Method for adjusting the binding of the cells to the support

申请号 JP2013537171 申请日 2011-11-09 公开(公告)号 JP2013541344A 公开(公告)日 2013-11-14
申请人 ロンザ ケルン ゲーエムベーハー; 发明人 ジュディス シェンク,; デン ボス, クリスティアン ファン; クラウディア ローセンバウム,; イン ニー,;
摘要 本発明は、細胞が親和性を通常有さない又は低い親和性しか通常有さない支持体へのこれらの細胞の接着を促進するための方法であって、細胞に非筋ミオシンII阻害剤ブレビスタチンを供給して、さもなければ細胞が十分な親和性を有さない表面に細胞が付着できるようにすることによって、支持体への細胞の接着が促進される方法に関する。 驚いたことに、細胞に阻害剤を供給すると、細胞が親和性を通常有さない又は低い親和性しか通常有さない表面、例えばPTFE(テフロン(登録商標))にこれらの細胞が付着する能 力 が増大する。 本発明は、非筋ミオシンII阻害剤ブレビスタチンの使用、及び表面に親和性を有さない又は低い親和性しか有さない細胞で被覆された少なくとも1つの前記表面を有する機器にさらに関係する。
【選択図】図12
权利要求
  • 支持体への細胞の接着を促進するための方法であって、細胞に非筋ミオシンII阻害剤ブレビスタチンを供給して、さもなければ細胞が十分な親和性を有さない表面に細胞が付着できるようにすることによって、支持体への細胞の接着が促進される方法。
  • 前記支持体が、非固着性材料である又は少なくとも部分的に非固着性材料で被覆されている、請求項1に記載の方法。
  • 前記非固着性材料が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフルオロエチレン(PFE)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、二酸化チタン化合物若しくは二酸化チタンを含む組成物、又はこれらの任意の組合せを含む、請求項2に記載の方法。
  • 前記支持体が、医療機器、好ましくはステント、パッチ又は人工血管若しくは器官の表面である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  • 前記支持体が、複数のマイクロキャリアである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  • 前記細胞が、付着依存性細胞、特に成体幹細胞、好ましくは間葉系幹細胞である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  • 前記細胞が、浮遊培養条件下で増殖される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  • 前記細胞が、血清が低減された培地又は無血清培地に懸濁される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  • 前記細胞が、ブレビスタチンの存在下で凍結及び/又は解凍され、次いで前記支持体に接触させられる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  • 細胞がさもなければ十分な親和性を有さない支持体への細胞の接着を促進するためのブレビスタチンの使用。
  • 医療機器、好ましくはステント、パッチ又は人工血管若しくは器官の表面を、さもなければこの表面への親和性を有さない又は低い親和性しかを有さない細胞で被覆するためのブレビスタチンの使用。
  • この表面への親和性を通常有さない又は低い親和性しか通常有さない細胞で被覆された少なくとも1つの表面を有する機器。
  • 前記表面が、非固着性材料、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフルオロエチレン(PFE)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、二酸化チタン化合物若しくは二酸化チタンを含む組成物、又はこれらの任意の組合せを含む、請求項12に記載の機器。
  • 前記細胞が、付着依存性細胞、特に成体幹細胞、好ましくは間葉系幹細胞である、請求項12又は13に記載の機器。
  • 医療機器、好ましくはステント、パッチ又は人工血管若しくは器官である、請求項12〜14のいずれか一項に記載の機器。
  • 说明书全文

    発明の詳細な説明

    [発明の背景]
    本発明は、細胞が親和性を通常有さない又は低い親和性しか通常有さない支持体(substrate)へのこれらの細胞の接着を促進するための方法に関する。 本発明は、非筋ミオシンII阻害剤ブレビスタチンの使用、及び表面に親和性を有さない又は低い親和性しか有さない細胞で被覆された少なくとも1つの前記表面を有する機器にさらに関係する。

    [先行技術]
    現在使用されている(成体幹細胞を含めた)治療上の細胞の多くは、固定(anchorage)/付着に依存する様式で増殖させ、これは、胚性幹細胞及び誘導多能性幹細胞(iPS)などの潜在的な代替物にもあてはまる。 しかしながら、かかる増殖は、規模及び経済性の厳しい制限を本質的に伴う。 細胞培養増殖のために、細胞は、細胞が数時間のうちに付着する平面の表面上に典型的に播種され、増殖させ、タンパク質分解酵素及び/又はカルシウム除去を用いて採取される。 付着は、均一なプロセスではなく、むしろ特定のゾーン、いわゆる限局的な接着ゾーンを通して起こる。 いったん接着すると、細胞は、内部モータータンパク質を用いて張を発揮する。 したがって、細胞骨格は、組織化され、輸送、足場及び細胞生存を含めた種々のプロセスにおいて機能する。 細胞の付着を外すと、これらは、モータータンパク質によって内部張力の増加に応じて急速に収縮し、すでに組織化された内部構造物(細胞骨格他)が妨害される。 表面に再付着できない場合、かかる細胞は、付着依存性アポトーシス/アノイキスと呼ばれている細胞死プログラムを開始することになる。

    米国特許出願公開第2010 0009 442号は、Rho GTPアーゼのエフェクター分子であり、血管収縮及び神経軸索伸長を調節することが知られている、Rho関連コイルドキナーゼ(coiled kinase)(ROCK)の阻害剤(Y−27632、H−1152又はファスジルなど)は、アポトーシス/アノイキスの阻害剤として使用することができ、したがって、多能性幹細胞、特に胚性幹細胞の生存及び/又は増殖速度を改善することができることを教示している。 ROCK阻害剤の存在下において、幹細胞は、サブクローニング又は継代の前及び/又は後に、フィーダー細胞及び/又は血清なしで培養することができる。

    細胞張力の発生を司る主要な細胞骨格モータータンパク質は、非筋ミオシンII(ミオシンIIと称される)である。 Straightら(2003)は、細胞質分裂を精査する試みにおいて、非筋ミオシンIIの特定の小分子阻害剤を同定した。 この高活性の小分子は、細胞のブレブ形成を阻害し、ブレビスタチンと名付けられた。 この化合物は、細胞浸透性、良性且つ、重要なことに、直ちに可逆的である。

    Walkerら(2010)は、ヒト胚性幹細胞(human embryonic stem cell)及び誘導多能性幹細胞を含めた、ヒト多能性幹細胞の生存を増強するためのブレビスタチンの使用を開示している。 ブレビスタチンでの処理は、クローン密度及び浮遊条件下で、ヒト多能性幹細胞の生存率を増加させる。 さらに、合成マトリックスとの併用で、ブレビスタチンは、幹細胞の自己再生のための規定された環境を支持する。

    米国特許出願公開第2010/0216181号は、血清及びフィーダー細胞を含まない培地における、生存因子としてブレビスタチン又はROCK阻害剤を使用した、多能性幹細胞の培養を教示している。 ここで、多数の細胞が、スピナーフラスコ又はバイオリアクターにおいて細胞を培養することによって産み出される。

    付着依存性細胞は、細胞を浮遊条件下で培養しながら、細胞を成長させることができる表面積を増加させるマイクロキャリア(例えばビーズ)上でバイオリアクター中において大量に作製することができる。 例えば、多能性及び胚性幹細胞を含めた、幹細胞の大規模な作製のための方法は、米国特許出願公開第2010/0093083号から知られている。 ここで、細胞は、複数のマイクロキャリアを含有する無血清培地において培養される。 細胞は、マイクロキャリアに接着させられ、調節された条件下でバイオリアクターにおいて増殖される。 培地を、幹細胞の増殖及び生存を促進する又は分化を防ぐ、追加の成分、例えば酵素GSK3又はMEKの阻害剤で補充することができる。 増殖後、細胞を、酵素的又は非酵素的細胞解離試薬を使用してマイクロキャリアから分ける。 しかしながら、細胞が十分な親和性を有するマイクロキャリアしか使用できないことは、この方法の難点である。

    [発明の概要]
    本発明の目的は、細胞が親和性を通常有さない又は低い親和性しか通常有さない支持体へのこれらの細胞の接着を促進するための方法を提供することである。

    この目的は、細胞に非筋ミオシンII阻害剤ブレビスタチンを供給して、さもなければ細胞が十分な親和性を有さないであろう表面に細胞が付着できるようにすることによって、支持体への細胞の接着を促進する方法によって解決される。 驚いたことに、細胞に阻害剤を供給すると、これらの細胞が、細胞が親和性を通常有さない又は低い親和性しか通常有さない表面に付着する能力が増大する。 したがって、ブレビスタチンは、使用者が、浮遊培養のためのマイクロキャリア又はテフロン(Teflon)(登録商標)で被覆された表面などの特定の支持体への細胞の付着を促進できるようにする、一種のエンハンサーとして有利に使用することができる。 したがって、ブレビスタチンは、細胞培養のための適した支持体の選択を広げるための有用なツールであり、マイクロキャリアへの細胞の付着に頼る細胞培養方法を最適化する、したがって著しく改善することができる。 培養条件の改善及び最適化は、培養される細胞を接着させることができる支持体に関してはるかに多い選択肢があるので、容易になる。 さらに、他の必要性のために最適化されているが、生細胞にとって通常適切な支持体ではない表面、例えば、いくつかの医療機器の表面にコロニーを形成することは、細胞にブレビスタチンを加えることによって達成することができる。 したがって、阻害剤で細胞を処理すると、処理しなければこれらの細胞を培養するのに適さない表面に、これらの細胞が付着し且つ表面上で増殖する能力が得られる。 本発明による方法によって、細胞を培養及び/又は増殖するのに適した支持体、例えばマイクロキャリア又は医療機器の選択の幅が、著しく広がる。

    ブレビスタチンは、細胞培養に適用した場合、付着の不足によって誘発される細胞死を最小化し、単細胞培養を促進する小分子である。 ROCK阻害剤と対照的に、ブレビスタチンは、非筋ミオシンIIの直接的な、非競合的阻害剤として働く。 ブレビスタチンは、複合シグナルカスケードに干渉せず、むしろミオシン−ADP−Pi複合体に結合することによって、非筋ミオシンII及びアクチンとのその相互作用を直接的に標的とする。 重要なことに、ブレビスタチンは、ミオシンIIの容易に調整可能な可逆的(良性)阻害剤である。 ブレビスタチンは、細胞がさもなければ十分な親和性を有さない表面に細胞、特に付着依存性細胞が付着する能力を増大させる。 したがって、ブレビスタチンを、特定の支持体への細胞の付着の調節を可能にする接着トリガーとして使用することができる。 さらに、ブレビスタチンは、さもなければ完全に付着に依存する細胞の浮遊生存を大いに増大させる。 物質を、必要な場合に、培地に直ちに加えることができる。

    本発明の好ましい実施形態において、支持体は、非固着性材料(non−stick material)である又は少なくとも部分的に非固着性材料で被覆されている。 非固着性材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、商品名(DuPont):テフロン(登録商標))、ポリフルオロエチレン(PFE)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、二酸化チタン化合物若しくは二酸化チタンを含む組成物、又はそれらの任意の組合せを含むことができる。

    好ましくは、支持体は、医療機器、好ましくはステント、パッチ又は人工血管若しくは器官の表面である。 かかる機器は、例えば、血液細胞、タンパク質などの望まれない付着を避けるために、細胞培養に通常適さない材料でしばしば作られている又は被覆されているので、それらの機器に細胞でコロニーを形成することは通常困難である。 しかしながら、かかる機器を移植片、代替組織、修復プローブなどとして使用できるように、機器を生細胞、好ましくは幹細胞で被覆することは時折望ましい。 また、免疫系による移植片の拒絶反応は、移植片を自己細胞で被覆することによって効率的に抑制することができる。 有利に、本発明に従って、これらの機器をいくつかの医療用途のために用意する及び改善するために、細胞にブレビスタチンを供給することによって、細胞が医療機器にコロニー形成することを可能にすることができる。

    本発明の別の好ましい実施形態において、支持体は、複数のマイクロキャリアであり、前記支持体に付着した細胞を、浮遊条件下で培養することができる。 本実施形態において、細胞を成長させることができる表面積が増加し、浮遊条件下、好ましくは適したバイオリアクターにおいて細胞を培養する間、マイクロキャリア、好ましくは適したビーズ上で細胞を大量に作製することができる。 本発明に従って、そこから細胞が温度の変化によって、好ましくは温度を低下させることによって取り出される温度調節されたマイクロキャリアを含むがこれに限定されない、サイトデックス(Cytodex)(商標)(GE Healthcare、GB)、Hillex(SoloHill、USA)などの市販のマイクロキャリアを使用することができる。 細胞増殖のために、増加している細胞数(cell number)に追加の付着面積を提供するために、現行の培養物に追加のマイクロキャリアを加えることができる。 したがって、細胞培養物の増殖は、より多くのマイクロキャリアの単なる追加によって容易に達成される。 ある種の用途に関して、異なったサイズのマイクロキャリアを使用することは有益であり得る。

    本発明の別の好ましい実施形態において、細胞は、付着依存性細胞、特に成体幹細胞、好ましくは間葉系幹細胞である。 しかしながら、本発明による方法は、支持体への細胞型の親和性を、ブレビスタチンによって増大することができる全ての細胞型を含む。

    ブレビスタチンは、浮遊培養において、細胞生存を増大し、細胞凝集を減少させるので、細胞を、好ましくは上記で概要を述べたようにマイクロキャリア上に固定化した、浮遊培養条件下で容易に増殖することができる。

    いくつかの用途に関して、細胞が、血清が低減された又は無血清培地に懸濁されている場合に、有利なこともある。

    本発明の特に好ましい実施形態において、細胞は、ブレビスタチンの存在下で凍結及び/又は解凍され、次いで前記支持体に接触させられる。 有利に、ブレビスタチンは、この場合、細胞を安定化し、したがって、細胞を凍結及び/又は解凍する間、細胞への保護効果を有する。 つまり、ブレビスタチンは、細胞の凍結保存回収を増加させ、ブレビスタチンを凍結前に加えることは、細胞を凍結保存するのに有益である。

    したがって、本発明の重要な態様は、細胞がさもなければ十分な親和性を有さない支持体への細胞の接着を促進するためにブレビスタチンを使用することである。

    本発明の別の重要な態様は、医療機器、好ましくはステント、パッチ又は人工血管若しくは器官の表面を、さもなければこの表面への親和性を有さない又は低い親和性しか有さない細胞で被覆するためにブレビスタチンを使用することである。

    本発明のさらに重要な態様は、この表面への親和性を通常有さない又は低い親和性しか通常有さない細胞で被覆された少なくとも1つの表面を有する機器に関係する。 表面は、非固着性材料、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE、商品名(DuPont):テフロン(登録商標))、ポリフルオロエチレン(PFE)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、二酸化チタン化合物若しくは二酸化チタンを含む組成物、又はそれらの任意の組合せを含むことができる。 本発明の好ましい実施形態において、機器の表面は、付着依存性細胞、特に成体幹細胞、好ましくは間葉系幹細胞で被覆されている。 本発明の別の好ましい実施形態において、機器は、医療機器、好ましくはステント、パッチ又は人工血管若しくは器官である。

    基本的に、本発明による概念は、細胞がさもなければ十分な親和性を有さない支持体への細胞の接着を促進し、浮遊培養中への細胞の転置の間、細胞死を防止/低減し、細胞生存を改善し、さもなければ適さない表面に細胞を再配置させ、最後に細胞、好ましくは付着依存性細胞の細胞増殖を増強するためのブレビスタチンの有益な使用に関する。 培養におけるブレビスタチンの使用から利益を得る細胞型の範囲は、非常に広く、既知の治療上有用な細胞並びにヒト胚性幹細胞(HES)及び誘導多能性幹細胞(iPS)などの現在開発中の候補を含む。 HES細胞は通常、集合体として成長し、増殖を可能にするためには頻繁な酵素的な分離を必要とする。 しかしながら、このプロセスは、細胞死/喪失を欠点とし、ブレビスタチンの使用から実質的に利益を得ることができ、実際に、ブレビスタチンの使用は、HES細胞の完全な浮遊培養増殖へのステップであり得る。 成体幹細胞及びiPS細胞の平面培養が、より頑強である一方で、継代の間、重要なことに、成体細胞の完全な浮遊培養増殖へのステップとして、ブレビスタチンの使用も有益である。 多能性成体幹細胞の増殖が、特定の対象である一方で、この概念に関する細胞型は、幹細胞に限定されず、むしろ全ての付着依存性細胞型を含むべきである。

    本明細書では、「非筋ミオシンIIの阻害剤」又は「ミオシンII阻害剤」は、ミオシンIIを直接的に標的とすることによって非筋ミオシンIIの機能を阻害する分子又は複数の分子である。 したがって、本発明の概念は、非筋ミオシンIIに直接的に影響する阻害剤を含む。 ブレビスタチン、又はその任意の類似体若しくは誘導体は、かかる阻害剤の一例である。 しかしながら、本発明は、この例に限定されず、非筋ミオシンIIに及ぼす同様の効果を有する他の阻害剤を含むことができる。

    本明細書では、「付着依存性細胞」は、液体に浮遊させた場合には一般には生存可能でなく、生き残り且つ成長するためには、固体の支持体に接着しなければならない細胞である。

    本明細書では、「体性幹細胞」としても知られている、「成体幹細胞」は、自己再生の能力があり、多くの異なる細胞型、特に生じる組織又は器官の全ての細胞型の子孫を産み出すことができる多分化能の細胞である。 「成体幹細胞」は、間葉系幹細胞、造血幹細胞、内皮幹細胞、神経幹細胞及びそれらの変形を含むが、これらに限定されない。 本明細書では、「成体幹細胞」は、誘導多能性幹細胞(iPS細胞)を含まない。

    本明細書では、「誘導多能性幹細胞」(iPS細胞)は、特異的な転写因子の発現を誘導することによって再プログラムされた、非多能性体細胞由来の多能性の細胞である。 多能性であるので、iPS細胞は、胚性幹細胞と同様である。

    本明細書では、「胚性幹細胞」は、3つ全ての胚葉(内胚葉、外胚葉及び中胚葉)及び生殖系列細胞に分化する能力がある多能性の細胞である。

    本発明を、図を参照して、さらに例示的に詳細に記載する。

    図1は、骨髄由来の間葉系幹細胞(BM−MSC)の細胞凝集(A:顕微鏡写真)、細胞生存(B:棒グラフ)及びアポトーシス(C:棒グラフ)に及ぼすブレビスタチンの効果を示す図である。 細胞凝集(A)、細胞生存(B)及びアポトーシス(C)を、最大7日、異なるブレビスタチン濃度の存在又は非存在下でアッセイした。 ROCK阻害剤(Y−27532)を、正の対照として使用した。 細胞を、接着性成長を支持しないディープウェルに加えた。 異なる濃度のブレビスタチン及びY−27632を、BM−MSC(10%FBSを含有する培地)に関して浮遊(ディープウェル、130RPM)及び接着(6ウェル)培養において試験した。 ブレビスタチンが、細胞集合を防止又は少なくとも大いに低減し、細胞生存を可能にし、間葉系幹細胞のディープウェル培養におけるアポトーシスを減少させることが明らかである。
    A:10μΜブレビスタチンでの処理は、細胞クラスター形成を防止するのに対して、対照細胞(DMSO、PBS)及び10μΜ未満のブレビスタチンで処理された細胞は、単一の凝集体を形成した。
    B:生細胞を、色素排除アッセイ(ヨウ化プロピジウム)を使用して、FACSによって定量化した。 対照培養物(DMSO、PBS)と対照的に、5μΜを超えるブレビスタチンで処理された細胞は、平面培養における細胞と同様のある程度の生存能力を示した(約90%)。 ブレビスタチンの生存増大効果は、10μΜでピークに達し、ブレビスタチンのより高い及びより低い濃度の両方で減少する、濃度依存性と思われた。
    C:アポトーシス細胞を、アネキシンVアッセイ(ヨウ化プロピジウム)を使用して、FACSによって定量化した。 対照培養物(DMSO、PBS)と対照的に、10μΜブレビスタチンで処理された細胞は、アポトーシスに対して保護された。

    図2は、様々な阻害剤濃度で処理し、接着/静置条件(A)又は浮遊/振とう条件(B)下で培養したBM−MSCのアネキシンV染色及び後のFACS分析によって明らかになった、アポトーシスレベルを示す図である。 ここで、ブレビスタチンは、浮遊培養における細胞死を排除し、Y−27632の抗アポトーシス効果に匹敵する又はY−27632の抗アポトーシス効果よりも強い抗アポトーシス効果を示すことが明らかである。 5μΜ未満のブレビスタチンは、限定された効果だけを有し、最も大きい効果は、10μΜで達成される。

    図3は、様々な阻害剤濃度で処理し、接着/静置条件(A)又は懸濁/振とう条件(B)下で培養したBM−MSCのヨウ化プロピジウム及び後のFACS分析によって明らかになった、細胞死率を示す図である。 この分析は、ブレビスタチンが、特に10〜50μΜの濃度、10μΜでの最適条件で、細胞死を著しく排除することを示す。

    図4.1〜4.3は、プロピジウム濃度によって明らかになった、ディープウェルにおける浮遊/振とう条件下で培養した細胞周期プロファイル(G1/G0及びG2)を示す図である。 BM−MSC培養物に、BrdUを連続的に組み込ませ、異なる時点(最大3日)で試料採取した。 大部分の細胞は、G1/G0期にある(非常に高密度な培養物)が、存在するいくつかのG2細胞もある。 >4N細胞の非存在(多核細胞は検出されない)。 結果として、浮遊培養における細胞周期に及ぼすブレビスタチンの有意な効果はない。

    図5.1〜5.3は、様々な阻害剤濃度で処理された細胞のヨウ化プロピジウム及び後のFACS分析によって明らかになった、6ウェルにおける静置条件下で培養した細胞周期プロファイル(G1/G0及びG2)を示す図である。 BM−MSC培養物に、BrdUを連続的に組み込ませ、異なる時点(最大3日)で試料採取した。 大部分の細胞は、G1/G0期にある(非常に高密度な培養物)が、存在するG2細胞もある。 >4N細胞の非存在(多核細胞は検出されない)。 接着Tフラスコ培養(G2/M)における連続的な処理中に、細胞周期のわずかな減速が観察された。

    図6は、ブレビスタチン処理を有さない、Lumox−biofoilバッグの疎性側上で培養したBM−MSC(対照)を示す図である。 <0.1%DMSOでの処理48h後に観察されたコロニー及び付着した細胞を示す。 細胞の著しい付着は、観察されなかった。

    図7は、Lumox−biofoilバッグの疎水性側上で培養したBM−MSCを示す図である。 10μΜブレビスタチンでの処理48h後に観察されたコロニー及び付着した細胞を示す。 著しい数の細胞が、疎水性表面に付着している。 したがって、図6(対照)と比較した場合、ブレビスタチンでの処理は、この表面へのBM−MSCの増加した親和性をもたらす。

    図8は、細胞を転置する間、骨髄由来の間葉系幹細胞(BM−MSC)に及ぼすブレビスタチン及びY−27632の効果を反映する棒グラフである。 サブコンフルエントなBM−MSCを、4hの前処理(10μΜブレビスタチン又は10μΜ Y−27632対対照)及び後のトリプシン/EDTAでの37℃で3分間のインキュベーションに供した。 特定の被覆を有さない組織培養フラスコの表面からの細胞の転置後、細胞総数(cell count)を決定した(A)。 対照条件(ブレビスタチンを有さない)におけるよりも、少ない細胞が、ミオシンII阻害下で転置される。 転置された細胞は、薬物処理条件において凝集体を欠いている。 したがって、ブレビスタチン及びY−27632の両方が、細胞転置及び凝集に対する保護効果を示す、すなわち細胞は、支持体に安定に付着したままであり、容易に洗い落とすことができない。 細胞を、再び播種し(同じ密度:5000細胞/cm で全ての条件)、薬物を含まない培地においてさらに7日間培養した。 7日後、細胞総数(B)及び生存率(C)を、決定した。 BM−MECを、支持体から転置し、さらなる培養のために再び播種した場合、ブレビスタチンは、細胞に及ぼす著しい保護効果を有し、その結果、7日間の培養日後に増殖及び生存率が増大される。 後の薬物を含まない継代(7日目)における、転置前のブレビスタチン処理による細胞増殖(収率及び生存能力)における増加及びY−27632処理に関してより少ない増加も、観察された。

    図9は、マイクロキャリアに付着した骨髄由来の間葉系幹細胞(BM−MSC)のグルコース消費量(A)、乳酸産生(lactate production)(B)及び細胞数(C)を示す棒グラフである。 BM−MSCを、10μΜブレビスタチンの存在又は非存在下での浮遊培養のために、マイクロキャリア上に播種し、6日間増殖させておいた。 撹拌せずに24時間のインキュベート後、培養物を、試料採取し、細胞総数、グルコース消費量及び細胞播種を決定した。 撹拌しながらさらに5日間のインキュベート後、グルコース消費量(A)、乳酸産生(B)、細胞総数(C)及びキャリア上での細胞播種(キャリア上での細胞のDAPI染色、図11)を再び決定した。 24時間後、細胞播種は、対照と比較して、ブレビスタチンの存在下で顕著に増加した。 ブレビスタチンが、6日後、BM−MSCのグルコース消費量及び乳酸産生の両方に及ぼす効果を有さないように思われる一方で、細胞数は、阻害剤での処理後、著しく増加する。 したがって、ブレビスタチンは、細胞に及ぼす保護効果を有し、その結果、マイクロキャリア上での6日間の成長後に増殖が増大される。

    図10は、6日間のインキュベート後の図9によるマイクロキャリアの顕微鏡写真である(キャリア上でのBM−MSCのDAPI染色)。 ここで、ブレビスタチンの存在下(B)で、阻害剤の非存在下(A、対照)よりもはるかに多い細胞が、マイクロキャリアに接着することが明白に示される。

    図11は、被覆された培養皿上で培養したヒト胚性幹細胞(hESC)の顕微鏡写真である。 細胞を、マトリゲル(Matrigel)(登録商標)で被覆された培養皿上で、血清又は動物由来成分を含有しない規定X−VIVO培地において培養した。 A:阻害剤での処理なし(対照)、B:10μΜブレビスタチンでの一過性の処理(左の顕微鏡写真:4倍の倍率、右の顕微鏡写真:10倍の倍率)、C:ブレビスタチンの投与中止後1日の培養物。 X−VIVOにおけるhESCの分割後の付着は、低かった(A:5〜15%)。 培養物を分割した際(EDTA継代)、培地を、10μΜのブレビスタチンで補充した。 これは、X−VIVOにおけるブレビスタチンを含まないhESC培養物の分割後付着と比較して、hESCの付着を劇的に増加させた(B:80〜95%)。 実際、個別化したhESCでさえも、非常によく付着した。 培養物の培地を、24h後、ブレビスタチンを含まないX−VIVOと交換し、どのように細胞が、ブレビスタチンなしで付着したままで増殖するのかを調べた。 ここで、著しい変化は、観察されなかった(C)。

    図12は、骨髄由来の間葉系幹細胞(BM−MSC)に及ぼすブレビスタチン(Bb、(−)鏡像異性体)の効果を反映する棒グラフである。 MSCを、リペレント性(repellent)のテフロン(登録商標)箔上で、10μΜ Bbで、4日間培養し、箔に付着した細胞を、4日目に計数した。 棒は、ウェル毎の細胞の数を表す。 対照培養物:阻害剤を有さないDMSO又はPBSにおけるBM−MSC。 対照と比較してのミオシン阻害下での細胞収率における有意な増加が、観察された。 したがって、BM−MSCは、テフロン(登録商標)箔に付着し且つその上で増殖する。

    図13は、臍帯血由来の幹細胞(CB−USSC)に及ぼすブレビスタチン(Bb、(−)鏡像異性体)の効果を反映する棒グラフである。 USSCを、リペレント性のテフロン(登録商標)箔上で、10μΜ Bbで、4日間培養し、箔に付着した細胞を、4日目に計数した。 棒は、ウェル毎の細胞の数を表す。 対照培養物:阻害剤を有さないDMSO又はPBSにおけるCB−USSC。 対照と比較してのミオシン阻害下での細胞収率における高度に有意な増加が、観察された。 したがって、CB−USSCは、テフロン(登録商標)箔に付着し且つその上で増殖する。

    図14は、骨髄由来の間葉系幹細胞(BM−MSC)に及ぼすブレビスタチン(Bb、(−)鏡像異性体)の効果を反映する棒グラフである。 MSCを、リペレント性のテフロン(登録商標)箔上で、10μΜ Bbで、コンフルエンシーに達するまで培養し、箔に付着した細胞を、細胞播種後6日目に計数した。 棒は、ウェル毎の細胞の数を表す。 対照培養物:阻害剤を有さないDMSO又はPBSにおけるBM−MSC。 BM−MSCは、テフロン(登録商標)箔上に、完全にコンフルエントな層を形成しない。 対照と比較してのミオシン阻害下での細胞収率における相違がなく、4日間の実験との明白な不一致は、より長い培養期間(6日間対4日間)及び/又は増加した最初の細胞数(2倍の付着細胞量は、その上に播種するためのECMの分泌においてより効率的であった)によって引き起こされた。

    図15は、臍帯血由来の幹細胞(CB−USSC)に及ぼすブレビスタチン(Bb、(−)鏡像異性体)の効果を反映する棒グラフである。 USSCを、リペレント性のテフロン(登録商標)箔上で、10μΜ Bbで、コンフルエンシーに達するまで培養し、箔に付着した細胞を、細胞播種後6日目に計数した。 棒は、ウェル毎の細胞の数を表す。 対照培養物:阻害剤を有さないDMSO又はPBSにおけるCB−USSC。 USSCは、ミオシン阻害下で、テフロン(登録商標)箔上に、コンフルエントな層を形成し、対照培養物と比較してのミオシン阻害下での細胞収率における有意な増加が、観察された。

    図16は、低血清EGM2+Dex−培地(3%血清)において培養した臍帯血由来の幹細胞(CB−USSC)に及ぼすブレビスタチン(Bb、(−)鏡像異性体)の効果を反映する棒グラフである。 USSCを、リペレント性のテフロン(登録商標)箔皿上で、10μΜ Bbで、培養し、細胞播種後4日目に計数した。 棒は、ウェル毎の細胞の数を表す。 対照培養物:阻害剤を有さないDMSO又はPBSにおけるCB−USSC。 USSCは、ミオシン阻害剤処理下での有意に増大された増殖を示す。 血清が低減された(EGM2)培地におけるテフロン(登録商標)箔上でのUSSC付着及び増殖は、ミオシン阻害によって増大される。

    図17は、無血清MSCGM−CD培地において培養した臍帯血由来の幹細胞(CB−USSC)に及ぼすブレビスタチン(Bb、(−)鏡像異性体)の効果を反映する棒グラフである。 USSCを、リペレント性のテフロン(登録商標)箔皿上で、10μΜ Bbで、培養し、細胞播種後4日目に計数した。 棒は、ウェル毎の細胞の数を表す。 対照培養物:阻害剤を有さないDMSO又はPBSにおけるCB−USSC。 USSCは、ミオシン阻害に関係なく、無血清培地におけるテフロン(登録商標)箔に付着するが、有意に増殖することに失敗する。 対照と比較してのミオシン阻害下での細胞収率における明白な増加は、観察されなかった。

    図18は、PTFE容器(PTFE=ポリテトラフルオロエチレン、商品名(DuPont):テフロン(登録商標))上の、臍帯血由来の染色された幹細胞(CB−USSC)の写真である。
    A)DMSO対照、
    B)PBS対照、
    C)10μΜ(−)ブレビスタチン。
    USSCを、リペレント性のPTFE容器材料上で、10μΜ Bbで、3日間培養し、対照培養物と比較した。 対照と比較して、ミオシン阻害下で著しく増大された細胞伸展が観察されたが、凝集体形成は観察されなかった。

    図19は、ミオシン阻害を有する又は有さない、凍結保存前及び後のヒト胚性幹細胞(human embryonal stem cell)(hEST)の生細胞密度(棒)及び回収率(三形)を示す図である(BB=ブレビスタチン)。

    図20は、凍結保存した細胞を解凍した後2及び4日のヒト胚性幹細胞(hEST)の平均総数を示す棒グラフである。 通常は、細胞クラスターのみを凍結保存することができ、単一ES細胞は凍結保存できない。 この図は、ミオシン阻害が、凍結保存後に単一細胞生存率を有意に増大することを示す。

    要約すれば、図19及び20は、ブレビスタチンが、単一hESCの凍結保存回収を、hESCクラスターの回収の同等レベルまで増加させることを示す。 さらに、凍結前にブレビスタチンを加えることは、単一hESCを凍結保存するのに有益である。

    上記で示した実験データによれば、ブレビスタチンなどの非筋ミオシンIIの直接的な阻害剤は、細胞培養、特に、付着依存性細胞の培養に及ぼすいくつかの正の効果を有することが明らかになる。 例えば、直接的なミオシンII阻害剤は、
    浮遊培養における細胞生存を増大し、
    浮遊培養における細胞凝集を減少させ、
    さもなければ細胞培養に適さない支持体への付着及び支持体上での増殖を促進し、
    特定の支持体への細胞の接着を調節するためのツールを提供し、
    細胞転置の間、保護効果を有し、
    細胞を凍結及び/又は解凍する間、細胞に及ぼす保護効果を有し、
    細胞選別(例えばFACS)の間、保護効果を有し、
    臍帯血及び骨髄MNC−単離物(一次組織)からの最初の細胞付着を改善し、
    ミオシン阻害は、テフロン(登録商標)箔上での、BM−MSCの中程度の増大された播種及びCB−USSCの強い増大された付着をもたらし、
    ミオシン阻害は、CB−USSCを有するテフロン(登録商標)上でのコンフルエントな成長につながり、
    MSC−GM(無血清培地)における無血清条件下での播種は、ミオシン阻害によって、正に影響され、且つ EGM2−MVにおける血清が低減された条件下での播種及び増殖は、ミオシン阻害によって、正に影響される。

    本発明の別の態様は、細胞の高収率作製及び低損傷剥離のための適した支持体を選択することを可能にする、支持体への細胞、特に付着依存性細胞の接着を調節するための方法を提供することである。 特に、支持体への細胞の接着が、細胞に、非筋ミオシンIIを直接的に阻害する阻害剤分子を供給することによって調節される方法が、提供される。 細胞に阻害剤を供給すると、供給しなければ細胞が十分な親和性を有さない表面にこれらの細胞が付着する能力が増大する。 したがって、非筋ミオシンIIを直接的に阻害する阻害剤分子を、使用者が、浮遊培養のためのマイクロキャリアなどの特定の支持体への細胞の付着を調節することを可能にする、一種のトリガーとして有利に使用することができる。 さらに、本発明による阻害剤は、細胞培養のための適した支持体の選択を広げるための有用なツールであり、マイクロキャリアへの細胞の付着に頼る細胞培養方法を最適化し、したがって著しく改善することができる。

    好ましくは、支持体への細胞の接着は、細胞に阻害剤分子を供給することによって促進される。 阻害剤で細胞を処理すると、処理しなければこれらの細胞を培養するのに適さない表面に細胞が付着し且つそのような表面で増殖する能力が得られる。 つまり、本発明による方法において、細胞を培養及び/又は増殖するのに適した支持体、例えばマイクロキャリアの選択が、著しく広がる。 したがって、培養条件の改善及び最適化は、培養される細胞を接着させることができる支持体に関してはるかに多い選択肢があるので、容易になる。

    本発明の好ましい実施形態によれば、支持体は、複数のマイクロキャリアであり、前記支持体に付着した細胞は、浮遊条件下で培養される。 本実施形態において、細胞を成長させることができる表面積が増加し、浮遊条件下、好ましくは適したバイオリアクターにおいて細胞を培養する間、マイクロキャリア、好ましくは適したビーズ上で細胞を大量に作製することができる。

    本発明の好ましい実施形態において、細胞は、付着依存性細胞、特に成体幹細胞、好ましくは間葉系幹細胞である。 しかしながら、本発明による方法は、支持体への細胞型の親和性が、非筋ミオシンIIを直接的に阻害する阻害剤によって影響を及ぼされ得る全ての細胞型を含む。

    本発明の1つの重要な態様は、上記の表面への細胞の接着を調節するためのブレビスタチンの使用である。

    本発明の別の態様において、細胞を増殖するための方法であって、(a)細胞を懸濁するステップと、(b)細胞が、複数のマイクロキャリアの表面に付着することを可能にするステップと、(c)浮遊条件下で、マイクロキャリアに付着した細胞を培養するステップとを含む方法が提供される。 本発明によれば、ステップ(a)において、細胞を懸濁する前及び/又は間、細胞は、非筋ミオシンIIを直接的に阻害する阻害剤分子で処理される。 この方法において、細胞を成長させることができる表面積が著しく増加し、浮遊条件下、好ましくは適したバイオリアクターにおいて細胞を培養する間、マイクロキャリア、好ましくは適したビーズ上で細胞を大量に作製することができる。 阻害剤は、マイクロキャリアへの細胞の接着を促進し、さもなければ細胞が親和性を有さない又は十分な親和性を有さない表面に、細胞、好ましくは付着依存性細胞が付着する能力を増大させる。

    いくつかの態様において、細胞は、ステップ(a)及び(b)の少なくとも1つの前に、凍結及び解凍される。 驚いたことに、本発明による方法の過程で、細胞を凍結及び解凍することは、増殖の間、細胞の接着及び生存の改善をもたらし、細胞の収率を、著しく増加させることができる。 ここでまた、ミオシンII阻害剤は、細胞が凍結及び解凍される際、細胞に及ぼす保護効果を有する。

    好ましい実施形態によれば、細胞は、付着依存性細胞、特に成体幹細胞、好ましくは間葉系幹細胞である。 しかしながら、本発明による方法は、非筋ミオシンIIを直接的に阻害する阻害剤の存在下で効率的に増殖することができる、全ての細胞型を含む。

    本発明の別の重要な態様は、複数のマイクロキャリアに接着した細胞を増殖するためのブレビスタチンの使用であって、前記マイクロキャリアに付着した細胞が、浮遊条件下で培養される使用である。

    本発明の別の態様において、組織から細胞を単離するための方法であって、(a)非筋ミオシンIIを直接的に阻害する阻害剤分子の存在下で、前記組織を解離するステップと、(b)組織から解離した細胞から対象の細胞を単離するステップとを含む方法が提供される。 驚いたことに、本発明による阻害剤は、一次単離物からの細胞の生存及び回収を著しく改善することが明らかになった。 したがって、組織に埋め込まれた状態から浮遊状態への細胞の移行が改善されることは、本発明による方法の利点である。 したがって、細胞を単離する間、阻害剤分子で細胞を処理することは、より高い収率をもたらし、時折、組織からの新規な細胞型の同定を可能にする。

    対象の細胞を単離した後、これらの細胞を、さらなる使用のためにより多い数の細胞を作製するために、浮遊培養条件下で増殖することができる。 好ましくは、対象の細胞は、非筋ミオシンIIを直接的に阻害する阻害剤分子の存在下で増殖する。

    対象の細胞は、付着依存性細胞、特に成体幹細胞、好ましくは間葉系幹細胞とすることができる。 付着依存性細胞が単離された場合、前記阻害剤分子の非存在下で、付着依存性細胞培養条件下で付着依存性細胞を増殖することが適し得る。

    阻害剤分子は、ブレビスタチンとすることができる。 ブレビスタチンは、細胞培養に適用した場合、付着の不足によって誘発される細胞死を最小化し、単細胞培養を促進する小分子である。 ROCK阻害剤と対照的に、ブレビスタチンは、非筋ミオシンIIの直接的な、非競合的阻害剤として働く。 ブレビスタチンは、複合シグナルカスケードに干渉せず、むしろミオシン−ADP−Pi複合体に結合することによって、非筋ミオシンII及びアクチンとのその相互作用を直接的に標的とする。 重要なことに、ブレビスタチンは、ミオシンIIの容易に調整可能な可逆的(良性)阻害剤である。 ブレビスタチンは、さもなければ付着にもっぱら依存する細胞の浮遊生存を大いに増大する。 物質を、必要な場合に、培地に直ちに加えることができ、物質の効果は、物質を除去することによって直接的及び即時に完全に可逆的である。 分子は、懸濁の最初の段階の間、細胞死を最小化することによって、浮遊培養に向かっての移行において、並びに抽出、すなわち組織に埋め込まれた状態又は適所から浮遊状態への移行の間、細胞死を最小化することによって、組織から新規な細胞を同定することにおいて、重大なツールである。

    ブレビスタチンを、付着依存性細胞を単離するために有益に使用して、特に組織に埋め込まれた状態から浮遊状態への移行の間、付着依存性細胞の収率を増大することができることは、本発明の重要な態様である。

    本発明の別の重要な態様は、付着依存性細胞、好ましくは成体幹細胞、特に間葉系幹細胞に及ぼす成長因子の効果を増大するためのブレビスタチンの使用である。

    本発明のさらに重要な態様は、付着依存性細胞、好ましくは成体幹細胞、特に間葉系幹細胞の無血清培養の間、付着因子を置き換えるためのブレビスタチンの使用である。

    非筋ミオシンIIを直接的に阻害する阻害剤分子、好ましくはブレビスタチンでの細胞の処理は、細胞の特徴に本質的に影響を及ぼし、処理された細胞は、処理されていない細胞の特性及び能力とは異なる新規な特性及び能力を示す。 結果的に、ミオシンII阻害剤で処理された細胞は、少なくともある程度、異なる形態及び生化学的組成を有する新規な種類の細胞である。

    したがって、本発明は、本発明の方法に従って増殖又は単離された細胞、好ましくは幹細胞、より好ましくは成体幹細胞、特に間葉系幹細胞も含む。 つまり、本発明は、非筋ミオシンIIを直接的に阻害する阻害剤分子、好ましくはブレビスタチンの存在下で培養又は単離された全ての細胞に関する。

    さらに、本発明による方法から独立して、本発明は、非筋ミオシンIIを直接的に阻害する阻害剤分子、好ましくはブレビスタチンで処理された又はこの阻害剤分子の存在下で培養された、任意の細胞、好ましくは幹細胞、より好ましくは成体幹細胞、特に間葉系幹細胞を含む。

    本発明は、本発明による、少なくとも1つの細胞、好ましくは幹細胞、より好ましくは成体幹細胞、特に間葉系幹細胞を含む組成物をさらに含む。 本発明の好ましい実施形態において、前記組成物は、細胞の生存能力を保証するのに適した細胞培地又は別の溶液を含むことができる。 しかしながら、本発明は、かかる組成物に限定されない。 例えば、本発明による組成物は、適した保護物質に懸濁された凍結した細胞を代わりに含むことができる。

    本発明は、少なくとも1つの細胞、好ましくは幹細胞、より好ましくは成体幹細胞、特に間葉系幹細胞、及び非筋ミオシンIIを直接的に阻害する少なくとも1つの阻害剤分子、好ましくはブレビスタチンを含む組成物も含む。

    本発明の好ましい実施形態において、本発明による組成物の少なくとも1つは、本質的に血清を欠いている。 例えば、組成物は、ブレビスタチンを含む無血清培地における間葉系幹細胞の懸濁液を含むことができる。

    本発明による細胞及び/又は組成物は、非医学的な実験用のキット中に又は医薬製剤の一部として含まれることができる。

    参考文献 Straight et al. :Science,2003,299,1743−1747
    Walker,A. ,Su,H. ,Conti,M. A. ,Adelstein,R. S. ,Sato,N. :Nature Communications,2010,DCI:10.1038,ncomms1074

    骨髄由来の間葉系幹細胞(BM−MSC)の細胞凝集(A:顕微鏡写真)、細胞生存(B:棒グラフ)及びアポトーシス(C:棒グラフ)に及ぼすブレビスタチンの効果を示す図である。

    様々な阻害剤濃度で処理し、接着/静置条件(A)又は浮遊/振とう条件(B)下で培養したBM−MSCのアネキシンV染色及び後のFACS分析によって明らかになった、アポトーシスレベルを示す図である。

    様々な阻害剤濃度で処理し、接着/静置条件(A)又は浮遊/振とう条件(B)下で培養したBM−MSCのアネキシンV染色及び後のFACS分析によって明らかになった、アポトーシスレベルを示す図である。

    様々な阻害剤濃度で処理し、接着/静置条件(A)又は浮遊/振とう条件(B)下で培養したBM−MSCのヨウ化プロピジウム及び後のFACS分析によって明らかになった、細胞死率を示す図である。

    様々な阻害剤濃度で処理し、接着/静置条件(A)又は浮遊/振とう条件(B)下で培養したBM−MSCのヨウ化プロピジウム及び後のFACS分析によって明らかになった、細胞死率を示す図である。

    プロピジウム濃度によって明らかになった、ディープウェルにおける浮遊/振とう条件下で培養した細胞周期プロファイル(G1/G0及びG2)を示す図である。

    プロピジウム濃度によって明らかになった、ディープウェルにおける浮遊/振とう条件下で培養した細胞周期プロファイル(G1/G0及びG2)を示す図である。

    プロピジウム濃度によって明らかになった、ディープウェルにおける浮遊/振とう条件下で培養した細胞周期プロファイル(G1/G0及びG2)を示す図である。

    様々な阻害剤濃度で処理された細胞のヨウ化プロピジウム及び後のFACS分析によって明らかになった、6ウェルにおける静置条件下で培養した細胞周期プロファイル(G1/G0及びG2)を示す図である。

    様々な阻害剤濃度で処理された細胞のヨウ化プロピジウム及び後のFACS分析によって明らかになった、6ウェルにおける静置条件下で培養した細胞周期プロファイル(G1/G0及びG2)を示す図である。

    様々な阻害剤濃度で処理された細胞のヨウ化プロピジウム及び後のFACS分析によって明らかになった、6ウェルにおける静置条件下で培養した細胞周期プロファイル(G1/G0及びG2)を示す図である。

    ブレビスタチン処理を有さない、Lumox−biofoilバッグの疎水性側上で培養したBM−MSC(対照)を示す図である。

    Lumox−biofoilバッグの疎水性側上で培養したBM−MSCを示す図である。

    細胞を転置する間、骨髄由来の間葉系幹細胞(BM−MSC)に及ぼすブレビスタチン及びY−27632の効果を反映する棒グラフである。

    細胞を転置する間、骨髄由来の間葉系幹細胞(BM−MSC)に及ぼすブレビスタチン及びY−27632の効果を反映する棒グラフである。

    細胞を転置する間、骨髄由来の間葉系幹細胞(BM−MSC)に及ぼすブレビスタチン及びY−27632の効果を反映する棒グラフである。

    マイクロキャリアに付着した骨髄由来の間葉系幹細胞(BM−MSC)のグルコース消費量(A)、乳酸産生(lactate production)(B)及び細胞数(C)を示す棒グラフである。

    マイクロキャリアに付着した骨髄由来の間葉系幹細胞(BM−MSC)のグルコース消費量(A)、乳酸産生(lactate production)(B)及び細胞数(C)を示す棒グラフである。

    マイクロキャリアに付着した骨髄由来の間葉系幹細胞(BM−MSC)のグルコース消費量(A)、乳酸産生(lactate production)(B)及び細胞数(C)を示す棒グラフである。

    6日間のインキュベート後の図9によるマイクロキャリアの顕微鏡写真である(キャリア上でのBM−MSCのDAPI染色)。

    被覆された培養皿上で培養したヒト胚性幹細胞(hESC)の顕微鏡写真である。

    被覆された培養皿上で培養したヒト胚性幹細胞(hESC)の顕微鏡写真である。

    被覆された培養皿上で培養したヒト胚性幹細胞(hESC)の顕微鏡写真である。

    骨髄由来の間葉系幹細胞(BM−MSC)に及ぼすブレビスタチン(Bb、(−)鏡像異性体)の効果を反映する棒グラフである。

    臍帯血由来の幹細胞(CB−USSC)に及ぼすブレビスタチン(Bb、(−)鏡像異性体)の効果を反映する棒グラフである。

    骨髄由来の間葉系幹細胞(BM−MSC)に及ぼすブレビスタチン(Bb、(−)鏡像異性体)の効果を反映する棒グラフである。

    臍帯血由来の幹細胞(CB−USSC)に及ぼすブレビスタチン(Bb、(−)鏡像異性体)の効果を反映する棒グラフである。

    低血清EGM2+Dex−培地(3%血清)において培養した臍帯血由来の幹細胞(CB−USSC)に及ぼすブレビスタチン(Bb、(−)鏡像異性体)の効果を反映する棒グラフである。

    無血清MSCGM−CD培地において培養した臍帯血由来の幹細胞(CB−USSC)に及ぼすブレビスタチン(Bb、(−)鏡像異性体)の効果を反映する棒グラフである。

    PTFE容器(PTFE=ポリテトラフルオロエチレン、商品名(DuPont):テフロン(登録商標))上の、臍帯血由来の染色された幹細胞(CB−USSC)の写真である。

    ミオシン阻害を有する又は有さない、凍結保存前及び後のヒト胚性幹細胞(human embryonal stem cell)(hEST)の生細胞密度(棒)及び回収率(三角形)を示す図である(BB=ブレビスタチン)。

    凍結保存した細胞を解凍した後2及び4日のヒト胚性幹細胞(hEST)の平均総数を示す棒グラフである。

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