細胞を磁性化するための材料及び磁気操作

申请号 JP2012531105 申请日 2010-09-27 公开(公告)号 JP5769717B2 公开(公告)日 2015-08-26
申请人 エヌ3ディー バイオサイエンスィズ,インコーポレイテッド; 发明人 ソウザ,グラウコ,アール;
摘要
权利要求

細胞を磁性化するための組成物であって、 a)負に帯電したナノ粒子; b)正に帯電したナノ粒子;及び c)支持分子、 を含み、ここで前記負に帯電したナノ粒子又は正に帯電したナノ粒子のうちの1つが磁気応答性エレメントを含み、かつ、前記支持分子は、正及び/又は負に帯電され、静電相互作用によって、前記細胞と共に緊密な混合状態で前記負に帯電したナノ粒子及び前記正に帯電したナノ粒子を保持し、マット状の繊維構造を形成する、組成物。前記負に帯電したナノ粒子が金のナノ粒子であり、前記正に帯電したナノ粒子が酸化鉄のナノ粒子である、請求項1に記載の組成物。前記支持分子がペプチド、ポリサッカリド、核酸、ポリマー又はその組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。前記支持分子がポリ−リシンを含む、請求項1に記載の組成物。a)前記支持分子がポリ−リシンを含み、 b)前記負に帯電したナノ粒子が金のナノ粒子であり、及び c)前記正に帯電したナノ粒子が酸化鉄のナノ粒子である、請求項1に記載の組成物。請求項1又は5に記載の組成物と細胞を接触させること、及び該細胞が磁性化するまで1〜12時間インキュベートすること、及び磁性化した前記細胞を、前記細胞を移動させるのに十分な磁場にかけることを含む、細胞を移動させる方法。前記磁場が非対称である、請求項6に記載の方法。前記細胞が懸濁されている又は接着している、請求項6に記載の方法。請求項1又は5に記載の組成物とインキュベートすることにより作成される磁性化細胞を含む組成物。前記細胞が凍結している、請求項9に記載の組成物。

说明书全文

(関連出願) 本出願は、2009年9月25日に出願の米国仮特許出願第61/245846号の優先権を主張し、またその全体は参照することにより本明細書に組み入れられる。

(後援研究に関する説明) 該当なし

(マイクロフィッシュ添付物への言及) 該当なし

本発明は、ナノテクノロジー、材料、生合成、医薬、細胞生物学、及び組織工学の分野に関する。より詳細には、本開示の組成物及び方法は、細胞を磁性化する方法、並びに磁場を用いた3D細胞培養、細胞操作、及び細胞のパターン形成の方法に関する。

細胞操作、それらの環境の制御、及びin vivo若しくは天然の細胞又は組織の応答を模倣する又は引き出すための条件の促進は、精的に研究が行われている分野である。幹細胞及び再生医療の分野においては、細胞をin vivoで成長する天然の条件を再現するための方法及び材料が特に必要とされている。細胞がそれらの天然の環境から除かれるときに経験する状態は、それら新しい環境に細胞が適応するための変化である恒常性をもたらし、そのため細胞の変化が誘導される。これら過程の多くは融通性のあるもの又は可逆的なものではなく、そのため、細胞はそれらの天然の状態に戻ることはできない。細胞及び組織工学がその最大の可能性を達成することができるようになるためには天然の細胞環境をもたらす及び細胞の有害な変化を最小限にする又は制御する材料及び方法が強く望まれている。

現在、三次元(3D)細胞培養条件を支持することができる材料が開発中である。3D細胞培養技術での大部分の研究は、フラスコの回旋、細胞が接着することができる細胞外足場の利用、細胞を懸濁するための磁場の利用、又はこれらの方法のいくつかの組み合わせのいずれかを含んでいる。

例えば、米国特許第2005054101号、国際公開第2005010162号においてFelderは、細胞が成長することができ、かつ、3D環境において細胞を支持することができる細胞外足場を形成する、ヒドロゲル基質について記載している。これは、細胞間相互作用を迅速に促進するというよりも、細胞と相互作用する、人工の基質を導入し、そして2D培養よりは改善されるが、足場は細胞を不安定にする傾向にあり、最終産物中に残存する。さらに、細胞はマイクロキャリア上又はマイクロキャリア中で成長することができるが、細胞が周囲にある全ての細胞と接触/相互作用することができる方法では、細胞は浮遊することができない。

煩雑な化学及び複雑な装置を必要とすることをはじめとする、Felderのマイクロキャリアの製作に関連する複雑性は、全国規模で相当なレベルにある。さらに、マイクロキャリア製作における主要な試薬の1つであるアルギマトリクス(algimatrix)はエンドトキシン源となる可能性がある。浮遊の促進には浮力の制御もまた関与しているようであり、マイクロキャリア中にガラス球を注入することにより制御されるが、ここでもまた複雑性及び問題が生じる。最後に、ガス交換を達成させるため、及びマイクロキャリアの凝集を防ぐために必要な撹拌には専門のハードウェアが必要であり、細胞の撹拌にはしばしばインペラが用いられている。しかしながら、撹拌によって生じる剪断応力が細胞損傷を引き起こすことが知られている。さらに撹拌は、3D培養のいずれの磁場形状の制御にも悪影響を及ぼす。

米国特許第2009137018号、国際公開第2005003332号においてBeckerは、生物材料を引きつけることができる、磁化コア粒子のコーティングを使用し、それにより生物細胞を、磁化コア粒子へと接着させ、そしてそれらを磁場において懸濁することを可能にした。細胞培養の間も細胞ではコーティングが残り、このために培養中に天然のものではない要素が混入し、おそらく細胞が不安定になる。発明者らは、最終的には除去することができる生分解性コーティングの使用について企図しているが、それについては何も開示されていないためにこの方法が有効かどうかはわからない。さらに、細胞はマイクロキャリアのコアにおいて成長するため、細胞間相互作用を促進する目的で磁気浮遊により細胞をまとめることができる、個別の細胞の浮遊が起こるとは考えられない。したがって、マイクロキャリアを使用した場合に、細胞間接触による早い(数時間時間で)3D多細胞構造のアセンブリを提示することができるかははっきりとしない。また、マイクロキャリア上で細胞を成長させることによって、特に個々の細胞を浮遊させてその後それらを磁気でまとめることによって、異なる細胞型の共培養が示されていない。最後に、このシステムは扱いにくく、かつ、スケールアップ及びハイスループットな適用には適さないものである。

より良い方法は、細胞を一時的に磁性化し、それらの3D培養を可能にするものであろう。例えば、米国特許第2006063252号、国際公開第2004083412号、国際公開第2004083416号においてAkiraは、リポソームの取り込みによる細胞の磁性化に、磁性陽イオンリポソーム(MCL)を使用している。その後、磁性化した細胞を、磁力を用いてプレート底部のシート中で生育させ、そして使用のために分離する。しかしながら、細胞のシートを生産することができるが、細胞は依然としてプレート底部で成長するため、これは磁気浮遊による真の3D培養ではない。さらに、「Effective Cell−Seeding Technique Using Magnetite Nanoparticles and Magnetic Force onto Decellularized Blood Vessels for Vascular Tissue Engineering」という名称の最近の出版物においてShimizu及びAkiraらは、脱細胞化血管に細胞を播種するために磁気誘導を使用している1。この研究は有望な結果を示しているが、彼らは脱細胞化するための組織の提供源としては、磁性化した細胞を使用していない。磁性化した細胞を、脱細胞化血管の再細胞化に使用しているのみである。

Souzaによる特許出願、国際公開第2010036957号では、磁場に応答するナノ粒子を有するバクテリオファージを含む「ヒドロゲル」と細胞とを接触させることにより、磁場において細胞を浮遊させている。具体的には、fd、fl、のような線状ファージ又はM13バクテリオファージが用いられている。この方法がどのようにして機能するかについては完全には明らかにされていないが、ファージが細胞をコーティングするゲル様構造又はアセンブリを生じ、そして、どのようにかして、細胞が磁気応答性ナノ粒子を取り込む又は吸着することを補助していると理論立てられている。従って、ヒドロゲルを洗い落とした後でさえも細胞の磁気応答性は維持され、適切な磁場で浮遊させることができる。しかしながら、大部分のヒドロゲルが洗い落とされるものの、ファージの感染又は遺伝子物質が移入する可能性が残るため、ファージを使用しないで細胞への取り込み又は吸着を可能にすることができる材料の提示が望まれている。

本開示は、天然の細胞環境をもたらす改良された材料及び方法を提供することにより、当該分野に存在する欠点を克服するものである。これらは、ナノ粒子ベースの材料を生成するための、並びに3D培養、細胞パターン形成、及び細胞の画像化を可能にする細胞を準備するための組成物及び方法の使用を含む。

本明細書で使用する場合、「正に帯電したナノ粒子」又は「正のナノ粒子」は、全体に正に帯電した200nm未満、好ましくは100nm以下の任意の粒子と定義される。好ましくは、この粒子は非毒性であるが、しかしこのことは、粒子が細胞に残留しないので、必須ではない。

本明細書で使用する場合、「負に帯電したナノ粒子」又は「負のナノ粒子」は、全体的に負に帯電した、200nm未満、好ましくは100nm以下、最も好ましくは約2〜25nmの任意の粒子、と定義される。好ましくは、この粒子は非毒性であるが、しかしこのことは、粒子が細胞に長期間にわたって細胞に残留しないので、必須ではない

本明細書で使用する場合、「磁気応答性エレメント」とは、磁場に応答する任意の要素又は分子であり得る。以下に詳細に記載するように、ナノ粒子のうちの1つは磁気応答性エレメントを含む、又は磁気応答性エレメントでなければならない。

本明細書で使用する場合、「支持分子」とは、マット状の繊維構造又はゲルを作るようにナノ粒子と相互作用し、そのようにして、取り込みのために細胞のごく近くに磁性ナノ粒子を保持する、任意の長い分子を指す。

本明細書においては以下の略号を使用する:

一般的に言えば、本発明は、細胞が磁気応答性エレメントを取り込む又は吸着することを可能にし、その結果、磁場をかけた場合に、細胞培養中で細胞を浮遊可能にする、新しい材料である。この材料は、正及び負に帯電したナノ粒子を含み、このうちの1つは酸化鉄のような1つ以上の磁気応答性エレメントを含まなくてはならない。これらのナノ粒子はさらに、細胞によってナノ粒子が取り込まれる又は吸着される位置のそれらを保持する、帯電したナノ粒子及び細胞を支持する機能をもつポリマー、好ましくは天然の又は細胞由来のポリマー、又はその他の長分子(本明細書においては「支持分子」と呼ばれる)と組み合わせられる。正及び負のナノ粒子の両方を含むことは、ナノ粒子の緊密な混合及び3種類の構成要素の会合の促進を可能にし、その結果、均一な分布及び良い取り込みを確実にする。支持分子は、細胞の磁気応答性エレメントの取り込みを可能にする繊維性のマット様構造として、3種類の構成要素全てと細胞とを緊密に組み合わせる。

インキュベート期間の後に、この材料を洗浄して除去することができる。これにより細胞を磁場において操作することが可能になる。代替の工程は、細胞数と磁性ナノ粒子の量との間の比率を上昇させることにより、磁性材料の取り込みを最適化又は調整する工程である。大量の細胞が存在する場合、それらは磁性ナノ粒子の大部分を取り込むため、特に残りの支持分子及び/又はナノ粒子が細胞にとって非毒性及び/又は有益な場合には、残った物質を洗浄する工程は必要ではない場合もある。このことは特に、支持分子が1つ以上の細胞外マトリックスタンパク質、糖タンパク質又はポリサッカライドを含む場合に事実である。磁性粒子は最終的に細胞から分離され、細胞を完全に天然の状態に残す。

単純な3D培養に加えて、細胞の形、パターン形成及び挙動を操作するために磁場を用いることができる。例えば、トロイダル(ワッシャー型の)磁石を使用することにより、細胞の同様の形状への会合を促進することができ、又は傾斜磁場は3D細胞培養の片側を厚くすることができる。我々はまた、生育の期間中、培養皿の底部に強力な磁石を置くことにより、固くて高密度の細胞のシートを作成した。磁場を逆にすることのみにより、その後シートを浮遊させることが可能であり、そして我々は、その後シートを3D培養中で培養し続けることができる。様々な形を組み合わせ、3D培養を継続することもまた可能であり、かくして、より複雑な形を3D培養において作出することができる。

磁気応答性エレメントは、例えば希土類磁石(例えば、サマリウムコバルト(SmCo)及びネオジム鉄ボロン(NdFeB))、セラミック磁石材料(例えば、ストロンチウムフェライト)、磁性元素(例えば、鉄、コバルト、及びニッケル並びにそれらの合金及び酸化物)のような磁場に応答するであろう、任意の元素又は分子であってもよい。特に好ましいものは、磁場に応答する常磁性材料であるが、材料の会合を容易にすることを可能にするので、それらは磁石そのものではない。

好ましくは、そのような細胞の浮遊に用いる磁場は約300G〜1000Gである。しかしながら磁場強度は、細胞からの距離、並びに細胞によって取り込まれる又は吸着される磁気応答要素の量及び型の両方によって変わる。従って、最適な磁場強度は様々となるであろうが、経験的に容易に決定される。

負に帯電したナノ粒子は、電荷の安定した金属(例えば銀、銅、白金、パラジウム)を含むが、好ましくは金のナノ粒子である。

正に帯電したナノ粒子は、界面活性剤又はポリマーが安定化した若しくはコーティングされた合金及び/又は酸化物(例えば鉄元素、鉄−コバルト、ニッケル酸化物)を含み、好ましくは酸化鉄のナノ粒子である。

2つのナノ粒子のうちの1つは磁気応答性でなくてはならないが、明かにどちらの一方がこの特徴を有し得る。

ナノ粒子はナノ単位の大きさを有するため、約100nmである。しかしながら、大きさは約5〜250nm、50〜200nm、75〜150nmの間の範囲であり得るが、使用する細胞型への取り込み又は吸着を可能にするために適当な大きさである限り、それらはより小さくても又はより大きくてもよい。本明細書において我々は、磁性ナノ粒子の有効な大きさには上限があることを示し、また、複数の機能が依然として観察されるが、マイクロメーターサイズでは効果的となるには大きすぎることを示した。

「支持分子」は通常、緊密な混合物中にナノ粒子及び細胞を保持するのに役立つ、ポリマー又はその他の長分子である。支持分子は正に帯電したものであっても、負に帯電したものであっても、両方の電荷を有するものであっても、又は帯電していないものであってもよく、及び1つ以上の支持分子の組み合わせであってもよい。

そのような支持分子の例としては、ペプチド、ポリサッカライド、核酸などのような天然のポリマーが挙げられるが、合成のポリマーもまた使用することができる。特に好ましい支持分子としては、ポリ−リシン、フィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、BSA、ヒアルロナン、グリコサミノグリカン、アニオン性、非硫酸化グリコサミノグリカン、ゼラチン、核酸、細胞外マトリックスタンパク質混合物、マトリゲル、抗体、並びにその混合物及び誘導体が挙げられる。

一般的に言えば、支持分子の濃度は、負及び正に帯電したナノ粒子の濃度よりも大幅に高く、1〜1000倍高い、10〜500、又は20〜200倍高い範囲である。しかしながら、どの細胞型を用いるか並びにどの支持分子及びナノ粒子を用いるかによって、より高い又はより少ない量にすることも可能である。ポリマーの長さが長くなるほど、取り込みのための場所にナノ粒子を保持するのに十分な構造を形成するために必要な量はより少なくなるだろう。

通常、ナノ粒子は非常に低い濃度で用いられる。濃度は、10−12〜10−6モル濃度の範囲になり得るが、好ましくはナノモル濃度の範囲であり、かつ、支持分子の濃度は10−9〜10−3モル濃度であり、好ましくはマイクロモル濃度の範囲である。

3種類の構成要素は静電相互作用によって会合するため、ポリ−リシンのような帯電した、又は両方に帯電した支持分子が好ましい。しかしながら、構成要素及び/又は細胞の相互作用をさらに促進するために、3種類の構成要素のいずれをも官能化、誘導体化又はコーティングすることができる。従って、1つ以上の成員を、例えば、細胞表面抗原に結合する抗体を用いて、官能化、誘導体化、又はコーティングすることができる。従って、構成要素及び/又は細胞間の相互作用がさらに促進されるだろう。他の結合対には、受容体−リガンド、ビオチン−ストレプトアビジン、相補的な核酸、コムギ胚芽凝集素(WGA)、シアル酸含有分子などが含まれる。

コーティングは、PVP、デキストラン、BSA、PEGなどのような、特にナノ粒子のための、防御的又は保護的なコーティングをもまた含み得る。ナノ粒子、特に磁気応答性エレメントを含むナノ粒子を可視化のために、例えばフルオロフォア、放射性標識などを用いて、特に磁性化細胞及び組織の開発及びin vitroでの試験の段階で標識することができる。しかしながら、治療上での使用においては、そのような標識を省略することが好ましいだろう。

その他の実施形態において組成物は、幹細胞、癌細胞、初代細胞、哺乳類細胞、ヒト細胞、新鮮な組織から直接抽出された細胞、細菌、酵母植物細胞、又はその混合物を含むがこれらには限定されない、その後磁場において浮遊させる又は操作する細胞を含む。

本開示は、1つ以上の本開示の組成物と細胞とを混合すること、及び磁場の存在下でこの混合物を培養する、パターンを形成させる、又は操作することを含む、3次元で細胞を培養する、細胞のパターンを形成する及び細胞を画像化する方法をもまた提供する。磁場は培養容器の上にあっても下にあってもよく、培養容器の近く若しくは遠くにあってもよく(例えば、より強い若しくはより弱い)、傾斜していても若しくは横になっていてもよく、又は磁場の形状は多様であり得、又はそれらの1つ以上を組み合わせたものであってもよい。このようにして、特定の目的を達成するために細胞をパターン形成させる又は移動させることができる。

上述したシステムについての我々の広範な研究により、先行技術の方法に対する数多くの改良点を利用可能であることがここに示された。第一に、自己会合製造化学(self assembly manufacturing chemistry)が方法を単純に、かつ、再現可能にし、また、磁性ナノ粒子アセンブリの製造又はそれにつづく細胞の磁性化、細胞操作又は3D培養に専門の装置を必要としない。必要とされるものは、磁場、ピペット、容器及びホットプレートのみであった。従って、この方法は大規模及びハイスループットにも応用可能である。

ポリ−リシンなどの支持分子が容易に合成できることから、望まれる場合には、ファージ又は細胞産物のような生物的な分子を含めずに磁性ナノ粒子アセンブリを作成することができる。それであっても、全ての構成要素が通常非毒性であることから、費用も高くなく、また作成も容易である。さらに、繊維性のマット様構造は、ナノ粒子磁気アセンブリに含めるための、追加の細胞支持分子(細胞外マトリックス要素のような)の組み込みを可能にする。

磁性ナノ粒子アセンブリを用いた細胞を磁性化は、一般的な培地中の細胞にアセンブリを加えることのみを含む。磁性ナノ粒子を処理して数分(5分)以内に細胞を磁性化することができ、また、付着した又は懸濁された細胞を磁性ナノ粒子アセンブリで処理することができる。磁性ナノ粒子での処理の前又は処理後に細胞を凍結保存することができるが、この方法はそれでも機能する。必要な場合には、磁性化細胞を使用する前に、磁性ナノ粒子アセンブリを洗い落とすこともでき、残った細胞は依然として浮遊する。

磁気浮遊によって細胞を3Dで浮遊させる工程及び培養することは、標準的な2Dでの細胞培養に必要なもの以上には、専門の又は費用のかかる装置又は方法(撹拌又は浮力の維持のためのような)のいずれをも必要とせず、また、磁気で浮遊させた3D細胞培養の形状の制御は、磁場の形状を変化させることにより達成することができる。最終的に、またおそらくは最も重要なことに、本発明は細胞の浮遊により、早い(秒及び分単位の)細胞間相互作用、及び細胞を3Dの多細胞のクラスターとして数分以内に会合させることを促進し、そして、磁場を操作すること及び/又は磁気により異なる細胞型の細胞を接触させることにより、複雑な培養構造を作成することができる。

ナノ粒子アセンブリを生成するための、直接会合法の模式図である。この図では、1が負に帯電したナノ粒子、3が正に帯電したナノ粒子、及び5が支持分子であり、そして完成した磁性ナノ粒子アセンブリが7である。3つの構成要素はどの順番で組み合わせてもよいが、ここでは最初にナノ粒子を組み合わせ、次に支持分子を加えたものを示す。

変異型磁性ナノ粒子アセンブリ19を示す模式図である。正のナノ粒子が15、負のナノ粒子が17であり、21及び23は2つの異なる支持分子、例えば、ポリ−リシン(+電荷)及びグルタミン酸及び/又はアスパラギン酸(−電荷)塩を多く含むペプチドを表し、又は別の例としては、ラミニン及びフィブロネクチンを表す。

磁性酸化鉄及び金のナノ粒子及び右側に列挙した様々な支持分子からなる実際のナノ粒子アセンブリの吸収スペクトルである。

例示となるFe02−Au−PLナノアセンブリの暗視野画像(a)及びハイパースペクトル画像(b)である。

図5a〜dは、10xに拡大した明視野及び蛍光画像を示す。aは、IgG−AlexaFluor488支持分子用いた明視野画像である。bは同じ視野の緑色蛍光画像である。cはマウスIgG及び抗マウスIgGAlexaFluor555支持分子を用いた場合の明視野写真であり、dは同じ視野の赤色蛍光画像である。

図6a〜dは、a=PL、b=COL、c=LAM、d=NTを含む、異なる組成の磁性ナノ粒子アセンブリを用いて処理した後に浮遊させている、HEK293細胞の写真である。

動物由来の細胞又は体液の本発明の方法での使用を示す模式図である。

既に成長している試料に加える、本発明由来の細胞又は抽出物の繰り返し使用を示す模式図である。

本発明の方法を用いて細胞の密度及び形状を操作する、数例を示す写真である。

磁場を非対称にすることによる、3D培養の厚さの変化を示している。

図10の方法の一例を示す写真である。

細胞の磁性化のために磁気フィルムを使用する場合の模式図である。ここで、細胞は磁性ナノ粒子アセンブリと緊密に混合されず、その表面上に乗せられるのみである。

本開示は、負に帯電したナノ粒子、正に帯電したナノ粒子、及びポリマー若しくは長分子、又は金属に結合したポリマー若しくは分子を含む、組成物を提供する。以下の実施例は本発明を説明するためだけのものであり、本発明の範囲を不当に限定するものではない。

実施例1:磁性ナノ粒子アセンブリ 図1は、負のナノ粒子(1)及び正のナノ粒子(3)(少なくとも1つのナノ粒子は磁気を帯びている)及び支持分子(5)を組み合わせることにより、磁性ナノ粒子アセンブリ(7)を調製する一般的な模式図を示すものである。

ナノ粒子を別々に、又は低イオン強度緩衝液(塩濃度<10mM)中、望まれるpHで混合することにより、ナノ粒子溶液を調製する。粒子表面の電荷は、適切なpHを選択することにより調節することができ、ここでpHが低い緩衝液(クエン酸又は炭酸緩衝液など)は通常、ナノ粒子全体の電荷を上昇させることができる。対照的に、pHが高い緩衝液(ホウ酸緩衝液など)は通常、粒子全体の電荷を下げることができる。理想的には、各溶液についてのpHの選択により、2つの粒子間の電荷が反対になる。このことは、異なる組成のナノ粒子が一般的に異なる等電点を有することにより達成することができる。

例えば、酸化鉄の型に依存してpHが3.3〜8の範囲で変化し得る2酸化鉄ナノ粒子とは対照的に、Auナノ粒子は多くの場合、クエン酸塩又は塩化物を吸着したイオン存在のために、ほとんどのpH値で負に帯電する。そのため、pH4では、Auナノ粒子は負に帯電すると予想され、酸化鉄ナノ粒子は正に帯電するはずである。ナノ粒子全体の電荷を決定することができる、デキストラン、ポリ−エチレングリコール、又はチオールのような分子を用いてナノ粒子をコーティングすることもまた可能である。正に帯電した、負に帯電した、両方の電荷をもつ、又は帯電していない支持分子を用いた会合を確実にするためには、、電荷の不一致が望ましい。

支持分子(5)溶液は通常、それらを水又は所望のpH、好ましくは低イオン強度(好ましくは、塩濃度<10mMであるが、確実に分子を溶解するために必要な場合には、塩濃度をより高くしてもよい)の緩衝液(クエン酸、リン酸、ホウ酸など)に溶解する又は混合することにより調製される。低イオン強度は通常、電荷遮蔽を低減するために望ましく、そのため、反対の電荷を有するナノ粒子及びポリマーの間の電荷相互作用を促進する。支持分子(5)の濃度は通常、ナノ粒子の濃度(10nM〜1mMの範囲であるが、他の濃度を用いることもできる)を上回るべきであり、一般には、ナノ粒子(1)及び(3)のモル濃度に対して10倍上回るべきである。

さらに詳細には、支持分子は、磁性ナノ粒子の細胞への接着性の向上(ポリ−リシンなど);細胞培養環境の改善(コラーゲン及びラミニンのような細胞外マトリックスタンパク質の使用などにより);特定の分子(DNA、薬剤、リガンド、標識などのような)の細胞への送達を可能にする;シグナルレポーター(蛍光標識のような)としての機能をもたらす;及び/又は、磁性ナノ粒子アセンブリの細胞/組織への生体適合性の改善(例えば、栄養の維持又は適合する免疫表面の提供などにより)、のような機能性をアセンブリにもたらすことができる。

図2は、負に帯電したナノ粒子(17)及び正に帯電したナノ粒子(15)が、2つの支持分子(21、23)により保持されている、磁性ナノ粒子アセンブリ(19)を示す。支持分子対の一例としてはラミニン及びフィブロネクチンが考えられ、別の例としては抗体及び抗原も考えられる。

我々は様々な磁性ナノ粒子アセンブリを調製し、様々な培地中の様々な細胞を用いてその機能を試験した。表3は、試験した構成要素の種類を示す。

図3は、様々なアセンブリの吸収スペクトルを示すものである。ナノ粒子と様々な支持分子の間の静電架橋のレベルを変化させることにより、異なる溶液間の消衰スペクトルの変化が生じる。ラミニン(5)、コラーゲン(7)、及びFuGENE−GFP(21)のスペクトルを例外として、これら全てのスペクトルは、Auナノ粒子の特性吸収からもたらされる、およそ560nmに中心をもつ、広い肩を示す。Auナノ粒子スペクトルにと比較して平坦なスペクトル特性は、多分散酸化鉄ナノ粒子(通常100nmより小さい)が含まれること及びその広い消衰スペクトルによってもたらされるものである。ラミニン(5)及びコラーゲン(7)のスペクトルは、細胞外マトリックス構成要素を用いて調製したナノ粒子アセンブリについてのものである。FuGENE−GFP(21)と命名したスペクトルは、GFPレポーター分子をコードしているDNAプラスミドをローディングした、FuGENE(リポソーム)を用いて調製したナノ粒子アセンブリについてのものである。(21)のトレースにおいて、260nmにUVの肩があることが、DNAプラスミドの存在を示してしている(DNAは260nmにおいて吸光する)。

図4は、例示となるFeO2−Au−PLナノアセンブリの暗視野画像(a)及びハイパースペクトル画像(b)を示す。ハイパースペクトル画像処理は、暗視野での顕微鏡像と画像化した試料の散乱光(400〜1000nm)の波長分解スペクトルを組み合わせた、光技術である。この技術により、光散乱特性に基づいてナノ材料の特定が可能になる。単分散ナノ粒子からは1つのピークが予測されるが、ここでは、スペクトルの予想される広がりは、酸化鉄ナノ粒子及びそれらのアセンブリが含まれことによるものである。スペクトルは広がっているが、それでもなお、組織中のこれら試料を特定するために十分なスペクトル分解を提供する。従って、この方法は、in vitro又はin vivoでアセンブリをモニタリングするための方法である。

次に図5を参照すると、蛍光タンパク質共役体を結合体支持分子(b、d)として用いて調製した磁性ナノアセンブリ(a、c)からの蛍光シグナルである。a及びcの画像に示されるナノ粒子アセンブリは、図1Aのスキームを用いることにより、金及び酸化鉄ナノ粒子、並びにAlexaFluor 555ロバ抗マウスIgG及びタンパク質マウスIgGを二重支持分子として用いて生成したものである。最初に金及び酸化鉄を混合し、次にタンパク質であるマウスIgGを加え、磁性ナノ粒子アセンブリを形成させた。その後、二番目の/別の工程において、蛍光を示す抗体であるAlexaFluor 555ロバ抗マウスIgGと共にアセンブリをインキュベートした。このようにして、磁性ナノ粒子アセンブリを標識し、その使用中に、モニタリングすることができる。

図6a〜dは、図1に示した方法で生成した、異なる組成の磁性ナノ粒子アセンブリを用いて処理した後に浮遊させている細胞を示す写真である。用いた手順は以下の通りである:最初に、Xmg/mlの、直径およそ74nmのAuナノ粒子溶液(クエン酸還元により生成した、波長548nmでの消衰が4.1である)6mlを、picopure水に溶解した、1.0mg/mlの多分散酸化鉄ナノ粒子溶液3mlと混合することにより、酸化鉄−Auアセンブリを生成した。次に、1.0mlの酸化鉄−Au混合物を、picopure水に溶解した、それぞれ別々のポリ−リシン(0.0001%)、コラーゲン(30μg/ml)、ラミニン(10μg/ml)、又はオリゴヌクレオチド(1μg/ml)溶液1.0mlに素早く加えた。

支持分子と混合した後、溶液を一晩インキュベートした。磁性ナノ粒子アセンブリを、磁石を用いて底部に引き寄せながら、上清画分を磁気分離によって除去し、そして上清を廃棄した。未反応の過剰の試薬を除去するために、磁性ナノ粒子アセンブリを各回につき5mlのpicopure水で、2度洗浄した。その後これを5mlのpicopure水中、4℃で保存した。

最後に、0.5mlのナノ粒子アセンブリを入れた15mlのコニカルチューブに5mlのHEK293細胞(50,000細胞/ml)を注意深くピペットで加えた。この混合物をピペットでゆっくりと撹拌し、5分間インキュベートし、沈殿させた。コニカルチューブ中の細胞を5分間インキュベートして沈殿させ、その後上清を除去し(コニカルチューブ中に置いた)そして、培地と交換した。この洗浄過程を2回以上繰り返した。

結合していないナノ粒子よりも、ナノ粒子アセンブリに結合した細胞の方が非常に早く沈殿するため、結合していないナノ粒子は上清と共に除去された。上清の入ったコニカルチューブの底部に磁石を配置することにより、結合していないナノ粒子を上清中で視覚的に検出することができ、ナノ粒子は磁気沈降により可視化され得る。3回目の洗浄の後には、上清は遊離磁性ナノ粒子アセンブリを含んでいないようであった。細胞をその後3.5cmのシャーレに移し、環状のネオジム磁石(20x(8.5x4.5)x7mm;磁気引力:13ポンド)を用いて浮遊させた。どの支持分子を用いたかに関係なく、磁場をかけることにより、全ての細胞が数分以内に3D培養中に浮遊し、融着した。本明細書においては、その他の多くの支持材料について試験し、全てが機能したが、いくつかの結果についてのみを示す。

実施例:構成要素分子 本明細書において我々は、Fe2O3ナノ粒子のみ(<50nm粒子サイズ)、Au−(Fe2O3)ナノ粒子、及びPL−AU−(Fe2O3)の完全な磁性ナノ粒子アセンブリについて試験することにより、磁性ナノ粒子アセンブリの様々な構成要素の重要性についてもまた実証した。

同一量の、又は5,000細胞当たりおよそ1.0μlの酸化鉄磁性ナノ粒子を含む試料を用いて細胞を処理し、500Gの磁石を用いて浮遊開始直後、及び300G又は500Gの磁石を用いて磁気浮遊により7日間培養した後に顕微鏡写真を撮影した(データは示さない)。

初日には全ての細胞を浮遊させることができたが、特に500Gの磁石を用いて培養した場合、PL−AU−(Fe2O3)を用いて処理した試料がより大きく、より集まった3D構造を示した。したがって、3種類全ての構成要素が、3D構造となるのに有効な細胞浮遊及び会合に必要である。ナノ粒子のみの場合にはより低い能力が示されたが、それでもなお、図1の実施形態のものよりも、少ない操作しか必要としないナノ粒子を用いて処理した細胞では浮遊させる及び培養させる能力には価値がある。

実施例:細胞への材料送達 我々はまた、磁性ナノ粒子アセンブリが材料を保持する、及び材料を細胞に送達する能力について示した。原理の証明として、HEK293細胞をGFP DNAを有する磁性ナノアセンブリを用いて処理及び浮遊させ、その後、浮遊した3D細胞培養中の細胞の内部でのGFPの蛍光シグナルを検出した。

より詳細には、DNAを有する磁性ナノアセンブリの調製方法は以下の通りであった:最初に、製造業者(Roche Applied Science、FuGENE HD トランスフェクション試薬)の説明に従って、2mgのGFPプラスミドDNA(DNA)を無血清DMEM培地200μlに溶解し、FuGENE溶液を調製した。

次に、6μlのFuGENE溶液を、希釈したDNA溶液(FuGENE−DNA)200μlに直接加えた。この混合物を室温で15分間静置した。その他に2つの試料を調製した:1つは無血清DMEM培地200μlに直接6μlのFuGENEを加えたもの(DNAなし、負の対照、本明細書においてはFuGENEと呼ぶ)であり、もう1つは、無血清DMEM培地200μlに4μgのDNAを加えたものである(本明細書においてはDNAと呼ぶ)。その後、Au及び酸化鉄ナノ粒子溶液(Auと混合する前の酸化鉄は1mg/mL)を割合が2:1(v/v)、3mlになるように合わせてしっかりと混合し、そして100μlのFuGENE−DNA、100μlのFuGENE、及び100μlのDNAに直接加えた。

この溶液をよく混合し、4℃で一晩インキュベートした。一晩インキュベートした後、ナノ粒子を沈殿させた。磁性酸化鉄及び金ナノ粒子からなるナノ粒子アセンブリ、並びにそれらナノ粒子を含まない上清(ナノ粒子を沈殿させた後に回収した)の消衰スペクトルを得た。それらの高いUV吸収から、DNA及び/又はFuGENEが取り込まれたことが示された。上清のスペクトルは、混合した試料よりも低い吸収を示し、このことはDNA及びFuGENEがナノ粒子アセンブリに取り込まれたことを示している。

磁性ナノ粒子アセンブリを細胞に加え、この細胞を上述のように浮遊させ、そして浮遊した細胞をその後撮影した。DNAを有する両方の系においてGFP蛍光シグナルが見られることは(データは示さない)、これらの磁性ナノ粒子アセンブリが、磁気浮遊によりこれら細胞を3Dで磁性化および培養している間に、DNAを保持する及びDNAを細胞に送達することができる能力を示している。この結果は、磁性ナノ粒子アセンブリが細胞を磁性化すること、及びDNA又は薬剤のような機能物質を細胞に送達することの両方が可能であることを立証するものである。

実施例:初代細胞の浮遊 多くの場合、in vitroで初代細胞を培養することは難しいものであるが、我々は酸化鉄−Au−PLを用いて初代細胞を磁性化した後に、磁気浮遊により3Dにおいて、それらの培養を成功させた。

Auナノ粒子、PL、及び異なる酸化鉄ナノ粒子を含む、様々な磁性ナノ粒子アセンブリを作成した。様々な酸化鉄は、Ferridex−PL、酸化鉄−Au−PL(<50nm)、酸化鉄−Au−PL(〜5nmAu)、及び酸化鉄−Au−PL(<5μm、マイクロ粒子の一例として)であった。Ferridexはデキストランでコーティングされた超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPION)からなる。以下のものに関して特定の分子又は表面が実効電荷を持たない等電点(pI)又はpHは以下の通りである:SPION、73−5;磁鉄鋼(γ−Fe2O3)、3.3〜6.72;及び磁鉄鋼(Fe3O4)、6.5〜6.82

異なるナノ粒子アセンブリとしては以下のものを用いた:11.2mg/mLのFeridexI.V.(Advanced Magnetics、Inc.、Cambridge、MA)、酸化鉄(III)(Sigma Aldrich、544884、粒子サイズ<50nm、Fe2O3。この製品は、主にγ形態の磁鉄鉱を含むが、天然の鉱物形態にはアルファ形態及びガンマ形態の両方が含まれる。我々はまた、酸化鉄(II、III)(Sigma Aldrich、310069、<5μm、Fe3O4、磁鉄鉱)も用いた。3種類全ての鉄試料を1mg/mLになるように水に希釈して解析用溶液とした。Duffら6に従って、約5nmのAuコロイドを調製した。

酸化鉄−Au−PLの調製には、個別に準備した、1.00x10−3〜3.12x10−5%の範囲の濃度でポリ−L−リシン(PL)水溶液を連続して6回希釈することを含んだ。等量の、比率1:1(v/v)のAu及び酸化鉄ナノ粒子溶液をそれぞれの希釈液に加えた。一晩インキュベートした後、ナノ粒子をそれぞれのバイアルの底部に沈殿させ、上清の半量を除去した。最も低い希釈倍率の希釈液から始め、連続希釈混合液を混ぜあわせ、次に希釈倍率が低い希釈液と順に混合していき、全ての溶液が1つのバイアル中にまとめられるまで行った。最終的なPL濃度は1.24x10−3%となった。

試薬を連続希釈した試料にして混合することにより、より高い希釈倍率の希釈液由来の結合しなかった試薬がアセンブリ中に組み込まれるようになる。また、多くの場合異なる希釈液は、はっきりと異なる光学的、構造的、接着、及びその他の物理的特性を示すため、異なる希釈倍率の希釈液を混合することにより、これらの特性を統合することができる。そのような特性の統合がしばしば求められる。一方この過程は、応用によって異なる、最適な条件を決定及び選択するための良好な目視検査である。例えば、1つ又は複数の希釈液はプラスチック又はピペットに対する粘着性を有する可能性がある。

4種類のヒト初代細胞(SCIENCELL RESEARCH LABORATORIES(商標)Carlsbad、CA)を酸化鉄−Au−PLアセンブリを用いて処理し、その後3Dで培養した。この過程には、これらの細胞を単層から約80%コンフルエンスに達するまで2Dの細胞培養フラスコにおいて培養することを含んだ。その後、酸化鉄−Au−PL溶液をフラスコ中の細胞に加え(濃度範囲は1.56〜13.00μL/cm2)、細胞とインキュベートした。インキュベート時間はおよそ一晩(又は約12時間)とした。その後初代細胞をPBSで洗浄した(結合しなかった酸化鉄−Au−PLを除去した)。最後に細胞をトリプシン消化により分離して3.5cmシャーレに移し、最終的に、環状のネオジム磁石(20x(8.5x4.5)x7mm;磁気引力:13ポンド)を用いて浮遊させた。

細胞本来の接触が接着した細胞を用いた場合にさえも、異なる形態及び大きさの酸化鉄を用いて調製された4種類全ての型のナノアセンブリは細胞に付着し、細胞を容易に浮遊させることができた(データは示さない)。しかしながら、より大きな酸化鉄(<5μm、Fe3O4、磁鉄鉱)を用いて調製したアセンブリは、その他のものが形成するほど大きくて凝集した細胞構造を形成しなかった。このことは、細胞が取り込むことができる磁気応答性エレメントの大きさには上限があることを示している。ここで、細胞中に容易には侵入しないより大きな酸化鉄粒子があることにより小さい細胞クラスターが生じる可能性が高く、そのため、細胞はあまり磁性化されず、そのようなより大きなサイズの粒子は細胞表面を覆い、細胞間相互作用を妨害又は損なう可能性もまたある。

実施例:ex vivoでの細胞浮遊 図7を参照すると、血液、血清、血漿、又は凝集していない組織細胞(43)を含むがこれらには限定されない、動物又はヒトから採取した任意の細胞(41)をナノ粒子(45)と混合し、その後、それらを共に30秒から48時間インキュベートする。インキュベートの間に、この試料(43)及びナノ粒子(43)は、ナノ粒子アセンブリ(47)を形成するように、試料及びナノ粒子中に含まれる任意のタンパク質、DNA又はポリサッカライドと静電的に相互作用する。次にこの磁性ナノ粒子アセンブリ(47)を磁力、遠心分離、及び/又は沈降により分離させる。この過程で上清を混合物から分離し、そして残った磁性化細胞を操作するために磁石を用いる。

さらに図7を参照すると、このナノ粒子アセンブリは、血液又はその他の試料(43)中に含まれる任意のタンパク質、DNA又はポリサッカライド間の相互作用により生成される。相互作用の種類には、静電的な性質による相互作用、共有(チオール官能基及び/又はその他の架橋剤)、短距離、及び/又は特異的及び非特異的な性質の疎水性(一般に架橋分子を介した)相互作用が含まれるがこれらには限定されない。例えば、pHを操作することにより静電的な相互作用を可能にする及び/又は制御することができ、ここで異なる等電点を有するタンパク質が、それらに対応するナノ粒子の表面電荷と相互作用する。

さらに、細胞成長を支持する又はアセンブリ中の様々な構成要素をさらに架橋するために、追加の支持分子をアセンブリに加えることもまた可能である。この種の架橋は、抗体又はその他の分子(例えばペプチド又はタンパク質タグ)を用いて、最初の試料(43)又は磁性ナノ粒子アセンブリ(47)を変化させ、アセンブリ中の特定の分子を濃縮する/捕捉することにより達成することができる。

本明細書において記載した実施形態は、最終的な細胞を治療で用いる場合に生じるいずれの免疫反応をも低減するために、天然のタンパク質を用いてナノ粒子アセンブリを調製するために有効であり得る。このことは、異物の影響を遮蔽するために、ナノ粒子アセンブリの調製に血清、血液、又はその他の体組織若しくは体液を使用することができ得ることから、自己細胞を用いる治療用の細胞培養について対応する場合に有効であり得る。

実施例:凍結磁性化細胞 本明細書において我々は、磁性化した際に細胞を凍結し、その後融解して3D培養に用いることができることを示した。上述の方法により、細胞を磁性ナノ粒子アセンブリと混合する。過剰の磁性ナノ粒子アセンブリをその後除去し、標準的な方法に従い、細胞を洗浄及び凍結保存する。その後細胞を融解し、3D培養系において培養する。この方法により、研究及び治療で使用するための磁性化細胞の調製及び商品化が可能になるため、これは非常に便利である。

以下の方法を用いた。フラスコ中で、T−25ヒト胎児腎臓(HEK293)細胞(ATCC CRL−1573)を80%コンフルエンスに達するまで生育させ、200μlの酸化鉄−Au−PLで処理した。その後、約12時間インキュベートした。次に、細胞をPBSで洗浄し(結合しなかった酸化鉄−Au−PLを除去した)、トリプシン処理し、2つのバイアルに分注し、DMSOを含む培地中に入れ、−80℃で凍結した。翌日、長期間の保存用に、それらを液体窒素デュワー瓶の中に移した。

81日後、37℃の水浴中で2分、1つのバイアルを融解した。バイアルの中身を7.5mLの培地で再懸濁した後、細胞を直径35mmの3つのシャーレに分注し、1000Gの磁石を各シャーレの上に置いた。細胞を凍結保存から回収し、磁気浮遊による3Dにおいて数日間培養した。これらの細胞を用いて、十分に浮遊させた3D培養を成長させることができた。初代平滑筋細胞、初代線維芽細胞、膠芽腫細胞(LN299)、及び肝癌(H4IIE癌細胞、肝細胞癌)を用いた同様の方法をもまた成功させた。したがって、その後の使用のために、磁性化細胞を予め調製することが可能である。

実施例:繰り返し処理 我々は又、細胞又は細胞抽出物を既にある3D培養に加えることにより、複数回の細胞浮遊を行うこともできる。このようにして、3D培養が成長するにつれ、培養中に様々な細胞又は細胞産物を濃縮することができる。

図8では、細胞(51)を磁性ナノ粒子アセンブリ(53)に加え、そして細胞を磁性化するために、この細胞と磁性ナノ粒子アセンブリを共にインキュベート(55)する。次に、磁石(61)を用いてこの磁性化細胞を浮遊させる(59)。その後、細胞を4時間、一晩、又は数日間浮遊させておき(細胞型によって異なる)、細胞の浮遊を解除し、培地をpicopure水(73)と交換し、及び凍結融解により細胞を溶解した(75)(細胞を液体窒素中に少なくとも10分間おく)。あるいは、磁石(61)を用いて細胞を培養シャーレ(65)の底部に引きつけることもでき、この場合、この工程を1〜4回繰り返すことができる。その後、細胞(67)若しくは細胞抽出物(69)又は異なる細胞(71)のいずれかを別の試料の中に戻し入れ、そして3D培養の工程を継続させることができる。写真は示されていないが、これらの手順は首尾よく示されている。

実施例:成形された培養物 我々はまた、磁場を変化させることにより、3D細胞培養の形を様々にすることができることを示した。プレートの底部に細胞を引きつける強力な磁石を用いると、密度の高い、良好に形成された細胞のシートが作られる(示されていない)。これを、その後磁場を反転することにより浮遊させることができる。我々はまた、磁石を傾斜させることにより、片側が厚くなった3D培養を作出した。トロイダル磁石の使用により、ドーナツ型の培養を作出した。

図9a〜eは例えば、磁場の強度または磁石とシャーレの距離を変化させることにより、細胞を異なった程度で圧縮することができる、または環状の磁石を用いてドーナッツ形が形成される、細胞培養のいくつかの例を示す。図10及び図11は、磁場を傾斜させることにより、片側が厚く形成された3D培養を示す。

我々はまた、そのようなドーナツ型又はシート上の細胞培養を重ねて、最終的にはより複雑な構造を形成することができると予測する。例えば、ディスクを重ねることにより、管様構造を作出することができるだろう。ディスクを重ね、その後一方又は両方の端にシートを被せることで区画を作出することができ、この区画を同じ又は異なる細胞型で充填することができるだろう。このようにして、より複雑な組織操作を達成することが可能である。

我々はまた、磁場を用いて細胞を移動させることができる。そのような移動は3D培養の特性及び組成に影響を及ぼし得る。細胞にヒドロゲル(磁性ナノ粒子アセンブリとしても知られている)を播種した場合には、永久磁石の動きによる、又は電磁石により生成される磁場の変化による、磁場の垂直及び/又は水平方向への移動は細胞が細胞培養プレートに直接接着することを防ぐ。この移動の回数は例えば、1Hz(1分間当たり60回)から0.001Hzの範囲になるだろう。さらに、異なる細胞型は移動するゲルと非常に異なって相互作用をする可能性がある。垂直及び/又は水平方向への移動を組み合わせることにより、移動している材料の固さは、移動しているゲルに様々に接着する細胞の型をさらに決定するだろう。磁石に揺れる動きを加えることにより、この方法の変型を作り上げることができるだろう。この方法は、磁気浮遊による3D細胞培養を含むがこれらには限定されない磁気操作のために、細胞を調製する、分離する、及び識別するための有効な代替法である。

実施例:表面接触 上述の実施形態において我々は、この構成要素の緊密な混合物を提供するように、磁性ナノ粒子アセンブリと細胞を混合した。しかしながら、我々はまた、緊密な混合は必要ではなく、単に磁性ナノ粒子アセンブリに隣接するだけで、細胞は磁性ナノ粒子を取り込むであろうことを示した。このことは、細胞が磁性ナノ粒子アセンブリ材料を含まないことが必要な場合に有益である。

図12は、磁性ナノ粒子アセンブリ(200)を磁場に曝露する方法を図示するものである。これは、磁性ナノ粒子アセンブリを濃縮又は圧縮して、更に高密度の磁性フィルムにする効果がある。細胞(400)をこのフィルム上に加えることができ、そして細胞は重力により、フィルム上に自然に沈殿するだろう。このフィルムへの接近により、細胞が磁性化されるだろう。その後細胞をフィルムから容易に浮遊及び分離することができ、そして3D培養中で細胞を浮遊させ、成長させることができる。我々はこの概念を様々な支持分子を用いて試験し、これが機能することを示した。

本明細書において開示及び請求する全ての組成物及び/又は方法は、本開示を考慮して、不当な実験を行うことなく作成及び実施することができる。本発明の組成物及び方法を好ましい実施形態の観点から記載してきたが、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、組成物及び/又は方法並びに本明細書において記載した方法の工程及び工程の順序に変更を加えてもよいことは当業者には明らかであろう。より特定的には、同じ又は同様な結果が達成される限りは、本明細書において記載した薬剤と化学的に及び生理学的の両方に関連した特定の薬剤と置き換えてもよいことが明かだろう。そのような全ての類似した置換及び変更は当業者には明かであり、かつ、添付の請求項によって定義される本発明の精神、範囲及び概念の範囲内であると見なされる。

以下の参考文献、参照することによりその全体が本明細書に組み入れられる。 (1)Shimizu,K.;Ito,A.;Arinobe,M.;Murase,Y.;Iwata,Y.;Narita,Y.;Kagami,H.;Ueda,M.;Honda,H. J.Biosci.Bioeng.2007,103,472−8. (2)Kosmulski,M.;Marcel Dekker:Chemical Properties of Material Surfaces:New York, 2001. (3)Mahmoudi,M.;Simchi,A.;Imani,M. J. Iran. Chem. Soc. 2010, 7, Sl−S27. (4)Bacri,J.−C.;Perzynski,R.;Salin,D.;Cabuil,V.;Massart,R. J. Magn. Magn. Mater. 1990, 85, 27−32. (5)Douziech−Eyrolles,L.;Marchais,H.;Herve,K.;Munnier,E.;Souce,M.;Linassier,C.;Dubois,P.;Chourpa,I. Int. J. Nanomed. 2007, 2, 541−550. (6)Duff,D.G.;Baiker,A.;Edwards,P.P. Langmuir 1993, 9, 2301−2309. 米国特許第2005054101号、国際公開第2005010162号 米国特許第2009137018号、国際公開第2005003332号 米国特許第2006063252号、国際公開第2004083412号、国際公開第2004083416号 国際公開第2010036957号

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