【発明の詳細な説明】 【0001】 発明の分野本発明は一般的に診断微生物学、より特定して述べれば、検体中に存在する1 種以上のウイルスまたはその他の細胞内寄生体を検出および識別するための組成物と方法に関する。 本発明はまた、生物体の抗菌剤に対する感受性を評価するための組成物および方法をも提供する。 【0002】 発明の背景分子的方法を用いたウイルスの検出法は最近進歩したが、それにも関わらず、 細胞培養物中のウイルスの検出および同定は依然として大多数のウイルス疾患の確定診断を行うための「金標準(gold standard)」であり、新規の方法はこの方法に対して比較される(例えば、WiedbraukとJohnston, Manual of Clinical Vir ology, Raven Press Inc., New York, 米国ニューヨーク州[1993], pp.1-17を参照せよ)。 細胞培養は他の細胞内寄生体、特にクラミジアおよびリケッチアなどの絶対細胞内寄生体の検出および同定にも用いられる。 【0003】 ウイルスの同定に用いられる細胞培養法には2つの一般的なタイプがある。 第1 の方法はウイルス検出のエンドポイントにウイルスによって誘発される細胞変性効果(CPE)の同定を用いるものである。 第2の方法は感染をうけた培養液中にCPE が明らかに出現する以前にウイルスの存在を同定するために分子的方法を用いるものである。 どちらの方法も細胞培養を用いるため、細胞培養法についての専門知識、スペース、お金、装置および備品が限られた小規模な実験室では問題となりうる。 用いる細胞の如何によっては細胞培養は維持することが困難でしばしば熟達した実験員の努力を必要とする。 さらに、細胞培養は細胞培養用フード、倒立顕微鏡(細胞観察用)、CO 2供給ライン付のインキュベーターなどの装置および多くの実験室では容易に入手し得ないその他の装置を必要とする。 【0004】 CPEに基づく試験法 CPEに基づく試験法は、ウイルスによって誘発されるCPEがウイルス複製の複数回のラウンドを経て隣接する細胞にウイルスが拡がった後に(すなわちそれらの細胞はウイルス感染に対して「許容性」である)のみ出現するので長期間のインキュベートが必要である場合が多い。 ウイルスが拡がると最初に感染をうけた細胞の周囲の細胞の滅亡を招く。 CPEに基づく試験法は伝統的にはチューブまたはフラスコ内で行われ、そのチューブまたはフラスコの中にはそれらの側面および /または底面に付着した、または溜まった単一の細胞型が含まれている。 ウイルスは1個の細胞に感染し、複製し、隣接する細胞に拡がりそこでその過程が繰り返されるので、結果が得られるまでに少なくとも28日間かかる。 確かに、ウイルス懸濁液を細胞培養液に接種した後の7〜28日間では結果が得られないことがしばしばある(例えば、Leland, Clinical Virology, WBSaunders, Philadelphia [1996], pp.60-65を参照せよ)。 目視しうるCPEが確立されるまでに必要な時間はウイルス複製の速度に依存しており、それは細胞型およびウイルスによって異なる。 このように、サンプル中のウイルスを検出するために必要な時間は場合によって大きく変動する。 【0005】 プレCPE試験 CPEに基づく試験法とは異なり、プレCPE試験ではウイルスの感受性宿主細胞中への侵入および少なくとも1種の初期ウイルス特異的抗原または核酸の検出可能な発現のみが必要である。 ウイルス特異的分析物またはその他のインディケーターの検出は多数の方法によって行うことができる(例えば、標識抗体、ポリメラーゼ連鎖反応法[PCR]、またはELVIS(商品名)システムなどのその他のリポーターの使用)。 初期ウイルス遺伝子の発現は多数のウイルス−宿主細胞系においてin vitroで非常に迅速であることが示されている。 このように、プレCPEに基づいたウイルス試験法は臨床で採取された検体中のウイルスの検出と同定に要する時間を著しく短縮する。 【0006】 ウイルスのプレCPEの検出はしばしば1ドラムの大きさのシェル型バイアル中に容れられた12mmの円形カバーガラス上で増殖させた単層の付着細胞を用いることによって行われる(すなわち「シェル型バイアル」法または技法)。 シェル型バイアル技法ではウイルスを強制的に細胞中に導入しウイルスの分離を増強するために検体を遠心する。 これらのバイアルはカバーガラスを入れた滅菌シェル型バイアル中に細胞を分注することによって調製する。 そのバイアルを垂直にして細胞がカバーガラス上に単層を形成するまでインキュベートする。 シェル型バイアルへの接種にはバイアルから培地を傾斜して除去し、加工されたサンプル(すなわち臨床で採取した検体)を細胞の単層に添加し、そのバイアルを低速で、1時間ほどであることが多いが、遠心する。 遠心後、新鮮な培地を各バイアルに添加する。 次いで、バイアルを所望の時間インキュベートする。 インキュベーションの終わりにカバーガラスを抗原検出法(例えば免疫蛍光法)を用いて染色するか、または細胞を分子診断技法で評価する。 【0007】 ウイルスのみならず、シェル型バイアルはクラミジアの検出および同定にも広く用いられているが、それはクラミジアの検出および同定に利用可能な他の方法がやっかいで時間と試薬を多く必要とするからである(例えばWiedbraukとJohnst on, 同上, pp64-76を参照せよ)。 【0008】 これらのプレCPE試験法の主たる利点は試験結果を迅速に得ることがしばしば可能であることである。 シェル型バイアル培養を用いるプレCPE試験法の1つの大きな欠点はこのタイプの試験法は1種または数種のウイルス性物質を同定しようとし、陽性の検体の比率が高いと思われる場合にのみ実現可能で費用対効果が大きいものとなることである(例えば、SchmidtとEmmons, "General Principles of Laboratory Diagnostic Methods for Viral, Rickettsial, and Chlamydial In fections" SchmidtとEmmons編, Diagnostic Procedures for Viral, Rickettsia l and Chlamydial Infections中の記載, American Public Health Association, 米国ワシントンDC[1989], p.4を参照せよ)。 【0009】 臨床で採取された検体例えば、患者の生殖器領域に皮膚の小水疱が存在すればそれは単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染である疑いが非常に濃い。 典型的には、医師はその影響の及んでいる領域(すなわち小水疱)から検体を取り、単一のHSV感受性細胞系統でのC PEまたはプレCPE試験を指示する。 このような細胞系統はしばしばチューブ、シェル型バイアル、またはマルチウェルプレート(例えばマイクロタイタープレート)中に入った形で供給される。 その細胞系統を接種し、適切な時間インキュベートした後、サンプル中のHSVの存在の確認は多数の分析方法のうちの1つ以上の方法を用いて行うことができる(例えば、免疫蛍光法、免疫ペルオキシダーゼ法、核酸プローブ、またはウイルスにより誘導されたリポーター遺伝子など)。 【0010】 サイトメガロウイルス(CMV)の検出には単一の細胞系統 (例えば、肺の[MRC-5] 細胞、または包皮の[HFF]細胞などのヒト繊維芽細胞系統)がしばしば用いられる。 細胞をバイアル内のカバーガラス上でコンフルエントとなるまで増殖させ、サンプルをバイアルに添加し、バイアルを24〜48時間、またはそれ以上インキュベートし、免疫蛍光法を用いてCMV初期抗原の発現を検出する。 【0011】 呼吸器、胃腸管、生殖器または非経口経路で伝播するウイルス疾患の正確な鑑別診断を行うことは、多くの病原性ウイルスが類似の症状を引き起こすかあるいは不顕性感染(すなわち徴候と症状が容易に認められるものでない)となるので、 かなり困難である。 【0012】 呼吸器系のウイルスのうち、ライノウイルスとコロナウイルスは大部分の上気道感染の原因となっている。 これらのウイルスが上気道粘膜に到達すると、上皮細胞に付着し感染を起こす。 典型的にはこのような感染は2、3日しか続かず、自然治癒する。 インフルエンザ、パラインフルエンザ、RSウイルス(RSV)および各種のアデノウイルスなどのその他の呼吸器系のウイルスは線毛円柱上皮細胞に付着し感染する。 ウイルスに感染した細胞は溶解し、酵素を放出し、補体を活性化し、その結果局所的な単核球性炎症反応をもたらす。 正常な気道クリアランス機構は上皮細胞が正常に働かないためにうまく行かない。 これらの細胞も剥がれて除かれうる。 死んだ細胞や死にかけている細胞からの破片はしばしば気道の障害物となり、宿主は二次細菌感染および/または重感染に非常に感受性になる。 これらのウイルスは全て下部気道障害および肺炎に進行する可能性がある。 呼吸器の上皮細胞で複製した後、アデノウイルスは血流を経由して全身のリンパ組織へと動き、全身感染または全身疾患を起こす。 【0013】 標準的な臨床ウイルス学の方法は、検体(例えば、咽喉のスワブ、鼻咽頭のスワブ、または喀痰など)を細胞培養物を入れた複数のチューブ中に接種することであるがそれは各タイプのウイルスの特定の細胞型に対する指向性 (tropism)がしばしば非常に狭いからである(すなわちある1つの細胞型では最適には1つのウイルスが増殖しうるのみである)。 限られた数の細胞型でしか増殖しないというウイルスのこのような狭い指向性のためにCPEおよびプレCPEウイルス試験の双方に少なくとも2つの大きな実際上の問題点がある。 【0014】 第1は、サルの腎細胞の一次培養物が現在インフルエンザウイルスの単離のための細胞系統として選択されている。 このような細胞の作製にはソースとなる動物を屠殺し細胞培養物を調製する前に長期間にわたる検疫期間を必要とする。 この検疫期間はその動物の健康状態が良好かをモニターし、泡沫状ウイルス、SV5 およびSV40などの内因性シミアンウイルスによる感染についてその動物を試験するための時間である。 この検疫期間はまた、サルがサルBウイルス(これはヒトに対して高度に致死的なヘルペスウイルスである)に感染する可能性を大いに低減するものであるが、その可能性を排除はしない。 さらに、一次細胞培養物の作製にサルを用いることに関しては他の問題もあり、そのような問題点としては輸入問題およびサルの生息数問題による適当な動物のストックの減少も挙げられる。 【0015】 第2には、インフルエンザウイルス以外の呼吸器系のウイルスを検出するためには別の連続的継代細胞系統が必要である。 このように、各患者のウイルス感染 /疾患の診断のためには複数の細胞系統が用いられる。 プレCPE試験法を呼吸器ウイルスの検出と同定に用いる場合には個々の細胞系統の複数ユニットが必要なことが問題をさらに複雑にしている。 呼吸器ウイルスのプレCPE試験にはカバーガラスを取り扱う多大な労力、陽性および陰性の検体の双方について複数の細胞系統で用いられる分子試薬の追加出費、および細胞系統のパネルに接種された複数の細胞系統の各々についての顕微鏡での読みとりに伴う多大な労力が必要である。 【0016】 しかし、これらの欠点にも関わらず、単一の細胞型を複数ユニット(チューブ、シェル型バイアルその他)用いるシェル型バイアル技法は、その方法が実証された方法であるため、現在のところ依然として呼吸器ウイルスの検出に用いられている。 例えば、HEp-2細胞のみを含有するシェル型バイアルを用いてRSVを16時間後に検出してみると、臨床で採取された検体に直接的に適用する抗原検出法よりも陽性率が高く、従来法の細胞培養法と同様の陽性率であった(Smithら, J. C lin. Microbiol., 29:463-465[1991])。 単一の細胞型の単層を含有するシェル型バイアル培養を用いて他の呼吸器ウイルスを単離することも可能である。 例えば、40時間インキュベートしたサル腎細胞の一次培養物およびA549細胞を含むバイアルを用いると、アデノウイルスの83%、B型インフルエンザウイルスの94%、パラインフルエンザウイルス1、2、および3型の80%が同定された(Rabalaisら, J. Coln. Microbiol., 30:1505-1508[1992)。 別の報告においては、アカゲザルの腎細胞の一次培養物を含むシェル型バイアル中ではアデノウイルスの50%、A型インフルエンザウイルスの94%、B型インフルエンザウイルスの100%、およびパラインフルエンザウイルスの100%が、また、HEp-2細胞を含むシェル型バイアル中では9 2%のRSVが2〜4日間インキュベートにより同定されている(例えばOlsenら, J. Cl in. Microbiol., 31:422-425[1993]; およびLeland, Clinical Virology, WBS aunders Company, Philadelphia, 米国ペンシルベニア州 [1996], p.85-86を参照せよ)。 【0017】 これらの方法はかなり迅速に結果を出すとはいえ(すなわち、CPE試験法ではしばしば長いインキュベーション時間が必要なこととは対照的である)、臨床現場およびウイルス試験を付託される実験室においては、単一の操作の容易なユニット中での信頼性の高いウイルスの検出および同定のための培養法と組成物であって、費用対効果の大きい様式での迅速な検出および同定を可能にし、診断用アッセイシステムとしての感度をも提供するような培養法および組成物が依然として必要とされている。 【0018】 発明の概要本発明は一般に診断微生物学の分野に関し、特に、検体中に存在する1種以上のウイルスまたは他の細胞内寄生生物を検出および識別するための組成物および方法に関する。 本発明はまた、抗菌剤に対する生物の感受性を評価する組成物および方法を提供する。 【0019】 特に、本発明は、CPEに基づく方法およびプレ-CPE法を利用したウイルスの検出に適した方法および組成物を提供する。 好適な実施形態には、少なくとも2種の異なる細胞型を含む混合細胞培養物が包含される。 一部の好適な実施形態では、混合細胞培養物には2種の異なる細胞型が含まれ、他の実施形態では、混合細胞培養物には3種以上の異なる細胞型が含まれる。 従って、本発明は、少なくとも2種の細胞型が1つの容器(例えば、フラスコ、チューブ、シェル型バイアル、または細胞培養に適した他の任意の容器)内で混ざり合った組成物を包含することを意図したものである。 重要なことは、これらの混合細胞培養物に含まれる各々の細胞型が、あたかも単一細胞培養物(即ち、当該技術分野で知られているように、細胞型を1種類しか含まない細胞培養物)であるかのように、ウイルスおよび他の細胞内寄生生物に対して感受性を保有することである。 さらに、本発明の混合細胞培養物は、診断アッセイで使用が必要とされる期間にわたって生存可能なものである。 特に好適な実施形態では、混合細胞培養物に含まれる細胞型はほぼ同じ比率で存在する(即ち、2種の細胞型が混合されている場合には、細胞型の比率は50:50である)。 しかしながら、様々な比率を用いて各種検出系が最適化される可能性もあるため、本発明は、混合培養物中の細胞型を特定の比率に限定することを意図したものではない。 例えば、45:55、40:60または35:75の2 細胞混合物が、50:50の比率よりも適切な場合がある。 【0020】 本発明はまた、クラミジア目およびリケッチア目のメンバーといった、ウイルス以外の絶対細胞内寄生生物および細胞内寄生生物の検出および同定に適した方法および組成物を提供する。 【0021】 本発明はまた、細胞内寄生生物の検出に適した細胞培養物を含んでなる組成物を意図しており、前記細胞培養物は、少なくとも1種の細胞内寄生生物の感染に感受性の細胞型を少なくとも2種含んでなるものである。 この組成物の一部の好適な実施形態では、細胞型は第1細胞型と第2細胞型を含んでなる。 一部の実施形態では、第1細胞型はバッファローグリーンモンキー(buffalo green monkey) 腎細胞からなり、第2細胞型はミンク肺細胞からなる。 他の実施形態では、第1 細胞型はミンク肺細胞からなり、第2細胞型はヒト粘膜表皮細胞からなる。 さらに別の実施形態では、第1細胞型はヒト肺癌細胞からなり、第2細胞型はヒト粘膜表皮細胞からなる。 さらに別の実施形態では、第1細胞型はバッファローグリーンモンキー腎細胞からなり、第2細胞型はヒト胎児肺細胞からなる。 さらなる実施形態では、第1細胞型はヒト類表皮喉頭癌(epidermoid laryngeal carcinom a)細胞からなり、第2細胞型はMcCoy細胞からなる。 別の実施形態では、第1細胞型はミンク肺細胞からなり、第2細胞型はヒト二倍体肺細胞からなる。 【0022】 一部の好適な実施形態では、組成物の細胞型は呼吸器ウイルスに感受性であり、呼吸器ウイルスとしては任意の型のインフルエンザウイルス(例えば、インフルエンザA型、インフルエンザB型およびインフルエンザC型)並びに/または任意の株のRSV、サイトメガロウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス(coronovirus)およびアデノウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。 さらに別の実施形態では、組成物の細胞型はエンテロウイルスに感受性であり、エンテロウイルスとしては任意の型および/または株のエコーウイルス、ポリオウイルスおよびコクサッキーウイルス( 例えば、コクサッキーA型およびB型ウイルス)、並びに特定(numbered)のEV株が挙げられるが、これらに限定されない。 エンテロウイルスの他にも、本発明はA型肝炎等のピコルナウイルスに感受性の細胞型を包含するものとする。 【0023】 本発明はまた、サンプル中の細胞内寄生生物を検出および同定する方法を提供するものであり、前記方法は、1種以上の細胞内寄生生物を含む疑いのあるサンプルと少なくとも2種の細胞型を含んでなる混合細胞培養物を用意し、混合細胞培養物にサンプルを接種して接種培養物とし、接種培養物を1種以上の細胞内寄生生物の有無について観察する工程を含んでなる。 【0024】 この方法の一部の実施形態では、細胞内寄生生物はウイルスである。 一部の特に好適な実施形態では、ウイルスは、サイトメガロウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、ライノウイルス、コロナウイルスおよびアデノウイルスからなる群より選択される。 この方法のさらに別の実施形態では、ウイルスはエンテロウイルスである。 別の特に好適な実施形態では、エンテロウイルスは、ポリオウイルス、コクサッキーウイルスおよびエコーウイルス(例えば、コクサッキーA型およびB型ウイルス)、並びに特定のEV株からなる群より選択される。 エンテロウイルスの他にも、本発明はA型肝炎等のピコルナウイルスに感受性の細胞型を包含するものとする。 さらに別の好適な実施形態では、ウイルスはヘルペスウイルスである。 別の特に好適な実施形態では、 ヘルペスウイルスは、単純ヘルペス1型、単純ヘルペス2型、サイトメガロウイルス、水痘-帯状疱疹ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、ヒトヘルペスウイルス6、ヒトヘルペスウイルス7およびヒトヘルペスウイルス8からなる群より選択される。 さらに別の好適な実施形態では、細胞内寄生生物はクラミジア属のメンバーである。 さらに別の特に好適な実施形態では、細胞内寄生生物はトラコーマクラミジア(C. trachomatis)である。 【0025】 この方法の一部の好適な実施形態では、細胞型は第1細胞型と第2細胞型を含んでなる。 一部の好適な実施形態では、第1細胞型はミンク肺細胞であり、第2 細胞型はヒト粘膜表皮細胞である。 他の好適な実施形態では、第1細胞型はバッファローグリーンモンキー腎細胞であり、第2細胞型はヒト粘膜表皮細胞である。 さらに別の実施形態では、第1細胞型は遺伝子工学的に操作された幼体ハムスター腎細胞であり、第2細胞型はミンク肺細胞である。 さらに別の実施形態では、第1細胞型は遺伝子工学的に操作された第1細胞型であり、第2細胞型は遺伝子工学的に操作された第2細胞型である。 【0026】 本発明の方法は、目的のウイルスおよび/または他の細胞内生物に対する既知の陽性対照および陰性対照との併用を意図したものである。 【0027】 本発明はまた、サンプル中の細胞内寄生生物を検出および同定する方法を提供するものであり、前記方法は、1種以上の細胞内寄生生物を含む疑いのあるサンプルと、第1細胞型および第2細胞型を含んでなる混合細胞培養物を用意し、混合細胞培養物にサンプルを接種して接種培養物とし、接種培養物を1種以上の細胞内寄生生物の有無について観察する工程を含んでなる。 【0028】 一部の特に好適な実施形態では、細胞内寄生生物はウイルスである。 一部の特に好適な実施形態では、ウイルスは、サイトメガロウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、ライノウイルス、コロナウイルスおよびアデノウイルスからなる群より選択される。 この方法のさらに別の実施形態では、ウイルスはエンテロウイルスである。 別の特に好適な実施形態では、エンテロウイルスは、ポリオウイルス、コクサッキーウイルスおよびエコーウイルス(例えば、コクサッキーA型およびB型ウイルス)、並びに特定のEV株からなる群より選択される。 エンテロウイルスの他にも、本発明はA型肝炎等のピコルナウイルスに感受性の細胞型を包含するものとする。 さらに別の好適な実施形態では、ウイルスはヘルペスウイルスである。 別の特に好適な実施形態では、 ヘルペスウイルスは、単純ヘルペス1型、単純ヘルペス2型、サイトメガロウイルス、水痘-帯状疱疹ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、ヒトヘルペスウイルス6、ヒトヘルペスウイルス7およびヒトヘルペスウイルス8からなる群より選択される。 さらに別の好適な実施形態では、細胞内寄生生物はクラミジア属のメンバーである。 さらに別の特に好適な実施形態では、細胞内寄生生物はC. tra chomatisである。 【0029】 この方法の一部の好適な実施形態では、細胞型は第1細胞型と第2細胞型を含んでなる。 一部の好適な実施形態では、第1細胞型はミンク肺細胞であり、第2 細胞型はヒト粘膜表皮細胞である。 他の好適な実施形態では、第1細胞型はバッファローグリーンモンキー腎細胞であり、第2細胞型はヒト粘膜表皮細胞である。 さらに別の実施形態では、第1細胞型は遺伝子工学的に操作された幼体ハムスター腎細胞であり、第2細胞型はミンク肺細胞である。 さらに別の実施形態では、第1細胞型は遺伝子工学的に操作された第1細胞型であり、第2細胞型は遺伝子工学的に操作された第2細胞型である。 【0030】 本発明の方法は、目的のウイルスおよび/または他の細胞内生物に対する既知の陽性対照および陰性対照との併用を意図したものである。 【0031】 本発明はさらに、インフルエンザウイルスを検出する方法を提供するものであり、前記方法は、インフルエンザウイルスを含む疑いのあるサンプルとミンク肺細胞を用意し、ミンク肺細胞にサンプルを接種し、ミンク肺細胞中のインフルエンザの有無を検出する工程を含んでなる。 特に好適な実施形態では、ミンク肺細胞はMvlLu細胞である。 別の実施形態では、インフルエンザウイルスはインフルエンザA型、インフルエンザB型およびインフルエンザC型からなる群より選択される。 【0032】 本発明の方法は、目的のウイルスおよび/または他の細胞内生物に対する既知の陽性対照および陰性対照との併用を意図したものである。 【0033】 実施形態の一つでは、本発明は、検体中の感染性ウイルスを検出する方法を提供するものであり、前記方法は、a)ウイルスを含む疑いのある検体、ウイルス感染に対して許容性である細胞系統、およびウイルス由来のプロモーター配列を含んでなる配列を有するオリゴヌクレオチドを含む遺伝子工学的に操作された細胞系統を用意し、その際、前記プロモーター配列はリポーター遺伝子に機能し得る形で連結しており、前記リポーター遺伝子の発現はウイルスの存在に依存かつ量的に比例するものであり、b)許容性細胞系統と遺伝子工学的に操作された細胞系統を混合して混合細胞培養物とし、c)混合細胞培養物がウイルスに感染し得る条件下で混合細胞培養物に検体を接種し、d)リポーター遺伝子の発現を検出して検体中のウイルスの存在を検出する工程を含んでなる。 好適な実施形態の一つでは、混合細胞培養物は、80〜99%の許容性細胞系統と1〜20%の遺伝子工学的に操作された細胞系統からなる混合物である。 他の好適な実施形態では、混合細胞培養物は、各細胞型を同等の割合で使用する混合物である。 【0034】 この方法の実施形態の一つでは、遺伝子工学的に操作された細胞系統は、大腸菌lacZ遺伝子およびルシフェラーゼ遺伝子を含んでなる群より選択されるリポーター遺伝子に機能し得る形で連結されたヘルペスウイルス由来の誘導性プロモーターを含んでなる配列を有するオリゴヌクレオチドを含むものである。 この方法の好適な実施形態の一つでは、遺伝子工学的に操作された細胞系統はBHKICP10La cZである。 別の好適な実施形態では、遺伝子工学的に操作された細胞系統はBHKI CP6LacZである。 しかしながら、リポーター遺伝子は、lacZ遺伝子とルシフェラーゼ遺伝子に限られるものではない。 実際に、当業者に公知の任意の適切なリポーター遺伝子が本発明の方法に有用であると考えられる。 【0035】 また、各種の許容性細胞系統が本発明の方法に有用であることも考えられる。 実施形態の一つでは、許容性細胞系統はヘルペスウイルス感染に対して許容性である。 特に好適な実施形態では、許容性細胞系統はMRC-5である。 【0036】 本発明の方法は、目的のウイルスに対する既知の陽性対照および陰性対照との併用を意図したものである。 従って、遺伝子工学的に操作された細胞系統を用いる混合培養物の場合には、被験サンプル(例えば、臨床検体由来のサンプル)に含まれるリポーター遺伝子の発現パターンを、目的のウイルスに対して陽性および/または陰性であることが分かっている対照サンプルにおけるリポーター遺伝子の発現パターンと比較することを意図している。 また、リポーター遺伝子の発現とは関係のない作用(CPEが挙げられるが、これに限定されない)も検出可能であることを意図している。 これらの作用は、単独でおよびリポーター遺伝子の発現と組み合わせて、ウイルス感染の有無の検出に利用し得る。 【0037】 本発明はまた、検体中の感染性ヘルペスウイルスのタイピング方法を提供するものであり、前記方法は、a)ヘルペスウイルスファミリーのメンバーを1種以上含む疑いのある検体、ヘルペスウイルスファミリーの1種以上のメンバーの感染に対して許容性である細胞系統、およびヘルペスウイルスファミリーのメンバーに由来するプロモーター配列を含んでなる配列を有するオリゴヌクレオチドを含む遺伝子工学的に操作された細胞系統を用意し、その際、前記プロモーター配列はリポーター遺伝子に機能し得る形で連結しており、前記リポーター遺伝子の発現はヘルペスウイルスの存在に依存かつ量的に比例し、ヘルペスウイルスファミリーの異なるメンバーが存在する場合には前記リポーター遺伝子の発現は識別し得るように異なるものであり、b)許容性細胞系統と遺伝子工学的に操作された細胞系統を混合して混合細胞培養物とし、c)混合細胞培養物がヘルペスウイルスファミリーのメンバーに感染し得る条件下で混合細胞培養物に検体を接種し、その際、感染が成立すればリポーター遺伝子の識別可能な発現パターンが得られ、d) リポーター遺伝子の発現を検出して検体中のヘルペスウイルスファミリーの1種以上のメンバーの存在を検出し、e)得られた識別可能なパターンに基づいてヘルペスウイルスファミリーの特定のメンバーの存在を同定する工程を含んでなる。 この発現パターンは、目視による観察、分光測光法による観察といった補助を必要とするおよび必要としない各種方法によって観察可能なものである。 識別可能なパターンの検出は特定の検出方法に限られるものではない。 【0038】 本発明のタイピング方法の好適な実施形態では、混合細胞培養物は、80〜99% の許容性細胞系統と1〜20%の遺伝子工学的に操作された細胞系統からなる混合物である。 さらに別の好適な実施形態では、混合細胞培養物中、各細胞型はほぼ同等の割合で存在する。 上述の最初の方法と同様に、本発明は特定のヘルペスウイルスに限られるものではない。 特定の実施形態の一つでは、本発明の方法を用いて検出およびタイピングされるヘルペスウイルスファミリーのメンバーは、HS V-1、HSV-2、CMV、VZV、EBV並びにHHV-6、HHV-7およびHHV-8等のヒトヘルペスウイルスを含んでなる群より選択される。 1つの検体中で1種以上のヘルペスウイルスを検出およびタイピング可能にすることを意図している。 このように、複数のヘルペスウイルスによる同時感染を診断することが可能である。 例えば、本発明の方法を用いてHSV-1およびHSV-2による混合感染を検出することが可能であり、その感染を識別することが可能であると考えられる。 【0039】 タイピング方法の実施形態の一つでは、リポーター遺伝子は大腸菌lacZ遺伝子を含んでなる。 しかしながら、リポーター遺伝子はlacZに限られるものではない。 実際に、任意のリポーター遺伝子をこの方法に用いることが可能であると考えられる。 特に好適な実施形態の一つでは、組織化学染色を用いることでリポーター遺伝子を検出することができる。 ある一つのヘルペスウイルスファミリーのメンバーが、ヘルペスウイルスファミリーの他のメンバーより示される組織化学的発現パターンと識別可能な組織化学的発現パターンを示すものであることを意図している。 このように、本発明の方法を使用して、1つのヘルペスウイルスによる感染を別のヘルペスウイルスによる感染から識別することが可能である。 【0040】 本発明の方法は、目的のウイルスに対する既知の陽性対照および陰性対照との併用を意図したものである。 従って、被験サンプル(例えば、臨床検体由来のサンプル)における発現パターンを、目的のウイルスに対して陽性および/または陰性であることが分かっている対照サンプルにおける発現パターンと比較することを意図している。 また、リポーター遺伝子の発現とは関係のない作用(CPEが挙げられるが、これに限定されない)も検出可能であることを意図している。 これらの作用は、単独でおよびリポーター遺伝子の発現と組み合わせて、ウイルス感染の有無の検出並びにウイルス同士を識別する情報の提供に利用し得る。 【0041】 さらに別の実施形態では、本発明は、混合細胞培養物を含んでなる組成物を提供するものであり、ここで、前記混合細胞培養物は、ウイルス由来のプロモーター配列で形質転換した遺伝子工学的に操作された細胞系統とウイルス感染に対して許容性である遺伝子操作されていない細胞系統との組み合わせを含んでなり、 前記プロモーター配列はリポーター遺伝子に機能し得る形で連結しており、前記リポーター遺伝子の発現はウイルスの存在に依存かつ量的に比例するものである。 【0042】 この組成物の実施形態の一つでは、混合細胞培養物は、1〜20%の遺伝子工学的に操作された細胞系統と80〜99%の許容性細胞系統からなる混合物である。 さらに別の好適な実施形態では、混合細胞培養物中、各細胞型はほぼ同等の割合で存在する。 この組成物の好適な実施形態の一つでは、遺伝子工学的に操作された細胞系統成分は、リボヌクレオチドレダクターゼをコードする遺伝子のプロモーターを含んでなるものであってよい。 別の好適な実施形態では、プロモーターは、リボヌクレオチドレダクターゼのサブユニットを1つ以上コードする遺伝子を含んでなるものであってよい。 特に好適な実施形態の一つでは、遺伝子工学的に操作された細胞系統はBHKICP10LacZであり、別の特に好適な実施形態では、遺伝子工学的に操作された細胞系統はBHKICP6LacZである。 この組成物の別の実施形態では、遺伝子工学的に操作された細胞系統は、ウイルス由来の誘導性プロモーターの3'側に位置する大腸菌lacZ遺伝子を含んでなる。 このlacZ遺伝子は、このウイルス誘導性プロモーターの3'側に隣接して位置するものとする。 しかしながら、これらの配列が隣接することを意図したものではない。 実際には、リポーター遺伝子とプロモーター遺伝子が機能し得る形で連結することのみを意図しているものである。 さらに、この組成物は、任意のウイルス(ヘルペスウイルスファミリーのメンバーが挙げられるが、これに限定されない)に由来するプロモーター配列を含んでなるものを意図している。 また、遺伝子操作されていない細胞系統は、多くのウイルス感染(ヘルペスウイルスファミリーのメンバーによる感染が挙げられるが、これに限定されない)に対して許容性であることも意図している。 【0043】 好適な実施形態の一つでは、組成物には、リボヌクレオチドレダクターゼの大型サブユニットをコードする遺伝子のプロモーターを含む遺伝子工学的に操作された細胞系統が含まれ、ウイルスは、HSV-1、HSV-2、CMV、VZV、EBV、HHV-6、HH V-7およびHHV-8からなる群より選択されるヘルペスウイルスファミリーのメンバーである。 しかしながら、本発明は、特定のヘルペスウイルスに限られるものではない。 好適な実施形態の一つでは、遺伝子工学的に操作された細胞系統成分には、ICP10プロモーターが含まれ、ヘルペスウイルスファミリーのメンバーはHSV -2である。 一方、別の好適な実施形態では、遺伝子工学的に操作された細胞系統には、ICP6プロモーターが含まれ、ヘルペスウイルスファミリーのメンバーはHS V-1である。 【0044】 リポーター遺伝子の発現は、比色、蛍光定量または発光定量アッセイもしくはアッセイ系を含むがこれらに限定されない各種方法を使用することで、検出できると考えられる。 好適な実施形態の一つでは、リポーター遺伝子はβ-ガラクトシダーゼをコードする。 【0045】 実施形態の一つでは、組成物には、ウイルス感染に対して感受性の哺乳動物細胞系統である遺伝子工学的に操作された細胞系統が含まれる。 好適な実施形態の一つでは、遺伝子工学的に操作された細胞系統は、幼体ハムスター腎細胞を含んでなるものである(例えば、BHK細胞から誘導された細胞系統)。 実施形態の一つでは、組成物には、ヘルペスウイルス感染(HSV-1およびHSV-2感染が挙げられるが、これらに限定されない)に対して許容性である許容性細胞系統が含まれる。 特に好適な実施形態では、許容性細胞系統はMRC-5である。 本発明の組成物は、C PE等の作用も検出可能であるため、リポーター遺伝子の発現に基づくウイルス感染の検出に限られるものではない。 【0046】 本発明はまた、検体における感染性ヘルペスウイルスの有無をアッセイするためのキットを提供する。 前記キットには、a)ヘルペスウイルス感染に対して感受性である遺伝子工学的に操作された哺乳動物細胞の細胞系統と、ウイルスに対して許容性である細胞系統とから構成される混合細胞系統の供給源であって、前記遺伝子工学的に操作された細胞系統が、リポーター遺伝子に機能し得る形で連結されたウイルス由来のプロモーター配列を含んでなる配列を有するオリゴヌクレオチドを含むものであり、前記リポーター遺伝子の発現が検体中のウイルスの存在に依存かつ量的に比例するものである前記供給源、およびb)リポーター遺伝子の発現を検出するための試薬の供給源が含まれる。 遺伝子工学的に操作された細胞系統中に存在するプロモーター配列は、特定のウイルスまたはウイルスファミリーに限られるものではない。 任意のウイルスプロモーターが本発明のキットに有用であると考えられる。 しかしながら、好適な実施形態の一つでは、ヘルペスウイルス由来のプロモーター配列が遺伝子工学的に操作された細胞系統に存在する。 【0047】 各種のプロモーター配列が本発明のキットに有用であると考えられる。 しかしながら、好適な実施形態では、プロモーターは、完全なリボヌクレオチドレダクターゼ酵素をコードするか、またはリボヌクレオチドレダクターゼのサブユニットをコードするものである。 特に好適な実施形態の一つでは、プロモーター配列には、リボヌクレオチドレダクターゼの大型サブユニットをコードする遺伝子のプロモーターが含まれ、ヘルペスウイルスは、HSV-1、HSV-2、CMV、VZV、EBV、H HV-6、HHV-7およびHHV-8からなる群より選択されるヘルペスウイルスファミリーのメンバーである。 しかしながら、本発明のキットは、これらの列挙したヘルペスウイルスに限られるものではない。 実際に、任意のヘルペスウイルスが本発明のキットを用いることで検出し得ると考えられる。 本発明のキットの特に好適な実施形態の一つでは、プロモーター配列にはICP10プロモーターが含まれ、ヘルペスウイルスファミリーのメンバーはHSV-2である。 一方、別の好適な実施形態では、プロモーター配列にはICP6プロモーターが含まれ、ヘルペスウイルスファミリーのメンバーはHSV-1である。 【0048】 本発明のキットの好適な実施形態の一つでは、遺伝子工学的に操作された細胞系統に存在するプロモーター配列は、ヘルペスウイルス由来の誘導性プロモーターに機能し得る形で連結された大腸菌lacZ遺伝子を含んでなる。 特に好適な実施形態の一つでは、遺伝子工学的に操作された哺乳動物細胞はBHKICP10LacZ細胞であり、別の実施形態ではBHKICP6LacZ細胞である。 【0049】 好適な実施形態の一つでは、リポーター遺伝子はβ-ガラクトシダーゼをコードする。 しかしながら、本発明は特定のリポーター遺伝子に限られるものではない。 リポーター遺伝子は、比色、蛍光定量または発光定量アッセイ系を含むがこれらに限定されない各種方法による検出に適した多くの酵素をコードするものを意図している。 本発明のキットの好適な実施形態の一つでは、リポーター遺伝子の発現を検出する試薬としては、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド溶液、o-ニトロフェニル-ガラクトピラノシド溶液およびフルオレセイン-ジ-β-D-ガラクトピラノシド溶液が挙げられるが、これらに限定されない。 しかしながら、本発明のキットは、他の系(例えば、放射線測定アッセイ系) も有用であるため、これらのアッセイ系に限られるものではない。 【0050】 本発明のキットには、陽性対照および陰性対照に適した物質等の追加成分や使用説明書が含まれていてもよいものとする。 本発明のキットは、混合細胞系統とリポーター遺伝子発現の検出試薬に限られるものではない。 本キットは、リポーター遺伝子の発現とは関係のない、細胞に対するウイルスの別の作用の検出にも有用となることを意図している。 例えば、本発明のキットはCPEの検出にとって有用なものを意図している。 【0051】 発明の説明本発明は一般的に診断微生物学、より詳細には、検体中に存在する1種以上のウイルス又はその他の細胞内寄生体を検出及び区別するための組成物及び方法に関する。 本発明はまた、生物体の抗菌剤に対する感受性を評価するための組成物及び方法をも提供する。 【0052】 本発明は、臨床検体中に及びその他の検体中に存在する数種の異なるウイルス並びにその他の細胞内生物体を比較的同じ比率で単層として共存するように増殖させた細胞の混合物からなる単一の細胞培養ユニットで検出するための方法と組成物を提供し、個々の細胞系統によって検出しうるものよりも広範囲のウイルス及び/又は他の生物体に対しての補完的感受性を示すものである。 例えば、ウイルスアッセイ法には、細胞混合物にウイルス含有が疑われる検体を接種し、ウイルス感染サイクルが進行するために十分な時間をおいてから、ウイルスに感染した細胞を検出し及び/又は細胞数を計測して検体中の感染性ウイルス粒子の数を求めることが含まれている。 検出ステップは利用可能な多数の確認方法のいずれを用いても行うことができ、そのようなものとしては抗原特異的抗体を用いる特異的ウイルス抗原検出法、核酸プローブ、及びリポーター遺伝子の検出が挙げられる。 このアッセイではまた、サンプル中に存在する感染性ウイルス粒子の数の計測のための信頼できる方法と組成物をも提供する。 さらに、本発明の方法と組成物は検体中の1個のウイルス粒子の存在をも検出するのに十分なほど高感度である。 【0053】 本発明はまた、単一細胞アッセイ法で伝統的に用いられていた各種の細胞型の新規の混合物からなる組成物をも提供する。 好ましい実施態様においては、細胞は混合されて混合単層細胞培養物が作製される。 そのような混合細胞培養物の1 つとしては、ヒト粘膜表皮細胞(例えばNCI-H292、「H292」細胞とも呼ばれている)をミンク肺(例えば、Mv1Lu)細胞と同時培養させたものが含まれる。 この細胞混合物は、A型インフルエンザ、B型インフルエンザ、RSV、パラインフルエンザ1 、2、及び3型、アデノウイルス、及びCMV(すなわち呼吸器ウイルス疾患に最もよく関連するウイルスの1群)などのウイルスに感受性である。 別の混合培養物では、ポリオウイルス、エコーウイルス、及びB群コクサッキーウイルス(例えばコクサッキーA型及びB型ウイルス)などのエンテロウイルス、並びに番号付のEV株の検出と同定用に、バッファローミドリザル腎細胞(BGMK, Buffalo green monkey kidney cell)をNCI-H292と同時培養したものがある。 エンテロウイルスに加えて、本発明はA型肝炎ウイルスなどのピコルナウイルスに感受性の細胞型をも包含することを意図している。 【0054】 本発明はまた、単一細胞アッセイ法で伝統的に用いられていた異なる細胞型を遺伝子工学的に操作した細胞と同時培養した新規の混合物からなる組成物をも提供する。 とくに好ましい実施態様においては、遺伝子工学的に操作された細胞系統はDNAでトランスフェクトされたウイルス感染に感受性のある細胞系統で、 その細胞系統はウイルス誘導性のプロモーター及び酵素の発現がウイルスの存在に依存するような該酵素をコードする遺伝子からなるキメラ遺伝子で安定的に形質転換させたものである。 そのような遺伝子工学的に操作された細胞は例えば米国特許第5,418,132号に述べられており、それは本明細書中に参照により組み込むこととする。 好ましい1実施態様においては、細胞混合物は、安定な幼体ハムスター腎細胞(BHK)系であってそのゲノムが誘導性のHSVプロモーターであるHSV- 1 ICP6プロモーターの後方(すなわち3'側)に大腸菌(E.coli)lac Z遺伝子を含むように操作されたもの(BHK/ICP6LacZ-5細胞はATCCからCRL-12072として入手することができる)と同時培養したヒト肺繊維芽細胞(例えばMRC-5細胞)を含むものである。 この細胞混合物はCMV及びHSVの1型及び2型による感染に感受性を持つ。 【0055】 また別の実施態様においては、本発明は遺伝子工学的に操作された細胞の異なる型の新規混合物からなる組成物を提供する。 特に好ましい実施態様においては、遺伝子工学的に操作された細胞系統はDNAでトランスフェクトされたウイルス感染に感受性を有する細胞系統で、その細胞系統はウイルス誘導性のプロモーター及び酵素の発現がウイルスの存在に依存するような該酵素をコードする遺伝子からなるキメラ遺伝子で安定的に形質転換させたものである。 第2の遺伝子工学的に操作された細胞系統はDNAでトランスフェクトされたウイルス感染に感受性を有する細胞系統で、その細胞系統はウイルス誘導性のプロモーター及び酵素の発現がウイルスの存在に依存するような第2の該酵素(すなわち第1の細胞系統に伴っているものとは異なる酵素)をコードする遺伝子からなるキメラ遺伝子で安定的に形質転換させたものである。 好ましい1実施態様においては、細胞混合物は、操作されたBHK細胞(例えばBHK/ICP6/LacZ-5細胞)を安定なミンク肺細胞系統(Mv1Lu)と同時培養して調製されるがそのゲノムは誘導可能なCMVプロモーター(CMV UL45プロモーター)を含むように操作されている;この細胞は「MLID5」 細胞と呼ばれ、米国特許出願第08/846,026号中に開示されており、これは本明細書中に参照により組み込むこととする。 この細胞混合物はCMV及びHSVウイルスの 1型及び2型(HSV-1及びHSV-2)による感染に感受性であり、そこではCMVは遺伝子工学的に操作されたBHK細胞に感染し、HSV-1及びHSV-2は選択的にミンク肺細胞に感染する。 別の実施態様においては、本発明は、ホタルのルシフェラーゼ遺伝子を誘導可能なCMVプロモーターの後方(すなわち3'側)に含むように操作された細胞のゲノムを有する遺伝子工学的に操作された細胞(例えばミンク肺細胞)の使用を含むものであり、これらの細胞も米国特許出願第08/846,026号に述べられている。 しかし本発明が何らかの特定の細胞型又は細胞系統に限定されることは意図しておらず、また、本発明が特定の細胞の組み合わせに限定されることも意図していない。 本発明が遺伝子工学的に操作された細胞に関して限定されることも意図していない。 【0056】 下記の表は各種の細胞の、単一細胞種でコンフルエントな単層を形成する能力、並びに同時培養され、コンフルエントな混合細胞の単層を形成する能力を示すマトリクスを表したものである。 【0057】 【表1】 【0058】 また別の実施態様においては、本発明は感染性のウイルスの存在についてサンプルをアッセイするためのキットを提供する。 これらのキットには混合細胞培養物が提供され、それによって特定のウイルス群(例えば呼吸器感染/疾患に関与するウイルス)の検出及び同定が容易となる。 このキット中には、同時培養された細胞は凍結状態又はシェル型バイアル、チューブ若しくはマルチウエルのプレートに分注された形(即ち、直ぐに使用しうる形)で供給される。 これらの細胞はサンプルのタイプによって示されるような対象とするウイルス群による感染に対して感受性である。 好ましい実施態様においては、キットにはウイルス抗原の発現又はウイルスによって誘導されるリポーター遺伝子の発現を検出するために必要な試薬を含めることができる。 【0059】 本発明のいくつかの利点のうちの1つは、本発明が、診断用アッセイに適した単一混合細胞ユニット中で、複数の可能性の中から単一のウイルスタイプの検出と同定のための迅速で高感度なアッセイを行うシステムを提供することである。 このように、本発明は複数の細胞系統を個々に別々の容器で培養する必要性を無くし、細胞培養物への接種の1から28日後ではなく1から3日後には信頼できる結果を提供することによって、一次細胞培養を行う労力の必要性を排除し、ウイルスのグループ分けと一次的な同定のための効率的なスクリーニング方法を提供し、リポーター遺伝子の発現を誘導することのできるウイルスに対して高度に特異的なアッセイシステムを提供するものである。 このように、本発明は、診断的ウイルス学の分野で現在までのところ満足すべきものができていないニーズを明らかに満たすものである。 【0060】 定義本明細書及び特許請求の範囲中の「サンプル」及び「検体」という用語はそれらの最も広い意味で用いられている。 一方では、それらの用語は検体又は培養物を含むことを意味している。 他方、それらの用語は生物学的及び環境からのサンプルの双方を包含することを意味している。 これらの用語はヒト及びその他の動物から得られた全てのタイプのサンプルを包含するが、それらとしては、限定されないが、尿、血液、糞便、脳脊髄液(CSF)、精液、喀痰、及び唾液、並びに固形の組織を含む。 これらの用語はまた、微生物の培養用のサンプルを得るために一般的に用いられるスワブ(swabs)及びその他のサンプリング道具をも意味する。 【0061】 生物学的サンプルはヒトを含む動物の液又は組織、乳製品、野菜、食肉、及び食肉副産物などの食用産物及び成分、並びに廃棄物である。 環境からのサンプルとしては表面物質、土壌、水、及び産業サンプル、並びに食品及び乳製品操作道具、器具、装置、ディスポーザブル及び非ディスポーザブルのものから得られたサンプルなどの環境物質を含んでいる。 これらの例は本発明が適用可能なサンプルのタイプを限定するものと解釈されるべきではない。 【0062】 生物学的又は環境的のいずれであろうとも微生物が含まれていると疑われるサンプルをまず濃縮方法(enrichment means)にかけて、微生物の「純粋培養」を創り出すことができる(そうしなくとも良いが)。 「濃縮法(enrichment means)」 、又は「濃縮処理(enrichment treatment)」によって、本発明は(i)何らかの培地及び/又は技法を用いて他の微生物から対象とする特定の微生物を単離するための従来技法、及び(ii)特定の微生物を他の微生物から単離するための新規の技法を包含する。 本発明は1種類の濃縮ステップ又は濃縮法のタイプに限定されることは意図していない。 例えば、あるサンプルを従来法の濃縮法にかけた後に、 対象とする種の株の純粋培養が作られることとなるようにさらにそこで得られた調製物を精製することも本発明の範囲には含まれる。 次いでこの純粋培養物を培地及び本発明の方法で分析することができる。 【0063】 ここで用いられている「生物体」及び「微生物」という用語はいかなる種又はタイプの微生物をも意味し、それらには、限定はされないが、ウイルス及び、リケッチア及びクラミジアを含む細菌が含まれる。 このように、この用語は、限定はされないが、DNA及びRNAウイルス、並びにリケッチア目及びクラミジア目の目の範囲内の生物体を包含する。 【0064】 ここで用いられている「培養物」という用語は1種以上の微生物を含んでいる疑いのあるいかなるサンプル又は検体をも意味する。 「純粋培養物」とは特定の属及び種の1種類の株のみがその中に存在している生物体であるような培養物である。 このことは「混合培養物」と対照をなすものであり、混合培養物とはその中に2種以上の属及び/又は種の微生物が存在している培養物である。 【0065】 ここで用いられている「細胞型」という用語は、その出所(source)又は特性に関わらず、いかなる細胞をも意味する。 【0066】 ここで用いられている「細胞系統」という用語は、一次細胞系統(primary cel l lines)、有限細胞系統(finite cell lines)、連続的継代細胞系統(continuous cell lines)、及び形質転換細胞系統を含むin vitroで培養された細胞を意味する。 【0067】 ここで用いられている「一次細胞培養(primary cell culture)」及び「一次培養(primary culture)」という用語は、動物又は昆虫組織から直接的に得られた細胞培養物を意味する。 このような培養物は成人(獣)並びに胎児組織から得られる。 【0068】 ここで用いられている「有限細胞系統」という用語は、老化する前に、集団の倍増を有限回行いうる細胞培養物を意味する。 【0069】 ここで用いられている「連続的継代細胞系統」という用語は、一次又は有限細胞系統中の細胞集団が明らかに増殖を停止している「危機」段階を経るが、細胞集団がその一般的特徴として細胞の大きさの減少、高い増殖率、高いクローニング率、腫瘍原性の増大、及び可変性の染色体相補体(complement)を示して出現するものを意味する。 これらの細胞の寿命は不定である。 【0070】 ここで用いられている「形質転換された細胞系統」という用語は上述の特性を有する連続的継代細胞系統に形質転換された細胞培養物を意味する。 形質転換された細胞系統は直接的に腫瘍組織から得ることができ、また、ウイルス全体(例えばSV40もしくはEBV)又は形質転換ウイルスから由来するDNA断片を用いベクターシステムを用いて細胞をin vitroで形質転換させることによっても得られる。 【0071】 ここで用いられている「ハイブリドーマ」という用語は、2種類の細胞型を融合させることによって作製される細胞を意味する。 一般的に用いられるハイブリドーマとしては、免疫された動物からの抗体分泌性B細胞を、in vitroで無期限の増殖が可能な悪性黒色腫細胞系統と融合させることによって作り出されたものが挙げられる。 これらの細胞はクローン化されてモノクローナル抗体の調製に用いられる。 【0072】 ここで用いられている「混合細胞培養物」という用語は、2種類の型の細胞の混合物を意味する。 いくつかの好ましい実施態様においては、その細胞とは遺伝子工学的に操作されたものでない細胞系統であり、一方、他の好ましい実施態様においてはその細胞は遺伝子工学的に操作された細胞系統である。 いくつかの実施態様においては、そのような細胞型の1つ以上が再(re)「許容性(permissive) 」(すなわちウイルスが複製しその培養物内で細胞から細胞へと拡がることができる)である。 本発明はサンプル中のウイルスの検出、同定、及び/又は定量のために適した細胞型のいかなる組み合わせをも含むものであり、そのようなものには、用いられている全ての細胞型が遺伝子工学的に操作されたものではない混合細胞培養物、1つ以上の細胞型が遺伝子工学的に操作されたものであり残りの細胞型が遺伝子工学的に操作されたものでない混合物、及び全ての細胞型が遺伝子工学的に操作されたものである混合物が含まれる。 【0073】 ここで用いられている「細胞内寄生体の検出に適している」という用語は、サンプル中の細胞内寄生体の存在の検出に首尾よく用いることのできる細胞培養物を意味する。 好ましい実施態様においては、その細胞培養物はその感染への感受性を維持することができ、及び/又は細胞内寄生体の複製をサポートするものである。 本発明が特定の細胞型又は細胞内寄生体に限定されることは意図していない。 【0074】 ここで用いられている「感染に感受性がある」という用語は、ある細胞がウイルス又は別の細胞内生物体の感染をうける能力を意味する。 このことが「許容性の」感染をも包含するとはいえ、ある細胞が感染するが、必ずしも生物体は複製しない及び/又は感染した細胞から他の細胞へ拡散しないという状況もこの用語は包含しているので、この用語が「許容性の」感染に限定されることは意図していない。 ここで用いられている「ウイルス増殖」というフレーズは、許容性の細胞型から別の許容性又は感受性のどちらかの特性を有する細胞への拡散又は移動を述べたものである。 【0075】 ここで用いられている「単層」、「単層培養」、及び「単層細胞培養」という用語は、基材に付着し細胞1個の厚さからなる1層として増殖する細胞を意味する。 単層はいかなるフォーマットで増殖させることもでき、そのようなものとしては限定はされないが、フラスコ、チューブ、カバーガラス(例えばシェル型バイアル)、ローラーボトルなどが挙げられる。 細胞はまた、マイクロキャリアーに付着させて増殖させることもでき、そのようなものとしては限定はされないがビーズが挙げられる。 【0076】 ここで用いられている「懸濁液」及び「懸濁培養」という用語は、基材に付着させることなく生存でき増殖する細胞を意味する。 懸濁培養は典型的には造血細胞、形質転換された細胞系統、及び悪性腫瘍から得た細胞を用いて作製される。 【0077】 ここで用いられている「培地」及び「細胞培地」という用語は、in vitroでの細胞の増殖(すなわち細胞培養)をサポートするのに適した培地を意味する。 この用語が何らかの特定の培地に限定されることは意図していない。 例えば、この定義には外殖(outgrowth)並びに維持培地を包含することを意図している。 この用語は対象の細胞培養物の増殖増殖に適したいかなる培地をも包含するものであることを意図している。 【0078】 ここで用いられている「絶対細胞内寄生体」(又は「絶対細胞内生物体」)という用語は、その生存及び/又は複製に細胞内環境を必要とするいかなる生物体をも意味する。 絶対細胞内寄生体としてはウイルス、並びに、ある種の細菌(例えばリケッチア目の仲間の大部分[例えば、コクシエラ、リケッチア、及びエールリヒア]及びクラミジア目[例えば、トラコーマ・クラミジア(C. trachomatis)、 C.psittaci]など)を含むその他多数の生物体が挙げられる。 「細胞内寄生体」という用語は、宿主動物の細胞内に見出されうるいかなる生物体をも意味し、そのようなものとしては、限定はされないが、上記に簡潔に述べた絶対細胞内寄生体を含む。 例えば、細胞内寄生体としてはブルセラ、リステリア、マイコバクテリア(例えばM. tuberculosis及びM. leprae)、及びプラスモジウム並びにRochalim eaを含んでいる。 【0079】 ここで用いられている「抗菌剤」という用語は、微生物の増殖を阻害する、又は殺滅するいかなる化合物に関しても用いられる。 この用語がその最も広い意味で用いられることを意図しており、そのようなものとしては、限定はされないが、天然に又は合成で製造される抗生物質などの化合物が挙げられる。 この用語がまた、微生物の増殖を阻害する、又は殺滅するために有用な化合物及び元素を含むことも意図している。 【0080】 ここで用いられている「色素産生性化合物」、及び「色素産生性基質」という用語は、それらの光を吸収するあるいは放出する特性によって検出システムにおいて有用ないかなる化合物をも意味する。 この用語は、可溶性並びに不溶性のものも含むが、それが目視あるいは光学的器械のいずれかにより検出可能なものである酵素的開裂産物を包含することを意図している。 「色素生産性」との用語の範囲内には、色調の変化として検出可能な最終産物を産生するようないかなる酵素基質をも含む。 このようなものとしては、限定はされないが、インディゴ(藍) 、青、赤、黄、緑、オレンジ、茶などの伝統的な意味で用いられる「色」、並びに蛍光で検出可能な色(例えばフルオレセインの黄緑色、ローダミンの赤色など) を作る蛍光染色又は蛍光化合物などのいかなる色をも含む。 染料(例えばpH)及び免疫原性化合物などの他の指示剤もこの定義の範囲内に包含されることを意図している。 【0081】 ここで用いられている「pH指示薬」、「還元指示薬」、及び「酸化還元指示薬」という用語は一般的に用いられる意味のものを意図している。 「pH指示薬」にはpHの変化を検出するために一般的に用いられる全ての化合物を包含し、それらとしては限定されないが、フェノールレッド、ニュートラルレッド、ブロムチモールブルー、ブロムクレゾールパープル、ブロムクレゾールグリーン、ブロムクロロフェノールブルー、m-クレゾールパープル、チモールブルー、ブロムクレゾールパープル、キシレノールブルー、メチルレッド、メチルオレンジ、及びクレゾールレッドが挙げられる。 「還元指示薬」、及び「酸化還元指示薬」という用語は、種々のタイプ又は形態のテトラゾリウム、レザズリン(resazurin)、及びメチレンブルーのを含むがそれらに限定されず、酸化還元電位の検出のために用いられる全ての化合物を包含する。 【0082】 ここで用いられている「接種懸濁液」、又は「接種物(inculant)」という用語は、供試生物体が接種されうる懸濁液を意味する。 「接種懸濁液」という用語が特定の液体又は液状物質に限定されることは意図していない。 例えば、接種懸濁液は水、生理食塩水、又は水性溶液からなることができる。 接種懸濁液には水、 生理食塩水、又は水性溶液に対して添加するための成分を含んでもよい。 1実施態様においては、その成分は意図する微生物のために有用な少なくとも1つの成分からなる成分であることも包含されている。 本発明が特定の成分に限定されることは意図していない。 【0083】 ここで用いられている「キット」という用語は、試薬及びその他の材料の組み合わせに関して用いられる。 【0084】 ここで用いられている「一次単離(primary isolation)」という用語は、サンプルから直接的に生物体を培養する過程を意味する。 ここで用いられている「単離」という用語は、微生物の培養、それが一次単離かあるいは何らかのそれに引き続く培養のいずれであれ、生物体の任意の培養を意味し、そのようなものとしては生物体の維持及び/又は使用のためのストック培養の「継代」又は「移動」 を含む。 【0085】 ここで用いられている「推定診断」という用語は、患者の疾病に関連する病因生物体に関しての何らかのガイダンスを治療する医師に与える予備的診断を意味する。 推定診断はしばしば「推定的同定」に基づいて行われる。 ここで用いられている「推定的同定」とは微生物の予備的同定を意味する。 【0086】 ここで用いられている「確定診断」という用語は、患者の疾病の病因となったものが同定される最終診断を意味する。 「確定的同定」という用語は、属および /又は種のレベルに至るまで生物体を最終的に同定する意味で用いる。 【0087】 ここで用いられている「組換えDNA分子」という用語は、分子生物学的技法によって連結されたDNAセグメントからなるDNA分子を意味する。 【0088】 DNA分子は「5'末端」および「3'末端」を有すると言われるが、それは、モノヌクレオチドが反応してオリゴヌクレオチドを作る際には、1つのモノヌクレオチドのペントース環の5'のリン酸が隣の3'の酸素にホスホジエステル結合を介して一方向性で結合するからである。 従って、オリゴヌクレオチドの末端はその 5'リン酸がモノヌクレオチドペントース環の3'酸素と結合していなければ「5'末端」と呼び、3'酸素が次のモノヌクレオチドペントース環の5'リン酸と結合していなければ「3'末端」と呼ぶ。 ここで用いているとおり、ある1つの核酸配列は、それがより大きなオリゴヌクレオチドの内部にあるものであって、5'末端および3'末端を有していると言いうる。 直鎖状および環状のいずれのDNA分子でも、独立のエレメントは「下流」のまたは3'エレメントの「上流」または5'にあるという言い方をされる。 このような用語法は転写がDNA鎖に沿って5'から3'へと進行するという事実を反映している。 連結された遺伝子の転写を指令するプロモーターおよびエンハンサーは通常はコード領域の5'すなわち上流に位置する( エンハンサーエレメントはそれがプロモーターエレメントおよびコード領域の3' 側に位置した場合でもその効果を発揮できる)。 転写終結およびポリAシグナルはコード領域の3'すなわち下流に位置する。 【0089】 「遺伝子をコードするヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド」という用語は遺伝子をコードする領域、言いかえれば遺伝子産物をコードするDNA配列からなるDNA配列を意味する。 コード領域はcDNAの形かゲノムDNAの形のいずれでも存在しうる。 エンハンサー、プロモーター、スプライス部位、ポリアデニル酸シグナルなどの適切な調節エレメントを遺伝子のコード領域の近傍に必要に応じて配置して適切な転写の開始、および/または一次RNA転写物の正しいプロセシングが行われるようにすることができる。 あるいはまた、本発明のベクター中に用いられているコード領域は内在性のエンハンサーおよび/またはプロモーター、スプライス部位、介在配列、ポリAシグナルなどを含むことができ、または内在性の調節エレメントと外在性の調節エレメントとの組み合わせを含むことができる。 【0090】 ここで用いられている「転写ユニット」という用語は、転写の開始部位と終結部位との間にあるDNAセグメントおよび効率的な開始と終結に必要な調節エレメントを意味する。 例えば、エンハンサー/プロモーター、コード領域、ならびに終結およびポリA配列からなるDNAセグメントは転写ユニットを構成する。 【0091】 ここで用いられている「調節エレメント」という用語は、核酸配列の発現の何らかの局面を調節する遺伝子エレメントを意味する。 例えば、プロモーターは機能しうる形で連結されたコード領域の転写開始を促進する調節エレメントである。 その他の調節エレメントにはスプライシングシグナル、ポリAシグナル、終結シグナルなどがある(下記で定義する)。 【0092】 ここで用いられている「リポーター遺伝子構築物」、または「リポーター遺伝子ベクター」という用語は、リポーター遺伝子の産物をコードする配列、および特定の宿主生物体中で機能しうる形で連結されたコード配列の発現に必要な適切な核酸配列を含有する組換えDNA分子を意味する。 真核細胞はプロモーター、 エンハンサー、ならびに終結およびポリAシグナルを用いることが知られている。 【0093】 「リポーター遺伝子」という用語は、異種のプロモーターおよび/またはエンハンサーエレメントに機能しうる形で連結されたリポーター遺伝子配列からなる構築物が、そのプロモーターおよび/またはエンハンサーエレメントの活性化に必要な因子を含有している(または含有するようになし得る)細胞内に導入された場合に容易にかつ定量的にアッセイできる遺伝子産物(典型的には酵素)をコードする配列を有するオリゴヌクレオチドを意味する。 リポーター遺伝子の例としては限定されないが、β-ガラクトシダーゼをコードする細菌由来の遺伝子(lacZ) 、細菌由来のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(cat)遺伝子、 ホタル由来のルシフェラーゼ遺伝子およびβ-グルクロニダーゼをコードする遺伝子(GUS)が挙げられる。 【0094】 真核生物の転写制御シグナルは「プロモーター」および「エンハンサー」エレメントからなる。 プロモーターとエンハンサーは転写に関与する細胞性タンパク質と特異的に相互作用するDNA配列の短い一つながりからなっている(Maniati sら, Science 236:1237[1097])。 プロモーターとエンハンサーエレメントは酵母、昆虫、および哺乳類細胞を含む種々の真核生物ならびにウイルス(制御エレメント類似のもの[すなわちプロモーターは原核生物中にも認められる])から単離されてきた。 特定のプロモーターおよびエンハンサーは、対象のタンパク質の発現に用いられる細胞型に基づいて選択される。 真核生物のプロモーターおよびエンハンサーのいくつかは広い範囲の宿主で用いうるが、他のものでは限られた細胞型の亜集団でのみ機能するものがある(総説としてVossら, Trends Biochem. S ci., 11:287[1096]、およびManiatisら, 同上[1987]を参照せよ)。 例えば、SV40 初期遺伝子エンハンサーは多数の哺乳類種からの広範な細胞型中で非常に活性が高く、哺乳類細胞中でのタンパク質の発現に広く用いられてきた(Dijkemaら, EM BO J. 4:761[1985])。 広範囲の哺乳類細胞型中で活性のあるプロモーター/エンハンサーとしては、例えば、ヒト成長因子1α遺伝子に関するもの(Uetsukiら, J . Biol. Chem., 264:5791[1989]; Kimら, Gene 91:217[1990]; およびMizushima とNagata, Nucleic Acids Res., 18:5322[1990])、ならびにラウス肉腫ウイルス (Gormanら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:6777[1982])およびヒトサイトメガロウイルス(Boshartら, Cell 41:521[1985])の末端反復配列の2つの例を挙げることができる。 【0095】 「プロモーター/エンハンサー」という用語は、プロモーターおよびエンハンサーの機能の双方を提供することのできる配列を含んでいるDNAセグメントを意味する(例えばレトロウイルスのLTRはプロモーターおよびエンハンサーの双方の機能を有している)。 エンハンサー/プロモーターは「内在性」、もしくは「外在性」、または「異種性」であってもよい。 内在性のエンハンサー/プロモーターはゲノム中の所定の遺伝子に本来的に連結されているものである。 外在性(異種性)のエンハンサー/プロモーターは遺伝子操作によって(すなわち分子生物学的技法)所定の遺伝子に対して並列に位置されるものである。 【0096】 発現ベクター上に「スプライシングシグナル」が存在するとしばしば組換え転写産物がより高頻度に発現する。 スプライシングシグナルは、一次RNA転写物からのイントロンの除去を媒介し、スプライスドナーおよびアクセプター部位を構成する(Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 米国ニューヨーク州[1989], pp.16.7-16.8) 。 一般的に用いられるスプライスドナーおよびアクセプター部位はSV40の16S R NAから得たスプライスジャンクションである。 【0097】 真核細胞中で組換えDNA配列を効率的に発現させるためには、効率的な転写の終結とその結果出来た転写物のポリA付加とを指令するシグナルを必要とする。 転写終結シグナルは通常はポリAシグナルの下流に見られ、その長さは数百ヌクレオチドである。 ここで用いられている「ポリA部位」、または「ポリA配列」 という用語は、新生RNA転写物の転写終結およびポリA付加の双方を指令するDNA配列を意味する。 ポリAを欠く転写物は不安定で急速に分解するため、組換え転写物の効率的ポリA付加は望ましい。 発現ベクター中で用いられるポリAシグナルは「異種性」または「内在性」いずれであってもよい。 内在性のポリAシグナルはゲノム中の所定の遺伝子のコード領域の3'末端に本来的に認められるもである。 異種性のポリAシグナルは1つの遺伝子から単離され、別の遺伝子の3'に位置させたものである。 一般的に、異種性ポリAシグナルとしては、SV40のポリA シグナルを用いることができる。 SV40のポリAシグナルには、237bpのBamHI/BclI 制限断片を含み、転写終結およびポリA付加の双方を指令する(Sambrook, 同上, pp.16.6-16.7)。 この237bpの断片は671bpのBamHI/PstI制限断片中に含まれている。 【0098】 「遺伝子工学的に加工された細胞系統」という用語は、分子生物学的技法(すなわち組換えDNA技法)によって細胞系統中に導入された異種DNAを含有している細胞系統を意味する。 【0099】 「安定的トランスフェクション」、または「安定にトランスフェクトされた」 という用語は、外来DNAのトランスフェクトされる細胞のゲノム中への導入および組込みを意味する。 「安定にトランスフェクトされたもの」という用語は外来DNAをゲノムDNA中に安定的に組み込ませた細胞を意味する。 【0100】 ここで用いられている「選択マーカー」という用語は、その選択マーカーが発現される細胞に抗生物質または薬剤に対する耐性を与える活性を有する酵素をコードする遺伝子の使用を意味する。 選択マーカーは「優性」とすることができ、 優性の選択マーカーは、いかなる哺乳類細胞系統中でも検出できる活性を有する酵素をコードする。 優性選択マーカーとしては、例えば、哺乳類細胞中に薬剤G4 18に対する耐性を与える細菌由来のアミノグリコシド3'ホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo遺伝子とも呼ばれている)、抗生物質ヒグロマイシンに対する耐性を与える細菌由来のヒグロマイシンGホスホトランスフェラーゼ(hyg)遺伝子、およびマイコフェノール酸の存在下での増殖能を与える細菌由来のキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(gpt遺伝子とも呼ばれている) が挙げられる。 その他の選択マーカーは、優性でなく、その使用に当たっては関連の酵素活性を欠く細胞系統とあわせて用いなければならない。 非優性選択マーカーとしては、例えば、tk細胞系統とあわせて用いられるチミジンキナーゼ(tk) 遺伝子、CAD欠損細胞とあわせて用いられるCAD遺伝子、hprt細胞系統と共に用いられるヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(hprt)遺伝子が挙げられる。 哺乳類細胞系統での選択マーカーの使用についての総説は、Sa mbrookら, 同上のpp.16.9-16.15に述べられている。 【0101】 「〜をコードする核酸分子」、「〜をコードするDNA配列」、および「〜をコードするDNA」という用語は、デオキシリボ核酸の鎖に沿うデオキシリボヌクレオチドの順番または配列を意味する。 これらのデオキシリボヌクレオチドの順番によってポリペプチド(タンパク質)の鎖に沿ったアミノ酸の順番が決定される。 このように、DNA配列はアミノ酸配列をコードする。 【0102】 ここで付着性細胞系統に関連して用いられている「コンフルエント」または「 コンフルエンシー」という用語は、培養物全体の細胞が互いに接触して連続的なシート状または細胞の「単層状」を呈する条件であると定義される。 【0103】 ここで用いられている「細胞変性効果」または「CPE」という用語は、ウイルスなどの外的作用物によってもたらされる細胞性構造の変化(すなわち病的効果) を意味する。 一般的な細胞変性効果としては細胞崩壊、合胞体(すなわち融合した巨大細胞)形成、細胞円形化空胞形成、および封入体の形成が挙げられる。 CPE は、許容性細胞に対するウイルスの作用の結果起こるが、それは許容性細胞宿主がその生育可能な状態を維持するために必要な機能を予め形成する能力を弱める方向に影響を及ぼす。 in vitroの細胞培養システムにおいては、コンフルエントな単層の一部である細胞が、ウイルスを含む検体との接触後にコンフルエントでない領域を示した場合にCPEが明らかである。 顕微鏡的に観察される影響は通常は細胞増殖巣の性質を持ち、それは単一のウイルス粒子によって開始される。 しかし、サンプル中のウイルス量によっては、十分な時間インキュベートするとCP Eは単層全体に観察することができる。 ウイルスによって誘発されたCPEを示す細胞は通常はその形態を円形に変え、長時間の後には死に至り、単層中におけるウィルスが付着していた箇所から遊離する。 多数の細胞が細胞増殖巣崩壊にまで至ると、その領域はウイルスプラークと呼ばれ、それは単層中の穴を呈する。 細胞変性効果は当業者であれば容易に見分けられ、識別できる。 【0104】 「ONPG」という略語はo-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシドを示す。 ON PGは酵素β-ガラクトシダーゼ(β-gal)の基質である。 ONPGとβ-galとの反応によって405nmで分光光学的に定量しうる黄色の産物が産生される。 【0105】 「X-gal」という略語は 化合物5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシドを示し、これは酵素β-ガラクトシダーゼ(β-gal)の基質である。 X -galとβ-ガラクトシダーゼとの反応によって肉眼で認められる青色の沈殿が形成される。 【0106】 「hybriwix」という用語はDiagnostic Hybrids, Inc., Athens, 米国オハイオ州の製品を示し、これは感染した細胞単層中のある種のウイルスDNAの定量をDNAハイブリダイゼーションによって可能とするものである。 「DNAハイブリダイゼーション」とは、塩基のペア形成の規則に従って塩基配列がマッチする 2つの相補的DNA分子のアニーリングを意味する。 DNAハイブリダイゼーションは、未知のまたは「標的」DNAを既知のDNAまたは「プローブ」とハイブリダイゼーションさせることによって同定または定量するために用いられる。 そのプローブは典型的には、ガンマカウンターで検出および定量できる放射性同位体である125 Iなどのリポーター分子で標識される。 【0107】 ここで用いられている「プラーク減少アッセイ」または「PRA」という用語はある薬剤を作用させた細胞単層におけるプラーク形成の減少を数えることによって抗ウイルス剤の有効性を測定するために用いられる標準的な方法を意味する。 「プラーク」とは「CPE」と定義された領域である。 プラークは通常は細胞単層が単一の感染性ウイルスによる感染をうけた結果であり、ウイルスは次いで複製し単層の隣接した細胞へと拡がる。 プラークはまた「ウイルス感染した細胞増殖巣」とも呼ばれる。 【0108】 ここで用いられている「許容」という用語は、ウイルスと推定上の宿主細胞との間の相互作用的に起こる一連のプロセスを意味する。 このプロセスはウイルスの宿主細胞表面への吸着によって開始され感染性ウイルス粒子の放出で終わる。 細胞はそれがウイルスの他の細胞へのウイルスの拡散を容易に許容するような場合「許容」性である。 細胞系統の許容性を測定するための方法は多数あり、そのようなものとしては、限定されないが、プラーク減少アッセイ法、ゲル電気泳動で得られた結果に基づくウイルス性タンパク質の産生および/または定量の比較、DNAまたはRNA含量を分析するためのハイブリダイゼーション分析を用いる相対比較などが挙げられる。 【0109】 ここで用いられている「感受性」という用語は、許容性または非許容性の宿主細胞がウイルスを吸着するおよびウイルスに侵入される程度を意味する。 細胞系統は許容性にならなくとも感受性になることができ、そこでは細胞は侵入を受けるがウイルス粒子を放出はしない。 しかし許容性の細胞系統は必ず感受性である。 【0110】 ここで用いられている「〜上接種(seed on)」という語句は、細胞懸濁水性液を細胞が表面に付着した容器中に移送させる行動を意味する。 この「〜上接種」の後、その容器を十分な時間保存すると、その懸濁された細胞または「種」が重力によって沈み比較的均一な様式で接着している細胞に付着し、最終の細胞単層中に混合物として組み込まれることとなる。 「混合細胞単層」は「〜上接種」 プロセスの結果として生じる ここで用いられている「〜内接種(seed in)」という用語は、異なる細胞特性を有する2以上の組織培養細胞懸濁水性液を混合し、そのような細胞の混合物を容器に移し、その懸濁された細胞が重力で沈み比較的均一な様式でどの単一の細胞型の分布もオリジナルの混合液中の相対的な細胞比を示すものとなるように容器に付着することを意味している。 【0111】 ここで用いられている「開始細胞(starts)」という用語は、ウイルスの一次感染を示しているリポーター細胞を意味している。 ウイルスはリポーター細胞( 遺伝子工学的に加工された細胞)に感染し、リポーター遺伝子の発現を誘導する。 リポーター細胞は非許容性であってよく(すなわちリポーター細胞の許容性は必要ではない)、依然として「開始細胞」を産生する。 【0112】 実験 下記の実施例は本発明の一定の好ましい実施形態および態様を立証しさらに説明するために提供するものであり、本発明の範囲の限定と解釈すべきものではない。 【0113】 下記の実験の開示においては下記の略号を用いる:eq(当量)、M(モル/L)、μM (マイクロモル/L)、N(規定濃度)、mol(モル数)、mmol(ミリモル数)、μmol(マイクロモル数)、nmol(ナノモル数)、g(グラム)、mg(ミリグラム)、μg(マイクログラム)、ng(ナノグラム)、lまたはL(リットル)、ml(ミリリットル)、μl(マイクロリットル)、cm(センチメートル)、mm(ミリメートル)、μm(マイクロメートル) 、nm(ナノメートル)、×g(重力加速度の倍数)、℃(摂氏の度数)、FBS(ウシ胎児血清)、PBS(食塩加リン酸バッファー)、HEPES(N-[2-ヒドロキシエチル]ピペラジン-N'-[2-エタンスルホン酸])、HBSS(ハンクス液)、MEM(最小必須培地)、EMEM( イーグル最小必須培地)、BBL(Becton Dickinson Microbiology Systems, Cocker sville, 米国メリーランド州)、DIFCO(Difco Laboratories, Detroit, 米国ミシガン州)、USBiochemical(USBiochemical Corp., Cleveland, 米国オハイオ州)、Chemicon(Chemicon Inc., Temecula, 米国カリフォルニア州)、Dako(Dako Corporation, Carpenteria, 米国カリフォルニア州)、Fisher(Fisher Scientifi c, Pittsburgh, 米国ペンシルベニア州)、Sigma(Sigma Chemical Co., St.Louis , 米国ミズーリ州)、ATCC(American Type Culture Colleciton, Rockville, 米国メリーランド州)、Bartel's(Bartels, Issaquah, 米国ワシントン州)、および BioWhittaker(BioWhittaker, Walkersville, 米国メリーランド州)。 【0114】 本発明の開発の際に用いられ下記の実施例で述べられているた細胞は、BGMK細胞およびPRMK細胞はBioWhittakerから入手し、MRC-5細胞はATCCとBioWhittaker の双方から入手したことを除けば全てATCCから入手したものである。 それらの細胞のATCC番号は下記の表に示す。 【0115】 【表2】 【0116】 実施例1 細胞の同時培養この実施例では、一重の2形性細胞シートがコンフルエンシーの状態で作製されている混合細胞培養を確立した。 【0117】 これらの実験においては、細胞系統は全て滅菌ポリスチレンフラスコ中で、25 mM HEPES、7%ウシ胎児血清(FBS)、2mM L-グルタミン、およびペニシリン/ストレプトマイシン(培地1mLあたり各々100単位/100μg)を添加したEMEM(イーグル最小必須培地)を用いてコンフルエンシーの状態になるまで培養した。 【0118】 培養する細胞は、マグネシウムまたはカルシウム不含のハンクス緩衝塩類溶液 (HBSS)での供給源の細胞単層の一次洗浄によって集めた。 細胞系統の如何によって、トリプシン(HBSS中に0.125%、カルシウムまたはマグネシウム不含)もしくはトリプシン−EDTA(1 mM EDTA(HBSS中)中に0.25%、カルシウム・マグネシウム不含)を添加して解離させるか、または直接的に細胞単層とし、約5分間、周囲温度でインキュベートする。 10倍量の細胞培養培地をトリプシン処理した細胞懸濁液の各々に添加し、単一細胞懸濁液(すなわち細胞の凝集物がない状態)に近い状態を作り出すために繰り返し細胞をピペッティングした。 トリプシン処理した細胞懸濁液の各々を適当な容量の培地中に希釈して96ウエルのマイクロタイタープレート中で2-3日以内のインキュベーションをしたときに細胞のコンフルエントな単層を作るために適した細胞懸濁液の吸光度が得られるようにした。 単一細胞単層では(すなわちウエルあたり1つの細胞型)、0.2mLの懸濁液を各ウエルに接種した。 例えば、最終的な細胞調製物は500nmの最終的な吸光度で、CV-1細胞での0.0 12 OD単位/mLから、HEp-2細胞での0.03 OD単位/mLまでの範囲であった。 【0119】 細胞混合単層は2種類の別個の細胞型の希釈細胞懸濁液の同量(すなわち各細胞型の0.1mLずつを、96ウエルのマイクロタイタープレートの各ウエルへの接種に用いた)を同時に植え付けることによって作製した。 細胞をウエルの表面に重力で30から60分間おいて付着させ、接種されたマイクロタイタープレートを最長3 日間36℃で5%CO 2中で相対湿度を95%としてインキュベートした。 【0120】 インキュベーション中、定期的に単一および混合単層の総体的な生存度をチェックした。 混合細胞培養単層についてはその細胞系統が共存しうる能力および2 つの別個の細胞形態(すなわち2形態性細胞シート)を有する単一細胞シート(すなわち単一単層)を各細胞型がほぼ等しい密度で作る能力があるかについてもチェックした。 コンフルエンシーに達した状態では、光学顕微鏡で可視化するためのコントラストを与えるために細胞をメチレンブルー染色液で固定し淡青色に染色した。 【0121】 混合単層のいくつかは首尾よくウエルの表面に接着された混合細胞単層として増殖し、なめらかで均一に分散した単層を示した。 これらの混合培養物は「形態学的カテゴリー1」と名付けた。 これらの培養物では各細胞型は容易に識別することができ、混合単層中でよく生きているように見え、単一細胞分布の外観を見せていた。 HEp-2およびマッコイ(McCoy)細胞からなる混合単層はこのような形態を示していた。 【0122】 混合単層のいくつかは首尾よくウエルの表面に接着された混合細胞単層として増殖したが、コンフルエンシーの状態では2つの別個の形態を示した。 これらの混合培養物は「形態学的カテゴリー2」と名付けた。 これらの培養物ではその単層中に各細胞系統の別々のパッチが共存しており、それが油が水と混合されたときのような外観を与えた。 本発明の使用に際してその機作を理解することは必要ではないとはいえ、この外観はおそらくは2種類の特異的細胞型間の接触阻止の結果であろうと思われる。 パッチの相対的な大きさは、細胞植え付けの際にどの程度均等に細胞が分布されるかに主として相関している。 植え付けの際により均等に細胞を分布させれば、パッチもしくは島は単層がコンフルエンシーに近づくにつれてより小さくなる。 このような外観を作る単層の例としてはNCI-H292細胞と同時培養させたミンク肺細胞、バッファローミドリザル腎(BGMK)細胞と同時培養させたミンク肺細胞、およびNCI-H292細胞と同時培養させたヒト肺癌A549細胞がある。 【0123】 しかし、いくつかの細胞型は同一の培地中に植え付け時にほぼ同数の細胞を混合しても混合細胞単層を作ることができなかった。 これらの培養物のいくつかでは細胞型のうちの1つのみが生存していることが見出された(すなわちその培養物は事実上単一細胞型であった)。 混合単層の作製に適さないことが見出された混合細胞培養物の例としては、BGMK細胞と同時培養されたヒト胚性肺繊維芽細胞(M RC-5細胞)が挙げられる。 この混合物では、MRC-5細胞は毒性を示すようになり植え付け後すぐに死細胞の凝集体を形成した。 このように、コンフルエンシー状態では単層は1種の機能を有する、生きた細胞型BGMK細胞のみを含有している。 この細胞混合物は、その細胞が滑らかなものまたは2形態性のタイプのもののどちらの混合細胞単層も形成し得なかったので混合細胞単層を作製するには適さないことが見出された。 【0124】 実施例2 混合細胞培養物中の呼吸器ウイルスの検出この実施例においては、混合細胞培養物は、臨床で採取された検体中に存在するA型インフルエンザウイルス、RSV、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス、およびB型インフルエンザウイルスを含む種々の呼吸器ウイルスの検出に用いられた。 これらの実験に用いられた混合細胞はMv1Lu(ミンク肺細胞)およびN CI-H292(ヒト粘膜表皮細胞)であった。 【0125】 細胞系統 HEPES、10% FBS、2mM L-グルタミン、および50μg/mLのゲンタマイシンを添加したEMEM中にMv1LuおよびH292細胞のコンフルエントなT-225フラスコを調製した。 マグネシウムおよびカルシウム不含の30mLのHBSS中でそれらの細胞を一次洗浄することによって細胞を採取した。 次いでその細胞を7mLの実施例1に記載のトリプシン−EDTA溶液に軽く曝すことによってフラスコから解離(すなわち細胞がフラスコのそこから持ち上がるまで)させた。 次いで、細胞に30mLの培地を添加して細胞懸濁濃縮液を調製した。 3mLのセルを用いて各細胞懸濁液の500nmの吸光度を測定した。 典型的にはODの読みはMv1LuおよびH292細胞の双方とも、0.2/mLであった。 Mv1LuおよびH292細胞に加えて、アカゲザル腎細胞(PRMK)、A549細胞、 およびMDCK細胞を本実施例で用いた。 これらの追加した細胞系統を本技術分野で公知の単一細胞培養物に調製した。 【0126】 混合細胞培養物各細胞懸濁濃縮液が0.2 OD単位/mLとなったときに、各細胞型の許容しうる作業時の比率を提供するために86.1mLの培地に5.2mLのMv1Luおよび8.7mLのH292細胞懸濁液を添加した(すなわちこれは希釈混合細胞の調製である)。 この比率はコンフルエントな単層とするために見出されたものであり、そこでは希釈混合細胞の植え付け後1から3日以内に各細胞型は実質的に等しい表面積を覆う。 分注前に希釈混合細胞の均一な懸濁液を作るための注意が必要であった。 その混合細胞をガラスシェル型バイアルあたり0.75mL分注する(すなわちガラスシェル型バイアルは無菌のカバーガラスを容れている)。 植え付け後、バイアルを60分間周囲温度で放置して細胞を重力で沈ませ、各細胞型のより最適化された細胞分布を作った。 次いで混合細胞を1〜3日間、36℃で、5%CO 2 、相対湿度95%でインキュベートした。 次いで、シェル型バイアルをコンフルエンシーとなってから最長10日間実質的に等しい表面の比率で各細胞型を維持するために周囲温度で保存した。 【0127】 サンプルおよび処理診断ウイルス学試験室に提出された鼻咽頭の検体はインフルエンザ様症状を示した患者から得たものであった。 その検体を遠心して直接的抗原検査用の細胞ペレットを作り、検体の上清は種々の細胞培養物の接種に用いた。 細胞ペレットをリン酸バッファー中に再懸濁して細胞懸濁液を調製し、その細胞懸濁液の25μL をスライドガラス上にスポットして乾燥させた。 スライドガラス上の各細胞スポットを固定液(例えばアセトン)で固定し、30分間、A型インフルエンザおよびRSV ならびにその他の呼吸器ウイルスを含む各種の呼吸器ウイルスを識別することのできる個別の抗体溶液(Bartel's)とともにインキュベートした。 フルオレセイン (FITC)を標識したヤギ抗マウス抗体を含有する二次抗体溶液および対比染色剤(B artel's)を添加してスライドガラス上の各細胞スポットを覆い、さらに30分間、 35〜37℃でインキュベートした。 FITC-ヤギ抗マウス抗体溶液中の対比染色剤はエバンスブルーを含有しており、それは細胞を染め、蛍光下では赤く現れる。 鼻咽頭検体から調製されたスライドガラスは、100〜400倍で表面蛍光(epifluoresc ence)を用いて、陽性(すなわちウイルスに感染している)で澄んだ薄緑色に染色された蛍光を発する細胞として観察された。 【0128】 さらに、検体上清の0.2mLのアリコートを取り、カバーガラスを容れたシェル型バイアル中に調製されている各種の細胞培養物上へ接種した。 その細胞培養物としてはアカゲザル腎細胞(PRMK; ViroMedまたはBioWhittaker)、Mv1Lu細胞(Dia gnostic Hybrids)、HEp-2細胞(Diagnostic Hybrids)、MDCK、A549、およびH292 細胞を単一細胞単層として、ならびにMv1LuとH292細胞を混合細胞単層として上述のとおり作製した。 【0129】 接種されたシェル型バイアルの各々を60分間700 xgで遠心し、次いで適切な培地(例えば0.5から2%のFBS、2mM L-グルタミン、およびペニシリン/ストレプトマイシン[各培地の1mLあたり100単位/100μg]を含有するEMEM)中で36℃で1〜3日間インキュベートした。 インキュベーション後、培地を傾斜して除き、細胞をアセトンおよびメタノール(50:50, v/v)の溶液を用いてカバーガラスに固定した。 A 型インフルエンザおよびRSV、ならびにその他の呼吸器ウイルスを含む複数の呼吸器ウイルスに対するモノクローナル抗体をプールしたものを含有する抗体溶液 (ChemiconまたはBarel's)を添加して各カバーガラスを覆った。 次いでそのカバーガラスを35〜37℃で30分間インキュベートした。 次いで抗体溶液を除去しカバーガラスをPBSで洗浄した。 フルオレセイン(FITC)を標識したヤギ抗マウス抗体を含有する二次抗体溶液および対比染色剤(Bartel's)を添加してカバーガラスを覆い、さらに30分間、35〜37℃でインキュベートした。 FITC-ヤギ抗マウス抗体溶液中の対比染色剤はエバンスブルーを含有しており、それは細胞を染め、蛍光下では赤く現れる。 鼻咽頭検体(すなわち接種された培養物)から調製されたシェル型バイアルのカバーガラスは、100〜400倍で表面蛍光(epifluorescence)を用いて、陽性(すなわちウイルスに感染している)で澄んだ薄緑色に染色された蛍光を発する細胞として観察された。 【0130】 結果検体のいくつかはA型インフルエンザウイルスモノクローナル抗体とインキュベートされた細胞のスポット上に直接的な陽性の抗原反応を示した。 これらの検体は単一細胞のMv1Luのカバーガラス及びMv1Lu/H292混合細胞のカバーガラス上でも蛍光染色を示したが、単一細胞のH292カバーガラス上では蛍光は全くないかあるいはごくわずかであった。 H292細胞はA型インフルエンザウイルスのこの株に感受性がないか、あるいは著しく感受性が低いかのどちらかなので感染が検出されない。 さらに、いくつかの場合には(すなわち検体のウイルス力価が低い場合)培養システムは直接的抗原検出法より感度が高かった。 また、単一細胞のPRM K細胞培養物(すなわちA型インフルエンザウイルスを検出するための「金標準(g old standard)」細胞)はA型インフルエンザウイルスの存在に対して陽性ではあったが、多数の検体で感染細胞数および陽性検体の総数は混合細胞単層によって陽性とされたものよりも少なかった。 【0131】 さらに、MDCKおよびPRMK細胞の双方とも、直接的抗原試験法(IFA)によってA型インフルエンザウイルス陽性とされた、力価の低い検体で陽性と判定できず、別の検体でIFAでA型インフルエンザウイルス陽性のものも陽性とはならなかったが、一方Mv1Lu細胞は直接的抗原検出法(IFA)に基づいて陽性と判定された全てのサンプルにおいてウイルスを検出した。 【0132】 いくつかの検体ではRSVモノクローナル抗体とインキュベートした細胞スポット上に陽性の直接的抗原反応を示した。 これらの検体は単一細胞のH292カバーガラス上およびMv1Lu/H292混合細胞カバーガラス上に蛍光染色を示したが、単一細胞のMv1Luカバーガラス上では蛍光染色は全くないかあるいはごくわずかであった。 H292細胞はRSV感染に感受性であるが、Mv1Lu細胞は感受性でない(もしくは著しく感受性が低く感染が検出されない)。 混合細胞培養物に加え、HEp-2細胞( すなわちRSV検出の「金標準」細胞)でもRSVの存在が観察された;HEp-2細胞の性能はMv1LuとH292の混合細胞単層、あるいはH292単一細胞単層より概して感度が低かった。 ミンクの肺細胞で試験したA型インフルエンザウイルスでの結果は、 これらの細胞を用いたA型インフルエンザウイルスの検出がこれまで報告されていないので、非常に驚くべきものであった。 【0133】 直接的抗原試験法(IFA)に基づいて5つの臨床検体から同定されたアデノウイルスは、H292および混合細胞培養物では検出されたが、PRMK細胞では低い力価の2 つの検体を検出できなかった(すなわち2つの偽の陽性があった)。 このように、H 292および混合培養物はアデノウイルスの検出においてPRMKより感度が高い。 A54 9細胞は陽性細胞をわずかに多く示す可能性はあるが、H292細胞、混合細胞培養物、およびA549細胞は同数の陽性検体を検出した。 【0134】 パラインフルエンザウイルスもH292および混合細胞培養物中で検出されたが、 PRMK細胞は低い力価の1検体を検出しえなかった。 【0135】 これらの結果は混合細胞培養物が感度の点で単一細胞(H292およびMv1Lu)培養物と同等であったことを明瞭に示している。 このように、混合細胞は材料、時間、スペース、および労力を節約できるが、呼吸器ウイルスの検出においては診断的ウイルス学の実験室で現在一般に用いられている、単一細胞培養と同じレベルの感度を持っている。 【0136】 B型インフルエンザ検体上述のサンプルに加え、ATCCから入手した各種の希釈度のB型インフルエンザウイルス株をMDCK、Mv1Lu、およびPRMK細胞で試験した。 下記の表はこれらの実験結果を示している。 この表では、「MD」とは「メリーランド」株を、「HK」とは「香港」株を、「TW」とは「台湾」株を、「MA」とは「マサチューセッツ」株を意味している。 【0137】 【表3】 【0138】 これらの結果はMv1Lu、MDCK、およびPRMK細胞が複数のB型インフルエンザウイルス株の検出において同等であることを示している。 このように、これらの細胞系統はこのウイルスの同定のための混合細胞培養物、ならびに単一細胞培養物の良い候補であることがわかった。 【0139】 実施例3 混合細胞培養物中でのCMVの検出この実施例ではヒトサイトメガロウイルス(HCMV)の存在の検出にMv1LuおよびN CI-H292の混合細胞培養物を用いた。 【0140】 HCMVのTowne株(ATCC #VR977)をMRC-5細胞中で力価が10 6 /mL以上となるまで増幅し、10%FBS含有のEMEM中で−85℃で凍結させた。 HCMVの段階希釈液を調製しミンク肺細胞(Mv1Lu)の単一細胞単層、MRC-5細胞、およびMv1LuとH292細胞の混合細胞単層中に接種した。 各感染細胞培養システムを700 xgで60分間遠心し、次いで、適切な培地(例えば10%FBS含有のEMEM)中で36℃、5%CO 2で24時間インキュベートした。 培地を除去し、細胞を水に80%アセトンを含む溶液を用いてカバーガラスに固定した。 十分量のHCMV抗体溶液(Chemicon)を添加して各カバーガラスを覆い、35〜37℃で30分間インキュベートした。 抗体溶液を除去し、カバーガラスをPBSで洗浄した。 FITC標識ヤギ抗マウス抗血清からなる二次抗体溶液を添加して各カバーガラスを覆い、さらに35〜37℃で30分間インキュベートした。 次いで検体を表面蛍光(epifluorescence)下で100〜400倍拡大で核が陽性に染色された( すなわちCMVに感染した)蛍光細胞を観察した。 【0141】 前記の実施例で述べたと同様に、FITC標識ヤギ抗マウス抗体溶液中の対比染色剤はエバンスブルーを含有しており、これは細胞を染色し、蛍光で励起されると赤色となって現れる。 Mv1Lu細胞はHCMV感染に感受性なのに対して、H292細胞は感受性でない(あるいはH292細胞は著しく感度が低い)ので、Mv1Lu単一細胞単層および混合細胞単層では蛍光の澄んだ薄緑色に染色された核が観察されたが、H2 92細胞では認められなかった。 MRC-5細胞(すなわちHCMVの検出のための「金標準」細胞)は混合細胞単層での感染細胞と同様の感染細胞数であったので、混合細胞単層と同様の性能であった。 【0142】 実施例4 混合細胞培養物中でのエンテロウイルスの検出この実施例では、エンテロウイルスであるコクサッキーBウイルスおよびエコーウイルスの検出のために混合細胞培養物を用いた。 これらの実験ではBGMKおよびNCI-H292細胞の混合細胞単層を用いた。 【0143】 25mM HEPES、10% FBS、2mM L-グルタミン、および50μg/mLのゲンタマイシンを添加したEMEM中にBGMKおよびH292細胞のコンフルエントなT-225フラスコを調製した。 細胞をマグネシウムおよびカルシウム不含のHBSS 30mL中で一次洗浄によって採取し、次いで7mLのトリプシン−EDTA溶液(実施例1に述べたものと同様) で簡単に処理することによってフラスコから細胞を解離させた。 次いで、30mLの培地(HEPES、10%FBS、2mM L-グルタミン、および50μg/mLのゲンタマイシンを添加したEMEM)を懸濁液にさらに添加して細胞懸濁濃縮液を作製した。 各懸濁液について3cmのセルを用いて500nmの吸光度を測定した。 典型的にはBGMKおよびH292 のいずれの細胞懸濁液もODの読みは0.2/mLであった。 【0144】 次いで、3mLのBGMK細胞懸濁液および8mLのH292細胞懸濁液(どちらの懸濁液も0 .2 OD単位/mL)を29mLの培地(25mM HEPES、10%FBS、2mM L-グルタミン、および50 μg/mLのゲンタマイシン)に添加し、希釈混合細胞懸濁液中に各細胞型が許容しうる作業時の比率となるようにした。 この比は、希釈混合細胞を植え付けた後1 〜3日以内に、各細胞型が実質的に同等の表面積を占めるような各細胞型からなるコンフルエントな単層を作り出そうとする意図のものである。 100個のシェル型バイアル、そのそれぞれには1個の滅菌カバーガラスが容れられているが、そのシェル型バイアルの各々に0.75mLずつ分注する前に、希釈混合細胞の均質な懸濁液を調製するように注意を払う。 バイアルは植え付け後60分間周囲温度で静置させると、細胞が重力で沈み、より最適な細胞の分布が作り出される。 次いで、 バイアルをインキュベーターに移し、36℃で1〜3日間、5% CO 2 、相対湿度95%でインキュベートした。 【0145】 コクサッキーBウイルスまたはエコーウイルスを含有していることが示されているストックウイルス懸濁液および臨床で採取された検体を用いてBGMK/H292細胞混合物ならびにBGMK、H292、MRC-5、およびPRMK細胞の単一細胞単層に感染させた。 臨床からのサンプルとしては咽喉のスワブ、鼻咽頭のスワブ、喀淡、糞便、および直腸のスワブが患者から採取され、ウイルス移送用培地中に置かれ、細胞培養物への接種の前に0.45μmのフィルターを通過させて混入している可能性のある細菌および真菌を除去した。 患者から採取した脳脊髄液(CSF)はウイルス移送用培地中に置き、細胞の接種用に直接用いた。 シェル型バイアルへの接種にはバイアル中にある培地を除去し新鮮な培地を添加した。 次いで、検体0.2mLを各バイアルに接種した。 接種されたバイアルを700 xgで室温で45〜60分間遠心した。 次いで、バイアルを37℃で1〜3日間インキュベートし、ウイルスの存在を免疫蛍光染色法を用いて検出した。 【0146】 染色には各バイアルから培地を除去し、細胞をアセトンでカバーガラス上に固定した。 各バイアルからカバーガラスを取り出し、25μLの一次抗体(エンテロウイルスに対して作製されたマウスモノクローナル抗体[Dako])で37℃で30分間染色した。 PBSで洗った後、25μLのFITCをコンジュゲートさせた抗マウスIg(Dako) を染色のための二次抗体として用い、37℃で30分間インキュベートした。 もう一度洗った後、カバーガラスをスライドにマウントし、蛍光下で観察した。 カバーガラス上の1以上の特異的蛍光染色細胞が存在していれば陽性とみなした。 【0147】 前述の実施例で述べたとおり、FITC標識ヤギ抗マウス抗体溶液中の対比染色剤はエバンスブルーを含有しており、エバンスブルーは細胞を染色し蛍光に曝されると赤色を呈する。 コクサッキーBウイルスの検出では蛍光の澄んだ薄緑色の染色が、BGMK単一細胞単層中のBGMK細胞の多数、および混合細胞単層中の主として BGMK細胞に認められたが多くのH292細胞には認められず、これはBGMK細胞がコクサッキーBウイルス感染に対してより感受性が高いためである。 いくつかのタイプのコクサッキーBウイルス単離体に対しては、H292細胞は感受性でない(あるいはH292細胞は著しく感受性が低い)。 「金標準」細胞系統(すなわちPRMK細胞)は混合細胞単層と同数の感染細胞を示さなかった。 【0148】 エコーウイルスの検出では、H292細胞はエコーウイルス感染に対してより感受性が高いのに対しBGMK細胞は感受性がない(あるいはBGMK細胞は著しく感受性が低い)ので、蛍光のある、澄んだ薄緑色の染色がH292単一細胞単層中の多数のH29 2細胞および混合細胞単層中では主としてH292細胞に観察されたが、BGMK細胞ではそれほど多数ではなかった。 「金標準」細胞系統(すなわちMRC-5細胞)は性能を発揮はしたが、混合細胞単層ほど多数の感染細胞があるとは思えなかった。 高力価のエンテロウイルスサンプルで感染させたBGMK/H292混合細胞単層の場合には細胞特異的なウイルスがメディエートする細胞変性効果(CPE)が明瞭であった( すなわち、BGMK細胞ではコクサッキーBウイルスが高力価で存在するときCPEが観察され、H292細胞ではエコーウイルスが高力価で存在するときCPEが観察された) 。 【0149】 実施例5 混合細胞培養物中での単純ヘルペスウイルスおよびHCMVの検出この実施例では、混合細胞培養物は、遺伝子工学的に操作されたベビーハムスター腎細胞(BHK)(例えばATCC #CCL-12072)およびMv1Lu細胞の混合細胞単層を用いた単純ヘルペスウイルス(HSV)およびHCMVの検出に用いられる。 【0150】 BHKとMv1Lu細胞はフラスコ内で増殖させ、トリプシン処理し、前述の実施例に記載のとおり混合して、本実験に適する混合細胞の希釈液を作製する。 次いでこれらの混合細胞希釈液を、カバーガラスを容れたガラス製の滅菌シェル型バイアルに、上述のとおり接種するために用いられる。 次いで細胞を遠心しウイルスまたは臨床からのサンプルを接種し、インキュベート、および固定を上述のとおり行う。 【0151】 上述の実施例3に記載の抗体を用いて、HCMVはMv1Lu細胞中で検出され、HSV(HS V-1およびHSV-2)はβ−ガラクトシダーゼ染色キットを用いて同定される(すなわち遺伝子工学的に操作されたBHK細胞に感染するウイルスによって誘導されるリポーター遺伝子を検出する)。 【0152】 実施例6 混合細胞培養物中の呼吸器ウイルスの検出この実施例では、混合細胞培養物は呼吸器ウイルスのパネルの検出に用いられる。 これらの実験では3種類の細胞型が組み合わされて混合細胞培養物が作製され、それは少なくとも3つのウイルスを検出することができる。 【0153】 まず、A549、H292、およびミンク肺(例えばMv1Lu)細胞をフラスコ中で増殖させ、トリプシン処理し、上述の実施例に記載のとおり混合して、本実験に適する混合細胞の希釈液を作製する。 好ましい実施形態においては、培養物中の混合細胞がほぼ同じ割合(すなわち1:1:1)となるように細胞を希釈する。 次いで、混合細胞希釈液はカバーグラスを容れたガラス製滅菌シェル型バイアルに上述のとおり接種するために用いられる。 次いで細胞を遠心しウイルスまたは臨床サンプルを接種し、インキュベート、および固定を上述のとおり行う。 【0154】 これらの細胞に感染することのできるウイルスは上述の実施例2に記載の方法を用いて検出および同定される。 これらの混合細胞培養物中では、H292細胞はパラインフルエンザウイルスおよびRSVの存在の検出に用いられ、A549細胞はアデノウイルスの存在の検出に用いられ、ミンク肺細胞はインフルエンザウイルス( 例えばA型およびB型インフルエンザウイルス)の存在の検出に用いられる。 【0155】 実施例7 混合細胞培養物中でのHSVおよびクラミジアの検出この実施例では、性感染症に一般的に関与している2種類の生物体の検出のできる混合細胞培養物が提供される。 これらの実験では、HSVの検出に有用なミンク肺細胞(例えばMv1Lu)が、クラミジア・トラコマティス(C. trachomatis)の検出に有用なマッコイ細胞と混合される。 【0156】 まず、マッコイ細胞およびミンクの肺(例えばMv1Lu)細胞をフラスコ中で増殖させ、トリプシン処理し、上述の実施例に記載のとおり混合して、本実験に適する混合細胞の希釈液を作製する。 好ましい実施形態においては、培養物中の混合細胞がほぼ同じ割合となるように細胞を希釈する。 次いで、混合細胞希釈液はカバーグラスを容れたガラス製滅菌シェル型バイアルに上述のとおり接種するために用いられる。 次いで細胞を遠心し、サンプル(例えば臨床サンプル)を接種し、 インキュベート、および固定を上述のとおり行う。 【0157】 これらの細胞に感染することのできる生物体(例えばHSVはミンク肺細胞に感染し、一方クラミジア・トラコマティス(C. trachomatis)はマッコイ細胞に感染する)は上述の実施例2に記載の方法を用いて検出および同定される。 他の混合細胞培養システムと同様、ウイルスおよび/またはクラミジア・トラコマティス(C. t rachomatis)の存在は他の方法、例えばCPEの観察、動物への接種などで検出することができる。 このように、この実施例あるいはその前の実施例のいかなるものの混合細胞培養物アッセイシステムも、何らかの特定の微生物検出、同定、および/または定量方法に限定されることは意図していない。 【0158】 上に述べたことから、本発明が診断微生物学で現在用いられている方法に勝る多数の利点を提供することは明らかである。 【0159】 上述の明細書中で言及した刊行物と特許の全ては参照により本明細書中に組み込むこととする。 本発明で記載した方法とシステムに本発明の範囲と精神とから離れることなく種々の修飾と変更を加えうることは当業者であれば明白である。 本発明は特定の好ましい実施形態との関連で記載されてはいるが、特許請求の範囲で述べられた本発明はそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきものではないことは理解されるべきである。 本発明を実行するためにここに記載された様式の各種の改変が行いうることは診断微生物学およびウイルス学、細胞培養、および/または関連分野の当業者であれば明白であるがそれらの改変は下記の特許請求の範囲に示すものの範囲内にあることが意図される。 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 スクル,デビッド,アール. アメリカ合衆国 45701 オハイオ州,ア ゼンス,ローリング ヒルズ ドライブ 8108 (72)発明者 ワン,ヤン,ティー. アメリカ合衆国 44143 オハイオ州,リ ッチモンド ハイツ,リンドシー レーン 4890 (72)発明者 グッドラム,パアトリシア,ゲイル,レ イ. アメリカ合衆国 45701 オハイオ州,ア ゼンス,レイク レーン 12670 Fターム(参考) 4B024 AA14 BA32 CA04 DA02 GA23 HA11 4B063 QA01 QQ10 QR77 QS33 4B065 AA90X AA95X AB01 BC50 CA46 |