培養培地 |
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申请号 | JP2017528087 | 申请日 | 2015-11-27 | 公开(公告)号 | JP2018503360A | 公开(公告)日 | 2018-02-08 |
申请人 | コーニンクレッカ ネザーランド アカデミー ヴァン ウェテンシャッペン; | 发明人 | ザックス ラース ノーマン; ドロスト ヤルノ; | ||||
摘要 | 本発明は、上皮幹細胞を増殖させるための、およびオルガノイドを入手するための改善された培養方法、前記方法に関与する培養培地、ならびに前記オルガノイドの使用に関する。 | ||||||
权利要求 | 以下の工程を含む、上皮幹細胞を増殖させるための方法: 上皮幹細胞集団を準備する工程; ErbB3/4リガンド、受容体型チロシンキナーゼリガンド、およびBMP阻害剤を含む培養培地を準備する工程; 幹細胞を培養培地と接触させる工程;ならびに 該細胞を適切な条件下で培養する工程。培養培地がWntアゴニストをさらに含む、請求項1記載の方法。ErbB3/4リガンドがニューレグリンポリペプチドである、請求項1または請求項2記載の方法。受容体型チロシンキナーゼリガンドおよびBMP阻害剤を含む培養培地であって、ErbB3/4リガンドをさらに含むことを特徴とする、培養培地。Wntアゴニストをさらに含む、請求項4記載の培養培地。ErbB3/4リガンドがニューレグリンポリペプチドである、請求項4または請求項5記載の培養培地。ニューレグリンポリペプチドが、SEQ ID NO:27に示したアミノ酸配列を含むか、またはSEQ ID NO:27に示したアミノ酸配列からなる、請求項6記載の培養培地。受容体型チロシンキナーゼリガンドが、EGF、HGF、PDGF、およびFGF(例えば、FGF7および/またはFGF10)より選択される、請求項4〜7のいずれか一項記載の培養培地。WntアゴニストがLgr5アゴニストである、請求項5〜8のいずれか一項記載の培養培地。Lgr5アゴニストがRスポンジンである、請求項9記載の培養培地。BMP阻害剤がNogginである、請求項4〜10のいずれか一項記載の培養培地。TGF-β阻害剤をさらに含む、請求項4〜11のいずれか一項記載の培養培地。(i)Notch阻害剤および/もしくはプロスタグランジン経路アクチベーター、ならびに/または(ii)cAMP経路アクチベーターおよび/もしくはBMP経路アクチベーター、ならびに/または(iii)p38阻害剤、ガストリン、および/もしくはニコチンアミド、ならびに/または(iv)ROCK阻害剤、ならびに/または(v)テストステロンをさらに含む、請求項4〜12のいずれか一項記載の培養培地。p53安定化剤をさらに含む、請求項4〜13のいずれか一項記載の培養培地。(i)ErbB3/4リガンド(例えば、ヒトニューレグリンβ-1)、EGF、FGF(例えば、FGF10)、HGF、TGF-β阻害剤(例えば、A83-01)、ニコチンアミド、1種もしくは複数種のWntアゴニスト(例えば、Lgr5アゴニスト)、cAMP経路アクチベーター(例えば、フォルスコリン)、ガストリン、BMP阻害剤(例えば、Noggin)、Wntアゴニスト(例えば、Wnt条件培地)、およびRock阻害剤(例えば、Y27632)、または (ii)ErbB3/4リガンド(例えば、ヒトニューレグリンβ-1)、1種もしくは複数種の受容体型チロシンキナーゼリガンド(例えば、EGF)、BMP阻害剤(例えば、Noggin)、および1種もしくは複数種のWntアゴニスト(例えば、Lgr5アゴニスト)、およびテストステロン を含む、請求項4記載の培養培地。培養培地が、請求項4〜15のいずれか一項記載の培養培地である、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。請求項1〜3もしくは16のいずれか一項記載の方法により入手可能であるかまたは入手された、オルガノイド。癌オルガノイドである、請求項17記載のオルガノイド。正常組織から入手された、請求項17記載のオルガノイド。請求項4〜15のいずれか一項記載の培養培地の中にある、請求項17〜19のいずれか一項記載のオルガノイド。創薬スクリーニング;毒性アッセイ;組織発生学、細胞系列、もしくは分化経路の調査;組換え遺伝子発現を含む遺伝子発現の研究;組織損傷もしくは修復に関与する機構の調査;炎症性疾患および感染症の調査;発病機構の研究;または細胞トランスフォーメーション機構もしくは癌の病因の研究における、請求項17〜19のいずれか一項記載のオルガノイドまたは該オルガノイドに由来する細胞の使用。医学において使用するための、請求項17〜19のいずれか一項記載のオルガノイドまたは該オルガノイドに由来する細胞。p53安定化剤を含む、培養培地。上皮幹細胞が肺上皮幹細胞であり、受容体型チロシンキナーゼリガンドが1種または複数種のFGFR2bリガンドである、請求項16記載の方法。1種または複数種のFGFR2bリガンドがFGF7および/またはFGF10である、請求項24記載の方法。培養培地が、B27、N-アセチルシステイン、ニコチンアミド、ROCK阻害剤、TGF-β阻害剤、およびp38阻害剤からなる群より選択される1種または複数種の成分をさらに含む、請求項24または請求項25記載の方法。培養培地が、B27、N-アセチルシステイン、ニコチンアミド、ROCK阻害剤、TGF-β阻害剤、およびp38阻害剤をさらに含む、請求項24または請求項25記載の方法。培養培地が1種または複数種のさらなる受容体型チロシンキナーゼリガンドをさらに含む、請求項24〜27のいずれか一項記載の方法。1種または複数種のさらなる受容体型チロシンキナーゼリガンドがEGFおよび/またはアンフィレギュリンである、請求項28記載の方法。培養培地を、ErbB3/4リガンドを含まない培養培地と交換する工程をさらに含む、請求項1〜3、16、または24〜29のいずれか一項記載の方法。肺上皮幹細胞集団を含み、請求項24〜30のいずれか一項記載の方法により入手可能であるかまたは入手された、肺オルガノイド。肺上皮幹細胞集団を含み、繊毛細胞をさらに含む、肺オルガノイド。繊毛細胞を含む、請求項31記載の肺オルガノイド。繊毛細胞が同期運動する、請求項32または請求項33記載の肺オルガノイド。ヒト肺オルガノイドである、請求項31〜34のいずれか一項記載の肺オルガノイド。少なくとも4継代にわたって継代されている、正常肺組織、原発性肺癌、または転移性肺癌から入手された、請求項31〜35のいずれか一項記載の肺オルガノイド。創薬スクリーニング;薬物スクリーニング;個別化医療;毒性アッセイ;組織発生学、細胞系列、もしくは分化経路の調査;組換え遺伝子発現を含む遺伝子発現の研究;組織損傷もしくは修復に関与する機構の調査;炎症性疾患および感染症の調査;発病機構の研究;または細胞トランスフォーメーション機構もしくは癌の病因の研究における、請求項31〜36のいずれか一項記載の肺オルガノイドまたは該オルガノイドに由来する細胞の使用。療法において使用するための、請求項31〜36のいずれか一項記載の肺オルガノイドまたは該オルガノイドに由来する細胞。診断において使用するための、請求項31〜36のいずれか一項記載の肺オルガノイドまたは該オルガノイドに由来する細胞。以下の工程を含む、肺ウイルス感染を治療するための1種または複数種の薬物の有効性を研究するための方法: 1つまたは複数の肺ウイルス感染オルガノイドを1種または複数種の薬物で刺激する工程、および 1つまたは複数の肺オルガノイドの運動性の変化を測定する工程。融合オルガノイドの発生率の変化および/または間葉系様表現型をもつオルガノイドの発生率の変化を測定する工程をさらに含む、請求項40記載の方法。以下の工程を含む、疾患を治療するための1種または複数種の薬物の有効性を研究するための方法: 1つまたは複数の疾患オルガノイドを該1種または複数種の薬物で刺激する工程、ならびに (a)融合オルガノイドの発生率の変化、(b)オルガノイドの回転の変化、(c)オルガノイドの運動性の変化、および/または(d)間葉系様表現型をもつ細胞の発生率の変化を測定することによって、オルガノイドにある上皮細胞の運動性の変化を測定する工程、ならびに オルガノイドにある上皮細胞の運動性の変化を薬物効力と相関させる工程。オルガノイドの運動性の変化、融合オルガノイドの発生率の変化、オルガノイドの回転の変化、および/または間葉系様表現型をもつオルガノイドの発生率の変化が、(i)健常対照オルガノイドおよび/または(ii)1種もしくは複数種の薬物で刺激されていないオルガノイドと比較される、請求項40〜42のいずれか一項記載の方法。肺ウイルス感染がRSV感染である、請求項40〜43のいずれか一項記載の方法。1つまたは複数の肺オルガノイドが、請求項31〜36のいずれか一項記載の肺オルガノイドである、請求項40〜44のいずれか一項記載の方法。 |
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说明书全文 | 本明細書において引用された全ての文献は、その全体が参照により組み入れられる。 技術分野 本発明は、上皮幹細胞培養培地および方法、特に、上皮幹細胞、例えば、ヒト上皮幹細胞の集団を増殖させるための培養培地および方法の分野にある。 背景 幹細胞集団を増殖させるための培養培地および方法の関心は高い。幹細胞集団には多くの用途がある。例えば、幹細胞およびその分化した子孫は、細胞アッセイ、薬物スクリーニング、および毒性アッセイにおいて使用することができる。幹細胞はまた、細胞療法、例えば、損傷組織を治療するための再生医療における細胞療法の可能性も示している。さらに、効率的な細胞培養培地は調査目的で細胞集団を提供および維持するのに重要である。 いくつかの組織(例えば、膵臓、結腸、腸陰窩、胃、肝臓、および前立腺)に由来する上皮幹細胞または組織断片を長期培養するための方法が説明されている(WO2010/090513(特許文献1)、WO2012/014076(特許文献2)、およびWO2012/168930(特許文献3)を参照されたい)。成功したオルガノイド形成の効率を高める改善された培養培地および方法が必要とされている。 WO2010/090513 WO2012/014076 WO2012/168930
本発明は、以下の工程を含む、上皮幹細胞を増殖させるための方法を提供する: 上皮幹細胞集団を準備する工程; ErbB3/4リガンド、受容体型チロシンキナーゼリガンド、およびBMP阻害剤を含む培養培地を準備する工程; 幹細胞を培養培地と接触させる工程;ならびに 細胞を適切な条件下で培養する工程。 さらに、本発明は、受容体型チロシンキナーゼリガンドおよびBMP阻害剤を含む培養培地であって、ErbB3/4リガンドをさらに含むことを特徴とする、培養培地を提供する。 さらに、本発明は、本発明の方法から入手されたかまたは入手可能であるオルガノイドを提供する。 さらに、本発明は、本発明の培養培地の中にある本発明のオルガノイドを提供する。 さらに、本発明は、創薬スクリーニング;毒性アッセイ;組織発生学、細胞系列、もしくは分化経路の調査;組換え遺伝子発現を含む遺伝子発現の研究;組織損傷もしくは修復に関与する機構の調査;炎症性疾患および感染症の調査;発病機構の研究;または細胞トランスフォーメーション機構もしくは癌の病因の研究における、本発明のオルガノイドまたは前記オルガノイドに由来する細胞の使用を提供する。 さらに、本発明は、医学において使用するための、本発明のオルガノイドまたは前記オルガノイドに由来する細胞を提供する。 さらに、本発明は、p53安定化剤を含む培養培地を提供する。 さらに、本発明は、以下の工程を含む、肺上皮幹細胞を増殖させるための方法を提供する: 肺幹細胞集団を準備する工程; ErbB3/4リガンド、1種または複数種のFGFR2bリガンド、およびBMP阻害剤を含む培養培地を準備する工程; 幹細胞を培養培地と接触させる工程;ならびに 細胞を適切な条件下で培養する工程。 さらに、本発明は、肺上皮幹細胞集団を含む肺オルガノイドを提供する。 さらに、本発明は、本発明の方法により入手可能であるかまたは入手された、肺オルガノイドを提供する。 さらに、本発明は、本発明の培養培地の中にある本発明の肺オルガノイドを提供する。 さらに、本発明は、創薬スクリーニング;薬物スクリーニング;個別化医療;毒性アッセイ;組織発生学、細胞系列、もしくは分化経路の調査;組換え遺伝子発現を含む遺伝子発現の研究;組織損傷もしくは修復に関与する機構の調査;炎症性疾患および感染症の調査;発病機構の研究;または細胞トランスフォーメーション機構もしくは癌の病因の研究における本発明の肺オルガノイドまたは前記オルガノイドに由来する細胞の使用を提供する。 さらに、本発明は、医学において使用するための、本発明の肺オルガノイドまたは前記オルガノイドに由来する細胞を提供する。 さらに、本発明は、以下の工程を含む、肺ウイルス感染を治療するための1種または複数種の薬物の有効性を研究するための方法を提供する: ウイルス感染の前に非感染オルガノイドを1種もしくは複数種の薬物で刺激する工程、または 1つもしくは複数の肺ウイルス感染オルガノイドを1種もしくは複数種の薬物で刺激する工程、および 1つまたは複数の肺オルガノイドの運動性の変化を測定する工程。 さらに、本発明は、以下の工程を含む、1種または複数種の薬物の有効性を研究するための方法を提供する: 1つまたは複数の疾患オルガノイドを前記1種または複数種の薬物で刺激する工程、ならびに (a)融合オルガノイドの発生率の変化、(b)オルガノイドの回転の変化、(c)オルガノイドの運動性の変化、および/または(d)間葉系様表現型をもつ細胞の発生率の変化を測定することによって、オルガノイドにある上皮細胞の運動性の変化を測定する工程、ならびに オルガノイドにある上皮細胞の運動性の変化を薬物効力と相関させる工程。 (A)患者から入手した乳房腫瘍組織をサブタイプ(エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、およびヒト上皮成長因子受容体-2(HER2)の状況)に従って示した。(B)確立した、または有望なオルガノイド株をサブタイプ(ER、PR、およびHER2の状況)に従って示した。 確立した、および有望な乳房(A)腫瘍オルガノイド株および(B)正常オルガノイド株の位相差画像。スケールバーは150μmに等しい。 培地最適化の例。患者W855の正常乳房細胞および腫瘍乳房細胞をCultrex(登録商標)Basement Membrane Extract(Trevigen, Inc.)に懸濁し、示した培地を添加した。(A)継代0、4日目および(B)継代0、14日目の位相差画像を示した。最も有益な培養条件を灰色の太い囲みで印を付けた。画像の幅:1.5mm上パネル、300μm下パネル。 確立した乳房腫瘍オルガノイド株(W854T、W855T、およびW859T)の異数体核型。 オリジナルの乳腺組織(W854腫瘍(W854T)、W855正常および腫瘍(W855NおよびW855T)、W859腫瘍(W859T))と、それぞれから得られたオルガノイド株の組織学的および免疫組織化学的な比較。スケールバーは100μm(全体像)および20μm(詳細な図)に等しい。略語: HE=ヘマトキシリン・エオシン染色;PR=プロゲステロン受容体(クローンPgR 636, M356929 Dako)、ER=エストロゲン受容体α(クローンSP1、abl6660 Abcam)、HER2=ヒト上皮成長因子受容体2(c-erbB2)(クローンSP3、#RM-9103, Thermoscientific)。 ホールマウントした正常乳房オルガノイド株(W855)ならびに腫瘍(W854、W855、およびW859)乳房オルガノイド株の免疫蛍光分析。核対比染色はDRAQ5(DR50050 Biostatus limited)である。スケールバーは100μmに等しい。略語: Krt8=ケラチン-8(クローンKs8.7, sc101459 Santa Cruz)、Krt14=ケラチン-14(クローンAF64, PRB-155P Covance)、ER=エストロゲン受容体α(クローンC1355, Fisher 50-172-167)、E-カドヘリン(クローン36/E-カドヘリン, 61082 BD Biosciences)、HER2=ヒト上皮成長因子受容体2(c-erbB2)(クローンSP3, #RM-9103, Thermoscientific)、PR=プロゲステロン受容体(クローンPgR 636, M356929 Dako)。 正常乳房オルガノイド株W855Nに対して基準化した、基底(KRT5/14)、管腔(KRT8)、上皮(CDH1)、および間葉系(VIM、ZEB1)マーカーを対象にしたオルガノイドに対する定量PCR。 漸増用量のEGFR阻害剤イレッサ(Iressa)またはp53安定剤Nutlin-3を用いた試験的薬物スクリーニング中の乳房腫瘍オルガノイド株W854T、W855T、およびW859Tの位相差画像。目に見える影響を受けているオルガノイドを黒色の太い囲みで印を付けた。画像の幅は500μmである。 ルミネセンスATPアッセイ(CellTiter-Glo 2.0, G9241 Promega)によって測定した時の、漸増用量のEGFR阻害剤イレッサまたはp53安定剤Nutlin-3を用いて7日間、処理した乳房腫瘍オルガノイド株W854T、W855T、およびW859Tの生存率。 基本F7/10E培地中で成長させた同じ患者に由来するオルガノイドと比較した、Pasicらに記載の培養培地中の正常ヒト乳房オルガノイド。 マウス乳房腫瘍オルガノイド。Brca2およびp53を欠くKB2P乳房腫瘍から確立したオルガノイド、継代4の位相差画像。画像の幅は7mm、1.5mm、および600μmである。 ヒト転移性乳房腫瘍オルガノイド。皮膚へのヒト乳癌転移から確立したオルガノイド、継代5の位相差画像。画像の幅は7mm、1.5mm、および600μmである。 乳房オルガノイド培養物の全体像。 オルガノイド培養培地。 10週間以内の、1個のマウス肺オルガノイドから数百個のオルガノイドへの増殖。 マウスオルガノイド成長に有利な成長因子および化学阻害剤の滴定。光学密度値が高いことは、代謝活性が高いことを示している。光学密度値が低いことは、代謝活性が低いことを示している。囲みが濃いほど代謝活性が高くなる。「E」=EGF、「R」=Rスポンジン1、「N」=Noggin、「W」=Wnt3A、「F10」=FGF10、「A83.01」=A83-01(下記で説明する低分子TGF-β阻害剤)、「GRP」=ガストリン放出ペプチド。この図の最初のページで、試験培地を図示する囲みは、この図の2番目のページで、観察された代謝活性を示す囲みに対応する(例えば、この図の最初のページにある表の左下の隅にある囲みの「ENR」は、この図の2番目のページにある表の左下の隅にある囲みの「1.26」という関連する光学密度値を有する)。 単層マウス肺オルガノイドの中にある基底細胞、繊毛細胞、および粘液産生杯細胞。(a).繊毛細胞は管腔粘液を前進させるので機能している。(b).ケラチン-14は例示的な基底細胞マーカーである。アセチル化α-チューブリンは繊毛細胞のマーカーである。ムチン5ACは杯細胞のマーカーである。DAPI(4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)はDNA染料である。 (a)マウス肺オルガノイドにおける機能的Cftrアッセイ。フォルスコリン刺激後のcAMP上昇に応答したCftrヌルオルガノイドの膨張は野生型オルガノイドよりかなり少なく、このために、機能的なCftrを特徴付けることが可能になる。(b)ヒト肺オルガノイドおよびヒト腸オルガノイドにおける機能的TMEM16A依存性膨張アッセイ(実施例9に記載)。TMEM16Aチャンネルを活性化する低分子であるEactはヒト肺オルガノイドの膨張を引き起こすが、ヒト腸オルガノイドの膨張を引き起こさない。フォルスコリンを正の対照として使用し、DMSOを負の対照として使用した。「Eact」と表記した三角は、棒グラフの棒3〜8(左から右)を生じた実験において、だんだんと低くなっていく濃度のEactを使用したことを示している。 ヒト肺オルガノイド作製の効率。黒色:<6継代、灰色:≧6継代。試料の約80%において、長期成長する肺オルガノイド培養物を確立することができる。 ヒト肺オルガノイドの作製。黒色:<1:1スプリット比、薄い灰色:1:1〜1:2スプリット比、濃い灰色:>1:2スプリット比。「N」=正常、「T」=腫瘍、「ILD」=間質性肺疾患。培地を最適化した後に、約80%の長期成長肺オルガノイド培養物を確立することができる。 ヒト肺オルガノイド(hsLung15N)の成長培地最適化の例。 ヒト肺オルガノイドの確立に及ぼすERBBシグナル伝達の影響。 正常肺オルガノイドDNAおよび腫瘍肺オルガノイドDNAのコピー数のばらつき。正常肺オルガノイドは全コピー数にばらつきを示さない(a)。これに対して、腫瘍オルガノイド株13Tおよび26Tは染色体増加および減少を示す(b)。 ヒト肺オルガノイドの組織構造。ヒト肺オルガノイドは、典型的には、近位肺上皮に相当する、クララ細胞、基底細胞、繊毛細胞、および杯細胞を含む不均一な細胞集団からなる単層多列上皮培養物である。CC10はクララ細胞のマーカーである。ケラチン14は基底細胞のマーカーである。アセチル化α-チューブリンは繊毛細胞のマーカーである。 qPCRデータを用いたヒト肺オルガノイドの発現ヒートマップ(heat-map)。これらの発現データから、ヒト肺オルガノイドは、典型的には、近位肺上皮に相当する、クララ細胞、基底細胞、繊毛細胞、および杯細胞を含む不均一な細胞集団であることが分かる。略語:1-呼吸系列(NKX2-1);2-肺間葉(HOXA5);3-上皮(CDH1、CLDN1);4-基底細胞(KRT5);5-繊毛細胞(DNAH5、NPHP1);6-クララ細胞(SCGB1A1);7-杯細胞(AGR2);8-神経内分泌細胞(UCHL1);9-遠位上皮細胞(ID2);10-II型肺胞細胞(ABCA3、SFTPA1)。 正常(「N」)ヒト肺オルガノイドと腫瘍(「T」)ヒト肺オルガノイドの形態の違い。ヒト肺オルガノイドは典型的には嚢胞性単層多列上皮培養物である。これに対して、腫瘍肺オルガノイドは、ふるい状の、面皰(comedo)の、かつ固い形態をさらに示すことがある。 ヒト肺腫瘍オルガノイドにおいて見出された、肺癌に関連するコーディング変異。株26Tおよび13Tでは、EGFR、TP53、およびPIK3CAを含む、いくつかの肺癌シグネチャー遺伝子が変異している。他の5つの試験した腫瘍オルガノイド株は、患者が一致する正常オルガノイドにない肺癌関連遺伝子変異がある。 機能的TP53変異のあるヒト肺腫瘍オルガノイドはNutlin-3の存在下で成長することができるのに対して、患者が一致する野生型肺オルガノイドは老化および/またはアポトーシスを経る。 ヒト肺オルガノイドはヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV-GFP)に感染することができる。感染は、RSVのFタンパク質のA抗原性部位をブロックするパリビズマブ(Synagis)とプレインキュベートすることによって容易に阻止することができる。示した画像は、感染5日後に入手した。 ヒト呼吸器合胞体ウイルス(RSV-RFP)は上皮運動性および間葉系様表現型を誘導する。A)モック(mock)に感染した肺オルガノイドは規則正しい上皮組織化を示すのに対して、RSV-RFPに感染した細胞は上皮を免れる。B)感染した、回転しない肺オルガノイドの中にある細胞は、モック感染した肺オルガノイドの中にある細胞よりもかなり運動性が高い。回転するオルガノイドの中にある細胞はさらにもっと運動性が高い。C)RSVに感染したオルガノイドは、モック感染した肺オルガノイドよりもかなり運動性が高く、高い頻度で融合する。 ヒト肺オルガノイドは臨床RSV分離株に感染することができ、使用したRSV株に応じて異なる形態を示す。例えば、A01株およびB08株に感染した後にはオルガノイド融合を観察することができるのに対して、B03に感染した後には細胞死を観察することができる。
詳細な説明 様々な組織に由来する上皮幹細胞を培養するための方法は、WO2010/090513、WO2012/014076、およびWO2012/168930において以前に説明されている。本発明者らは、驚いたことに、培養培地へのErbB3/4リガンドの添加には、いくつかの有利な効果があることを発見した。第一に、培養培地にErbB3/4リガンドを添加すると、ErbB3/4リガンドが培地に無い時と比較して増加した継代数で、ある特定の組織に由来する上皮幹細胞を培養することが可能になる。第二に、培養培地にErbB3/4リガンドを添加すると、ErbB3/4リガンドが培地に無い時と比較して高い効率でオルガノイド培養を開始することが可能になる。従って、培養培地にErbB3/4リガンドを添加すると、ErbB3/4リガンドなしで獲得できるものより高い割合の接種において、成功したオルガノイドの集団を確立することができる。 有利なことに、前記の細胞および結果として生じたオルガノイドは長期間生存し、かつ継代数を増やす能力があるので、以前の方法を用いて可能な数より多くの細胞を出発細胞のコレクションから入手することが可能になる。これにより、様々な用途のために、例えば、様々な異なる薬物を試験するために多量の材料が必要とされる薬物スクリーニングのために多数の細胞を入手することが可能になる。実験間で結果を比較することが必要な、このような用途にとって、前記の細胞を1つの出発供給源(例えば、1つの細胞、1つの対象から入手した細胞集団、1つの組織断片)から作製する能力は有利である。さらに、もっと多くの細胞を出発細胞の小さなコレクション(例えば、約100〜300個の細胞のコレクション)から入手する向上した能力は、出発物質、例えば、原発癌もしくは転移癌の生検材料または循環している腫瘍細胞をほとんど入手できない用途にとって有利である。同様に、このことは、移植における使用のために多くの細胞が入手可能であることと、1人の有用なドナーから入手した細胞が複数の患者に移植される可能性があることを意味する。 前記細胞を本発明の培地中で培養すると、前記細胞は幹細胞表現型または前駆細胞表現型を保持しながら増えることが可能になる。これは本明細書では増殖と呼ばれる。これらの幹細胞または前駆細胞を含むオルガノイドが形成される。従って、本発明の培地の使用は、増加した数のこれらの有用な幹細胞または前駆細胞を準備するのに、およびこれらの細胞を含有するオルガノイドを入手するのに有利である。 従って、1種または複数種のErbB3/4リガンドが加えられた、動物細胞用またはヒト細胞用の基本培地を含む培養培地の存在下で、1つまたは複数の上皮幹細胞を細胞外マトリックスと接触させて培養する工程を含む、上皮幹細胞を培養するための方法が提供される。 本発明の方法において用いられる培養培地は、好ましくは、本明細書において説明される本発明の培養培地である。 従って、1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)ErbB3/4リガンド、1種もしくは複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)受容体型チロシンキナーゼリガンド、およびBMP阻害剤が加えられ、任意で、1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)Wntアゴニストをさらに含む、動物細胞用またはヒト細胞用の基本培地を含む培養培地も提供される。 従って、本発明は、上皮幹細胞を培養するためのErbB3/4リガンドの使用を提供する。一部の態様において、上皮幹細胞は、肝臓、膵臓、腸、胃、前立腺、乳房、卵巣、唾液腺、毛包、皮膚、食道、または甲状腺に由来する。一部の態様において、上皮幹細胞は、肺、肝臓、膵臓、腸、胃、前立腺、乳房、卵巣、唾液腺、毛包、皮膚、食道、甲状腺、または耳に由来する。 本発明はまた、少なくとも1種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)ErbB3/4リガンドが加えられた、WO2012/168930、WO2010/09013、またはWO2012/014076に記載の増殖培地を使用する、上皮幹細胞を培養するための方法も提供する。 本発明者らはまた、驚いたことに、培養培地にp53安定化剤を添加すると、細胞集団が主に腫瘍細胞になることを確かなものにできることを発見した。どんな理論にも拘束されるつもりはないが、p53安定化剤は(例えば、p53とMdm2との間の相互作用をブロックすることによって)p53の細胞濃度を高め、p53依存性発現を刺激し、細胞老化を誘導すると考えられている。p53変異は、普通、腫瘍細胞に生じる。p53が変異すると、p53安定化剤によって安定化されることができない変異p53タンパク質が生じることがある。従って、変異p53タンパク質をもつ腫瘍細胞のサブセットは、p53安定化剤によって誘導される老化から逃れ、混合集団中で正常細胞よりも速く成長すると考えられる。 p53が変異すると、細胞増殖および生存への影響がなく、p53発現を安定化する作用に対して機能しない変異p53タンパク質も生じることがある。p53変異をもつ腫瘍細胞のサブセットは、腫瘍細胞がp53安定化の有害な作用から逃れるのを可能にする、さらなるゲノム変化を有することがある。従って、変異p53タンパク質をもつ腫瘍細胞のサブセットは、p53安定化剤によって誘導される老化から逃れ、混合集団中で正常細胞よりも速く成長すると考えられる。 従って、本発明は、腫瘍細胞を培養するためのp53安定化剤の使用をさらに提供する。 本発明はまた、少なくとも1種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)p53安定化剤が加えられた、本明細書に記載のまたはWO2012/168930、WO2010/090513、もしくはWO2012/014076に記載の増殖培地を使用する、腫瘍幹細胞を培養するための方法も提供する。本発明はまた、p53安定化剤を含む培養培地も提供する。好ましくは、培養培地は、本明細書に記載の培養培地、またはWO2012/168930、WO2010/090513、もしくはWO2012/014076に記載の培地である。好ましくは、培養培地は上皮幹細胞を培養するのに適している。 好ましいp53安定化剤は、Nutlinファミリーのメンバー、例えば、Nutlin-1、Nutlin-2、またはNutlin-3である。例えば、一部の態様において、p53安定化剤はNutlin-3である。他のp53安定化剤(例えば、CP-31398)が当技術分野において公知である。従って、当業者は、これらのうちのどのp53安定化剤も使用することができるだろう。 ErbB3/4リガンド ErbB受容体型チロシンキナーゼファミリーは、4種類の細胞表面受容体:i)ErbB1/EGFR/HER1、ii)ErbB2/HER2、iii)ErbB3/HER3、およびiv)ErbB4/HER4からなる。ErbB3/4リガンドは、本明細書では、ErbB3および/またはErbB4に結合することができるリガンドと定義される。従って、EGFは、ErbB3/4に結合しないのでErbB3/4リガンドではない。一部の態様において、ErbB3/4リガンドはErbB3に結合し、ErbB4に結合しない。一部の態様において、ErbB3/4リガンドはErbB4に結合し、ErbB3に結合しない。一部の態様において、ErbB3/4リガンドがErbB3またはErbB4に結合することで、前記ErbB3または前記ErbB4とErbB2とのヘテロ二量体化が誘導される。一部の態様において、ErbB3またはErbB4とErbB2とのヘテロ二量体化が誘導されると内因性キナーゼ活性が刺激されて、チロシンがリン酸化される。本発明の培養培地の文脈において、ErbB3/4リガンドは「N」として知られる。 様々なErbB3/4リガンドが当技術分野において公知である。好ましい態様において、培養培地の1種または複数種のErbB3/4リガンドはニューレグリン/ヘレグリンファミリーのメンバーである。ニューレグリン/ヘレグリンファミリーは本明細書ではニューレグリンファミリーと呼ばれる。ニューレグリンファミリーは、選択的スプライシングされた遺伝子NRG1、NRG2、NRG3、およびNRG4の遺伝子産物である、構造上関連するポリペプチド成長因子のファミリーである。さらに好ましい態様において、培養培地の1種または複数種のErbB3/4リガンドは、NRG1、NRG2、NRG3、およびNRG4のうちの1つまたは複数の遺伝子産物であるポリペプチド(すなわち、ニューレグリンポリペプチド)である。一部の態様において、ErbB3/4リガンドは、NRG1の遺伝子産物であるポリペプチドである。NRG1、NRG2、NRG3、およびNRG4の遺伝子産物であるポリペプチドは、NRG1 mRNA、NRG2 mRNA、NRG3 mRNA、またはNRG4 mRNAの選択的スプライシングに起因する、どのアイソフォームでもよい。従って、例えば、NRG1の遺伝子産物であるポリペプチドは、以下のアイソフォーム:I型NRG1(ヘレグリン、NEU分化因子(NDF)、もしくはacetylcholine receptor inducing activity(ARIA)とも知られる)、II型NRG1(グリア細胞成長因子-2(GGF2)とも知られる)、III型NRG1(Sensory and motor neuron-derived factor(SMDF)とも知られる)、IV型NRG1、V型NRG1、またはVI型NRG1のどれでもよい。一部の態様において、ニューレグリンポリペプチドは、プロニューレグリン-1、膜結合型アイソフォームアイソフォームHRG-β1(NP_039250.2)、プロニューレグリン-1、膜結合型アイソフォームアイソフォームHRG-β1b(NP_001153471.1)、プロニューレグリン-1、膜結合型アイソフォームアイソフォームHRG-β1c(NP_001153467.1)、プロニューレグリン-1、または膜結合型アイソフォームアイソフォームHRG-β1d(NP_001153473.1)である。 一部の態様において、ErbB3/4リガンドはヒトに由来する。従って、一部の態様において、ErbB3/4リガンドは、NRG1、NRG2、NRG3、およびNRG4のうちの1つまたは複数のヒト遺伝子産物(すなわち、ヒトニューレグリンポリペプチド)である。 一部の態様において、NRG1遺伝子はGene ID:3084またはNG_012005.1の配列を有する。一部の態様において、NRG2遺伝子はGene ID:9542の配列を有する。一部の態様において、NRG3遺伝子はGene ID:10718またはNG_013373.1の配列を有する。一部の態様において、NRG4遺伝子はGene ID:145957の示された配列を有する。 一部の態様において、ニューレグリンポリペプチドはNRG1の遺伝子産物であり、NP_001153467.1(SEQ ID NO:1)、NP_001153468.1(SEQ ID NO:2)、NP_001153471.1(SEQ ID NO:3)、NP_001153473.1(SEQ ID NO:4)、NP_001153474.1(SEQ ID NO:5)、NP_001153476.1(SEQ ID NO:6)、NP_001153477.1(SEQ ID NO:7)、NP_001153479.1(SEQ ID NO:8)、NP_001153480.1(SEQ ID NO:9)、NP_004486.2(SEQ ID NO:10)、NP_039250.2(SEQ ID NO:11)、NP_039251.2(SEQ ID NO:12)、NP_039252.2(SEQ ID NO:13)、NP_039253.1(SEQ ID NO:14)、NP_039254.1(SEQ ID NO:15)、NP_039256.2(SEQ ID NO:16)、またはNP_039258.1(SEQ ID NO:17)に示した配列を有する。一部の態様において、ニューレグリンポリペプチドはNRG2の遺伝子産物であり、NP_001171864.1(SEQ ID NO:18)、NP_004874.1(SEQ ID NO:19)、NP_053584.1(SEQ ID NO:20)、NP_053585.1(SEQ ID NO:21)、またはNP_053586.1(SEQ ID NO:22)に示した配列を有する。一部の態様において、ニューレグリンポリペプチドはNRG3の遺伝子産物であり、NP_001010848.2(SEQ ID NO:23)、NP_001159444.1(SEQ ID NO:24)、またはNP_001159445.1(SEQ ID NO:25)に示した配列を有する。一部の態様において、ニューレグリンポリペプチドはNRG4の遺伝子産物であり、NP_612640.1(SEQ ID NO:26)に示した配列を有する。 一部の態様において、少なくとも1種のErbB3/4リガンドは、1種または複数種の天然のErbB3/4リガンド、例えば、1種または複数種のニューレグリンファミリーメンバーの生物学的に活性な変種である。ニューレグリン変種は天然でもよく(例えば、NRG1遺伝子座で生じる対立遺伝子変種)、組換えにより産生されてもよく、ニューレグリンポリペプチドと同じか、似ているか、または実質的に似ているアミノ酸配列を有する。 一部の態様において、ニューレグリン変種は、ニューレグリンポリペプチドと少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一の配列を有する。例えば、ニューレグリン変種は、SEQ ID NO:1〜26のいずれか一つと少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一の配列を有する。 一部の態様において、少なくとも1種のErbB3/4リガンドは、少なくとも1種の天然のErbB3/4リガンドの少なくとも1つの生物学的に活性な断片、例えば、1種または複数種のニューレグリンポリペプチドの生物学的に活性な断片である。 「生物学的に活性な」とは、本明細書では、ErbB3/4リガンド、例えば、変種または断片がErbB3および/またはErbB4に結合することができる、任意で、ErbB3および/またはErbB4に結合すると、前記ErbB3または前記ErbB4とErbB2とのヘテロ二量体化が誘導される、任意で、ErbB3またはErbB4とErbB2とのヘテロ二量体化が誘導されると内因性キナーゼ活性が刺激されて、チロシンがリン酸化されることを意味すると定義される。 一部の態様において、ErbB3/4リガンドは、SEQ ID NO:1〜26のいずれか1つに示したアミノ酸配列を有するポリペプチドの断片であり、前記断片は、SEQ ID NO:1-26のいずれか1つに示した配列の少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも55個、少なくとも60個、少なくとも65個、少なくとも70個、少なくとも75個、少なくとも80個、少なくとも85個、少なくとも90個、少なくとも95個、または少なくとも100個のアミノ酸を含む。 一部の態様において、ErbB3/4リガンドは、SEQ ID NO:1〜26のいずれか1つに示したアミノ酸配列を有するポリペプチドの変種であり、前記変種は、SEQ ID NO:1〜26のいずれか1つに示したアミノ酸配列を有するポリペプチドと少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のアミノ酸配列を有する。 2つのアミノ酸配列間のパーセント配列同一性への言及は、2つの配列をアラインメントした時に、2つの配列を比較した際にアミノ酸のパーセントが同じであることを意味する。このアラインメントおよびパーセント相同性または配列同一性は、当技術分野において公知のソフトウェアプログラム、例えば、Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel et al, eds., 1987) Supplement 30のセクション7.7.18に記載のソフトウェアプログラムを用いて決定することができる。好ましいアラインメントは、ギャップオープンペナルティ(gap open penalty)12およびギャップエクステンションペナルティー(gap extension penalty)2、BLOSUM行列62を用いたアフィンギャップ検索(affine gap search)を使用するスミス・ウォーターマン(Smith-Waterman)相同性検索アルゴリズムによって確かめられる。スミス・ウォーターマン相同性検索アルゴリズムはSmith & Waterman (1981) Adv. Appl. Math. 2: 482-489に開示される。 一部の態様において、ErbB3/4リガンドは、SEQ ID NO:1〜26のいずれか1つに示したアミノ酸配列を有するポリペプチドの断片の変種であり、前記断片は、SEQ ID NO:1〜26のいずれか1つに示した配列の少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも55個、少なくとも60個、少なくとも65個、少なくとも70個、少なくとも75個、少なくとも80個、少なくとも85個、少なくとも90個、少なくとも95個、または少なくとも100個のアミノ酸を含み、前記変種は、前記断片と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のアミノ酸配列を有する。 一部の態様において、ErbB3/4リガンドは、SEQ ID NO:1〜26のいずれか1つに示したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な変種の断片であり、前記変種は、SEQ ID NO:1〜26のいずれか1つに示したアミノ酸配列を有するポリペプチドと少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のアミノ酸配列を有し、前記断片は、前記変種の少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも55個、少なくとも60個、少なくとも65個、少なくとも70個、少なくとも75個、少なくとも80個、少なくとも85個、少なくとも90個、少なくとも95個、または少なくとも100個のアミノ酸を含む。 一部の態様において、ErbB3/4リガンドは、非天然リガンド、例えば、合成リガンドまたは抗ErbB3/4抗体である。関心対象の標的に対する抗体を作製する方法は当技術分野において周知である。一部の態様において、抗ErbB3/4抗体はアゴニスト抗ErbB3/4抗体である。好ましくは、抗体は生物学的に活性である。任意の適切な抗体を、例えば、本明細書に記載のように使用することができる。 ErbB3/4リガンドは、当技術分野において公知の方法、例えば、GSTタグ化候補リガンドと、昆虫細胞により発現されたErbB受容体とを結合させて、チロシンをリン酸化する方法(Carraway 3rd et al.,(1997) Nature 387(6632):512-6)を用いて特定することができる。 一部の態様において、ErbB3/4リガンドはEGFドメインまたはEGF様ドメインを含む。EGFおよびEGF様ドメインは、当技術分野において認められている進化上保存されているタンパク質ドメインである(例えば、Wouters et al. (2005) Protein Sci. 14(4): 1091-1103を参照されたい)。従って、ErbB3/4リガンドが少なくとも1種の天然ErbB3/4リガンドの生物学的に活性な断片である一部の態様では、断片はEGFドメインまたはEGF様ドメインを含む。 一部の態様において、ErbB3/4リガンドはヒトニューレグリンβ-1である。一部の態様において、ヒトニューレグリンβ-1はSEQ ID NO:27に示したアミノ酸配列を有する。ヒトニューレグリンβ-1はニューレグリンポリペプチドの断片であって、EGF様ドメインを含む断片である。好ましい態様において、ErbB3/4リガンドはヒトニューレグリンβ-1のEGF様ドメインを含むか、またはヒトニューレグリンβ-1のEGF様ドメインからなる。 一部の態様において、ErbB3/4リガンドは、組換えヒトニューレグリンβ-1と似た生物学的活性を有する。 一部の態様において、ErbB3/4リガンドは、SEQ ID NO:27に示したアミノ酸配列を有するポリペプチドの断片であって、SEQ ID NO:27に示した配列の少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも55個、少なくとも60個、少なくとも62個、または少なくとも64個のアミノ酸を含む断片である。 一部の態様において、ErbB3/4リガンドは、SEQ ID NO:27に示したアミノ酸配列を有するポリペプチドの変種であって、SEQ ID NO:27に示したアミノ酸配列を有するポリペプチドと少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する変種である。 一部の態様において、ErbB3/4リガンドは、SEQ ID NO:27に示したアミノ酸配列を有するポリペプチドの断片の変種であり、前記断片は、SEQ ID NO:27に示した配列の少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも55個、少なくとも60個、少なくとも62個、または少なくとも64個のアミノ酸を含み、前記変種は、前記断片と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のアミノ酸配列を有する。 一部の態様において、ErbB3/4リガンドは、SEQ ID NO:27に示したアミノ酸配列を有するポリペプチドの生物学的に活性な変種の断片であり、前記変種は、SEQ ID NO:27に示したアミノ酸配列を有するポリペプチドと少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一のアミノ酸配列を有し、前記断片は、前記変種の少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも55個、少なくとも60個、少なくとも62個、または少なくとも64個のアミノ酸を含む。 ErbB3/4リガンドは任意の適切な濃度で存在してもよい。例えば、ErbB3/4リガンドは、0.05〜500nM、0.05〜100nM、0.05〜50nM、0.05〜10nM、0.05〜5nM、0.05〜1nM、0.5〜500nM、0.5〜100nM、0.5〜50nM、0.5〜10nM、0.5nM〜1nM、1〜10nM、3〜10nM、3〜8nM、4〜6nMの濃度で存在してもよい。例えば、ErbB3/4リガンドは約5nMの濃度で存在してもよい。一部の態様において、ErbB3/4リガンドは、少なくとも0.05nM、少なくとも0.5nM、少なくとも1nM、少なくとも3nM、少なくとも4nM、少なくとも5nM、少なくとも10nM、少なくとも50nM、または少なくとも100nMの濃度で用いられる。 ErbB3/4リガンドに加えて、細胞培養培地は、一般的に、培養細胞の維持および/または増殖を支持するのに必要な多数の成分を含有する。従って、本発明の細胞培養培地は、通常、ErbB3/4リガンドに加えて他の多くの成分を含有する。成分の適切な組み合わせは、本明細書における開示を考慮に入れて当業者により容易に処方することができる。本発明による培養培地は、一般的に、標準的な細胞培養成分、例えば、下記でさらに詳細に説明されるようなアミノ酸、ビタミン、無機塩、炭素エネルギー源、および緩衝液を含む栄養溶液である。培養に含まれ得る他の標準的な細胞培養成分には、ホルモン、例えば、プロゲステロン、タンパク質、例えば、アルブミン、カタラーゼ、インシュリン、およびトランスフェリンが含まれる。これらの他の標準的な細胞培養成分は「基本」培養培地を構成する。 本発明による培養培地は、既存の細胞培地を改良することによって作製されてもよい。当業者であれば、一般知識から、上皮幹細胞培養において使用するために改良するのに適している可能性がある培養培地のタイプを理解するであろう。適切な細胞培養培地は市販されており、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、最小必須培地(MEM)、ノックアウト-DMEM(KO-DMEM)、グラスゴー最小必須培地(G-MEM)、基本培地イーグル(BME)、DMEM/ハムF12、Advanced DMEM/ハムF12、イスコフ変法ダルベッコ培地および最小必須培地(MEM)、ハムF-10、ハムF-12、培地199、ならびにRPMI1640培地を含むが、これに限定されない。適切な「基本」培養の例はWO2012/168930、WO2010/090513、およびWO2012/014076にも示される。 一部の態様において、基本培地はAdDF+++である。一部の態様において、AdDF+++は、Advanced DMEM/F12(ダルベッコ変法イーグル培地/ハムF-12)、GlutaMax、HEPES、ペニシリン/ストレプトマイシン、プリモシン(primocin)を含む。 一部の態様において、基本培地はD10Fである。一部の態様において、D10Fは、31966-DMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)、胎仔ウシ血清(FBS)、およびペニシリン/ストレプトマイシンを含む。 従って、一部の態様において、これらの既存の細胞培養培地の1つが、1種または複数種のErbB3/4リガンドが加えられた基本培養培地として用いられる。 熟練した読者(skilled reader)に明らかなように、好ましい本発明の培養方法は、フィーダー細胞が必要とされないので有利である。フィーダー細胞層は、幹細胞の培養の支持および幹細胞の分化の阻害に用いられることが多い。フィーダー細胞層は、一般的に、関心対象の細胞と共培養され、関心対象の細胞を成長させるのに適した表面を提供する細胞の単層である。フィーダー細胞層は、関心対象の細胞が成長することができる環境を提供する。フィーダー細胞は、その増殖を阻止するために、(例えば、放射線照射またはマイトマイシンC処理によって)有糸分裂が不活化されていることが多い。フィーダー細胞の使用は細胞の継代を複雑にするので望ましくない(継代ごとにフィーダー細胞から細胞を分離しなければならず、継代ごとに新たなフィーダー細胞が必要とされる)。フィーダー細胞の使用はまた、望ましい細胞をフィーダー細胞で汚染することにつながることもある。これは、どの医学的用途にとっても明らかに問題であり、調査の状況であっても、細胞に対して行った、あらゆる実験の結果の分析を複雑にする。本発明の培養培地は、フィーダー細胞と接触することなく細胞を培養するのに使用することができるので特に有利である。すなわち、本発明の方法は、その成長に資金提供がなされている細胞を支持するためにフィーダー細胞層を必要としない。 従って、本発明の組成物は、フィーダー細胞を含まない組成物でもよい。従来では、組成物は、組成物中にある細胞が、フィーダー細胞層の非存在下で少なくとも1継代、培養されていれば、フィーダー細胞を含まないとみなされる。本発明のフィーダー細胞を含まない組成物は、通常、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満のフィーダー細胞を含有するか(組成物中にある細胞の総数に対する%として表した)、または好ましくはフィーダー細胞を全く含有しない。 BMP阻害剤 好ましい態様において、本発明の培養培地は1種または複数種の骨形成タンパク質(BMP)阻害剤を含む。 培養培地は任意の適切なBMP阻害剤を含んでもよい。BMPは、二量体リガンドとして、2つの異なる受容体セリン/スレオニンキナーゼであるI型受容体およびII型受容体からなる受容体複合体に結合する。II型受容体はI型受容体をリン酸化し、その結果、この受容体キナーゼは活性化される。その後に、I型受容体は特定の受容体基質(SMAD)をリン酸化して、転写活性につながるシグナル伝達経路をもたらす。有利なことに、BMP阻害剤はLgr5の発現を促進する。そのため、BMP阻害剤が本発明の培養培地に存在すると、BMP阻害剤が存在しない場合より多くの増殖性オルガノイドをもたらす可能性が高くなる。一部の態様において、BMP阻害剤と共に培養された細胞のLgr5発現は、BMP阻害剤と共に培養されていない細胞と比較してアップレギュレートされる。従って、BMP阻害剤を添加すると、典型的には、増殖性オルガノイドが多くなる。 BMP阻害剤は、BMP分子に結合して複合体を形成する薬剤と定義される。この場合、例えば、BMP分子とBMP受容体との結合が阻止または阻害されることでBMP活性は中和される。または、前記阻害剤は、アンタゴニストまたは逆アゴニスト(reverse agonist)として働く薬剤である。このタイプの阻害剤はBMP受容体と結合し、BMPと前記受容体との結合を阻止する。後者の薬剤の一例は、BMP受容体に結合し、BMPと、抗体に結合する受容体との結合を阻止する抗体である。 BMP阻害剤は、同じ細胞タイプにおいて評価された時に、前記阻害剤の非存在下でのBMP活性レベルと比べて細胞内のBMP依存性活性を最大で90%、より好ましくは最大で80%、より好ましくは最大で70%、より好ましくは最大で50%、より好ましくは最大で30%、より好ましくは最大で10%、より好ましくは0%まで阻害するのに有効な量で培地に加えられてもよい。当業者に公知のように、BMP活性は、例えば、Zilberberg et al., 2007. BMC Cell Biol. 8:41において例示されるように、BMPの転写活性を測定することによって確かめることができる。 Noggin(Peprotech)、コーディンおよびコーディンドメインを含むコーディン様タンパク質(R&D systems)、フォリスタチンおよびフォリスタチンドメインを含むフォリスタチン関連タンパク質(R&D systems)、DANおよびDANシステイン-knotドメインを含むDAN様タンパク質(R&D systems)、スクレロスチン/SOST(R&D systems)、デコリン(R&D systems)、ならびにα-2マクログロブリン(R&D systems)を含む、いくつかの天然BMP結合タンパク質クラスが公知である。 本発明の方法において使用するためのBMP阻害剤の例は、Noggin、DAN、ならびにCerberusおよびGremlin(R&D systems)を含むDAN様タンパク質である。これらの拡散性タンパク質は様々な程度の親和性でBMPリガンドに結合し、BMPリガンドがシグナル伝達受容体に接近するのを阻害することができる。これらの任意のBMP阻害剤を基本培養培地に添加すると、幹細胞の喪失が妨げられる。 好ましいBMP阻害剤はNogginである。従って、一部の態様において、本明細書に記載の培養培地はNogginを含む。本発明の培養培地の文脈において、Nogginは本明細書では「Nog」または「No」とも呼ばれる。Nogginは、好ましくは、少なくとも10ng/ml、例えば、少なくとも20ng/ml、より好ましくは少なくとも25ng/mlの濃度で基本培養培地に加えられる。さらにより好ましい濃度は約25ng/mlである。 幹細胞の培養中に、前記BMP阻害剤は、必要な時に、例えば、毎日または1日おきに培養培地に加えられてもよい。BMP阻害剤は、好ましくは、1日おきに培養培地に加えられる。培養培地は、必要な時に、例えば、毎日または1日おきに新しくされてもよい。 Wntアゴニスト 本発明の培養培地は1種もしくは複数種のWntアゴニストを含んでもよい。癌細胞は、場合によっては、Wnt経路を構成的に活性化または不活性化する変異を有することがある。例えば、多くの結腸癌はWnt経路を構成的に活性化している。このような場合、培養培地はWntアゴニストを必要とせず、そのため、Wntアゴニストは、好ましい本発明の培養培地では任意のものと言われる。しかしながら、便宜上、Wntアゴニストは必要とされなくても培養培地に存在してもよい。 Wntシグナル伝達経路は、Frizzled受容体、LRP、およびLGRを含む細胞表面Wnt受容体複合体が、通常、細胞外シグナル伝達分子、例えば、Wntファミリーメンバーによって活性化された時に起こる一連の事象によって定義される。これにより、細胞内β-カテニンを分解する、axin、GSK-3、およびタンパク質APCを含むタンパク質複合体を阻害するDishevelledファミリータンパク質が活性化される。結果として生じた高濃度の核β-カテニンは、TCF/LEFファミリー転写因子による転写を高める。 Wntアゴニストは、細胞内でTCF/LEFを介した転写を活性化する薬剤と定義される。従って、Wntアゴニストは、Wntファミリータンパク質、細胞内β-カテニン分解阻害剤、GSK阻害剤(例えば、CHIR9901)、およびTCF/LEFアクチベーターのいずれかおよび全てを含む、Wnt受容体複合体に結合し、これを活性化する真のWntアゴニストより選択される。 一部の態様において、Wntアゴニストは、Wnt-1/Int-1、Wnt-2/Irp(InM関連タンパク質)、Wnt-2b/13、Wnt-3/Int-4、Wnt-3a(R&D systems)、Wnt-4、Wnt-5a、Wnt-5b、Wnt-6(Kirikoshi H et al 2001 Biochem Biophys Res Com 283 798-805)、Wnt-7a(R&D systems)、Wnt-7b、Wnt-8a/8d、Wnt-8b、Wnt-9a/14、Wnt-9b/14b/15、Wnt-10a、Wnt-10b/12、WnM1、およびWnt-16を含む分泌型糖タンパク質である。ヒトWntタンパク質の概要は、「THE WNT FAMILY OF SECRETED PROTEINS」, R&D Systems Catalog, 2004に示されている。一部の態様において、WntアゴニストはRNF43またはZNRF3の阻害剤である。RNF43およびZNRF3が細胞膜に存在し、おそらくFrizzledのユビキチン化によって、膜にあるWnt受容体複合体のレベルを負に調節することが示されている。従って、本発明者らは、アンタゴニスト抗体、RNAi、または低分子阻害剤によるRNF43またはZNRF3の阻害がWnt経路を間接的に刺激すると仮説を立てている。RNF43およびZNRF3は(ユビキチン化活性をもつ)触媒環状ドメインを有する。この触媒環状ドメインを低分子阻害剤設計において標的化することができる。いくつかの抗RNF43抗体およびいくつかの抗ZNRF3抗体が市販されている。一部の態様において、このような抗体は本発明の文脈において適切なWntアゴニストである。 好ましい態様において、培養培地中のWntアゴニストは、Lgr5細胞表面受容体を介してWnt経路を刺激することができる任意のアゴニストである。すなわち、好ましい態様において、培養培地中のWntアゴニストはLgr5アゴニストである。公知のLgr5アゴニストには、Rスポンジン、その断片および誘導体、ならびに抗Lgr5抗体(例えば、WO2012/140274およびDe Lau, W. et al. Nature, 2011 Jul 4;476(7360):293-7を参照されたい)が含まれる。好ましいLgr5アゴニストはRスポンジンである。任意の適切なRスポンジンを使用することができる。例えば、Rスポンジンは、Rスポンジン1、Rスポンジン2、Rスポンジン3、およびRスポンジン4、またはその誘導体の1つまたは複数より選択されてもよい。例えば、Rスポンジン1(NU206, Nuvelo, San Carlos, CA)、Rスポンジン2((R&D systems)、Rスポンジン3、およびRスポンジン4のどれでも使用することができる。Rスポンジン1、2、3、および4はまた本明細書では「Rスポンジン1〜4」とも呼ばれる。Rスポンジン断片がWntアゴニストとして用いられてもよい。例えば、一部の態様において、Wntアゴニストは、フューリンドメインを含むか、またはフューリンドメインからなるRスポンジン断片である。適切なRスポンジン断片の例は、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:30、もしくはSEQ ID NO:31に示したアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:30、もしくはSEQ ID NO:31のいずれか一つと70%、80%、90%、もしくは99%を超える同一性を有する配列によって表される。一部の態様において、Lgr5アゴニストは、抗Lgr5抗体、より好ましくは、アゴニスト抗Lgr5抗体である。アゴニスト抗Lgr5抗体の一例は1D9(BD Biosciences, BDB562733, No.:562733から入手可能)である。従って、1つの態様において、アゴニストは抗体1D9である。抗体1D9のVLはSEQ ID NO:32によって表され、VHはSEQ ID NO:33によって表される。従って、1つの態様において、アゴニストは、SEQ ID NO:32および/または SEQ ID NO:33を含むか、またはこれからなる抗体である。 一部の態様において、培養培地中のWntアゴニストは、Lgr4細胞表面受容体を介してWnt経路を刺激することができる任意のアゴニストである。すなわち、一部の態様では、培養培地中のWntアゴニストはLgr4アゴニストである。 一部の態様において、培養培地中のWntアゴニストは、Lgr6細胞表面受容体を介してWnt経路を刺激することができる任意のアゴニストである。すなわち、一部の態様では、培養培地中のWntアゴニストはLgr6アゴニストである。 Wntアゴニストは、同じ細胞タイプにおいて評価された時に、前記分子の非存在下の前記Wnt活性のレベルと比べて細胞内のWnt活性を少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも100%刺激するのに有効な量で培地に加えられてもよい。当業者に公知のように、Wnt活性は、Wnt転写活性を、例えば、pTOPFLASHおよびpFOPFLASH Tcfルシフェラーゼレポーター構築物によって測定することによって確かめることができる(Korinek et al., 1997. Science 275:1784-1787)。 可溶性Wntアゴニスト、例えば、Wnt-3aが、Wnt条件培地の形で提供されてもよい。例えば、約10%〜約30%、例えば、約10ng/ml〜約10μg/ml、好ましくは、約1μg/mlのWnt条件培地が用いられてもよい。 Rスポンジン1〜4がRspo条件培地の形で提供されてもよい。例えば、約10%〜約30%、例えば、約10ng/ml〜約10μg/ml、好ましくは、約1μg/mlのRspo条件培地が用いられてもよい。 1種または複数種の、例えば、2種、3種、4種、またはそれより多いWntアゴニストが培養培地中に用いられてもよい。1つの態様において、培養培地はLgr5アゴニスト、例えば、Rスポンジンを含み、さらなるWntアゴニストをさらに含む。この文脈で、さらなるWntアゴニストは、例えば、Wnt-3a、GSK-阻害剤(例えば、CHIR99021)、Wnt-5、Wnt-6a、およびNorrinからなる群より選択されてもよい。1つの態様において、培養培地はRスポンジンを含み、可溶性Wntリガンド、例えば、Wnt3aをさらに含む。可溶性Wntリガンドの添加は、(WO2012/168930に記載のように)ヒト上皮幹細胞を増殖させるのに特に有利なことが示されている。 任意の適切な濃度、例えば、少なくとも200ng/ml、より好ましくは少なくとも300ng/ml、より好ましくは少なくとも500ng/mlのWntアゴニスト、例えば、Rスポンジンを使用することができる。さらにより好ましいRスポンジン濃度は少なくとも500ng/mlまたは約1μg/mlである。 幹細胞の培養中に、前記Wntアゴニストは、必要な時に、例えば、毎日または1日おきに培養培地に加えられてもよい。Wntアゴニストは、好ましくは、1日おきに培養培地に加えられる。 抗体 本発明において用いられる抗体、例えば、抗ErbB3/4抗体、アゴニスト抗Lgr5抗体、またはアンタゴニストTGF-β阻害剤(下記を参照されたい)は任意の抗体、断片などでよい。従来の抗体は、ジスルフィド結合でつながった、2本の同一の重鎖および2本の同一の軽鎖で構成される。重鎖および軽鎖はそれぞれ定常領域と可変領域を含む。可変領域はそれぞれ、主として、抗原エピトープへの結合を担う3つのCDRを含む。これらは、N末端から連続番号が振られ、CDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれる。このうちCDR3領域は最も変わりやすい領域を含み、通常、標的と接触する残基のかなりの部分を提供する。最も高度に保存されている可変領域部分は「フレームワーク領域」と呼ばれる。 抗体という用語は本明細書では最も広い意味で用いられ、特に、任意のアイソタイプ、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEのモノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、組換えポリクローナル抗体を含むポリクローナル抗体、オリゴクローニック(Oligoclonic)、多重特異性抗体、キメラ抗体、ナノボディ、ダイアボディ、BiTE、Tandab、ミメトボディ(mimetobody)、二重特異性抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、脱免疫(deimmunised)抗体、ならびに抗体断片をカバーするが、これに限定されない。さらに、この用語によって、スキャフォールド、例えば、アンチカリン、アンカリン(Ankarin)などがカバーされる。上述したLgrタンパク質の特定のエピトープと反応する抗体は、組換え方法、例えば、ファージもしくは類似のベクターの中にある組換え抗体ライブラリーを選択することによって、またはLgrエピトープをコードする核酸のLgrエピトープで動物を免疫することによって作製することができる。 1つの態様において、本発明による抗体は、シングルドメイン抗体、F(ab')2、Fab、Fab'、または単鎖Fv(scFv)断片を含む。例えば、補体を活性化し、Fc受容体に結合し得るFc断片が存在してもよいが、抗体およびその変種または誘導体には必要とされない。scFv断片は、抗体軽鎖可変領域(VL)の少なくとも1つの断片と連結した、抗体重鎖可変領域(VH)の少なくとも1つの断片を含むエピトープ結合断片である。リンカーは、単鎖抗体断片が得られた抗体全体の標的分子結合特異性を維持するようにVL領域およびVH領域が連結されたら、VL領域およびVH領域の正しい三次元フォールディングが起こることを保証するように設計された短い可動性のペプチドでもよい。VL配列またはVH配列のカルボキシル末端は、リンカーによって、相補的なVL配列またはVH配列のアミノ酸末端に共有結合により連結されてもよい。 抗体は、ダイアボディ、ミメティボディ(mimetibody)、ナノボディ、および/または二重特異性抗体でもよい。ナノボディは、ラクダ科の動物において天然に生じるシングルドメイン抗体である。標準的な抗体とは対照的に、ナノボディは、重鎖に似た可変領域しか含まない比較的単純なタンパク質である。二重特異性抗体は、2つの別個の結合部位からなる人工的に操作されたモノクローナル抗体であり、2つの異なるエピトープに結合することができる。二重特異性抗体の例は、下記の、二重標的化アゴニストおよび多標的化アゴニストについてのセクションにおいて、さらに詳細に述べる。 抗体は、非ヒト抗体の重鎖および軽鎖の結合部分、例えば、可変領域またはその一部を含むが、残りの部分、例えば、重鎖および軽鎖の定常領域がヒト抗体であるキメラ抗体でもよい。キメラ抗体は当技術分野において周知の組換えプロセスによって産生することができ、動物可変領域とヒト定常領域を有する。 抗体はヒト抗体でもよくヒト化抗体でもよい。「ヒト抗体」という用語は、可変ドメイン配列および定常ドメイン配列がヒト配列に由来する抗体を意味する。ヒト化抗体では、抗原結合および特異性を担う相補性決定領域(CDR)だけが動物に由来し、動物抗体に対応するアミノ酸配列を有し、(場合によっては、可変領域内にあるフレームワーク領域の小さな部分を除く)分子の残りの部分の実質的に全てがヒトに由来し、アミノ酸配列の点ではヒト抗体に対応する。非ヒト抗体をヒト化するための方法は当技術分野において公知である。当業者に公知なように、抗体、例えば、ラット抗体は、そのCDRを、特異性および親和性に不可欠だと考えられているラットフレームワーク残基を保持しながら、ヒトIg分子の可変軽鎖(VL)フレームワークおよび可変重鎖(VH)フレームワークにつなぐことによってヒト化することができる。全体的に見て、CDRがつながれた抗体は、80%を超えるヒトアミノ酸配列からなる。 一部の態様において、抗体は、T細胞エピトープおよびB細胞エピトープが除去された脱免疫抗体である。このような抗体はインビボで適用された時に免疫原性が低い。 受容体型チロシンキナーゼリガンド FGFR2bリガンドおよびErbB3/4リガンドは受容体型チロシンキナーゼリガンドである。本発明の培養培地は、好ましくは、ErbB3/4リガンドそのものではない1種または複数種のさらなる受容体型チロシンキナーゼリガンドをさらに含む。本発明の培養培地は、FGFR2bリガンドそのものでもなく、ErbB3/4リガンドそのものでもない1種または複数種のさらなる受容体型チロシンキナーゼリガンドをさらに含んでもよい。本発明において使用するための受容体型チロシンキナーゼリガンドの一例は、受容体型チロシンキナーゼEGFRのリガンドであるEGFである。多くの受容体型チロシンキナーゼリガンドが分裂促進成長因子(mitogenic growth factor)でもある。 本発明の培養培地は1種または複数種の分裂促進成長因子を含んでもよい。一部の態様において、1種または複数種の分裂促進成長因子は、上皮細胞成長因子(EGF, Peprotech)、トランスフォーミング成長因子-α(TGF-α, Peprotech)、線維芽細胞成長因子(FGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF, R&D Systems)、血小板由来成長因子(PDGF, Peprotech)、アンフィレギュリン(R&D Systems)を含む成長因子ファミリーより選択される。好ましいPDGFはPDGF-CCである。本発明の培養培地の文脈において、EGFは本明細書では「E」とも呼ばれ、FGFは本明細書では「F」とも呼ばれる。 一部の態様において、本発明において使用するための受容体型チロシンキナーゼリガンドは、ヒトEGF、ヒトPDGF(例えば、ヒトPDGF-CC)、ヒトアンフィレギュリン、およびヒトTGF-αより選択される1種または複数種の分裂促進成長因子である。 EGF EGFは、様々な外胚葉培養細胞および中胚葉培養細胞の強力な分裂促進因子であり、インビボおよびインビトロで特定の細胞の分化ならびに細胞培養中のいくつかの線維芽細胞の分化に非常に大きな影響を及ぼす。EGF前駆体は、タンパク分解により切断されて、細胞を刺激する53アミノ酸ペプチドホルモンを生じる膜結合分子として存在する。 本発明者らは、いくつかの組織(例えば、乳房)からオルガノイドを成長させるために、EGFは本発明の培養培地に不可欠なものでないことを発見した。従って、一部の態様では、本発明の培養培地はEGFを含有しない。しかしながら、本発明者らは、培養培地中のEGFが不可欠ではないオルガノイド成長にEGFの添加が有益な場合があることを発見した。従って、一部の態様において、本発明の培養培地はEGFをさらに含む。 本発明の培養培地がEGFを含む態様では、EGFは、好ましくは、1〜500ng/ml、または少なくとも1ng/mlであり、500ng/mlを超えない濃度で基本培養培地に加えられる。好ましい濃度は、少なくとも1ng/ml、5ng/ml、10ng/ml、20ng/ml、25ng/ml、30ng/ml、40ng/ml、45ng/ml、または50ng/mlであり、かつ500ng/ml、450ng/ml、400ng/ml、350ng/ml、300ng/ml、250ng/ml、200ng/ml、150ng/ml、または100ng/mlを超えない。より好ましくい濃度は少なくとも1ng/mlであり、かつ100ng/mlを超えない。例えば、一部の態様では、EGFの濃度は約50ng/mlである。異なる分裂促進成長因子、例えば、PDGFまたはFGFについて同じ濃度を使用することができる。複数種のFGF、例えば、FGF7およびFGF10が用いられる場合、FGFの濃度は上記で定義された通りであり、使用されるFGFの総濃度を指す。一部の態様において、FGF7の濃度は約25ng/mlであり、FGF10の濃度は約100ng/mlである。 FGFR2bリガンド 一部の態様において、受容体型チロシンキナーゼリガンドはFGFR2bリガンド(例えば、FGF7およびFGF10)である。FGF7およびFGF10は、線維芽細胞成長因子(FGF)タンパク質ファミリーに属するタンパク質である。FGFファミリーメンバーは広範な分裂促進活性および細胞生存活性を有し、胚発生、細胞成長、形態形成、組織修復、腫瘍成長、および浸潤を含む様々な生物学的プロセスに関与する。FGFは、細胞表面チロシンキナーゼ受容体(FGFR)と相互作用することによって細胞を刺激する。4種類の近縁関係にある受容体(FGFR1〜FGFR4)が特定されている。FGFR1〜FGFR3遺伝子は複数種のアイソフォームをコードすることが示されており、これらのアイソフォームはリガンド特異性を決定する際に重要な場合がある。ほとんどのFGFは複数の受容体に結合する(Ornitz J Biol Chem. 1998 Feb 27;273 (9):5349-57)。しかしながら、FGF10およびFGF7は、上皮細胞でしか発現しない、FGFR2bと呼ばれるFGFR2の特定のアイソフォームとしか相互作用しないのでFGFの中ではユニークである(Igarashi, J Biol Chem. 1998 273(21): 13230-5)。 一部の態様において、本発明の培養培地は、FGFR2bリガンド(例えば、FGF1、FGF3、FGF7、FGF10、またはFGF22)を含む。一部の態様において、FGFR2bリガンドは高親和性FGFR2bリガンドである。一部の態様において、FGFR2bリガンドはFGFR2bに結合するが、他のどのFGFRアイソフォームにも結合しない。一部の態様において、FGFR2bリガンドはFGF7サブファミリーのメンバー(例えば、FGF7、FGF10、またはFGF22)である。好ましい態様において、FGFR2bリガンドはFGF10および/またはFGF7である。一部の態様において、複数種のFGFR2bリガンドは用いられない。他の態様において、2種類以上の、例えば、2種類、3種類の、またはそれより多いFGFR2bリガンドが用いられる。一部の態様において、培養培地はFGF7およびFGF10を含む。一部の態様において、FGFR2bリガンドとして、天然FGFR2bリガンドの生物学的に活性な断片または変種、例えば、FGF7および/またはFGF10の生物学的に活性な断片または変種が用いられる。一部の態様において、本発明の培養培地中のFGFR2bリガンドとして、生物学的に活性な合成リガンドが用いられる。この文脈で用いられる「生物学的に活性な」とは、FGFR2bリガンド、例えば、天然FGFR2bリガンドの断片もしくは変種または合成FGFR2bリガンドがFGFR2bに結合し、FGF7および/またはFGF10と比較して同様の下流シグナル伝達を誘発する、例えば、FRS2α(FGF受容体基質2αまたはFRS2β(FGF受容体基質2β)のチロシンリン酸化を誘発することができることを意味する。FRS2αおよび/またはFRS2βのチロシンリン酸化は、FGF7および/またはFGF10によって活性化されたシグナル伝達経路における最初期のサイトゾル事象である。一部の態様において、FGFR2bリガンドは、FGFR2またはFGFR4経路を活性化する化合物(「FGF経路アクチベーター」)で代用される。 一部の態様において、本発明の培養培地において用いられる1種または複数種のFGFR2bリガンドは、以下:ヒトFGF7、ヒトFGF10、ヒトFGF22、ヒトFGF1、またはヒトFGF22より選択される。 さらなる態様において、分裂促進成長因子の組み合わせ、例えば、EGFおよびFGF7、またはEGFおよびFGF10が基本培養培地に加えられる。さらなる態様において、分裂促進成長因子の組み合わせ、例えば、(i)FGF7およびFGF10、(ii)EGF、FGF7、およびFGF10、または(iii)PDGF、FGF7、およびFGF10、または(iv)EGF、PDGF、アンフィレギュリン、FGF7、およびFGF10が培養培地に加えられる。 一部の態様において、TGF-αまたはアンフィレギュリンが基本培養培地に加えられる。これらの分裂促進成長因子はEGFに取って代わってもよい。一部の態様において、肝細胞成長因子(HGF)が培養培地に加えられる。 幹細胞の培養中に、好ましくは、受容体型チロシンキナーゼリガンドの組み合わせ(例えば、EGF、FGF10、およびFGF7)が、必要な時に、例えば、毎日または1日おきに培養培地に加えられる。これらは単独で加えられてもよく、組み合わせて加えられてもよい。これらは1日おきに加えられることが好ましい。 TGF-β阻害剤 本発明の培養培地はTGF-β阻害剤を含んでもよい。培地にTGF-β阻害剤が存在することは、ヒトオルガノイド形成の効率を高めるので有利である。TGF-βシグナル伝達は、細胞成長、細胞運命、およびアポトーシスを含む多くの細胞機能に関与する。シグナル伝達は、典型的には、TGF-βスーパーファミリーリガンドがII型受容体に結合し、II型受容体がI型受容体を動員およびリン酸化することから始まる。次いで、I型受容体はSMADをリン酸化する。SMADは核内で転写因子として働き、標的遺伝子の発現を調節する。 TGF-βスーパーファミリーリガンドは、骨形成タンパク質(BMP)、成長分化因子(GDF)、抗ミュラー管ホルモン(AMH)、アクチビン、nodal、ならびにTGF-βを含む。一般的に、Smad2およびSmad3はTGF-β/アクチビン経路においてALK4、5、および7受容体によってリン酸化される。対照的に、Smad1、Smad5、およびSmad8は骨形成タンパク質(BMP)経路の一部としてリン酸化される。経路間でいくらか交わることがあるが、本発明の文脈において、「TGF-β阻害剤」または「TGF-βシグナル伝達阻害剤」とは、好ましくは、Smad2およびSmad3を介して働くTGF-β経路の阻害剤である。従って、一部の態様において、TGF-β阻害剤はBMP阻害剤でなく、例えば、TGF-β阻害剤はNogginでない。一部の態様において、TGF-β阻害剤の他にBMP阻害剤が培養培地に加えられる(上記を参照されたい)。 従って、TGF-β阻害剤は、TGF-βシグナル伝達経路、好ましくは、Smad2および/またはSmad3を介して働くシグナル伝達経路、より好ましくは、ALK4、ALK5、またはALK7を介して働くシグナル伝達経路の活性を低下する任意の薬剤でよい。当技術分野において公知であり、かつ本発明と共に使用することができる、TGF-βシグナル伝達経路を破壊する多くのやり方がある。例えば、TGF-βシグナル伝達は、低分子干渉RNA戦略によってTGF-β発現を阻害することによって;フューリン(TGF-β活性化プロテアーゼ)を阻害することによって;生理学的阻害剤による経路を阻害することによって;モノクローナル抗体を用いてTGF-βを中和することによって;低分子阻害剤を用いて、TGF-β受容体キナーゼ1(アクチビン受容体様キナーゼ、ALK5とも知られる)、ALK4、ALK6、ALK7、または他のTGF-β関連受容体キナーゼを阻害することによって;例えば、これらの生理学的阻害剤であるSmad7を過剰発現させることによりまたはSmadが活性化できないようにするSmadアンカーとしてチオレドキシンを用いることにより、Smad2およびSmad3シグナル伝達を阻害することによって、破壊されてもよい(Fuchs, O. Inhibition of TGF-Signaling for the Treatment of Tumor Metastasis and Fibrotic Diseases. Current Signal Transduction Therapy, Volume 6, Number 1, January 2011, pp. 29-43(15))。 物質がTGF-β阻害剤であるかどうか確かめるための様々な方法が公知であり、本発明と共に用いられ得る。例えば、細胞アッセイが用いられてもよい。細胞アッセイでは、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を動かす、ヒトPAI-1プロモーターまたはSmad結合部位を含むレポーター構築物で細胞が安定にトランスフェクトされる。対照群と比較したルシフェラーゼ活性の阻害を化合物活性の尺度として使用することができる(De Gouville et al., Br J Pharmacol. 2005 May; 145(2): 166-177)。 本発明によるTGF-β阻害剤は、タンパク質、ペプチド、低分子、低分子干渉RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマー、または抗体でもよい。前記阻害剤は天然でもよく合成でもよい。1つの態様において、TGF-β阻害剤はALK4、ALK5、および/またはALK7の阻害剤である。例えば、TGF-β阻害剤はALK4、ALK5、および/またはALK7に結合し、ALK4、ALK5、および/またはALK7を直接阻害してもよい。本発明の文脈において使用することができる、好ましい低分子TGF-β阻害剤の例には、表1に列挙された低分子阻害剤が含まれる。 (表1)受容体キナーゼを標的とする低分子TGF-β阻害剤 一部の態様において、TGF-β阻害剤は、任意で、A83-01、SB-431542、SB-505124、SB-525334、LY364947、SD-208、およびSJN2511からなる群より選択される低分子阻害剤である。 一部の態様において、複数種のTGFβ阻害剤が培地に存在しない。他の態様において、複数種の、例えば、2種、3種、4種、またはそれより多いTGFβ阻害剤が培地に存在する。一部の態様において、本発明の培地は、表1に列挙された任意の阻害剤の1つまたは複数を含む。培地は、列挙された、ある阻害剤と、別の阻害剤の任意の組み合わせを含んでもよい。例えば、培地は、SB-525334もしくはSD-208もしくはA83-01;またはSD-208およびA83-01を含んでもよい。当業者であれば、主として、他のキナーゼを標的とするように設計されたが、高濃度ではTGF-β受容体キナーゼも阻害する可能性がある多数の他の低分子阻害剤が存在することを認めるだろう。例えば、SB-203580は、高濃度(例えば、約10μM以上)では、ALK5を阻害すると考えられているp38 MAPキナーゼ阻害剤である。本発明の文脈では、TGF-βシグナル伝達経路を阻害する、このような任意の阻害剤も使用することができる。 一部の態様において、TGFβ阻害剤は、少なくとも5nM、例えば、少なくとも50nM、少なくとも100nM、少なくとも300nM、少なくとも450nM、少なくとも475nM、例えば、5nM〜500mM、10nM〜100mM、50nM〜700uM、50nM〜10uM、100nM〜1000nM、350〜650nM、またはより好ましくは約500nMで存在する。 A83-01は、10nM〜10uM、または1uM〜8uM、または4uM〜6uMの濃度で培地に加えられてもよい。例えば、A83-01は約5uMで培地に加えられてもよい。当業者であれば、本発明において使用するための他のTGFβ阻害剤の濃度を決定するやり方を知っているだろう。 TGFβ阻害剤が加えられる一部の態様において、本発明の方法は、胃組織、肝臓組織、前立腺組織、膵臓組織、乳房組織、または腸組織から入手した幹細胞を培養するのに用いられる。TGFβ阻害剤が加えられる一部の態様において、本発明の方法は、肺組織、胃組織、肝臓組織、前立腺組織、膵臓組織、乳房組織、または腸組織から入手した幹細胞を培養するのに用いられる。 ROCK阻害剤 説明されたどの培地にも、特に、細胞選別実験を行う前、培養して最初の数日間に、ROCK阻害剤、例えば、Y-27632(10μM; Sigma)を含めることができる。なぜなら、ROCK阻害剤は、アノイキス(周囲の細胞外マトリックスから剥離した足場依存性細胞によって誘導されるプログラム細胞死の一種)を回避することが知られているからである。従って、本明細書において定義されたどの培地も、最初の数日間、ROCK阻害剤をさらに含んでもよい。一部の態様において、本発明の培養培地は、例えば、細胞選別実験を行う前、培養して最初の数日間、Y-27632などのROCK阻害剤をさらに含む。 本発明の培養培地のさらなる態様はRock(Rho-キナーゼ)阻害剤を含む。Rock阻害剤の添加は、特に、単一の幹細胞を培養した時に、アノイキスを阻止することが見出された。前記Rock阻害剤は、好ましくは、R-(+)-trans-4-(1-アミノエチル)-N-(4-ピリジル)シクロヘキサンカルボキサミド二塩酸塩一水和物(Y-27632, Sigma-Aldrich)、5-(1,4-ジアゼパン-1-イルスルホニル)イソキノリン(ファスジルまたはHA1077, Cayman Chemical)、および(S)-(+)-2-メチル-1-[(4-メチル-5-イソキノリニル)スルホニル]-ヘキサヒドロ-1H-1,4-ジアゼピン二塩酸塩(H-1152, Tocris Bioscience)より選択される。前記Rho-キナーゼ阻害剤、例えば、Y-27632は、好ましくは、前記幹細胞を培養して最初の7日間、1日おきに培養培地に添加される。Rock阻害剤は、好ましくは、最初の数日、例えば、1個の細胞の播種後またはスプリット後、最初の1日、2日、3日、4日、5日、6日、または7日の培養の間、培地に含められる。任意の適切なRock阻害剤濃度、例えば、1〜200uM、1〜100uM、5〜50uM、または約10uMを使用することができる。好ましいY27632濃度は10uMである。従って、一部の態様において、本発明は、Rock阻害剤が最初の1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、または7日間、任意で、1日おきに培養培地に添加される、幹細胞を培養するための方法および/またはオルガノイドを入手するための方法を提供する。一部の態様において、Rock阻害剤は、最初の2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、または10日の後に培養培地に添加されない。 Rock阻害剤の添加は、(前述したように)単一の幹細胞を培養した時に、すなわち、オルガノイドの出発材料が単一の幹細胞である時に特に重要である。従って、一部の態様において、本発明は、幹細胞、任意で、単一の幹細胞を培養する工程を含み、Rock阻害剤が最初の1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、または7日間、任意で、1日おきに培養培地に添加される、任意で、Rock阻害剤が最初の2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、または10日の後に培養培地に添加されない、オルガノイドを入手するための方法を提供する。 Rock阻害剤は、複数の細胞を培養する時に、例えば、オルガノイドの出発材料が組織断片である時にあまり重要でなく、時として必要でない。従って、一部の態様において、本発明は、幹細胞、任意で、組織断片を培養する工程を含み、Rock阻害剤が培養培地に全く添加されない、または最初の2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、もしくは10日の後に培養培地に添加されない、オルガノイドを入手するための方法を提供する。 細胞が複数の培養物にスプリットされた時、Rock阻害剤は同じように培養培地に添加されてもよい。これは、スプリット後、特に、スプリットが第1の培養物から単一の幹細胞を採取し、これらを第2の培養物に入れることを伴う時に、Rock阻害剤が最初の1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6、日間、または7日間、任意で、1日おきに添加されることを意味する。スプリットが第1の培養物から複数の幹細胞を採取し、これらを第2の培養物に入れることを伴うのであれば、Rock阻害剤の添加はあまり重要でなく、時として必要でない。従って、一部の態様において、オルガノイドを入手するための方法または幹細胞を培養するための方法がスプリットを伴う場合、任意で、単一の細胞がスプリットに関与する場合、Rock阻害剤は、スプリット後、最初の1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、または7日間、任意で、1日おきに新たな培養培地に添加される。一部の態様において、オルガノイドを入手するための方法または幹細胞を培養するための方法がスプリットを伴う場合、任意で、複数の細胞がスプリットに関与する場合、培養培地に全く添加されない、または最初の2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、もしくは10日の後に培養培地に添加されない。 Notchアゴニスト なおさらなる態様において、本発明の培養培地はNotchアゴニストをさらに含む。Notchシグナル伝達は細胞運命決定ならびに細胞の生存および増殖において重要な役割を果たすと示されている。Notch受容体タンパク質は、Delta1、Jagged1および2、ならびにDelta-like1、Delta-like3、Delta-like4を含むが、これに限定されない多数の表面結合型リガンドまたは分泌型リガンドと相互作用することができる。リガンドが結合すると、Notch受容体は、ADAMプロテアーゼファミリーのメンバーが関与する連続した切断事象、ならびにγセクレターゼプレセニリンによって調節される膜内切断によって活性化される。この結果はNotch細胞内ドメインの核への移動であり、核においてNotch細胞内ドメインは下流遺伝子の転写を活性化する。好ましいNotchアゴニストは、Jagged1およびDelta1またはその活性な断片もしくは誘導体より選択される。最も好ましいNotchアゴニストは、配列 Notchアゴニストは、前記分子の非存在下でのNotch活性のレベルと比べて細胞内のNotch活性を少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも100%刺激する分子と定義される。当業者に公知なように、Notch活性は、Notch転写活性を測定することによって、例えば、(Hsieh et al, 1996 Mol Cell. Biol. 16, 952-959)に記載のように4xwtCBF1-ルシフェラーゼレポーター構築物によって確かめることができる。 cAMP経路アクチベーター 一部の態様において、本発明の培養培地はcAMP経路アクチベーターをさらに含む。cAMP経路アクチベーターを培養培地に添加すると、cAMP経路アクチベーターが培地に無い時と比較して増加した継代数で、ヒト上皮幹細胞を培養することが可能になる可能性がある。 cAMP経路アクチベーターは、細胞内のcAMPレベルを高める任意の適切なアクチベーターでよい。cAMP経路は多くのタイプのホルモンおよび神経伝達物質Gタンパク質共役受容体の活性化に関与する。ホルモンまたは神経伝達物質がその膜結合型受容体に結合すると受容体のコンホメーション変化が誘導され、その結果、G-タンパク質のα-サブユニットが活性化される。活性化Gサブユニットはアデニリルシクラーゼを刺激するのに対して、非活性化Gサブユニットはアデニリルシクラーゼを阻害する。アデニリルシクラーゼが刺激されると細胞質ATPからcAMPへの変換が触媒され、従って、細胞内のcAMPレベルが増える。従って、cAMP経路アクチベーターは、例えば、アデニリルシクラーゼアクチベーターでもよい。適切なアデニリルシクラーゼアクチベーターの例には、フォルスコリン、フォルスコリン類似体、およびコレラ毒素が含まれる。一部の態様において、cAMP経路アクチベーターはフォルスコリンである。一部の態様において、cAMP経路アクチベーターはコレラ毒素でない。一部の態様において、cAMP経路アクチベーターは、cAMP類似体、例えば、8-ブロモ-cAMPでもよい。8-ブロモ-cAMPは、ホスホジエステラーゼによる加水分解に対する耐性がcAMPより高い細胞透過性cAMP類似体である。一部の態様において、cAMP経路アクチベーターはNKH477(例えば、カタログ番号Tocris1603)である。 cAMP経路アクチベーターは、当技術分野において公知の方法を用いて、例えば、cAMPレベルを特定する競合的イムノアッセイを用いて特定することができる。CatchPoint(登録商標)Cyclic-AMP Fluorescent Assay Kit(Molecular Devices LLC)が、このようなイムノアッセイを行うための市販キットの一例である。試料中のcAMPまたは標準物質は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識されたcAMP結合体と、抗cAMP抗体上の結合部位において競合する。cAMPの非存在下では、HRP-cAMP結合体のほとんどが抗体に結合する。cAMPの濃度が増加すると、結合する結合体の量が競合により減少し、従って、HRP活性測定値が減少する。cAMP経路アクチベーターがあったら、対照と比較してcAMPレベルが増加し、HRP活性測定値が減少するだろう。 一部の態様において、cAMP経路アクチベーターは、約10nM〜約500μM、約10nM〜約100μM、約1μM〜約50μM、約1μM〜約25μM、約5μM〜約1000μM、約5μM〜約500μM、約5μM〜約100μM、約5μM〜約50μM、約5μM〜約25μM、約10μM〜約1000μM、約10μM〜約500μM、約10μM〜約100μM、約10μM〜約50μM、約10μM〜約25μM、または約20μMの濃度で用いられる。一部の態様において、cAMP経路アクチベーターは、少なくとも10nM、20nM、50nM、100nM、200nM、500nM、1μM、少なくとも2μM、少なくとも5μM、少なくとも10μM、少なくとも20μM、少なくとも30μM、少なくとも50μM、または少なくとも100μMの濃度で用いられる。 選択される濃度は、使用されるcAMP経路アクチベーターに左右される場合があり、cAMP経路アクチベーターの効能に応じて当業者によって決定することができる。例えば、NKH477は、一般的に、8-BR-cAMPおよびフォルスコリンより強力である。強力なcAMP経路アクチベーターは低濃度で同じ効果をあげて使用することができる。 例えば、NKH477は、一部の態様では、約100nM〜約10μMの濃度、または約100nM、約1μM、もしくは約10μMの濃度で使用することができる。8-BR-cAMPまたはフォルスコリンは、一部の態様では、約1μM〜約100μMの濃度、または約1μM、約10μM、もしくは約100μMの濃度で使用することができる。 コレラ毒素は、一部の態様では、約1ng/ml〜約500ng/ml、約10ng/ml〜約100ng/ml、約50ng/ml〜約100ng/ml、または約10ng/ml、約20ng/ml、約30ng/ml、約40ng/ml、約50ng/ml、約60ng/ml、約70ng/ml、約80ng/ml、約90ng/ml、約100ng/ml、約200ng/ml、約300ng/ml、約400ng/ml、または約500ng/mlの濃度で使用することができる。 cAMP経路アクチベーターが加えられる一部の態様では、本発明の方法は肝臓幹細胞を培養するのに用いられる。 BMP経路アクチベーター 一部の態様において、本発明の培養培地はBMP経路アクチベーターをさらに含む。BMP経路アクチベーターを培養培地に添加すると、BMP経路アクチベーターが培地に無い時と比較して増加した継代数でヒト上皮幹細胞を培養することが可能になる可能性がある。 従って、一部の態様において、本発明の培養培地はBMP経路アクチベーターをさらに含む。一部の態様において、BMP経路アクチベーターは、BMP7、BMP4、およびBMP2より選択される。BMP7が好ましい。BMP7はSMAD1およびSMAD5のリン酸化を誘導する。従って、一部の態様において、BMP7が言及されている場合、BMP7の代わりに、SMAD1またはSMAD5のリン酸化を誘導する任意の化合物を使用することができる。 一部の態様において、培養培地はcAMP経路アクチベーターおよびBMPアクチベーターを含む。 一部の態様において、培養培地はBMP経路アクチベーター(例えば、BMP7)を含み、BMP経路阻害剤(例えば、Noggin)を含まない。 BMP経路アクチベーターが加えられる一部の態様において、本発明の方法は肝臓幹細胞を培養するのに用いられる。 さらなる成分 培養培地は任意でニコチンアミドを含み、好ましくは、B27、N-アセチルシステイン、およびN2からなる群より選択される化合物の1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、3つ、または全て)が添加される。従って、一部の態様において、培養培地は、ニコチンアミド、B27、N2、およびN-アセチルシステインからなる群より選択される1種または複数種の成分をさらに含む。例えば、一部の態様において、培養培地は、B27、N-アセチルシステイン、およびニコチンアミドをさらに含む。 B27(Invitrogen)、N-アセチルシステイン(Sigma)およびN2(Invitrogen)、ならびにニコチンアミド(Sigma)は細胞増殖を制御し、DNA安定性を助けると考えられている。本発明の文脈において、ニコチンアミドは本明細書では「Nic」とも呼ばれる。 一部の態様において、ニコチンアミドは7〜15mM、例えば、約10mMで存在する。 一部の態様において、B27サプリメントは「B27 Supplement minus Vitamin A」であり(Invitrogen, Carlsbad, CA; www.invitrogen.com;現在、カタログ番号12587010;およびPAA Laboratories GmbH, Pasching, Austria; www.paa.com;カタログ番号F01-002から入手することができる; Brewer et al., J Neurosci Res., 35(5):567-76, 1993)、ビオチン、コレステロール、リノール酸、リノレン酸、プロゲステロン、プトレシン、酢酸レチニル、亜セレン酸ナトリウム、トリヨードチロニン(T3)、DL-αトコフェロール(ビタミンE)、アルブミン、インシュリン、およびトランスフェリンを含む培養培地を処方するのに用いられてもよい。 PAA Laboratories GmbHによって供給されるB27サプリメントは、成分の中でも特に、ビオチン、コレステロール、リノール酸、リノレン酸、プロゲステロン、プトレシン、レチノール、酢酸レチニル、亜セレン酸ナトリウム、トリヨードチロニン(T3)、DL-αトコフェロール(ビタミンE)、アルブミン、インシュリン、およびトランスフェリンを含有する50x液体濃縮液として生じる。これらの成分のうち、少なくともリノレン酸、レチノール、酢酸レチニル、およびトリヨードチロニン(T3)は核ホルモン受容体アゴニストである。B27サプリメントは濃縮液として培養培地に加えられてもよく、培養培地に加えられる前に希釈されてもよい。B27サプリメントは1x最終濃度で用いられてもよく、他の最終濃度で用いられてもよい。B27サプリメントの使用は、ビオチン、コレステロール、リノール酸、リノレン酸、プロゲステロン、プトレシン、レチノール、酢酸レチニル、亜セレン酸ナトリウム、トリヨードチロニン(T3)、DL-αトコフェロール(ビタミンE)、アルブミン、インシュリン、およびトランスフェリンを本発明の培養培地に組み込む便利なやり方である。B27サプリメントを用いる代わりに、これらの成分の一部または全てが培養培地に別々に加えられてもよいことも想定される。従って、培養培地は、これらの成分の一部または全てを含んでもよい。 一部の態様において、レチノイン酸は、培養培地に用いられるB27サプリメントに無い、および/または培養培地に無い。 「N2サプリメント」は、Invitrogen, Carlsbad, CA; www.invitrogen.com;カタログ番号17502-048;およびPAA Laboratories GmbH, Pasching, Austria; www.paa.com;カタログ番号F005-004; Bottenstein & Sato, PNAS, 76(1):514-517, 1979から入手することができる。PAA Laboratories GmbHによって供給されるN2サプリメントは、500μg/mlヒトトランスフェリン、500μg/mlウシインシュリン、0.63μg/mlプロゲステロン、1611μg/mlプトレシン、および0.52μg/ml亜セレン酸ナトリウムを含有する100x液体濃縮液として生じる。N2サプリメントは濃縮液として培養培地に加えられてもよく、培養培地に加えられる前に希釈されてもよい。N2サプリメントは1x最終濃度で用いられてもよく、他の最終濃度で用いられてもよい。N2サプリメントの使用は、トランスフェリン、インシュリン、プロゲステロン、プトレシン、および亜セレン酸ナトリウムを本発明の培養培地に組み込む便利なやり方である。もちろん、N2サプリメントを用いる代わりに、これらの成分の一部または全てが培養培地に別々に加えられてもよいことも想定される。従って、培養培地は、これらの成分の一部または全てを含んでもよい。 培地がB27を含む一部の態様では、培地はまたN2も含まない。従って、B27が存在する時には、所望であれば、N2を排除するように本発明の態様を合わせることができる。 一部の態様において、N2は培養培地に存在しない。 培地がN2を含む一部の態様では、培地はまたB27も含まない。従って、N2が存在する時には、所望であれば、B27を排除するように本発明の態様を合わせることができる。 一部の態様において、B27は培養培地に存在しない。 一部の態様において、培養培地にはB27および/またはN2が添加される。 一部の態様において、基本培地には150ng/ml〜250ng/mlのN-アセチルシステインが添加される。好ましくは、基本培地には約200ng/mlのN-アセチルシステインが添加される。 一部の態様において、本発明の培養培地にはニコチンアミドが添加される。ニコチンアミドの添加はヒトオルガノイドの培養効率および寿命を改善することが見出されている。ニコチンアミドは、1〜100mM、5〜50mM、または好ましくは5〜20mMの最終濃度まで培養培地に添加されてもよい。例えば、ニコチンアミドは約10mMの最終濃度まで培養培地に添加されてもよい。 一部の態様において、本発明の培養培地はp53安定化剤を含む。細胞集団が主に腫瘍細胞になることを確かなものにするために、p53安定化剤が培養培地に加えられてもよい。どんな理論にも拘束されるつもりはないが、p53安定化剤は(例えば、p53とMdm2との間の相互作用をブロックすることによって)p53の細胞濃度を高め、p53依存性発現を刺激し、細胞老化を誘導すると考えられている。p53変異は、普通、腫瘍細胞において生じ、それにより変異p53タンパク質が生じることがあり、これは、細胞増殖および生存に影響することなく、p53発現を安定化する作用に対して機能しない。p53変異をもつ腫瘍細胞のサブセットは、腫瘍細胞がp53安定化の有害な作用から逃れるのを可能にする、さらなるゲノム変化を有することがある。好ましいp53安定化剤は、Nutlinファミリーのメンバー、例えば、Nutlin-1、Nutlin-2、またはNutlin-3である。例えば、一部の態様において、p53安定化剤はNutlin-3である。p53安定化剤の任意の適切な濃度、例えば、1nM〜10mM、10nM〜1mM、100nM〜100μM、1μM〜10μMを使用することができる。例えば、Nutlin-3は約5μMの最終濃度まで本発明の培養培地に加えられてもよい。様々なp53安定化剤(例えば、CP-31398)が当技術分野において公知である。従って、当業者は、これらを使用できるだろう。 従って、上皮幹細胞が癌細胞である本発明の方法の一部の態様において、前記方法において用いられる培養培地は有利なことにp53安定化剤を含む。しかしながら、上皮癌幹細胞を培養するための、このような方法の他の態様は、p53安定化剤を含む培養培地を使用しない。前記方法が正常上皮幹細胞を培養するのに用いられるが、p53安定化剤が必要とされない時には、p53安定化剤は培養培地に存在しない場合があることも想定される。 一部の態様において、本発明の培養培地はp38 MAPキナーゼ阻害剤を含む。p38 MAPキナーゼ阻害剤は、p38シグナル伝達を直接的または間接的に負に調節する阻害剤である。一部の態様において、p38 MAPキナーゼ阻害剤はSB202190である。しかしながら、代わりに、他の適切なp38 MAPキナーゼ阻害剤が用いられてもよく、これらは当業者に容易に入手可能である。 任意の適切なpHを使用することができる。例えば、培地のpHは、約7.0〜7.8の範囲内、約7.2〜7.6の範囲内、または約7.4でもよい。pHは緩衝液を用いて維持されてもよい。適切な緩衝液は当業者によって容易に選択することができる。使用され得る緩衝液には、炭酸緩衝液(例えば、NaHCO3)およびリン酸緩衝液(例えば、NaH2PO4)が含まれる。これらの緩衝液は一般的には約50〜約500mg/lで用いられる。N-[2-ヒドロキシエチル]-ピペラジン-N'-[2-エタンスルホン酸](HEPES)および3-[N-モルホリノ]-プロパンスルホン酸(MOPS)などの他の緩衝液も、通常、約1000〜約10,000mg/lで使用することができる。培地のpH状態を容易にモニタリングできるように、培養培地はフェノールレッドなどのpH指示薬(例えば、約5〜約50mg/リットル)を含んでもよい。 本発明において使用するための培養培地は1種または複数種のアミノ酸を含んでもよい。当業者であれば、幹細胞培養培地において使用するためのアミノ酸の適切なタイプおよび量を理解する。存在し得るアミノ酸には、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-システイン、L-シスチン、L-グルタミン酸、L-グルタミン、L-グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-バリン、およびその組み合わせが含まれる。一部の培養培地は、これらのアミノ酸の全てを含有する。一般的に、約0.05〜約1g/L(通常、約0.1〜約0.75g/L)で存在するL-グルタミンを除いて、それぞれのアミノ酸が存在する時には約0.001〜約1g/L培地(通常、約0.01〜約0.15g/L)で存在する。アミノ酸は合成由来でもよい。 本発明において使用するための培養培地は1種または複数種のビタミンを含んでもよい。当業者であれば、幹細胞培養培地において使用するためのビタミンの適切なタイプおよび量を理解する。存在し得るビタミンには、チアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシン(ビタミンB3)、D-パントテン酸カルシウム(ビタミンB5)、ピリドキサール/ピリドキサミン/ピリドキシン(ビタミンB6)、葉酸(ビタミンB9)、シアノコバラミン(ビタミンB12)、アスコルビン酸(ビタミンC)、カルシフェロール(ビタミンD2)、DL-αトコフェロール(ビタミンE)、ビオチン(ビタミンH)、およびメナジオン(ビタミンK)が含まれる。 本発明において使用するための培養培地は1種または複数種の無機塩を含んでもよい。当業者であれば、幹細胞培養培地において使用するための無機塩の適切なタイプおよび量を理解する。無機塩は、典型的には、細胞の浸透圧平衡の維持を助けるために、および膜電位の調節を助けるために培養培地に含まれる。存在し得る無機塩には、カルシウム、銅、鉄、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛の塩が含まれる。塩は、通常、塩化物、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、および重炭酸塩の形で用いられる。使用され得る具体的な塩には、CaCl2、CuSO4-5H2O、Fe(NO3)-9H2O、FeSO4-7H2O、MgCl、MgSO4、KCl、NaHCO3、NaCl、Na2HPO4、Na2HPO4-H2O、およびZnSO4-7H2Oが含まれる。 培地の容量オスモル濃度(osmolarity)は、約200〜約400mOsm/kgの範囲内、約290〜約350mOsm/kgの範囲内、または約280〜約310mOsm/kgの範囲内でもよい。培地の容量オスモル濃度は約300mOsm/kg未満(例えば、約280mOsm/kg)でもよい。 本発明において使用するための培養培地は炭素エネルギー源を1種または複数種の糖の形で含んでもよい。当業者であれば、幹細胞培養培地において使用するための糖の適切なタイプおよび量を理解する。存在し得る糖には、グルコース、ガラクトース、マルトース、およびフルクトースが含まれる。糖は、好ましくは、グルコース、特に、D-グルコース(デキストロース)である。炭素エネルギー源は、通常、約1〜約10g/Lで存在する。 本発明の培養培地は血清を含有してもよい。胎仔ウシ血清(FBS)、ヤギ血清、またはヒト血清を含む、任意の適切な供給源から入手した血清を使用することができる。好ましくは、ヒト血清が用いられる。血清は、従来技法に従って培地体積で約1%〜約30%で用いられてもよい。 他の態様において、本発明の培養培地は血清代用品を含有してもよい。様々な異なる血清代用品製剤が市販されており、当業者に公知である。血清代用品が用いられる場合、従来技法に従って培地体積で約1%〜約30%で用いられてもよい。 他の態様において、本発明の培養培地は無血清でもよく、および/または血清代用品を含まなくてもよい。無血清培地は、いかなるタイプの動物血清も含有しない培地である。幹細胞の起こり得る異物汚染(xeno-contamination)を避けるために無血清培地が好ましい場合がある。血清代用品を含まない培地は、いかなる市販の血清代用製剤も添加されていない培地である。 好ましい態様において、細胞培養培地には、精製された成長因子、天然成長因子、半合成成長因子、および/または合成成長因子が添加され、胎仔ウシ血清またはウシ胎仔血清などの明確に分かっていない成分を含まない。例えば、B27(Invitrogen)、N-アセチルシステイン(Sigma)、およびN2(Invitrogen)などのサプリメントは一部の細胞の増殖を刺激する。一部の態様において、細胞培養培地には、これらのサプリメントの1つまたは複数、例えば、これらのサプリメントの1つ、いずれか2つ、または3つ全てが添加される。 本発明において使用するための培養培地は、1種または複数種の微量元素、例えば、バリウム、ブロミウム(bromium)、コバルト、ヨウ素、マンガン、クロム、銅、ニッケル、セレン、バナジウム、チタン、ゲルマニウム、モリブデン、ケイ素、鉄、フッ素、銀、ルビジウム、スズ、ジルコニウム、カドミウム、亜鉛、および/またはアルミニウムのイオンを含んでもよい。 培地は、還元剤、例えば、約0.1mMの濃度のβ-メルカプトエタノールを含んでもよい。 本発明の培養培地は、1種または複数種のさらなる薬剤、例えば、幹細胞培養を改善することが報告されている栄養素または成長因子、例えば、コレステロール/トランスフェリン/アルブミン/インシュリン/プロゲステロン、プトレシン、亜セレン酸塩/他の因子を含んでもよい。 本発明の例示的な培養培地 好ましい態様において、本発明の培養培地は、ErbB3/4リガンド(例えば、ヒトニューレグリンβ-1)、1種もしくは複数種の受容体型チロシンキナーゼリガンド(例えば、EGFおよび/またはHGF)、BMP阻害剤(例えば、Noggin)、ならびにTGF-β阻害剤(例えば、A83-01)を含む。この培養培地は、任意で、1種または複数種のWntアゴニスト(例えば、Lgr5アゴニスト)をさらに含む。これらの培地は、全組織、例えば、腸、胃、膵臓、肝臓、前立腺、および乳房に適している。これらの培地が適している、さらなる例示的な組織は肺である。 一部の態様において、本発明の培養培地は、以下のさらなる成分:(i)FGF7および/またはFGF10、(ii)Noggin、ならびに(iii)Lgr5アゴニストを含む。一部の態様において、本発明の培養培地は、以下のさらなる成分:(i)FGF7および/またはFGF10、(ii)Noggin、(iii)Lgr5アゴニスト、ならびに(iii)1種または複数種のさらなる受容体型チロシンキナーゼリガンド(例えば、EGF)を含む。これは、乳房幹細胞を培養するのに特に適しているが、これに限定されない培養培地である。 一部の態様において、本発明の培養培地は、ErbB3/4リガンド(例えば、ヒトニューレグリンβ-1)、EGF、FGF(例えば、FGF10)、HGF、TGF-β阻害剤(例えば、A83-01)、ニコチンアミド、1種または複数種のWntアゴニスト(例えば、Lgr5アゴニスト)、cAMP経路アクチベーター(例えば、フォルスコリン)、およびガストリンを含む。この培養培地は、任意で、(i)BMP阻害剤(例えば、Noggin)、Wntアゴニスト(例えば、Wnt条件培地)、およびRock阻害剤(例えば、Y27632)、または(ii)BMPアクチベーター(例えば、BMP7)をさらに含む。これらの培養培地は、肝臓幹細胞を培養するのに特に適しているが、これに限定されない。 一部の態様において、本発明の培養培地は、ErbB3/4リガンド(例えば、ヒトニューレグリンβ-1)、1種または複数種の受容体型チロシンキナーゼリガンド(例えば、EGF)、BMP阻害剤(例えば、Noggin)、および1種または複数種のWntアゴニスト(例えば、Lgr5アゴニスト)を含む。この培養培地は任意でテストステロンをさらに含む。これらの培養培地は、前立腺幹細胞を培養するのに特に適しているが、これに限定されない。 一部の態様において、本発明の培養培地は、p38 MAPキナーゼ阻害剤(例えば、SB202190)、ガストリン、および/またはニコチンアミドより選択される1種または複数種の成分をさらに含む。 一部の態様において、本発明の培養培地はRock阻害剤(例えば、Y27632)をさらに含む。Rock阻害剤の添加は、培養を開始または分割するのに有用なことが観察されている。 一部の態様において、本発明の培養培地はB27および/またはN-アセチルシステインをさらに含む。これらのさらなる成分は、多くの場合、基本培地の成分として培養培地に加えられる。 一部の態様において、本発明の培養培地は、ErbB3/4リガンド、Lgr5アゴニスト、BMP阻害剤(例えば、Noggin)、B27、N-アセチルシステイン、ニコチンアミド、ROCK阻害剤、TGF-β阻害剤(例えば、A83-01)、p38 MAPキナーゼ阻害剤(例えば、SB202190)、FGF7、およびFGF10を含み、任意で、1種または複数種のさらなる受容体型チロシンキナーゼリガンド(例えば、EGF、アンフィレギュリン、TGF-α、PDGF)、p53安定化剤、およびWntアゴニスト(例えば、Wnt3a)より選択される1種または複数種のさらなる成分を含む。 一部の態様において、本発明の培養培地は、(i)ErbB3/4リガンド(例えば、ヒトニューレグリンβ-1)、(ii)1種または複数種の受容体型チロシンキナーゼリガンド(例えば、EGFおよび/またはHGF)、(iii)BMP阻害剤(例えば、Noggin)、ならびに(iv)TGFβ阻害剤(例えば、A83-01)、p38阻害剤(例えば、SB202190)、および/またはRock阻害剤(例えば、Y-27632)を含み、任意で、1種もしくは複数種のWntアゴニスト(例えば、Lgr5アゴニスト)をさらに含む。 一部の態様において、培養培地は、(i)ガストリンおよび/もしくはニコチンアミド、(ii)Notch阻害剤(例えば、DAPTおよび/もしくはDBZ)、ならびに/または(iii)プロスタグランジン経路アクチベーター(例えば、PGE2および/もしくはAA)をさらに含む。例えば、一部の態様において、本発明の培養培地は、(i)ErbB3/4リガンド(例えば、ヒトニューレグリンβ-1)、(ii)1種または複数種の受容体型チロシンキナーゼリガンド(例えば、EGFおよび/またはHGF)、(iii)BMP阻害剤(例えば、Noggin)、ならびに(iv)ガストリン、ニコチンアミド、Notch阻害剤(例えば、DAPTおよび/もしくはDBZ)、ならびに/またはプロスタグランジン経路アクチベーター(例えば、PGE2および/もしくはAA)を含む。 一部の態様において、培養培地は、cAMP経路アクチベーター(例えば、フォルスコリン)および/またはBMP経路アクチベーター(例えば、BMP7)をさらに含む。一部の態様において、培養培地はBMP経路アクチベーター(例えば、BMP7)を含み、BMP経路阻害剤(例えば、Noggin)を含まない。これらの培養培地は、肝臓幹細胞または膵臓幹細胞を培養するのに特に適しているが、これに限定されない。 一部の態様において、1種もしくは複数種の受容体型チロシンキナーゼリガンドは、EGFならびに/または1種もしくは複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、もしくは4種類を超える)FGFR2bリガンド、例えば、FGF7および/もしくはFGF10である。 一部の態様において、BMP阻害剤はNogginである。 一部の態様において、1種もしくは複数種のWntアゴニストは、Lgr5アゴニスト、Lgr4アゴニスト、Lgr6アゴニスト、またはWnt3aである。一部の態様において、Lgr5アゴニストはRスポンジン、例えば、Rスポンジン1〜4のいずれか1つである。 ヒト上皮幹細胞を培養する時に、Wnt3aが培養培地に有利に加えられてもよい。 以前に述べたように、本発明のどの培養培地についても、癌細胞のために、ある特定の成分を除外することができる。 本発明の組織特異的培養培地 本発明の培養培地の一例が本明細書の実施例において説明される。本発明の培養培地は、例えば、下記のように、ならびにWO2010/090513、WO2012/014076、およびWO2012/168930に記載のように様々な組織と使用するのに合わせることができる。 乳房培養培地 上皮幹細胞を培養するための公知の方法は、乳房組織に由来する上皮幹細胞または組織断片の長期培養を支持できないことが見出されている。 正常乳房組織に由来する上皮幹細胞を培養するための培養系は、Pasic et al. (2011) Genes & Development 25: 1641-1653に記載されている。しかしながら、この系は乳房オルガノイドの長期培養を支持することができない。この系を用いた培養は2〜3継代後に増殖停止することが観察されている。従って、この技法を用いて多数の幹細胞を入手することは不可能である。 乳癌患者に由来する循環腫瘍細胞を培養するための培養系は、Yu et al. (2014) Science 345(6193): 216-220に記載されている。しかしながら、この論文の著者らは、正常乳房組織、原発性腫瘍、または転移から入手した乳房上皮幹細胞の培養についての指示を与えなかった。さらに、Yuらの系を用いて培養された循環乳房腫瘍細胞は細胞凝集物を形成する。 従って、長期培養を可能にする、正常乳房組織、原発性腫瘍、または転移から入手した乳房上皮幹細胞を培養するための培養培地および方法も必要とされている。乳房腫瘍によく似た乳房オルガノイドの形成を可能にする、循環している乳房腫瘍細胞を培養するための培養培地および方法も必要とされている。 本発明者らは、驚いたことに、ErbB3/4リガンドを培養培地に添加すると、ErbB3/4リガンドが培地に無い時と比較して増加した継代数で乳房上皮幹細胞を培養することが可能になることを発見した。 従って、一部の態様において、乳房上皮幹細胞用の培養培地は基本培地、例えば、前記の基本培地を含むか、または基本培地、例えば、前記の基本培地からなり、ErbB3/4リガンド、例えば、ヒトニューレグリンβ-1をさらに含む。 一部の態様において、本発明の培養培地は、以下のさらなる成分:(i)FGF7および/またはFGF10ならびに(ii)Rスポンジンを含む。一部の態様において、本発明の培養培地は、以下のさらなる成分:(i)FGF7および/またはFGF10、(ii)Rスポンジン、ならびに(iii)1種または複数種のさらなる受容体型チロシンキナーゼリガンドを含む。 一部の態様において、本発明の培養培地は、BMP阻害剤(例えば、Noggin)、B27、N-アセチルシステイン、ニコチンアミド、ROCK阻害剤、TGF-β阻害剤(例えば、A83-01)、p38 MAPキナーゼ阻害剤(例えば、SB202190)より選択される1種または複数種の成分をさらに含む。 一部の態様において、本発明の培養培地は、ErbB3/4リガンド、Rスポンジン、BMP阻害剤(例えば、Noggin)、B27、N-アセチルシステイン、ニコチンアミド、ROCK阻害剤、TGF-β阻害剤(例えば、A83-01)、p38 MAPキナーゼ阻害剤(例えば、SB202190)、FGF7、およびFGF10を含み、任意で、1種または複数種のさらなる受容体型チロシンキナーゼリガンド(例えば、EGF、アンフィレギュリン、TGF-α、PDGF)、p53安定化剤、およびWntアゴニスト(例えば、Wnt3a)より選択される1種または複数種のさらなる成分を含む。 一部の態様において、乳房上皮幹細胞用の培養培地は、組換えヒトニューレグリンβ-1、Rスポンジン(例えば、Rスポンジン1)、Noggin、B27、N-アセチルシステイン、ニコチンアミド、ROCK1、2阻害剤(例えば、Y-27632)、ALK4、5、7阻害剤(例えば、A83-01)、p38 MAPキナーゼ阻害剤(例えば、SB202190)、FGF7、およびFGF10を含む。一部の態様において、培養培地は、(i)PDGF-CC、(ii)EGF、または(iii)アンフィレギュリン、TGF-α、およびEGFをさらに含む。 一部の態様において、培養培地はプロゲスチンを含む。他の態様において、培養培地はプロゲスチンを含まない。 一部の態様において、培養培地はエストラジオールを含む。他の態様において、培養培地はエストラジオールを含まない。 一部の態様において、培養培地は肝細胞成長因子を含む。他の態様において、培養培地は肝細胞成長因子を含まない。 一部の態様において、培養培地は核内因子κ-B活性化受容体リガンド(RANKL)を含む。他の態様において、培養培地はRANKLを含まない。 肺培養培地 上皮幹細胞を培養するための公知の方法は、ヒト肺組織に由来する上皮幹細胞または組織断片の長期培養を支持できないことが見出されている。 Oeztuerk-Winder et al. (2012) EMBO 31: 3431-3441は、正常肺組織からのヒト肺胞E-Cad/Lgr6多能性集団の単離および特徴付けについて述べている。この研究では、ヒト肺前駆細胞は、EGFおよびFGF2を含む培地中で培養された。 Lee et al. (2014) Cell 156: 440-455は、マウスから入手した内皮細胞および気管支肺胞上皮幹細胞(BASC)の三次元共培養について述べている。培養培地に様々な成長因子(例えば、BMP4)を添加した効果が試験された。 Zuo et al. (2015) Nature 517: 616-620は、マウスから入手した気管気管支(tracheobronchiolar)幹細胞(TBSC)および遠位気道幹細胞(DASC)の単離および培養について述べている。遠位気道分化を支持するために、FGF10が培養培地に含まれた。近位気道分化を支持するために、FGF10を除いて、レチノイン酸が培養培地に含まれた。 Vaughan et al.(2015) Nature 517: 621-625は、マトリゲル(商標)上でのマウス初代肺上皮細胞の単離および培養について述べている。細胞は、FBSおよびKGF(FGF7)が添加された「ベースライン」培地中で維持された。Vaughanらはまた、ROCK阻害剤(Y-27362)およびNoggin(BMP阻害剤)が添加された培養培地中でマウス初代細胞が維持される方法についても述べている。様々な個々の成長因子(例えば、FGF10)を添加する効果も試験された。結果は、補足の表2に示された。 Hynds and Giangreco et al. (2013) Stem Cells 31(3): 417-422は、上皮トランスレーショナル医療のための、いくつかのヒト幹細胞由来オルガノイドモデルについて述べている。この総説は、気道オルガノイド形成の効率を改善し、3Dオルガノイド分化を担う細胞タイプをさらによく特徴付けるには、さらなる研究が必要なことを強調している。 長期培養を可能にする、正常肺組織、原発性腫瘍、または転移から入手した肺上皮幹細胞を培養するための培養培地および方法が必要とされている。肺腫瘍によく似た肺オルガノイドの形成を可能にする、肺腫瘍細胞を培養するための培養培地および方法も必要とされている。さらに、成功したオルガノイド形成の効率を高める、正常組織または癌組織から入手した肺上皮幹細胞を培養するための培養培地および方法が必要とされている。 本発明者らは、予想に反して、FGFR2bリガンドを培養培地に添加すると、FGFR2bリガンドが培地に無い時と比較して増加した継代数で、肺組織に由来する上皮幹細胞を培養することが可能になることを発見した。 本発明者らはまた、予想に反して、ErbB3/4リガンドを添加すると、ErbB3/4リガンドが培地に無い時と比較して高い効率で肺オルガノイド培養を開始することが可能になることも発見した。従って、ErbB3/4リガンドを培養培地に添加すると、ErbB3/4リガンドなしで獲得できるものより高い割合の接種において、成功したオルガノイドの集団を確立することができる。 従って、1種または複数種のFGFR2bリガンドが加えられた、動物細胞用またはヒト細胞用の基本培地を含む培養培地の存在下で、1つまたは複数の肺上皮幹細胞を細胞外マトリックスと接触させて培養する工程を含む、肺上皮幹細胞を培養するための方法が提供される。一部の態様において、培養培地は1種または複数種のErbB3/4リガンドをさらに含む。 従って、1種または複数種のErbB3/4リガンドが加えられた、動物細胞用またはヒト細胞用の基本培地を含む培養培地の存在下で、1つまたは複数の肺上皮幹細胞を細胞外マトリックスと接触させて培養する工程を含む、肺上皮幹細胞を培養するための方法が提供される。一部の態様において、培養培地は1種または複数種のFGFR2bリガンドをさらに含む。 従って、1種または複数種のFGFR2bリガンドが加えられた、動物細胞用またはヒト細胞用の基本培地を含む培養培地が提供される。一部の態様において、培養培地は1種または複数種のErbB3/4リガンドをさらに含む。 従って、1種または複数種のErbB3/4リガンドが加えられた、動物細胞用またはヒト細胞用の基本培地を含む培養培地が提供される。一部の態様において、培養培地は1種または複数種のFGFR2bリガンドをさらに含む。 従って、例えば、前記の方法において使用するための、1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)FGFR2bリガンドが加えられた、動物細胞用またはヒト細胞用の基本培地を含む培養培地であって、好ましくは、1種または複数種のFGFR2bリガンドがFGF7および/またはFGF10である、培養培地も提供される。 従って、例えば、前記の方法において使用するための、1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)ErbB3/4リガンドおよび1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)FGFR2bリガンドが加えられた、動物細胞用またはヒト細胞用の基本培地を含む培養培地であって、好ましくは、1種または複数種のFGFR2bリガンドがFGF7および/またはFGF10である、培養培地も提供される。 従って、例えば、前記の方法において使用するための、1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)FGFR2bリガンド、1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)ErbB3/4リガンド、および1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)BMP阻害剤が加えられた、動物細胞用またはヒト細胞用の基本培地を含む培養培地も提供される。 従って、例えば、前記の方法において使用するための、1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)FGFR2bリガンド、1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)ErbB3/4リガンド、および1種もしくは複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)Wntアゴニストが加えられた、動物細胞用またはヒト細胞用の基本培地を含む培養培地も提供される。 従って、例えば、前記の方法において使用するための、1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)FGFR2bリガンド、1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)ErbB3/4リガンド、1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)BMP阻害剤、および1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)Wntアゴニストが加えられた、動物細胞用またはヒト細胞用の基本培地を含む培養培地も提供される。 一部の態様において、1種または複数種のBMP阻害剤はNogginである。 一部の態様において、1種もしくは複数種のWntアゴニストは、Lgr5アゴニスト、Lgr4アゴニスト、Lgr6アゴニスト、またはWnt3aである。一部の態様において、Lgr5アゴニストは、Rスポンジン、例えば、Rスポンジン1〜4のいずれか1つである。 一部の態様において、本発明の培養培地は、1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)ErbB3/4リガンド、1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)FGFR2bリガンド、および1種もしくは複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)Wntアゴニストが加えられた、動物細胞用またはヒト細胞用の基本培地であって、好ましくは、1種または複数種のFGFR2bリガンドがFGF7および/またはFGF10であり、好ましくは、1種もしくは複数種のWntアゴニストがLgr5アゴニストであり、好ましくは、Lgr5アゴニストが、Rスポンジン、例えば、Rスポンジン1〜4のいずれか1つである、基本培地を含む。 一部の態様において、本発明の培養培地または本発明の方法において用いられる培養培地は、Lgr5アゴニスト(例えば、Rスポンジン、例えば、Rスポンジン1〜4のいずれか1つ)、BMP阻害剤(例えば、Noggin)、B27、N-アセチルシステイン、ニコチンアミド、TGF-β阻害剤(例えば、ALK4、5、7阻害剤、例えば、A83-01)、およびp38 MAPキナーゼ阻害剤(例えば、SB202190)より選択される1種または複数種のさらなる成分を含む。一部の態様において、培養培地は、これらのさらなる成分の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ)をさらに含む。一部の態様において、培養培地は、これらのさらなる成分の全てをさらに含む。 一部の態様において、培養培地はROCK阻害剤をさらに含む。 一部の態様において、培養培地は、さらなる受容体型チロシンキナーゼリガンド、例えば、EGF、アンフィレギュリン、またはTGF-αをさらに含む。一部の態様において、培養培地は、EGF、アンフィレギュリン、またはTGF-αをさらに含む。 従って、本発明は、肺上皮幹細胞を培養するためのFGFR2bリガンドの使用を提供する。従って、本発明は、肺上皮幹細胞を培養するためのErbB3/4リガンドの使用を提供する。 一部の態様において、本発明の培養培地は、EGF(例えば、5〜50μg/mlの最終濃度)、Noggin(例えば、Noggin条件培地、例えば、100ng/mlの最終濃度)、Rスポンジン(例えば、Rspo条件培地)、FGF7(例えば、25〜50ng/mlの最終濃度)、およびFGF10(例えば、100ng/mlの最終濃度)を含む。一部の態様において、培養培地は、ROCK1、2阻害剤(例えば、Y-27632、例えば、10μMの最終濃度)をさらに含む。ROCK1、2阻害剤は、最初の数日、例えば、1個の細胞の播種後またはスプリット後、最初の1日、2日、3日、4日、5日、6日、または7日の培養の間、培地に含まれてもよい。 一部の態様において、本発明の培養培地は、EGF(例えば、5〜50μg/mlの最終濃度)、Noggin(例えば、Noggin条件培地、例えば、100ng/mlの最終濃度)、Rスポンジン(例えば、Rspo条件培地)、FGF7(例えば、25〜50ng/mlの最終濃度)、FGF10(例えば、100ng/mlの最終濃度)、B27、N-アセチルシステイン(例えば、500mMの最終濃度)、およびROCK1、2阻害剤(例えば、Y-27632、例えば、10μMの最終濃度)を含む。一部の態様において、培養培地は、ALK4、5、7阻害剤(例えば、A83-01)およびp38 MAPキナーゼ阻害剤(例えば、SB202190)をさらに含む。一部の態様において、培養培地は、ErbB3/4リガンド(例えば、組換えヒトニューレグリンβ-1)および/またはp53安定化剤(例えば、Nutlin-3)をさらに含む。 一部の態様において、本発明の培養培地は、組換えヒトニューレグリンβ-1、Rスポンジン(例えば、Rスポンジン1)、Noggin、B27、N-アセチルシステイン、ニコチンアミド、ROCK1、2阻害剤(例えば、Y-27632)、ALK4、5、7阻害剤(例えば、A83-01)、p38 MAPキナーゼ阻害剤(例えば、SB202190)、FGF7、およびFGF10を含む。 一部の態様において、本発明の培養培地は、組換えヒトニューレグリンβ-1、Rスポンジン(例えば、Rスポンジン1)、Noggin、B27、N-アセチルシステイン、ニコチンアミド、ROCK1、2阻害剤(例えば、Y-27632)、ALK4、5、7阻害剤(例えば、A83-01)、p38 MAPキナーゼ阻害剤(例えば、SB202190)、FGF7、FGF10、およびアンフィレギュリンまたはTGF-αを含む。 一部の態様において、本発明の培養培地は、組換えヒトニューレグリンβ-1、Rスポンジン(例えば、Rスポンジン1)、Noggin、B27、N-アセチルシステイン、ニコチンアミド、ROCK1、2阻害剤(例えば、Y-27632)、ALK4、5、7阻害剤(例えば、A83-01)、p38 MAPキナーゼ阻害剤(例えば、SB202190)、FGF7、FGF10、およびEGFを含む。 一部の態様において、本発明の培養培地は、組換えヒトニューレグリンβ-1、Rスポンジン(例えば、Rスポンジン1)、Noggin、B27、N-アセチルシステイン、ニコチンアミド、ROCK1、2阻害剤(例えば、Y-27632)、ALK4、5、7阻害剤(例えば、A83-01)、p38 MAPキナーゼ阻害剤(例えば、SB202190)、FGF7、FGF10、アンフィレギュリン、TGF-α、およびEGFを含む。 一部の態様において、本発明の培養培地は、ErbB3/4リガンド、Lgr5アゴニスト、BMP阻害剤(例えば、Noggin)、TGF-β阻害剤(例えば、A83-01)、p38 MAPキナーゼ阻害剤(例えば、SB202190)、FGF7、およびFGF10を含み、任意で、B27、N-アセチルシステイン、ニコチンアミド、ROCK阻害剤、1種または複数種のさらなる受容体型チロシンキナーゼリガンド(例えば、EGF、アンフィレギュリン、TGF-α、PDGF)、p53安定化剤、およびWntアゴニスト(例えば、Wnt3a)より選択される1種または複数種のさらなる成分を含む。 一部の態様において、本発明の培養培地は、ErbB3/4リガンド、Rスポンジン、BMP阻害剤(例えば、Noggin)、B27、N-アセチルシステイン、ニコチンアミド、ROCK阻害剤、TGF-β阻害剤(例えば、A83-01)、p38 MAPキナーゼ阻害剤(例えば、SB202190)、FGF7、およびFGF10を含み、任意で、1種または複数種のさらなる受容体型チロシンキナーゼリガンド(例えば、EGF、アンフィレギュリン、TGF-α、PDGF)、p53安定化剤、およびWntアゴニスト(例えば、Wnt3a)より選択される1種または複数種のさらなる成分を含む。 好ましくは、「肺培養培地」という見出しで説明される培養培地は、肺オルガノイドを培養するために用いられる。 本発明はまた、少なくとも1種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)ErbB3/4リガンドおよび少なくとも1種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類の、または4種類を超える)FGFR2bリガンドが加えられた、WO2012/168930、WO2010/090513、またはWO2012/014076に記載の増殖培地を使用する、肺上皮幹細胞を培養するための方法も提供する。 肺幹細胞の培養中に、好ましくは、1種または複数種のFGFR2bリガンド(例えば、FGF10およびFGF7)が、必要な時に、例えば、毎日または1日おきに培養培地に加えられる。これらは単独で加えられてもよく、組み合わせて加えられてもよい。これらは3日ごとに加えられることが好ましい。FGFR2bリガンドに加えて、細胞培養培地は、一般的に、培養細胞の維持および/または増殖を支持するのに必要な多数の成分を含有する。 従って、本発明の細胞培養培地は、通常、FGFR2bリガンドに加えて他の多くの成分を含有する。成分の適切な組み合わせは、本明細書における開示を考慮に入れて当業者により容易に処方することができる。本発明による培養培地は、一般的に、標準的な細胞培養成分、例えば、下記でさらに詳細に説明されるようなアミノ酸、ビタミン、無機塩、炭素エネルギー源、および緩衝液を含む栄養溶液である。培養に含まれ得る他の標準的な細胞培養成分には、ホルモン、例えば、プロゲステロン、タンパク質、例えば、アルブミン、カタラーゼ、インシュリン、およびトランスフェリンが含まれる。これらの他の標準的な細胞培養成分は「基本」培養培地を構成する。 一部の態様において、培養培地にはBMP4および/またはトロンボスポンジン-1が添加される。 一部の態様において、培養培地には、以下:BMP4、トロンボスポンジン-1、TGFβ、cAMP経路アクチベーター(例えば、アデニリルシクラーゼアクチベーター、例えば、フォルスコリン)、HGF、レチノイン酸、および葉酸の1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、または全て)が添加される。 一部の態様において、BMP4は培養培地に存在しない。一部の態様において、トロンボスポンジン-1は培養培地に存在しない。一部の態様において、TGFβは培養培地に存在しない。一部の態様において、cAMP経路アクチベーター(例えば、アデニリルシクラーゼアクチベーター、例えば、フォルスコリン)は培養培地に存在しない。一部の態様において、HGFは培養培地に存在しない。一部の態様において、レチノイン酸は培養培地に存在しない。一部の態様において、葉酸は培養培地に存在しない。 一部の態様において、培養培地には、以下:BMP4、トロンボスポンジン-1、TGFβ、cAMP経路アクチベーター(例えば、アデニリルシクラーゼアクチベーター、例えば、フォルスコリン)、HGF、レチノイン酸、および葉酸の1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、または全て)が存在しない。 一部の態様において、本発明の培養培地は成体肺幹細胞を培養するのに適している。一部の態様において、本発明の培養培地は肺オルガノイドを入手するのに適している。一部の態様において、本発明の培養培地は、ヒト肺幹細胞集団を少なくとも4継代、5継代、6継代、7継代、8継代、9継代、10継代、11継代、12継代、13継代、14継代、15継代、16継代にわたって、または16継代を超えて増殖させるのに適している。一部の態様において、本発明の培養培地は、マウス肺幹細胞集団を少なくとも4継代、5継代、6継代、7継代、8継代、9継代、10継代、11継代、12継代、13継代、14継代、15継代、16継代、17継代、18継代、19継代、20継代、21継代、22継代、23継代、24継代、25継代、26継代、27継代、28継代、29継代、30継代、31継代、32継代、33継代、34継代、35継代、36継代、37継代にわたって、または37継代を超えて増殖させるのに適している。 従って、本発明は、ヒト肺幹細胞集団を少なくとも4継代、5継代、6継代、7継代、8継代、9継代、10継代、11継代、12継代、13継代、14継代にわたって、または14継代を超えて増殖させるのに適した、1種または複数種のFGFR2bリガンドを含む本明細書に記載の培養培地を提供する。 従って、本発明は、マウス肺幹細胞集団を少なくとも4継代、5継代、6継代、7継代、8継代、9継代、10継代、11継代、12継代、13継代、14継代、15継代、16継代、17継代、18継代、19継代、20継代、21継代、22継代、23継代、24継代、25継代、26継代、27継代、28継代、29継代、30継代、31継代、32継代、33継代、34継代、35継代、36継代、37継代にわたって、または37継代を超えて増殖させるのに適した、1種または複数種のFGFR2bリガンドを含む本明細書に記載の培養培地を提供する。 一部の態様において、本発明の培養培地は、接種の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%において、成功した肺オルガノイドの集団を確立するのに適している。好ましい態様において、培養培地は1種または複数種のErbB3/4リガンドを含む。成功した肺オルガノイドは、本明細書では、少なくとも4回継代することができるオルガノイドと定義される。 従って、本発明は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%の効率で、成功したオルガノイドの集団を確立するのに適した、1種または複数種のFGFR2bリガンド(例えば、FGF7および/またはFGF10)ならびに1種または複数種のErbB3/4リガンドを含む培養培地を提供する。 p53安定化剤を含む例示的な培養培地 前記のように、本発明は、p53安定化剤を含む培養培地を提供する。本発明者らは、p53安定化剤を培養培地に添加すると、細胞集団が主に腫瘍細胞になることを確かなものにできることを発見した。 一部の態様において、本発明の培養培地は、p53安定化剤(例えば、Nutlin-3)、1種もしくは複数種の受容体型チロシンキナーゼリガンド(例えば、EGFおよび/またはHGF)、ならびにBMP阻害剤(例えば、Noggin)を含む。 一部の態様において、本発明の培養培地は、p53安定化剤(例えば、Nutlin-3)、1種もしくは複数種の受容体型チロシンキナーゼリガンド(例えば、EGFおよび/またはHGF)、BMP阻害剤(例えば、Noggin)、ならびにTGF-β阻害剤(例えば、A83-01)を含む。この培養培地は、任意で、1種もしくは複数種のWntアゴニスト(例えば、Lgr5アゴニスト)をさらに含む。これらの培地は、全組織、例えば、腸、胃、膵臓、肝臓、前立腺、および乳房に由来する癌細胞を培養するのに適している。癌細胞が得られる可能性があり、かつこれらの培地が適している、さらに例示的な組織は肺である。 一部の態様において、本発明の培養培地は、以下のさらなる成分:(i)FGF7および/またはFGF10、(ii)Noggin、ならびに(iii)Lgr5アゴニストを含む。一部の態様において、本発明の培養培地は、以下のさらなる成分:(i)FGF7および/またはFGF10、(ii)Noggin、(iii)Lgr5アゴニスト、ならびに(iii)1種または複数種のさらなる受容体型チロシンキナーゼリガンド(例えば、EGF)を含む。これは、乳癌幹細胞を培養するのに特に適しているが、これに限定されない培養培地である。 一部の態様において、本発明の培養培地は、p53安定化剤(例えば、Nutlin-3)、EGF、FGF(例えば、FGF10)、HGF、TGF-β阻害剤(例えば、A83-01)、ニコチンアミド、1種または複数種のWntアゴニスト(例えば、Lgr5アゴニスト)、cAMP経路アクチベーター(例えば、フォルスコリン)、およびガストリンを含む。この培養培地は、任意で、(i)BMP阻害剤(例えば、Noggin)、Wntアゴニスト(例えば、Wnt条件培地)、およびRock阻害剤(例えば、Y27632)、または(ii)BMPアクチベーター(例えば、BMP7)をさらに含む。これらの培養培地は、肝臓癌幹細胞を培養するのに特に適しているが、これに限定されない。 一部の態様において、本発明の培養培地は、p53安定化剤(例えば、Nutlin-3)、1種または複数種の受容体型チロシンキナーゼリガンド(例えば、EGF)、BMP阻害剤(例えば、Noggin)、および1種または複数種のWntアゴニスト(例えば、Lgr5アゴニスト)を含む。この培養培地は任意でテストステロンをさらに含む。これらの培養培地は、前立腺癌幹細胞を培養するのに特に適しているが、これに限定されない。 一部の態様において、本発明の培養培地は、p38 MAPキナーゼ阻害剤(例えば、SB202190)、ガストリン、および/またはニコチンアミドより選択される1種または複数種の成分をさらに含む。 一部の態様において、本発明の培養培地はRock阻害剤(例えば、Y27632)をさらに含む。Rock阻害剤の添加は、培養を開始または分割するのに有用なことが観察されている。 一部の態様において、本発明の培養培地はB27および/またはN-アセチルシステインをさらに含む。これらのさらなる成分は、多くの場合、基本培地の成分として培養培地に加えられる。 一部の態様において、本発明の培養培地は、p53安定化剤(例えば、Nutlin-3)、Lgr5アゴニスト、BMP阻害剤(例えば、Noggin)、B27、N-アセチルシステイン、ニコチンアミド、ROCK阻害剤、TGF-β阻害剤(例えば、A83-01)、p38 MAPキナーゼ阻害剤(例えば、SB202190)、FGF7、およびFGF10を含み、任意で、1種または複数種のさらなる受容体型チロシンキナーゼリガンド(例えば、EGF、アンフィレギュリン、TGF-α、PDGF)およびWntアゴニスト(例えば、Wnt3a)より選択される1種または複数種のさらなる成分を含む。 一部の態様において、本発明の培養培地は、(i)p53安定化剤(例えば、Nutlin-3)、(ii)1種もしくは複数種の受容体型チロシンキナーゼリガンド(例えば、EGFおよび/もしくはHGF)、(iii)BMP阻害剤(例えば、Noggin)、ならびに(iv)TGFβ阻害剤(例えば、A83-01)、p38阻害剤(例えば、SB202190)、および/もしくはRock阻害剤(例えば、Y-27632)を含み、任意で、1種もしくは複数種のWntアゴニスト(例えば、Lgr5アゴニスト)をさらに含む。 一部の態様において、培養培地は、(i)ガストリンおよび/もしくはニコチンアミド、(ii)Notch阻害剤(例えば、DAPTおよび/もしくはDBZ)、ならびに/または(iii)プロスタグランジン経路アクチベーター(例えば、PGE2および/もしくはAA)をさらに含む。例えば、一部の態様において、本発明の培養培地は、(i)p53安定化剤(例えば、Nutlin-3)、(ii)1種もしくは複数種の受容体型チロシンキナーゼリガンド(例えば、EGFおよび/もしくはHGF)、(iii)BMP阻害剤(例えば、Noggin)、ならびに(iv)ガストリン、ニコチンアミド、Notch阻害剤(例えば、DAPTおよび/もしくはDBZ)ならびに/またはプロスタグランジン経路アクチベーター(例えば、PGE2および/もしくはAA)を含む。 一部の態様において、培養培地は、cAMP経路アクチベーター(例えば、フォルスコリン)および/またはBMP経路アクチベーター(例えば、BMP7)をさらに含む。一部の態様において、培養培地はBMP経路アクチベーター(例えば、BMP7)を含み、BMP経路阻害剤(例えば、Noggin)を含まない。これらの培養培地は、肝臓癌幹細胞または膵臓癌幹細胞を培養するのに特に適しているが、これに限定されない。 一部の態様において、1種もしくは複数種の受容体型チロシンキナーゼリガンドは、EGF、および/または1種もしくは複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類、4種類、もしくは4種類より多い)FGFR2bリガンド、例えば、FGF7および/またはFGF10である。 一部の態様において、BMP阻害剤はNogginである。 一部の態様において、1種もしくは複数種のWntアゴニストは、Lgr5アゴニスト、Lgr4アゴニスト、Lgr6アゴニスト、またはWnt3aである。一部の態様において、Lgr5アゴニストは、Rスポンジン、例えば、Rスポンジン1〜4のいずれか1つである。 以前に述べたように、本発明のどの培養培地についても、癌細胞のために、ある特定の成分を除外することができる。 好ましいp53安定化剤は、Nutlinファミリーのメンバー、例えば、Nutlin-1、Nutlin-2、またはNutlin-3である。例えば、一部の態様において、p53安定化剤はNutlin-3である。他のp53安定化剤は当技術分野において公知であり(例えば、CP-31398)、従って、当業者は、これらを使用できるだろう。一部の態様において、p53安定化剤を含む培養培地(例えば、前記の培養培地の1つ)はErbB3/4リガンド(例えば、ヒトニューレグリンβ-1)をさらに含む。 細胞外マトリックス 前記のように、上皮幹細胞を培養するための方法は、1つまたは複数の上皮幹細胞を細胞外マトリックスと接触させて培養する工程を含む。任意の適切な細胞外マトリックスを使用することができる。単離された上皮幹細胞は、好ましくは、前記幹細胞が天然に存在する細胞ニッチを少なくとも部分的に模倣する微小環境において培養される。この細胞ニッチは、生体材料、例えば、幹細胞運命を制御する重要な調節シグナルを供給する細胞外マトリックスの存在下で、前記幹細胞を培養することによって摸倣されてもよい。 細胞ニッチは、一つには、幹細胞および周囲細胞、ならびに前記ニッチにある細胞が産生する細胞外マトリックス(ECM)によって決定される。好ましい本発明の方法では、上皮幹細胞はECMと接触して培養される。「接触して」とは物理的または機械的または化学的な接触を意味する。物理的または機械的または化学的な接触とは、前記の結果として生じたオルガノイドまたは上皮幹細胞集団を前記の細胞外マトリックスから分離するために力が用いられる必要があることを意味する。好ましくは、上皮幹細胞はECMの中に埋め込まれる。 本発明の培養培地は細胞外マトリックス(ECM)の中に拡散されてもよい。好ましい本発明の方法では、単離された組織断片または単離された上皮幹細胞はECMに取り付けられる。ECMは様々な多糖、水、エラスチン、および糖タンパク質で構成され、糖タンパク質は、コラーゲン、エンタクチン(ナイドジェン)、フィブロネクチン、およびラミニンを含む。ECMは、上皮細胞、内皮細胞、壁(parietal)内胚葉様細胞(例えば、Hayashi et al. (2004) Matrix Biology 23:47-62に記載のEnglebreth-Holm-Swarm壁内胚葉様細胞)、および結合組織細胞によって分泌される。様々なタイプの糖タンパク質および/または糖タンパク質の様々な組み合わせを含む様々な組成物を含む、様々なタイプのECMが公知である。前記ECMは、入れ物の中でECM産生細胞、例えば、上皮細胞、内皮細胞、壁内胚葉様細胞、または線維芽細胞を培養した後に、これらの細胞を取り出し、単離された組織断片または単離された上皮幹細胞を添加することによって提供することができる。細胞外マトリックス産生細胞の例は、主にコラーゲンおよびプロテオグリカンを産生する軟骨細胞、主にIV型コラーゲン、ラミニン、間質プロコラーゲン、およびフィブロネクチンを産生する線維芽細胞、ならびに主にコラーゲン(I型、III型、およびV型)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、ヒアルロン酸、フィブロネクチン、およびテネイシン-Cを産生する結腸筋線維芽細胞である。または、前記ECMは商業的に供給されている。市販の細胞外マトリックスの例は、細胞外マトリックスタンパク質(Invitrogen)、Engelbreth-Holm-Swarm(EHS)マウス肉腫細胞からの基底膜調製物(例えば、Cultrex(登録商標)Basement Membrane Extract(Trevigen, Inc.)、またはマトリゲル(商標)(BD Biosciences))である。合成細胞外マトリックス材料、例えば、ProNectin(Sigma Z378666)が用いられてもよい。所望であれば、細胞外マトリックス材料の混合物が用いられてもよい。幹細胞を培養するためにECMを使用すると、幹細胞の長期生存が延長し、未分化幹細胞の継続的な存在が強化された。ECMの非存在下では、幹細胞培養物は長期間培養することができず、未分化幹細胞の継続的な存在は観察されなかった。さらに、ECMが存在すると、ECMの非存在下では培養することができない三次元組織オルガノイドを培養することができた。細胞外マトリックス材料は、通常、細胞が懸濁されたディッシュの底に沈んでいる。典型的に、マトリックスが37℃で凝固する時に、培地が加えられ、ECMの中に拡散する。培地中の細胞は、ECMの表面構造と相互作用することによって、例えば、インテグリンと相互作用することによってECMに固着する。 本発明の方法において使用するためのECMの一例は、少なくとも1種の糖タンパク質、例えば、ラミニンを含む。 本発明の方法において使用するための好ましいECMは、少なくとも2つの異なる糖タンパク質、例えば、2つの異なるタイプのコラーゲン、またはコラーゲンおよびラミニンを含む。ECMは合成ヒドロゲル細胞外マトリックスでもよく、天然ECMでもよい。さらに好ましいECMは、ラミニン、エンタクチン、およびコラーゲンIVを含む。さらに好ましいECMは、ラミニン、エンタクチン、およびコラーゲンIVを含むマトリゲル(商標)(BD Biosciences)によって提供される。一部の態様において、細胞外マトリックスは、ラミニン含有細胞外マトリックス、例えば、マトリゲル(商標)(BD Biosciences)である。一部の態様において、ECMは、ラミニン、エンタクチン、コラーゲンIV、およびヘパリン硫酸プロテオグリカン(例えば、Cultrex(登録商標)Basement Membrane Extract Type 2 (Trevigen, Inc.))を含む。 一部の態様において、単一の幹細胞、細胞集団、または組織断片はマトリゲルに埋め込まれる。マトリゲルは任意で成長因子が少ない、および/またはフェノールレッドを含まない。 一部の態様において、培養培地はECMの上部に配置される。次いで、必要に応じて、および必要な時に、培養培地を除去および補充することができる。一部の態様において、培養培地は、1日ごとに、2日ごとに、3日ごとに、4日ごとに、5日ごとに、6日ごとに、または7日ごとに補充される。成分が「加えられる」のであれば、または培地から「除去される」のであれば、これは、一部の態様では、培地それ自体がECMから除去され、次いで、「加えられる」成分を含有する新たな培地、または「除去される」成分が排除された新たな培地がECM上に配置されることを意味する。 一部の態様において、本発明の培養培地は、細胞外マトリックス、または細胞膜タンパク質、例えば、インテグリンと相互作用することによって細胞外マトリックスを模倣する3Dマトリックスと接触している。 さらに、例えば、キットとして供給される、本発明の培養培地および細胞外マトリックスが提供される。 好ましい態様において、本発明の培養培地は成体幹細胞を培養するのに適している。好ましい態様において、本発明の培養培地はオルガノイドを入手するのに適している。一部の態様において、本発明の培養培地は、少なくとも4継代、5継代、6継代、7継代、8継代、9継代、10継代、11継代、12継代、13継代、14継代にわたって、または14継代を超えて幹細胞集団を増殖させるのに適している。 従って、本発明は、少なくとも4継代、5継代、6継代、7継代、8継代、9継代、10継代、11継代、12継代、13継代、14継代にわたって、または14継代を超えて幹細胞集団を増殖させるのに適した、1種または複数種のErbB3/4リガンドを含む本明細書に記載の培養培地を提供する。 一部の態様において、本発明の培養培地は、接種の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%において、成功したオルガノイドの集団を確立するのに適している。成功したオルガノイドは、本明細書では、少なくとも4回継代することができるオルガノイドと定義される。 従って、本発明は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%の効率で、成功したオルガノイドの集団を確立するのに適した、1種または複数種のErbB3/4リガンドを含む培養培地を提供する。 本発明の培養培地の使用 本発明は、上皮幹細胞、上皮幹細胞集団、組織断片、またはオルガノイドを増殖させるための本発明の培養培地の使用を提供する。 本発明はまた、上皮幹細胞、上皮幹細胞集団、組織断片、またはオルガノイドを増殖させるための本発明の培養培地の使用も提供する。 一部の態様において、幹細胞、幹細胞集団、組織断片、またはオルガノイドは正常組織から入手可能である。例えば、一部の態様において、幹細胞、幹細胞集団、組織断片、またはオルガノイドは非癌組織から入手可能である。 一部の態様において、幹細胞、幹細胞集団、組織断片、またはオルガノイドは、疾患組織、例えば、癌組織、例えば、腺腫、線維腺腫、腺癌、癌腫、肉腫、循環している腫瘍細胞、または転移した癌から入手可能である。従って、一部の態様において、幹細胞、幹細胞集団、組織断片、またはオルガノイドは良性腫瘍または悪性腫瘍から入手可能である。一部の態様において、幹細胞、幹細胞集団、組織断片、またはオルガノイドは癌細胞であるか、または癌細胞を含む。一部の態様において、幹細胞、幹細胞集団、または組織断片は、腫瘍に由来する生検材料である。前記腫瘍は、好ましくは、異なる組織から生じた転移性腫瘍ではなく、起源の組織の腫瘍である。 本発明の培養培地の使用-肺オルガノイド 本発明は、肺上皮幹細胞、肺上皮幹細胞集団、肺組織断片、または肺オルガノイドを増殖させるための本発明の培養培地の使用を提供する。好ましくは、肺上皮幹細胞、肺上皮幹細胞集団、肺組織断片、または肺オルガノイドを増殖させるための本発明の培養培地は「肺培養培地」という見出しで説明されている通りである。 一部の態様において、幹細胞、幹細胞集団、組織断片、またはオルガノイドは、非小細胞肺癌組織、例えば、腺癌、大細胞癌もしくは扁平細胞癌、または小細胞肺癌組織から入手可能である。 一部の態様において、幹細胞、幹細胞集団、組織断片、またはオルガノイドは良性肺腫瘍または悪性肺腫瘍から入手可能である。例えば、一部の態様において、幹細胞、幹細胞集団、組織断片、またはオルガノイドは小細胞肺癌または非小細胞肺癌(例えば、腺癌、扁平細胞癌、もしくは大細胞癌)から入手可能である。一部の態様において、幹細胞、幹細胞集団、組織断片、またはオルガノイドは肺癌細胞であるか、または肺癌細胞を含む。一部の態様において、幹細胞、幹細胞集団、または組織断片は、肺腫瘍に由来する生検材料である。前記腫瘍は、好ましくは、異なる組織から生じた転移性腫瘍ではなく、起源の肺腫瘍である。 一部の態様において、幹細胞、幹細胞集団、組織断片、またはオルガノイドは、肺の疾患、障害、または損傷を有する患者の疾患組織から入手可能である。例えば、一部の態様において、幹細胞、幹細胞集団、組織断片、またはオルガノイドは、小細胞肺癌または非小細胞肺癌(例えば、腺癌、扁平細胞癌、もしくは大細胞癌)、間質性肺疾患、肺炎(例えば、器質化肺炎)、結核、嚢胞線維症、気管支炎、肺線維症、類肉腫症、II型過形成、慢性閉塞性肺疾患、気腫、喘息、肺浮腫、急性呼吸促迫症候群、喘鳴、気管支拡張症、ハンタウイルス肺症候群、中東呼吸器症候群(MERS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、あるいは塵肺を有する患者の疾患組織から入手可能である。例えば、一部の態様において、幹細胞、幹細胞集団、組織断片、またはオルガノイドは、病原体、例えば、アデノウイルス、コロナウイルス(例えば、SARS-CoVもしくはMERS-CoV)、ヒトメタニューモウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、ハンタウイルス、エンテロウイルス(例えば、エンテロウイルスD68(EV-D68))、百日咳菌(Bordetella pertussis)、クラミドフィラ・ニューモニエ(Chlamydophila pneumoniae)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria)、コクシエラ・ブルネッティ(Coxiella burnetii)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、または化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)によって引き起こされる病原性疾患を有する患者の疾患組織から入手可能である。 培養のための上皮幹細胞の単離 好ましい態様において、本発明の方法において培養される、および/またはオルガノイドが得られる上皮幹細胞は成体組織から得られる。すなわち、上皮幹細胞は成体上皮幹細胞である。この文脈で「成体」とは、成熟した組織を意味し、すなわち、新生児または小児を含むが、胚または胎児を除外する。好ましい態様において、上皮幹細胞は胚性幹細胞にも胚性幹細胞株にも由来せず、例えば、インビトロで分化されている胚性幹細胞にも胚性幹細胞株にも由来せず、例えば、ヒト胚性幹細胞にもヒト胚性幹細胞株にも由来しない。 前記細胞および組織は、好ましくは、哺乳動物の細胞および組織である。より好ましくは、前記細胞および組織はヒトの細胞および組織である。一部の態様において、前記細胞および組織は、他の哺乳動物、例えば、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット)、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコ、ウマ)、または家畜(例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ)に由来する。 生きている組織から直接採取した細胞、すなわち、新鮮に単離した細胞は初代細胞とも呼ばれる。一部の態様において、上皮幹細胞は初代上皮幹細胞である。初代細胞はインビボ状況の最良の実験モデルである。本発明の好ましい態様において、上皮幹細胞は初代上皮幹細胞である(または初代上皮幹細胞に由来する)。初代細胞培養物を継代して二次細胞培養物を形成することができる。癌細胞を除けば、従来の二次細胞培養物には寿命に限りがある。ある特定の数の集団倍化(例えば、50〜100世代)が起こった後に、細胞は老化プロセスを経て、分裂を停止する。連続細胞株になるように、二次培養物に由来する細胞を不死化することができる。不死化は自然発生することがある、またはウイルスにより、もしくは化学的に誘導されることがある。不死化細胞株はまた形質転換細胞とも知られる。対照的に、本発明の方法を用いると、不死化も形質転換も行うことなく、上皮幹細胞を連続継代することが可能になる。従って、一部の態様において、上皮幹細胞は不死化細胞でも形質転換細胞でもなく、不死化細胞株にも形質転換細胞株にも由来しない。本発明の利点は、複数回の増殖および継代を経ている上皮幹細胞が初代細胞の特徴を保持しており、最小限の遺伝子型変化もしくは表現型変化しか有さないか、または遺伝子型変化も表現型変化も有さないことである。 上皮幹細胞は、例えば、WO2010/090513、WO2012/014076、またはWO2012/168930に記載のように、任意の適切な方法によって入手することができる。一部の態様において、細胞は、例えば、実施例およびDorell et al., 2008 (Hepatology. 2008 Oct;48(4): 1282-91. Surface markers for the murine oval cell response. Dorrell C, Erker L, Lanxon-Cookson KM, Abraham SL, Victoroff T, Ro S, Canaday PS, Streeter PR, Grompe M)に記載のようにコラゲナーゼ消化によって単離される。一部の態様において、組織生検材料に対してコラゲナーゼ消化が行われる。一部の態様において、本発明において使用するための上皮幹細胞を入手するためにコラゲナーゼ消化およびアキュターゼ(accutase)消化が用いられる。 一部の態様において、上皮幹細胞は、上皮幹細胞表面にあるLgr5および/またはLgr6の発現に基づいて培養のために得られる。これらのタンパク質は大きなGタンパク質共役受容体(GPCR)スーパーファミリーに属する(例えば、その内容が全体として本明細書に組み入れられている、WO2009/022907を参照されたい。)。Lgrサブファミリーは、リガンド結合に重要な大きなロイシンリッチ外部ドメインを運んでいるという点でユニークである。従って、一部の態様では、本発明の方法は、前記のように前記上皮組織から細胞懸濁液を調製する工程、前記細胞懸濁液を、Lgr5および/またはLgr6に結合する化合物(例えば、抗体、例えば、抗Lgr5モノクローナル抗体、例えば、WO2009/022907に記載の抗Lgr5モノクローナル抗体)と接触させる工程、Lgr5および/またはLgr6に結合する化合物を単離する工程、ならびに前記結合化合物から幹細胞を単離する工程を含む。 オルガノイドは、好ましくは、成体組織に由来する細胞、好ましくは、成体組織に由来する上皮幹細胞を用いて得られる。 一部の態様において、上皮幹細胞は正常細胞である。代わりの態様では、上皮幹細胞は癌幹細胞である。従って、例えば、幹細胞はLgr5陽性癌幹細胞でもよいことが想定される。従って、前記細胞は、必要であれば、腫瘍から得られてもよい。代わりの態様では、上皮幹細胞は、病気の幹細胞、例えば、細胞内病原体(例えば、細菌、ウイルス、または寄生生物)に感染した幹細胞である。 好ましいLgr5および/またはLgr6に結合する化合物は、Lgr5またはLgr6いずれかの細胞外ドメインを特異的に認識し、これに結合する抗体、例えば、モノクローナル抗体、例えば、マウスおよびラットモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体を含む(例えば、その内容が全体として本明細書に組み入れられている、WO2010/016766を参照されたい。)。このような抗体を用いると、Lgr5および/またはLgr6を発現する幹細胞を、例えば、当業者に明らかなように、磁気ビーズの助けを借りて、または蛍光活性化細胞選別によって単離することができる。本発明の方法を用いると、Lgr5および/またはLgr6を発現するたった1つの細胞を単離し、それに本発明の方法を適用することが可能になる。従って、オルガノイドまたは上皮幹細胞集団は、たった1つの細胞に由来してもよい。従って、一部の態様において、培養しようとする出発細胞は1つの細胞である。 または、出発点として、細胞集団、例えば、前記のように組織断片に含まれる細胞集団が用いられてもよい。従って、本発明の方法は、出発点として1つの細胞を使用することに限定されない。 さらなる局面において、本発明の培養培地中で上皮幹細胞を培養する工程を含む、オルガノイドを入手するための方法が提供される。好ましくは、前記方法は、本明細書に記載の培養方法を用いて、本発明の培養培地中で上皮幹細胞を培養する工程を含む。 一部の態様において、前記方法は、上皮幹細胞を培養するか、または1つの細胞から成体上皮幹細胞のオルガノイド/集団を入手する工程を含む。有利なことに、これは、均一の細胞集団が形成するのを可能にする。一部の態様において、前記方法は、本発明の培養培地中で幹細胞を、ある期間にわたって、例えば、3日間〜10週間、1〜10週間、1〜4週間、または10日間〜3週間、培養する工程、次いで、細胞を継代する工程(例えば、細胞を1つの細胞密度まで解離し、容器1個につき(例えば、1ウェルにつき)1個の細胞の比で1個または複数個の細胞を播種する工程、本発明の培養培地を用いて細胞を、ある期間にわたって、例えば、3日〜10週間、1〜10週間、1〜4週間、または10日〜3週間、増殖させる工程、ならびに継代工程および増殖工程を少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回、または少なくとも14回、繰り返す工程を含む。 培養後に、前記方法は、1つまたは複数の上皮幹細胞またはオルガノイドを入手および/または単離する工程をさらに含んでもよい。例えば、幹細胞を培養した後に、後の用途において使用するために、培養培地中で培養された1つもしくは複数の幹細胞および/または1つもしくは複数の肺オルガノイドを培養培地から取り出すことが有用な場合がある。本発明の細胞を選択し、これらの細胞を他の細胞タイプと区別するために、当技術分野において公知の多数の物理的分離方法のいずれか1つを使用することができる。このような物理的方法は、本発明の細胞が特異的に発現しているマーカーに基づくFACSおよび様々なイムノアフィニティー法が関与してもよい。本明細書に記載のように、LGR5は、本発明の細胞において発現している可能性がある細胞マーカーである。従って、例示にすぎないが、本発明の細胞は、このマーカーの存在に頼る多数の物理的分離方法によって単離されてもよい。同様に、前記細胞が発現している他のどのマーカーも使用することができる。 1つの態様において、本発明の細胞は、抗体、例えば、これらのマーカーの1つに対する抗体を用いたFACSによって単離されてもよい。当業者に明らかなように、これは、蛍光標識抗体によって、または一次抗体に対する結合特異性のある蛍光標識二次抗体によって達成されてもよい。適切な蛍光標識の例には、FITC、Alexa Fluor(登録商標)488、GFP、CFSE、CFDA-SE、DyLight488、PE、PerCP、PE-Alexa Fluor(登録商標)700、PE-Cy5(TRI-COLOR(登録商標))、PE-Cy5.5、PI、PE-Alexa Fluor(登録商標)750、およびPE-Cy7が含まれるが、これに限定されない。このリストは例としてしか示されず、限定することを目的としない。 抗Lgr5抗体を用いたFACS分析によって、精製された細胞集団が得られる可能性があることは当業者に明らかであろう。しかしながら、一部の態様において、他の特定可能なマーカーの1つまたは複数を用いて、さらなる回のFACS分析をさらに行うことによって細胞集団を精製することが好ましい場合がある。 別の態様において、本発明の細胞は、当技術分野において周知の分離方法であるイムノアフィニティー精製によって単離されてもよい。例示にすぎないが、本発明の細胞は、c-kitに対するイムノアフィニティー精製によって単離されてもよい。当業者に明らかなように、この方法は精製カラム上への抗体の固定化に頼る。次いで、細胞試料はカラムに充填され、それによって、適切な細胞が抗体に結合し、従って、カラムに結合する。洗浄工程後に、細胞は、固定化抗c-kit抗体に優先的に結合し、細胞がカラムから放出されるのを可能にする競合物質を用いてカラムから溶出される。 固定化抗体を用いたイムノアフィニティー精製によって、精製された細胞集団が得られることは当業者に明らかであろう。しかしながら、一部の態様において、他の特定可能なマーカーの1つまたは複数を用いた、さらなる回のイムノアフィニティー精製をさらに行うことによって細胞集団を精製し、単離されたクローンのアリコートを用いて、他の関連する細胞内マーカーの発現を確認することが好ましい場合がある。 同じ物理的分離方法が関与する連続した精製工程は必ずしも必要とされないことは当業者に明らかであろう。従って、例えば、細胞は、抗Lgr5抗体を用いたFACS工程の後にSSEA-1アフィニティカラムを用いたイムノアフィニティー精製工程によって精製されてもよいことが明らかであろう。ある特定の態様では、前記細胞は、単離後、少なくとも約15日間、少なくとも約20日間、少なくとも約25日間、または少なくとも約30日間培養されてもよい。ある特定の局面において、細胞集団の細胞表現型の均一性を改善するために、前記細胞を、さらに長期間、培養状態で増殖させる。 この方法の他の特徴は、定義を目的とする説明の部分において定義される。当技術分野において公知なように、通常、大きな細胞クラスターではなく、単一細胞懸濁液または小さな細胞クラスター(2〜50個の細胞/クラスター)が播種される。このような細胞は分裂する時に、細胞増殖を促進する密度で支持体上に播種される。典型的に、単一細胞が単離される時、少なくとも1〜500細胞/ウェルのプレーティング密度が用いられ、ウェルの表面は0.32cm2である。クラスターが播種される時、プレーティング密度は、好ましくは、250〜2500細胞/cm2である。リプレーティングのために、一部の態様では、約2500細胞/cm2〜約5,000細胞/cm2の密度が用いられてもよい。リプレーティングの間、当技術分野において公知なように、通常、大きな細胞クラスターではなく単一細胞懸濁液または小さな細胞クラスターが播種される。 1つの態様において、本発明は、本発明による幹細胞または組織断片を培養する工程によって作製または入手された、細胞集団または前記幹細胞を含む1つもしくは複数のオルガノイドを提供する。前記の幹細胞または組織断片は、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、好ましくは少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも9ヶ月、または少なくとも12ヶ月、またはそれより長く培養され、幹細胞は約1〜4週間ごとに継代されている。 細胞の「集団」は、1より多い任意の数の細胞であるが、好ましくは、少なくとも1x103個の細胞、少なくとも1x104個の細胞、少なくとも1x105個の細胞、少なくとも1x106個の細胞、少なくとも1x107個の細胞、少なくとも1x108個の細胞、または少なくとも1x109個の細胞である。 本発明に従って培養された本発明の幹細胞または前駆細胞はヒト幹細胞またはヒト前駆細胞でもよい。本発明に従って培養された本発明の幹細胞は上皮幹細胞または上皮前駆細胞でもよい。 一部の態様において、本発明の幹細胞および/または本発明に従って培養された幹細胞は胚性幹細胞でない。一部の態様において、本発明の幹細胞および/または本発明に従って培養された幹細胞はヒト胚性幹細胞でない。好ましくは、本発明の幹細胞は成体幹細胞である。 好ましい態様において、オルガノイドはヒトオルガノイドである。 別の態様において、オルガノイドは、単一細胞、任意で、Lgr5を発現する単一細胞から生じる。 一部の態様において、単一細胞は、関心対象の核酸分子を含む核酸構築物を含む。 培養のための乳房上皮幹細胞の単離 一例として乳房上皮幹細胞の単離を以下で説明する。当業者は、当技術分野において標準的な方法を用いて、例えば、WO2010/090513、WO2012/014076、およびWO2012/168930に記載のように、他の組織から細胞を単離することができるだろう。 一部の態様において、乳房組織は切り刻まれ、(例えば、基本培養培地で)洗浄され、プロテアーゼ(例えば、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、またはトリプシン)が添加された本発明の培養培地の中でインキュベートされてもよい(例えば、実施例1を参照されたい)。プロテアーゼは、任意の適切な濃度、例えば、0.1〜10mg/ml、0.1〜1mg/ml、または1〜10mg/mlでよい。例えば、プロテアーゼは1〜2mg/mlで存在してもよい。プロテアーゼが添加された培養培地の中でのインキュベーションは任意の適切な時間の長さにわたってもよい。例えば、組織は、10分〜10時間、20分〜5時間、30分〜5時間、30分〜3時間、30分〜2時間、1時間〜5時間、1時間〜3時間、または1時間〜2時間にわたって培地中でインキュベートされてもよい。一部の態様において、組織は、少なくとも10分、少なくとも20分、少なくとも30分、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、または少なくとも5時間にわたって培地中でインキュベートされる。 次いで、結果として得られた消化された組織懸濁液に含まれる組織断片はサイズがさらに減らされてもよい。例えば、懸濁液は剪断されてもよい。組織断片または単離された細胞を単離するために、濾過工程および/または遠心分離工程が用いられてもよい。次いで、単離された組織断片または単離された細胞は本発明の培養培地中で培養されてもよい。 一部の態様において、前記方法は、上皮を含む組織の断片を培養する工程を含む。一部の態様において、上皮幹細胞は組織断片から単離される。 一部の態様において、上皮幹細胞は、上皮細胞表面マーカー、例えば、EPCAM、MUC-1、KRT-5、KRT8、およびKRT18の発現に基づいて培養のために得られる。従って、本発明の方法は、前記のように前記上皮組織から細胞懸濁液を調製する工程、前記細胞懸濁液を上皮細胞表面マーカー結合化合物(例えば、EPCAM、MUC-1、KRT-5、KRT8、および/またはKRT18結合化合物)と接触させる工程、上皮マーカー結合化合物を単離する工程、ならびに前記結合化合物から細胞を単離する工程を含む。 本発明の方法において培養するための乳癌幹細胞を単離するために、乳癌細胞マーカーに結合する結合化合物が用いられてもよい。乳癌細胞マーカーの例には、上皮膜抗原、癌抗原15-3(CA15-3)、癌抗原27.29(CA27.29)、癌胎児抗原(CEA)、ウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーター(uPA)、プラスミノゲンアクチベーターインヒビター(PAI-1)、ポドカリキシン、EZH2、およびカリクレイン-10が含まれる。例えば、乳癌細胞を単離するために、上皮膜抗原(EMA)結合化合物(例えば、抗EMA抗体)が用いられてもよい。従って、一部の態様では、本発明の方法は、一次癌組織または二次癌組織から細胞懸濁液を調製する工程、前記細胞懸濁液を乳癌細胞マーカー結合化合物(例えば、EMA結合化合物)と接触させる工程、乳癌細胞マーカー結合化合物を単離する工程、および前記結合化合物から細胞を単離する工程を含む。 当業者は、乳房について前記で説明された方法を他の組織に合わせるやり方を理解するだろう。 培養のための肺上皮幹細胞の単離 一例として肺上皮幹細胞の単離を以下で説明する。前述したように、当業者は、当技術分野において標準的な方法を用いて、例えば、WO2010/090513、WO2012/014076、およびWO2012/168930に記載のように、他の組織から細胞を分離することができるだろう。「培養のための上皮幹細胞の単離」という見出しで説明される方法はまた、培養のための肺上皮幹細胞を単離するのにも使用することができる。 一部の態様において、肺組織は切り刻まれ、(例えば、0.5%FCSを含むPBSOで)洗浄され、プロテアーゼ(例えば、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、またはトリプシン)が添加された、本発明の培養培地またはPBS0の中でインキュベートされる。PBS0は、本明細書では、カルシウムもマグネシウムも含まないリン酸緩衝食塩水(PBS)と定義される。一部の態様において、プロテアーゼはディスパーゼおよびコラゲナーゼである。プロテアーゼは、任意の適切な濃度、例えば、0.1〜10mg/ml、0.1〜1mg/ml、または1〜10mg/mlでよい。例えば、ディスパーゼは0.1〜1mg/ml(例えば、約0.5mg/ml)で存在してもよく、コラゲナーゼは0.5〜1.5mg/ml(例えば、約1mg/ml)で存在してもよい。プロテアーゼが添加された、培養培地またはPBS0の中でのインキュベーションは任意の適切な時間の長さにわたってもよい。例えば、組織は、10分〜10時間、20分〜5時間、30分〜5時間、30分〜3時間、または30分〜2時間にわたって培地中でインキュベートされてもよい。例えば、一部の態様において、組織はプロテアーゼと約40分間インキュベートされる。 次いで、結果として得られた消化された組織懸濁液に含まれる組織断片はサイズがさらに減らされてもよい。例えば、懸濁液は剪断されてもよい。組織断片または単離された細胞を単離するために、濾過工程および/または遠心分離工程が用いられてもよい。次いで、単離された組織断片または単離された細胞は本発明の培養培地中で培養されてもよい。 一部の態様において、前記方法は、上皮を含む組織の断片を培養する工程を含む。一部の態様において、上皮幹細胞は組織断片から単離される。 一部の態様において、上皮幹細胞は、病気の幹細胞、例えば、細胞内病原体(例えば、細菌(例えば、結核菌)、ウイルス、または寄生生物)に感染した幹細胞である。 一部の態様において、上皮幹細胞は、上皮細胞マーカー、例えば、EPCAM、MUC-1、KRT-5、KRT-8、およびKRT-18の発現に基づいて培養のために得られる。従って、本発明の方法は、前記のように前記上皮組織から細胞懸濁液を調製する工程、前記細胞懸濁液を、生細胞内にある特定のRNA標的(例えば、EPCAM、MUC-1、KRT-5、KRT-8、およびKRT-18発現産物)を検出するRNA検出試薬(例えば、SmartFlare(商標)プローブ)と接触させる工程、ならびに標識された細胞を、RNA検出試薬を用いて、例えば、フローサイトメトリーによって単離する工程を含んでもよい。SmartFlare(商標)プローブを用いた方法の説明については、参照により本明細書に組み入れられる、Weldon and Johnston (2013), Genetic Engineering & Biotechnology News, 33(9):20-21を参照されたい。 一部の態様において、上皮幹細胞は、上皮細胞表面マーカー、例えば、EPCAMおよびMUC-1の発現に基づいて培養のために得られる。従って、本発明の方法は、前記のように前記上皮組織から細胞懸濁液を調製する工程、前記細胞懸濁液を上皮細胞表面マーカー結合化合物(例えば、EPCAM、MUC-1、KRT-5、KRT-8、および/またはKRT-18結合化合物)と接触させる工程、上皮マーカー結合化合物を単離する工程、ならびに前記結合化合物から細胞を単離する工程を含んでもよい。 本発明の方法において培養するための肺癌幹細胞を単離するために、肺癌細胞マーカーに結合する結合化合物が用いられてもよい。肺癌細胞マーカーの例には、性決定領域Y-box2、ABCG5、ALDH1、ネスチン、SOX2、CD24、CD44、CD133、CD166、および上皮細胞接着分子エピトープ(ESA、MOC-31、Ber-EP4)(例えば、Sterlacci et al. (2014) Journal of Thoracic Oncology 9(1):41-9を参照されたい)が含まれる。肺癌細胞マーカーのさらなる例には、EGFR、MET、IDH1、CEA、Cyfra21-1、およびCA125が含まれる。EML4-ALK転座も肺癌細胞のマーカーである。例えば、肺癌細胞を単離するために、EGFR、MET、IDH1、CEA、Cyfra21-1、および/またはCA125結合化合物が用いられてもよい。 従って、一部の態様では、本発明の方法は、一次癌組織または二次癌組織から細胞懸濁液を調製する工程、前記細胞懸濁液を肺癌細胞マーカー結合化合物(例えば、EGFR、MET、IDH1、CEA、Cyfra21-1、および/またはCA125結合化合物)と接触させる工程、肺癌細胞マーカー結合化合物を単離する工程、ならびに前記結合化合物から細胞を単離する工程を含む。別の態様において、オルガノイドは、単一細胞、任意で、Lgr5を発現する単一細胞から生じる。 一部の態様において、細胞は、最初に、ErbB3/4リガンドを含む本発明の培養培地中で培養され、成功したオルガノイドが確立されたら、培養培地は、ErbB3/4リガンドを含まない培養培地と交換される。従って、一部の態様において、1継代、2継代、3継代、4継代、または5継代の後に、培養培地は、ErbB3/4リガンドを含まない培養培地と交換される。従って、ErbB3/4リガンドが無いように、本明細書に記載の本発明の培養培地を合わせることができる。 培養後に、前記方法は、1つまたは複数の肺上皮幹細胞または肺オルガノイドを入手および/または単離する工程をさらに含んでもよい。抗Lgr5抗体を用いたFACS分析によって、精製された幹細胞集団が得られる可能性があることは当業者に明らかであろう。しかしながら、一部の態様において、他の特定可能なマーカー、例えば、Sox9、Slug、CD44、および/またはALDH1の1つまたは複数を用いて、さらなる回のFACS分析をさらに行うことによって細胞集団を精製することが好ましい場合があるが、他のマーカーも用いられてもよい。 前述したように、固定化抗体を用いたイムノアフィニティー精製によって、精製された細胞集団が得られることは当業者に明らかであろう。しかしながら、一部の態様において、他の特定可能なマーカー、例えば、Sox9、Slug、CD44、および/またはALDH1の1つまたは複数を用いた、さらなる回のイムノアフィニティー精製をさらに行うことによって細胞集団を精製し、単離されたクローンのアリコートを用いて、他の関連する細胞内マーカーの発現を確認することが好ましい場合がある。 好ましい態様において、幹細胞はヒト肺上皮幹細胞である。ヒト上皮幹細胞には、ヒト上皮組織に由来する幹細胞が含まれる。上皮幹細胞は、上皮を構成する別個の細胞タイプを形成することができる。 好ましい態様において、オルガノイドはヒト肺オルガノイドである。 癌細胞および癌オルガノイドのための方法および培養培地 一部の態様において、上皮幹細胞は癌細胞または非癌腫瘍細胞であり、例えば、腫瘍に由来する。一部の態様において、癌細胞は、循環している腫瘍細胞である。一部の態様において、癌細胞は、循環している腫瘍細胞でない。「癌」という用語が本明細書において用いられる場合、この用語は、癌でない(良性の)腫瘍に等しく当てはまることを理解しなければならない。従って、一部の態様において、前記細胞は悪性腫瘍または転移に由来する。一部の態様において、前記細胞は良性腫瘍に由来する。癌細胞は、ある特定の成長経路を構成的に活性化または不活化する変異を有する傾向がある。このことは、通常、成長に必要な場合がある、培養培地中にある、ある特定の因子がもはや必要とされないことを意味する。例えば、癌の中にはWnt経路を構成的に活性化しているものもある。このような場合、培養培地はLgr5アゴニストを必要としない場合がある、および/またはWntアゴニストを必要としない場合があるが、それでもなお、これらの一方または両方が培養培地に存在してもよい。他の変異があれば、本明細書に記載の培養培地から他の因子を除くことができるだろう。他の上皮癌(癌腫)または非癌腫瘍(例えば、腺腫)も本発明の培養培地中で成長することができる。 好ましい態様において、癌幹細胞から入手した癌オルガノイドを、正常幹細胞から入手した対応する正常組織オルガノイドの成長に適した本発明の培養培地中で成長させ、任意で、この培地から、ある特定の因子が排除される。例えば、癌幹細胞を培養することによって得られた癌オルガノイドを、上皮幹細胞を培養することによって得られた正常オルガノイドと同じ培養条件で成長させてもよく、任意で、この培地から、ある特定の因子が排除される。例えば、肺癌幹細胞を培養することによって得られた癌オルガノイドを、肺上皮幹細胞を培養することによって得られた正常肺オルガノイドと同じ培養条件で成長させてもよく、任意で、この培地から、ある特定の因子が排除される。多くの状況において、(因子を全く排除することなく)正常組織培地中で癌オルガノイドを成長させることが好ましい場合がある(または少なくとも、さらに便利になる場合がある)。好ましくは、正常組織培地を用いると、特定の癌変異を排除することなく、全ての遺伝的背景がある癌を成長させることが可能になるはずである。従って、幹細胞を培養するための本発明の方法を実施することができる。 さらに好ましい態様において、癌オルガノイドは、p53安定化剤をさらに含む本発明の培養培地中で培養される。細胞集団が主に腫瘍細胞になることを確かなものにするために、p53安定化剤が培養培地に加えられてもよい。従って、幹細胞を培養するための本発明の方法を実施することができる。 方法 本発明は、以下の工程を含む、好ましくはオルガノイドを作製するために、単一の上皮幹細胞、上皮幹細胞集団、または単離された組織断片を培養するための方法を提供する: 上皮幹細胞、上皮幹細胞集団、または単離された組織断片を準備する工程; 1種または複数種のErbB3/4リガンドを含み、好ましくは、1種もしくは複数種の受容体型チロシンキナーゼリガンドおよび/またはBMP阻害剤(例えば、Noggin)をさらに含み、任意で、1種または複数種のWntアゴニストをさらに含む培養培地を準備する工程; 幹細胞、幹細胞集団、または単離された組織断片を培養培地と接触させる工程; 幹細胞、幹細胞集団、または単離された組織断片を適切な条件下で培養する工程。 本発明はまた、以下の工程を含む、上皮幹細胞を増殖させるための方法も提供する: 上皮幹細胞、上皮幹細胞集団、または単離された組織断片を準備する工程; 1種または複数種のErbB3/4リガンドと、(i)1種もしくは複数種の受容体型チロシンキナーゼリガンド、および/または(ii)BMP阻害剤(例えば、Noggin)を含み、任意で、1種または複数種のWntアゴニスト(例えば、1種または複数種のLgr5アゴニスト)をさらに含む培養培地を準備する工程; 幹細胞、幹細胞集団、または単離された組織断片を培養培地と接触させる工程;ならびに 細胞、幹細胞集団、または単離された組織断片を適切な条件下で培養する工程。 好ましくは、前記細胞を、1個または複数個の(例えば、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、10個、15個、20個、または20個より多い)オルガノイドを作製するように増殖させる。 一部の態様において、本発明の方法において用いられる培養培地は、本発明による培養培地である。 一部の態様において、細胞は、最初に、本発明の培養培地中で培養され、成功したオルガノイドが確立されたら、培養培地は、ErbB3/4リガンドを含まない培養培地と交換される。従って、一部の態様において、1継代、2継代、3継代、4継代、または5継代の後に、培養培地は、ErbB3/4リガンドを含まない培養培地と交換される。 細胞集団または単離された組織断片を「増殖させる」ための方法は、未分化表現型および自己再生特性を保持している増殖させた幹細胞集団を生じるように、初期集団中の幹細胞の数を維持するか、または増やすことを伴う方法である。 しかしながら、この方法はまた、例えば、オルガノイド形成に寄与する組織様構造を形成する可能性がある、分化中の子孫を生じることを含んでもよい。従って、幹細胞または前記幹細胞を含む組織断片を本発明の培養培地中で培養する工程を含む、オルガノイドを入手するための方法が本明細書において提供される。本発明は、単一の幹細胞または幹細胞集団を本発明による培養培地中で培養する工程を含む、好ましくはオルガノイドを作製するために、単一の幹細胞または幹細胞集団を増殖させるための方法を提供する。前述したように、オルガノイドは正常オルガノイドでもよく、癌オルガノイド、例えば、癌腫オルガノイドまたは腺癌オルガノイドでもよく、例えば、良性腫瘍オルガノイドでもよい。一部の態様において、好ましくはオルガノイドを作製するために、単一の幹細胞または幹細胞集団を増殖させるための方法は、単一の幹細胞、幹細胞集団、または組織断片を本発明による培養培地中で増殖させる工程を含む。 従って、本発明は、以下の工程を含む、好ましくはオルガノイドを作製するために、単一の上皮幹細胞または上皮幹細胞集団を増殖させるための方法を提供する: 上皮幹細胞、上皮幹細胞集団、または単離された組織断片を準備する工程; 本発明による培養培地を準備する工程; 幹細胞を培養培地と接触させる工程; 細胞を適切な条件下で培養する工程。 一部の態様において、前記方法は、幹細胞、幹細胞集団、または単離された組織断片、および培養培地を、細胞外マトリックス、または本明細書に記載の3Dマトリックス、例えば、インテグリンなどの細胞膜タンパク質と相互作用することによって細胞外マトリックスを模倣する3Dマトリックス、例えば、マトリゲル(商標)(BD Biosciences)またはCultrex(登録商標)Basement Membrane Extract(Trevigen, Inc.)などのラミニン含有細胞外マトリックスと接触させる工程を含む。一部の態様において、培養培地は細胞外マトリックスの中に拡散される。 本発明は、上皮幹細胞を培養するための方法を提供する。さらに、本発明は、上皮幹細胞を増殖させるための方法およびオルガノイドを入手するための方法を提供する。 「幹細胞を増殖させる」という用語は、「オルガノイドを入手する」と同義である。 組織断片および幹細胞の単離および培養 当業者であれば、本発明の方法に適した培養条件を決定することができるだろう。 一部の態様において、前記方法は、幹細胞、幹細胞集団、または単離された組織断片、および培養培地を、細胞外マトリックス、または本明細書に記載の3Dマトリックス、例えば、インテグリンなどの細胞膜タンパク質と相互作用することによって細胞外マトリックスを模倣する3Dマトリックス、例えば、Cultrex(登録商標)Basement Membrane Extract(Trevigen, Inc.)またはマトリゲル(商標)(BD Biosciences)などのラミニン含有細胞外マトリックスと接触させる工程を含む。一部の態様において、培養培地は細胞外マトリックスの中に拡散される。 一部の態様において、組織断片または単離された細胞は懸濁プレート中で培養される。一部の態様において、組織断片または単離された細胞は35℃〜39℃または36℃〜38℃で培養される。例えば、組織断片または単離された細胞は約37℃で培養されてもよい。 一部の態様において、組織断片または単離された細胞は周囲O2レベルで培養される。または、一部の態様において、O2レベルは、例えば、0.5%〜4%、1%〜4%、1%〜3%、または2%〜4%でもよい。例えば、組織断片または単離された細胞は約2%O2の条件下で培養されてもよい。組織断片または単離された細胞は、一部の態様では、3%〜7%CO2または4%〜6%CO2の条件下で培養されてもよい。例えば、組織断片または単離された細胞は約5%CO2の条件下で培養されてもよい。どんな理論にも拘束されるつもりはないが、本発明者らは、培養における初期細胞数が少ない時、および/または細胞が癌細胞である時に、低酸素条件が有利な場合があることを発見した。 培養培地を任意の適切な間隔で、例えば、1〜7日ごとに、2〜6日ごとに、または3〜5日ごとに変えてもよい。例えば、培養培地を4日ごとに変えてもよい。 オルガノイドを任意の適切な間隔で、例えば、3日ごとに〜10週間ごとに、1〜10週間ごとに、1〜4週間ごとに、または10日〜3週間ごとに継代してもよい。一部の態様において、オルガノイドは約10日〜3週間ごとに継代される。 一部の態様において、オルガノイドを継代するタイミングは、オルガノイドが特定のサイズ(例えば、約100〜200μmの平均サイズ)に達したこと、および/または上皮完全性の消失によって明らかになる生存率の低下が起こったこと、オルガノイドが高密度の外観を有すること、および/または死細胞が存在することによって決定される。 方法-肺オルガノイド 本明細書に記載の方法を用いて肺オルガノイドを培養することができる。肺オルガノイド専用の本発明のさらなる態様が以下に提供される。 本発明は、以下の工程を含む、好ましくはオルガノイドを作製するために、単一の肺上皮幹細胞、肺上皮幹細胞集団、または単離された肺組織断片を培養するための方法を提供する: 肺上皮幹細胞、肺上皮幹細胞集団、または単離された肺組織断片を準備する工程; 1種または複数種のFGFR2bリガンドを含み、好ましくは、1種または複数種のErbB3/4リガンドをさらに含む培養培地を準備する工程; 幹細胞、幹細胞集団、または単離された組織断片を培養培地と接触させる工程; 幹細胞、幹細胞集団、または単離された組織断片を適切な条件下で培養する工程。 本発明はまた、以下の工程を含む、肺上皮幹細胞を増殖させるための方法も提供する: 肺上皮幹細胞、肺上皮幹細胞集団、または単離された肺組織断片を準備する工程; 1種または複数種のErbB3/4リガンドおよび1種または複数種のFGFR2bリガンドを含む培養培地を準備する工程; 幹細胞、幹細胞集団、または単離された組織断片を培養培地と接触させる工程;ならびに 細胞、幹細胞集団、または単離された組織断片を適切な条件下で培養する工程。 オルガノイド 本発明は、本発明の方法により入手可能であるかまたは入手された、オルガノイドまたは上皮幹細胞集団を提供する。従って、一部の態様において、前記方法は、オルガノイドを入手および/または単離する工程をさらに含む。幹細胞の増殖により入手可能な本発明のオルガノイドは、好ましくは、そのインビボ対応物に似た細胞集団を提供する。 一部の態様において、オルガノイドは少なくとも1つの上皮幹細胞を含む。「幹細胞」という用語は、好ましくは、さらなる上皮幹細胞を分裂および生成することができるか、または分化した子孫、例えば、分裂し、1つもしくは複数の細胞タイプにさらに分化することができる前駆細胞を生じることができる細胞を指す。場合によっては、前駆細胞を本発明の培養培地中で培養すると、前駆細胞は幹細胞に脱分化する。その結果として、一部の態様では、「幹細胞」および「前駆細胞」という用語は同義に用いられることがある。 好ましいオルガノイドでは、細胞の大半は、未分化表現型を保持している増殖中の細胞(すなわち、分裂中の細胞)であることを理解しなければならない。何らかの自発的分化が起こる場合があるが、細胞集団は、概して、増殖中の集団である。一部の態様において、本発明のオルガノイドを入手する方法は分化工程を含む。オルガノイドを分化するのに適した方法は、例えば、WO2012/168930、WO2010/090513、およびWO2012/014076に記載されている。従って、本発明のオルガノイドは、分化した細胞を含んでもよい。 本発明において用いられる上皮幹細胞は、好ましくは、多能性、少能性(oligopotent)、または単能性の臓器特異的成体幹細胞である。幹細胞は全能性幹細胞ではない。一部の態様において、幹細胞は多能性幹細胞ではない。 前記オルガノイドには、例えば、WO2012/168930、WO2010/090513、およびWO2012/014076に記載のような、これらの細胞特性から生じた特徴的な構造もある。培養中の細胞の特徴、例えば、細胞形態;細胞構造;アポトーシスまたは細胞溶解の証拠;ならびにオルガノイドの組成および構造を評価するために画像分析が用いられることがある。多くのタイプの画像化分析、例えば、電子顕微鏡、共焦点顕微鏡、立体顕微鏡、蛍光顕微鏡が当技術分野において周知である。組織学的分析は基本構造および細胞タイプを明らかにすることができる。 本発明のオルガノイドには好ましくは三次元構造がある。すなわち、前記オルガノイドは好ましくは三次元オルガノイドである。好ましい態様において、前記オルガノイドは上皮細胞しか含まない。すなわち、前記オルガノイドには非上皮細胞が無い。というのは、本発明の培養培地は、特に、上皮幹細胞、例えば、Lgr5+上皮幹細胞を増殖させるために設計されているからである。従って、他の細胞タイプが一時的に培養培地に、例えば、本発明の出発物質である組織断片に存在しても、これらの細胞は生存する可能性はなく、その代わりとして、純粋な上皮細胞集団を生じる幹細胞の長期増殖によって取り替えられる。 一部の態様において、上皮細胞は管腔を取り囲んでいる。一部の態様において、管腔を取り囲んでいる上皮細胞は極性化している(このことは、タンパク質が上皮細胞の頂端側または側底側で異なって発現していることを意味する)。一部の態様において、前記オルガノイドは、活発に分裂することができ、好ましくは、対応するインビボ組織に存在する全ての主要な分化細胞系列に分化することができる幹細胞を含む。 一部の態様において、本発明のオルガノイドには、本明細書において「重層細胞」領域と呼ばれる、複数の層で形成された区域がある。一部の態様において、本発明のオルガノイドには、本明細書において「偽重層」細胞領域と呼ばれる、複数の層で形成されているように見える単層区域がある。一部の態様において、偽重層細胞の単層は折り重なり、その結果、折り重なりの間に管腔を囲い込む。 一部の態様において、本発明のオルガノイドは、折り重なって(または陥入して)2つ以上の層を形成する単一の単層を含む。時として、折り重なった(または陥入した)単層と、重層細胞領域を区別することが難しいことがある。一部の態様において、オルガノイドは、重層細胞領域と、折り重なった単層の領域を両方とも含む。一部の態様において、本発明の肺オルガノイドには、複数の層で形成された区域と、単一の細胞単層を含む区域がある。一部の態様において、本発明のオルガノイドは単一の細胞単層を含むか、または単一の細胞単層からなる。 一部の態様において、本発明のオルガノイドは上皮細胞を含むか、または上皮細胞からなる。一部の態様において、前記オルガノイドは上皮細胞単層を含むか、または上皮細胞単層からなる。一部の態様において、オルガノイドには非上皮細胞が無い。 本発明に従って作製されたオルガノイドの説明に役立つ例を添付の図面に示した。1つの態様において、本発明のオルガノイドには、本質的に図2に示したような構造(例えば、一部の態様では、正常オルガノイドには、本質的に図2BでW894NもしくはR1100Nオルガノイド株について示したような構造がある。または、癌オルガノイドには、本質的に図2AでW1007T、W1012T、もしくはW859Tオルガノイド株について示したような構造がある)あるいは図6に示したような構造がある。1つの態様において、本発明のオルガノイドは、本質的に図5または図6に示したような細胞染色を示す。 一部の態様において、前記オルガノイドは、主に、出芽(budding)構造がほとんどない嚢胞構造である。一部の態様において、本発明に従って作製されたオルガノイドには出芽構造がない。嚢胞構造は主に単層を含むが、いくつかの重層細胞領域が存在してもよい。 「嚢胞」とは、オルガノイドがほぼ球状であることを意味する。「出芽」とは、オルガノイドに、基本構造から成長している複数の領域があることを意味する。 本発明はまた、中心管腔を取り囲む上皮細胞を含む三次元オルガノイドであるオルガノイド、好ましくは、本発明の方法により入手可能なオルガノイドも提供する。 一部の態様において、前記オルガノイドは細胞の単層を含む。他の態様において、前記オルガノイドは多層上皮を含む。 一部の態様において、前記オルガノイドは正常組織から得られ、嚢胞構造を有する。一部の態様において、前記正常オルガノイドは、中心管腔を取り囲む、基底細胞および管腔細胞の単層を含む。 本発明者らは、1種または複数種のErbB3/4リガンドを培養培地に添加すると、培地にErbB3/4リガンドが無い時より高いパーセントの管腔細胞と低いパーセントの基底細胞が、結果として得られた癌オルガノイドに存在することができることを発見した。 従って、一部の態様において、癌オルガノイドは主に管腔細胞を含み、基底細胞を実質的に含まない。一部の態様において、癌オルガノイドは管腔細胞を含むが、基底細胞を含まない。 一部の態様において、オルガノイドは癌組織から得られ、嚢胞構造を有する。一部の態様において、前記オルガノイドは、(i)中心管腔、複数の小さな管腔を含むか、もしくは管腔を含まない、および/または(ii)上皮細胞単層もしくは多層上皮を含む。従って、一部の態様において、本発明の癌オルガノイドは、管腔を取り囲む上皮細胞単層を含む。他の態様において、癌オルガノイドは多層上皮および複数の小さな管腔を含む。さらなる態様において、癌オルガノイドは多層上皮を含み、管腔を含まない。癌オルガノイドは、任意で、腫瘍細胞の固い球状のものを含む。 癌細胞または癌オルガノイドの腫瘍状況は任意の適切な方法を用いて確認することができる。例えば、異数性が存在するかどうか評価するために、細胞またはオルガノイドの核型決定を行うことができる。異数性が存在したら、細胞またはオルガノイドは腫瘍細胞または腫瘍オルガノイドであると示唆されるだろう。別の例では、癌原遺伝子または腫瘍サプレッサー遺伝子の変異を特定する配列決定を行うことができる。従って、腫瘍サプレッサー遺伝子が、その機能を失うか、または弱めるように変異していれば、細胞またはオルガノイドは腫瘍細胞または腫瘍オルガノイドであると示唆されるだろう。同様に、癌原遺伝子がその機能を強めるように変異していれば、その結果、癌原遺伝子は癌遺伝子になっており、細胞またはオルガノイドは腫瘍細胞または腫瘍オルガノイドであると示唆されるだろう。腫瘍細胞または癌オルガノイドはまた、p53安定化剤を培養培地に添加することによって特定される場合がある。腫瘍細胞および癌オルガノイドは、普通、p53分解に影響を及ぼさないp53安定化剤をもたらすp53変異を含有する。従って、腫瘍細胞は正常細胞と異なり、p53安定化剤(例えば、Nutlin-3)を培養培地に添加することによって誘導される老化を回避できることが多い。 少なくとも2ヶ月、例えば、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも14週間、少なくとも16週間、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも1年にわたって本発明の培養培地中で培養されているオルガノイドまたは上皮幹細胞集団が提供される。好ましくは、前記細胞はヒト細胞である。好ましくは、前記細胞は約1〜4週間ごとに継代されている。 3継代を超えて、4継代を超えて、5継代を超えて、6継代を超えて、7継代を超えて、8継代を超えて、9継代を超えて、10継代を超えて、11継代を超えて、12継代を超えて、13継代を超えて、または14継代を超えて継代されているか、または継代することができるオルガノイドまたは上皮幹細胞集団も提供される。 本発明の文脈の中で、組織断片は、成体組織、好ましくは、ヒト成体組織の一部である。前記組織は正常(健常)な組織でもよく、疾患組織または感染組織でもよい。従って、好ましくは、本明細書において特定されたオルガノイドは組織断片でない。オルガノイドは、好ましくは、成体組織に由来する細胞、好ましくは、成体組織に由来する上皮幹細胞、任意で、成体組織断片に由来する上皮幹細胞を用いて得られる。一部の態様において、オルガノイドは、Lgr5を発現する生体組織または生体組織断片に由来する上皮幹細胞を用いて得られる。従って、本発明の文脈の中で、一部の態様では、組織断片はLgr5+幹細胞を含む。 1つの態様において、オルガノイドは、本発明の方法を用いて(好ましくは、本発明の培養培地を用いて)培養されている、従って、細胞外マトリックスと接触しているオルガノイドである。好ましくは、オルガノイドは非間葉系細胞外マトリックスの中に埋め込まれる。本発明の文脈の中で、「接触して」とは物理的または機械的または化学的な接触を意味する。物理的または機械的または化学的な接触とは、前記オルガノイドを前記細胞外マトリックスから分離するために力が用いられる必要があることを意味する。一部の態様において、細胞外マトリックスは、エンゲルブレス・ホルム・スォーム(EHS)マウス肉腫細胞によって分泌されたゼラチン状のタンパク質混合物、例えば、マトリゲル(BD Biosciences)またはCultrex(登録商標)Basement Membrane Extract (Trevigen, Inc.)である。従って、本発明の培養培地は、任意で、本発明の細胞集団および/または1つもしくは複数の本発明のオルガノイドをさらに含んでもよい。 本発明は、本発明のオルガノイドまたは細胞、細胞外マトリックス、および培養培地、好ましくは、本発明の培養培地を含む組成物を提供する。 本発明の方法により入手可能な組織特異的オルガノイドの一例として、乳房オルガノイドの特徴的な構造および細胞特性の説明を以下に示す。 乳房オルガノイド 本発明は、乳房上皮幹細胞の集団を含む乳房オルガノイドを提供する。好ましくは、本発明の乳房オルガノイドまたは乳房上皮幹細胞の集団は乳房細胞からなる。 乳房細胞を増殖させる方法は、現在、Pasic et al. (2011) Genes & Development 25: 1641-1653に記載されているが、この培養方法と結果として生じる細胞構造は、本発明によって提供される培養方法と結果として生じる細胞構造とは異なる。Pasicらに記載の方法は、(i)アンフィレギュリンまたはEGF(HER1リガンドである)と、(ii)FGF2またはFGF7を含む培養系を使用する。Pasicらに記載の方法は、本発明において用いられるような、ErbB3/4リガンドと、Lgr5アゴニストまたはFGFR2bリガンドとの組み合わせを含む培養培地を使用しない。Pasicらは、ErbB3/4リガンドであるNRG1-β1を含む培養培地を試験したが、この培養培地中で乳房オルガノイドが成長できることを発見しなかった。Pasicらは、ErbB3/4リガンドと、Lgr5アゴニストまたはFGFR2bリガンドの組み合わせを含む培養培地を試験しなかった。Pasicらの培養系を使用すると、本発明のオルガノイドの形態とは異なる形態を有する細胞構造が形成される。特に、Pasicらの細胞構造には出芽形態があり、この構造には、でこぼこの端部があるのに対して、本発明の方法を用いて入手したオルガノイドには、この形態がなく、その代わりに、滑らかな嚢胞様構造または一房のブドウに似た形態がある。Pasicらの系を用いた培養物は2〜3継代の後に増殖停止することが観察されている(本明細書の実施例4を参照されたい)。これに対して、本発明者らは、一部の態様では、本発明の方法を用いると、乳房上皮幹細胞を14継代を超えて増殖させることが可能なことを発見した。 循環している腫瘍細胞を培養する方法は、Yu et al. (2014) Science 345(6193):216-220に記載されている。しかしながら、この論文の著者らは、正常乳房組織、原発性腫瘍、または転移から入手した乳房上皮幹細胞の培養について指示を与えなかった。さらにまた、この培養系は本発明と異なり、本発明のオルガノイドと比較して異なる構造をもたらす。特に、Yuは、EGFおよびFGF2を含む培養方法を使用する。Yuらは、本発明において用いられるような、ErbB3/4リガンドと、Lgr5アゴニストまたはFGFR2bリガンドの組み合わせを含む培養培地を使用しない。本当に、Yuらは、ErbB3/4リガンドを含む培養培地を全く使用していない。Yuの方法を用いると、強力な細胞間接着が無い、単一腫瘍細胞の凝集物が形成される。連続した上皮は、この方法を用いて形成されない。対照的に、本発明の方法を用いて入手したオルガノイドは、細胞間接着と、連続した上皮を示す。一部の態様において、細胞間接着は強力である。 本発明の改善された培養条件下では乳房オルガノイドは、以前の培養条件下で見られた出芽構造ではなく、嚢胞オルガノイド構造を示した。 従って、本発明は、嚢胞様構造を有する乳房オルガノイドを提供する。一部の態様において、嚢胞様構造は中心管腔を含む。一部の態様において、嚢胞様構造の中心管腔は細胞を全く含まない。他の態様において、嚢胞様構造の中心管腔は乳房上皮幹細胞を含み、任意で、中心管腔は乳房上皮幹細胞で満たされている。さらに、本発明は、一房のブドウに似た形態を有する乳房オルガノイドを提供する。さらに、本発明は、3継代を超えて培養されたか、または培養することができる乳房上皮幹細胞、乳房上皮幹細胞集団、または乳房オルガノイドを提供する。さらに、本発明は、ErbB3/4リガンドとLgr5アゴニストおよび/またはFGFR2bリガンドの組み合わせを含む培養培地を提供する。 有利なことに、ErbB3/4リガンドを使用すると、乳房細胞およびオルガノイドを長期培養することが可能になる。Pasicら、WO2012/014076、またはWO2012/168930に記載の培養培地中ではヒト乳房上皮幹細胞または乳房オルガノイドを2ヶ月以上培養および増殖させすることは不可能であり、ここでは少なくとも3回継代される。従って、長期培養された、このような乳房オルガノイドまたは乳房上皮幹細胞集団は本発明の前には存在しなかった。従って、本明細書に記載のように、培養/継代された、または培養/継代することができるオルガノイドまたは幹細胞集団が提供される。 一部の態様において、乳癌オルガノイドは、管腔細胞マーカー、例えば、ケラチン-8(Krt-8)が陽性染色され、基底細胞マーカー、例えば、ケラチン-14(Krt-14)またはケラチン-5(Krt-5)が陰性染色される。従って、一部の態様では、乳癌オルガノイドは管腔細胞を含むが、基底細胞を含まない。一部の態様において、乳癌オルガノイドは、正常乳房組織または非癌乳房オルガノイドにおいて見られるものに匹敵するレベルでKRT-8を発現する。一部の態様において、乳癌オルガノイドは、正常乳房組織または非癌乳房オルガノイドにおいて見られるものと比較して低いレベルでKRT-5および/またはKRT-14を発現する。 本発明の乳癌オルガノイドは、正常乳房組織または非癌乳房オルガノイドにおいて見られるものと比較して低いレベルのCDH1を発現してもよい。乳癌オルガノイドでは上皮間葉転換マーカー(例えば、VIM、ZEB1)は正常乳房組織または非癌乳房オルガノイドと比較して高発現していることがある。乳癌オルガノイドは、正常乳房組織または非癌乳房オルガノイドと比較して低いレベルのE-カドヘリン発現を示すことがある。 本発明の乳癌オルガノイドは、他の乳癌細胞マーカー、例えば、上皮膜抗原、癌抗原15-3(CA15-3)、癌抗原27.29(CA27.29)、癌胎児抗原(CEA)、ウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーター(uPA)、プラスミノゲンアクチベーターインヒビター(PAI-1)、ポドカリキシン、EZH2、および/またはカリクレイン-10を発現してもよい。 肺オルガノイド 一部の態様において、本発明は、肺上皮幹細胞集団を含む肺オルガノイドを提供する。好ましくは、本発明の肺オルガノイドまたは肺上皮幹細胞集団は肺細胞からなる。 一部の態様において、本発明は、嚢胞様構造を有する肺オルガノイドを提供する。一部の態様において、嚢胞様構造は中心管腔を含む。一部の態様において、嚢胞様構造の中心管腔は細胞を全く含まない。他の態様において、嚢胞様構造の中心管腔は肺上皮幹細胞を含み、任意で、中心管腔は肺上皮幹細胞で満たされている。さらに、本発明は、複数の管腔を含有する吻合(anastomosing)嚢胞様構造を有する肺オルガノイドを提供する。従って、一部の態様において、オルガノイドのある位置では、少なくとも1つの管腔の境界が、少なくとも1つの他の別個の管腔の境界から枝分かれし、これらの境界は、オルガノイドの別の位置で互いに再接続する。従って、一部の態様において、本発明の肺オルガノイドには、本質的に図26でhsLung18Tオルガノイド株について示したような構造がある。 一部の態様において、本発明の肺オルガノイドには、複数の層で形成された区域がある。一部の態様において、本発明の肺オルガノイドには、本明細書において「偽重層」細胞領域と呼ばれる、複数の層で形成されているように見える単層区域がある。例えば、一部の態様において、肺オルガノイドには、例えば、図26でhsLung18Nオルガノイド株について示したような「偽重層細胞」領域がある。一部の態様において、偽重層細胞の単層は折り重なって、折り重なりの間に管腔を囲い込む。 一部の態様において、本発明の肺オルガノイドは、折り重なって(または陥入して)2つ以上の層を形成する単一の単層を含む。時として、折り重なった(または陥入した)単層と、重層細胞領域を区別することが難しいことがある。一部の態様において、オルガノイドは、重層細胞領域と、折り重なった単層の領域を両方とも含む。一部の態様において、本発明の肺オルガノイドには、複数の層で形成された区域と、単一の細胞単層を含む区域がある。一部の態様において、本発明の肺オルガノイドは単一の細胞単層を含むか、または単一の細胞単層からなる。 一部の態様において、本発明の肺オルガノイドは上皮細胞を含むか、または上皮細胞からなる。一部の態様において、肺オルガノイドは上皮細胞単層を含むか、または上皮細胞単層からなる。一部の態様において、前記オルガノイドには非上皮細胞が無い。 本発明に従って作製された肺オルガノイドの説明に役立つ例を添付の図面に示した。1つの態様において、本発明の肺オルガノイドには、本質的に図26で示したような構造(例えば、一部の態様では、正常オルガノイドには、本質的にhsLung18Nオルガノイド株について示したような構造がある。または、肺癌オルガノイドには、本質的に図26でhsLung18T、hsLung11T、hsLung12T、hsLung2T、もしくはhsLung13T1オルガノイド株について示したような構造がある)、または図15もしくは図24に示したような構造がある。1つの態様において、本発明の肺オルガノイドは、本質的に図17または図24で示したような細胞染色を示す。 一部の態様において、肺オルガノイドは、主に、出芽構造がほとんどない嚢胞構造である。一部の態様において、本発明に従って作製された肺オルガノイドには出芽構造がない。嚢胞構造は主に単層を含むが、いくつかの重層細胞領域が存在してもよい。 「嚢胞」とは、オルガノイドがほぼ球状であることを意味する。「出芽」とは、オルガノイドに、基本構造から成長している複数の領域があることを意味する。 本発明の改善された培養条件下では、肺オルガノイドは、以前の培養条件下で見られた出芽構造ではなく、嚢胞オルガノイド構造を示した。 一部の態様において、本発明の肺オルガノイドは嚢胞単層多列上皮を含む。 本発明はまた、中心管腔を取り囲む上皮細胞を含む三次元オルガノイドである肺オルガノイド、好ましくは、本発明の方法により入手可能な肺オルガノイドを提供する。 一部の態様において、前記肺オルガノイドは細胞の単層を含む。他の態様において、前記オルガノイドは多層上皮を含む。 一部の態様において、肺オルガノイドは正常肺組織から得られ、嚢胞構造を有する。一部の態様において、前記正常オルガノイドは、中心管腔を取り囲む、基底細胞および管腔細胞の単層を含む。 一部の態様において、肺オルガノイドは癌肺組織から得られ、嚢胞構造を有する。一部の態様において、前記オルガノイドは、(i)中心管腔、複数の小さな管腔を含むか、もしくは管腔を含まない、および/または(ii)上皮細胞単層もしくは多層上皮を含む。従って、一部の態様において、本発明の肺癌オルガノイドは、管腔を取り囲む上皮細胞単層を含む。他の態様において、肺癌オルガノイドは多層上皮および複数の小さな管腔を含む。さらなる態様において、肺癌オルガノイドは多層上皮を含み、管腔を含まない。肺癌オルガノイドは、任意で、腫瘍細胞の固い球状のものを含む。一部の態様において、肺癌オルガノイドは、ふるい状の、面皰の、または固い形態を示す。 一部の態様において、本発明の肺癌オルガノイドは、肺上皮幹細胞で満たされた1つまたは複数の管腔を含む。一部の態様において、本発明の肺オルガノイドは正常肺組織から得られ、肺上皮幹細胞で満たされていない中心管腔を含む(例えば、一部の態様では、正常オルガノイドの中心管腔は肺上皮幹細胞を含まない)。 肺癌細胞または肺癌オルガノイドの腫瘍状況は任意の適切な方法を用いて確認することができる。例えば、異数性が存在するかどうか評価するために、細胞またはオルガノイドの核型決定を行うことができる。異数性が存在したら、細胞またはオルガノイドは腫瘍細胞または腫瘍オルガノイドであると示唆されるだろう。腫瘍細胞または癌オルガノイドはまた、p53安定化剤を培養培地に添加することによって特定される場合がある。腫瘍細胞および癌オルガノイドは、普通、細胞増殖および生存への影響がなく、p53発現を安定化する作用に対して機能しない変異p53タンパク質をもたらし得るp53変異を含有する。p53変異をもつ腫瘍細胞のサブセットは、p53安定化の有害な作用から逃れるのを可能にする、さらなるゲノム変化を有することがある。従って、腫瘍細胞は正常細胞と異なり、p53安定化剤(例えば、Nutlin-3)を培養培地に添加することによって誘導される老化を回避できることが多い。 一部の態様において、肺オルガノイドは少なくとも6ヶ月間、増殖させることができ、大幅なコピー数のばらつきを示さない。一部の態様において、肺癌オルガノイドはかなりのコピー数のばらつきを示し、任意で、1つまたは複数の(例えば、1つ、2つ、3つの、またはそれより多い)肺癌シグネチャー遺伝子(例えば、EGFR、TP53、およびPIK3CA)における変異を含んでもよい。 一部の態様において、肺オルガノイドは繊毛細胞を含む。一部の態様において、肺オルガノイドは、以下の細胞タイプ:クララ細胞、基底細胞、繊毛細胞、および杯細胞の1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、3つ、または全て)を含む。一部の態様において、肺オルガノイドは、基底細胞、繊毛細胞、および杯細胞を含む。一部の態様において、肺オルガノイドは、基底細胞、繊毛細胞、および杯細胞を含む単層オルガノイドである。一部の態様において、肺オルガノイドは近位肺上皮を表す。一部の態様において、オルガノイドは近位肺上皮に相当する、ならびに/またはクララ細胞、基底細胞、繊毛細胞、および杯細胞を含む。一部の態様において、肺オルガノイドは、クララ細胞、基底細胞、繊毛細胞、および杯細胞を含む不均一な細胞集団からなる単層多列上皮培養物であり、このオルガノイドは近位肺上皮に相当する。 一部の態様において、繊毛細胞の繊毛は肺オルガノイドの管腔の中に突き出ている。一部の態様において、繊毛細胞は同期運動することができる。一部の態様において、繊毛細胞は同期的に運動している。これは、同期的に運動している繊毛細胞を含む肺オルガノイドが説明された初めてのことである。同期運動していることは、肺オルガノイドがインビボ肺上皮の構造および機能をよく似て反映していることを意味するので、このことは特に有利である。従って、肺組織の再生において使用するために、本発明の肺オルガノイドは、以前に利用可能であった方法を用いて入手した肺細胞より適している。繊毛細胞とその同期運動が存在することは、移植された肺オルガノイドが粘液を下気道から遠ざけるように進ませ、それによって、粒子物質および微生物を肺から押し流し、その結果、肺損傷および肺感染の可能性を小さくできることを意味する。 一部の態様において、肺オルガノイドは、全肺試料と比較して、以下のマーカーセット:(i)1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類の、またはそれより多い)呼吸系列マーカー(例えば、NKX2-1)、(ii)1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類の、またはそれより多い)上皮細胞マーカー(例えば、CDH1および/またはCLDN1)、(iii)1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類の、またはそれより多い)基底細胞マーカー(例えば、KRT5)、(iv)1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類の、またはそれより多い)繊毛細胞マーカー(例えば、DNAH5および/またはNPHP1)、(v)1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類の、またはそれより多い)クララ細胞マーカー(例えば、SCGB1A1)、ならびに(vi)1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類の、またはそれより多い)杯細胞マーカー(例えば、AGR2)のうち、1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または全て)のアップレギュレートされた発現を示す。 一部の態様において、肺オルガノイドは、全肺試料と比較して、以下のマーカーセット:(i)1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類の、またはそれより多い)肺間葉マーカー(例えば、HOXA5)、(ii)1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類の、またはそれより多い)神経内分泌細胞マーカー(例えば、UCHL1)、(iii)1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類の、またはそれより多い)遠位上皮細胞マーカー(例えば、ID2)、ならびに(iv)1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類の、またはそれより多い)II型肺胞細胞マーカー(例えば、ABCA3および/またはSFTPA1)のうち、1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、3つ、または全て)のダウンレギュレートされた発現を示す。 一部の態様において、肺オルガノイドは、(A)全肺試料と比較して、以下のマーカーセット:(i)1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類の、またはそれより多い)呼吸系列マーカー(例えば、NKX2-1)、(ii)1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類の、またはそれより多い)上皮細胞マーカー(例えば、CDH1および/またはCLDN1)、(iii)1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類の、またはそれより多い)基底細胞マーカー(例えば、KRT5)、(iv)1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類の、またはそれより多い)繊毛細胞マーカー(例えば、DNAH5および/またはNPHP1)、(v)1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類の、またはそれより多い)クララ細胞マーカー(例えば、SCGB1A1)、ならびに(vi)1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類の、またはそれより多い)杯細胞マーカー(例えば、AGR2)のうち、1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または全て)のアップレギュレートされた発現と、(B)全肺試料と比較して、以下のマーカーセット:(i)1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類の、またはそれより多い)肺間葉マーカー(例えば、HOXA5)、(ii)1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類の、またはそれより多い)神経内分泌細胞マーカー(例えば、UCHL1)、(iii)1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類の、またはそれより多い)遠位上皮細胞マーカー(例えば、ID2)、ならびに(iv)1種または複数種の(例えば、1種類、2種類、3種類の、またはそれより多い)II型肺胞細胞マーカー(例えば、ABCA3および/またはSFTPA1)のうち、1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、3つ、または全て)のダウンレギュレートされた発現を示す。 一部の態様において、肺オルガノイドはCC10、Krt14、および/またはアセチル化α-チューブリンが陽性染色される。 一部の態様において、肺癌オルガノイドは、1種または複数種の肺癌シグネチャー遺伝子(例えば、EGFR、TP53、および/またはPIK3CA)に変異を保有する。一部の態様において、肺癌オルガノイドは、図13に列挙した遺伝子の1つまたは複数に変異を保有する。 例えば、一部の態様において、肺癌オルガノイドは、以下の遺伝子:ERCC2、IL1RAP、MST4、PLCB1、SMC3、SOS2、およびTWF1の1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、または全て)に変異を保有する。 例えば、一部の態様において、肺癌オルガノイドはHSP0AA1および/またはBLMに変異を保有する。 例えば、一部の態様において、肺癌オルガノイドは、FLNB、NRG1、SUV39H1、およびZFYVE16に変異を保有する。 例えば、一部の態様において、肺癌オルガノイドは、以下の遺伝子:ALKBH3、ANK2、ANK3、CAMKK2、CDC42BPB、CENPE、CTNNA2、EGFR、ERBB2、FANCA、HES1、IRAK1、LAMC2、NOTCH1、PRKAA1、TCF7、TP53、およびVAV3の1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、または全て)に変異を保有する。 例えば、一部の態様において、肺癌オルガノイドは、以下の遺伝子:CDC14A、DUSP4、FLCN、FLT1、PTPRD、RELA、TRIM28、およびTRPM6の1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または全て)に変異を保有する。 例えば、一部の態様において、肺癌オルガノイドは、以下の遺伝子:ALK、ALPK1、AURKA、BMP2、BRCA1、BRCA2、CCNA2、CDH1、CSNK2A3、E2F1、EGF、EGFR、ELK3、ERBB2、FGFR2、HGF、IGF1R、LRP6、NEK11、NF1、NRG1、PAK7、PARP1、PCNA、PDGFRL、PIK3CA、PIK3CG、PTK2B、RXRG、SETD2、TGFBR2、XRCC1の1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、または全て)に変異を保有する。 少なくとも2ヶ月、例えば、少なくとも10週間、少なくとも12週間、少なくとも14週間、少なくとも16週間、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも1年にわたって本発明の培養培地中で培養されている肺オルガノイドまたは肺上皮幹細胞集団が提供される。好ましくは、前記細胞はヒト細胞である。好ましくは、前記細胞は約1〜4週間ごとに継代されている。 3継代を超えて、4継代を超えて、5継代を超えて、6継代を超えて、7継代を超えて、8継代を超えて、9継代を超えて、10継代を超えて、11継代を超えて、12継代を超えて、13継代を超えて、または14継代を超えて継代されているか、または継代することができる肺オルガノイドまたは肺上皮幹細胞集団も提供される。 本発明は、本発明の肺オルガノイドまたは細胞、細胞外マトリックスおよび培養培地、好ましくは、本発明の培養培地を含む組成物を提供する。 オルガノイドの使用 オルガノイドを形成し、維持し、および増殖させるために幹細胞を培養するための培養培地および方法に関心がある。オルガノイドは、未分化表現型および自己再生特性を保持している幹細胞、例えば、上皮幹細胞を含むが、成長して組織様構造になることができる分化中の子孫も有する。関連する、または同一の細胞の集団と同様に、オルガノイドは組織の基本生理機能をよく似て摸倣し、毒性アッセイまたは薬物のアッセイにおいて使用することができる。オルガノイドはまた、現在、適切な組織培養モデルまたは動物モデルが無い病原体を培養するのに有用な可能性がある。さらに、このようなオルガノイドは再生医療において有用な可能性がある。 幹細胞およびその分化した子孫に多くの臨床用途および研究用途があることは明らかである。これらの全ての用途のためには、十分な数の適切な品質の細胞を準備するための、再現性のある培養方法が最も重要である。例えば、効果的な薬物スクリーニングのためには、条件を注意深く管理しなければならず、細胞の分化および増殖を制御するための厳密な培養方法が必要であり、そのため、表現型および核型が同一の細胞の純粋な集団を作製しなければならない。同様に、培養細胞が患者に直接提供されることがある、細胞に基づく療法の場合、患者に提供された時に望ましくない免疫応答または細胞運命を避けるためには、細胞は遺伝的および表現型的に正しくなければならない。 本発明は、医学において使用するための本発明のオルガノイドまたは増殖させた細胞集団の使用を提供する。従って、本発明は、障害、状態、または疾患の治療において使用するための本発明のオルガノイドまたは増殖させた細胞集団の使用を提供する。本発明は、薬物スクリーニング、(薬物)ターゲットバリデーション、(薬物)ターゲット発見、毒物学および毒性スクリーニング、個別化医療、再生医療において、ならびに/またはエクスビボ細胞/臓器モデル、例えば、疾患モデルとして使用するための本発明のオルガノイドまたは増殖させた細胞集団の使用を提供する。 本発明の培地および方法に従って培養された細胞およびオルガノイドはインビボの状況を忠実に表していると考えられる。これは、正常組織から成長させ増殖させた細胞集団およびオルガノイド、ならびに疾患組織から成長させ増殖させた細胞集団およびオルガノイドに当てはまる。従って、本発明のオルガノイドまたは増殖させた細胞集団は正常なエクスビボ細胞/臓器モデルを提供するだけでなく、エクスビボ疾患モデルとしても使用することができる。 本発明のオルガノイドはまた病原体を培養するのに使用することもでき、従って、エクスビボ感染モデルとして使用することができる。本発明のオルガノイドを用いて培養され得る病原体の例には、動物宿主において疾患を引き起こすウイルス、細菌、プリオン、または菌類が含まれる。従って、本発明のオルガノイドは、感染状態を表す疾患モデルとして使用することができる。本発明の一部の態様において、オルガノイドはワクチンの開発および/または生産において使用することができる。 従って、本発明のオルガノイドによって研究することができる疾患は、遺伝病、代謝性疾患、病原性疾患、炎症性疾患などを含む。従来より、エクスビボ細胞/臓器モデルおよび/または疾患モデルとして、細胞株、つい最近ではiPS細胞が用いられてきた(例えば、Robinton et al. Nature 481, 295, 2012を参照されたい)。しかしながら、これらの方法には多くの問題および欠点がある。例えば、全ての患者から細胞株を入手することができない(ある特定の生検材料だけが、成功した細胞株になる)。従って、個別化された診断法および医療において細胞株を使用することができない。iPS細胞は、通常、細胞を特定の細胞運命にリプログラミングするために、ある程度の遺伝子操作を必要とする。または、iPS細胞は、核型完全性に影響を及ぼす培養条件にかけられ、そのため、培養時間を最小限に抑えなければならない(これはヒト胚性幹細胞にも当てはまる)。これは、iPS細胞がインビボ状況を正確に表すことができず、その代わりに、インビボ細胞の挙動を模倣しようという試みであることを意味する。細胞株およびiPS細胞には遺伝的不安定性もある。 対照的に、本発明のオルガノイドは、インビボ状況を忠実に表す遺伝的に安定したプラットフォームを提供する。本発明のオルガノイドを連続的に増殖させて、遺伝的に安定した細胞の優れた供給源とすることもできる。特に、増殖中の集団を「スプリット」することができる。「スプリット」とは、オルガノイドを分割し、オルガノイドの全ての細胞を分けて新たな培養皿またはフラスコに入れることを意味する。分けられた細胞はオルガノイドから取り出され、次いで、それ自体を培養および増殖させて、さらに増殖した集団を含有する新たなオルガノイドを生成することができ、次いで、新たなオルガノイドを再度スプリットすることができる。スプリットは本明細書において「継代」とも呼ばれる。本発明のオルガノイドは、1継代以上、例えば、1継代、2継代、3継代、4継代、5継代、6継代、7継代、8継代、9継代、10継代、15継代、20継代、25継代、30継代、またはそれより多く、例えば、20〜30継代、30〜35継代、32〜40継代、またはそれより多く培養されてもよい。一部の態様において、増殖中の細胞集団またはオルガノイドは、3日から10週間ごとに、1〜10週間ごとに、1〜4週間ごとに、または10日〜3週間ごとにスプリットされる。一部の態様において、オルガノイドは約10日〜3週間ごとに継代される。従って、本発明のオルガノイドは、遺伝的に安定した細胞材料の持続的な供給源を提供することができる。従って、本発明のオルガノイドを用いて、様々な疾患および治療剤への機構的洞察を得ることができる、インビトロ薬物スクリーニングを実施することができる、潜在的な治療剤を評価することができる、未来の新規の(薬物)療法開発のための可能性のある標的(例えば、タンパク質)を特定することができる、および/または細胞置換療法に関連した遺伝子修復を探索することができる。 これらの理由のために、本発明のオルガノイドまたは増殖した細胞集団は、薬物スクリーニング、ターゲットバリデーション、ターゲット発見、毒物学および毒性スクリーニング、ならびに個別化医療のためのツールとなり得る。 薬物スクリーニング 好ましくはハイスループット目的で、前記の本発明の増殖した幹細胞集団またはオルガノイドは、マルチウェルプレート、例えば、96ウェルプレートまたは384ウェルプレートの中で培養される。前記オルガノイドに影響を及ぼす分子を特定するために分子ライブラリーが用いられる。好ましいライブラリーは、抗体断片ライブラリー、ペプチドファージディスプレイライブラリー、ペプチドライブラリー(例えば、LOPAP(商標), Sigma Aldrich)、脂質ライブラリー(BioMol)、合成化合物ライブラリー(例えば、LOP AC(商標), Sigma Aldrich)、または天然化合物ライブラリー(Specs, TimTec)を含む。さらに、幹細胞の子孫における1種または複数種の遺伝子の発現を誘導または抑制する遺伝子ライブラリーを使用することができる。これらの遺伝子ライブラリーは、cDNAライブラリー、アンチセンスライブラリー、およびsiRNAライブラリーまたは他の非コードRNAライブラリーを含む。細胞は、好ましくは、ある特定の期間、複数の濃度の試験薬剤に曝露される。曝露期間の終わりに培養物が評価される。「影響を及ぼす」という用語は、増殖、形態学的変化、および細胞死の低減または消失を含むが、これに限定されない細胞における任意の変化をカバーするために用いられる。前記の本発明の増殖した幹細胞集団またはオルガノイドはまた、特異的に、癌細胞、本発明の癌細胞または癌オルガノイドを標的とするが、正常細胞、例えば、本発明の正常な増殖した幹細胞集団または正常なオルガノイドを標的としない薬物を特定するのに使用することもできる。もちろん、薬物スクリーニングが常にハイスループットである必要はなく、本発明のオルガノイドおよび細胞は、個々の薬物候補を試験するのにも有用である。 オルガノイドはまた、さらに広範囲の創薬目的に有用である。本発明のオルガノイドは、ヒト組織の感染性病態、炎症性病態、および新生物性病態の薬物スクリーニングツールとして広範囲に適用できることが当業者によって理解されるだろう。例えば、本発明のオルガノイドは、ヒト組織の感染性病態、炎症性病態、および新生物性病態の薬物スクリーニングツールとして広範囲に適用することができるだろう。一部の態様において、本発明のオルガノイドは癌の薬のスクリーニングに使用することができるかもしれない。 一部の態様において、増殖した細胞集団、例えば、本発明のオルガノイドまたは本発明の培地および方法を用いて入手したオルガノイドは、化学薬品、抗体、天然物(植物抽出物)など、または特定の既知の薬物のライブラリーを、薬物、化粧品、および/または予防薬としての使用のための適性について試験するのに使用することができる。例えば、一部の態様において、関心対象の患者に由来する細胞生検材料、例えば、癌患者に由来する腫瘍細胞を、本発明の培養培地および方法を用いて培養し、次いで、関心対象の化合物もしくは化合物ライブラリーまたは1種もしくは複数種の薬物で処理することができる。次いで、どの化合物が患者の細胞を効果的に改変、死滅、および/または治療するかを確かめることができる。これにより、特定の薬物に対する特定の患者の応答性を試験することが可能になり、従って、治療を特定の患者に合わせることが可能になる。従って、これにより個別化医療アプローチが可能になる。このように薬物を特定するためにオルガノイドを使用する、さらなる利点は、どの薬物および化合物が健常組織に対して最低限の影響しか及ぼさないか調べるために、正常オルガノイド(健常組織に由来するオルガノイド)もスクリーニングできることである。これにより、最低限のオフターゲット活性または不必要な副作用しかない薬物のスクリーニングが可能になる。このように、任意の数の疾患の薬物をスクリーニングすることができる。 試験パラメータは関心対象の疾患によって決まる。例えば、癌の薬をスクリーニングする時には、通常、癌細胞死が究極目的である。他の態様において、関心対象の細胞またはオルガノイドに対するスクリーニングの化合物および薬物の効果を研究するために、代謝または遺伝子発現が評価されてもよい。 従って、本発明は、以下の工程を含む、治療用または予防用の薬物をスクリーニングするための方法を提供する: 本発明の増殖した細胞集団(例えば、オルガノイド)を、例えば、本発明の培養培地と共に培養する工程; 前記の本発明の増殖した細胞集団(例えば、オルガノイド)を候補分子の1つまたはライブラリーに曝露する工程; 前記の増殖した細胞集団(例えば、オルガノイド)を、任意の効果、例えば、任意の細胞変化、例えば、増殖の低減もしくは消失、形態学的変化、および/または細胞死について評価する工程; 潜在的な薬物として、前記効果を引き起こす候補分子を特定する工程。 一部の態様において、細胞の変化は病原体の存在または非存在である。 一部の態様において、スクリーニングの処理量を増やすために、コンピュータまたはロボットの補助による培養方法およびデータ収集方法が用いられる。 一部の態様において、増殖した細胞集団(例えば、オルガノイド)は患者生検材料から得られる。一部の態様において、培養され増殖した細胞集団(例えば、オルガノイド)において望ましい効果を引き起こす候補分子が前記患者に投与される。 従って、1つの局面において、以下の工程を含む、患者を治療するための方法が提供される: (a)患者において関心対象の疾患組織から生検材料を得る工程; (b)本発明のスクリーニング方法を用いて適切な薬物をスクリーニングする工程、例えば、本発明の増殖した細胞集団(例えば、オルガノイド)を本発明の培養培地と共に培養する工程、 本発明の増殖した細胞集団(例えば、オルガノイド)を公知の薬物の1つまたはライブラリーに曝露する工程、 前記増殖した細胞集団(例えば、オルガノイド)を、任意の効果、例えば、任意の細胞変化、例えば、増殖の低減もしくは消失、形態学的変化、および/または細胞死について評価する工程、 適切な薬物として、前記効果を引き起こす候補分子を特定する工程;ならびに (c)工程(b)において得られた薬物を用いて前記患者を治療する工程。 例えば、本発明は、患者における癌を治療する方法であって、本発明の薬物スクリーニング方法を用いて、関心対象の1種または複数種の薬物に対する患者の応答性を試験する工程、次いで、患者が薬物に応答することが分かったら、薬物を用いて患者を治療する工程を含む、方法を提供する。 同様に、癌患者の治療において使用するための癌の薬であって、前記治療が、本発明の薬物スクリーニング方法を用いて、薬物に対する患者の応答性を試験する工程、および患者が薬物に応答することが分かったら、薬物を用いて患者を治療する工程を含む、癌の薬が提供される。 一部の態様において、薬物は、遺伝病、代謝性疾患、病原性疾患、炎症性疾患などの症状の治療、予防、または寛解に用いられる。 一部の態様において、薬物標的は、イオンチャンネル、例えば、塩素イオンチャネル(例えば、TMEM16A)である。 ターゲット発見 一部の態様において、本発明のオルガノイドまたは本発明の培養培地および方法を用いて成長させた細胞をターゲット発見に使用することができる。健常組織または疾患組織から生じたオルガノイドの細胞が標的特定に用いられてもよい。 本発明の培地および方法に従って培養された細胞およびオルガノイドは、インビボ状況を忠実に表していると考えられている。この理由から、本発明の培地および方法に従って培養された細胞およびオルガノイドは、特定の疾患において新規の(分子)標的を発見するツールになり得る。 新たな薬物標的を探索するために、化合物(例えば、siRNA)ライブラリーを用いて、細胞に形質導入し、特定の遺伝子を不活化することができる。一部の態様において、(大きな)遺伝子グループの機能を阻害するためにsiRNAが細胞に形質導入される。遺伝子グループまたは特定の細胞機能の任意の機能読み取り値を用いて、標的が研究に関係するかどうか確かめることができる。疾患特異的な読み取り値は、当技術分野において周知のアッセイを用いて確かめることができる。例えば、癌に関与する遺伝子を試験するために細胞増殖がアッセイされる。例えば、本明細書に記載のTopflashアッセイを用いて、siRNA阻害によって引き起こされるWnt活性の変化を検出することができる。成長の低下または細胞死が起こる場合、対応するsiRNA関連遺伝子を、当技術分野において公知の方法によって特定することができる。これらの遺伝子は、これらの細胞の成長を阻害するための可能性のある標的である。特定されたら、試験された細胞プロセスに対する、特定された標的の特異性を、当技術分野において周知の方法によって確かめる必要があるだろう。これらの方法を用いて、療法のための可能性のある薬物標的として新たな分子を特定することができる。 標的および薬物のバリデーションスクリーニング 疾患組織および/または正常組織から入手した患者特異的オルガノイドを、ハイスループットスクリーニングにおいて特定された分子のターゲットバリデーションに使用することができる。同じことが、ハイスループットスクリーニングにおいて可能性のある治療薬として特定された化合物のバリデーションについても当てはまる。ハイスループット創薬細胞株研究からの偽陽性などについて試験するために、オルガノイド培養系において増殖させた初代患者材料の使用が有用な場合がある。 一部の態様において、ハイスループットスクリーニングにおいて可能性のある薬物または化粧品として特定された化合物のバリデーションのために、増殖した幹細胞集団(例えば、本発明のオルガノイド)を使用することができる。 毒性アッセイ さらに、潜在的な新規の薬物または公知の薬物の毒性アッセイにおける細胞株の使用の代わりに、前記の増殖した幹細胞集団(例えば、本発明のオルガノイド)を使用することができる。好ましくは、これらの態様には、正常細胞または正常オルガノイドが用いられる。しかしながら、癌細胞または癌オルガノイドが用いられる場合があることも想定される。 毒性スクリーニングは薬物スクリーニング(前記)と同様に機能するが、薬物の毒性作用を試験し、治療効果を試験しない。従って、一部の態様において、候補化合物の作用は毒性作用である。 病原体の培養 さらに、前記の増殖した幹細胞集団(例えば、本発明のオルガノイド)は、病原体、例えば、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ヒト乳癌ウイルス(HMTV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、ハイリスクヒトパピローマウイルス(HPV)、結核菌、ストレプトコッカス・ウベリス(Streptococcus uberis)、ストレプトコッカス・ディスガラクティエ(Streptococcus dysgalactiae)、大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌、またはストレプトコッカス・アガラクチアを培養するのに使用することができる。 療法モニタリングおよび薬物耐性の原因の特定 さらに、前記の増殖した幹細胞集団(例えば、本発明のオルガノイド)は、患者における疾患の進行をモニタリングすると共に、増殖した幹細胞集団における疾患の進行をモニタリングするのに使用することができる。従って、例えば、薬物耐性の原因および適切な療法を特定するために、増殖した癌幹細胞集団を癌患者から入手することができ、次いで、この患者を、ある特定の薬物または薬物の組み合わせで治療することができ、患者が、薬物または薬物の組み合わせに対する耐性を発生しているのであれば、第2の増殖した癌幹細胞集団を患者から入手し、第1の癌幹細胞集団と比較することができるかもしれない。 従って、前記の増殖した幹細胞集団(例えば、本発明のオルガノイド)は、薬物耐性の原因を特定するのに使用することができる。従って、例えば、薬物耐性の原因を特定するために、増殖した癌幹細胞集団を癌患者から入手することができ、次いで、この患者を、ある特定の薬物または薬物の組み合わせで治療することができ、患者が、薬物または薬物の組み合わせに対する耐性を発生しているのであれば、第2の増殖した癌幹細胞集団を患者から入手し、第1の癌幹細胞集団と比較することができるかもしれない。 薬物による処置に応答する幹細胞集団と比較して、耐性のある幹細胞集団の遺伝子変化を特定することによって、薬物耐性の原因が特定される可能性がある。特定された遺伝子変化は、耐性のある幹細胞集団を処置するのに有効な新薬を開発するのに使用することができる。特定された遺伝子変化はまた、薬物耐性を発生した患者に、どの公知の薬物または公知の薬物の組み合わせを投与すべきかに関する臨床上の決定を知らせるのに用いられる可能性がある。 再生医療および移植 増殖した幹細胞集団(例えば、本発明のオルガノイド)を含む培養物は、再生医療において、例えば、放射線後および/もしくは手術後の組織修復において、または組織損傷後の組織修復において有用である。別の態様において、増殖した上皮幹細胞はリプログラミングされて、関連する組織運命になる。さらに、損傷組織または疾患組織の修復に向けた方法において遺伝子療法を使用できることは当業者に明らかであろう。例えば、DNAおよび/またはRNAのような遺伝情報を幹細胞に送達するためにアデノウイルス遺伝子送達ビヒクル、レンチウイルス遺伝子送達ビヒクル、またはレトロウイルス遺伝子送達ビヒクルを使用することができる。当業者は、遺伝子療法において標的化された特定の遺伝子を置換または修復することができる。例えば、非機能性遺伝子を置換するために、正常遺伝子がゲノム内の非特異的位置に挿入されてもよい。別の例では、相同組換えによって正常遺伝子配列の代わりに異常な遺伝子配列が置換されてもよい。または、選択的復帰変異によって遺伝子が正常機能に戻ることがある。さらなる例は、特定の遺伝子の調節(遺伝子がオンまたはオフされる程度)の変化である。好ましくは、幹細胞は遺伝子療法アプローチによってエクスビボ処理され、その後に、治療を必要とする哺乳動物、好ましくは、ヒトに導入される。 明らかな制限が無く、または遺伝子に害を与えずに、成体ドナーから採取した小さな生検材料を増殖させることができるので、前記技術は、再生目的で移植可能な上皮を作製するのに役立つかもしれない。さらに、一部の態様において、ECMに埋め込まれているオルガノイドまたはECMと接触しているオルガノイドを哺乳動物、好ましくは、ヒトに移植することができる。別の態様において、オルガノイドおよびECMを同時に哺乳動物、好ましくは、ヒトに移植することができる。 当業者であれば、本発明による増殖させた細胞集団またはオルガノイドを含む組織様構造を入手するための3DスキャフォールドとしてECMを使用することができると理解するだろう。次いで、当技術分野において周知の方法によって、このような構造を患者に移植することができる。ECMスキャフォールドは、コラーゲンおよび/またはラミニンなどのECMタンパク質を用いて合成により作ることができる。または、ECMスキャフォールドは、ECMからなるスキャフォールドを残すように、単離された臓器または組織断片を「脱細胞(decellularising)」することによって入手することができる(例えば、Macchiarini et al. The Lancet, Volume 372, Issue 9655, Pages 2023-2030, 2008を参照されたい)。一部の態様において、ECMスキャフォールドは臓器または組織断片を脱細胞することによって入手することができ、任意で、前記臓器または組織断片は肺、乳房、膵臓、肝臓、腸、胃、心臓、腎臓、または前立腺に由来し、例えば、乳房、膵臓、肝臓、腸、胃、心臓、腎臓、または前立腺に由来する。 前述したように、本発明は、哺乳動物、好ましくは、ヒトへの移植において使用するための本発明のオルガノイドまたは細胞集団を提供する。 好都合なことに、本発明を用いると、小さな生検材料を成体ドナーから採取し、明らかな制限が無く、または遺伝子に害を与えずに増殖させることができる。従って、本明細書において提供される技術は、再生目的で、移植可能な上皮を作製するのに役立つかもしれない。 患者は、好ましくは、ヒトであるが、代わりに、非ヒト哺乳動物、例えば、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウサギ、またはマウスでもよい。 従って、細胞療法によってヒトまたは非ヒト動物患者を治療する方法が本発明の範囲内に含まれる。このような細胞療法は、任意の適切な手段によって本発明の幹細胞またはオルガノイドを患者に適用することを含む。具体的には、このような治療方法は損傷組織の再生を伴う。本発明によれば、患者を同種異系または自己由来の幹細胞またはオルガノイドで治療することができる。「自己由来」細胞は、例えば組織を再生するため、細胞療法のために細胞が再導入されている生物と同じ生物に由来する細胞である。しかしながら、この細胞は、細胞が導入されている組織と同じ組織から単離されているとは限らない。自己由来細胞は、拒絶反応問題を克服するために患者との一致を必要としない。「同種異系」細胞は、例えば組織を再生するため、細胞療法のために細胞が再導入されている個体とは異なるが、同種の個体に由来する細胞である。拒絶反応問題を阻止するために、ある程度の患者一致がなお必要とされる場合がある。 一般的に、本発明の細胞またはオルガノイドは注射または移植によって患者の身体に導入される。一般的に、細胞は、細胞が作用するように意図されている組織に直接注射される。本発明の細胞および薬学的に許容される担体を含有する注射器が本発明の範囲内に含まれる。本発明の細胞および薬学的に許容される担体を含有する注射器に取り付けられたカテーテルが本発明の範囲内に含まれる。 当業者であれば、移植されている材料(すなわち、細胞集団、細胞懸濁液中の単一の細胞、オルガノイド、またはオルガノイド断片)に応じて適切な投与方法および投与経路を選択することができるだろう。 前述したように、本発明の細胞を組織再生において使用することができる。この機能を実現するために、細胞を損傷組織に直接、注射または移植してもよく、この場所で増えて、最終的に、必要とされる細胞タイプに分化してもよい。または、オルガノイドを損傷組織に直接、注射または移植することができる。治療しやすい組織には、全ての損傷組織が含まれ、特に、疾患(例えば、癌)、損傷、外傷、自己免疫反応、またはウイルス感染もしくは細菌感染によって傷つけられた可能性のある組織が含まれる。本発明の一部の態様において、本発明の細胞またはオルガノイドは、肝臓系、乳房系、結腸系、小腸系、膵臓系、食道系、または胃系を再生するのに用いられる。本発明の一部の態様において、本発明の細胞またはオルガノイドは、肺系、肝臓系、乳房系、結腸系、小腸系、膵臓系、食道系、唾液腺系、内耳上皮系、胸腺系、または胃系を再生するのに用いられる。 例えば、1つの態様において、本発明の細胞またはオルガノイドはハミルトン(Hamilton)注射器を用いて患者に注射される。従って、本発明は、本発明の細胞またはオルガノイドを含む注射器を提供する。 当業者であれば、治療しようとする特定の状態について、本発明の細胞またはオルガノイドの適切な投与量がどれくらいであるかを知っているだろう。 1つの態様において、本発明の細胞またはオルガノイドは、溶解状態で、様々な組成物のマイクロスフェアまたは微小粒子に入れられて動脈に投与され、再生を必要とする損傷臓器の組織または一部に灌注される。一般的に、このような投与はカテーテルを用いて行われる。カテーテルは、血管形成術および/もしくは細胞送達に用いられる多種多様なバルーンカテーテルまたは身体の特定の局所領域に細胞を送達するという特定の目的のために設計されたカテーテルの1つでもよい。ある特定の用途では、細胞またはオルガノイドは、多数の異なる生分解性化合物で作られた、直径約15μmのマイクロスフェアに封入されてもよい。この方法を用いると、血管内に投与された細胞またはオルガノイドは損傷部位に留まり、初回通過において毛細血管網を通って体循環に入らないことが可能になるかもしれない。毛細血管網の動脈側に保持されると血管外空間への移動も容易になるかもしれない。 別の態様において、本発明の細胞またはオルガノイドは生体適合性移植片に付着した状態で損傷組織に移植されてもよい。この態様の中で、細胞はインビトロで生体適合性移植片に付着された後に、患者に移植されてもよい。当業者に明らかなように、移植前に、細胞を移植片に付着させるために多数の接着剤のいずれか1つが用いられてもよい。一例にすぎないが、このような接着剤は、フィブリン、インテグリンファミリーの1つまたは複数のメンバー、カドヘリンファミリーの1つまたは複数のメンバー、セレクチンファミリーの1つまたは複数のメンバー、1種または複数種の細胞接着分子(CAM)、免疫グロブリンファミリーの1つまたは複数、および1種または複数種の人工接着剤を含んでもよい。このリストは例としてしか示されず、限定することを目的としない。1種または複数種の接着剤の任意の組み合わせを使用できることが当業者に明らかであろう。 別の態様において、マトリックスが患者に移植される前に、マトリックスに本発明の細胞またはオルガノイドが埋め込まれてもよい。一般的に、マトリックスは患者の損傷組織に移植される。マトリックスの例には、コラーゲンベースのマトリックス、フィブリンベースのマトリックス、ラミニンベースのマトリックス、フィブロネクチンベースのマトリックス、および人工マトリックスが含まれる。このリストは例としてしか示されず、限定することを目的としない。 さらなる態様において、本発明の細胞またはオルガノイドはマトリックス形成成分と共に患者に移植または注射されてもよい。これにより、注射後または移植後に細胞はマトリックスを形成することが可能になる場合があり、確実に、細胞またはオルガノイドは患者の中の適切な位置に留まる。マトリックス形成成分の例には、フィブリン糊、液体アルキル、シアノアクリレートモノマー、可塑剤、多糖、例えば、デキストラン、酸化エチレン含有オリゴマー、ブロックコポリマー、例えば、ポロキサマーおよびPluronic、非イオン性界面活性剤、例えば、TweenおよびTriton「8」、ならびに人工マトリックス形成成分が含まれる。このリストは例としてしか示されず、限定することを目的としない。1種または複数種のマトリックス形成成分の任意の組み合わせを使用できることが当業者に明らかであろう。 さらなる態様において、本発明の細胞またはオルガノイドはマイクロスフェア内に含まれてもよい。この態様の中で、細胞はマイクロスフェアの中心に封入されてもよい。また、この態様の中で、細胞はマイクロスフェアのマトリックス材料に埋め込まれてもよい。マトリックス材料は、アルギン酸塩、ポリエチレングリコール(PLGA)、およびポリウレタンを含むが、これに限定されない任意の適切な生分解性ポリマーを含んでもよい。このリストは例としてしか示されず、限定することを目的としない。 さらなる態様において、本発明の細胞またはオルガノイドは移植用の医療装置に付着されてもよい。このような医療装置の例にはスティッチ(stitch)および人工皮膚が含まれる。このリストは例としてしか示されず、限定することを目的としない。細胞は様々な方法によって医療装置に付着されてもよいことが当業者に明らかであろう。例えば、細胞またはオルガノイドは、フィブリン、インテグリンファミリーの1つまたは複数のメンバー、カドヘリンファミリーの1つまたは複数のメンバー、セレクチンファミリーの1つまたは複数のメンバー、1種または複数種の細胞接着分子(CAM)、免疫グロブリンファミリーの1つまたは複数、および1種または複数種の人工接着剤を用いて医療装置に付着されてもよい。このリストは例としてしか示されず、限定することを目的としない。1種または複数種の接着剤の任意の組み合わせを使用できることが当業者に明らかであろう。 本発明のオルガノイドの他の使用 本発明の細胞またはオルガノイドは、薬のために患者群を規定するのに用いられてもよい。本発明の細胞またはオルガノイドはまた第I相試験または第II相試験において患者をプレスクリーニングするのに用いられてもよい。例えば、本発明の細胞またはオルガノイドは、誰に臨床試験を行うのか患者を特定するするのに用いられてもよい。本発明の細胞またはオルガノイドはまた、薬物が認可された後に診断において用いられてもよい。例えば、本発明の細胞またはオルガノイドは、特定の薬物から誰が利益を得る可能性が最も高いか患者を特定するのに、特定の薬物を用いた治療の結果として重篤な副作用が起こるリスクが高いと思われる患者を特定するのに、または改善された安全性もしくは有効性を実現するために治療を調整する目的で、特定の薬物を用いた治療に対する応答をモニタリングするのに用いられてもよい。 本発明の細胞またはオルガノイドは一部の態様では獣医学療法に用いられてもよい。 肺オルガノイドの使用 肺オルガノイドを形成し、維持し、および増殖させるために幹細胞を培養するための培養培地および方法に関心がある。上記のセクションに記載のオルガノイドの使用は、肺を含む全てのタイプの組織から入手したオルガノイドに適用することができる。肺オルガノイドのさらなる使用を以下に示す。 本発明の肺オルガノイドは病原体を培養するのに使用することができ、従って、エクスビボ感染モデルとして使用することができる。本発明の肺オルガノイドを用いて培養され得る病原体の例には、動物宿主において疾患を引き起こすウイルス、細菌、プリオン、または菌類が含まれる。一部の態様において、病原体は結核菌または肺炎連鎖球菌である。従って、本発明の肺オルガノイドは、感染状態(例えば、結核または肺炎)を表す疾患モデルとして使用することができる。本発明の一部の態様において、肺オルガノイドはワクチンの開発および/または生産において使用することができる。例えば、一部の態様において、ワクチンは、結核、肺炎、または呼吸器合胞体ウイルス感染の予防および/または治療において使用するためのものである。 従って、本発明の肺オルガノイドによって研究することができる疾患には、遺伝病、代謝性疾患、病原性疾患、炎症性疾患など、例えば、肺の疾患、障害、または損傷が含まれる。従って、本発明の肺オルガノイドによって研究することができる疾患には、肺癌、例えば、小細胞肺癌または非小細胞肺癌(例えば、腺癌、扁平細胞癌、もしくは大細胞癌)、間質性肺疾患、肺炎(例えば、器質化肺炎)、結核、嚢胞線維症、気管支炎、肺線維症、類肉腫症、II型過形成、慢性閉塞性肺疾患、気腫、喘息、肺浮腫、急性呼吸促迫症候群、喘鳴、気管支拡張症、ハンタウイルス肺症候群、中東呼吸器症候群(MERS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、および塵肺が含まれるが、これに限定されない。 従って、本発明のオルガノイドによって研究することができる病原性疾患には、病原体、例えば、アデノウイルス、コロナウイルス(例えば、SARS-CoVもしくはMERS-CoV)、ヒトメタニューモウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、ハンタウイルス、エンテロウイルス(例えば、エンテロウイルスD68(EV-D68))、百日咳菌、クラミドフィラ・ニューモニエ、ジフテリア菌、コクシエラ・ブルネッティ、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ、モラクセラ・カタラーリス、結核菌、肺炎マイコプラズマ、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、または化膿性連鎖球菌によって引き起こされる病原性疾患が含まれるが、これに限定されない。 本発明の肺オルガノイドまたは増殖した肺細胞集団は、薬物スクリーニング、ターゲットバリデーション、ターゲット発見、毒物学および毒性スクリーニング、ならびに個別化医療のためのツールになる可能性がある。 薬物スクリーニング-肺オルガノイド 上記の「薬物スクリーニング」という見出しで説明されたやり方で、本発明の肺オルガノイドを用いて任意の数の疾患の薬物をスクリーニングすることができる。例えば、本発明の肺オルガノイドは、肺の疾患、障害、または損傷の薬物をスクリーニングするのに使用することができる。一部の態様において、本発明のオルガノイドは、肺癌、例えば、小細胞肺癌または非小細胞肺癌(例えば、腺癌、扁平細胞癌、もしくは大細胞癌)、間質性肺疾患、肺炎(例えば、器質化肺炎)、結核、嚢胞線維症、気管支炎、肺線維症、類肉腫症、II型過形成、慢性閉塞性肺疾患、気腫、喘息、肺浮腫、急性呼吸促迫症候群、喘鳴、気管支拡張症、ハンタウイルス肺症候群、中東呼吸器症候群(MERS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、および塵肺の薬物をスクリーニングするのに使用することができる。一部の態様において、オルガノイドは、病原体、例えば、アデノウイルス、コロナウイルス(例えば、SARS-CoVもしくはMERS-CoV)、ヒトメタニューモウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、ハンタウイルス、エンテロウイルス(例えば、エンテロウイルスD68(EV-D68))、百日咳菌、クラミドフィラ・ニューモニエ、ジフテリア菌、コクシエラ・ブルネッティ、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ、モラクセラ・カタラーリス、結核菌、肺炎マイコプラズマ、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、または化膿性連鎖球菌によって引き起こされる病原性疾患の薬物をスクリーニングするのに使用することができる。 肺オルガノイドまたは増殖した肺細胞集団を用いる、「薬物スクリーニング」という見出しで上記で概説された個別化医療アプローチによって試験することができる本発明における使用のための薬物の例には、アビトレキセート(Abitrexate)(メトトレキセート)、アブラキサン(Abraxane)(パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子製剤)、アリムタ(Alimta)(ペメトレキセド二ナトリウム)、アバスチン(Avastin)(ベバシズマブ)、ベバシズマブ、カルボプラチン、セルチニブ(Certinib)、シスプラチン、クリゾチニブ、ドセタキセル、塩酸ドキソルビシン、エトポフォス(Etopophos)(リン酸エトポシド)、塩酸エルロチニブ、エトポシド、リン酸エトポシド、フォレックス(Folex)(メトトレキセート)、フォレックスPFS(メトトレキセート)、ゲフィチニブ、ギロトリフ(Gilotrif)(ジマレイン酸アファチニブ(Afatinib Dimaleate))、塩酸ゲムシタビン、ジェムザール(Gemzar)(塩酸ゲムシタビン)、ハイカムチン(Hycamtin)(塩酸トポテカン)、イレッサ(ゲフィチニブ)、塩酸メクロレタミン、メトトレキセート、メトトレキセートLPF(メトトレキセート)、メキサート(Mexate)(メトトレキセート)、メキサート-AQ(メトトレキセート)、ムスタルゲン(Mustargen)(塩酸メクロレタミン)、ナベルビン(酒石酸ビノレルビン)、パクリタキセル、パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子製剤、パラプラット(Parablat)(カルボプラチン)、パラプラチン(Paraplatin)(カルボプラチン)、ペメトレキセド二ナトリウム、プラチノール(Platinol)(カルボプラチン)、プラチノール-AQ(シスプラチン)、タルセバ(Tarceva)(塩酸エルロチニブ)、タキソール(Taxol)(パクリタキセル)、タキソテール(Taxotere)(ドセタキセル)、トポサール(Toposar)(エトポシド)、塩酸トポテカン、ベプシド(VePesid)(エトポシド)、酒石酸ビノレルビン、ザーコリ(Xalkori)(クリゾチニブ)、ジカディア(Zykadia)(Certinib)が含まれる。 個別化医療アプローチを用いて試験することができる本発明における使用のための薬物は単独で試験されてもよく、1種または複数種の他の薬物と組み合わせて試験されてもよい。 例えば、(a)カルボプラチン、パラプラット(カルボプラチン)、パラプラチン(カルボプラチン)、またはプラチノール(カルボプラチン)が、(b)パクリタキセル、パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子製剤、アブラキサン(パクリタキセルアルブミン安定化ナノ粒子製剤)、またはタキソール(パクリタキセル)と組み合わせて試験されてもよい。従って、カルボプラチン-タキソールの薬物の組み合わせが本発明による個別化医療アプローチを用いて試験されてもよい。 例えば、(a)塩酸ゲムシタビンまたはジェムザール(塩酸ゲムシタビン)が、(b)シスプラチンまたはプラチノール-AQ(シスプラチン)と組み合わせて試験されてもよい。従って、ゲムシタビン-シスプラチンの薬物の組み合わせが本発明による個別化医療アプローチを用いて試験されてもよい。 一部の態様において、前記薬物は、遺伝病、代謝性疾患、病原性疾患、炎症性疾患などの症状の治療、予防、または寛解に用いられる。一部の態様において、前記薬物は、肺の疾患、障害、または損傷の症状の治療、予防、または寛解に用いられる。例えば、一部の態様において、前記薬物は、以下:肺癌、例えば、小細胞肺癌または非小細胞肺癌(例えば、腺癌、扁平細胞癌、もしくは大細胞癌)、間質性肺疾患、肺炎(例えば、器質化肺炎)、結核、嚢胞線維症、気管支炎、肺線維症、類肉腫症、II型過形成、慢性閉塞性肺疾患、気腫、喘息、肺浮腫、急性呼吸促迫症候群、喘鳴、気管支拡張症、ハンタウイルス肺症候群、中東呼吸器症候群(MERS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、および塵肺の1つまたは複数の治療に用いられる。 一部の態様において、前記薬物は、病原体、例えば、アデノウイルス、コロナウイルス(例えば、SARS-CoVもしくはMERS-CoV)、ヒトメタニューモウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、ハンタウイルス、エンテロウイルス(例えば、エンテロウイルスD68(EV-D68))、百日咳菌、クラミドフィラ・ニューモニエ、ジフテリア菌、コクシエラ・ブルネッティ、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ、モラクセラ・カタラーリス、結核菌、肺炎マイコプラズマ、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、または化膿性連鎖球菌によって引き起こされる病原性疾患の症状の治療、予防、または寛解に用いられる。 本発明はまた、ハイスループット薬物スクリーニングにおいて使用するための本発明のオルガノイドのバイオバンク(biobank)であって、様々な対象から入手したオルガノイドを含む、バイオバンクも提供する。 本発明はまた、例えば、その内容が全体として本明細書に組み入れられている、WO2013/093812に記載のように、嚢胞線維症を治療するための1種または複数種の薬物の有効性を研究するためのインビトロ方法における本発明の肺オルガノイドの使用も提供する。従って、本発明はまた、嚢胞線維症を治療するための1種または複数種の薬物の有効性を研究するためのインビトロ方法であって、初代細胞から作製された1つまたは複数の嚢胞線維症肺オルガノイドを前記1種または複数種の薬物で刺激する工程、および1つまたは複数の肺オルガノイドの膨張を測定する工程を含み、膨張が、液体の取り込みまたは分泌による1つまたは複数の肺オルガノイドのサイズの変化を意味する、方法も提供する。一部の態様において、前記方法は、1つまたは複数の肺オルガノイドを、オルガノイドのサイズの変化を誘導することができる化合物(例えば、フォルスコリン)で刺激する工程をさらに含む。従って、一部の態様において、オルガノイドのサイズの変化を誘導することができる化合物は、嚢胞線維症膜貫通受容体(cystic fibrosis transmembrane receptor)(CFTR)を標的とする化合物であり、この化合物によって誘導される1つまたは複数のオルガノイドの膨張はCFTR依存性である。一部の態様において、1つまたは複数のオルガノイドの膨張はCFTR変異および/または薬物処置の効果の尺度である。 一部の態様において、サイズの変化は、(i)健常対照オルガノイドまたは(ii)1種もしくは複数種の薬物で刺激されていないオルガノイドと比較される。 実施例6で説明するように、本発明者らは、驚いたことに、肺ウイルス感染(RSV)が、本発明の感染した肺オルガノイドの運動性を誘導することを発見した。さらに、本発明者らは、予想に反して、本発明の感染した肺オルガノイドが高頻度で融合し、間葉系様表現型を示すことを発見した。従って、抗ウイルス薬を、肺ウイルス(例えば、RSV)に感染した本発明の肺細胞または肺オルガノイドに添加し、オルガノイドの運動性、細胞もしくはオルガノイドの表現型(例えば、間葉系細胞との類似性)、および/またはオルガノイドが融合しやすい傾向を評価することによって、抗ウイルス薬の効力をインビトロで確かめることができるかもしれない。 従って、本発明はまた、肺ウイルス感染(例えば、RSV)を治療するための1種または複数種の薬物の有効性を研究するためのインビトロ方法であって、肺ウイルスに感染した(例えば、RSVに感染した)1つまたは複数の肺オルガノイドを前記1種または複数種の薬物で刺激する工程、および1つまたは複数の肺オルガノイドの運動性を測定する工程を含む、方法も提供する。一部の態様において、1つまたは複数の肺オルガノイドの運動性は、標識された核を3Dで追跡することによって測定される。一部の態様において、前記方法は、融合オルガノイドの発生率の変化および/または間葉系様表現型をもつオルガノイドの発生率の変化を測定する工程をさらに含む。一部の態様において、運動性の変化、融合オルガノイドの発生率の変化、および/または間葉系様表現型をもつオルガノイドの発生率の変化は、(i)健常対照オルガノイドまたは(ii)1種もしくは複数種の薬物で刺激されていないオルガノイドと比較される。一部の態様において、運動性の低下、融合オルガノイドの発生率の低下、および/または間葉系様表現型をもつオルガノイドの発生率の低下は、肺ウイルス感染(例えば、RSV)が1種または複数種の薬物による治療に応答したことを示す。 従って、本発明はまた、肺ウイルス感染(例えば、RSV)を治療するための1種または複数種の薬物の有効性を研究するためのインビトロ方法であって、(i)ウイルスに感染させる前に、非感染オルガノイドを1種もしくは複数種の薬物で刺激する工程、または(ii)肺ウイルスに感染した(例えば、RSVに感染した)1つもしくは複数の肺オルガノイドを前記1種もしくは複数種の薬物で刺激する工程、ならびに融合した肺オルガノイドの発生率の変化および/または間葉系様表現型をもつオルガノイドの発生率の変化を測定する工程を含む、方法も提供する。一部の態様において、融合オルガノイドの発生率の変化および/または間葉系様表現型をもつオルガノイドの発生率の変化は、(i)健常対照オルガノイドまたは(ii)1種もしくは複数種の薬物で刺激されていないオルガノイドと比較される。一部の態様において、融合オルガノイドの発生率の低下および/または間葉系様表現型をもつオルガノイドの発生率の低下は、肺ウイルス感染(例えば、RSV)が1種または複数種の薬物による処理に応答したことを示す。 実施例6における本発明者らの発見は、さらに広く適用することもできる。本発明者らは、驚いたことに、オルガノイドの中にある上皮細胞の運動性がオルガノイドの運動性、融合オルガノイドの発生率、および/またはオルガノイドの回転と相関関係にあることを発見した。オルガノイドの中にある上皮細胞の運動性は、以前に、3D単一細胞追跡によって直接定量することができたが、この方法は蛍光マーカーによる細胞核の標識と高分解能共焦点画像化を必要とする。高分解能共焦点画像化大きな労働力を要し、かつ時間がかかる。上皮細胞の運動性を測定するための本発明の方法は簡単にかつ素早く実行することができる。というのは、これらの方法において測定される指標が、オルガノイドの中にある個々の上皮細胞の運動性を直接測定するよりもかなり簡単に定量できるからである。 従って、本発明は、(a)融合オルガノイドの発生率、(b)オルガノイドの回転、(c)オルガノイドの運動性、および/または(d)間葉系様表現型をもつ細胞の発生率を測定することによって、オルガノイドにある上皮細胞の運動性の変化を測定するためのインビトロ方法を提供する。一部の態様において、オルガノイドは癌オルガノイドである。 本発明はまた、以下の工程を含む、疾患を治療するための1種または複数種の薬物の有効性を研究するためのインビトロ方法も提供する: 1つまたは複数の疾患オルガノイドを前記の1種または複数種の薬物で刺激する工程、ならびに (a)融合オルガノイドの発生率の変化、(b)オルガノイドの回転の変化、(c)オルガノイドの運動性の変化、および/または(d)間葉系様表現型をもつ細胞の発生率の変化を測定することによって、オルガノイドにある上皮細胞の運動性の変化を測定する工程、ならびに オルガノイドにある上皮細胞の運動性の変化を薬物効力と相関させる工程。 一部の態様において、肺オルガノイドは、アレイ形式で、例えば、マルチウェルプレート、例えば、96ウェルプレートまたは384ウェルプレートの中で培養される。 一部の態様において、薬物スクリーニングにおける、例えば、アレイの中にある肺オルガノイドは一人一人の患者に由来する。一部の態様において、薬物スクリーニングにおける、例えば、アレイの中にあるオルガノイドは異なる患者に由来する。他の態様において、薬物スクリーニング、例えば、アレイは、1人またはそれより多い健常対照に由来するオルガノイドに加えて、1人またはそれより多い病気の患者に由来するオルガノイドを含む。 肺オルガノイドの集団におけるオルガノイドの運動性、融合オルガノイドの発生率、および/または間葉系様表現型をもつオルガノイドの発生率に影響を及ぼす分子を特定するために分子ライブラリーを使用することができる。好ましいライブラリーは、抗体断片ライブラリー、ペプチドファージディスプレイライブラリー、ペプチドライブラリー(例えば、LOPAP(商標), Sigma Aldrich)、脂質ライブラリー(BioMol)、合成化合物ライブラリー(例えば、LOP AC(商標), Sigma Aldrich)、天然化合物ライブラリー(Specs, TimTec)、または低分子ライブラリーを含む。さらに、幹細胞の子孫における1種または複数種の遺伝子の発現を誘導または抑制する遺伝子ライブラリーを使用することができる。これらの遺伝子ライブラリーは、cDNAライブラリー、アンチセンスライブラリー、およびsiRNAライブラリーまたは他の非コードRNAライブラリーを含む。細胞は、ある特定の期間にわたって複数の濃度の試験薬剤に曝露されてもよい。曝露期間の終わりに培養物は評価される。好ましくは、培養物は、本発明の肺ウイルス感染(例えば、RSV)を治療するための1種または複数種の薬物の有効性を研究するためのインビトロ方法の1つを用いて評価される。 一部の態様において、試験されている薬物は、合成低分子、タンパク質、ペプチド、抗体(またはその誘導体)、アプタマー、および核酸(例えば、アンチセンス化合物)より選択される。 RSV感染を治療するための公知の薬物の例には、パリビズマブ(Synagis(登録商標), MedImmune, Gaithersburg, MD, US)およびリバビリン(1-β-d-リボフラノシル-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド, Virazole(登録商標), ICN Pharmaceuticals Ltd, Basingstoke, UK)が含まれる。 一部の態様において、本発明の肺ウイルス感染(例えば、RSV)を治療するための1種または複数種の薬物の有効性を研究するためのインビトロ方法は、個別化医療において、例えば、関心対象の肺ウイルス感染の薬物に対する個々の患者の応答を試験するために使用するためのものである。 一部の態様において、本発明の疾患を治療するための1種または複数種の薬物の有効性を研究するためのインビトロ方法は、個別化医療において、例えば、関心対象の疾患の薬物に対する個々の患者の応答を試験するために使用するためのものである。 一部の態様において、個別化医療において使用するための方法は、 肺ウイルス感染を有する患者に由来する1つまたは複数の肺オルガノイドを、公知の抗ウイルス薬、または肺ウイルス感染の治療における効力が試験されている薬物で刺激する工程;ならびに 運動性、融合オルガノイドの発生率、および/または間葉系様表現型をもつオルガノイドの発生率を測定する工程 を含み、運動性の低下、融合オルガノイドの発生率の低下、および/または間葉系様表現型をもつオルガノイドの発生率の低下は、患者が薬物による治療に応答したことを示す。 一部の態様において、個別化医療において使用するための方法は、 疾患を有する患者に由来する1つまたは複数の肺オルガノイドを、公知の薬物、または疾患の治療における効力が試験されている薬物で刺激する工程;ならびに (a)融合オルガノイドの発生率の変化、(b)オルガノイドの回転の変化、(c)オルガノイドの運動性の変化、および/または(d)間葉系様表現型をもつ細胞の発生率の変化を測定することによって、オルガノイドにある上皮細胞の運動性の変化を測定する工程 を含み、上皮細胞の運動性の低下は、患者が薬物による治療に応答したことを示す。 本発明はまた、以下の工程を含む、肺ウイルス感染を診断すためのインビトロ方法も提供する: 患者に由来する肺オルガノイドの集団におけるオルガノイドの運動性、融合オルガノイドの発生率、および/または間葉系様表現型をもつオルガノイドの発生率を測定する工程、ならびに オルガノイドの運動性、融合オルガノイドの発生率、および/またはオルガノイドの発生率を肺ウイルス感染の存在および/または重篤度と相関させる工程。 本発明はまた、以下の工程を含む、疾患を診断するためのインビトロ方法も提供する: (a)融合オルガノイドの発生率の変化、(b)オルガノイドの回転の変化、(c)オルガノイドの運動性の変化、および/または(d)間葉系様表現型をもつ細胞の発生率の変化を測定することによって、オルガノイドにある上皮細胞の運動性の変化を測定する工程、ならびに オルガノイドにある上皮細胞の運動性の変化を疾患の存在および/または重篤度と相関させる工程。 本発明はまた、肺ウイルス感染(例えば、RSV)を診断するための1つまたは複数の肺オルガノイドの使用であって、前記診断が本発明のインビトロ診断方法を含む、使用も提供する。 本発明はまた、本発明のインビトロ診断方法の使用を含む、患者を治療するための方法であって、陽性診断が得られれば患者の疾患または苦痛が治療される、方法も提供する。 本発明はまた、肺ウイルス感染の治療において使用するための治療剤であって、前記治療が、本発明のインビトロ診断方法を用いて肺ウイルス感染が存在するかどうか患者を診断する工程を含み、陽性診断が得られれば患者の疾患または苦痛が治療される、治療剤も提供する。 一部の態様において、患者は、前記で説明した本発明の薬物スクリーニング方法を用いて特定された1種または複数種の薬物を用いて治療される。 当業者は、本発明の方法において使用できるかもしれない様々な肺ウイルスを知っている。例えば、一部の態様において、肺ウイルスは、アデノウイルス、コロナウイルス(例えば、SARS-CoVまたはMERS-CoV)、ヒトメタニューモウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ライノウイルス、ハンタウイルス、エンテロウイルス(例えば、エンテロウイルスD68(EV-D68))である。 一部の態様において、肺オルガノイドの少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%は肺ウイルス(例えば、RSV)に感染している。 一部の態様において、前記オルガノイドの少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%は融合オルガノイドである。 一部の態様において、間葉系様表現型をもつ細胞の少なくとも一部はオルガノイドから離れ、周囲の培地の中に移動する。一部の態様において、間葉系様表現型をもつ細胞の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%はオルガノイドから離れ、周囲の培地の中に移動する。 一部の態様において、肺オルガノイドは乳児患者に由来する。一部の態様において、肺ウイルス感染または肺ウイルス疾患はRSV感染であり、肺オルガノイドは乳児患者に由来する。 一部の態様において、オルガノイドは肺オルガノイドであり、疾患は、肺癌、例えば、小細胞肺癌または非小細胞肺癌(例えば、腺癌、扁平細胞癌、もしくは大細胞癌)、間質性肺疾患、肺炎(例えば、器質化肺炎)、結核、嚢胞線維症、気管支炎、肺線維症、類肉腫症、II型過形成、慢性閉塞性肺疾患、気腫、喘息、肺浮腫、急性呼吸促迫症候群、喘鳴、気管支拡張症、ハンタウイルス肺症候群、中東呼吸器症候群(MERS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、および塵肺である。 一部の態様において、オルガノイドは肺オルガノイドであり、疾患は、病原体、例えば、アデノウイルス、コロナウイルス(例えば、SARS-CoVもしくはMERS-CoV)、ヒトメタニューモウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、ハンタウイルス、エンテロウイルス(例えば、エンテロウイルスD68(EV-D68))、百日咳菌、クラミドフィラ・ニューモニエ、ジフテリア菌、コクシエラ・ブルネッティ、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ、モラクセラ・カタラーリス、結核菌、肺炎マイコプラズマ、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、または化膿性連鎖球菌によって引き起こされる病原性疾患である。 一部の態様において、疾患は、遺伝病、代謝性疾患、病原性疾患、または炎症性疾患である。 ターゲット発見-肺オルガノイド 一部の態様において、本発明のオルガノイドまたは本発明の培養培地および方法を用いて成長させた肺細胞をターゲット発見に使用することができる。健常組織または疾患組織から生じたオルガノイドの細胞が標的特定に用いられてもよい。本発明の肺オルガノイドは、肺の疾患、障害、または損傷の薬物標的を発見するのに用いられてもよい。例えば、本発明の肺オルガノイドは、肺癌、例えば、小細胞肺癌または非小細胞肺癌(例えば、腺癌、扁平細胞癌、もしくは大細胞癌)、間質性肺疾患、肺炎(例えば、器質化肺炎)、結核、嚢胞線維症、気管支炎、肺線維症、類肉腫症、II型過形成、慢性閉塞性肺疾患、気腫、喘息、肺浮腫、急性呼吸促迫症候群、喘鳴、気管支拡張症、ハンタウイルス肺症候群、中東呼吸器症候群(MERS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、および塵肺の薬物標的を発見するのに用いられてもよい。例えば、本発明のオルガノイドは、病原体、例えば、アデノウイルス、コロナウイルス(例えば、SARS-CoVもしくはMERS-CoV)、ヒトメタニューモウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、ハンタウイルス、エンテロウイルス(例えば、エンテロウイルスD68(EV-D68))、百日咳菌、クラミドフィラ・ニューモニエ、ジフテリア菌、コクシエラ・ブルネッティ、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ、モラクセラ・カタラーリス、結核菌、肺炎マイコプラズマ、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、または化膿性連鎖球菌によって引き起こされる病原性疾患の薬物標的を発見するのに用いられてもよい。 有利なことに、本発明の肺オルガノイドは肺特異的標的の特定を可能にする。 Dekkers JF et al., Nat Med. 2013, July 19(7): 939-945に記載の膨張アッセイを用いて、本発明者らは、予想通り、嚢胞線維症膜貫通受容体(CFTR)がノックアウトされた肺オルガノイドにおけるフォルスコリン刺激に応答した膨張が野生型肺オルガノイドよりかなり少なかったことを発見した。しかしながら、驚いたことに、CFTRノックアウトオルガノイドはフォルスコリン刺激後でも依然として膨張した。このことは、代替塩素イオンチャネルが存在することを示している。これらの代替塩素イオンチャネルの存在は治療に利用することができ、変異CFTRを直接の標的とする治療戦略を補完または回避することができるかもしれない。このことから、肺オルガノイドは薬物標的を特定するのに有用なことが証明された。従って、本発明は、CFTRを機能的に特徴付けるための、CFTRに特異的な薬物療法を試験するための、および/または他のイオンチャンネル、例えば、CFTRの代替塩素イオンチャネルを標的とする薬物を試験するための本発明の肺オルガノイドの使用を提供する。一部の態様において、塩素イオンチャネルはカルシウム活性化塩素イオンチャネル、例えば、TMEM16Aである。一部の態様において、肺オルガノイドは嚢胞線維症患者から得られる。一部の態様において、肺オルガノイドはCFTRノックアウトオルガノイドまたはCFTR変異オルガノイドである。 病原体の培養-肺オルガノイド さらに、増殖した肺幹細胞集団(例えば、本発明の肺オルガノイド)は、病原体、例えば、アデノウイルス、コロナウイルス(例えば、SARS-CoVまたはMERS-CoV)、ヒトメタニューモウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、ハンタウイルス、エンテロウイルス(例えば、エンテロウイルスD68(EV-D68))、百日咳菌、クラミドフィラ・ニューモニエ、ジフテリア菌、コクシエラ・ブルネッティ、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ、モラクセラ・カタラーリス、結核菌、肺炎マイコプラズマ、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、および化膿性連鎖球菌を培養するのに使用することができる。 療法モニタリングおよび薬物耐性の原因の特定-肺オルガノイド 一部の態様において、増殖した肺幹細胞集団(例えば、本発明の肺オルガノイド)は、肺の疾患、障害、または損傷の進行をモニタリングするのに使用することができる。 一部の態様において、疾患は、小細胞肺癌または非小細胞肺癌(例えば、腺癌、扁平細胞癌、もしくは大細胞癌)、間質性肺疾患、肺炎(例えば、器質化肺炎)、結核、嚢胞線維症、気管支炎、肺線維症、類肉腫症、II型過形成、慢性閉塞性肺疾患、気腫、喘息、肺浮腫、急性呼吸促迫症候群、喘鳴、気管支拡張症、ハンタウイルス肺症候群、中東呼吸器症候群(MERS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、あるいは塵肺である。一部の態様において、疾患は、病原体、例えば、アデノウイルス、コロナウイルス(例えば、SARS-CoVもしくはMERS-CoV)、ヒトメタニューモウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、ハンタウイルス、エンテロウイルス(例えば、エンテロウイルスD68(EV-D68))、百日咳菌、クラミドフィラ・ニューモニエ、ジフテリア菌、コクシエラ・ブルネッティ、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ、モラクセラ・カタラーリス、結核菌、肺炎マイコプラズマ、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、または化膿性連鎖球菌によって引き起こされる病原性疾患である。 再生医療および移植-肺オルガノイド 一部の態様において、嚢胞線維症を予防または治療するために、エクスビボ遺伝子療法アプローチが用いられてもよい。従って、一部の態様において、1つまたは複数の非機能的CFTR遺伝子を含有する対象から入手した幹細胞は、1つまたは複数の機能的CFTR遺伝子が(例えば、機能的CFTR遺伝子の1つまたは複数のコピーを運ぶウイルスによる幹細胞へのウイルス形質導入によって)幹細胞に導入されるようにエクスビボで処理され、次いで、形質導入された幹細胞は対象に戻される。 一部の態様において、本発明の肺細胞または肺オルガノイドは、肺の疾患、障害、または損傷の予防および/または治療において使用するためのものである。一部の態様において、本発明の細胞またはオルガノイドは、小細胞肺癌または非小細胞肺癌(例えば、腺癌、扁平細胞癌、もしくは大細胞癌)、間質性肺疾患、肺炎(例えば、器質化肺炎)、結核、嚢胞線維症、気管支炎、肺線維症、類肉腫症、II型過形成、慢性閉塞性肺疾患、気腫、喘息、肺浮腫、急性呼吸促迫症候群、喘鳴、気管支拡張症、ハンタウイルス肺症候群、中東呼吸器症候群(MERS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、あるいは塵肺の予防および/または治療において使用するためのものである 一部の態様において、本発明の肺細胞または肺オルガノイドは、病原体、例えば、アデノウイルス、コロナウイルス(例えば、SARS-CoVもしくはMERS-CoV)、ヒトメタニューモウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルス、ハンタウイルス、エンテロウイルス(例えば、エンテロウイルスD68(EV-D68))、百日咳菌、クラミドフィラ・ニューモニエ、ジフテリア菌、コクシエラ・ブルネッティ、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ、モラクセラ・カタラーリス、結核菌、肺炎マイコプラズマ、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、または化膿性連鎖球菌によって引き起こされる病原性疾患の予防および/または治療において使用するためのものである。 本発明の肺オルガノイドの他の使用 一部の態様において、本発明の肺細胞または肺オルガノイドは、繊毛運動、カルシウム活性化塩素イオンチャネル(例えば、CFTR)の生理機能、および/または肺感染、例えば、肺ウイルス感染(例えば、RSV感染)を研究するのに用いられてもよい。 本発明はまた、例えば、その内容が全体として本明細書に組み入れられている、WO2013/093812に記載のように、嚢胞線維症を診断するためのインビトロ方法における本発明の肺オルガノイドの使用も提供する。従って、本発明はまた、嚢胞線維症を診断するためのインビトロ方法であって、初代細胞から作製した1つまたは複数の肺オルガノイドの膨張を測定する工程を含み、膨張が、液体の取り込みまたは分泌による1つまたは複数の肺オルガノイドのサイズの変化を意味する、方法も提供する。一部の態様において、前記方法は、1つまたは複数の肺オルガノイドを、(i)オルガノイドのサイズの変化を誘導することができる化合物(例えば、フォルスコリン)および/または(ii)1種もしくは複数種の薬物で刺激する工程をさらに含む。従って、一部の態様において、オルガノイドのサイズの変化を誘導することができる化合物は、嚢胞線維症膜貫通受容体(CFTR)を標的とする化合物であり、この化合物によって誘導される1つまたは複数のオルガノイドの膨張はCFTR依存性である。一部の態様において、1つまたは複数のオルガノイドの膨張はCFTR変異および/または薬物処理の効果の尺度である。一部の態様において、サイズの変化は、(i)健常対照オルガノイドまたは(ii)1種もしくは複数種の薬物で刺激されていないオルガノイドと比較される。 本発明の組成物および他の形態 本発明は、本発明の細胞またはオルガノイドを含み、薬学的に許容される担体または賦形剤をさらに含む薬学的組成物を提供する。 本発明は、本発明による培養培地および幹細胞を含む組成物を提供する。本発明はまた、本発明による培養培地およびオルガノイドを含む組成物も提供する。さらに、本発明は、本発明による培養培地および細胞外マトリックスを含む組成物を提供する。 本発明はまた、本発明の培養培地、細胞外マトリックス、および本発明の幹細胞を含む組成物も提供する。本発明はまた、本発明の培養培地、細胞外マトリックス、および本発明の1つまたは複数のオルガノイドを含む組成物も提供する。本発明はまた、本明細書において開示された培養培地を生成するのに使用することができる培養培地サプリメントも提供する。「培養培地サプリメント」は、それ自体では幹細胞を支持することができないが、他の細胞培養成分と組み合わされた時に幹細胞培養を可能にする、または改善する成分の混合物である。従って、サプリメントは、他の細胞培養成分と組み合わせて適切な培地製剤を生成することによって本発明の機能的な細胞培養培地を生成するのに使用することができる。培養培地サプリメントの使用は当技術分野において周知である。 本発明は、本発明によるErbB3/4リガンドを含む培養培地サプリメントを提供する。サプリメントは、本明細書において開示された任意のErbB3/4リガンド(またはErbB3/4リガンドの組み合わせ)を含有してもよい。サプリメントはまた、本明細書において開示された1種または複数種のさらなる細胞培養成分、例えば、アミノ酸、ビタミン、無機塩、炭素エネルギー源、および緩衝液からなる群より選択される1種または複数種の細胞培養成分も含有してよい。 本発明はまた、本発明によるFGFR2bリガンドおよびErbB3/4リガンドを含む培養培地サプリメントも提供する。サプリメントは、本明細書において開示された、任意のFGFR2bリガンド(またはFGFR2bリガンドの組み合わせ)と任意のErbB3/4リガンド(またはErbB3/4リガンドの組み合わせ)を含有してもよい。サプリメントはまた、本明細書において開示された1種または複数種のさらなる細胞培養成分、例えば、アミノ酸、ビタミン、無機塩、炭素エネルギー源、および緩衝液からなる群より選択される1種または複数種の細胞培養成分も含有してよい。FGFR2bリガンドおよびErbB3/4リガンドを含む、これらの培養培地サプリメントは、好ましくは、本発明の肺細胞または肺オルガノイドを培養するためのものである。 培養培地または培養培地サプリメントは、高濃度の液体培養培地またはサプリメント(例えば、2x〜250xの高濃度の液体培養培地またはサプリメント)でもよく、乾燥した培養培地またはサプリメントでもよい。液体の培養培養培地またはサプリメントおよび乾燥した培養培地またはサプリメントはいずれも当技術分野において周知である。培養培地またはサプリメントは凍結乾燥されてもよい。 本発明の培養培地または培養培地サプリメントは、典型的には、汚染を阻止するために使用前に、例えば、紫外線、加熱、照射、または濾過によって滅菌される。培養培地または培養培地サプリメントは保管または輸送のために(例えば、-20℃または-80℃で)凍結されてもよい。一部の態様において、培養培地は液体として(例えば、約4℃で)保管されてもよい。一部の態様において、培養培地は、2つの成分:(例えば、約-20℃〜約-80℃では)凍結成分および(例えば、約4℃では)液体成分としてスプリットおよび保管されてもよい。特に、好ましくは、温度感受性のまたは時間的制約のある分解性材料が凍結成分に含まれるのに対して、感受性の低い材料(例えば、DMEMまたはFCS)が液体型で保管され、従って、保管および発送のために液体成分に含まれてもよい。 本発明はまた、本発明の培養培地または培養培地サプリメントも含有する、密閉封止された容器を提供する。密閉封止された容器は、汚染を防ぐために、本明細書において開示された培養培地または培養培地サプリメントの輸送または保管に好ましい場合がある。容器は、フラスコ、プレート、瓶、広口瓶、バイアル、またはバッグなどの任意の適切な容器でよい。 本発明はまた、本発明の培養培地、培養培地サプリメント、および/または組成物を含むキットも提供する。一部の態様において、キットは、少なくとも1種の他のさらなる成分、例えば、ECM(例えば、マトリゲル(商標)またはCultrex(登録商標)Basement Membrane Extract)を含むリストより選択される少なくとも1種の他のさらなる成分、細胞集団、およびオルガノイドをさらに含む。 総則 「を含む(comprising)」という用語は、「を含む(including)」ならびに「からなる(consisting)」を包含する。例えば、Xを「を含む」組成物はXのみからなってもよく、さらなる何か、例えば、X+Yを含んでもよい。 「実質的に」という言葉は「完全に」を排除せず、例えば、Yが「実質的に無い」組成物は、完全にYが無くてもよい。必要な場合、「実質的に」という言葉は本発明の定義から省略されてもよい。 数値xに関連する「約」という用語は任意のものであり、例えば、x±10%を意味する。 特に定めのない限り、2つ以上の成分を混合する工程を含むプロセスは、混合の特定の順番を必要としない。従って、成分を任意の順番で混合することができる。3つの成分がある場合、2つの成分を互いに組み合わせることができ、次いで、この組み合わせを第3の成分などと組み合わせてもよい。 本発明の様々な局面および態様が例として下記でさらに詳細に説明される。本発明の範囲から逸脱することなく、詳細の変更はなされ得ることが理解されるだろう。 「腸組織」という用語は結腸組織および小腸組織を包含する。 本発明は、下記で乳房幹細胞および肺幹細胞を用いて例示されている。しかしながら、当業者は、本明細書における開示を他の組織に適用するやり方を理解するだろう。 実施例1-組織処置および乳房オルガノイド培養 概略 20の乳腺腫瘍をサンプリングした。このうち3つはトリプルネガティブであった(15%、図1Aおよび図13)。本発明者らは3つの腫瘍オルガノイド株を確立することに成功した(スプリット比>1:2、継代>7)。現在、8つのさらなる培養物が増殖中であり、本発明者らの経験によれば、成功したオルガノイド株となるのは、ほぼ間違いない(図2および図13)。特定のサブタイプが選択されたことははっきりと分からない(図1B)。 これまでのところ、本発明者らは、入手した19の正常試料から3つの有望な培養物を確立した(図2、図13)。 培養条件 最初の12の試料を用いて、細胞単離およびオルガノイド培養条件を最適化した。試料13〜20を6つの異なる条件で成長させた。 細胞単離のためのパラメータの変更 生細胞を単離するために、本発明者らは、攪拌しながら、または攪拌なしで、いくつかの消化酵素(コラゲナーゼ、ディスパーゼ、トリプシン)を異なる濃度(1〜5mg/ml)で、異なる培地(AdDF+++、基本培地、基本F7/10N培地)で、異なる期間(1〜2h、12h)にわたって試験した。これらの基本培地の組成を図14に示した。最適なプロトコールを以下にまとめた。 オルガノイド培養のためのパラメータの変更 オルガノイド成長を可能にするために、本発明者らは、いくつかの培養条件(6〜12の条件/試料)を同時に試験した。他のヒト組織を扱った以前の経験に基づいて、本発明者らは、本発明者らの基本培地に加えて、いくつかの成長因子を試験した(図14)。試験した他のパラメータは、マトリゲルの代わりとなるBME(基底膜抽出物)密度(50〜100%)、組織培養処理済みプレート対懸濁プレートの使用、および2%O2対周囲O2での培養を含んだ。患者W855から入手した正常オルガノイド株および腫瘍オルガノイド株について、様々な培養条件の効果の一例を示した(図3)。 組織処理および乳房オルガノイド培養のためのプロトコール 到着したら、組織の写真を撮り、1〜3mm3の断片に切断した。2つのランダムな断片を瞬間凍結し、DNA単離のために-80℃で保管した。2つのランダムな断片を病理組織学的分析および免疫組織化学のためにホルマリンで固定し、残りを、生細胞を単離するために処理した。残った組織を切り刻み、10mlのAdDF+++で洗浄し、1〜2mg/mlコラゲナーゼ(Sigma-C9407)を含有する基本F7/10N培地10mlに入れて、120rpmおよび37℃で1〜2時間、消化した。消化された組織懸濁液を、10mlおよび5mlのプラスチックピペットおよび火に当てて作製した(flamed)ガラスパスツールピペットを用いて連続して剪断した。剪断工程が終わるたびに、懸濁液を100μmフィルターで濾した。保持された組織断片は、約10mlのAdDF+++を用いる次の剪断工程に入った。濾した懸濁液に2%FCSを加えた後に、400gで遠心分離した。ペレットを10mlのAdDF+++に再懸濁し、再度、400で遠心分離した。目に見える赤色ペレットの場合、赤血球を2mlの赤血球溶解緩衝液(Roche-11814389001)で室温で5分間、溶解した後に、10mlのAdDF+++を添加し、400gで遠心分離した。ペレットを冷たい10mg/ml Cultrex growth factor reduced BME type 2(Trevigen-3533-010-02)に再懸濁し、40μlのBME細胞懸濁液の液滴を、予熱した24ウェル懸濁培養プレート(Greiner-M9312)の上で37℃で10〜20分間、凝固させた。ゲル化が完了したら、400μlのオルガノイド培地(基本F7/10N、基本F7/10EN、または基本F7/10PN)を各ウェルに加え、プレートを2%O2または周囲O2いずれかの加湿37℃/5%CO2インキュベーターに移した。 培地を4日ごとに交換し、オルガノイドを1〜4週間ごとに継代した。嚢胞オルガノイドを2mlの冷AdDF+++に再懸濁し、火に当てて作製したガラスパスツールピペットに通して機械的に剪断した。高密度のオルガノイドを2mlのTrypLE Express(Invitrogen-12605036)に再懸濁し、室温で1〜5分間インキュベートし、火に当てて作製したガラスパスツールピペットに通して機械的に剪断することによって解離した。10mlのAdDF+++を添加し、それぞれ、300gまたは400gで遠心分離した後に、オルガノイド断片を冷BMEに再懸濁し、新たなオルガノイドの形成を可能にする比(1:1〜1:6)で再播種した。単一細胞懸濁液を最初は高密度で播種し、約1週間後に低密度で再播種した。 実施例2-確立した乳房腫瘍オルガノイド株の特徴付け 乳房腫瘍オルガノイド株W854T、W855T、およびW859Tは基本F7/10N培地中で容易に増殖する。従って、これらを、さらに詳細に特徴付けた。 これらの腫瘍状況を核型決定によって確かめ、様々な程度の異数性があることが明らかになった(図4)。 さらに、株W854Tは、5μM Nutlin-3を含有する培地中で容易に成長した。このことから、変異p53が存在することが示された。RNAおよびDNAを単離し、遺伝子発現プロファイリングおよびエクソーム配列決定のためにBIに送った。 組織学的分析および免疫蛍光分析から、7継代より後でも、オリジナルの腫瘍と、確立した腫瘍オルガノイド株との間にはER、PR、およびHER2状況が保存されることが確かめられた(図5および図6)。 正常オルガノイド株であるW855Nは相互に排他的な基底細胞および管腔細胞からなるのに対して、腫瘍オルガノイドは管腔細胞マーカーであるケラチン-8しか発現しない(図6および図7)。E-カドヘリン発現は腫瘍に存在するが、上皮起源を示す正常オルガノイド株と比較して少ない(図6および図7)。しかしながら、上皮間葉転換(EMT)マーカーは腫瘍オルガノイド株W855TおよびW859Tにおいて穏やかにアップレギュレートされており、これは、腫瘍オルガノイド株W855TおよびW859Tの一貫性に欠ける表現型と一致する(図6および図7)。 実施例3-ロースループット薬物スクリーニング 薬物スクリーニング用の乳房腫瘍オルガノイドの実現可能性を試験するために、株W854T、W855T、およびW859Tを96ウェル形式に2回繰り返してプレートし、EGFR阻害剤イレッサ(1:3希釈工程では1nM〜30μM、S1025 Selleck Chemicals)またはp53安定剤Nutlin-3(1:3希釈工程では1nM〜30μM, 10004372 Cayman Chemicals)を含有する培地に7日間、曝露した。オルガノイドの写真を3〜4日ごとに撮り(図8)、細胞生存率を、CellTiter-Glo 2.0アッセイ(G9241, Promega)を用いて7日目に測定した(図9)。 3種類全てのオルガノイド株が約10μMの濃度のイレッサに応答する。このことから、EGFRシグナル伝達に依存することが示された。おそらくW855Tを除いて、Nutlin-3は30μMの濃度まで成長を阻害しない。このことは、変異p53が存在することを示している(図9)。乳房腫瘍オルガノイドは96ウェル形式での細胞生存に基づくロースループット薬物スクリーニングに適している。現在、本発明者らは、このアッセイを、結腸癌オルガノイドについて首尾良く確立されている384ウェルプレート形式で試験している。 実施例4-Pasicらの培養培地は長期成長を支持しない Pasicの培養培地中にある正常乳房オルガノイドは継代2で増殖を減速し、継代3で止まった。基本F7/10Eの中で成長させた、同じ患者に由来するオルガノイドは継代4まで増殖し続けた(図10を参照されたい)。異なる患者に由来する正常乳房オルガノイドは培地基本F7/10ENの中で少なくとも継代6まで増殖する。 実施例5-肺オルガノイドの作製 マウス肺オルガノイドを作製するために、マウスを屠殺し、胸腔を開いた。胸部臓器および気管を注意深く取り出した後に、安全かみそりの刃を用いて心臓を切開した。その後に、空気および血液を除去するために、21G X 1 1/2インチの針を用いて5〜10mlのPBSOを気管内に注入した。 ヒト肺オルガノイドを作製するために、切除された非小細胞肺癌患者の肺葉から目立たない余分な組織を単離し、冷AdDF+++に入れて保管し、外科手術後24時間以内に処理した。 ヒト肺腫瘍オルガノイドを作製するために、切除された非小細胞肺癌患者の肺葉から、正常肺実質が無い、生存可能な余分な腫瘍組織を単離し、冷AdDF+++に入れて保管し、外科手術後24時間以内に処理した。 氷上に置いた、冷PBSOが入っているペトリ皿の中で肺(および/または気管)を非肺組織から分離した後に、2本のメスを用いて素早く切り刻んだ。PBSOに溶解した0.5%FCSでプレコーティングした10mlピペットを用いて、12mlの冷PBSOが入っている15mlファルコン(falcon)チューブに組織断片を移した後に、40gおよび4℃で5分間、遠心分離した。赤血球および白血球を含有する上清を捨て、洗浄工程を繰り返した。洗浄したペレットを、PBSOに溶解した0.5mg/mlディスパーゼ(17105-041, Gibco)および1mg/mlコラゲナーゼ(C9407, Sigma)が入っている50mlファルコンチューブに移し、オービタルシェーカーに入れて100rpmおよび37℃で40分間インキュベートした。その後に、消化混合物を氷上に置いた。PBSOに溶解した0.5%FCSでプレコーティングした10mlピペットを用いて上下に勢いよくピペッティングすることによって、組織を機械的に破壊した。上清を100mmフィルターで濾している間に、大きな組織断片を沈殿させた。ピペッティングによる組織破壊と、それに続く濾過を、10mlピペット、次いで、5mlピペット、次いで、21G X 1 1/2インチの針を備えた注射器を用いて3回繰り返した。濾液を合わせ、消化酵素をブロックするために5%FCSを添加し、300gおよび4℃で遠心分離した。ペレットを10ml冷AdDF+++で再懸濁している間に上清を捨て、40mmフィルターで濾した。濾液を300gおよび4℃で遠心分離し、上清を捨てた。目に見える赤色ペレットの場合、赤血球を2mlの赤血球溶解緩衝液(Roche-11814389001)で室温で5分間、溶解した後に、10mlのAdDF+++を添加し、400gで遠心分離した。ペレットを冷たい10mg/ml Cultrex growth factor reduced BME type 2(Trevigen-3533-010-02)に再懸濁し、予熱した24ウェル懸濁培養プレート(Greiner-M9312)の上に置いた40μlのBME細胞懸濁液の液滴を、37℃で20分間、5%CO2加湿インキュベーターの中で凝固させた。 マウス肺オルガノイドの上に、50ng/ml EGF(AF-100-15, Peprotech)、10%Noggin条件培地、10%Rspo条件培地、25ng/ml FGF-7(5028-KG-025, R&D)、100ng/ml FGF-10(100-26, Peprotech)、1xB27サプリメント(17504-44, Gibco)、1.25mM N-アセチルシステイン(A9165, Sigma)、および3.5ug/ml ROCK1、2阻害剤(Y-27632, Abmole)を含有する、ENRF7/10(AdDF+++[advanced DMEM/F12(12634-034, Invitrogen)、1xGlutamax(35050-068, Invitrogen)、10mM HEPES(15630-056 Invitrogen)、1xペニシリン/ストレプトマイシン(15140-122 Invitrogen)]をかぶせた。 ヒト肺オルガノイドの上に、50ng/ml EGF(AF-100-15, Peprotech)、10%Noggin条件培地、10%Rspo条件培地、25ng/ml FGF-7(5028-KG-025, R&D)、100ng/ml FGF-10(100-26, Peprotech)、1xB27サプリメント(17504-44, Gibco)、1.25mM N-アセチルシステイン(A9165, Sigma)、500nM ALK4、5、7阻害剤A83-01(2939, Tocris)、1μM SB202190 p38 MAPキナーゼ阻害剤(S7067, Sigma)、および3.5ug/ml ROCK1、2阻害剤(Y-27632, Abmole)を含有する、基本F7/10(high)培地(AdDF+++[advanced DMEM/F12(12634-034, Invitrogen)、1xGlutamax(35050-068, Invitrogen)、10mM HEPES(15630-056 Invitrogen)、1xペニシリン/ストレプトマイシン(15140-122 Invitrogen)]をかぶせた。p53変異腫瘍オルガノイドを選択的に成長させるために、成長培地に、5μMのp53安定化Nutlin-3(10004372, Cayman Chem.)を添加した。開始効率を高めるために、培地には5nMニューレグリン(100-03, Peprotech)を一時的に添加してもよい。 培地を4日ごとに交換し、オルガノイドを毎週(マウス肺オルガノイド)および2〜4週間ごとに(ヒト肺オルガノイド)継代した。嚢胞オルガノイドを2mlの冷AdDF+++に再懸濁し、火に当てて作製したガラスパスツールピペットに通して機械的に剪断した。高密度のオルガノイドを2mlのTrypLE Express(Invitrogen-12605036)に再懸濁し、室温で1〜5分間インキュベートし、火に当てて作製したガラスパスツールピペットに通して機械的に剪断することによって解離した。10mlのAdDF+++を添加し、それぞれ、300gまたは400gで遠心分離した後に、オルガノイド断片を冷BMEに再懸濁し、新たなオルガノイドの形成を可能にする比(1:1〜1:6)で再播種した。単一細胞懸濁液を最初は高密度で播種し、約1週間後に低密度で再播種した。 実施例6-RSVに感染した肺オルガノイド ヒト肺オルガノイドをヒト呼吸器ウイルス(例えば、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、インフルエンザ)に感染させるために、オルガノイドを、火に当てて作製したガラスパスツールピペットに通して大規模に剪断し、過剰の冷AdDF+++で洗浄し、300gおよび4℃で遠心分離した。ペレットを最小限の量の基本F7/10(high)培地に再懸濁し、96ウェル丸底培養プレート(Greiner-650180)の中にある約1x10e4pfuのウイルス(例えば、RSV-RFP、GFP-PR8)と37℃の5%CO2加湿インキュベーターの中で6時間インキュベートした。ウイルスインキュベーション後に、オルガノイドを過剰の冷AdDF+++に再懸濁し、300gおよび4℃で遠心分離した。ペレットを冷たいBMEに再懸濁し、40μlのBME細胞懸濁液の液滴を、予熱した24ウェル懸濁培養プレート(Greiner-M9312)にプレートし、37℃の5%CO2加湿インキュベーターの中で20分間、凝固させた。感染したオルガノイドの上に基本F7/10(high)培地をかぶせた。 オルガノイドを、(共焦点)タイムラプス(time lapse)顕微鏡を用いて数日間にわたって定期的に画像化した。驚いたことに、RSVに感染した細胞は、運動性のある間葉系表現型を示した(図30A)。標識された核を3Dで追跡することによって細胞運動性を定量した。RSVに感染した肺オルガノイドの細胞は運動性が有意に高かった(図30B)。オルガノイドそのものも、RSVに感染すると運動性が高まり、回転および融合し始めた(図30C)。臨床RSV分離株に感染しても同様の結果が得られた。異なる臨床RSV分離株が、MOIが等しいのにもかかわらず、異なる肺オルガノイド形態を誘導した(図31)。RSVに感染した肺オルガノイドと共培養したB細胞は感染部位に移動したのに対して、モック感染した肺オルガノイドと共培養したB細胞は運動しなかった。RSVによって誘導された、肺オルガノイドおよび細胞の運動性は、RSVによって媒介される病理学的変化の直接定量を可能にする。抗ウイルス薬を簡単に実験計画に取り入れ、その効力について試験することができる。 実施例7-マウス肺オルガノイドのクローン増殖 肺オルガノイドを遺伝子操作、例えば、遺伝子修正(gene correction)するための、例えば、変異CFTRを遺伝子修正するための必要条件は肺オルガノイドをクローン増殖させる能力である。ENRF7/10培地がマウス肺オルガノイドのクローン増殖を可能にするかどうか試験するために、マトリゲル(商標)から1個のマウス肺オルガノイドを選び、火に当てて作製したガラスパスツールピペットに通して剪断し、過剰の冷AdDF+++で洗浄し、300gおよび4℃で遠心分離した。上清を捨て、剪断したオルガノイド断片をマトリゲル(商標)に再播種し、その上にENRF7/10をかぶせた。オルガノイド断片は一晩で嚢胞構造を形成し、嚢胞構造は次の14日間にわたって直径が大きくなった。 前記のオルガノイドがオリジナルのオルガノイドとほぼ同じ直径に達したら、上記のように再剪断し、播種した。この手順を次の10週間にわたって隔週で繰り返した。その結果、マウス肺オルガノイドで満たされた12x40ulのマトリゲル(商標)液滴が得られた(このうち3つを図15に示した)。これらは全て親オルガノイドと形態学的に似ていた。従って、ENRF7/10培地を用いるとマウス肺オルガノイドのクローン増殖が可能になる。 実施例8-マウス肺オルガノイド±Cftrにおけるフォルスコリン誘導性膨張アッセイ 嚢胞線維症は1500を超えるCFTR変異によって引き起こされる。異なるCFTR変異をもつ患者は、嚢胞線維症を治療する一般的な薬物および薬物療法に異なって応答する。診断、機能研究、創薬、および個別化医療を容易にするために、嚢胞線維症患者に由来する腸オルガノイドを対象にしてロバストな膨張アッセイが開発されている(Dekkers JF et al., A functional CFTR assay using primary cystic fibrosis intestinal organoids. Nat Med. 2013 Jul;19(7):939-45.)。嚢胞線維症は多臓器疾患であり、肺に重大な影響を及ぼすので、この実験から、補完的な治療戦略を調べるために、膨張アッセイを肺オルガノイドにおいて再現できることが証明された。ENRF7/10培地を用いて説明したように、野生型マウスおよびCftr KOマウスから肺オルガノイドを確立した。増殖後に、肺オルガノイドを、火に当てて作製したガラスパスツールピペットに通して剪断し、過剰の冷AdDF+++で洗浄し、300gおよび4℃で遠心分離した。上清を捨て、剪断したオルガノイド断片を48ウェルプレートの中にある20ulのマトリゲル液滴に再播種し、この上にENRF7/10をかぶせた。2日後にオルガノイドの写真を撮り、10μMフォルスコリンで処理し、37℃および5%CO2でインキュベートした。3時間後に、再び、同じオルガノイドの写真を撮り、ImageJを用いてオルガノイド面積を定量した。オルガノイド体積を球形と考えて計算し、比較した。予想通り、フォルスコリン刺激に応答したCftr KO肺オルガノイドの膨張は野生型肺オルガノイドよりかなり少なかった(図18)。驚いたことに、Cftr KOオルガノイドはフォルスコリン刺激後でも膨張した。このことから、代替塩素イオンチャネルが存在することが分かる。代替塩素イオンチャネルは、Cftrが、フォルスコリン誘導性膨張を媒介する唯一のチャンネルである腸オルガノイドでは観察されたことがない。例えば、カルシウム活性化塩素イオンチャネルの存在は潜在的に治療に利用することができ、変異Cftrを直接の標的とする治療戦略を補完または回避することができるかもしれない。従って、Cftrを機能的に特徴付けるために、Cftrに特異的な薬物療法を試験するために、および代替チャンネルを標的とする薬物を試験するために、ENRF7/10中で成長させたマウス肺オルガノイドを使用することができる。 実施例9-ヒト肺オルガノイドのTMEM16A依存性膨張 実施例8に記載の代替チャンネルの1つは、Eactを用いて特異的に活性化することができるTMEM16Aである(Namkung et al., Small-molecule activators of TMEM16A, a calcium-activated chloride channel, stimulate epithelial chloride secretion and intestinal contraction. The FASEB Journal. 2011;25(11):4048-4062.)。Eactがヒト肺オルガノイド膨張を誘導できるかどうか試験するために、基本F7/10N培地を用いて説明したようにヒト肺オルガノイドを作製した。次いで、オルガノイドを剪断し、100μmストレーナーで濾過し、Cultrex(登録商標)Basement Membrane Extract(Trevigen, Inc.)に播種し、この上に基本F7/10N培地をかぶせた。培養して3日後に、オルガノイドを、96ウェルプレートの中にある4μlのCultrex(登録商標)Basement Membrane Extract(Trevigen, Inc.)液滴に再播種し、その上に50μlの基本F7/10N培地をかぶせた。翌日、オルガノイドをカルセイングリーンで染色し、漸増濃度のEactとインキュベートした(正の対照としてフォルスコリンを加え、負の対照としてDMSOビヒクルを加えた)。さらなる対照として健常腸オルガノイドを選んだ。オルガノイド膨張を、2.5x対物レンズを用いた回転盤顕微鏡(spinning disk microscope)で2時間にわたって10分ごとに画像化した。直線的なオルガノイド膨張が収まったら、最大オルガノイド膨張を計算および定量した。図18bに示したように、Eactは、ヒト肺オルガノイドにだけ、はっきりとした用量依存的膨張応答を誘導するのに対して、腸オルガノイドはフォルスコリンにしか応答しない。この発見から、TMEM16Aが肺オルガノイドにしか存在せず、この肺オルガノイドを潜在的に治療に利用することができることが分かる。 |