細胞の3次元階層的共培養法

申请号 JP2010542148 申请日 2009-12-14 公开(公告)号 JPWO2010067904A1 公开(公告)日 2012-05-24
申请人 国立大学法人 東京大学; 国立大学法人 東京大学; 发明人 昌治 竹内; 昌治 竹内; 行子 松永; 行子 松永; 雄矢 森本; 雄矢 森本;
摘要 コア領域を形成するゲル層と、当該ゲル層の周囲を覆う細胞(カバー細胞)とを含むバイオマテリアルの製造方法であって、以下の工程:(a)生体適合性を有する油若しくは 植物 油 、又はこれらの油と鉱油との混合油と、ゲル形成成分を含む溶液とを 接触 させて単分散液滴を生成する工程、(b)前記単分散液滴をゲル化してゲル玉を得る工程、並びに(c)前記ゲル玉の表面に前記カバー細胞を播種する工程を含む前記方法。
权利要求
  • コア領域を形成するゲル層と、当該ゲル層の周囲を覆う細胞(カバー細胞)とを含むバイオマテリアルの製造方法であって、以下の工程:
    (a)生体適合性を有する油若しくは植物油、又はこれらの油と鉱油との混合油と、ゲル形成成分を含む溶液とを接触させて単分散液滴を生成する工程、
    (b)前記単分散液滴をゲル化してゲル玉を得る工程、並びに (c)前記ゲル玉の表面に前記カバー細胞を播種する工程 を含む前記方法。
  • コア領域を形成し細胞(コア細胞)を内包するゲル層と、当該ゲル層の周囲を覆う細胞(カバー細胞)とを含むバイオマテリアルの製造方法であって、以下の工程:
    (a)生体適合性を有する油若しくは植物油、又はこれらの油と鉱油との混合油と、前記コア細胞及びゲル形成成分を含む溶液とを接触させて単分散液滴を生成する工程、
    (b)前記単分散液滴をゲル化してゲル玉を得る工程、並びに (c)前記ゲル玉の表面に前記カバー細胞を播種する工程 を含む前記方法。
  • コア領域を形成するゲル層又はコア領域を形成し細胞(コア細胞)を内包するゲル層と、当該ゲル層の周囲を覆う細胞(カバー細胞)と、さらにその周囲をゲル層及びカバー細胞で順次覆われた層及び細胞とを含むバイオマテリアルの製造方法であって、以下の工程:
    (a)生体適合性を有する油若しくは植物油、又はこれらの油と鉱油との混合油と、ゲル形成成分を含む溶液、又は前記コア細胞及びゲル形成成分を含む溶液とを接触させて単分散液滴を生成する工程、
    (b)前記単分散液滴をゲル化してゲル玉を得る工程、
    (c)前記ゲル玉の表面に前記カバー細胞を播種する工程、
    (d)工程(c)により得られたバイオマテリアルとゲル形成成分との混合溶液を作製し、当該バイオマテリアルを工程(a)におけるコア細胞として用いて工程(a)〜工程(c)を繰り返す工程 含む前記方法。
  • ゲル形成成分が細胞外マトリックス成分である請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  • 植物油がコーン油である請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  • 鉱油が流動パラフィンである請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  • 植物油と鉱油との混合比が1:2である請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  • 細胞外マトリックス成分が、コラーゲン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、テネイシン、エンタクチン、エラスチン、フィブリン、ヒアルロン酸、ゼラチン、アルギン酸、アガロース及びキトサンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項4に記載の方法。
  • 単分散液滴は、前記混合油が流れる第一の流路及び前記溶液が流れる第二の流路を備えた装置において前記混合油と前記溶液とが合流することにより生成されるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  • コア細胞が肝臓癌由来細胞であり、カバー細胞が線維芽細胞である請求項2又は3に記載の方法。
  • 請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により製造されたバイオマテリアルを培養することを特徴とする、階層化された細胞層を有する細胞塊の製造方法。
  • 請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により製造されたバイオマテリアル、又は請求項11に記載の方法により製造された細胞塊を任意形状の鋳型内で培養することを特徴とする再構成された組織の製造方法。
  • 中空部を有しコア領域を形成するゲル層と、当該中空部内に内包される生体分子又は細胞と、前記ゲル層の周囲を覆う細胞(カバー細胞)とを含む中空状バイオマテリアルの製造方法であって、以下の工程:
    (a)生体適合性を有する油若しくは植物油、又はこれらの油と鉱油との混合油と、細胞又は生体分子及びゲル形成成分を含む溶液とを接触させて単分散液滴を生成する工程、
    (b)前記単分散液滴をゲル化してゲル玉を得る工程、
    (c)前記ゲル玉の表面に前記ゲルとは異なるゲル成分をコートしてゲル化する工程、並びに (d)工程(b)でゲル化されたゲルを溶解する工程 を含む前記方法。
  • 請求項13に記載の方法により製造された中空状バイオマテリアルを培養することを特徴とする、中空部を有する細胞塊又は生体分子塊の製造方法。
  • 請求項11に記載の方法により製造された細胞塊。
  • 請求項12に記載の方法により製造された組織。
  • 請求項14に記載の方法により製造された、中空部を有する細胞塊又は生体分子塊。
  • コア領域を形成するゲル層、及び前記ゲル層の周囲を覆う細胞の層により階層化された細胞塊。
  • コア領域を形成し細胞(コア細胞)を内包するゲル層、及び前記コア細胞とは異なる細胞であって前記コア細胞層の周囲を覆う細胞(カバー細胞)の層により階層化された細胞塊。
  • コア領域を形成するゲル層、並びに前記ゲル層の周囲を覆う細胞(カバー細胞)の層、及び前記カバー細胞と同一又は異なる種類の細胞により順次覆われた1又は複数の細胞層により階層化された細胞塊。
  • コア領域を形成し細胞(コア細胞)を内包するゲル層、前記コア細胞とは異なる細胞であって前記コア細胞の層の周囲を覆う細胞(カバー細胞)の層、並びに前記カバー細胞と同一又は異なる種類の細胞により順次覆われた1又は複数の細胞層により階層化された細胞塊。
  • コア細胞がHepG2細胞であり、カバー細胞が3T3細胞である、請求項19又は21に記載の細胞塊。
  • 請求項18〜22のいずれか1項に記載の細胞塊が集合して再構成された組織。
  • 請求項22に記載の細胞塊、又は該細胞塊が集合して再構成された組織を含む、肝臓組織のin vivo様モデル。
  • 说明书全文

    本発明は、マイクロゲルカプセルを用いた細胞の3次元階層的共培養法に関する。

    組織及び器官を生体外で模倣又は再現するためには、種々のタイプの細胞−細胞相互作用が要求される。
    本発明者は、従来の2次元共培養システムにおいて、細胞−細胞相互作用が細胞機能の活性化に影響を与えることを見出した(S.N.Bhatia et al.,FASEB J.,13(1999),pp.1883−1900;Y.Tsuda et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.,348(2006),pp.937−944.)。 しかし、本来生体組織構造は3次元状の階層的に配列していることから、異種細胞を2次元ではなく3次元で共培養することが必要不可欠となる(図1)。
    3次元培養を行うに際し、異種細胞をゲルの中に分散させたり、細胞シートを作製してそれを積層させる方法が採用されている。
    しかしながら、従来の3次元培養法で異種細胞をゲルの中に分散させる場合、細胞が凝集しようとしてそれぞれの種類の細胞の配向性をコントロールすることがほとんどできなかった(A.Ito et al.,J.Biosci.Bioeng.,104(2007),pp.371−378)。 また、細胞は同種の細胞同士で集合する性質があるため、異種細胞を単に共培養するだけでは、異なる細胞種を3次元状に培養することは困難であり、階層的共培養を行うことはほとんどできなかった。
    さらに、細胞シートを用いて共培養を行った場合、階層的に細胞を積層して配置することはできたが、マイクロスケールで体内において再現される3次元的な階層構造を構築することは困難であった。
    S. N. Bhatia et al. ,FASEB J. ,13(1999),pp. 1883−1900; Y. Tsuda et al. ,Biochem. Biophys. Res. Comm. ,348(2006),pp. 937−944. A. Ito et al. ,J. Biosci. Bioeng. ,104(2007),pp. 371−378

    そこで、生体適合性を有するとともに細胞の足場であるバイオマテリアル内及びバイオマテリアルに異なる種類の細胞を配置させ、各細胞の本来の構造及び機能を3次元的に再構成させる技術の開発が望まれていた。
    本発明は、細胞の3次元階層的共培養法を提供することを目的とする。
    本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、AFFDと呼ばれる装置を用いて、二路合流チャンバー内で細胞含有溶液と油とを所定比率で接触させることにより、均一な直径を有する小滴を作製し、当該小滴内に核(コア)となる第一の細胞を内包させ、小滴の外側(ゲルの表面)に第二の細胞層を形成させた3次元の階層状バイオマテリアルを作製することに成功し、本発明を完成するに至った。
    すなわち、本発明は以下の通りである。
    (1)コア領域を形成するゲル層と、当該ゲル層の周囲を覆う細胞(カバー細胞)とを含むバイオマテリアルの製造方法であって、以下の工程:
    (a)生体適合性を有する油若しくは植物油、又はこれらの油と鉱油との混合油と、ゲル形成成分を含む溶液とを接触させて単分散液滴を生成する工程、
    (b)前記単分散液滴をゲル化してゲル玉を得る工程、並びに (c)前記ゲル玉の表面に前記カバー細胞を播種する工程 を含む前記方法。
    (2)コア領域を形成し細胞(コア細胞)を内包するゲル層と、当該ゲル層の周囲を覆う細胞(カバー細胞)とを含むバイオマテリアルの製造方法であって、以下の工程:
    (a)生体適合性を有する油若しくは植物油、又はこれらの油と鉱油との混合油と、前記コア細胞及びゲル形成成分を含む溶液とを接触させて単分散液滴を生成する工程、
    (b)前記単分散液滴をゲル化してゲル玉を得る工程、並びに (c)前記ゲル玉の表面に前記カバー細胞を播種する工程 を含む前記方法。
    (3)コア領域を形成するゲル層又はコア領域を形成し細胞(コア細胞)を内包するゲル層と、当該ゲル層の周囲を覆う細胞(カバー細胞)と、さらにその周囲をゲル層及びカバー細胞で順次覆われた層及び細胞とを含むバイオマテリアルの製造方法であって、以下の工程:
    (a)生体適合性を有する油若しくは植物油、又はこれらの油と鉱油との混合油と、ゲル形成成分を含む溶液、又は前記コア細胞及びゲル形成成分を含む溶液とを接触させて単分散液滴を生成する工程、
    (b)前記単分散液滴をゲル化してゲル玉を得る工程、
    (c)前記ゲル玉の表面に前記カバー細胞を播種する工程、
    (d)工程(c)により得られたバイオマテリアルとゲル形成成分との混合溶液を作製し、当該バイオマテリアルを工程(a)におけるコア細胞として用いて工程(a)〜工程(c)を繰り返す工程 含む前記方法。
    本発明において、ゲル形成成分としては、細胞外マトリックス成分が挙げられる。 また、植物油はコーン油であることが好ましく、鉱油としては流動パラフィンであることが好ましい。 ここで、植物油と鉱油との混合比は、例えば1:2である。
    また、本発明において、細胞外マトリックス成分としては、例えばコラーゲン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、テネイシン、エンタクチン、エラスチン、フィブリン、ヒアルロン酸、ゼラチン、アルギン酸、アガロース及びキトサンからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
    本発明において、単分散液滴は、前記混合油が流れる第一の流路及び前記溶液が流れる第二の流路を備えた装置において前記混合油と前記溶液とが合流することにより生成することができる。
    本発明の一つの態様においては、コア細胞が肝臓癌由来細胞であり、カバー細胞が線維芽細胞である。
    (4)上記方法により製造されたバイオマテリアルを培養することを特徴とする、階層化された細胞層を有する細胞塊の製造方法。
    (5)上記方法により製造されたバイオマテリアル又は細胞塊を任意形状の鋳型内で培養することを特徴とする再構成された組織の製造方法。
    (6)中空部を有しコア領域を形成するゲル層と、当該中空部内に内包される生体分子又は細胞と、前記ゲル層の周囲を覆う細胞(カバー細胞)とを含む中空状バイオマテリアルの製造方法であって、以下の工程:
    (a)生体適合性を有する油若しくは植物油、又はこれらの油と鉱油との混合油と、細胞又は生体分子及びゲル形成成分を含む溶液とを接触させて単分散液滴を生成する工程、
    (b)前記単分散液滴をゲル化してゲル玉を得る工程、
    (c)前記ゲル玉の表面に前記ゲルとは異なるゲル成分をコートしてゲル化する工程、並びに (d)工程(b)でゲル化されたゲルを溶解する工程 を含む前記方法。
    (7)さらに、本発明は、上記(1)〜(5)に記載の方法により製造された細胞塊又は組織を提供する。
    (8)さらに、本発明は、上記(6)に記載の方法により製造された中空状バイオマテリアルを培養することを特徴とする、中空部を有する細胞塊又は生体分子塊の製造方法を提供する。 また本発明は、当該方法により製造された、中空部を有する細胞塊又は生体分子塊を提供する。
    (9)コア領域を形成するゲル層、及び前記ゲル層の周囲を覆う細胞の層により階層化された細胞塊。
    (10)コア領域を形成し細胞(コア細胞)を内包するゲル層、及び前記コア細胞とは異なる細胞であって前記コア細胞層の周囲を覆う細胞(カバー細胞)の層により階層化された細胞塊。
    (11)コア領域を形成するゲル層、並びに前記ゲル層の周囲を覆う細胞(カバー細胞)の層、及び前記カバー細胞と同一又は異なる種類の細胞により順次覆われた1又は複数の細胞層により階層化された細胞塊。
    (12)コア領域を形成し細胞(コア細胞)を内包するゲル層、前記コア細胞とは異なる細胞であって前記コア細胞の層の周囲を覆う細胞(カバー細胞)の層、並びに前記カバー細胞と同一又は異なる種類の細胞により順次覆われた1又は複数の細胞層により階層化された細胞塊。
    本発明の上記細胞塊の一態様において、コア細胞がHepG2細胞であり、カバー細胞が3T3細胞である。
    (13)上記7〜12のいずれか1項に記載の細胞塊が集合して再構成された組織。
    (14)上記細胞塊、又は該細胞塊が集合して再構成された組織を含む、肝臓組織のin vivo様モデル。
    (15)組織全体にわたって細胞密度が均一である、上記(5)に記載の方法。
    (16)組織全体にわたって細胞密度が均一である、上記(7)又は(13)に記載の組織。
    本発明により、階層的細胞層を有するバイオマテリアル、及びその製造方法が提供される。 そして、本発明の方法により、細胞を内包した単分散ゲル状液滴を製造することが可能となった。
    本明細書において示す実施例では、コーン油と鉱油からなる混合油を用いてゲル化する方法により、単分散コラーゲンゲルビーズが製造され、内包された細胞の生存を維持することができる。 これらのコラーゲンゲルビーズの系は、3次元組織共培養の分析及び実験のために有用である。 本実施例では、3T3細胞とHepG2細胞をモデル細胞として使用し、これらの細胞の階層的3次元共培養に成功した。 そして、3T3細胞の存在によりHepG2細胞からのアルブミン分泌速度が増加することを示した。 この結果によれば、同一条件での2次元共培養を行ったときのアルブミン分泌速度の結果と比較してより正確に肝機能を再現できるため、器官の3次元階層的細胞−細胞相互作用のメカニズムを理解することができる。 さらに、コラーゲンビーズの単分散性は、ビーズを基盤とするマイクロ流路アレイシステム用のビーズアレイを作製するために重要な性質であり、細胞の生理学的機能および薬物応答性などの定量的分析を可能とするものである。 従って、本発明の方法により完成された3次元組織共培養法は、in vivo様のマイクロ環境及び細胞−細胞相互作用をin vitroで研究するための経済的かつ利便性を備えたツールであるといえる。

    図1は、3次元共培養マイクロ組織の概要、及び2次元培養との比較を示す図である。 3次元培養組織は、従来の2次元共培養したものよりも器官及び組織に類似した微小環境を提供する。
    図2は、単分散コラーゲン液滴を生成するための立体リソグラフィーにより構築したAFFDの模式図、及び2種類の細胞を用いて3次元共培養を行ったときのコラーゲンビーズを製造するための模式図である。
    図3は、マイクロビーズの形態を示す図である。
    パネル(a)は、コーン油中のコラーゲン液滴の単分散像及び、パネル(b)は、培養培地中のコラーゲンゲルビーズの単分散像を示す図である。 パネル(b)は、サブナノビーズによりコラーゲンゲル玉を可視化した像(赤)及び細胞核のHoechst33342による染色像(青)を示す。 パネル(c)及び(d)は、パネル(a)のコラーゲン液滴及びパネル(b)におけるコラーゲン玉の直径の分布を示す。 コラーゲンをゲル化した後でも、コラーゲンビーズの単分散性が維持されていることが分かる。 パネル(e)は、細胞を内包しているコラーゲンビーズを30時間インキュベーションした後の共焦点レーザー顕微鏡像である。 Live/Deadアッセイキットにより生細胞を可視化したところ、コラーゲンビーズの内部でほとんどの細胞が生存している(生細胞は緑色で示される)。 そして、生存細胞は、コラーゲンビーズの形状(球状)に沿って増殖していることが分かる。
    図4は、マイクロビーズの形態を示す図である。
    パネル(a)は、3T3細胞をコートしたコラーゲンビーズの概要図であり、パネル(b)は、3T3細胞をコートして24時間培養した後の像である。 パネル(c)及び(d)は、3T3細胞をコートしてそれぞれ24時間、及び30時間培養した後のゲル玉の像である。 3T3細胞は、Live/Dead Assayキットにより可視化した(緑)。 コラーゲン玉上に接着した3T3細胞は増殖し、徐々にゲル玉の表面を覆った。 パネル(e)は、30時間培養後の3T3細胞の共焦点顕微鏡像である。 3T3細胞は、Live/Dead Assayキットにより可視化し(生細胞を緑と死細胞を赤)、細胞核はHoechst33342により染色した(青)。 3T3細胞はコラーゲン玉の表面で層を形成し、30時間後でもほとんど生存していた。
    図5は、マイクロビーズの形態を示す図である。
    パネル(a)は、コラーゲン玉内に内包されたHepG2の概要図である。 パネル(b)は、コラーゲン玉内のHepG2細胞の明視野像であり、パネル(c)は、HepG2細胞及び細胞核を、それぞれLive/Dead Assayキットにより可視化した像(緑)、及びHoechst33342により染色した像(青)である。 コラーゲン玉内に内包されたHepG2細胞のほとんどは、ゲル化の間生存していた。
    図6は、マイクロビーズの形態を示す図である。
    パネル(a)は、3次元共培養を30時間行った後のコラーゲンビーズの共焦点顕微鏡像を示す。 HepG2細胞は赤色に、3T3細胞は緑色に染色した。 3T3細胞はHepG2細胞と明確に区別される。 パネル(b)は、HepG2細胞によるアルブミンの分泌を示す像である。 アルブミンは免疫染色法により染色した(緑色)。 3T3細胞と共培養したHepG2細胞は、アルブミンを分泌することが確認された。
    図7は、HepG2を異なる培養条件で培養したときのアルブミンの分泌を示す免疫蛍光強度のグラフである。 この結果は、HepG2細胞のアルブミン分泌速度は3T3細胞により境界が形成されたときに増加することを示す。
    図8は、細胞又は生体分子を中空部に配置する中空状マイクロビーズの製造方法の概要図である。
    図9は、本発明の細胞塊を集合させて再構成組織を形成するプロセスの模式図である図10は、細胞をモールディング法により再構成組織を製造する方法を説明した模式図である。
    図11は、種々の細胞塊を組み合わせてモールディング法により再構成組織を製造する方法を説明した模式図である。
    図12は、ヒト形の鋳型に細胞塊を入れて再構成させたときの組織を示す。
    図13は、本発明の方法により得られた組織の経時変化を示す図である。
    図14は、再構成を開始して30時間後の組織において、細胞塊の生死を測定した結果(Live/Deadアッセイ)を示す図である。
    図15は、3T3細胞ゲル玉と3T3細胞凝集塊(スフェロイド)の共焦点顕微鏡像,再構成を開始して24時間後の組織全体像および組織切片のH. E. 染色像を示す図である。
    図16は、組織切片から求めた各部位の細胞密度を測定した結果を示す図である。
    図17は、HUVEC細胞ゲル玉とNIH/3T3細胞ゲル玉とをモールドに入れてヘテロ3次元組織を形成した結果を示す図である。
    図18は、2種類の細胞塊を用いて共培養を行い、再構成された組織を示す図である。

    201:流路、 202:第一のチャンバー、 203:流路、204:第二のチャンバー205:出口、 206:第一の細胞、 207:細胞外マトリックス成分を含む溶液、
    208:単分散液滴、209:狭窄部、 210:流路800:マイクロビーズ、801:第一のゲル成分、802:第二のゲル成分、
    803:細胞又は生体分子、810:2層のゲルからなるマイクロビーズ、
    820:内壁、830:細胞、840:中空部、880:細胞塊

    以下、本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施し得る。
    なお、本明細書において引用した全ての刊行物、例えば、先行技術文献、公開公報、特許公報およびその他の特許文献は、その全体が本明細書において参考として組み込まれる。 本明細書は、本願優先権主張の基礎となる特願2008−317519号(2008年12月12日出願)明細書の内容を包含する。
    1. 概要 本発明は、マイクロ流路を用いて、均一なマイクロサイズの液滴を形成するものであり、この液滴中には細胞を内包した状態で又は内包せずに形成するものである。 そして、形成された液滴をゲル化させて培養液に移すことで、細胞を内包したときはその細胞を生かした状態で、大きさが均一の小滴(「ゲル玉」ともいう)を作製することができる。 このゲル玉に異種の細胞を播種すると、ゲル玉を介して1種類又は複数種類の細胞が3次元的に配置された状態のバイオマテリアルを得ることができる。 その後、このバイオマテリアルをインキュベータ内で培養すると、細胞はゲルの構成成分であるコラーゲンなどの細胞外マトリックスを栄養源として消費する。 このため、ゲル玉中に細胞が内包すると、内包された細胞(「コア細胞」という)とゲル玉の外側(周囲)に播種された細胞(「カバー細胞」という)とが接触して細胞塊を形成する。 なお、ゲル玉の作製にコラーゲンを使用した場合、作製されたゲル玉を「コラーゲンゲル玉」(コラーゲンゲルビーズ)又は「コラーゲンビーズ」という。
    上記細胞と細胞との接触により、内包されたコア細胞又は外側の層のカバー細胞のいずれか一方又は両者が本来有する機能を発揮することとなり、間接的及び/又は直接的に、細胞間相互作用を確認することができる。
    従って、本発明は、コア領域を形成するゲル層と、当該ゲル層の周囲を覆う細胞(カバー細胞)とを含むバイオマテリアルの製造方法であって、以下の工程を含む方法を提供するものである。
    (a)生体適合性を有する油若しくは植物油、又はこれらの油と鉱油との混合油と、ゲル形成成分を含む溶液とを接触させて単分散液滴を生成する工程、
    (b)前記単分散液滴をゲル化してゲル玉を得る工程、並びに (c)前記ゲル玉の表面に前記カバー細胞を播種する工程。
    また、本発明はコア領域を形成し細胞(コア細胞)を内包するゲル層と、当該ゲル層の周囲を覆う細胞(カバー細胞)とを含むバイオマテリアル(階層化された細胞層を有するバイオマテリアル)の製造方法であり、以下の工程を含む方法を提供するものである。
    (a)生体適合性を有する油若しくは植物油、又はこれらの油と鉱油との混合油と、前記コア細胞及びゲル形成成分を含む溶液とを接触させて単分散液滴を生成する工程、
    (b)前記単分散液滴をゲル化してゲル玉を得る工程、並びに (c)前記ゲル玉の表面に前記カバー細胞を播種する工程。
    本発明においては、ゲル玉を媒介として細胞の共培養を行っているため、実験環境下で体内と同様の3次元の階層的細胞層を構築することができる。 本発明のバイオマテリアル及び細胞塊は、細胞アレイのようにマテリアルや細胞がアレイの基板に固定されている形態ではなく、独立して液体中に浮遊している点が特徴的である。 これにより、従来の方法よりもより体内と同じ環境で、異種細胞間の相互作用を確認できることとなった。 また、ゲル玉及びバイオマテリアルは均一の形態及び大きさとなっているため、定量的な評価がしやすく、取り扱いが容易である。 近年では、均一径で球状のカプセルを、解析しやすいように整列させてスクリーニングするためのハイスループットデバイスが提案されている。 従って、これらのデバイスに、本発明により完成されたバイオマテリアル又は細胞塊を組み込むことで、さらに応用範囲が広がるものと考えられる。
    本発明者が構築したバイオマテリアル及び細胞塊は、2層又は3層以上の階層的細胞層を有しており、in vivo様のマイクロ環境(組織モデル)を提供する。 ここで「階層的細胞層」とは、シート状に層が積層されたものではなく、一の細胞集団の周囲全体を他の細胞集団が覆い、2種類又はそれ以上のタイプの細胞層がそれぞれ層をなして立体的な厚みを有していることを意味する。 従って、本発明のバイオマテリアルは、シート状の積層構造以外のものである限り特に限定されるものではないが、例えば、球状(ビーズ状)であることが好ましい。 球状の形態のバイオマテリアルを、本発明ではマイクロビーズともいう。
    さらに、本発明においては、上記バイオマテリアル又は細胞塊を集合させることにより、細胞塊は再構成されて自己組織化し、組織を形成するようになる。 この再構成された組織により、実際の生体における組織にいっそう類似したin vivo様の組織モデルを再現することができる。
    2. バイオマテリアルの製造(1)コア領域を形成するゲル層 コア領域を形成するゲル層は、本発明においてはゲル単独の場合とゲルに細胞を内包させる態様がある。
    (1−1)コア細胞を内包する態様 ゲル内に内包するための核となる細胞、すなわち本発明のバイオマテリアルの最も中心部を形成する細胞を「コア細胞」という。 コア細胞としては、特に限定されるものではなく、動物細胞、植物細胞など、使用目的に応じて適宜選択することができる。 生体から採取された細胞であってもよく、樹立細胞株でもよく、さらには腫瘍細胞であってもよい。 本発明は、in vitroにおいてin vivo様の3次元細胞構築体からなる環境を構築することを目的とすることから、コア細胞は、ゲル玉の表面(ゲルの表層)を覆うためのカバー細胞(後述)と相互作用することにより機能を発揮し得る細胞が好ましい。 例えば、肝臓細胞として、肝実質細胞(肝細胞)の他に、類洞内皮細胞、クッパー細胞、星細胞、ピット細胞、胆管上皮細胞などの肝非実質細胞と呼ばれる細胞群が挙げられる。 また、膵臓由来細胞として、α細胞やβ細胞などが挙げられる。 後述する実施例で示す通り、ヘパトーマ細胞(例えばHepG2細胞)を使用することも可能である。 さらに、万能細胞とよばれるES細胞、iPS細胞、骨髄から採取される間葉系幹細胞の培養条件を整えるための補助役を果たす他の細胞種であるフィーダー細胞との共培養を行うこともできる。
    従って、本発明においては万能細胞とフィーダー細胞との組み合わせ(いずれか一方をコア細胞として、他方を後述するカバー細胞として使用する組合せ)も例として挙げられる。
    (1−2)コア細胞を内包しない態様 本発明においては、コア領域を形成するゲル層には細胞(コア細胞)を内包しない態様もある。 例えば、カバー細胞と相互作用して機能を発揮させる必要がない場合は、本発明においてコア細胞を内包させなくてもよく、ゲル形成成分によってコア領域が形成される。
    (2)ゲルの表層部を構成する細胞 本発明において、ゲルの外側、すなわち本発明のバイオマテリアルにおいて、コア領域を形成するゲル層を覆うための細胞を「カバー細胞」という。 「ゲル層を覆う」とは、ゲルの表面を覆うことを意味するが、実際には、カバー細胞がゲルの内部に少し浸潤してゲルの最も外側の領域の層に細胞が存在してゲルの表層部を構成する形態となる。 これらの意味を総称して、本明細書では「ゲル層を覆う」という。 カバー細胞としては、特に限定されるものではないが、コア領域に細胞を内包させる場合は内包されたコア細胞と相互作用することができる細胞であることが好ましい。 従って、内包するコア細胞の種類により適宜選択することができる。 例えば、コア細胞として肝臓細胞を使用するときは線維芽細胞が挙げられ、ES細胞又はiPS細胞を使用するときはマウス胎児線維芽細胞などが挙げられ、膵島由来β細胞を使用するときはα細胞などが挙げられる。 後述の実施例で示す通り、HepG2細胞を第一の細胞として使用するときは、3T3細胞などの線維芽細胞を使用することが好ましい。
    もちろん、本発明の態様によっては、コア細胞とカバー細胞との組み合わせを逆にすることもできる。
    (3)ゲル形成成分 本発明において使用されるゲル形成成分は、
    (i)細胞外マトリックス成分(ゼラチンに含まれていてもよい)、
    (ii)ゼラチン,キトサン,アガロースなどの天然由来材料、および (iii)ペプチドゲル,ポリエチレングリコール,ポリ乳酸等の合成材料 であり、細胞の足場となるすべての材料を意味する。
    細胞外マトリックスとしては、例えば以下のものが挙げられる。 但し、下記材料は例示であってこれらに限定されるものではない。
    コラーゲン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、フィブロネクチン、ラミニン、テネイシン、エンタクチン、エラスチン、フィブリン、アルギン酸塩、アガロース。
    プロテオグリカンとしては、例えばコンドロイチン硫酸プロテオグリカン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、ケラタン硫酸プロテオグリカン、デルマタン硫酸プロテオグリカンなどが挙げられる。
    グリコサミノグリカンの一種として、ヒアルロン酸が挙げられる。
    合成材料としては、例えば、特定のアミノ酸配列からなる超分子ペプチドゲル(ピュラマトリックス,パナセアゲル)、合成高分子であるポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などが挙げられる。
    これらの成分は、1種又は2種以上を適宜選択し、あるいは細胞接着因子および増殖因子を修飾し、内包して使用することができる。
    (4)油又は混合油 本発明においては生体適合性を有する油若しくは植物油、又はこれらの油と鉱油との混合油が使用される。 本発明において使用される油又は混合油は、と混ざり合わない溶液一般を指し、混合油は、生体適合性を有する油と鉱油との組合せ、植物油と鉱油との組合せ、あるいは生体適合性を有する油と植物油と鉱油との組合せなどが挙げられる。 油又は混合油は、ゲル形成成分をゲル化する際に使用される。 必要に応じて、適宜添加物を添加することができる。
    本発明において使用される生体適合性を有する油は、本明細書では説明の便宜上下記植物油と区別して使用される。 但し、本発明において使用される植物油が生体適合性を有さないことを意味するものではなく、生体適合性を有する植物油を使用できることはもちろんのこと、生体内では必ずしもに適さない植物油であっても本発明のバイオマテリアルの製造に適する限り、使用することが可能である。
    生体適合性を有する油としては、例えばフルオロカーボンなどが挙げられる。 フルオロカーボン(fluorocarbon)とは、炭素−フッ素結合を持つ有機化合物の総称である。 フルオロカーボンは、化学反応が起こり難く、温度を変化させても安定であるため、本発明においても使用することが可能である。 炭化水素の水素原子を全てフッ素原子で置き換えたものはパーフルオロカーボンと呼ばれ、本発明において使用することができる。
    植物油としては、例えばコーン油、ココナッツオイル、綿実油、オリーブオイル、パーム油、ピーナッツ油、ナタネ油、サフラワー油(ベニバナ油)、ごま油、大豆油、ヒマワリ油、ナッツ油(例えばアーモンド油、カシュー油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、クルミ油等)などが挙げられる。 ただし、これらの油に限定されるものではない。
    また、本発明において、鉱油とは、一般式C 2n+2 (nは1〜20の整数を表す。)で示される鎖式飽和炭化水素化合物を意味し、中でもヘキサデカン(n=16)が好ましく、流動パラフィン(n=16−20)がより好ましい。 ここで使用している流動パラフィンなどのミネラルオイル(鉱物油)は、酸素(ガス)を通しやすいという性質を有する点で好ましい。 酸素ガスを通しやすい性質は、油中に存在する細胞に酸素を供給することを可能とし、その結果、液滴中の細胞の生存性を損なわないこととなる。
    生体適合性を有する油又は植物油は単独で使用することができるが、生体適合性を有する油又は植物油と鉱油とを混合する場合は、生体適合性を有する油又は植物油と鉱油との混合比は、1:0.5〜1:3、好ましくは1:2である。 植物油としてコーン油、鉱油として流動パラフィンを使用するときの混合比は、コーン油1に対して1より大きく3未満である。 例えばコーン油と流動パラフィンとの比は1:2であることが好ましい。
    また、本発明においては、生体適合性を有する油又は植物油及び鉱油のそれぞれに、適宜添加物を添加することもできる。 例えば植物油(好ましくはコーン油)にはレシチン、鉱油には界面活性剤等を添加することができる。
    (5)単分散液滴の製造 単分散液滴を製造するための方法は、生体適合性を有する油若しくは植物油、又はこれらの油と鉱油との混合油と、ゲル形成成分を含む溶液又は細胞含有溶液とを接触させることができる限り特に限定されるものではない。 2つのマイクロチューブにそれぞれ植物油又は混合油、及び細胞含有又は不含の溶液を入れ、加圧して噴出させることにより両者を接触させることができる。 本発明においては、ステレオリソグラフィーによって構築されたAFFDと呼ばれる装置を使用することが好ましい。 AFFDとは、軸対称フロー焦点装置(AFFD:Axisymmetric Flow−Focusing Device)を意味し、本発明者らが開発した装置である(図2、Y.Morimoto et al.,Proc.of MEMS 2008,pp.304−307.)。
    AFFDを使用すると、以下の2つの利点がある。
    (i)分散相である内部流体に対する連続相である外部流体の流速比をコントロールすることで、液滴のサイズを変化させることができる。
    (ii)液滴はAFFDの表面に接触しないので、溶液の成分とは関係なく液滴を形成することができる(S.Takeuchi et al.,Adv.Mater.,vol.17,pp.1067−1072,2005.;A.Luque et al.,J.Microelectromech.Syst.,vol.16,pp.1201−1208,2007.;A.S.Utada et al.,Science,vol.308,pp.537−541,2005.)。
    図2にAFFDの模式図を示す。 図2では、コア領域に細胞を含める態様を例に説明する。
    図2において、AFFDは、生体適合性を有する油若しくは植物油、又はこれらの油と鉱油との混合油(「油又は混合油」ともいう)を通す流路201を有する第一のチャンバー202と、前記コア細胞206及び細胞外マトリックス成分207を含む溶液を通す流路203を有する第二のチャンバー204とを備える。 第一のチャンバー202の流路201は、第二のチャンバー204の出口205からその近傍までの所定距離Lの分、第二のチャンバー204の外周を覆う形態となっており、流路201を流れる油又は混合油は、第二のチャンバーの出口205で流路203を流れる細胞含有溶液と合流し、狭窄部209で単分散液滴208を生成する。 ここで、溶液は分散相、油又は混合油は連続相である。 分散相とは、第二のチャンバーの出口205で流れが分断され、液滴化する流体を意味し、連続相とは、AFFD中において、流れが分断されず、連続的に流れ続ける流体を意味する。 細胞含有溶液と油又は混合油とが合流して液滴が生成されるメカニズムは次の通りである。 溶液が油又は混合油に囲まれた状態で狭窄部209に流れ込むことで、溶液にかかる圧が高まる。 溶液が狭窄部209を抜けると、一気に圧力が解放され液滴化するというものである。 また、油又は混合油と細胞含有溶液とを合流させ単分散液滴を作るには、狭窄部209での出口におけるキャピラリー数が1以下であることが条件となる。 さらに、本発明において油又は混合油に付与する流量は10〜1500μl/minであり、好ましくは60〜600μl/minである。 他方、細胞含有溶液に付与する流量は1〜20μl/minであり、好ましくは6〜12μl/minである。 両者の流量比が1〜60、好ましくは5〜40のときに、効率的に単分散液滴を生成させることができる。 生成した単分散液滴208は、流路210を通過して培養容器(図示せず)に回収される。
    次に、生成した単分散液滴を加温若しくは冷却、又は化学的処理を行うことにより液滴はゲル化する。 ゲル化させたときの小球を本明細書では「ゲル玉」という。
    ゲル化させるための条件は、使用するゲル形成成分の種類によって変わるため、その種類によって条件を選択する。 例えば、中性コラーゲンを使用したときは、37℃で45分程度加温すればよい。 また、アルギン酸をゲル化させるときは、例えば、液滴にカルシウムイオンを結合させる。 アガロースをゲル化させるときは、種類に応じて適宜温度を設定することができるが、例えば約25度以下にすることが好ましい。 さらに、ゼラチンの場合は、例えば液滴の温度を約15度以下にする。
    また、ゲル化させるための条件は、ゲル形成成分としてコラーゲン、ゼラチン、マトリゲル等を使用したときは温度を変化させることであり、アルギン酸ナトリウム溶液を使用したときはカルシウムイオンを加えることである。
    その他、ペプチドゲルの場合はpHを変化させるか、あるいはイオンを加えてゲル化させればよい。
    フィブリンゲルの場合はトロンビンという酵素を加えてゲル化させることができる。
    合成高分子ゲルの場合は、重合開始剤を加えることにより、あるいはプレポリマー溶液に光架橋剤を入れておき紫外光または可視光を照射させることによりゲル化することができる。
    ゲル化してゲル玉を得た後は、その表面にカバー細胞を播種する。 カバー細胞を播種する方法として特に限定されるものではなく、カバー細胞を含有する細胞懸濁液と、上記ゲル化させたゲル玉とを混合処理する方法、ゲル玉を含有する容器に細胞懸濁液を添加する方法などが採用される。 細胞は細胞外マトリックスに接着する性質を有するため、カバー細胞を播種した後は、ゲル玉の内部にコア細胞が内包され、ゲル玉の表層にカバー細胞が接着したバイオマテリアルとなり、その後バイオマテリアルを培養すると2層の細胞層からなる細胞塊を形成する(図2)。 2層の細胞層を形成させるための培養条件は、37℃、5%CO 雰囲気下では24〜48時間であり、好ましくは24〜30時間である。 培養時間は、バイオマテリアルの大きさや、層を形成する細胞の分量に応じて適宜設定すればよい。
    (6)複数種の細胞層を有する階層的バイオマテリアルの製造 上記(1)〜(5)の項では1又は2層の細胞層を有する階層的バイオマテリアルの製造について説明したが、本態様は、先に作製された細胞の階層構造を有するバイオマテリアルに第三の細胞を播種することにより、交互に細胞層を形成させるというものである。
    したがって、本発明は、コア領域を形成するゲル層又はコア領域を形成し細胞(コア細胞)を内包するゲル層と、当該ゲル層の周囲を覆う細胞(カバー細胞)と、さらにその周囲をゲル層及びカバー細胞で順次覆われた層及び細胞とを含むバイオマテリアルの製造方法を提供する。 本発明の方法は、以下の工程を含む。
    (a)生体適合性を有する油若しくは植物油、又はこれらの油と鉱油との混合油と、ゲル形成成分を含む溶液、又は前記コア細胞及びゲル形成成分を含む溶液とを接触させて単分散液滴を生成する工程、
    (b)前記単分散液滴をゲル化してゲル玉を得る工程、
    (c)前記ゲル玉の表面に前記カバー細胞を播種する工程、
    (d)工程(c)により得られたバイオマテリアルとゲル形成成分との混合溶液を作製し、当該バイオマテリアルを工程(a)におけるコア細胞として用いて工程(a)〜工程(c)を繰り返す工程 本発明の方法によれば、上記のようにして得られた2層の細胞層からなるバイオマテリアルを、前記単分散液滴208を製造した方法と同様にして、図2の第二のチャンバー204に適用して油と接触させ、その後細胞を播種することにより3層の細胞層からなるバイオマテリアルを作製することができる。 4層以上の細胞層を作製する場合は、上記工程(a)〜工程(c)を繰り返せばよい。
    2層の細胞層の外側にさらに播種する細胞(第三の細胞)は、前記コア細胞及びカバー細胞と同種でも異種でもよい。 複数の細胞層が複雑なネットワークを形成して機能するような組織(例えば血管、膜等)をin vitroで擬似的に再現する場合は、第三の細胞はコア細胞及びカバー細胞と異なるものであることが好ましい。 例えば、血管は内側から血管内皮層、平滑筋層、線維芽細胞層三層構造をとっているので、コア細胞として血管内皮細胞、第一のカバー細胞として平滑筋細胞、第二のカバー細胞(つまり第三の細胞)として線維芽細胞を使用することができる。 また、角膜の場合は外側から角膜上皮層、角膜実質層、角膜内皮層の三層構造をとっているので、コア細胞として角膜内皮細胞、第一のカバー細胞として角膜実質細胞、第二のカバー細胞として角膜上皮細胞を使用することができる。
    他方、膵島のようなネットワークを形成して機能する組織等の場合は、第三の細胞はゲル内に内包した第一の細胞と同種のものを使用することができる。 例えば、膵島は内側からβ細胞群、α細胞群の二層構造であるので、コア細胞をβ細胞、カバー細胞をα細胞とすればよい。
    なお、コア領域に細胞を内包しない場合も、コア領域となる層に細胞を内包せずにゲル玉を作製する点を除き、上記方法に準じてバイオマテリアルを作製することができる。
    (7)細胞塊の製造 本発明においては、上記の通り得られたバイオマテリアルを培養することにより、細胞はゲルを足場として増殖し、コア細胞が複数の細胞層で順次覆われた階層状細胞層からなる細胞塊を得ることができる。
    細胞塊を得るための培養手法として、ゲル内培養、振とう培養、マイクロウェル内培養,ハンギングドロップ法などの一般的細胞培養法を採用すればよい。 培養条件は以下の通りである。
    培養時間:12時間以上、好ましくは12〜24時間 培養温度:例えば37℃
    このようにして得られた細胞塊は、各種組織のin vivo様モデルとして使用することができる。 例えば、コア細胞として肝臓由来細胞又は肝臓癌細胞、カバー細胞として線維芽細胞を使用することで、肝臓組織のin vivo様モデルが提供される。 但し、in vivo様モデルは肝臓組織に限定されるものではなく、上記(6)項に例示した組織、その他の組織を挙げることができる。
    ここで、ゲル層の周囲を覆う細胞(カバー細胞)が培養時間の経過とともにゲル層内部へ増殖、移動する場合がある。 これを利用して、細胞の増殖能力、ゲル分解能力等に合わせてゲルの大きさ(直径等)等を制御することで、所望の細胞密度の細胞塊を得ることができ、例えば、各細胞塊同士の間で、均一な細胞密度の細胞塊を作製することもできる。
    (8)再構成された組織の製造 本発明においては、前記方法により製造されたバイオマテリアル又は細胞塊を任意形状の鋳型内で培養することにより、各細胞塊は再構成され、自己組織化した組織を製造することができる。 ここで、本明細書において、「組織」はその一部分である組織片をも含む意味で使用される。 本発明においては、細胞塊を一旦経てから組織の再構成に使用することも、バイオマテリアルから直接組織の再構成に使用することもできる。
    図9は、本発明の細胞塊を集合させたときの再構成組織を示す模式図である。 図9において、aは本発明のバイオマテリアルを培養して細胞塊を製造する工程の概念図であり、bは、細胞塊を再構成させて組織を製造する工程の概念図である。 図9bにおいて、細胞塊を所定形状の容器に入れて培養すると、細胞は増殖及び再構成して3次元の組織を形成する。 細胞塊同士はそれぞれ独立しているため、細胞塊同士が緊密に集合しても、栄養源を細胞塊間に拡散させて供給することができる(図9c)。 このため、細胞−細胞結合が可能となり、コラーゲンを分解することができる。 その結果、細胞塊は凝集し、組織を形成する(図9c)。
    図10は、本発明の方法を示す模式図である。 例えば、生体適合性を有する材質の容器に所定形状の鋳型を形成させる。 図10は人体を模した形状の鋳型を示している。 この鋳型に本発明の細胞塊を入れて所定時間培養して組織を再構成させる。 その後、再構成した組織を採取することにより、立体的形状を有する再構成組織を得ることができる(図10)。 鋳型に用いる材料は、細胞接着を抑制する材料、あるいは細胞が接着しないように表面修飾されたものであれば何でもよく、特に限定されるものではない。 例えばPDMS(ポリジメチルシロキサン:シリコーン製樹脂)、アガロースゲル、アクリルアミドゲルなどが挙げられる。 再構成の時間も特に限定されるものではないが、例えば縦7mm、横5mm、高さ(深さ)1.5mmの鋳型に細胞塊をモールディングし再構成組織を作製する場合、モールディング後1時間で細胞塊同士が結合し、再構成組織を形成できる。 立体構造を有する組織を作製する場合は、5%CO 環境下、37℃で1時間以上、好ましくは17時間である。
    また、組織を作製するための細胞塊は、1種類でも複数種類でもよい。 例えば2種類の細胞塊を用いて組織を製造する場合は、ある場所には細胞塊1を、他の場所には細胞塊2を入れて培養すればよい(図11の中央の図)。 例えば、図11の中央の図は、胴体部が細胞塊A、頭部が細胞塊Bで構成された組織を表し、図11の右側の図は、細胞塊A及び細胞塊Bがランダムに混合された状態で構成された組織を表している。
    以上のようにして再構成された組織も、本発明においてin vivo様のモデルとして提供される。 例えば、コア細胞として肝臓由来細胞又は肝臓癌細胞、カバー細胞として線維芽細胞を使用した細胞塊を用いることで、肝臓組織のin vivo様モデルが提供される。
    本発明のいくつかの態様によれば、所望細胞密度の細胞塊を用いることなどにより、組織全体にわたって細胞密度が均一である再構成組織を得ることもできる。
    3. 中空ビーズの製造 マイクロレベルの環境下において、生体分子を外部環境から隔離するためには、生体分子をスポッティングなどの手法により基板上に固定化するか、マイクロ加工で基板に作製された穴に生体分子を入れて蓋をするという方法が採用されている。 しかしながら、基板に作製された穴は、それ自体を移動させることができないため、実施可能な実験が制限される。
    そこで本発明においては、生体分子を外部環境から隔離しつつ移動可能な微小分子を作製するために、中空部を有しコア領域を形成するゲル層と、当該中空部内に内包される生体分子又は細胞と、前記ゲル層の周囲を覆う細胞(カバー細胞)とを含む中空状バイオマテリアルの製造方法を提供する(図8)。 本発明の方法は、以下の工程を含む。
    (a)生体適合性を有する油若しくは植物油、又はこれらの油と鉱油との混合油と、細胞又は生体分子及びゲル形成成分を含む溶液とを接触させて単分散液滴を生成する工程、
    (b)前記単分散液滴をゲル化してゲル玉を得る工程、
    (c)前記ゲル玉の表面に前記ゲルとは異なるゲル成分をコートしてゲル化する工程、並びに (d)工程(b)でゲル化されたゲルを溶解する工程。
    上記工程(a)において、中空部に内包させる対象は細胞のほか生体分子が挙げられる点は前記「2.バイオマテリアルの製造」の項で説明した内容と異なるが、それ以外の上記(a)及び(b)の工程は同じである。 本態様では、第一のゲル成分801によりゲル化されたバイオマテリアル(例えばマイクロビーズ800)に、さらに前記ゲルとは異なる第二のゲル成分802をコートして2層のゲルからなるマイクロビーズ810を作製する(図8A)。 この段階で、マイクロビーズの最も内側には細胞又は生体分子803が内包される。 以下、バイオマテリアルとしてマイクロビーズを例に説明する。
    本発明における生体分子として、例えばタンパク質、酵素、核酸(DNA、RNA等)、ペプチド、抗体、低分子化合物、薬物などが挙げられる。
    第二のゲル成分802としては、例えばRGDペプチド,フィブロネクチンを結合させた、アガロース、アルギン酸、PEG、PMMAなどが挙げられる。
    次に、第二のゲル成分802により覆われた第一のゲル801を溶解することにより、第二のゲル層の内側は中空部840を形成し、その中空部に、細胞又は生体分子が内包された形態となる。 なお、上記「中空部」とは空間を意味することから、「中空部に内包する」とは、ゲル層の内側の内壁820(具体的には第二のゲル802の内壁面)に接触した形態で存在することを意味する(図8B)。 ゲルの溶解法としては、キレート剤を用いる方法が採用される。 例えば、第一のゲル成分としてアルギン酸カルシウムゲルを利用した場合、−EDTAなどのキレート剤をふりかけると、EDTAとカルシウムのキレート作用によりゲル架橋が崩壊し、崩壊したゲルは第二のゲル成分の外側へ自然に漏出する。
    中空部を有するマイクロビーズの表面には第二のゲル802が存在する。 そこで、このビーズに、前記と同様にして中空部に配置させた細胞とは異なる細胞830を播種し、培養すると、ゲルの内側に細胞又は生体分子層、ゲルの外側に別の細胞層を有するマイクロビーズを作製することができる(図8C)。 なお、第二のゲル802の外側を覆う細胞は、第一のゲル801を溶解する前に播種してもよく、溶解後に播種してもよい。
    その後、ゲルを培養することにより細胞はゲルを足場として増殖し、2層の細胞層を有する細胞塊880を得ることができる(図8D)。 細胞塊880を得るための培養条件は、37℃、5%CO 雰囲気下では、24〜48時間である。
    本発明の方法によれば、実験目的に応じてゲル膜(2層のゲル層のうち内側のゲル)を除去することによりゲル膜の内部に中空部を形成して細胞又は生体分子を配置させ、ゲル膜を境界として生体分子を外界から隔離することができる。 これにより、実験等の適用範囲を広げることが可能である。
    以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。 但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。

    本発明のバイオマテリアルの製造
    実施例1の概要
    本実施例では、細胞外マトリックス成分であるコラーゲンを足場として使用し、コラーゲンビーズ内及びビーズ上にそれぞれ異なる種類の細胞を配置させ、各細胞の本来の構造を再構成させることを試みた(図1、図2)。 すなわち、コラーゲンビーズを用いて、HepG2(肝細胞)及び3T3細胞(線維芽細胞)を3次元的に共培養したマイクロ組織を構築した。 HepG2細胞を3T3細胞とともに共培養すると、HepG2細胞はアルブミンを分泌することができ、その分泌量が増加した。 このことは、本発明のシステムがin vitroにおいて組織の構造と機能を再現できることを意味する。
    材料及び方法
    コーン油(レシチン含有)及び鉱油は和光純薬から購入した。 Span80、Span20、Tween20及びヘキサデカンは関東化学から購入した。 ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)及びリン酸バッファー(PBS)はSIGMA−Aldrichから購入した。 DMEM中の中性コラーゲン溶液(2mg/ml)はKOKENから購入した。 他の試薬は関東化学、ナカライテスク、及び和光純薬から購入した。 特に断らない限り、実験用に使用する全ての水は18MΩ・cmの比抵抗を有するミリポアシステムから得た。
    細胞培養
    接着性細胞として、マウス線維芽様細胞である3T3細胞、及びヒトヘパトーマ細胞株であるHepG2細胞を用いた。 それぞれの細胞を、培養培地として10%(v/v)ウシ胎児血清(Japan Bioserum社)及び1%ペニシリン−ストレプトマイシン溶液(SIGMA−Aldrich)を補ったDMEM中、37℃、5%CO の条件で培養した。 細胞の蛍光ラベルは、Cell Tracker Green CMFDA,Cell Tracker Orange CMTPX(Invitrogen)を用い、細胞核染色はHoechst33342(Invitrogen)を用いて行った。 また、細胞の生死を判定するLive/DeadアッセイはLIVE/DEAD(登録商標)

    に実施した。


    コラーゲンゲル作製法(オイルについて)


    1,HepG2 cellをシャーレからとり、中性コラーゲン溶液の中に分散させた。


    2,AFFDにおいて、Corn oil with lecithin(2wt.%)をcontinuous phase flow、中性コラーゲン溶液をdispersing phase flowとして用いて、単分散液滴(均一径の細胞入りの中性コラーゲン液滴)を作製した。


    3,Corn oil with lecithin(2wt.%)とliquid paraffin with Span 20(1.5wt.%)を1:2で混ぜた溶液をマイクロチューブに入れ、液滴をその溶液内に注入する。


    4,3で得られた液滴を37℃で45min静置し,コラーゲン溶液のゲル化を促進させた。


    5,従来のオイル中のゲル玉を水中に移す方法で、細胞培養液中にゲルを置換した。


    AFFDを用いたコラーゲンゾル液滴の形成


    ステレオリソグラフィーにより構築したAFFDを用いて、単分散コラーゲンゾル液滴を作製した。 単分散液滴形成のメカニズム及びAFFDの構築プロセスは公知である(Y.Morimoto et al.,Biomed.Microdev.,DOI:10.1007/s10544−008−9243−y)。


    要約すると、AFFD装置は、同心の中空シリンダーを2つ有している。 各シリンダーは、油及び水などの液体を装置内に別々に導くコネクションポートを有する。 これらの液体は、互いに混じり合わず、内側の液流(分散相)が開口部出口から噴き出すときに液滴を形成する(図2)。 内側流(分散相)は外側流(連続相)に覆われており、形成された液滴は、マイクロチャンネルの中央軸部分に流れ込む。 分散相及び連続相の液流はチャンネル表面と接触しないので、細胞を取り込んだ種々の液滴が生成されても内側の壁面の濡れの問題を回避することができる。 分散相及び連続相の流速を変化させることにより、液滴のサイズを調整することができる。


    本発明者は、3次元モデリングソフトウェア(Rhinoceros,AppliCraft)を有する装置を設計し、そしてAFFDを構築するために、アクリルオリゴマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、光開始剤及び安定化剤からなる光反応性アクリレート樹脂(「R11,25−50μm層」)を有する市販のステレオリソグラフィーモデリング機(Perfactory,Envision Tec,Germany)を使用した。 なお、装置は垂直に立てて使用した。


    シリコンゴムチューブを用いて入り口及び出口ポートにTefzel(登録商標)チューブを取り付け、分散相及び連続相は、シリンジポンプ(KDS−210,KD Scientific Inc.,USA)を用いてこれらのチューブから装置に注入した。 システムは、液滴を回収する前に1分間安定化させた。


    細胞を封入したコラーゲン液滴のゲル化


    AFFDによって製造した単分散液滴は、細胞を生きた状態で封入する単分散ゴラーゲンゲル玉を形成するためのプラットフォームである。 AFFDにおいて、連続相用にレシチン含有(2wt%)コーン油を使用し、分散相用に細胞含有DMEM中、中性コラーゲン溶液を使用した。 細胞を内包する単分散コラーゲンゾル液滴をAFFDによって形成させた後、液滴を、レシチン含有(2wt%)コーン油とSpan20含有(2wt%)流動パラフィンとの混合油を含むマイクロチューブに回収した。 中性コラーゲン溶液は加温下でゲル化するため、コラーゲン溶液をウォーターバス内で37℃で45分インキュベートし、コラーゲン溶液のゲル化を誘導した。


    コラーゲンゲル玉を混合油中に回収及び加温した後、油中からゲル玉を抽出するため、公知方法(W.−H.Tan and S.Takeuchi,Adv.Mater.,vol.82,pp.364−366,2003.)に従って以下の通りDMEM中に移した。 すなわち、コラーゲンゲル玉をマイクロチューブの底に沈殿させたのち、ゲル玉の周囲に存在する混合油を吸引除去した。 続いてSpan80含有(2wt.%)ヘキサデカンをマイクロチューブに導入し、残りの混合油を溶解してコラーゲンゲル玉の表面を保護し、油が粘着しないようにした。 さらに、混合油とともにヘキサデカンを吸引除去し、Tween20含有(0.1wt%)DMEMを添加して油からコラーゲンゲル玉を分離した。 Tween20含有(0.1wt%)DMEM中にコラーゲンゲル玉を懸濁した後、遠心によりゲル玉を回収した。 上清を吸引除去し、ゲル玉をDMEM中に再度懸濁した。 リンスのため遠心とDMEM中への懸濁を繰り返し、DMEM中に単分散コラーゲンゲル玉を得た。


    結果


    細胞を含む単分散コラーゲンゲル玉


    本発明者は、立体リソグラフィーにより構築されたAFFDを用いて単分散コラーゲンゾル液滴及びゲル玉を製造した。 図3(a)及び(b)は、それぞれ、細胞を内包する単分散コラーゲンゾル液滴、並びに細胞と蛍光ビーズ含有コラーゲンゲル玉を示す。 図3(a)は、細胞を取り込んでいるコラーゲン液滴及び細胞を取り込んだときのコラーゲン玉の画像であり、図3(b)は、ゲル化後のコラーゲンゲル玉を表す。


    本実施例においては、コラーゲン溶液及びコーン油の流速をそれぞれ9μl/分、60μl/分として液滴及びゲル玉を製造した。 図3(c)及び(d)は、コラーゲンゾル液滴及びゲル玉の直径分布を示す。 本発明の方法は、封入された細胞の生存を維持することが可能な単分散コラーゲンビーズを形成することができることを示している(例えば図3(e))。 標準偏差と平均との間の比として定義される変動係数は5%未満であったことから、コラーゲンゾル液滴及びゲル玉のどちらも、単分散を形成しているといえる。 さらに、内包された細胞は生存率が維持され、30時間もの間増殖することができた(図3(e))。 本発明のゲル化法の利点は、コラーゲンゲル中に内包された細胞が生存できるというものである。 コーン油でコラーゲンゾル液滴を45分間覆うと、液滴の単分散性は維持されるが、コーン油は十分な酸素透過性を有さないために液滴は死滅する。 これに対し、鉱油でコラーゲンゾル液滴を45分間覆うと、細胞は生存するが、コラーゲンの液滴は多分散性となる。 コーン油と鉱油との混合油を用いることにより、それぞれの油が有する利点を得ることに成功し、その結果、液滴の単分散性を維持しつつ、内包した細胞の生存率を維持するというコラーゲンゲル玉を得ることができた。


    コラーゲンビーズを用いる単培養


    コラーゲンゲル玉の表面上の3T3細胞


    本発明者は、単分散コラーゲンゲル玉の表面に3T3細胞を播種した。 3T3細胞がコラーゲンゲル玉上に接着すると(図4(a))、細胞は増殖して徐々にコラーゲンの表面を覆った(図4(b)−(d))。 コラーゲンゲル玉を所定時間インキュベートしたところ、細胞は自己組織化し、コラーゲンゲル玉の表面に3T3細胞層を形成した。 すなわち、マイクロサイズの球状コラーゲン上において、細胞培養が可能なことを示した。


    図4(b)は、3T3細胞で覆われた単分散コラーゲンゲル玉の像を示す。 この像は、3T3細胞の接着後にコラーゲンゲル玉の単分散性を維持することを示している。 コラーゲンゲル玉上の3T3細胞は徐々に増幅・移動して3T3細胞の層を形成した(図4(c)及び(d))。 3T3細胞の層は30時間のインキュベーション後に形成され、3T3細胞による外側の層が形成された(図4(e))。


    コラーゲンゲル玉中のHepG2細胞


    本実施例において、本発明の方法により製造したコラーゲンゲル玉中に内包されたHepG2細胞を30時間培養した。 その結果、コラーゲンゲル玉(細胞塊)内のほとんどのHepG2細胞は生存しており、コラーゲンゲル玉の単分散性は維持されていた(図5(a)−(c))。 この結果は、HepG2細胞などの内包された細胞に対し、本発明の方法は細胞の活性を維持するのに無害であることを示すものである。


    3T3細胞及びHepG2細胞の3次元組織共培養


    これらの結果に基づき、3T3細胞を、HepG2細胞を内包しているコラーゲンビーズ(ゲル玉)上に播種して30時間培養したときは、3T3細胞の層によって囲まれたHepG2からなる細胞塊が形成された。 すなわち、異種細胞同士の3次元共培養システムを形成することに成功した(図6(a))。 この3次元共培養システムにおいて、HepG2細胞から分泌されたアルブミンを免疫染色により可視化した(A.Yamasaki et al.,Hepatology,vol.44,pp.381A,2006.)。 その結果、内包されたHepG2細胞はアルブミンを分泌し(図6(b))、HepG2のアルブミン分泌速度は、HepG2の単独培養に比べて3T3細胞の存在により増加することが観察された(図7)。 そして、HepG2細胞のアルブミン分泌量は、3T3細胞との共培養時間に依存して増加し、HepG2細胞の単培養システムのときよりも増大することが確認された(図7)。 このin vitroにおいて構築した細胞塊は、in vivoでの肝臓機能を再現する組織モデルとなるものである。


    まとめ


    本実施例では、HepG2細胞を内包するコラーゲンビーズの表面に3T3細胞を播種した。 その結果、HepG2細胞及び3T3細胞は、単一サイズの階層的細胞共培養を実現して細胞塊を形成し、細胞間相互作用を行うことが観察された。 In vitroでの3次元共培養ビーズは、種々の細胞を用いてin vivo様の組織モデルとして、細胞−細胞相互作用を研究するのに有用である。 また、3次元の細胞培養ビーズは、化学物質/薬物のオンチップアッセイを可能にする。


    本発明の共培養方法によれば、各細胞の空間的配置を精密にコントロールすることができ、その結果、階層的組織構造を生成することができる。 これらのビーズにおいて、内部の細胞は外側の細胞によって十分に閉じ込められている。 単分散コラーゲンビーズの3次元共培養は、これらの可動性組織の扱いを可能とし、生化学/薬物アッセイに都合のよい実験プラットフォームを提供する。

    再構成組織の製造 実施例2の概要 本実施例では、本発明のバイオマテリアル(以下、「細胞ゲル玉」という場合がある。)を鋳型に入れて再構成組織を製造したものである。 コラーゲンゲル玉表層にカバー細胞として3T3細胞を播種し細胞ゲル玉を形成した。 この細胞ゲル玉を、任意の形状に成形したミリメートルスケールの鋳型内に入れて培養すると、ゲル玉表層の細胞同士が結合することで個々のビーズが一体化し、培養24時間以内に型通りの三次元立体組織を再構成することができた。 再構成24時間後の組織切片を観察すると、組織内部で壊死はみられず、かつ、どの部位も均一な細胞密度であった。 一方で、細胞密度の高い細胞凝集塊(スフェロイド)で同様に再構成組織を作製した場合は、組織内部で壊死がみられた、また、細胞ゲル玉の組み合わせを変えることでヘテロ組織構造の再構成を実現した。
    以上より、本発明の方法は、簡便かつ迅速に、細胞密度が均一な厚い組織を作製しうる手法であることが実証された。 さらに、コラーゲンゲルビーズは大きさを容易に可変できるため、組織中の細胞密度を任意に制御でき、細胞種の増殖又は成長に合わせた立体組織構築が展開できると考えられる。 以下、本実施例の内容を具体的に説明する。
    組織片作製用鋳型の作製 光造形法により、アクリル系樹脂材料からなる凸型の人型鋳型を作製した。 本鋳型表面にパラキシリレン樹脂の薄層を形成し、シリコーン製樹脂であるポリジメチルシロキサン(PDMS)で凹型の人型鋳型を作製した。 鋳型の大きさは、高さ7mm、幅5mm、深さ1.5mmとした。
    細胞培養
    接着性細胞としてマウス線維芽細胞である3T3細胞、及びヒト正常臍帯静脈内皮細胞を用いた。 それぞれの細胞を、培養培地として10%(v/v)ウシ胎児血清(Japan Bioserum社)及び1%ペニシリン−ストレプトマイシン溶液(SIGMA−Aldrich)を補ったDMEM中、37℃、5%CO 雰囲気下の条件で培養した。
    細胞塊の作製 AFFDで作製した直径約100マイクロメートルのコラーゲンゲル玉を細胞非接着培養皿上に分散させ、3T3またはHUVECを播種し、17時間培養することで細胞ゲル玉を作製した。 3T3細胞については60rpmの条件で振とう培養した。 細胞凝集塊(スフェロイド)は3T3細胞を細胞非接着培養皿上に播種し、60rpmの条件で振とう培養することで作製した。
    細胞ゲル玉モールディング 再構成組織を作製するために、細胞塊をPDMS製鋳型に流し込み(モールディングし)、37℃、5%CO 雰囲気下の条件で培養することで立体組織を作製した。 具体的には,モールディング1−2時間後、細胞塊同士が結合したことを確認してから、培養液をさらに追加し、インキュベータ内で培養を続けた.
    細胞の免疫染色および可視化 細胞ゲル玉および細胞凝集塊(スフェロイド)を4%パラホルムアルデヒドで固定し、細胞膜透過処理後、細胞骨格についてはアクチンフィラメントをAlexa488標識化phalloidin(Invitrogen)で染色した。 細胞核についてはHoechst33342(Invitrogen)で染色した。 HUVEC細胞と3T3細胞によるヘテロ組織構造の再構成実験においては、HUVECに対してanti−CD31モノクローナル抗体(Serotec)を反応させ、Alexa568標識化抗マウスIgG(Invitrogen)抗体で染色した。
    組織切片作製 モールディングし、培養24時間後、再構成組織を4%パラホルムアルデヒドで固定した。 固定後の組織から組織切片を作製するとともに、作製した切片のヘマトキシリン−エオジン染色(H.E.染色)を行った。 H. E. 染色像から、組織中の細胞密度及び細胞の生死を解析した。
    結果
    結果を図12〜18に示す。
    図12は、ヒト形の鋳型に細胞塊を入れて再構成させたときの組織を示す。 左パネルは本発明の細胞ゲル玉を用いて作製された組織であり、右パネルは細胞凝集塊(スフェロイド)を用いて作製された組織である。 図13は、本発明の方法により得られた組織の経時変化を示す図である。 再構成(培養)を開始して17時間経過すると、組織全体が約25%収縮した。 これは、細胞塊同士が結合し、単位体積あたりの細胞塊が密な状態となったためである。 また、細胞自身が分泌する酵素によりコラーゲンゲルの分解の影響と考えられる。
    図14は、再構成を開始して30時間後の組織において、細胞塊の生死を測定した結果(Live/Deadアッセイ)を示す図である。 緑色は生細胞を、赤色は死細胞を表すが、図14では死細胞は確認されなかった。
    図15は、細胞ゲル玉と細胞凝集塊(スフェロイド)を用いて再構成組織を作製したときの組織切片像を示す図である。 図15a,bは各々の細胞塊の共焦点像である。 細胞塊の時点で細胞密度が異なることがわかる。 これらを人型鋳型にモールディングして再構成組織を作製した。 図15e−hは各々の組織切片に対するH. E. 染色像を示す。 紫は細胞核。 赤色(ピンク色)は細胞質を表す。 どちらの組織も、どの部位においても細胞密度が均一であるが、細胞凝集塊(スフェロイド)の再構成組織は、組織内部が欠落、および細胞核が抜けていた。 これは、細胞密度が高すぎるために酸素や栄養分が細胞に行き届かず壊死したためであると考えられる。
    図16は、細胞ゲル玉を用いて作製した組織切片から求めた各部位の細胞密度を測定した結果を示す図である。 図16より、どの部分を切っても細胞密度は均一であることが示された。
    図17は、HUVEC細胞ビーズとNIH/3T3細胞ビーズとをモールドに入れてヘテロ3次元組織を形成した結果を示す図である。 再構成後、HUVEC細胞ゲル玉に対して、免疫染色法により赤色、および細胞骨格を緑色に染色した。 また、3T3細胞ゲル玉の細胞骨格に対して緑色に染色した。 つまり、HUVECは赤と緑で染色されているため、図17の合成画像では赤〜黄色で表され、3T3細胞ゲル玉については緑色のみで表される。
    図18は、2種類の細胞塊を用いて共培養を行い、再構成された組織を示す図である。 赤色と緑色が交じり合った色はHUVEC細胞、緑色は3T3細胞を表す。 左パネルは頭部と胴体において、別々の細胞で構成されていることがわかる。 これに対し、右パネルはランダムにHUVEC細胞と3T3細胞を鋳型に入れて組織を再構成させたものであり、赤色(黄色)(HUVEC細胞)と緑色(3T3細胞)とが混在していることが分かる。

    本発明により、階層的細胞層を有するバイオマテリアル、及びその製造方法が提供される。 そして、本発明の方法により、細胞を内包した単分散ゲル状液滴を製造することが可能となった。 本発明の方法により得られた細胞塊及び組織は、in vivo様のマイクロ環境及び細胞−細胞相互作用をin vitroで研究するための経済的かつ利便性を備えたツールとして有用である。

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