、アルコール等を添加してもよい。

    本発明の好ましい実施形態において使用しうる界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性及び両性イオン性等に分類される。 非イオン性界面活性剤としては、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(具体的にはポリソルベート80等)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(具体的にはプルロニックF68等)、ソルビタン脂肪酸(具体的にはソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート等)、ポリオキシエチレン誘導体(具体的にはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレンラウリルアルコール等)、グリセリン脂肪酸エステル、ツイン−20(Tween 20)、ツイン−80(Tween 80)、トリトンX−100(Triton-X-100)、ポリエチレングリコールモノオレイルエーテル、トリエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクチルグルコシド、またはノナノイルメチルグルカミン等が挙げられる。

    アニオン性界面活性剤としては、例えばアシルサルコシン、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸塩、炭素数7〜22の脂肪酸ナトリウム等があげられる。 具体的にはドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム等があげられる。

    カチオン性界面活性剤としては、例えばアルキルアミン塩、アシルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アミン誘導体等があげられる。 具体的には塩化ベンザルコニウム、アシルアミノエチルジエチルアミン塩、N−アルキルポリアルキルポリアミン塩、脂肪酸ポリエチレンポリアミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルポリオキシエチレンアミン、N−アルキルアミノプロピルアミン、脂肪酸トリエタノールアミンエステル等があげられる。

    両性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベタイン、ドデシルジメチルアミン酸化物、ジメチルパルミチルアンモニオプロパンスルホネート、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホン酸、N−テトラデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホン酸等があげられる。

    油性成分の粘度を低下させるために添加するアルコールとしては、2〜5質量%のアルコールからなる。 アルコールは、C1〜C5アルコール及びこれらの混合物から選択されてもよい。 好適なアルコールの例は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、イソブタノール及びこれらの混合物を含む。 好ましくは、アルコールはエタノールである。

    分解反応条件は、約20〜40℃、好ましくは25〜35℃、さらに好ましくは約30℃に調温し、pHは6〜9、好ましくは6.5〜8とし、攪拌した状態で約12〜72時間処理することが好ましい。 このような処理は、密閉式で攪拌できる反応装置を用いて行うことができ、すなわち小型の専用装置を用いて行うことが好ましい。 ポリ塩化ビフェニル類分解反応装置が小型化できることにより、微量PCBsを保管するような貯蔵所でも直接処理作業を行うことができる。

    [汚染物質の無害化装置]
    次に本発明の1つの実施形態に係る汚染物質の無害化装置を、図面を参照しながら説明する。 図3において、本実施形態に係る汚染物質の無害化装置1は、通気手段を兼ねた攪拌翼18を供えた攪拌槽10と、当該攪拌槽と連通し水性媒体を供給するためのバッファータンク20と、汚染物質を供給するタンク30と、酵素製剤投入口40と、これらに酸素ガスを供給又は排出するための通気管19及び排気管23とを備えている。 この実施形態においてPCBs等の汚染物質は専用のタンクから攪拌槽に供給されるが、特にこれに限定されるものではなく、バッファータンクと兼用しても良い。 攪拌槽には、さらに超音波の振動伝達体50超音波振動子51とからなるマイクロバブル発生部が備えられている。

    上記の攪拌槽10に導入された水性媒体と汚染物質を含む油性成分との混合液に上記マイクロバブル発生部から酸素を流しながら超音波処理を行って、水性媒体中にマイクロバブルを含有させることができる。 あるいは、バッファータンク20中にてあらかじめ水性媒体にマイクロバブルを含有させてからマイクロバブル含有水性媒体と汚染物質を含む油性成分とを混合してもよい。 このためのマイクロバブル発生装置としては、超音波型のマイクロバブル発生装置や加圧型マイクロバブル発生装置のいずれも使用することができる。

    前記マイクロバブル発生部は、前記攪拌槽内で水性媒体と油性成分との混合液と接触する位置に配置することが出来れば良く、特に形状は限定されないが、好ましい実施形態として図4に示す超音波型のマイクロバブル発生装置2を使用することができる。 また、振動体周囲の液体への気体供給は、前記振動体50からの振動が有効に伝わる範囲の液体に気体の供給が行えるようにすればよく、供給した気体のなるべく多くの大きな割合が振動体に接触できるようにすることがマイクロバブルを形成する効率の点で好ましい。 前記気体供給の形態としては、前記振動体50に気体供給口52と気体放出口54を接続する気体流路53を設け、コンプレッサーから気体供給口52に気体を供給し、前記攪拌槽中の液体の中に位置した気体放出口54から放出することが望ましい。 前記振動体は、超音波放射面55が攪拌槽中の液体の中に配置され、当該振動体に電気信号を供給することによって所定の周波数及び振幅の振動が付与される。 前記振動伝達体50の形状は、特に限定されるものではないが、超音波振幅の増幅に一般的に用いられる振幅拡大ホーンとして公知の形状が望ましい。 前記振動伝達体50の一つの好ましい形態としては図4に示す段付き円筒形状が例示される。 図4において、大面積の端部には超音波振動子51が接続され、小面積の端部が前記超音波振動子51で発生した振動が増幅された前記超音波放射面55となる。 また、前記気体放出口54は振動が増幅された前記超音波放射面55に設けられることが望ましい。 前記振動伝達体50は、超音波の圧力振動を伝えることができれば、1つの部品からなる構造体でも、複数の部品をネジ止め、接着、溶接等により接続した構造体でも良い。

    前記振動伝達体50として用いる材料は限定されないが、超音波ホーン材料として用いられている公知の材料が望ましく、チタン合金、純チタン、Ni−Cr鋼、ステンレス鋼、黄銅、モネルメタル、工具鋼が例示される。

    前記超音波型のマイクロバブル発生部を構成する超音波振動子51は特に限定されず、公知の超音波振動子から適宜選択される。 前記超音波振動子で発生する超音波の周波数と振幅は、振動制御器57で発生させた任意の周波数と波形の信号を、ケーブル56を介した電気信号によって制御される。 本発明によるマイクロバブルの発生は、液体中に存在する気泡を超音波で振動させる際、一定以上の速度および一定以上の振幅を与えることにより、気泡あるいは振動体上の気液界面の一部が分裂することによってマイクロバブルが生成する。 このため、用いる超音波の周波数が高く、振幅が大きい程マイクロバブルの発生効率が高く、発生する気泡を微小にすることができる。 用いる超音波の周波数、振幅はマイクロバブル発生の目的に応じて、10μm以上、10kHz以上の範囲で適宜選択される。 周波数については、公知の超音波振動子が多数存在する15kHz〜100kHzが望ましく、より好ましくは振幅を大きくとることが可能な20kHz〜40kHzの範囲が望ましい。 また、超音波の印加は連続的な印加でも、印加する超音波周波数以下の周波数で発生と停止を繰り返すバーストモードの印加でも良い。

    加圧型マイクロバブル発生装置 さらに、マイクロバブル発生装置としては、基質を含む気体を加圧溶解した水を減圧して、マイクロバブルを発生させてバッファータンク20内の水性媒体に供給する装置も用いることができる。 あるいは、気液二相流を突起物や衝突体に衝突させて、気泡を剪断してマイクロバブルとして攪拌槽10内の混合液中に供給する装置等、いずれの装置も用いることができる。

    以下に本発明の汚染物質の無害化方法の詳細について、酸素添加酵素含有組成物の調製と分解反応に関する実験方法及びその結果に係る参考例及び実施例を挙げて説明する。 なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

    [参考例1] PCBs分解細菌の培養と製剤調製 コマモナス・テストステロニ(C. testosteroni) YAZ2株及びYU14-111株の培養には、以下の表1に示した組成のミネラル塩合成培地(W培地)を使用した。

    最初に試験管及びフラスコを用いた前培養を行った。 YAZ2株及びYU14-111株の種菌(アプリザイム社製、YAZライブラリー)を、ビフェニルを最終濃度0.1%となるように加えた10倍容量W培地へ播種し、振とう速度120rpm、温度30℃で培養した。 細菌が十分に増殖したことを確認後、0.1%ビフェニルを含む10倍容量W培地へ全量を播種し再度培養した。 さらに同様の操作をもう一度繰り返すことで、本培養に十分な菌量を含む前培養液を得た。 本培養には5L容量のジャーファーメンター(エイブル社製、BMS−C型)を用いた。 前培養液をジャーファーメンターへ全量投入し、3Lの培養液に対して、空気通気量4L/分、攪拌回転数600rpm、温度30℃で培養を行った。 炭素源としたビフェニルは、培養菌体の酸素消費量(培養液中の溶存酸素濃度)を目安に適宜追加投入した。 遠心操作により培養液から菌体を回収し、発現したビフェニルジオキシゲナーゼの失活を防ぐために液体窒素で速やかに凍結し、直ちに−80℃の冷凍庫に保存した。

    [参考例2] 細菌が保有するビフェニルジオキシゲナーゼ遺伝子の確認 既知のPCBs分解細菌のBphA1(ビフェニル−2,3−ジオキシゲナーゼ αサブユニット)のアミノ酸配列の比較から、保存性の高い領域を数カ所選び(Asn-Gln/Ser-Cys-Arg/Ser-His-Arg-Gly-Met(配列番号1)並びにGlu-Gln-Asp-Asp-Gly/Thr-Glu-Asn(配列番号2)など)、縮重プライマーを作製した。
    次に、コマモナス・テストステロニ(C. testosteroni) YAZ2株及びYU14-111株の細菌を適当量のTE緩衝液(10mM Tris−HCl,1mM EDTA,pH8.0)に懸濁し、加熱処理して得たゲノムDNAを含む抽出物を鋳型として使用した。 作製した縮重プライマーを用いて、94℃、3分→[94℃、30秒→58〜60℃、30秒→72℃、1分(30サイクル)]→72℃、2分、の反応条件でPCRを行った。 また、BphA1遺伝子を持たないネガティブコントロールとして、大腸菌K−12株のゲノムを含む熱抽出物を用いて同様の反応を行った。

    その結果、図1に示したように、予測される約900bpのBphA1断片増幅産物がYAZ2株及びYU14-111株において検出され、これらの菌株がBphA1遺伝子を保有することを確認した。 試験は3回繰り返して行った。

    [実施例1] ビフェニルジオキシゲナーゼ遺伝子発現細菌によるPCBs分解試験 上記の参考例1に倣い、ビフェニルジオキシゲナーゼ遺伝子を発現するコマモナス・テストステロニ(C. testosteroni)YAZ2株の細菌製剤を作製し、この細菌製剤を波長660nmの濁度で10又は60(湿菌重量で約15mg又は90mg)に調整して、ビフェニル及びPCBs異性体である2,2'−ジクロロビフェニル、4,4'−ジクロロビフェニル、および3,3',4,4'−テトラクロロビフェニルの標準品を、それぞれ0.5ppmの濃度で混合したPCBs混合溶液と、30℃で加温しながら24時間にわたり接触反応させた。 試験は2回繰り返して行った。

    細菌製剤と接触反応させた後の残存PCBsの回収は、酢酸エチルを用いた液−液抽出法で行った。 具体的には、内部標準物質としてアントラセンを添加した試料溶液に対し、2倍容量の酢酸エチルを加えてよく撹拌した後、遠心操作により上層の有機溶媒層を回収する操作を2回繰り返し行った。 無水硫酸ナトリウムで脱水した有機溶媒層を適宜希釈し、ガスクロマトグラフィー質量分析計(アジレント社製、5975GC/MSD)に供した。
    ガスクロマトグラフィーの温度プログラムは、初期温度80℃から20℃/分の昇温速度で130℃まで昇温し、引き続き8℃/分で300℃まで昇温した。 分析カラムは非極性のキャピラリーカラム(アジレント社製、HP-5ms、0.25mm×15m、0.25μm)を使用した。

    細菌製剤とPCBsとを接触反応させた試験サンプルと、PCBs異性体標準品を混合したガスクロマトグラフィー質量分析計のトータルイオンクロマト分析チャート(以下、TICチャート)を図2に示した。
    両者のTICチャートを比較すると、試験サンプルではビフェニルをはじめ、PCBs異性体である2,2'−ジクロロビフェニルや4,4'−ジクロロビフェニル、3,3',4,4'−テトラクロロビフェニルのピークは消失した。
    すなわち、ビフェニルジオキシゲナーゼ遺伝子を発現する細菌は、ビフェニル及びPCBs異性体を分解することを示した。 この結果は、細菌製剤がPCBs分解酵素であるビフェニルジオキシゲナーゼを含有していることを示唆した。

    [実施例2] 酸素マイクロバブル存在下での細菌によるPCBs分解試験 氷冷した20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)に図4に示すような超音波ホモジナイザー(SMT社製、UH-50)に内部がガス通過可能な中空ホーン(出口内径−外径:φ2.6-φ6.0)を取り付けた装置を用いて酸素マイクロバブルを10分間連続充填した。 この装置からは、直径20μm以下のマイクロバブルが発生し、10分間のバブリングにより、20mMリン酸ナトリウム緩衝液中の溶存酸素濃度は約28ppmまで上昇した。
    このマイクロバブル充填溶液0.5mLあたりに、界面活性剤トリトンX−100を最終濃度0.01%又は0.005%、ビフェニルジオキシゲナーゼを発現する細菌製剤を波長660nmの濁度で10又は60(湿菌重量で約15mg又は90mg)、PCBs汚染廃油又は商用PCBsであるカネクロールKC−300(GLサイエンス社製)を10ppm又は100ppmとなるように加えてPCBs分解反応溶液とし、30℃で加温しながら転倒撹拌した。 このとき、20mMリン酸ナトリウム緩衝液に対するPCBs含有油の混合比率は、容量比で約99:1である。 試験は3回繰り返して行った。

    分解反応溶液中の残存PCBsの回収は、実施例1と同様に酢酸エチルを用いた液−液抽出法で行った。 ガスクロマトグラフィー質量分析計による分析やガスクロマトグラフィーの温度プログラムも実施例1と同様にアジレント社製、5975GC/MSDで行い、初期温度80℃から20℃/分の昇温速度で130℃まで昇温し、引き続き8℃/分で300℃まで昇温した。 分析カラムは非極性のキャピラリーカラム(アジレント社製、HP-5ms、0.25mm×15m、0.25μm)を使用した。
    定量解析は内部標準法で行い、また各定点での分析はすべて3回繰り返し行って、定量値の平均と標準偏差を求めた。

    酸素マイクロバブル充填による高酸素溶存下(初期濃度約28ppm)の20mMリン酸ナトリウム緩衝液中で、ビフェニルジオキシゲナーゼ発現細菌製剤であるコマモナス・テストステロニ(C. testosteroni)YU14-111株と、PCBs汚染廃油(PCBs初期濃度;10ppm及び100ppm)との接触反応を行い、24時間経過後のPCBs分解率の結果を図5に示した。

    PCBs初期濃度を10ppmとした分解反応では、マイクロバブルを添加しないコントロールにおける分解率65.8±4.7%に対して、酸素マイクロバブル添加では71.6±3.7%へ分解率が上昇した。 一方、PCBs初期濃度を100ppmとした場合においても、コントロール分解率62.6±9.9%に対して、酸素マイクロバブル存在下では70.7±10.1%と、分解率の上昇を確認した。
    以上の結果から、通常の酸素分圧下での反応と比較して、酸素マイクロバブルを充填するとコマモナス・テストステロニ(C. testosteroni)YU14-111製剤によるPCBsの分解効率が約5〜8%向上することが分かった。

    [実施例3] 酸素マイクロバブル存在下における経時的PCBs分解率の変化 実施例1と同様の方法にて、酸素マイクロバブル充填による高酸素溶存下(初期濃度約28ppm)の20mMリン酸ナトリウム緩衝液中で、ビフェニルジオキシゲナーゼを高発現させたコマモナス・テストステロニ(C. testosteroni)YAZ2細菌製剤と、商用PCBsのカネクロールKC−300(初期濃度100ppm)とを反応させ、48時間後までの残存PCBs濃度の経時的変化を追い、その結果を図6に示した。

    酸素マイクロバブルを充填した場合は充填しない場合と比べて反応開始直後から高い分解活性を示し、両者の分解率には16.1%の差があった(残存PCBs濃度;マイクロバブル充填あり75.6±5.9ppmに対し、充填なし91.7±5.0ppm)。 その後の全測定時間においても、酸素マイクロバブルを充填した場合の方が、一様にPCBs分解率が高く、特に48時間反応後においては、酸素マイクロバブルを充填した場合の残存PCBs濃度は、25.9±1.2ppm;充填しない場合は41.0±7.1ppmと、15.1ppmの差があった。 残存PCBs濃度の全測定時間を通じた両者の平均差は11.6ppmあり、酸素マイクロバブル充填により平均約12%の分解効率の向上を確認した。

    1 汚染物質の無害化装置2 マイクロバブル発生装置10 攪拌槽11 スイッチバルブ12 レギュレーター13 メインバルブ14 フィルター・レギュレーター15 エアーポンプ(コンプレッサー)
    16 逆止弁17 ロータリージョイント18 攪拌翼19 通気管20 バッファータンク30 PCBタンク40 微生物製剤投入口50 振動伝達体51 超音波振動子52 気体供給口53 気体流路54 気体放出口55 超音波放射面56 ケーブル57 振動制御器

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