ピペコリン酸4位酸化酵素およびそれを利用した4−ヒドロキシアミノ酸の製造法

申请号 JP2015559939 申请日 2015-01-27 公开(公告)号 JPWO2015115398A1 公开(公告)日 2017-03-23
申请人 株式会社エーピーアイ コーポレーション; 株式会社エーピーアイ コーポレーション; 发明人 慎 日比; 慎 日比; 順 小川; 順 小川; 良磨 三宅; 良磨 三宅; 潤 川端; 潤 川端;
摘要 以下の(A)、(B)および(C)で例示される、2−オキソグルタル酸および2価鉄イオンの存在下、L−ピペコリン酸に作用してtrans−4−ヒドロキシ−L−ピペコリン酸を生成する活性を有するピペコリン酸4位 水 酸化 酵素タンパク質、および該ピペコリン酸4位水酸化酵素タンパク質またはそれを含む細胞、同細胞の調製物もしくは同細胞を培養して得られた培養液をα−アミノ酸に作用させて、4−ヒドロキシアミノ酸を生成させることを特徴とする、4−ヒドロキシアミノ酸の製造方法。(A) 配列番号2、4、6、8、10、12、16または18で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド;(B) 配列番号2、4、6、8、10、12、16または18で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列を有し、ピペコリン酸4位水酸化酵素活性を有するポリペプチド;または(C) 配列番号2、4、6、8、10、12、16または18で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ピペコリン酸4位水酸化酵素活性を有するポリペプチド。
权利要求

2−オキソグルタル酸および2価鉄イオンの存在下、L−ピペコリン酸に作用してtrans−4−ヒドロキシ−L−ピペコリン酸を生成する活性を有するピペコリン酸4位酸化酵素タンパク質。以下の(A)、(B)および(C)からなる群より選択される請求項1に記載のピペコリン酸4位水酸化酵素タンパク質: (A) 配列番号2、4、6、8、10、12、16または18で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド; (B) 配列番号2、4、6、8、10、12、16または18で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列を有し、ピペコリン酸4位水酸化酵素活性を有するポリペプチド;または (C) 配列番号2、4、6、8、10、12、16または18で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ピペコリン酸4位水酸化酵素活性を有するポリペプチド。糖鎖付加能を持たない宿主により組換えタンパク質として製造された請求項2に記載のピペコリン酸4位水酸化酵素タンパク質。α−アミノ酸に、請求項1〜3のいずれか一項に記載のピペコリン酸4位水酸化酵素タンパク質またはそれを含む細胞、同細胞の調製物もしくは同細胞を培養して得られた培養液を作用させて、4−ヒドロキシアミノ酸を生成させることを特徴とする、4−ヒドロキシアミノ酸の製造方法。前記α−アミノ酸が下記一般式(I)で表され、前記4−ヒドロキシアミノ酸が下記一般式(II)で表される、請求項4に記載の4−ヒドロキシアミノ酸の製造方法。 式中、R1、R2、およびR5は、それぞれ水素原子もしくは炭素数1〜3のアルキル基を示し、R3およびR4はそれぞれ水素原子、炭素数1〜3のアルキル基またはヒドロキシル基を示す。R2は、R5もしくはアミノ基の窒素原子と結合して環構造を形成してもよい。 式中、R1、R2、およびR5はそれぞれ水素原子もしくは炭素数1〜3のアルキル基を示し、R3およびR4はそれぞれ水素原子、炭素数1〜3のアルキル基またはヒドロキシル基を示す。R2は、R5またはアミノ基の窒素原子と結合して環構造を形成してもよい。前記α-アミノ酸がピペコリン酸であり、前記4−ヒドロキシアミノ酸が4−ヒドロキシ−L−ピペコリン酸である、請求項4に記載の4−ヒドロキシアミノ酸の製造方法。前記ピペコリン酸4位水酸化酵素を含む細胞が、ピペコリン酸4位水酸化酵素タンパク質をコードするDNAで形質転換された細胞である、請求項4〜6のいずれか一項に記載の4−ヒドロキシアミノ酸の製造方法。前記ピペコリン酸4位水酸化酵素タンパク質をコードするDNAは、以下の(D)、(E)および(F)からなる群より選択される、請求項7に記載の4−ヒドロキシアミノ酸の製造方法: (D) 配列番号1、3、5、7、9、11、15または17で表される塩基配列を有するDNA; (E) 配列番号1、3、5、7、9、11、15または17で表される塩基配列において1または数個の塩基が置換、欠失もしくは付加された塩基配列を含み、かつピペコリン酸4位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA; (F) 配列番号1、3、5、7、9、11、15または17で表される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を含み、かつピペコリン酸4位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA。以下の(D)、(E)および(F)からなる群より選択されるピペコリン酸4位水酸化酵素タンパク質をコードするDNAで形質転換された生物: (D) 配列番号1、3、5、7、9、11、15または17で表される塩基配列を有するDNA; (E) 配列番号1、3、5、7、9、11、15または17で表される塩基配列において1または数個の塩基が置換、欠失もしくは付加された塩基配列を含み、かつピペコリン酸4位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA; (F) 配列番号1、3、5、7、9、11、15または17で表される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を含み、かつピペコリン酸4位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA。エシェリヒア属、バチルス属、シュードモナス属およびコリネバクテリウム属から選択される、請求項9に記載の微生物。

说明书全文

本発明は、新規なピペコリン酸4位酸化酵素を利用した4−ヒドロキシアミノ酸の製造法に関するものである。

アミノ酸水酸化酵素は医薬品の中間体等の製造に有用な酵素であり、プロリン4位水酸化酵素(非特許文献1)やL−イソロイシンジオキシゲナーゼ(非特許文献2)などの存在が報告されている。ピペコリン酸の水酸化する能を有する酵素としては数種のプロリン水酸化酵素がL−ピペコリン酸の3位または5位を水酸化する能力を有することが報告されているが(非特許文献3)、ピペコリン酸の4位を水酸化する酵素はこれまでに報告例は無い。 配列番号2、4、6、8、10または12に記載のアミノ酸配列はそれぞれ、フザリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)Fo5176、アスペルギルス オリザ(Aspergillus oryzae)RIB40株、ペニシリウム クリソゲヌム(Penicillium chrysogenum) Wisconsin 54-1255株、ギベレラ ゼアエ(Gibberella zeae:別名Fusarium graminearum) PH-1株、コレトトリクム グロエオスポリオイデス(Colletotrichum gloeosporioides) Nara gc5株、アスペルギルス ニデュランス(Aspergillus nidulans:別名Emericella nidulans) FGSC A4株のゲノム配列情報に基づき、タンパク質をコードすると予測されたDNA配列の翻訳アミノ酸配列GenBank accession No. EGU81245、XP_001827566、XP_002558179、XP_383389、ELA34460およびXP_659994と同一である。いずれのタンパク質もカビ由来であるため、存在する場合は発現後糖鎖修飾を受けた状態である可能性が高いが、実際に単離するなどして存在を確認した報告例は無く、これらの機能についても全く不明であった。

光学活性4−ヒドロキシアミノ酸は、医薬品の中間体等として有用な物質である。例えば、(4S)−ヒドロキシ−L−ピペコリン酸はRhoキナーゼ阻害剤の前駆体として(特許文献1)、(4S)−ヒドロキシ−D−ピペコリン酸はNMDA受容体阻害剤であるCGS-20281の前駆体として利用可能である(非特許文献4)。また、(4R)−ヒドロキシ−L−プロリンはブラジキニンB2受容体阻害剤である酢酸イカチバントの前駆体として利用可能であり(非特許文献5)、(4R)−ヒドロキシ−D−プロリンは因子Xa阻害剤の前駆体として利用可能である(特許文献2)。加えて、L−ホモセリンはACE阻害剤であるOmapatrilatの前駆体として(特許文献3)、4−ヒドロキシ−L−ロイシンはサイクロフィリン阻害剤であるSCY-635の前駆体として(非特許文献6)利用可能である。

光学活性4−ヒドロキシアミノ酸の合成法としては、例えば、(4S)−ヒドロキシ−L−ピペコリン酸や(4S)−ヒドロキシ−D−ピペコリン酸について、3−ブテノールと光学活性なC−アミノカルボニルニトロンやC−アルコキシカルボニルニトロンを立体選択的に環化させる方法が報告されている(非特許文献7)。また、(4R)−ヒドロキシ−L−プロリンについてはダクチロスポランギウム(Dactylosporangium)属RH1株由来のプロリン4位水酸化酵素によりL−プロリンから合成する方法(非特許文献1)が報告されており、(4R)-ヒドロキシ−D−プロリンについてはα,β-ジデヒドロアミノ酸を経由する方法(非特許文献8)が報告されている。さらに、L−ホモセリンについては組換え大腸菌を使用した発酵により合成する方法(特許文献4)が報告されており、4−ヒドロキシ−L−ロイシンはバシラス・スリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)2e2株由来のL−イソロイシンジオキシゲナーゼによりL−ロイシンから合成する方法(非特許文献2)が報告されている。 しかしながら、これらの手法はそれぞれ、原料が高価で工程数が多い、適用できる化合物種が少ない、精製の負荷が大きいなどの問題を抱えており、より効率的な合成法が求められていた。

特表2010-514720号公報

特表2009-526813号公報

特開平7-48259号公報

WO2013/134625号パンフレット

Shibasakiら、Appl. Environ. Microbiol., 1999, 65, 4028

Hibiら、Appl. Environ. Microbiol., 2011, 77, 6926

Kleinら、Adv. Synth. Catal., 2011, 353, 1375

Occhiatoら、SYNTHESIS, 2009, 3611

Borkら、Nat. Rev. Drug Discov., 2008, 7, 801

Hopkinsら、Antimicrobial. Agents Chemother., 2010, 54, 660

Corderoら、Eur. J. Org. Chem., 2006, 3235

Kimuraら、Bull. Chem. Soc. Jpn., 2002, 75, 2517

本発明は、新規なピペコリン酸4位水酸化酵素、および4−ヒドロキシアミノ酸、特に光学活性4−ヒドロキシアミノ酸を安価かつ簡便に製造する新規な方法を提供することを課題とする。

本発明者らは、上記課題を解決するために、光学活性4−ヒドロキシアミノ酸の製造方法について鋭意検討した結果、これまでタンパク質として単離された報告が無く、機能が不明であったフザリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)Fo5176株由来のタンパク質FOXB_08233およびそのホモログタンパク質が2−オキソグルタル酸依存的なピペコリン酸4位水酸化酵素活性を有することを見出した。そして、これらのタンパク質をコードするDNAを用いて形質転換体を作製し、該形質転換体細胞、その調製物および/または培養液を各種アミノ酸に作用させることにより、高い光学純度で種々の光学活性4−ヒドロキシアミノ酸を得ることができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。

すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。 [1]2−オキソグルタル酸および2価鉄イオンの存在下、L−ピペコリン酸に作用してtrans−4−ヒドロキシ−L−ピペコリン酸を生成する活性を有するピペコリン酸4位水酸化酵素タンパク質。 [2]以下の(A)、(B)および(C)からなる群より選択される[1]のピペコリン酸4位水酸化酵素タンパク質: (A) 配列番号2、4、6、8、10、12、16または18で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチド; (B) 配列番号2、4、6、8、10、12、16または18で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列を有し、ピペコリン酸4位水酸化酵素活性を有するポリペプチド;または (C) 配列番号2、4、6、8、10、12、16または18で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、ピペコリン酸4位水酸化酵素活性を有するポリペプチド。 [3]糖鎖付加能を持たない宿主により組換えタンパク質として製造された[2]に記載のピペコリン酸4位水酸化酵素タンパク質。 [4]α−アミノ酸に、[1]〜[3]のいずれかに記載のピペコリン酸4位水酸化酵素タンパク質またはそれを含む細胞、同細胞の調製物もしくは同細胞を培養して得られた培養液を作用させて、4−ヒドロキシアミノ酸を生成させることを特徴とする、4−ヒドロキシアミノ酸の製造方法。 [5]前記α−アミノ酸が下記一般式(I)で表され、前記4−ヒドロキシアミノ酸が下記一般式(II)で表される、[4]に記載の4−ヒドロキシアミノ酸の製造方法。

式中、R1、R2、R3、R4 およびR5はそれぞれ水素原子もしくは炭素数1〜3のアルキル基を示し、R2はR5もしくはアミノ基の窒素原子と結合して環構造を形成してもよい。

式中、R1、R2、R3、R4 およびR5はそれぞれ水素原子もしくは炭素数1〜3のアルキル基を示し、R2はR5もしくはアミノ基の窒素原子と結合して環構造を形成してもよい。 [6]前記α−アミノ酸がピペコリン酸であり、前記が4−ヒドロキシ−L−ピペコリン酸である、[4]に記載の4−ヒドロキシアミノ酸の製造方法。 [7]前記ピペコリン酸4位水酸化酵素を含む細胞が、ピペコリン酸4位水酸化酵素タンパク質をコードするDNAで形質転換された細胞である、[4]〜[6]のいずれかに記載の4−ヒドロキシアミノ酸の製造方法。 [8]前記ピペコリン酸4位水酸化酵素タンパク質をコードするDNAは、以下の(D)、(E)および(F)からなる群より選択される、[7]に記載の4−ヒドロキシアミノ酸の製造方法: (D) 配列番号1、3、5、7、9、11、15または17で表される塩基配列を有するDNA; (E) 配列番号1、3、5、7、9、11、15または17で表される塩基配列において1または数個の塩基が置換、欠失もしくは付加された塩基配列を含み、かつピペコリン酸4位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA; (F) 配列番号1、3、5、7、9、11、15または17で表される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を含み、かつピペコリン酸4位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA。 [9]以下の(D)、(E)および(F)からなる群より選択されるピペコリン酸4位水酸化酵素タンパク質をコードするDNAで形質転換された生物: (D) 配列番号1、3、5、7、9、11、15または17で表される塩基配列を有するDNA; (E) 配列番号1、3、5、7、9、11、15または17で表される塩基配列において1または数個の塩基が置換、欠失もしくは付加された塩基配列を含み、かつピペコリン酸4位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA; (F) 配列番号1、3、5、7、9、11、15または17で表される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズする塩基配列を含み、かつピペコリン酸4位水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNA。 [10]エシェリヒア属、バチルス属、シュードモナス属およびコリネバクテリウム属から選択される、[9]に記載の微生物。

本発明によれば、効率よく種々の4−ヒドロキシアミノ酸を製造することができる。特に、医薬中間体として有用な、(4S)−ヒドロキシ−L−ピペコリン酸や(4S)−ヒドロキシ−D−ピペコリン酸などの光学活性4−ヒドロキシアミノ酸を高い光学純度で効率よく製造することができる。

pFoPA4Hにて形質転換した大腸菌とL−プロリンを反応させた反応液のLC-MS分析結果を示す図。

pFoPA4Hにて形質転換した大腸菌とL−ロイシンを反応させた反応液のLC-MS分析結果を示す図。

pFoPA4Hにて形質転換した大腸菌とL−ピペコリン酸を反応させた反応液のLC-MS分析結果を示す図。

pEnPA4Hにて形質転換した大腸菌とD−プロリンを反応させた反応液のLC-MS分析結果を示す図。

pEnPA4Hにて形質転換した大腸菌と(S)−2−アミノ酪酸を反応させた反応液のLC-MS分析結果を示す図。

pFoPA4Hにて形質転換した大腸菌をL−ピペコリン酸と反応させて得られた反応生成物の

1H-NMR分析結果を示す図(中間調画像)。

pFoPA4Hにて形質転換した大腸菌をL−ピペコリン酸と反応させて得られた反応生成物の

13C-NMR分析結果を示す図(中間調画像)。

pEnPA4Hにて形質転換した大腸菌から得られた無細胞抽出液と(5S)−ヒドロキシ−L−ピペコリン酸を反応させた反応液のLC-MS分析結果を示す図。

pEnPA4Hにて形質転換した大腸菌から得られた無細胞抽出液と(4S)−ヒドロキシ−L−プロリンを反応させた反応液のLC-MS分析結果を示す図。

以下に、本発明を詳細に説明する。 <ピペコリン酸4位水酸化酵素およびそれを用いた4−ヒドロキシアミノ酸の製造方法> 本発明のピペコリン酸4位水酸化酵素は、配列番号2、4、6、8、10、12、16または18に記載のアミノ酸配列を有するもの、または該アミノ酸配列のホモログであってピペコリン酸4位水酸化酵素活性を有するものである。 配列番号2、4、6、8、10または12に記載のアミノ酸配列はそれぞれ、フザリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)c8D株、アスペルギルス オリザ(Aspergillus oryzae) RIB40株、ペニシリウム クリソゲヌム(Penicillium chrysogenum) Wisconsin 54-1255株、ギベレラ ゼアエ(Gibberella zeae:別名Fusarium graminearum) PH-1株、コレトトリクム グロエオスポリオイデス(Colletotrichum gloeosporioides) Nara gc5株、アスペルギルス ニデュランス(Aspergillus nidulans:別名Emericella nidulans) FGSC A4株由来であり、本発明においてピペコリン酸4位水酸化酵素であると同定されたタンパク質のアミノ酸配列である。配列番号16または18に記載のアミノ酸配列は日本国内の土壌サンプル中から直接回収されたDNAの解析から得られた配列であり、本発明においてピペコリン酸4位水酸化酵素であると同定されたタンパク質のアミノ酸配列である。配列番号16に記載のアミノ酸配列はVariovorax paradoxus EPS由来の機能未知タンパク質(GenBank accession No. YP_004156498)と97%の相同性を示すが、機能が確認された報告例はない。また、配列番号18に記載のアミノ酸配列はBurkholderia sp A1由来の機能未知タンパク質(GenBank accession No. WP_029951026)と50%の相同性を示すが、機能が確認された報告例はない。 いずれの配列も配列情報のみからはピペコリン酸の水酸化酵素と推測することは困難であり、本発明において初めてピペコリン酸4位水酸化酵素であると同定されたものである。 なお、ピペコリン酸4位水酸化酵素は複数用いてもよい。

本明細書において、ピペコリン酸4位水酸化酵素活性とは、2−オキソグルタル酸および2価鉄の存在下でL−ピペコリン酸の4位の炭素原子に水酸基を付加し、trans−4−ヒドロキシ−L−ピペコリン酸を生成する活性をいう。このような活性は、L−ピペコリン酸を基質として含有し、さらに2−オキソグルタル酸および2価鉄を補因子として含有する反応系において、酵素として、目的のタンパク質、該タンパク質を発現する細胞またはその調製物を作用させて、後述の実施例のようにtrans−4−ヒドロキシ−L−ピペコリン酸の生成を測定することにより確認することができる。

本発明の配列番号2、4、6、8、10、12、16または18に記載のアミノ酸配列を有するピペコリン酸4位水酸化酵素のホモログとしては、ピペコリン酸4位水酸化酵素活性を保持する限り、配列番号2、4、6、8、10、12、16または18に記載のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列を有するものが挙げられる。ここで「1または数個のアミノ酸」とは、例えば、1〜100個、好ましくは1〜50個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個、特に好ましくは1〜5個、のアミノ酸である。

また、上記ホモログは、ピペコリン酸4位水酸化酵素活性を保持する限り、配列番号2、4、6、8、10、12、16または18に示されるアミノ酸配列全長と少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有するタンパク質であってもよい。

本発明に使用しうるピペコリン酸4位水酸化酵素は上記の微生物から精製して得ることもできるが、ピペコリン酸4位水酸化酵素をコードするDNAをPCRやハイブリダイゼーションなどの公知の方法でクローン化し、それを適当な宿主で発現させることによって得ることもできる。

ピペコリン酸4位水酸化酵素をコードするDNAとしては、例えば、配列番号1、3、5、7、9、11、15または17で表される塩基配列を含むものが挙げられる。 また、ピペコリン酸4位水酸化酵素活性を有するタンパク質をコードする限り、配列番号1、3、5、7、9、11、15または17の塩基配列を含むDNAのホモログでもよい。このようなホモログとしては、例えば、配列番号1、3、5、7、9、11、15または17の塩基配列において1または数個の塩基が置換、欠失もしくは付加された塩基配列を含むものが挙げられる。 ここでいう1または数個の塩基とは、例えば、1〜300個、好ましくは1〜150個、より好ましくは1〜60個、さらに好ましくは1〜30個、特に好ましくは1〜15個、の塩基である。

さらに、上記DNAのホモログは、ピペコリン酸4位水酸化酵素活性を有するタンパク質をコードする限り、配列番号1、3、5、7、9、11、15または17の塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAであってもよい。ここで、「ストリンジェントな条件」としては、例えば、0.1×SSC(saline-sodium citrate)、0.1%SDS(sodium dodecyl sulfate)、60℃の条件で洗浄することを含む条件が挙げられる。

当業者であれば、配列番号1、3、5、7、9、11、15または17のDNAに部位特異的変異導入法(Nucleic Acids Res. 10, pp.6487 (1982)、Methods in Enzymol. 100, pp.448(1983)、MolecularCloning、PCR A Practical Approach IRL Press pp.200(1991))等を用いて適宜置換、欠失、挿入および/または付加変異を導入することにより、上記のようなDNAホモログを得ることが可能である。

また、配列番号2、4、6、8、10、12、16または18のアミノ酸配列またはその一部や、配列番号1、3、5、7、9、11、15または17で表される塩基配またはその一部をもとに、例えば、DNA Databank of JAPAN(DDBJ)等のデータベースに対してホモロジー検索を行って、ピペコリン酸4位水酸化酵素活性のアミノ酸情報またはそれをコードするDNAの塩基配列情報を手に入れることも可能である。

本発明の4−ヒドロキシアミノ酸の製造方法においては、ピペコリン酸4位水酸化酵素を直接反応に使用してもよいが、ピペコリン酸4位水酸化酵素を含む細胞やその調製物もしくは同細胞を培養して得られた培養液を用いることが好ましい。 ピペコリン酸4位水酸化酵素を含む細胞としては、もともとピペコリン酸4位水酸化酵素を有する微生物などの細胞を用いてもよいが、ピペコリン酸4位水酸化酵素をコードする遺伝子で形質転換された細胞を用いることが好ましい。 ピペコリン酸4位水酸化酵素を含む細胞の調製物としては、例えば、該細胞をアセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トルエン等の有機溶媒や界面活性剤により処理したもの、凍結乾燥処理したもの、物理的または酵素的に破砕したもの等の細胞調製物、細胞中の酵素画分を粗製物あるいは精製物として取り出したもの、さらには、これらをポリアクリルアミドゲル、カラギーナンゲル等に代表される担体に固定化したもの等を用いることができる。

上記のようにして単離された、ピペコリン酸4位水酸化酵素をコードするDNAを公知の発現ベクターに発現可能に挿入することにより、ピペコリン酸4位水酸化酵素発現ベクターが提供される。そして、この発現ベクターで宿主細胞を形質転換することにより、ピペコリン酸4位水酸化酵素をコードするDNAが導入された形質転換体を得ることができる。形質転換体は、宿主の染色体DNAにピペコリン酸4位水酸化酵素をコードするDNAを相同組み換えなどの手法によって発現可能に組み込むことによっても得ることができる。

形質転換体の作製方法としては、具体的には、微生物などの宿主細胞において安定に存在するプラスミドベクターやファージベクターやウイルスベクター中に、ピペコリン酸4位水酸化酵素をコードするDNAを導入し、構築された発現ベクターを該宿主細胞中に導入するか、もしくは、直接宿主ゲノム中に該DNAを導入し、その遺伝情報を転写・翻訳させる方法が例示される。このとき、宿主において適当なプロモーターをDNAの5'−側上流に連結させることは好ましく、さらに、ターミネーターを3'−側下流に連結させることがより好ましい。このようなプロモーターおよびターミネーターとしては、宿主として利用する細胞中において機能することが知られているプロモーターおよびターミネーターであれば特に限定されず、例えば、「微生物学基礎講座8遺伝子工学・共立出版」などに宿主微生物において利用可能なベクター、プロモーターおよびターミネーターが詳細に記述されている。

ピペコリン酸4位水酸化酵素を発現させるための形質転換の対象となる宿主微生物としては、宿主自体がα‐アミノ酸の反応に悪影響を与えない限り特に限定されることはなく、具体的には以下に示すような微生物を挙げることができる。

エシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、セラチア(Serratia)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属などに属する宿主ベクター系の確立されている細菌。

ロドコッカス(Rhodococcus)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属などに属する宿主ベクター系の確立されている放線菌。

サッカロマイセス(Saccharomyces)属、クルイベロマイセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、ヤロウイア(Yarrowia)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、ピキア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属などに属する宿主ベクター系の確立されている酵母

ノイロスポラ(Neurospora)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、セファロスポリウム(Cephalosporium)属、トリコデルマ(Trichoderma)属などに属する宿主ベクター系の確立されているカビ。

形質転換体作製のための手順、宿主に適合した組換えベクターの構築および宿主の培養方法は、分子生物学、生物工学、遺伝子工学の分野において慣用されている技術に準じて行うことができる(例えば、Molecular Cloningに記載の方法)。

以下、具体的に、好ましい宿主微生物、各微生物における好ましい形質転換の手法、ベクター、プロモーター、ターミネーターなどの例を挙げるが、本発明はこれらの例に限定されない。

エシェリヒア属、特にエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)においては、プラスミドベクターとしては、pBR、pUC系プラスミドが挙げられ、lac(β−ガラクトシダーゼ)、trp(トリプトファンオペロン)、tac、trc(lac、trpの融合)、λファージPL、PRなどに由来するプロモーターなどが挙げられる。また、ターミネーターとしては、trpA由来、ファージ由来、rrnBリボソーマルRNA由来のターミネーターなどが挙げられる。

バチルス属においては、ベクターとしては、pUB110系プラスミド、pC194系プラスミドなどを挙げることができ、また、染色体にインテグレートすることもできる。プロモーターおよびターミネーターとしては、アルカリプロテアーゼ、中性プロテアーゼ、α−アミラーゼ等の酵素遺伝子のプロモーターやターミネーターなどが利用できる。

シュードモナス属においては、ベクターとしては、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)などで確立されている一般的な宿主ベクター系や、トルエン化合物の分解に関与するプラスミド、TOLプラスミドを基本にした広宿主域ベクター(RSF1010などに由来する自律的複製に必要な遺伝子を含む)pKT240(Gene, 26, 273-82 (1983))を挙げることができる。

ブレビバクテリウム属、特にブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)においては、ベクターとしては、pAJ43(Gene 39,281(1985))などのプラスミドベクターを挙げることができる。プロモーターおよびターミネーターとしては、大腸菌で使用されている各種プロモーターおよびターミネーターが利用可能である。

コリネバクテリウム属、特にコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)においては、ベクターとしては、pCS11(特開昭57-183799号公報)、pCB101(Mol. Gen. Genet. 196, 175 (1984))などのプラスミドベクターが挙げられる。

サッカロマイセス(Saccharomyces)属、特にサッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)においては、ベクターとしては、YRp系、YEp系、YCp系、YIp系プラスミドが挙げられる。また、アルコール脱水素酵素、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素、酸性フォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ホスホグリセレートキナーゼ、エノラーゼといった各種酵素遺伝子のプロモーター、ターミネーターが利用可能である。

シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属においては、ベクターとしては、Mol. Cell. Biol. 6, 80 (1986)に記載のシゾサッカロマイセス・ポンベ由来のプラスミドベクターを挙げることができる。特に、pAUR224は、宝酒造から市販されており容易に利用できる。

アスペルギルス(Aspergillus)属においては、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリジー (Aspergillus oryzae)などがカビの中で最もよく研究されており、プラスミドや染色体へのインテグレーションが利用可能であり、菌体外プロテアーゼやアミラーゼ由来のプロモーターが利用可能である(Trendsin Biotechnology 7, 283-287 (1989))。 上記の微生物の中で特に好ましい微生物として、糖鎖付加能を持たないエシェリヒア属、バチルス属、シュードモナス属およびコリネバクテリウム属の微生物が挙げられる。

また、上記以外でも、各種微生物に応じた宿主ベクター系が確立されており、それらを適宜使用することができる。 また、微生物以外でも、植物、動物において様々な宿主・ベクター系が確立されており、特に蚕を用いた昆虫などの動物中(Nature 315, 592-594 (1985))や菜種、トウモロコシ、ジャガイモなどの植物中に大量に異種タンパク質を発現させる系、および大腸菌無細胞抽出液や小麦胚芽などの無細胞タンパク質合成系を用いた系が確立されており、好適に利用できる。

ピペコリン酸4位水酸化酵素、該酵素を含む細胞、該細胞の調製物または培養液を、2−オキソグルタル酸および2価鉄イオンの存在下、反応基質であるα‐アミノ酸に作用させることにより、4−ヒドロキシアミノ酸を生成させる。 ここで、反応基質であるα−アミノ酸は4位において水酸基に置換し得る水素原子を有するものであれば特に制限されないが、以下の一般式(I)で表される化合物が例示される。また、4−ヒドロキシアミノ酸としては、以下の一般式(II)で表される化合物が例示される。なお、α−アミノ酸および4−ヒドロキシアミノ酸はL体またはD体であることが好ましいが、ラセミ体であってもよい。

一般式(I)および(II)においては、R1、R2、およびR5はそれぞれ水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示し、R3およびR4はそれぞれ水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、またはヒドロキシル基を示す。R2はR5またはアミノ基の窒素原子と結合して環構造を形成してもよい。

具体的なα−アミノ酸の種類としては、例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン(R2とアミノ基の窒素原子が結合して5員環を形成したもの)、α−アミノ酪酸、ノルバリン、ノルロイシン、ピペコリン酸(R2とR5が結合して6員環を形成したもの)、3−ヒドロキシプロリン、3−ヒドロキシピペコリン酸、5−ヒドロキシピペコリン酸などが挙げられ、特に好ましくはピペコリン酸である。

反応は、α−アミノ酸、2−オキソグルタル酸、2価鉄イオンおよびピペコリン酸4位水酸化酵素またはそれを含む細胞、同細胞の調製物もしくは培養物を含有する水性媒体中、もしくは該水性媒体と有機溶媒との混合物中で行われる。 水性媒体としては、水または緩衝液が挙げられる。ここで、緩衝液としては、ピペコリン酸4位水酸化酵素の活性を阻害しない緩衝液であれば特に制限されないが、例えば、リン酸緩衝液、MES(2-Morpholinoethanesulfonic acid)緩衝液などが例示される。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール、アセトン、ジメチルスルホキシド等、反応基質の溶解度が高い物を使用することができる。有機溶媒としてはまた、反応副産物の除去等に効果のある酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、クロロホルム、n−ヘキサン等を使用することもできる。

反応基質となるα−アミノ酸は、通常、基質濃度が0.01%w/v〜90%w/v、好ましくは0.1%w/v〜30%w/vの範囲で用いられる。反応基質は、反応開始時に一括して添加してもよいが、酵素の基質阻害があった場合の影響を減らすという点や生成物の蓄積濃度を向上させるという観点からすると、連続的もしくは間欠的に添加することが望ましい。 反応に必要な2−オキソグルタル酸は、通常、基質と等モルまたはそれ以上、好ましくは等モル〜1.2倍モルの範囲で添加する。2−オキソグルタル酸は、反応開始時に一括して添加してもよいが、酵素への阻害作用があった場合の影響を減らすという点や生成物の蓄積濃度を向上させるという観点からすると、連続的もしくは間欠的に添加することが望ましい。または2−オキソグルタル酸の代わりにグルコースやL−グルタミン酸等の宿主が代謝可能な安価な化合物を添加し、宿主に代謝させ、その過程で生じる2−オキソグルタル酸を反応に使用させることも可能である。 反応に必要な2価鉄イオンは通常、0.01mmol/L〜100mmol/L、好ましくは0.1mmol/L〜10mmol/Lの範囲で用いられる。2価鉄イオンは通常、反応開始時に一括して添加して使用するが、反応中に3価鉄イオンに酸化されたり、沈殿を形成して減少した場合は追添加することも効果的である。また、ピペコリン酸4位水酸化酵素、該酵素を含む細胞、該細胞の調製物または培養液に既に十分な2価鉄イオンが含まれている場合は添加しなくてもよい。 反応は、通常4℃〜60℃、好ましくは10℃〜45℃の反応温度で、通常pH3〜11、好ましくはpH5〜8で行われる。反応時間は通常、1時間〜72時間程度である。

反応液に添加する細胞および/または該細胞調製物の量は、細胞を添加する場合は反応液にその細胞の濃度が通常、湿菌体重で0.1%w/v〜50%w/v程度、好ましくは1%w/v〜20%w/vとなるように添加し、細胞調製物を用いる場合には、細胞調製物の酵素の比活性を求め、添加したときに上記細胞濃度になるような量を添加する。

本発明の方法により生成する4−ヒドロキシアミノ酸は、反応終了後、反応液中の菌体やタンパク質などを遠心分離、膜処理などにより分離した後に、1−ブタノール、tert−ブタノールなどの有機溶媒による抽出、蒸留、イオン交換樹脂やシリカゲル等を用いたカラムクロマトグラフィー、等電点における晶析や一塩酸塩、二塩酸塩、カルシウム塩等での晶析等を適宜組み合わせることにより精製を行うことができる。

[実施例] 以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。

<ピペコリン酸4位水酸化酵素遺伝子発現プラスミドの構築> (1)遺伝子のクローニング フザリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)Fo5176由来hypothetical protein FOXB_08233をコードする遺伝子配列を元に、hypothetical protein FOXB_08233相同遺伝子の全長を増幅させるためのプライマーBOF1およびBOR1を設計、合成した。それぞれの塩基配列を、配列表の配列番号13および14に示す。 フザリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)c8DをPotato dextrose液体培地(日本BD社製)で一晩培養して得られた菌体より、DNeasy Blood & Tissue Kit (キアゲン社製)を用いて、染色体DNAを調製した。 調製した各菌株由来の染色体DNAを鋳型とし、配列番号13および14のオリゴヌクレオチドをプライマーとして、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、それぞれ約1kbpのDNA断片を増幅した。PCRは、Tks Gflex DNA polymerase(タカラバイオ社製)を使用し、添付の取扱説明書の条件に従って反応を実施した。温度プログラムは、95℃で1分間保持した後、(98℃、10秒;56.5℃、15秒;68℃、40秒)を35サイクル繰り返し、72℃で3分間保持して終了した。得られたDNA配列を解析した結果を配列番号1に、また、本DNA配列がコードするアミノ酸配列を配列番号2に示す。

(2)発現用プラスミドの調製 上記(1)で得られたDNA断片を、制限酵素BamHIとHindIIIで消化し、Ligation-Convenience Kit(ニッポンジーン社製)を用いて、制限酵素BamHIとHindIIIで消化されたプラスミドベクターpQE80L(キアゲン社製)に導入した。以下、得られたプラスミドをpFoPA4Hと称する。また、配列番号3、5、7、9および11のDNA配列をDNA2.0社にて合成し、同社にて発現プラスミドpJexpress411に挿入した。以下、得られたプラスミドをそれぞれpAoPA4H、pPcPA4H、GzPA4H、pCgPA4HおよびpEnPA4Hと称する。

<ピペコリン酸4位水酸化酵素の活性評価> 実施例1で得られた6種のプラスミド、pFoPA4H、pAoPA4H、pPcPA4H、GzPA4H、pCgPA4HおよびpEnPA4Hを用い、大腸菌(Escherichia coli) Rosetta 2 (DE3)(メルクミリポア社製)を常法に従い形質転換した。得られた組換え大腸菌それぞれをカナマイシン50mg/L、クロラムフェニコール 15mg/L、IPTG(Isopropyl β-D-1-thiogalactopyranoside) 1mmol/Lを含む液体LB培地を用いて30℃で振盪培養し、培養20時間目に集菌した。 得られた菌体を用いて、2−オキソグルタル酸15mmol/L、アスコルビン酸5mmol/L、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩 5mmol/L、FeSO4・7H2O 0.5mmol/L、クエン酸3mmol/L、各種基質化合物10mmol/Lを含む50mmol/L MES(2-Morpholinoethanesulfonic acid)緩衝液中で、20℃、pH6の条件で21時間反応させた。 反応後の反応液を下記条件の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した。 カラム: CHIRALPAK AD-3(4.6×250 mm、ダイセル化学社製) 溶離液: ヘキサン : エタノール : トリフルオロ酢酸 = 95 : 5 : 0.1 流速: 0.8 ml/min 温度: 30℃ 検出: UV 210 nm

<反応生成物の同定> 実施例2で得られた反応液はウォーターズ社 AccQ・Tagメソッドを用いて誘導体化した後、下記条件の高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)にて分離分析することにより、アミノ酸の反応生成物を測定した。 カラム: XBridge C18 5μm(2.1×150 mm、ウォーターズ社製) 溶離液A:酢酸アンモニウム(10 mmol/L、pH 5) 溶離液B:メタノール(0〜0.5 min. (0 %→1 %), 0.5〜18 min. (1 %→5 %), 18〜19 min.(5 %→9 %), 19〜29.5 min. (9 %→17 %), 29.5〜40 min. (17 %→60 %), 40〜43 min. (60 %)) 流速: 0.3 ml/min 温度: 30℃ 検出:質量分析計

6種の大腸菌を用いた反応液に関して、LC-MS分析において新規ピークの出現が確認された基質アミノ酸を表1に示した。これら新規反応産物の分子量は、すべて基質から16増加したものであることが確認されたことから、すべて基質に酸素原子が付加した化合物であると考えられる。

(1)pFoPA4Hにて形質転換した大腸菌とL−プロリンを含む反応液のLC-MS分析結果を図1に示した。反応生成物のピークは、trans−4−ヒドロキシ−L−プロリンの標準物質と同じ保持時間を示したことから、本反応生成物はtrans−4−ヒドロキシ−L−プロリンであることが推定された。この結果はpAoPA4HまたはpEnPA4Hにて形質転換した大腸菌を用いた時も同様であった。

(2)pFoPA4Hにて形質転換した大腸菌とL−ロイシンを含む反応液のLC-MS分析結果を図2に示した。反応生成物のピークは、4−ヒドロキシ−L−ロイシンの標準物質と同じ保持時間を示したことから、本反応生成物はtrans-4−ヒドロキシ−L−ロイシンであることが推定された。この結果はpAoPA4H、pPcPA4H、GzPA4H、pCgPA4HまたはpEnPA4Hにて形質転換した大腸菌を用いた時も同様であった。

(3)pFoPA4Hにて形質転換した大腸菌をL−ピペコリン酸と反応させて得られた反応生成物を下記条件の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分取した。 カラム: TSKgel Amide80(7.8×300 mm、東ソー社製) 溶離液: 酢酸アンモニウム(10 mmol/L、pH 5) : アセトニトリル = 15 : 85 流速: 2.3 ml/min 温度: 40℃ 検出: UV 210 nm

反応生成物を含む溶出液を回収し、遠心エバポレーターにより減圧乾燥した。残留物を重水で懸濁した後、磁気共鳴スペクトルを測定した。 1H-NMR(図6)、13C-NMR(図7)解析の結果得られた化学シフト値、およびHH-COSY、CH-HMQC解析の結果得られた相関、さらに文献情報(Molnar, T.ら、2008, Bioorg. Med. Chem. Lett., 18, 6290)から、本反応生成物はtrans−4−ヒドロキシ−L−ピペコリン酸であると同定された。 pFoPA4Hにて形質転換した大腸菌とL−ピペコリン酸を含む反応液のLC-MS分析結果を図3に示した。反応生成物であるtrans−4−ヒドロキシ−L−ピペコリン酸のピークは、10.9分に溶出した。この結果はpAoPA4H、pPcPA4H、GzPA4H、pCgPA4HまたはpEnPA4Hにて形質転換した大腸菌を用いた時も同様であった。

(4)pEnPA4Hにて形質転換した大腸菌とD−プロリンを含む反応液のLC-MS分析結果を図4に示した。反応生成物のピークは、cis−4−ヒドロキシ−L−プロリンの標準物質と同じ保持時間を示したことから、本反応生成物はcis-4−ヒドロキシ−D−プロリンであることが推定された。

(5)pEnPA4Hにて形質転換した大腸菌と(S)−2−アミノ酪酸を含む反応液のLC-MS分析結果を図5に示した。反応生成物のピークは、L−ホモセリンの標準物質と同じ保持時間を示したことから、本反応生成物はL−ホモセリンであることが推定された。

<ピペコリン酸4位水酸化酵素のヒドロキシアミノ酸への水酸化活性評価> 実施例2で得られた菌体から得た無細胞抽出液を用いて、2−オキソグルタル酸15mmol/L、アスコルビン酸5mmol/L、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩5mmol/L、FeSO4・7H2O 0.5mmol/L、クエン酸3mmol/L、各種基質化合物10mmol/Lを含む50mmol/L MES緩衝液中で、20℃、pH6の条件で21時間反応させた。反応後の反応液は実施例2に記載の条件の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した。 2種の無細胞抽出液を用いた反応液に関して、LC-MS分析において新規ピークの出現が確認された基質のヒドロキシアミノ酸を表2に示した。これら新規反応生成物の分子量は、基質から16増加したものであると確認されたことから、すべてヒドロキシアミノ酸に酸素原子が付加したジヒドロキシアミノ酸であると考えられる。

<ピペコリン酸4位水酸化酵素遺伝子発現プラスミドの構築> 土壌サンプル中から直接回収されたDNAの配列解析の結果から、アミノ酸水酸化酵素の遺伝子である可能性が考えられる配列番号15および17が見出された。それぞれにコードされるアミノ酸配列は配列番号16および18に示した。 PCRによりそれぞれ約1kbpのDNA断片を増幅した。得られた断片について実施例1に記載の手法に従いpQE80L (キアゲン社製)に導入した。以下、得られたプラスミドをそれぞれpVsPA4H、およびpBsPA4Hと称する。

<ピペコリン酸4位水酸化酵素の活性評価> 実施例5で得られた2種のプラスミド、pVsPA4HおよびpBsPA4Hを用い、大腸菌(Escherichia coli) Rosetta 2 (DE3)(メルクミリポア社製)を常法に従い形質転換した。得られた組換え大腸菌それぞれをアンピシリン50mg/L、クロラムフェニコール15mg/L、 IPTG 1mmol/Lを含む液体LB培地を用いて30℃で振盪培養し、培養20時間目に集菌した。得られた菌体から得た無細胞抽出液を用いて、2−オキソグルタル酸15mmol/L、アスコルビン酸5mmol/L、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩 5mmol/L、FeSO4・7H2O 0.5mmol/L、クエン酸3mmol/L、基質化合物(L−ピペコリン酸)10mmol/Lを含む50mmol/L MES緩衝液中で、20℃、pH6の条件で21時間反応させた。 反応後の反応液を前述の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した。その結果いずれの反応液からもtrans-4−ヒドロキシ−L−ピペコリン酸の分子量に一致する化合物を確認した。

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